[刀剣乱舞] - かたながりびより。 - [BL]

…こっちの台詞、手加減はしないからね。
(呼び名に不満を唱えていた相手も手合わせの申し出により少しは機嫌を直したらしいことをその笑みから読み取ると思わずつられるようにして面頬の下の口許を緩く吊り上げて。木刀を構えていない方の片手で狐を作り、緩くその手を揺らしながら本心とも挑発とも取れる言葉を口にすると狐にしていた手を解き木刀を握っていた手に添えて。「…先、いいよ。たぬき足遅いでしょ？」木刀をお互いに構えたところで先に打ち込むことを相手に譲るような言葉を掛ければ、続けざまに今度はあからさまな程の挑発を込めた台詞を口にして。緩く首をかしげながら、構えた体勢を保ちつつ体から力を抜くとまるで何処からでも打ってこいとばかりに隙を作って。)

ハッ、そこまで言われちゃ特攻の名が廃るってモンよ！――キエエエエェェェッ！！
（相変わらず何考えてるか分からない奴だ、なんて思いながらその挑発染みた動作にフンと鼻を鳴らして。一人で訓練しようと思ったらこんな展開になるとは予想していなかったので、体の熱も上がり手合わせと言う名の戦練と勝手に思い込みつつ、“遅い”の言葉にスッと気配をぐっと押し殺し抜刀からの横一閃を叫び繰り出して。自分が遅いのはそれだけ力を溜めて攻撃するというステであり、最初の攻撃は試し斬りと同じ。飄々と佇む姿の相手に洒落た攻撃など通用しないことを分かった上で）

ッん！…やっぱり、たぬきは強いね…。
(相手は機動力こそ自分に劣れど攻撃力で言えば相手の方が数段上、だからこそ速さを抜きにした相手の力だけを純粋に感じられる一打を受けてみたかったと言う本音もあり。しかし予想以上に協力な一打に木刀で受けることは出来たもののそのまま弾かれるように地面を擦り後退してしまい、その実力にどこか嬉しそうに呟きを漏らすと木刀を構え直し。「…今度は、こっちから行くよ…ッ！」相手の実力に触れたかったのは確か、しかしやられっぱなしでいられるほど此方も無感情ではなく、不意に瞳に好戦的な色を覗かせると持ち前の機動力で相手の間合いに一気に飛び込み、相手の押し切るような一打とはまた違う振る流れに力を乗せたような一撃を打ち出し。)

避けずに受け止めるとはな…ッ、……ォォオオオオオ!!
（振った横一閃は微弱なれど己の力量からして手加減などしない力強い一振りであったが、少々予想が外れ面食らった表情になるがすぐに相手から離れると、中々の身のこなしに目の色変えては相手からの攻撃をするぞという目に体中の血流が沸騰した気になって。勿論真正面から受け止めてやると思って、守りの構えを取ったのだが予想していた攻撃方法で無かったらしくチッと軽く舌打すれば、どうにか受け止めたはしたが力の入れ具合を間違え少々腕を捻ってしまったようで、流れた一振りを捻ったまま押し返そうとして）

ッく、そ…っ！
(周りからは何を考えているか分からない、淡泊で無感情などという印象を抱かれやすいものの何も考えていないはずがなく、手合わせと言えど刀を交える以上相手にも負けないくらいの闘争心を胸のうちに燃やしており。普段は口にしないような汚い言葉を吐き出しながら受け止められた木刀に力を込めるものの、力では相手に敵わないと判断したのか相手が押し返そうと力を乗せてきているのを感じながら不意なタイミングで木刀を流せばふっと身を屈め柔軟な動きで相手の脇をすり抜けて。すり抜ける流れのまま動きを封じるように相手の体に木刀を添えると「…たぬきは強いけど、硬いね。」などと呟けば口許を僅かに緩めながら首をかしげてみせて。)

――ッ、ぐ……中々やるじゃねぇかきつね。
（微かに見えた相手の瞳、あれは間違いなく戦闘で自分が抱く感情と同じもので随分とやる気に満ちた顔をしていると思っていれば、本当にそれが力となって表れていることが確認出来て。押し返したと思ったのも束の間、上手くかわされ気づいた時には相手に自分が抑え付けられている状態でピトリ宛がわれた木刀に視線くれると「……ハッ、俺はどんな奴だろうが力で押すタイプだ。変な動きしてる間に脳天割りゃあいいんだよ。」負けを認める、と言うよりかは自分の力自慢を。兎にも角にも負けは負け、白々しくも木刀軽くその辺に投げれば力任せに押した時の捻った違和感に眉顰め、相手に悟られないよう、ぶっきらぼうに縁側腰掛けて）

…強いのは大事だけど、硬すぎるのは怪我にも繋がるよ。
(相手から一本取れたことが嬉しかったのか木刀を下ろし張りつめていた意識を解いた後もどことなく気持ちが浮いた様子でいて。律儀にも相手が放った木刀も拾いながらゆっくりと相手に近寄っていきその隣に腰を下ろすと僅かに眉を顰めた相手に緩く首を傾げ。木刀を隣に置いてから相手の全身をじっと見つめ、手合わせを開始した時と動きが微妙に違う手首に視線を落とすと小さな呟きと共に相手の手首に手を伸ばし。「…たぬき、怪我したでしょ。」どうせ口で指摘しても相手は認めないと推測しての行動か、捻った個所を刺激するように軽く手首を握りながらいつもより僅かに強い、咎めるような言葉を掛けるとじっと相手の目を見つめて。)

はぁ？ 硬すぎで怪我って……そんじょそこらの連中と一緒にするなよ。
（余計なお世話だと吐き捨てるように呟けば隣に腰掛ける相手の姿。何となく気まずい雰囲気を脱したいと思ったのか、立ち上がろうと重い腰を上げようと思ったが先に指摘された手首のこと。そんなにジロジロ見られて余り良い気はせず、わざとらしく視線から逃げるために目を逸らし続けていたがさらりと言われて奥歯を噛み締め、「ハ、きつね。ちょっとやそっとじゃ怪我の内に入らねぇよ。―――…ッ、この怪我は…今やったんじゃねぇから。つかそんな間近で見るなよ…。」あくまで前回の出陣の時に負ったものだと口から言うのは出任せのみ、握られた手を無理矢理振り払い相手の目に捉われたくないと視線は逸らし続けて）

――…手入れ、行こう。行かないって言うなら、このまま気絶させて連れていくよ。
(案の定怪我を甘く見て手入れを怠ろうと自分の手を振り払った相手に眉を顰め。付喪神として顕在して暫く経ち、それなりに他の刀達と付き合ってきたからこそ相手のようなタイプに言葉での要求が無意味だと察したのか大きく溜息をつき。相手がこのまま去ってしまわないうちにと相手と瞬時に距離を縮め、片手は相手の腕を掴みもう片手は相手の首の後ろ辺りに手刀を宛がい。至近距離のまま相手の耳元に囁きかける様に小さな声で脅しに近い言葉を掛け、目を逸らされてもなお真剣な目つきで相手の目を見つめ続け。)
…俺、力はあんまりない方だけど…たぬき位なら、担いで歩ける。…どうする？

だぁから、こんくらいで手入れなんざ怪我の内に入らねぇって言っただろ！？
（余程心配性なのか相手が思うほど怪我は酷くない、とそう思っているのが自分だけだという自覚ないまま相手の言葉に耳は傾けるが大した事ないと限界まで言うつもりでいて。溜息付く姿見、諦めてくれたかと思ったが刹那、一瞬にして腕奪われ意識的に相手に対して“逃げられない”と悟り。無理矢理にでも突き飛ばせばまだ――とも思ったが流石に此処まで来ると大人気ないと思い、盛大に溜息付くと手をひらひらさせて降参のポーズ取り半ばふてくされ、「わーったよ！そんなに行かせたいなら行ってやるって。」ほぼ相手からの押され負けなのだが、面倒だと感じながらも渋々承諾し）

…じゃあ、早く行こう。今なら手入れ部屋空いてるはずだから。
(少々強引な手段を取ってしまった自覚はあるものの、それでもお蔭で相手が折れたため一先ず良しとして。一応好意的に思っている人物にこうして面倒臭そうに自分を見られるのは少しだけ寂しくて僅かに気持ちが沈むものの小さく首を振って気分を変えれば靴を脱ぎ、相手の腕を掴んだまま縁側に立ち上がって。軽く腕を引きながら急かすような言葉で相手を呼ぶと、出陣の予定も終わり遠征部隊もまだ帰らない、丁度手入れ部屋が空いている今のうちに相手を連行してしまいたいのかそわそわと僅かに身を揺らして。)

……きつね。……悪、かったな迷惑と心配かけて。
（自分でも此処まで頭がお堅いと自分自身に呆れてしまうほどで。相手だけでなく本丸全体に関わると思えばやはり手入れしなければならないかと重い腰を上げ移動する中で、ボソリと名を呟いて。意図してないが何処と無く悪い事をしたと罰を受けた表情を浮かべながら、自分も靴を脱ぎ相手の手を取ってよいしょと立ち上がり。妙にそわそわしているのを見、頬を数回ポリポリ掻くと移動する手前、取っていた腕を自分に引き寄せて背中に手を回し緩く抱き締めてみせれば、くしゃりと相手の後ろ髪梳くように撫で何事も無かったかのように体を離すと、無言のまま手入れ部屋へと入って）

ッ、え…あ、の…あれ…？
(早く相手の手入れをせねばと気持ちが逸っていたせいか相手の不意の行動に反応が遅れてしまい、重なり合っていた体が離れた頃漸くはっとしたように目をぱちぱちと瞬かせ。相手には以前から同じ刀仲間としては勿論、狐と狸という似通った名から同族意識にも近い思いを抱き接していたものの、こうも近い距離で触れ合ったことなど初めてで。同族のような気持ちでいたというのにお供のキツネと触れ合うのとは明らかに違う、なんだか擽ったいような想いに面頬の下でじわじわと頬を染めれば自身の変化に戸惑っているように梳かれたあたりの髪を掴みながら声を漏らして。しかしここで相手が先に手入れ部屋に行ってしまったことに気が付くとどうやら手伝う気でいたらしくぱたぱたと急ぎ部屋へと向かい。「ッい！…て、いれ…俺、手伝うよ…。」常とは違う内情に戸惑っていたせいか、閉まった襖に思いっきり額を打ち付けてから額を手で擦りつつ襖を開けると先に手入れ部屋に到着していたらしい相手に視線を投げかけ。)

……ったく、これっぽっちは怪我に入んねぇってのに…心配性なんだよあのきつねは。
（捻った手首なんて捻りなおせば問題ない思考だったのできつねの見えていない所で軽く舌打しながら一人、部屋へ。さっき自分は何をしたんだっけとそこまで良くない頭で手繰り寄せた事実、心配性のきつねを抱きとめて髪を梳いてやった、自分より小柄な相手をああもした理由は特にない。上手く自分の行動で大人しくさせればと考えていただけだったが、梳いた髪に触れた左手をぼんやりと眺め終わり盛大に溜息を一つ付くと同時に「なーにやってんだお前。ハ、案外おっちょこちょいなんだなあ。」ククッと喉奥で笑い、フと口角上げて）

…ちょっと急ぎ過ぎただけ。
(普段なら犯さないような不注意を相手に笑われてしまったことが余計に羞恥心を煽ってしまったのか面頬の下の白い頬に朱を点しながら、拗ねているのかいつもより少しだけ低い声で呟いて。勢いよくぶつけたせいか少々赤みを帯びた額を押さえつつ部屋へと踏み込み相手の傍に腰を下ろすと片手で器用に手入れ道具の入った箱を開いていき。額を隠すように前髪を撫で付けた後道具を手に取ると「…手首出して。手入れ、俺がしてあげる。」と声を掛けながら相手の方に手を差し出して。)

……ククッ、まぁたまにはお前がおっちょこちょいな所、他の連中にも見せてみろ……白爺さんを逆驚かし出来るかもしれねぇな。
（余程相手の行動にツボったのか今の状態を他の刀剣たちにも見せたいと心底思いながら、あの驚き大好き爺さんの出鼻を挫くのは相手しかいないんじゃないかと暫く笑いの波を止めること適わずに肩を揺らして。「…折角だしお言葉に甘えてやるか。」流れ的にこのまま相手に任せてしまおうと、捻った方の手を差し出しながら前髪で隠してはいるがサラサラな髪から覗く、額の赤みをじっと見つめて）

――…終わった。痛んだりしない？
(普段の態度のせいかあまり誰かにからかわれたりする経験が殆どなく、慣れない中向けられた相手のからかいに思わず少々相手を睨みながら報復とばかりに相手の手首を軽く捻ってやり。そんな小さな反撃もそこそこに手入れを開始すると相手から向けられている視線には気付かないまま真剣に作業を続け、軽傷にも至らない程度の怪我だったため程なくして手入れを終えると痛めていた手首を何度か軽く捻らせきちんと手入れが完了しているか相手に確認を求めるよう言葉を投げかけると、ここで漸く顔を上げ相手を見つめながら緩く首を傾げて。)

……大丈夫だ、迷惑かけた…ありがとよ。
（これで自分の中で相手は“おっちょこちょい”というレッテルが貼り付いたのは言うまでもない。しかしそんな相手も此処までからかわれたら嫌な顔しかしないかと捻られた手に気持ちが篭っていて、声なき悲鳴を上げむすっとし。手入れ終われば自分の力で軽く手を振ってみて、大事ないと確認すれば素直に礼を述べて。首傾げる相手の額に視線戻せば軽く前髪を払い、親指で赤み帯びた額の周りを一撫でしたかと思えば相手の後頭部に手を添えて軽く自分の方に寄せてみれば、こうする事が最善だと己の中で確信し「……痛いの痛いのとんでけー……ってな。」赤みの額に向かって念仏のように唱えたその口、その唇を押し付けて）

…痛いのが、飛んでいくの？…どこに？
(相手の手入れがきちんと完了したことを確認してから安心したように小さく息をつき、手入れに使った道具を片付けようと道具に手を伸ばした丁度その時、相手の手が自分の前髪に触れて。そのまま肌に触れ、そんなあいての行動に疑問を投げかけようとした自分より早く何やら見知らぬ呪文を唱えた後自分の額に唇を寄せた相手に一瞬頭が真っ白になってしまい。額とはいえ、口づけという行為を知らないほど自分も無知ではなく、ならば何故自分にそんな行為をするのかと思考が疑問に満たされれば固い動きで取り敢えず自分の額を覆って。守るように両手で額を覆いながら次第に額どころか頬まで赤く染まっていく顔をゆっくりと顔を俯かせると、表面こそ落ち着いているものの内情は大分混乱しているのか普段よりも数段ずれた部分に質問の声を上げて。)

………俺がきつねの痛みを―――、あー…何処行ったんだろうな。風の向くままってやつか。
（“きつねの痛みを吸った”なんて今まさに手入れし終わって続ける言葉じゃないと思い、一旦言葉呑み込んだあと飛んでいけと言ったからには何処か行ったとしか言いようがなく。これで何の疑問も持たないで居られるかとその場立ち上がり軽く体をも動かしてみて。手入れのお陰で見事に身体が軽くなったと、相手が俯く瞬間は見逃さず己の後頭部に手を添え何か言葉を探そうと頭ぐるぐる回しながら相手に背中向けて。全体的に安心しつくしたせいで腹の虫が鳴り「あ。」と小さく声を漏らし相手との距離を考え絶対聞こえたのだろうと思い、さり気無くチラッと様子覗い）