綿菓子 2015-01-05 23:39:06 |
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- に ん ぎ ょ う -
ある町に二人の殺し屋がいた。
その二人の殺し屋は家族で
お母さんと娘と言う立場だった。
だけど、それは小学生になる前の話。
小学生のときから殺し屋に育てられた子供は一度も親を “お母さん” と呼んだことはありませんでした。
勉強もせず、ただ人を殺すことの訓練をした。
もうお母さんと娘の関係なんて微塵も残ってはいなかった。
唯一残されたお母さんの言葉は
『感情をもってはだめ。嬉しいとか悲しいとか思ってはだめ。』
その言葉だけだった。
ある日娘は訪ねました。
「どうして?」
『人を殺せなくなるから』
ただその一言だけでした。
それ以上はいくら訪ねても母親が口を開くことはなく
母親としての言葉はたったそれだけ。
中学生になればもうその少女を守ってくれる人は
誰一人いなくなりました。
ただ、その少女は他の国からも狙われるくらいの
有名な殺しやとなりました。
その少女がつけられた名前は
“殺す機械”
もう人という原型は少しも残っていなかった。
ただその少女は何も思わなかった。
だってその通りだったから。
ほぼ無敵となった少女は世界一の殺し屋と
殺し合うことにした。
感情も失い
家族も失い
人としての生き方を忘れ
殺すことしか知らない少女が
もし戦いに負けてしまったら
もう生きる価値はないだろう。
そう考えたから。
勝つことで自分に生きる価値を認めて欲しかったから。
その世界一の殺し屋は何故か仮面をつけていた。
そして勝ったのは “殺す機械” 。
地面に無抵抗で倒れていく相手の仮面が取れた。
その瞬間少女の中で何かが変わった。
『お母さん!!』
初めてお母さんと呼んだ。
ただそんなことはどうでもよかった。
世界一の殺し屋と言われていたのはお母さんで
その自分のたった一人の家族を自らの手で殺してしまった。
ただ感情を知らない少女はどうしていいかわからなかった。
今までなかった気持ちが一気にあふれでて
どうしていいかわからずただその場に座っているだけだった。
『…頑張ったね』
その言葉が耳に届けば娘はゆっくりと顔をあげた。
『お母さん、嬉しい』
その時少女は初めて母の笑顔を見た。
伝えようと思っていた言葉はもう出遅れだった。
どれだけお母さんと呼んでもそれから返事がかえってくることはなく
少女は人形のように無表情のまま涙流し
その流れた涙は地面にはじけ自然と消えていった。
「___..お母さん、大好き…。」
________end.....
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