土居 2015-02-06 00:29:54 |
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ふみ入れたら戻って来れないような
どんどん深い眠りに落ちていくような
そんな
事件が―――
…赤い夢は見える者にしか見えない
もりひとつ ももははいって もや いでる
はしふたつ はちはわたって はな もどる
かわみっつ かみはのぼって かい くだる
しまでかぞえて しにましょう
――いかがでしたか?
「なにか気になることがかかれていたのですか?」
「ちがいます」
「ぼくが気になるのは」
「ここに かかれていないことです」
「…さようですか」
「さようですか」
「さようですか」
考えがまとまらない
夢の中を歩いてるみたい―――――
料理はおいしい
でも夢の中でもちゃんとおいしい
ここは ちゃんと現実?
「ほっぺたでもつねってみるかい?」
もし
いまいる世界がだれかの夢で
その人の目が覚めたら あたしはどうなるの?
「機巧館に機巧は存在しない」
「機巧館という名をつけることで機巧があるように見せかける」
「それ自体がトリックだったのです」
「…すばらしいわ」
「謎解きは終わっていませんよ」
「ほんとうの機巧は」
「もっと大きい…」
「謎解きで一番重要なのは動機です」
「なぜ殺人を犯したのか…」
「財産あらそいで殺されるまえに自分は消えて安全は確保し」
「ほかの人間を殺す」
「…で説明はつきます」
「でもそれは真の目的ではありません」
「なぜなら」
「この食卓にはいすが一つしかない」
「すべてあなたが物語のために作りだした妄想」
「あなたは」
「一人です」
「なぜあなただけが生き残れたんでしょう」
「理想を現実に」
「現実を理想に」
「その境をあいまいにするために」
「謎解きは終わりですか?」
「…いいえ」
「ここまでたどりつくと」
「もう一つ謎が生まれてしまうんです」
「そしてぼくには」
「それが解けない…」
「ぼくが招待されたのはどこですか?」
「機巧館ですか?」
「あなたの夢の中ですか?」
「わたしにだってわからない」
「―――でも」
「この世界がだれかの夢の中だったとして」
「なんの不都合があるの?」
「…ぼくにできることはもうありません」
「そろそろ帰ります」
「帰る?」
「どこへ?」
「現実へ」
「現実?」
「正確にいいましょうよ」
「それは『あなたが現実だと信じている世界』でしょう?」
「いいえ」
「もっと正確には――…」
「『信じていたい』世界だわ!」
【夢水清志郎事件ノート】より抜粋
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