ヘタレ勇者と鬼畜魔女【nl】

むっ、何笑ってんのさ。大体あんたが無理なうわっ！
（こちらの気も知らないで盛大に笑う相手を見ていると無性に腹が立ち、眉間に皺を寄せ、両手を腰に当てて柄にもなく説教でも始めるかのような雰囲気を作り出すも、突如襲い掛かってくる魔物の攻撃にそれを台無しにされ。ぎりぎりの反応でこんぼうを使って防御しているも防戦一方、初級魔物に対してもガリガリHPが削られていけば「た、助けて…リネル！リネルさん！リネル様！死にたくない…！」と醜態を晒しながら相手に助けを求め魔物に命乞いをする始末）

ったくもう…！
(自分への懇願だけでなく魔物に命乞いまで始める相手の姿に苛立ち半分呆れ半分で脳内が満たされてしまえば口から出るのは溜息のみ。ローブから杖を取り出せばそれを一振りし相手のHPを回復させ、「私がやるのはこれだけ。いい？せめてその魔物は貴方一人で倒しなさい、カイン！」鋭い目付きでビシッと相手を杖で指せば、そのままそれを懐にしまい再び防御体制に。せめて倒すくらいはやってもらわなければいつまで経っても自信がつかないと半ば親心のようなもので相手を突き放し。)

ありがとう！そのまま…えぇ！？…くっそぉぉ！
（体力の回復を感じ魔法の力を身に沁みて実感すると相手に礼を述べ、そのままやっつけてと言う間もなく絶望に叩き落とされ。戦っても地獄、戦わなくてもまた地獄の敵味方両者から追い込まれた状況に半ば自暴自棄になり、今まで防御に使っていたこんぼうを振り回して魔物にヒットさせ。初めの魔物だからか案外あっさり倒せてしまうというご都合主義的展開に拍子抜けした表情を浮かべては「倒せたわ。」と間抜けな顔で相手を見て）

やればできるじゃない。
(最早防御体制さえ解き腕組みして後ろから様子を眺めていて。間抜けな顔で振り返る相手に思ったままの感想を。これまたご都合主義的にあっさり相手のレベルも上がり、ついでに一応加勢したとみなされる自分のレベルもちゃっかり上がって。「この調子でどんどん頑張って？ノルマ熟せば今日中に15〜17くらいはレベル上がる計算だから。」と悪魔の微笑みを浮かべながらひらりと片手振りいってらっしゃいの合図を。)

これ余裕じゃね？序盤さくさくじゃね？
（良くも悪くも単純で、あっさり倒せてしまったことに無駄に自信を付けてはやる気が出るとまでは言わないが少し心に余裕ができたのか調子の良いことを述べ。いくら倒せることが分かったとはいえ相手の悪い冗談に「いや5が限度だから。」と目を細めてジトリと睨みながらつっこみを入れて。相手の中でレベル計算がどのようになっているかなどこちらの知ることではなく、これに従うと身が持たないと判断しては自分の計算でいこうと決意をし、相手に見送られながら討伐に出かけ）

なら競争ね？どっちがレベル高く上げられるか。
(ふっと一瞬妖しい笑みを浮かべながら討伐に向かう相手に勝負を持ち掛け。その背中を見送った後、「さて、と」と立ち上がり、ローブを翻して相手とは逆の方向へ。その先には毒の沼地があり、それを越えると倒せば経験値を多く稼げるタイプの魔物の巣が。こうして楽々レベルを17まで上げれば何食わぬ顔で元の場所へと戻り。自分のやっていることは明らかにルール違反、所謂ズルというやつであることは重々承知しているものの、これで相手の競争心を引き立てそこからやる気へと繋げようという作戦で。罪悪感から溜息をつき「…今まで以上に嫌われるわね、間違いなく。」と自嘲的な笑み浮かべながら相手の帰りを待ち。)

ぜぇ…ぜぇ…はぁ…はぁ…。
（それから暫くして、息も絶え絶えボロボロの身体でこんぼうを今度は杖代わりに両手でついて身体を支えながら元の場所へと戻ってくる。相手とは違い回復魔法も使えなければ回復アイテムすら未所持の状態。弱い魔物といえどほぼ己の身だけで戦っている自分ではHPもジリ貧は不可避で。生憎競争心なんかも無い為相手と競おうという気は全く無く、着々と上げたレベルは7で留まった。とはいえ自分の計算より2も上回っていた為自分の中では万々歳といえるだろう。疲れた様子も無くそこに佇む相手を見るに結局行かなかったのだろうかと考えるも、レベルだけは自分の倍以上まで跳ね上がっており、「やべぇ。」と色々な感情が含まれた言葉を漏らし）

…ボロボロね、情けない。
(回復も無しにレベル7。本心ではよく頑張ったと褒めてやりたいがそれで調子に乗られては元も子もないため心を鬼にして上記。自分の思惑とは違いどうやら競争心など皆無な様子の相手に軽くチョップし、「感心してどうするのよ。」と一言ツッコミを入れ。相手と旅に出てもう何度目か分からない溜息をまた一つつけば杖を取り出し回復させてやり、「ま、いいわ。今日はこれで勘弁してあげる。今夜は宿屋にでも泊まりましょ。」と近くに見える村の小さな灯りを杖で指し。)

いた。いやだってもう17とか凄いじゃん、もう一人で魔王倒してこいよ。
（自分と相手の元々のレベル差がいかほどの物だったのかは分からないが、早速相手とのポテンシャルの違いを感じては自分が行かずとも国に平和を戻すことは可能なんじゃないかとさえ感じてそのような発言を。やっと相手のお許しが出れば元気になった身体で「よっしゃあ！」とガッツポーズ、宿へ向かう道中、回復魔法が余程気に入ったのか、「なぁリネル、俺も回復魔法使いたい。回復魔法教えて。」とまるですぐ使えるようになるとでも思っているかのようにご教授を願い）

…ねぇ？たった17で倒せる魔王ならもうとっくに捻り潰されてると思わない？
(一人で行ってこいと言う相手に片手で頭を抱え。その手を離し相手に呆れた視線を向ければ最もらしく上記。回復魔法を使いたいとの願いを聞けば、「そんな簡単に使える訳ないでしょ？ただでさえ私は魔法使い、カインは勇者。元々の作りも違うんだから。」と態とらしく肩を竦めて。「ま、カインが自分で回復できるようになる頃には私はもう必要無くなってるかもね。」暗くなりつつある空に視線を遣りながらぽつりとそんな予想を零し。)

でもさ、1日17レベルだったら6日で100レベル超えるんだぞ？お前ならやれるよリネル！
（相手の問いかけに両手を使って何やらぶつぶつと呟きはじめ、計算が終われば相手なら数日でカンスト可能だと自分でも驚きながらその事実を伝え、肩に手を置いてぐっと親指立てながら何故かこちらが励ますような言葉をかけ。勇者の作りって何だろうと思いながら相手の話を聞くも、何故必要無くなるのかよく意味が分からなかったようで、「それってどういう意味？俺が回復役になるってこと？」と首捻りながら問い）

馬鹿ね。こういうのは最初こそレベルが上がりやすいのがセオリーでしょ？
(いくら励まされようが生憎それに対していい気になるような単純ではなく、普段と変わらず冷静にある意味禁句のような言葉を返して。首を捻る相手に「何でカインが補助役に回ってるのよ。そうじゃなくて、貴方が自分で回復もできるようになれば補助役の私は必要ないかもってこと。」と呆れ顔で説明し。そうこうするうち宿屋に辿り着き、これもまたセオリー通りというか宿泊料はかなり安くて。)

ふっふっふ、そうなるとリネルは攻撃魔法を惜しみなく使えばいいよ。
(正直専用の杖さえあれば回復魔法など簡単にできるだろうと踏んでおり、相手の言葉に気を良くしてかどこか誇らしげに笑えば胸を張って攻撃役に転じるようにと伝え。「やっぱこの場合同じ部屋なのかね？」宿屋に着くと受付にて格安の宿泊費を払い、部屋へ向かう階段を上っている最中、以前自分のやっていたゲームでは連なった4人パーティがそのまま同じベッドに入って行く光景を思い出し、自分が勇者？となった今実際どうなっているのかと疑問に思い)

さぁ？安いし、何人泊まっても同額なんだから同じなんじゃない？
(相手の疑問に対し同様に首を傾げるも、値段のことなど考えれば恐らく同じだろうと妙に現実的な思考で上記を。「でもま、逆に言えばそれだけ安いんだし、もう一部屋借りれば別々にもできるんじゃない？」と特に満室というわけでもなさそうな宿屋内の静けさから付け足すように己の予想を口にすれば「…別にする？」と。そこには、嫌われているであろう自身を思えば、せめて寝る時くらい別にさせてやろうという不器用な気遣いがあり。)

なるほど…それがいいかも。
（確かにこれだけ安く付くのならもう一部屋借りても大した痛手にはならないと相手の言葉に相槌を打ち、考える間もなくその意見に賛同し。決して相手と二人になるのが嫌という訳ではなく、それよりも相手が異性と同じ部屋で寝るのは嫌だろうという考えからの気遣いである。同じにしようなんて言ったらまた何か難癖つけられるだろうという恐れによる保険ともいえるかもしれない。階段を上りきった位で立ち止まれば、「じゃあ俺、もう一部屋取ってくるから先行っといて。」と言葉を添えて再び階段を下りていき）

いってらっしゃい。
(先に行っておけという相手の言葉に甘えその通りに最初に宿屋側から与えられた部屋へ進み。相手は後から取った部屋に行くだろうと予想しながら入室すれば、そこはやはりというべきか4人部屋。4つ並んだベットを見れば「…選びたい放題ね」とぽつり呟き。身に付けていたローブを脱ぎワンピース一枚になれば一番手前のベットへと腰掛けそのまま仰向けに寝そべり。「下手な魔物より嫌われてる気がするわ…別にいいけど。」と大いに勘違いして。)

部屋取れなかった。あ…。
（どうやら暗黙の了解で1パーティにつき1部屋の制限があるらしく、仕方ないと受付を後にすれば階段を上がって相手が既に入室したであろう部屋の扉を開きながら上記述べ。相手の格好が変わっていることに気付き、今更ながらノックもしなかったことを後悔するが、このままノリで突き通せば何事も無くやり切れるのではと思い直し、「いやー今日は疲れた疲れた。」と何事もなかったかのように大きな独り言を発しながら相手のベッドより一つ飛ばした3つ目のベッドに向かい）

…何変な気遣いしてんのよ？
別にいいわよ、裸じゃあるまいしローブ脱いだのくらい見られたって。
(突如入室してきた相手を見れば部屋が取れなかったのは明白で。こんなに空いてるくせになんて内心では宿屋の主人に対し悪態つくも、それより態とらしい相手の独り言の方が気になって。むくりと上半身起こせば鋭くその気遣いを指摘し、自分はそれくらい気にしていないと目を伏せ。)

ほんと？良かった、殺されるかと思ったいやほんと。
（荷物を置いて相手の方を向いてベッドに腰掛けたところで、まるで自分の心を覗かれているかのような言葉にゾクリと寒気のようなものを感じ、しかし意外と大らかな反応にほっと胸を撫で下ろしては冗談を言っているようにも見えぬ表情でさらりとそんな胸の内を明かし。許しが出たのでぼーっとその姿を観察すると「しかし何かこう、雰囲気変わるよな、ローブって暗いイメージあんじゃん。」と自分の魔法使いに対するイメージと現在の相手の姿を対比させ）

そんなにヤバいもの見た気でいたんだ。
(自分としては一般人がコートを脱ぐのに等しい感覚で脱いだだけのローブ。それが相手にとっては命懸けだったのかと思えばたらりと一筋の汗掻き。改めてといった感じの相手から感想を得れば「そ？まぁ真っ黒だしね。今のこれじゃ魔法使いっぽくないでしょ？」と首を傾げながら自身のローブに改めて視線を向けてから再びその視線を相手に戻し。)