佐伯 2015-02-08 09:13:26 |
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車の窓越しに見えるのは幼いころからの友人たち。
くちぐちに何かを言いながらこちらに向かってちぎれんばかりに手を振ってくる。
走行中の車の中にいる俺には当然その言葉は届かないが、次いつ会えるかわからない彼らにお返しとでもいうように、見えなくなるまで大きく手を振りつづけた。
笑顔で。
「田中君?」
その声で意識をこっちへつれ戻す。
俺は無事、新居からそう遠くない高校へ編入できた。
初めての土地に初めて来る学校、そして新しい友達。
胸の中は、楽しみのドキドキとうまく学校生活を送れることができるかの不安が混じり複雑だった。
「は、はいっ!」
声の主は俺の新しいクラスの担任。
まだ若い女性教師だ。
「田中君、私が呼んだら中に入ってきてね。」
教室前の廊下でそう言われ、一つ返事をする。
へー、本当に廊下で待たされるのか。
今回が初めての転校だった俺はドラマみたいだと感心する。
佐伯様
もしも宜しかったら、
此方のトピックをその他カテゴリーの
自分のトピックで
紹介させて頂けませんか..??
壁|_・;)
続きを楽しみにしています(><)
それにしても。
「…寒っ」
建物内にある廊下にせよまだ2月、外はちらほらと雪まで降っている。
前に住んでいたところでは雪なんか滅多に降らないから結構はしゃいじゃったりしたんだけど…今は恨めしいとさえ思ってしまう。
やだなー、と腕をさすっていれば大きな音をたてて目の前のドアが開いた。
すごくびっくりしたのはここだけの話。
ドアの向こうでは、入ってこいと担任が手招きしている。
ごくり、カラカラな口内を潤すように唾を飲み込む。
…とうとうこの時がきてしまった。
小学生のときに転校してきたあの子もこんな心情だったんだろうか。
しかしその答えを教えてくれる者はここにはいない。
自分でどうにかするしかないみたいだ。
汗がひどい手をズボンで拭く。
何だそんなの簡単なことじゃないか、と思う人もいるだろう。
俺も今日までそのうちの一人だった。
しかし実際体験してもらったらわかると思うが、すごく緊張する。
昨夜、まぁ気楽にいけばなんとかなるか、なんて間抜け面していた自分に戻りたい…。
けど。
こんなことほざいてたってしょうがない。
俺の横で先生が、田中景くんでーす。みんな仲良くねー。とありきたりな紹介をしながら黒板に俺の名前を書いていく。そこまでするのかと思ったのは言うまでもない。
だがそれに驚いたわけではなく、目の前の光景を見てのことだった。
なんだ、これ…。
やっとはたらきだした思考がこれ。
それほど理解し難いもので、目を丸くしていれば何かが腹部に軽く当たる。
視線をやるとそこに映ったのは、甲高い音をあげる手のひらサイズをした“何か”。
「いったぁ~ごめんなさーい。」
それは俺に一言謝罪をすると“背中に生えた半透明の羽”で飛び去った。
……は?
戻りかけてた思考回路がまた止まる。
いやいやいや見間違いだ。
今見たものもそうだが、目に映るものが見間違いかどうか確かめるように何度も目を擦っては景色を見、また擦りを繰り返す。
けれどちっとも変わらない。
それどころかまるでここにいる俺が場違いみたいに、それはあたりまえに馴染んでいた。
隣で先生が何かを話しているが、その声をかきけす程騒がしいクラスメイト。よくよく、というか一目でわかるこの異常。角があるもの、人型だが違うもの、さっきの妖精のようなもの…あげればきりがない。今の時代…普通の人間ならば見慣れない光景がそこに広がっていた。
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