xxx 2014-12-29 00:12:16 |
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>桐崎
(相手に初めて名前を呼ばれピクリと反応するもその後の男子学生の言動で傷心した心がグラリと揺らぐ。
それなのにちっとも身体は震えない。
男に蹂躙されてあんなにも恐怖で息が出来なかったのが今となっては嫌悪感だけ。
相手は“汚れてない”と言ってくれたが実際はこんなにも不潔だ。
あのまっすぐで純粋な彼女とは違う。
自分と会ってなければ相手は気兼ねなく彼女と寄りを戻し幸せになれただろう。
自分と一緒にいるとまた迷惑をかける……。
段々と卑屈になり悲観的になっていけば相手を信じる気持ちがありながら自分に自信を無くしてしまい投げ渡された札をゴミ箱に捨てては何度もうがいをして。
暫くベッドに潜りぼんやりしていたがおずおずと携帯を取り出すと相手のアドレスを開き《旅行はやっぱり辞めにする。卒論あるし遊んでる時間ない。それに俺といるとあんたの株が下がるから暫く会うのはやめよう。旅行は彼女とでも行けよ。あの子ならあんたのこと受け止めてくれるし、元々あんたとあの子はくっつく運命だったんだと思う。だから俺の事は気にせず付き合えよ。俺とは会ってなかったって思えばいいから》と別れるのか否かはっきりしないメールを送り。
きっと自分が引けば相手はあの子と幸せになれる…そう変な思い込みをしては目を閉じ眠りについて。
(その少し前、相手を外へ追いやった男子学生達は相手に数枚の写真を見せつけていて。
それは店長の支配力が最も強かった時、何人もの男と無理矢理相手させられた写真。
どれも自分から善がっているように見え中には金を強請っているように見えるものもあり。
『これでわかっただろ。彼奴は遊人なんだよ。日付だってほら、最近だろ?』
(ニタリと笑い見せる写真の日付は偽装により此処一週間のものになっていて。
『毎日取っ替え引っ替え男を乗り換えてんだぜ。俺も誘われたからな。前に首筋に鬱血あっただろ?どーしてもって言うから仕方なくしてやったんだよ』
(つらつらと出鱈目を並べては『あいつ女しらねぇんじゃねーの』と嘲笑い『別れるなら早いほうがいいぜ』と相手の肩を叩きその場を去っていき。
(翌日日曜日、相手との約束の日だが食堂にも行かずに部屋に籠もっては、どうせ相手は彼女と出かけただろうと待ち合わせの時間になってもベッドから出ることはなくただただ時間が過ぎるのを待って。
>露木
( 昨夜のメールの返事も出来ないまま、男子学生達に言われた事も気にしない様にただ無様に待ち合わせ場所へと来ては相手が来ない事を知りながら時計台の下にて佇んでいて。
自分がとことん馬鹿馬鹿しく思えるのと共に昨夜見せられた写真が今でも焼き付いており、自分では相手を満たせなかったのかと惨めな気持ちになって。
( 夕方になり漸く諦めが付いては泣きそうな気持ちを抑え寮へと足を向ける。
しかしその際に彼女と出会しては腕を取られ路地裏へと連れられて。
『繿、やっぱり私…ごめんなさい。迷惑だって分かってるのに…話がしたくて』
「なんの話??」
『………私、…貴方の能力だって何だって受け止めるから………だから』
( 言い掛けた彼女を見詰める目を細めては彼女を壁に押え付け能力を半減して解放させる。
紅い獣の瞳に長く伸びた牙、目前の彼女が必死に震えを抑えてるのは一目瞭然。
グッと顔を近付けた所で彼女が『ひっ………』と声を漏らしたのを聞き逃す筈も無く能力を解き自嘲の笑みを浮かべては「怖いだろ、無理すんな」と。
彼女が泣きながら『違うの!!!ごめんなさい、今のは…違うの』と言うのをどこか悲しそうに見詰めては「良いよ別に、じゃあな」とだけ告げさっさと場を後にして。
驚かずに怯える事も無く認めてくれたのは相手のみ、その相手にすらも距離を置きたいと言われてしまえば自分には誰が居るのだろうかと。
自室に戻り泣きそうな表情を軽く叩いては顔を洗いベッドへと行こうとした所、不意に扉が開いては青年が鍋を手に『兄さんスープ作ったんだけど一緒に食べない??』と問い掛けて来て。
一人でいたくなかった事もあり青年を部屋に入れては直ぐに『何か合った??』と聞かれて。
以前付き合ってた彼女の事や、恐怖を隠しながら自分に関わってくれようとしてた事を話しては俯き自分の馬鹿馬鹿しさを痛感して。
『………兄さん、俺は兄さんを化物だなんて思ってないよ』
「それ菊も言ってくれたんだ。………俺彼奴に嫌われる様な事したみたいだな、距離を置きたいみたいで。…彼女にも、…ちゃんと話した。………でも」
( 急にしんみりとした話にしてしまったなと反省しては明るく振る舞い青年お手製のスープに舌づつみして。
内心相手の事や、今日の彼女の反応の事等で胸は一杯だったがそれでも弱さを見られるのは嫌で。
数時間青年と過ごしては「もう寝るわ、ありがとな」とそれとなく青年を退室させベッドへと横たわり。
( 翌日、やはり相手との距離が離れるのは嫌で食堂で兄と朝食を取る相手を見付けては挨拶だけでもしようと駆け寄る。
しかし何気無く昨日の彼女の反応を思い出しては、もしかしたら自分の自己満足を押し付けてただけで相手にも無理をさせてしまってたのかもしれないと。
虚しさが溢れ踵を返しては《あんたを好きになってごめんな、距離を置きたいってのは分かってるけど遠くなるのは嫌なんだ。友人程度の関わりはこっちから掛けるから気持ち悪かったら無視して構わないから》とメールを打つも結局送れずに消去して。
>桐崎
(食堂にて兄と食事を取りつつ相手の事を考えては、昨日自分から行かないと決めた癖に酷く後悔しており会って話しくらいすればよかったと。
それでも相手からのメールの返信はないし無言の肯定だと思っては相手が彼女と何があったかも知らずに身勝手に傷付いて。
『ねえ菊、あれから繿とはどうなったの?…って此処にいない時点であれか…』
「…………綸はさ、なんで俺の傍にいるんだ?…最近良くない噂ばかりされてるし俺といると巻き添いになるだけだろ?…あんたまで悪く言われるし…」
『噂は周りが言ってるだけでしょ。悪く言われようがなーにも困らないし?俺は菊といたいからいるだけ。それに菊の“離れて”は大概“嘘”だからね』
「……あんたに言ってる“離れて”は本…『あー、知ってる。いいよ、もう其処は言わなくて。……また何があったのか知らないけどちゃんと二人で話しなよ。繿が居ないと菊と旅行行けないもん』
(すまして言う兄の言葉を聞き入れながらも、男子学生の言葉が胸にしこりを残し自信を持てなくさせていて兄が『繿も説得しなきゃなぁ…菊との旅行が掛かってるし』とぼやくのも聞こえずに。
(朝食を終え昼まで研究室にこもり卒論の最後の仕上げをしては深夜までのバイトに向かう。
此処最近は店長も嫌がらせだけで脅してくることも無かったが見えない支配力に縛られているのが現状で未だにバイトを辞めれずにいて。
結局、このバイトを辞められなければ相手に迷惑が掛かる。
あの彼女が現れる以前に自分には相手と付き合う資格がなかったのだと言い聞かせては、店先に置いてあるゴミ箱のゴミを裏道に置きに行く。
裏道には他の飲食店のゴミもまとめて大量に置かれているため酷い臭いですぐにその場を去りたかったが分別がなってなかったため面倒ながらしゃがんでビンや缶を分ける。
と、そこへ同じシフトのバイトがやってきては分別したばかりの袋を蹴られて。
『あ、御免。足が滑ったわ。……お前なに此処でサボってんの?』
「サボってる訳では……、てか邪魔するなよ」
『お前さ、店長の男だけじゃ飽きたらず高校の餓鬼にまで手出したんだってな?』
『その餓鬼にマジ同情するわ。…てかさなんで遊びの餓鬼から貰ったストラップ大事に持ってんだよ』
(そう言うなり携帯を取り上げられストラップを取られてはゴミ山の中に投げ捨てられる。
その瞬間、相手と距離を置くという考えは飛んでしまい慌ててゴミをかき分け探すも暗がりだからか中々見つからずに。
その様子をバイトたちは動画にとってケラケラ笑っては『まあせいぜい頑張って探せよ』と去っていき。
そのバイトたちは男子学生のグルで、その中の一人の手には投げたと見せかけたストラップが握られていて。
>露木
( 夜、相手のメールに未だに頭を悩ませては兎に角伝えたい事だけでもと言葉を選び《彼女とはちゃんと話をして別れたよ。あんたの事好きになってごめん》とだけメールを送って。
天井をぼんやりと見詰めてた所、やや乱暴に部屋の扉を叩く音に気付きドアを開けては先日の男子学生が立っており、いつか相手に渡した筈のストラップを押し付ける様に手渡されて。
『流石に遊び相手からの贈り物は重いとよ、返して来てくれって頼まれたんだわ』
『お前も可哀想だな‐、ずっと騙されてたんだろ??そんでもって聞いたよお前の化物の力。こんなのって有り得んだな』
( どこから手に入れたのか自分の醜い姿が晒された写真を見せて来ては表情を固めて。
男子学生達は『ま、人間に相手にして貰えないから彼奴に引っ掛かったんだろ??災難だったな』と蔑む様に笑いさっさと出て行ってしまって。
デスクの前に腰を下ろし相手へ贈ったストラップを見詰めてはこれも迷惑だったのだなと。
「…こんなに好きになったの初めてだから………少し重かったのかもな」
( 独りでにボソリと呟いては自嘲に微笑みストラップを上着のポケットへと放り入れて。
何気無く洗面所へと来ては生まれつきの自分の髪と瞳を見詰め意味も無くクスクスと笑ってやる。
馬鹿馬鹿しくなりベッドへと戻ってはそのまま寝息を立て、夢の中の相手に無意識に涙してた事など知らず。
( 翌朝、何故か部屋に兄が訪ねて来ては何となく兄の黒髪に触れてみたりして。
『何いきなり、気持ち悪いんだけど』
「いや何となく。黒髪、良いよな。ちょっと羨ましい」
『……………真希ちゃんの事赤城に相談したんでしょ、聞いたよ』
「そっか、怖がらせるとか最低だよな俺」
( ケラケラと笑いスポーツドリンクのペットボトルを一本兄に手渡しては何しに来たのかを問い掛ける。
『菊と…何かあったんでしょ』
「別に何も無いけど」
『菊との旅行が掛かってるの、俺何が何でも菊と旅行に行きたいしちゃんと話してくれないかな』
「………??何で俺が関係あんの??あんた達二人で行ってくれば良いじゃん」
『いやそれじゃあ…』
「行って来いよ。…あ、土産よろしくな」
( あくまでも平然を装いながらヘラヘラと笑えば兄を部屋の外に押し出しながら「多分彼奴も…綸と行ったほうが楽しいんじゃないか??………もし俺が本当に遊び相手だったとしたらまた会うのは気不味いだろ」と言うも僅かに声色が震えてしまい情けなさから唇を噛んで。
自室に一人で居るのが嫌でパーカーを羽織りコンビニへと来ては何をする訳でも無く雑誌を立ち読みしていて。
>桐崎
(夜、ゴミ袋の山の中すぐに見つかるだろうと探すも中々見当たらずバイト中だったため途中なくなく切り上げてはバイト終わりの深夜、携帯の簡易ライトを頼りに必死で探す。
しかし無いものが見つかる筈もなく相手からのメールを見た所でついに携帯の電源が切れては泣きたい気持ちを堪え意味もなく真っ暗な中ゴミ袋をあさって。
(朝方、ゴミ収集車が来た所で漸く探すのをやめるも何故無いのか理解するだけの冷静さはなくなっており、異臭を放つ自分に不審な目が向けられていることも気付かないまま自室に戻りシャワーを浴びて。
着替えを済ませ充電しておいた携帯で改めて相手のメールを見ては何故謝るのかと相手の気持ちを理解してやれず《何で謝るの?悪いのは全部俺だろ。だから無理して彼女と別れることないよ》とメールを送り、未練がましく揃いのピアスに触れては引き出しに大切にしまって。
ストラップのことは忘れようとベッドの上に蹲るもどうしても諦めきれずに再び裏道へ向かって僅かに残ったゴミの下などを見てみるも当然無く。
今度こそ諦めようと身を返したところ突然男子学生達に肩を組まれ何のようだと眉を顰め。
『ちゃんと桐崎とは別れたかぁ?…証拠残したいからさ俺達と今ここで遊べよ』
「…は?馬鹿か。誰がお前らなんかと」
『へえそんな生意気な態度取っていいのか?お前が遊んでくれないなら桐崎の彼女と遊ぼうかなぁ』
『真希ちゃんだっけ?超可愛いもんな』
(姑息な手に学生達を睨みつけるも逆らえば本気で彼女に手を出しそうでギリッと歯を食い縛っては携帯を向けられる中男達に従い。
『ちゃんと撮影して桐崎に見せてあげってからちゃんと善がれよ』
(嘲笑する男子学生の思惑通り段々と精神が壊れていけば男の首に腕を引っ掛けながら口元に薄ら笑みを浮かべいて。
(その頃、コンビニでは丁度深夜のバイトを終えたチャラい女が朝方来た店長に怪しい人が裏道に居たと馬鹿でかい声で話していて。
『その人ぉ、夜もゴミあさっててーさっき見たらぁまだいたんですよぉ。マジあたし怖くてぇ。てゆーか不審者ですよねぇ?』
(きもーいと喋るだけ喋って去った後相手の隣にいた女子達が『私も昨日の夜見たよ。多分よくレンタルショップでバイトしてる人だと思う。制服着てたし』『あそこのレンタルショップっていじめが酷いらしいじゃん?昨日も裏道で騒いでたって聞いたよ。それと関係あるのかな』と首を傾げて。
>露木
( 何気無く聞こえてしまった会話に耳を向けてはどうやら相手のバイト先のレンタルショップの話らしく。
相手が店長から嫌がらせを受けてるのは今までの相手との関係から何となく分かっており、まさかと思いながらも裏路地へと足を向けて。
暗がりの中、一人の男が数人に囲まれてるのが分かり「おい、あんた達何一人に寄って集って………」と言い掛けた所で頭が真っ白になる。
目が冴え伺えたのは妖艶な笑みを浮かべ誘うように男子学生の首に腕を絡める相手の姿。
一人の男子学生が自分の肩を組んで来ては『あれ、お前確か露木の遊び相手だった一人だろ??』と。
情けなく歯がカチカチと音を立てて身震いをしてしまえば「なんで」と口を動かすも声には鳴らず。
ゆっくり瞬きをしてはさっさとこの場から離れようと思うのに足が鉛の様に動かない。
『俺さ、前にお前が街の路地で真希ちゃんに能力解放すんの見てたぜ??真希ちゃんあんなにビビっちゃって可哀想にな‐』
『流石に人外は認めて貰えないだろって。え、何、真希ちゃんに認めて貰おうとしてたの??悲しいな』
( ゲラゲラと笑う男子学生達を掻き分け相手の前に来ては男に善がるその胸倉を掴み引き寄せ「…あんたの意思でやってるんだったら…何も言わないから。………ただ俺は勝手にあんたを好きでいるから………遊びだったんなら“馬鹿だな”って笑ってて。………あんたが、俺を認めてくれたの………初めてだったから嬉しかった」と言いパッと胸倉を離しては立ち去って。
( 寮へと戻るなり部屋に居たのは何故か若頭、困った様に眉を寄せる若頭は有無を言わさず自分に能力を掛けると『あのさ、明日だけ美容院で髪のセットさせて欲しいんだよね。僕の髪の長さじゃ足りないみたいで…そんで菊にしようって思ったら部屋に居ないし』と。
「ふざけんなよ、女なんてもう沢山だ」
『本当に直ぐに戻すから!!!子供の頃からの友人の頼みだし断れなくてさ』
「………それに、………こんな髪の色じゃ…気持ち悪いって思われるだろうが」
『………??』
「ごめん、なんでも無い。………っ、明日だけだからな」
『ありがと!!!ボディーガードはちゃんとしたげるね』
( 眉間に皺を寄せたままベッドに潜っては今日の事をなるべく考えない様にしつつ寝息を立てて。
>桐崎
(無心で男に従っていると突如遠くで相手の声が聞こえた気がして気のせいかと構わずにいたが胸倉を掴まれて漸く相手の存在を確認しては激しく動揺する。
言葉の内容は殆ど耳に入って来ず無様な姿を見られたことがショックで、さっきまで平気だった行為が突然怖くなりガタガタと身体が震えだして。
相手に触れたい。あの銀髪を撫でて抱き締めたい。
去り行く相手を追おうと手を伸ばすも男子学生達がそれを許す筈もなく『何あいつを追おうとしてんだよ。今の自分の姿を見てみろよ。お前が傍にいると迷惑なんだよ』『大人しくしねぇとマジで女(真希)に手ぇ出すぞ』と嘲り身体を取り押さえられ、正常な判断力を失った精神は抵抗をピタリと辞め無表情になれば雑居ビルのほんの僅かな隙間から見える遠い空を空虚に見詰めていて。
(翌日、自室の脱衣所で目を覚ますも此処までどう来たか記憶が曖昧で重たい腰を上げシャワーを浴び直しベッドに腰掛けては昨日の相手の言葉を思いだす。
…相手は自分を好きで居てくれてる。
…彼女に恐れられどれ程辛かっただろうか…。
相手の気も知らないで自分は相手になんて事を言ったのかと自身を呪うも、悔いが強くなればなるほど自信を無くしていきやはり相手の傍にいる資格はないと卑屈になって。
今日も昼間から男子学生にパシリとして呼び出されておりどうせ面倒ごとを押し付けられるのだろうと嫌々待ち合い場所へ向かい。
(その頃、美容院では女体した相手の登場に店内がどよめいており『何あの可愛い子。モデルさん?』『やべぇこの後ランチ誘うかな』と男女問わず相手に声を掛けていて。
暫くして奥から相手の髪をセットする美容師が現れては相手を見るなり口笛を吹き。
『木ノ宮、良い女知ってるじゃん。もっと早く紹介してよ。……………桐崎さんだよね?今日はありがとね。この髪、自毛?個性があっていいね。すごく綺麗だよ』
(相手を鏡の前に座らせ髪をサラリと掬っては口元を寄せるようにして鏡の中の相手を見て微笑み、時折馴れ馴れしく相手の身体に触れながら慣れた手つきで髪をセットしていき。
『ところでさ、桐崎さんは彼氏いるの?…って居て当然だよね』
(人の良い笑みを浮かべつつ『一目惚れしちゃった』と耳元で囁きクスクス笑い、『ところで良いモデル事務所があるんだけどこの後ランチがてら一緒に行かない?君ならすぐファンがついて稼げるよ』と甘く微笑みながら明らかにいかがわしい誘いをして。
>露木
( 慣れない女扱いに眉間に皺を寄せつつ、それでも女の振りは面倒で「いい、終わったら用事あるから帰る」とだけ無愛想に告げる。
緩く髪を巻かれ漸くセットが終わるも中々帰して貰えずに仕事の話だと連れてかれる若頭をどこか不安そうに見詰めて。
『ねぇ桐崎さん、君下の名前何て言うの??』
「あんたに関係無いだろ」
『わ、冷たい』
( クスクスと笑みを浮かべる美容師の男に不意に耳に触れられてはピクリとし「…っあ、…」と短く声を漏らしてしまい慌てて男から離れてはキッと睨み付け。
さっさと戻して貰おうと若頭を待つがそわそわとしてしまって。
( 待ち合わせ場所にて、相手を待ち伏せてた男子学生達は訪れた相手の髪を厭らしく撫で『そんな顔すんなよ、昨日あんな事した仲だろ??』と。
相手を引き連れ街を歩いていた所、ふと一人の男が『そういえばさ、俺の従兄弟の美容院に今日カットモデル一杯来るらしいぜ。良い女居るかもだし行ってみるか』と持ち掛けては相手の腕を強引に引き『お前が落として来いよ、その顔立ちしっかり使えよな』と。
従兄弟のコネを使い美容院へと訪れては色んなカットモデルの女性を厭らしく見詰めて居て。
( 相手が来てる事など知らずにしつこく耳に触れて来る男の頬を思い切り叩いてはイライラを顕にし未だに出て来ない若頭を急かす様に事務室を見詰めて。
男は少しも怒らずにずっとヘラヘラと笑っており、それが更に気色悪く感じてはひたすら距離を置きながら「触るな」と。
>桐崎
(男は相手の態度を照れと受け取りしつこく耳に触れもう片手で厭らしく太腿に触れては『男慣れしてないの?可愛いなぁ』とクスリと笑い相手の反応を楽しみ。
そんな時、嫌々店内に訪れてはさっさとはぐらかして去ろうとするも相手の姿を見た瞬間、ピタリと動きを止め何故女体なのか考える前に大股でそちらに近付き相手のスカートに忍ばせようとしていた男の手を掴み上げて。
『何、君。この子の彼氏?』
「…嫌がってるだろ。やめろよ」
(暗く憎悪を含んだ瞳で男を睨みつけ掴んだ手首を締め上げたところ後ろから男子学生にドンと背中を押され。
『何々露木はその子が良いの?超可愛いじゃん。今日来てるモデルの中でダントツじゃね?』
『僕が最初に目を付けたんだよ』
(男が痛む手首をさすりながら不機嫌そうに言うも男子学生達は聞く耳を持たず『良いじゃないですか。みんなで仲良く遊びましょうよ』と男に相手を無理矢理裏口から出させた後、四人掛かり自分を取り押さえそのままホテルに連行して。
(強引にホテルの一室に連れ込まれては既に相手はベッドに放り投げられ男に組み伏せられており「やめろ!!!」と叫ぶが男は口角を上げ見せつけるように相手の身体に触れ。
どんどん進められていく行為に何とか男子学生達の拘束を解こうと暴れては一人がケタケタと笑いを零し。
『そうがっつくなよ。ちゃんとお前にも遊ばせてやるからさ。どうせ男ばっかで女とは遊んでないんだろ?俺達が遊び方教えてやるよ』
(含み笑いを零し相手を弄んでいた男がベッドから退いたかと思えば強引に相手に覆い被させられ『さっさとやれよ。お前がやらないなら俺達がやるけど?』と。
怯えの見える相手を見下したまま動けずにいると学生の一人が舌打ちし『まさか本気で女抱けないのか?…つーか早くしないとあの女(真希)に手ぇ出すけど?』と煽られる。
こんな形で相手を辱めるなど出来ない。
だが自分がやらなければ確実に男達が相手に手を出し彼女まで巻き込んでしまう。
この男達に相手を侮辱されるくらいなら自分が……そんな最低の考えが過っては優しく相手の髪を撫でてそっと耳元に口付け。
「………御免な。…やっぱり俺が傍にいるとあんたに迷惑掛ける……。……嫌だろうけど我慢して……」
(御免、と謝り男達の厭らしい視線が集まる中なるべく相手に負担がかからぬよう優しく抱き締めて。
事が終わると男子学生達は『なんだ、できんじゃん』と嘲笑い、別の女を探してくると出て行ってしまうも美容師の男は相手を諦めておらずぐったりする相手を引き寄せ『ねえこんな最低な男より僕のがいいでしょ?これから僕の家に来ない?』と髪を撫で。
そんな事を見過ごせるはずが無く身勝手に怒っては男の手を弾き相手の身体を抱き抱えると浴室に駆け込み直ぐに内鍵を掛ける。
ここで男に戻してしまえばと思うが持ち合わせの服では外に出る時困る。
扉の外で騒ぐ男を無視して携帯で若頭に助けを呼んだあと、相手に自分の上着を被せ安心させる為髪を撫でようとするも自分では逆効果だと手を引っ込め。
「…本当に御免な。俺なんかが居るからあんたにこんな迷惑かけて……、あんたをこんな傷つけるなら会わないほうが良かった…」
(壁により掛かるようにして座り俯いてはつい悲観的な本音を零して。
>露木
( 男に無理矢理連れて来られたホテルにて、相手の前で醜態は御免だと必死に抵抗するもその抵抗すら虚しく組み伏せられて。
しかし男子学生達が相手に促し自分の上に来た途端、僅かに怯えや震えは遠のいたが女の身での経験は無い為恐怖は消える事無く。
激しい痛みの中、それでも相手だという事がありその気遣いから気を失う程までにはならず。
行為後の浴室にて、重い身体のまま相手を見詰めては“会わない方が良かった”という言葉に胸を痛める。
ゆっくりと相手に手を伸ばし身体を引き摺っては相手にギュッと抱き着き「もう良い、分かった」と小さく呟いて。
緩く笑みを浮かべ「これで最後にする、…女の俺なら姿容姿も違うし良いだろ??………後は、…忘れて良いから。………ごめん、あんたの事好きだ」と相手を抱き締めては何度も何度も口付けて。
( その後、若頭が訪れ珍しく謝罪をされては“別に平気だ”とだけ述べ能力を無理矢理解いて貰って。
さっさと寮へと戻った所、青年が玄関の前に座ってるのに気付き部屋に入れてはコーヒーを手渡して。
何となく青年を壁に押え付け、先日彼女にした様に半減して能力を解放するも青年は怯える事無く自分の頬に触れて来て。
『俺は怖がったりしないよ、真希さんとは違うの』
「………本当は怖いんじゃ」
『怖くないって、兄さん悲観的になり過ぎ』
「………そっか」
( 表情を緩め青年の頭にポン、と手を乗せては「ありがと、…結構嬉しい」と言って。
自分が傷付く度に相手は相手自身を責め続ける、そんなのは嫌でやはり相手の言う通りに距離を置こうと。
距離を置きながら相手を勝手に思い続けて居ようと考えては小さく息を付いて。
>桐崎
(心身共に辛い筈なのに無理に微笑む相手を見ては、こんな顔をさせている自分が酷く憎くて、抱き締めたいのに罪悪感に支配され怖気づいてしまっては何も言えないまま相手と別れ。
(相手とまともに顔を合わせないまま自室に戻り扉を閉じたところ直ぐに兄が訪れ突如両肩を掴まれては鋭く睨まれて。
『ねえどういうつもりなの?繿から聞いたんでしょ?真希ちゃんとは別れたって。……繿から好きって言われたんじゃないの?』
「……言われたよ」
『じゃあ何でさ!!?なんでまだややこしいことになってんの?』
「…俺といると迷惑掛けるから…。一緒に居ると彼奴が不幸になる…」
『…誰かにそう言われたの?』
(その問いに“お前なんかがいるから…”と幼少期言われた言葉が過り微かに唇を噛んで両肩に置かれる手を払って。
「あんたも俺から離れろよ。……知ってるんだ。あんたも俺が傍にいるせいで嫌がらせされてること……。赤城も…、悪く言われてるの聞いた…“どうせ彼奴等も遊人だろ”って」
『そんなの言わせておけばいいよ。事実は俺達が良く知ってる』
「……事実、か。………俺が汚れてるってことだろ?」
『違ッ…何でそうなるのさ!!何回違うって言われれば気が済むの!?』
「煩いな!!!あんたしつこいんだよ。今辛いのはあんたの弟だろ?俺に構ってる暇があったら彼奴の傍にいてやれよ!!…もう出てけ!!」
(感情を顕に身勝手に怒鳴りつけては力尽くで部屋の外に押し出しバタンと扉を閉ざすとその場にズルズルと座り込んで。
完全に八つ当たり。どれだけ餓鬼なんだと自分自身を殴ってやりたくなるも、自信を失い自棄になっている今周囲の気遣いを受け入れる余裕はなくなっていて。
兄や青年、なにより相手にとっても此れがいいのだと無理に思うようにしては、大学は休みだし暫く寮を離れようと数年前世話になった剣道道場の師範の元に身を寄せることにして。
(翌日朝早くまとめた荷物を手に寮を離れては電車ですぐの稽古場を訪ねると師範に快く迎え入れられ。
『いやぁ、驚いたよ。急に暫く泊めて欲しいなんて言うからなぁ。ま、その分みっちり働けよ!家事と指導は手伝って貰うぞー』
「勿論です。お世話になります」
(小さく微笑み頭を下げては部屋に上がらせてもらい懐かしい畳の臭いに目を細め竹刀などの手入れに取り掛かるも相手の事が気にかかり何度も手が止まっていて。
>露木
( 翌朝、相手が寮を開けてる事も知らずに自室にてのんびりと過ごしていれば突如電話がなり、誰だろうと疑問を持ちながら電話に出る。
電話の相手はどうやら自分の叔父、先祖に関してをよく知り家宝である“霧ヶ暮爛”とやらの私物を大切にしてる印象しか無く久々に会おうと言う事で。
最後に会ったのは小学校高学年くらいだっただろうか、懐かしさから二つ返事で行くと告げてはさっさと準備に取り掛かり。
( 夜、漸く到着しては最後に見た時より年を取った叔父と落ち合い古くからの大きな家に案内されて。
大きく変わった身長差に叔父は苦笑を漏らしつつ部屋に通されては色々な事を聞かれて。
『繿、勉強はしっかりやってるか??』
「まぁまぁ、それなりにやってるよ」
『部活とかはしてるのか??』
「バイトしてるから帰宅部」
( 大袈裟な相槌を打つ叔父に『お前ぐらいの年だからな、恋人は居るのか??』と聞かれてはふと表情を固めるも相手には片思いを続けると決めたばかり。
「恋人は居ないけど好きな奴はいる」とはっきり告げれは『頑張れよ』と背中を叩かれて。
明後日くらいには帰ろうと予定を立てつつ、そう言えば青年に黙ったまま来てしまったなと。
しつこいメールと着信にやっと出ては『兄さん今どこいるの!!!』と煩い声に眉を寄せる。
「今さ、子供の頃世話になった叔父の家にいんだ」
『え‐…!!!…そうなんだ…』
「お前も来るか??どうせ叔父さんの性格だし歓迎されると思うけど」
『え!!!良いの??!!行く!!!』
「分かった、兎に角煩い。んじゃあ明日駅でな」
( 騒ぐ青年との電話をブツリと切っては早速叔父に友人が来る事を告げる。
賑やかなのが好きな叔父は笑顔で頷き『明日の夕食はご馳走にしなきゃな』と。
どうせ青年の事だし早い時間に来るだろうなと考えては明日の着替えを適当に出して置きさっさと布団に入っては相手からのメールが無い事に僅かに悲しくなったりしそのまま眠りに付いて。
( 翌日、元々朝は遅く起きてしまう性分の為のそのそと準備を初めては駅へと向かう。
その道沿いに剣道の道場が見えては小学生の時少しだけやったのを何となく思い出して。
子供達の声を耳にしながらさっさと歩き始めては駅へと訪れて。
>桐崎
(相手の叔父の家が道場の近所だとは知らず、子供達が稽古に励む様子を頬やましく見守っていると師範からお茶を差し出され。
『お前も随分腕が落ちたんじゃないか?』
「…当たり前ですよ。4年近くブランクありますから」
『………で、何を悩んでるんだ?』
「…え…、何でですか?」
(口元まで持っていった湯のみを下げて訝しげに師範を見ると、師範はニッと大らかに笑い。
『昨日から溜息ばかり吐いてる。………それにお前の祖先も何かあった時此処に転がり込んでたそうだ』
「……祖先?…初耳ですけど」
『…?一度話してなかったか?此処は江戸から続く道場でお前そっくりの青年が居候してたって。当時はよく簪の手入れをしてたって話だ。今でも裏の倉に保管してあるぞ』
「……“菊露草”……」
『あーそうそう。そんな名前だったな。なんだお前知ってるじゃないか』
(記憶は曖昧で自覚もないが以前過去の自分に憑依された時、頭の中に残った名前と僅かな“江戸の記憶”。
不思議な感覚に絆されていると師範に肩を叩かれ『この後倉の掃除がてら少し見てみるか?確か古い帳簿もあったから何か面白いことが分かるかもしれんぞ』と色めきたった声で言われその張り切りように苦笑しつつ少し気になったため小さく頷いて。
(古くからある倉、元々大雑把な師範の性格故にあまり掃除は行き届いていなく見せてくれると言った過去の自分の私物も大切だからと奥の奥の金庫に仕舞ってしまったらしく。
これは時間が掛かりそうだと短く髪を縛りバンダナとマスクを付けてはとりあえず手前の荷物の埃を落としながら倉の裏へと運んで。
其の頃、師範は友人である相手の叔父に電話で『久々に倉を開けるから来ないか?もしかしたらお前の大好きな骨董品が沢山あるぞ。それに“霧ヶ暮”のことももっと詳しく分かるかもしれん。…そうだ、ついでに掃除もするから若い手が欲しいな』と相手の事は知らないながら最後を特に強調して調子のいいことを言って。
>露木
( 叔父の家に戻るなり叔父は誰かと電話をしてる様で『分かった、直ぐに向かうよ。丁度良く今甥っ子とその友達が来てるからな』と言っては電話を置いて。
青年が笑顔で挨拶をするのに微笑みながら赤髪をわしゃわしゃと撫で回しては『これからな、お前の先祖と恋仲だった男の骨董品を開くそうだ。お前も気になるだろう??手伝ってくれないか』と。
赤髪の青年はきょとんとしながらも『俺も行きたい!!!』と述べては掃除用具片手にジャージ姿で道場へと向かって。
( 叔父の軽トラックで道場へと訪れては、出迎えてくれた師範の者に挨拶をする。
倉へと連れられては入口の前に居る相手に一瞬驚くもそれを伺わせない様に「よ、奇遇だな」と素っ気無く告げ青年に渡されたマスクを付けて。
埃を払いながら重たい置物などを退かして行き、思ったよりも力の無い青年を気遣っては「良いよ、持つから」と奪う様に青年の手にある置物を受け取って。
『お、合ったぞ。ほら、見てみろ』
( 叔父と師範の言葉にそちらに駆け寄っては僅かに劣化してるものの見るからに上等な簪があり。
相手に送ったストラップと何処と無く似てるそれをぼんやりと見詰めては今更相手に返されたのだという勘違いを続けて。
『帳簿も確か………合った合った、これだ』
( いかにも昔らしさを感じる帳簿を取り出した途端バサリと埃が舞っては短く席をし。
叔父と師範が慣れた手付きで解読を試みてる中、頭の中はストラップの事で埋まってしまい。
自分の行動が重かったのだと言い聞かせては簪をぼんやりと見詰めていて。
>桐崎
(訪れた相手を気にしないようにするも青年と親しげに話すのを見ては自分もあれだけ素直になれたらと身勝手に嫉妬して相手に背を向けるようにする。
しかし簪が出てきては引けられるよう相手の横に並び大事に保管されていた簪を見詰め、自分は何故相手から貰ったストラップをもっと大切にしなかったのかと後悔が押し寄せ「……諦めずに探せばよかった…」と無意識に声に漏らしていて。
その時、帳簿を解読したらしい叔父と師範が何故かニヤケ顔で相手に近付いて来て、帳簿に挟んであったらしい過去の相手の写真を見せて。
『お前さんそっくりで男前だろう?いやぁここまで写真が綺麗に残ってるなんてお前の先祖の恋人さんは相当大事に持ってたんだな』
『にしてもこの帳簿は時間も場所もかなり事細かに事情が書かれてるな。やっぱり彼の能力が関係してるのか』
『でも途中から殆ど“霧ヶ暮爛”のことしか書かれてないけどな。“彼(相手)との時間を忘れたくないからもう能力は使わない”とよ。この一冊だけでも心底恋人を愛してたのが分かるね。羨ましい限りだよ』
(叔父と師範は自分たちそっちのけで話に盛り上がりそのまま長々としゃべり出しては話の流れで叔父の家で夕食をご馳走になることなり。
(夜、とても断れる雰囲気ではなく相手の叔父の家で夕食を頂くも相手の事が気になり味わう余裕がなく何度も相手をチラチラと見てしまい。
その間、相手の叔父と師範は酒を飲み交わしながら飽きること無く過去の自分たちのことをしゃべり続けついには師範が酔いつぶれては動けない状況になって。
『ははは、全く仕方ない人だな。…露木君、今日は友達も来てることだし此処に泊まって行きな。この人こうなると明日まで起きないから』
「……いや、でも……」
(相手がいる…、そう思うも酔いつぶれた師範を放っぽっては迷惑が掛かると泊めて貰うことにして夕食の片付けを手伝い一足先に風呂に入れさせて貰って。
(風呂あがり、借りた冬用の浴衣に袖を通し案内された畳部屋行くと相手と青年は入れ違いで風呂に入ったようで一人縁側に出ては手元の簪が入った箱に視線を落とす。
それは昼間倉から出てきた簪の一つで師範から“元々はお前の先祖の物だから”と渡されたもの。
自分なんかが持っていていいのかと謙遜しつつ持っているだけで温かな不思議な気持ちになれば脳裏に着物姿の“相手”の笑顔が浮かび。
自分も相手をまっすぐに愛し笑顔にすることが出来たらと切なげに月を見上げ、いつかの“自分”がしたように月に相手を重ね片手をそっと月に掲げて。
>露木
( 夜、風呂を終え眠そうな青年を寝かし付けた後に何となく部屋の隅に腰を下ろしては昼間叔父と師範に言われた言葉を思い出す。
見せられた写真は驚く程に自分と瓜二つ、何十年も前の物なのにああも綺麗に大切に保管してくれてたのだと思うと不思議な感覚になって。
ポケットからストラップを取り出し、ちぎれてた付け根を新しい物に変えては月に翳し苦笑して。
今日だって相手が自分を避けてたのは何と無く気付いてた、それでも表情を崩さない様に心掛けた。
以前過去の相手が現代の相手に憑依した時に言われた言葉を思い出しては薄く瞳を閉じる。
「もう少し…ちゃんと話せたらな。………素直に…」
( ボソリと呟きのそのそと青年の隣の布団に潜り込んでは中々寝付けないままに空を見上げていて。
( 翌朝顔を洗おうと洗面所に来た所、先に洗面所に居た相手とばったり出会してはさっさと出て行かれる前にと道を塞ぎ「……………おはよ」とぎこちない表情で微笑んで。
ストラップの事を切り出そうとするも相手に突き返されたのに流石にしつこいかと思っては道を開けて。
部屋に置きっぱなしのストラップが悲しく思えてはあまり深く考えない様にして。
( 部屋に戻り師範に頭痛薬を渡してやっては自分も準備を済ませ青年と共に朝食の席に付いて。
青年が無邪気に『凄かったですよね昨日の写真、兄さんそっくりで‐』と言うのをぼんやりと聞いていて。
ふと相手と目が合っては何か言おうと口を開くも考え込んだまま出て来る事は無く。
>桐崎
(朝から相手と気まずい空気になり何か言わねばと思うもやはり自分なんかが…と自信が持てず、結局なにも話せないまま朝食を終え片付けを手伝っては居間で休む師範の元へ行き昨日渡された簪を返して。
「…此れは俺が持つ資格ないので…。倉で大切に保管した方が良いと思います」
『…そうか?お前が言うなら構わんが。……』
(戸惑う師範が何か言い掛けた時、相手の叔父がストラップを手に居間に訪れて。
『これ、部屋に置き忘れてたみたいだけど露木君か赤城君の?…それとも繿のか?』
(声がした方に目を向けストラップを見た瞬間小さく目を瞬かせては相手よりも早く叔父の元に駆け寄り半ば奪うようにストラップを取り。
あの夜、男性学生に捨てられ一晩中探しても見つからなかったものが何故こんな所にあるのか。
動揺と期待、悲しみと嬉しさが入り混じり微かに手が震えるもよくよく見ると千切れた筈の付け根は見慣れない物で。
なんだ別物かと馬鹿な勘違いし一瞬にしてどん底に落とされたような気持ちになれば叔父に返して「……すみません。見間違えでした」と俯いて謝り。
『え……、本当に?…なんかすごい勢いだったけど』
「……少し前に似たようなのを無くしてしまって…、大切にしていたので…つい取り乱しました」
(再度謝るも同じ部屋に相手がいたことを思い出してはハッとなり口元を押さえる。
“大切にしていた”なんて突き放しておいて未練がましいこと知れたら何を思われるか…。
「あ……、えっとお世話になったので部屋の掃除させてください」
(慌てて笑顔を取り繕っては居間を立ち去り寝泊まりした部屋に向かって。
(一人部屋の掃除をしてはどうしてこうも女々しいのかと溜息を吐く。
すると其処へ相手の叔父が自分の様子を心配しにやってきて気分転換に家宝を見てみないかと。
迷惑ではないかと思ったが過去の相手がなんとなく気になり頷いては外にある大きな倉に案内してもらい色々見せて貰って。
いつの時代も相手はやっぱり恰好良いと少し穏やかな気持ちになっているところ急にバタンと入口の重たい扉が閉ざされ真っ暗になる。
その時丁度相手の叔父は倉の外に居たため中には自分一人で、それでも特に慌てることなく扉に手をかけるも何故か全く空く気配がなくあれと冷や汗がつたい何度か開けようと試みていて。
(その頃、外では扉を閉じてしまった犯人、師範が相手の叔父にこっぴどく叱られており。
『お前なにしてるんだよ。この扉は留め具をしないと開けられなくなるから気をつけろとあれほど注意しただろ!』
『いやぁ、まさか中に人がいるとは思わなくてさぁ』
『全く…。……しかし弱ったなぁ。一応内鍵が倉の中にあるんだけど身内以外に場所を教えるなって言われてるし…倉の中は防音で声も携帯も通じないんだよ』
『……ど、どうするんだ?』
『……一つだけ方法が。倉の上に小さな窓があるだろ?あそこにはしご引っ掛けて中に入れればいいんだが………、倉の中に下りる時がな…相当運動神経がよくないと足がボッキリと…』
『…そ、それはお前には無理だな。で…お前以外のここに居る身内って…』
(叔父達の視線が相手に向けられるも『流石に大切な甥っ子を怪我させる訳には…』と叔父は首を横に振って。
>露木
( 叔父が持って来たストラップにサッと青ざめてはさっさと受け取ろとするがそれよりも早く相手が駆け出すのに疑問を持って。
相手が口にした言葉に僅かな期待を抱いてしまうも“叔父の手前、自分に気を使ってくれたのだろうか”と考えてしまっては「それ、俺のだよ」と叔父からストラップを受け取って。
( 相手が倉の中を案内されてる頃、自分は部屋で青年と他愛も無い話をしてたのだが倉の扉が閉じた大きな音に気付いては直ぐに叔父達の元へと向かって。
相手が閉じ込められた事と身内以外鍵の在処を知れない事を一通り話されては迷う事も無く「俺が行く」と名乗り出て。
大切な存在を助け出す事に躊躇する筈も無く、高い位置にある窓に梯を掛けては下で叔父達が支えてくれてる事を確認しさっさと段を登って。
埃臭い窓を引き相手が居るのを確認しては「今行くから」と何気無い様子で言って。
かなり高い位置、しかも大切な骨董品が納められた所に派手に飛び降りる訳にも行かず暫し無表情で考え込んでは能力を半減して解放させて。
何とか上手く着地し、狼故の脚力の為負担も無ければ安堵の息を付き鍵の在処を探して。
一番奥に合った小箱の中から漸く鍵を見付けては早く開けなければと思うも相手と二人だけの状況に抑えが効かなくなってしまって。
一歩一歩と相手に近寄っては相手を挟んだ両腕を壁に付きいつか相手が自分に言った事を言って。
「遊びなら良いんだろ??…ちゃんと金出すから、…あんたに触れさせて欲しい」
( 自分でも何を言ってるか理解出来てないまま相手の唇を奪っては服の中に手を入れ相手の背中の素肌に触れ首筋に痕を残しては「……………好きだ、愛してる」と無意識の内に囁いてしまって。
しかしハッと正気に戻っては外で叔父や師範や青年が待ってる事を思い出しては相手から身を離す。
偶々ポケットに合った千円札を数枚取り出し相手のポケットに無理矢理押し込んでは「いきなりごめん、………今の無しにしてくれ」と小さく呟きさっさと鍵を開け。
師範と叔父が相手に謝る中、スタスタと青年の元へと向かっては虚しさを隠す様に「おい、コンビニ行こ。…何か奢ってやっから」と告げ近くのコンビニへと向かって。
>桐崎
(颯爽と現れた相手に見惚れては近付く距離に性懲りもなく胸が高鳴り、抑えていた理性などすぐに吹っ飛び此方からも唇を奪う。
“愛してる”と言われ思わず“俺も…”と言いそうになるが正気に戻ったように金をポケットに押し込まれては夢から覚めたような気持ちになる。
それと共に今まで無理強いされ金を投げ渡してきた男達の姿がフラッシュバックしては相手からも“お前は汚れてる”と言われている感覚に陥り歯がカタカタと鳴る。
自分は以前同じようなことをして相手を傷つけた。
きっとその仕返しで“愛してる”というのも嘘なんだと、ショックから悲観的になっては青年とコンビニに向かう相手を止めることなく、叔父達の話しもまともに耳に入らない状態でフラフラと室内へと戻り。
(相手と青年が居た部屋に来ては相手の荷物を暗い瞳で見下しポケットから押し込まれた千円札数枚を取り出すとビリビリに破って相手の荷物の上に投げ捨てる。
子供染みた行いだと自覚はあったが、相手にだけは金を渡されたくなかった。
自分にとって金を渡される行為は“遊び人の身売り”だと言われているようなもの。
相手の気も知らないで自分勝手に傷付いては、相手を愛する気持ちに無理矢理フタをして。
心配する叔父に何でもないと笑顔を浮かべ世話になった礼を述べては、昼食の手伝いだけして剣道の稽古の準備をしたいからと相手と鉢合わせないように師範と共に道場に戻って。
あとすこしすれば子供達が来て稽古に打ち込める。
そうすれば少しは相手の事を考えなくて済むと思いながらも頭の中は倉での相手に言われた“愛してる”の言葉でいっぱいになっていて。
(その頃、コンビニでは様子のおかしい相手を青年が気にかけ『なにかあったの?』と心配していて。
明るい話題にしようと『兄さん、見てみて新製品のプリンが出てるよ。俺これがいいなぁ、二人で分けっこしようよ。おなじスプーンで』と相手の腕を引きはしゃいでいて。
>露木
( 青年の笑顔に無理矢理こちらも笑顔を取り繕っては
適当な菓子やデザート類を買い叔父の家へと戻る。
相手と師範は既に道場に帰ってしまった様で叔父が自分達の帰りに気付いては『明日帰るんだろ??今日はのんびりして行け』と言われて。
少しでも荷物を纏めようと思ってた所、自分の荷物の上に散らばる千円札の残骸が目に入っては自分からの金など受け取りたくも無かったのかと。
自分の行為が相手を傷付けただなんて知らずにどんどんと嫌われる恐怖を感じては無意識の間に眉を寄せ唇を噛み締めていて。
青年が部屋に来る前にさっさと片し、ストラップをぼんやりと見詰めては虚しさが襲い掛かって来て。
( その夜、色々な事を考えてる内にまた胸が苦しくなりコントロールが上手く効かないまま能力が解放されそうになってはそれを防ぐ様に身悶える。
ふと窓ガラスに写った自分を改めて見詰めては彼女が怖がるのも無理無いなと納得して。
呼吸を乱し苦しそうに服をグッと掴んではぼんやりと目前に浮かんだ人の姿に眉を寄せる。
自分と瓜二つの顔に真黒な着物、それは今日相手の帳簿から出て来た写真に見た“霧ヶ暮爛”の姿で。
幻覚でも見てるのかとも思ったが今は能力を耐える苦しさからまともな判断が出来ず。
『何してるんだ、あんたの気持ちが落ち着いて無いから能力が解放されそうになんだぜ』
「ど…したら、」
『さぁな、あんたが苦しもうが関係無いが…露草の子孫を苦しめるのは許さねぇぞ』
「……………露、草…って」
『息、切れてる。ゆっくり深呼吸しろ』
( 言う通りにしながら手を伸ばすも触れる事は無く代わりに『あいつの気持ちを考えろ、………全くあいつはいつの時代でもあぁだな』と無表情を薄く緩めては消えてしまって。
今のはこの苦しさが見せた幻覚なのだろうかと疑ったが落ち着いた身体をズルズル引き摺っては「もう遅いよ、嫌われてんだっつの」と小さく呟いて。
( 青年が部屋に戻って来るも気付かない振りをしなが
ら煙草を咥える。
ふうっと煙を吐き出しながら縁側に座ってた所、後ろから青年が張り付くのを感じては引き剥がして。
『兄さん兄さんどうしたの‐』
「別に何でもないけど抱き着くな」
『え‐なんで』
「…………」
『あはは、大丈夫だよ。俺別に何も怖くないし』
( 慰める様に言って来た青年の言葉にピクリと反応してはそのままぼんやりと縁側を見詰めていて。
人付き合いが苦手だった自分に絡んでくれる青年にはそれとなく感謝しながら煙草を灰皿に押し付け青年に向かい直れば寂しさを埋める様に抱き締める。
数秒間そうして居たが何も無かったかの様に身を離しては青年を見詰め「そろそろ夕飯行くか、叔父さん一人だと大変だろうしな」と。
>桐崎
(夜、相手達が食事を取る頃、叔父の倉に怪しい影がいくつか忍び寄っていて梯とロープを駆使して大胆ながら鮮やかな動きで倉内に侵入しては家宝である白刀を盗み出していて。
江戸でも珍しかった相手の刀。現代でも大金目当てに狙う者達がおり、男達の中の一人は商人の家系で偶々先祖が残した記録から白刀について知り今回窃盗を働いたようで。
男達は白刀を布で包みゴルフバッグに入れると痕跡を残すこと無くその場から姿を眩ませ。
(その頃、自分は師範の晩酌酒が切れてしまったため一人街に来ていて、日本酒とツマミを購入すると夜も遅いためさっさと帰ろうと足を急がせる。
が、ふと路地裏からやや興奮気味の男達の声が聞こえてきては何となく胸騒ぎがして足を止め。
『まさかこうも簡単に手に入るとはな、あそこまで防犯が手薄だとは思わなかったぜ』
『…江戸時代の銘刀か。白刀なんてそうそう無い。うん十億はくだらないぞ』
『さっさとバレる前に密輸して金に変えちまおうぜ!』
(目をギラギラさせ路地奥へと進んでいく男達の言葉にすぐ叔父に見せて貰った家宝が脳裏を過っては警察を呼ばねばと思うも、叔父はあの倉を警察に捜査されたくないだろうと思いとどまる。
せめて相手か兄に応援をと思うが、相手とは気まずいし兄は突き放したばかり。
それに自分以外の誰かを危険に晒すわけには…と馬鹿な考えをしては一人で男達の後をつける。
(男達は堂々と表からゴルフの打ちっ放しの施設に入っていくと立入禁止の階段を下り地下駐車場に来たところで刀の入ったゴルフバックを下ろす。
直感であの中に刀があると憶測するも果たしてどう奪えばいいのか。
流石に強行突破は無理だと思うも三人のうち二人が気の緩みからかトイレに行くと言い出して。
今ゴルフバックの傍にいるのは一人だけ。
チャンスは今しかないと恐怖を拭い捨て唯一の武器である酒瓶を手に男に突進しては続けざまに足の腱を思いっ切り蹴る。
男がうずくまって身悶えている隙に酒瓶を投げ捨てゴルフバック背負うと刀以外にクラブも入っているのか意外と重く一瞬身体が傾くが、すぐに体勢を立て直し他の二人が戻って来る前に人通りの多い上階へ上がろうとして。
>露木
( 相手がゴルフバックを抱え階段を登ろうとした時、二人がトイレから戻って来ては凄い形相で相手を追い掛け頭を思い切り殴り付けて。
『何してんだこの糞餓鬼が!!!…もう良い、こいつも連れて行け』
( 一人の男が相手を軽々と抱えては裏口から外に出て用意してた大きな車のトランクに相手を放り入れさっさと車を走らせて。
廃倉庫に到着するなり相手を拘束してはゴルフバックを取り上げ前髪をグッと掴み上げて。
『誰の命令でやったんだよ、それともお前の独断か??さっさと答えろ』
( 答えない相手に苛立ちを見せ再度顔を殴り付け様とした所、一人の男が相手の顎を掴みこちらに向かせ『止めとけ、こいつ女みてぇに綺麗な顔してんじゃん。俺こいつなら出来っかも』と口角を上げ。
近くにあったマットを引き摺りその上に相手を乱暴に寝かせては三人掛かりで押え付けて。
『あんま叫ばせんなよ、人来られると面倒だし』
( 一人が相手の脅しの材料にするが為に撮影を初めてはカメラを良く見える位置に置き、相手の髪を撫でてはクスクスと笑みを深めて。
( 数時間後、ぐったりする相手の首筋を舐め上げては一人の男がふと思い出した様に『そういえば俺桐崎と中学一緒だったわ、あいついっつも怪我しててさ‐』と話始めて。
『あいつが先祖の血を色濃く継いでるんだっけ??』
『へぇ、継いでるってもどんなんなの??』
『いや俺も知らんけど。まぁいいや、それとなく近付いてあいつの能力も利用しようぜ。俺あいつが中学だった時のネタめっちゃあるし』
( ゲラゲラと笑みを浮かべては相手に家宝である刀を簡単に手渡し『ほら、お前が身体売ってまで取り返したかった刀。返してやるよ、これからただで済むと思うなよ』と相手の耳元で囁いて。
『兎に角明日桐崎ここに呼んで来い、出来なかったらこの動画バラ巻くから。お前ら知り合いなんだろ??』
( 相手の目前に先程の動画を流しながら『それにしてもお前割と慣れてたな、もしかしてこういう事大好きなんじゃねぇの??…あ、仕事だったりして』と。
>桐崎
(気怠さの中無感情で居たが男達の口から相手の名前が出た瞬間ピクリと身体が震える。
相手がこの男達に利用されたらどうなるか…考えるだけで背筋が冷えるも、動画を流されれば妹や母が世間から好奇の目を向けられることになる。
やっと父の横領事件のほとぼりが冷めてきたのに自分のせいで妹や母に辛い思いをさせるなどあってはならない。
かと言って相手を売りに出せる筈もなく…。
板挟みの状況で見せられる醜い自分の姿に段々頭が可笑しくなってきてはクスクスと笑いを零し。
男達は突然笑い出す自分を気味悪がり『…なんだよ此奴。気違いか。……まあ良い、明日絶対に桐崎を連れてこいよ』と勝手にアドレスを登録して去っていき。
暫くして暗い瞳のまま起き上がっては衣服もあまり整えないままフラフラと街に出る。
周囲への迷惑を考えると道場にも叔父の家にも行ける筈がなく、少し考えて適当に服を買った後ネットカフェに行きシャワーを浴びて着替えを済ませ。
その後、狭い個室に入ってはゴルフバッグから刀を取り出し一枚写真を撮って《返して欲しかったら明日此処に来い》と地下駐車場の住所と刀の写真を添付して相手にメールを送り付け。
何がしたいのか自分でも分からない。
ただ家族を優先し相手を危険に晒す選択肢しかないのなら、とことん憎まれてしまえと。
完全に正常な判断を見失い自虐的思考に走るも胸の痛みは言い知れず、座ったまま刀を胸に抱いては身を縮こまらせ「……繿…」と空虚に名を呼んで。
そうしていると少しだけ楽になれる気がして刀に頬を寄せるようにしては無意識に涙を流しゆっくりと眠りに落ちて。
其の頃、師範はちっとも戻らない自分を心配して叔父に『菊が帰らんのだが知らないか?』と電話していて。
(翌日、座った状態で目を覚まし過度なストレスからくる吐き気を堪えながら支度をしては、朝から大量に来る男達からの脅しメールに《あんた達のこと気に入ったからたっぷり遊んでやるし金ならいくらでも稼いでやるよ。その代わり桐崎を必要以上に傷つけるな》と返信してネットカフェを出る。
相手には必要最低限の被害しか掛けさせないと、身勝手な考えのもと地下駐車場へ向かって。
>露木
( 相手が戻らないと言う電話に居ても立っても居られず叔父の家を出ては相手を探す。
駅やら街やらを駆け巡っても相手の姿は無く、小さく舌打ちをしたその時相手からのメールに気付いてはポケットから携帯を取って。
その内容に驚き、いつ相手が刀を盗ったのかと気になったがそんな事を考える余裕は無く。
正直家宝だなんて自分に取ってはどうでも良いが世話になった叔父を悲しませるのは後免だと。
( 指定の時間より早目に駐車場に着くも相手の姿は無く代わりに三人の男達に囲まれては眉を顰める。
よく見ればその中の一人は自分と同じ中学の先輩、また碌でもない事に巻き込まれるのかと。
『よ、久し振りだね‐。てかお前生きてたんだ』
「何の用で呼んだんすか」
『相変わらずムカつく顔してんのね。いやさ‐、お前中学の時に同学年の奴から化物呼ばわりされてたじゃん??真希ちゃんだっけ??お前の元カノ、あの子にも前に聞いた事合ったんだけど血相変えて逃げられてさ』
「さっきから何言いたいのか分かんないんすけど」
『俺等にも見せてよ、その化物の力。…お前の両親よりも上手く使ってやるから』
( 男との距離が一歩縮まった所で相手が訪れてはまさか相手と男達はグルなのかと勘違いして。
信じられないと思うも男達は慣れ親しい様子で相手と話しており。
「……………俺は………化物なんかじゃ」
『“人間”のフリすんの止めとけって。真希ちゃん可哀想にな‐…付き合ってた男が化物とかずっと騙されてじゃんか』
『早く見せろって、能力とやらを』
( 中学の時の事が頭をグルグルと駆け巡り呼吸を乱しながら地面を睨み付ける。
だがこの状況でもまだ相手を思い続けてる自分がおり、もし男達に逆らったら相手が何かされるんじゃないかと、相手はただ男達に言いくるめられてるだけなのではないかと言う都合の良い考えが浮かんでは素直に男達の言う事に従って。
しかし中々思う様に能力が解放出来ず、狼になりきれない無様な姿を晒してしまっては男達は距離を取り。
『うっわ、気持ち悪りぃ』
『これマジの奴じゃん』
( 男達の表情に蔑みを感じ取りわなわなと震える唇を噛んでは俯く。
相手が動く前に男は相手の腕をグッと掴むと『お前余計な事すんなよ。お前だってどうせ男好きの身売だろうが、見世物のこいつと何ら変わりねぇんだよ』と耳打ちし相手の行動を阻止して。
ぼんやりとした頭の中、駐車場に止まってた車の窓ガラスに写った自分に目が行ってはその気色悪さから狂った様な笑みさえ浮かんで。
>桐崎
(男達に侮辱されて苦しそうにする相手に、胸がズキリと痛みやはり相手が傷付くなど耐えられないと男達を殴りかかりそうになるも耳元で言われた言葉に動きを止める。
汚れきった自分がまっすぐで綺麗な相手と同じなどと……。
あり得ない。
何故自分なんかのせいで相手があんなにも辛そうにして腐りきった男達の言いなりにならなければならないのか。
限界寸前だった精神が音を立てて崩れていき、くしゃりと額を押さえてクツクツと狂気じみた笑いを零すも、ピタリと動きを止めるとゆっくりと相手に向き冷ややかな視線を向けて。
「……あーあ、ほんと鬱陶しい。……目障りなんだよ、あんた」
(僅かに首を傾け冷嘲しては靴先が触れ合うほどの距離まで歩み寄り、布で包まれた白刀で相手の頬を突くように撫で。
「“化物なんかじゃない”って?…自分の姿をよく見てみろ。どう見ても人じゃない…“化物”だろ。それはあんたが一番分かってるんじゃないか?」
(空いた手で相手の銀髪を撫で上げ紅い瞳の目元に指を伝わすと最後に牙に触れ、どれも人外だと言うように口元に怪しく弧を描いて。
「なんかもう飽きたんだよ。……あんた人が良いからさ、能力がどんなものか物珍しさで近付いたけど別にそう対して面白みもないし、此れじゃほんとただの“化物”じゃないかって」
(思ってもないことを並べるも以前のように瞳が揺れることはなく、ただ笑みを浮かべて「あんたが傍に居ると俺の遊び相手が気色悪がって寄り付かなくなるからさ、もう俺に近付かないでくれるか?…俺のこと愛してるんだろ?願い、聞いてくれるよな」と小さく笑み相手の首筋に艶めかしく触れて。
そして突如刀を相手の胸に押し付け突き放しては階段下まで強引に押し出し「さっさと人の皮被って“人間”って言ってくれる優しいお友達(赤城)のところ行けよ」と最低な言葉を述べ男達の元へ向かうも思い出したように刀を仕舞うためのゴルフバッグを相手の足元に投げつけ。
それから相手に背を向け男達に近付いては一人の男の首に腕を絡めて甘えているように見せながら男にだけ聞こえるよう耳に口元を寄せ。
「……見てみろ。あいつ、能力を上手くコントロール出来ないんだよ。中途半端なのもその証拠だ。赤の他人のあんたらが下手に手を出せば大怪我じゃ済まないぞ。………これ以上彼奴を侮辱してもあんたらに特はない。………金なら俺が用意するから」
(男の腰を撫で上げ述べては、男は一瞬悩むも直ぐに頷き相手を見て『やっぱお前いらねぇわ。“化物”が傍に居たら空気悪くなるし』と下品に笑い自分を連れて車に乗り込もうと。
>露木
( 相手からの信じられない言葉に頭が真っ白になり、男達と共に車に乗ろうとする相手の腕を咄嗟に掴んでは僅かに濡れる瞳で相手を見詰めて。
男達に寄り添う姿は演技には見えずに、ただ自分は愛する相手の“願い”を聞き入れなければと思い込む様にしては「ごめんな………、今まで。もう、…あんたの邪魔しない。付き纏わないから」と言い腕を引かれ車に入れられる相手を見送って。
青年の所に行こうともどうせ青年もいつかは離れて行くのかもしれないと思うと足が動かず。
刀を片手に路地裏のみを通り子供の頃、叔父の家を抜け出し遊びに来てた森に入っては木の下でぼんやりと刀を見詰めていて。
真っ暗な携帯に写る恐ろしい自分の顔、スウッと“人の顔”に戻るのを見詰めては嘲笑して。
ふと無意識に刀を持つ手に力が入っては以前見た幻覚に襲われる。
着物姿の“自分”が目前に現れ自分の顎を軽く持ち上げては『解けきれて無いぞ、…牙』と。
「もうこんなの沢山だ、………あんたが俺の家系での第一の能力者だろ??………あんたの所為だ」
『俺の所為??ふざけんな、俺だって好きでこんなんになった訳じゃない』
「……………」
『帰らないのか』
「帰らねぇよ、…どうせ赤城だって………みんな………」
『こっちの俺は随分と弱虫な様だ』
( 頬杖を付きつまらなそうに言う男が消えて行くのをぼんやりと見詰めては溜息を付き。
意識を集中させ能力を解放しては布に包まれた刀を咥え森の奥の洞穴へと訪れて。
洞穴の一番奥にて身体を丸めては刀を包むようにし、少し疲れたと目を細めて。
( その頃、男達は相手の反応に気を良くして車の中にも関わらず相手の首筋に顔を埋めて。
思い出した様に『まさか中学の後輩があんなだったなんてびっくりしたわ』と小さく呟く。
ふざけて大袈裟に身震いしてはゲラゲラと笑みを浮かべ相手の衣服に手を入れ背中に指を這わしては『ま、お前がいるんなら後輩虐めもほどほどにしてやるよ』とどこか脅迫地味た言い方をして。
>桐崎
(相手が洞窟に訪れて暫く入口の草むらがガサリと揺れては兄が現れ無言で身を丸める狼姿の相手の隣に腰掛けては前を向いたまま相手は寝てるものとし『……やっぱり此処に居たか』と話しだして。
『…小さい頃はさ、家族で叔父さんの家来て何かある度に繿はここ来てたよね』
(幼少期を懐かしむように穏やかな声色で述べては相手の艶やかな毛並みがそろう頭をそっと撫でて。
『………俺さ、繿が羨ましかった。こんな事言ったら怒るかも知れないけど父さんや母さんに“見てもらえていいな”って妬んでた。……だから時々繿にいじわるしたりしたんだけど』
(一切自分に感心のない両親。気を引こうと色々したがいつも“空気”扱い。
学校でも“化物の兄”と無視され、時折自分はこの世に存在しないのではと錯覚したことすらあった。
しかし弟の相手だけは意地悪すると反応を見せてくれて其れが嬉しくてちょっかいをだしたり優しくしたりを繰り返し…、そんな事を思い出し兄はクスリと笑いを零すも俄に真面目な表情をして。
『…時々思うんだよね。なんで俺じゃなくて繿だったんだろうって。…だって普通能力って長男に受け継がれない?…もし俺だったら…繿はこんなに苦しまなくて済んだのに…』
(相手が暴力を振るわれる度に嫉妬すると同時に“代わって上げられたら”と運命を呪った。
『でもさ、繿がその能力を持つには意味があるんじゃないかな。何かは自分で考えてね。それは繿にしか分からないことだから。………それに俺は好きだよ。繿の髪も目も…』
(そこまで言ってブルッと大袈裟に身震いしては『わーー、なんか急に寒気がしてきた。叔父さんがお鍋用意してくれてるって言うし早く帰ろー』といつもの調子でふざけて相手に振り返っては『赤城が心配してたよ。何度も“兄さんがいない!”って電話されて大変だったんだから。………落ち着いたら早く来なよ』と言い残し先に洞窟を出て行って。
(その頃、自分は男達から一度解放されると以前店長に無理矢理引っ付けられた客達に片っ端に電話しては“金が欲しいから相手してほしい”と頼み、何十万か受け取るとすぐに男達の元に戻り金を渡して。
男達は卑しく金を数えながら自分を見ては『明日はもっと持って来い』と。
黙って頷く自分を男達は既に見ておらず『此れで明日桐崎誘ってどっか行こうぜ』
『え、でもあいつ学校あんじゃねぇの?』
『化物が学校行く必要あるかよ。…彼奴いびるの楽しんだよなぁ』
「……手は出さない、約束だろ」
『はぁ?別に一緒に遊んでやるだけだよ。化物の相手してやんだ。感謝されたいくらいだね』
(ケタケタ笑う男達を睨みつけるも「やり過ぎは…許さないからな」と言うことしか出来ず。
心の中で“誰か繿を守って…”“…助けて”と願い、それと共鳴するように白刀がカタカタを小さく音を鳴らしていて。
>露木
( 狸寝入りを決め込み兄が去って行った所でのそのそと上体を起こしては落ち着きを無くした様にそわそわとするも刀の異変を感じてはゆっくり人姿に戻り。
今回はすんなりと戻れたなと安堵してた所、確かこの刀は妖刀だったかと思い出しては気味悪くなり。
刀を取った所、自分の身体が自分の物では無い様な感覚になれば僅かな目眩が襲い掛かり。
“俺は何時でもあんたの中に居るから。露草を傷付ける様な子孫だなんて腹立つからな”
( 頭に直接声を掛けられる様な感覚にムッとしては「あいつは“露草”じゃねぇんだよ」と子供の様な屁理屈を言って。
“それでもあいつは露草の子孫だ。愛する恋人の子孫を傷付けるなんて自分の子孫でも許さない”
( 真っ直ぐな言葉に微妙な表情をしつつ“愛する恋人”だなんて恥ずかしい事を良く言えるなと。
結局深夜まで洞穴で塞ぎ込んでおり、朝方漸く叔父の家に戻っては部屋で眠る青年をぼんやりと見詰めて。
( 翌日、制服に着替えこのまま寮へ帰ろうとしてた所先日の男子学生からメールが来ては表情を沈めて。
どうやら相手の携帯から無理矢理アドレスを奪った様で内心暗くなりながら《今から行く》とメールをして。
断れば相手に何か有るのでは、とまたその様な考えになっては逆らえる筈も無く。
( 素直に待ち合わせ場所へと訪れては勿論の如く男に絡み付かれる相手もおり。
自分で呼んだにも関わらず来るなり蔑みの目を向けられては視線を地面に向けたまま無言で居て。
『お前金あんだろ??カラオケ行くからお前出せよ』
『化物が金掛けるモンなんて無ぇだろ??』
「…………………………」
『シカトとか調子乗ってんなよ、化物が人間様に逆らってんじゃねぇぞ』
「………」
( 軽く頬を殴られ財布から札紙を数枚取り出し男達に押し付けては「それやるから帰って良いか??」と。
しかし男達が素直に解放してくれる筈も無く渋々後に続くもこれでは嫌でも相手に近付いてしまうと。
見せ付ける様にも感じ取れる男の相手へのスキンシップに心のモヤモヤは膨らむも嫌がってる様には見えない相手の様子に胸を痛めて。
先程からの自分の表情が気に入らなかったのか、カラオケ店の地下駐車場に連れ込まれては壁にドンッと押され。
「………何」
『…お前さっきから何なんだよその顔。折角俺らが構ってやってんのによ』
( 背後に居た男が自分の背中を強く蹴り上げ、咄嗟に目前の男の隣に居た相手を押し倒す様な体制になってしまっては慌てて身を離そうと。
しかしお気に入りの相手に触れられた事に怒りを見せた男に前髪を掴まれては頬を殴られて。
『おいおい、俺のお気に入りの玩具に勝手に触ってんじゃねぇよ』
「……………悪かっ、」
『土下座しろよ』
( 冷ややかに言われては眉を寄せ唇を噛む。
男は態とらしい溜息を吐き、相手の耳元で『お前からも言えよ、動画バラ巻くかれたくないだろ??』と小さく耳打ちしては口角を上げて。
>桐崎
(耳元で囁かれた言葉にピクリと肩を揺らしては僅かに後退る。
相手にどれほど憎まれようと構わないが相手を傷つけたくはない。
しかしそんな我儘が通用する筈もなく動画の配信開始画面を見せられては微かに生唾を飲み込んで感情を消すと相手に歩み寄り殴れて張れる頬に手を添えて。
「なんで“馬鹿な”お誘いに乗って来ちゃってるの?こうなるって分かってたよな?侮辱されても“腐った”人間と一緒に居たかったか?それとも虐められるのが趣味とか?」
(さりげ無く男達への皮肉を交えつつ相手を愚弄しては小さく笑んで頬を撫で「どんなに俺達と居てもあんたは俺達とは“同じ”になれない。あんたは生まれた時から“違う”んだから」と人間か否かについて言っているように見せつつ、心の中では相手は腐った自分達と違って綺麗なのだからと思いを込めて。
それでも男達に悟られぬよう相手を強く突き放し尻餅を付かせては冷たく見下し。
「前にも言ったけどあんた目障りなんだよ。人間との仲良しごっこ期待して来てるならさっさと帰れ」
(冷淡に述べては相手に背を向けて男の腕に絡み「…もう彼奴は放っといて俺達だけで遊ぼう」と甘えるように述べカラオケの個室へ向かうも一人の男が突如身を返して『いや、やっぱし此奴も連れてくわ。“化物”も余興くらいには使えるだろ』と。
(薄暗いカラオケの個室、男は充分に座るスペースがあるにも関わらず相手を床に座らせては昼間から酒を飲み始める。
酔った男達は更に気性が荒くなると相手の髪を掴み上げ『また能力見せろよ』と命令し『酔わせたらもっと面白くなるんじゃねぇか?』と持参した強い酒の瓶口を相手の口にねじ込み無理矢理飲ませて。
『…つーか桐崎も結構いい顔してるよな。俺今気分良いから遊んでやるよ』
(男が厭らしく笑み相手の顎をもたげて服に手をかけてたところで、我慢の限界に達しては男を突き飛ばし相手の前に出ると男達を睨みつけるもハッとなっては目を横に逸し。
「……お、俺がいるだろ。……他の奴に手を出すなよ」
(声を震わせながら妬いたようにいうも一人の男の逆鱗に触れてしまったのか男は酔った勢いで空き瓶を振り上げ『うっせなぁ、今はお前に用はねえんだよ。引っ込んでろ』と勢いよく瓶を振り下げようと。
>露木
( 隠れた相手の気持ちなど知らずに視線をずっと落としたまま蔑む言葉を聞き流す。
余程自分と居たくないのか、相手がひたすら自分を帰そうとする本当の理由など気付かずに個室へと連れられては酒を煽る男達をぼんやりと見詰めて。
不意に強引に酒を飲まされ男達の表情が怪しくなれば衣服に掛かった手に咄嗟に抵抗する。
しかし相手が立ちはだかり男に嫉妬を見せたのに気付いては無性に悔しくなり唇を噛んで。
やはり相手は本当にこの男達が…と悲観的になってた所、そんな余裕すら与えないとでも言う様に相手に酒瓶が振り落とされるのが目に入り相手を思い切り押し退けてはギュッと身構える。
しかしまたあの身体が浮く様な感覚がしては「『悪酔いとは情けねぇな、…まぁこんなの刀傷よりはましか』」と無意識に呟いていて。
“自分”が乗り移ったのを感じ何とか身体を返して貰おうとするも『俺は言った筈だ、こいつを傷付ける奴は許さない』と直接頭に訴えられて。
ズカズカと相手に駆け寄り「『…今は…露草じゃなくて菊ってんだったな。危ない真似すんな』」と。
男達に向き直りコントロールのままならない自分とは桁違いな強い能力を発揮し、鋭い瞳で男達を睨んだ所で男達は腰を抜かしながらも逃げて行き。
去り際、相手に『お前は明日も来いよ!!!逃げられるとでも思うなよ!!!』と叫んで行って。
“自分”が相手に薄く微笑んだのと共に身体が戻ってはハッとした様に相手を見詰め「………悪い、近付かない約束だったのにな。……………ごめん」と呟き立ち上がっては個室を出ようと。
>桐崎
(相手の様子が明らかに変わりその凛々しい雰囲気に圧倒されては目を見開いたまま固まってしまう。
が、相手がフラフラと出て行くのが見えては思わずその腕を掴み椅子に押し付けると相手の銀髪を掻き見出し何度も深く口付けて。
漸く身を離し相手をぼんやり見詰めては、相手の頬に先程自分を庇ってついた切り傷を見付け、迷いなく顔を近づけると傷口から溢れる血をそっと舐め上げる。
血が止まったところでそのまま首筋に顔を埋めるも、そこで正気に戻ってはガバッと身を離し蒼白になって「……ご、…ごめん、俺……」と微かに身体を震わせては真実を言えないまま個室から逃げ去って。
(夜、男達に渡す金を稼ぐため約束していた客の元に向かう途中、カラオケでの相手への浅はかな行いを悔いては唇を噛みしめる。
それにあの不思議な現象は何だったのか…。
そんなことを考えるうち、客の家に着くも何故か部屋には入れて貰えず押し返され『お前、いろんな客んところで御栄無く身体売ってるんだろ?病気持ってそうだからやめとくよ』と。
バタンと閉ざされる扉に今日は身売りをしなくて済むと安心すると共に虚しさが襲っては笑みが零れてきて。
何だかもう疲れた…と思いながら明日男達に渡すための金を貯金から下ろしては寮には戻らずまたネットカフェに行って狭い部屋に篭もる。
なんとなく取り出した携帯には当然だがストラップはなくピアスの穴も僅かに塞がりかけていて。
もう相手とは本当に戻れないのだと、相手に散々酷いことをしておきながら身勝手に悲しくなっては蹲ったまま目を閉じて。
>露木
( 何とか寮へと帰りまだ落ち着かない頭の中を整理しようと試みるも出来る筈も無く。
なぜ相手は自分にあんな事をしたのだろうか、相手にしてみれば大した事では無かったのか。
グルグルと思考を駆け巡る中、眠れる筈も無くベッドの中で蹲ってはぼんやりとして。
( 翌日、相手の客を装い予約の電話を入れてはホテルの一室で何本目かも分からない煙草を咥える。
中途半端な期待を持つくらいなら嫌われた方がマシだし金さえ持ってれば相手にはいつだって触れられる。
身勝手な勘違いをしたまま平均より高い額の金を封筒に入れ、まだ自分だと分からない相手がホテルの戸を叩いた途端部屋に引き入れては唇を奪って。
相手の衣服の中に手を入れ「逆らってんじゃねぇよ、俺は客だぜ??」と低く告げてはベッドに乱暴に相手を押し倒し冷ややかに見下ろす。
思い出した様に現金の入った封筒を相手に放り投げ首筋に甘く噛み付いて。
男達に利用され身も心もボロボロだという事すら理解してやれず相手の手首を押さえ付ける手の力を強めては能力を半減して解放して。
「……………は、あんた化物に抱かれてんだぜ??何で何も言わねぇんだよ。……誰でも良い訳??」
( 最低な言葉を口にしつつさっさと身勝手な行為を終わらせては自分は着替えを初めて。
ぐったりとする相手に視線を合わせずにパーカーを羽織った所で相手の携帯を奪い取れば自分のアドレスを消し相手に携帯を返して。
「…また俺が呼んだら来いよ、金は出してんだ。文句なんて言う権利あんたには無い」
( 冷めた瞳で相手を見詰めルームキーをサイドテーブルに置いたままホテルを後にして。
( 寮へと戻りいつもの様に自分の部屋の前に居た青年
を部屋に招き入れて。
今や相手も自分を“化物”だと言う様になってしまっては人間だと認めてくれるのは青年しかおらず。
テレビをジッと見てる青年の隣に座っては意味も無く赤髪を撫で回して。
『んも‐どうしたの兄さん』
「触りたくなった」
『最近兄さん甘えただね‐』
( ニコニコと笑う青年の髪をひたすら弄んでは今更相手にした事の後悔に襲われて。
>桐崎
(相手が去ってから暫く、怠い身体を起こしてはまだ起こった事が信じられず茫然とする。
しかしベッドの端に放られた封筒と相手のアドレスが削除された携帯を見ては徐々に状況を理解して、“相手に完全に嫌われた”のだと。
もう相手は自分を“身売り”としてしか見ていない。
自分がそう思わせるよう仕向け、相手を傷付けたのだから当然の報いだ…。
互いに互いの気持ちを履き違えているとも知らずに自嘲の笑みを浮かべては金の入った封筒を捨てようとするも、これは相手が身を粉にして働き子供達に渡る筈だったお金。
ゴミ箱に伸ばしかけた手を引っ込め封筒と携帯を鞄にしまっては着替えを済ませ視界が滲む前にホテルを後にして。
(人が行き交う夕方の街、重たい足を引き摺り男達の元へ向かうも突然背後から腕を取られ振り返ると若頭がいて、あまり人と関わりたく無かったため目を逸し。
『ねえ最近、寮戻ってないよね?何かあった?』
「……別に」
(ボソリと答えては唐突に鞄から封筒を取り出し「…これ、桐崎に渡しておいて。…金の使い道間違ってるから」と押し渡し、戸惑う若頭を置いてその場を立ち去って。
(その後、予定よりも遅く男達の元に着いては昨夜下ろしておいた金を渡すも、身売りを断られたぶん金が少なくその事を咎められれば明日用意するからと頭を下げ。
しかし男は許してくれずいつものごとく伸し掛かられ首筋に顔を埋められる。
瞬間、慣れた筈の行為が途端に怖くなりガタガタと身体が震えだして。
昼間相手に抱かれたときとは明らかに違う嫌悪感。
そしてこのまま相手に抱かれた時のままでいたいと強く思った瞬間男を突き飛ばしていて。
『てめぇ、なにすんだよ!!』
(罵声と共に強く頭を殴られ視界が歪めばいとも簡単にねじ伏せられて乱暴され、無感情になれないまま強く相手を想ってしまっては無意識のうちに相手の名を呼んでしまい。
『…繿?…桐崎のことか。…なんだよお前、彼奴のこと好きなのか?』
「……っ…、彼奴は関係な、い」
(必死で否定するも男の怒りは収まらず突如突き放され『お前もういいわ。金も稼げないし何か飽きた。……今度は桐崎にしようかな』と厭らしく笑み。
その言葉に蒼白になり部屋を去ろうとする男の足を掴んで「彼奴には手を出さないで。何でもするから」と懇願するも聞き入れて貰えず「うっせぇな。遊び相手なら他にもいるだろ?」と鳩尾を思いっ切り蹴られて。
(部屋をでた男は別の仲間に《面白い“化物”と遊べるから明日俺んち来いよ》と相手の能力に対抗出来るよう屈強な男達を呼び集め、相手に《お友達に迷惑かけたくなかったら此処に来い。お前の周辺は洗ってあるから誰と仲が良いかなんてすぐ分かるからな》と住所を添付してメールを送りつけ。
>露木
( 翌日、男達からの呼び出しのメールに逆らえる筈も無く寮を後にした所若頭に呼び止められては昨日相手に渡した筈の封筒を渡される。
若頭自身も封筒の意味は理解しておらず、きょとんと首を傾げたまた『なんか桐崎に渡しとけって言われてさ』と零して。
相手が金を受け取ってくれなければ昨日の行為は自分が相手に一方的に乱暴したも同然、自分からの金など受け取る価値すらないと言うのかと見事な勘違いをしては唇をグッと噛み締め乱暴に封筒を受け取り。
( 地図に書かれた場所へと到着しアパートの一室の扉を数回叩く。
僅かに開いた扉から手が伸びて来ては強引に部屋に入れられぶつけた頭を軽く抑えながら男達を見上げる。
ガタイの良い男達が自分を見下ろしてる様子に理解が出来ず「…何だよ、ってかあんた達誰」と低く問い。
肩をグイッと押され壁に押し付けられては咄嗟に男を突き飛ばし距離を取る。
警戒心が溢れ出てはまた中途半端な能力を発揮してしまい威嚇する様に男達を睨み付けて。
『お前そんな事して良いと思ってんの??………お前が言う事聞かないんなら露木にすっかな』
( 男の言葉にピクリと反応してはその隙に両腕を二人掛かりで押さえ付けられて。
「………彼奴と俺は関係無い!!!彼奴に手を出すな!!」
『は、同じ事言ってんじゃん。…ってか桐崎は何でそんな彼奴の事庇おうとしてんの??』
「別に………庇おうとなんて………」
『もしかして露木の事好きとか??』
( 図星を付かれるも表情を変えぬ様に努め男達を睨み付けるも確信した男達は面白そうに『へぇ、…超面白い事になんじゃん。良いんじゃねぇの、彼奴だってもう人間じゃねぇだろ??裏表ある人格しててさ、男に飢えた化狐じゃねぇか』と。
青筋を立てながら「黙れ!!!」と叫んでは瞳の色が段々と変わるも男達は体格の大きい男に押さえ付ける様に指示してはほくそ笑んで。
>桐崎
(体格の良い男達は相手の身体を簡単に固い床に組み伏せると厭らしく相手の素肌に触れ喋らせないよう下から強く掴んで。
『ギャンギャン喚くな。こっちは化物の為にわざわざ来てやってんだよ。“お友達”に手ぇ出されたくないんだろ?』
『…てか“化物”って聞いたからどんな奴が来るかと思ったけど此奴結構いい顔してんじゃん』
『俺もう我慢できねえ、さっさとやろうぜ』
(男達は相手の四肢を押さえ付けたまま好き勝手に散々弄び、気が済むと部屋の隅でぐったりする相手を他所に堂々と酒を飲み始め。
『いやぁ遊んだ後の酒は最高だね。つーか、露木よりずっと良いじゃねぇか』
『またいつでも呼んでくれよ』
(体格の良い男達は上機嫌で言うとそのうちの一人が酒の入ったコップを手に相手に近付き頭上から零すと相手の濡れた髪を掴み上げ『逆らうなよ。言うこと聞いてれば露木には手出ししないでやるよ。俺達は、な』と不敵に笑み相手の顎下を撫で。
(其の頃自分は主犯の男の企みで下手に手出し出来ぬよう何処かの窓もない地下室に軟禁されており、手錠を片足首にはめられ鉄骨に繋がれていたため逃げ出そうにも出来ずにいて。
今頃相手が何をされているか考えるだけで背筋が凍り、相手に手を出されないために此処までどんな仕打ちにも耐えてきたのに、結果が此れでは相手を裏切り傷付けただけだ。
自分の軽薄さを呪い無謀だと分かっていながら足の拘束を解こうと藻掻くも擦り傷が増えるだけで意味を成さない。
それでも懲りずに暴れていると部屋の隅で座っていた見張りの男に一発蹴りを入れられ。
『大人しくしろ。お前が反抗するだけ桐崎に危害が及ぶだけだ』
「……反抗しなくても…手出しするんだろ……」
『しらねぇよ。俺はお前を監視するよう言われてるだけだからな』
(そう言って一度拘束を解かれると周りに怪しまれぬよう普段通りバイトに行くよう言われる。
勿論帰る時間もしっかり決められ『監視されてること忘れるなよ』と脅されては携帯も取り上げられ誰とも連絡出来ず助けを呼べない状況にされて。
どうすることも出来ず唇を噛み締めてはズキズキ痛む身体を何ともないよう裝いバイト先に向かう。
“従っていれば相手は無事”という保証もない脅しに今は縋るしかなく、相手も全く同じ脅しをかけられているとは知らずに。
>露木
( やっと解放して貰えたのは深夜、何度も何度も吐気を感じながら寮へと到着するなり浴室に篭ってはどこか冷静な思考でシャワーを流していて。
お湯を張った湯船に浸かり未だに未練がましく相手を思い続けては相手が無事なら構わないと。
コクリと居眠りをしては数時間眠りに落ちてしまい、激しい喉の渇きに浴室だった事を思い出しては身体を拭き適当なジャージとパーカーに着替えてベッドへと寝そべり目元を腕で隠して。
( 翌日、二日酔いの男達は機嫌が悪い様で夜に男の家に来る事を要求されては眠れなかった為寝不足気味の目を擦って。
苛立ちを抑える様に煙草を咥えては本当に相手は無事なのだろうかと眉を寄せる。
バイトへ行く準備をしてはやや早足でバイト先へと訪れバックルームで制服に着替えて。
( 顔色が悪いと言われ早めに上がらせて貰ったものの店の裏で待ち伏せてた男達に捕まっては早速男の家へと強制的に連れて行かれて。
身構えながら男達より離れた所に大人しく佇むも逃げられたら困るからなどの下らない理由により飼い犬の如く首輪を付けられては鎖に繋がれて。
「彼奴は…無事なんだろうな」
『は??んなのお前次第だろうが、犬が偉そうに口聞いてんじゃねぇよ』
「……………」
( 唇を強く噛み男達に従っては不意に一人が何気無く『金も尽きて来たしもっかい露木にやらせるか』と零したのを聞き逃す筈も無く目を見開いては「おい、今のどういう事だ」と。
男は面倒そうに視線を逸らしては『あ??っせ‐なお前に関係無ぇだろうが』と。
腹部に蹴りを入れられ言葉を話す事を許されずに歯を食い縛りながら男達を睨んだ所、一人の男が先日の男達に電話を入れては『今から来いよ、またあの化物貸してやっから』と。
( その頃、相手に数人の見張りを付けバイト先から出て来るなり逃がさない様にあの地下室に連れて来ては主犯格の男が面白そうに相手の視線まで屈んで。
『桐崎が居る限り逆らえねぇもんな、お前。頼めば何でもやんだろ??男好きだもんな』
( 蔑みの言葉をぶつけながら不意に唇を奪おうとするが以前の様に抵抗されたら面倒だと一枚の写真を取り出して。
昨日自分が散々に暴行されぐったりと寝そべる写真を相手の目前に突き出し『お前が抵抗したから桐崎こんな酷い事されたんだぜ??可哀想にな』と面白そうに喉を鳴らして。
相手の抵抗が無くなったのに確信しては乱暴に押し倒し『逆らえば逆らう程桐崎が酷い目に合うぜ??こんどは学校の屋上から突き落としてみるか、化物の生力がどれ程のもんか実験しねぇとな』と。
>桐崎
(男に見せられた写真と言葉に愕然としては、憎悪を通り越して蒼白になり縋るように男の襟元を掴んで「…も、もう逆らわないッ、なんでも言うとおりにする…、だから彼奴だけは…繿には手を出さないで」と惨めに懇願して。
『だからそうして欲しけりゃ大人しく従えって言ってんだろ。とりあえず今日はたっぷり稼いで貰うぜ』
(男に手を払われたかと思うと地下室の扉から見知らぬ数人の男達が現れ主犯格の男に札束を渡しては鞭やスタンガンを手に此方に迫ってきて。
『こう言うお遊びは初めてか?…桐崎のこと好きなんだろ?だったら彼奴の痛みを分かってやれるよな?』
(ニタリと笑む男に逆らう術はなく襲い来る痛みに数時間ジッと耐えては終わる頃には息をするのも辛くなっており、部屋の隅で誰かと電話する男を霞む視界の中見ていて。
暫くすると男が近付いて来ては『気が変わった。良い物が見られるからついて来い』と。
(深夜、目隠しをされ引き摺られるようにして連れて来られたのは大学の旧校舎屋上。
下から吹く冷たい風が傷に滲みて小さく身を震わせたところ目隠しを外され、薄暗い視界が徐々にはっきりしてきては目の当たりにした光景に目を見開く。
屋上の端ギリギリ、ボロボロの相手が大柄の男に取り押さえられ今にも突き落とされんとする所。
「繿!!!!!」
(相手の名を叫び男の腕を振り払っては「従ってれば手を出さない約束だろ!!!」と怒鳴るも鈍い音と共に頭を殴られ『誰が下僕と化物の約束なんざ守るかよ。黙って見てろ。お前の大好きな化物が“もう疲れたから自殺したい”って言ってんだ。最期くらいちゃんと見送ってやれ』と嘘を並べ。
そんなこと信じられる筈がなく相手の名を再度呼びかけるも後ろから口を塞がれ『お前が追い詰めたんだぞ?彼奴のこと“化物”って言ったのは誰だ?』と。
(一方相手を取り押さえる男達は男に尚も反抗する自分に目を向けながらほくそ笑み。
『彼奴が傷付いたのはお前のせいだ。お前の存在事態が罪なんだよ。分かったらさっさとこっから飛び降りろ。別に化物だから死なねぇだろ?…つーか、間違って死んでも誰も悲しむ奴なんていねぇだろうな』
(ケタケタと相手の精神を抉るように嘲笑しては相手の背中を軽く押し『早く飛び降りろよ。さっさとしねぇと代わりに露木を突き落とすぞ』と後ろで男の腕に噛み付き必死に藻掻く自分を指さしながら『ほら、お前見たいな“化物”の代わりに死ぬのは御免だって嫌がってるぜ』と出鱈目を言い煽って。
しかし男達も流石に相手も飛び降りることは出来ないだろうと行き過ぎた冗談のつもりで言っており相手の硬い表情を楽しげに見ていて。
>露木
( 後一歩踏み出せば眼下のコンクリートの地面に打ち付けられるだろうと言う所、男の言葉に喉がヒクリと鳴れば相手を突き落とされるくらいなら自ら降りた方がマシだと下を見詰める。
必死に男の腕から逃れようとする相手にチラリと目をやり、流石に“遊び相手”だった自分の身代わりなど普通に考えてもごめんだろうと男の出鱈目だと言う事にも気付かずに納得してしまって。
『ほら早くしろよ、それとも露木にバトンタッチするか??別にそれでも構わないぜ??』
『まぁまぁ、よく考えろって。露木が死んだら露木の何人もの遊び相手が悲しむだろ??お前みたいな化物死んだって誰も困らないだろ??』
( 思考が纏まらずに呼吸を乱しながら唇を噛んでは「………俺だって………俺だって好きで化物なんかに生まれた訳じゃねぇんだよ!!!………ただ、………認めて………貰いたくて………」
『で??認めてくれる奴なんて居たのか??…あ、そういえばお前のお友達の赤髪の男なら“裏切り者”だぜ』
( 上手く加工し青年の声に似せた録音を流しては思考の乱れから本当に自分は一人だったのだと。
相手をジッと見詰めては自嘲の笑みを浮かべ「安心しろ、あんたを身代わりになんてしない。そしたら沢山の“恋人”が悲しむだろうしな、そうやって一生色んな男と遊んでれば良いんじゃねぇの」と敢えて蔑みの言葉を告げてはそのまま後ろに倒れ込んで。
呆気に取られた男達の顔に口角を上げてやれば不意に身体が軽くなり脳内に『馬鹿野郎』と自分に良く似た声が響いて。
ドシャリと音を立て地面に打ち付けられるも思ってたよりも衝撃は薄く。
眩しい青空を隠す様に自分と瓜二つの顔が覗き込んでは『俺に感謝しとけ。…ま、死にたかったなら迷惑だな』と。
「……………露木、……………あの男達から、……………助け」
『さっきの男達なら菊の事放ったらかして逃げてったぜ、あんたが馬鹿みたいな手取ったから』
「………そっか」
( あまり表情を変えない性格ではあったが安心した様に心からの穏やかな笑顔を浮かべては「………ちょっと、………寝る」と強がりを述べ意識を手放して。
( 男達は冷汗を流しながら逃げ出しては『今の…俺達何もしてないよな、彼奴が勝手に飛び降りたんだよな』と零して。
焦りや不安から校舎の壁をガツンと殴り付け、必死に自分を宥めようとして。
>桐崎
(相手が落ちていくのが酷くスローモーションに見えるも止めることは叶わずドシャリと鈍い音が耳に響き、最悪の光景が浮かんでは頭が真っ白になる。
慌てて走り去る男達の声も足音も聞こえず、自分のせいで相手が死んだと思い込んではガタガタを身体が震え過呼吸に陥って。
現実を受け止めきれず涙が溢れだしそうになった時、『阿呆か!!さっさと立て!!』と頭の中で自分の声とよく似た声が響きヒクリと喉を引きつらせる。
『繿は生きてる。ボサッってしてないで早く下に行って助けを呼ぶんだ。この意気地なし』
(強い口調に頭が混乱するも“繿は生きてる”という言葉に背中を押されるようにもつれる足で何度も転びそうになりながら下に降りて相手に駆け寄る。
まるで死んでいるような姿に再び狼狽えるも相手の携帯が目に入っては震える手で若頭が取り持つ救急車を呼んで。
『今回は“爛”に感謝しろよ。…次はあんた自身の手で守れ。また繿を傷付けるようなことがあったら一生あんたに取り付いてやるからな』
(それを最後に声は聞こえなくなれば、相手の冷たい手を握り救急車が来てもその手を離さず、自分の治療を拒否して相手が治療室に入るまでずっと手を握り心の中で名前を呼んでいて。
(三日後、若頭の病院の病室。無機質な機械音が一定のリズムを刻む中、未だに眠る相手は何本もの点滴と管で繋がれており意識不明の重体でいつ目覚めるか分からない様態で。
青白い顔と低い体温から目を離したら何処か遠くへ行ってしまうのではないかと不安でずっと相手の手を握り張り付いては、医師も兄達も困り果てた顔をして。
『…菊、そろそろ何か食べよう。…菊がそんなじゃ逆に繿が悲しむよ』
「…………俺が、…繿を追い詰めた………、俺が……突き落としたも同然なんだよ……」
(何度も兄や医師から男達の嘘だと聞かされたにも関わらず未だ相手が自殺したと思い込んではとても何か口に出来る精神状態になく自分を責め続け。
「……あんたも……赤城も…俺のこと恨んでるんだろ…?……大切な弟をこんなにされて……俺が、落ちれば良かったって思ってるんだろ?」
(自分でも何を言っているのか分からず掠れた声で呟いてはギュッと相手の手を握る。
そこで相手の瞼が微かに揺れるのを見てはずっと傍に居たにも関わらず傍に居てはいけないと慌てて離れ、医師達が相手に駆け寄って呼びかける隙に病室を抜けだして。
男達はあの後逮捕された…、全部嘘で相手を脅していたことも聞かされた…、
それでも結果、自分が相手をボロボロに傷付けた。
その事実が変わらない以上やはり自分が相手の傍にいる資格はないと…。
フラフラとあてもなく歩くも思いの外身体が衰弱していたのかあまり遠くまで歩けず病院のロビーのソファに座り込んで。
>露木
( どれくらい眠ってたのだろうか、夢の中で自分と瓜二つの男に『何時まで寝てるつもりだ』と言われたのに僅かに眉を寄せてはゆっくりと目を開く。
久々の明かりの眩しさに顔を顰めるも自分を覗き込む兄や青年を目にしては軋む身体を無理矢理起こし威嚇する様に睨み付けて。
『ちょっと…どうしたの兄さん』
「煩ぇ!!!出てけ!!!」
『あ‐…兎に角説明するから落ち着いてよ』
「………っ、触るな!!!」
( パシッと兄の手を振り払いキッと睨み付けるも兄が『今度は菊が危ない状態なんだよね、ず‐っと繿の事看てたからさ。もうずっと何も食べてないし寝てない』と言ったのに目を見開いては動きを止めて。
相手の元に向かおうとベッドから起きようとするも身体中に激痛が走ってはのたれ込んでしまい。
情けなさに歯を食い縛り青年が車椅子を持って来るも「いらない」と告げて。
頭の中に『仕方無ぇな、これで貸しは二度目だ』と言う声が響き身体が軽くなっては考える隙も無く相手を探して走り出して。
( 病院内のロビーにてソファーに力無く座り込む相手を見付けては直ぐに駆け寄りその手を取る。
夢の中でもしっかりと伝わってた温もりは相手の物だったのだと気付くのと共に「…なんでだよ、………あんた俺を嫌ってるんだろ??」とか細く呟く。
閉じた目元に軽く口付けを落とし、触れるだけの口付けをしようとした所で医者が迎えに来ては自分を車椅子に座らせ相手を背負って。
病室に戻りながら「………あの、…そいつは…」と容態をさり気なく聞いては担当の医師に『激しい疲労と…ストレスから来たものだと思う。結構身体も衰弱してるし彼も入院しなければだね』と。
不運な事に知り合いならばと病室は一緒にされ、二人だけの空間になってしまえばどうしようと顔を顰め。
兄と青年が駆け寄るも未だに男達が加工した声を本物だと思い込んでいては心を開かずにいて。
面会時間が過ぎ青年と兄も帰っては、まだ瞳を閉じてる相手の元にゆっくりと歩を進め頬を撫でて。
眉を下げ自分のベッドへと戻り、相手が目を覚ました時自分と同室だなんて嫌だろうなと変な引け目を感じてはシャッとカーテンを閉めて。
>桐崎
(夢の中、真っ暗な屋上で相手が酷く辛そうに微笑み、自分が相手を突き落とす。
目を覚ますと相手はどこにも居ない。何度も何度も名前を呼んでも相手は居なくて、やっと相手の声が聞こえて振り返ると血の海の中に倒れる相手の遺体。
そんな夢を繰り返し見て暗闇の中、光が差し込んでは漸く薄っすらと目を開けて。
すぐに病院だと分かり眠る前の記憶が過ってはガバッと上半身だけ起こし青ざめながら相手の姿を探す。
隣のカーテンに目がいった丁度その時、病室の扉が開かれ看護師が入ってきて。
『あら露木君、その様子だと点滴が効いたみたいね。始めはどのお薬も合わなくて大変だったのよ。……って、もう!!折角いい天気なのにカーテン閉めきってたら駄目じゃない』
(室内に呆れ声が響き隣のベッドのカーテンが開けられては相手がいて、無事だったという安心感と計り知れない罪悪感とで動揺が隠し切れず即座に病室を逃げようとするも別の看護師に取り押さえられて。
『まだ動いたら駄目だよ。はいお薬とご飯。ちょっとでいいから食べなさい。……桐崎君もよ』
『桐崎君ったら絶対安静なのに貴方を探しに行ってくれたのよ。あの状態で動くなんてどうかしてるわ。良い?今度は勝手に動いたり抜け出したりしないこと。しっかり身体を休めなさい』
(キビキビとした口調でベッドに備え付けられた机の上に相手の食事と薬を置き点滴を変えては『あとで包帯替えるから逃げないでよ』と念押しして出て行って。
再び二人きりになる病室。重たく気まずい空気。今は食べ物を見るだけで吐き気がする。
いやそんなことはどうでもいい。
それよりも相手に自殺未遂をさせた罪悪感で相手と同じ空間いる行為事態が罪に感じて息をすることすら許されない気がして。
もう耐えられない……拳を握りしめ今まさにベッドから立ち上がろうとした時、扉が開かれては兄と若頭がやってきて『ちょっと話があるから特別に今だけ部屋出る許可貰った。菊、来て』と相手と全く目を合わせられないまま兄と病室を出て。
(若頭は病室に残ると病室の扉を閉じ相手の枕元近くの椅子に腰掛け『災難だったね。…随分痩せちゃって大丈夫?って大丈夫じゃないから此処にいるのか』と少しおどけてみせるもやや年相応の真剣な表情をして、男達の一部が逮捕されたことや男達の自供で分かった“真実”を少しずつ話していき、自分があの動画で脅されていたことも告げて『あ、あと音声テープも偽装だから。赤城めっちゃ落ち込んでたからちゃんと謝っておきなよ』と。
『で、露木だけど…桐崎が自殺したって思い込んでるみたいでさ。俺達が言っても聞き入れてくれないんだよねぇ。……っていうか事の発端はどこからなの?彼奴等に刀を盗まれる前から二人共様子おかしかったよね?』
(問い詰めるように聞くも相手の身体と精神への負担を考えては『御免…、今は辛いよね。……もう少ししたら僕の取り持ってる警察の人達が事情を聞きに来ると思うからそれまで休んでて。…何か聞きたいことある?欲しい物あれば持ってくるよ』と珍しく相手に気を遣い。
>露木
( どこか遠慮がちに問い掛けて来る若頭の言葉に自分は相手に何と言う事をしてしまったのだろうと激しい後悔に晒される。
蔑みの言葉をぶつけ相手の優しさなど知らずに相手を身売りの様に扱った。
そんな自分が許せずに歯を食い縛っては無言でベッドへと横たわって。
若頭は困った様に微笑むと『後でまた来るからゆっくり休んでよ』と言い残し病室から退室して。
( その頃、兄はゆっくりと状況を相手に話しては『もう大丈夫だからね。菊の動画も赤城が全部始末したから安心して』と優しく相手を抱き寄せる。
あまり長い時間相手を病室の外に出しといては後々看護婦に叱られるな、と相手と共に病室に戻っては相手をベッドまで運び『何かあったら直ぐに俺に言って、俺は菊の事本気なんだから』とさり気なく告白しては相手の薬を貰いに病室を後にして。
( 若頭が去った後、自分は浅い眠りに落ちていたのだが扉が開かれる音に目を覚ましては兄が相手を慰める声が聞こえ寝たフリを続ける。
しかし兄が出て行く気配が感じ取れ二人きりになれば空気が重く伸し掛り上体を起こして。
まだフラフラとする足取りで向かいの相手の元に来ては相手の胸倉を掴みグイッと顔を寄せる。
何か話そうと口を開いたその時、強打した片足の力が思い切り抜けては相手に抱き着く様な体制になってしまい慌ててベッドの作に掴まっては「…ごめん」と。
「………悪かったよ、…あんたの事身売りみたいな扱いして。…金払えば傍にいんのかと思った、浅はかだよな」
( 自嘲的な笑みを零しては「もうこれ以上あんたに嫌われたくないんだ」と小さな声で零し「………だからもう近付かない」と真っ直ぐに告げて。
>桐崎
(切なげに笑む相手の声が耳に入ってからそれを理解するまでさほど時間は掛からなかった。
自分も、同じ事を考えていたから。
相手をこれ以上傷付けないためには離れるのが最善なのだと。
謝りたいこと、言いたいことは沢山あった。
しかしそれを声にするだけの余力は心身ともに残されておらず僅かに瞳を潤ませながら小さく微笑み「…分かった。……ありがとう」とだけ告げて。
それでも最後に少しだけ相手に触れたいと甘えが生まれゆっくりと愛しい相手の銀髪に手を伸ばす。
あと少し、毛先に僅かに触れたところでガラリと病室の扉が開かれては看護士が奇声を上げ。
『何してるの、二人とも!!!……桐崎くんはまだ絶対安静だって言ったでしょ?あなた屋上から落ちたのよ!』
(叱りつける看護士の“屋上から落ちた”という言葉に相手が落ちていく光景がフラッシュバックしてはビクリと過剰に震え、看護士がしまったという顔をして咳払いして『…兎に角、包帯替えるから自分のベッドに戻りなさい。すごく身体痛むはずよ。無理はしないで』と相手をベッドに座らせカーテンを閉ざす。
服を脱ぎ包帯を巻く布が擦れる音がやけに大きく聞こえ静かに涙を流してはそのままそっっと病室を離れて二度と戻ることはなく…。
(翌日、別の病室で寝かせて貰い無理を言って相手よりも大分早く退院させて貰うと一人で寮に戻り荷物をまとめては早々に寮の退去手続きを済ませ学校の敷地を出る。
強がりが潰えてしまう前に…未練がこれ以上溢れてしまわないように……。
相手が近付かないんじゃない。自分から離れる。…そのほうが傷が浅く済む、気がするからと振り返ること無くただ足を前に進めて。
(電車を乗り継ぎ誰にも告げずに来た小さなアパート。
卒業までの少しの間、暫く此処で暮らそうと。
バイトに行くのに不便になるが相手の顔を合わせる機会は格段に減る。
心配してくれた兄に罪悪感はあるが誰にも迷惑をかけないためにはこれがいいのだと言い聞かせ。
(その頃、相手の病室には青年がプリンをみやげに見舞いに来ていて『ねえねえ何かあったら何でも言ってね!リハビリも付き合うから!』と笑顔で話し掛けていて。
そんな時、病室の扉が開かれては妹、ナツが現れ小さく微笑み相手のベッドに近付き。
『久しぶり。…大怪我したってハナから聞いて心配になって来ちゃった。…前より痩せた?』
(詳しくは事情を知らない妹は心配げに相手を見ながら笑顔で振る舞い北海道土産を渡すも、途端に不安げな表情をあらわにして『……兄さんと連絡全然取れないの。携帯は壊れて解約しちゃったみたいで……、折角来たのに退院してるなんて…』と涙を流し。
>露木
( 翌日、真っさらになったベッドをぼんやりと見詰めてはこれで相手と関わる事は無いだろうと。
静かに涙を流す妹の柔らかい髪を撫で「大丈夫だよ、彼奴はあんたが何よりも大切なんだから」と。
折角見舞いに来てくれた所申し訳無いが一人になりたいと告げ病室にて窓の外を見詰める。
結局は何も変わらなかったのかもしれないとどこか冷静に思ってはあれからずっと身に付けてた揃いのピアスを外して。
( 人より早く段々と治癒する自分の身体を恐ろしくも感じつつ、しかし犬や猫に対して人間の薬が強いのを思い出しては何となく定理を理解して。
訝しげに見詰める看護婦や医者達もどこか不審に思った様で何となく目線を感じて。
半月後には退院も出来るらしく最近ではリハビリにも辛さを感じる事も無くなっていて。
心に穴が開いた様に物足りない日々を送りながら、それでも毎日の様に見舞いに来てくれる青年と妹に申し訳無くなり。
( 翌日、青年よりも先に見舞いに来てくれた妹に「あんた家遠いだろ、そろそろ帰らないと不味いだろうが」と人事の様に呟く。
『うん、…でもやっぱり兄さんとも顔を合わせて帰りたいの。だって………こんなの行方不明と一緒じゃない??』
「…………………………俺の所為なのかもな」
『え??』
( きょとんとする妹を正面から見詰めるもその顔は相手その物、よく似た容姿に理性を無くしては「………菊、ごめんな」と抱き締めてしまって。
『待って、…私兄さんじゃ無いわよ』
「…………………だよな、…分かってる筈なんだけど……」
『………』
( 悲しそうな顔で自分の頭を撫でる妹に甘えてしまってはそのまま僅かな時間を過ごして。
( 青年が来るなり何事も無かったかの様にぼんやり外を見詰めて。
そう言えばまた両親から“帰って来い”と言う連絡が来てたなという事を思い出しては怪我が治り次第出向かなければならないなと。
>桐崎
(寮を出てから数日、相手の事が頭から離れることはなく女々しくも相手が退院するまでは一緒に入れば良かったと後悔する。
しかし時間を引き延ばしたところで相手への想いが募るだけ。
此れで良かったのだと親しい知り合いに会わないことを祈りバイト先に向かいさっさと終わらせるも店を出た所で妹に手を引かれ小さく目を見開く。
寒空の下、悲しげな表情をされ病弱な妹を突き放す訳にも行かずアパートに招いては炬燵の電源を入れ温かい御茶を出し。
「……どうしたんだよ。あんな所にいたら風邪引くだろ」
『どうしたじゃないでしょ。…黙っていなくなってみんなに迷惑かけて。何考えてるのよ』
「…………ごめん。でももう彼奴等とは会わないって決めたんだ。暫くしたら地元に戻るよ」
『………繿くんに何かあっても会わないの?』
「何かあったのか?!」
『……別に。…でもそんな反応するならせめて寮に戻ったら?』
(相手の身に危険がと思った瞬間取り乱してしまったことを情けなく思いつつ、やはり会うことは出来ないと頑なに首を横に振り。
すると妹は小さく溜息を吐き『…じゃあ私、繿くんのこと好きになってもいいのね?』と。
微かに瞳を揺らし動揺するも平静を装えば「…好きにすれば。彼奴、いいやつだし、ナツとなら馬が合うかもな」と微笑み、時間も遅いため泊まっていくよう言っては他愛のない話をして相手の話題を遠ざけて。
(翌日昼近く、妹は相手の病室に見舞いに来ていつものように楽しい話題を振っては、りんごをうさぎの形に切って相手に差し出し『可愛いでしょ?』とクスクス笑い。
しかしふと真面目な表情をしては膝の上でキュッと両手を握り『昨日ね、兄さんに会ったの』と小さく呟き話始め。
『元気だったけど…なんだか寂しそうだった。……今日もね。見舞いに来るか誘った時、断られたけど本当はすごく繿君に会いたいんだと思うの。……寝言で“繿”って何度も呼んでたから』
(俯き気味に言うもハッとなっては『御免なさい。余計なことよね』と微笑むもそっと枕元に自分のアパートの住所と新しい連絡先が書いた紙を置いて。
『じゃあ私、ハナと会う約束してるからそろそろ行くね。元気になったらまた一緒にお出かけしよ』
(ニコリと自分と良く似た小さな微笑みを浮かべては『リハビリ頑張ってね』と相手の髪をポンと撫でて病室の扉に手を掛けて。
(その頃自分はバイト先にて店長から“別店舗のバイト数人が急に辞めたから数日間応援に行け”と言われていて。
住所を見れば、あまりいい思い出がない場所。しかも相手の地元。
もしかしたら会うかも知れないと懸念するが相手は地元を嫌っていたし来ることはないだろうと。
そもそも店長からの命令には逆らえないかと渋々頷いて。
>露木
( 妹に渡された紙を見詰めてはまだ期待してしまう自分が情けなくなり唇を噛む。
相手とはもう会わないと決めたばかり、何度も同じ事を自分に言い聞かせては開かれた扉と共に担当医が入って来て診察結果の紙を渡されて。
『驚いたよ、こんなに治癒力の早い人は初めて見た。……………君本当に屋上から落ちたんだよね』
「……………はい」
『別に疑ってる訳じゃ無いんだ。ただ本当に驚かされてね。退院はいつでも構わないよ、もう歩けるんだよね』
「…まぁ、普通に歩けます。………出来るなら直ぐにでも退院したいんですけど、…その…両親に呼ばれてて」
『……………成程、分かった。でも一つだけ医師として聞かせて貰うね。その身体の傷は両親からかい??』
「……………違います」
( 静かにはっきりと告げては医師は自分の頭に手を乗せ『分かった。退院の準備をしようか』と。
( 数日後、無事退院するも実家に戻る事は兄にも青年にも告げずにいて。
前回迷惑を掛けたばかり、流石にそう何度も何度も迷惑は掛けられないと。
金を稼げは数日でちゃんと解放して貰える、父の言う事に逆らえば後々面倒なのを知ってるが為今回の呼び出しにも逆らえず。
電車を乗り継ぎ重たい足取りで実家の玄関を叩いては幸い父は居なかった様で扉を開けては中へと入り。
「母さん、ただいま」と声を掛けるも自分に無関心の母は何も言わずにいて。
休む暇など無く父が帰宅しては咄嗟に身構えるも金を要求されるだけで暴力は特に無く安心する。
『誰の許可を得て家に上がった。犬如きが家を汚してんじゃねぇぞ』
( 父の逆鱗に触れてしまうと思い慌てて「…悪い。今出てく。今日は遅いし明後日までに金持って来るから」と冷静に告げる。
舌打ちと共に『……………繿、』と名を呼ぶ父の声がしたがまさかあの父が自分の名前を呼ぶ訳無いと。
「………父さん、今呼んだ??」
『んな訳ねぇだろ。目障りだ、さっさと出てけ』
( 顔を伏せたまま言う父に無表情で背を向けては特に行く場所も無く街を彷徨く。
有り金は先程渡してしまった、ビジネスホテルに泊まる現金さえ無く野宿するしか無いかとどこか冷静に居てはこの寒さでは流石に無理かと。
誰か適当に引っ掛けようと最低な事を考えては行き交う人達を見詰め金持ちそうな人を探すもこれでは昔と同じだなと自分に呆れて。
>桐崎
(別店舗のレンタルショップ、此処も裏とつながっているのか到着するなり柄の悪そうな店長に『逃げたバイトの奴も裏事情知ってたんだけどさ、今朝ニュースで首吊りしてるのが自宅で見つかったってよ。………お前も気をつけろよ』と不気味に笑み肩を叩かれて。
ゾワリと背筋が冷えるも感覚が麻痺してきたのか危機感は薄くバイトに打ち込むことで相手の事を考えないようにして。
(昼、棚戻しをしている途中、客が前を見ていなかったのか背中にぶつかってきて客の持っていたDVDが落ちる。
そのDVDは“温かい家族”を描いた内容。特に気に留めず拾い上げ「申し訳ありません。お怪我ありませんか?」とこちらから謝り顔を上げて微笑んだところ見覚えのある男の顔に一瞬動揺する。
高い身長に相手によく似た顔立ち…相手の父。
相手の父とは自分が女の時しか会っていないためこの姿では面識がない。
相手を苦しめ痛め付けた張本人だと思うと怒りが沸き立ち、つい睨みつけそうになるもふと父の腕に地面に擦れて出来たような掠り傷が目に止まり。
自分でも何故そうしたか分からないが次の瞬間父の腕を取り持っていた絆創膏を傷口につけて「あなたがこのDVDを見ようとするなんて意外です」とつい父を知ったふうに零していて。
ハッとなった頃には遅く『うるせー、ただ見てただけだ。気安く触んじゃねぇよ』と怒鳴られDVDを突き返されては相変わらずの無表情で去っていき。
(夜、バイト終わり。何故昼間あんなことをしてしまったのか自分を責めつつ数日間格安で連泊するホテルへと足を進める。
その途中、慣れ親しんだ銀髪が見えた気がしてまさかと通り過ぎようとするも、確かに相手の姿を捉えては足を止め小さく息を飲む。
凍えるような寒さの中、病院にいる筈の身体でいつからそこにいたのか、暗がりの遠目から見ても身体が震えているのが分かって。
相手の父のこと、何故相手がそこにいるのかは何となく想像がつく。
“自分は何も見ていない”そう言い聞かせ目を閉じるも相手を愛する心が相手を見過ごせる筈がなく、下を向いたままスタスタと近寄ると自分のマフラーを投げつけ冷たい手を取って。
そのまま無言でホテルに入りロビーで事情を話すと有無を言わさず借りた部屋に連れ込んで温かい御茶と買ってあったおにぎりの一つを相手に投げ渡し。
「……、…」
(目線を合わせないまま何か言いかけるも“近付かない”と言われたことを思い出しては狭い室内を見回し唯一個室として分けることの出来るユニットバスの扉に手を掛け閉じこもろうと。
>露木
( そうそう金持ちそうな人など居らず、それでも過去に関係を持った人に頼るのは嫌で行き交う人達を吟味しては溜息をつく。
しかし見慣れた顔が近付いて来てはマフラーを投げ渡され何故ここに居るのか、身体は平気なのかと聞く前に強引に腕を掴まれて。
連れて来られたホテルの一室、飛んで来たコンビニの袋を咄嗟に受け取っては部屋を見渡し浴室に向かおうとする相手の行動にそれとなく理解しては腕を掴み。
顔を見合わせるのも嫌なのだろうという勝手な勘違いをしては「ちょっと待てよ。…何なんだよ、いきなり」と小さく呟く。
優しい相手の事、この寒空の街の中一人でいた自分をほっとけ無かっただけなのだろうと。
自分で無くとも手を差し出していただろうし寧ろ自分で無かった方が気を使う事も無かったのだと。
「あんたが取った部屋だろ、…何であんたが気を使うんだよ」
( これ以上相手に迷惑や負担を掛ける訳には行かないと「ちょっと浴室借りるな」と告げては携帯を取り出し今まで関係を持った男女へと片っ端から電話をしていって。
浴室故に勿論声は響いてしまい相手には丸聞こえになってしまうのだが廊下で話せる内容でも無く。
「あ、もしもし。俺の事覚えてる??…そ、またこっちに暫く居る事になってさ。良かったら今晩俺の事買ってくんない??」
( 数人目の女に話を呑んでもらっては指定されたホテルの住所を言われて。
この女には以前『何よこの傷、繿って結構無様な身体してるのね』と馬鹿にされた記憶があり、それと共に中々帰してくれない性格を思い出しては憂鬱になり。
しかし何とか表情を取り繕っては浴室の扉を開け相手に向き直り「今“友人”に電話したら泊めてくれるって。いきなりごめんな、あんたは兎に角ゆっくりしろよ。………疲れた顔してる」と頬に手を伸ばすもハッとしては手を戻し。
気不味い雰囲気の中、「…ありがとな」と小さな声で言えば離れたくない気持ちを押し殺して部屋を出て行こうと。
>桐崎
(あんな酷い事をしたのに普通に話してくれる相手の優しさが心に滲みて“もっと”と醜い欲求が生まれては去り行く相手の腕を掴みベッドに押し倒す。
相手の片腕を押さえ付けたまま勝手に相手の携帯を取り、着信履歴から一番最近の番号にかけると『あ、繿?今から家出るとこ』と女の声が聞こえ「御免、行けなくなった」と嫉妬を抑え短く呟いては一方的に通話を切り携帯をベッド脇の椅子に投げて。
「…泊まらせてくれるのに今家を出て、あんたを買うって……どんな“友人”だろうな」
(無表情に述べギシリと安いベッドと軋ませては互いの鼻先が触れ合う寸前まで顔を近づけ「なんでそんな見え見えの嘘吐くの?」と単調な声で問い掛けるもそう長くは無感情で居られず微かに眉を下げて。
「………あんたには身売りみたいな真似、して欲しくない…」
(自分勝手な願いをやや震える声でぶつけては少しだけ身を離しずっと触れたかった愛しい銀髪に恐る恐る触れて優しくゆっくり撫で。
素直に“愛してる”と言えたらどんなに良いか。
想いを告げようと開きかけた口を閉ざしては相手から退いて予備のルームキーと万札を数枚押し付けるように手渡し気まずげに目を逸し。
「…また前みたいに変な奴に絡まれて赤城と綸に迷惑かけたくないだろ?泊まる場所決まったほうが楽だろうし。………俺が嫌なら空気と思ってくれればいいから。俺も必要以上に話し掛けないようにする」
(淡々と述べつつ本来なら相手と話す資格すらないのにと自分が憎くなっては「…話し掛けて御免…」と目を伏せて。
(その後、気まずい空気の中放おっておくと床で寝そうな相手を無言でベッドに寝かせては自分も相手に背を向ける形でベッドに寝そべり明りを消す。
此処最近ずっと相手を失う同じ夢ばかり見て寝不足だったが背中に感じる相手の存在のおかげか寝る前に来ていた震えはなく睡魔で思考がぼんやりとし始め。
「…また…あの父親に呼び出されたのか?………見世物、するように言われたの?」
(寝惚けたように突如ぼやけた小さな声で問い掛けては短く息を吐き「……俺に…頼ってくれて良いから……。……頼って欲しい」とポツリポツリと零し。
そうするうち本格的に思考が薄らいでいけばもぞもぞと背を向けたまま少しだけ相手に身を寄せ「………“化物”なんて思ってないよ。……あんたはすごく…綺麗で…恰好良くて…………、俺なんかが…傍に居て……ごめんな」と全く脈絡のない言葉を呟いて。
瞼がどんどん重くなる中、眠る前に相手の声が聞きたいなんて欲が生まれては起きているかも分からない相手の反応をジッと窺って。
>露木
( 一方的に電話断りの入れられては相手の問にも答えられないまま眉を下げ視線を逸らす。
気不味い時間を過ごしながらベッドへと連れられ相手と背を向け合った状態で遠慮がちに横になっては小さな声で紡がれる言葉をぼんやりと聞いていて。
相手の睡魔が伺える声色に微かに微笑むも、まだ期待をさせるのかとどこか皮肉に考えてしまって。
「…あんた、本当に何なんだよ。折角距離置いてやるってのにそんな事言って来るし…訳分からない。………そんな事言われたら………俺だって諦められなくなんだろうが………」
( 声が掠れる程の小さな声で告げてはそれから暫く後、相手の寝息が聞こえて来て。
ゆっくりと起き上がり寝息を立てる相手に多い被さり触れるだけの口付けをしては自分も段々と睡魔に飲み込まれて行って。
( 翌日、相手を緩く抱き締めた体制のまま目を覚ましては同じく目を覚ました相手に気付かず後ろから肩に額を乗せる様にギュッと抱き締めて。
段々と頭が覚醒して来てはのそのそと起き上がりさっさと金を稼がなければならない事を思い出して。
顔を洗い終えた所で相手が起きてた事に漸く気付いては昨夜渡された万札を相手に手渡して。
「“身売りみたいな真似して欲しくない”んだろ??その言葉そっくりそのままあんたに返すよ。………俺だってずっとそう思ってた。あんたにだけはそんな真似して欲しく無かったんだ」
( どこか冷静に告げては僅かに表情を緩め「泊めてくれてありがとな、凍死しなくて済んだ」と軽く笑い「今度礼したいんだけど…顔合わせない約束だったもんな。かと言って金なんか受け取らないんだろ??………なんか適当に思い付いたら言って、出来る事ならするから」とだけ言い残し部屋を後にして。
( 街に出るなりどうやって金を作ろうかと頭を悩ませるがやはり見世物だけは嫌で。
やはり誰か引っ掛けるしか無いだろうかと表情を強ばらせてた所、背後からグイッと腕を引かれてはそこには父が居て。
『……………おい、………ら』
「金なら…っ今からちゃんと持って来るから」
『…………………』
「ちゃんと…約束は守るから」
( 逃げ出す様に父の手を振り払っては父の舌打ちが聞こえてきて。
父が自分の名前を呼ぼうとしてた事などにも気付かず恐怖に負けては早く金を用意しなければと。
>桐崎
(相手が去った部屋、虚しさが急激に襲っては相手に会えば余計悲しくなると分かっていたのに自分は何がしたかったのかと、未だ相手のぬくもりが残る肩をグッと抱く。
それでも食事は大丈夫なのか、また酷い目に合わされるのではないかと思うと気が気でなく、性懲りもなく相手が渡したホテルのルームキーを使ってまたこの部屋に戻ってくることを期待しては小さな冷蔵庫の中にペットボトルの御茶と菓子パンを入れて“自由に食べて”とメモを残して。
(昼前、バイト先に向かう途中、路地裏から“化物”と怒鳴る罵声と暴行する音が聞こえて来ては胸騒ぎがしてそっと顔を覗かせる。
するとそこには闇金と思われる男達に相手の父が殴り蹴られる姿があり小さく目を見開き。
『いつになったら全額、金返せんだよ!!さっさとしねぇとマジでてめぇの息子を一生闇に売り飛ばすぞ!!』
『別にいいだろ?その“化物息子”のせいで会社クビになったんだもなぁ?どうせ息子のこと恨んでんだろ?』
(ゲラゲラ下品に笑う男たちは再び相手の父に暴行を加えては胸倉を掴み『いつもみたくさっさと“化物”を見世物にすりゃあいいだろ?店なら紹介してやるからさぁ。来なかったらあんたの奥さんどうなるかわかんねぇぜ?』と脅し再び殴ろうとして。
そこで咄嗟に物陰に隠れて携帯を取り出し男達に聞こるよう警察を呼ぶ振りをしては慌てて逃げて行ったのを見計らい父に駆け寄って。
「…大丈夫ですか?」
『…ッ誰だよ手前は。勝手首突っ込んでんじゃねぇよ』
(ハンカチを差し出すもバンッと強く押しのけられては後ろに大きく尻餅をつく。
まだ混乱する中、立ち去ろうとする父に「息子さん!!……息子さんのこと大事にして上げてください」と思わず叫んでいて。
この姿では面識がないに等しいのに絶対に可笑しいと思われた。
しかも余計なお節介。怒号が飛ぶと身構えていたが父は何も言わずにその場から立ち去って。
(その頃、街では清楚かつ優艷な雰囲気を持つ女が10㎝のヒールの音を響かせながら相手に近付いていて遠慮がちにトントンと相手の肩を後ろから叩き。
『あ、あの貴方一人?……突然ですごく申し訳ないんだけどお願い、聞いてくれないかしら?……あなたみたいな男前さんを探してたの』
(控えめながら相手の目をまっすぐに見ては相手が口を開く前に店の名刺を差し出し『実は私、この近くでホステスやってるんだけど最近お客さんにストーカーされてて……、彼氏を紹介してくれないと諦め切れないって言われたの。だからその…暫く私の恋人の振りをしてくれないかしら?…沢山迷惑かけると思うしお金なら沢山だすわ』と。
女が相手に渡した名刺には店の名前の下に、女の名前“希久(きく)”とあって。
(/本体失礼します。いつもながら訳の分からない展開&設定付けすみません;
そしてそして…、久々の花魁お菊を現代ではホステス“希久”として登場させて頂きました。
売れっ子のNo.1ホステスでしつこい男に付き纏われ、繿君に助けを求めたって感じです。
あとまた勝手に繿君の家庭に借金があることにしてしまったのですが宜しかったでしょうか;;
>露木
( 父の逆鱗に触れる前にさっさと金を用意しなければと気持ちを焦らせ、やはり見世物か身売りどちらかを選ばなければならないと。
重たい足で立ち上がろうとした所、座り込んだ体制のまま背後から肩を叩かれては振り向き。
一番最初に目に入ったのは相手と良く似た髪色、今朝まで近くにあった温もりをふと思い出しては一瞬顔を俯かせるも“お金なら沢山出す”と言う言葉に反応しては目前の女をジッと見詰めて。
渡された名刺にある名前に惹かれ「………分かった、引き受ける」と返事をしてはそれでも尚、相手の陰を追い続ける自分が情けなくなり。
『本当??助かるわ、いきなりごめんなさいね。……………これ手始めに受け取ってくれるかしら』
「……………何だよこれ」
『酷く面倒な事を頼むんだもの、受け取っといてくれるかしら。…それより貴方こんな所に一人??』
「別に」
『良かったら私の家に勝手に泊まりに来て??何でも勝手に使ってくれて大丈夫だから。………それに私も家に一人って怖いのよ』
( トントン拍子で進む話に悩む暇など無く、二つ返事で「分かった、悪いな」と応えて。
しかしいくら金に困ってると言えど見ず知らずの女から金を受け取るのは気が引け「これ、悪いけど借りる。…ちゃんと返すから」と。
『返すだなんて…寧ろそれはお礼よ??』
「でもやっぱり駄目だ。………今は金無いけど俺に出来る事ならなんでもするから」
( 安心した様に微笑む女を仕事先まで送り届け帰りに迎えに来る約束をしては先程受け取った厚い封筒を片手に父の元に向かって。
( 自宅へと向かう途中の路地にて、偶然父の姿を見付けてはそちらに駆け寄る。
その怪我の様子に何が合ったのかと疑うが睨み付けられてはバッと下を向き封筒を突き出して。
「…か、金。………遅れて悪かった」
『…………………………』
「………足りないか??」
( 父が一瞬表情を歪めるもバッと封筒を受け取られては中身の三分の一を無理矢理渡されて。
意味が分からず父を見詰めるも父は鬱陶しそうに自分を見詰め何か言い掛けた口を閉じて。
そのまま去って行く父の後ろ姿を見詰めては結局訳の分からない金をポケットへと雑にしまって。
( 自分がホステスの女の仕事が終わるまで時間を潰してるその頃、父は自宅に戻るなりイライラしながら煙草を咥えぼんやりとする母を見詰めて。
『……………繿と、…顔も合わせられないのよ』
『俺の所為か』
『……………どうなのかしらね』
『彼奴は化物だから………隠して育てるには金が必要だったんだよ。ただ自分を養う為に両親が借金をしたなんて知れたらそれこそ彼奴は………。………良い具合に嫌われてんだ、これで良い』
( 一人言の様にボソリと呟いては窓の外を見詰める母から視線を逸らし、今日相手が必死に叫んでた言葉を思い出しては『…糞餓鬼が』と小さく零して。
( / 希久ちゃんの件了解しました!!!
いつもながらの素敵展開に惚れ惚れします、むしろこちらが相変わらずの駄ロルで涙が((
借金の件も全然大丈夫ですよ(´∀`)
何気無く設定盛りました←ごめんなs(笑)
希久ちゃんにどことなく菊君を重ねてるヘタレ野郎になってますがお付き合い頂けると嬉しいです…(´・∀・`)
>桐崎
(路地裏から父が去った後、また余計な事をしてしまったと俯いたところ足元に年期の入ったタバコケースが落ちているのが目に止まる。
拾い上げてみて何となく相手の父の物だと思えば次会う保証などないのに持っておいたほうがいいだろうと鞄にしまってバイト先に向かって。
(夜遅くバイトを終えホテルへ向かう途中、昼間の路地裏での事や相手の事を考えてモヤモヤした気持ちでいるとふと向かい側の道路に見知らぬ女と腕を組んで歩く相手の姿を見つける。
その親しげな様子に思わず足を止め目で追っては女の自宅らしきアパートの一室に入っていくのが見え、見事に“付き合ってる”と勘違いして。
地元に戻ってきたのも彼女に会うためだったのかもしれないとまで思い込んでは身勝手にショックを受けて足早その場から離れる。
良く前も見ずスタスタと歩きもう少しでホテルというところ、突如腕を掴まれ振り返ると兄が居て咄嗟に腕を払って逃げようとするもそのまま自分が借りていたホテルの一室に連れ込まれて。
『何で逃げるのさ。探すの大変だったんだからね。ナツさんから連絡先聞いて何度も電話もメールもしたんだよ?』
「……俺といると…あんたに迷惑かけるから」
『そんなの今更じゃない。っていうか全然気にしないし』
「…………」
(兄は地元に来るのを渋っていたのに何故来たのか、そんな事を考えながら冷蔵庫の前にしゃがみメモを剥がして相手の為に置いておいた御茶と菓子パンを兄に投げ渡して。
『…繿には会った?……繿もこっち来てるみたいなんだよね』
「………」
(無言で目を逸して鞄の中を整理しては昼間拾ったタバコケースを何気なく手に取る。
瞬間、兄が珍しく取り乱したようにこちらに近付いてきてバッとタバコケースを取り上げて。
『な、んで菊が此れ持ってんの?』
「……昼間…色々あって…その時、拾って。……………やっぱりあんた等の父親の?」
『…………小さい頃、繿と一緒に父さんの誕生日に買って……、でもあの時ゴミ箱に捨てられた筈…』
(兄曰く昔はろくに食事も作って貰えず食いつなぐ為に道端に落ちている小銭などを拾っていて、その少ない金から買ったプレゼントらしく。
『ご、御免。なんでもないや。これ返すよ。あ、お風呂先に入るね』
「綸…」
(タバコケースを押し付けられ早々に浴室に行ってしまった兄に何も言えず、結局自分は相手も兄も支えられず傷付けるばかりなのかと俯いて。
(その頃、ホステスの家では女が相手に料理を振る舞い何度も礼を言っていて。
『貴方みたいないい人に会えて嬉しいわ。なんか見た瞬間ビビッと来たのよ。でも彼女いるわよねぇ。…って彼女いるならこんな事付き合ってくれないか』
(クスクス口元に手をあて笑っては『好きな人はいるの?』と恋話を暫く続けた後、明日店にその客が来るため一緒に店に来て会って欲しいと頼み『その人ちょっと意地悪だから気分害しちゃうかもだけど、その分お金もだすし美味しいものおごるわ。いい店知ってるの』と笑って。
>露木
( ホステスの女の家にて、頼まれた事に二つ返事をしてはお手製の食事を口にしていて。
ホステスという仕事も大変だな、なんて思いつつ他愛も無い話をしては兎に角父に渡す分の金は手に入ると安堵の息を漏らして。
しかし何時までも見ず知らずの女から金を貰う訳にも行かないし恋人の振りをするだけなのにこの額は大き過ぎる。
申し訳無さそうにホステスを見詰めては「何でもするから、言ってくれれば…力になる」と小さく言って。
( 翌日、ホステスとの同伴出勤をしてはビップルームにて頼まれた酒を大人しく飲んでいて。
未成年というのを隠し、以前の仕事もありどこか慣れた様子で座ってれば直ぐにストーカーと思しき男が来てはいきなりに自分の胸倉を掴んで来て。
『お前が希久の恋人だぁ??ふざけた事言いやがって………希久は俺と付き合ってんだよ』
( 理不尽な言葉に確かに面倒な奴だと溜息を漏らすも力になると約束したばかり。
ホステスを強引に抱き寄せては「俺達一緒に住んでるくらいの仲なんだぜ??俺達のが“付き合ってる”って言えんじゃねぇの。………それとしつこい男は嫌われるから注意しろよ」と静かに述べて。
拳を振り上げるも店の中だと言う事を思い出したのか大人しく拳を戻し、それでもホステスを諦めるつもりは無いのか同じ席に腰を下ろしては酒を頼み始め。
( その頃、父はいつも持ってたタバコケースが無い事に焦りを見せては家を飛び出し昨日通った道をもう一度辿り探していて。
咥えてた煙草を噛み締め見付からない事に苛立ちを感じては煙草を捨て靴で火を消して。
路地を抜けた所でばったりと相手に出会しては眉間に皺を寄せ通り過ぎようとして。
>桐崎
(バイト帰りもしかしたら相手の父がタバコケースを拾いに来るかもと路地裏へ足を向けたところ父と出会し、通り過ぎようとする腕を咄嗟に掴んでタバコケースを差し出して。
「…此れ、貴方のですよね。…すみません、風で飛ばされたり掃除されたりしたらいけないと思って勝手に拾って…」
(言い終わる前にタバコケースをやや乱暴に奪い取られては『糞餓鬼が』と舌打ちし踵を返されるも掴んでいた腕は離さずに。
「なんで……なんで息子さんに本当の事を言って上げないんですか?…本当は分かり合いたいんじゃ…、だからあんなDVD手に取って見て…『うっせぇ!!てめぇは関係ねぇだろ』
(腕を振り払われ罵声を浴びせられては拳が振り上がるのを見て一瞬過去の誰かと重なりギュッと目を閉じ身構えるも痛みは来ることはなく恐る恐る目を開けると怪訝そうにする父の顔があり。
『お前…、あの時の“女”か?…その髪と瞳の色……間違いねぇな』
「………」
『何故、彼奴にそこまでする?お前は彼奴のなんだ?あの“化物”に付き纏って良いことなんてねぇだろ?』
「“化物”って言わないでください。…あのヤクザに息子さんを“化物”って言われた時、貴方すごく悲しそうにしてたのに。………それと俺と彼奴はただの顔見知りです。…俺が勝手に付き纏ってるだけで…」
『だったら余計なことすんじゃねぇ。失せろ!!!』
(怒号に小さく肩を震わせるも頭の中で“後ろだ!!”と自分と似た声がして、咄嗟に振り返り父を庇うようにしては頭に石がぶち当たりドロリとした血が額から流れ。
『おいおい、当てるのは後ろの糞親父だろ?何しらねぇ奴に当ててんだよ』
『向こうが勝手にあたって来たんだよ』
『オラ餓鬼!痛い目見たくなかったら其処をどけ!』
(昨日の取り立てのヤクザ達が迫って来ては何故か父を守らねばと思い護身術程度だが対抗しようと男達を見据える。
何処か遠い昔、以前もこうして相手の父を背にしていた気がして不思議な気持ちになりつつ男達の動きを注視して。
(その頃、女の店では男が相手に酒を大量に飲ませ嫌がらせをしては『その気持悪い髪の何処がいいんだ』と悪罵を浴びせていて。
『気持ち悪いなんて言わないで!とても綺麗じゃない。貴方は私の感性分かってくれないのね。…それに彼氏紹介したら諦めてくれるって言ったじゃない!』
『…こんな奴が希久の男なんて認めない!お前もいい気になるなよ!!糞餓鬼が!』
(唾を飛ばし口汚く嘲罵して相手に手を上げようとしたところ男の携帯が鳴り、罰が悪そうに舌打ちしては携帯に出て。
『なんだ!!!今取り込み中だぞ!』
『すみません。ですが少し面倒なことに……、実は“化物”の親の取り立てに来てるんですが少々邪魔が入りまして……『んなもんぶっ飛ばせばいいだろ!』
(荒々しく吐き捨て通話を切っては酒を一気飲みするも何か思い至ったように口角上げ相手を見て『お前、希久が好きなら何でも出来るよな?だったら其れを証明して貰う。歯向かうなら周りに迷惑かかるからな』と内容は言わずに。
男は闇金の頭。それはホステスも知らぬ事実で。
男は相手が父の息子だと勘付き、自分ごと痛め付けさせ相手に取り立てをさせるつもりで。
>露木
( やっと男達が帰り自分達も帰路を歩く中、ホステスが申し訳無さそうに何度も何度も謝って来るのに溜息をついてはくしゃりと髪を撫でてやり「別にどうって事無い」と応えて。
男達の企みなど知らずに明日の呼び出しを面倒そうにしては、それでもホステスにはそれなりに世話になったし逃げ出す訳にも行かないと。
ホステスお手製の食事を振舞われ風呂を済ませては暫くぼんやりとしてたが漸く眠りに付き。
( 翌日、ホステスを仕事先に送り届け自分は男に呼び出された先の住所を辿り街を歩く。
辿り着いたのは三階建ての建物に胡散臭い金融会社の名前がある場所で小さく首を傾げながら階段を登って行って。
扉を開けるなり目に入ったのは縛り付けられた父と相手の姿、二人ともボロボロだったが父の身代わりになった相手は酷い怪我で。
「………どういう、事だよ」
『おい!!!何でここに来た!!!さっさと帰れ!!!』
( 父の怒声と共に一人の男が父の腹部に蹴りを入れるのが目に入り、それを庇う様に相手が父の元に行こうとしてはもう一人の男が相手を取り押さえて。
昨夜の男が自分の元に来るなり髪をグッと掴んで来ては『お前の親が抱えた借金、返済日とっくに過ぎてんだけどよ。…お前が代わりに払えるよな』と。
「………は??」
『そいつは何も関係無ぇだろうが!!!こいつ(相手)も………早く解放しろ!!!金なら俺が…』
『そう言って何年経ったんだろうなぁ!!!』
( 尚も暴行を加えられる父親に驚きを隠せず呆然としては借金の根源も知らずに自分が用意した金だけでは足りなかったのかと冷静に考えは焦りを混ぜつつ静かに父を見詰めて。
「………なんで闇金になんて手出したんだよ」
『………っ、…兎に角…手前みてぇな化物には関係無ぇんだよ!!!さっさと出て行け!!!』
『そうは行かねえなぁ、息子さんにはしっかり金を稼いで貰わねぇとだからな』
「……………露木は関係無いだろ」
『いや、こいつも解放する訳には行かねぇよ。お前の親父と一緒にいたし何らかの関係はあんだろ??…それにこんな顔立ちならどこぞの野郎にでも売り飛ばせるからな』
『ふざけんな!!!こいつは何も関係無いって………』
( 言い終わらない内に再び父親への暴行が始まるのをどこか冷静に見詰めてたが「良いよ、俺が払うから」と静かに告げて。
請求書を押し付けられては「明後日までに何とかするから」と無表情で告げ出口のドアに手を掛けて。
>桐崎
(身体中がギシギシと軋むように痛む中、相手から告げられる言葉を聞いてはすぐに相手が考えていることが浮かび「待てよ!!!」とドアに手を掛ける相手を呼び止める。
男の押さえつける手が強まり痛みが走るが構わず身を乗り出し。
「あんた…見世物して身売りする気だろ!? そんな大金…あんたの身がもたない…。そんなの絶対に許さないからな!!……あんたがそんな真似したら彼女(希久)だって悲しむだろ…」
(本当は自分が悲しいと言いたかったがその気持ちを抑えて相手の背を強く見据え「あんたが自分を売るってなら、俺も解放して貰って身を売る…」と勝手だと充分理解しながらも全く譲る気のない強い口調で述べて。
「……でもあんたは俺に“身を売って欲しくない”って言ってくれた。…出来ればそれを守りたい。………だからさ、今回も彼奴等(若頭達)を頼ろう。……彼奴等なら返済待ってくれるし、きっとこうやってあんたが傷付くのを望んでない。……あんたの父親もだ」
(誰かを頼り迷惑をかけるなんてことはしたくなかったが、相手が無茶をしたと分かればまた青年や兄が悲しむ。
何より自分が相手が傷付くのを見たくなく…。
『てめぇさっきからガタガタうるせぇぞ!!…それ以上喋ったら喉掻っ切るぞ』
(髪を掴まれ頭を地面に押さえ付けられ表情を歪めるも相手からは目を逸らさずに「俺は本気だからな!!」と相手の行動次第で自分も然るべきことをすると。
>露木
( 相手の強い眼差しに圧倒されつつ、それでも相手が身売りをする事だけは嫌で「………少し…待っててくれないか。身売りや見世物は…しない。…約束する」と相手を静かに見捉えて言って。
部屋を出てはどうする事も出来ずに携帯を取るも自分の親の借金を肩代わりして欲しいだなんて要求出来るのかと。
仕方無く兄に連絡をしては震えた声で内容を話すも、兄すら父が闇金に手を付けてた事を知らなかった様で僅かに焦りが伺えては『…分かった、木ノ宮にも話して急いでみる。………でも菊を傷付けた父さんと繿にはしっかり文句言わせて貰うからね』と。
( その頃、ヤクザの男はぐったりとする父と相手を見詰めては鼻で笑い相手の前髪を掴み上げて。
『お前も災難だな、見ず知らずの男を庇った所為で汚ねぇ親父共に売り飛ばされるかもしれないんだぜ??』
( 嘲笑う様に相手の顎を掴み視線を合わせるも強い相手の視線が気に入らずその頬を殴り付けようと。
その刹那、父が突発的に相手を庇う様に身を乗り出しては代わりに撲り飛ばされて。
別の取立ての件での電話が鳴ってはヤクザ達は早々に部屋を出て行き父と相手だけになれば父は相手に背を向ける様に横たわって。
『…言っとくが勝手にお前が首突っ込んで来たんだからな。………謝ったりはしねぇぞ』
( 庇った癖にやはり無愛想な事を告げては切れた口元の血を自分の服で拭い煙草が無い事に苛立ちを見せ。
>桐崎
(相手の父のぶっきらぼうな態度にやはり親子だなと思えば不謹慎にも可笑しく思え小さく笑いを零し、苛々する様子に縛られている状態ではどうすることも出来ないため気休め程度に学校での相手の様子などを勝手に喋っていて。
(その頃、ホステスは相手が心配で仕事を抜け出して来ては街を歩く相手の姿を見つけ駆け寄り、頬の傷を見て心配そうに眉を下げて。
『そ、その傷…、私、御免なさい。……取り立て以外になにがあったの?なんか思い詰めた顔してる』
(ハンカチで相手の傷口をそっと拭いてやりながらじっと相手の表情を見詰めるもそれよちも治療が先だと『とりあえず私の家に来て。傷の手当てしないと。』と相手の腕を引き。
その姿をたまたま別の取り立てに出ていたストーカー男の部下が目撃して男に報告しては、当然男の逆鱗に触れ『畜生め。借金と一緒に希久も返さねぇと許してやらなぇからな』と条件無視の勝手なことを述べていて。
(一方兄の電話を受けた若頭は直ぐに行動を起こし小切手を用意しては念のため、部下にボディーガードなどを頼み、相手宛に《明日の朝にはそっち行けるよ。…お詫びとか礼とかはいいいからね。桐崎には前に迷惑かけてるからさ》とメールを送って。
>露木
( 相手の安否が不安で碌に眠れずに翌日になっては若頭と兄と共に昨日の金融会社へと訪れて。
裏を纏める若頭の立場を感じさせられる丁寧な言葉遣いで交渉に応じるもストーカーの男は許す筈も無くホステスの女を引き渡さなければ許さないと。
若頭や兄は状況が理解出来て無かったが兎に角相手と父を解放して貰わなければと考え小切手の入った封筒を差し出して。
『桐崎さんの借金の五倍分の値です。希久さん…とやらの話は分かりませんが借金の話とは無関係と思えました、現金を返したにも関わらず人質を返してくれないのならこちらとしても考えるところが御座いますが…如何でしょうか』
( 若頭が冷静に答えるのにヤクザの男は暫し考え込むも流石に敵に回したら不味い存在だと言う事を理解したのか兎に角父と相手を解放するも『希久を返さないのならお前の過去の写真学校にバラ撒くからな』と耳打ちされ。
ホステスには沢山世話になった、恋人の振りをしただけなのにも関わらず行き場の無い自分を助けてくれた事もあり恩は返さなければと。
「…悪いが“あんたに”希久を渡すつもりは無い」
( 元々付き合ってる訳では無い、あくまでこのストーカーから守る為の振りという事もあり“あんたに”と言う単語を強調してはキッと睨み付けさっさと金融会社を後にして。
>桐崎
(若頭の仕切るホテルに連れられては水を飲まされて傷の手当てをされ強制的にベッドに寝かされ、何から何まで迷惑をかけてしまったことに謝罪と礼を述べ。
「……お金は少しずつになるけどちゃんと返すよ。助けて貰ったし…」
『別にあんな紙切れ程度気にしなくていいよ。それよりも僕のこと名前で呼んでよ』
(ニコリと微笑む若頭にそれだけでは流石に…と思いつつ頷いては、相手の姿がないことが不安で「桐崎は…?」と問うも今捜索中のようで。
「……彼奴、疲れた顔してた。それにあの男に何か言われてたみたいだし、なにかあったら…」
(嫌な予感がして身を起こそうとするも兄と若頭に止められ再びベッドに沈められる。
それでも動ことするが急に眠気が襲い「……繿」と呟いたのを最後に深い眠りへといざなわれ。
『やっと睡眠薬が効いたよ。ほんと薬には強いんだから』
『眠ってて貰わないと絶対、桐崎探しに行くからね』
『そうだね。……………あのさ木ノ宮。助かったよ。ありがとう』
(兄は小さく微笑むと傷の手当てを碌に受けずに部屋を出ていった父のあとを追い掛け、数メートル先に父の背中が見えたところで『父さん!!』と叫び。
しかし父は止まること無く、兄はほんの微かに下唇を噛むと走って父の腕を掴み『父さん、ちゃんと全部話して。繿とも、ちゃんと向き合って』と普段見せない切なげな表情で懇願し。
父は何も言わず兄の手を払うとポンと軽く兄の肩に手を置きその場を立ち去って。
(その頃、ストーカー男は相手が最後に残した言葉に憤慨しており、部下も手が付けられないほど荒れていて。
『くそ!!あの化物め!!!本気で写真をバラ撒かれたいのか』
『お言葉ですが…木ノ宮組が絡んでいるとなると下手に動くのは危ないかと…うちの部下の何人かも既に買収されているようでしたし…』
『うるせぇ!!ビビってんならお前もあっち側につけばいいだろ!!俺は絶対あの餓鬼をゆるさねぇ』
(見境を無くしたように怒鳴り散らしては二重構造になっている引き出しからピストルを取り出し不気味に笑み。
『ま、まさか“消す”気ですか?…流石にそれは……』
『指図するな!お前も消されたいか?………何、化物の一匹殺したところで誰も悲しむ奴もいないし消えても気付かねぇよ』
(ケタケタと嘲笑し、部下の『ですか……』と抗議する言葉も聞き入れず『身体も精神もボロボロにしてやる』と狂乱の笑みを浮かべ。
>露木
( 夜、ホステスの女の迎えに来ては恋人を演じ続け腕を組みホステスの自宅へと向かう。
部屋に戻るなり料理を始めようとする女の隣に立ち、最近ずっと作って貰いっ放しだったし自分も手伝うと言っては鍋に火を掛ける。
『繿、私貴方にお礼をしてるだけなのよ??…なんか気を使ってるんじゃ』
「お礼にしてはあんたも世話焼いてくれすぎだから」
( 無表情で返してはあのストーカー男が黙ってる筈も無くこれからの事を考えると少しばかり憂鬱で。
( 翌日、ホステスを仕事先まで送り届けては自分は父親の元へと向かい何時もの様に現金の入った封筒を差し出し「足りないなら…俺ちゃんともっかい金用意するから。………闇金になんて手出すなよ」と呟き。
『………煩ぇな、化物が誰に向かって口聞いてんだ』
「…ごめん。…でもやっぱり」
『さっさと去れ』
( 現金の半額を押し付けられてまた去ってしまう父に疑問を浮かべつつ最近はめっきり暴力も無くなったものだなと。
ホステス女が終わるまでどこかで時間を潰そうとネットカフェにでも入ろうとした所でストーカー男とばったり出会しては封筒を手渡され中身を開く。
幼少期の過去の自分の写真から今に至るまでの表沙汰にされたくない写真、なぜこんな物を持ってるのかと男を睨み付けるも男はほくそ笑むだけで。
『それバラ撒いてやっても良いんだぜ??』
「そんな事したくらいで希久を渡すと思ったのか??」
『お前が大人しくするなら金だってやるよ、ただ逆らうのならこっちは全力でお前を潰す。…“逆らうな”って言葉は犬のお前には聞きなれたもんだろ』
「………馬鹿馬鹿しいな」
( キッとストーカー男を睨み付けてはさっさと場を立ち去ろうとして。
>桐崎
(ストーカー男は相手の態度に青筋を立てては小さく口角を上げてタオルでカモフラージュしたピストルをカチャリと相手の背中にあてがい。
『聞き分けの悪い犬は始末するまでだ。“化け犬”を排除したってんならお国の奴等も大喜びだろうなぁ』
(相手の耳元で厭らしく嘲笑してはピストルをあてがいながら空いた手でタブレットのLIVE動画を見せる。
そこにはリアルタイムで相手の兄が蹂躙される姿が映し出されていて。
『これは今お前が“馬鹿馬鹿しい”と俺に逆らったからだ。お前の兄はお前と似て顔立ちがいいからな。…男は初めてのようだが』
(クックッと怪しく喉を鳴らしては次にホテルで薬により眠る自分の首筋に男がナイフをあてがう光景を映し出し『次少しでも逆らえば此奴に何があるか分からないぞ?…言っておくが此奴の部屋の鍵は外から開けられないように細工した。無理に開けようとすれば此奴の喉を切り裂くぞ』と脅しグッと銃口を相手の背中に食い込ませ。
『あの木ノ宮組の若頭ってのもちょろいなぁ。ホテルの従業員の中に俺の部下(自分にナイフをつきつける男)を紛れ込ませるのは簡単だったぜ』
(愉快そうに笑っては相手の耳元に口を寄せ『逆らえば…分かってるよな?……大人しく希久を渡せ。希久もお前が“化物”だと分かったら俺を選ぶと思うぞ?』とほくそ笑み。
『それとも潔く自分から“消える”か?…お前みたいな“化け犬”がいると周りが迷惑を被るからな。…だってそうだろ?お前の父親はお前が生まれてきたから会社も首になり借金をする羽目になった。お前の兄貴もお前のせいで随分辛い思いをしてきたそうじゃないか。希久も“お友達”もお前みたいな“化け犬”が生きてるせいで苦しめられる。……お前に生きる価値があるか?』
(男は狂気じみた笑みを浮かべ相手の精神を踏み躙るために都合の良いよう言葉を好き勝手並べて。
>露木
( 目の前に映し出された光景に息が詰まりそうになりつつ、それでもホステスを差し出す訳には行かないと自分に言い聞かせるも相手を傷付けるのだけは自分自身も許せずにゆっくりと口を開く。
「………は、希久は俺に惚れてんだぜ??あんたどうやって希久と俺を引き離そうっての??」
『なァに簡単な事だよ、お前が希久の前で“化物”になれば良いんだ。場所は設けてやるから安心しな』
「…あんたも無様だな、…そんな事で…」
『手に入るさ。化物なんか直ぐに捨ててくれるよ』
( ホステスとはあくまでも演技だったがどちらを選ぶのかはホステス次第。
相手や兄へ何度も謝罪の言葉を思い浮かべ「分かった、…希久の目前で化物になりゃ良いんだろ??」と。
( その夜、さっそくホステスの女を呼び出し金融会社の一室に招き入れるとストーカー男達に囲まれながら止まらない冷汗を拭う。
いくら化物に慣れようとも蔑まれるのには慣れてない、重く伸し掛る空気に耐えられず一つ深呼吸を置いてはホステスに一歩詰め寄る。
『繿…??どうしたのよ』
「…………………………ごめんな、…騙してて」
( 眉を下げ無理矢理笑顔を作れば能力を解放し中途半端な無様な姿でホステスに手を伸ばす。
勿論の如く悲鳴を上げるホステスは自分から距離を取り小さく震えて居て。
ストーカー男は面白そうに笑いながら既にホステスの心は手に入った物だと思っては相手と兄を解放するように部下達に連絡を入れて。
漸く人姿に戻り悲しそうに微笑んでは「………怖がらせて…ごめん」と言うも状況が理解出来ないホステスは覚束無い足取りで金融会社を後にして。
満足そうなストーカー男になど目もくれず自分も金融会社を後にしては誤解の解けてない父の元に帰れる筈も無くしとしとと雨の振る街の中をぼんやりと歩いていて。
>桐崎
(夜、ホテルにて漸く目を覚ましては何があったかも知らずに呑気に小さく欠伸を零すも枕元で深刻そうな顔をする若頭に気付き相手に何かあったのか詰め寄り。
『実は、綸が……』
(口を開きかけたちょうどその時、扉が開かれ笑顔の兄が近づいて来て。
『あ、菊おはよう。下であったかいスープもらってきたよ。食べる?』
「あ、ああ。ありがとう。……綸、……なにかあったのか?」
『んー?別になにも?それよりも冷めないうちにスープ食べてよ。美味しいから』
(普段と変わりない笑顔にどこか違和感を覚え、訝しげに兄と若頭の顔色を窺ってはやはり何か可笑しいと。
「…綸?」
(兄の頬に手をやり心配げに顔を覗き込んでは表情が僅かに険しくなったのを見逃さず“相手に何かあった”と思っては弾かれるように身を起こし部屋の扉を開いて出ていこうとするも目の前に人がいたため足を止め。
その人物は相手と一緒にいたホステスで微かに身を震わせ目に涙を溜めており。
『木ノ宮さんから繿のお友達が此処にいるって聞いて……、その私、…繿に助けて貰ったのに…最低なことして…』
(ホステスは涙ながら事情を話すが彼女も全てを知っている訳では無いため状況が掴めず、兄達も詳細を教えてはくれずにやや苛立ちながら「それで、桐崎は?」と問うもホステスは探したけど…と首を横に振るだけで。
自分が相手を最後に見たのは相手が自分との約束を守って闇金達から解放してくれた時。
まさかあの後男達に何かされたのではと胸が騒いでは考えるよりも先にホテルを飛び出していて。
(慣れない夜の街、徐々に強くなる雨足の中脇芽も振らず相手の姿を探しては人気のない道で漸く相手の姿を見つけ迷いなく後ろからその腕を掴み振り向かせて。
その酷く疲れた表情と辛そうな表情に胸が痛んでは、あれほど触れるのを躊躇っていたのに冷たく湿った頬にピトリと手を添え「……心配した…」と小さく零して。
「……なにがあったんだ?……そんな疲れた顔して……、…まさか見世物、してないよな」
(相手になにがあったかも知らずに最低な疑いをしてはジッと相手を見詰め。
ポトリと相手の髪から雨水が落ちたところで少し冷静になっては「…御免。変なこと言った…」と謝り「…ここから俺が借りたホテル近いから、とりあえず其処言って身体拭いて温めよう。…そのままだと風邪引く」と手を引きホテルへ向かおうとして。
>露木
( 結局は本当の自分を認めてくれる者など一人も居ないのだとぼんやり考えては不意に後ろから手を掴まれ反射的に振り向いて。
恐る素振りも無く自分に触れて来る相手を一瞬驚いた様に見詰めるもそのまま腕を引かれてはゆっくりと歩き出す。
しかしこちらから足を止めては相手の頬や首筋に遠慮がちに触れ怪我などが無い事を確認して。
自分の所為で関係の無い兄や相手を傷付けた。
自分が生まれた時点で父や母には散々な迷惑を掛けて生きて来た。
「……………ごめん、……………俺………」
( ポツリと謝罪の言葉を零すもその先が出て来てくれずに吃らせては俯いて。
そのまま腕を引かれゆっくりとホテルへと歩き出しては部屋に入るなり相手を抱き寄せる。
何となく人肌が欲しく、抱き着く様に相手の肩に顔を埋めては暫くそうしていて。
( 翌朝、相手より早く起きては相手の額に口付けを落とし部屋を後にする。
特に行き場所が合った訳では無いのだが何と無く街に出ようとしてた所、相手の様子を見に来た兄に出会してはビクリと身が震え逃げ出そうとして。
しかししっかりと腕を掴まれてはそのまま顔を合わせられ真面目な視線を向けられて。
『何で逃げるの』
「…………………………」
『ちょっと、聞いてんの??』
「……………綸、……………ごめん。………ずっと、言おうと思ってたんだ。…今回の事も謝らないとって思ってたけど………俺の所為で綸…ずっと虐められてたんだよな」
( ぎこちなく表情に笑みを混ぜてはずっと言おうとしてた言葉を述べそのまま腕を振り払って。
走って訪れたのは実家、丁度家を出ようとしてた父にポケットから金を取り出しては「………今日の分」と小さく呟いて。
しかし父は自分の手を払う様に退かし『………もう、要らねぇんだよ』と。
その意味すら分からず、驚いた様に父を見詰めては「…何でだよ。もう顔も見たく無いとか??………そりゃあそうだよな、俺の所為で会社クビになって母さんも可笑しくしちまって…」と一人でに言って。
途端、父の平手打ちが飛んで来るも幼少期のそれと重なっては恐怖から咄嗟に逃げ出して。
>桐崎
(父は逃げ出した相手に『…繿ッ』と小さく名前を呼ぶも相手は止まらず、相手を叩こうとした手を見ては小さく舌打ちし『誰がてめぇのせいでクビになるかよ』と吐き捨て、おもむろにタバコケースをポケットから取り出ししばらく見つめた後、出かける気が失せたのか家の中に戻っていき。
(その頃、自分はホテルで目を覚まし相手が居ないことに焦って直ぐに着替え等を済ませ出ていこうとしては兄と鉢合わせいきなり抱き着かれ。
いつものことだが、何となく昨日の落ち込んだ相手の雰囲気と似ていると思えば落ち着くまでそっと背中を撫でてやり。
『…ん、もういいよ。…体調どう?』
「平気。……それよりあんたのほうが顔色悪いよ。…彼奴もまだ寝てたほうがいいのに」
『…………この前、気にしてないって言ったつもりだったんだけどな』
「……?」
『ううん、こっちの話』
「…ところで彼奴が行きそうなところ分かるか?……心配なんだ」
『……多分実家に行ったと思うけど、……案内するよ』
「でも…いいのか?あまり帰りたくないんじゃ…」
(戸惑い気味に聞くも兄はニコリと笑うだけでそのまま実家に連れられる。
父が出てきて相手はいないと言われるも何故か中に通されてはなにも喋らない気まずい時間が数分続いて。
「あ……あの、怪我の具合は…?」
『あ?んなもん最初からしてねぇよ』
「………。……彼奴とはあれからお話されましたか?」
『しつけぇな。…他所の餓鬼に話す義理はないな』
「……あの、俺、…彼奴探すので…此れで失礼します」
(今は相手の様子が気になり一刻も早く見つけ出さねばと思えば席を立ち、部屋の隅で酒を飲む相手の母に「お邪魔しました」と頭を下げ相手の実家を後にして。
(その頃、父から逃げ出した相手の元にあのストーカー男が怒りの形相で背後から迫っては突如相手を車の後部座席に押し込み部下に車を発進させて。
『おいお前。希久をどこへやった?お前を恐れた筈なのに俺のところに戻って来ないぞ。お前が隠したんだろ?さっさと希久を返せ!』
(男はホステスが若頭の元で保護されているとは知らず、勝手な妄想で逆ギレしては車の中にも関わらず相手の腹を殴りつけ『“化物”が』と嘲罵を浴びせ。
『まあいい。居所吐かせるまでたっぷり仕置きしてやるよ。俺の知り合いに見世物屋やってる奴がいてお前の写真を見たら一目惚れしてたからな。たっぷり可愛がって貰えるぞ』と厭らしく笑んで。
>露木
( 父から逃げて来たもののふと真横に止まった車に押し込まれてはいきなりの事に驚くもそんな余裕は無く腹部の痛みに表情を歪めて。
あのホステスの女はやはりこんな男には付かなかったのかとどこか安堵しては脅しの言葉も耳にせず口角を上げ「あんな良い女が手前みてぇなクズ野郎に移る訳無ぇだろ」と強がりを並べて。
ストーカー男の怒りを増幅させてしまうも思考は何処か空虚で暴力にも特に何も感じなくなってはそのまま見世物屋へと到着し裏へと押し込まれて。
店主と思しき男がスタンガンを手にこちらへと近寄るのをぼんやりと見詰めてはストーカー男が『今ちゃんと希久の居所を話せば手加減してやるよ』と。
「話すも何も俺は知らない。あんたのとこに行くのが嫌で逃げちまったんじゃねぇの??」
『………っ、この糞野郎!!!もう良い、やっちまえ』
『了解』
( 店主が近付いて来るのと共に激しい痛みが襲い掛かってはそのまま意識を手放して。
( その頃、実家を後にした相手を追う様に兄が相手の腕を掴んでは『俺も行くよ』と。
相手の怪我もまだ心配で取り敢えず街に来ては自分の行きそうな場所を巡るも居る筈も無く。
丁度そこへ通り掛かったストーカー男が相手と兄の目前に車を止めては怒りの形相を向けて。
『おい、お前等あの化物の仲間だろ??…希久をどこへやった』
『………いきなりどういう事かな。もう俺達には関わらないで欲しかったんだけど』
『希久の居場所を吐けってんだ、早くしろ』
( ストーカー男は一方的な苛立ちをぶつけ相手と兄を冷ややかに見詰めては『今度は二人纏めて売っぱらってやっても良いんだぜ??』と。
>桐崎
(男の言葉に一切怯まず冷たく見返しては、前に出ようとする兄を下がらせ一歩前に出ると男を強く睨みつけ。
「あんた…繿に何かしただろ?…どこへやった?」
『繿…?あー、あの糞餓鬼か。知らねぇよ。…つーか、こっちが質問してんだよ!さっさと希久の居所を吐け!!』
「…俺は知らない。……で、繿はどこにいる?」
『はっ、誰が教えるかよ。そんな態度取ってると化けもんがどうなるか分かんねぇぞ?』
(下品に笑う男に相手の身が危険だと確信しては一気に憎悪が沸き立ち、微かに能力が解放されては足元から風が沸き立ち頭の中で“力を貸してやる。其奴の額を捉えろ”と声が響き言われるがまま男の額に手をかざし。
瞬間、男の記憶が頭の中に早送りのごとく流れ込み相手の居る場所までの道筋が浮かび相手が痛め付けられる光景まで行き当たったところで記憶が途切れ。
初めの事にフラリと身体が傾くも何とか踏みとどまっては『何をした!!』と叫ぶ男を無視して兄の手を取ると一目散にその場から走り去り近場のコンビニに入って。
『急にどうしたの?』
「……あんたは安全な場所で待ってて、……もし、俺の帰りが遅い時は此処に来て欲しい」
(男の記憶の中から兄に乱暴するよう命令する光景も見たためこれ以上兄を傷付ける訳にはいかないと謝罪の気持ちを込めてギュッと手を握るも、最悪の場合を考えてはメモに相手がいるビルの名前を書いて兄に渡し止められる前にコンビニを駈け出して。
(コンビニを出て直ぐにタクシーを捕まえては読み取った記憶を頼りに道筋を指示して目的地へと向かう。
辿り着いたのは古びた雑居ビル。記憶を辿って裏口に周っては電気メーターの下から鍵を取り中へと静かに侵入して。
奥の部屋から厭らしい笑い声と鈍い嫌な音が聞こえて来ては込み上げる憎悪を抑え、息を潜めながらそっと顔を覗かせる。
そこには数人の男達に囲まれスタンガンで無理矢理目覚めさせられ乱暴される相手の姿がり、其れを見た瞬間血が逆流するように熱くなっては何かが自分の中に入ってくるのが分かり気付けば男達の前に出ていて。
『なんだお前は?……お前も“化物”と遊びに来たか?』
「……黙れ。……繿から離れろ」
『チッ、何だよ邪魔しに来たのか。餓鬼は引っ込んでろ!!!』
(罵声と共に相手を殴りつけていた鉄骨を振り上げられては一瞬怯むも身体が勝手に動き其れを軽々と受け止めていて。
『「…ぬるいな。この程度か。……それで?此処で反撃しても正当防衛ってやつになるんだよな?」』
(自分の中の誰かが勝手に喋っては“筋肉痛になっても文句言うなよ”と頭の中で笑い、自分ではまず出来ない動きで男達をいとも簡単に地に伏せさせていき。
『こ、この餓鬼、化物か…!!』
『「化物?光栄だな。褒め言葉として受け取っておくよ」』
(余裕の笑みで最後の一人を手刀で気絶させるとぐったりする相手にかけよりその身をそっと起こして『「…大丈夫か?すぐに助けてやれなくて悪かった。…もう大丈夫だからな」』と相手の銀髪を優しく撫で小さく微笑むと軽々と相手を抱き上げ、未だに感じる嫌な気配に憑依したまま早々に病院へ向かおうと。
>露木
( 続け様の痛ましい行為に無表情を貫いてた所、いつもと違う雰囲気の相手が現れるなりいとも簡単に男達を捩じ伏せる光景に呆気に取られる。
軽々と持ち上げられるもドッと溢れた安心感から段々と意識が遠のいて来て。
( 目を覚ましたのは病院にて。
何故か両親の姿もあり飛び起きようとするも兄に肩を抑えられてはベッドへと戻されてしまい。
父は自分が目を覚ましたのを確認するなりさっさと出て行ってしまい意味が分からないまま兄と相手に目をやり「希久は無事なのか??」と問い掛けて。
『大丈夫だよ、今は木ノ宮と居るから』
「………そっか、安心した」
( 父を追い出て行った母ね背中をぼんやりと見詰め「………なんで居んの??」と兄に問い掛けるも兄は微笑むだけで。
『それは本人から聞いて欲しいな』と意味深な言葉を残しては父の元に向かう為兄も病室を出て行ってしまい。
相手と二人きりになり、目を合わせないままに「………ありがとな」と小さく零して。
そのまま相手の手を取ると無理矢理自分の身体を起こし相手をしっかりと抱き寄せる。
「…ちゃんと人を好きになったのって真希が初めてだったんだけど………あんな事合ったからさ。能力を見せたのに絡んで来てくれる奴ってあんたと赤城くらいしかいないから………ちょっと、びっくりした」
( 相手と距離を置くと言ったのは自分なのにそんなのはやはり心苦しく僅かに声色が震えては「………ごめん。…あんたの事…本気で好きだ。……………でも、……やっぱりちょっと無理があるよな」と悲しそうに笑みを浮かべては相手の髪を撫でて。
また迷惑を掛けるなどと考えると辛く、相手には傷付いて欲しくないと願う自分もいて。
>桐崎
(病院に戻るといつの間にか元に戻っており、相手と二人きりになり悲しげな微笑で紡がれた言葉に小さく瞬き戸惑いで瞳を揺らし視線を下げる。
これ以上は…と思うも愛おしい相手に抱き締められ“好きだ”と言われて気持ちを抑えられる筈もなく、“ああ…今更か”と自分の心情に小さく苦笑を漏らしてはそっと相手の背中に腕を回し少しでも負担が軽くなればと自分の方に体重をかけさせ。
「……無理じゃない。……俺もあんたがずっと好きだ。…何があっても…あんたに嫌われても…」
(静かに口を開いては顔を見られないよう体勢はそのままに話を続け、一月ほど前相手と距離を置く発端となった男子学生に言われた蔑みや嫌がらせを打ち明けて。
「……“遊び人”って言われて…、それは違うって思ったけど周りがそう見てるなら、俺がいるせいであんたも変な目で見られると思って……。汚れてるってのは本当だし…自信なくなって…もう迷惑かけるの嫌だから距離置かなきゃって……師範のところ行った。……なのにあんたと会ってあんたをもっと傷付けて……だから寮離れたってのに…これだろ?……なんかもう訳分からなくてさ」
(一気に喋っては少し身を離して相手を切なげに見詰め傷の残る頬に手を伸ばし。
「…いや…分かってるんだよ。…俺が、気持ち抑えられずにあんたと会おうとするから悪いんだって…。でも仕方ないだろ。…あんたが傷付くのは耐えられないし……好きだから」
(語尾を小さくして述べてはもう一度相手を抱き寄せ「…繿…、」と言葉を続けようとするも脳裏にあのホステスのことが過っては動揺して身を離し。
「……あ、あの女は?…一緒にアパート入っていっただろ?……あ…、もしかして付き合ってる?……え…と…俺、……なんか勘違ったかな。…好きってもしかして友達として、だったか?………御免、俺なんか変なこと言ったよな。忘れていいから」
(勘違いに勘違いを重ねていることも気付かずぎこちなく微笑んでは丁度の話題のホステスが見舞いに来たため「じゃあ俺は邪魔みたいだから。…ていうかバイトあるし。ゆっくり休めよ…お大事に」と相手の言葉を聞く余裕もなくその場を離れて。
ホステスは妙な自分の様子に首を傾げながら相手に向いては『大丈夫だった?』と机の上に見舞いの品を置き、一呼吸置いたあと頭を下げて。
『あの時は御免なさい。…すごく良くしてくれたのに突然でびっくりしちゃって……。どうしても謝りたくて木ノ宮さんに無理言って此処に連れてきて貰ったの。………本当に御免なさい』
(なんども謝っては相手の痛々しい頬の傷に触れて『…私、できることは何でもする。一応まだ“恋人”のつもりだから』と相手を見詰め。
>露木
( 相手と入れ違いに入って来たホステスに遠慮がちに向き直るも既に恐れは伺えずに安堵して。
触れられた手にビクリとするもホステスが恐怖を見せない事に確信しては頬に触れる手にそっと触れて。
「気にすんな、…怖がらせた俺も悪いから」
( 僅かに表情を緩めてはまだあのストーカー男の事も安心出来た訳でもないし暫くは“恋人”の関係を続けてた方が良いかと。
しかし先程の相手は明らかに勘違いをしていた様子、自分が相手に言った“好き”の意味を絶対履き違えてるだろうなと考えては後で連絡を入れてみようかと。
暫く他愛も無い話をした後、まだフラフラとする足取りだがホステスを玄関口まで送り届けては病室へと戻り。
( 夜、相手に電話を入れるも相手の携帯から自分のアドレスや電話番号を消去した事を思い出しては訝しげに思われてしまうだろうかと。
しかしこのままでは自分の気も収まらず、何度か電話を入れては留守電に残す事にして。
《あのさ、前に俺電話番号とか勝手に消したから………あんたさえ良ければまた登録しといてくれると嬉しい。………あとゆっくり話したい事もあるし………怪我だけだったから明後日に退院だしもし時間が空いたら会えないか??………時計台の所で待ってる》
( やや掠れた声で留守電を残しては相手からの返事が来る事を心の奥底で願いながら携帯をしまい。
今度こそ、しっかりと伝えようと胸に決めてはホステスとの関係も細かく説明するつもりで。
>桐崎
(バイトを終えてホテルに戻り寝支度を済ませたところ相手の留守録に気付いては何を言われるのだろうと不安が過ぎる。
それでも相手の話をちゃんと受け止めねばと次の朝相手に電話を入れて、正午に行くと用件と怪我の心配の話だけをしては通話を切りバイトに向かって。
(そして相手と約束した日、朝方までのバイトを済ませ一度ホテルに戻りシャワーを浴び相手に会うというだけでいつもより念入りにシャンプーをして着替えをする。
此れでは何か期待しているようだと小さく溜息を吐いては椅子に腰掛け時間まで少しだけ目を瞑って気を落ち着かせては何気なく閉じかけたピアスの穴に触れ。
何を言われるのか、とまた考えてもどうしようもないことを悩んではさっさと身支度をしてホテルを後にして。
(時計台、待ち合わせ時間より早めにきたが既に相手はそこにいて、一瞬足を止めかけるも覚悟を決めてはそっと歩みより平静を装っては「おはよ、早かったな」と微笑み。
「…ここじゃ寒いし何処か入るか?」と相手もまだ身体を休めたほうがいいだろうと近場のカフェに入ろうと相手が答えるよりも先に足を進め。
>露木
( 促されるがままにカフェへと入ってはコーヒーを頼み改めて相手を見詰める。
しっかり話さなければとは思うもどうしても迷いが生まれてしまい一度小さく深呼吸しては伏せ目がちにゆっくりと口を開き。
「………まぁ、あんた色々勘違いしてんだろうなって。…昨日俺が“好き”って言ったのは友達としてとかじゃないんだよ。…その…一人の男としてあんたを好きだって話」
( 話したら話したで一気に羞恥が込み上げるもそれでもホステスとの誤解を解かなければとポツリポツリと自分の置かれてる状況を話して。
「…馬鹿馬鹿しいだろ、“希久”って名前に惹かれたんだよ。…その、…あんたと同じだったから」
( 照れ臭さを隠す様に運ばれて来たコーヒーを飲み込んでは空気を変えるように「そういう事、…でもまぁ…今の話があんたを嫌な思いにさせてたらごめん」と。
元々自分が人との付き合いや恋愛など出来る筈が無いという考えもあり例え結ばれなくても相手を思い続ける自信はある為後悔はしておらず。
ふと思い出した様に以前相手に突き返された(と、勘違いしたままの)ストラップを取り出しては「…重かったんだよな、男からの贈物なんて。…まだ持ってるなんて未練がましいよな。………付根のとこ、壊れてたからさ。新しいのと付け替えたんだ」と。
苦笑気味にストラップをしまおうとしては「俺、意外と嫉妬深いんだ。直ぐに妬くし…突っ走るし。………だからあんたと釣り合わないのは分かってる、…でもせめて友達として…」と言い掛け言葉を飲み込み。
>桐崎
(相手から告げられた言葉にまた自分が早とちりをしていたと知れば恥ずかしくなり視線を横に流す。
嫌な思いなどとんでもないと首を横に振ろうとした時、相手が取り出したストラップを目にしては小さく目を見開き思わずガタンと身を乗り出してストラップをしまおうとする手を取って。
周囲の視線が集まりハッとなっては俯き気味に座り直し、そこで漸く何故相手の叔父の家にあっただとか付根が新しいだとかの辻褄が合い、男子学生達にはめられたことを悟って。
あまりの自分の不甲斐なさに頭を抱え大きな溜息を吐いては「ほんと馬鹿…」と自分に対して呟き、あの夜男子学生にされたことを話し。
「……ずっと、探してたんだ。……一晩中探して…それでも見つからなくて…、普通気付くよな。…でももし本当に捨てられてたらと思ったら諦めきれなくてさ」
(その結果、朝路地で男達に善がるよう脅されそこを相手に見られ、どんどん男達の思惑にはまっていき、自分の弱さのせいで相手を傷付け死の危険にまで晒してしまった。
「……俺がしてきたことは許されると思ってないよ。…あんたは俺といないほうが絶対幸せだし、釣り合わないとしたら俺の方だ。……でももしあんたの言ってることが本心なら……その気持ちは受け止められない」
(グッと拳を握って相手を見詰めては短く息を吐き「……俺は、“友達として”なんて無理だ。……我慢できない。…あんたと一緒にいたらきっと抑えがきかない」と。
散々相手から離れようとしたくせに身勝手なのは重々承知だが欲は止まらず。
「……もし、…まだ俺なんかのこと好いてくれてるなら……そのストラップ、俺に譲ってくれないか?」
(期待と不安の入り交じる瞳で相手を見てはジッと返答を待つ。
そして相手が何か言おうと口を開きかけた時、二人の携帯が同時に鳴り微かに肩を揺らして画面だけ見ると兄からのメールで件名に“至急”とあり。
至急と言われ本文を見ないわけにも行かず、躊躇い気味に見てみると《父さんと母さんが家で待ってるから二人で来てね♪父さんもう既に待ちくたびれてるからはやくねー》とあり。
なぜ二人でいるのを知っているのだろうと疑問に思いつつも“至急”よりも相手の返事が聞きたく携帯を置き相手に視線を戻して。
>露木
( 嫌われてなかったと言う安心感に包まれ、改めて相手に気持ちを伝え様とした所で相手と全く同じタイミングに受信音が鳴り響いては自分も携帯を取る。
兄からの明るい文章とは裏腹にその内容にサッと青ざめては咄嗟に自分の財布を取り出し持ち金を確認する。
出来る事なら行きたくない、自分は行かないと告げようとした時再びメールが届いて。
《絶対来てね》
( 絵文字が一つも無い文章から断れる雰囲気では無く髪をくしゃりと掴んでは相手に向き直り「…何か、…来いって言ってるし………行くか」と。
( 相手と共にカフェを出ては自宅への道を歩くも気は重く何を言われ何をされるのだろうかと。
人気が無いのを良い事に、隣に居る相手の手を取っては何とか自分を落ち着かせて。
自宅の玄関前、中々踏み出せずに居た所で扉が開き兄が満面の笑顔で出迎えて来て。
『さ、入って入って』
「綸………俺、………」
『大丈夫だから安心して』
( グイグイと手を取られては何時ぶりか綺麗に片付けられた部屋へと通され、リビングにて煙草を咥える父と目が合っては反射的に固まって。
『ほら、大丈夫だから座ってよ』
( 兄に促されるがままに父と向かいのソファーに腰を下ろしてはフローリングの床をジッと見詰めていて。
その数分後、懐かしい紅茶の香りが鼻腔を擽ってはゆっくりと顔を上げる。
何時か遠い昔に見た優しい表情の母親が目に入っては呆気に取られた表情をしてしまって。
『繿、この紅茶好きだったでしょ??』
( 名前を呼ばれたのは何年ぶりだろうかなんてぼんやりと考えてた所、父が相手に目を向けては以前相手が拾ってくれたタバコケースを取り出し軽くテーブルに投げて。
『手前が拾ったんだろ、一応礼は言ってやる』
( 見覚えのあるタバコケースを驚いた様に見詰めるも父の目線がこちらに来た途端強ばりまた金を要求されるものだと勘違いしてしまっていて。
「…父さんごめん、…俺今そんなに金無くて」
『……………』
「………足りない分は後から…」
『要らねぇと言った筈だ』
( 言葉を割った父の返答が理解出来ずに兄に視線を向けるも兄は困った様に微笑んでいて。
>桐崎
(相手からの返事を早く聞きたいと思うも相手の恐怖の入り混じった表情から、今は我慢して相手の気が少しでも落ち着けばと手を握り返す。
相手の実家に招かれるも果たして部外者の自分が居ていいのかと気まずい空気の中、ジッと湯気の立つ紅茶に視線を落とし相手の父が話しだすのを待ち。
しかし流石相手の父と言うべきか、口下手のせいで中々話を切り出さず、どんどん相手の顔色が悪くなるのが分かれば余計なお節介だと理解しつつ「あの…」と話を促そうとする。
と自分の声に弾かれたように相手の父が咳払いをして“手前に後押しされてたまるか”と軽く睨まれてはフゥと煙草を拭いて。
『……前に手前のせいで会社クビになったとかどうとか言ってたよな?…思い上がんなよ。
誰が手前ごときに足引っ張られるかよ。首を切られたのは俺が気に入らねぇ上司を殴り飛ばしたからだ。こっちから辞めてやったんだよ』
(ぶっきらぼうに続けては “畜生なんで俺がこんなこと…”とブツブツいいながら新しい煙草を取り出して火をつけ『……見世物は全部脅しでやったことだ。だからもうやる必要もない。……チッ、もういいだろ。俺は謝らねぇぞ。……あとは綸からでも聞け』と一切吸わずに終わった煙草を灰皿に押し付け、早々に別室に姿を隠してしまい。
その様子に兄は笑いを堪えながら『あれでも精一杯謝ってるんだと思うよ』とどこか穏やかな声色で述べ、借金をした理由やずっと脅しをかけていた闇金が漸くこの家から手を引いたことを相手に告げて。
そこに相手の母がやってきては幼少期よく作っていた手作りプリンを相手の前に置き。
『……本当に今まで御免なさい。駄目な母親でごめんね。………すぐに許して貰えると思わないわ。少しずつでいいの貴方達の話を聞かせてちょうだい。……今日の夜、良かったら一緒にご飯食べましょう。繿と綸の好きな物作るから』
(相手の母はやや涙ぐみながら言うとほんの少しだけ相手の髪を撫でるように触り。
(その光景をぼんやり眺めていたがハッとなってはこの空気の中、異物でしか無い自分がいてはかなりまずいと思い「……す、すみません。俺用事思い出したので…、お邪魔しました」と小さな声で早口に述べては逃げるように相手の実家を出て。
>露木
( 両親からの思いも寄らない言葉に呆気に取られた表情をするも段々と思考が整って来ては自分の肩にポンポンと手を乗せる兄を見詰める。
慌てて出て行った相手を咄嗟に追い掛けようとしては母が自分の手を掴んで来て『お友達にもお話したい事合ったのよ、今日が無理なら今度連れて来て頂戴ね』と。
まだきごちない表情でコクリと頷いては直ぐに相手の後を追い掛けて。
( 自分が相手を探しに街に向かう頃、父も家を出ては自分より早く相手を見付け後ろから相手の腕をグッと掴んでは相手を無表情で見下ろし。
『お前への話が終わって無かった。…少し付き合え』
( 強引に相手の手を取っては近くの喫茶店へと入り相手に座る様に目伏せしてはドカッと腰を下ろして。
『お前の名字、“露木”だろ。母親と父親に良く似てるから直ぐに分かった』
( 淡々と告げ相手の顔をジッと見詰めては『迷惑掛けたな』と珍しい言葉を言い。
改めて向き直りなぜ相手の両親を知ってたのかを言おうとした所で父の携帯の電話が鳴り響いては無言で席を立ち電話に出る為離れた所へと行って。
電話の相手は叔父、父の本心を知っては何度か共に酒を飲み交わしたいと電話を入れていて。
しかし今回の電話は違い、叔父が父に子供の頃に教えてた剣術を活かし師範の道場を手伝って欲しいとの事で。
『あ??俺が餓鬼共に教えられる訳無ぇだろ、他当れ』
( 適当に流すもしつこい叔父の申し出に負けては会って話をする事のみ了承し、相手の元に戻るなり『悪いな、用事が入った』と言って。
二人分の代金を支払いさっさと喫茶店を後にして。
>桐崎
(突如相手の父に喫茶店へ連れられ両親を知っている風に言われては叔父との接点も知らなかったため訝しげに父の顔を見る。
結局、何も分からないまま退席されてしまっては相手の返事もまだだったこともありモヤモヤした気持ちが更に増幅すればやや苛々したように店を出て。
ホテルに戻るまでの間、相手の父の“両親に似ている”という言葉が引っ掛かっては気持ちが落ち着かず爪を噛む。
母ならまだしもあの父に似ているなんて…認めたくない。
金に目が眩んだ父のせいでどれほど妹や母そして自分が周囲から誹謗中傷を受けたことか。
そのせいで妹の病状は悪化し、母は元々心が弱かったため鬱病にかかり今でも精神科に通い時折おかしくなる。
そうして散々家庭を荒らした挙句、父は多大な負債を残しぱったり姿を消した。
父が犯した横領の証拠隠滅とも知らず無理矢理能力を使うことを強いられた日々が過ってはそれを握り潰すように拳を握りホテルへと足を急がせる。
相手に会いたい、そう思うが流石に今日は部外者の自分が居ては邪魔になるだろうと携帯を取り出し《今日でこっちでのバイト終わりだから先にアパートに戻る。アパートの住所ナツから聞いてるよな?いつでも来てくれていいから、家族でゆっくりできるときゆっくりしとけよ。……あの返事、待ってるから》とメールを送りホテルで荷物をまとめると駅に向かい電車に乗って。
>露木
( 結局相手の姿は見付けられず大人しく実家に戻れば母親が「お帰り」と出迎えてくれて。
生まれて初めての事に戸惑いつつ「明日、そろそろ寮に戻る」と短く言えばリビングにて落ち着き無く座り。
まるで葬式かとでも言いたくなる程に静かな食卓を囲んでは部屋の一室にて布団に入って。
( 翌日、荷物を纏め家を出ようとした所であれから口も聞いて無かった父が来てはパーカーのポケットから煙草を抜き取られる。
『餓鬼が一丁前に煙草吸ってんじゃねぇよ』
( 父の舌打ちと共に「………じゃあ俺、帰るね」と短い挨拶をした所で『…いつでも帰って来い』と驚く様な台詞が耳に入っては父の方に振り向くも既に背を向けられてしまってて。
どこか擽ったい心地で自宅を後にし、帰りがてら相手に会いたいと思ってしまっては昨夜のメールをジッと見詰めアパートに寄る事にして。
( 昼間と言う事もあり相手もこちらでのバイトに戻ってるのだろうか、アパートのチャイムを押しても相手が出る事は無くどうしようかと項垂れる。
特に時間を潰せる様な場所も無くバイトが終わる時間も分からない。
それでも一目相手を見たいと言う欲には逆らえず近くのコンビニにて立ち読みを初めては一応相手に《いきなりごめん、少しで良いから会いたい。今あんたの家の近くのコンビニに居るから終わったらメールして》とメールを送っておいて。
>桐崎
(昼過ぎ、バイトを終え相手のメールに気が付くとすぐに《今バイト終わった。まだコンビニ?すぐ行くから》と返信して走ってコンビニへ向かい相手の姿を見つけるなり肩を叩いて。
「…ごめん、待たせた。…ここじゃ何だからうち来て」
(返事を聞いていないし、まだ後ろめたさがあったため目は合わせられずスタスタと先を行っては相手を狭いアパートの一室に招き温かい御茶を淹れて。
「…飯、まだだよな?夕時だし何か作るよ」
(元の関係には戻れないかも知れないのに少しでも長く相手といたいと思えば返事を待たずに台所へ向かい簡単な煮物や和物を作って御飯と一緒にちゃぶ台の上に並べる。
黙って相手の正面に座っては早く返事が聞きたい筈なのに「体調はもう大丈夫か?…怪我は?」とか「……あれから親とは話せた?」と本題から話を逸らして。
やや空回りするように一人しゃべり続けては、ふと先日喫茶店で相手の父が話し掛けたことを思い出し「そう言えばさ、あんたの父親って…俺の親のこと知ってたりするの?」とわざと何気ない様子で尋ねて。
しかし親の話なんてお互いに今まで何となく避けてきた話題。
相手に至っては最近溝を埋め始めたばかり。
何も聞いているはずないと「いや、なんでもない…。それよりさ、また師範に道場来るよう言われたんだよな。…あんたのこと気に入ってたみたいだしまた顔出してやってよ」と相手の父も誘われていることは知らずに、相変わらず返事を聞くのを恐れて空回りを続け。
>露木
( 相手のアパートにて夕飯を振る舞われ相変わらずの自分好みの味に頬が緩みそうになるのを抑えては相手が何気無く父の事を問い掛けて来るのに首を傾げる。
何故そんな事を聞いてくるのだろうと記憶を巡らせふと浮かんだ記憶に箸を止める。
定期的に自宅に訪れてた男の姿、端正な顔立ちの男が玄関口で父と話をしてる姿を思い出すもはっきりとした顔立ちは思い出せず流石に相手に関係してる訳無いかと。
( 夕食を終え片付けを手伝った後、相手に返事をする為に来たのだったという目的を思い出し相手の腕を掴み引き寄せては目前に座らせる様な体制になり。
その美しい顔立ちに一瞬見惚れてしまい、慌ててバッと視線を逸らして。
「………その、これ。……………あのさ、改めて言うけど………俺本当にあんたが好きだ。………友達としてとかじゃなくて………」
( ストラップを手渡し思いを伝えた所でふつふつと羞恥が沸き上がりガバッと立ち上がれば「そ、…そろそろ…帰るよ。…こんな時間だし迷惑だよな…ごめん」と。
荷物に手を玄関へ行こうとするもピタリと動きを止め相手に向き直っては僅かに屈み触れるだけの口付けをし真面目な表情で相手を見詰めて。
「………俺、割と本気だから」
( 真っ直ぐに告げた所でもう迷わないと心に決めては今度こそ玄関口へと向かい。
>桐崎
(ストラップを受け取り言われた言葉に擽ったげに小さく微笑んでは「ありがとう、俺も好きだよ」と答え、まだ一緒にいたいと思うもあまり引き止めてもしつこいかと玄関口まで見送る。
そこで何となく不安になり「また…会えるよな?」と相手をジッと見詰めては小さく首を横に振り「……旅行の話、考えておいてくれると嬉しい。またメールするから」とまだ距離感に戸惑いながら微笑み、また会えればと自分のマフラーを相手の首にふわりと巻き「おやすみ、気をつけてな」と軽く額に口付けて。
(翌日、目を覚ましては携帯につくストラップが目に入り小さく微笑む。
あたたかい布団の中からでると身支度を済ませ、教授から卒論の評価を受け取るために大学へと足を向けて。
教務課の扉を叩くとすぐに教授が現れてA4封筒を渡され『期限は過ぎていたが無事院に進めそうだぞ。あとは手続きだけだから早めにな』と。
とりあえずその場では笑顔で頷き、大学を離れては相手はいるだろうかと高校スペースに顔を覗かせると何やら女子の大群がそれぞれ綺麗な包みを持って相手に群がって『私が先に渡すのよ!』『想い込めて作ったから感想聞かせてね』と黄色い声で騒いでおり。
始め、何事かと思うも今日の日付と既に相手のロッカーと机の上に勝手に積み上げられる甘い産物達にあーなるほどと思えば、若干の嫉妬を抱きつつ邪魔になるだろうとひとまず退散して。
(昼、共同スペースで教授に渡された資料をぼんやり眺めていると兄が突如顔を覗かせ手を差し出してきて『菊、チョコ頂戴』と。
は?と思わず顔を顰めては、兄が片手に持つ紙袋いっぱいの包みを呆れ気味に見て。
「…もう沢山持ってるだろ」
『これは…子どもたちにでも上げようかな』
「……………」
『そう言えば道場はいつ行くの?俺も行きたいんだけど』
「…明日かな」
『あれ、なんか機嫌悪い?』
「……いや、別に」
(目を逸らしては先程相手を見た時明らかに本気の本命を思わしき女子高生が相手に手紙を渡すのを見逃さなかった。
今頃呼び出しに答えているのだろうなと嫉妬を抱きつつ、それとはまた違う複雑で微妙な気持ちでいては小さく溜息を吐き、いまだ差し出される兄の手に持ち合わせのガムを置いて。
>露木
( 翌日、教室に充満する甘い香りに眉を寄せるもその理由さえ分からずに渡された箱をきょとんと見詰める。
考え込む様な表情をするのに一人の女子生徒が今日の日付を言ったのに漸く理解して。
丁寧に礼を言い、相手にも何か渡した方が良いだろうかと思うもののまさか自分が料理など出来る筈も無く。
大学には来てるのだろうか、相手の姿を探し大学校舎へと来た所で丁度相手にチョコを渡してる女子生徒達が見えては行ける雰囲気でも無く渋々諦めて。
大学校舎からの帰り道、ばったりと兄に出会しては兄の手にある紙袋に目をやる。
『菊に貰っちゃった』
( 嬉しそうにガムを見せて来る兄に単純だな、と思ってた所一人の女子学生が兄の腕を引いては目前でチョコを手渡して居て。
『くれるの??ありがと-』
『い…いえ!!!頑張ったんで…良ければ食べて下さい』
( パタパタと去って行く女子学生の背中を見詰めながら呼び出されてた事を思い出し慌てて屋上へと向かう。
自分と相手は付き合ってると言えるのだろうか、モヤモヤとしたのを抱えながら屋上への階段を登って。
( 屋上にて、渡された箱に丁寧に礼を言い話の途中にも関わらずにさっさと屋上を後にしては女子学生達に相手を取られまいと《昼休み空いてる??飯一緒に食わない??》とメールして。
授業を抜け出し学校の向かいのコンビニで立ち読みをしてた所、店頭に並べられるチョコが目に入っては何気無くそれを見詰める。
そこでふとクラスの女子が慌ててチョコを数個買いに来てはばったりと出会してしまい。
『繿君逆チョコ??誰に??』
「別に誰でも良いだろ」
『え-気になる』
「あんたは誰にやんの」
『あ、私はね-友達と-………その、露木先輩』
( 恥ずかしそうに俯く女子生徒に「ふぅん」と短く返事をしては結局手に持ってたチョコを買ってしまって。
>桐崎
(渡されるチョコを義理のつもりで受け取りつつ相手からのメールに気が付くと早々に人気の無い場所に行き《俺も一緒に食べたいって思ってた。二人で落ち着いて食べたいから大学の研究室で食べないか?あんたの周り今日女子凄そうだし》とメールを返信して。
(昼休み、相手を出迎えるため高校校舎へ向かう途中、なぜか妹のナツが小走りで駆け寄って来ては『兄さん良かった。繿君と仲直りしたんだね』と微笑んで。
『そうだ兄さん、毎年恒例の家族チョコ作って持ってきたよ。あとこれは繿君の分。直接渡したかったけどちょっと用事があって。あ、あとハナが呼んでたから顔出して上げてね』
(同じ包みの小さな四角い箱を押し渡され足早に去っていく妹の背中を“あんなにはしゃいで大丈夫か…、そういえば本命いるのかな”などと過保護に心配しては首を横に振り、チョコを鞄にしまって校舎の中へ入って。
(三年の教室のすぐ横の階段踊り場にて、ぼんやり窓から見える景色を眺めながら授業終了を告げるチャイムをいまかと待つ。
ふと先程妹から貰った“菊へ”と記された自分宛ての包みを取り出しては、どの女子から貰うよりも嬉しいかもと変態なこと考えながら、相手に会うのが楽しみなこともあり無意識に小さく微笑んでいて。
>露木
( 漸く昼休みになりやや急ぎ足で階段を降りた所で相手の姿が目に入り駆け寄ろうとするも相手がチョコの包みを大切そうに見詰めるのが伺えては一瞬足を止め。
妹からだとも知らずに“誰から貰ったんだろうか”なんて疑いに似た感情を抱えてしまっては数秒間項垂れるも何も無い素振りで相手に駆け寄って。
( 研究室にて、教室で青年に貰ったチョコを齧りながら相手をジッと見詰めては「……………何個貰ったんだよ」とさり気なく聞いてみたりして。
先程のクラスメートも相手に渡す様子だったのを思い出し僅かに沸き上がる嫉妬を隠しては昼食にと買ってたコンビニのパンやらを取り出して。
「……………さっきの、あんたの本命とか??…チョコ見てニヤけてたけど…」
( 妹からのチョコを勘違いしたままどこか棘のある言い方をしてしまいハッとしてはこれでは嫉妬心丸出しでは無いかと。
ペットボトルを取ろうと鞄を漁った所で相手へと買ったチョコがコトリと音を立てて落ちては慌ててそれを拾う。
渡すタイミングが今ではおかしいだろうか、とか流石に男からなんて気分悪くするだろうか、と色んな考えがゴチャゴチャと過ぎって。
しかしどうせ昨日相手に思いを伝えたのだしと吹っ切れては相手に箱を押し付けて。
「…やるよ。…あ、でもあんたすっごい数のチョコ貰ってたし流石にくどいか」
( 照れ隠しにぎこちなく笑みを作っては「………放課後も…忙しいんだろ??………さっき俺のクラスメートも放課後あんた呼び出すって言ってたし」と。
ペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲んではふうっと息を付き「………あのさ、告白されたら…何て答えんの??」と聞いていて。
>桐崎
(研究室にて貰ったチョコの数を聞かれては、それはこっちが聞きたいと相手の膨らんだ鞄をチラ見して軽く見返しつつ、にやけていたのは無意識だったためきょとんとして。
しかし直ぐに妹のチョコのことが浮かんでは見られていたことが恥ずかしく、やや動揺したように目線を泳がせ「…あ、あれは……ナツからだよ。毎年、貰ってて……」と羞恥でどうにかなりそうになりながら答えては鞄から“繿くんへ”と記された包みを相手に押し付け「これ、あんたの分。…心して受け取れよ」とぶっきらぼうに述べ。
この羞恥をどこへやろうかと思っていたところ、思い掛けない相手からのチョコに再びきょとんとするも、相手の照れた表情見て嬉しさが込み上げてきては自然と笑顔が零れ「ありがと。大事に食べるよ。あんたのは特別だからくどくない」と先ほどの羞恥はどこへやら甘い台詞を恥ずかしげもなく述べて。
上機嫌のまま相手から貰ったチョコに視線を落としていては、続く突然の質問に本日3度目となるきょとん顔になり、その真面目な表情にこちらも真剣に考え。
「……付き合ってる奴がいるからって…、断るかな。…でも誰とって聞かれた時は答えられないんだよな。俺は別にあんたと付きってるって誇りを持って言えるけど、あんたはどうなのかなって。…ほら、ただでさえ男同士で偏見があるのにさ、…あんたみたいな男前が俺なんかと付き合ってるって知れたら……あんたの株が下がるし…変に見られるだろ。……俺男好きの遊び人みたいだし…」
(別に自分は周りからどう見られようと相手と居られれば充分だが、それで相手まで変な目で見られ迷惑をかけることはしたくなくやや悲観的に呟き視線を床にやり。
「って…悪い。空気重いよな。…放課後はあんたといたいから時間は空けるよ。旅行の話もしたいし。……ちょっとコーヒー買ってくる。あんたも飲むだろ?チョコとコーヒー合うもんな」
(まだ完全に相手と居ても良いという自信を取り戻せていないなんて悟られてはいけないと慌てて席を外そうと扉に手をかけるも、焦るとよく喋る質が思いっ切り表に出ていることは気付かず。
>露木
( コーヒーを買いに出て行った相手の背中を見送り、まだ僅かに自身無さ気な様子が伺えた気がして。
“付き合ってる奴が居るから”と答えると言ったのを思い出しては緩みそうになる頬を誤魔化すかの様に昼食のパンを齧って。
( その頃、相手が自販機前で一人で居るのを良い事にここぞとばかりに女子生徒達が群がっては相手に押し付ける様にチョコを渡して。
嵐が去ったかの如く女子生徒達が去った所で自分のクラスメートの女子が相手に駆け寄りやや上目遣いに見詰めて。
『放課後…屋上階段の所に来て欲しいんです。………私待ってます』
( 恥ずかしそうに俯いては逃げる様にパタパタと去って行き。
ライバルが多いのを知りながらそれでも相手へ思いを伝えようと決め込んでは綺麗な小箱を大切そうに見詰め告白の手紙を添えて。
( 戻って来た相手からコーヒーを受け取り礼を言えば「遅かったな、…なんか合ったの??」と問い掛けて。
今日の帰りにでも子供達にチョコを渡そうと兄と全く同じ考えを浮かべて。
青年からののチョコをパキッと割り相手の口に放り込んでは頬杖を付き携帯を見詰める。
今日の夜もバイトが入っており、確かバレンタインのイベントが合ったなと思い出せば憂鬱そうにして。
店内が甘ったるい匂いに包まれるのかと少しばかり落胆しては相手をジトリと見詰め相手のバイト先にも相手目当ての客で埋まるのだろうと考え。
子供臭い嫉妬心を抱えてはガバッと立ち上がり相手の首筋に顔を埋めては痕を残して。
>桐崎
(研究室に戻って口に放られたチョコを口内で転がしつつ、一人で食べるには多すぎるチョコと放課後の呼び出しをどうするかと眉を顰める。
そんな時突如首筋に甘い痛みが走っては小さく声を漏らして相手が離れないよう両肩を掴み相手の髪に口付けようとして。
しかし不意に男子学生に言われた“遊び人”だとか“身体しか…”という罵りが過っては相手が近付くのを恐れるように突き放し。
「…あ、…御免。…その…あんたが嫌とかじゃないんだ……」
(むしろ触れたい。でももし口付けや営みを抜きにしたとき、相手は自分の傍に居てくれるだろうとかと不安で「……あんたは俺のどこが好きなの?」と思わず尋ね。
「…“あんた”を認めたってなら赤城も同じだろ?……俺なんかより赤城のが可愛げあるし素直だしずっと大人だ。……なんで俺なの?」
(ジッと相手を見詰め返答を待つも我ながらかなり女々しく鬱陶しい質問をしていると気付いては「…御免。俺…あんたに何言わせたいんだろうな。一緒に居てくれるだけで充分なのに」と苦笑を漏らし、昼休みも終わるころだったため相手を教室付近まで送って。
(放課後、気乗りしないまま女子高生に指定された場所へ向かっては、真剣な様子で告白されてしっかり断らねばと相手に言った通り“付き合ってる奴がいる”と告げ「ごめんね…本気ならそれは受け取れない」と罪悪感を覚えつつ小箱を受け取らずにその場を立ち去って。
階段を降りきり相手に会いに行こうとするも今度は幼馴染に捉まりそのまま共同スペースにつれていかれ包みを渡され、いつものことだったため何気なく受け取り。
『今年はケーキにしてみたんだーって…菊…てば首んところ痕見えてるよ。……へー、見せびらかしですかー』
「っち、…違う。…これは彼奴がいきなり…」
『まあいいけどー。そうだ。今日はちゃんと桐崎くんのこと見張ってないと駄目よ。桐崎くんのバイト先に行って料理運んで貰うんだってはりきってた子たち沢山いたから』
「…ふーん…」
(気にしない素振りで答えては一応幼馴染に礼を言ってその場を離れ。
(結局放課後相手と会えないままバイト先に向かってはロッカールームにて《バイト終わってからでも会える?》と相手にメールを送り。
首筋の鬱血を気にしつつ、気持ちを切り替えようとバイトに励み
>露木
( まだ何処か距離を感じる相手が胸に抱えてる事も知らずに突き飛ばされたのに驚きつつ緩く笑みを浮かべては「気にすんな、あんたが嫌がる事はしないから」と優しく述べゆっくり手を握って。
相手の唇を奪おうとするも僅かに見えた怯えを感じ取り、額に口付けを落としては続く相手の問に“当たり前だろ”と言わんばかりの顔をして。
「何でって…好きだからだろ。………赤城は…何て言うか居心地の良い“友達”なんだよな、だからあんたと居る時みたいに鼓動が高鳴ったりはしないんだ」
( 我ながら恥ずかしい事を言ってしまったなと思いつつ教室近くまで送られては別れを惜しむ感情を隠し教室へと戻って。
( バイト先に来てはバックルームで着替え、白いyシャツの袖口を軽く捲り腰に長めのエプロンを巻く。
店に出ようとしたその時、相手からのメールに気付いては《会える、ってゆ-か俺も会いたい》と返信し。
慣れた手付きで次々と料理を運び、本日のみの特別メニューのフォンダンショコラがあっと言う間に売り切れるのを見ては少し疲れた様に溜息をつき。
『桐崎、3番テーブルのお客さんにワイン運んでくれるか』
( 先輩の声にさっさとワインを受け取っては客の元へと運ぶ。
まだ若い家族、娘と思われる幼い少女が『綺麗な色!!!私もそれ飲みたい!!!』と両親にせがむのを微笑ましく見詰めるも子供にワインを飲ませられる筈も無く厨房から店特製のフルーツジュースを持って来てはサービスとして少女へと渡して。
やはり子供の笑顔は良いなと自分も元気づけられながら再び仕事に取り組んで。
>桐崎
(バイト終わり、相手のメールを見てはほんのり心が暖かくなるもやはり何処か不安は拭えず。
しかしいらぬ心配をしていてはそれこそ嫌われてしまうと不安を拭い捨てては相手のバイトの店先で相手を待ちつつ相手から貰ったチョコレートを大切に食べて。
そう言えば自分は何も相手に上げていない。どうせなら特別なものがいいなと考えるうち相手が店内から出てきては「お疲れ様」と微笑み、温めておいたカイロを渡して外が暗いのをいいことにカイロを互いの手で挟むようにして手を繋いで。
そして相手のクラスメートの告白をちゃんと断ったことを報告し、今日はお互い大変だったなと苦笑を漏らしていて。
(相手の寮部屋についてはその落ち着く香りに心癒やされつつ遠慮がちに相手とわずかに距離を置くようにベッドに腰掛け。
「そう言えばあんたバイト先で評判いいみたいだな。…あんたと一緒にバイトしてた女の子が言ってたけどお客さんがあんたに会いに来るために来たって言ってったって。……なんか妬けるけど…あんたが誰かに親しまれてるって嬉しいな」
(他愛のないことを穏やかに話してはそういえばと鞄から旅行券を取り出し。
「…此れ、オーストラリア行きのチケット。…なんか綸が人数分福引で当てたらしくて…。今あんたは忙しい時期だろうし出来れば二人きりで近場行きたかったんだけど…綸はもう行く気満々で断り辛いし……桐崎さえ良ければ一緒に行かないか?」
(本当は無理矢理にでも連れて行きたいが流石に海外となると相手の都合もあるだろうし強引には誘えないと様子を窺うように問いつつ「向こうは今の時期夏だから海が綺麗だって」と魅力を語り。
>露木
( 漸くバイトを終え相手と帰り道を歩きながら告白を断ったと聞かされては酷く安心して。
正直言えばその事が心配だったりしてた為自然と表情も穏やかになっては相手を部屋に招き入れる。
上着を掛け暖房を付け暖かいココアの入ったマグカップを相手に手渡しベッドの上に腰を下ろしては相手も続いてベッドに腰を下ろして。
暫く他愛も無い話をしてた所、相手に差し出されたチケットを見詰めては僅かに驚いた様な表情をして。
相手と一緒ならばどこだって良い思い出になるだろうな、なんて気恥しい事を考えつつ楽しそうにあちらの魅力を語る相手に僅かに微笑んで。
「良いな、…あんたの話聞いてたら俺も行きたくなった。……………バイトとかは空けとくから」
( 上記を言いまだ湯気の立つココアを飲んでは相手の額を軽く弾き「………綸とばっか居んなよ。…どうせあんたあっちに行っても色んな女に言い寄られるんだろうな、浮気すんなよ」とからかって。
甘い時間を過ごしつつ、何気無く相手に触れたくなっては少し距離を詰め相手を軽く抱き寄せる。
ピクリと反応したのを見逃す筈も無く慌ててパッと身を離しては「ごめん、いきなり」と。
「あんたが少しずつ心を開いて来てくれてんのは俺も分かるから。………あんたが触れても良いなって思ったら言って、………待つから」
( ポンポンと相手の頭を撫でては相手の過去などのトラウマを思い返しやはりまだ“男”に抵抗があるのだろうかと思い込んで。
強く抱き締め口付けたいと願う反面相手との距離が遠ざかり相手を壊してしまうのも嫌で。
しっかり我慢出来るだろうかと不安が過るも相手が大切なのは紛れも無い真実。
「明日は休みだし泊まってけよ」とは言ったものの自分で地雷を踏んでしまったなと。
平然と振る舞う様にしながら「あ…離れて寝てた方があんたは安心か??布団もう一式あるし…俺下で寝るよ」と言えば布団を取りに向かおうと。
>桐崎
(相手に抱き締められ嬉しくて自分もそれを望んでる筈なのに求められる程不安になるという複雑な気持ちでいては優しい相手の言葉に、何に対してか分からないが小さく首を横に振り「ありがと」と微笑み。
相手が自分の思っている以上に気遣ってくれているとは知らず、布団を取りに行こうとする相手の腕を取り「……一緒に寝たい。あんたの隣…落ち着くから」と気持ちと態度がちぐはぐなことを述べ相手をベッドに引き込んでは相手に顔を向けながらも以前のように抱き締めはせず微妙な距離を保ったまま安心して眠りについて。
(翌朝、まだ日が昇る前に相手のベッドを抜けだしては兄の部屋に行きシャワーを借りて、適当に着替えを済ませると簡易キッチンに向かう。
『昨日突然買い物頼んできたけど何作るの?……というか寮戻ってくれば?隣まだ空いてるよ』
「…いや、うん、考えとく」
『で、こんな時間から何作るのー?』
「…いいだろ。別に」
『えー教えてよ』
(フワァと欠伸をしながら興味深けにこちらを見てくる兄の視線が気になりつつも、全神経を集中させて作業に取り組み。
(久々の食堂、朝勝手に抜け出してしまったことに後ろめたさを感じつつ相手の姿を探しては青年といつもの席に座っているのを見つけそちらに近付き相手のトレイの上にコトンとコーヒープリンを置き。
「……それ、チョコのお返し。……てか、いつもヨーグルト貰ってばっかだったから」
(ボソボソとあまり目を合さずに言っては「…コーヒーとプリン好きだろ?……初めて作ったから味の保証はないけど」と続けて、込み上げる羞恥から逃げるようにその場を離れようとするも兄に無理矢理席に押し込まれ。
『旅行の話もしたいしー、一緒に食べよう』
(ニコと笑い抱き着いてくる兄に眉を顰め引き剥がしつつも心理的違いから相手のような拒否反応は出ずに。
『あ、繿それ食べないの?てか俺が毒味してあげる!』
(引き剥がされてもめげない兄はずっと狙っていたように素早い動きで相手の前に置かれたコーヒープリンのカップに手をかけて。
>露木
( 目を覚ますなり相手の姿は無く、久々にあんな落ち着いて寝れたななんて考えながら洗面所へと向かいまだ僅かに寝惚けたまま歯ブラシを手に取る。
顔を洗い着替えを済ませ部屋の前で待ち構えてた青年に出会し共に食堂へと向かっては青年にチョコの感想を求められ「あ-うん、旨かったよ。ありがとな」と素っ気なく返して。
トーストのバターを伸ばしながら牛乳を喉に流した所で青年の背後に相手の姿が見えて顔を上げる。
トレイに置かれたプリンを見詰め、珍しく嬉しそうな表情をしては続いてやって来た兄を含め四人で席を囲み。
兄がプリンへと手を伸ばすのに自分でも驚く程素早く兄の手に手刀を落としては「絶対やんないから」と軽く睨み付けて。
『兄さん兄さん、今日のヨーグルトはフルーツ入りだってよ!!!それでも食べないの??』
「食べない」
『え-、どこが嫌いなの??こ-んな美味しいのに』
「すっぱいから」
( サクサクとトーストを齧りつつ先程から相手にしつこいスキンシップを計る兄をジトリと見詰める。
漸く兄が静まったかと思いきや、相手が食事を始めた途端隙を奪い頬にキスをし『俺も菊からバレンタイン貰ったんだよね』とガムの話を自慢気にしていて。
ずっと気になってた事だが自分の時よりも兄の時の方が相手の拒否反応は皆無に近い。
プリンに舌を包みながら僅かな壁を感じつつ一方的に話し続ける兄の話を折っては相手に向き直り。
「“味の保証は無い”とか言ってたけどめちゃくちゃ旨いじゃん。俺好みのデザートだよ」
( もはや日課の如く相手のトレイにヨーグルトを置いては尚もスキンシップを続ける兄をキッと睨み「あ…あんまベタベタすんなよな」と。
>桐崎
(自分の兄に対する態度を相手が気にしていることは気付かず、滅多に見られない相手の柔らかな表情と褒め言葉に小さくはにかんでは「…こんなんで良ければまたいつでも作るよ」と照れを隠すようにヨーグルトを口に運び。
食事を終える頃、まだ相手といたい思いを抑え相手と青年を高校校舎まで見送り「今日は道場の手伝いでそのまま泊まりになると思う…。その時間あれば顔出してくれると嬉しい」と控えめに相手を見詰めた後「…授業サボるなよ」とからかうように銀髪をポンと撫で、一度準備のため兄とアパートに立ち寄り道場へと向かって。
(道場に着くと今日は昼間から子どもたちの稽古に励む声が聞こえ不思議に思いながら稽古場に行くと師範に近所の小学校の授業の一環でそれを手伝っていると言われ納得する。
胴着に着替え再び稽古場に戻ったとき、見覚えのある姿が目に止まりピタリと足を止め。
『父さん?!……わぁ、なんでなんで?なんで此処にいるの?』
『な、…綸。…何でってうるせぇな。……彼奴の親戚に頼まれたんだよ』
『へぇー、父さんが竹刀持つところ初めて見たかも』
(兄は父に無視されず反応されることが嬉しいのかいつもよりはしゃいでる様子でその光景を頬やましく見詰めながら、以前相手の父が言いかけたことを思い出せば後で聞いてみようと。
ひとしきり子どもたちの稽古を終えては義理チョコ達を子どもたちに配り、自分は縁側に座って相手から貰ったチョコを一つだけ口に入れすぐには噛まずにゆっくり味わう。
相手は今頃青年とお昼でも食べているだろうかとぼんやり考えていると相手の父が隣に腰掛けてきて。
『よく、んな甘ったるいもの食べられるな』
「……繿から貰ったんです」
『は?彼奴が?…想像出来ないな』
「そうですか?いつも優しいですよ。……そう言えば剣術、習ってたんですね。すごく綺麗でした」
『俺を褒めるなんて生意気だな』
「はは…すみません。俺単純なんで。………ところでこの前言いかけたこと何ですか?俺の親を知ってるみたいでしたけど」
『…胡散臭い笑顔だな。…………ああ、その話な』
(ボソリと呟かれた言葉は聞き取れずに首を傾げては、続く話題にやや緊張した面持ちで相手の父を見詰める。
煙草の煙がフゥと吹かれ父が口を開きかけた時『おい!!ここは禁煙だぞ!』と絶妙のタイミングで師範に阻止されて。
『あ?…たくっ、面倒くせぇな』
(不機嫌に腰を上げて場所を変えようとする父に師範がニッと口角を上げ『子供たちの相手だけじゃ物足りなかったんじゃないか?腕は鈍ってなかったようだし、ここは菊君と手合わせしたらどうだろう。丁度剣術の手本の動画を取りたいと思ってたんだ』と調子良く言って。
「……俺、手本になるほど上手くないですけど…」
『全くだ。俺は忙しいんだよ。他をあたってくれ』
『なんだ、もしかして菊君に負けるのが怖いのか?』
(師範の挑発に父の眉がピクリと動いては何故か此方を睨まれて「そんな俺は足元にも及びませんよ」と微笑み、いまだ鋭い視線に突き刺されながら内心はやく相手に会いたいと恋しく思い。
>露木
( 口は悪くとも性格は単純な父、いとも簡単に師範の挑発に乗れば相手に竹刀を投げ渡し立つ様に目伏せし父も竹刀を片手に取れば道場の真ん中へと来て。
相手と向かい合い、一度礼をしては自分と同じ紅い瞳でしっかりと相手を見詰めては師範がビデオを回しながら“始め”と言うのを待ち構えて。
( その頃、珍しくもまともに授業に出席しては漸く学校も終わりの時間を迎える。
部活に向かう生徒達をつまらなそうに見詰めては青年と共に寮へ戻ろうとするも“街に行きたい”と言われ面倒そうに青年を見詰める。
「一人で行って来いよ」
『え-兄さんとお揃いのキーホルダー選びたいのに。…あ、奢るよ??』
「……………」
『ね、行こ!!!決まり!!!』
( 強引に腕を引かれ街へと来れば適当な雑貨屋を周りつつそれでも青年の話はちゃんと聞いてやっていて。
そう言えば兄が相手と共にどこかへと向かったのを思い出しては相手に何かしてないだろうかと。
抱き着くだけでも許せないのに軽々しくキスしたりしようとするのを思い浮かべては勝手にイライラとして。
『ねぇ兄さん聞いてる??これこれ。狼のキーホルダー、可愛くない??』
「あ-、うん」
『聞いてないでしょ-、まぁ良いよ。これにしよ』
( 会計の方へ向かう青年をぼんやりと見詰めては携帯を取り出し相手のアドレスを開き《綸に変な事されてないだろうな》と短いメールを送る。
元カノの時にもそれなりの嫉妬などは合ったがここまで日々思い描く存在は初めてで。
>桐崎
(力強い父の眼光に圧されながらも此処で遠慮しては逆に失礼だと真面目に一本を狙いにいく。
が、流石相手の父。やや上から繰り出される剣術は父の性格からは想像も付かないほど繊細で力強く…。
幼少期、こうやって自分の父とも打ち合いをしたなと笑顔の父が脳裏を過っては、心の乱れを射抜かれるように突きを取られて。
“一本”と道場に師範の声が響いては一礼をして、相手の父を見詰め「流石ですね」と肩を竦めて他人行儀な微笑みを浮かべ。
すべてを見透かすような父の視線。逸らしたい気持ちを堪え笑顔を保っては動画撮影のため何本か型を撮った後、着替えなどを済ませ兄と夕食の準備にとりかかり。
(台所にて鍋の準備をしながら結局相手は来なかったなと溜息を吐いていると居間で相手の父と酒を飲み交わしていた師範が顔を覗かせ、全く酒が足りないと。
そりゃあ酒豪が二人もいればなと納得しては出来上がった鍋を食卓に置いてから酒を買い出しに兄と街に出る。
隣で話し掛けてくる兄に相槌を打ちながら今頃相手はどうしてるだろうと考えていると、また自分と相手に反感を持つ男子学生達に出会し。
『よう露木。なんだ?今日は“本命”とデートか。ああ、違うか。綸も“遊び相手”だったな』
「………」
(よくも飽きずに…と無視して通り過ぎようとするも学生の一人がニヤつき『さっき桐崎、赤城と一緒にいて揃いのキーホルダー買ってたぜ。腕も組んでたし』と笑み、その言葉にピタリと足を止め。
「…彼奴等は仲が良いから。……それと俺は繿を本気で好きだし、綸も大事な友達だ。悪く言うようなら許さない」
『はっ、強がっちゃって。どっちもお前の身体目的だろ?』
『ちょっと。さっきから黙って聞いてれば…『綸もさぁ、ベタベタ露木の身体に触って下心丸出しじゃん?露木もまんざらでも無さそうだし流石遊び人だよな』
(学生達は好き勝手散々笑ってはその場を離れていきやっと静かになっては小さく溜息を吐いて。
「……ごめん、俺のせいで綸まで悪く言われた」
『菊のせいじゃないでしょ。……それに下心ってのはある意味当たってるし』
「……綸?」
(突如壁際に追い込まれては顔を近づけられまたいつもの“おふざけ”かと軽く肩を押し。
「今機嫌悪いからそういうのやめろよ。俺が繿と付き合ってるの知ってるだろ?」
『…そうだね、ごめん』
(身を離す兄にホッと肩をなでおろしては「早く酒買いにいくぞ。帰りが遅いと文句言われる」と酒屋に向かおうと。
>露木
( 夕方、青年を寮へと送り届けては少し遅くなったが相手はまた居るだろうかと道場へと向かう。
この時間まで兄と一緒だなんて危ない事この上ない。
急ぎ足で道場へと訪れては丁度夕食を終えた頃の師範に迎えられ千鳥足の師範に連れられながら相手の元へと案内されて。
貼り付く兄を突き飛ばし相手に向き直れば寒さから僅かに赤くなった鼻を擦り「遅くなってごめん」と。
ふと父がこちらへ来るのが見えては反射的にビクリと反応するも『来てたのか』と言われるだけで。
『露木、お前の親の話は今度聞かせてやる。……………兎に角…俺はもう寝る』
( 欠伸をしながら既に居眠りをしてる師範を布団に運んではさっさと着替える準備をしていて。
何の話だろうかと小さく首を傾げるも再び相手に抱き着こうとする兄をキッと睨み付けて。
『あれ、このキーホルダーどうしたの??』
「貰った」
『あ、分かった赤城からでしょ』
「…そうだけど」
( 何で知ってるのだろうかと呑気に思いつつ友人からの貰い物など隠す必要も無いかと。
兄がジトリと見詰めてくるのにムッとした表情を返しては兄が父の元へと向かうのを見詰めて。
二人になったのを良い事に相手を抱き締めようとするもやはり昨日の反応が伺えてはパッと身を離し相手の頭を撫でるだけにして。
「ごめん、びっくりさせたよな…いきなり」
( 兄が抱き着いた時はこんな反応無かったと、胸の奥底で激しい嫉妬に駆られるも表情を誤魔化して。
>桐崎
(夜、顔を出してくれた相手に気分が高揚するも情けなくも男子学生達に言われた事を気にしていて相手に抱き締められそうになりピクリと身構える。
しかし頭を撫でられるだけに終わっては少し物足りないと思うも、それ以上に相手は特別な事をしなくても傍にいてくれるという安心感が得られ相手の気持ちとは裏腹に穏やかな気持ちでいて。
「…今日、泊まってって。授業には遅れないように車で送るからさ」
(小さく微笑み少しでも相手と一緒にいたい気持ちからさりげなく床に置かれる相手の手に自分の手を重ねては、昼間の父の様子など他愛のない話をして互いに風呂に入ったあと布団を並べてその上に座り髪を梳く。
ふと相手の鞄につく青年と揃いのキーホルダーが目に止まっては、先程まで制御していた嫉妬心が湧きピンッとキーホルダーを指で弾いて。
「こいうことするとさ…赤城が期待するし付け上がるから。彼奴の気持ち知ってるだろ?」
(自分だって兄には隙を見せる癖に酷く不満そうに言っては「町中で腕だって組むし…」と男子学生達が言っていた言葉を気にしてグチグチと呟き。
そんな時、部屋に兄が戻ってきては『俺も同じ部屋で寝るー』と自分と相手の間に割って入ってきて、いつものごとく髪をいじられ。
何度か身を起こし相手の隣に行くもその度に兄に邪魔されたため仕方なく兄を間に入れて布団に潜っては相手の気も知らず兄に抱き締められても眠気から抵抗せずに眠って。
(翌朝、少し早めに起床して朝食の準備をしては人数分の食事を食卓に並べる。
一応何度も味見をしたつもりだが無言で食べる父の顔は僅かに硬い気がして、師範の『菊、味噌汁も焼き魚も…味が薄くないか』と言う言葉に不味かったのを我慢してくれているのかと。
「…朝だから塩分控えたんです。…それに大人は薄味のが良いって聞いたので」
(良い訳を零しつつさっさと朝食を済ませては、師範の車を借りて高校校舎に近い校門まで相手を送り一度自分も車から降りて。
「…無理言って泊まらせて悪かった。…その、旅行の話したいからまた会おうな」
(相手の髪を軽くポンポンと撫でては一瞬口付けたい衝動にかられ顔を近づけるも、相手の背後から青年が走ってくるのが見えて寸でのところで身を離し。
『兄さん、おはよー。ずっと待ってたんだよ。あ、俺もキーホルダー鞄につけたよ。兄さんとお揃い!……あ、そう言えば兄さんはパスポートも持ってる?持ってないなら発行するの付き合うよ。俺、留学経験あるから色々教えられるからさ』
(ニコニコと無邪気に相手の腕に絡みつく様子に、やや不満そうにしては「学校遅れるんじゃない」と話を遮って。
>露木
( 相手の言葉に甘え泊まる事にしては不満そうに青年の事を話す相手を苦笑気味に見詰める。
“赤城とはただの友達なだけなんだけど”なんて何処までも呑気な事を考えつつ、「何、嫉妬してくれたの」なんて思い上がった事を言えば相手の頬を軽く抓り。
しかしそこに兄という邪魔が入れば見事に甘い時間も終了してしまい馴れ馴れしく相手に触れる兄をイライラしながら見詰める。
ちゃっかり相手の隣に入り『菊、背向けないでよ』『ねぇまだ起きてる-??』『もう背向けないでって言ってるのに-。もういい、勝手に抱き着くから』と煩く喋る兄にイライラはどんどん増して。
嫉妬心に駆られながら眠れる筈も無く、兄と相手の寝息が聞こえて来た頃にムクッと起き上がれば自分に見せた拒否反応など微塵も感じさせない相手の寝顔にやり切れない気持ちになり。
“なんで俺は駄目なんだよ”なんて子供の様な嫉妬心を抑え、相手の額に軽く口付けては大人しく寝床に戻り兄と相手に背を向ける様にして。
( 翌日、自分好みの相手の食事に舌づつみしてた所師範の言葉に“俺は好きだけどな”なんて考える。
僅かに落ち込む様な表情をした相手に咄嗟にフォローを入れようとも口下手な性格が邪魔をし、それを期に兄が『俺は好きだけどな-、うん。菊の作る物なら何でも好きだよ、って言うか菊が好き』と大胆な言葉を連ねるのにムッとして。
学校まで送って貰い相手の言葉に「あぁ、いつでも会いに行く」と恥ずかしげもなく言っては向こうから走って来た青年を慣れた手付きで剥がして。
パスポートの話を持ち出されてはそんな物持ってる筈も無く「悪いな、頼むよ」と素直に頼んでは相手の言葉に携帯を確認しそろそろ向かわなければと。
「じゃあな。暇有ったらメールして」
( 相手に別れを告げ高校校舎へと向かってはまだ緩みそうになるのに無表情を決め込んでいて。
>桐崎
(相手の嫉妬心に気付いてやれないまま学校を後にして、一度道場に車を返してからアパートに戻ると兄がドアの前で待っておりつき返す訳にも行かず中に招き入れ。
「…俺、すぐバイトなんだけど」
『いいじゃん。そうそう旅行なんだけどハナさんがそっちに強いらしくて大分安く済みそうだよ。色々手配してくれるって』
「そっか。じゃあ今度お礼しないとな」
(世話やきな幼馴染に感謝しつつ、ふと塞ぎかかったピアスホールに触れては兄をジッと見て開け治せるか聞いて。
『あー、菊は塞がりやすいタイプなんだね。ちょっと痛むかもだけど出来るよ』
(そう言って丁寧にピアスに消毒して開け直してくれた兄に礼を言いながら此れでまた相手と揃いのピアスをつけられると頬を緩ませ。
『膿んできたらちゃんと処置するんだよ』
(兄の注意に頷いてはバイトの時間が迫っていたため二人でアパートを出ては、その合間に相手にピアスを開け直したことを不必要かと思いながらメールで報告して。
(一方高校の昼休み、青年が相手にいつものごとく絡みついては『お昼一緒に食べよー』と机を合わせて。
『ねえねえパスポートだけど次の休みでいいよね?手続きが終わったら一緒に遊ぼう。久々にボーリングしたいなぁ』
(子供のように楽しげに話してはちゃっかり相手のパンを奪ってはわざわざかじってあるところから食べ『関節キス~』と恥ずかしげもなく述べ『まあ直接してもいいんだけどね』と大胆発言をして。
それを聞いていた一部の女子がキャーーと桃色な歓声を上げてはやや興奮気味に一人が二人に近付いてきて『あ、あの二人を題材に同人誌書いてもいいかな?ていうか桐崎くん、露木先輩とも仲良いよね?もしかして三つ巴?ていうか桐崎君は受け?攻め?』とグイグイ迫る女子にその友達が慌てて止めにきては『あはは…ごめんね。何でもないの。…二人にただ萌えてるだけだからぁ』とあはは…と笑ったまま席に戻っていき。
青年は意味を理解しているのかブッと吹き出しては満更でもなさげに微笑み相手を見詰め『次の休みは俺とデートだね、兄さん』と鼻歌交じりに述べ。
>露木
( 青年と昼食の席を共にしながら他愛も無い話をしてた所、パンを奪い取られた事にも特に咎めず代わりに青年のパンを取っては味見程度に食べたりして。
関節キスだの何だのと話す青年に軽く苦笑し、「さっきから何言ってんだよ」と言ってやれば駆け寄ってきた女子に首を傾げる。
意味が分からないままそれでも相手の名前が出た事に反応しては「いや、俺は露木と…」と言い掛けた所で青年に話を遮られ。
席に戻るのを見送り“何を言いたかったのだろうか”なんて考えつつ御機嫌な様子の青年を頬杖を着いたままぼんやりと見詰めていて。
ふと気付いた相手からのメールを確認しては昨日まで相手の耳に無かった揃いのピアスが無かったと理由と共にピアスが戻った事を報告されていて。
ニヤけそうになるのを押し耐えては一方的に話す青年の言葉を聞き流していて。
( 放課後、相手はバイトだと言う事を聞いてた為にバイト先まで来ては寒さを凌ぐ様に店内へ入ろうと。
その刹那、以前嫌がらせを受けた数人の大学生に囲まれては肩をグイッと押されて。
『何、露木の事待ってんの??…お前も可哀想だな-』
『まだ遊ばれてるって分かんない訳??』
『いい加減哀れだわ』
( 男子学生達の言葉に苛立ちを感じつつ掴まれた胸倉を振り払えば「触るな」と。
「あんた達に何言われようと関係ねぇんだよ」
『は、ここまで来ると無様だわ』
『良いんじゃねぇの。露木の良いとこなんて顔と身体くらいだし』
「黙れ、まだ言うなら俺も遠慮しない」
( 拳をグッと構えた所で男子学生達は逃げる様に退散して行き。
ふと相手の自分に対する拒否反応を思い出しては一瞬不安が過るも相手とは思い合ってる筈だと自分に言い聞かせて。
>桐崎
(夕方バイトの終わりがけに店先を見た時、ちょうど相手から男子学生達が去っていくのが見えてはまた相手に嫌がらせをしたのではと不安が過りそちらへ駆け寄り。
「…来てくれたんだ。……彼奴等に何か言われたのか?」
(冷たい相手の手を握り店内へ引き入れては少しだけ硬いように見える相手の表情を窺いながら問い掛け「……その、何言われたか知らないけど…あんたのことは誰よりも認めてるし、ちゃんと好きだから」と手を包み込みまっすぐに述べ。
「…あ、…もうすぐ終わるからテキトーに店の中で待ってて。逆ナンされてもついてくなよ」
(相手の不安には未だ気付けず、軽くからかい微笑んではさっさと残った棚戻しを終わらせバックルームで着替えを済ますと相手と共に店を出て。
(冷え込む夜の街、相手と並んで歩きながら青年のように自然に腕を組んで歩けたらなんて何度か相手の腕に手を伸ばし掛けるも、そんなことをしては“軽い男”と思われそうで出来なく結局夕食を食べ相手の寮部屋に来るまでの間いつもどおり過ごして。
(相手の部屋にてシャワーを借りてはベッドに座る相手の隣に座り柔らかな銀髪を弄んでほのかに香るシャンプーの匂いに「今日は俺もあんたと同じ香りになった」と嬉しそうに目を細める。
以前なら此処で抱き着いたり口付けたりしたが何かが引っ掛かり行動に移せず、相手のぬくもりをもっと感じたい筈なのに今はこの微妙な距離が安心できて。
不意に伸びてきた手も「水、飲んで良いか?」とさり気なく躱して立ち上がる。
そんな時、突然扉が開かれ兄が現れては例のごとく抱き付かれグイッと引き剥がし。
「…いちいち抱き付くな。…で、何のよう?」
『別にー、菊の気配がしたから来ただけだよー』
(軽いノリの兄に内心“邪魔するな”と悪態吐いていると飲みかけの水を奪われ全くと呆れ気味に溜息を吐いて。
『ん、そうだ。今度の休み旅行の準備したいから買い物付き合ってよ』
「…え、でも………」
『繿は赤城と用事あるでしょ?だから菊は俺と。あとでメールするから』
(有無をいわさず事を決められるも兄は世話になっているため断りきれず「分かった」と頷いては水を奪い返して喉を潤し。
>露木
( 自室にて、折角二人だけになれたというのに先程から触れようと伸ばす手は尽く避けられてしまい。
やはりまだ怖いのだろうと自分に言い聞かせ気にしない素振りをするも突如勝手に入って来た兄が相手に抱き着くのに言い聞かせてた考えはガラガラと崩れ落ち。
拒否反応は無く、当たり前かの様に関節キスを受け入れるのにも沸々と嫉妬が沸き上がる。
去って行った兄の背中を不満そうに見詰めながら無意識の内に相手に目を向けない様にしていて。
「綸と友達感覚越えてんじゃねぇの」
( ポツリと零してしまった本音を誤魔化す様に微妙な表情を浮かべてはガシガシと頭を掻き話題を変えて。
( 翌朝、無防備に隣で眠る相手に目が行けばまだ覚醒しない頭のままゆっくりと相手に覆い被さる。
軽く相手の顎を持ち上げ口付け様としたその時、相手の目がぱちりと開き僅かな怯えと共に抵抗され。
「………ごめん」
( 相手から離れ一定の距離を取っては漸く落ち着いた様子の相手に安心して。
申し訳無さそうに眉を下げては話を変えようと「そ、そろそろ食堂行くか」と。
( 食堂へと向かう途中、当然の様に兄が現れるなり相手の事を抱き締める。
その様子を見ない様にとしてた所、高校の後輩に呼び出されては相手に「ちょっと待ってて」と告げて。
階段の所へと来た所、自分より微かに幼い顔立ちの男子高生が神妙な顔で『………あの、桐崎先輩って………男でもいけるんですよね』と。
隠す必要も無いかとストレートな判断をしては頷くも男子高生は自分の腕を掴むなり真剣な表情を向けて来て。
『俺も、男の人が好きなんです。………でも経験無くて…正直話した事も無い先輩にこんな事言うのもどうかと思ったんですけど………良かったら“教えて”くれませんか』
( 一瞬驚いた表情をするも相手が居るからと断ろうと口を開く。
………が、自分も相手に触れられない欲求不満を抱えてた為断る事が出来ず。
言葉を濁したあやふやな返事をしては後輩にメアドを交換され、そのまま相手の元に戻り。
>桐崎
(目を覚ますと相手が目の前にいて悲しげな表情で謝罪されては胸がチクリと痛む。
それでもまだ触れ合う行為が酷く醜く感じ、“身体だけ”求められ愛情が遠のく感覚になれば恐怖で心が震えて
相手の気持ちに応えたい、むしろ自分も求めてる筈なのに気持ちがついていかずもどかしいまま食堂に向かい。
(食堂にて、後から訪れた青年と合流し4人で同席しては青年に絡まれる相手をジッと見つめ「さっきの奴、知り合い?」と気にしていたことを問い掛け。
『え、何?もしかして兄さんまた告白でもされたの?』
(青年の言葉にピクリと反応するも、告白されたとしても相手は断っている筈だと気にしないようにして自分から振った話題のくせにすぐに話を変えて。
食後、相手を高校校舎まで見送っては「じゃあまたな」と名残惜しむよう髪を撫で兄と共にその場を後にする。
相手が教室につく頃、あの男子高生がメールを相手に送り《次の休み、何時でもいいので時間取れませんか?駄目なら平日でも…。勝手なのは分かってますがなるべく早く知りたいんです》と。
(そして次の休み、約束通り兄と待ち合わせ街に出ては旅行で必要な買い出しをする。
相変わらず過度なスキンシップを取ってくる兄に昨夜の“友達感覚を越えている”という相手の指摘が過ってはいつもより強く引き離し「…誤解されるから」と目を逸しスタスタと先を歩き。
今頃相手は青年と一緒なのだろうなと思うと少し憂鬱で溜息を漏らしつつ、懲りずに密着してくる兄に『近くでランチしようよ』と誘われては断る理由もないため頷いて。
>露木
( 休日、約束通り青年とパスポートの手続きを取り終えては青年の行きたい場所へと付き合う。
ボーリング場にて暫し過ごした後、昨日届いた後輩からのメールに今更気付いては咄嗟にトイレへと向かい返信に頭を悩ませる。
自分には相手が居る、しかしそろそろ自分の理性に抑えが効かなくなってるのも自覚してる。
だからと言って相手を傷付けたくも壊したくも無い。
《今夜、時計台のとこに来て》
( 誰でも良い、なんて言えば嘘になるしそんなの最低な台詞になるだろう。
しかし“一日だけなら”なんて甘えた考えが浮かんでは上記のメールを送って居て。
それから何もない素振りをしたまま青年と街を周り。
( 夕方、怪しまれない様にと青年と一度寮まで帰っては青年が自室に戻ったのを確認し再び時計台へと向かう。
後輩の姿はそこにあり、急ぎ足で駆け寄り腕を引き物陰に連れて来て。
『先輩、…俺』
「ごめん…出来るかは…俺も分からない。心から好きな奴が居るんだ、………でも…理由が合って触れられなくて………」
『分かってます、秘密にしますから』
( 後ろめたい気持ちに駆られるも今朝相手が自分に拒否反応を見せたのを思い出してはゆっくりと頷いてしまっていて。
まだ迷いがある中、やや早足でホテル街へと向かってはやはり脳裏に浮かぶのは相手で。
( その頃、夕方まで相手といた兄は過剰なスキンシップをしつつ慣れた様子で剥がされていて。
『折角だから夕食食べて行こうか。今日は付き合って貰ったし俺が奢るよ』
( にこやかな笑顔で相手の手を取っては『そうだ、おすすめのイタリアンあるんだよね』と得意げに微笑み。
>桐崎
(兄の誘いに本当は相手と食事したいと考えていたため迷うも、相手は青年と夕食を取っているだろうし邪魔しては悪いとそのまま兄に手を引かれ。
もう少しでレストランというところ、ホテル街がある二、三本奥の路地に見慣れた銀髪が横目に入った気がしてはそちらに目を向けるも、自分よりも早く相手の存在に気付いた兄に隠されて。
「…今、繿が…」
『繿?え、気のせいじゃない?俺もぽい人見たけど別人だったよ』
「…そっか」
(その場は頷き兄おすすめのイタリアンにて食事を取るも、自分が愛しい相手を見間違えるわけがなく脳裏に見知らぬ男子高生と並んで歩く姿が色濃く焼き付いていて。
『どう?美味しいでしょ。此処のシェフは本場で修行したから本格的なんだよ』
「へぇ…、」
『さっきから聞いてる?あ、菊、口にバジルついてるよ』
(そう言って自分が拭うよりも先に指で拭われては恥じらいもなく其れをなめとる兄に眉を寄せて全く冗談がすぎると溜息を吐き。
(ホテルの一室にて、相手の後輩がシャワーを浴びるころ相手のメールの着信音が鳴っては男子学生達が懲りずに嫌がらせを働き数枚の写真を送りつけ。
それはつい先刻兄が自分の手を引く姿とイタリアンで口元を拭われる写真で《一日中ずっと一緒だったぜ。やっぱり“化物”より愛想の良い人間のがいいじゃないの?》と。
丁度その時後輩が浴室から出てきては自分と同じ藍色掛かった髪を緊張した面持ちで触れながら『おまたせしました。……ほんとこんなことに付き合わせてすみません』と相手を見詰めさりげなく手を取り。
『…あの、俺……実は先輩のことが………』
(後輩は泣きそうな顔で何か言いかけるも言葉を飲み込み、なんでもないと首を横に振って『あの、…雰囲気出すために名前で呼んでもいいですか?』と上目遣いで尋ねて。
>露木
( 後輩がシャワーを浴びてる頃、続く嫌がらせのメールに溜息を漏らすも写真を目にした途端心は重くなり。
兄と仲良さげにする様子、自分ならきっと抵抗されてたのだろうなと思った途端自分はまた相手に無理をさせてるだけなのではないだろうかと不安が過り。
しかし相手が自分を好きだと言ってくれたのを思い出せばそんな事はないと言い聞かせ。
後輩がシャワーを終えたのを横目で確認しては自分は先にシャワーを借りてた為まだ僅かに濡れた髪を雑に拭く。
“名前で呼んで良いか”と言う問い掛けに「良いよ」と短く返せば後輩を押し倒し首筋に顔を埋める。
相手に良く似た藍色の髪、段々と理性が無くなっていけば後輩は相手と重なってしまっていて。
( 数時間後の夕食を終え街に出た頃、兄がしっかりと相手の手を取りながら『楽しかったね-』と。
『今日は俺の部屋に泊まってったら??こんな時間だし明日大学あるんなら俺の服とか貸すよ』
( 相手の髪を弄りながら相手の反応を待ってた所、丁度帰りの自分と後輩を見付けては顔を顰める。
自分は相手の姿を見付けた途端、僅かな罪悪感に苛まれつつ後輩に少し離れる様に耳打ちに絡められてた腕を離して貰って。
「よ、…よぉ。…こんな時間まで綸と遊んでたのか」
『そう言う繿は何してたのかな』
「勉強教えてた、…こいつの学年明日小テストなんだと」
( 咄嗟に嘘を並べては後輩がどことなく身体が怠そうにしてるのが目に入り「…じゃあ俺行くから、…気を付けて帰れよ」と言い残し場を去ろうとして。
>桐崎
(兄からの泊まりの誘いを断り絡まる腕を引き剥がそうとしたところばったり相手と出会しては男子高生の怠そうな姿に目を見張る。
何があったか想像した瞬間、ズシリと胸に重りが伸し掛かったような感覚になり自分の胸元を握りしめて。
全て自分が相手を遠ざけたのが悪い…。
分かってはいるが触れ合うことに恐怖を感じそれが醜い行為だと考える今、相手の不安や気持ちを汲む余裕はなく…。
「………汚い」
(去り行く相手の背中に震える声で呟いては拳をグッと握り「…わざわざホテルで勉強か?…勉強熱心なんだな」と皮肉めいた笑みを浮かべ逃げるようにその場を立ち去って。
その後すぐ相手よりも先に動いた兄が追っ掛けてきては『やっぱり俺の部屋に泊まってよ』と大学寮に連れていかれ。
(兄の部屋にて先ほどの自分の言動を悔いてはベッドに腰掛け項垂れていて。
「……俺、なんであんなこと……、本当に勉強教えてただけかもしれないのに…」
『……菊は何で繿に身体触らせないの?』
「………怖いんだ。触れられるたび身体だけ求められてる気がして…気持ちが離れてくみたいで…」
『でもそれってちょっと繿に失礼じゃない?…信用してないってことでしょ?』
「そんなことない!ちゃんと……ちゃんと愛してる」
(核心を突くような言葉に思わず強く否定しては顔を俯かせ唇を噛みしめる。
困ったように笑う兄が『御茶入れてくるね』とその場を離れる気配を感じては、おずおずと携帯を取り出し《さっきは変なこと言って御免。早とちりって俺の悪い癖だよな。…明日朝食一緒に食べてくれるか?》と相手宛にメールを送って。
(その頃、男子高生も相手にメールを送っており《今日は迷惑かけてすみません。でもすごく良かったです。…繿さんに想いの人がいるのは分かってます。でももし俺が必要になったらいつでも言ってください。…あと“はじめは”友達としてでいいので仲良くして貰っていいですか?》と。
>露木
( 激しい後悔に苛まれながら後輩を寮まで送り届け自分も自室へと向かう。
どんな理由があろうとも相手の身代わりを作るだなんて最低な行為、相手に対しても後輩に対しても酷い事をしてしまったと。
別れを切り出されても文句は言えないなと落ち込んでた所で後輩からのメールに気付く。
《俺こそ何かごめん。友達になるのは別に構わない、しっかり休めよ》
( 利用しておいて突き放すのはあまりにも身勝手な気がしては上記のメールを送り。
続いて再び受信音が鳴ればまた後輩かと思うも相手の名前が画面に写りバッと携帯を取る。
その内容に悪いのは自分なのに、と胸を痛めるも先程の相手の冷ややかな笑みが脳裏を過る。
___嫌われたのかもしれない、もしかしたら別れの言葉を告げられるのかもしれない。
そう思うと相手と普通に話せる気にもなれず《俺の方こそごめん。明日は多分あんた綸に誘われるだろ??偶には二人でゆっくりしろよ》と。
もしかしたら相手が唯一落ち着けるのは兄なのかもしれないと。
色々な意味を含めた謝罪、もし次相手と二人だけで話せる機会が出来たならなぜ後輩に手を掛けたかなど正直に話そうと。
しかしもし“汚い”と言った言葉が相手の本心なら、誰にでも尻尾を振る様な犬と同じ。
勝手な考えを浮かべモヤモヤとしてはベッドに横になり。
( 翌日、食堂へ行こうと青年が誘って来たが食堂には相手も居るのだろうと。
だがしかし相手が居るのならどうせ兄も居る、身勝手な嫉妬心を抱えながら青年と共に食堂へと向かった所、昨夜の後輩がまだ辛そうな様子でいて。
後輩の友達が心配そうに声を掛けてた所、ズカズカとそちらに駆け寄るなり「………大丈夫かよ。………無理はすんな」と罪悪感からの言葉を残して。
>桐崎
(翌日、相手からのメールにあんな態度を取ってしまったから愛想つかされたのかと思い込み心痛めつつ兄と食堂へ向かう。
食堂に着くといつもの癖でつい相手の姿を探しては昨夜の男子高生と話す姿が目にとまり、また胸がチクリと痛んで。
『菊、放っといて行こう。俺と二人でゆっくりしろって言われたんでしょ』
「………」
(兄に手を引かれそのまま流されてしまっては心此処に在らずで兄が抱き着いてきても引き剥がす気力すらおきずに。
それでも食堂を出て行く相手の背中が見えてはこのまま疎遠になってしまう気がして、慌てて後を追うと相手の手を掴んで。
「……その、昨日はほんと御免…、勝手に疑って酷いこと言った。…ちゃんと謝りたいから二人で話す時間作って欲しい」
(相手の気も知らずに相手の嘘を信じることにしては一度ギュッと手を握ってから「…じゃあ返事待ってるから。…授業頑張ってな」と小さく微笑みそっと手を離して兄の元へ戻り。
(食後、一度アパートに戻ってからバイトへ向かってはいつも通り仕事をこなすも暫くするとあの男子学生達が来店してきて、店内を巡回していたところ突如肩を組まれ。
『よう露木。今日も朝から綸と仲良くイチャついてたじゃん』
『あ、そうだ。いいこと教えてやるよ。昨日桐崎が後輩とホテルに入ってくとこ見たぜ』
「……小テストあるから勉強教えてたって…」
『は?お前馬鹿なの。ホテルですることなんて一つしかないだろ。それにその後輩の学年、今日小テストなんてないとよ』
『それに今朝の後輩の辛そうなところ見ただろ?あれは絶対やってるだろ』
『あー、でもお前は慣れてるからそう言う感覚もう忘れちゃったか』
「…………用はそれだけか。だったら帰れ」
『うわぁ、お客様に“帰れ”とか言っていいの?』
(ケラケラ笑い言うだけ言って男子学生達が去って行っては、胸を締め付けるような痛みが残り無意識に親指の先を噛む。
相手を信じたい気持ちが揺らぐが全ては相手と話し合ってからだと言い聞かせバイトに集中するようにして。
>露木
( 相手からの“話がしたい”と言う頼みに複雑そうな顔をしながらそれでも愛する相手からの頼みを無下に出来る筈も無くバイトも早めに切り上げる。
早目の時間から相手のバイト先の前にて佇んでた所、漸く相手の姿が見えては遠慮がちに駆け寄り。
自販機でホットのカフェオレを購入し寒いだろうと相手に押し付けてはさり気なく手を取ろうとするもやはり避けられる様に終わってしまい。
自分の部屋へと来るなりいつもの距離感を保ち腰を下ろしてはゆっくり口を開く。
「分かってる、…別れるって言いに来たんだろ??………昨日の事なら………ごめん………。俺……………あの後輩をあんたの身代わりにした………」
視線を下げたまま深く頭を下げるもこれで相手とも終わりなのかと思うと言葉は止まらず。
「………あんたは男に対してトラウマ持ってて…怖いんだろうなって………だから耐えようって思ってた。………でもさ、…っ…なんで、なんで綸には平気なんだよ!!!」
( 咄嗟に本音を吐き出してしまってはいつの間にか相手を壁際まで追い込んでいて。
その相手の表情に胸が痛み相手を挟み込む様に壁に着いていた手を離しては眉を下げて。
後輩の藍色の髪に惹かれたのも事実、背を向けたその姿は相手と良く似ており自分の欲を掻き立てた。
相手を落ち着かせる様にゆっくりと距離を離しては「………綸のが…落ち着くんだろ??…」
( ポツリと零し相手に手を伸ばすも見事な思い違いをしたまままた怖がらせてしまうかと手を戻して。
「………あんただけを、愛してるんだ。………だからあんたが俺の事怖くて…触れられるのも嫌なら………距離を置きたいのなら従う」
( 意思を決めた瞳でしっかりと見詰めては不意に後輩からの着信がなるも目もくれずにいて。
>桐崎
(寒い中待っていてくれた相手からカフェオレを受け取り小声で礼を言うも、やはり微妙な距離感は縮められず相手の部屋まで来る。
そして相手から紡がれる真実に“嘘”を信じようとしていただけに始めショックを受けるも相手の辛そうな態度や真剣さは身にしみて伝わり相手を酷く苦しめていた事を漸く理解して。
相手のまっすぐな瞳に自分も本心を曝け出さねばと小さく息を吸うも後輩からの着信音に阻まれては開きかけた口を閉ざし、着信音が鳴り止んでも暫く黙り込む。
それでも意を決すると相手の瞳を見返し、静かにゆっくりと兄にも話した悩みを告白して。
「…あんたのことが怖いなんて思わない。むしろずっと傍にいたいくらい愛してる。でも…あんたに触れられる度に頭の中に彼奴等の言葉が響いて“身売りだ”…“遊び人”だって言われてるみたいで……、行為そのものが怖いんだ。…愛を感じない」
(相手にどれ程失礼なことを言っているか、其れを考えると自分が最低な人間に思えてグッと拳を静かに握りしめ。
「………綸が平気なのは…多分…あんたほど意識してないから。……あんたは俺の中ですごく大きな存在で、意識すればするほど…空回りするみたいで……」
(自分でも不明瞭な気持ち。こんなので納得してくれる筈もないがそう簡単に恐怖や不安を乗り越えられそうになく。
「……傍に、…いるだけじゃ駄目か?……………でもそれだけじゃ俺に魅力なんてないか。……だから他の男と寝たんだよな…。気まで遣わせて……」
(結局身体を抜いた自分には何も残らないのかと悲観的になるも相手の愛が本心なら手放したくなくゆっくりと相手の腕に手を伸ばし自分から抱き寄せて。
「………俺も触れたくないわけじゃないんだ。だからあんたが望むならそれに応えたい。それに、多分ここを乗り越えないとずっとこのままな気がするから……」
(何が置いてきぼりになり離れて行く感覚に身体が震えだすも其れを必死に堪えてるように相手を強く抱き締めて。
>露木
( 相手から抱き着かれては一瞬固まるも、僅かな震えを感じ取り相手なりに必死に応えてくれ様としてるのを感じ取り優しく包む様に抱き締め返し。
だがしかし恐怖を煽らない様にと直ぐに身を離しては落ち着いた様に微かな微笑みを浮かべ相手の頭をポン、と撫で。
相手なりに苦しんでたのだと漸く理解しては浅はかな自分の行動を激しく悔やんで。
「…“別れて欲しい”って言われるのかと思ったから…正直安心した。………本当にごめんな。…その…よく分かった。………傍に居るだけで構わない、あんたが慣れるまで待つよ。………我儘だけど…あんたとは離れたくない」
( 真面目な表情で思いを伝えては改めて後輩の事を話さなければとゆっくり口を開く。
「…俺はあんたが身体だけなんて思ってない、…あんたその者が好きなんだから。………実は嫉妬してくれてたりする所も早とちりな所も全部愛してる。……………あの後輩の事なんだけど、………後姿…あんたと瓜二つでさ。…こんな事言ったら最低なんだけど………嫌われてると思ったからやけになったって事もある」
( 包み隠さず全てを話した所で「あんたが求めてくれる日まで待つ」としっかり告げて。
( 話し込んでた事によりすっかり夜になってしまっては相手に泊まる様に言い自分のパーカーなどを手渡しては入浴を済ませる。
一定の距離を取りベッドへと寝そべるも好きな存在が無防備に隣に寝ている状況。
先程“求めてくれる日まで待つ”だなんて恰好付けた事を言ってしまった自分を軽く悔やんだりしながらクルリと相手に背を向けては理性を保とうと。
>桐崎
(全てを話してくれる相手に安心してその優しさに自分は随分甘えてしまってるなと申し訳無く思うも今はその優しさが心地よく素直に話して良かったと小さく微笑みを零す。
胸の重りが消えてスッと軽くなったような気持ちになれば相手の隣ですぐに眠りに落ち、怖いと言ったくせに背を向ける相手に擦り寄っては額を相手の肩辺りに当て「……繿」とゴニョゴニョ寝言を言っていて。
(翌日すっきりと目覚めの良い朝を迎えてはグッと伸びをして少し長い袖をまくっては洗面などを済ませ、起きてきた相手と共に食堂へ向かって。
待ち構えていたかの如く寄ってきた兄を抱き付かれる前に避けては兄があれという顔をして。
『なんだ。もう仲直りしちゃったんだ。ていうかそれ繿の服じゃん』
『いいなあ、兄さん、俺にも服貸してよ。むしろ頂戴。寝間着にするから。いい夢見れるだろうなぁ』
(完全に貰う気満々の青年は相手の腕を引いて隣に並ぶよう腰掛けては『兄さん暖かい』と密着して。
とても自分には出来そうにない行動だと寝ていた時のことは覚えていないためやや呆れ気味に見詰めつつ自分は相手の正面に座って。
その時、あの男子高生の友人がどこか怒った様子で此方に近付いてきて相手と自分を冷たく見下して。
『良いご身分ですね。人のダチ泣かせておいて公共の場で馴れ合いですか。よく出来ますよね。……彼奴もなんでこんな男好きになったんだか』
(小声で毒づき再び口を開こうとしたところ男子高生当人が慌てて友人を止めに来て。
『ちょっとやめてよ。俺が頼んだことだから先輩たちは悪くないよ』
『は?何言ってんの。先輩はお前の身体を弄んだんよ。しかも元サヤと寄り戻った瞬間電話無視だからな。お前それで昨日めっちゃ泣いてたじゃん』
『だから…いいんだって…俺が勝手に好意寄せてるだけだから…』
『………兎に角、俺は桐崎先輩も露木先輩も気に入らねぇ。……俺、知ってるんですよ。桐崎先輩が煙草吸っててバイトしてる不良ってことも露木先輩がたらしだってことも。……そんな汚い先輩達に此奴は汚されたんです。最後まで責任取ってくださいよ。此奴だけこんな想いするなんて不公平だ。だから先輩たち、別れてください』
『ちょ、ちょっと、何めちゃくちゃ言ってるの』
『…俺、本気ですから。…………ていうか先輩たち全然お似合いじゃないですよ。隣にいる“お友達”のが本当はいいんじゃないですか』
(冷たく嫌味を吐き捨ててはペコペコ頭を下げる男子高生の手を引き食堂を出て行ってしまい、あまりの剣幕と勢いに呆気に取られては数秒固まってしまい。
『なんかすごい子だね。…あれ絶対あの子のこと好きだからあんなに怒ってるんでしょ。そこまで悪い子ではなさそうだけど…厄介なことになる前にちゃんと片さないとね。あーいう子は好きな子の事になると変に突っ走るタイプだから』
(兄はどこか冷静にツラツラ並べては相手のヨーグルトをスプーンですくい『繿ー、お口がとまってますよー』と嫌がらせのごとく口の中入れようと唇を突いて。
>露木
( ぼうっとしてた所、ヨーグルトを突き渡されては咄嗟に顔を背け兄をキッと睨み付ける。
自分の所為で相手まで悪く言われてしまった。
身体だけの関係のつもりで後輩が好意を寄せてくれてるなんて知らなかった。
自分はつくづく最低だな、と考えてはさっさと朝食を済ませて。
( 授業に出る気にもなれず、まだ寒い屋上でサボってた所不意に扉が開いては後輩が立っていて。
申し訳無さそうな表情でこちらに来るなり土下座する勢いで深く頭を下げて来て。
『先輩…本当にごめんなさい!!!さっきの…俺の幼馴染みで…』
「なんであんたが謝るんだよ。…良い幼馴染みを持ったな」
『でも…俺が勝手に』
「利用した俺が悪いんだ、あんたは何も悪くない」
( 咥えてた煙草を踏み付けるのを後輩はぼんやりと見詰めながら『それ、美味しいですか??』と。
緩く微笑み首を横にした所で後輩をジッと見詰めるとその肩を掴む。
「本当に…悪かった」
『………それは…どういう意味の…謝罪でしょうか』
「……………」
( 口を開き掛けた所で後輩の幼馴染みが授業中にも関わらず入って来ては自分を突き飛ばし後輩を庇う様に前に立っていて。
『まだこいつにちょっかい出すんですか』
『ち…違うよ、先輩は謝ってくれてただけで…』
『は??…謝って済む事なんですか』
( 幼馴染みが後輩を思う気持ちは強く伝わり、それと共に自分の行動を悔いると一番使いたく無かった手だが…と能力を解放しようと意識を集中する。
直ぐに能力に頼る悪い癖、この大嫌いな能力に自分は直ぐに頼っている。
「…なら、あんた達の気が済むまで俺を好きにしなよ。殴っても良いし蹴っても構わない」
『………先輩何言って』
「そこの幼馴染みとやら、あんたそいつの事好きなんだろ??」
『…は??………違っ…黙れ!!!』
「あのさ、一時期流れた噂知ってるだろ??“桐崎は化物だ”って噂」
( “意味が分からない”と言う表情をした二人を見詰めては緩く微笑みゆっくり能力を解放していく。
後輩が目を見開き幼馴染みに抱き着く様にしがみつくのと共に幼馴染みが硬直してる様子が分かり。
最近思うようにコントロール出来てきたなと思いつつ人姿に戻ると距離を取りながら改めて後輩に深く頭を下げる。
『………なんで…そんな風になれる事教えてくれたんですか??』
「…金稼げるよ、上手く俺を利用してくれても良いし」
( ヘラリと笑みを浮かべた瞬間幼馴染みが自分の胸倉を掴んで来て。
『そんな事…する訳無いじゃないですか!!!………もう、良いです』
( 胸倉を掴んだ際に僅かに覗いた傷を見ては眉を潜め、力無く手を離しては後輩と共に屋上を出て行って。
また自分を恐れる者を増やしてしまったのだろうかと自嘲の笑みを浮かべつつ新しい煙草に火を付けて。
>桐崎
(男子高生達が屋上から去ってすぐ、タイミングを見計らったかのように男子学生達が相手を囲んでは嫌な笑みを浮かべ。
『あれ、煙草吸っていいのかな?』
『っていうか下級生泣かせるとか最悪だな。彼奴等震えてたぜ』
『まあ“化物”見たから当然だろ』
『…てかさ、何普通に露木とより戻してんの?お前、露木がどれだけ無理してるか分かってねぇだろ』
(一人が相手を壁際に追いやりドンと手をついては『彼奴、最後までお前の“嘘”信じてたんぜ。其れを裏切られたんだから相当ショックだっただろうな。しかも“身体”のことで悩んでたのに別の男と寝られちゃたまんねぇよな』と好き勝手言って嘲笑し。
『露木もさ、本当は“化物”が怖くて反抗出来ないだけなんじゃねぇの?』
(グイッと顔を近づけ相手の顎をもたげては『気色悪い瞳』と蔑んで。
(食堂での一件を気にしつつ一度部屋に戻り準備をしてからバイト先へ向かうところ、高校校舎付近で授業中のはずの男子高生達と鉢合わせ先程のこともありややぎこちなく笑み。
「……授業はどうした?体調悪い?」
『言うことそれだけですか。………露木先輩がちゃんとしてないから此奴が傷付く羽目になったんですよ』
「…ごめ…『口先だけの謝罪はいりません。…っていうか本当桐崎先輩って最低ですね』
「…は?」
『だって金が稼げるから俺を利用しろって言ったんですよ。要するにそれって俺達がそう言う汚い人間だって侮辱してるってことですよね。……でももういいです。次此奴を傷付けるようなことがあれば絶対許しませんから』
(どこか震えを堪えて威勢を張る幼馴染が此方をキッと睨み、戸惑う男子高生の手を引き去って行くのを見送っては二人が来た方角、屋上を見上げて。
(相手はいるだろうかと屋上へと足を向けるとそこに男子学生の姿は既に無く落ち込んだ様子の相手がいて何も言わずに隣に腰掛けて。
「……彼奴等…後輩に能力見せたのか?……さっきさ下で偶然会ってちょっと話し聞いたんだ」
(学生達に絡まれたことは知らず、どこか穏やかな声色で話しては足先を見ながら「……ありがとな」と小さく呟き「…彼奴等と俺のためにしてくれたんだろ?…わざと嫌われるような真似してさ…。…違った?」と相手の横顔を見詰め。
そして地面に手をついて相手の正面に来るよう身体の向きを変えては両頬を包み込み額をコツンと合わせ。
「……本当にボコられて利用されてたらどうするんだよ。…そんなことされたら俺があの後輩に何するかわかんない」
(小声で言葉を紡いではまだ精神的恐怖から微かに震える手で相手を優しく抱き締め、柔らかな銀髪をあやすようにふわりと撫でて。
>露木
( 男子学生の言葉が胸に刺さりとことん自分を嫌ってるだな、なんて呑気な考えを浮かべては次に現れた相手に一瞬身構える。
優しい声色と慰める様な手に心が落ち着きを取り戻すが僅かに震えてるのを感じ取りゆっくり身を離しては緩く微笑んで。
男子学生達の言葉を深く考えない様にと心掛けつつ「バイト先まで送る」と小さく言えば立ち上がり。
( 微妙な距離感を守りながら相手をバイト先まで送り届けた後、自分もバイト先へと向かえば入口にあの男子学生がたむろしていて。
無表情で通り過ぎようとした所不意に不意に腕を引かれては男子学生の中に居た懐かしい顔の一人に目が行き。
中学の頃の顔見知りと言った所か、何かと自分の悪口を言ってたのを思い出せば顔を顰める。
「何」
『すっげぇ面白い事聞いたんだよ。お前真希ちゃんと会う前と別れた後ってすげぇ浮気症だったんだって』
「は??…いつの話??」
『しらばっくれないでよ。桐崎君の悪い噂なら結構耳にしてるんだから』
「………悪いけど何言われても今は露木だけだから」
『性分ってのはそう簡単に変わんねぇんだよ、あの後輩とも浮気のつもりだったとか??』
「そんなんじゃない」
『ま、浮気症と身売りなら案外お似合いだったりしてな』
( 男子学生の言葉にカッとし殴り掛かりそうになるのを寸の所で堪えては「バイトの時間だから退けよ」と冷たく言い残し肩にドンッとぶつかるのを気に止めず店内へと入って行って。
イライラを顕にした一人の男は携帯を取り出しバイト中の相手の携帯に留守電を入れて。
『あ-もしもし露木??金払うからまた相手でもしてくんない??最近そっちに疎いからさ』
( 大声で“身売り”と言う言葉を突き付ける様な言い方をしては電話を切り近くのゴミ箱を蹴り上げ。
>桐崎
(夕方、バイトを終えて着替えを済ませては相手にでもメールしようとしたところ男子学生からの留守電を聞いて眉を顰める。
無視しようとするが其れを咎められては面倒だと思い男に電話を掛け「…悪いけどそういうのもうやってないから。…他あたってくれ」と通話を切る。
欲を満たすだけなら自分じゃなくても良いし此れ以上は干渉してこないだろうと軽く考えては相手宛に《バイト終わったら連絡して。そっち迎えに行くから》とメールを送り時間つぶしのために付近の雑貨屋に入って。
(雑貨屋にて相手に似合いそうなリストバンドを見つけ買おうか迷っているところ、突如背中を押され振り返ると幼馴染がいて。
「…ハナか。…バイト帰り?」
『うん!…それ、もしかして桐崎君に?』
「そんなとこ。…なんか貰ってばっかだし…、喜ぶ顔みたいなって。彼奴、笑うと意外と可愛くて……ッ、何でもない。言わせるなよ」
『いや菊が勝手に喋ったんだし。…あー、顔赤くなってるぅ』
(指をさしてからかってくる幼馴染の額を軽く小突きつつ、どさくさでリストバンドを購入しては今日はマンションに泊まるという幼馴染を近くまで送って。
『じゃあ…桐崎君と仲良くね。……絶対よ。…絶対だからね!』
「………うん?……じゃあ、おやすみ」
(念押ししてくる幼馴染に首を傾げつつ軽く手を振りその場を立ち去っては、近くのコンビニで温かい缶コーヒーを二本買い相手のバイト先近くで相手の分の缶コーヒーをポケットに入れ、自分は一足先に飲みつつ出てくるのを待って。
>露木
( バイトを終え店を出た所で相手に出会してはコーヒーを渡され礼を言い受け取る。
僅かに触れた手をぼんやりと見詰めては何気無く手を取り繋いでみたりして。
相手の恐怖を掻き立てない様にと直ぐに離すもどこか嬉しそうに微笑んでは「ま、これも一歩全身だよな」と呟いて。
( 新発売のプリンが出るから寄って欲しいとクラスメートの女子に言われてたのを思い出し相手と共にコンビニへと入っては取って置いてくれてた様で袋に入ったプリンを二つ受け取る。
『はい、人気だったから無くなりそうで取って置いたの。言われてた通り二つ分ね』
「ん、悪いな。どうも」
( 撒けて貰い代金をクラスメートに手渡してはコンビニを後にし相手と共に寮へ向かおうとした所で先程の男子学生達に囲まれてしまい。
またグズグズと嫌味を言われるのだろうかと眉を寄せた所で数枚の写真を見せられ。
『露木も色んな男に媚売ってたんだな-、これとか明らかに露木から誘ってるじゃん』
( ゲラゲラと笑いながらバラ撒かれた写真をさっさと拾い上げては人目に触れる前にとポケットからライターを取り出し燃やして。
「こんな事して楽しいのか、餓鬼だな」
( 冷ややかに告げるも男子学生の様子は変わらず『あ-あ、折角写真仕入れたのによ。…まぁいいや、その内露木にもプレゼント持ってきてやるから』と意味の分からない事を言い残し去って行って。
>桐崎
(写真の中の汚れた自分の姿に目を逸らすも、手早く写真を燃やし男達に立ち向かう相手を見ては思わず見惚れる。
しかし申し訳ない気持ちと共にまた言いようのない不安がぶり返しては握られた手をそっと離し「ごめん、ありがとう」と小さく微笑み、相手と間をあけて歩いて。
(相手の部屋にてプリンを受け取り口に運びつつ笑顔を心がけるが情けなくも男達の言葉を気にしていて、一度プリンを膝の上に置くと少し表情を曇らせて。
「………写真のことだけど…、確かに俺から誘ったことはあったけど…気持ちがあったことはあんた以外一度もない。…いつも…嫌悪感しかなかった…」
(ポツリと本心を告げるとプリンをベッド脇に置き、先程離してしまった相手の手を両手で包んで握り直して。
「…でもあんたは全然嫌じゃない。………あのさ、我慢することないからな。必要になったら言って欲しい。…絶対あり得ないけどまた他の奴に手出されたら耐えられないし。なんだったら少しくらい痛くされたほうがずっと良い」
(ジッと相手を見詰め言うもなにげに恥ずかしいこと言っているなと自覚しては視線を横に流す。
そこで思い出したように一度ベッドから降りて鞄の中から先程雑貨屋で買った包みに入ったリストバンドを差し出して。
「これ…、あんたに似合うと思って。ちゃんと付けろよ。一応、あんたが俺のものって証だから」
(束縛じみたことをやや照れたように述べてはその空気に耐えられず「って…あんたはものじゃないか」と小さく笑い残っていたプリンを食べ始め。
>露木
( 自室にて、相手からの言葉に僅かに表情を緩めては「疑ったりしてねぇよ。ちゃんと信じてる」と小さく告げて。
続く相手の“他の奴に手出されたら耐えられないし”と言う言葉に改めて相手の気持ちを感じ取り僅かに照れながら俯けば小さく微笑み。
突如渡されたリストバンドを驚いた様に見詰めてはその言葉と共に表情が緩み。
いつも着けてた物を外し相手から貰ったリストバンドを着けてみたりしては「ありがとな。俺は“あんたのもの”だからちゃんと着けとくよ」と。
こんなに人の事を思ったのは初めてなのでは無いだろうかと思う程の温もりを感じては、触れられるの事に恐怖を感じる相手にもしっかりと向き合おうと。
いつもの様に風呂を終えた後、同じベッドの上でお決まりの距離感を守ったまま他愛も無い話をする。
寝てる時はかなり無防備な相手、向かい合って話をしてた体制のまま何気無く相手の頬に触れ。
「…大丈夫だよ、触れるだけだ」
( 穏やかに微笑んではゆっくり手を戻し今日だけでかなり前進した様に思え。
「気付いてた??今日いつもより長くあんたと手繋いで………」と言い掛けた所で恥ずかしさが込み上げ視線を逸らす。
流石に子供じみてたなと思えば羞恥を誤魔化す様に布団に入って。
( 翌日、着替えなどを済ませた所で扉が叩かれる音が耳に入っては青年だろうかと扉を開ける。
しかしそこに居たのは男子学生達で一気に表情を強ばらせては用件を聞いて。
『そんなおっかない顔すんなっての。俺達露木にプレゼント持って来ただけだから』
「露木に通す訳ねぇだろ、帰れ」
『あ、いんじゃん。お-い露木、これやるよ』
( 嫌な笑顔を浮かべたまま小さな封筒を投げ渡した所、高校に入ってから金を稼ぐ為に良くない付き合いをしてた女達との写真が散らかり。
それを男子学生達はさも最近の事の様に話しては『やっぱ露木じゃ物足りねぇんだな』と嫌味をぶつけ去って行ってしまい。
無言で写真を拾い上げてはゴミ箱へと投げ捨て。
>桐崎
(朝の支度を終えるころ穏やかな空気を乱すかのごとく現れた学生達にどれだけ暇なんだと眉を顰める。
しかし散らばる写真を目にした瞬間、微かな焦燥感が襲い其れを煽るような学生達の言葉に、このままでは相手が離れて行ってしまうと焦りが膨れ上がって。
無言でゴミ箱に捨てる相手を目で追っては突如後ろから腕を掴んでそのままベッドに押し倒すとどこか縋るような瞳で相手を見下し。
「……た、足りないなら…してもいい。…今直ぐ抱いていいから。…それとも俺からしたほうがいいか?」
(情けなく震える身体と声に唇を噛み締めては何とか堪えて相手の唇を奪い首筋に顔を埋める。
上手く動かない指先で相手の服に手をかけるも頭の中がグワングワンし、突然の吐き気に襲われては相手からどき洗面所に駆け込んで。
暫くして少しずつ正気に戻り気持ちが落ち着くと洗面所から出て相手をあまり見ずに自分の荷物を手に取り。
「……ごめん、ちょっと…焦って…。……馬鹿だよな。あんな奴等の挑発に動揺するなんてさ。…大丈夫、あんたのことはちゃんと信じてるから」
(少しだけ相手を見て薄く微笑んでは「…悪い、今日は朝やめとく。…教授に話したいことあるから早めに大学行くよ。……また後でメールする」と告げ相手の部屋を後にして。
(大学の研究室にて教授と話を済ませては自分の精神の弱さと餓鬼っぽさにほとほと嫌気がさしていて。
これではまたあの学生達の思うツボだ。
どうせあの写真も昔のことを掘り返しただけだし、相手にも事情があったんだと言い聞かせては資料だけまとめて昼からのバイトへ向かって。
>露木
( 自室にて、出て行った相手に罪悪感を感じつつゴミ箱の写真を見詰めると唇を噛み。
無理をさせてしまったなと眉を寄せては携帯を取り出し《さっきの奴等から渡された写真、あんたと出会う前に金稼ぎとしてやってた時の写真。…あんたと会ってからはちゃんとあんただけだから》と気休め程度にしかならないであろうメールを送り。
必要だと思われる授業に顔を出し、直ぐにバイト先へと向かっては何も考えずにただひたすらにバイトに取り組む事にして。
( 早目にバイトを切り上げた所で特にする事も無くコンビニにでも寄ったら直ぐに寮に帰ろうと。
帰り道の途中、ふと青年に出会しては一緒にコンビニに向かう事になり。
『ねぇねぇ兄さん、俺ホラーのDVD借りて来たんだけど怖くて見れないから一緒に見ようよ』
「綸とでも見ろよ」
『前に誘ったんだけど菊の話ばっかしてんだもん、ねぇ良いでしょ??』
( しつこい様子に負け、仕方無く頷いてははしゃぐ青年が菓子類を買い込むのをチラリと見詰める。
相手はまだバイトだろうかと携帯を見詰めるも返信はまだ無く。
渋々青年を自室に入れてはDVDを再生し、在り来たりなホラー映画をつまらなそうに見詰める。
そう言えば以前相手と思い違いがあった時お化け屋敷にて相手がお化けに驚き抱き着いて来たのをふと思い出しては相手はホラーは苦手なのかと。
出来る事なら相手と映画を見るのも良いなと思ったが触れ合えないのを思い出した途端に小さく息を付く。
途端に青年が悲鳴を上げ張り付いて来るのに何気無く目を向けて。
>桐崎
(バイト終わり相手のメールに気付いてはその内容に少し安堵すると共に早く相手の気持ちに応えたいと思う。
最後までいかないにしてもせめて抱き合って口付けるくらいは…と焦る気持ちを抑えて《メール有難う。安心した。俺もあんただけだよ。今はあんたの全部に応えられないかもだけど気持ちは絶対ブレないから。愛してる》と気持ちだけでも真っ直ぐに伝えて相手を安心させたいと恥ずかしげもなくメールを送って。
(その後すぐに相手の部屋へ向かっては今朝の事もありやや緊張気味に扉を叩き中に入る。
と、そこにはテレビの前で青年が相手に絡みついた状態のまま眠る姿があり、一瞬動きが止まるもいつものことかと溜息を吐いては青年の正面に周ってしゃがみ頬を軽く抓ったり鼻を摘んだりして。
しかし青年は起きる気配がなく『兄さん大好きー』『そこは駄目だよー』と如何わしい寝言を呟くだけ。
「……どんな夢みてんだ、此奴。………てか、朝は御免な。…で、何してたんだ?…DVD?」
(呆れ気味に呟きつつ、今朝の事を重く捉えないよう会話の中で軽く謝っては観賞していたと思われるDVDのパッケージを手に取りそのジャケットを見た瞬間やや眉を顰めて。
「ホラーって…、冬場にさらに身体冷やしてどうするんだよ。……あんたこういうの好きなの?」
(相手をジトリと見つつさり気なくパッケージの表面が見えないよう裏返す。
正直ホラーは苦手。幼少期まだ家庭が安泰にあった頃、近所の大学生が遊びに来て悪戯でR15指定のホラー映画を見せられたことがあった。
ナツとハナがケロッとしていたのに対し自分はその後三ヶ月以上一人でトイレに行くことも億劫になるという苦い経験が……、
そこまで思い出し小さく溜息を吐いては、平気そうな相手に劣るのは癪なため気にしないようにして、とりあえず青年を相手から引き剥がそうとするもビクともせずに。
「…離れないし。………まあいいや、台所借りて良い?…少しお腹空いた」
(自分も青年みたく抱きつけたらとやや表情が曇るも、気を取り直し立ち上がっては普段通りの振る舞いを心がけ簡易キッチンで軽食でも作ろうと。
>露木
( 寝てしまった青年を特に気に止めずに映画の続きを見てた所、扉の叩く音と共に首をそちらに向ける。
先程相手のメールにニヤけてしまったばかり、平然を装いながら青年に悪戯するのを小さく笑って。
DVDパッケージを受け取り「此奴が持って来たんだけどさ、割と面白かった」と小さく言ってはそれをヒラヒラとして。
キッチンへと向かった相手の背中を見詰めては自分もそちらへ向かおうと青年を横抱きに抱え自分のベッドへと寝かせては布団を掛けてやり。
しかしその際に青年がゴニョゴニョと寝言を言い首に手を回されては咄嗟に体制を崩し青年に覆い被さる様な体制になってしまい。
「…ったく、危ねぇな」
( ボソリと呟き起き上がっては相手の元に向かい隣に立っては「何作ってんの??…すっげぇ良い匂い」と覗き込んで。
しかし距離が近過ぎた事に慌ててパッと離れては微笑を貼り付け誤魔化して。
一定の距離を保つ様にしながらそれでも傍に居れる嬉しさに頬を緩める。
一瞬抱き締めたく手を伸ばすも相手に恐怖を与えるのは嫌だと手を戻す。
こんなにも奥手になったのは初めてだな、なんて考えながら冷蔵庫を開けてはペットボトルを取り出しミネラルウォーターを喉に流し込んで。
( キッチンから青年のベッドを覗き込んでは人の部屋にも関わらず呑気に寝息を立てており。
苦笑を漏らしつつ相手の隣に戻り「何かあいつ結構ホラー映画持って来てんだよ。折角だからあんたも見てけよ」と人の気も知らずに告げて。
( 買い置きのパンやらを取り出し相手がキッチンにて鍋に向き合う横室でDVDのセッティングを済ませては後は再生ボタンを押すだけにして。
青年の髪を何気無く弄りながら相手がこちらに来るのを大人しく待ち。
>桐崎
(調理をしつつ青年が相手の首にまとわりつくのが目に入っては実は起きているのではと嫉妬するも相手が近づいてくれば直ぐに心和み。
ただ気遣ってくれているのが窺えれば申し訳ない気持ちになり早くこの恐怖を克服せねばと。
が、次に相手から発せられた提案に「え…」と声を漏らし、今は別の恐怖に打ち勝つ必要がありそうだと引きつった笑いを零して。
(ポトフを作り終えてはテレビの前の小さなテーブルの上に皿とスプーンを2つずつ並べ、拳三つ分あけて相手の隣に腰掛ける。
「…本当に見るのか?………いや、いいんだけどさ」
(思わず聞き直すも男で怖がりなんて知られたくないし、きっと小さい頃見たから怖かったんだと自分に言い聞かせては下を向いて怪しまれないよう再生される画面を見つめる。
どうせ二流の映画。こっちは成人してるんだと高をくくっていたが意外と怖い。というよりかなり怖い。
頼むから何か喋ってくれと思うがいつもおしゃべりな青年は寝ているしその寝息すら静かな部屋ではホラーに思えてきては変な汗が背中を伝う。
そして恐怖も最高潮という時、突如部屋の明りが消えてはヒッと小さく喉を鳴らし少し大袈裟なくらい肩を揺らして条件反射のごとく相手の手を握って。
『…プッ、菊ってばベタな反応~。そんなに怖かった?』
「…………綸。…別にびっくりしただけだし。…っていうかいつからそこに居たんだよ」
『えぇ、ずーーっと菊の後ろにいたよ?』
「……、…分かったからはやく電気つけろ」
『こっちのほうが雰囲気でるじゃん。ねえ繿?…あ、俺もポトフ食べる』
(そう言って部屋を暗くしたまま隣に押し入って来ては急に黙って映画を見だす兄。
喋ってくれていたほうが有り難いんだけど…と思いつつ、兄が座ったことで必然的に相手との距離が縮まり肩が触れ合ってはドキドキして映画どころではなくなり。
不思議と“恐怖”はない。手を握ったままだとも気付かず相手の横顔を自分の髪の隙間からこっそり覗いては、引き寄せられるように相手の頬に触れるだけの口付けを落としていて。
>露木
( 食欲をそそる香りのポトフを美味しそうに食べながら映画を見てた所、時偶に怖いシーンの所で相手がパッと視線を逸らすのを面白そうにさり気なく見詰める。
音楽が激しくなり“あ、そろそろ出るんだろうな”なんて思いながらテレビに目を向けてた所で部屋の電気が消えては「ん??」と扉に目をやる。
兄が面白そうに笑いながらポトフを取りに台所へと向かってく中、しっかりと握られた手に段々と照れ臭さが生まれてはさり気なく握り返したりして。
映画の中も暗いシーンの為まさに部屋は真っ暗で、不意に頬に感じた感覚にゆっくり相手に向き直る。
あんなに触れる事を拒んでた相手が、と驚きと擽ったさにさらされ。
「………つゆ、」と相手を呼び掛けた所で映画は二回目の最高潮を迎え不気味な爆音を立てては兄が『わ-!!!』と態とらしい悲鳴を上げ相手に抱き着き。
兄の態とらしい悲鳴に青年も目を覚ませばのそのそと自分の隣に座り『俺も見る』とまだ眠そうな様子で呟いて。
( 漸く一本目の映画が終わり青年の持って来た小さなバッグを覗いては次はどれにしようかと。
ホラーが苦手な事を隠しているかの様な相手の様子が実に可愛らしく感じつつ流石に虐め過ぎるのは良くないかと「もう終わりにするか??」と。
しかし兄と青年は乗り気の様で『え-まだ見る!!!』と子供の様に言っては次の映画を選び始め。
『これ何かどう??“呪いの廃病院”だって』
「ありきたりだな」
『でもこれかなり怖いよ、いわく付きの病院で撮影されたんだって』
「それ売り文句だって。どうせセットだろ」
( 雰囲気をぶち壊す言い草に兄が『もう静かにしてよね』と言っては再び電気を消して。
テーブルの上のペットボトルへと手を伸ばし、いかにも恐怖を煽る様な音楽と演出をつまらなそうに見詰め。
>桐崎
(口付けた自分もびっくりでこんなムードもへったくりもないホラー映画を見て何してるんだと内心あたふたするも爆音と共に兄に抱き付かれては場の空気にそのまま流されて。
(もういやだと思いながら二本目の映画が見終わり半放心状態でいるとエンドロールを見ていた青年が『あっ』と声を上げて。
『ねえねえ、見て見て協力元の所。映画で出てた廃病院セットじゃなくて本当にあるみたいだよ。しかも割りと近く!……ねえ明日明後日休みだし行ってみ「嫌だ」
『ええー、いいじゃん。若いうちしか出来ないし、青春だよ、青春』
「…俺はもう青春って歳じゃないから」
『俺は行きたいけどなぁ。……ほら、繿も行くって言ってるし、ね?』
「…………桐崎が行くなら…」
『はい決定。ってことで繿、明日の夜の予定あけておいてね』
『わーい、兄さんと肝試し!写真撮ろうね』
「……やっぱり行くのやめ…『行くよね。まさか怖いわけないもんね』
(笑顔の兄にやっぱり此奴腹黒いと恨みつつ断れない状況に「仕方ないな…」と分かりやすく強がっては、また相手の手を握っていたことに気付いてバッと手を離し。
「…悪い…、またいつの間に…」
(笑顔で誤魔化しつつ一本目の映画の最中口付けたことを思い出しては更に恥ずかしくなり、逃げるようにお皿などの片付けを始めて。
(その後、シャワーや着替えを済ませもう一本みたいと言い出す青年と兄を流石に“飽きた”と言って部屋から追い出しては相手と漸く二人きりになる。
暫く沈黙してしまうも先程手を握ったこと等を思ってはもう触れても大丈夫ではと。
ゆっくり相手に向き確かめるように相手の頬に手を伸ばしてはそっと親指で口元をなぞる。
まだ大丈夫、まだ触れていられる。…触れていたいと願えば少しずつ相手に顔を近づけるも寸でのところでまたあの恐怖が浮上してしまいピタリと動きを止める。
それでも此処まで来てやめたくなく相手の肩に額を預けては、頭の中から男達の言葉が消えるまでそうしていて。
>露木
( 相手と二人になった自室にて、まだ僅かな照れ臭さが残るも不意に手を伸ばされては驚いた様に相手を見詰め硬直して。
ゆっくりと相手の顔が近付いて来たかと思ったが、僅かな怯えと共に迷いを含んだ瞳が目に入り肩に寄り掛かる相手をそっと抱き締める。
ビクリと震えた肩に手を乗せ片手で相手の顎を持ち上げては「大丈夫だから…ちゃんと見ろ。…俺だから」と小さく告げゆっくりと顔を近付ける。
口付けを落としたのは唇に近い頬、直ぐに顔を離し相手を見詰めては僅かに頬が緩み「最近慣れて来たじゃん」と小さく褒めたりして。
「無理すんなよ、あんたが慣れるまでちゃんと傍に居るから。…変な心配しなくても…俺だってもうあんた以外触れようと思わないから」
( 少しずつだが相手から触れようとしてくれてるのが分かり柔らかく微笑んでは「あんたホラー苦手だったんだな。…今度暇があったらデートにお化け屋敷とかどう??」とからかって。
( 翌日、最近は枕に抱き着く様にしてたのだが目を覚ました所で目前には相手がおり。
寝てる様子に安心しつつ起きてたら抱き締めるなんて難しいよな、と思えば数秒間そうして。
しかし相手が僅かに動いたのにハッとしては慌てて離れ平然を装いながら「おはよ」と。
今日の夜は近所の廃病院とやらに行くんだったなと不意に思い出し、ふあ、と欠伸を漏らしては以前程では無いが僅かに距離を開け腰を下ろし。
>桐崎
(相手の柔らかな微笑みと優しさに此れではどちらが年上か分からないなと内心苦笑を零すも今はからかいですら心地よくきっと自分は相手から離れられないだろうなと微笑みを零し。
(翌朝、心地良いぬくもりで目を覚ますも距離を置く相手に気付いてはすっと手を重ねるようにして握って「…その、…自分から距離置いといて何だけど…あんたのおかげで大分安心できるようになってきたから、もう少し傍にいてくれてもいいから」と素直に傍に居て欲しいとは言えず遠回しに言っては朝の支度をするため洗面所へ向かって。
(その後、朝食を済ませてバイトに向かうも夜のことを考えると憂鬱で溜息ばかり吐いていて。
それでも相手といられると考えれば前向きになれる気がして、すでに男子学生達の嫌がらせのことは深く考えないようになっており。
(そして夜、相手と共に待ち合わせ場所に行くと既に兄と青年が居て、青年は相手の腕に絡みつき『兄さん、何かあったら俺のこと守ってね』と抱き付いて。
「……ていうか勝手に入っていいの?…立ち入り禁止じゃ…」
『ん?許可貰ったから大丈夫だよ』
「…あ、そう…」
『じゃ、早速入ろう。で、どうせなら一回一人で周ろうよ。昼間に一番奥の病室にろうそく仕込んどいて貰ったから一人一本取ってきて』
「なんでそんな準備がいいんだよ」
『何かイベント的なことがあったほうが面白いでしょ。じゃ、俺一番最初ねー2分後くらいに次の人入っていいから』
(反論する間もなく軽いノリで行ってしまった兄に溜息を吐いては、一人で残るのは嫌だったためさっさと終わらせてしまえと二番目にスタートして。
(暗くどこかじめついた廃病院内、時折ギシリと床が軋みその音だけで昨夜の映画の光景が脳裏を過っては肝が冷える。
渡された院内図を頼りになんとか奥の部屋にたどり着くと既に二本なくなっていていつの間に青年か相手が別通路で取ったのかと首を傾げては深くは考えず早々に戻ろうと。
が、確かに元来た道を辿った筈なのに気付けば見知らぬ場所。
それが兄の衝立てや鏡を使った悪戯とも知らず、完全に呪われたと思ってはダラリと冷や汗が流れて。
瞬間、突如羽交い締めにあっては背後の病室に連れ込まれ悲鳴を上げそうになるも口を塞がれ、抵抗しようと拳を浴びせようとするも目の前の人物が兄と気付くときょとんとし。
「…綸?……なんだよ、驚かせるなって…」
『御免、御免、菊の反応が面白くてさ』
「はやく戻ろう。二人、もう戻ってるかも…」
『ねえ、もう少しここにいようよ。きっとアカも繿を捕まえて遊んでるだろうし』
「…アカ?」
(いつもとどことなく違う雰囲気の兄を訝しげに見つつ、此処にとどまる気はないため「さっさと行くぞ」と強がって先を行き。
>露木
( 相手が入った後、さっさと戻ってしまおうと考えつつスタスタと院内を歩いてた所背後からいきなり抱き着かれては一瞬驚くもいつもの表情で振り返り。
青年が満面の笑顔で居たのに“歩くペース早過ぎないか、何でもう追い付いてんだよ”なんて呆れつつ早々に帰ろうと。
しかし青年は張り付いたまま剥がれず、「早く戻るぞ」と一言言った所で正面から抱き着かれ。
青年のして来る行為にいつも深く考える事は無く、“今更怖くなったのか”なんて覚えば赤髪をポンポンと撫でてやり。
暫くべったりとくっつかれて居たが漸く離れては手を取られそのまま歩き出して。
一人一人と言う話だったのに二人で出たら意味無いだろうと思いつつ、それでも結局青年と共に出て。
( 先を行こうとした相手の腕を掴み相手を抱き寄せては甘く微笑み相手の耳元に口付けて。
そのまま相手の髪をくしゃりと掴み唇に軽く口付けては「菊、無防備過ぎるよ」と微笑んで。
兄も暫く相手に抱き着き「強がっちゃってさ。…本当は怖いんでしょ??」と慰める様に相手の頭を撫で回しては流石にそろそろ怪しまれるかと戻る事にして。
( 兄達よりも一足先に戻って来てた訳だが、自分達よりも帰りの遅い兄と相手に不安が募る。
未だに張り付く青年を気に止める余裕も無くそわそわとしながら入口にて待ってた所、漸く相手と兄の姿が見えて。
さもカップルかとでも言う程に密着する兄、自分だってそんなに相手と接近出来ないのにと青年の事を他所に勝手に嫉妬心を燃やして。
『じゃ、改めてしっかり中見て回ろっか。兄さん俺鳥目だから捕まってて良いよね』
『ほら、怖がりの菊くんは俺の隣』
( 兄がさり気なく相手に絡み付くのをジトリと見詰めては四人で懐中電灯片手に院内へと入って。
>桐崎
(いつもより激しい、というより艶かしいスキンシップを取ってくる兄に若干の嫌悪感を覚えつつ、“本当は相手と組みたい”なんて甘えたなことも言えずに『兄さんあったかい』と相手にくっつき前方を歩く青年の背を恨めしく見詰めていて。
(暗くて冷え込む院内、慣れてきて然程恐怖は感じないものの先を歩く青年がぴったり相手に寄り添うのを見るのはいい気がしなく。
やっぱり相手はあーいう可愛げがあるのが好きなのだろうかといらない心配を抱いていると二階の廊下を歩いている所で突如兄に腕を引かれ音もなく診察室に連れ込まれて。
「またいきなり何だよ。二人とはぐれるだろ」
『…ねえ、何で俺が菊のこと好きか教えて上げようか』
「は?…ただの戯れだろ?…ていうか今じゃなくていい」
『…ひどいなぁ。“一度は身体重ねた仲”じゃない』
「……何言ってるんだよ。…確かに…キスはしたけど……あれは違くて」
『知ってるよ。“見てた”から。……それにしても“今の俺”は随分丸くなっちゃって…』
(サラッと髪に触れられ明らかにいつもと雰囲気の違う兄の顔が近付いて来ては咄嗟に平手打ちをしてしまうも兄はクツクツと楽しげに笑い『昔もそうやって俺を叩いたよね。あの時は拳だったけど。何度も殴られて…痛かったなぁ』と再び顔を寄せられて。
ゾワリと寒気がしては兄を突き飛ばし「霊の真似でもしてんのか?…そういう訳の分からない悪ふざけやめろよ」と微かに震えだす身体を抑え床に転がる懐中電灯を持ち直すと相手と青年を探しに出て。
(その頃、青年は集中治療室が見たいと強請っては相手に引っ付いたまま目的の場所に来て『流石に雰囲気出るね。怖いー』と相手にギュッと絡みつくも突如切なげに相手を見上げ。
『ねえ兄さん、俺に口付けしてよ。…振られちゃったけど諦めきれない。というか今の兄さんと何かあっても正確には浮気にはならないから良いでしょ?』
(“過去の青年”を思わせる悲しげな表情で相手に身をキュッと寄せては『今も…ずっとずっと兄さんのこと好きなんだよ。今の俺が生まれる前からずっと好きだった。…なのに兄さんは気付いてくれない。いつも支えてるのは俺なのに…』と嫉妬と相手を強く想う怨念を顕にするよう声を低くしては相手の服を掴んで顔を下げさせ唇を奪ってそのまま相手を押し倒そうとし。
>露木
( 突如豹変した青年に驚きつつコンクリートが剥き出しになった床に押し倒されては漸く焦りを感じ持ち前の馬鹿力を活かし青年を引き剥がそうと。
いつもなら容易い青年の力は驚く程に強く「お…おい赤城!!!お前本当にどうしたんだよ!!!」と咄嗟に声を上げて。
『兄さんさ、本当に残酷だよね。俺の事振っちゃった癖して目前で露草と仲良くしてんだもん』
「は??…何言って…。第一“振られた”って何の事だよ、俺が赤城を振ったのか??」
『…“赤城”じゃないけどね』
( 暗い瞳でニヤリと口角を上げる青年を眉を寄せながら見詰めるも再び抱き締められては結局状況が理解出来ずに苦しむ。
青年を振ったなどとほざいてるが青年に告白された覚えなど無いしましてや青年をその様に見た事も一切無い。
『ねぇ、何で俺じゃ駄目なの??何で振ったの??』
「だから…意味分かんねぇんだって。あんたの事なんて振った覚えないけど」
『え??』
「…なんだよ」
『“振った覚えないけど”って…じゃあ兄さんは俺の事好きなの??やったぁ、思い合えてたんだね』
「は??」
『ここさ、霊が集まりやすいんだよ。折角思い合えたのに離れるのは嫌だな-…でも戻ったら戻ったであっちの兄さんは露草べったりだし』
( 狂気的にブツブツと呟く青年を不気味そうに見詰めては「と…兎に角戻ろうぜ」と。
( 兄は再び相手の腕を掴み思い切り力を込めて相手を押し倒し馬乗りになっては艶目かしく相手に触れ耳元に舌を這わし。
相手の反応を楽しみつつ『元々欲しい物は何でも手に入れる性格だったんだよね、でも折角分かり合えたばっかの弟の大切な存在奪うのは引け目感じちゃってさ。だけど流石に二人になっちゃったら我慢出来ないよ』と小さく囁いてはいきなり相手の唇を奪い深く口付けて。
>桐崎
(明らかに様子の可笑しい兄に背筋が冷えて深く口付けられては必死で逃れようと肩を押すもビクともせず、悪寒に耐え切れなくなれば絡みつく舌を噛んで。
『痛っ…、噛むなんて酷いなぁ。繿より上手いと思うんだけど。……菊、俺はね。執念から生まれた霊みたいなものだから簡単には引かないよ』
(黒い笑みを浮かべ首筋に顔を埋められては抵抗むなしく濃い鬱血を残されその痛みに顔を歪める。
いよいよ恐怖が芽生え始め身体が震えそうになるも其れを抑え込み兄を切なげに見詰め。
「…なんで、こんな…、綸は…俺の大切な友達だと思ってたのに……」
『……またそうやって平気で惨酷なこと言う。“愛してる”って言ったよね?』
「…本気、じゃないだろ?………なあ頼む。あんたからはこんなことされたくない。あんたほど心許してる友人はいないんだ。…失いたくない」
『…………はぁ…、菊ってば本当にいつの時代も鈍感で我が儘。…こっちの気も知らないで』
(膨大な溜息を吐かれやっと身体を解放されては、ムクッと起き上がりまだ雰囲気の違う兄を凝視する。
変なものでも食べたのかと訝しんでいると、急にザワリと胸がざわめき嫌な予感がして。
直感で相手の身に何かあったと悟るとまだ少し震える足に鞭を打って立ち上がり『ちょっと待ってよ』という兄の制止も聞かずに今度は捕まらないよう駈け出して。
(その頃青年は戻ろうとする相手をそうはさせないと押さえ込み直しニコリと笑みを浮かべ。
『兄さん、遊びはまだ終わってないでしょ?…っていうか今の兄さんは非力で可愛いね』
(チュッと音を立て相手の額や頬、唇に口付けては耳の裏を撫で『兄さん此処弱いよね』と笑み。
『…俺決めた。どうせ戻らなきゃいけなし、今こうしていられる間に悔いのないよう兄さんにたっぷり遊んで貰うことにする』
(ニコニコ微笑みながらものすごい力で相手を押さえ付けては『兄さんと両思いだったなんて嬉しいよ』と相手の髪を撫で上げる。
が、不意に悲しげな表情をしては『……今だけでいいの。俺を愛して…、じゃないとやりきれないよ』と相手の肩をギュッと握り。
>露木
( 掴まれた肩の痛みに眉を寄せた所、逃げる術を無くすかの様に腕を掴まれ耳元に掛けられた吐息に抵抗してた力が抜ける。
一番の友人だったあの青年でなくなる気がしては咄嗟に抵抗し話を聞いて貰おうとすると無難に終わり。
悲しそうに告げられた青年の最後の言葉に僅かに胸が痛み抵抗を無くしゆっくりと起き上がる。
鼻先が触れるかと言う様な至近距離、「…俺が露木の事好きなの分かってんだろ」と問い掛ける。
『どうかな。…でも今だけは俺の事考えてて』
「…随分と身勝手だな」
『大丈夫だよ、誰も来ないから。…ねぇ、一回だけ兄さんから口付けてよ。軽くで良いから』
「……………」
『そうしたら大人しく離して上げるかもよ??』
( 青年の言葉を若干反応してはゆっくりと顔を近付け青年を正面から見詰める。
触れるだけ、触れるだけならと青年に軽く口付けた所でいきなり深い物へと変えられては目を見開き抵抗しようとする。
しかし耳元を撫でられては力が抜け青年に寄り掛かる様に身体を預ける。
その刹那、ガタリと音がしては錆びた扉の向こうに相手が立っており目を見開いては相手の元へ向かおうと。
『兄さんから求めて来といて逃げるなんて酷過ぎるよ、折角だから“最後まで”しよ??』
( 無邪気に微笑む青年に「は??」と間抜けな声を漏らしつつ兎に角青年から離れようと。
>桐崎
(青年は離れようとする相手の腕を掴むと固い床に身体を押し付け馬乗りになり『もしかして照れてるの?あ、安心して。俺どっちでもいけるから』と微笑み相手の服に手を掛ける。
信じられない光景に絶句しては、青年の行き過ぎた冗談かと思うもどうやらそうではない。相手から求めた、それなら何故相手はあんなにも嫌がっているのかと怒りが湧いては「繿から離れろ!!」と叫び制止に掛かろうとするも背後から兄に抱き止められ。
「離せよ!!…あんたも…赤城もどうしたんだよ」
『言ったでしょ。俺は…俺達は執念から生まれた霊だって。要するに嫉妬の塊なの』
『“凛”、ちゃんと其奴のこと捕まえといてよ。俺が兄さんとゆっくり遊べないじゃん』
『俺は優しいからね。それに菊からちゃんと“失いたくない”って告白されたし』
「そ、それは…友人とし『さて俺達は別の部屋でさっきの続きしようか』
(不気味に笑み態と相手に見えるように先程の鬱血を指でなぞられてはピクリと反応してしまうも相手が青年に組み伏せられるのを見て黙ってはおれず何とか兄を振りほどくと青年を相手から引き剥がし。
『ちょっと邪魔しないでよ。っていうか“凛”。自分が両思いじゃないからって手抜くのやめてくれる?』
『別に手抜きなんてしてないよ。俺の可愛いー弟が傷付くのは見たくないだけ』
『傷付けてないし。愛し合ってるだけだもん』
(突然言い合いを始める兄と青年に戸惑いつつも逃げるなら今しかないと相手を支えて立ち上がってはさっさと廃病院の外へとでる。
と、門の付近に先程まで院内にいたはずの兄と青年の姿があり此方に気付くと走って近寄ってきて青年が相手に抱き付いて。
『兄さん!良かったぁ。携帯に連絡しても全然繋がらなかったから心配したんだよ』
『二人して何してたんだか。っていうか四人で周る時間無くなっちゃったね』
「…ちょっと待て…、あんたらさっきまで俺達と一緒に居ただろ?」
『ん?一人で蝋燭取りに行ってずっとみんなが戻ってくるの此処で待ってたけど?そしたら赤城しか来ないしさー』
「……そうやって俺を怖がらせようとしたって無駄だぞ」
『そんなつもりはないよ。あーあ、折角菊と二人きりになれるチャンスだったのにー』
『それは俺も同じ。兄さんのこと独り占めしようと思ってたもん』
(ケロッとしている様子の二人は嘘を吐いているようには見えず、ゾワリと背筋が冷えては相手の腕を掴み「……繿…、見えてたの俺だけじゃないよな」と思わず相手の名を呼び震え声で確認してしまって。
『ふう、何か待ってたらお腹減っちゃった。近くに美味しいラーメン屋さんあるらしいから行こうよ』
『あ、それ賛成。俺兄さんとわけっこしようかな。いいでしょ?』
(青年はさり気なく自分を相手から引き剥がすように割って入っては相手の腕に絡みつき無邪気に笑って。
>露木
( ギリギリの所で何とか相手と逃げ出す事が出来ては廃病院の出口へと一目散に駆け抜ける。
何事も無かったかの様な表情で居る兄と青年に流石に冷汗を感じては相手と顔を見合わせて。
まさか本当に霊とやらが居たとは、と小さく身震いするもラーメン屋へと着いた途端深く考えない様になり。
元々細かい事は気にしない性分、青年と分け合ったラーメンを啜ればまだ顔色の宜しく無い相手を見詰め。
一体どこからが青年では無かったのだろうかと青年と兄をジトリと見詰める。
「赤城、…お前告白とか…してないよな」
『告白??兄さんに??毎日してるじゃん』
「輪、…露木に如何わしい事しようとか…考えてねぇだろうな」
『何で知ってるの??どうやってそこまで持ち込もうかって毎日考えてるよ』
( 二人の言葉に確信を得る事は出来ずにあからさまな溜息をついては再びラーメンを啜り始めて。
( 深夜、明日は休みだし相手に“泊まりに来ないか”と言い掛けた所で兄が強引に『菊今日俺の部屋に泊まってきなよ』と。
絶対狙ってるだろうとムッとした表情をするも続いて青年が『俺も兄さんの部屋に泊まろうかな』と。
「いや自分の部屋行けよ」
『やだ、怖いもん』
「あんたが行こうって言い出したんだろうが」
『やだやだ、本当に怖いもん』
( もはや弟の様な存在の青年に態とらしく溜息を付いては相手に視線を流す。
ふと首筋にくっきりと色濃く残る鬱血の痕が目に入ってはやはりさっきのは夢なんかじゃ無かったのかと。
泊まる気マンマンの青年と兄は上機嫌な様子でいて。
『ねぇ兄さん、前に兄さん着てた黒のパーカー貸してね。俺着替え持って来て無いし』
「マジで泊まりに来んのかよ」
『行く行く』
( 面倒そうに欠伸をしては相手に視線を戻し、先程の出来事を思い出しては一瞬難しそうな顔をするもあまり深くは考えずにいて。
>桐崎
(ラーメンをまともに味わえないまま店を出てはあんな事があったばかりのため絶対相手といたいと思うも話の流れから言い出せなくなる。
やや助けを求めるように相手を見るも結局、兄の部屋に泊まることになりこっそり携帯を出しては《赤城には気をつけろよ。何かされるかもしれないから直ぐ助け呼べるように携帯準備しとくんだぞ》と廃病院でのことをめちゃくちゃ気にしてやや神経質なメールを送って。
(兄の部屋にてシャワーを浴び、強制的に兄の服を着せられては部屋の隅に行き携帯を常時握り相手からの着信に備える。
一分一秒がひどく長く感じては深夜にも関わらず《まだ起きてる?なにもされてないか?》と確認のメールを送って。
とそれを見ていた兄が突如後ろから抱き付いてきては携帯を取り上げられポイッと部屋の隅に放られてしまい、軽く兄を睨みつけ。
『そんな目しても菊がいけないんだよ。俺といるのに繿にメールばっか送って』
「……だって、…彼奴になにかあったらと思うと心配で」
『何かあったらって同じ敷地内だよ?心配しすぎ。……ところでこの痕、どうしたの?』
「どうしたって……これは、あんたが………」
『俺が……?』
(ニコリと微笑む兄に先程の光景が浮かんでは風呂あがりで火照っていた身体がブルッと震え「何でもない。……もう眠いから寝る」と放られた携帯を取りに行きしっかり握り直しては兄を必要以上に警戒しベッドでは寝ずに大きめの椅子に座って寝ようとして。
(一方相手の部屋では青年が下を履かずに相手のパーカーを着てはしゃいでいて。
『見て見てー、彼服だよ。ワンピースみたいで可愛いでしょ。てか兄さんのシャンプーっていい匂いだよね。これから俺も同じの使おうかなぁ。むしろ兄さんの部屋に住み込もうかな』
(ニコニコといつもの調子で上機嫌に言っては突如『どーーーん』と効果音つきでベッドに座る相手に飛び乗りどさくさに紛れて頬に口付けて。
『兄さん今日は楽しかったね。本当はもっと兄さんと居たかったんだけど。…………なんなら“続き”する?』
(無邪気な笑顔でギュッと相手に抱き付くも少し身を起こしたところで不意に不気味な笑みを浮かべ意味深に呟き首をコトリと傾けて。
が、その数秒後『なーんちゃって。…疲れてるだろうし“今日は”もう寝ようか。抱き付いていいからね』と満面の笑顔で相手の首筋に顔を埋め。
>露木
( 無邪気にはしゃぐ青年の笑顔に一瞬廃病院での“青年”の面影が見えた気がしては顔を俯かせる。
意味深な言葉にゴクリと喉を鳴らした所で何時もの青年に戻ったのだろうかと思っては隣に入って来る青年を気にも止めず見えない様な角度で相手からのメールを見ていて。
《あんたこそ何か有ったら言えよ、直ぐ行くから》
( 正直自分はない先程の事をそこまで考えて無かったが改めてよく考えれば流石に相手も不安だろうと。
ふあ、と欠伸を漏らしては一度青年にチラリと目を向け自分もさっさと眠りに付き。
( 相手がうとうととし始めたのを良い事に兄は相手を横抱きにしては同じベッドへと運んで。
『椅子で寝たら身体痛くなるからね』
( ボソリと呟き兄の隣に寝かせてはクスリと微笑み相手の唇を軽く奪って。
『鈍感な所とか全然変わってないんだ、…あ-朝になればこの身体も“綸”に戻っちゃうのか』
( 独り言を零しながら態とらしい溜息を付いた所で相手の髪を艶目かしく撫でては『まぁいいや、夜になったらまた会えるね』と囁き。
( 翌朝、青年に何か服を貸して欲しいと言われるも明らかにサイズが違う事から頭を悩ませる。
「別に良いけどだらしなく見えるんじゃねぇか??」
『丈長いもんね、でも良いよ!!!貸して貸して』
( 適当な上着を取り青年に放り投げてはさっさと相手の元へと向かい。
兄の部屋に来るなり扉を開けては勝手に部屋に入り込むもそこには仲良さげに兄と同じベッドに眠る相手の姿が目に入って。
ぱちりと兄が目を覚ますも隣で眠る相手に僅かに驚いた様な表情をしては直ぐ様眠る相手に抱き着き。
『菊が俺のベッドで寝てるなんて…!!!あぁもう寝顔もこんな可愛いんだから』
( イラッとしつつ兄を無理矢理引き剥がしては兄同様青年も『そう言えばどうして俺兄さんの部屋に居たんだっけ。………まぁ良いか!!!』とおかしな事を言い出して。
>桐崎
(朝、騒がしさに目を覚ましては目をこすりながら身を起こし、いつの間にベッドで寝ていた事に疑問を抱きつつ兄を引き剥がす。
昨日のことなど無かったかのような振る舞いに訝しげに眉を寄せながら相手を見るも相手も何が起きてるか分からない様子で。
「……ていうか赤城…それ、桐崎の服。……寮なんだから自分の服着ればいいだろ」
『何々、菊は俺の服が着たいの?ていうか替えの服今日持ってきてないよね?貸してあげる』
「いや全くそんなこと言ってないけど………借りる」
(洗面などを済ませまだ寝ぼけ眼で兄の服に袖を通しては四人で食堂へ向かいその途中で兄の横に並んで。
「昨日こと何か覚えてるか?…その…変な感じしたりとか…」
『ん?…特には。ただ菊待ってる時ものすごーく眠たかったんだよね』
「へぇ…」
(昨日あんなことがあって本当に兄に恐怖を抱くところだったのにと思いつつ、食堂につくとトレイを持つ相手の隣にさり気なくつき「昨日何もされなかったか?」と心配して。
(今日はバイトも休み、何となく相手の部屋に入れさせて貰ってはやはり此処が一番落ち着くなと一息吐き。
それにしても昨日の夜は本当に不思議で、ふと青年が言っていた“兄さんから求めた”という言葉が過ってはジトリと相手を見て。
「そう言えばさ……、昨日赤城があんたから求めたとか、両想いがどうとか言ってたけどどういうこと?」
(まだ一定の距離を保ちながら自分も兄に隙を見せたくせに身勝手に嫉妬をしてはそのつもりはないがどこか浮気を疑うような目で相手を見て。
>露木
( 朝食を済ませ自室にてやっと相手と二人になっては相手からの贈り物であるリストバンドをテーブルのアクセサリープレートへと置いて。
大切そうに見詰めながらふと昨日の青年の話を切り出されては一瞬きょとんとするも直ぐに理解しあの時の状況を話始めて。
「なんか赤城病院で可笑しかったろ??…あ、あれは赤城じゃなかったのか。…心霊的な??…そんで何か意味深な事ばっか言われてさ。…“何で俺の事振ったの??”とか訳分かんない事言って来たから“別に振ってない”って言っただけ。そしたら何か勘違いされて………うん」
( 一通り話した所で相手を見詰めては首筋にくっきりと残る鬱血の痕を指差しては「それ、…すっげぇ癇に障る」と呟き。
ゆっくりと近付き僅かに身構える相手の肩を掴み、鬱血の上から口付け痕の上に重ねて。
「ずっとそれ気にしてた、………って言うか綸の服着てんなよな」
( 自分だって青年に衣服を貸してたにも関わらず自分のパーカーをバッと相手に羽織らせ再び僅かな距離を取っては相手に向き直り「昨日…綸に何もされてないだろうな」と詰め寄り。
( それから暫く後、不意に青年から電話が鳴っては怠そうに応答する。
何の用事かと思った所で『兄さん兄さん、クラスメートの腐女子さんが俺と兄さんの漫画書いてくれるってよ。後綸と菊のもだって』と。
言ってる意味が理解出来ずに「は??腐女子って何??………って言うか菊と綸って何だよ」と。
『俺も最初はどうしようかな-って思ったんだけどあの有名店のケーキ奢ってくれるって言うんだもん。彼服がどうのこうのって言ってた』
「ケーキに釣られんなよな」
『ちゃんと皆の分貰ったよ??夜にでも行くから皆で食べようね!!!』
( 何とも一方的な言い方をしてはブツリと通話を切られてしまい眉を寄せて。
携帯をテーブルの上に置き暖かいコーヒーを入れては湯気の立つ色違いのマグカップを相手に手渡し。
「それ、一応あんたのって事で。俺の部屋来たら使えよ」
( 相手の物が置いてあるという事に表情を緩めつつそれを隠す様にとコーヒーを飲んで。
>桐崎
(病院での奇怪体験を聞いては青年とは特に惹かれ合っている訳ではないと知り安心するも、あの時の青年の想いは根深く悲哀が混在していたように思えて若干の不安が残る。
それでも嫉妬してくれる相手を見てはそんな不安も和らぎ擽ったげに相手のパーカーを着寄せて。
続く問いかけに昨日の兄の様子を思い浮かべ「あー……」と気まずげに目を逸らしては正直に押し倒され舌を絡められたことを告げて「…ちゃんと抵抗したからな。でも彼奴…いつもより力強かったし。……ていうか“一度身体を重ねた仲”だって有りもしないこと言ってた。…自分で“霊”って言ってたし“露草”とか“アカ”って言ってたから昔と何か関係あるのかもな」と考えても答えが出ない問題にきっと昨日は廃病院で遊んで悪ふざけが過ぎただけでもう事は終わったことなのだと今相手と過ごす時間を大切にして。
(その夜、一度アパートに戻って着替えなどをするも相手のパーカーだけはそのままにして相手の部屋に向かう。
既に兄と青年は来ていて相変わらず相手にべっとりな青年に溜息を吐きつつ、相手から貰った色違いのマグカップにコーヒーを入れて輪の中に入り。
『ケーキどれも美味しそうだね。俺いちごのショートケーキね。だって可愛くない?』
『菊はどれにする?先に選びなよ』
「……いや、俺は残ったのでいいよ」
(遠慮して言うもしつこい兄に負け相手も譲ってくれるようだったのでそれに甘えては割りと好きなチーズケーキを取り。
そういえば女になった時相手に奢って貰ったなと思いだしては小さく微笑みを零して。
(その後、ケーキを食べながら他愛のない話をしていると其れに飽きた青年が再び相手に絡み始め『あ、兄さん。口にクリームついちゃった。舐めてもいいよ』と。
自分でとれよと内心毒吐いてると青年が『そうだ!』と言って鞄から数枚の紙が入ったクリアファイルを取り出し。
『これ腐女子さんたちが描いた同人誌のネームだって。雰囲気だけでもってさ。兄さん、桐赤と赤桐どっち先見る?どっちの兄さんもかっこいいし可愛いよなぁ。流石俺の兄さん!』
(ガバッと相手に抱きつきネームを相手に見せては『ほらね、俺達両想いでしょ?周りからもちゃんと認められてるんだよ』と嬉しそうに言って。
「…赤城、ひっつきすぎ。離れろよ。っていうか…桐赤と赤桐ってなに?」
(嫉妬を顕に青年を睨んでは聞き慣れない言葉に眉を顰め青年が持つ紙をジッと見詰め。
『そう言えばさ、兄さん。なんか気分良くなって来ない?ほら、ほっぺた赤くなって可愛くなってるよ』
(スッと相手のほんのり色づく頬を人差し指の甲で撫で上げては小さくほくそ笑む。
この時青年と兄がコーヒーに薬を盛ったことなど知る由もなく…。
>露木
( 青年に手渡されたクリアファイルの中身を見た所で漸く理解しこんな物書いて楽しいのだろうかと。
しかし絵は上手い物だな、なんて呑気に考えてた所ふと身体が熱くなり眉を寄せる。
暖房を消しても収まらないこの熱さ、ふと相手に目を向けては相手も自分同様僅かに火照りが伺えて。
兄はあの廃病院での艶目かしい笑みを浮かべてはフラリとした相手を抱き寄せ笑みを深める。
『アカ、悪いけど俺達がベッド借りるから』
( 軽々と相手を抱き抱え自分のベッドへと上がっては相手の首筋に顔を埋め自分に見せ付ける様に相手の衣服の中に手を入れる。
『ねぇ兄さん、そろそろ俺達も楽しもうよ』
( 青年の瞳の色が暗い事に気付き“赤城”ではない事は確かだが耳を甘噛みされた途端抵抗も無くしへたり込むも相手への行為を進めようとする兄が目に入れば何とか正気を保って。
兄は相手をうつ伏せにさせては厭らしく微笑み『ほら、繿の匂いでも感じてたら菊も気持ち良くなれるでしょ??………あ、でも今菊に触れてるのは“俺”だって事理解して貰えないのは嫌だな』と呟き。
自分も段々と理性を失いかけるも青年に触れられた場所からジワジワと熱さが広がって来ては苦しくなりフラフラと兄に弱々しい力で掴み掛り。
「……………さ、わんな」
『繿も素直になりなって。アカが相手してくれるって』
( 軽く手を払われては兄をキッ睨み付け相手へと手を伸ばそうとして。
>桐崎
(急激に火照る身体に戸惑ううちベッドにうつ伏せにされては、相手の匂いと良く似た声に翻弄され熱っぽい吐息が零れる。
思考が麻痺していく感覚に段々と場の空気に絆されていけば今自分を抱きしめているのが相手だと錯覚すら起こし“繿…”と甘ったるく名前を呼んで。
『ほら、菊だって楽しんでるんだから邪魔しちゃ駄目だよ。…繿も楽になりなよ。最近足りてないんでしょ?』
(兄は自分に跨がりながら伸びてきた相手の手を払っては相手の胸を軽く押して青年に身を預けさせて。
『兄さん今は俺のこと見てよ。大丈夫。優しくするから』
(青年は相手を背後から抱き締め耳を重点的に攻めてはぐったりする相手にクスクス笑い『兄さんは本当に耳が弱いね。かわいいー』とギュッとして身体の向きを返ると相手を床に押し倒して熱くなった相手の身体に冷たい手を這わせ。
(うつ伏せの状態のまま浮つく思考のせいで無抵抗でいたが急に仰向けにされ兄と目が合った途端、目が醒めたような感覚になって忘れていた恐怖が蘇り「…ッ、離せ!」と威嚇して。
『やだよ。てか流石菊。もう薬の効果切れちゃった?通常の3倍は入れてんだけどなぁ』
(暗く笑む兄に友人としての兄が消えていく感覚に陥れば身体が震え視界が滲み始めるも、相手の嫌がる声が聞こえた瞬間我に返り、漸くすぐ隣で相手が青年に組み伏せられるのに気付き蒼白になって。
「…な、にしてんだよ。繿から離れろ!!」
『ちょっと今いいところ何だから邪魔しないでよー。…それに一回くらい良いでしょ』
『そうそ。じゃないと成仏しきれないよ』
「…そんなの、許せるわけないだろ」
(低く唸り青年を止めようとするも身体を取り押さえられては再び薬の匂いを嗅がされそこで意識が途切れて。
(翌朝目を覚ましては僅かに重たい頭を押さえつつ身を起こすと隣には熟睡する兄がいて、床では布団の上で相手に抱き付くようにして眠る青年の姿がありボーッと其れを眺める。
暫くして昨夜の事を思い出しては全身身の毛がよだちサッと兄から離れてベッドから降りると青年を起こさないよう相手から引き剥がし相手を揺すり起こして。
まだ半分寝ているようすの相手の顔を泣きそうな顔で見詰めては存在を確認するよう抱き締めて、すぐに離れると両手で相手の頬を包み込み。
「………御免、俺がちゃんとしてなかったから。………大丈夫か?」
(身体もそうだが精神的にもかなりの負担があった筈と、何も出来なかった自分を恨んでは唇を噛み締め俯く。
そしてまだ寝息を立てる兄を見ては「…あいつ、途中泣きそうな顔してたんだ。“御免”って何度も謝ってきてさ」と眉を下げては相手に視線を戻し「…とりあえず此奴等が寝てる間に此処でないか?どう顔合わせたらいいか分からない」と思いだすだけでも震えそうだったが今は堪えて相手を支えたいと思い、相手の身体を気遣いながら立たせようとして。
>露木
( 翌日、相手に起こされては軋む身体に鞭打ち自室を後にしては相手のアパートへと訪れる。
二人になった安心感もあり改めて何だったのだろうかと考えては不思議な感覚になる。
まだ耳に残るのは“兄さんごめんね、…許してね”と切なそうに呟く青年の声。
確信が無いままに相手の腕を引っ張り連れて来たのはあの廃病院。
この寒さの中、何故か生温い風が舞っては誘われる様にと中へ入る。
( 最上階奥の院長室、真ん中は既に崩れ落ち階下が見える様になってる事からこれ以上先へは進めないと。
しかしそんな時、向こう岸に兄と青年に良く似た顔立ちの二人が立ってるのが見えては「…おい赤城、綸。…何してんだよ」と声を掛ける。
『“赤城”だってよ。…こっちではまた随分と洒落た名前になってるんだね-』
『俺なんか変わったの漢字だけなのにさ』
( 穏やかに微笑む二人は着物姿で昨夜の狂気は感じずに眉を寄せる。
『あ-菊、そんな顔しないで。…ほら、こんな大きな穴あるからそっちには行けないんだよね』
『そうそう、…まぁ怒られても仕方無いか』
( 一方的な話をし続けながら青年が着物を乱しては肩から左腹部に掛かる大きな切傷痕が目に写る。
青年は表情を崩さない笑顔のまま『兄さんと出会った頃、兄さんを庇って付いた傷だよ。俺の宝物なの』と意味の分からない事を告げて来て。
二人の姿がスウッと消えて行っては結局何を伝えたかったのかも分からずに廃病院を後にして。
( 一度寮へと戻ろうとした所で兄と青年にばったりと出会しては二人は何も知らない様子で『もう、起きたらいきなりいなくなっててびっくりしたよ!!!』と。
どうやら昨晩の事の記憶は綺麗さっぱり消えた様で『昨日ケーキ美味しかったね!!!またモデルになってくれたら奢ってくれるんだって』と無邪気に微笑む青年の頭を何気無く無意識に撫でてはきょとんとして。
兄が相手に抱き着こうとするのを遮り相手の前に立っては何も覚えてない兄が思い出した様に『あ!!!そう言えばそろそろ旅行の予定立てないとね。俺これから教授に呼ばれてるからもう行くね、じゃあね。大好きだよ菊』と大胆な告白をしては何時ものテンションで去って行って。
青年も担任に呼ばれてたらしく、漸くまた相手と二人になれば相手に向き直り路地裏へと向かう。
「なぁ、抱き締めたい。…良いか??」
( 伏せ目がちに触れる事の了承を得ようと上記を問い掛けては相手をジッと見詰め。
>桐崎
(結局はっきりとしたことが分からないまま廃病院を後にしては、何も知らない様子の兄と青年を責める訳にもいかず昨日の事は暫く胸のうちにとどめておこうと。
それでも兄に少なからず恐怖心を抱いてしまった為、兄を遮ってくれた相手に感謝しつつ二人きりになってはホッと息を吐き。
続く真剣な問い掛け。ゆっくりと相手と視線を交え、そのまっすぐな瞳に小さく息を飲んでは僅かに目を伏せ小さく頷く。
ゆっくりと回される腕に身構えるもその緊張はすぐに解け、心のどこかでずっと求めていたぬくもりに自らも相手の腰に腕を回して「……やっぱりあんたの腕の中が一番落ち着く」と小さく呟き腕に僅かに力を込めて。
「…ずっと不安な想いさせて御免な。……もう、大丈夫だから」
(顔を上げ小さく微笑んでは相手の髪を撫で、頬に軽く触れる程度の口付けを落とし唇にも同様に軽く口付け。
もっとしたい気もしたが其処から先はまだ少し怖く一歩引いては「…楽しみは先に取っておこう」とやや強がりな言葉を述べつつ相手の手は離さずに。
(その後、寮の共同スペースで寛ぐも縮まった距離感に妙な緊張感と気恥ずかしさを覚えあまり目を合わせられずにいて。
そんな時、相手のクラスメートの腐女子が目をキラキラさせて近づいて来ては高級そうな紙袋を差し出され。
『これ連日朝で売り切れちゃうプリンとチーズケーキです。桐崎君と先輩が好きって聞いて買ってきました。……あ、あの失礼ですが二人って実は公式だったりしますよね?馴れ初めとか教えて頂けませんか?やっぱり一目惚れですか?ていうか受け攻めはどうなってるんです?』
(畳み掛けるような問いにやや呆気に取られつつチラと相手を見て再び女子高生に視線を戻す。
どこまで自分たちの関係を信じているか不明だが、ここで“付き合ってない”と嘘を吐くんも可笑しいと想い「…公式って意味がよく分からないけど…付き合ってるよ」とはっきり述べ。
「……出会いは最悪だったけど今思えば桐崎が煙草…じゃなくてパンを買わせてた女学生に嫉妬してたんだと思うな、なんて」
『……?それはつまり一目惚れですか!』
「ちょっと違うけど、かっこいいやつだとは思ってたよ」
(相手の隣で恥ずかしげもなく得意の外向けの笑顔でツラツラと言葉を並べては相手を指差し「で、こいつが受けね。“女装”もしたことあるから」と覚えたばかりのワードを使いちょいちょい本当のことを交えつつ時折人を小馬鹿にしたくなる悪いクセが出てはからかうように述べ。
そして声を上げてはしゃぐ女子高生の様子と相手の心の内を考えては耐え切れず口元を押さえ軽く吹き。
>露木
( 共同スペースにて渡されたプリンを見ては一瞬普段の無表情を崩し一瞬子供の様な表情を浮かべるも直ぐにまたいつもの様子を張り付ける。
はしゃぐクラスメートの話も青年に見せられたネームから何となく理解出来た為に相手がクラスメートに答えるのにパッと振り向いては相手の頬を軽く引っ張り。
「何言ってんのお前だって女装した事ある癖に。すっげぇ可愛かったぜ??スカートなんか履いちゃってさ」
( からかうつもりで言った一言だったがどうやらクラスメートに火を付けたらしく『もう二人とも最高です!!!お礼するんでまた描かせて貰いますね!!!』と笑顔で戻ってったのを見送り。
「“腐女子”ねぇ…顔だけ見れば可愛いのにな」
( クラスメートの背中を見詰め苦笑いでサラッと零せば不意に共同スペースの扉が開き若頭が入って来て。
『あっ!!!菊居た-!!!見てこれ見てこれ、僕今女の子達に人気の雑誌載っちゃったの!!!…“男の娘”ってのが気になるけどさ。何か美人が表紙だなって思って買ったら自分だったんだよね』
( 満面の笑顔で相手の膝に乗ってはギュッと抱き着く光景に沸々と嫉妬心が沸き上がり若頭を剥がしては「あんたスキンシップ多すぎ」と。
しかし若頭はめげずに再び相手に張り付き『今度デートしようね』と相手の額に口付けを落とし共同スペースを出て行って。
「行くなよ、行ったらマジでキレるからな」
( 視線を逸らしたまま上記を言えばさり気なく相手の手を取ったりして。
時計に目をやり「あ-なんか腹減った」と呟けば「奢ってやるから」と強引に相手を連れ適当なファーストフード店へと入り。
>桐崎
(冗談っぽくでも女子高生に相手と付き合ってると言ってしまい相手は嫌では無かっただろうかと気にしていると相変わらずのテンションでやってきた若頭に苦笑を零す。
しかし若頭には世話になって名前で呼ぶよう約束したことを思い出しては「優希、近い」と軽く引き剥がし。
『ちょっと今は男の娘なんだから優って呼んでよ』と拗ねる若頭に適当に頷いては口付けられた額を困ったように押さえて、拗ねている様子の相手が可愛いなと頬を緩め。
(訪れたファストフード店、ビッグ○ックのセットをゴリ押しされては断るのも面倒になり「じゃあそれで」と頼み店の奥の席で相手と向かい合うように座り。
「…なんかこーいうの久しぶりかも。そういえば優希が男の娘の可愛い食べ方がどうのって話してたけど誰得なんだって話だよな。まああんたがするなら俺得になるけど。ちょっとしてみろよ」
(可愛げもなく少し大きめのバーガーにかぶりつきながら、少しからかうように笑むも相手なら絶対絵になるだろうなと思いやや期待の眼差しで見詰め。
それにしても最近太った気がすると軽く食べれてしまいそうなセットに視線を落とし、さりげなく自分の脇腹の肉がつまめないか確認する。
まだ大丈夫…だが確実に幸せ太りとしている気がして、相手は小顔で細くてスタイルが良いから其れに見合うためにも気をつけないとなと溜息を吐き相手に視線を戻して。
「…あんたってほんとモデル体型だよな。街歩いててスカウトされるわけだよ。帰宅部なのにその体型を維持出来るのが羨ましい。やっぱ若さだよな」
(自分なんてもう体力の衰えしか感じないとオヤジ臭いことを零しつつ、別の席の女子達が『あの銀髪の子恰好良い!どこかのバンドの子かな?』『あとで話し掛けてみる?アドレスゲットできるかもよ!』と黄色い声で話しているのが耳に入り小さく眉を顰め「…桐崎はそんな軽い奴じゃないし…」と無意識にボソリと零してポテトをかじり。
「…そうだ。今度の旅行オーストラリアだろ。で、綸が折角向こうは夏なんだから海行きたいって言うんだけど…、水着が実家に古いのしかないから新しいの買いたいんだよな。良ければこの後付き合ってくれないか?」
(時期的に少ないだろうが特にこだわる訳でもないため何でもいいかと思いつつ、相手といられる時間が増えればと相手をジッと見詰め。
>露木
( 相手がハンバーガーを齧るのを見詰めてた所、頬に食屑が付いてるのを見付けクスクスと笑みを浮かべては取ってやり「割と可愛いとこあんのな」と。
続く相手のぼやきとこちらを見詰める視線に「なんだよ男の娘食いって…。あんたがやれよ、写メ撮るから」なんて言ってはストローを喰わえて。
それにしても相手は鈍感なのか何なのか…。
相手の注文を担当した店員が顔を真っ赤にしながらトレーを渡す際に相手の手にさり気なく触れてたのを思い出し「…あんたから褒められると嫌味にも感じ取れるよな」と小さく呟いて。
若頭を名前で呼んでた事にも充分の嫉妬を感じつつ水着選びの誘いに“まだ相手と居られる”だなんて子供の様な考えを浮かべて。
「良いよ、付き合う。…で、水着は女物??」
( からかう様な笑みを浮かべては途端に真剣な表情になり「絶対女になんかなんなよ、男払うのに疲れる」と言うも相手の容姿なら性別関係無く言い寄られるかとがっくり肩を落とし「…ま、男の姿なら男の姿でナンパされんだろうな。…ボディーガードしっかりしなきゃなんねぇな」と。
( 若者達に人気のある百貨店の水着を扱うショップへと訪れては水着を吟味する相手の隣に並ぶ。
今の季節的に人は少なく、ゆっくりと見る事が出来ては自分も水着を見始める。
ふと目を離した隙に女性店員が相手に駆け寄り『お…お客様お気に召した商品はありますか??』と上目遣いに聞いていて。
レジにて固まる女性店員達が『わ、行っちゃった!!!羨ましい…私も行こうかな』『な…なら私も』と相手の元に向かうのが見えては水着を選ぶフリをしながらも相手をジッと見詰めていて。
>桐崎
(相手のからかい返しにムッとしつつも何だかんだ“愛されてる”と感じれば悪い気はしなく「じゃあ傍離れるなよ」と小さく笑って。
(水着店にてやたら話し掛けてくる店員達にうんざりしつつ向こうも仕事だからと笑顔で話を合わせて自分好みの水着を選んで貰うとさっさとそれを購入してやや疲れ気味に相手の元へ行き。
「おまたせ…。なんかさ仕事熱心なのはいいけどあーいうの正直苦手、一人でゆっくり見させて欲しい」
(溜息混じりに愚痴っては何気なく相手の引き締まった腰回りに視線を落とし唐突にガシッと掴んで「…細い。そんなんじゃボディーガード務まらないぞ」と最近少し太ったことを気にして冗談っぽく言いながら身勝手な腹いせで相手の身体を軽く擽って。
(その後折角来たのだからと服などを見て周っているとまたあの男子学生達に出会してしまい、絡まれる前に相手の手を引き退散しようとするも目の前に立ち塞がれて。
『逃げるなんて酷いなぁ。偶然会えたんだから喜べよ』
『てか、お前たちまだくっついてんの?いい加減お遊びやめたら?本気じゃないんだろ』
『つーか、露木よくそんな気持ち悪いのと入れるよな。もしかして金目的?』
『ところでさ桐崎、此奴じゃ足りてないんだろ?いい女紹介するから此れから飲もうぜ』
(厭な笑みを浮かべて相手の肩に腕を絡める男に怒りを覚えては相手の腕を掴んで自分のほうへ引き寄せ。
「…悪いけど此奴は俺と予定あるから。ていうか“女”とか余計なお世話。今の此奴には俺だけで充分なんだよ」
(冷ややかな目で男達を見据えては相手の腕を引きさっさと百貨店を出て人気のない路地に入り男達が追ってこないのを確認するとホッと息を吐く。
今になって自分が言った言葉の恥ずかしさにどんだけ自惚れてんだと額を押さえるも相手の耳にはしっかり聞こえているだろうし、嘘ではないこと。
どうせならこの雰囲気に身を任せてしまえと思えば相手を軽く壁に押さえ付けジーと見詰めてはゆっくりと顔を近づけ久々に深く口付け余韻を残すように離し。
もう恐怖も何もない。相手が傍に居てくれる安心感に満たされぼんやり相手を見詰めるも恥ずかしさがぶり返して来てはスッと目を逸し「……綸が旅行の話進めるって言ってたからもう戻るか」と寮へと足を進めようと。
>露木
( 相手に絡んでた店員に対し“仕事熱心”と捉えた相手はとことん鈍感だな、と考え擽られ笑いを翻つつ相手の両頬を抓って。
( その後ばったりと男子学生に出会してはいつもの如く嫌味を並べられるのに表情を変えずに耐えてた所、突如相手に引き寄せられては一瞬驚いた様な表情をするも僅かに照れ臭さが生まれ。
路地裏にて、口を開こうとした時にふと口付けられては相手からのキスに驚きつつも応える様に相手の髪をくしゃりと掴んで。
寮へと戻ろうとする相手の腕をグッと掴みそのまま強く抱き締めては無表情を崩し嬉しそうに子供の様な笑みを浮かべて。
「さっきの…すっげぇ嬉しい」
( 珍しく上機嫌な様子で相手の手を取り寮へと向かい兄の部屋に行けば既に青年も居て。
( 兄が相手に抱き着くのをジトリと見詰めてた所で青年がパンフレットを持ち出して来てはそれに目を向ける。
何気無くあっちは夏か、と表紙の海を見詰め。
『兄さん兄さん、お城作ろうね』
『赤城子供っぽ過ぎ-』
『い-の!!!』
『菊は俺とベッド一緒ね、抱き締めて寝るんだから』
『じゃあ兄さんと俺が一緒だね-。兄さんの寝相的に俺達抱き合っちゃうね』
( 勝手に話を進める二人を尻目に相手の隣に行けば「…時間空いたら…二人で出ような」と呟いて。
>桐崎
(兄の部屋にて、兄に抱き付かれては以前の幽霊騒動のことがあり身構えてしまうも相変わらずの様子にすぐ緊張もほどけ、相手からの提案には二つ返事で頷き「…星が綺麗で日本では見られない正座とか天体が見えるらしいから…それを二人で見たい」と自然好きなこともあり楽しげに述べてはさりげなく相手の手に自分の手を重ね。
『あ、そうだ!オーストラリアと言えば世界遺産とか自然公園とか色々あるけどさ、バンジージャンプもやってみたいんだよね。日本と全然規模違うし』
『あ、いいねー、どうせなら二人飛びしようよ。勿論俺は菊と』
「なにそれ、バンジーはいいとして飛ぶなら一人か桐崎とが良い」
『ええー、菊“やだやだ、こわい~”とかないの』
「誰だよ、そのぶりっ子。……そーいうは平気。むしろ好きかも」
『良かったー。じゃあ予約しとくよ。…ふふ、此れで兄さんとの愛がまた深まるね』
(無邪気に笑う青年が相手に抱き付くのに嫉妬を抱きつつ相手が絶叫系が苦手とは知らないため何気に楽しみに思い。
兄は何となく知っていたらしく相手を見て『バンジーは絶許系とは少し違うし大丈夫だよね』と笑って相手の肩を叩いて。
(そしてあっという間に迎えた旅行初日、大学2年の語学研修以来の海外に少し胸を弾ませながらガラガラとスーツケースを引き相手の隣に並び先輩面をして搭乗までの説明などをして。
『露木ー、そういうの俺がするからいいの!あ、フライトの間も兄さん俺の隣ね!8時間ずっと一緒だよ!』
「…なにそれ。俺が桐崎の隣って決めてたんだけど」
『ええー、なにそれ勝手。そういうべったりな男は嫌われるよ~』
(じゃああんたは何なんだと心の中で反論しつつ、青年の言葉を気にしては「…じゃあ…いいよ」と渋々相手の隣の席を譲り。
『あ、そうだ。兄さん。これ見て、半袖の上に兄さんのパーカー着てきたの。向こう着いたら暑いから兄さんのパーカー丁度良いんだよね』
(嬉しそうに相手に張り付く青年に若干のストレスを感じては「…はやく手続き済ませるぞ。審査に引っかかると面倒だから」と先を歩き。
>露木
( バンジージャンプという青年の提案に表情こそ変えない物のサッと嫌な汗を感じては肩を叩いて来た兄に縋る様な目を向けるも兄はクスクスと笑みを浮かべるだけで。
先程からさり気なく相手が“桐崎とが良い”等と訴えてくれてる事に頬が緩みそうになるのを押し堪えては兄と青年の説明に耳を傾けて。
( いよいよ当日、相手の話に真面目に耳を傾けながら登場手続きを済ませてはガラス張りの窓から見える飛行機に青年がはしゃぎながら携帯片手に写真を撮って。
『兄さん見て!!!飛行機!!!』
『赤城はしゃぎ過ぎ-。さ、菊は俺の隣から離れないどいてね』
( 兄が相手に絡み付こうとした所でついに耐え切れずに相手を引き寄せては兄をジトリと見詰める。
飛行機へと乗り込む際、さり気なく相手の隣に来ては兄、相手、自分、青年という順で席に付き何とか相手の隣に座る事が出来て。
べったりと張り付き『ね、菊。これ美味しいよ、はいあ-ん』『あ、それ俺も食べたい』と機内食の食べさせ合いをしてるのが目に入ればブスッとして。
ふと青年の方に向き直った所、青年のうとうととしてる表情が目に入り、兄が相手にイチャイチャしてられるこの状況青年に寝られたら困るとちょっかいを出す。
青年が目を覚ましいつもの調子で一方的に話をする中、今度は逆に自分に眠気が襲い掛かってはそのままうとうとと居眠りを初めて。
>桐崎
(兄に絡まれながら相手が青年にちょっかいを出すのが見えてはムッとしてしまうも、相手のあどけない寝顔を見てはそんな不機嫌さも吹き飛び起きない程度に頬をプニッと押すとこっそりカメラで撮って後で携帯に移そうと頬を緩め。
『何菊ニヤけてるの。変態?』
「煩い。…繿が起きるだろ」
『……そういえば何で本人の前では“繿”って呼ばないの?』
「…別に。なんとなくだよ」
(ただの照れとも言えず冷めたふうに答えたところ、突如見知らぬ女子グループが近づいてきて。
『あ、あの、これ良かったらどうぞ。その、今寝てる子にも』
『空港でお見かけして…、その良ければ現地ついたら一緒に周りませんか?私達穴場知ってるので』
(完全に相手狙いの目線にまたかと溜息を吐きそうになるのを堪え「…御免ね、自分達だけで周りたいんだ」と困ったような微笑みを浮かべ断っては去っていく女子達に堪えていた息を吐き出し、相手の座席のポケットに貰った飴やガム等を入れて。
『これで何度目だろーね。繿と赤城目的、ポケットいっぱいじゃん』
「…なんか先が思いやられる。絶対此奴逆ナンされるし」
(自分の事は深く考えずにぼやいては漸く瞼が重たくなってきて、相手の肩により掛かるようにして眠りについて。
(数時間後、夕方頃に現地に到着しては日本とは違うカラッとした空気を吸い込みグッと伸びをする。
暫くして幼馴染が手配してくれた現地ガイドが笑顔で近づいてきては日本人観光客向けのホテルまで案内してくれ『何か困ったこととか足が必要な時はいつでも連絡くださいね。では良い旅を』と流暢な日本語で挨拶しその場を去っていき。
『とりあえず今日はホテルでゆっくりしよー』
『ええー、でも街見に行きたいなぁ。兄さん一緒に行こうよ。肉食べに行こう、肉!』
「…でも夜の街は危ないから…『もう露木はかたいなぁ。大丈夫だよ。俺、海外経験あるし。俺を誰だと思ってるの?ってことで兄さんは俺が守るから一緒に行こう!』
(抗議虚しく青年に遮られまだ荷物もまとめていないのに相手と夜遊びする気満々の様子に「…行くなら気をつけろよ。日本人はスリとか盗難狙われやすいから。あとナンパ。人がいい顔して日本語で話し掛けてきて気付いたら怪しい所にいるなんてザラにあるんだからな」とかなり心配しつつ相手が遊びたいなら無理には止められないなと反応を窺っていて。
>露木
( 到着間近で目を覚まし青年が菓子類を食べてるのをぼんやりと見詰めては段々と頭が覚醒し降りる準備を始める。
訪れたホテルにて多くもない荷物の整理をしようとするも唐突な青年の提案に「今からかよ」と零す。
しかし変わらない様子の青年に溜息を付き少しだけ付き合う約束をしては相手の注意に軽く微笑み「分かったよ、ちゃんと戻るから安心しろ」と頭を撫で。
( 青年の気遣いからか観光客向けの場所へと来てはほぼ英語で話せる事もありカタコトな会話は出来て。
観光客が多い事から日本語を話せる人もそれなりにおり、ふと青年が同い年くらいの女性二人組に話し掛けられてはその人達の案内でおすすめのレストランへと連れられ。
どうやら彼女等も日本語が話せるらしく軽食を取りながら他愛も無い話をしては青年が『俺と兄さん付き合ってるのにさ、声掛けられちゃうと迷惑なんだよね』と何気無く愚痴を零し。
驚いた事にも彼女等も同性愛者の様で言い寄って来る男達に困ってたのだと相談され。
『わ、すっごい偶然。なんなら私達カップルのフリでもしちゃう??』
『良いね良いね、そしたら俺達も邪魔されないし』
『なら出掛ける時は手を組みましょう、これ私達のアドレス』
( 泊まってるホテルまでも一緒らしく、四人で話しながらホテルまでの道を歩いては兄に変な事をされてないだろうかと僅かに相手に不安が過ぎっては足を早め。
『え-と…繿??貴方恋人と手とか繋がないの??』
「別に俺此奴と付き合ってないよ。恋人居るし」
『え-連れないなぁ兄さん、恋人って事にしようよ』
( クスクスと笑みを浮かべる彼女等に苦笑いを漏らしてはホテルのロビーにて暫し話をして。
>桐崎
(青年と出かける相手を微妙な気持ちで見送っては兄と共に軽く荷物の整理をして他愛のない会話をするも、途中から相槌しか打っておらず窓際の椅子に座り眼下に見えるホテルの玄関口ばかり見ていて。
『菊ー、二人も子供じゃないんだからさぁ。そんな心配しなくても大丈夫だよ』
「…でも…、」
(何かあったらと窓の外を見ながら相手の姿を探し携帯のストラップをキュッと握る。
『…菊さぁ、初日からそんなんじゃ最後まで持たないから…って…、あれ繿達じゃない?』
(兄に言われるまでもなく相手の姿を捉えては見知らぬ女性と親しげに腕を組みホテルに入ってく様子に言葉を失う。
絵に描いたような美男美女カップルにやっぱり相手は女がいいのだろうかといらぬ不安を抱いては勝手に落ち込みベッドに潜ろうとするも兄に止められて。
『え、なんで其処で寝るの。迎えに行くつもりで見てたんでしょ。ほら行くよ』
(グイッと腕を引かれ階段を降りロビーまで来ては未だに腕を組み楽しげに話す様子に胸がチクリと痛みスッと目を逸らすも兄に手を引かれて輪の中にいれられて。
『おかえりー、何もう女の人と仲良くなったの?繿も赤城も抜け目ないねぇ』
『あら、繿とそっくりなのね。ご兄弟?……あ、私達そろそろ失礼するわね。今日はありがとう。良かったら朝も一緒に食べましょう。またあとでメールするわね』
(気を利かせてか女たちは笑顔で挨拶すると自分達の部屋に向かい、その背中が見えなくなったところでチラと相手を見て。
「…誰?……この短時間で何があったんだよ」
(相手の人助けとも知らず女遊びをしていると勘違いしてはブスッと子供のように不満げにして「モテる男は大変だな」と嫌味を零してしまい、ハッとなってはすぐに謝って。
「御免、折角の旅行なのに空気悪くした。…そうだ、さっきルームサービスで暖かい紅茶頼んでおいたから一緒に飲もう。リラックス効果があってよく眠れるらしい」
(笑顔を取り繕い女達のことは考えないようにしては、人目のあるロビーにも関わらず相手の手を握り髪をそっと撫でては「…ずっと待ってた」と小さく零して相手を見詰め。
>露木
( 僅かにむくれた様な表情に“嫉妬してくれたとか”と惚気た優越感を抱き直ぐに誤解を解こうとするもそれよりも早く何故か相手が謝っては話も流れてしまい部屋へと歩き出す。
その際、ふと手を握られ珍しくも素直で可愛気のある言葉を言われては僅かに表情が緩みそうになるのを堪える。
周りの目に触れぬ様に相手の額に軽くキスを落としては「やっぱあんたがいないと詰まらなかった。………次は二人で行くぞ」と呟きそのまま手を引いて部屋へと戻って。
( 部屋へと戻った途端自分が相手の手を握ってた事に兄はムッとしつつ引き離す様に相手を抱き寄せては『もう何俺を差し置いてイチャイチャしてんのかな-。菊、浮気は駄目だからね』なんてさも兄と相手が付き合ってるかの様な言い方をして。
それから暫くしてはホテルマンが丁寧な日本語で夕食を伝えに来てはべったりと張り付く兄よりも先に相手の隣に向かい会場へと向かって。
テラス式の席での夕食、花火が打ち上がり夏を感じながらの夕食を舌鼓してた所でホテルウェイトレスの服を身に包んだ女性がなにやら相手に紙を渡しており。
『…良ければ…お友達になって頂けませんか??』
( 顔を赤くして告げてはさっさと逃げて行く後姿を見詰め鈍感な相手の事だしどうせ本当に“友達”になる事を目的と信じ込んでるのだろうなと。
パイを口に運びながら「何、メールすんの??」とさり気なく聞いてみたりして。
『さっき軽食食べちゃったからな-。兄さんよく食べれるね』
「育ち盛りだからな」
『ちょっと夕食前に何勝手に食べてんだか…』
( 呆れ顔の兄を尻目に向こうの席に先程の女性二人組が見えては青年が笑顔で手を振る。
流れ的に軽く手を振っては変わらない表情のまま食事を進める。
ふと皿の端にあるプチトマトをフォークで刺しては相手の口元にやり「ん、」と口を開けるように促す。
隣で兄が『繿、好き嫌いは駄目って言ったでしょ!!!』と騒いでたが気にしない様にしては青年が笑顔で明日の予定を話すのを聞いていて。
>桐崎
(夕食のテラス席にて、ウェイトレスに渡された紙に戸惑いながら相手からの問いに女を無視する訳にもいかないため「一応…、」と短く答え、手を振り返してくる先程の女性たちをぼんやり眺めて。
やっぱり女が…とまた同じ苦悩が脳裏を過ぎるも、相手の隣にいるだけでその不安も幾分か和らぎ口元に差し出されたプチトマトに「仕方ないな」と零しつつ満更でもなくパクリと口にして。
(夕食を食べ終えた後、部屋に戻ってはシャワー等を済ませてからベッドに腰掛け機内で撮った相手の寝顔を携帯のフォルダに移して保護をする。
と、それを見ていた青年が抜かりなく絡んできて『あー、ずるい!俺も兄さんの寝顔の写真欲しい!』と本人が居るにも関わらず大声で叫び。
出来れば本人に知られたく無かったため「馬鹿、静かにしろ」と小声で怒鳴ってはペシッと軽く青年の額を弾いて。
その後も暫くだだをこねられたが青年は諦めると自分のベッドがあるにも関わらず相手のベッドに潜り込み『いいもーん、俺は兄さんとイチャイチャするから』と相手の脇を如何わしい動きで擽って。
それを黙って放っておけるはずもなく止めに入ろうとするも丁度浴室から出てきた兄に後ろから抱き付かれベッドに戻されては『まあまあ、やらせとけばいいじゃん』と尋常ではない強さで腕を握られる。
こうなったら兄も青年も何を言っても無駄だと諦めては大人しくベッドに横になり疲れていたこともありまだ寝るには早い時間だったがすぐ眠りについて。
(その頃、相手の元に女カップルの一人からメールが来ており《こんばんは、あなた達明日動物園行くって言ってたわよね?良かったら一緒に行かない?貴方の恋人さんが自然好きだって聞いたからお礼におすすめの動物園を紹介したいの。私の知り合いが経営してる場所だから招待するわ。本当に自然も綺麗でコアラも抱っこできちゃうから恋人さんも喜ぶと思うわよ。良い返事を待ってるわ。おやすみなさい。良い夜をvv》とやたらハートをつけて締めくくって。
>露木
( 部屋に戻り相手のカメラを除き込む青年をチラリと見ては自分も荷物を軽く整理したりと手を動かす。
その際に“自分の寝顔がどうのこうの”と聞こえ青年と相手の後ろからカメラを除き込もうとするも何の事かは分からず大人しくベッドへと戻る。
潜り込んで来た青年を軽く押しては「んだよ、綸のとこ行けよ」と軽く毒突くも兄が相手の元に行ってしまったのと眠気が襲い掛かってはあまり抗議せずに。
( 翌日、昨夜受信の女カップルからのメールに気付いては早速《分かった、なら朝食が終わって暫くしたらホテルの玄関口で待ち合わせな》と返信し。
四人で朝食を囲み青年に昨日の女カップル達も動物園に来る事を耳打ちしては『良かった-、これで声掛けられないで済むね。しかも半額に撒けてくれるんだってよ』と笑顔で言っていて。
関係性を知らない兄は微妙な顔をしていたが“半額にしてくれるのなら…”と了承してくれ。
朝食を終えロビーにて女カップルと合流しては兄と相手に改めて挨拶をする。
『初めまして。…あ、日本語で構わないわよ??今日は色々とよろしくね』
( ニッコリと微笑み自分の横に来ては『素敵な人ね、惚れちゃいそうになったわ』とからかって来て。
それを耳にした女カップルのもう一人が頬を膨らませては『何よ…妬かせたいの??』と。
異様な光景ではあるが二人の様子は可愛らしく思え、「ナンパされそうになったら適当に俺とか赤城の事使っといて」と緩く微笑んで。
>桐崎
(翌日ロビーにて女カップルと合流し相手と話す様子を見てはやはり親しげに見えてしまいもやもやした気持ちになる。
女カップルがやけに距離が近い気がしたが女同士が腕を組むのは妹や幼馴染もやっていたため“親友”かお国柄なのかと思い込み同性愛者とは思わずに。
(訪れた動物園、日本とは規模の違う其処に密かに胸を踊らせながら辺りを見回す。
そう言えば以前も動物園には二人きりで来れなかったなと思いつつ相手の隣に並ぶも女カップルがいることもあり微妙な距離感でいて。
『ねえ菊、あっちでコアラ抱っこ出来るって。行ってみよ』
(不意に兄に手を引かれ相手も…と誘う前にあっという間に離れ離れになっては肩を落とす。
それでもコアラに触れるのは初めてでそのぬくもりにやっぱり動物は可愛いなと頬を緩ませて。
『菊ー、俺も抱っこしていいよ』
「…………」
『ちょっと無視は駄目だよ。俺、傷付く』
「…コアラ可愛いよな。…このあと繿のところ早く戻ろう」
(微妙な顔をする兄を他所にコアラ館を出ては《今どこ?》と相手にメールを送って。
(その頃、相手と青年から少し離れたところに居た女カップルの元に明らかにチャラい現地在住の日本人男性達が近づいていて。
『ねえ君達日本語喋れるんだね?てか超可愛いじゃん。良かったら俺達と遊ばない?』
『御免なさい。私達、“彼氏”と来てるから』
『…え、何まさかあの変な頭してる奴等?てか日本人じゃん。あんな奴等よりもさぁ、俺達と居たほうが楽しいって。此処よりもっと楽しいとこ知ってるし金も沢山あるぜ』
(下心丸出しで女カップルに迫っては嫌がる女達の細い腕を掴み無理矢理連れ去ろうとして。
>露木
( 見事に相手と離れ離れになってしまっては、これでは来た意味が無いと慌てて相手を探す。
相手のメールに気付き返信をしようとしたその時、女カップルが日本人の男にナンパされてるのに気付いては放って置く訳にも行かずそちらへと駆け寄る。
雰囲気を察した青年も着いて来ては男の腕を捻り上げ青年と共に女カップルを一人ずつ抱き寄せて。
『ちょっと、俺の可愛い彼女に手を出さないでよね』
「悪いが此奴等には既に俺達が居るんでな。ナンパなら他を当たってくれないか」
( 男達はあからさまに腕の痛みに眉を寄せつつ、それでも自分達を小馬鹿にした様に笑みを浮かべては『随分とダッセェ髪だな。今の日本ではそれが流行りか??日本も廃れたもんだぜ』と。
特に気にしない素振りで腕を捻る力を強めた所で男達は漸く手を引き逃げる様に退散して行って。
『大丈夫-??美人は大変だねぇ』
『ちょっと馬鹿にしてるでしょ。まぁでも助かったわ、有り難う。二人共演技は役者レベルね』
『あは、褒められちゃった』
( 女カップルの内の一人が『…怖かった』ともう一人に抱き着くのを微笑ましく見詰めてた所で兄の掛け声と共に相手と兄の姿が見えて。
そちらへと駆け寄り相手の手を取っては漸く一緒に行動出来ると頬を緩ませる。
女カップルを交えた6人で今度は迷わない様にと軽い会話をしながら小動物エリアへと来た所でパタパタと駆け寄る女カップルに注意を払い。
青年が兎を抱き抱えるのを見詰めては珍しく人懐こいのか足元に来た兎を抱き抱えてみる。
兄が巫山戯て『うわ、おんなじ目。もしかしてその兎と兄弟なんじゃないの??』なんてからかってくるのをムッとした表情で返しては相手に兎を受け渡す。
動物に慣れてるのかどうなのか、居心地の良さそうにする兎と共にそれを愛でる相手に和まされてはだらしない表情にならない様に努めて。
そんな中、ふと観光客の日本人女性に二人で居た所肩を叩かれては振り返る。
兎を抱えたままの相手を上目遣いに見詰め『良かったら一緒に回りませんか??』と問い掛けるのに溜息を漏らしそうになった所、女カップルの内の一人がパタパタと駆けて来ては相手と自分の間に入り不意に腕を絡められる。
なんとなく雰囲気を察した観光客の女性は『あ…ごめんなさい』と言葉を零し去って行って。
先程からもう一人に慰めて貰ってばっかだった印象の彼女、助けて貰った礼だと言わんばかりに緩く微笑んでは自分の耳元で『…ちゃんと見てなきゃ彼取られちゃうよ??こ-んなに美形さんなんだから』と。
小さく微笑み「わかってる、ありがとな」と返しては戻って行く彼女を見送り再び相手の手を取って。
>桐崎
(相手達を探し始め無事その姿を見つけるも何やら男達に絡まれ女を抱き寄せる姿に唖然とする。
少し離れていたため会話は聞こず至極親密に見えては身勝手に胸を痛めるも、相手から寄ってきてくれ手を握られては、きっとただの人助けだったのだと思うようにして。
(もやつく気持ちを忘れるよう兎と触れ合っていたところ女達に誘われて断ろうとするが先程相手が抱き寄せていた女性が間に入って来て相手に何やら耳打ちする。
内容は聞こえず微笑み合う様子にまた胸が痛んでは「…随分と仲良くなったんだな」とつい不満げに毒吐いてしまい。
しまったと後悔するも嫉妬のせいで謝ることが出来ず子供のように拗ねては兄の隣に行って。
(昼時、園内にあるテラスカフェにてランチをとっては、いつまでも拗ねててはいけないと相手の隣に座ってさりげなく相手の皿からプチトマトを取って食べて。
『あー、菊。甘やかしちゃいけないんだぁ。繿の健康考えて上げなよ』
「…別に良いだろ。…栄養なんて他からいくらでも摂れるんだから」
『なにその屁理屈』
(鋭く言われ確かに相手には健康でいて貰いたいと思えば、少し考えるように皿の上のプチトマトを凝視したあと正面の席で楽しげに食事する女カップルをチラと見る。
この女が相手と仲良く…とまた嫉妬が湧いてはプチトマトを一つ口に含み、隙をつくようにして相手の唇を奪うとそのまま相手の口内へとトマトを転がして。
たっぷりとそれを見せつけたあとゆっくりと口を離しては何事も無かったように料理をもくもくと食べ始め。
(其の頃、先程のナンパ男達は相手に女たちを取られたと逆ギレしており『一人になったところを大人数でかかればやれるだろ』『じゃ俺ダチ呼ぶわ。彼奴けっこういい顔してたから“遊べる”って言えば喜んで来ると思うぜ』と下品な笑いを浮かべて。
>露木
( 相手に女カップルとの説明をしてない事すらすっかりと忘れており相手は全て知ってる物だと見事な勘違いをしては相手の嫉妬の交じった言葉に微妙な表情で「う-ん、まぁお互い助かってるしな」と相手にして見れば意味の分からない事を言い。
( 園内のカフェにてさり気なく相手がプチトマトを食べてくれてるのに“助かったな”なんて思い浮かべてた所、唐突に唇を奪われれば目を見開く。
唇が離れるもいきなりの事に口内のプチトマトを噛んでしまい苦手な味が広がれば表情を歪めるのに兄が大笑いするも『菊俺にも-』なんて言っていて。
女カップルが微笑ましそうに見詰めて来ても苦手な後味を消すべく飲物を口に含む。
『ふふ、見せ付けてくれるじゃない』
( 女カップルの内の一人が緩く微笑み上記を述べるも今はそんな余裕など無く相手をジトリと見詰めては残りのプチトマトを相手の皿に置いて。
( その後、暫く園内を歩き動物の餌やり体験を終えた所で一足早く手洗へと向かう。
一人で来たのが不運だったのか自分を付け回してた先程の男達の仲間と共に囲まれてしまえば何となく男達の逆ギレを察しどう切り抜けようかと。
『見れば見る程気持ち悪。…さっきの女達も悪趣味だよな-』
『あれ、もう一人どこ行ったんだよ』
『まぁいいや。兎に角一人見付けたし』
( これから喧嘩でも始めるつもりだろうかとも考えるもこの人数では明らかにこちらが不利。
トイレ内をグルリと見回しては僅かに高い位置に換気窓が見え、人も通れるくらいの大きさだし逃げようと。
洗面台に足を掛けては窓へと乗り移ろうとするも寸の所で足を取られては僅かに体制を崩してしまい。
しかし捕まって堪るかと足を掴む男に蹴りを入れては再び隙を伺って。
>桐崎
(男同士のキスを見せられて気色悪がられると思ったが全く動じない女達の様子に其れほどまでに自信と余裕があるのかと勘違いしては相手を本当に取られてしまうのではないかと一人勝手に不安を抱く。
その後不安を紛らわすように相手の傍を離れずにいるも流石に手洗いまで一緒は相手も嫌だろうと心配ながら見送って。
(その頃、男達は意外にも俊敏な相手に苦戦して苛立っては『てめぇ、大人しくしてろ!』と暴言を吐き始め、一人がトイレの脇に置いてあった消火器で相手の足を殴りつけひるんだところを引き摺り下ろすと三人がかりで押さえ付け。
『俺けっこう顔が広くてさ、仲間ならいくらでも呼べんだよね。彼女とお友達に手出しされたくなかったら大人しく着いてこいよ。もっと楽しい場所で遊んでやっからさ』
(相手の顎をもたげて厭らしく笑んでは強引に園を出て車に連れ込もうとして。
男達の中には麻薬組織の人間もおり『此奴に試してみてもいいかな』と狂気じみた笑みを浮かべている者もおり。
(同じころ、中々帰ってこない相手を心配してはまさか襲われているとは思わず「すぐ戻るから」と兄と青年に女達を頼んで相手を探しにトイレに向かう。
しかし既に相手の姿はなく変に消火器が床に転がっているだけで。
嫌な胸騒ぎがしてはすぐに携帯を取り出し《何処行ったの?》と相手にメールし、直後に電話もかけてみて。
>露木
( 車の中にて暴れる自分に苛立ったのか腹部や足を何度も蹴られるも何かを含ませた布を嗅がされた途端に力が抜けガクッと首を落とす。
目前がチカチカとし、焦点の合わない瞳のままぼんやりとしてた所で自分の携帯が鳴り響いて。
男達は勝手に携帯を取り出し通話を押しては自分に“何でもない”と言えと要求して来て。
しかし既に麻痺した思考、言葉を話すのもままならないが相手の声にだけは反応し『…つ……ゆ、き』と短く名前を呼んで。
男達は面倒そうに通話をブツリと切ってはそのまま車を走らせ人気も何も無い公園へと向かって。
( 結局夕方まで解放して貰えずに女達を取られたという勘違いを元、散々な暴行を加えられ空が暗くなった頃に漸く解放して貰う。
ホテルの前でホテルマンに掛け合ってた兄を見付けては「後免な、勝手に離れて」と笑顔を繕って。
幸いな事に男達が暴力を働いたのは上手く見えない位置、卑怯な奴等だと思う反面助けられたなんて考えては『ちょっと何で電話の一本もしなかったのさ-』と兄が説教して来て。
「だから本当悪かったって。気を付ける」
『え、何処に行ってたの??』
「なんか日本人の客に日本語が通じるホテルあったら教えて欲しいって言われたからここ案内してた」
『へ-。で、その日本人の客は何処??』
「さっき部屋に案内されてた。…流石に部屋までは分かんねぇって」
( 嘘を重ねつつボロが出る前にさっさと話を変えようとしては部屋へと戻る様に空気を促して。
いつもの様に張り付く青年を特に振り払わずそのままベッドへと腰を下ろしては兄に明日の予定を聞き。
>桐崎
(ホテルのロビーにて相手の無事を祈るも電話越しで聞いた微かな車の走行音と相手の弱々しい声を思うと気が気でなく情けなくも手の震えが止まらずにいて。
やはり警察に取り合おうというところ、ホテルの入口に相手の姿が見えては弾かれたように駆け寄り相手に張り付く青年も構わず相手を抱き締めて。
「良かった…っ、無事で……心配したんだからな」
(震えを抑えて怒ったように述べては存在を確かめるように髪や頬を撫で相手の少し疲れた様子に「……本当に人をホテルに案内しただけなのか?」と不安げに見詰め腕に打撲があるとも知らず握る手に力が篭もって。
すると突然青年が割って入るかのごとく『あーそうだ!』と声を上げ。
『今日スパ行く予定だったけど兄さんと俺はホテルに残るよ』
「……なんで?」
『実は予約してたところ今の時間未成年は不可だったんだよねー、まあ綸たちはお金勿体無いから行ってきなよー』
(うっかりーと惚けた様子で笑う青年を訝しげに見るも兄に『じゃあ俺達はいこっか』とやや強引に腕を引かれて碌に相手と話せないまま別れてしまい。
(ホテルの部屋にて青年は相手をベッドに座らせると全て見透かしたように服を脱がせ、全身に渡る酷い打撲と傷跡に眉を寄せて全くと溜息を吐いて。
『そんな傷、立ってるのも辛かったんじゃない?……露木の前だからって無理しすぎ』
(珍しく真面目な表情で説教しては淡々と傷の手当を進め、消毒などを終えると相手の髪を撫でて『俺の前では力抜いてていいからね……って、なんか“前にも”こんなことあった気がするよ』と年相応の落ち着いた微笑みを浮かべて。
『なんかルームサービス頼んで軽く食べようか。どーせ綸たちは帰り遅くなるだろうし。………明日は海行くけどその傷だと海に入るのは難しいかもね。ま、砂浜で兄さんと俺の城を一緒に作ってればいいよねー。っていうか服脱いで日焼けするのやだし』
(ニコニコと穏やかな笑顔を浮かべながら青年なりに気を遣っては楽しい話題を続け、ルームサービスで届いたポテトを目の前に自ら口を開けてあーんを強請り。
その後暫く青年が相手にイチャつく頃、部屋の扉が叩かれては女カップル達が訪ねてきて。
『突然御免なさい。繿が心配で様子見に来たの』
『あれ菊君は?…貴方が居ない間すごく心配してたのよ。見てるこっちが胸痛くなっちゃったわ』
(女は苦笑を零し『愛されてるのね』と微笑んでは、『それで…』と少し言いづらそうな表情をして『…その図々しいお願いなんだけどもしもの時はまた“恋人”のフリしてくれないかしら。男達も寄って来ないしあなた達と居ると楽しいし良いお友達になれると思うの』と相手に何があったか知らないため『悔しいけど女の力だけじゃ叶わなくて…』と眉を下げて懇願して。
>露木
( 青年のさり気無い優しさに助けられてはふと訪れた女カップルの頼みに迷う事無く返事をする。
正直に言えばもうあんな事は御免だが彼女達に危険が振り掛かろう物なら自分が守ろうと。
申し訳無さそうに何度も謝罪と礼を言う二人に軽く微笑んでは彼女達の部屋まで見送り。
『………もう兄さんってば。………言っとくけど俺兄さんの身に合った事予想付いてるからね』
「流石だな」
『でしょ、兄さんの事なら何でも知ってるよ。…じゃあ明日も海には彼女達同伴だね』
「そうなるな」
『まぁ俺が守って上げるから安心してね』
( 青年の笑顔に微笑しそのまま部屋へと戻っては相手と兄が二人だけという事をしきりに心配してしまい《綸にセクハラされそうになったら言えよ。直ぐに飛んでくから》なんて過保護なメールを送り。
( 翌日、晴天の澄み渡る空の下膝下程までの水着とパーカーを着ては海辺で女カップルや青年と共にビーチバレーをしていて。
兄が相手にべったりなのをさり気なく気にしてはこうして共に遊んでるにも関わらず女カップルに言い寄る男達を追い払っていて。
『ごめんなさいねいつも。…本当に助かるわ、感謝してるの』
『全く大袈裟なんだから-。“美人”は大変なんだもんね-??』
『もう、また馬鹿にしてるじゃないの』
( 暫し他愛も無い話をするも兄がいつまでも相手から離れないのにとうとうヤキモチが上昇してはスタスタと相手の元へと来て。
兄に見せ付ける様に相手の額に口付けては「綸とばっかいんなよ」と何気に身勝手な事を呟き。
青年が『兄さん兄さん、お城つーくろ』と笑顔で誘って来るのに苦笑を零しては「後で行く」と告げ。
昨日も碌に話せなかったしと、甘える様に相手に抱き着くも不意に昨夜の傷が痛んでは一瞬抱き締める力を緩めて。
>桐崎
(翌日、輝くコバルトブルーの海に心弾ませながらも時折身体を庇うような仕草をする相手が気に掛かる。
また相手が女を男から守る光景がやたら目につきそんな相手の親切にまで嫉妬してしまっていたところ、突如相手に口付けられては単純な心はすぐ嬉しくなって甘えに応えるよう頭を撫でる。
が、一瞬表情が僅かに強張ったのを見逃さず「…身体痛むのか?…やっぱり昨日何かあったんじゃ…」とパーカーに手を掛けるも青年が割り込んで来て『兄さん、早くお城作ろーよ』と相手を引っ張って行ってしまい。
それでも心配が拭えず青年と砂で城を作る相手を見詰めていては兄に肩を叩かれ。
『ねえ、向こうで早泳ぎのイベントやってるよ。入賞したら何か貰えるって。やってみようよ』
「だったら繿も」
『……繿はいいんだよ。赤城と遊んでるし』
「…あんた何か知ってるのか?こういうイベント赤城が一番飛びついて彼奴を誘いそうなのに。…変だ」
『あの子肌に関しては意外とデリケートだからねぇ』
(冗談ぽく笑い手を引かれては何度か相手の方を振り返りながらもイベントスペースまで連れて来られ、此処まで来て“やめた”と言うわけにも行かず渋々参加して。
(始まったイベント、以外に多い参加者数に圧倒されながらも相手が気になり過ぎて正直泳ぎどころではなく順番が回ってきても顔を水面につけず適当に泳いでいて。
が突如足を掴まれ身体がグンッと海中に引きずり込まれては三人がかりで押さえ込まれる。
手慣れた様子であっという間にコース外へ連れ出されては訳が分からないながら海中で男を蹴り飛ばすも段々と息が続かなくなってくれば男の足に爪を立てて抵抗して。
(其の頃、砂浜では青年が『此処兄さんと俺の憩いの場!ここは二人で寝るスペース。俺と兄さんの愛の巣だね』とはしゃぐのを女カップルがほほやましげに眺めていて。
すると其処へ昨日散々相手に暴行を加えた男達がやってきては女カップルを馴れ馴れしく抱き寄せて。
『お前、何また俺の女に手ぇ出してんだよ。つーか昨日たっぷり躾けてやったのに聞き分け悪すぎだろ』
『しかも“男”にまでちょっかい出してさ。さっき額にキスしてんの見たぜ』
(ケタケタと嘲笑し厭らしく女達の髪を撫でては『大人しく俺の女返してくんないとお前の遊び友達が大変なことになっけど』とチラと海に目をやり口角を上げて。
>露木
( “友達が大変な事になる”と言う言葉にサッと表情を変えては女カップルも何となく察した様で『菊君に何かしたのね!?………私達…貴方達の物になるわ、だから彼を解放して!!!』と叫んで。
しかしそんなのは駄目だと首を横に振っては兎に角相手を救い出さなければと判断し青年に“二人を頼む、直ぐに戻るから”と耳打ちして。
海へと足を向けた所、相手が居なくなった事に血相を変えた兄も此方へと走って来るのが見えては青年と共に彼女達を守って欲しいと頼み込んで。
パーカーを脱ぎ捨て海に飛び込んでは先程遠目から見えた水飛沫が激しい場所へと泳ぐ。
傷口に塩水が沁み水を掻く度に痛みが走るがそんな事を気にしてる余裕も無く。
相手の元に近付くと共に三人掛かりで相手を抑え付ける様子が目に入り怒りが溢れるのと共に能力が半解放されては男達を睨み付けて。
一人の男が自分を目にした途端血相を変え一目散に逃げ出してくのに続き残りの二人も逃げ出して行っては相手を抱き抱え陸へと向かう。
既に能力も解けどうやら男達は三人の男達と共に退散した事を聞いては相手に人口呼吸をする。
ゴポッと水が抜けうっすらと目を開けた相手を抱き締めては「大丈夫か」と小さく問い掛けて。
青年にパーカーを受け取りファスナーを締めては泣きそうな女カップル達に軽く微笑み掛ける。
「何そんな顔してんだよ」
『だ…だって私達………』
「気にすんな、俺がいる限り此奴に危害与える奴は許さないから」
『でも…私達の所為で………どうしましょう。…どうお詫びしたら良いか…』
「お詫びねぇ………じゃあかき氷奢って」
( 一瞬呆気に取られた表情をするもパタパタと駆けて行く後姿を見詰めては相手の髪を撫で「落ち着いたか??」と問い掛ける。
青年が相手の髪を軽く拭いてやっては『あ、露木ってばここ絡んでるよ-』なんて明るく振る舞い髪を解いていて。
戻って来た女カップルにかき氷を受け取っては相手の正面に屈みかき氷を相手の口に入れては「まだ人口呼吸必要か??」とからかう様に問い掛けて。
>桐崎
(まだ完全に状況が掴めない中、口内にひんやりとした甘さが広がってはからかい顔の相手に視線を移す。
徐々に人前で人工呼吸された事に気付くと羞恥が込み上げ相手の肩を軽く押し「も、いい。……てか迷惑かけて御免」と謝って立ち上がり兄からパーカーを受け取って腕を通し。
そこで何故か女カップルにしきりに謝られては男達との関係性を知らないため首を傾げて「なんであんた達が謝るの?…それより狙われたのがあんた達じゃなくてよかった」と微笑み「……金目のものなんて身につけてなかったのに何が目的だったんだろうな」と男達の正体も相手が能力を解放したことも知らず呑気に兄に話し掛けていて。
『あ、兄さん。俺かき氷食べたらお腹空いちゃった。向こうで何か食べよう!』
(突如青年が声を上げては相手の手を引き『海水早く流さないと滲みるでしょ』と耳打ちしてビーチカフェの隣にある簡易シャワールームに歩いていき。
その様子をどこか不安げに見ていると相手によく身を寄せていた女が『あなたのこと真っ先に助けに行ったのよ。格好良かったんだから』と微笑んできて、素直に嬉しく感じては後でちゃんとお礼を言わないとなと相手の背中を見詰めて。
(夕方、ホテルのロビーにて少し離れたところで相手と青年が女カップル達に金の入った封筒らしきものを手渡されて頭を下げられているのが目に入っては訝しげに眉を寄せ。
「…彼奴等、何渡されてるの?…っていうか…海で男達どうやって蹴散らしたんだよ?」
『俺達強いから、ちょいちょいとね。…俺も彼女達が何かまでは詳しく知らないけど何となく察しはつくよ』
「……何だそれ。…俺だけ知らないみたいじゃないか」
『まあまあ、みんな無事で良かったじゃん』
(軽いノリの兄に何処かかわされた気がして不服そうにするも女達が相手から離れていくのが見えてはすかさず相手に駆け寄って。
「…昼間はありがとな。その、あんたさえ良ければ此れから二人で出かけないか?礼もしたいしさ。………あ、でもあの女たちと約束あるよな。最近仲良いみたいだし」
(此方に来てから中々二人きりになれていないことを気にして控えめに誘うも、未だに女達が“カップル”と知らないため相手と仲が良いと思い込んでは少し妬いたように呟き。
『えー。露木もあんなことあったしゆっくりホテルで休もうよー。明日はバンジーだし』
「…俺は平気だけど……」
(元々丈夫な身体、自分は一向にかまわないと思うも確かに相手の体調不良は昼間も気にかかっていたため「…無理はしなくていいからな」と小さく微笑み相手の肩にそっと手を添えて。
>露木
( ホテルへと戻った所で女カップルに金の入った封筒を手渡されるが青年と共に丁寧に断り。
受け取って貰えないと困ると言われてもやはり受け取る訳には行かず封筒を返して。
女カップルが去るのと共に相手が駆け寄って来ては誘いの言葉に表情を緩めるも相手の身体は平気なのかと。
肩に添えられた手を取り緩く微笑んでは「良いよ、やっとあんたと二人になれるし出掛けよう」と。
一度青年と共にトイレへと来ては傷口に薬を塗ろうとするもやはり動物に人間の薬は強いらしく、少しずつだが目に見える程に癒えて来ていて。
『わ、凄いね兄さん。この調子なら直ぐに治りそうだし…後は沁みるお薬を我慢するだけだね』
「……………ん」
( 風呂上がりにでも塗って貰おうと思うも沁みるのは苦手な為に一瞬眉を寄せる。
相手を待たせてるだろうしと青年に礼を言い部屋を出てはエレベーター前の相手の元へと来て。
どこか機嫌良さそうに相手の手を取りロビーまで降りた所であの女カップルと出会し。
『菊君、…身体は平気??』
『……………ほんとにごめんなさい』
( 尚も謝る二人に軽く苦笑してはこれから二人で出掛ける事をさり気なく話題にしたりして。
微笑ましく『あら、それは邪魔出来ないわね』なんて言われてはこちらも軽く微笑む。
「じゃあそろそろ行くわ」
『行ってらっしゃい。………あ、これ。スイーツ店の割引クーポンよ』
「貰っとく。ありがとな」
( ヒラリと手を振り二人と別れては相手に向き直り「チーズケーキ、好きだったよな」と呟く。
スイーツ店だなんて女々しい店相手以外とならば絶対来なかったななんて考えつつクーポンに書かれた地図を辿る。
やっと二人になれた事に照れ臭さもあったが普段通りを振る舞い。
>桐崎
(ロビーにてしつこい程に謝罪する女達を不思議に思いつつも相手の気丈な振る舞いと二人きりでいられる嬉しさから何があったか深くは考えず上機嫌で街に出る。
やはり相手といるだけで心も身体も軽やかになるなとこっそり相手の顔を見ては自分の好きな穏やかな表情をしていることに密かに頬を緩め。
と同時に薄着のせいか鎖骨あたりに傷が透けて見えた気がして嫌な予感がし、いい雰囲気を壊すのは気が引けたが相手の手を引き脇道にそれると相手の身体を軽く壁に押し付け。
「…なあやっぱりこの前電話した時なにかあったんじゃないのか?」
(しつこいのは承知の上だが何かを隠されるのは嫌でやや強引に相手の服のボタンに手をかけるも寸でのところで『あれ、昼間の“化物”じゃん』という男達の声に阻まれ、ゆっくり振り返ると男達を強く睨みつけて。
『なんだよ其の目。てかお前そんな気持ち悪いのと一緒にいて楽しい訳?』
「…あんた等には関係ないだろ」
(こんな奴等相手にしてるだけで無駄だと相手の手を引き去ろうとするもすぐに囲まれては行く手を塞がれ一人の男に顔を寄せられて。
『お前此奴のこと好きなの?ならよした方がいいぜ。あの女達のこと本気みたいだから。“此奴には既に俺がいる”みたいなこと言ってたし愛し合ってるみたいだぜ』
『あ、俺、此奴が女と抱き合ってキスしてるの見たぜ』
(事実と出鱈目を混ぜて嘲笑する男達に一瞬相手を疑うも直ぐに考え直しては「誰があんたらの言うこと鵜呑みにするか。…俺は此奴のこと信じてるから」と自分自身に言い聞かすように述べて男達を強く見据え。
男達は思い通りに自分が騙せず舌打ちしては何か言い返そうとするもまだ相手に対する恐れがあるのか口元だけで相手を“化物”と蔑んでは、一人が持っていた酒瓶を相手の顔横すれすれに投げつけて苛立たしげに去っていき。
静けさが戻る頃、まだ不安な気持ちを捨てて相手に向き直っては怪我をしていないか確かめるように頬や髪を撫で「大丈夫だったか?………なんか言ってたけど俺はあんただけだから」と微笑み、相手を信じてこれ以上追求することをやめて。
「……お腹減った。…はやく行こう。また二人でいる時間邪魔されたくない」
(相手を見詰めて少しだけ屈ませると軽く目元に口付けしっかり手を取ってはスイーツ店に足を向けようと。
>露木
( 道の脇にてボタンに手を掛けられ様とした所で僅かに表情が強ばる。
相手に格悪い所を見られるのは絶対に嫌で小さく抵抗しては幸か不幸か昨日の男達に囲まれる。
傷の事はバレなくて済んだが自分と居る事で相手に被害が被るのも嫌だと。
騒ぎを起こさない様にだんまりを決め込んでたが相手の言葉にジワリと心が温まり顔を背ける。
相手の心の内の不安も知らずに男達が去った後、スイーツ店へと向かおうとする相手の隣に並び手を繋いで。
「俺だって…露木だけだから」
( ボソリと呟き照れ臭さから足元にばかり目線をやっては漸くスイーツ店へと到着し。
雰囲気の良い洒落た感じの店へと入っては案の定女子ばかり。
端の席にて店員にスイーツを頼んでは温かい紅茶を啜る。
相手は自分と女カップル達との関係性を理解してるものだと未だに勘違いを続けていて。
店員がケーキを運んで来ては相手と自分の前に皿を置く。
チーズケーキとチョコレートケーキの端にはアイスも備えられており若い女性が好みそうだな、なんて考えつつフォークを咥えては何気無くチョコレートケーキの乗ったフォークをずいっと相手の口元に持って行って。
「ん、旨いよ。食ってみろよ」
( 男同士でもよくやる事だし、と特に気にしない様子で相手の口に入れては再びケーキを口に運ぶ。
…と、その時相手の背後の席の女性達が相手を見詰め頬を赤らめキャーキャー騒いでるのが耳に入れば“また相手狙いか”と慣れ半分に溜息をつく。
その度々に自分が妬いてる事など相手は知らないのだろうな、なんて考えてはジーッと相手を見詰めて。
>桐崎
(相手の“露木だけ”という言葉に幾分不安が紛れるもどうしても男達の言葉が気に掛かってしまっては小さく首を横に振り繋がれる手を握り返して。
(スイーツ店にて差し出されるチョコケーキを恥じらいながらも平気な素振りで口にしては、女が騒いでるのも相手狙いだと思い込み“あの子達に誘われても彼女たち(女カップル)のように相手は頷くのだろうか”とつい疑ってしまう。
ふと相手の視線に気付いてはん?と首を小さく傾げるもハッとなってはチーズケーキを一口切り分けフォークで差して相手の口元へ持って行き「御免、欲しかったんだろ?」と見事な勘違いをしてからかうよう小さく笑って。
(その後クーポンで会計を済ませ外へ出た所、英語訛りがキツイ豪軍が近づいて来ては相手にいちゃもんをつけているようで7割聞き取れなかったが暴言を吐いていることだけは分かって。
散々唾を吐き散らすだけ吐き散らし去っていった豪軍達の背中をやや気味悪げに見ては「…日本人に恨みでもあったのかな。……なんか物騒だしホテル戻るか」
(本当はもう少し相手と二人で居たいと思ったが海外の夜に少人数でうろつくのは男でも危険なため年上としてしっかりせねばと相手の手を引きホテルへ向かい。
そしてホテルの前まで来ては一度足を止めて不意をつくように唇を軽く奪って「今日の夜はあんたの隣で寝たい…」と不安だからという言葉を飲み込み相手を見詰め。
(其の頃、あの男達は相手を恐れながらも未だに逆恨みをしていて、相手を車に連れ込んだ際入手したアドレスで《さっきの軍人は俺達が手配した。また可愛がってやるから夜中抜け出して来い。逆らったらどうなるかわかってるよな?》と闇金や麻薬等を取り扱うバーの住所を添付して送りつけ、相手に“麻薬の運び”をやらせ犯罪に巻き込もうと企んでいて。
>露木
( 男達からのメールに気付くも不安を表情に出さない様にしては部屋へと戻りシャワーを浴びる。
青年や兄を何とか回避し相手をベッドへと招き入れては何気無く距離を詰める。
寝るにも時間はまだ早い、落ち着き無く何度も携帯を見詰めるもなるべく怪しまれない様にと携帯を置き相手に抱き着いては漸く落ち着きを取り戻し。
そのまま相手が眠りに付くのを見届けてはまだ起きてる兄や青年に悟られない様に狸寝入りをかまして。
( そして深夜、皆の寝息が聞こえて来たのに気付いてはのそのそとベッドを抜け出し着替えを済ませては携帯を片手に部屋を出て。
添付してある地図を辿りとあるバーへと辿り着き中に入れば男達が酒を飲み交わしていて。
『お-、ちゃんと来たか。来なけりゃお前のお友達売り飛ばされてたもんな』
「……………んな事させねぇよ、てか用事早くしろ」
『あ-。まぁあせんなって。ちょっと届け物頼まれてくれればそれで今日は帰してやるわ』
( 小さな小包を渡され僅かに首を傾げるも中身が何かは教えて貰えずに。
どうせ碌な物でも無いのだろうな、なんて考えるもまさか麻薬や覚醒剤の類いなどとは知らずに。
『あ、人に見付かんなよ』
『あと薬にイカれた奴等に襲われない様に気ぃつけろよ-。彼奴等狂ってるからな』
( 男達の言葉の意味も分からずに小包と共に渡された地図を見詰めては言われた通り人目を避ける様に路地を突き進む。
英国風の夜の街を走り抜けては地図の目的地であるマンションの指定された階へと向かって。
>桐崎
(ベッドの中、相手が男達からの脅迫に悩んでいるとも知らず相手のぬくもりに安心しては早い時間にも関わらずぐっすりと眠る。
真夜中、一度目を覚まし隣に相手が居ないことに気付くも寝ぼけていた為きっとお手洗いだろうと呑気に考えすぐに眠りに落ちて。
(その頃マンションでは高級スーツを着た男が怪しい笑みを浮かべ相手を出迎えて広い部屋に通しソファに座らせて。
『噂通りいい顔をしてる。…で、ちゃんとお買い物は出来たかな?』
(流暢な日本語で話しては相手から包みを取り上げ隠すこともなく中身、シャブ等を取り出し部屋の隅に居た男達に投げつけて部下にお金を受け取らせ。
『やれば出来るじゃないか。流石“自分から運びを志願しただけのことはある”』
(クスリと笑み相手の隣に腰掛けては厭らしく肩に腕を回し携帯で数枚の写真を見せつけて。
そこには相手がバーに入り男達から包みを受け取って此処まで運んでくるまでの姿が写し出されており。
『僕たちは無理強いはしてない。全て君の希望と意志でしたこと、そうだよね?』
(まるで尋問のように相手の耳元で囁いては『…だからこの写真が警察に渡ったら君は刑務所行きだ。勿論君の友達も疑われて酷い拷問を受けるだろうね。言っておくけどこっちの警察は君達の言葉なんて聞きもしないよ』と脅迫を続け携帯をポケットにしまい。
『でも君が僕達に従えば写真も公表しないし君達の友達にも手を出さない。そうだなぁ、取り敢えず下僕として働いて貰おうかな。君を紹介して貰う代わりに彼ら(ナンパ男)に結構なお金払ったし、その分働いて貰わなきゃ』
(男はスルッと相手の腰を撫で上げ立ち上がっては薬を受け取った男達を帰す代わりに別の男達を部屋に入らせ『”どう言ってた通り上物でしょ?後は君達の好きにして。僕は男には興味ないから”』と体格の良い男から大金を受け取ると扉に手を掛け『あー、そうだ。君のことは調べさせて貰ったから。桐崎繿君?簡単に日本に逃げられると思わないでね。それと“お友達”を巻き込みたくないなら早いうち別れたほうがいいよ』と胡散臭い微笑みを浮かべ部屋を後にして。
残った男達は『大人しくしてろよ』と片言の日本語で相手に迫っては舌なめずりをして相手の身体をソファに押さえ付けて。
>露木
( 思っても見なかった状況に困惑するも自分より体格の良い男達に敵う弾も無く。
結局思うがままにされ朝方宿泊先のホテルへと戻る事を許されては部屋に入るなり直ぐ様シャワールームへと駆け込み身体を洗い流す。
早起きの兄に浴室の扉をいきなり開けられては乱暴に髪を掴まれ冷ややかな笑みを向けられて。
『堂々と朝帰りとは良い度胸だね、相手は誰??っていうか外人が好みだったんだ』
「まぁな、来てみたら外人も良いもんだぜ??彼奴(相手)全然抱けないしどうせ直ぐにバテんだろ。だったら…」
『それ以上喋ったら本当に殴るよ』
( 怒りに震える兄を冷たく見詰めては“騙すのなら先ずは身内からだ”と自分に言い聞かせる。
着替えを済ませ濡れた髪を拭きながら兄の手を振り払い浴室を出た所で青年が気不味そうな顔をするのを尻目に上着を取る。
『に…兄さん出掛けるの??な、なら俺も着いて行こうかな…』
「はぁ??お前居ると恋人だと思われんじゃん。誰も相手してくれなくなるから着いて来んなよ」
( 傷付いた様な顔をする青年の顔も見られず、相手を見られる筈も無く部屋を後にしては折角の旅行だったのに嫌な思いをさせてしまったなと。
夜空の星を見ようという相手との約束、何気に楽しみにしてたが流石にこれじゃ無理だろうと。
濡れた髪のまま出て来てしまったななんて考えるも外は生憎の雨。
どうせ濡れるし、と傘もささずに街に出てはじっとりとした暑さの中を特に行く宛も無く歩いて。
>桐崎
(ホテルのシャワールームから微かに聞こえてきた相手の声。
はっきりとは聞こえなかったがまるで昨夜遊んできたかのような言い草に唖然としては髪を濡らしたまま出て行く相手の背中を見詰め。
暫く固まってしまうも窓の外から聞こえる雨音に我に返っては部屋着のままタオルを手にして部屋を飛び出し、ロビーで傘を借りるとホテルを出て。
程なくして前方をフラフラと歩く相手を見つけてはすぐさま駆け寄り傘を差すと相手の手を引き軽く雨宿り出来る場所まで来て相手の髪をタオルで拭いてやる。
不意に先ほど聞こえた言葉が脳裏を過り“まさか本当に女と遊んでいた”と不安が過ぎるも、相手の何処か疲れて傷心したような表情を見ては“しっかりしろ”と自分に言い聞かせ相手の頭にタオルを被せたまま優しく抱き締めて。
「…大丈夫。何かあったんだろ?あんたが急にあんなこと言うわけないもんな」
(相手が脅迫までされているとは思わず、穏やかな声色を努め相手の背中をあやすように撫でては少しだけ身を離して隈の出来た目元を指でなぞり。
「俺には、言えないことか?…何かあるなら助けになりたいんだ。俺に足りない部分があるなら言ってほしい」
(相手の手を握りまっすぐに見詰めて返答を待つも、相手が口を開くよりも前に背後から昨夜マンションで相手を男達に売った男が部下を引き連れ近づいてきて。
『やあ、繿君。昨日は楽しめたかな?…って早速お友達と一緒にいるんだ』
「……あんた誰だよ。…此奴がこんななのはあんたのせいか?」
『おー、怖い目。でもそんな恨まないでよ。彼が望んで僕達のところに来たんだから。ねえ繿君?』
(胡散臭い笑顔と厭らしい物腰に絶対怪しいと睨み返しては相手を自分の背中に隠すようにして男を警戒して。
『へー…、繿君。君の友達、こんなことしてるけどどう思う?』
(楽しげな笑みを浮かべては態とらしく『あーそう言えば』と声を上げ『昨夜君が相手した人達。君をえらく気に入ってね。君を食事に誘いたいって言ってたよ。可愛い女の子ばかりが揃ってるから君も気に入るだろうって』と怪しく笑み。
その胡散臭さと厭な笑みに全て押し付けの出鱈目だと思っては付き合っていられないと男を見据え「…此奴には俺がいるからそんなの必要ない。……こんな奴ほっといて行くぞ」と相手の手を引きその場を去ろうと。
>露木
( 相手に抱き締められるその温もりに思わず本音を漏らしてしまいそうになるのを押し堪える。
せめてこの男達との関係を切るその時までは相手には騙されてくれて貰わないと困る。
最近では相手の前に居る時は無表情で居る事も減って来たが、感情を見せない様に無表情を張り付けては必死に自分を信じようとしてくれてる様子に胸を痛め。
相手の背後に昨夜の男の姿が見えては一緒に歯を食い縛るも青年と兄を騙した今、相手にも危険が降り掛からない様にするには演技を続けるしか無く。
何とかこの男達から手を引く方法を見付けるまでは親しくする訳には行かない。
相手の手をスルリと抜けては男の前に立ち僅かに口角を上げては相手に背を向けたまま瞳だけは強く男を睨み付けて。
「流石に3~4人相手にすんのは疲れたな。でもまぁ暫く御無沙汰だったし良い思いしたよ」
( 表情の疲れ具合を上手く置き換えさも男と親しげな様子で話を続ける。
「食事ねぇ。喜んで行くって伝えてくれるか??女も揃ってるんなら断る理由も無いな、楽しみにしてるよ」
( 表情に悔しさが混ざる自分を心底楽しそうに見詰める男は一瞬相手に視線を移すも直ぐに自分に視線を戻し距離を詰めては小さな声で話始める。
『へぇ、随分綺麗なお友達持ってるね。彼売り飛ばせば多額の値が付くだろうし君を解放してあげても構わないけど』
「巫山戯るな、彼奴に手を出すのは許さない」
( 再び胡散臭い笑みを浮かべては『食事の件、よろしくね』と言い残し去って行く。
しかしこの男、相手を諦める筈も無く“お友達(自分)が麻薬運びをしてる材料を警察に知らされたくなければ言う事を聞け”と脅迫しようと考えていて。
>桐崎
(相手が男の元へ行くのを信じられないように見ては、男と話す言葉がどこか遠くに聞こえて。
相手が自分を守ってくれているとも知らずショックで思考が揺らいでは女達の事で不安だったこともあり3~4人相手したのも女だと思い込んで“やはり男の自分では物足りないのか”と。
“露木だけ”と言ってくれた言葉も嘘だったのかと失望するも狂おしいほど相手を愛する気持ちは捨てきれずに。
男が去ってから暫く顔を俯かせたまま相手に歩み寄り「……俺…、あんたの何を信じればいいの…」と低く呟いては相手の胸に傘を押さえ付けてその場を走り去って。
(その後、街をぶらついたあとホテルへと足を向けようとするも突如後ろから腕を掴まれては先程の男がいて、例の相手の写真を見せられ小さく目を見開き。
「なん、だよ。これ…」
『あれ?珍しい。これパッと見て何してるか分かったの?もしかして君もその類の人?』
「なんだって聞いてるんだよ。なんで此奴がこんなこと…ッ、あんたが仕向けたのか?!」
『人聞き悪いなぁ。彼の意志だってさっき言ったでしょ。割のいい女の子紹介してほしいって頼まれたから僕はそれに協力して上げただけだよー』
「……うそだ」
『それはどうだろうね。…ってそれより此れバラ撒かれたくないよね?この国じゃ君達はアウェイだ。下手な抵抗はせず服従するのが利口だよ。…君、“男好き”でしょ?』
(ニコッと怪しく笑まれ一枚の店の住所が書かれた紙を渡されて去られてしまっては断れるはずのない脅迫に紙をクシャリと握りしめる。
絶対身売りまがいなことはしないと決めていた。
だが相手の気持ちが離れてしまった今、相手の身だけでも守れるならなんだっていいと。
とりあえずホテルに戻ろうとするも、きっと相手はいないと考えると足は訛りのように重たくなって。
>露木
( 泣きそうな震えた声が耳に残るも後を追う事はせずにその背中を見詰める。
これで良いと自分に言い聞かせそのまま街に向かおうとするも“夜にまた麻薬運びをする様に”と言う連絡が来ては表情を消して。
( ホテルに戻るなり一切目を合わせない兄と遠慮がちに話し掛けてくる青年に目もやらずに荷物を取っては「あ、俺今日も帰らないから」と言い残す。
相手が脅迫されてる事も知らずに薬を運び届け男の命令通りあの大男達の元へと訪れて。
( その頃、相手を待ち伏せてた男達は厭らしい笑みを浮かべ腰を撫で上げては主犯格の男(昼間相手に脅迫をした男)が英語で男達に話始めて。
『“彼、君達に相手して貰いたいんだってさ。どんな事にも耐えられるって言ってたしお好きなプレイを楽しめると思うよ”』
( 相手の肩をグイッと引き寄せ男達に顔をよく見せては男達は口角を上げる。
『“こりゃあ上玉じゃねぇか、金は積んでやるよ”』
『“でしょ。好きに楽しんで”』
( 背中をドンッと押し男達の胸に押し付けては男はさっさと去って行ってしまって。
『ほら、こっちに来い』
( 慣れない様子の日本語を離しては相手の手首を縄で拘束しベッドの作へと縛り付けて。
厭な笑みを浮かべ相手に多い被さっては視界を隠すべく目隠しをし痛みを与える程の乱暴な扱いをして。
>桐崎
(身体の自由と視界を奪われ痛みと恐怖で涙が溢れそうになるのを必死で堪えては、数時間後漸く解放されて重たい身体を引き摺り宿泊先のホテルへ向かう。
時刻は深夜、みんな寝ているだろうしホテルの24時間使える共同の浴室を使おうとするも待ち伏せていた兄に捕まって。
『こんな時間までどこ行ってたの?……その手首の傷は?』
「…別に、何でもない。……繿は?」
『今日も帰らないって。どうせまた遊んでるんでしょ』
「………本当に、遊んでると思うのか?…あんたは彼奴の兄だろ?信じようとか…『信じる?何を?……菊さ、もう繿を信じるのやめな。傷が深くなるだけだよ』
(珍しく怒りを含んだ兄の冷たい視線に何も言えなくなっては身体を洗うため逃げるようその場を去ろうとするも突如兄に抱き締められて。
『ねえ…、俺にしなよ。俺なら菊を不安にさせないよ』
(耳元で甘く囁かれ先刻の恐怖が蘇っては兄の肩を押すもビクともせず唇に口付けられる。
必死で抵抗するも段々相手に見放された虚しさが心を支配しては所詮自分は“身売り”でしかないのだと兄の腰に腕を回して。
一部始終を男の部下に撮られているとも知らず兄の胸に額を預けて暫くそのままでいて。
(その頃、軍人である大男達は店に訪れた相手を席に手招きしては相手の両隣に店のNo.1と2の女を座らせ高級なシャンパンを用意させて。
『ほら飲め。ありがたく思えよ』
(日本語を喋れる一人が命令しては其れが合図だったように女達が相手の頬や首筋、股の間に艶めかしく触れて。
『坊や可愛いのね。ねえお姉さんとキスしない?』
『折角だから写真取りましょうよ。ほら私達に腕絡めて』
(流暢な日本語でほぼ強引に相手の動きを支配しては好き勝手相手に触れて男達に写真を撮らせる。
女達は相手が相当気に入ったのか相手から離れず『ねえこの後別の場所に行ってもっと楽しいことしましょ』と豊満な胸を押し付けながら甘い吐息を相手の耳元に吹きかけ。
『おいおい、嬢さん達。遊ぶのは良いが俺たちが楽しんだ後にしてくれよ。其奴は俺らが先に目をつけたんだからよ。“だいたい嬢さんたちは其奴と写真を撮るようあの男(主犯格)に言われただけだろ?”』と最後だけ豪特有の訛りのきつい英語で述べては相手に厭らしい目を向け。
『さてと、とりあえずお楽しみの前にたっぷり酒飲んどけ。いい気分になれるからよ』
(男は女達を退かさせ相手の隣に座ると相手のグラスに並々とシャンパンを注ぎ楽しげに相手を見て。
>露木
( 絡み付く女達をうざったそうに避けるも見事なアングルで写真を撮られてる事等知らず。
早くあの男から手を引く策を探さなければならない、それを終えたなら心から相手に向き直り誤解を解こうと自分に言い聞かせる。
どうせ今日もあの気持ちの悪い行為が始まるのだと思えば酒を煽り思考を酔わせようとするも元々酔わないタイプ故に酔えずにいて。
思考ははっきりとしたまま頭痛が襲い掛かれば軍人に立たせられ直ぐ隣の部屋へと放り入れられる。
「………っ、触るな。…俺は…今日は薬を届ける様に言われただけで………」
『騒ぐな、写真バラ撒かれたいか』
( 片言な日本語で声色静かに言われてはグッと押黙る。
兄や青年、そして誰よりも相手に迷惑を掛けたくは無いと表情を殺しては心を殺す様に努めて。
「……………早くしろよ」
『まぁそう急かすな。お前に良い物を見せてやる』
( ふと軍人の男がポケットからスマートフォンを取り出しては画面に映し出された写真を見せられる。
兄に抱き締められるそれに応える様に抱き着く相手の姿に言葉を無くすも直ぐに目を逸らす。
「そんなの…違う。………俺が酷い事言ったから…慰めて貰ってるだけだ………そうだろ??」
『どうだろうな、だがこれが真実だよ』
( “これを乗り切れば…”と自分を保ってた壁がガラガラと崩れるのを感じては抵抗を無くした手をパタリと下ろし蒼白に一点を見詰めていて。
( その頃、隣室の女達は自分の携帯のSNS(LI〇E)のタイムラインに先程の写真を投稿していて。
元々SNS自体には相手や兄、青年くらいで職場などの人は殆ど登録されておらず。
クスクスと笑みを浮かべては携帯を机に置いて。
>桐崎
(真実を知らないとは言え自分の浅はかな行動が相手を傷付けているとも知らず一人勝手に傷心しては兄に身を寄せてしまうも、シャワーを浴び少し冷静さを取り戻すと抱きついてくる兄をやんわり拒絶して。
「………ごめん、やっぱり彼奴をもう少し信じたい」
『…此れ見ても同じこと言える?』
(そう言って見せられたタイムラインの写真にすぐさま絶望に引き戻され絶句しては現実が受け止めきれず小さく首を横に振るも、やや冷静さを欠いた兄は其れを無理矢理見せてきて。
『繿は菊を裏切ったんだよ』
「…違ッ…きっと“運び”のことで脅されて……」
『菊、もう辞めな』
(冷たい視線が突き刺さり息をのむも次の瞬間優しく抱き締められては、どっと無力感と疲労感が襲いそのまま兄の腕の中で眠りにつき、夢の中で相手の残像を追い求めるようにして兄を抱きしめていて。
(翌日、目を覚ましては兄に口付けられるも抵抗せずに受け入れノロノロと朝の身支度をする。
いつもの癖で相手と揃いのピアスをつけそうになるも相手に見放されたと勘違いしたままでいてはピアスをケースに戻し鞄にしまって。
それでもストラップは外さずに未練がましく触れては青年がしきりに相手に電話やメールをするのをぼんやり見詰め。
『兄さん…電話もメールも音沙汰なしだよ。……本当に俺達のこと嫌いになったのかな』
「…………」
『そうなんじゃない?脅されてるなら何かしらサインくれる筈だし。………もう放っといて観光しようよ』
『そんな気分じゃない。俺…、ホテルで兄さんのこと待ってる』
『あっそ。……じゃあ菊、行くよ』
「…………」
(心此処にあらずで窓の外を見詰めていては兄がやや苛立ったように自分の手を引き部屋を出て街に連れ出されて。
(街の中、兄が腕を絡めてくるのを無意識に相手と重ね身を寄せていては前方から相手が歩いてくるのが見え一瞬身体がピクリと震えるもすぐに暗い瞳に戻って。
『…繿…。なんでそんな疲れた顔……、……』
(やや青ざめたようにも見える相手の表情に兄は唇を噛むも怒りが先立っては突如自分の肩を抱き『そうだ、俺達付き合うことになったから。ね、菊?』と。
訳が分からず戸惑うもどうせ相手は女好きで自分など都合の良い道具とかしか思ってないと最低な勘違いをしては小さく頷き「……綸は俺だけを愛してくれるから」と何も写さない真っ暗な瞳で無機質に呟いては兄の頬に冷たい口付けを落とし。
(一方で男達は相手を手放す筈もなく、薬の運びを続けさせると共にしつこく夜来るよう命じては《日本に帰れると思うなよ》と脅していて。
>露木
( 鉛の様に重たく感じる身体に鞭打ち街中を歩いてた所正面から相手と兄に出会しては思わず足を止める。
昨日軍人の男に見せられた写真が脳裏を過り、それでも尚嘘だと信じようとして。
しかし突き付けられた兄と相手の関係に思考が停止し焦りを混ぜた表情で相手の肩を掴む。
あの男との関係を早く終わらせて誤解を解いて………それから相手に本心の愛を告げるつもりだった。
「………な、…んで………。何で綸と付き合うなんて言うんだよ!!!」
( こんな事を言ってしまえばそれは矛盾に過ぎないのに一瞬我を失っては上記を叫んでいて。
直ぐに兄に突き飛ばされてはフラリと体制を崩すと共に頭痛が襲い髪をぐしゃりと掴む。
『繿が菊の事弄んだんでしょ??俺は菊だけを愛するし浮気したりしないから』
「…………………………」
『何今更菊を恋人みたいに言ってんの??…どうせ昨日もお楽しみだったんでしょ』
( 黙り込んだまま地面を見詰めてたがここで本音を言った所で相手の為にはならないし麻薬運びの手伝いをさせられたなどと知れれば皆の迷惑になる。
演技を続けなければと必死に言い聞かせてはクックッと喉を慣らし蔑む様に兄と相手を見詰めて。
「良いんじゃねぇの??お似合いだよ、…てか直ぐに乗り換えられるとかお前マジで流石だな」
( “身売り”というそれに相手が激しいトラウマを感じてる事を知ってたが神経を無くし麻痺した頭では判断が効かずにいて。
兄の平手打ちが頬に当たり口内が僅かに切れたが再び兄に目を向けては『綸も物好きだな』と言い残し逃げる様に去って行って。
( 相手が自分の写真をタネに脅されてる事にも気付けないままホテルへと戻ればどこか不安そうな表情をする青年に迎えられるも無視して。
出来る事なら皆には早く日本に帰って貰いたい。
危険が降り掛かる前にと焦りと焦燥を感じては自分の腕を掴んで来た青年を冷ややかに見下ろす。
『お…お帰り。待ってたんだよ、俺』
「待っててくれなんて頼んでねぇから」
『………だ、だよね。ごめん………あのさ、兄さんもし良ければこれから………』
「見て分かんない??疲れてんだけど」
( 態とらしい溜息を付いては悲しそうな青年の表情に一瞬罪悪感を感じ、青年の頭に手を伸ばすも寸の所で引っ込めて。
「………綸と露木連れてさっさと帰れ。俺はまだこっちでやりたい事あるからさ」
『な、何で??』
「なんでも良いだろ。…いいからさっさと帰れって言ってんだよ」
( 青年の手をバシッと乱暴に払い除けては舌打ちをし、昼間に男が手配したビジネスホテルへと早足で向かってはあの男達が入って来るのでは無いかという妄想と恐怖から逃れるべく窓や鍵を締め切りベッドへと身体を預けては疲れから眠りに落ちて。
>桐崎
(相手の言葉に身勝手にも胸を痛めては去り行く相手を追おうと足が前に出るも兄に止められては離れていく相手の背中を暗い瞳で見詰めていて。
『菊、行くよ。……明日には帰るから御土産買ってこ』
「……繿は…」
『もう繿はいいでしょ…』
(どこか感情を誤魔化すよう息を詰まらせる兄を見詰めては視線を地面に落とし「…綸は…離れるなよ」と小さく呟き一人歩き始め。
丁度その時、あの主犯格の男からメールが届いては《話があるから来て。逆らったら写真ばらまくよ》と。
___もう相手との関係は終わった。運びも相手が自ら進んでやったこと。助ける意味なんて…、と思い掛けるも相手への想いを誤魔化しきれる筈もなく「…御免、一人で寄りたい場所あるから」と兄に止められる前に走ってその場を立ち去り指定された場所へ向かって。
(高級住宅街、男の屋敷に訪れては早速一枚の紙を渡され“其処に行って男の相手をして来い”と。
その男は世界でも指折りの資産家らしいが性格はかなり歪んでいるらしく。
『その人に近づきたがる子こっちでは少なくてさ。君なら最悪消えても警察も騒がないし丁度いいかなって。じゃ、行ってらっしゃい』
(逆らう権利などないとでも言うかのように黒い笑みを浮かべ手を振られては冷や汗が流れるも、逃げる選択肢など無く紙をクシャリとポケットにしまうと無感情の鎧をまとい男の屋敷を後にして。
(其の頃、男達は眠る相手を厭らしく見詰めて髪を撫でては頬を軽く叩いて目を覚まさせ。
『お目覚めか?…早速だが今日もあの男(主犯格)から“仕事”が届いてるぜ。今回の届け先の奴は金持ちだがかなり薬で頭がイカれてるらしいから気をつけろよ。まあお前なら顔も良いし上手くやればたんまりチップ貰えんじゃないか』と笑い“物”と資産家の超高級マンションの住所が記された紙を渡して『あと一応中和薬な。薬盛られてその身体駄目にされたら俺達の楽しみが無くなるからな。はやく帰れよ』と中和薬を相手のポケットに忍ばせその流れで腰を撫で上げて。
>露木
( 男に渡された中和薬と地図をぼんやりと見詰めてはそろそろ意思を決めなければと。
あの女カップル、確か一人はネットのハッキングに優れてると自分で話していた。
ハッキングなら青年に頼むのが手っ取り早いがこっちに詳しい方を選ぶのならやはり女カップルの一人の方が良いだろうと。
兄と相手が付き合ってるのならば誤解を解く意味なんて有るのだろうかと思うも相手を愛してるのは何よりも深い事実。
自分の最低な行いにより例え相手の心が戻らずとも伝える事だけは伝えておこうと。
( そして夜、“物”を隠し持っては早足で高級住宅街の一層大きな家に訪れる。
この仕事を終えたなら直ぐに女カップルの一人に写真のハッキングを頼み込もう、そう自分に言い聞かせノックをしては出て来た大柄な男に“物”を手渡す。
『ゆっくりして行けよ、家に上がれ』
「………いい。俺薬運べって言われただけで長居出来ないし………」
『逆らうのか??』
( やはり拒否は出来なかったかと落胆しては無理矢理家へと上がらせられる。
『お茶を出すよ、待ってて』
( キッチンへと去って行った男を不安気に見詰め、視線を落とした所で背後から薬を含ませた布を口元に押さえ付けられて。
キツイ匂いと共に感覚が麻痺してはフラリと倒れ込み、男に起こされては『気持ち良いだろ??』と。
激しい浮遊感と真っ白な思考、頷く事も首を降る事も出来ずに再び嗅がされては立てずにいて。
『今日はもう一人お客様が居るんだ。…でも君の事見られたら面倒そうになるからね。………彼の事薬で落とすまで隣の部屋で待っててくれるかな??』
「……………だ、………っれ………な、んだよ」
『日本人の男性さ、日本人は実に美しいね。特にこれから来る彼は一層美しく顔立ちの良い男だと聞いてる、楽しみだよ』
( 男に抱えられ隣室のソファーへと投げられては回らない思考の中ぼんやり天井を見詰めていて。
>桐崎
(男の家の前まで来ては先程から兄からの着信でランプが点滅する携帯を取り出し《すぐ戻るから》とあてのない返信をしてベルを鳴らす。
門まで直接男が出向いて来てはさも歓迎したように客間に通され御茶を振る舞われるも呑気に御茶して帰れる筈がないため緊張の面持ちでお茶を飲み。
数十分、挨拶だけで何も会話はなく柱時計の時を刻む音だけが部屋に響き、流石に不審におもい男を見ては男も此方を興味深げに見ていて。
『…君、何ともないのか?』
「……なにが?」
(気づけば出される御茶は三杯目。流石にもういらないと使用人にやんわり断ると男が隣に座ってきて『君、面白い子だな』と笑んだ直後腕に注射器を刺され得体のしれない液体を体内に注入される。
瞬間急激な倦怠感と筋肉が萎縮する感覚に襲われてはソファに身を沈める形で意識を手放して。
(夢の中、霧に覆われた世界で相手を求め探しまわる。
微かに風が吹き遠くに輝く銀毛をまとった狼が見えては相手の名を叫び駆け寄るも追いつく事はできなくて……___。
「…繿」と小さく呟き薄っすらと目を開けると見知らぬ高い天井がうつり、すぐに両手がベッドの両端にそれぞれ拘束されていることに気付く。
嫌な笑みを浮かべる男に顔を覗き込まれてはキッと睨みつけそうになるも、反抗的な態度を取っては相手の写真が漏洩してしまうとぼんやり男を見詰め返し。
『どうだ。身体、上手く動かせないだろう。特別な薬を注射したからな。…ところで“らん”って君の恋人?』
「…………」
『だんまりか。まあいい。…どうせ君は俺には逆らえない立場だしね』
(ニタリと笑む男を力なく見詰めながら自分の身体がどれ程動かせるか確認する。
元々薬には耐性がある身体、既に幾分自由が効くのを確認してはこれ以上薬を打たれないためにも薬に侵されている振りを続けようと身体の震えを押さえて男に従う。
こんな浅ましいことをしてまでも相手に縋っていたい。
たとえ気持ちが離れていても相手との関係を断ち切りたくないと。
男が何か喋りかけてくるも途中から耳に入っておらず“優しい相手”の残像を見るようただ一点を見詰めて。
この時、同室の敷居を隔てた向こうに相手が居るとは夢にも思わずに。
>露木
( 後ろ手に手を括られたままソファーの上でぐったりと気を失ってたが敷居の向こうで物音がしたのに気付いてはうっすらと目を開ける。
ズルリと身体を動かした所で見事にソファーから落ちてしまっては大きな音を立ててしまい。
男はクスクスと微笑んでは敷居を蹴り飛ばし此方に見せ付ける様に相手の首筋に顔を埋める。
麻薬に侵されてた思考は急激に冷え、目前の相手を信じられない様に見詰めては身を起こして。
『さて、俺は日本人が好きだからね。二人とも態々自分から俺に相手して貰いに来たんでしょ??』
「おい!!!そいつは関係無ぇだろ!!!そいつには………そいつには恋人が居るんだぞ!!!」
『おや、知り合いの様だね。まぁでも彼自ら俺の玩具になりたいって言って来たんだよ??』
「ちがっ……………そんな筈無い!!!」
( 咄嗟に大声を上げるも再び背後の使用人に薬を嗅がされてはさっきよりは幾分慣れた物の力を無くした様にドタリと倒れ込む。
相手が望んでした事などと信じられないと言う様に怒りを見せるも男は厭らしく微笑むだけで。
『先ずは彼から楽しませて貰うよ。こんなに綺麗な顔立ちの彼が苦痛に歪める顔を見たいんだ』
「………そ、そんな奴相手するとか………あんた頭イカれてるぜ??……………色んな男と寝てんだってよ。………び………病気持ってるかもしんねぇじゃん」
『構わないよ、俺は彼が気に入った』
( 我ながら最低な事を言ってる事を理解しつつ、それでも相手を逃がす為のチャンスを狙う。
だが男は相手が大層気に入った様子、『彼の後で君の相手もしてあげるから』なんてせせら笑いながら言えば部屋の中の棚から鞭を取り出して。
『え-と、露木君とか言ってたね。こういうプレイは初めて??まぁ君が希望したんだし楽しませてよ』
( 鞭が相手に振り上げられそうになるのに“やめろ!!!”と声を上げてしまっていては精一杯の演技をし「………なぁ、俺にしてよ。もう我慢出来ない」なんて俯き加減に囁いて。
『君は後からだ、暫く我慢してくれよ』
「そ………そんな男好きより………俺のがあんたを良く出来る」
( 吐気を感じる程の台詞に頭を下げては男の背後の相手に冷ややかな視線を送って。
>桐崎
(男をなるべく意識しないよう努めていると物音と共に敷居が蹴り飛ばされ拘束された相手の姿に目を見開く。
自分より薬には弱い相手、辛そうな姿に胸が痛むも“いろんな男と寝た”“病気を持ってるかも”と言われ、それが自分を逃してくれる為とは気付かず酷く傷付いて。
次いで発せられる男を誘うような言葉に唖然と相手を見るも、男の気は変わったようで厭な笑みを浮かべ相手に近づいては鞭の持ち手で相手の顎をもたげて。
『我慢しろと言ってるのに…。でもそんなに自信があるならその意気を見せて貰おうかな』
(クスリと笑んでは鞭の持ち手を顎から首筋へと伝わせ、使用人に一本の注射器を持ってこさせると躊躇いなく相手の二の腕にプツリと注し『ずっとずっと良くなる薬だよ。君の狂ったところを見てみたいからね。俺を期待させたんだ。それに応えて貰わなきゃ』と液体を一気に注入して注射器を投げ捨てては自分の制止の声虚しく鞭を相手に振り落として。
_部屋に響く鞭のしなる音、何度もやめろと叫ぶもその叫び声は男の狂った快楽を増幅させるものでしかなく小さく痙攣する相手の身体に容赦なく鞭が打ち付けられて。
『あー、最高だね。美しいものがもがき苦しむ姿は。どうだい気分は?』
(ぐったりする相手の身体を掴み上げ耳元を舐めあげる姿に、怒りが込み上げるも両手はしっかりと固定されており“やめろ”と叫ぶことしか出来ず奥歯を噛み締めて。
『そんなこの子ばっかり構ってるからって怒らないでよ。ちゃんと相手してあげるから』
(変な勘違いをされては男が何か企みを思いついたように不気味な笑みを浮かべ、意識が遠退きかけている相手に鞭を無理矢理持たせて。
『君はそれなりに楽しませてくれたからね。もっと楽しいこと教えて上げる。…此れで露木君を打って上げて?最高に快感だから』
(狂気じみた笑みを浮かべるもぐったりする相手に舌打ちしては無理矢理意識を覚醒するために強い注射を打って『逆らったらあの人(主犯格)が何するか分からないよ』と。
それでも中々動こうとしない相手に男は苛立っては自分の首筋に注射器をあてがい『君がためらえば彼の身体にそれだけ負担がかかるだけだよ』とほくそ笑み。
>露木
( 男が鞭を自分に振るってる間も“これを味わうのが相手じゃなくて良かった”なんて考えて居て。
何度も意識を失いかけ、再び打たれた注射器と共に意識が覚醒されては無理矢理持たされた鞭と男の言葉に下を向いたまま目を見開く。
相手の首筋に宛てがわれた注射器、麻薬の類ならばと不安に駆られては『良い、俺がやるよ』と。
フラリと立ち上がり相手を冷ややかに見下ろしては鞭で相手の顔をグイッと持ち上げる。
「…あの男にやられるのも…俺にやられるのも同じだもんな。帰ったら綸にでもたっぷり慰めて貰えば??」
( 泣きそうな表情を押し殺し、それでも手加減を混ぜ相手に鞭を震えば息を切らし男を見詰める。
態とらしい拍手をしながら自分から鞭を受け取れば『中々良かったよ。君こっちの素質も有るんじゃない??』とほくそ笑んで。
それからは男が相手に触れるのが嫌で無理矢理男を誘い込んでは漸く時が過ぎて。
( 金の入った封筒を起き『この部屋は好きに使って良いからね。また頼むよ』と言い残し寝室へと戻って行って。
ぐったりとする相手と距離を取り煙草の煙を吐き出しては唇を噛み締める。
「お前さ、…何でここに来たの。………あ-いうのが好きなんだったら綸に言えばいいだろうが。………あ、綸は“俺と違って”優しいからやってくんねぇとか??」
( どことなく嫌味を含んだ言い方をしてしまった事に気付き顔を俯かせては小さく舌打ちをする。
相手がここに来たのは自分の写真で脅されてるから。
そんな事にも気付けず「早く日本に帰れよ」と零す。
二本目の煙草を取り出しては火を付け、大きな窓の外をぼんやりと見詰めていて。
>桐崎
(男が去る気配を感じてはベッドに身を沈めたまま静かに相手の言葉に耳を傾け、皮肉交じりの言葉に本当に優しい相手はいなくなってしまったのかとどこまでも勘違いする。
解放された身体をゆっくり起こすと鼻孔を相手の煙草の匂いがかすめ其れだけで愛おしい気持ちが込み上げては悔しさでギュッとシーツを握り締め。
「…何でって……、あんたが馬鹿なことするから……」
(未だに相手が女欲しさに運びをやったことだと思い込んではやりきれない思いで窓の外を見詰める相手を見据え「…さっき何であの男を誘ったんだよ。……あんたは俺と違って………男好きじゃないのに」と語尾を小さくして呟き下唇を噛み締め。
相手の本当の優しさを理解してやれないまま、複雑な感情が溢れてきては抑えがきかなくなり怠い身体を無視して立ち上がると相手に大股で近寄り胸倉を掴み上げて。
「帰れって……、帰れって何だよ!!あんたを置いて帰れる訳ないだろ!!…………愛してるんだ。あんたが馬鹿で女好きで…俺をどんだけ蔑もうと…あんたが……ッ…」
(好きなんだとつい本音を零してしまっては、ついさっき兄と付き合っていると告げたばかりなのに何を言っているのだと、どうせ信じてくれないと胸倉を掴む手をダラリと下ろしては自嘲の笑みを浮かべ。
「……御免、使えない玩具に縋りつかれても迷惑なだけだよな…。………でもあんたを置いては帰らないから。……日本に帰ったらいくらでも女と遊べばいい。だけどこんなところで危険な真似してまで遊んで欲しくない」
(勘違いをしたまま悲しげに相手を見詰め僅かに服の隙間から見えるみみず腫れを指先でそっと触れる。
煙草の灰が床に吸い込まれていくのが見えては薬の副作用で疲労感の伺える相手の顔を見詰め頬に手を伸ばすも指先が触れる前に着信音が鳴っては手を引っ込めて。
着信は主犯格の男から。《そこでの用が済んだら、次の場所行ってね》と別の住所が記されており。
誰がこんな傷物を好んで…と自嘲が漏れるも相手には知られたくなくすぐ表情を戻し「……綸から。……今から“慰めて貰ってくる”」と嘘を吐き相手に背を向けて「……ホテル、戻って来いよ。赤城が寂しがってる。何かあれば赤城に相談してやって」と呟き金の入った封筒は取らずに部屋の扉に手をかけて。
>露木
( 相手の口から溢れる自虐的な言葉から相手が酷いトラウマと共に自身を責めてるのかと思うと胸が痛む。
相手は何も悪くないし汚れてなんかいない、それに相手に愛される資格など自分には無い。
先に出て行こうとする相手の肩をグイッと掴み無理矢理口付けては何度も角度を変える。
漸く唇を離しては自制心の効かなくなった自分をとことん恨みつつ言い訳を考える。
今日女カップルの元へと向かってハッキングを頼み込んでそれから行動に移すつもりだった。
相手から距離を取り相手を真面目な表情で見詰めては「………確かに綸なら、あんたを大事に出来るな。………でも綸がいるのに他の男の慰物になんのはやめろよ」とどこか自嘲気味に微笑む。
男の家を後にしては鳴り響く携帯を取り出しまた夜、男(主犯格)の言う事を聞かなければ兄や青年、相手に危害を加えるとの事で。
夜までに女カップル達に全てを伝えなければならない、ホテルへと走り出しては直ぐに女カップル達を探して。
( ホテルに着くなりロビーにて仲良さげに話をしてる女カップルを見付けては早足で駆け寄り部屋へと向かう。
自分達の部屋で話そうと思ったがそれでは青年にも話が漏れてしまうと頭を悩ませてた所、状況を察した二人は部屋へと入れてくれて。
早口で内容を話した所、一人がパソコンを手に持って来ては主犯格の男のアドレスを聞かれる。
『任せて頂戴な。これでも大手会社の秘書を努めてた事も有るの、そんなのちょろいわ』
『心配しないで。彼女の腕は本物よ、夕方にはこの男の携帯から直接他のデータを消せると思う』
( 二人の言葉に深く安堵し礼を言いホテルを出ようとした所で不意に青年に腕を掴まれて。
『兄さん…どこ行くの!?』
「どこでも良いだろ、お前には関係無い」
『綸が明後日には帰国する予定立ててる。………でも兄さんには構わないって…。ねぇ、何か合ったんでしょ??』
( 青年の腕を振り払いキッと睨み付けては「気安く触るな」と言い残しホテルを後にして。
>桐崎
(相手が去ってから暫くフラフラと男の家を後にしては横道にそれて壁に寄り掛り自身の唇にそっと触れる。
相手にとっては単なる戒めの口付け。そんな物にまで期待して兄の心まで踏み躙って自分はどれほど愚かなのかと…。
相手が身を削り苦悩しているとも知らず空虚なまま男に指定された場所へ向かって。
(指定の場所までもうすぐというところ突如腕を掴まれて振り返ると厳しい顔をした兄がおり強い剣幕に圧されて目を逸らし。
『どこ行ってたの?』
「……別に…」
『俺達付き合ってるんだよね?隠し事はなしだよ』
「…綸、俺…『繿のことは直ぐ忘れなくても良いよ。…とりあえず明後日帰ることにしたからその間は二人で観光楽しもう』
「………帰らない」
『…いいよ。無理にでも帰すから』
(兄の強い眼差しに罪悪感が募るも今は男の命令を無視する訳にはいかず「…御免」と謝り兄の手を振り払っては指定の場所まで走って。
(一方、相手が主犯格の男の元へ訪れる頃、男は丁度金を数えているところで相手の姿を見るなりニタリと笑んで。
『君が来てから大儲けだよ。軍人達もあの資産家も君にぞっこんだからね。今回ばかりはあの馬鹿な連中(ナンパ男)に感謝したい気分だ』
(データがハッキングされているとは知らず余裕の笑みを浮かべては金を金庫にしまって相手に近づき真新しい鞭傷に艶めかしく触れて『随分可愛がって貰ったみたいだね。…次はまた軍人のところね』と卑しく笑んで新しい“物”を押し渡して。
そして男は相手に背を向けデスクに戻ろうとするも『あーそうだ』と態とらしく声を上げてはくるりと振り返り。
『あの金持ちの所で“彼(自分)”とは会った?…彼ね、新しい遊びがしたいから仕事を紹介してほしいって自分から僕に頼み込んで来たんだ。君じゃ足りないって言ってたよ。今も物好きな男に遊んで貰ってるんじゃないかな』
(クスクスと不気味に笑いながら出鱈目を並べては相手の反応を楽しみ『ほらさっさと行きなよ。兄弟や友達に迷惑はかけたくないだろ?』と。
>露木
( 男の言葉にピタリと足を止めては僅かに震える唇をグッと噛み締め「誰があんたの言葉なんか信じるかよ」と呟き場を後にして。
物を隠し持ち早足で軍人達の元へと訪れては物を投げ渡し苛立ちを混ぜた表情で促されたソファーへと腰を下ろしては口角を上げる。
「は、あんた達とも“今日で最後”だからな。好きにしてくれよ」
( 見下す様な視線を向けながら軍人達の怒りを煽ってた所、携帯のバイブが鳴ってはハッキングが完了した事を物語っていて。
( その頃、男のパソコンや携帯からは自分の写真が次々と消えて行っていて。
代わりに外に漏らされたのは男が麻薬に手を付けて居たという事のみ。
焦りに駆られる男は直ぐに今宵の相手の枕相手をする者や軍人達へ連絡を入れて。
( 放送局やらに情報が流れてる頃、麻薬を買っていた軍人達も焦りを感じたのか英語で何か話していて。
『お前も同犯だからな!!!!!何せ薬を運んだんだ』
「脅迫されてやらされただけだ。…それに俺がやったという証拠はどこにもない」
『…っくそ!!!!!』
( 足早に軍人達の元を後にしては街中にパトカーのサイレンが鳴り響くのをぼんやりと見詰める。
自分が脅されてたという情報までは女カップル達も流さなかった様で青年達に説明し謝罪しなければと。
兄は誰よりも怒っていた、許されるとは思ってないし相手が兄を選ぶのなら応援しなければと。
携帯を取り出し兄へと連絡を入れては『………何の用事』と冷ややかな声が返って来て。
「………綸、あのさ」
『悪いけど口も聞きたくない。俺達明後日帰るから好きにすれば良いんじゃない??』
「…今までのは………」
『もう切るからね』
( ブツリと無機質な音と共に携帯を持つ手をダラリと下げては相手の姿を探し始めて。
>桐崎
(一件の邸宅、寝室にて男を何人か相手していると別室に居た男が青ざめた様子で入ってきては何やら英語で話して逃げるように去って行き。
何かあったのかと興味なさげにしていると覆い被さっていた男が急に乱暴になっては“男(主犯格)が捕まった” “時期に俺達も捕まるから今のうちに…”と英語で会話するのが聞こえるも殆ど聞き取れず与えられる痛みに耐え、遠くでサイレンの音を聞いたのを最後に意識を手放して。
(次に目を覚ましたのは警察の一室。ベッドの上に寝かされてご丁寧に点滴まで施されていては何が起きたのかと身を起こすと日本語の喋れる捜査官に今回の事の詳細を話される。
そこで漸く主犯格の男がしてきた悪行があかるみになりその関係者も捕まったことを知って。
一瞬安堵しかけるも未だ相手が自ら進んで“運び”をしたと勘違いしているため相手まで逮捕されたと蒼白になっては「…に、日本人は?銀髪で背が高いやつが居ただろ?」と掴みかかる勢いで尋ね。
捜査官が口を開きかけるも扉が開かれては兄が入ってきて、気を利かせたのか捜査官は出て行ってしまい扉がバタンと閉じたところで不意に頬を平手打ちされて。
『どんだけ心配したと思ってるの。何が別に何もないだよ。大有りじゃん。ばかじゃないの』
(軽く抱き締められ男達から解放された安心感から涙が溢れそうになるも、相手の事を思い出しては青ざめながら相手の居所を聞き。
『………さあ。警察が駆けつけた時には居なかったみたいだよ。上手く逃げたみたいだね』
「…そんな…、…本当に彼奴が……」
『それより菊が犯罪者(相手)の証拠隠滅のために人身売買してたことのが問題だよ。バレたら菊も捕まるよ』
(兄は女カップルから何も聞かされていないのか未だ勘違いをしてはどこかやりきれない様子で舌打ちする。
重たい空気が流れ気まずくなるも、今相手が見知らぬ土地で一人逃走していると思うと居ても立ってもいられなくなり点滴を乱暴に抜き取っては立ち上がり。
『ちょっと何処行く気?』
「……綸、…御免。俺…やっぱり彼奴のこと放おっておけない。……好きなんだ」
(まっすぐな瞳で告げては「…後でちゃんと埋め合わせはするから」と小さく呟き、相手が新たな犯罪に巻き込まれないためにも早く探しださねばと扉に手をかけて。
>露木
( 相手を探し街を走り回ってた所、ふと女カップルと出会しては咄嗟に腕を掴まれ『警察に貴方が脅されてた証拠を送り付けてやったわ、これで何とか助かった。………でも貴方のお兄さんと恋人さんの連絡先までは私も知らなくて………。きっとまだ誤解してるわ』と。
自分で誤解を解かなければならない事は分かってた、コクリと頷いては再び相手を探し始める。
汗をグイッと拭い警察署の前を通り掛かった所でばったりと相手に出会しては呼吸を整えつつ駆け寄る。
「……………ごめ、………どっから……話せば良いのか………」
( 眉を寄せやっと呼吸が整った所で相手を見詰め気不味そうに口を開く。
しかしその刹那、相手を追って出て来た兄が自分を見るなり目の色を変え相手から突き放す様に自分の肩をドンッと押して来て。
体制を崩し尻餅を付いては今更何を話せば良いのかと頭を悩ませる。
『何しに来た訳』
「……………話が…したくて」
『今更話す事なんてないから』
( 強い瞳でこちらを見下ろす兄と顔を合わせられずに居れば兄が捲し立てる様に怒りをぶつける。
『…第一さ、女遊びする為にこっちに来たんじゃないんだけど。どうせ菊の事も遊びだったんでしょ??…本当発情期の犬だよ。遊ばれてた女の人達もまさか相手した男が人間じゃないなんて………』
( 兄の表情が“しまった”という色に染まったのに気付いては冷たい汗が流れ顔を俯かせる。
兄にしてみれば本心では無くちょっとした嫌味をぶつけてやるつもりだっただけ。
“そんな酷い行為は人間のする事じゃない”という例えを別の言い方でしてしまった事に後悔しつつ『………ごめん、今のは………』と小さく呟く。
しかしそんな物は耳に入らず兄にさえも自分を否定されたのだと思い込んでは逃げる様に走り出して。
>桐崎
(警察署を出たところで相手と出会し切羽詰まった様子に話をちゃんと聞かねばと思うも兄に間に入られてしまえば押し黙るしかなく。
しかし兄の辛辣な言葉により走りだしてしまった相手に胸が痛んではこのままではいけないと後を追おうとするも一度兄に向き直り「きっとちゃんと話せば大丈夫だ。あんたの気持ち分かってくれるよ。……此処まで来てくれてありがとな」と言い残し相手の後を追って。
(夜の街、怠い身体に鞭を打って相手を探しまわり漸く相手の背中を見つけては駆け寄ろうとするも其の前に突如後ろの身体を引かれ路地裏に引きずり込まれ。
身体を羽交い締めにされ手で視界を覆われては突如耳元で何か囁かれて。
次の瞬間頭がぼーっとしては自分の中から相手を愛しいと想う気持ちが消えて行き徐々に深い恨みへと変わっていって。
気付けば自分一人で今起きたことすら覚えておらず、ただ相手を追わねばと足を動かす。
この時、自分を羽交い締めにしたのが能力者で、主犯格の男が捕まる腹いせで自分と相手の仲を裂くため手配したものだとは知らずに。
(深い催眠状態のまま再び相手を探し歩いては、前方に相手を見つけるなり後ろからその腕を掴んで振り向かせ暗く冷たい瞳で相手を見据えて。
「…人を散々裏切って説明もなしに逃げるんだな。……ほんと全部綸の言うとおりだよ。見境なくした発情期の犬だ。あんたみたいなのに惚れてた自分が恨めしいよ」
(冷ややかな声色で冷徹に述べては心の奥底でこんなことは言いたくないと拒絶するのに、あるはずのない憎悪は止まらず暗い瞳のまま相手を捉え。
「…昼間“愛してる”って言ったの、取り消すよ。…あーそうだ。ついでにあんたが“人間だ”って言ったのもなしにする。だって…あんたどこから見ても“化物”だし」
(薄気味悪く笑んでは相手の髪を軽く撫で上げ「嫌な色」と蔑み“本当人間離れしてる”と耳元で囁いては相手の肩を突き放すように押して。
「もう俺に気安く近づくな。別に構わないだろ?あんたに言い寄ってくる奴等はいくらでもいるし。俺もあんたより人間の綸のが気が合うしさ」
(心にもないことを並べ胸が軋むように痛むも能力には逆らえず嘲笑を零してはポケットから最後に相手した男に渡されたクラブの名刺を相手に投げ渡し「そこで遊んで貰えば?尻尾振れば可愛がって貰えるから。…あー、でも発情して本当に尻尾とか耳出さないようにしないとな。一発で避けられるから」と鼻で笑い、能力に抗えぬまま冷ややかに相手を見据えその場を去ろうと。
>露木
( 兄の言葉がグルグルと頭の中を周りやや放心状態でひたすら走ってた所、不意に背後から腕を掴まれては振り返る。
相手の姿に“追って来てくれたのだろうか”だなんて甘えた考えが浮かぶもその冷たい目線と言葉にそんな考えは打ち消されてしまって。
あんなに酷い事をしたのだ、相手が自分を嫌っていても仕方が無いのは百も承知。
しかし未練がましく去ろうとする相手の腕を掴んでしまっては震える唇を噛む。
「ごめん。…あんたを裏切った事に変わりは無い、………でも…そうしないとあんたが危険な目に合うって。………意味分からないよな、………でも俺はあんたを愛してるよ。信じて貰えなくても良い、本心だ」
( 真っ直ぐに見詰めどこから説明すれば良いのかの整理も付かず一番伝えたかった事だけを話す。
それが相手に掛けられた能力だという事も知らずにこれ以上相手から拒絶の言葉を聞くのが嫌で逃げ出す様に場を後にして。
( パーカーのフードをすっぽりと被り実はコンプレックスだった髪の色を隠しては町外れの治安の悪い地域のとあるホテルへと向かい一室借りる。
特にする事も無く、しかし一人でいるのも何となく嫌で青年へと電話を掛ける。
『兄さん!!!今どこに居るの??』
「……………ごめん、兎に角謝りたいから…今から街角のカフェ入るからそこ来てくれるか」
『うん、直ぐに行くから』
( 切れた音と共にホテルを後にし真っ直ぐにカフェへと向かっては青年にだけでも話をしようと。
( 真赤な髪を揺らして走って来る青年をぼんやりと見詰めては何気無くその赤髪に触れる。
『兄さんどうしてフード被ってるの??』なんて呑気に言うのをさり気なく流しては改めて今回の一件の話をし深く謝罪して。
『気にしないで、俺ちゃんと理解してたから。…それよりも露木と綸に説明しなきゃ』
「…あ-…それは大丈夫。赤城が分かってくれたなら…それで良いよ。後悪いけど赤城は綸と露木と先に帰ってくれるか??俺その次の便で帰るから」
『………どうして??まだなんかあるの??』
「無いよ、全部終わった。………綸と露木と顔合わせらんなくてさ、だからって赤城も俺といたらあいつら心配するだろ??」
『……………でも露木は、』
「もう良いから」
( 自嘲気味な笑みを浮かべては青年と別れ再び町外れのホテルへと戻る。
もうこの際兄の様な黒髪になれたらな、と考え染めてみようかと思うも生え際が銀なのは可笑しいかと。
部屋のベッドへ横たわり天井を見詰めては相手の艶のある髪や妖艶で切れ長の瞳を思い出す。
全て自分とは掛け離れた物。
___兄と並べば良く似合う二人、情けないなと考えつつ欠伸を漏らしては深く考えない様にして。
>桐崎
(相手から待ち望んでいたはずの言葉を告げられても心に響くことはなく冷たい眼差しで走り去る背中を見詰めては未練を感じること無くホテルへと足を向けて。
(ホテル入口に着くと兄が待っており相手のことを聞かれるも話したくないと適当にあしらいスタスタと部屋まで来て。
『…さっきまであんなに繿繿言ってたのにどうしたのさ』
「それはこっちのセリフだ。あんなに弟を嫌ってたじゃないか」
『そ、それは…、………繿と何かあったの?』
「さあ…。本当は俺を守るためで愛してるとか言ってたけど。あんな奴の言葉信用出来ないし。…それより明後日には帰国だろ?明日しかゆっくり観光出来ないし……、あ、そうだ。まだちゃんと星見てない。明日の夜見に行かないか?」
『え…でも繿と見に行く約束じゃ……』
「煩いな。彼奴の話するなよ」
(冷たく言い放っては訝しむ兄の首に腕を絡めては青年がいないのを良いことに自ら口付けベッドに誘い込んで。
「…綸、愛してる。……あんたは俺から離れるな。ずっと傍にいろ」
(甘い筈の言葉を感情のない瞳で述べては兄を抱き締め首筋に顔を埋める。
心が泣き叫び必死で“違う” “助けて”と抵抗するのに言葉にはならず意に反して兄を求め。
ただ身体に刻み込まれたトラウマだけは微かに反応し指先がほんの僅かに震えを見せていて。
(一方青年はトボトボとホテルの部屋に戻ってきたところで、偶然自分が兄を誘うのを目の当たりにしては相手を見捨て兄に乗り換えたと思い込み、相手の気も知らずにと怒りに震えて。
青年はすぐさま来た道を戻っては人づてに相手の泊まったホテルを探し出し、部屋に乗り込むなり相手に抱き付いて。
『兄さん…御免。やっぱり放おっておけなくて。俺、兄さんと帰るよ。綸と露木には留学した時の友達に会いに行くって言ってあるから大丈夫』
(小さく微笑み相手の銀髪を撫でては『兄さんの髪好きだな。隠したら勿体無い』と髪先を弄び、気を紛らわせるよう楽しい話をして。
『それにしても安いホテルだからかベッドも質素だなぁ。密着して寝ないとだね。っていうかこんな町外れのホテル一人で泊まろうとか本当危ないから。店の人でも窃盗するほど信用ならないんだよ』
(叱りつけるような口調で言ってはギュッと相手に抱きつき『俺は兄さんの傍離れないから。……あ、子供達への御土産まだ買ってないでしょ?明日見に行こう。あと腕組み必須ね、結局バンジー出来なくなったから』と兄と自分への怒りをひた隠して無邪気に笑い
>露木
( 戻って来た青年に寂しさを紛らわせられつつ穏やかな表情に何処と無く励まされる。
綸と相手を二人にしたく無かったと言うのもあるがやっぱり一番は顔を合わせられなかっただけ。
風呂や夕飯を終え青年と共にベッドに入っては、青年の気遣いからかずっと話をしていて。
やがて眠気が襲い小さく寝息を立てては青年に抱き着いたまま寝言で何度も相手の名を呼び。
( 翌日、観光最終日に青年と共に子供達の土産やらを購入し郵送して貰う。
青年が回りたいと言った所を中心に行くがやはり帽子だけは外せないと太めのヘアバンドのみならずその上からフードを被っていて。
お勧めの観光名所が載せられたパンフレット片手に次の場所へと向かってた所、正面から兄と仲良さ気に腕を組む相手の姿が見えては無意識に足が止まる。
兄と目が合い昨日の事を謝ろうと兄がこちらに足を向けるも相手と何か話をしてはこちらに来る事は無く。
『兄さん、行こう』
「……………」
『もう、ほら行くよ』
( 青年の言葉も耳に入らず、それでも相手が艶目かしく兄の隣に居るのに我慢が効かなくなってはズカズカとそちらへ駆け寄り相手の腕を取る。
諦められる筈なんて無い、そんなの自分でも分かってた事で。
「……………んで、…何で綸なんだよ」
( ボソリと呟き相手を見詰めるも青年がズカズカと駆け寄って来ては腕をグッと取られて。
しかしそんな事には構いもせずに「………髪が黒かったら………普通の瞳だったら俺を選んでくれた??………綸と変わらない存在だったら…」と無様な質問を投げ付ける。
『兄さんやめなって!!!』
( 青年の声が大きくなっては漸く我に返る。
先に相手を裏切ったのは自分、取り返しが付かなくなっても仕方無い事だった。
ダラリと手を下ろしては何も言わない兄を見詰め、どうせ兄も自分を見下してるのだろうと。
それからは何も言わずに青年にしっかりと繋がれた手を見詰めては相手と兄から立ち去って。
>桐崎
(相手の言葉に心の中で何度も首を横に振り声に出そうとするも其れを表に出すことは叶わず立ち去る相手を見送ることもせずに兄の手を取って相手とは反対方向に歩いて。
『…菊、どうしたの?…なんか、人が変わったみたい…』
「どうもしない。彼奴は俺を裏切ったんだ。冷たくして当然だろ。それとも女好きって分かってて俺に良いように使われろっていうのか?」
『そうは言ってないけど……』
「…なんだよ。昨日はあんなに彼奴を否定してた癖に」
『それは……』
「もう良いだろ。折角二人でいるんだから彼奴の話はやめにして観光しよう」
(感情を含まない声色で述べては戸惑う兄の腕を引き観光スポットを巡って。
(昼、自然公園内にあるテラスカフェにて兄と二人御茶をするも昨日から何故か食べ物は喉を通らず其れが能力を深く掛けやすくする物だとも気付かずきっと旅疲れだろうと軽く捉え手洗いに行くという兄を見送る。
紅茶を飲みながら広大な自然を無感情に眺めていては背後に嫌な気配を感じ振り返ろうとするも其の前に視界を塞がれ昨夜と同じように耳元で何か囁かれ頭がぼーっとして。
思考がはっきりする頃には何が起きたか覚えておらず、代わりに相手に対する激しい“殺意”が芽生えては暗い瞳で携帯を取り出す。
そして相手に《昨日は御免。俺どうかしてた。多分薬打たれて疲れてたんだと思う。…ちゃんと謝りたいから会ってくれないか? 旅行最後の夜、あんたと星がみたい》とメールを送り、能力によって植え込まれた知るはずのない森の場所を指定して。
丁度その時兄が手洗いから戻ってきては不自然なほど穏やかな微笑みを浮かべ何事もなかったかのよう振る舞い「…星見るの深夜でもいいよな?」と時間調整のため話を合わせて。
>露木
( 相手と別れた後、相手のあの冷ややかな視線と声色を思い出しては情けない表情を隠して。
これはとことん嫌われたなと客観的に思う自分と激しく落胆する自分も居ては自分の肩に頭を乗せる青年の髪に軽く触れて。
それからは青年の気遣いで色々な場所を回り心配を掛けない様にと振る舞うが相手が頭から離れず。
昼食を取ろうと一軒の喫茶店へと入れば青年と同じランチを頼み無意識にぼんやりとする。
『兄さん、兄さんってば!!!もうぼ-っとしちゃってさ。兄さんプチトマト嫌いだったよね、俺が食べて上げるね』
「ん、どうも」
『素っ気ないよ!!!あ-んってしてね』
( 緩く微笑みを浮かべては突如鳴り響いた受信音に携帯を見詰めるも相手の名前が出た瞬間飛び付く様に携帯を取り。
いきなり相手の心変わりがするなど有り得ない筈なのに都合の良いメールにまんまと騙される。
《別に気にしてない。…俺もあんたと話がしたい》
( 短い返事を打ち何処となく安心した様な表情になるのを青年が訝しげに見詰める。
『どうしたの??』
「別に」
『ふぅん…そうだ兄さん、夜一緒に出ない??町外れのビルの屋上から見る星が綺麗なんだって』
「あ-…そうだな。でも俺夜は用事があるから少し遅れるかもしんねぇ」
『良いよ-、兄さんの上着着て待ってる』
( ニコニコと微笑む青年と共に運ばれて来たランチのサラダに添えられたプチトマトを青年の更にポイポイと置く。
『あ-んは??』なんて問い掛けて来る青年に幾分穏やかになった笑顔を向けては青年の口にプチトマトを刺したフォークを入れて。
>桐崎
(約束の時間、初めての場所なのに足は自然と人気のない森に進み一本の大木に凭れ掛かって相手を待つ。
まだ空は薄明かりで木々の隙間から見える星々は疎ら。
もう少ししたらもっと綺麗に見えるのだろうと一瞬柔らかな微笑が零れるもガサリと草が揺れる音と共に相手が現れては表情を消して。
近づいてくる相手に“逃げろ”と叫ぶも言葉にならず言うことの利かなくなった身体は相手を切なげに見詰め優しく抱き締めて。
「…あんな酷いこと言ったのに来てくれてありがとう。……ほんと俺どうかしてた。あんたを信じなかった俺が悪いのに辛くあたって……御免な」
(声を震わせ謝罪しては少しだけ身を離して相手の頬を撫で、唇を奪うようにして顔を近づける。
が、次の瞬間相手を地面に押し倒しては馬乗りになり両手で相手の首を締め上げて。
「……嘘だよ。謝る訳ないだろ。あんたは絶対許さない」
(何も写さない真っ暗な瞳で相手を見下げ冷ややかに述べては喉元に爪を食い込ませ。
「あんたが生きてる限り俺は一生苦しむ。人外を愛して捨てられた惨めな思いをして……ずっと…。……だから消えてくれ。あんたが消えれば全部なかったことにできる」
(感情のない声色のまま冷酷な言葉を並べては通常では出せないような力で首を締め上げていき、苦痛に歪む表情を冷たく見据えて。
“消えろ”と低く呟きながら相手を愛する想いが泣き叫び涙を流していることは気付かずに。
>露木
( 待ち合わせの時間になり訪れた森、謝罪の言葉と共に優しく抱き締められてはそれに応える様に相手を抱き締め今回の事をちゃんと話そうと口を開く。
しかしその刹那、急に押し倒されたかと思えば強い力で首を締め上げられ必死に酸素を求める。
相手の手を離そうと弱々しく抵抗するが涙を流し苦痛の言葉を目にする相手を見た途端力が抜ける。
相手は一時でも自分を愛した事を悔いている、自分の浅はかな行動がここ迄相手を苦しめてしまったのかと眉を寄せては苦しさから生理的な涙が落ちて。
最早抵抗する力を無くした手はゆっくりと相手の頬に伸びその涙を拭う。
“ごめん、泣くな”と口を動かすも言葉にはならず段々と焦点が合わなくなって来てはそのまま意識を手放しガクリと手を落として。
( その頃、兄と青年はそれぞれ自分と相手との約束の場所に向かおうとしてたが街中でばったりと出会しては何処と無く気不味い雰囲気になり。
『赤城…これから何処行くの』
『俺は兄さんと星見に行くの。綸は露木と??』
『そう…だけど。…まだ来てなくてさ。菊が遅刻なんて珍しいな-って』
『兄さんの遅刻は毎回だから慣れたけど…確かに露木は遅刻する様なタイプじゃないもんね』
( 二人して頭を悩ませては兎に角それぞれ待ち合わせ場所へ向かおうと別れて。
>桐崎
(涙を流す相手を見てほんの一瞬催眠が解けかけるも直ぐに強い能力に侵されては、目を閉じ動かなくなった相手を何処か他人ごとのように見下げる。
力が抜け切り立てないはずの身体を能力が無理矢理突き動かしてはそのまま相手を放置して振り返ること無く森を出て。
(夜の街、フラフラとした足取りで何度も人にぶつかりながら歩いていると前方から兄が駆け寄ってきて自分の表情を見るなり息をのんで。
『菊、…泣いたの?………なにがあったのさ。…昨日から可笑しいよ』
「……………殺した」
『…え?』
「………あんたの弟、…殺してやった」
『ちょ…、笑えない冗談やめてよ』
「冗談じゃない。本当だ。……綸、邪魔者はいなくなったんだ。此れで何の悔いもなくあんたを愛せる。…あんたも嬉しいだろ?“重み”が無くなって。……なあ綸、あんたは俺を捨てずに愛してくれるよな?」
(催眠にかかり狂気じみた笑みを浮かべる自分に兄は絶句してやや後退るも直ぐ真剣な顔をしては自分から携帯を奪い取り相手に送ったメールから相手の居場所を突き止め。
『…菊…、本気じゃないって信じてるけど……もし、本当だったら……許さないから』
(微かな怒りと焦りの混じった表情をする兄が何故そんな顔をするのかも理解出来ず、青年に森の場所をメールしてすぐさま病院に電話するのを不思議そうに見詰め。
それから近くの安全なバーに押し込まれては『此処から絶対動かないで…』と強く言われ相手の元へ走り去って行くのを人事のように見る。
この時、自分の本心はショックから深い眠りに落ち能力によって作られた人格が完全に自分を支配していて。
(其の頃、青年と兄はすぐに合流して相手を見つけ出してはその蒼白な顔色に狼狽えながらも迅速な行動で相手を森の入口まで運び、呼んであった救急車である程度“事情”が誤魔化せて融通がきく病院に搬送して貰って治療が終わるのを待ち。
(薬品の香りが漂う病室、兄は青年から“事実”を聞いては言葉を失いベッドで目を閉じ力なく横たわる相手を泣きそうな顔で見詰め相手の手を握り何度も謝り。
『…今回は俺も騙されかけたから仕方ないよ。……それより本当に露木が…?』
『………分からない』
(兄は重たい声色で呟くと相手の髪を軽く撫でたあと『目が覚めたら連絡して。すぐ来るから』と言い残し病室を出て。
>露木
( 深い夢の中で見たのは幼少期の兄と自分の姿。
何時だって“普通”な兄が羨ましくてしょうがなく、それと反対に兄は自分の能力を欲しがっていて。
『繿は良いよね』と毎日の様に言う兄に怒りが沸きまだ幼い兄を殴り付け子供ながらに泣いたのを思い出しては暗闇の中で懐かしむ。
何時だったか、父の元に毎日の様に訪れる男性を箪笥の後ろから隠れ見てた所手招きをされてはおずおずとその男性の元へと駆け寄った覚えがある。
落ち着いた印象の何処と無く美しさを纏わせる男性、自分をジッと見詰めては口を開く。
『君より何歳か年上の子供が居るんだ、………母親に似て綺麗な顔をしててね。君と同じく能力を持ってる』
( 何故突然こんな事を話すのだろうかと思ったがその男性は不意に悲しそうな悔しそうな顔をしては“息子”とやらの話を止めて。
当時暴力的だった父に部屋に押し戻されてはその男性の“息子”が気になって。
自分と同じ“能力者”、ならば互いに痛みを分かち合えるのでは無いかなんて考えては「…会えるかな」と小さく呟いて。
( 段々と頭が覚醒すると共にうっすらと目を開けては本当に死んだのか、なんて考える。
しかし目前の青年の顔にハッとしてはまだ生きてる事実を突き付けられ複雑な気持ちになり。
『兄さん…良かった。やっぱ普通の薬は兄さんには強いみたいだね、効き目が直ぐに出るし。俺綸に知らせて来るね、露木も………』
「いい!!!……………止めろ」
『綸ならちゃんと事実を知ってるよ。兄さんが好きであんな事したんじゃ無いって…』
「でも………」
『心配してたから、ね??』
( 青年の優しい声色に落ち着きを取り戻すも無意識に腕を掴んでは「………露木には…会いたくない。………会わない様に仕向けてくれるか??」と。
恐怖心が合った訳では無いが自分が居れば相手はまた苦しんでしまう。
自分という存在に汚され騙された事を責めてしまう。
頷いた青年に安心した様に息を付いてはベッドへ身体を預け瞳を閉じて。
(/お久し振りの本体失礼します…!!!
今回さらっと菊君のお父様(…と、思しき人)を勝手に登場させてしまいました(汗)
イメージとか口調とか違いましたらバンバン言って下さいませ!!!
いつもお付き合い感謝です、素敵なロルと展開に携帯片手にいつもニヤニヤしてます←変態
>桐崎
(バーにてマスターに出される酒を少しずつ飲み大人しく兄を待っていては、暫くして現れた兄にその気持ちも知らず小さく微笑んでは隣に座るよう手招きして。
『……呑んでたんだ。…よく、呑めるよね』
「……?…あ、綸も呑むか?やっと二人きりになれたし…___」
(ゆっくり呑もうと続けようとするも兄に両手を取られてはきつく睨みつけられるも何故そんな顔をするのかと眉を寄せ。
「…痛いんだけど」
『菊、この手で何したか分かってるの?』
「…………人殺し?あー、正確には人じゃないか」
『…………繿は生きてるよ』
(兄の低く冷たい声色にピクリと反応しては無感情に兄を見詰めゆっくりと酒の入ったグラスに視線を戻す。
瞬間、激しい頭痛に襲われ額を押さえるも痛みは直ぐに引いて代わりに自分の中に黒い感情が蠢くのが分かって。
「…じゃあ、“消さないと”」
(兄の背筋が凍るほど薄気味悪い笑みを浮かべてはフラリと立ち上がり「どこの病院?」と当然のように兄に尋ねるも、応えが返ってくるはずもなく。
「…教えてくれないか。まあいい…、あんたの記憶に聞くまでだ」
(小さく笑んでは滅多に解放しない能力を使って兄の記憶を読み相手の居所を掴む。
そして少しの間兄がぼーっとする隙にバーを飛び出してはタクシーを使って相手の居る病院に向かい、到着するなり医者たちの制止も聞かずに病室の扉を開け放って。
驚いた青年が何かを察して自分の前に立ち塞がるも催眠によって相手を殺すことだけを目的とした身体は正常な判断力も慈悲も失い容赦なく青年を壁に突き飛ばし。
間を置かず目を覚ましかける相手の首を捉えようとするも寸でのところで追いかけてきた兄に止められ手刀を落とされては意識を手放して。
『……赤城、大丈夫?』
『う、…うん。……露木……ちょっと異常じゃない?』
『…………赤城。…俺と露木は朝一の便で帰るよ。……気は進まないけど木ノ宮の精神科病棟で看て貰おうと思う。……ごめんけど繿をお願いね』
(青年は黙って頷いては流石にこの騒ぎでは相手が起きるだろうと目を開ける前に兄と自分を室外へ出し『…兄さん、露木とは顔合わせたくないって…』と相手の気持ちを兄に伝えて病室に戻って。
(/此方こそいつもお相手頂き有難うございます!今回も展開とロルが荒ぶってます←
菊の過去については全然考えてなかった(←)ので大丈夫ですよ!
菊パパらしき人出して頂き嬉しいです。じゃんじゃん出してくださいませ。
また何か思いついたら設定上乗せしていくかもなのでよろしくお願いします_(._.)_
そして幼児繿君を妄想して鼻血出したのは内緒←
>露木
( 翌日、目を覚ましては青年が心配そうに自分の荷物と青年の荷物を持ってるのに気付いては身体を起こし青年から荷物を受け取る。
今日が帰国日なのは覚えてた為のそのそと身支度を済ませては病院を後にする。
『日本に戻ったら病院手配するからゆっくり休もう』
「いや、いいよ。…疲れたし寮に戻る。ごめんな、折角の旅行台無しにして」
『それは兄さんの所為じゃないでしょ』
「…………………………」
( 飛行機の中、手を取って来た青年に目を向ける事も無く「露木にも謝んないとなんだけど、…彼奴俺が居ると困るからな」なんて苦笑を漏らす。
まだ休みは続く、相手は寮に居る訳では無いし気を付ければ暫く顔を合わせる事も無いだろうと。
( 日本に到着するなり若頭のリムジンで病院へと訪れては相手の力を弱めるべく鎮静剤を打ち診察室の中へと連れ込んでは医師と若頭も共に相手を座らせて。
『菊お帰り。さて…話は綸に聞いたけどさ、ちょっと話聞かせてね』
( ニッコリと普段の笑顔を相手に向けては続いて白衣を来た長身の医師に委ねる。
眼鏡を上げペンを片手に相手を真っ直ぐに見詰めては精神科医特有の人を安心させる様な笑顔を向けて。
『何か辛い事とか合ったんですよね、そうでなければ人の心境などそう簡単に変わらない』
( 若頭が精神科医に自分の写真を手渡しては精神科医は相手の目前に自分の写真を置いて。
その表情の変化を見抜きつつ再び口角を上げ微笑めば『彼、自殺しましたよ。今朝あっちの病院で見付かって今遺族の元へ運ばれてます』と。
口裏合わせは既に兄にも回しており青年にもメールで伝えて有るので特に平然としてたがそれでは怪しまれるかと兄が態とらしく頭をが抱えて。
>桐崎
(帰国するなり訳も分からず精神科に連れられては微笑みを浮かべる医師を胡散臭そうに見詰める。
が、相手の写真を見せられ告げられた“事実”に衝撃を受けてはドクンと胸が脈打ち正気に戻ったように青ざめる。
“自殺”という言葉が脳裏を巡り、相手が学校の屋上から落ちる姿がフラッシュバックしては再び激しい頭痛に襲われクシャリと前髪を掴んで。
「…なんで……自殺なんて…、俺が……殺そうとしたから?……でも、俺なんて彼奴にとってどうでも良い筈……」
(僅かに上る息遣いで声を震わせては相手を“殺す”目的を失い催眠が解けかかるも、能力を打ち破ることは叶わず暗い瞳に戻っていき。
「……そっか…、彼奴死んだんだ。…で、綸はお通夜行かなくていいのか?優希も。…あー、もしかして人外にはお通夜も葬式も必要ないとか?」
(冷嘲を浮かべ最低な言葉を並べても心は何も感じず机の上に置かれる相手の写真に視線を落としては「あっけなかったな」と鼻で笑う。
しかし次の瞬間写真の上にポタリポタリを落ちる雫に目を見開いて。
拭っても拭っても目元から零れ落ちる其れに訳がわからないと歪んだ笑いを浮かべては、やってられないと席を立ち「…用はそれだけか?…だったら早く帰してくれ。……精神科は嫌いなんだ」と扉に手を掛ける。
過去に能力の使いすぎで記憶の乱れから自制心を失いベッドに貼り付けにされたことを思い出してはいち早くこの薬品臭い部屋から逃げ出したいと。
未だに溢れてくる涙を無視してはその場を去ろうとするもフと思い留まるよう足を止め。
「……あー、でも最後に彼奴の顔見ておきたいな。まあ当人を殺ろうとした殺人未遂犯なんて歓迎されないだろうけど…嫌がらせってことで。…綸は俺に付き合ってくれるよな?」
(まるで人が違う笑みを浮かべては『待ちなさい』と声を上げる精神科医に見向きもせず相手の実家へ足をすすめようとして。
>露木
( 病院を後にする相手を追い掛け手を掴んだ兄は相手をジッと見詰め腕に力を込める。
慌てて追い掛けて来た若頭が表情を困らせながら、それでも自分の首を絞めた程の力が相手にある事を思い出しては相手の額に手を翳し男よりは幾分非力な女に姿を変えさせようとして。
『…あ、あれ??何か…上手く掛からないな』
( 何度試しても変わらない様子に眉を寄せてはと兎に角相手を自分に近付けない様にしなければと。
そこで帰国した青年が兄と連絡を取り合いつつも漸く出会しては相手の元へと駆け寄る。
『兄さん、露木には会いたくないって言ってた。………約束したからそれはちゃんと守らないと』
( 悲しむ演技を続け相手の前に立ちはだかっては実家へは行かせないと言い張り。
若頭は相手の様子に疑問を持ちながら兎に角自分に話を聞こうとさり気なくその場を後にして。
( その頃、先刻幾ら寮に戻ると言っても青年は聞いてくれず結局学校近くの病院へと置いて行かれては《絶対病院の外には出ないでね》とメールが来て青年はどこかへと行ってしまい。
小さく文句を言いつつパーカーのフードをすっぽりと被っては最早それは癖となっていて。
ノック音と共に息を切らしながら扉を開ける若頭に気付き病室の扉を開けては「どうした??」と。
『露木と…露木と何が合ったの』
( “心配で仕方が無い”とでも言う様な表情に自分のした事が重く伸し掛る。
包み隠さず全てを話した所で若頭は何も言わずに俯くだけで。
『“桐崎は死んだ”って言ったの』
「へぇ、喜んでた??」
『どうなのかな…言葉は喜んでる風だったけど………泣いてた』
「別に俺が死んだから泣いてるとかそんなんじゃ無いと思う。………ま、元に生きてるけどな」
( 軽い様子で上記を言えばそれ以上自分を誤魔化せず「ごめん、煙草吸いたい」と言い訳をしては病院の屋上へと向かいポケットの煙草に手を伸ばして。
(/続け様の本体失礼します←
菊パパのお父様の件了解しました(´∀`)
どんどん上乗せした下さいませ-
そしてそしてまた設定を追加して申し訳無いのですが…既に能力が掛かってる者への能力はかかりづらいと言う設定を勝手に出してしまいました(汗)
今回は男に能力を掛けられた菊君に若頭さんの能力がかかりづらい…って感じです←
もう意味分かんなくてごめんなさい!!!(´;ω;`)←
>桐崎
(既に涙の乾いた目で兄達を見返しては相当相手に会わせたくない様子にまあ当然かと「じゃあいいや」と軽く述べ自分のアパートへと足を進める。
感情や態度が点々とする自分に兄は戸惑うも目を離すわけにはいかないため青年と若頭に相手を頼むと自分の後を追って。
(アパートにて追ってきた兄を拒むでもなく中に招き入れ御茶を入れるもそれ以上は構わずに携帯で旅行の写真を見返しては機内で撮った相手の写真を見つけスライドする手を止める。
愛おしい感情が芽生えるのは一瞬のこと。
すぐに黒い感情が湧き上がっては「…この時は可愛かったにな」と冷たく笑み画面の中の相手を指で弾いて。
それを見ていた兄は困惑気味に眉を寄せては隣に近づいてきて携帯のストラップに振れて。
『これ、まだつけてるんだね』
「…ああ…、なんとなくだよ。気に入らないなら外すけど」
『いや、そのままでいいよ。……………ねぇ、菊。誰かに何か言われたりされたりしなかった?』
「………?」
(兄の真剣な眼差しに旅行中の事を思い出すも記憶全体に靄が掛かったように何もかもがあやふやで考えれば考えるほど相手への恨みの情が深くなり「別に、彼奴に裏切られたくらい」と冷たく吐き捨てるよう述べては立ち上がって。
『ちょっと、何処行くの?』
「バイト。…さっき店長から連絡あったから」
『ダメだよ。いろいろあったし今はゆっくり休みな』
「店長に逆らうと面倒だから。………心配してくれてありがとな。それより、綸あんたは弟の通夜に出ないと」
(扉に手をかけ恐ろしいほど感情のない穏やかな微笑みを浮かべてはバイトに出かけて。
(其の頃病院の屋上、相手よりも先客がおり少し傷んだ藍色の髪を持つ男は疲れたスーツを着ていて芳しくない表情で下界の景色を眺めていて。
そして背後から相手の足音を聞いては振り返り、その姿を見た瞬間小さく目を見開き『……繿君?』と風の音でかき消されそうなほど小さな声で呟き。
しかし男は何も知らぬ振りをして相手に微笑を向けては『こんにちは』と挨拶し、相手が手に持つ煙草に目を向けては『……未成年なのに身体に良くないよ。お父さんの影響かな』と相手の年齢を知らない筈なのに優しく諭すよう喫煙を注意して。
『…君は何で此処に?どこか具合が悪いのかな?』
(気の弱い、それでも至極優しい微笑を浮かべ問うも『ああ御免。“初対面”なのに失礼だったね』と苦笑を浮かべ後頭部をかいて。
『僕はね。この病院に“心臓病”に良く効く薬があるって聞いて来たんだ。あ、心臓病なのは僕じゃなく娘なんだけど。……今更こんなことしても息子は許してくれないだろうけど…』
(唐突に自分のことを喋ってしまっては男はハッとなって『御免、廃れたおじさんの話聞かされても困るよな』とまた苦笑しては、ジーッと相手の紅い瞳を見詰め。
“こんなに立派に育って…”と穏やかに微笑みフードの上から相手の頭を撫で『本当にきれいな瞳をしてる。“あの時”と変わらない』と無意識のうち呟いて。
『じゃあ邪魔なおじさんはこの辺で失礼するよ。……煙草のことは黙っておいてあげるね』
(小さく微笑み相手に背を向けてはその場を立ち去るもその時、幼少期自分が上げたハンカチを落としたままということに気付かずに。
(/能力の件了解です!
いえいえいえいえ!!意味不なのはこちらのほうなので謝らないでくださいまし!
いつもほんと乱れロル&展開にお付き合いくださり光栄です。
今回も菊君がご乱心しておりますがもう暫く能力に掛かって酷い子&きちがいになると思います。
そして菊パパ登場です。
今の時点で菊パパは菊と繿君の接点や何があったかは知らない設定ですが変えて頂いても大丈夫ですbb
菊パパは家族や周囲の人に迷惑をかけないため姿を隠していたけど、今回ナツの病気に効く薬があると人伝てに聞いて偶々病院にいたという感じです。
そこで繿君を一目見て惚れ……((
ってのはさておき(殴)多分繿君は“能力者”の子としての興味もありますが純粋に息子のように愛でると思いますのでよろしくお願いします。
無駄に長くなってすみません_(._.)_
>露木
( 屋上にて、年齢を感じさせない印象の顔立ちと優しい声色に注意された煙草を慌てて消す。
何処と無く自分を知ってる様子の男性、しかし何と無く見た事は有る気がするのに思い出せず頭を悩ませながら男性を遠慮がちに見詰めて。
無意識に紡がれた言葉に「………綺麗なんかじゃ無い、………こんなの…気持ち悪い」と無意識に呟くも自分を知ってる事を確信させる様な物言いにハッとする。
しかし既に男性は去って行ってしまい代わりに男性が置き忘れて行ったハンカチを拾い上げて。
( 病院へと戻り自分の様子を見に来た看護婦に何気無く心臓病に関しての薬の話を問い掛ける。
『有る事は“合った”のよね。…でも無くなっちゃって…今海外から取り寄せてるの。今日来た男の人…その薬を早く手に入れたいって言っててね。自分で海外に受け取りに行くって言ってたんだけど医師免許が無いと受け取れないから手配を急ぐから待っててくれって先生がお願いしてたのよ。子供思いで素敵な方よね』
( 微笑む看護婦をぼんやりと見詰めては再び病室に一人になり溜息を漏らす。
ベッドへドサリと身体を預け“こんな能力さえ無ければ髪の色素だって瞳だって普通だったのに”と。
( 結局兄はジッとしてられずに相手のバイト先へ向かおうとするも大学の教授に足止めをくらってはバイト先まで行く事は出来ずに居て。
段々と苛々して来ては『教授、申し訳無いんですが俺急いでまして…』と珍しく強い口調で断って。
(/菊パパさんの設定了解しました(`・ω・´)ゞ
菊パパさんとのしがらみや当時の繿パパとの良くない絡みからの厚生など色々出しちゃう予定ですがもう本当に意味分からんロルになりそうで申し訳無いです。
菊君本体様の素敵な文章力下さ((黙
菊君とのシリアスな感じもう堪りません…(つω`*)
こういう感じの雰囲気大好物なので興奮です←変態
>桐崎
(バイト先にて相手が死んだと聞かされたにも関わらず表面上はいつもと変わりなく淡々と職務をこなす。
自分が自分で無くなっていく感覚に疑問すら抱くことも出来ず休憩に入るも直ぐに店頭から店員を呼ぶベルが鳴っては他のバイトは何をしてるんだと毒吐きつつレジに出る。
と、そこには忘れるはずのない男、父が立っており目を見開く。
過去、この男の金儲けの為に自分の能力を無理矢理使わされ一度多くのものを失った。
何故この街に…と真実を何も知らぬまま同じように動揺する父を見据えて。
『あ……菊、…偶然…「…どちら様ですか?人違いでは。…それで何か御用でしたか?」
『え、あ…そうだね。人違いだった。……そうそうこの近くに交番はないかな。落し物してしまって』
(あははと空笑いをする父が身の上状周囲に自分が家族と知られてはいけないと機転を利かせているとも知らず、他人行儀で冷たくあたっては黙って周辺地図を渡し「此処です。どうぞお持ち帰りください」と湧き上がる怒りや吐き気を抑えて無表情に述べて。
『あ、…ありがとう』
(すっかり垢抜けた父にあの時は散々自分を利用した癖にと軽く睨みさっさとバックルームに戻ろうとするも、兄の姿が見えてはそちらへ足を向け。
「わざわざ来たのかよ。疑い深いな」
『だって…。……なにか思い出した?……ってあの人知り合い?すっごいこっち見て話したそうにしてるけど』
「……知らない」
『っていうかあの人……』
(兄が店を出て行く父を目で追い小さく首を傾げるのには気付かず、乱れた心を整えるよう兄の腕を取って此方を向かせ「今日あんたの部屋行ってもいい?」と誘い。
『いや…でも寮はなぁ……』
「……忙しい、よな。じゃあいい。一人で帰るよ」
『い、いいよ!来なよ。うん』
(相手と鉢合うことを懸念して引きつった笑いをする兄を怪訝そうに見つつ「じゃあバイト終わりに」とまるで恋人に向けるような微笑みを浮かべバッグルームへと戻って。
そんな自分の背を見送り兄は『まあ…繿を病院から出さなければいいし大学寮だから大丈夫だよね』と少し疲れたように溜息を吐いて。
(其の頃、青年は相手の着替などを持って病室に訪れており何か思い悩む相手を心配しながらプリンを差し出し『あまり悩むと禿げるよ』なんて冗談を言いながら相手に無理をさせてはいけないと傍で見張っていて。
(/わかります。シリアスたまりませんよね←
二次元等に限り好きな子ほど苦悩する姿を見るとキュンとしま((
繿パパの登場も楽しみにしてますね。
ではではまた近いうち本体がおじゃまさせて頂くかもですがよろしくお願いします(*^^*)
>露木
( 青年がずっと病室に来てくれては居た物のやはり病院とは落ち着かない物で。
“帰りたい”と青年に何度も打ち明けるも青年は首を縦には振ってくれず不貞腐れては顔を背ける。
『兄さんまだ身体辛いでしょ、まだ駄目』
「もう平気。…自室が駄目ならあんたの部屋入れて」
『………今頷きかけちゃったじゃん。兄さんの容態が良くなったら何時でも入れて上げるよ』
「だから…もう平気っつってんじゃん」
( 溜息を付きぼんやりと薄暗がりの空を見詰めてはベッドへドサリと身体を預け天井を見詰めて。
『兄さんさ、…痩せた??………最近菊もいきなり痩せ「彼奴の話はしないで欲しい」』
『………ごめん』
「いいよ。それより赤城、お前もそろそろ戻れよ。毎日来てくれなくてもいい。…ちゃんと退院って言われるまで居るから」
『でも…兄さん一人嫌いじゃん、俺………』
「気遣いありがとな」
( 青年を髪をわしゃわしゃと撫で病室の出口まで見送っては煙草を片手に屋上へと来て。
( そこには先日会った藍色の髪の男性がおり、本人も自分を見た途端“落し物を探す”という目的を忘れ自分へと駆け寄って来て。
自分をハンカチの事をすっかりと忘れており軽く頭を下げては目前に立つ男性を見詰める。
『また会ったね、まだ入院してるの??』
「まぁ。…もう平気なんすけど」
( 煙草をしまい込み空を見てた所で男性が自分の首筋の煙草の火傷痕を見詰め悲しそうな表情をする。
『お父さんの…だよね』
「…もう、良いんです。ちゃんと分かり会えたし、………父さんの気持ちも分かったから。今は割と普通に接してますよ、変わらずあの人不器用過ぎますけど」
『…お父さんと??………そうか、良かった…本当に』
「知ってるんですか??」
『あ、…いや…ごめん。知らないよ、じゃあそろそろ行くね。探し物してたんだ、大切な物でね』
( 去って行く後ろ姿を見送ってはその暫く後にハンカチの事を思い出して深く落ち込んではまた次の機会にでも返そうと。
ジャージとパーカーという私服のまま近くのコンビニに訪れては特にする事も無く病室での暇を持て余す為に本を買おうとして。
>桐崎
(バイト終わり、此処最近食欲がめっきりなくなった自分に兄が飲み物だけでもとコンビニで栄養ドリンク等を購入する。
兄がミキサーにかける野菜等を購入する間、ふと新発売と記されたコーヒーゼリーに目がいっては“相手が好きだったな”と何となく手に取り会計をする兄の元へいきレジ台の上に置いて。
兄が何か言いかけるがそのまま会計を済ませコンビニを後にしようとしたところフと雑誌コーナーにフードを深く被った見覚えのある姿が目に止まりもっと見たいと足が前に出るも兄に立ちふさがれ『き、菊。はやく行こう』と視界を遮るよう外へ押し出される。
いきなりなんだと不満そうにするが“フードの男”の事は既に頭に無く、兄に「…寒い」と自ら身体を密着させては兄が相手の方を横目で見て『…あんな疲れた顔して…何してんだよ』と眉を下げるのには気付かずに。
(兄の部屋にて買ったドリンクをちまちま飲んではさっさとシャワーを浴びて兄の服を借りベッドに潜り込むも、ベッド脇の台に相手のパーカーを見つけては手を伸ばして。
「…これ…」
『あー…、旅行前に赤城がこの部屋泊まった時に置いていったやつ。まだ返してなかったんだ』
「……まだってもう返せないだろ?彼奴は死んだんだから」
(当然のように言うと兄は微かに唇を噛み締め『シャワー浴びてくるね』と浴室に姿を消してしまい退屈だなとベッドに横になる。
その内、眠気が襲ってきては相手のパーカーを握ったままウトウトと眠りに落ちて。
(夢の中、まだ10歳にもならない自分が当時大好きだった父に妹と一緒になって抱き着いては「幼稚園で作ったんだよー」『あたし達がお花つけたんだよね。菊がお父さんにであたしはお母さんに!!』とワッペンを貼り付けたハンカチを渡していて。
__お人好しな父はいつも誰かしらに頭を下げていたが絶えず笑顔で優しい父は自慢だった。
そんな父から笑顔が消え、自分に手を上げたのは一度きり。
毎日のように見知らぬ男達の記憶を消したり操作したりするのが嫌で反抗した時、意識を失い数ヶ月痣が残るほど強く殴られた。
本気で殴られたのはその一度だけだったがまだ少年だった自分に恐怖を植え付けるには充分で結局自分の記憶が飛ぶまで父に従った…。
__大好きな父を失いたくない…そう思った時、何故か相手の顔が浮かんでは無意識のうち相手のパーカーを抱き締め「…繿」と涙を流し。
>露木
( 翌日、駄目だと言い張る青年に反抗し“寮に戻る”と言い張っては掴まれる腕を振り払う。
何故こうも寮に戻してくれないのかと苛立ちさえ走り“戻してくれないのなら本当に死ぬ”なんて下らない脅しを掛けては漸く青年は首を縦に振ってくれて。
相手の目に触れない様に兄と連絡を取り合う青年を心の片隅で気にしながら寮へと到着し。
自室へ閉じ篭りまだ相手が居た時のマグカップや相手の衣服に眉を寄せる。
バイト先には“事故に合って入院している”と青年が口を回してくれたらしく。
ベッドへ座りぼんやりとしてた所で再び青年が勝手に部屋に入って来ては『気分転換に出掛けようか』と。
「いいよ、出て欲しく無いんだろ」
『いやでもやっぱ閉じ篭るのは良くないかな-って。そこで俺の彼女役って事で木ノ宮に…』
「嫌だ」
『……………だよね、分かってる。変装してなら出ても良いって綸から連絡来たんだよ』
「…俺が死んだ事になってるから??」
『別に…そんなんじゃ………。兎に角、引き篭もりは身体にも良くないしね。兄さんカラーコンタクト入れられるよね??…髪は…はい、黒髪スプレー』
「何でそこまでしなきゃなんだよ」
( ブスッとしたままそっぽを向くが青年がここまで気に掛けてくれてるのに尚も断るのは悪い気がして。
だけど偽った姿で誰も本当の自分には目を向けてくれないのかと悲観的になれば青年の手を軽く押し首を横に振る。
「見付からない様にするからさ、変装はしたくない」
( 微妙な顔をする青年の頭をポンポンと撫でては大きめのフレームの伊達眼鏡を装着しキャップを深く被った上にパーカーのフードを被っては青年と共に久し振りの街へと足を向けて。
>桐崎
(翌日目を覚ますと椅子に座って眠る兄の姿が目に入り自分がベッドを独占してしまったのかと申し訳なくなる。
いつもは嫌でも引っ付いてくる癖にと眉を寄せつつ朝の身支度を済ませては兄が用意してくれた服に袖を通してまだ寝息をたてる兄に顔を近づけ。
こうして眠っていると本当に相手にそっくりで、知らずのうちに兄の頬に手を伸ばしては唇に口付けようとするも寸でのところで身を引く。
兄が傍にいてくれる、なのに何故こんなにも空虚で胸が痛いのか。
昨日までは相手を思っても何とも無かったのに…。
それが能力の効果が段々薄れているからだとは知らず、ただ変な夢を見たからだと軽く考えては口煩い兄が起きる前に一人街へと出て。
(人気の少ない住宅街、子供たちが公園ではしゃぐ声を聞きながら目的もなくブラついては何となく自分の能力の事を考える。
緊急を要する場合にしか使わなくなった能力。
黙っていればただの“人間”で居られる。が、どんなに隠そうと“普通”ではない。
散々相手を“人間だ”だの“人間じゃない”だの認めたり愚弄したりを繰り返してきたがそんな事言える立場ではなかったなと自嘲の笑みを漏らす。
こんな悲観的になるのも突如現れた父の所為だと八つ当たっては足元の小石を軽く蹴り飛ばす。
その時、後方からはしゃいでいた筈の少年の泣き声が聞こえ振り返ってみれば質の悪いチンピラ達に『糞餓鬼が!』と絡まれていて。
どうやら偶々公園でたむろしていたチンピラに少年が投げたボールがあたってスーツが汚れてしまい、それにキレているようで。
少年達はまだ小学校低学年。どんだけ大人げないというか餓鬼なんだと呆れつつ迷わず引き返してそちらに向かっては少年達を背に男達との間に割って入り「もう大丈夫だから気をつけておうちに帰りな」と泣きべそをかく少年達に笑顔を向けその場を立ち去らせ。
『勝手なことしてんじゃねえよ。それともてめぇスーツ弁償できんのか?』
「…………」
(いちゃもんをつけてくるチンピラに内心“何行ってんだ此奴…”と馬鹿にしつつ、人数的にも大事にはしたくなかったため財布から数枚万札を出すとチンピラの手を取って渡し「クリーニング代、これで足りますよね」と一言言い残しさっさとその場を去ろうとして。
>露木
( チンピラ達は相手の大人な対応が気に食わず去ろうとする相手の腕を掴めば無理矢理こちらに向かせて。
青筋を立てながら相手を舐める様に見詰め『お前俺の事馬鹿にしてんだろ??ちょっくら顔貸せよ』と数人掛かりで無理矢理相手を連行しようとして。
( 青年と街に来た物の特にする事も無く適当な菓子類を買い孤児院へ向かおうと。
孤児院への道を歩きながらした所でわんわんと泣き喚く孤児院の小学生に背後から抱き着かれる。
変装をしてても少年には分かったらしく少年の目線迄屈んでは伊達眼鏡を外して。
「どうした、何で泣いてんの」
『ゆ…遊園地に…一緒に行ったお兄ちゃんが、ね。…悪い…悪い人に捕まっちゃってね………』
「遊園地に一緒に行ったお兄ちゃん??」
『き………菊、お兄ちゃんが………』
( 相手の名前を聞いた途端サッと青ざめては直ぐに走り出そうとするも青年に引き止められる。
強く睨み付け無理矢理腕を振り払うも再び腕を取られては隠し持ってた黒髪スプレーを不意に掛けられ。
上手く髪に揉み込まれ馴染まされては『まぁ兄さんってのは直ぐに分かっちゃうと思うけどさ。…どうせ行くなって言っても行くんでしょ??』と。
再び伊達眼鏡を掛けては「良く分かってる」と小さく微笑み少年に案内して貰い。
( 公園の端の公衆トイレにて、相手を二人掛かり押さえ込み一人が相手の腹部に拳を入れては『俺の事馬鹿にした事謝れよ、土下座しろ』と何とも自分勝手な意味の分からない事を言っていて。
公園に到着するなり直ぐに暴言の響くトイレに目が言っては少年を先に帰らせる。
ズカズカとトイレへ足を向けフードを深く被ったまま相手を取り囲む三人を冷たく見詰めてはバレない様にと声を発する事も無く、三人の中の一人を掴み上げては殴り付ける。
“割と喧嘩は慣れてるんだ”と男の耳元で小さく囁いては続いて二人目の男の胸倉を掴み上げて。
>桐崎
(公衆トイレにて横暴な振る舞いを受けてはだから“不良”は嫌いなんだと腹部を押さえながら暗い瞳で男達を見据えつつ逆らっては更に面倒になるため頭を下げようとする。
が、その前に颯爽と“フードの男”が現れてはたちまち二人のチンピラを震え上がらせて。それでも懲りずに『なんだお前!邪魔すんな!』と相手に二人で殴り掛かるのが見えては咄嗟に警察に電話する振りをしてチンピラ達を退散させ。
漸く煩い連中から解放されホッと息を吐いては服の砂埃を払いながら立ち上がり、立ち去ろうとする“フード男”の腕を咄嗟に掴む。
顔は殆ど隠れて見えないがどこか知っている雰囲気に胸がざわついてはジーと見詰め僅かに見える黒髪に「…綸?」と呟くも、だったら顔を隠すこともないし別人かと。
そりゃあチンピラに絡まれてる奴に顔バレなんてしたくないだろうと馬鹿な勘違いをしてはとりあえず礼を言わねばと掴んでいた手を離して。
「その、助かった…。ありがとな。…それにしても赤の他人助けるなんてあんた変わってるな。俺の知ってる奴にも似たような奴が………」
(そこまで言ってズキリと頭が痛んでは額を押さえるも直ぐに痛みは引いて小さく息を吐き「悪い、何でもない。……あ、怪我なかったか?出来れば礼させて欲しいんだけど。…お金渡すのもなんだから何かおごるとか…」
(相手は自殺したと思い込んでいるため、まさか目の前の“フード男”が相手とは思わず喋り続けるも、ずっと胸騒ぎがするのは確かで何故か“離れたくない”と思い。
様子を窺うようにジーと見るもやはりフードの下の表情は殆ど見えず少し覗きこむようにして相手を見ては「……それ、前見えてる?……もしかして人見知りとか?」と尋ねながら顔が見たい衝動を抑えきれずフードに手を伸ばそうとして。
>露木
( 相手に気付かれる前にさっさと退散しようとした所、突然腕を掴み取られては顔を逸して。
相手の口から一番最初に出た名前が兄の名前だったのにやはり相手の一番の存在は兄なのかと悲観的な解釈をしてしまい僅かに唇を噛み締める。
義理堅い相手の事、要らないと言っても礼をすると言い張るのだろうなと思えば小さく溜息を付く。
声を出してしまえばバレるだろうしと頭を悩ませてた所、不意に伸びて来た相手の手を瞬時の早さで掴み取れば“危なかった”と。
自分の携帯を取り出しメモ帳を開いては《生まれつき喋れないんだ》と文字を打って。
しかしそこまでした所で相手は自分の携帯を見ていたでは無いかと慌てるが表情に出さない様にフードを深く被ったまま落ちかかった眼鏡を上げる。
下を向いたまま一歩後ずさってはそのまま一歩一歩と後ろへ歩を進め逃げる様に走り出しては道の途中で青年と落ち合いバレなかった事を告げる。
『もう、奇跡だと思ってよね』
「分かってる。…気を付けるよ」
『はいはい、分かったから取り敢えず寮に戻ろっか。汗掻いたら兄さん顔黒くなっちゃうし』
「ん、分かった」
( こんな寒いのに汗掻く訳無いだろ、なんて考えつつそれでも青年には逆らえずに。
相手とも別れた事だしと僅かに顔を上げては再び街に出て。
ふとショーウィンドーに写った黒髪の自分を見詰めては青年に「生まれ変わりとか言って露木所行けたらな」と小さく呟く。
「髪も黒いしさ、これでカラコン入れれば俺普通じゃん」
『ちょっと、兄さんが嫌って言ったんでしょ』
「まぁ…でもまぁやってみたらやってみたで良いなって思ってさ」
『………ふ-ん、…そっか。そこまでして露木の事、』
「は??」
『ん、何でもない』
( 言い掛けた青年の言葉も特に気にせずフードを取っては眼鏡を掛け直したりして。
>桐崎
(“フード男”が走り去った方角を見詰めては良い奴なんだろうなと漠然と思い、携帯も偶々相手と同じだったのだろうと本人とは気付かず公園を出る。
すると慌てた様子の兄が駆けつけて来て何も無かったか聞かれては簡潔に今あったことを話して。
「…なんか綸に似てた」
『俺に?』
「でもどちらかと言うと彼奴に…、って彼奴はもう居ないんだったな」
『そ、そうだよ。世の中には似てる人が3人いるって、それじゃないかな』
(何か察したように笑う兄に軽く頷きつつまだ妙にざわつく胸に手をあてる。
初めて会った筈なのに胸がチクチクと痛んで心の中で誰かが“離れたくない”と叫んでいるような感覚。
きっと気のせいだと兄に腕を絡めては「今日はバイトないから綸といたい」と小さく微笑み。
兄は微妙な顔をするがそんな事は気にせず身体を密着させては兄の部屋へと戻って。
(兄の部屋に戻って暫く兄が大学の後輩に呼び出されては『絶対この部屋から出ないでね』と念押しされて部屋を出て行き、結局一人退屈になるもすぐに自分にも教授からの呼び出しの着信が来て。
部屋を出るなと言われたが流石に此れは仕方ないだろうと大学教務課へと趣きさっさと用事を済ませてはどうせ部屋に行っても一人だし兄の部屋を出てはいけない理由も分からないため共同スペースに足を向ける。
奥のソファに腰掛けてはふと“よく彼奴(相手)は此処で寝ていたな”と懐かしみ頬が緩むも何故憎いはずの相手にこんな感情を抱くのかとまた胸がざわついて。
最近こんなばっかりだと苛つきつつ一応兄にメールで共同スペースにいることを告げては暇だし何か読もうと部屋の隅にある大きめの本棚から普段あまり見ることのない“今どき全身コーデ”なるファッション雑誌を引っ張り出すも、高い位置から無理に出したからか何冊かが雪崩のように一緒に落ちてきて床に散らばってしまい。
明らかに自分が悪いのに内心“誰だよきっつきつに仕舞った奴”と悪態吐きながら、兄の服のため少しだけ長い袖をまくり散らばった雑誌を一冊ずつ拾い上げては手を伸ばして元あった位置に戻していき。
>露木
( 寮に戻るなり青年は前回のテストの結果がいきなり下がった事で呼び出しを食らってしまい一人になれば自室にてシャワーを浴びる。
黒髪の塗料が落ち銀髪に戻ってしまえば何処か寂しい気持ちになるもやはり一人になるのは苦手で部屋を抜け出してはコンビニへと向かう。
毎月見ていた雑誌を買おうとした所で同級生に出会しては入院の事を問われて。
『大丈夫だった??皆心配してたんだから………って言うかその雑誌買うの??確かそれ共同スペースに会ったけど………。先輩でも置いて行ったのかな』
「マジで??じゃあ買わない」
( さらりと上記を述べスタスタとコンビニを後にしては慣れないが為に何度も落ち掛かる眼鏡を上げる。
パーカーのフードの中にもヘアバンドをしてるしバレないだろうなんて安易に考えては共同スペースへと訪れる。
敷居の向こうに誰かが居るのは何となく気付いたがまさか相手だなんて気付かずに目当ての雑誌を探す。
しかし共同スペースの温かさに最近の寝不足が沸き上がっては眠気が襲い掛かりソファーへ横になり。
相手に会いたい、なんて考えが頭に浮べば無意識の内に「………露木」と息が漏れるか程の声を紡ぐ。
しかしそんな所で何かにぶつかり簡単な敷居がパタリと倒れては敷居の向こうに居た相手と目が合い。
眠気がぶっ飛び頭が覚醒しては段々と冷汗を感じバッと立ち上がれば窓をガラリと開け飛び降りて。
高さがあるがきっと大丈夫だろうと言い聞かせてはちゃんと青年の言い付けを聞くべきだったと。
>桐崎
(雑誌を戻し終えてやっと一息つけるとソファに腰掛けようとしたところ誰かが入ってくる気配を感じそちらに目を向けては丁度敷居が倒れ目に飛び込んできた人物に胸が大きく鼓動し目を見開く。
見間違いではない、居るはずのない相手が何故…と全身の細胞が沸き立つような動揺で手が震えるも相手が窓から飛び降りるのが見えては衝き動かされるようにその後を追うもその高さに飛び降りるのを躊躇してしまい。
小さく舌打ちしては階段を使っており全速力で相手が向かった先まで走ったところ、前方にややびっこを引く相手を見つけすぐさま駆けつけては相手の肩を後ろから掴みそのまま横の壁にドンと押さえ付けて。
相手の身体を封じたまま有無をいわさずヘアバンドごとフードを外しては顕になった銀髪に上がる息をグッと飲み込み幽霊でも見ているかのように紅い瞳を見詰めて。
「……な、んで……生きて……」
(歯切れ悪く言葉を呟きながら自分がどうしたいか分からず相手を押さえつける手に力が篭もる。
自分の中で催眠から逃れるため激しい感情が衝突し混雑するも僅かに男の能力が上回っては小さく身体を震わせながらも尋常でない力で相手の肩を掴み上げ、僅かに水膜の張った瞳で相手を睨みつけて。
「……どうして、あんたここに居る。……なんで死んでないんだよ」
(催眠による憎悪を制御できず怒りに声を震わせては自分が身勝手で正常ではない発言をしていることも気付かずに。
(その頃、兄は用事を済ませ自分からのメールを見たところで、悪い予感がしてはもしもの時は自分を気絶させるか何なりかして誤魔化さねばと相手と自分を探しに出て
>露木
( 相手の言葉にやはり相手は自分の死を望んでたのかと確信させられては眉を寄せる。
それでもどんな対応をされても相手に会いたかったのも事実で掴まれる肩の力の強さに表情を顰めつつ相手の髪にそっと触れては「ごめん」と口を開き。
「**ない、…あんたがそんな顔をしてるんじゃ**ないんだよ。………頼むから笑ってろよ」
( 瞳が潤むのを隠しつつ相手から伺える憎悪の他に何かを感じ取れば眉を下げる。
しかしその刹那、戻って来た青年と兄に引き離されては兄は相手に寄り添い何処かへ行ってしまい。
残された青年と二人になり青年に腕を引かれては自室へと戻る。
小さな説教をされながら、それでも先程の相手の表情を思い出しては青年の肩に額を置いて。
『に、兄さんどうしたの』
「俺があんな事しなければ今頃彼奴と過ごしたのに」
『……………』
「ま、いいや。ごめんないきなり。そうだ、明日出掛けようぜ。奢ってやるから」
『あ…う、うん!!!行く!!!あと…ほら、大きな水族館出来たじゃん、そこも行きたいな』
「分かった、じゃあ朝迎えに来て」
『うん!!!楽しみにしてるね』
( 笑顔で去って行く青年に微笑みを返しつつ、それでも何処か相手と重ねようとしてる自分は最低だなと。
頭の後ろで手を組んでは瞳を閉じて。
( そして翌日、青年が迎えに来た頃には珍しく着替えも済ませており携帯と財布のみをポケットにしまい込んでは自室を後にする。
分かり易く上機嫌な青年が先ずは何処へ向かおうかと問い掛けて来て。
「まだ飯食ってないんだよね、腹へったし朝飯食いに行こうぜ」
『分かった!!!』
( 適当なファーストフード店に入れば注文を済ませ最近のテストだったり自分は所属してない委員会の話だったり他愛もない話をして。
>桐崎
(翌日日が昇る前、薄っすらと目を開くと兄のベッドの中におりベッド脇に突っ伏して眠る兄に目をやっては眠る前の記憶を辿りながら上半身だけ起こす。
そして徐々に昨日相手に会ったことを思い出してはガバッと布団を引き剥がしベッドから起きようとするも目を覚ました兄に止められて。
『ちょっと、急にどうしたの』
「どうしたも何も、彼奴が生きてて……、って…なんで俺寝てたんだ?」
『なんでって昨日のこと何も覚えてないの?菊、久々に呑んで寝ちゃったんだよ』
「……いや、でも……、じゃあ彼奴は……」
『……夢、なんじゃないかな』
(悲しげな表情を浮かべて俯く兄を見てはこれ以上相手の話に振れられなくなり、それが演技とは見抜けず本当に酔って記憶が飛んで変な夢でも見たのかと思い込み。
それからまた寝るよう促されてはもう眠たくなかったが自然と瞼が重たくなって。
この時、昨晩からずっと相手の名を呼び頬に涙痕が残っていたことには気付かずに。
(数時間後、扉を叩く音で目を覚ましては身を起こすと共に若頭に抱き付かれ三枚の水族館のチケットを見せられて。
『此処新しく出来た所。イルカに触れるんだって。…イルカって癒やし効果あるらしいし最近菊疲れてるでしょ?一緒に綸も入れて三人で行こうよ』
「…俺は疲れてない。しかも癒やし効果って俺が精神病んでるみたいに……」
『でもイルカ好きでしょ?』
「………嫌いじゃないけど」
(面倒げに呟きつつ正直動物は好きで興味があったためチケットを受け取っては朝の身支度を始める。
その間に兄は少し焦った様子で若頭に耳打ちして。
『今日、赤城と繿もそこに行ってるんだけど』
『え…まじで?…動物と触れ合えば何かしら効果があるかもって医者に言われて来たんだけど。……いやでも此処かなり広くて人も多いから鉢合わないでしょ』
『…だと良いけど』
(そんな兄と若頭の気遣いと不安をよそに支度を済ませては三人で水族館へ向かう。
兄の手を握りながら平静な振りをしていたものの内心、“夢”で見た相手が悲痛に満ちた表情で紡いだ言葉が脳裏にこびりついていて、ジクジクと痛む胸を誤魔化すように笑顔を貼り付け兄と若頭の話に合わせて。
露木
( 朝食を終え早速水族館へと訪れては真新しく綺麗な館内へと足を向ける。
人混みが激しく迷わない様にと青年が肩にしがみつくのにやや苦笑いで溜息を付いてはパンフレット片手に順番に回ろうかと話をして。
大きな水槽の魚達を眺めてた所、青年の携帯のメール受信音が鳴り響いては一度腕を離す。
メールを開いた青年が血相を変え『に…兄さん今日帽子とか…持って来て無いもんね』と何処か余所余所しく言うのに「何で??」と首を傾げる。
今日の服にはフードも付いておらず増してや帽子なんて持って来てる弾も無い。
青年が兄とメールで連絡を取ってる事など露知らず「置いてくぞ」と言えばスタスタと歩き出して。
( その頃、水族館へ訪れた相手達の元にはしつこい程のナンパの手が襲い掛かっていて。
若頭も身を張って相手を守っていた物のやはり男だとバレてしまい、しかしその顔立ちの良さと以前雑誌に載った事から“可愛い”と女子ウケしてしまい。
『ちょ、…魚全然見えないんだけど!!!』
『困ったな-。折角来たのに』
『もう!!!こんなに女の子に絡まれたの初めてで戸惑うよ-。女の子の友達はいるけど僕菊にしか興味無いからさ』
『俺と付き合ってるんだけどね』
( 言い合う二人を気にも止めずまた相手の前に女子数人が来ては“一緒に回りませんか”と御決まりの台詞を問い掛けており。
>桐崎
(群がってくる女達に雑誌のモデルがいるから当然かと思うも水族館にわざわざ来てるのに見るものが違うだろうとうんざりする。
それでも女達に悪意はないため丁重にお断りして場所を移動するもまだ言い寄ってくる女達が居たため兄に腕を絡ませ頬に口付けては「そういうことだから」と微笑んで。
引きつった笑いで去って行くのを見ながら、そう言えば相手とは気恥ずかしくて中々こういうことが出来なかったなとぼんやり思い。
『き、菊ってば大胆ー。そういうこと普通にする性格だったっけ?』
「あの子達がしつこかったからだよ。…優希もして欲しかったのか?」
『うわ、意地悪な顔。っていうか優希じゃなくて優ね。前にも言ったでしょ』
(プイッとする若頭の仕草に女に人気がある訳だと思いつつ若頭が兄に『…繿と付き合ってる時と性格違うんだけど。猫被ってたんじゃない?』とぼやいているのは聞こえず。
(その後、そわそわする二人をよそに兄と腕を絡めながら館内を周っては目的の一つだったイルカとの触れ合いスペースに行く。
小さい子供たちやカップルが多い中流石に恥ずかしいからと渋るも若頭に無理矢理手を引かれてはイルカの前まで来て飼育員に促されるままイルカの胸ビレに触れその優しい眼差しと目を合わせて。
「………繿と来たかったな」
(突然正気に戻ったように呟いては兄が『菊…?』と呼びかけてくるもそれと同時に飼育員が『この後イルカショーがあるので是非来てくださいね。運が良ければお客様も参加出来ますよ』と声を掛けて来たことによりまた催眠に落ちて。
「…折角来たしショー見に行くか?」
『え?……あー、いや。ショーは次の時間のにしない?ほらペンギン館先に見に行こうよ』
『あ、それいいね。僕ペンギン大好き』
(相手と鉢合わないよう必死な二人の気など知らずに夕方からバイトが入っていたため「次の時間じゃバイトが間に合わないから。…イルカも後でゆっくり見たいし」としれっと言って、目の前のイルカを撫でては頬を綻ばせさっさとショーの会場へと足をすすめ。
そんな自分に若頭は『前から思ってたけど菊って繿がいないと結構我が儘だよね』と苦笑を零し、慌てて自分の後を追い兄と共に変に騒ぎながら自分の視界を遮るようにして歩いて。
>露木
( そわそわとする青年に疑問を持ち軽く頬を抓っては「具合悪いのか??…別に無理に誘った訳じゃねぇし…」と言い掛けるもぶんぶんと首を振る青年に再び微笑みを漏らしてはイルカのショーの看板が目に入り。
青年と兄の口裏合わせでは相手と鉢合わない様に自分と青年をショーへと押し込んでは兄達は別の動物を見に行く予定だった様で青年は『行こう!!!俺イルカ見たいな-』なんて何処か態とらしく言って。
「あ-、うん。別に構わないけど」
『本当??やったね、じゃあ行こ!!!』
( 背中をグイグイと押して来る青年に疑問を浮かべつつショーの会場へと足を進めては奥の席に腰を下ろして。
それから暫く経ちパンフレットを捲りながらショーが始まるのを待ってた所、いきなり青年が立ち上がっては自分の視界を遮る様にズイッと顔を近付けて来て。
「いきなり何だよ、変な目で見られてるだろうが」
『あ、…えと…』
「さっきからお前可笑しいぞ」
『そ、そうかな』
( 相手達が自分達より離れた席に腰を下ろしたのを確認しては漸く青年は再び席に付く。
瞬時携帯を取り出し《よ、予定と違うよ-。・:(゚^o^゚):・。》とメールを送って。
《ご、ごめん。兎に角繿の髪すっごい目立つから何か被せといて》
( 再び鳴った受信音と共に青年があわあわとしながら自分の頭にタオルを被せて来るのに首を傾げる。
「だから…何なんだよ」
『み…水!!!凄く水飛沫来るらしいからさ!!!』
「お前が掛けとけよ、俺別に平気だし」
『駄目!!!兄さんが掛けてよ!!!』
( 眉を寄せながら大人しく青年の言う事にしたがってた所、不意に相手の横顔が見えた気がしては立ち上がろうとする。
『ど、どうしたの??』
「今…露木が」
『気の所為だって!!!』
( 肩を掴まれストンと大人しく席に座っては先程から怪しい様子の青年をジトリと見詰めて。
>桐崎
(ショーの会場にて強制的に兄と若頭の間に座らせては(相手がいない側に座る)兄にやけに話し掛けられ目を合わせるよう仕向けられては必然的に兄をまっすぐ見詰める形になる。
が、ステージ上の客を映し出す巨大スクリーンに赤髪と相手が写った気がしては目を向けようとするも『あーー!喉乾いたからドリンク買ってくる』と大袈裟に声を張る若頭に視界を遮られてしまい「……あんた変だよ」と若頭を怪訝そうに見詰め。
(ドリンクを手にした若頭が戻ってきてすぐ、ショーが始まってはイルカのジャンプと共に沸く歓声に“小さい頃よくこういう所に父親に連れて来て貰ったな”と無感情に思いだす。
___相手は折角父親と和解出来たのにこういった思い出を作れず逝ってしまったのかとフと相手を想った時、『そこのタオル被ったお兄さん!良かったら前に出てきてこのリングをウミちゃん(イルカ)に投げてくれませんか?』とマイクを通したトレーナーの声で意識が引き戻されては“タオルを被ったお兄さん”に目を向ける。
顔は良く見えないが周囲の女子が黄色い声で囁き合っていてるのが分かり相当のイケメンなのだろう何となく気になって見詰めるも奥に赤髪が見えては「…赤城?」と首を傾げ。
『きーーく、あまり人をジロジロ見ると失礼だよ!!』
『っていうか僕急にトイレ行きたくなっちゃった!一人じゃ迷いそうだから菊もついてきて!あー、もうがまんできない。漏れる』
(ギャーギャー騒ぐ若頭にさっき一人でドリンク買いに行けたじゃないかと心中突っ込みを入れつつ「…あんた何歳だよ」と溜息混じりに席を立ち、ショーにお呼ばれした“タオルの男”と一瞬見えた気がした青年が気になりながらも若頭と共に階段上にある手洗い場へ向かおうとして。
>青年
( まさかの指名に“人前に出るのはあまり得意じゃ無いんだよな”と小さく溜息を漏らす。
『そこのお友達、赤い髪のお兄さんもご一緒に!!!』と言うトレーナーの誘いの元、若頭と相手が行ったのを見計らった青年が『ほ、ほら兄さん折角だし!!!』と急かす様に自分の背中を押して。
愛らしいイルカに癒されつつ輪投げを終え席に戻ろうとした時、兄の姿が見えた気がしてはそちらに視線をやるも察した青年に腕を引かれては確認は出来ずに。
先程から気に掛かる事ばかりで流石に怪しくなり席を立っては青年に「ごめん、ちょっとバイト先からメール来てたから電話して来る」と嘘を付き。
『だ、駄目だよ兄さん!!!俺も行く!!!』
「流石にバイトの電話はプライベートだろ、直ぐ戻るから」
『……………直ぐ、ね。絶対だよ、約束ね』
( やたら念押しして来る青年に呆れつつ一度席を外しては喫煙所へと向かい煙草に火を付ける。
ショーの最中という事もあり人目に触れる事も無く、例え触れたとしても年齢を誤魔化せば良いかと。
ふうっと煙を吐き出し煙草を一本吸い終えた所で喫煙所の扉を開けては最悪の状況か、若頭とばったり出会してしまって。
「あれ、木ノ宮何してんの」
『し、…静かに!!!』
「はぁ??」
( 泣きそうな程の表情をしながら慌てる若頭に口を塞がれた所で若頭の後から此方に向かって来る相手の姿が見え先程迄の青年の様子などの辻褄が全て納得出来ては顔を俯かせ「………もう行く、…てか帰るよ」と。
『ま、待って!!!…いや、えと………』
「……………」
『どうしよ、…綸か赤城に電話しなきゃ』
( グズグズと泣きそうになりながら携帯を取り出す若頭を何処と無く憐れむ様に見詰めてはもうバレているのだしと相手の前に駆け寄って。
「残念、俺まだ生きてんだよ。あんなんじゃ死なねぇな、今度はもっと上手くやれ」
( まるで軽い事でも言うかの様に僅かに身を屈め相手の顔を除き込む。
こんな時でさえも愛しい相手に見惚れてしまう自分が嫌になりつつ思い出した様に口を開く。
「綸と赤城と木ノ宮はあんたを騙そうってしてた訳じゃない。あんたの事殺人鬼にしたくなかったんだよ」
( 若頭が背後で泣きべそを掻きながら兄に連絡をしてるのに軽く目を向け「あんたとは元から“何も無かった”し俺は“何もされてない”。…あんたはこれからも綸と良くやれよ。綸ならあんたを嫌な思いにもさせないし普通の人間だから」と。
上記を言い残しさっさと相手の元を後にすれば青年に《ごめん、先に帰るよ。あんたは綸達と帰ってくれ》と短く返して。
>桐崎
(席に戻ろうとしたところ相手が駆け寄ってきては昨日の事は夢で無かったのだと確信すると共に激しい動悸に襲われる。
相手から紡がれる言葉一つ一つが胸に突き刺さり言い返したいのに声は一切出てくれず意に反して相手を強く睨みつけ。
しかし相手が去った瞬間、これまでにない頭が割れるような痛みに襲われてはその場に蹲りくぐもった苦痛の声を漏らしながら相手を探し求めるよう片手を宙に彷徨わせる。
意識が遠のく中、催眠が解け自我を取り戻していくのを感じては息を切らしながら相手の名を呼び駆け寄ってきた兄の手を誰の手とも分からず掴み、ただ相手を重ねて強く、強く握って。
(微かな薬品の臭いと共に目を覚ましてはすぐそこが病院だと分かり心配そうに覗きこむ兄と目を合わせてはまだ少し怠い身体を起こして。
「……俺……、」
『水族館で急に倒れて…。ここは木ノ宮の病院。今木ノ宮は医者と話してる』
「………………」
(兄の言葉をどこか遠くで聞きながら久々に戻ってきた自我にぼんやりしながらも少しずつ相手を深く傷付けた最低な行いを思い出し蒼白になる。
たとえ催眠に掛かっていたとしても許されない行為。
先刻相手に言われた言葉が脳裏を駆け巡り喉元まで込み上がってくる胃液をグッと飲み込んでは胸元をクシャリと掴み回らぬ頭で自分がどうすべきか考える。
そして催眠が解け光の戻った瞳で不安そうにする兄を見詰めてはこの場に不釣り合いなほどの微笑みを浮かべ「……綸、俺…もうこの街にはいられない。地元に戻るよ」と。
自分は相手を一度ならず二度までも死の瀬戸際まで追いやり兄達にも多大な迷惑をかけた。
相手と居る資格などない。元から相手とは“何もなかった”それでいいじゃないかと。
身勝手で我が儘な行動だとは重々承知の上。それでも気持ちを変えるつもりはなく。
(その頃、若頭は医者と自分の“精神異常”について話していてもしかしたら能力によるものかも知れないと推測を立てていて。
一方で相手の精神状態も心配しており、青年に至っては傍にいれないことを涙目で悔やんでいて『やっぱり兄さんのところ行く。兄さん一人にできないよ』と相手の様態に合わせて処方した薬を手に病院を飛び出して。
『…桐崎、ここ最近ですごく痩せたし疲れ溜め込んでるみたいだったからな…。ちゃんと休めればいいんだけど…』
(若頭は珍しく低い声色で述べては青年の背中を見つめあと自分の病室に目を向け重たい溜息を吐いて。
>露木
( 寮に戻るなりベッドに横たわっては腕で目元を隠し唇を強く噛んでは激しい後悔に襲われる。
あんな格好付けた事を言って置いてもまだ未練がましく相手の姿を追い続けてる自分が居て。
ポタリと一雫涙が落ちてはそのまま眠りに付いて。
( 目を覚ましたのは夜、バイト先の店長に《明日からバイト出るんで宜しくお願いします》とメールを送ってはシャワーを浴び鏡で自分の顔を確認して再びベッドに潜り込む。
どうやら寝てる間に青年が来てた様で受信ボックスの青年からのメールをぼんやりと見詰めては《途中で帰って悪かった。また今度ゆっくり見に行こうな》と返信して。
中々寝付ける事が出来ずに目を閉じれば相手の笑顔が浮かび髪をぐしゃりと掴んで。
( 翌朝、あまり深く眠れないままにバイト先へと向かっては退院祝いなどと菓子やらを渡されて。
無表情が常日頃だったが愛想笑いを張り付けては着替えを済ませ何も考えないように没頭する。
接客が好きな方では無かったし口下手な事もあり会話はあまり続かない方だったが話し掛けて来てくれる客のお陰で幾分喋られる様にもなり。
夕方、寮へ戻る途中バイト情報誌をコンビニで立ち読みしてた所買物に来てた青年に見付かっては直ぐに捕まりファミリーレストランへと連行されて。
『兄さんバイト増やすの…??』
「あぁ、寮の家賃とかあるし。父さん今ちゃんと働いてるみたいだから自分の事は自分でやんないと」
『…いや、…そうじゃなくて………』
「ん??」
『……………ごめん、何でもない。それより露木…昨日倒れちゃってね』
「大丈夫なのか?!」
( 身を乗り出し青年の肩を掴んでは『目、覚ましたよ。………露木、かなり痩せた』と。
目を覚ました事に安心し青年の肩から手を離し腰を下ろしては「綸が…彼奴を支えてくれる」と呟き。
何か言いたげな青年の言葉を聞きたくなく代金をテーブルに置き先にレストランを後にしては寮へと戻る。
自室に戻るのが嫌で結局共同スペースのソファーに横になれば吸い込まれる様に眠りに落ちる。
夢の中にも相手が現れるのに自分も相当末期だな、と呆れるも夢の中の相手はいつかの様に自分に微笑み掛けてくれて。
>桐崎
(夜、兄が病室のソファで眠るのに申し訳なくなりながら布団の下で震える手をグッと掴む。
今でも残る相手の首を締める感触。そして相手に浴びせた惨酷な言葉。
自分や兄達の為に身を削った相手を信じてやれず、こんな最低な自分でも“愛してる”と言ってくれた相手に心にもない暴言を浴びせ傷付けた。
催眠に掛かっていたなど言い訳にもならない。
_____いっそのことこの能力でみんなの記憶から自分の存在を消してしまいたい。
そんな馬鹿げたことを考えながら目を閉じれば浮かぶのは相手の悲しげな表情ばかりで。
(翌朝、兄や若頭の制止を振り切り病院を出ようとするが兄も強気で中々引いてくれず腕を掴まれて。
『納得出来ない。っていうか勝手過ぎだよ。……俺とは“遊び”だったなんて』
「……ごめん」
『何か隠してるんでしょ?…こんな急にころころ性格と態度が変わるわけない』
「俺が我が儘なのは前からだろ?…それに休みのうちに妹の顔見たくなっただけだから」
『今じゃなくてもいいでしょ』
(兄の強く優しい眼差しに“兄弟揃って優しすぎだな”と苦笑するも次の瞬間溜息を吐き。
「…………うんざりなんだよ。ベタベタ張り付いてくるあんたも、元引き篭もりの煩い餓鬼も、良い年して女の格好してる変態も……一緒にいて迷惑…『嘘だよ。…菊は嘘吐いてる。…菊は俺たちを想ってくれてる時ほどそうやって態と酷いこと言う。そうでしょ?』
(全てお見通しの兄に叶わないなと眉を下げ微笑むも気持ちが揺らぐことはなく「…ごめん」と一言零し兄の手を軽く払うと、催眠に掛かっていたことは告げずに病院を去って。
(夕方、大きな荷物と共に地元へ訪れては久々の親しんだ空気に小さく深呼吸する。
確か以前も相手と不仲な時に来たなと思い返しながら世話になる叔父叔母の元へ向かおうとするも偶然すぎるタイミングで幼馴染と出会し。
『わぁ、菊。久しぶり。オーストラリア行ってたんでしょ?どうだった?今回は一人?ナツのところ行くの?』
(相変わらずの質問の荒らしに慣れたように詳細は伏せて答えては「家には挨拶だけ」と続け。
『えー、なんで?今回はバイトじゃないんでしょ?家で泊まればいいのに』
「バイトは今のバイトの支店でするつもり。あと家は俺が行くと母さんが嫌がるから」
『そんな事ないわよ。この前“菊に花屋手伝ってほしい”って会いたがってたもの。最近は体調もいいみたいだし』
「……そっか」
『……ねえ、桐崎くんたちと何かあった?』
(鋭い指摘にも一瞬ドキリとなるも小さく首を横に振っては『そう?…あ、でも今日はナツのところ泊まるんでしょ?私も今回父さんの仕事の手伝いで来たんだけど今日だけおじゃまさせて貰うつもりだから一緒に行きましょう。車はあるから菊が運転してね!』といつものごとく幼馴染の勢いに押し切られては頷くしかなく幼馴染が手配した車に荷物を乗せると花屋を営む母の家へと向かって。
>露木
( 翌日、バイトへと向かい勤務時間を終えてはもう一つのバイトの面接へと訪れる。
同じく飲食店だったが頭髪の指定も特に無く、手馴れている事を話せば即OKを出して貰えて。
明日、居酒屋のバイトが終わり次第此方に来ると約束しては店を後にして路地裏の自販機で煙草を購入する。
寮へと戻る途中、ふと兄に出会しては兄は酷く切なそうな顔をしており何か合ったのかと問い掛ける。
「どうしたんだよ、…そんな顔して」
『……………別に。………それより菊に何か言われたの??』
「いや、…多分俺と話したがらないだろ」
『そっか。………てかちゃんと寝てる??お化けみたい』
「寝てる、半日くらいずっと寝てる」
( 結局兄は相手の事を話してはくれずに仕方無く寮へと戻っては今日は大人しく自室へと戻る。
旅行から帰って来てから置きっ放しだった青年のカメラを勝手に見ていれば相手と並び珍しい笑顔を浮かべる自分の姿があり“笑うとこんななんだ”と自分で思ったりして。
相手の能力が解け、今思い詰めてる事など知らずに水族館で自分を睨み付ける相手を思い出してはもう忘れようと自分に言い聞かせる。
久し振りに彼女でも作ろうかと考えるも相手と出会い居心地の良さを感じた後で他の人を見れるのかと。
人外である事を隠し、バレてしまえばまた逃げられてしまう。
一瞬でも認めてくれたのは相手だし、目前で能力が解放されても逃げる事をしなかった。
結局また相手の事を考えてしまい。
今日のバイトと居酒屋のバイトは平日のみで土日には休みが入ってたがそう言えば孤児院の子供達の中に来月誕生日の子が何人かいたなと。
以前バイトしてたホストクラブへと連絡をした所、どうやら以前のNo1の男も何かしら問題を起こしクビになった様で。
稼ぎは良かったし土日だけでも入れて欲しいと頼み込んでは県外のホストクラブの人数が足りてないから土日はそちらへ行って欲しいと頼まれてしまい渋々返事をしては支店の場所を検索して。
>桐崎
(幼馴染と訪れた母の家。一階は花屋で二階が住居スペース。三階は自分の部屋があるくらいで空き家の状態。
細長で狭い家だが父の横領事件により周囲から酷い嫌がらせを受けていた広い実家に比べればずっと良い。
家の脇にある狭い階段を上がり錆びれたチャイムを鳴らすとドタバタと音が聞こえて扉が開かれ、もこもこした格好をした妹が笑顔で自分と幼馴染を出迎えて。
『まだ雪降って寒かったでしょ?でも御免、今節約中で暖房つけられないんだ』
『いいよーいいよー。寒さは慣れてるし。……あ、夕飯の支度手伝うわよ』
(我家のごとく陽気に家に上がる幼馴染に対し、自分はやや躊躇い気味でそれに気付いた妹が『母さん、兄さんが帰ってくるって聞いて張り切って郷土料理作ってたわよ。大丈夫、最近は鬱病の薬も少なくなってきてるから』とほほ笑み手を引かれて。
(荷物を片付け早速食卓を囲んでは久々の家庭の味に舌鼓を打ちつつ、先程から笑顔だが目を合わせてくれない母をチラリと見る。
母とは不仲ではない。愛情も感じる。だが、父の事件があってから母は自分を見ると怯えたように避ける時があって_____。
『そう言えばさ』と妹の声で現実に引き戻されては持っていた器を置いて妹を見る。
『昨日ね、突然掛り付けのお医者さんから私と母さんの新しい薬をただで渡されたの。しかもすっごく高くて良い奴。…兄さん心当たりある?』
「…知らない。…それ、信用できるのか?」
『うん、お医者さんも間違いなく本物で安全も保証するって。もしかして……』
「まさか、“あの人”がそんなことするわけないだろ。医者の好意だよ」
(やや苛立ち気味に答えては小さくなった胃に御飯をねじ込み“いろんな事”を考えないようにして。
(翌朝、一階まで降りると母が一人店先で随分豪華な花束を作っているのが見え迷いながらもそちらに近付き「……おはよう。大きい花束だね。結婚式でもあるの?」と母に対して使う柔らかな口調で話し掛け。
母は依然と目を合わせてくれなかったが『ううん。最近近くに出来たホストクラブからの注文なの。数が多いから今のうちに配置を考えておこうと思って』と答えてくれて。
それから店の掃除を手伝っては時折母から『最近元気にしてた?』『いい子は居るの?』と静かに投げかけられる質問に「元気だよ」「…今はいない」と短く答えて。
『そのストラップ、可愛いわね』
(気迫のない薄い声で言われ、自分のポケットに目をやっては“あーまだつけてたんだ”とストラップに振れ「…“友達”から貰ったんだ。…結構気に入っててさ」と小さく微笑み「それじゃあバイト行ってくる。……今日の夜も泊まるね」と結局母と目を合わせることなく自宅を後にして。
>露木
( 翌日、三年生と言う事もあり必要な単位も揃ってる為早速明日から県外のバイト先へ向かおうと。
月曜には戻って来てこっちのバイトをしなければだと考えるとかなりハードだが働いてる間だけは何も考えずに居る事が出来て。
朝寮を出て到着したのは夕方、確かここは相手の地元で以前旅館に来たなと暖かい思い出が浮かんでは強く瞬きをし“忘れるんだろ”と言い聞かせて。
まさか実家が近くで相手が帰って来てるなどとも知らずにさっさと足を進める。
バイト先の付近のビジネスホテルに荷物を置き、県外という事もあり以前バイトしてた所が交通費やらホテル代やらを負担してくれてる為特に不便は無く。
簡単な荷物のみを持ち店の前まで来た所で何と言う偶然か相手の妹と出会す。
『繿君、お久し振り。…えと、何でここに??』
「あ-…久し振り、仕事先の支店でバイトする事になってさ。土日だけこっちに来る事になった、毎週金曜日にはこっちに来る感じ」
『え-、遠いのに大変ね』
「まぁ大丈夫だろ。って言うか出歩いてて平気なの??彼奴(相手)に見付かったら説教されんじゃねぇか」
『あはは、兄さん過保護だから。最近調子良くてね、………何かお医者様がいきなりお薬タダでくれて。…だから母さんのお手伝いもちょこちょこしてるの』
「そか、そりゃ良かった。でも体調には気を付けろよ」
『うん、………で…あのさ。お仕事ってここ??』
「あ-…うん、まぁ」
( 俯きながら軽く頷いてはチラリと携帯の時計を見て「ごめん、そろそろ行く」と切り出して。
この時もまだ相手がこっちへ来てる事を知らずに妹がこっちに住んでるのは知ってた為に特に気にもせず。
店内にて経験者という事もあり直ぐに仕事に取り組む様に言われては高収入なこの仕事は土日だけだししっかりとしなければと。
>桐崎
(夕方、あのレンタルショップの支店にも関わらず店長の人柄が良かったため早めにバイトを切り上げることが出来ては自宅へと戻る。
叔父叔母の世話になるつもりだったが自宅で過ごすのもいいかも知れないなとぼんやり考えながら店先に行くと顔色の悪い母がカウンターの傍で蹲っているのが見え慌てて駆け寄って。
肩に手を添え声を掛けるもバシッと手を払われては『触らないで!記憶が飛ぶでしょ!』と。
しまったという顔をする母に小さく首を横に振って微笑んでは身体を支え二階の部屋へと上がり布団に寝かせる。
丁度その時妹が顔を出しては慣れた手付きで母の看病をはじめ、自分は病弱な妹に何もかも任せっきりだなと情けない気持ちになり『兄さん、そう言えばさっき…』と妹が何か言いかけるのも聞こえず邪魔にならないよう店番をする為に一階へと降り。
店番なんていつ以来だろうと懐かしみながら店のベージュ色の膝丈エプロンをつけ紐を前で結んでは店の奥に既に出来上がった豪勢な花束に目を向ける。
確かホストクラブからの注文だったなと思いながら、まさか相手のバイト先のものとは思わず引き取り時間に目をやってはそろそろかと。
ふと携帯を見ては兄からのメールと着信が大量に来ており、罪悪感に苛まれるも返事はせずにエプロンのポケットにしまい、はみ出す相手から貰ったストラップを無意識に弄び未練がましく相手のことを考えてはぼんやりと店先を眺めて。
(その頃相手のバイト先では相手の容姿と手際の良さから柄の良い先輩ホスト達にすんなり受け入れられ『桐崎って背高くて足長いよな。どっかのモデルやってた?』『お前目当ての客もう出来たぞ。頑張れよ。…てかその髪超イケてるじゃん。どこの美容院?』と勘違いしつつ悪気なく相手の髪を撫で回していて。
そんな時店のオーナーが訪れては相手に金と住所の書かれた紙を渡して『悪いけど其処行って花受け取ってきて。今日来る大切な令嬢のための花だから大切に扱ってね。お釣りは受け取っていいよ。じゃよろしく』と相手の肩を叩くとスタスタと仕事へ戻っていき。
>露木
( 以前のバイト先より人当たりも良く花屋までの使いを快く受けてはスーツの上に上着を羽織る。
近くの花屋までの地図を片手に漸く花屋まで訪れては入口に飾られる美しい花を暫し見ていて。
店のオーナーの名刺を渡せば良いと言われてた為、胸ポケットから名刺を取り出しては店内へと入り。
「すいません、花束注文してた…___」
( 言い掛けた所で思わず言葉が止まり呆気に取られた表情で目前の相手を見詰める。
しかし直ぐにハッと正気に戻ってはオーナーの名刺を相手に渡し「………予約してた者です。…花束、受け取りに、………」と何処か他人行儀な言い方になってしまい。
微妙な空気の中、沈黙に耐えられなくなり「………こっちに帰って来てたんだな。綸が心配してた」と。
相手と兄は付き合ってるのだと思ったままぎこちない表情を浮かべてた所、二階から相手の妹が降りて来るのが見えては軽く手を振って。
『あ、来てたのね。このお花全部持ってくの大変じゃない??』
「大丈夫、飾り付けだけだし直ぐそこだから」
( 花束を受け取り相手に向き直っては一瞬切な気な表情が漏れてしまうも直ぐに微笑みを作り「綸に電話とかしてやってな。彼奴心配症だからさ、特に“恋人”の事となれば煩いだろうし」と。
“じゃあ仕事に戻るから”と支払いを済ませては直ぐに花屋を後にする。
寝不足気味で欠伸が漏れては目元をゴシゴシと擦り。
( 帰り道、一応買っておいた差し入れ等を先輩に渡しては『皆に配っておくから先に店内行ってろよ、まだ場所とか把握してないだろ??』と。
先輩の言葉に甘え店内を見て回り何となく覚えた所でボーイが花束を飾ろうとしてるのが見えて。
身長が足りないのか苦戦してる様子が伺えてはほっとく訳にも行かず手伝う。
『あ、ありがとうございます。あと…これ、これはお客様に直接渡す花束らしいので』
「じゃあ先輩達にも伝えとく」
( 豪勢な花束をぼんやりと見詰めながら相手と兄が付き合ってるという事を何気無く思い出す。
やりきれない気持ちになるのを振り払う様にフロアへと向かって。
>桐崎
(突然の相手の来店、唖然としながらもスーツに上着姿の相手は大人っぽく相変わらず綺麗で見惚れてしまい、余所余所しさの後に続く兄と自分がまだ付き合ってるような物言いにハッなっては思わず“違うんだ”と言いそうになり口を噤む。
結局一言も発せずに相手が去った後、俯いては妹が心配そうな顔をして。
『繿君疲れてるみたいだったけど大丈夫かしら。……そう言えば兄さんって綸さんと恋人なの?』
「…………」
『……突然こっち来たのも何かあったからなんじゃないの?』
「…御免、…落ち着いたらちゃんと話すから」
(妹の優しさに困ったように笑いながら自分より少し長い髪をポンポンと撫でてはこの時間注文客しか来ないため店仕舞いをしては相手と会った動揺を悟られないように妹を二階で休ませ店の片付けなどをして。
(その頃、相手のバイト先に大手企業の令嬢が訪れては先輩ホストから花束を貰いご満悦に微笑んでは『リュウ(先輩ホスト)大好き~!!』と抱き付いていて。
しかしヘルプとして来た相手を見ては一瞬で惚れてしまったのか先輩ホストを他所に相手にベッタリ寄り添い『ねえねえお名前は?その髪と目、面白いね。趣味?』と若干失礼ながら好き好きアピールを鬱陶しいくらいして高い酒を頼んでは『いっぱい呑んでいいからねー』と相手のグラスに注いで。
その後も我が儘っぷりを発揮しては散々相手の髪をいじって勝手に自分の香水をつけては『また来る時指名するからこの香水つけてきてね』と勝手に相手のポケットに小さいボトルの香水を入れて『まだまだ呑むわよ~』と上機嫌に相手の肩に手を乗せて耳元に息を吹きかけ反応を楽しんでいて。
(一方、妹は以前から相手が気になってたこともあり、相手の体調を心配しては疲労回復に効く暖かいスープや夕飯の残りなどをタッパーに詰めて自分の目を盗んで家を出る。
この地方はまだまだ寒い。自分が過保護なこともありコートに加え耳あてとマフラー、手袋ともこもこな状態で防寒対策をしてはホストクラブ付近で相手が出てくるのを待っていて。
>露木
( 流石令嬢と言うだけあり我儘が続くのを愛想笑いで流しては隣に座ってた先輩に呼ばれる。
少し席を外すと告げ先輩の元へと向かえば令嬢を顎でしゃくり『桐崎も上手く話盛り上げろよ。あの人ここの常連さんだし一回の来店で大量に注ぎ込むから』と耳打ちされて。
コクリと頷きなるべく話を盛り上げる様に努めては遂に酔い潰れる令嬢を困り顔で支える。
“いつもの事だから”と先輩に耳打ちされては取り敢えずタクシーを呼ぶべきかと。
『姫、今日も付き人さんのお迎えあるんですか??』
「もっちろん!!!あ、なんならリュウが送ってくれても構わないのよ??」
『折角お付きの人がお迎え来てくれてるんだから俺が奪っちゃったら付き人さんが可哀想でしょ』
( 上手く交わした先輩に感嘆の息を漏らしつつ夜、漸く帰ろうとする令嬢を皆で見送って。
とっくに勤務時間を終えてた事もあり『お疲れ様、上がって良いぞ』と言われるがせめて掃除だけでも手伝うと率先して仕事に取り組んで。
( 漸く帰りの時間になりバックルームで私服に着替えては店を後にする。
宿泊ホテルへと帰ろうとした時、相手の妹が寒そうに立ってるのが目に入っては慌てて駆け寄る。
『あ、お仕事終わり??お疲れ様』
「鼻赤くなってる。いつからここに居たんだよ、…ってか何してんの」
『えと…繿君何か調子悪そうだったから…これ』
( 手渡されたタッパーの蓋を開き中の料理を目にしては珍しく無表情を崩し少し驚いた様な表情をして。
今日の帰りもコンビニで適当な夕飯を買って帰るつもりだった為に久し振りの家庭的な料理に僅かに嬉しそうにしては礼を言って。
「ありがと、…なんかこういうちゃんとした飯久し振りかも」
『そうなの??いつも何食べてるの??』
「俺料理得意じゃ無いからさ。寮の食堂にも最近行ってないし彼奴(相手)がいた時は毎日ちゃんとした………___」
( 言い掛けた所で微笑みを浮かべ誤魔化しては近くのコンビニへと入り礼に何かスイーツを奢ると。
やはり女子だけあり目を輝かせて選ぶ姿を微笑ましく見詰めては新発売のチーズケーキが目に入る。
無意識に相手にとそれを籠に入れては妹も同じケーキを選んでおり“流石双子だな”なんて考えて。
母も一緒に住んでると聞いた為に3つ購入しては家まで送ると言いついでに購入したカイロを妹に手渡して。
「露木、…ちゃんと元気??」
『兄さん…どうなのかしら、…最近偶に思い詰めた様な表情しててね。でも問い詰めると笑って誤魔化すの』
「綸と何か合ったのかな」
『………綸さん??兄さん綸さんと何かあったの??』
( 付き合ってると言う事は言ってないのかと思うと勝手に話すのも良くないかと話を逸らす。
「………ほら、綸って割とモテるからさ。…兄弟でも綸と俺全然違うんだよ。綸は優しいし容姿も良いし、…まぁ露木もかなりモテるから互いに色々あんのかな」
( 平気な振りでボソリと呟いたがやはり胸が痛くなって来ては話題を変えて。
>桐崎
(店の片付けなどを済ませ久々に家の湯船でゆっくりして居間に来た所、襖の向こうから母が妹を呼ぶ声が聞こえそこで漸く妹の存在がないことに気付く。
布団の中で休む母に妹を探してくると伝えコートに袖を通してはまだ髪が乾ききらぬまま外へ出るも家から数メートルもいかないところで前方に相手と親しげに話す妹の姿を見つけザワリと胸が騒ぐ。
それが妹に対する嫉妬なのか相手に対する罪悪感なのか分からないが兎に角安堵してそちらに駆け寄り妹の額をコツンと軽く小突き。
「勝手に出てったら心配するだろ。此処がいくら田舎だからってどんな奴がいるか分からないんだぞ」
『御免。でも心配しすぎ。それに繿君がここまで送ってくれたから』
(嬉しそうに『チーズケーキ買ってくれたの』と赤くなった頬を綻ばせる妹に小さく溜息を吐きつつ、相手とは計り知れぬ罪悪感で目を合わせられず視線を横に流す。
相手は水族館で“元から何もなかった…”と言っていた。
其程までに傷付けたのに相手は毅然と振る舞ってくれる。それに自分も応えねばと…。
「…ナツを送ってくれて有難う。助かった。……またホストのバイト始めたんだな。あまり無理するなよ」
(目を合わせないながら“憎悪”を含まない柔い声色でほんの少し微笑んでは、相手にとって不自然に自分の態度が変化しているとも気付かず妹の手を掴みその場を去ろうとする。
しかし妹が自分の手をスルリと抜け相手の元へトタトタ近寄っては『折角ここまで来たしうちで御飯食べていかない?なんなら泊まってって。部屋は空いてるから』と。
流石にそれはお互い困るとやんわり相手を帰す方向に仕向けようとするが絶妙なタイミングで母が家から出てきては妹を見るなり良かったと抱き締め、ホスト姿の相手に警戒の眼差しを向け。
『だれ、この人?まさかうちの娘に…『違うわよ!母さんったら早とちりなんだから。兄さんの…友達で私を此処まで送ってくれたの。それで御飯食べて貰おうと思って』
(珍しく元気にはしゃぐ妹の姿に母は驚き、相手をチラリと見ては『ご迷惑じゃ無かったら上がってくださいな』と薄く微笑んで。
もしこのまま相手が誘いに乗ったら確実に気まずくなると焦っては「お、俺、飲み物買い出しに行ってくる」と相手の返事も聞かずにそのまま数時間時間を潰すつもりでその場を離れようとして。
>露木
( 先程から絶対に目を合わせない様子と以前の様な分かり易く自分を嫌ってる態度を見せない事に内心戸惑っては妹の誘いと共に逃げる様に立ち去ろうとする相手の腕を咄嗟的に掴んでいて。
自分の事を嫌いなのは変わりなく無理をさせてるんだなと勘違いしては一瞬眉を下げる。
慌ててパッと手放しては妹に向き直り「誘ってくれんのは嬉しいんだけど明日も早いし明後日にはまたあっちに戻んないとでさ。また今度暇があったら今日の礼として飯奢るよ」と。
母親に向き直り頭を下げては「いきなりすみませんでした、お誘いありがとうございます」と言っては最後に相手の方へと歩を進める。
やはり目線は合わせて貰えないがこうして話が出来るだけでも満足で「あんたも、いきなりごめんな。折角の家族水入らずなんだから出掛けんなよ」とからかう様に微笑みさっさとホテルへと足を向ける。
その途中、立ち寄った薬局にて以前病院で合った男性に出会しては何と言う偶然かと。
しかしハンカチは寮にある為中々言い出せず、結局「こんばんわ」と小さく挨拶をして。
『あぁ、君か。また会ったね、…というかこんな所で何をしてるの??寮とはかなり遠いよね??』
「仕事です」
『仕事…って、何の仕事??まさかまた………良くない仕事でもしてるの??』
「…まぁ…良いとは言えないけど………普通に水商売の手伝いって感じです」
『………へ??…あぁ、そっちか。ごめん、いや…本当に何でも無いんだ』
( 男性が過去の自分を知ってるとも、そしてまさか相手の父親だとも知らずに軽く受け流しては「何してたんですか??」と問い掛けて。
『あぁ、実は息子が帰って来てたみたいでね。折角妻と娘と息子が揃ったんなら会いに行こうと思ったんだけど………』
( 言葉を濁す男性に首を傾げ「行かないんですか??」と問いかけるも困った様に微笑むだけで。
『いや、…まぁ。行けない理由が合ってさ。………それより君は今から帰るの??』
「近くのビジネスホテルに部屋取ってるんでそこに」
『本当に??…凄い偶然だな、同じホテルだよ』
( 同じカードキーを見せられては自分も軽く微笑み、“見ず知らず”の自分にどうしてこうも構ってくれるのだろうかなんて考えながらホテルまでの道を歩いて。
>桐崎
(大人びた振る舞いで相手が去った後、まだ相手に握られた感触の残る腕を見てはただの一瞬触れられただけなのにこんなにも胸を高鳴らせる自分に腹が立つ。
辛そうな相手の顔。本当の事を言ってしまおうかと思ったが、そうしたらきっと優しい相手は許してくれて自分はそれに甘えてしまう。
それは許されない事なのだと卑屈になっては、ショボンとする妹と戸惑う母を家の中に入るよう促して母と妹に暖かい御茶を淹れた後、自分は自室に籠もって携帯を開く。
未だに続く兄からの着信。流石に無視出来なくなっては《返信しなくて御免。暫く忙しくて連絡出来なくなる。俺は元気だからさ、あんたは自分自身を大切にしてやって》と散々兄を振り回しておいて身勝手なメールを送り。
ダラリと携帯を下ろしてはふと先程妹に渡された相手が買ってくれたというチーズケーキを手に取る。
食欲などなかった筈なのに口に含めばすんなり胃袋に収まり、どうしようもなく相手を愛してしまっていることを思い知らされては額を押さえ“自分の記憶も操作できたらどんなに楽だろうか”と自嘲の笑みを零して。
(翌日早朝、二階へ降りると既に妹が台所でなにやらしており覗いてみると可愛らしいお弁当を使い捨て弁当箱で作っていて『繿君に。迷惑かと思ったけどコンビニ弁当よりこっちのが良いでしょ?それにタッパーも受け取りに行こうと思って』と。
へぇ、と気にしないようにするも少し引っ掛かりを覚えてはチラと妹を見て。
「………もしかして態とタッパーに入れて渡した?」
『…な、なんのこと?そ、それより兄さんの弁当もあるのよ。休憩の時食べてね!』
「……ありがとう。…で、それ渡しに行くのか?」
『う、うん。一応さっきメールはしたよ。……でもやっぱり迷惑かな』
(不安そうにする妹に“あー相手が好きなんだな”と悟り、複雑な気持ちで妹の頭を撫でては「大丈夫、ナツの弁当が嬉しくない訳ないから」と微笑み、自分の弁当を受け取ると早めにバイト先へ向かって。
勿論、父親がすぐ近くのビジネスホテルに泊まっていて、相手と関わりがあるなど知らずに。
>露木
( 相手の妹からの連絡にバイト前に近くのコンビニで出会す約束をしてはホテル前で男性と別れて。
どうやらまだ此方に居るらしくそれなら今夜も会うかもしれないななんて互いに笑って。
バイト先の目前のコンビニにて妹の姿を見付けては軽く手を振りそちらに駆け寄る。
洗っておいたタッパーを手渡し「久し振りにあんな旨いの食った、ありがとな」と。
どことなく相手の味付けを連想させる味に久し振りに食欲がそそられ何時もより調子も良く。
『あのさ、コンビニでのご飯食べてるって言ってたじゃない??…だから良ければこれ』
( 手渡された弁当に穏やかな微笑みを浮かべ「悪いな、態々。ありがたく頂く」と。
そっくりな容姿から相手と重なっては何気無く妹の頭をポンポンと撫でてしまい相手でない事をハッと思い出しては「じゃあ、…行って来るから。早く帰んないと露木心配してるだろうぜ」と見送って。
( 職場に到着するなりさっさと着替えを済ませフロアに出た所先輩達に挨拶をして周り漸く仕事に掛かる。
年齢層が幅広く、年相応の話という物に苦戦しながら仕事に励んでた所で突然先輩に呼び出されては自分に客が来てるとの事で。
一体誰なのだろうかと外に出た所、今朝まで一緒のホテルにいた男性で。
「どうしたんですか」
『ごめんね、いきなり。…仕事場まで押し掛けちゃって…頼みがあるんだ』
「…何ですか??」
『縺さん(自分の父親)に会わせて欲しい』
「何で父さんの名前…」
『ただ自分も二、三日はここから離れられなくてね。でも、君も学校が始まるだろう??だから…』
「良いですよ。俺もう必要な単位揃ってるし。…明日にでも来る様に伝えときます」
『本当かい??…ごめんね、助かったよ。ホテルなどはこちらで準備するから安心して。どうしても縺さんと話したい事が合ったんだ』
( “仕事の邪魔をしてごめんね”と去って行く男性にどこか見覚えがある気がしては懸命に思考を巡らせるも思い出せそうなのに思い出せず。
結局あやふやのまま仕事へと戻り。
>桐崎
(バイトの休憩、妹が作ってくれた弁当を口にしてはふと同じものを相手も食べているのかと思いそれだけで食欲が増す自分にどうかしてると溜息を吐く。
こんなことで相手から離れられるのか。しかも折角地元に戻ってきたのに毎週相手が戻ってくるなんて悲惨…その筈なのに少しでも嬉しいと思う自分がいてはそんな自分を戒めるように相手を傷付けた惨酷な行いを責めて。
(バイト終わり、店長に呑みに誘われ渋々付き合っては帰りが遅くなり偶然相手がバイトする職場の前を通ってはふと足を止める。
あんな痩せた身体でこんな重労働をしては倒れてしまうのではないかと。
相手にそうさせてるのが自分のせいでもあるとは露知らずぼーっと店先を眺めては相手が令嬢に腕を絡められ出てくるのが見え慌てて物陰に隠れる。
酒に…というより相手に酔ってうっとり相手の首に出を引っ掛けお別れのキスをせがむ様子にただの客とは分かっていても嫉妬して。
嫉妬する資格などないのにと目を瞑りその場から離れようと身を返したところドンと人にぶつかってしまい慌てて謝るも顔を上げた瞬間、父を分かりサッと表情を消して退散しようとして。
『ま、…待って…。………………待ちなさい!!』
「………なんですか。ぶつかったことなら謝りましたよ」
『…菊。…こっちを見てちゃんと話してくれないか』
「………っ、あなた良く此処に戻ってこれましたよね。ナツと母さんがどれだけ苦しんだと思ってるんですか。どうせまた金欲しさに俺を利用するつもりなんでしょう?…嫌ですよ。ここまで…、ここまで記憶を取り戻すのに何年掛かったと……」
(つい感情的になっては小さく息を吐き父から目を逸し「…これ以上母さん達に迷惑かけないでください」と言い残し、父の事情など聞く耳も持たずその場から立ち去って。
>露木
( 翌日、父へと連絡を取り此方まで来て欲しいと頼むもあの父の性格、『用が有るならそっちが来るべきだろ。面倒臭ぇ』と言われてしまって。
しかししつこく頼んだ結果渋々約束をしてくれては夕方には此方へ着くようにすると言ってくれて。
それまでバイトをしようと早速バイト先に向かい男性へ連絡を取っては夜、近くのレストランで落ち合おうと。
( そしてあっという間に時間は過ぎ夜。
父と落ち合い『テメェまたそんな下らねぇ仕事してんのか』と言われるも苦笑いで返してはレストランへと訪れ先に来ていた男性の席へと向かう。
「じゃあ俺は…」
『君にも聞いて欲しいんだ。…謝らなきゃならない』
( 大人しく席へと着き男性と向き直っては男性が取り敢えずとコーヒーを注文して。
『早くしろ、何の用事だ』
『あぁ、ごめんね。実は…娘と妻の薬を治す為の薬を買う為に…借金をしたんだ。ただ悪い取立て屋に当たってしまってね、息子達に迷惑を掛けたくなくて…それで縺さんしか頼れる人が居ないんだ』
『ほう、俺に取立て屋にお前の嫁達の所に行かせないようにしろってのか。…契約書を書かせろと』
『縺さんなら…以前若い頃取立て屋に対抗する仕事してただろ??何人もが縺さんに救われたんだ。あ、お金ならちゃんと返すつもりだし妻達の元へさえ行かなければ………』
『金無ぇんだろうが馬鹿』
『君にも礼金はしっかりするよ、…だから頼む』
( 頭を下げる男性を父親は溜息混じりに見詰めては父親は本当に小さく頷き『金なんてもう要らねぇよ』と呟く。
男性は穏やかに微笑むと次に自分へと向き直りゆっくり口を開いて。
『君が小さい頃にね、凄い能力を持った子が居て金が莫大に手に入ると聞いたんだ。一瞬でも醜い欲に駆られ君の家に押し掛けた。…覚えてないかい??君とはもう何度も会ってる』
「……………」
『でも出来なかったよ、あの幼さで瞳の色を無くした君を見た途端息子の顔が頭を過ぎった。……自分がそうさしたのに…だから…出来なかった』
( 泣きそうな表情で謝る男性を漸く思い出し緩く首をふるもまだ相手の父親だと言う事は分からずに。
「息子さん達に、…会ったんですか」
『息子には会ったよ、格好良くなってて…自慢の息子だよ。娘と妻は見かけただけだけどね、二人とも前より表情も活き活きしてて…それだけで満足だ』
( 悲しそうに微笑む様子にどことなく相手が重なり胸が痛んでは目を逸らす。
近くのホテルの予約をしておいたが父は『用事を済ませたらさっさと帰る』と席を立って。
男性と二人になり自分達も同じホテルの為にレストランを後にしては街を通りゆっくりとホテルに向かって。
>桐崎
(父と相手親子が会っているとは知らず、昨夜父と出会したことで夜までもやもやした気持ちでバイトに打ち込む。
相手の事でいっぱいいっぱいなのに今更何をしに来たんだと身勝手に苛立ちながらバイトを終えては帰路に着くと店先から母が綺麗に飾った中位の鉢花を抱えて出てくるのが見えてそちらに駆け寄り。
「…それ、配達?車使わないの?」
『そう、ビジネスホテルからの注文。近いから歩いていこうと思って。少しでもガソリン代節約しないといけないから』
(目を合わせてくれない母に若干寂しくなるも、母から鉢花を取ると片手で抱え直し母の背中を押して家の中に戻るよう促し「俺が行くよ。母さん体冷やすといけないから」と。
それからまだ雪の残る道路を足早に踏みしめビジネスホテルに花を届けては代金を受け取ってさっさと家に戻ろうとするも、ちょうどホテルを出たところでばったり父と相手に出会し驚きでピタリと足を止め。
「なんで…一緒にいるの…?」
(顔を合わせたくない二人に同時に会うなんてと内心嘆きつつ、そもそも何故相手がまだ地元に残っているのかと事情を知らず二人を見比べる。
しかし話を聞いたところで自分は二人に近づくことはない、近づけないと横を通り過ぎようとするも父に腕を掴まれ反射的に振り払って。
『…菊…、』
「名前、気安く呼ばないでください」
(なにも知らずキッと父を睨みつけるも相手に見苦しい所は見せられないと「…此奴(相手)にまで迷惑かけないでくださいね」と他人行儀で冷たくあたっては偉そうな態度を取ってるとも気付かずその場を立ち去ろうと。
>露木
( ばったりと会った相手の態度と男性の表情に段々と全てが組み合わされて行く。
男性の手を振り払いその場を去ろうとする相手の手を咄嗟的に掴んでは相手の顔を見詰める。
どこか似てると思ってた、しかしこうして見れば親子なのは一目瞭然で。
『繿君、…何して「子供の頃に俺に言った“能力者の息子”って…此奴だったんですか」』
『……………そうだよ、…でも“息子”なんて言えないか
な』
( 寂しそうに俯く男性を見詰めては唇を噛む。
能力者は自分だけだと思ってた幼少期、この男性が自分に優しくしてくれる唯一の存在でその息子が“能力者”だと知った時はいつか会いたいと思ってた。
自分に優しくしてくれたのも父の元へ来る度自分に菓子などの土産を持って来てくれたのも本当は相手に父としてしたかった事なのかと。
この男性が相手にどんな事をしたのかも知らないし自分はあくまでも部外者、しかし相手が居なければ自分と父も分かり合えなかったと。
どうやら相手は仕事中の様で行き先を問い掛けた所自分達の宿泊ホテルで。
放って置けずに無理矢理相手と男性を連れホテルまで来ては相手の仕事を先に終わらせホテル内の小さな喫茶店へと入っては戸惑う男性に目を向けずに居て。
相手を連れ男性から少し離れた所に来ては「ごめん、今日だけで良いから聞いてやって欲しい」と。
頑として拒む相手が自分の事を殺したい程に嫌ってるのを思い出し、どうせならそれを使ってやろうと相手の額に自分の額をコツンと当てる。
「……………拒むんなら…俺またあんたに付き纏うよ。嫌いなんだし困るだろ??」
( やや脅迫地味た言い方をしては僅かに大人しくなった手を引き男性の向かいに相手を座らせる。
自分は席を外そうとした所で運が悪くバイト先の常連に出会してしまっては捕まって。
バイトの時の服のままなのが悪かったな、なんて反省しつつ一応大切な常連なので話を適当に合わせ相手達から離れた席に常連と共に座って。
>桐崎
(額を当てられドキリとする自分にほとほと嫌気がさすもまさか殺そうとした自分を本気で想ってくれてるなど思わず、相手が大人でただ父を立てているだけだと思い込めば渋々席について他方を向きながらも父が話しだすのを待ち。
『……繿君と知り合いだったんだね』
「…学校が同じですから」
『…そっか。…………あの時は…すまなかった。お前の能力を利用して…「俺は、いいんです。もう終わったことですから。……謝罪なら俺はこれで失礼します」
『理由を、聞いて欲しいんだ』
(父の真剣な眼差しに上げかけた腰を下ろしては視線を床にして静かに紡がれる話を聞く。
そこで父が金欲しさにやったと思っていた横領は上司に“妹に良い病院がある”と乗せられ知らずに行い挙句濡れ衣を着せられ莫大な罰金と借金を負わされたのだと知る。
そこを善人を装った悪徳業者に付け込まれて“自分の能力”を売れと言われ、男達に渡すくらいなら自身の手元で管理して男達の指示に従ったほうがマシだと考えたらしく…。
『良かれと思ってやったんだ。ナツの病気が少しでも良くなるならって…。でも結局みんなを苦しめた…』
「…………“ナツのため”って…俺がナツに弱いの知ってて……。しかもその話だと貴方が人が良すぎるだけじゃないですか」
(突然のことでまだ気持ちの整理が付かずどう反応していいか困惑していると、父が自嘲気味に笑い『全然、人が良いなんてことはないよ。自分は人様の子を売りに出そうとしたんだ』と幼い相手を売ろうとしたことを告白して。
瞬間、カッと頭に血がのぼりドンッとグラスが揺れるほど強くテーブルを叩いて立ち上がっては父を睨みつけ言葉を発しようとするも、丁度その時喫茶店の入口で『お客様、困ります!』と従業員の焦った声が聞こえ其れとともに柄の悪い連中がズカズカと入り込んできて。
『露木 草一さ~ん(菊父)、いらっしゃいますかねー、お金返して欲しいんですけど』
『な、なんでここに?2,3日待ってくれる約束だったじゃないですか』
『知りませんねーそんなこと。こっちも仕事なんですよー』
(相手の父に要求したばかりなのにこんな筈ではと焦る父を他所に周囲にひけらかすように嫌らしく大声で金を要求する金貸しに、父が妹や母のために借金をしたとは知らず、また変な輩に騙されただけと思っては酷く情けない気持ちになって。
それでも何だかんだ父は肉親。見知らぬ振りは出来ず父を背に金貸しの前に出て「すみません。…俺はこの人の息子です。……話は外でしませんか」と借金がいくらか知らないが自分が払うつもりで言うも、流石に人目のある此処では父も居た堪れないだろうと移動を提案して。
>露木
( 金貸しは渋々相手の提案に乗り大人しく外に出てやっては父親への請求書と契約書を相手の前に突き出し『三百万、さっさと返して欲しいんだけどな~。それともお兄さんが返してくれんの??』
( 相手の顔を舐め回す様に見回した後、『お兄さんなら裏に出回るDVDに二、三回出演するだけで三百万なんて容易いんじゃね』と。
しかしそこで金貸しに相手の父親が掴み掛かる。
『駄目だ!!!その子には手を出さないでくれ!!!』
『は、じゃあさっさと返せよな』
『分かった…今夜までに何とかする。………だから』
『返してくれれば何もしね-よ』
( 馬鹿にした様な目線を向け父親に請求書を押し付けては金貸し達はさっさとその場を後にして。
『ごめんな、見苦しい所見せてしまって。………菊達には絶対に迷惑掛けないから、これだけは約束する。今日は話聞いてくれてありがとう、そろそろナツや母さんも心配するだろうし気を付けて帰りなさい』
( いつかの様な優しい笑顔を向けては落ちた請求書を内ポケットにしまいその場を後にして。
( 常連を漸く帰し、外に行ってからは知らないが先程現れた男達数人は金貸しである事を何となく察しては相手の父親の元へ駆け寄る。
おおまかな事情を聞き直ぐに自分の父親へと連絡を入れては話をしながら取り敢えず部屋へと向かう。
「もしもし、父さん??………えと、露木さんの…………」
『あぁ、俺も連絡入れようとしてた。…代われ』
『……………もしもし、縺さん??』
『まんまと騙されただろ。テメェが俺に渡した金融会社の住所は全部嘘だ。空家だとよ』
『………そんな』
『直ぐに人を信じんじゃねぇよ。…まったく、取り敢えずテメェの嫁とガキ共に手出されたくねぇんならテメェのガキに俺の名刺持たせとけ。分かったな』
『…あぁ、ごめん。………でも今夜までに返済しなきゃならないんだ』
『今夜だと??……………巫山戯た野郎共だな、幾らだ』
『………娘と妻の薬に三百万必要だったんだ』
『俺がテメェに貸してやれんのは精々二百万だ、しっかり返せよ。………後の百万はテメェで何とかしろ』
( 強引にブツリと切られては相手の父親に携帯を返されそれを受け取る。
名刺など持たせてなんになるのかと疑うもよくよく考えれば自分の父の仕事も知らず。
乱暴な物言いの自分の父も今必死になってるのは何と無く分かり項垂れる相手の父の様子に眉を寄せる。
「……………あの、………俺の能力___」
『駄目だ、変な事を言う物じゃないよ。君の能力はそんな事に使う為にあるんじゃないんだ』
( ハッキリと告げられては口を噤みふと鳴り響いた受信音と共に携帯を見れば《駅前まで来る様に伝えろ》とあり相手の父親にそれを伝え。
( その頃、胡散臭い程にカッチリとしたスーツに身を包んだ自分の父親は二百万の入ったアタッシュケースを片手に知り合いの師範に相手の連絡先を聞いていて。
>桐崎
(早々に去って行く父の背を見ながら、金貸しとの一件を聞いて黙っておちおちと家に帰れる訳ないだろうと苛立つ。
三百万なんて大金あと数時間もしないうちに用意できる筈がない。
どうするつもりなのだと苛立ちと焦燥にかられていると知らぬ番号から着信が入り訝しむが今の一件があったばかりのため恐る恐る出てみては相手の父で少し拍子抜けして。
『今直ぐ百万持って駅前に来い』と大雑把に内容を告げられプツンと通話が途切れては何事かと戸惑うも荒々しさの中に優しさを感じたのは確かで直ぐに24時間銀行で金を下ろすと駅前まで走って、すでに到着していた相手の父の元へ駆け寄り。
『…あの一言だけで本当に来たのか。親子揃って人を信じすぎだぞ』
「……?」
『あ、いや。……それより金は持ってきたか』
(小さく頷き封筒に入れた札束を渡しては、相手の父の持つアタッシュケースに目がいきまさかと思い相手の父の目を見て、その正装から状況が何となく掴めて。
「…桐崎さんを巻き込む訳には…『散々俺達の時は口を出して来たんだ。これくらい大人しくしとけ』
(強い口調に圧されるも助けるのとられるのでは全く心境が違い簡単な説明で去ろうとする相手の父を「待ってください」と引き止め。
「…俺達は桐崎さんに助けられる資格なんてないんです。…あの人は…貴方の息子さんを売ろうとしたんですよ。……それに俺は……繿になにがあっても絶対に許されないことをした。…だから桐崎さんの手を煩わせるわけにはいきません」
『……彼奴(相手)となにがあったかしらねぇが今回のことは俺が勝手にすることだ。手前の金もしっかり後からあのお人好しに返させる』
「…でも…『だから、この一件が終わっても手前の父親とは絶対に会え。それまで手前は大人しく残りの家族守ってろ』
「……なんでそこまで……」
(未遂でも父は相手を売ろうとしたのにと俯くも、相手の父は小さく息を吐き『今は時間がない。話は後だ。さっさと家に帰れ。ついてくるなよ。手前が来ると“どっちも”煩いからな』と述べ、少し話し過ぎたと舌打ちしては絶対に来るなと念押しされその場を去っていき。
その毅然とした振る舞いと優しさにどこか相手が重なっては複雑な気持ちで相手の父の背中を見詰め、追いかけたい気持ちを堪え身を返すと妹達の待つ家路へと足を向け。
>露木
( 再び鳴り響いた自分に携帯を直ぐに取り父からの電話に出ては目前で心配そうにする相手の父親をチラリと見ては「どうしたの」と問い掛けて。
『運が良かったな、丁度三百万手に入った。さっさとそこのお人好しこっちに向かわせろ』
「は…、いや百万はどっから出したんだよ」
『それは後でそいつにしっかり伝える。…それよりお前今どんな格好してやがる』
「え??…あ、…今はまだバイト先の………」
『スーツか』
「………ネクタイ無いし、…まぁスーツだけどスーツっては………」
『中のyシャツとネクタイだけ買ってやる。さっさとお前も来い、三十分で着けよ』
( 切れた電話と共に慌てて駅前へと向かった所、初めて見た父のスーツ姿に何の仕事をしてるのかと聞こうとしたがその前に紙袋を手渡され『着替えて来い』と。
( 自分が近くのトイレへ着替えに行った所で相手の父親は申し訳無さそうに頭を下げる。
『…君を巻き込むつもりじゃ無かったんだ。…本当にどう謝罪すれば良いのか分からないな』
『……………勘違いすんな。…これは…あの化物が子供の頃にテメェから貰った菓子類の返しだ』
『はは、自分の子を化物なんて言う物じゃないよ』
着替えを終えた自分の姿が見えたのと共に金融会社の元へと訪れては父からは想像も出来ない丁寧な物言いでアタッシュケースの中身を見せて。
『へぇ、だけどね露木さん。時間の延滞料、あと三十万足りないな』
『利息分も踏まえた上での三十万と先程聞きました。…尚も取立てをするのでしたらこちらも“弁護士”として裁判を立てるしかありませんね』
『……………は??弁護士??』
『今日は丁度新米弁護士も連れて来てますので。今の貴方方の物言いは彼の耳にも入ってますし』
( 慌てた様に口調を変え契約書をシュレッダーに掛ける金貸し達を呆然と見てた所、話は終わったと言わんばかりに立ち上がる父をわたわたと追い掛けて。
( 外に出るなり『まだ安心は出来ねぇからな』と言う父に相手の父親が再び頭を下げる。
自分は証人だったのかと思うのと共に「………父さん弁護士だったのかよ」と。
『…は、んな訳ねぇだろ。このバッジもプラスチックだ』
「じゃあ何で………」
『賭け事は好きだからな。…あっちがどう出るか賭けに出ただけだ』
( 既に外は暗くなり普通の家庭なら夕飯を囲んでいるであろう時刻、自分の父は相手を静かに見詰めると『約束だ。明日にでも家族に会いに行け』と言い残し『俺は帰る』とそのまま駅に向かって。
>桐崎
(夜、自宅に戻ってきたは良いが眠れるはずもなく何かあったらどうしようと何度も外へ出かけては自室に戻るを繰り返す。
確かあの時喫茶店には相手もいた、ならば取り立ての様子も見られていただろうと。
さらにはあんな父の前で子供染みた態度を取って…格好悪いし恥ずかしすぎると考えることが多すぎて落ち着かない一夜を明かして。
(翌朝、二階へ降りると妹も母も起きていて昨夜の自分の挙動不審な態度について聞かれるも今は答えられないと廊下へ出て携帯を取り出す。
事態がどうなっているのか、相手なら知ってるかもしれないと電話しようか迷うが掛けられる訳ないだろと携帯をポケットにしまう。
丁度その時、来訪を告げる呼び鈴が鳴ってはもしかしたら相手の父かもと急いで扉を開くも其処に立っていたのは自分の父で。
「………父さん……」
(思わず口から出た言葉に顔を逸らしては微妙な空気が流れるも様子を見に来た妹が『父さん…!!』と駆け寄ってきたことで重たい空気は打ち破られ。
『……き、急にどうしたの?…またお金?………兄さんはもう渡さないよ』
『ナツ………』
(感極まったのかなにも言葉を発しない父に、追い返す訳にも行かず中に招き入れては十年近くぶりかに四人で机を囲み、数時間かけて昨夜相手が協力してくれたことも含め互いの腹の中を話し合って。
___正直思った。“何故話してくれなかったのか”と。たとえ自分達を守るためでも“真実”を言って欲しかった____そこまで考えて不意に相手や兄のことが浮かんではフラリと立ち上がり「…ちょっと出かけてくる」と。
(足が赴くまま相手の泊まるビジネスホテルまで来てはフロントでまだ相手がチェックアウトしていないことを確認するとロビーで相手を待ち、姿を現したところで腕を掴んでロビーの一番奥の席に向き合う形で座って。
「……二百万、あんたの父親が出してくれたって聞いた。………助かったよ。流石に三百万は用意出来なかった…。…ちゃんと返すから。……あと、あんたも返済の時協力してくれたって…、迷惑かけたな。…怪我しなかったか?…それに随分根詰めてるみたいだけど」
(目を合わせられず問い掛けるも、自分を殺しかけた奴に心配されても気分が悪いだけだろうと「……ごめん」と口を噤む。
“真実”を話すために来たのにいざ相手を目の前にした途端首を締めた感触が蘇り、また同じ過ちを犯してしまうのではと怖気づいて中々次の一言を切り出せずに膝の上で拳を握って。
「………桐崎、俺……本当は旅行の時……あの夜、あんたことが心配で追い掛けて………」
(あと少しで真実を言える…、しかし何かが喉奥に詰まって言葉が出てこずに、辛いのは相手で、相手が言った“なかったこと”を自分が掘り返していいのかと思うとなにも言えなくなって。
(/補足になりますが菊の言ってる“あの夜” >536-538 あたりのことです。なんかクヨクヨとどうしようもない子ですみません← 菊は学習能力ゼロですねw
>露木
( 翌日、相手の父はちゃんと話をする事が出来ただろうかと不安になるが自分も明後日には帰らなきゃならない為準備を済ませ今日の昼食と夕食を買いにコンビニにでも向かおうとして。
エレベーターで一階まで降りた所、突如相手に腕を取られてはされるがままにロビーの奥の席に座り。
僅かな期待をしてしまう自分に嫌気が差すも平然を装いながらぽつりぽつりと話始める相手を見詰め。
昨夜の謝罪に“別に対した事はしてない”と首を横に振って。
続く相手の言葉が途切れ途切れになるのにやっぱり無理してるんだろうかと思えば穏やかに微笑み相手を覗き込む様に見詰める。
「心配してくれたんだ、ありがとな。………良いよ別に、あの事なら気にしてないしあんたに付き纏ってた俺も悪いし何より他の女すっかけてたのが一番悪いから」
( 能力に掛かってた事も知らずに相手が自分を責めてるのでは無いかと思うと黙ってられず。
それでも相手を思う気持ちは抑えられず離れたく無い思いから「………これから飯買いにコンビニ行くんだけどさ、…着いて来てくれるか」と問い掛け席を立ち。
( 訪れた近くのコンビニにてまだ重たい空気を変えようと明るく振舞う。
品物を見て回りながら相手をチラリと見詰めてはこちらも話したかった事をぽつりぽつりと話始め。
「子供の頃に俺を金稼ぎに使おうって輩が沢山押し掛けて来てさ。その度にさり気なく父さんが追い払ってたのは今更気付いたんだけど。………一人だけ俺に優しくしてくれたのがあんたの父さんだった」
( 思い出した様に自然な微笑みを浮かべては仕事続きで隈の残る目を擦る。
「毎日毎日菓子とか買って来てくれてさ。その度に“自慢の息子”の話すんだけど…その話する度に悲しそうな顔してんの」
( 相手に向き直り「だからあの人があんたの父さんだったって知った時どうしてもあんたと会わせたかったんだ、…余計な世話だったよな…ごめんな」と。
家族の問題に踏み込んだ自分が悪い、そんなのは良く分かっておりまた辛気臭い空気になってしまったなと反省しては適当なカップラーメンを手に取り。
(/安価ありがとうございます(´∀`)
いえいえ、毎回毎回菊君可愛過ぎて…っ!!!
萌え死んでおります←
菊君とお父様の絡み涙無しでは見れませんね、もう今回のロル興奮気味で荒ぶっててごめんなさいorz
>桐崎
(相手の優しさと微笑みに胸が痛むもその心地よさに甘えては言われるがままコンビニに付いてきて、相手から紡がれる自分の知らない父の姿を聞き僅かに心が軽くなる。
それと共に父を遠ざけ続けた自分が無性に愚かで恥ずかしく思えては、謝る相手に小さく首を横に降って「……あんたが居てくれてよかった」と小さく零しカップ麺に伸びる手を目で追い。
何故相手ばかりに謝らせこんなにも気を遣わせてるのか、そう思った瞬間相手の手を唐突に掴むとカップ麺を棚に戻し御茶だけ買ってグイグイと手を引き人気のない路地まで来て、漸くまともに相手と目を合わせて。
「………さっき、言えなかったことちゃんと話す」
(簡単に気持ちが揺らいでしまう自分が嫌になるも覚悟を決めては催眠状態にあったことを話し、相手を信じ切れず傷付けた自分がどうしても許せなかったのだと続けて。
「本当は言わないつもりだった。またあんたを傷付けるのが怖かったから。…なのに…あんたが馬鹿みたいに優しいから……」
(甘えてしまうと相手を責める物言いをしてしまい首を横に振って「ごめん…」と呟いて「こんな弱虫で勝手なやつなんとでも思ってくれて良い。……ただやっぱり自分の気持ちに嘘はつけない。……俺、あんたが好きだ。忘れられない」とやっと本音を零して。
「今更こんなこと言われても困るのは分かってる。…………でもさもうちょっと俺の勝手に付き合ってよ」
(自分だけ言うだけ言ってすっきりしては相手が口を開く前にまた腕を引いて歩き出し自宅まで来ては強引に家に上がらせて、何事かと驚く他の家族をよそに相手を食卓に座らせて。
「……カップラーメンじゃ栄養偏るだろ。……あんたさ、此処最近ずっと酷い顔してんの。どうせまともに食べてもないし寝てもないんだろ。バイト何時からか知らないけどその前にしっかり食べて、寝るなら俺の部屋、…じゃなくて空き部屋あるからそこ使えよ」
(一瞬言葉を濁らせるも不自然な笑いで空回り気味に述べては台所から作りおいた料理などを温めなおし相手の前に並べる。
正直相手の返事が是でも非でも怖い、今直ぐ答えを聞きたいようで聞きたくないという何とも我が儘な気持ちから妹を利用しては相手と話をさせ自分は自室に逃げようとして。
(/いやもうただの我が儘なじゃじゃ馬君ですよ。ってそれを操ってるのは自分ですがw
現代菊は江戸菊より餓鬼度&我が儘度が酷い気がします。
もうちょっと大人になって攻めっけだせるよう頑張ります(何の宣言w
いえいえいえ!いつも繿君本体様のロルとセリフは分かりやすく恰好良くて勉強なります。そしてぱくってます←
ではではいつも忙しい中絡み感謝です(*^_^*)
>露木
( 路地にて相手の口から話された言葉に驚きを隠せず“殺したい程嫌われてた訳じゃなかったのか”と安堵するも相手の思いを聞いた途端放心状態になり。
暫く呆然としたままされるがままになり相手の自宅へと着いた途端慌てて何か言おうとするも言葉にならずに驚いた様にこちらに目を向ける相手の母と妹に頭を下げては「すみません、…お邪魔します」と小さく告げ。
並べられた食事と共に去ろうとする相手の腕を咄嗟的に掴んでは言葉が出て来てくれずジッと見詰めて。
『もう兄さんったら。連れて来ておいて部屋戻っちゃうつもり??折角だから私達もご飯食べようよ』
「………え、と………」
『ゆっくりして行ってね。母さんもこれから出掛けるみたいだし………なんか父さんと二人で話をしに行くんだって、直ぐ近くの喫茶店に行くって言ってた』
( 相手に耳打ちする妹に『さ、食べよ』と促されては食卓を囲み「…じゃあ、…頂きます」と。
家庭的な味は食欲をそそり自然と表情も綻んでは他愛も無い話をし明日には寮に戻ると。
『そっか、…じゃあまた次の土日に来るのね』
「あぁ。…遠くて大変なんだけどさ、でもまぁ特にする事も無いし」
( 一向に話をしない相手をチラチラと気にしつつ箸を置き「ご馳走様、凄い美味かった」と。
洗い物を始める妹の手伝いをしつつ相手の言葉が沸々と蘇ってはカアッと照れ臭さが生まれ。
自分の気持ちもしっかり伝えなければと思い皿を拭きながら相手の元へと来ては「…俺も、…話あんだけど」とだけ伏せ目がちに告げ再び妹の隣に戻っては皿拭きを続けて。
( それから暫く後、不意に妹の携帯が鳴り響いては『今ハナから連絡合ってね。ちょっと駅まで行って来る、前から気になってた雑貨屋さん遂にオープンしたんだって。…ふふ、ちょっと出るだけだから心配しないでね兄さん』と相手の額をコツンとして。
妹を見送り遂に相手と二人になっては小さな声で「………さっきのだけどさ。…あんたが…返事要らないってんなら…俺も黙っとくけど」と。
どことなく微妙な雰囲気を感じ取り“自分も相手を好きだ”と告げていいのかと。
>桐崎
(二人きりになり相手からかけられた言葉に小さく反応してはいつまでもウジウジとして格好悪いところを見せられないと相手を見て「いや…返事、聞かせてほしい」と小さく呟き。
それでも返事を聞く前に確認しておきたかったことがあったため「でもその前に少しいいか…?」と相手を居間の座布団に座らせて。
「……すごく、…今更な話なんだけど……あんたさ…、俺と関わってから今まで自分が考えていることが本当に自分の考えかって疑ったことないか?」
(真剣な声色で問うも支離滅裂なのは自覚しておりどう説明しようかと視線を横に流して。
「…その……前に一度だけ俺の能力が記憶を操作することだって言ったよな。それってつまりさ、使いようによっては俺が思うままに人の意思を変えて動かせるってことなんだ。それはあんたや木ノ宮の能力と違って顕著に現れない。だから俺が黙ってれば周囲はまず俺の能力に気付かないしバレてもまた其奴から記憶を消せば良い。…自分の記憶の許容量さえ誤らなければ周囲の人間関係くらいなら自在に操れる。………周りに俺が善人だと思わせることも……あんたが俺に好意を抱くよう仕向けることも…できるんだ」
(一気に話しては吐き出しそうになる息を飲み込んで相手をまっすぐに見つめなおし「………疑ったことないか?俺が…あんたに近づくために良いようにあんたの記憶を操作してるって」と最初問いを聞き直して。
「………考えてみろよ。俺……自分の意思じゃなくてもあんたを殺そうとしたんだぞ。今回だけじゃない。あんたが学校の屋上から飛び降りたのも俺が追い詰めたせいだ。……普通、“気にしてない”じゃ済まないだろ。こうして話してくれること事態あり得ない」
(微かに声を震わせ言葉を紡いでは相手を見つめたまま疲れが感じられる頬にそっと手を添えて「…………こうして触れて俺が念じればあんたに俺を“愛してる”と思わせられんだ。………今あんたがこうして俺の話を聞いてくれるのは本当にあんたの意思だと思うか?」とどこか相手を試すように問い掛けて。
>露木
( 真剣な表情で紡がれる相手の言葉に小さく微笑んでは相手の額を軽く弾く。
「何、俺の事怖がらせたいとか試したいとか??………疑ってないよ。全部俺の意思だと思ってる」
( 相手も相手なりに能力に関しての悩みは多く、相手の父親とも能力でのいざこざが合った。
それでも相手が自分に都合の良い能力を埋め込まないというのは確信があり再び口を開く。
「まずさ、あんたが俺に能力使うんなら屋上での事も首締めた事も消すのが前提だろ。普通あんな記憶が残ってたらあんたの言う通りこうして話してるのも難しいんだと俺も思う。………でも俺はその事忘れてないししっかり覚えてる」
( 真っ直ぐに告げずっと触れたかった相手の頬に恐る恐る触れては“やっと触れられた”と表情を緩め。
「今も、俺の意思であんたの話聞いてるってちゃんと言えるよ。それに首締められた時だって…あんな状況だってあんたにやられるんなら本望だって思う自分も居たし………結構末期だよな」
( クスクスと笑みを浮かべ、不意に真剣な表情になってはいきなり相手の腕を引き寄せ抱き締める。
久し振りの相手の温もりを堪能しつつそろそろ返事をしなければなとどこか冷静に考えていて。
「…正直傍から見たら俺ってかなり気持ち悪いしさ。………あんたと一緒にいたらあんたまで変な風に思われんじゃないかな-とかって考えてた。髪だって黒く染めようと思ったんだ、…でも染めると能力解放した時に一部分だけ黒くなるの格好悪りぃよなとか。まぁ能力使わなきゃ良い話なんだけど」
( 無意識の内に抱き締める力が強まっては相手の肩に額を乗せ「…本当に…愛してる、ここ何日かもずっとずっと触れたかった」と囁いて。
甘い雰囲気の中視線が交わり相手の顎を軽く持ち上げその唇を奪おうとした時、突如玄関の開く音がしては互いに慌てて離れて。
相手の母親が入って来ては『あら、…お話中だったのにごめんなさいね』と柔らかく微笑み相手の前に腰を下ろしては父と会って来た事を話始める。
向かい合ってるにも関わらず相手と視線が合わないのは直ぐに感じ取れ席を外そうと。
『繿君って言うのよね、…あの人から聞いたわ。本当にごめんなさい』
「あ、…いや…俺は本当何もしてないんで」
『貴方のお父さんにも今度お礼を言わせてね』
( 柔らかい優しい微笑みに照れ臭そうに頭を下げては次に母親は相手の手にゆっくりと触れて。
『あの人と…ちゃんと二人で話したの。謝ってばっかで直ぐに人を信じる癖は昔と何も変わり無いのね。……………私も、…ずっと菊と向き合ってなかった』
( 泣きそうな表情で相手をしっかりと見詰める母親が相手の頭を撫で『こんなに、大きくなったのね』と。
その光景に自分は勝手に泣きそうになり目線を逸らしては表情を誤魔化していて。
ホラー映画は平気でも感動系は来る、母親がコートを脱ぎエプロンを付けながら『今日は調子良いからお店もちゃんと出来そうよ。最近菊に任せっきりだったのも…ごめんなさいね、後でお菓子持ってくから繿君もゆっくりして』と言うのをまだ感動中なのを隠して。
>桐崎
(相手の言葉がジワジワと胸に滲みてはどこまでも男前で包容力のある相手に心底惚れ直して甘い口付けを期待するも、突如帰ってきた母に冷や汗を流す。
久々に感じる母の眼差しに涙が溢れそうなのを堪えては台所に向かう母の背中を見詰めながら相手の手を床の上でそっと握って「…あんたが……父さんと話すきっかけをくれたおかげだよ。ありがとな」と小さく微笑んで。
その後暫くして妹と幼馴染が雑貨屋から帰ってきては母が作ったチーズケーキを皆で食べ穏やかな時間を過ごすも『ん、そう言えば菊はお母さんとお父さんに繿君とのこと話したの?』と唐突に切り出した幼馴染の言葉に口に含んだばかりの紅茶を吹き出しそうになって。
『やだー、汚い。もしかしてまだ言ってないの?』
『…繿君とのこと?何かあるの…?』
「……な…、なんでもないよ。母さん。……いや、追々話すから」
(流石に療養中の母に“男と付き合ってる”なんて言えない。
至極繊細で何気に孫を期待してる母のこと、三日間くらい寝込んでしまうかもと話をはぐらかしては当り障りのない話題に変えて。
(その後、もう少し相手と二人きりで話したいことがあったため自室に来るよう誘っては幼馴染に『お昼から上でうるさくしないでね』とからかってくるのに軽く眉を寄せつつ三階へ上がり相手を自室のベッドに座らせて「たく、…ハナのやつ」と小さくぼやいて。
それからすぐ相手に向き直り柔らかな銀髪に指を絡めては「…母さんにはいつか俺達のことちゃんと言うから。…ていうか言ってもいいか?」と先程の会話を気にして問い掛けて。
それから相手の髪を愛おしげに触れ続けては「そう言えばさ、…今ふと思ったんだけど。公園でチンピラ蹴散らしたのって…もしかしてあんただった?黒髪で顔も良く見えなかったけど……」と続け相手の反応を伺っては何となく相手だったと察して、助けられてばっかだなと苦笑を漏らして。
「…あの時のあんた、格好良かった。黒髪だからとかじゃなくあんただったからそう思ったんだろうな。…………さっきさ、傍から見たらどうとか、俺がどう思われるとか気にしてたけど俺は全然気にしないよ。周りがどう思おうと俺はあんたといたいし…、てかあんたの良さが分かるのは俺だけで良いと思ってる。変な風に思われてるくらいがさ、邪魔も寄り付かないし丁度いいだろ?まああんたを貶す奴が現れたら俺がしばくけどな」
(冗談っぽく笑いつつ半ば本気で述べては相手の髪に口付けて「この髪に触れていいのも愛していいのも俺だけ……他の奴には触らせたくない」と独占欲に満ちた瞳で相手を見詰め抱き締めては“愛してる”と耳元で囁いて。
そして少し身を離しては至近距離のまま相手を見詰め「………あのさ、今度二人だけでどこか出かけたい。……結局旅行中に星見れなかったし…水族館もあんたと行けなかったから」自分のせいだけどと言う言葉は飲み込み相手の返答を待って。
>露木
( 相手の自室にて他愛も無い話をしながら髪に触れられては擽ったい気持ちになる。
変装をしてた時の事を問われるが変装までして付き纏ってたのだなんて流石に重いかと口を噤む。
しかし何となく察したのか笑顔の相手に向き直ってはその独占欲さえ嬉しく抱き締め返しては頬に軽く口付けを落として。
誘いの言葉にも直ぐに頷いては「…俺もあんたと出掛けたいって思ってた」と緩く微笑んで。
それから穏やかな時間を過ごしてたが相手の傍という安心感もあり眠気が襲い掛かって来て。
相手を抱き締めたままうとうととしては軽く居眠りをしてしまい。
( それから数時間経ちパッと目を覚ましては隣に居てくれた相手に「ごめ………気使わせたよな」と。
明日には一度かえらなきゃだしたなと相手家族に頭を下げては「お邪魔しました」と。
玄関口、相手と二人だけになっては相手を抱き締め口付けを交わす。
「……………俺の部屋、あんたが泊まりに来てた時のまんまだからいつでも泊まりに来いよ」
( 別れを惜しむ様に相手の頭を軽く撫でてはホテルへと戻り。
丁度フロントで相手の父親と出会しては笑顔でこちらへと駆け寄り頭を撫でられて。
『妻とも…息子とも娘とも話が出来たよ。ありがとう、…皆大きくなってて………こんな日が来るなんて思っても無かった』
「良かったですね、…安心しました」
( 子供の頃に相手の父親から与えられた温もりの恩返しをする事が出来ただろうかと綻ばせてはチェックアウトを済ませた父親を見送って。
>桐崎
(相手が去った後、浮かれた気分のまま自室に戻ってはまだ相手の匂いが残るベッドに寝転ぶ。
相手と分かり合え金融会社も昨夜から音沙汰はない。相手がバイトを詰めすぎているのが気になるがとりあえず自分のバイトが少し落ち着いたら大学へ戻ろうと決めて、身を起こしては店の手伝いなどをして。
(数日後、アパートの大家の厚意でそのままだった部屋に戻っては荷物を置いて相手に《今から寮に行く》とメールを送り部屋を出るも道中、師範と出会し“話がある”と近くの喫茶店に連れ込まれ。
『突然、すまない。菊が帰ってくると大家さんに聞いて慌てて来たんだ』
「…そんな急ぎなんですか?」
(尋ねると師範は持っていた紙袋から“意味深な物”を差し出して来て、すぐそれが何か分かると思わず「は?」と声を出してしまいすぐに突き返して「見合いなんて…俺、結婚願望全然ないですよ」と。
____“意味深な物”とは所謂見合い写真で、話を聞くに親族と仕事の付き合いでどうしても縁談を取り持たなければならず頼めるのが自分しかいないらしく。
「…でも俺、付き合ってる人いますし、気もないのにその女性に失礼になるので。…申し訳ないんですが…」
『そこを何とか。形だけでもいいんだ。相手方の女性も了承済みだから』
(それでも…と渋るが何度も懇願されては断り切れなくなり小さく頷いては、用があるからとせかせか店を出て行く師範を見送り、残った“意味深な物”に大きな溜息を吐いて。
(その後、寮へと訪れてはまっすぐ相手の元へ行きたいのを堪えて兄の部屋に向かう。
重たい空気の中、部屋に招き入れられては今まで迷惑を掛けたことを深く頭を下げ謝罪して。
『…いいよー、正直辛い所あるけど何となく菊が本気じゃないって分かってたからさぁ』
「……ごめん」
『いいって。俺も菊に酷いことしたし。正確には俺じゃないけど』
「………?」
『あーいいのいいの。…ところでその紙袋なに?』
(見合い写真の入った紙袋を指さされてはギクリとするも黙っておくと面倒なため先ほどの事情をおずおずと話して。
『また面倒引き受けたね……、ちゃんと繿に話なよ』
「……そうする。…彼奴、まだバイト漬けなの?」
『あー、なんか子供たちの卒業と入学の費用がどうのって言ってたからなぁ。まだ頑張ってると思う。…俺も支援するかな。なんかこのままほっとくとぶっ倒れそうだし』
(兄の言葉に自分も出来ることなら支援したいと思うも先日百万が飛んで余裕がなく力になれないことを情けなく思いつつ、今は早く相手の顔が見たいと腰を上げて。
「……じゃあ俺、繿のところ行くから」
『ん?さっき繿に《菊が俺の部屋にまっすぐ来てくれたよ♡繿も混ざる?》って送ったから来ると思うよ』
(ケロッと送信画面を見せてくる兄に何勝手に…と溜息を零すも相手が来る保証はないため紙袋を手に兄の部屋を出ようとして。
>露木
( 居酒屋でのバイトを終わらせ寮へと戻る中、少し前に来てた相手からのメールに頬を綻ばせる。
…が、次に来た兄からのメールに気付いては兄に何されるか分からないと全力で走り出し兄の部屋へと駆け込んだ所で丁度扉に手を掛けてた相手と衝突しそうになり。
ニヤニヤと笑みを浮かべる兄が『あれ-、そんなに汗かいて走って来たんだ-』とからかう様に言うのをキッと睨み付けては相手の腕を取って。
「綸だったら変な事するかもしんねぇだろうが!」
『良く分かってる-。俺何時だって菊の事狙ってるからね、繿に遠慮なんてするつもり無いし』
「誰がやるか!」
( 何とも子供地味た喧嘩をしてるという事など自分でも気付いておらず相手の腕を引き自室へと来た所で漸く落ち着きを取り戻し。
風呂を沸かしながらキッチンの棚を開けたら所で買い溜めてたカップメンが音を立てて雪崩を起こし面倒臭そうに拾いながら奥に合ったコーヒーと紅茶を取る。
相手に「先に風呂行って良いよ、今日ゆっくりしたいからもう炊いといた」と告げ流石に相手にカップメンを振る舞う訳にも行かずにそれなりにある食材を手に取る。
食材はあるのに料理が苦手な事もあり食生活は最悪、そろそろ気を付けなければなと。
相手にバスタオルを手渡し「終わったら…飯、一緒に作ろうぜ。………俺料理とか苦手だし」と。
相手を風呂に送り出した後、散らかってたCDやら雑誌やらを棚に戻してた所でふと相手の鞄からはみ出てる見合い写真に目が行く。
“まさか”と思いながら触れない様にそれを確認しては動きを止め考えて込んで。
まさか今日自分の部屋に来たのは別れを切り出す為だったのか………、嫌な考えが浮かぶもぶんぶんと首を横に振ってはそわそわとしながら相手の風呂上りを待って。
>桐崎
(雪崩落ちるカップ麺に苦笑を漏らしつつお言葉に甘え先風呂を済ませてはまだ湿った髪を首に掛けたタオルで拭きつつ台所にいる相手の隣に並ぶ。
見合いの事は入浴中に相手に合った栄養の摂れる食事考えるうちに忘れてしまい相手の心中など知らずに調理を始めテキトウに作ると小さなテーブルに並べ相手が作った料理から口に運んで。
「料理苦手って言うけど俺はあんたの料理好きだけどな。…普通に美味しいし」
(良く味わいながら感想を零してはカップ麺がしまわれる棚を何気なく見て「でも作る時間ないよな」と呟き相手に視線を戻して「…作りおきでいいなら俺、作るよ。というか作らせろ。……一人分って作るとき微妙な量だし二人分のが作りやすいんだよ。それにあんたに食べてもらったほうが作り甲斐あるし」と気恥ずかしげに述べては相手の髪に触れ。
「成長期なんだしさ、栄養のあるもの食べないと。…ってそれ以上でかくなられても何か癪だけどな」
(冗談交じりに笑いさり気なく相手高身長を妬んではワシャワシャと相手の髪を撫で回すもどこか落ち着かない様子に気付いては微かに首を傾け相手の顔を覗き「どうかしたか?」と。
そこで相手の視線の先が一瞬鞄から覗く見合い写真に向けられたのに気付いてはハッとなり慌てて「ち、違う。これは…」と師範との事を話して弁解して。
「…御免…師範には世話になってるし断りきれなくてさ………。ちゃんとあんたのことは愛してるよ。でも…あんたが駄目だっていうなら今からでも見合い断る」
(相手とはもうすれ違いたくない一心でまっすぐに相手を見詰めては気持ちの高ぶりから相手の手を握り。
この時、まだ見合い写真と名前すら見ておらずその女性が中学時代能力と記憶が不安定だった時付き合っていた自分の“元カノ”だとはまだ知らずに。
>露木
( 入浴を終え食卓を囲みながらまたこうして相手と居られるのが幸せな筈なのに見合い写真の事が脳裏をチラ付いては無意識に表情がぎこちなくなっていて。
しかし相手の言葉一つ一つにしっかり反応しては照れ臭そうにするも「それは…助かる。あんたの飯凄い旨いし、…バイトも頑張れる」と小さく答える。
そわそわとしながら相手の問い掛けに無意識に相手の鞄に目が行ってしまい内心“しまった”と思うも時既に遅く慌てて話し出す相手を見詰めて。
相手の話を聞いた所で勝手に誤解してた自分が恥ずかしくなり“駄目だと言うなら断る”と言った相手の頭を軽く撫でては首を横に振り。
「…いや、良いよ。ちゃんと信じてるし、…俺もあんたの事愛してるから」
( 相手の気持ちと自分の気持ちはちゃんと繋がってるという安心感から緩く微笑んではまだしっとりと濡れる相手の髪をわしゃわしゃと掻き回し「………あんた無意識の間にモテてんだから…あんま妬かせんなよな」と。
( 翌朝、気持ち良く目を覚ましてはまだ寝息を立てる相手の髪を弄びその寝顔にニヤけたりして。
ふと目に入った見合い写真、いけない事とは分かってるのに“ちょっとだけなら…”と悪い考えが浮かんでは見合い写真を抜き取り少しだけ開いて。
直ぐに元通りに戻しもぞもぞと相手の隣に戻っては相手の頬に触れたりしながら「……………結構な美人だった、よな…」と小さく呟いて。
そこで相手が寝返りを打ったのに相手が着てる自分のTシャツの袖が長く、いわゆる萌え袖という物になってるのに目が行っては相手の額に口付け「…かわい、」と無意識に呟いてしまっていて。
( その頃、見合い相手の女性(元カノ)はやっと巡り会えた相手との見合いに不安と期待を抱いており。
師範が送り届けたのは以前相手が就職にと買ったスーツを試着した時の写真の為“見合い写真”とは言えなかったがそれを大切そうに見詰めては見合いの日時が書かれたカレンダーを見詰める。
『……………菊、…覚えてるかな』
( ボソリと呟いては再び写真に目を写し頑張ろうと言い聞かせながら大学へ向かう支度をして。
(/毎回毎回煩い本体失礼します←
今回勝手に菊君の元カノを出してしまいました…!!!
イメージとか違かったらバンバン言って下さい!!!
繿結構嫉妬すると思われます←
今回の素敵展開にもニヤニヤが止まりません(*´艸`*)
>桐崎
(翌朝、額のあたりに擽ったさを感じて目を薄っすら開いては間近に愛しい相手の顔があり、寝ぼけていたため呟きも聞こえず相手の額を自分の胸に押し当てるようにして抱き寄せては起きた傍から相手の首筋や髪に口付けたりとじゃれついて。
(その後、身支度を済ませ相手の部屋にて二人穏やかに朝食を取るも突如騒がしく兄と青年が乱入してきては『兄さんのかじりかけのトースト俺がもらーい!』と抜かりなく青年が相手に寄り添い相手のトーストをかじって。
『…結局何だかんだこのノリが落ち着くよねー』
「…なんか言ったか?」
『別にー。それより見合いの話はどうなったの?』
『見合い?!露木が?え、この時代に見合いとかするんだね』
「…ああ。…でもそんな昔みたく形式張ったものじゃないらしいから」
『ていうか菊って女扱えるの?…“女”の匂い“は”全くしないんだけど』
「…………どういう意味だ、それ」
『露木は女知らなさそうだもんねー。まあ俺も生まれる前から兄さん一筋だけだけど』
「……………」
『え、マジでその歳で女とは付き合ったことないの?』
「…う、煩いな。歳とか関係ないし。昔の話はいいだろ。……今俺には桐崎だけだから」
(正直相手の前で過去の恋愛話をしたくなくはぐらかすように相手を抱き寄せ軽く頬に口付けてはもくもくと朝食を食べて。
(朝食を終えて相手と二人になり、少しでも一緒にいたく相手をバイト先まで送ると言って学内の敷地を出たところ、突如女がぶつかってきてよろめかれては慌てて女を支えて。
互いに謝り女が顔を上げて視線が交わってはその忘れもしない顔立ちに目を見開く。
もう6年近く経つだろうか__、顔付きも背丈も随分変わったがその澄んだ瞳は全く変わっておらず…。
「…奈緒?」
(小さく彼女の名を呼ぶと女はどこか切なげに『…覚えててくれたんだね』と微笑み相手を見て軽く頭を下げ。
この時未だ自分は見合い写真を見ていなくただ偶然“元カノ”に会ったと思っては変な別れ方をしたこともあり「…久しぶり」とぎこちなく微笑み。
『う、うん。これから出かけるの?……あの次会う前に話したいことあるから連絡先教えて貰っていいかな』
(“次会う”の言葉が引っかかったが真剣な表情に断れず互いの連絡先を交換しては『じゃあまた今度ね』と学内に入って行く女の姿を見送り、チラと相手を見て。
“元カノ”と告げたほうがいいのかと迷うがもう数年前…しかも中高時代の話。
話すだけ相手を不安にさせる…聞かれなければいいかと考えてしまい「ごめん待たせたな、行こっか」と相手の手を引いて。
この時相手が見合い写真を見ていたなど知らずに。
(/本体様、大歓迎です!!(抱きつ/殴←
そして元カノ登場有難うございます!名前は“奈緒”にさせて頂きました。
イメージなどは後付けなのでどんどん盛り込んでいってくださいませ!
一応設定としては中三から高一くらいまで付き合っていて菊の家庭事情と彼女が菊の能力を受け止めきれず別れた感じです、テキトーです←
今度も菊がかなり我が儘で周囲を振り回すと思いますがよろしくお願いします笑
>露木
( バイト先に到着し先程からモヤモヤと感じる不安を拭い切れずに相手の服を軽く引いては触れるだけの口付けをしジッと見詰めては「…終わったら、…電話する」と。
バックルームで着替えをしながら先程の相手と“見合い相手”の余所余所しい雰囲気に何処と無く知り合いだと言うのは察して。
見合い相手が相手を見上げた時の切な気な視線に未だ考え込むも仕事に集中する様にして。
( その頃、見合い相手である元カノは勇気を振り絞り相手の携帯に電話を掛けては応答と共に聞こえた相手の声にほっとした様に微笑んで。
『…あ、あのね。………ほら、今週じゃない??…引き受けてくれたって事は…私期待しても良いの??』
( 遠慮がちに見合いの事を問い掛けるも恥ずかしさが込み上げたのか『ご…ごめん、変な事聞いちゃった。………もし良ければ今度二人でご飯食べに行かない??………こうして折角会えたんだから』と。
照れ臭そうな声で『…話したい事もあるの』と告げては『わ、私そろそろバイトあるから切るね!!!…もし良ければ菊も偶に電話頂戴??』と言い電話を切って。
( 漸くバイトも終え相手に電話を入れようとした所で向かいのコンビニから出て来た見合い相手の女性に気付けばさっさとその場を去ろうとする。
しかし夜でも目立つこの髪、『あの、…昼間…菊と一緒に居た…』と声を掛けられては無視する訳には行かずに渋々振り返る。
「……………どうも」
『此処でバイトしてたんですね、…菊とは…大学のお友達か何かなんですか??』
「………あぁ、…露木は先輩です。俺高校なんで」
『そうだったの??………ふふ、ちょっとびっくりしちゃった。菊後輩にも人気でしょ??私と居た時も凄かったんだから』
「………は??」
『一時期、…菊の追っ掛けの女の子達に虐められた事もあったの、でも菊のお陰で助けられちゃった。………久し振りに会ったのに何も変わらないのね、前よりも格好良くなっちゃって』
「………あの、露木とは」
『ごめんなさい、私ばっかり勝手に喋っちゃって。私そろそろ家だから帰るね。菊ってばいつも他人に気を掛けて自分の事後回しにしちゃったりするから…良かったらこれからも支えて上げてね』
( 一人になった帰り道、やはり相手の事を知ってる………___否、それ以上の関係だった事を思わせる様な口振りに変な焦燥感と不安が生まれては無意識に相手の連絡先に連絡を入れ「…今どこにいんの」と何処と無く低い声で問い掛けて。
( / 奈緒ちゃんとの設定了解致しました-(´∀`)
もう奈緒ちゃん謙虚で可愛いっ((
だが私はナツちゃん推し←
嫉妬するとかなり無愛想になり拗ねまくる面倒臭い繿ですが宜しくお願いします(笑)
心にも無い事言ったりして後から後悔する学習能力ない馬鹿狼です(笑)
>桐崎
(元カノからの電話、その内容に流石に違和感を覚えては電話を切ったところで漸く見合い写真を見て話の合点が行きその話のややこしさに頭を抱える。
しかし見合いをする前に少し話して置きたいのは確かだったため後で電話しようと思い。
(夜、勝手に相手の部屋で寛いでは相手のバイトが終わる時間を見計らって外へと出る。
もう少しで相手のバイト先というところ相手からの着信に慌てて出てはその低声にん?と思うも疲れてるのかなと勘違いして「…今は……あ、いた」と電話を切り前方に居る相手に小走りで駆け寄っては後ろから抱き締めて「あんたの後ろ」と悪戯に微笑んで。
相手を此方に向かせ「バイトお疲れ。飯、作ってあるから早く帰ろう」と軽く頭を撫でて手を引いたまま相手の部屋に上がり込み「風呂と飯、どっち先にする?」とベタな質問を可愛げなくしながら相手の上着をハンガーにかけて。
(相手が風呂に入る間、相手の部屋にある自分は普段あまり振れないジャンルの雑誌やCDを見たり聞いたりしては趣味を共有したいし今度CD借りて聞こうかななんて考えていて。
ふと元カノへの電話がまだだったことを思い出しては流石に相手の部屋で電話はと一度は渋るが入浴中だしいいかと軽く考え元カノへと電話をかけて。
『あ、菊?電話してくれたんだ』
「ん、遅い時間に御免。…見合いまで後少しだろ?会えるの明日くらいしか無くてさ」
『明日会ってくれるの?分かったじゃあ明日の夜、レストラン予約しとくね』
「…あー、なんか任せて悪い」
『………』
「…ん?」
『あ、ごめん。なんかすっごく声変わったなぁと思って』
「…当たり前だろ。あれから大分経つし。……奈緒も大人っぽくなったよ」
『それって良い風に捉えていいのかな。………なんか普通に話してくれて安心した。じゃ、じゃあ私そろそろ寝るね。またメールするから!おやすみ!!』
(プツンと一方的に切れた電話に、最後涙声だった気がして眉を寄せるも“普通に話してくれた”とはこっちの台詞だと相手のベッドにドサリと身を沈める。
あの頃は自分の能力がクラスに知れて“いいなぁ勉強しなくても記憶操作すればなんでも出来るもんな”“お前、実は本当の友達いないんじゃね?”と散々言われ、そんな中彼女だけが周りからのいじめに臆さず自分の傍にいてくれた。
迷惑かけるからと何度も拒絶しても味方でいてくれて、しかしついに彼女がいじめに耐え切れず不登校になった時、“こんなの耐えられない。なんで菊の傍にいるんだろ。菊が私の記憶、操作してるんじゃないの?”と言われ、馬鹿だった自分は彼女を遠ざけるため「そうだよ」と答え、彼女がクラスの輪の中に戻っていくのを確認して転校をした。
もう6年も前の話しだ。あの頃は記憶が戻りきっておらずもっと卑屈で餓鬼だった。
正直、時間の経過が傷を癒やして未練も今はない。…何より今は相手がいる。
何があっても相手を一番に考えよう、そう決めては相手が風呂から上がってくるのを待ち。
>露木
( バイトからの帰り道に相手と鉢会い、いざ相手を目前にすればその穏やかな雰囲気に流されてしまいそれでもまだぎこちない表情で寮へと戻る。
先に風呂を済ませようとまだモヤモヤした心境でシャワーを浴びいつもより早目に風呂を終えるが自分の上の服を持って来るのを忘れた事に気付いて。
「露木、棚の中から俺のTシャツ………___」
( 相手に取って貰おうとも僅かに聞こえた相手の声に疑問に思っては取り敢えずジャージを履き、盗み聞きなんて最低だと分かって居ながら聞き耳を立てて。
“奈緒”と言う名前にふと浮かんだのは今朝の見合い写真、確か記入されてた名前は“奈緒”だったなと思い出してはまた嫉妬心に駆られて。
随分と仲良さそうじゃないかと眉間に皺を刻み相手の電話が終わってからも暫くぼんやりとしていて。
髪からポタリと肩に落ちた雫の冷たさにハッとしてはタオルで頭を拭きながらズカズカと部屋に戻りTシャツを取り。
相手にバスタオルと自分のシャツを手渡しては今度は相手が風呂を上がるのを待ちながらTVの電源を入れて。
( 相手の風呂上り、ほんのりと香るシャンプーの香りは自分と同じ物で僅かに大きめの服の袖を捲る相手に目が行っては邪魔だと分かってながら「…捲んなよ」と意味の分からない事を言って。
濡れた髪を拭く相手に後ろから抱き着きわしゃわしゃと髪を掻き回しては何処と無く拗ねた様な態度で。
「…腹減った、あんたの飯楽しみにしてたんだからさっさと飯にしよ」
( さり気なく恥ずかしい事を言ってるのも自分では気付いておらず温めては食卓に並べられる食事に食欲をそそられて。
食事を抜く事が増えてた以前と比べ、相手が来てからはそんな日も無くなりつつあり調子も良く。
「………なぁ、明日とか暇??俺バイト休み」
( 先程の電話で聞こえてたのは一部、明日約束がある事など知らずに問い掛けては相手に向ける。
その刹那、なんと言うタイミングか相手の携帯に元カノからのメールが入っては《明日のレストランもうネット予約しちゃったんだけど…ここ素敵じゃない??》とレストランの画像も添付されて。
>桐崎
(電話の内容を一部聞かれていたとは知らずどこか甘えてくるような相手に可愛いなぁと呑気に思いながら御飯を口に運ぶ相手を頬やましげに見詰め。
相手からの誘いに嬉しくなるも先程の電話と経った今来たメールを見てはウッと言葉を詰まらせる。
午前中ならといいたいところだが運悪く教授に大学の入学直前説明会の手伝いを頼まれていて。
「……御免、明日は一日予定が埋まってて。その…遅い時間なら来れるんだけど」
(言いにくそうに述べては「今度予定合う時絶対二人で過ごすようにするから」と夜元カノと会うことは切り出せずに食事と片付けを済ませて。
その後他愛のない話の中「そうだこのCD借りて良い?あんたが聞く曲知っておきたい」と束縛じみたことを言っては明日会えない分甘えさせてやろうと相手を抱き締め頭を撫でたり頬や唇に軽く口付けたりして。
それでもまだ一線を超えるのは恐怖心があり心地よい時間に甘えてはベッドの中で相手の背中を撫でながら眠って。
(翌朝、早めに起きて夜まで会えないからと相手に弁当を作っては「用事済んだらメールする」と額に口付けて相手の部屋を後にして。
(そしてあっという間に元カノとの約束の時間、早めに指定された場所に行くとすでに彼女は其処に居て「早かったな」と駆け寄っては一緒に予約したレストランに入って大きなガラス張りになっている隅の席に座って。
『ここ大人っぽくていいでしょ?中学の頃はカラオケとかファミレスばっかだったよね』
「…そうだな」
『……うん。……菊、あのね。……私、あの時のこと謝りたくて…、菊のこと疑ってどうかしてた』
「……奈緒は何も悪くないよ。奈緒が一番辛い時に突き放したのは俺だから」
(フルフルと首を横に振って謝る彼女の頭を軽く撫でてやっては過去の話はいいからと話題を切り替えて他愛のない話をして。
『え!?じゃあ菊…見合い相手私って知らずにOKしたの?しかも付き合ってる人いるんだ…』
「まあ…。見合い相手…奈緒も“形だけ”で良いって話だったから」
『……そ、そうだよね。うん“形だけ”。…………あ、それって私の好きなアーティストのCDだ。菊も聞くの?』
「…あー、これからな。付き合ってる奴から借りたんだ」
『へ、へぇ。…じゃあもうすぐやるそのアーティストのライブも行ったりする?』
「予定はないけど…あるならチケット取って誘おうかな」
『………』
(どこか拗ねる元カノにそんなにチケットの競争率高いのかなと馬鹿な勘違いをしつつ、食事の会計を済ませて外へ出ては、薄着の服で寒そうにする元カノの肩に自分の上着をかぶせてやり「なんでそんな薄着なんだよ。風邪ひくぞ」とからかい「家、送るよ」と夜女性一人を歩かせては危ないと軽い気持ちで言って。
>露木
( 翌日、寝惚けたままに相手を見送っては内心相手と過ごせない事に気落ちしつつ、それでも珍しく休みを取れたのだからと青年と遊ぶ事にしては特に何をするへぎでも無く街を歩く。
ふと立ち寄ったCDショップの大きなスクリーンテレビに自分の好きなアーティストが写ってるのに気付いては足を止め“ライブやるのか”と呑気に見ていて。
それと共に昨夜相手がCDを借りてった時に言った言葉を思い出しては頬が緩みそうになるのを耐えて。
『兄さんこのアーティスト好きなんだ-、じゃあ俺もCD買っちゃおうかな』
「は??あんま知らないのに買うの??…俺この人達のCD結構持ってるから貸すし聴いて良かったら買えば良いじゃん」
『本当??やった、じゃあ明日借りに行くね』
「俺バイトで居ないと思うからさ、前に合鍵渡したので勝手に入って良いから。…明日だけだからな、それ以外で勝手に入ったらしばくから」
『わ、冷たいなぁ』
( ケラケラと笑う青年と適当な店を回ったりして最後は時間潰しにとカラオケへと入り時間を過ごして。
( 夜、変わらない相手の優しさに頬を微かに赤らめた元カノはレストランを出て少しの所で僅かに背の高い相手を見上げ何処か切なそうに微笑んで。
相手の首に手を回し相手の顔を近付け後少しで唇が触れるという所、元カノは一瞬悲しそうな表情をし相手の額にコツンと自分の額を当てて。
『ふふ、悪戯しちゃった。キス…されるかと思った??』
( 柔らかい微笑みでクスクスと笑っては『………お見合い、ちゃんと来てよね』と真剣な表情で言って。
再び歩き出そうとしたその時、靴を擦った様な物音と共に元カノが振り向けば青年と共に自分が居て。
青年と自分の立ち位置的に先程の元カノの“悪戯”は完璧にキスしてた様に伺え目を見開き相手を見詰める。
「………………………露木、」
( ボソリと呟くも俯き唇を噛んでは居た堪れなくなり「先に帰る」と小さく言っては早足で寮へと戻り。
困った様におろおろとする青年は相手の元に駆け寄りピシッと額を弾いては『………露木の彼女なの??』と首を傾げるも頬を赤らめ慌てる元カノと咄嗟的に否定する相手を見比べては困った様な表情をして。
『兎に角戻るね』
( パタパタと青年も走り出した後、二人っきりになっては元カノもまさか男同士で付き合ってるなどと想像にも無いのか『ど…どうしたのかな』と。
>桐崎
(どこか切なげに走り去る相手に、何で?と眉を寄せるも青年の問いに“勘違いされた”と気付いてはすぐ後を追おうとするも元カノを一人おいていくわけにも行かず取り敢えず元カノを家まで送り直ぐに相手に《さっきのこと話したいから今からそっち行く》とメールして寮へ走ろうとする。
が、突如家に入ったはずの元カノに腕を掴まれては『今、家一人なの。…最近誰かに覗かれてるみたいで怖いから一緒にいてくれない?』と泣きそうな顔で懇願され。
流石に夜二人では…と思うも此処で駄目だと断れる性格でもなく「…わかった」と頷いては彼女の家に上がって、先程相手に行くとメールしたばかりなのに《ごめん行けなくなった。一緒に居た子とのこと気にしてるならなんでもないから。明日会ってちゃんと話したい》とメールして。
この時、元カノの家にあがるところを何者かに写メられていたことは気付かずに。
(翌日、元カノの部屋のソファで目を覚ましては軽く話した後、自分は一度アパートに戻ってシャワーや着替えを済ませて相手の部屋へと向かう。
扉は開いていて相手かと思えば其処に居たのは青年であからさまに落胆気味に肩を落として。
『露木分かりやすっ!…てか昨日の夜あの後どこ行ってたのさぁ』
「……ちょっと」
『ちょっとねぇ?』
「…………あんたは何しに来たの?」
『兄さんのCD借りに来たんだよ。兄さんのことは全部知っておきたいからね。曲覚えて兄さんと語るんだぁ。あとライブも誘おうと思って昨日チケット手に入れた!しかも一番良い席』
「…え、もう?なんか倍率高いって聞いたけど」
『ふふふ、俺を誰だと思ってるのかな?』
「…ズル。……俺が誘おうと思ってたのに…」
『早いもの勝ちだよー。どこぞの女といちゃついてるからいけないんだって』
「イチャついてなんか…」
(ムッと青年を睨むも相手とライブに行けないかもと思うとショックで追い打ちをかけるよう『兄さん今日バイトだから夜まで戻らないよ』と言われては小さく溜息を吐いて。
青年が出て行ってから暫く相手の部屋に無駄に居座ってはCDをかけたまま相手の香りが心地よく夕方近くまで寝てしまい、慌てて晩飯を作りおいては“お疲れ様”と可愛さの一欠片もないメモ書きを残しすれ違いで深夜バイトに出かけて
>露木
( 相手が自室を出て数十分後、漸くバイトから戻ってはテーブルの上に晩飯と共に置かれたメモを拾い上げる。
やはり相手はあの見合い相手の元に行ってしまうのだろうかと不安に駆られあんな美人には適わないかと。
昨夜のあの光景___見合い相手の女性の背丈に合わせる様に首を屈め口付けをしてる様子が脳裏に焼き付いては頭をガシガシと掻き回して。
テーブルの前に腰を下ろし、何時もの如く自分好みの美味しい食事に舌づつみしてはそれでも何処か寂しく連絡の無い携帯を見詰めては溜息を付き。
( 翌日、そのまま眠りに付いてしまってた為食器を洗いシャワーを浴びては今日は夕方からのバイトなのでそれまで休もうかと。
特にする事も無く一人でぼんやりとしてた所で玄関口の簡易ポストにストンと何かが入れられた音がしてはのそのそと立ち上がり玄関を開ける。
しかし行動が遅かった事もあり既に誰も居らず、代わりにポストに入れられた封筒を取っては宛先も差出人も何も書かれて無い為に不審に思って。
首を傾げながら封筒をビリビリと破いた所で数枚の写真が落ちては何なのかと。
しかし写真の中の“それ”に気付いた途端思考が止まりゆっくり拾い上げてはギリ、と歯を食い縛り。
疑いは確信に変わりゴミ箱にそれを投げ捨ててはまだ少し早いがバイト先へと向かって。
( モヤモヤや苛立ちとの葛藤の中、さっさとバイトを終わらせるも相手には連絡を入れずに早足で寮へと戻る。
よくよく考えれば青年に合鍵を渡しておいて何故相手には渡してなかったのだろうかと思うも今この状況を見る限り渡さなくて良かったと。
鍵を開けっ放しにしてる事すらすっかりと忘れシャワーを浴びカップメンでの夕食を済ませては深夜漸く布団へと入る。
「……………んだよ、………あの女が良いってんなら言えば良いじゃねぇか」
( ボソリと呟いた所でいきなりに玄関の開く音がしては寝間着姿の青年が『兄さん開けっ放しは駄目でしょ-』と勝手に入って来て。
「何入って来てんだよ」
『や、眠れなくて』
「帰れっての」
『や-だね』
( ケロリとした表情で言う青年に呆れた様に溜息を付いてはまだ期待してるのか鍵を開けたままにしていて。
それを青年が『危ないよ-??』と咎めて来たが無視し「寒いだろうが、隣入れば」と無愛想に言っては飛び込んで来る青年に背を向けて。
>桐崎
(翌日朝方にアパートへ戻っては睡魔に負けてそのまま眠ってしまい目を覚ますと昼過ぎで、掃除や洗濯を済ませては相手にメールをと携帯を取り出すも丁度バイト先から電話がかかってきてすぐ来て欲しいと言われては相手にメールしたつもりでそのままアパートを出て。
(夜、相手に元カノとの写真が送りつけられているとも知らず早く相手と話したい一心で相手の部屋向かい、何故か開いている扉に疑問を抱きつつそっと中を覗く。
すでに部屋は暗く中が見えにくかったがベッドの上で青年を抱きしめる相手の姿を見て愕然とする。
よくよく考えればそれは相手の癖、しかし一緒に寝ているのが許せなくどうせ青年と仲良くライブに行くんだろと我が儘にも拗ねては相手の不安も知らずにアパートに引き返して。
(翌日見合いの日、形式張ってないとは聞いていたが指定された場所に来てみれば其処は料亭などではなくただのカフェで親も介さない驚くほど軽いもので、はじめ元カノの親の仕事関係者と思わしき人と師範が数分話をしただけで直ぐに二人きりにされて。
これじゃあただのデートと変わらないなんて呑気に構えつつ何故か緊張している様子の元カノを見ては「肩に力はいりすぎ」とからかうように笑って。
『ねえ、菊。このあとの見合いの段取りが終わったら一緒にデパート行かない?そこにあるCDショップのイベントでこの前菊が持ってたアーティストの限定グッズ販売がやってるの。一部の人にしか知られてないからきっと菊の彼女さんも知らないし買ってたら喜ぶんじゃないかなーって』
「……彼女…、……、あ、…行く。教えてくれてありがとな」
『ううん。…菊と一緒に行きたいと思ってたからいいよ』
(寂しげに笑う元カノにやっぱり昔のことで自分に苦手意識でもあるのかなと思いつつ、頭の中は既に相手のことで青年とのことは気になるがグッズ喜んでくれるかなと相手の笑顔を想像し綻びそうになるのを必死で堪えていて。
(一方、相手に写真を送りつけた人物、元カノの覗き魔こと中学時のクラスメートは元カノは絶対自身に振り返らないと確信しても尚ドを超えた執着心で彼女に付き纏って新しく出来る“彼氏”の選別をしていて。
そして最近傍にいる自分のことを徹底的に調べ上げ相手と付き合ってることを突き止めてはなんとしても別れさせて元カノとくっつけさせ、あわよくば彼女の良き友になるという何とも可哀想な計画を立てていて。
しかし彼(覗き魔)は本気で、持ち前の人の良さで相手や自分の近辺の人達と接触し、連絡先などを手に入れ数ある携帯の一つから相手の携帯に《露木と一緒にいる女は露木の元カノ》とメールを送りご丁寧に中高と付き合っていたころの写真を添付して送りつけて。
その後も見合い時の楽しげな写真などを嫌がらせのように送りつけ。
>露木
( バイトから帰り何時もの如く気怠気な様子で部屋のベッドへと横たわってはバイト中しつこく来てたメールや留守電やらを確認する。
そこで目にしたのは相手と見合い相手の楽しそうな様子や二人の過去の写真。
やはり本当によりを戻すのかと思えば自分ばかりが相手を思ってる物だと勘違いし悔しくなって。
どうせ相手は今日もあの元カノと一緒に過ごすのだし自分の所には来ないだろうなと勝手に考えては眉間に皺を寄せたまま受信されたあの写真を次々と消す。
明日のバイトは午前中に終われるがその事を相手に報告するつもりも無くそのまま居眠りをして。
( 数時間の居眠りの中、話し声に眉を寄せては漸く目を覚まし勝手に自分の部屋の中にいる若頭と青年に「………何してんの」と。
『まぁた色々面倒な事になってるんだろ-なって。まぁ僕的には仲悪くなってくれた方が嬉しいんだけどさ、菊の事がっつり貰えるし』
『でね、単刀直入なんだけど…修羅場にしちゃおうって話になったの』
「はぁ??」
『だから、折角の木ノ宮の能力を活かして!!!菊を修羅場に巻き込んじゃおうって話』
「無理、女になっても碌な事無かった」
『じゃあこのままで良いの??…ま、僕はどっちでも良いんだけどね』
( 自分も何処と無く嫉妬を抱いており相手がその気なのならこっちもやってやろうじゃ無いかと「…直ぐ戻せよ」と小さく言っては大人しくして。
( そして青年と街へと向かうが意味深なメールが来てたのは自分がバイトの時の時刻。
まさかまだ一緒に居る訳無いだろう………___と思った矢先、仲良さそうに至近距離で話す二人がデパートから出て来ては唇を噛み締めて。
『ほら兄さん、“ちょっと!!!その女誰よ!!!”とか言って来なよ』
「……………良い」
『へ??…何で??』
( 向かい合う青年の後ろの相手と不意に目が合ってはキッと睨み付け青年の腕に絡み付き「………そんな事しても馬鹿みたいだろ。もう帰る」お。
『え、ちょっといきなりどうしたの??………っていうか兄さんちっちゃ………』
「黙れ、良いから俺に合わせてろ馬鹿」
( 苛立ちを顕にムスッとしてはそのまま青年と手を繋ぎさっさと去ろうと。
>桐崎
(デパートのCDショップにて無事限定グッズ(ハンドタオル)を購入してはそのアーティストの良さについて語る元カノの話を相手も好きだからと言う理由で真剣に耳を傾ける。
がデパートを出た所で何故か女姿の相手と青年と出会しては、小さく目を瞬かせ唖然とするも相手が青年の手を引き去るのに気付いては一瞬元カノの存在を忘れて慌てて追い掛け相手の細い腕を掴んで。
「…なんで、その格好してるの?…もしかしてまた面倒事?なんかあったの?」
(相手の気も知らずまた何か厄介な事件に巻き込まれたのかと心配するもどうやらそうではないらしく、昨夜の相手の部屋で二人が抱き合う光景が浮かんではまさかと眉を寄せ。
「……あんた達付き合ってるとか?……“元のまま”だと周囲の目が気になるからそんな格好してるのか?」
(身勝手に嫉妬して思わず相手の細い腕を掴んでいた手に力が篭もるも相手が僅かに眉を顰めたのに気付いては「ご、ごめん…」と慌てて手を離し目線の低くなった相手を見下げて。
滅多に見られない相手の女姿、こんな状況でも可愛い、抱き締めたいと思う自分は相当参ってると自重しつつ少しだけ身を屈めて相手と視線を交え「……なあ、女にまでなって此奴を一緒にいたいのか?……赤城のこと好きなわけ?」と眉を下げて相手の柔らかな髪に触れようとする。
が、暫く少し離れたところで見守っていた元カノが痺れを切らしたのか銀髪に伸ばしかけた手を後ろに引かれてしまい。
『は、初めまして。私、今日菊とお見合いした奈緒っていうの。菊とは昔付き合ってて偶然でびっくりって感じで。……二人は付き合ってるの?二人ともモデルさんみたいに綺麗なのね、すごくお似合いよ』
(テンパリ気味に早口に述べる元カノはまさか目の前の相手と二度会ったことがあると思わず相手と青年と恋仲なのかと勘違いしては二人を褒めて。
「…いや…此奴は………」
『私達もね、音楽の趣味が合って今もグッズ一緒に買って来たの。久々に会ったのに菊が私の好きなアーティストのCD持ってて、もしかしたら前に付き合ってた時の私の趣味覚えててくれて聞いててくれたのかなって。……あ、って私になにのろけ話してるんだろ』
(急にひとりでにペラペラ話しだす元カノには?と思い「いや、前に話しただろ。CD持ってたのは…」と弁解しようとするも『明日も一緒に遊ぶもんね』と腕を絡みつけられて。
「…そんな約束…」まだしてないと言おうとするも変に積極的な元カノは止まらずに『これから私の家来る?』なんて言い出して。
>露木
( 元カノの言葉にじわじわと悔しさが沁みては段々と潤む瞳を見られまいと顔を俯かせる。
いつも“女は直ぐに泣いて面倒だな”とは思ってたのは女になって初めて心の弱さに気付き。
“泣いてる”訳じゃ無くて勝手に“泣けて来てしまう”のかと女性のか弱さに気付くのと共にボロリと落ちた涙にハッとしてはゴシゴシを目を擦る。
あくまでも心は男な為に人前で泣くなんて事許せず僅かに背の高い相手を見詰めては口を開く。
「………お前、…すっごいムカつく………」
( ボソリと呟き相手の服を掴んでは自分の背丈まで引き寄せ無理矢理唇を奪おうとするも僅かなプライドがそれを許さず寸の所で相手の額に頭突きをかます。
しかし男女の差もありこっちが大きくダメージを受けては額を抑え涙を堪えながら相手を見上げる。
『ちょっと見せ付けてくれないでよね-。俺達“付き合ってる”んでしょ??“大好きな彼氏が他の女の所ばっかりで寂しいから俺にする”って言ってたじゃん』
「は??」
『可哀想に、俺がた-っぷり慰めて上げるからね』
「………さっきから何言ってんだよ、…」
『さ、今日は俺の部屋行こっか。折角そんな格好してるんだしさ』
「は、離せって!」
( 青年の力にも対抗出来ず慌てて相手の腕に縋ろうとするも元カノがやんわりと相手に絡み付いては悲しそうに相手を見上げ。
普段なら絶対有り得ないのに軽々と青年に抱えられては慣れない事故に落とされるのではという変な恐怖から硬直したまましがみつき。
>桐崎
(早く誤解を解かねばと口を開きかけるも相手の涙を見た瞬間思考が停止し頭突きをされた額を軽く押さえつつ、不謹慎にも大きな瞳を潤ませ見上げる相手の姿に見惚れる。
これは反則だろと赤くなった相手の額に手を伸ばしかけるも青年から発せられた言葉にピタリと手を止めて信じられないように相手を見る。
どういうことだと問う前に青年が相手を横抱きして連れ去ってはまるで青年を信頼するかのようにしがみつく様子に醜い嫉妬を抱き「……信じてくれるって言ったじゃないか」と元カノだとちゃんと告げず説明不足にも関わらず身勝手に毒吐いて。
『……菊?』
「なんであんな勘違いされるようなこと言っ………、御免」
(ついキツイ口調で述べてしまい途中で謝っては、どうしてこんなことにと溜息を吐き。
『ご、御免なさい…、私…つい…、自分でもなんであんなこと言ったのか分からなくて…。でも…あの子は彼女さんでは、ないんだよね?』
「…………あの子だよ。…俺と付き合ってるの」
『…え?…でも赤い髪の子が……、あ…もしかして“大好きな彼氏”って菊のこと?』
「…さあ。今は違うみたいだけどな」
(苛立ちを隠し冷めた口調で述べては「家まで送るよ。まだ誰かにつけられてんだろ?」とどうせ相手には青年がいるんだからと思い込んでは元カノを家まで送って。
(その頃、青年は部屋まで相手を運ぶとベッドに座らせ優しく目元を拭ってやり。
『兄さんの涙目上目遣い超可愛かったな。俺だったら我慢できずギュッとしちゃう』
(ガバッと相手を抱き締めては髪の毛などをいじり可愛いを連呼して『あ、今日は兄さんが俺の服来てね』と何食わぬ顔で自身の服を渡して。
丁度その時若頭がひょっこり顔を出しては状況からしてうまく行かなかったことをすぐ悟り。
『まあ何となく分かってたけどね。あ、言っておくけど今回はつよーーく能力かけて上げたから暫くは戻らないし想い合ったキスしないと解けないから、よろしくー』
(軽いノリで言いつつ内心“まあ僕なら直ぐに解けないこともないけど”とほくそ笑むも口にだすことはなく、それを聞いた青年がすかさず相手を見詰め『女の兄さんも捨てがたいけど俺達の愛を確認するなら今だよねー』と不意をつくように相手の柔らかな唇を奪おうとして。
>露木
( 青年の部屋に戻って来ても不安は拭い切れず“直ぐに戻してくれると言う約束だろうが”と悪態付きながら擦り寄って来る青年の頭を抑える。
「どうせあんたとしても戻らないだろうし無駄だろ」なんて言っては胡座をかき女性らしさの微塵も無い様子でどうしようかと考えていて。
相手が自分と青年の仲を誤解してるとも知らずに、こちらはこちらで勝手に相手と元カノを勘違いしていて。
『兄さん泊まってくでしょ??』
「巫山戯んな、自室に戻る」
『ここ男子寮だよ??フラフラ出来ないでしょ』
「なら送ってって」
『や-だね。兄さんだって女の子の格好で怖い思いしたんだから分かるでしょ??』
( 嫌々言いつつも今は青年の力にも敵わず大人しく従わなければならない状況になってはかなりの距離を取るようにしながらベッドで寝息を立てて。
( 翌日、若頭に適当な衣服を貸され大学エリアへと向かえば昨日の事を謝ろうと相手を待っていて。
通り掛かった生徒に相手の事を問い掛けては先程研究室に居たとの事なので昇降口に居れば会えるかと。
そわそわとしながら相手を待ち続けてた所で漸く相手の姿が見えてはおずおずと近寄る。
「……………おはよ。あのさ…昨日、…頭突き…ごめん。………俺…なんかカッとしてたのかもしれない。…それでさ、」
( 改めて掛けられた能力の事を相談しようとするも昨日の元カノが自分の後ろから来ては相手の腕に抱き着き自分にペコリと頭を下げるのをぼんやりと見詰めてはこちらも遠慮がちに頭を下げて。
『あ、あのね菊。………さっき《今から大学行くから遊びに行こう》ってメールしたの気付いてくれたかな??…ごめん、迎えに来ちゃった』
( 可愛らしい元カノの微笑みを何処と無く悔しそうに見詰めては相手の服を軽く掴み“行くな”と言い掛けそうになるのを押し堪える。
元カノが『お話中だった、よね。…ごめんなさい』と自分に謝るのに慌てて首を横に振っては相手を見詰め口を開くも「………露木、………その……」とまともな言葉にはなってくれずに。
「後で………電話するから、出てくれると………嬉しい」
( ポツリと小さく告げては相手と元カノを二人にしたくない衝動に駆られるが自分の入る隙は無く。
寂しそうな表情を隠す様にその場を去っては『…あんな子居たっけ??』『………転校生とか??』と言う声に知らない振りをして。
( 自分が去った後、元カノは相手の手を取っては『…ごめん。こんな事言うの最低だし勝手だって分かってる。………でも、…二人でいる時だけは電話とかメールとか…しないで欲しいの。私と居る時だけで良いから』と。
微妙な雰囲気になってしまった事に気付き、慌てて何時もの微笑みを浮かべては『久し振りに会えたから嬉しいのかな。…ずっと、会いたかったから。もっと一緒にいたいなって』とはにかみながら言って。
>桐崎
(翌日、昨日の事でずっとモヤモヤしていて相手にあの後連絡をいれてちゃんと話す機会を作れば良かったと後悔し、元カノからのメールも気付かず昇降口を出る。
すると相手が近づいてきてまだ女姿なのかと疑問に思うも謝られたことに大したことないと小さく首を横に振り続く言葉を聞こうとするも元カノに遮られ。
若干元カノにイラッとするも悪気はないため雑には扱えず、寂しげな表情で紡がれる相手の言葉も期待する反面“赤城と付き合う”と別れを切りだされるのではと不安になって。
(その後、元カノからの願いに相手が電話すると言ったのに出ないわけにはいかないと其処は譲れずに「……それは難しいかも。バイトの電話とかあるし」とはっきり述べ「まあ……デパート付き添って貰ったから、少しくらいなら奈緒の行きたいところ付き合うよ」となぜ酷い突き放し方をした自分の傍にいてくれるのか疑問に思いながら“形だけの見合い”の延長の“義理”のつもりで述べ。
『じゃあ、ライブ!実は明日のチケットたまたま取れて…。その、もし彼女さんと駄目になったなら私とどうかなって…。一人じゃ不安だし変な人いるかもだから付き合って!』
「……明日?…別にいいけど。ただの付き添いだからな」
『…う、うん。それでいいよ』
(ぎこちなく頷く元カノに首を傾げつつ近場のカフェでランチをするも、相手からの電話ばかり気にして、ちゃんとした物を食べているだろうか、変な男にナンパされていないだろうか、なんで青年と仲良くしているのかとグルグルと思考を巡らせて。
(夕方、元カノの圧しに負けて公園のベンチにて二人話していては突如元カノが真剣な顔で此方を見つめてきて「どうした?」と少し身構え。
『あのね、菊。…なんとなく菊が私に気がないのは分かる。でもね私まだ菊のこと忘れられなくて…。見合いも“形だけ”で良いって親に無理言って頼んだの私なの。ねえ菊、明日のライブは恋人として過ごしたい。今日の夜も菊を恋人だと思って眠りたい。だから今ここで私のこと“好き”って言ってキスして。おかしいのは分かってるよ。でも菊の彼女さんあの赤髪の子と付き合い出したんでしょ?だから……お願い』
(涙目で紡がれる言葉に驚きで言葉を失うも我に返っては「…でも俺まだ…彼奴のことすきなんだ」と以前相手と真希で同じような事があって仲がもつれた為一度は強く断る。
が、元カノも引いてはくれず“今日と明日だけだから!!”と言う言葉に心が揺らいでしまい、“駄目だ”と分かっていても断りきれなくなり…。
最低な行いと分かっていながらまっすぐ視線を交え元カノの肩に手を添えては「…好きだよ。…奈緒」と言葉を紡ぎ額に軽く触れる程度の口付けを落とし。
瞬間、激しい罪悪感に襲われては「ごめん……本当にごめん。あとで連絡するから」と元カノから離れそのまま公園を飛び出し“電話など待ってられない。相手と話さなければ”と寮へ走って。
(一方、午後からのバイトに出ようとする相手の元にすかさずあの覗き魔男が先程の公園での動画を相手の携帯に送りつけていて。
>露木
( 夜、女姿の時のみ若頭が紹介してくれたバイトへ向かおうとするが携帯が鳴り響いては直ぐにそれを取る。
結局あの元カノと居るのだろうかと思うとモヤモヤして連絡を入れられなかった為もしかしたら相手からでは無いだろうかと期待を持ってしまい。
しかし送信者は相手では無く意味不明な動画が添付されていては何だろうかとファイルを開いて。
そして激しい後悔に襲われ力無く携帯をテーブルの上に置いては蒼白になりテーブルに突っ伏して。
若頭に《ごめん、紹介してくれたバイト…今日行けそうにない。バイト先にも謝罪の電話入れて置くから。本当いきなりごめんな》とメールを入れる。
直ぐに《分かった、代わりに僕出れるから大丈夫だよ。体調でも悪くした??女の子はデリケートなんだからしっかり休まないと肌の調子とか悪くなるからね:(´◦ω◦`):》と返事が来て。
止まらない涙に嫌気が差し“さっさと男に戻りたい”なんて思っては服の袖でゴシゴシと擦り。
窓の外が段々と暗くなって来た頃部屋の扉を開く音に気付きのそのそと玄関を開けては肩を揺らし呼吸を整えようとする相手を驚いた様に見詰めて。
追い返そうと口を開くも隣の部屋の扉が開き男子生徒数人が出て来るのが見えては慌てて相手を部屋に入れその気まずさから顔を背ける。
「……………何しに来たんだよ。…ってまぁ大体想像出来るけどさ、………俺と別れるって言いに来たんだろ」
( ゴミ箱に溜まるのは最近ずっと続いてた嫌がらせの相手の写真。
ご丁寧に“お前の恋人は他に恋人が居る”“本当に恋人の事を思うのなら別れろ”とまで書いてあり。
「…奈緒って言うんだろ、あんたの“彼女”。………び、美男美女だしお似合いじゃん。…あんたも彼女の事………好きみたいだしさ」
( 精一杯の強がりを述べるも最後の声が震えてしまっては唇を噛み締める。
相手の服を掴み「………俺、自惚れてたじゃんか。……………なんで俺じゃ無いんだよ。……………俺あんたじゃ無いと戻れないのに」と小さな声で言って。
これ以上は強がりも無理だとベッドへと戻っては「あいつら(男子生徒達)居なくなったらさっさと戻れよ。……………か、彼女待ってんだろ」と冷たい言い方をして。
>桐崎
(相手の部屋に入り改めてその表情を見た瞬間、腫れた目と頬に残る涙腺にズキリと胸が痛み紡がれる言葉で今までの事をちゃんと話そうと足を前に出す。
その時ゴミ箱に足があたって倒れ破られた写真などが床に散乱しては漸く相手に勘違いをさせ酷く傷つけたのだと悟り。
誰が写真を送りつけたのか、何故相手が女なのかと疑問は多々あるが今は相手と向き合うのが先だとベッドに座る相手の正面にしゃがんで下から顔を覗き相手の小さな手を包んで。
「…彼女じゃない。…彼奴は…彼女じゃないよ。………こんな不安にさせてごめん」
(静かに告げては相手の頬を包むようにして指先で目元をなぞり、懺悔するようデパートや元カノの家に行った理由などを話しては先刻キスをせがまれそれに応えてしまったことも素直に述べて。
「……でもすぐ後悔した。あんたの悲しい顔が浮かんで…何馬鹿やってんだって。…いくらあんたが赤城のこと選んだからって…何にも話せてないのにこんなの可笑しいって思った」
(切なげに相手を見詰めほんの僅かに微笑み「無神経で御免な。でもずっとあんたのこと考えてた」と相手の横髪を後ろにさらうように撫で数度謝るも、依然相手の心は青年に向いてしまったと勘違いしており脳裏に青年と抱き合う光景やデパートの前で青年が言った言葉が過っては“あんたじゃないと戻れない…”というのももう過去の話なのだと思い込み。
瞬間、激しい嫉妬に襲われては華奢な相手の身体をベッドに押さえ込み表情を歪め見下して。
「…でも、なんでだよ。なんでそんなすぐに赤城に乗り換えられるんだ?……俺はすぐ忘れられるだけの…その程度の奴だったってことか?……俺はずっとあんただけを思って愛してたのに」
(勝手な言い分だと分かっていても湧き上がる嫉妬は止められず、相手を押さえ付けたままそれでも優しく首筋に口付けて「…女になってるのは赤城の好み?……まあいいや。…最後にキスさせろよ。別にいいだろ?どうせ想い合ってなければ身体は戻らない。バレたりしないからさ」と最低なことを冷ややかに述べては相手にグッと顔を近づけ「…愛してる」と小さく呟き唇を奪おうとして。
>露木
( 抑え込まれた体制のまま必死に抵抗するもやはり力の差があり顔を背けるもいとも簡単に唇を奪われる。
その刹那、みるみる内に目線が代わり大きく見えてた相手が小さく見えては先程の相手の言葉を思い出し“戻ってしまった”事が恥ずかしく思えて。
自分の服に着替えていて良かったな、なんて呑気に考えつつ対抗出来るこの力で相手の腕を掴む。
「…ふ、巫山戯んなよ。女になるなんて馬鹿みてぇか真似してあんたをぶん取ってやろうとしたのに。……………び…美人だったし…元カノだったら…俺の知らないあんたの事もあの元カノは知ってんだろうな…って」
( 段々と語尾が小さくなり相手の腕からパッと手を離しては顔を俯かせたままパーカーを取る。
頭をガシガシとかき乱しベッドから立ち上がっては相手の横を通り過ぎ冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取るも心のモヤモヤは払い切れずに。
「………赤城は…話合わせてくれてただけだ。別に付き合ってなんかないし………彼奴と付き合ったりしたら色々面倒臭そうだしな」
( 漸く相手の顔をちゃんと見てはまだ何処と無く不機嫌な表情で「………さっき“愛してる”って言ったのは………どう取れば良いんだよ。その場凌ぎの謝罪として??………それとも、本音な訳??」と。
ズカズカと駆け寄り今度は自分が相手をベッドへと押し倒しては相手の首筋に顔を埋める。
「もしあんたが俺と別れるつもりなんだったら…心残り無い様に俺も好きな事するから」
( 手首を押さえ付け小さなリップ音を立て相手の耳元に口付けてはシャツのボタンに手を掛けて。
>桐崎
(男に戻った相手に押し返されて微かな恐怖を感じるも少し強引な言葉に不覚にも胸が高鳴り場の雰囲気に流されそうになる。
しかし2つ目のボタンに手を掛けられたところで我に返り相手の手を掴んで。
「………どう取れば良いって…、…木ノ宮の能力は互いが想い合ってないと解けないんだろ?……あんたの今の姿が答えなんじゃないの」
(気恥ずかしげに目を逸らし遠回し“本音だ”と述べてはどこか不貞腐れたように相手を見て。
「…っていうか彼奴があんたの知らない俺を知ってるのは当たり前だろ。付き合ってたのは6年以上前だし…。……でも、俺は彼奴の前では泣けなかったし弱音も吐けなかった。馬鹿みたいに嫉妬晒すことも全部見栄張って隠してたけど……あんたの前ではカードが緩むっていうか…泣き顔とかそういうの…あんたにしか見せてない。それに………………夜の相手もあんたが初めてだよ」
(最後は顔から火が出るように恥ずかしく口元を手の甲で押さえて、相手を安心させるつもりがとんでもない墓穴を掘って自爆してしまったと固く目を閉じる。
絶対に引かれたと薄く目を開いては何にでもなれと不意をつくように相手の肩を押して身を反転させ再度相手を押し倒す形を取って。
「……俺…もう桐崎しか愛せないってくらいあんたが好きだ。…だから変に空回って今回もあんたを不安にさせた。……御免な、馬鹿で…」
(眉を下げ微笑み相手の髪を撫でるも少し悪戯心が湧いては相手をジッと見詰め「でも、あんたの涙目の上目遣い、かなり可愛かった。……あれ見れたからちょっと良かったかも。…もう女にならないのか?」と顔を近づけまだ少し腫れる瞼に口付けて微かに笑み。
「いや、でもやっぱ男のあんたのが良い。…なんか女の腕って細いし、俺嫉妬深いから傷つけそう」
(冗談っぽく笑いを零すも俄に真剣な表情で相手を見下しては「…こんな俺だけど……許してくれるか?」と相手の頬に手を伸ばし。
(その頃、覗き魔の男は公園でしょんぼりする元カノを見て、もし自分と相手がくっつくようなことがあったら絶対に許さないと怒りに震え携帯を取り出し《露木と付き合うようなことがあれば、露木になにがあるか分からないぞ。お前なんてお情けかけられてるだけなんだから大人しく身を引け》と相手にメールを送っていて。
>露木
( 相手の言葉と様子に段々と不安や嫉妬が溶けて行くのを感じては安心した様に緩く微笑んでは相手の首に腕を掛け、「…特別に許してやっても良いよ」なんて偉そうな言い方をして。
引き寄せる様に相手に口付けては「………下になんのはまだ怖いんだろ??………慣れてないけど、俺下やっからあんたも怖くなったら言って。直ぐ止めて良いから」と呟き再びドサリとベッドに身体を預けては相手の髪に手を伸ばし口角を上げて。
( 数時間後、暫くじゃれ合い甘い時間を過ごした後に相手に先に風呂へと行かせては点滅した携帯を取り数時間前に送られて来たメールに眉を寄せる。
しかし相手とは先程思いを確認し合ったばかり、深く考えない様に心掛け首を振って。
相手が風呂に上がって来たのと共に自分が浴室へと向かえば心の底に残る不安も洗い流せれば良いのにと。
( その頃、相手の元にもメールが届いては《桐崎は男なんか好きになれない。お前は気晴らしの相手だ。お前を本当に思ってるのは奈緒だけだ》と意味不明な文が送られて。
二人の仲を裂こうと目論んでる男はギリギリと歯を食い縛り元カノの部屋の外からカーテンの閉まった部屋を覗き込み泣いてるのだろうかと。
こうなったら何が何でも自分達を引き裂こうと考えては相手のアパートに自分の仕事中の写真を上手く編集加工し普段の様子の様に見せては封筒に入れて。
自分に散々写真を送り付けたが効果が無かった事を思い出し自分に女が出来れば問題無いのかと変な考えを起こし自分の身元を検索し始めて。
>桐崎
(相手の気遣いと優しさに甘えては先に風呂を浴びて、出てくると相手のベッドに座って携帯を開き元カノに謝罪のメールを送る。
直後、見知らぬアドレスからメールが届き開いてみるとその内容に眉を寄せ、また男子学生達の悪戯だろうと気にしないようにして、風呂から出てきた相手に「じゃあ俺バイトあるから。…飯作ったから食べとけよ」と小さく笑み相手の部屋を後にして。
(朝方アパートに帰宅してはポストに不審な封筒があり訝しみながら開封しては、女と親しげに絡む相手の姿に息を飲む。
よくよく見ればその女性は地元で見た令嬢だったり、以前相手を好きと言って一悶着あった居酒屋で働く相手のクラスメートだったりして。
その加工写真を信じ込んでは悔しい気持ちになり直ぐ相手に問い詰めようと電話をかけようとするが同時に元カノから着信が来て。
『き、菊?……朝早くにごめんね。まだ怒ってる?』
「怒ってない。てか俺が悪いし。……で、どうした?また覗き?」
『ううん。……今日のライブ行けるかなって。もう変なお願いしないから…友達として行きたいの』
「………付き合ってる奴が良いって言ったら…いいよ」
(きっぱり断ったほうが…と思うも確か青年は相手を誘うと言っていたため同じ会場に行けるなら良いかもと安易に考え元カノとの通話を切った後すぐ相手に今の電話内容をメールし《…やっぱり奈緒と行くのは駄目だよな?》と確認して。
この時加工写真のことは聞けず追々直接会ってちゃんと話そうと疲れていたこともあり一眠りして。
>露木
( バイトを終え相手のメールに漸く気付き暫し頭を悩ませては《…“友達”として、なら良いよ》なんて不貞腐れた返信を送る。
青年の誘いも合った為、準備をするが元カノと並ぶ相手を見るのは嫌だなと内心モヤモヤとしていて。
それから約束の時間になり青年と待ち合わせてた時計台の下へと来れば何故か青年は女姿で。
『見て見て兄さん!!!可愛い??可愛いでしょ!!!』
「……………は、何でそんな格好してんの」
『男同士だったらイチャイチャ出来ないでしょ??』
「いやするつもり無いけど」
『木ノ宮にね、頼んだの。じゃあまず手を繋ごう!!』
( 調子は何時もと変わらない青年をやんわりと拒否しながら会場へと来れば絶好の席へと向かい。
『凄い良い席でしょ!!!』と言う青年に一応小さな声で礼を言った所でさり気なく辺りを見回し相手の姿を探す。
少し離れた席に相手と並ぶ元カノが見えては悔しそうに目線を外し楽しそうな青年に目を向けて。
『時計台に来る途中にね、初めて男の人にナンパされちゃってさ。すっごいびっくりしたけど兄さんとのデートに遅れる訳に行かないから』
「んだよそれ、まずデートじゃないし。って言うかその格好で来るんだったら最初に言えよ、そしたら部屋まで向かいに言ってた」
『なんで??』
「………いや、中身は男だとしても………危ねぇだろうが。そんな外見してんだから」
『あ、可愛いって事??やったぁ兄さんに可愛いって言われちゃった-』
( はしゃぐ青年の頭をぐりぐりと押してた所で漸くライブの開演が鳴り響くブザーがなる。
張り付く青年を振り払おうとも女性のか弱さを知ってるが為に出来ず、それでも相手と元カノの様子が気になるそちらに目をやる。
微笑みながら話をする相手と元カノは傍から見れば本当に似合いのカップルでしか無く再び嫉妬心に襲われては折角のライブなのだから考えない様にしようと。
>桐崎
(ライブ会場にて、複雑な気持ちで相手の姿を探してはライブそっちのけで客達が『あの人かっこいい』『女の子も可愛いね』とざわつく場所があり、そちらを見やると相手と青年……ではなく自分の知らない赤髪の女がいて。
“いやいや赤城だろ”と思うも青年はいつも傍目を気にせず相手に絡んでいてわざわざ女になるとは思えず、青年の親戚だろうかとやたら相手に絡む赤髪女が気になりライブどころではなくなって。
(ライブ終了後、相手と合流するため待ち合わせ場所に向かうもグッズ販売に並ぶ人集りや『モデルみたい!』と相手の写真を勝手に撮る女達で中々前に進めずに。
元カノとはぐれては面倒なのでため手を繋ぎ人並みに元カノが飲み込まれないよう庇いながら前へ進むが背後からキャッと小さな悲鳴が聞こえ振り返ると元カノがしゃがみこんでいて。
どうやらヒールが側溝の溝に挟まり折れて足を挫いてしまったようで痛むのか立てる様子ではなく人混みの中このままではいけないと直ぐにヒールを側溝から抜き取り元カノを横抱きするとなんとか待ち合わせ場所まで辿り着き。
『き、菊、もうおろしていいよ。……恥ずかしい』
「…足、痛むんだろ?タクシー捕まえて病院行くからそれまで我慢してろ」
(相手と青年の前で恥ずかしそうに自分の胸に顔を当てて赤面を隠す元カノに苦笑を零しつつ相手を見ては「…悪いけどそう言うことだから食事は一緒に行けない」と謝って。
そして先程から相手の腕に絡みつく女をチラと見ては相手に視線を戻し「…で、その子だれ?赤城はどうしたんだよ」と嫉妬心むき出しで相手を睨むように見て。
>露木
( 恥ずかしそうにそれでも相手にしがみつく元カノを横抱きに抱える相手を見詰め何か言いかけるもふと青年の事を問掛けられては思い出した様に青年に目をやり口を開く。
「…あ、あぁ。此奴は赤し…『私兄さ………じゃなくて繿君の友達以上恋人未満で-す!!!』」
( 何時もの調子でニコニコと微笑む青年を驚いた様に見詰め「…は??」と間抜けな声を漏らす。
何も言わずに元カノを気遣う様に去って行く相手を悲しそうに見送っては青年の頭を軽く小突き「………お前、…何してくれてんの」と呟いて。
『え-、だって兄さんすっごい悔しそうな顔してたじゃんかぁ。だからこっちも嫉妬させちゃえば-って』
「…そんな事しなくても…良かったんだよ。………昨日ちゃんと互いの誤解解いてた所だし」
『え-でもあの女の子と良い感じになってたじゃん』
「……………」
( 折角のライブだと言うのに沈んだ気持ちになってしまってはそれを隠す様に寮へと戻り。
( 寮にて、男子寮の一室に青年を戻すのも心配になり渋々自室へと招き入れては適当な服を貸す。
男姿だったとしてもあんなに緩かったのに女姿となればさらに緩くはしゃぐ青年をジトリと見詰めては「ベッドで寝て良いから」と告げ以前兄から借りた布団を床に敷き初めて。
『え-、一緒に寝ないの??』
「寝ない」
『ふふ、兄さんの事だから朝方には一緒に寝てるんだろうな-』
( ケラケラと笑う青年を呆れた様に見詰めては一度浴室で相手へと連絡を入れる。
一通り子供達の入学金やら卒業費用やらは貯め終えたので明日は一緒に居たいと言うつもりで。
しかし相手が電話に出る事は無く留守番電話になれば少しがっかりしながら「もしもし、…バイトに一段落付いてさ。俺明日休みで…良かったら…話したい事もあるし落ち着いて露木との時間を作りたい」と。
青年の事も落ち着いて話をしなければならないなと思いつつ「ちょっと自販機行って来る。何か飲みたいのある??」と青年に問い掛ける。
『奢ってくれるの??じゃあ俺カルピスが良いなぁ』
「分かった、危ないから部屋から出んなよ」
『兄さんったら過保護だなぁ』
「黙って従え、分かったな」
( 強引な物言いをし玄関を開けた所で巫山戯た青年が後ろから抱き着いて来たのを冷静に剥がして。
それを自分達を付け回してた元カノのストーカー男に撮られてるとも知らずに自販機にてジュースを買えば大人しく自室へと戻って。
男は自分と相手の別れを急かすかの如く相手の携帯に先程の写真を送っていて。
>桐崎
(病院にて元カノの治療を終えては軽い捻挫ということで細い足に巻かれる包帯に自分の気が回らなかったからだと罪悪感が湧いて「…家まで送ってくよ」と家が近かったため元カノを負ぶさって夜道を歩き。
『…前にも私がいじめられて泣いてた時菊におんぶして貰ったよね』
「…奈緒がいじめられたのは俺のせいだったから」
『そんな自分責めないでよ。………ねえ繿君?だっけ。一緒に居た子と付き合うのかな?』
(まだ何も知らない元カノの言葉にピクリと反応しては脳裏に今朝送られてきた写真が過り「……知らない」と沈んだ声で答えては元カノを部屋まで送り、身の回りの片付けだけ手伝い家を後にして。
(帰り道、相手からの留守電を聞いては期待と不安が同時に押し寄せるもちゃんと向き合わねばと《俺も桐崎と話したい。明日は午前中バイトだから昼過ぎに時計台でところで会わないか?落ち着いて話せる隠れ家カフェあるから》とメールを送って。
直後にまた不審なアドレスからメールが届き迷いながらも開いて見ては、その写真に愕然とする。
相手の部屋で先程の女が抱き付く姿、それが青年とも知らず“自室にまで入れて…”と醜い嫉妬と不安に襲われては唇を噛みしめるも、きっと何かの間違いだと言い聞かせ何もかも明日確かめようと。
(翌日バイトを終え時計台に凭れて相手を待っては雲行きの怪しい空を仰ぐ。
一応折りたたみを持ってきている為心配はいらないがそれよりも昨日からひっきりなしに携帯に届く相手と女性が一緒にいる(加工)写真で精神が滅入っており誤解なら早く解きたいと溜息を吐いて。
(その頃、男は誤解を解かせないためにも自分達を会わせるわけにはいかないと、何人かガラの悪い連中を雇うと女の青年を攫わせ相手にその写真を送りつけ《今直ぐ誰にも連絡せず此処に来い。でないとこの女に何があるか分からないぞ》と脅迫メールを送っていて。
>露木
( そして翌日、自室へと戻った青年に安心感を抱きながら相手との待ち合わせ場所へと向かおうとした時、いきなり鳴り響いた携帯電話と共に青年が攫われた事を知ってはサッと青褪める。
添付された写真には目に涙を溜めながら怯える青年の姿があり無視出来る筈も無く青年の写真の背景から町外れの廃工場である事を悟り走り出して。
( 訪れた廃工場、縛り付けられしゃがみ込む青年を取り囲む男達に怒りが込み上げては真っ直ぐに殴り込み一人の男を蹴散らしては残りの男達を睨み付け。
『……………に、兄さ……………』
「今直ぐに其奴を離せ」
『ち、違っ………俺達は頼まれただけで………』
( 言葉を吃らせる男達になど目もくれず躊躇もせずに蹴散らせば真っ直ぐに青年の元に駆け寄り縄を解いては立ち上がらせ様と。
『ご…ごめん兄さん。………お、俺腰抜けちゃった見たいで……力、入んなくて………』
「…ったく…ほら、捕まって………」
( 青年を横抱きにし廃工場を後にしては青年を寮に送り届けた後に急いで相手に落ち合おうと。
ザーザーと降り注ぐ雨の中、まだ僅かに震える青年を抱え寮へと向かう途中、時計台の下で自分を待ち続けていた相手とばったり出会しては足を止めてしまい。
「……………露木、………」
( 驚いた様に自分を見詰め走り去って行く相手にハッとするも青年をこのままに出来る訳も無く取り敢えず寮へと戻っては青年を浴室に向かわせ冷えた身体を温まらせた後自分の服を渡して。
「…赤城、俺………行かないと」
『………うん。分かってる、何もされてないし………俺もう平気だから大丈夫だよ』
( 笑顔を向ける青年にいつか相手が女姿になった時の無理に作った微笑みと重なれば歯を食い縛る。
放って置けずに結局そのまま青年が眠りに着くまで見守っては自室を後にする。
「露木、…ごめん。今からアパート行くから。………その、今日の事も………ちゃんと話す」と途切れ途切れな言葉を留守番電話に入れてはアパートへと向かって。
>桐崎
(約束の時間になっても来ない相手、事故にでもあったのではと何度か相手に電話やメールをして兄や若頭にも連絡を入れるが行方は分からず。
雨足も強くなり本当に何かあったのではと探そうとしたところ、女を抱える相手に出会しては青年の様態も見抜けず“約束を忘れられた”と勘違いしアパートに走って。
(自室に駆け込むなりズサリと座り込んで項垂れては、髪から水滴が床に落ちていくのも構わず唇を噛みしめる。
“桐崎は女好き”“男には振り向かない”と男の虚言を信じ初めてはやはり期待するだけムダだったのだとどんどん悲観的になって。
その数時間後、鍵が開けっ放しになっていたのか扉が急に開くと元カノが立っていて濡れている自分を見ては慌てて部屋の奥に入れられて髪をタオルで拭かれ。
「……足、怪我してんじゃないの」
『だ、だってメールで菊が風邪引いたって来て』
「…そんなメールしてないけど……それで足は…」
『私は大丈夫だよ!それよりなんで濡れたままでいたの?なにかあった?』
「何にもないよ。ただ急に降られただけだから」
『だって…傘持ってたんじゃないの?』
「……………来てくれてありがとな。でも風邪引いてないし大丈夫だから。身体冷えてるだろ?御茶、いれるよ」
(元カノの前では弱みは見せられないと笑顔で振る舞っては御茶を入れるため立ち上がろうとするも元カノに急に腕を強く下に引かれドンと尻もちをつかされて。
「な、奈緒?…どうした『服着替えなきゃ駄目だよ』
(久しぶりにみる元カノの強い眼差しに圧されるも本当に大したことなかったため「大丈夫だって」と軽く押し退けようとするが足の怪我をしているためかなり手加減して。
それがいけなかったのか元カノに上に乗られては『着替えなきゃ駄目!』とシャツのボタンに手をかけられて。
この時、相手の留守電にも鍵が開けっ放しになっていたことにも気付かず、勿論元カノへの嘘のメールが男によるものだとは知らずに。
>露木
( 雨の中、傘を持つ事すら忘れ相手のアパートに一目散に走っては呼吸を整え相手の部屋の玄関前へと来る。
ノックをしようとするが何故か僅かに扉が開いており、数秒間考え込んだ後に扉に手を掛けてはゆっくり扉を押し「………露木、鍵開けっ放し………………」と言い掛けた所で言葉を失って。
相手に馬乗りになりシャツを乱す元カノと抵抗の色を見せない相手を目前にこれから行われるであろう行為がどんな物かは何となく察しが付き慌てて後退る。
「………ご、ごめん!!!…俺、…勝手に………」
( 慌てる元カノが立ち上がろうとしたその時、足の痛みから体制を崩しそれを咄嗟に支える相手が目に入れば自分はただの邪魔者でしか無く。
ポタリポタリと自分の髪から雫が落ち、服の袖でそれを拭えば自分が青年との事を撤回しに来た意味も無くなったのだと勘違いし「ごめんな、俺の用なら………その…また今度で良いよ。…何なら綸とかに言っとくから…綸にでも聞いて」と言い残しては相手の家を後にして。
まだ大雨が降る中、来る時に全力で走った疲れからフラフラと寮に戻っては浴室へと向かう。
ベッドの上で丸まる青年に小さな溜息を漏らした後、シャワーを軽く浴びては床に敷きっ放しだった布団を軽く整え腰を下ろす。
元カノと居る時の相手は自分と居る時よりも幾分逞しくも見え、もしかしたら…と嫌な考えが過ぎっては携帯を見詰めるも連絡する勇気は無く。
明日一日で青年も男に戻る訳だしと言い聞かせベッドの上の青年の髪に何気無く触れた所で過去に取っ替え引っ替え女に手を出してた時期を思い出し。
相手と出会ってから本当の愛を知り、嫉妬や悔しさなどを覚えたがそれと共にこんなにも辛くなるという事を学んだ。
相手と出会う前は兎に角全てが適当で求めて来る女が酷く面倒に感じ突き放しては新しい物を求め虚しさは増える一方だったが胸が痛くなる事は無かった。
_____どっちが楽なんだろうな、なんて変な考えを起こしては以前のバイトの常連だった人に何気無く連絡を入れ「あ、起きてたんだ。久し振りにさ、明日とか会わない??…うん、夜」と約束を入れて。
青年が元に戻るのは夜だしそれまではしっかり見守らなきゃなと自分に言い聞かせては胸を締め付ける様なこの感情から逃れようと。
>桐崎
(元カノの強気に圧されていたところ、不意に開かれた扉に目を向けてはずぶ濡れの相手が居て確実に勘違いされたと冷や汗が流れるも、焦ることに何の意味があるのかと虚しくなっては相手を追わずに。
『ご…御免…、良かったの?…あんなに濡れて、急ぎの用事だったんじゃ…』
「……いいよ。どうせ別れ話だし」
『別れ話って……まさか…』
(漸く事を察した元カノが謝ってくるのを首を横に振って「奈緒は悪くない」となだめては足の具合を見てやり、自分はさっさと着替えて落ち着いたところで相手との関係をゆっくり告白して、雨が止むと元カノの肩を支えながら家まで送って。
(翌朝、漸く相手の留守電に気付きその深刻な様子にずぶ濡れで駆けつけてくれた相手の姿が重なっては心が揺らぎもしかしたら全て誤解かもと期待して《留守電、今聞いた。……昨日は来てくれたのに御免。…綸からじゃなくあんたからちゃんと話を聞きたい。俺も話したいことあるから近いうち会えないか?》と震える指でメールを打って。
送信完了画面をぼんやり見てはバイトに行く準備をしてアパートを後にして。
(バイト終わり、夜道を一人俯きながら歩きまだ着信のない携帯を見ては小さく溜息を吐く。
誤解が解けたばかりなのに何故こんなにももつれてしまうのか。
やはり相手は自分のことなんて…と相手がどれだけ苦悩して、青年がどれほど傷付いたかも知らずに卑屈になってはどんどん気落ちするもまだちゃんと話し合ってないじゃないかと相手を信じるようにして。
が、ふと向かい側のレストランから美人の女性が相手に腕に絡みつき出てくるのが見えては持っていた携帯を取り落としそうになり目の前が真っ白になる。
信じた自分が馬鹿だったと失意しては怒りさえ湧いてきて、車がクラクションを鳴らすのも構いなく車道を突っ切ってはズカズカと相手に歩み寄り胸倉を掴んで此方に引き寄せて。
「どういうことだよ。……って聞くまでもないか。どうせ今日も女変えて遊んでるんだろ?昨日の赤い髪の子はもう捨てたのか。…あんたってほんとたらしだな」
(せせら笑うよう相手を見るも、愛おしさが込み上げ僅かに表情が歪みそんな自分に舌打ちしては「…ほんと馬鹿。なんであんたなんか信じたんだろ」と小さく吐き捨て目をパチクリさせる女を見て。
「…あんたもどうせ遊ばれてるよ。此奴そこら中の女と遊んでるから」
(冷たく吐き捨てて相手に元カノとの事を勘違いさせていることも忘れて身勝手にも相手を突き放しては女が『なにこの人、超怖い。繿、私きにしてないから早くホテル行こう』と相手の腕を引くのを背にしてその場を去ろうと。
>露木
( 相手からのメールに気付いてたにも関わらず此処で返信をしてしまえばまた未練が深くなる気がし一日青年と行動を共にし男に戻った事に安心しては部屋まで送り自分は昨夜連絡した女の元へと向かって。
( 馬鹿みたいにヘラヘラと笑う女に付き合いつつどうせこの女とも今日限りだしと最低な考えを浮かべる。
しかし、大きなクラクションの音と共に此方を睨み付けながら自分の腕を掴む相手に向き直ればまた胸が痛くなり愛しさが湧き出てはそれにさえ嫌気が差して。
こんな辛い思いをしたくない、期待をしたくないと逃げの気持ちが自分を囃し立てては去ろうとする相手の肩を掴み無理矢理此方に向かせては唇を奪って。
「………ごめんな、でも俺にはあんたしか居ない」
( 切なそうに相手を見詰め何とも軽々しい言葉を口にしたと思えば蔑む様な表情に変わり口角を上げ「な-んて言えば馬鹿な女は何回だって付き合ってくれんだぜ??」と。
相手の肩から手を離し態とらしく首を傾げては「木ノ宮に女にして貰って来いよ。俺割と女の時のあんたの“顔”好きなんだよね。あんたなら特別に金いらないからさ、なんなら俺があんたを買うよ。“そういうの”は得意だろ??」と。
何故こんな最低な事を言ってるのか自分でも分からず、ただ自分の中に明確になってるのは相手を思い続け辛い思いをするのならば虚しさを抱えながら一度きりの愛を求めた方がマシだという事で。
間抜けな顔をし状況を理解しようとしてる女の元へと戻れば「早く行こうぜ」と言いさっさとその場を後にして。
( そして翌日の朝方、隣で眠る女を放ったらかしにホテルを出ては以前同様どうしようもない虚しさに襲われるも不思議と胸の痛みは無く。
寮へと戻り何気無く共同スペースへと訪れては大学の女生徒が何やらレポートを纏めていて。
その女生徒が相手の同級生で高校時三年間同じクラスだったとも知らずに「先輩、何やってんの」なんて軽々しい言葉を掛けては前の席に座る。
『…え??あぁ、これ??レポート取ってるの。でも中々終わらなくて…だから同級生の露木君に手伝って欲しいって頼んで今待ってるところよ』
「………じゃあ露木此処に来んの??」
『そう、待ち合わせ此処だから』
( ふ-ん、と小さく言ってはならば自分が此処に居ても相手に嫌な思いをさせるだけだろうしさっさと此処を出なければなと考えのそのそと席を立っては扉に手を掛けて。
>桐崎
(翌朝アパートにてそろそろ寮へ行かねばと重たい腰を上げてのろのろと準備を始める。
昨夜の一件があってから今まであまりのショックでどう過ごしたかうろ覚えで鏡に写る自分の顔に酷いものだなと溜息を吐き、気分が乗らないままアパートを後にして。
(訪れた共同スペース、扉を開こうとしたところばったり相手と出会しては悔しさから直ぐ目を逸し相手を先に通すよう黙って道を開ける。
相手が目の前を横切りこのまま沈黙を突き通せば良かったものの昨夜の相手の言葉が頭をかすめては咄嗟に相手の腕を掴んで。
「……今日の夜、時計台で待ってる」
(短く低い声で一言だけ告げると返答も待たず共同スペースに入り『露木君、おそーい!』と騒ぐ女学生の輪の中に入り、笑顔を貼り付けレポートを手伝って。
(その夜、若頭の元へ行き一度は“女にして欲しい”と頼むも寸でのところで思い直し、吹っ切るならお金を払ってでも男のままで一緒にいたいと思い「…優希悪い、やっぱりこのままで…」と断りそのままで来るかも分からない相手を待つため時計台に向かい。
(相手の心境を理解してやれぬまま訪れた時計台、ひたすら相手を待っていると急にどこか見覚えのある男(元カノのストーカーこと元同級生)が近づいてきて。
『露木、久しぶり。お前ってさ案外諦め悪いのな』
「……は?……あ。…あんたまさか槇本(マキモト)?」
『正解。桐崎繿、待ってるんだろ?……何話すつもりか知らなけどくっつかれたら癪なんだよな』
「………何言ってるか分からない。あんたに何の関係があるんだ?」
『大有りだよ!!!俺の奈緒を奪った癖に!!!』
(急に声を荒らげる男に呆気に取られるうち手を引かれては路地裏に連れ込まれいきなり額に手をあてられる。瞬間瞬く間に目線が下がり身体が縮むと四歳ばかりの姿になって。
『露木お前は忘れてるかもしんないけど俺も能力者なんだよ。お前がクラスで目立ってくれたおかげで俺はいじめられずに済んだけどな。なのに俺の奈緒を………。っ、お前は暫くそうしてろ。記憶は数日間は空っぽだ。その間に確実にお前たちを破局に追い込んでやる』
(怒りに声を震わせながらもしっかりと子供服を着せてくれる男に優しいのか馬鹿なのかと呑気に呆れるも段々と記憶が遠のいては男が去って行くのを見たのを最後に目を閉じて。
(その後男は自分達がほぼ破局に終わっているとは知らず相手を散々時計台で待たせると自分から奪った携帯で《奈緒から聞いたよ、あんたが時計台に居るって。もしかして俺のこと待ってるの?期待でもした?誰があんたみたいな万年発情期のやつのところ行くかよ。俺今から奈緒と2人で旅行だからあんたに構ってる暇ないから。どうせあんたみたいなのは一生独りで虚しい人生送るんだろうな》と普段あまり打たない長文メールを送り、元カノが友人と旅行するのを知っていて、うまく写真を加工し旅行先で自分と元カノが仲良くしているところを添付して送りつけて。
(/お馬鹿な本体失礼します!
いつもながら滅茶苦茶な展開すみません。久々の幼児化でs((
そしてストーカー男(槇本マキモト)が能力者の設定にさせて頂きました。
はじめは自分の名前も思い出せないくらい記憶がすっからかんですが徐々に思い出していく予定です。
どう元の姿に戻るかはまだ考えてませ((←
いつも男前な繿君ごちそうさまです(^q^)
今後も我が儘菊がお騒がせすると思いますがよろしくお願いします。
>露木
( 相手の誘いに行こうか行かまいか悩んだがどうせ別れるのならば最後に愛しい相手の顔や姿、温もりを焼き付けてやろうと時計台へと向かう。
中々訪れない相手に疲れを切らし電話でも入れてやろうと携帯を取り出した途端にメール受信音が鳴れば相手からだろうかとメールを開く。
その文章を見た途端に思わず自嘲の笑みが溢れ髪をグシャリと掴んでは携帯を握り締めその場を去って。
( 時計台から少し離れた路地が沢山並ぶ道を宛も無く歩いてた所で路地裏に数人の人集りが見えては何事だろうかとそちらに歩み寄る。
まだ若いサラリーマンだろうか、一人の幼い少年に群がり何かひそひそと話してる様子が伺えて。
『へぇ、お前幼い男の子好きなんだ。物好きだな』
『いやマジでお前もやってみろって、その辺の女なんかよりやみつきになるよ』
『うっわ変態。………でもこの子もこんなとこに一人でいんだから………金と飯くらいやればさ、簡単に許してくれそうじゃね。すっげぇ可愛い顔してるし』
( サラリーマン達の会話に血が逆流する勢いで怒りが込み上げてはズカズカと路地に入り倒れる少年を抱き抱え慌てふためくサラリーマンを睨み付け。
取り敢えずこの少年は何なのだろうかと思いつつ寮へと向かう訳にも行かないかとカラオケ店にて部屋を一室借りては少年の顔を改めて見詰めて。
そこで驚きを隠せずにまじまじと少年を見詰めては少年の頬を軽くパシパシと叩いて。
丸で相手をそのまま子供にしたかの様な見掛けに胸が高鳴るも取り敢えず人攫いだと勘違いされては堪るかと。
ゆっくり目を開けた少年(相手)の顔を覗き込んでは「おい、お前名前は??家何処だ」と。
しかしとろんとした瞳のまま何も言わない少年(相手)に疲れを切らしては腹でも減ってるのかと大きく勘違いしルームサービスを頼んでは「ほら、腹減ってんだろ」と。
この辺りでは見た事無い顔立ちだし孤児院の子供で無い事は確かな為一体どうしようかと。
「…ったく、父さん母さんと喧嘩でもしたのか??」
( 一人でに問い掛け小さな溜息を付いてはまた先程の様な変態に手を出されたら大変だし少年(相手)を背負い取り敢えずこっそり寮へと連れて行こうと。
「取り敢えず俺の部屋来る??」
( 一応問い掛けるも返答を聞く前に立ち上がっては部屋の代金を支払い少年(相手)を隠しながら自室へと訪れて。
大き過ぎるが仕方無いと自分の服を貸しては小さな身体を抱え浴室で身体を温めて。
髪を乾かしてやらなきゃなと思うも自分は短髪な故にドライヤーなんて物は無く丁寧に髪を拭いてやっては「マジで困ったな。………てかお前名前は何なの。そういやまだ聞いてなかったな」と。
( / 菊君の幼児化に鼻血撒き散らしてる本体でs←
滅茶苦茶だなんてっ…寧ろ美味し過ぎて興奮気味に携帯見てました(`⊙ω⊙´)カッ!!
設定了解しました-、繿は一応子供好きなので愛でて愛でて愛でまくると思われます←
いやもう寧ろ繿じゃなくて自分が愛でた((黙
>桐崎
(知らない男(相手)の部屋に連れられ始めは緊張するも親切な対応に徐々に警戒を解き大人しくしては相手の問いかけに小さく首を傾げ「…名前、分かんない」と短く答え。
子供ながら相手が困っているのが伺え自分のせいだと思い「…ごめんなさい」としょんぼりするも、何故か相手と居ると心が落ち着き銀髪をじーっと見詰めては無性に触れたくなりベッドに座る相手によじ登ると前髪をワシャと掴んで。
「お兄ちゃんの髪、綺麗。お目々もかっこいいね」
(ニコと笑い向き合う形で相手の膝の上に跨るも、突如扉が開き『繿、ちょっと服貸してー』と兄が入ってきては慌てて相手の後ろに隠れて。
『え…誰その子?……は!繿まさか誘拐?!』
(口に手をあて態とらしく後退る兄は相手の話しから状況を理解するとすぐに若頭に電話をかけ色々確認を取り。
『…警察に届けは出てないみたい。身元が分かるものもないし、どうしようかねー』
「……ごめんなさい」
(何も思い出せない事が申し訳なく口を噤んで俯いては此れからどうなるのかという不安から相手の裾をキュッと掴んで。
『その様子だと梃子でも繿から離れそうにないね。…繿って昔っから子供に好かれやすいよね』
(ムッと顔を近づけてくる兄から逃げるよう相手にしがみついては、ふとベッド脇に置いてあるCDが目に止まり「僕、あの人達知ってるよ」と指さして。
『随分ませたもの聞くんだね。…保護者の趣味かな』
「この前ライブ行ったよ」
『へぇ、その歳で?…誰とかな?』
「………わかんない」
(肝心なところが思い出せずモヤモヤしては髪をクシャクシャと掻き乱し必死で記憶をたぐり寄せるも結局何も浮かばず、その後も相手にぴったり寄り添い相手が手洗いにいくだけの時も不安から後をついて離れずにいて。
>露木
( 翌日、まだ隣で眠る相手の柔らかい頬に触れながら穏やかな笑みを浮かべてはのそのそと着替え初めて。
子供達の費用も全て貯め終わり暫くの休みを貰ってる為相手から目を離す事も無いと安心しながら朝食を用意しようとしてはピタリと手を止める。
流石に子供にカップラーメンは良くないと携帯片手に料理の作り方を載せてる投稿系サイトを開いては朝食にイチオシのスープの作り方を見ながら料理を初めて。
暫く経ち皿の上にトーストを乗せてはベッドの上にて目を擦りながら起きてた相手を抱き抱えテーブルの自分の席の隣に座らせ予め冷ましておいたスープを相手の前に置きスプーンを手渡して。
「………味に保証は出来ないけど」と小さく呟いて。
( 朝食を終えテレビを見たりとしてたが相手の子供服が乾いたのに気付いてはそれに着替えさせて。
飲物などを買いにコンビニへ行く予定だったがこの調子なら着いて来るだろうなと判断し自分のパーカーをすっぽりと被せてはそのまま学校の外へと走り。
かなり離れたコンビニへと訪れミネラルウォーターを籠に入れてはトタトタと着いて来る相手の頭をわしゃわしゃと撫でて。
ここまで歩かせたのだし、と相手を抱えては「駄菓子屋あんだけどよ、行くか??」と問い掛け会計を済ませては駄菓子屋へと向かって。
( 駄菓子屋へ着いた途端見知った顔(幼馴染み)が目に入れば小さな相手に駆け寄り『な…何よこの子!!!か………可愛いっ!!!』と相手に抱き着いて。
一体どうしたのかと聞かれ少しづつ内容を説明しては幼馴染みもどうしたようかと頭を悩ませる………のも一瞬で直ぐに相手の目線にしゃがんでは“可愛い”を連呼していて。
『ふふ、お菓子食べる-??私も駄菓子屋好きなの!!繿君に連れて来て貰ったの-??』
( ニコニコと相手に話し掛ける幼馴染みを尻目に小さな籠を手渡しては「好きなの選んで良いよ」と。
( それから寮への帰り道、相手と手を繋ぎながらゆっくりと歩いては携帯を見詰めどこかまだ未練がましく相手からの連絡を待っていて。
「……………露木、」と小さく零した事にも気付かずに寮が近付いて来た為に相手を抱え上げ。
>桐崎
(相手に抱えられながら買って貰ったばかりの棒付飴を上機嫌で舐めるも相手が深刻そうに携帯を見て“露木”と呟いた言葉に「何?」と無意識に反応しては相手を見詰める。
しかしすぐケロッとすると「お兄ちゃんも食べる?」と自分の舐めていた飴を差し出して。
(寮へと付き相変わらず相手の足に纏わり付いては好奇心から訪れていた青年に駄菓子を渡し相手にも「プリン好きでしょ?」とまだ相手の好みを聞いてもいないのにプリン味のチョコを渡して。
『うわぁ、それ超甘そう。そういうの兄さんあまり好きじゃないよ』
「………」
(青年の言葉にムッと拗ねては、丁度相手の携帯が鳴って男が奪った自分の携帯で嫌がらせのごとく元カノと自分が仲良くする加工写真を添付し《あんたは一生独りだろうな》と心に傷を負わせるような言葉を態々選んで送りつけ。
相手の膝の上に乗っていたため、偶々自分の写る写真が見えてはドクンと大きく胸が脈打ち「この人、誰?」と相手に尋ね“露木菊”だと聞いたところで今まで空っぽだった脳内に記憶が流れ込み漸く自分が誰かを悟り状況も理解すると一気に青ざめて。
『……ん?僕どうしたの?なんかあった?』
「……ぁ、…いや、何でもない、よ」
(歯切れ悪く答えては相手の膝の上から慌ててどいて急に余所余所しく間を置くと壁に張り付くように後退り。
「俺…ぁ…僕、家、思い出したから帰るね。お世話してくれてありがとう」
(ぎこちなく笑んでは、何故身に覚えのない写真が相手に送られたのかと訝しむ以前にこんな姿で相手といられないと焦燥にかられグッと背伸びしてドアノブを下げて外に出ると一目散に駆け出す。
が、其処は子供の足、思うように足が前に出ず一度派手に転ぶも瞬時起き上がり“早く男(槇本)を見つけだし元に戻して貰わねば”と階段を駆け下りて。
(その頃、男は自分が相手に拾われた事を知り、誤算だったと焦っては幼児が自分だと知られる前に相手の精神を傷付け完全に自分への想いを断ち切らさせねばと策を考え。
自分(菊)の携帯で《…さっきは御免。…本当はあんたが女と仲良くしてるって聞いてすごいむかついて勢いでやったことなんだ。ちゃんと謝りたいから明日会わないか?…俺、今でもあんたのこと信じてるから》と嘘のメールを送り。
その後すぐそのまま自分(菊)の携帯で裏で見世物をする店に《桐崎って良い能力者を紹介するんで明日この廃工場に来てみてください。高値を期待してます》と相手に指定した待ち合わせ場所と同じ場所を指定して送って。
>露木
( 丸で自分を知ってるかの様なら物言いの少年に散々疑問を浮かべるも自分の携帯に来たメールに気付いては一気に表情が暗くなり。
目前の幼い少年(相手)に良く似た相手の事を問われては特に隠す事も無いかと相手の名前を告げる。
しかし突如少年(相手)の表情がサッと変われば“家を思い出した”などと述べ部屋を出て行ってしまって。
『うわ、ちょ…流石に危ないよね』
「急いで追い掛ける、餓鬼一人は流石に心配だし」
( 青年と共に街まで来た所でまた携帯が鳴り響けば先程と打って変わった内容に頭を悩ませる。
しかしまだ未練がましく愛しく思ってる相手の誘いを断れる筈も無くいとも簡単に流されてしまっては若頭へ連絡を回す青年に少し外すと告げて。
急な心変わりなど怪しいとは分かってるのに廃工場まで来てしまえば重たい扉を開け「………露木、居るのか」と小さく呟いて。
『へぇ、お前が桐崎??』
「……………は??……あんた達、…誰だよ」
『口が悪い子は嫌いだな。まぁ良いや、誰が一番金を出すか見物だね』
( 男達に囲まれながらもその言葉が理解出来ずにひたすらに状況を理解しようとして。
相手は何処にいるのか、この男達は何なのかと懸命に思考を巡らせる中、男の次の言葉に頭が真っ白になり信じられないと。
『誰も何もお前の事露木に紹介して貰ったんだよ、“良い能力者が居る”ってな』
『まだ若いしこれは良い金儲けになるね。露木君に感謝しなくちゃな』
「……………露木が??……………」
『ほらよ、証拠のメール。しっかりと露木からだろ??』
「………そんな筈…」
『売られたんだよ、馬鹿みてぇに尻尾振ってっから。まぁしっかり飼い慣らしてやらぁ』
『さ、値段が高い物から彼を引き受けるルールだね。露木君にも金を送らなきゃならないし一番高額の人の手に行く事になる』
( 一人の男が自分の能力を刺激するかの如く首を締めて来ては咄嗟的に能力が解放されてしまい。
何度も意識が遠のこうとする所、男達が次々と額を上げた値を言ってるのが耳に入ってはもう本当に相手の心が手に入る事は無いのだと。
どうやら自分の値が決まったらしく一人の男に首根っこを掴まれては『ほら、大人しくしろ』と。
無理矢理明日からの仕事を言い渡されては誰が従う物かと顔を背ける。
その態度が気に入らなかったのか頬を思い切り殴られては冷えた心を隠しながら廃工場を後にして。
( 切れた口内の痛みに眉を寄せてた所でまた携帯が鳴り響いては《まんまと騙されたんだ。あんたって本当に馬鹿だな、そんなに俺が好きだったんだ》と挑発する様なメールが届いて。
苛立ちが込み上げ電話を掛けるも相手が出る事は無く留守番電話に繋がっては“メールは出来ても電話には出れないのか”と。
「誰がテメェみてぇな薄汚ぇ身売りに本気になるかよ。自惚れ過ぎだろ、笑わせんな。………最初から本気になんてしてねぇんだよ。………今日の事、許さねぇから。次会ったらマジぶっ殺してやるからな」
( 暴言を散々撒き散らし留守番電話を切ってはコンビニにて水を購入し腫れた口内を冷やして。
( その頃、幼い姿の相手と出会した能力者の男は相手の姿を見るなり憐れむ様な笑みを浮かべる。
そして不意に取り出した相手の携帯で先程の自分からの留守番電話を再生しては面白そうに笑って。
『桐崎は最初から露木なんて見ても無かったんだよ。…だって露木と付き合ってる最中も女との関係は耐えなかったんだから。桐崎が洋風の居酒屋のバイト始めたのだって若い女性に人気の店だからって知ってた??』
( 上手な嘘をつらつらと並べては相手の様子を伺っていて。
>桐崎
(街の中、男の行方を探していると向こうから接触してきて、聞かされた留守録と男の言葉に絶句しては小さく首を横に振って「嘘だ…」と後退る。
しかし男に腕をつかまれ何処で見ていたのか『ついこの前本人から直接同じようなこと言われただろ』と耳打ちされては今までの甘い時間は本当にまやかしだったのだと失望して。
それでも今の身体では何かと不便、戻して貰おうと男に頼むも聞き入れては貰えず『もう暫くそうしてろ』と突き放され、結局携帯も奪い返せずに去りゆく男のポケットからはみ出る相手から貰ったストラップが揺れ動くのを虚しく見詰めることしか出来ずに。
(トボトボとアパートに戻っては大家に“露木の親戚”と適当に理由をつけ首を傾げられながらも予備鍵を得ると自室に入りベッドに倒れ込む。
目を閉じれば相手の喜怒哀楽の表情が走馬灯のように浮かび、意に反して涙が込み上げてきてはしゃくりを上げて布団にくるまり気付けば眠りについていて。
(目覚めたのは翌朝、本などを踏み台にして何とか朝の身支度をするも子供服は一着しかなかったため洗濯が終わるまで家で大人しくしては、洗濯後着替を済ませ今度こそ男に元に戻して貰うため街に出て男を探し、相手のことは考えないようにして。
(その頃、相手を買った男はしつこく相手に連絡を取り応じなければ青年に手を出すと脅迫して廃墟に相手を呼び出しては訪れた相手を乱暴に硬いマットに放り投げ。
『たく、従順だったら可愛がってやったものを。…今日は仕置だ』
(ニタリと笑み力尽くで相手を抑え込むとトラウマを抉るように煙草をちらつかせ『お前の弱みを告げ口したのも露木だぜ。ちなみに赤城だったか?あいつをだしに使ったのも露木だ』と男(槇本)が自分の携帯から送ったメールを見せつけて『にしてもお前、いい顔してる上に肌も女みたいに綺麗だな。…今夜野郎どもに売り捌くのが楽しみだ』と相手の髪を撫で上げて。
(一方自分は偶然、相手が怪しい男と廃墟に入っていく姿を目撃し外の見張りが『あの餓鬼上物だし相当高値で売れるぞ』『俺も遊びて~な~』と話すのが聞こえ、一度は“あんな遊び人、痛い目見た方がいいんだ”と素通りしようとするも、未練がましく相手を想う気持ちが見てみぬ振りなど出来るはずもなく、小さい体を利用し見張りの目を盗んで裏口から中へ侵入すると痛々しい暴行の音がする方へ息を顰めて忍び寄り物陰から様子を窺い。
相手が痛めけられる光景、酷い惨状に精神まで幼稚になったのか足が竦み震えるもこのままでは駄目だと恐怖を勇気に変え飛び出しては男の腕に爪を立て手加減なしに噛み付いて。
殴られようが決死で男に喰らいつき隙を見ては男の急所に蹴りを入れて怯んでる隙に男から相手の携帯を奪うとすぐにアドレス帳から兄に電話を入れて。
>露木
( 男達からの酷い暴行の最中、これも相手が仕組んだ物なのかと勘違いを続け抵抗しようとも人数的に難しい所がありいとも簡単に気圧されて。
青年達にまで手を出されたら堪らないと必死に自分を押し殺してた所で小さな影が横切ったと思えば一人の男に噛み付き携帯を奪うのが見えては別の男が小さな相手に殴り掛かろうとして。
咄嗟に身体が反応し相手の上に多い被さっては兄に連絡を入れたとも知らず「親は、どうした。………危ないだろ、フラフラしてたら変な奴に捕まるぞ」と小さく叱りそのまま抱き締めて。
『おいおい、良いのかよ。露木がお前を売ったんだぜ??好きにして良いって言われてんだ、ジッとしてろってんだ』
「……………煩ぇな、取り敢えずこの餓鬼安全な場所にやってくんねぇか。…そしたらちゃんと大人しくしてやるよ、こんな小せぇ餓鬼に見せるもんじゃねぇだろ」
『悪いが躾のなってない餓鬼は嫌いでね、悪いがそれは聞いてやれねぇな』
( 尚も相手に暴力を振るおうとするのに何とか盾となっては懸命に逃げ道を探す。
しかし不意に重たい鉄の扉が開いたと思えば若頭と共に兄や青年が立っていて。
『その子、一応僕の友人なんだよね。君達が人数でやろうってんなら僕はその倍の人数を出そうかな。言っとくけど木ノ宮グループの部下達はみ-んな武道とか優れてるからね??』
( きょとんと態とらしく首を傾げる若頭の顔は割と知れており顔色を変えた男達はさっさと逃げて行ってしまい駆け寄って来た兄に軽く頬を叩かれて。
『あ-もう馬鹿じゃないの。…って言うかその子が連絡してくれたんだ、随分器用な子だね』
『あれ??お父さんとお母さんの家思い出したって…………ってまた抜け出して来たの-??』
( 困り顔の青年とは真逆に相手に似てる事からデレデレとする兄と青年を見詰めては小さく礼を言って。
外は既に夜、一人で家に向かわせるのも心配だと小さな相手を寮へと連行しては若頭が用意してくれた子供服を受け取り自室へと来ては温めの風呂を沸かし一人で入ると聞かない相手の言葉を無視して。
「前は一緒に入っただろうが、急にどうしたんだよ」
( ボソリと呟き入浴を終え慣れない手付きで自分の傷の消毒を済ませてはまた携帯片手に料理を始める。
難しい顔をしながら何度か味見をし、出来た料理をテーブルに並べてはテレビを付けて。
「料理とか本当苦手なんだ。…母さんは上手かったんだけど…流石に教えて貰う年じゃねぇし。………俺の作ったの旨いって言ってくれたの露木くらいで………」
( 僅かに表情を綻ばせながら相手の名前を言った所で視線を下に向けては誤魔化して。
中身が相手だとも知らずに無意識の内に携帯を何度も気にしてしまい。
食事や洗い物などを終えのんびりとした時間を過ごしてた所で相手を軽々と抱き抱えては自分の膝の上に乗せ髪を拭いてやる。
鼻は効くつもりで僅かに感じた“相手”の匂いに反応しては僅かに眉を寄せ「お前マジ何処の子??……………露木の、知り合いか??」と。
柔らかい頬に触れながらその可愛らしさに思わず頬を緩めては自然と笑みが浮かび。
>桐崎
(ボロボロの身体で身を挺して庇ってくれる相手に胸がズキズキと痛み、きっと“子供だから”守ってくれるのだろうと悲観的になっては、兄達が来て漸く解放されると直ぐ退散しようとするも敢え無く相手の部屋に連れられて。
(相手の部屋にて、丁寧に風呂に入れられ子供服を着せられては帰る隙を窺うも一生懸命作ってくれた料理を目の前にして帰るに帰れなくなり結局その美味しさにペロリと平らげては眠気からウトウトしはじめ相手の膝の上に簡単に乗せられる。
次ぐ問い掛けに小さく肩を揺らしては視線を横に流し「…親戚って聞いたよ」と短く答え、相手のきれいな微笑みを見てはもう二度と“自分”に向けられる事はないのだろうなと。
相手の留守録が脳裏を過り、相手が(男の虚言を含む)自分に傷付けられているとも知らず一方的に捨てられたのだと勘違いし続けては相手を悲しげに見上げ「……露木さんは身売りなの?」とほぼ無意識に尋ねて。
すぐハッとなっては「なんでもない」と首を横に振り、相手の頬の傷に触れては「…大丈夫?」と(嘘の)自分のせいでついた傷とも知らず心配しては相手はいつも人の為に傷だらけだなと眉を下げ。
____こんなにも優しい相手にあんな暴言を吐かせたのは自分のせいかもしれない。
____もう相手といられないなら一生このままで………。
そんな甘えが生まれては子供のせいか緩くなった涙腺からホロホロと涙が零れ落ち其れを隠すように相手に抱き着いては思わず「…繿」と呼んでしまい。
もしかしたらバレた…と蒼白になっては「ご、御免なさい」と早口で謝り一目散に相手の部屋を飛び出し、丁度相手の部屋にプリントを届けに来た男子高生にぶつかるのも気にせずひたすら走って。
(その頃、男は相手の部屋のポストに仕込んだ盗聴器により現状を把握すると直ぐに街に出て公園の遊具(トンネル)の中に身を隠す自分を引きずり出しては大人用コートを被せ有無を言わさず元の姿に戻して『ほら、さっさと服着ろ。お前もそんな格好じゃ困るだろ』と服を投げ渡し。
何故このタイミングで…と男を睨みつけながら服を着ては「…あんた何がしたいんだよ」と何も知らず問うも男が応える代わりに昼間見かけた男(相手を買った男)が現れ『桐崎には逃げられたからな。代わりにお前が稼ぎになってくれるって聞いてよ』と強引に口付けられて。
戻った反動で関節が痛み碌に抵抗も出来ずその姿は求め合っているように見えなくもなく。
その間に男(槇本)は、相手に接触を試み“子供なら公園に居た”と言うつもりで。
>露木
( 涙ながらに自分の名前を呼んだ様子にピクリと反応しては問い詰め様とするも逃げ出されてしまえばそれも適わずに項垂れる。
続け様に開いた扉から同級生の男子生徒がプリント片手に自分を引き気味に見詰めてるのが目に入れば「何??」と問い掛けて。
『…や、お前子供居たんだな。…噂とか凄かったから色々あんだろうなとは思ってたけど孕ませてたとかヤバくね??』
「はぁ??」
『じゃ…じゃあな。俺戻るからさ』
( 見事な勘違いをしたまま去って行く男子生徒に溜息を漏らしつつ兎に角少年(相手)を探さなければと判断して。
( 寮を出てひたすらに相手を探してた所、見ず知らずの男にドンッとぶつかれば慌てて頭を下げて。
表向き人の良さそうな雰囲気の男性に『どうしたんですか??慌ててる様子ですが…』と問われては親戚の子供が一人で出て行ってしまったと話して。
『もしかして…さっき居た子かな。公園の遊具の中で啜り泣いてました、僕も声を掛けてあげるべきだったんですが急いでて………すみません』
「あ、…いえ。じゃあ公園行ってきます」
( いとも簡単に騙され公園へと向かえば向こうの遊具に人が動く陰が見えては真っ直ぐそちらへと駆け寄り「おい、また一人でフラフラ……………、」と。
相手が男に抱き着き求める様にも見えるその光景に目を見開いては蔑む様な目線を向けて。
「お取り込み中悪いけど此処は子供が遊ぶ場所だ。ホテルなりなんなりに行ってやれよ」
( あくまで平然を装いながら淡々と蔑みの言葉を言うもキリキリと痛む胸が悲鳴を上げてしまい。
歯をギリギリと噛み締め相手の前髪を掴み無理矢理目を合わせては「……………へぇ、俺もそいつ等と同じ??金なんて払ってないのに俺の相手したのは身体の相性が良かったからか??」と。
「次会ったらぶっ殺してやろうと思ってたけどな、馬鹿みてぇに他の男によがってんの見たら冷めたわ。命拾いしたな」
( 悔しさから拳を握り締めては逃げる様に公園を後にして。
>桐崎
(男から逃れようと力の入らない身体で必死に抵抗していたところ、現れた相手に背筋が冷えては誤解だと言う間もなく蔑みの言葉を浴びせられ身勝手に傷付く。
相手の心の痛みも知らずに何で自分だけが責められなければいけないんだと、そっちだって女と散々遊んでいた癖にと怒りが芽生えては唇を噛み締め八つ当たりするように男を突き飛ばし何度か転びそうになりながらアパートに駆け込んで。
(翌朝洗面所にて座り込んだ状態で目を覚ましてはジトリと重たい髪に濡れたまま寝てしまったのかと溜息を吐き、フラリと立ち上がっては軽く顔を洗って着替えを済ませバイトに行く準備をする。
と、ポストに自分の携帯が入っているのに気付いてはおずおずと手に取るも受送信履歴は空で相手のあの留守録だけが残っていてすぐに削除してはアパートを出て。
(その頃、元カノは友人との旅行を終えて戻ってきたところ、偶々相手と出会しては男によって自分と旅行に行ったことにされていたとは知らず普通に話し掛けて。
『あ…こんにちは。…あ、此れ友達と旅行行ったからその御土産。良かったらみんなで食べてね。………桐崎くん、なんか疲れてる?』
(相手の顔色を心配するも直ぐに『御免なさい。私に心配されても困るよね』と眉を下げて謝り『旅行行く前にね、菊から桐崎君と付き合ってるって聞いたの。…それになのに私、菊に困らせるようなことお願いしちゃって…。………菊とは上手くやってる?あれから全然連絡なくて…』と現状を何も知らずに悲しげに溜息を吐いて。
その時元カノと一緒に旅行に行っていた友人が『ねえねえこの恰好良い人だれ?』と口を挟んでは『私、奈緒の友達。よろしくね』と相手を上目遣いで見詰め『連絡先教えてよ』と馴れ馴れしくして。
>露木
( 掴めない元カノの話に“露木と旅行に行って仲良くしてた癖に何のつもりだ”と勝手な苛立ちが込み上げては「上手くやってる訳無いだろ」と追求せずに素っ気なく答えて。
困った様に眉を下げる元カノの行動や表情の意味も分からず相手と仲良くしてる罪悪感からそんな顔をしてるだけで所詮は偽善なのだろうと。
軽々しく連絡先を聞いて来る元カノの友人にもへらりと胡散臭く微笑んでは「良いよ、赤外線出来る??」何て問い掛け携帯を取り出して。
しかしそれを見た途端元カノが自分の手を掴み『ちょっと!!!…っ、どういう事よ』と。
「あ??あんたに関係無いだろ」
( 冷めた瞳で元カノの手を振り払えば友人とのアドレスを交換しさっさとその場を後にして。
( 結局少年(相手)も見付からずに困り顔で寮へと戻ろうと考えるも久し振りに孤児院へと顔を出しては届いていたランドセルやらを見せて来る子供達に微笑みを零し軽く頭を撫でてやって。
院主に封筒に入れた貯金を渡しては子供達の費用に使ってくれと頼んで。
それから休む事無く寮へと戻っては共同スペースにて暇を潰すもふと現れた青年に『兄さんレンタルショップ付き合ってよ-』と言われてはあからさまに嫌そうな顔をして。
「は、一人で行けば良いじゃん」
『…え-やだよ。一緒に来てってば』
( レンタルショップには相手がいると渋ってたが青年の押しに負けては渋々相手のバイト先であるレンタルショップへと向かう事にして。
>桐崎
(バイト先にてバックルームで指定の服に着替え棚戻しをしていたところばったり青年と相手に出会しては始め会った時のようにあからさまに嫌そうな表情をして相手を睨みつけ。
「…今日は女じゃないんだな。性格悪いのバレて嫌われたか?」
(刺のある言い方で冷ややかに述べるも全く罪のない青年には申し訳なく思い目を逸らす。
当然、男の策により自分が青年をダシに使った事になってるなど知らず相手に視線を戻しては「てか。昨日あんたが邪魔したせいであの男から金貰い損ねたんだけど。……あんた女引っ掛けていくらでも稼げるんだろ?損した分の金、弁償してくんない?」と心にもない訳の分からない事を述べ内心舌打ちするも、どうせ自分など何とも思ってない相手にとっては屁でもないだろうと。
「…身体の相性がどうのとか言ってたけどそんなんじゃないから。ただあんたが近くに居て、そこそこ顔も良いから利用してやっただけ。病気貰うリスクも減るからな。特別な感情なんて一切なかった。ぶっ殺してやろうなんて熱くなって本当滑稽だったよ」
(鼻で笑うように言うも胸はズキズキと痛み幼児化した時に携帯をしきりに気にして“露木”と名を呼ぶ相手の表情が浮かんではギリッと奥歯を噛みしめる。
こんなものに惑わされるなと、期待するだけ無駄と言い聞かせては相手を睨みつけ口を開きかけるも突如見知らぬ女(元カノの友人)が『あー!偶然!!』と近寄ってきて。
『さっきぶりだね。アド交換した直後にメールしたんだけど気付いた?』
『えー兄さん誰、この人?』
「…………」
(馴れ馴れしく相手に色目をつかう女に未練がましく嫉妬してしまう自分に気付いては小さく舌打ちし「……今夜の相手だろ。……ほんと虚しいやつ」とボソッと蔑んで。
その時、店長が此方を見る鋭い視線に気付いては流石におしゃべりが過ぎたとバイトに戻るため何も言わずに店の奥に行こうとして。
>露木
( レンタルショップにてばったりと出会してしまった相手が嫌顔をあからさまにしてるのに内心胸が痛むもそれを表情に出さない様に努めては昨日の事は相手が自分からした事なのかと勘違いして。
身売りなんて思ってる訳が無い、今でも相手を___と胸が苦しくなる為考えるのを止める様にしては駆け寄って来た元カノの友人に一瞬首を傾げる。
誰だっただろうかと思い返してた所、元カノの友人の言葉に漸く思い出しては「ごめん、気付かなかった」なんて言いながら気安く女の頭を撫でて。
嫌味を言い残し去って行く相手の肩を掴み無理矢理此方に振り向かせては蔑む様に相手を見詰める。
「ほらよ、昨日の弁償代。………は、態々俺から金巻き上げなくてもその顔と身体がありゃ幾らでも稼げんじゃねぇの??」
( 万札数枚を相手のポケットに捩じ込みわたわたとする青年と勝手に着いて来る女と共にレンタルショップを後にしては女の“また今度会おう”と言う約束に適当に頷き寮へと向かって。
『に、兄さんまた露木と喧嘩したの??』
「別に」
『それに…夜な夜な兄さんが外出してるの…俺だって知ってるんだからね。露木の学年でも“桐崎は女遊びがどうたらこうたら”って噂になってる………』
「当たりって事で言わせとけよ」
( 本当は相手と別れた後に女に手を出す気になんてなれる筈も無く孤児院に通い詰めてるだなんて言えずに。
新しく孤児院へと来た少女と少年の姉弟がまだ孤児院に慣れずに夜に泣きべそをかいてるのを慰めに通い詰めてるだなんて理由格好悪い事この上なく。
青年が何か言いかけたがさっさと自室に戻り「じゃ、早いけど俺もう寝るから」と告げて。
また自分を騙す様な言葉で構わないから相手からの連絡が欲しいと未練がましく携帯を見詰める自分に嫌気が差してはベッドへと横たわって。
>桐崎
(夜、バイトを終えては着替えをする際床に落ちる万札に何であんな無意味な侮蔑をしてしまったのかと唇を噛み締め“お金なんていらないのに…”とクシャリと札を広い上げ帰り支度を済ますとアパートへ向かって。
(その帰り道、同じ学科の男子学生に出会しては何故かニヤニヤと近づいて来て“相手の噂”について話し始め。
『お前、桐崎と仲良かったよな?いい女紹介してくれるように頼んでくんない?』
「…は?……自分で頼めよ。それに俺、彼奴と仲良くないし」
『え?そうなの?なんか一部の女子の間で同人誌だっけ?流行ってるって聞いたけど』
「……いつの話だよ。向こうが勝手に騒いでるだけだから」
『なんだそうなのかぁ。…桐崎なら毎晩みたく女と遊んでるらしいから絶対ツテになると思ったんだけどなぁ』
「…………」
『あ、露木知ってるか?彼奴、隠し子いるらしいぜ。この前見たって奴がいるんだよ。あいつバイトめっちゃしてたけどそりゃあ女に貢いで餓鬼もいれば金もいるよなぁ』
(ペラペラと良く喋り相手を蔑みだす男子学生に段々と苛々してきては「…そうやって人の噂馬鹿みたいに喋って楽しいか?」と睨みつけつつ、“隠し子”が自分の事とも気付かず噂を信じては悔しい気持ちでその場を立ち去って。
(翌朝、睡眠不足で重たい身体を起こしては教授からの呼び出しがあったためさっさと身支度をすませるも、ふと相手のCDが目に止まり、まだ返してなかったかと。
兄にでも渡して…と思うが借りた物くらい自分で返せよと変に真面目になっては、ここまできて“相手に会いたい”という気持ちを隠し連絡もせずに相手の部屋へと向かって。
(その頃、元カノの友人は昨晩から今まで逐一自身の行動を報告して《繿君今何してる??私は今半身浴中(*´ェ`*)♡》《おはよー、今日の服は何色ー?私はピンクだよ♪っていうかKSって繿君忙しいの?(´・ω・`)》と返信がなかろうとしつこくSNS(L○NE)にメッセージを送り《繿君子供好きで孤児院に寄付してるんだってね。私実家がパン屋なんだけど良かったら孤児院に行ってパン作り教室開くよ!勿論無償で!…それが終わったら2人で夜お出かけしよーね♡》と何とか相手の気を惹こうと必死でメッセージを送って。
>露木
( 元カノの友人のしつこいメールに軽々しく連絡先を交換するんじゃ無かった、なんて後悔するも流石に既読無視を続けるのも失礼かと《今度な》と適当で短い文を送っては孤児院へと電話をして。
院主に繋いで貰ったのは孤児院に来たばかりの姉弟、最近暇があれば連絡を取っていて。
『もしもし、…繿兄ちゃん??あ、今お姉ちゃんに代わるね』
「良いよ、どうせ聞こえてるだろ」
『うん、聞こえてるって。繿兄ちゃんは今学校??』
「あぁ。お前達も落ち着いたらちゃんと小学校通わせてやるからな、ランドセルも筆箱も好きなの選べ」
『良いの??僕妖怪ウ○ッチのが良いなぁ』
( 元気そうに話す姉弟に心温められてた所、ふとノック音が鳴り響いては携帯を耳に当てたまま玄関を開け。
想像もしてなかった相手の訪問にあんぐりと口を開けつつ兎に角電話を切ろうと「ごめん、後で電話するから一旦切る。来週の土日開けとくから筆箱とか見に行こうな」と告げ電話を切って。
冷ややかな表情とは裏腹に煩い鼓動に嫌気を感じつつ「何か用??」と言葉少なに問い掛けては差し出されたCDに漸く相手に貸してた事を思い出して。
「………別に態々届けに来なくて良かったんだけど、何なら捨ててくれても良かったし」
( ブツブツと文句を翻つつそれでも本心は相手に会えた嬉しさもあり顔を背けては微妙な空気に溜息を付く。
俯いたまま頭をガシガシとかき乱しては「………さっさと行けよ。………お互い顔も見たくねぇんだから」と。
玄関口からでも伺える散乱された子供服(幼児化の相手に着せるつもりだった若頭からの貰い物)になど自分でも気付けずにいて。
>桐崎
(電話片手に誰かとの電話を切る様子にどうせ女だろうと勘違いしつつ、冷ややか表情と“互いに顔も見たくない”という言葉にズキリとなっては顔を逸し「……だったら態々来るかよ」と思わず小さく吐き捨てていて。
ふと相手の室内に見えた子供服、それが自分の為の物とも知らずやはり噂は本当だったのかと馬鹿な思い込みをしては何処か憐れむように相手を見て。
「……あんたってさ、いつから“そんな”なの。…女と遊んで子供まで作って……、もしかして子供に優しいのも孤児院に金入れてるのも罪の意識から?…だったとしたらすごく虚しい…。あんたの笑顔が…罪悪感からだったとしたら…俺は、悔しいよ」
(幼児化した時相手が向けてくれた柔らかな微笑が脳裏に浮かんでは軽く唇を噛み締め相手を僅かに揺れる瞳で見据え。
「…そんなに、……そんなに女と道理わきまえず遊びたいなら俺が女になって相手してやるよ。…女の俺なら金払ってでも相手して良いって言ってたよな?…俺もそこらの男相手するよりあんたのが楽だし、あんたも知らない女孕ませて罪の意識感じるなら俺のが気が楽だろ?」
(やや早口で、見当違いで訳の分からないことを述べては自分でも“何を言ってるんだ”と目を逸らすも口は止まってくれず「…別にあんたの為とか一切ないから。…あんたが女と遊ぶとさ…俺、あんたと連れ添ったことあるから俺まで周りに遊び人だって思われて迷惑してるだけ…。だからさ…さっき言ったこと考えといてくんない?」と嘘を並べ立て。
どうせただの虚言、返事を聞くまでもないし相手も気にも留めないだろうと早々にその場を立ち去って。
(翌土曜、未だに男(槇本)からの嫌がらせメール(相手と女の写真)が送られてきており、同じように相手にも元カノとの写真が送られてるとは知らず尚も嫉妬する自分に苛々してはベッドに携帯を放り投げる。
と、全く同じタイミングで携帯が鳴り“なんだよ”と毒吐きつつ着信に出てみると幼馴染の明るい声が響き。
『あ?菊?今日暇?暇だよね?今から百貨店来てくれない?従兄弟がさー、もうすぐ入学するんだけどまだお道具箱とか買ってないらしくて、それ買うから荷物になりそうなのよー。…ナツが好きそうな雑貨屋さん教えて上げるから!今すぐね、よろしく!』
(プツン、と一方的に電話が切れては相変わらず圧しの強いやつ…と溜息を吐くも特に用事もなかったためさっさと支度を済ますと百貨店へ向かって。
>露木
( 相手の言葉と切なげに揺らぐ瞳に押し黙るも一瞬“どうせなら相手の誘いに乗り偽りでも相手に触れられたら…”と考えるもそんなのは甘えた考えだと。
女遊びなんてしてないし夜抜け出してるのは孤児院の姉弟を寝かし付けに行ってるだけ。
しかしそんな事を言うつもりも無く唇を噛んでは下を向いたまま小さく息を付いて。
( 姉弟との約束をした土曜日、孤児院まで迎えに行き姉弟と共に百貨店へと訪れてははしゃぐ姉弟に無意識に頬を緩めていて。
二人の親は20代前半のまだ若い両親だったが碌に子育てもせずに育てるのが面倒になったという最低な理由で孤児院へと二人を置いて行った。
少しずつで構わないから二人の心の傷を癒したいという一心からパタパタと走り回る二人を追い掛けて。
『繿兄ちゃん、好きなの選んで良いの??』
「良いよ。ちゃんと気に入ったやつ選べよ」
『遙花(ハルカ)これが良いな、ピンク色の筆箱!!!陸(リク)はどれにするの??』
『僕はこれ-』
( 鉛筆やら消しゴムやらセットになってる箱を抱える笑顔の二人の頭を軽く撫でては会計を済ませ自分達で荷物を持ちたいと言う二人に紙袋を渡して。
『僕達今まで学校とか行った事無いから楽しみだな』
『友達とか沢山出来るかな』
( 不安げに話す様子に「出来るよ」と優しく答え次は上履きやらランドセルやらを身に行こうとした時、向こうから幼馴染みと共に歩く相手を見付けては咄嗟に逆方向に逃げようとするも『あ、繿く-ん!!!』と自分を呼ぶ幼馴染みの声にピクリと反応し硬直して。
『あら??この子達は……………』
『こんにちわ!!!僕達孤児院に新しく来て…小学校行くから繿兄ちゃんにランドセル買ってもらうの』
『可愛い筆箱買って貰ったの』
( ニコニコと話す二人の背後で軽く頭を抱えては相手を一切見ない様にぎこちなく微笑んで。
『まぁこの時期から小学校ってのも…訳ありなのよね。でも二人ともとっても元気ね。よし、お姉さんが生ジュース奢ってあげようかな』
『本当??!!』
『やったぁ』
( 飛び跳ねて喜ぶ二人に内心慌てるも断れる雰囲気では無く。
相手も自分も互いに顔を合わせられる仲では無く微妙な表情で俯くも既に姉弟は幼馴染みに打ち解けて。
( 生ジュースの店へと訪れ席に腰を下ろすもその場の雰囲気に慣れる事が出来ず「ごめん、ちょっと電話して来る」なんて言っては喫煙所へ向かい未成年にも関わらず成人を気取り済まし顔で煙草をくわえて。
その頃、姉弟が『私達ね、最近やっと自分で寝られる様になったの』と得意気に話していて。
>桐崎
(電話をすると言って席を外した相手にホッとしつつ、無邪気に笑う子供達の様子から相手によく懐いているのが窺えては“こんなにも子供が心を開くのに、あんな辛辣な言葉を言うだろうか”と一瞬疑うも、相手も“人間”…いろんな顔くらい持っているだろうと期待しないようにして子供達の話に耳を傾け。
『繿兄ちゃんね、いつも忙しいのに僕達が夜寝れないって言ったら一緒に寝てくれんだよ』
『ギューッてしてくれるの。だから安心して寝れるの!』
「……へぇ。…ねえそれっていつの話?」
『最近ずっとだよ!』
(ニコニコとジュースを飲む少年の言葉にまさかと…と青ざめる。
相手は最近ずっと女と遊んでいた筈、写真だって送られてきた…では何故だと…_。
脳裏にあの男(槇本)の姿が浮かんでは嫌な予感がしダラリと冷や汗が流れ。
『あれ、菊なんか顔色悪いけど大丈夫?』
「…あ…ああ、悪い。俺ちょっと用事思い出したから先帰る。…じゃあ、気をつけて帰れよ」
(平静を装い笑顔で述べては男を問い詰めるためさっさと現地点六階から一階までエレベーターで降りるも荷物持ちで買い物に連れ添ったのに手ぶらでは意味が無いではないかと。
上りのエレベーターに乗り直し六階を押すも一度三階(喫煙所有)で止まってはあろうことか相手と乗り合せ、しかも狭い密室二人きりになってしまい。
どんだけ運悪いんだと嘆くも数十秒の我慢。ひたすら沈黙を守り階数を示す電子版を見るも五階に来た所で突如ランプが消え、ガタンと大きく揺れてはエレベーターが停止しその反動で相手に寄れかかってしまい。
「…わ、悪い……」
(咄嗟に謝りガバッと距離を取っては真っ暗になったエレベーター内に何事かとすぐ非常用ボタンを押すも応答はなく、予備電源も作動する気配は全くなくて。
携帯も当然繋がらず“ここら一帯の停電だろうか”と頭を痛めてはハァと大きく溜息を吐いて壁に凭れ掛かって。
「……なんであんたなんかと……、……煙草臭いし」
(気まずさから気にもしない事を悪態吐いては再び溜息を吐くも、先刻の子供達の言葉を思い出してはチラと相手の居るほうを見て「………なあ…最近孤児院に通いつめてったって本当か?………女と会ってたってのは噂だけ?」と小声で尋ね暗がりで見えない相手の反応を窺って。
>露木
( 止まってしまったエレベーターの中、煙草の匂いを気にしつつ相手から離れては俯いて。
続いて問掛けられた相手の言葉にピクリと反応するも此処で真実を言ってしまえば優しい相手はまた自身を責めてしまうのだろうなと。
「……………そ、んな訳…無いだろ。あんた馬鹿だな、まだ俺の事信じようとか思ってんの??………残念ながら毎日毎日色んな女とお楽しみだよ」
( 鼻でせせら笑い遊び人を気取っては中々戻らないエレベーターに苛立ちつつ重い空気に唇を噛み締めて。
電波の繋がらない携帯を見詰め幼馴染みやあの姉弟は平気だろうかと眉を寄せる。
苛々としながら煙草を咥えジッポライターの火を口元の煙草に当てようとするが火の灯りと共に相手と目が合っては先程の言葉を思い出し火を付ける前に煙草を箱の中へと戻して。
溜息をつき天井をライターの火で灯しては非常天井口を見付けエレベーターの端に合った椅子に昇れば天井口を開けて携帯を片手に翳して。
「…あ、電波ギリギリ通じる」
( ボソリと呟き直ぐに幼馴染みに連絡を入れては姉弟の無事を問い掛け自分と相手の居場所を告げては係員にエレベーターを開ける様に告げて欲しいと頼み。
電話を切り相手に見向いては「30分くらい待てとよ、あんたの幼馴染みが係員呼んでくれるって」と告げ。
再び相手から離れた場所に腰を下ろしてはまた沈黙が続き、それに耐えられずに「……………あんたさ、本当はあの男に自分からよがってたんじゃねぇんだろ。………俺だって本当はあんたの事身売りなんて思ってない」と無意識に呟いて。
しかし直ぐにハッとしては「悪い、今の無し」と身勝手な事を言い後はひたすら無視を貫いて。
>桐崎
(相手が外部と連絡を取ってくれた事に安堵するも先程の相手の言葉が胸を締め付けていて、では子供達が嘘を吐いていたというのかと唇を噛みしめる。
__何だか期待することに疲れた…、真実がどうであれ此処まで自分を遠ざけるということは“嫌い”なのだろうと、思い込んでは呟かれた言葉に自嘲の笑みを零し「自分から誘ったに決まってるだろ」と暗い天井を仰いで。
「…外でやればそれだけ金くれるって言うから乗っただけの話。……今更“身売りじゃない”とか俺のこと慰めて何が狙いだ?俺と…“薄汚い身売り”としたくなった?」
(冷嘲気味に静かに述べるもすぐに「あー、悪い“今の無し”だったな」と刺々しく吐き捨てては、今でも男の事を思い出しただけで震える身体に暗くて良かったと時が過ぎるのをひたすら待って。
(数十分後、漸くエレベーターに明りがつき動き出しては六階のフロアで扉が開くなり目に涙をいっぱいに溜めた姉弟が相手に抱き付いて『繿兄ちゃーーん!!怖かったよ~!!』『もう会えないかと思ったー』とワンワン泣きだして。
その光景に“自分も子供だったら…”と一瞬思っては何考えてるんだと溜息を吐き、しきりに謝り停電の原因を話す係員に「大丈夫ですから」と笑顔で対応し、近寄ってきた幼馴染の荷物を持って頭を撫でてやると相手に振り返ることなく百貨店を出て。
(幼馴染のマンションまで荷物を運んだ後、すぐに別れを告げるももはや男に問い詰める気はなくなっていて。
どうせ嫌われてるんだと相手の辛辣な言葉だけを鵜呑みにしては“子供だったら…”と再びどうしようもないことを思うもその感情は強くなる一方で。
それなりの金を渡せば…と徐々に本気になってはSNSや人伝を頼りに男の居場所を突き止めその場所に向かって。
(その頃、元カノの友人は懲りずに相手に《今日停電あったね(+_+)繿君は大丈夫だった?…ところで今度っていつ?私はいつでもいいよ♡》と可愛さアピールのスタンプ付きでメッセージを送り続けていて。
>露木
( 元カノの友人からのメールにほとほと呆れつつ、それでも既読無視を続けるのは失礼かと考え《パン作り教室開いてくれんだろ??孤児院の子供達もきっと喜ぶし来週とかどう??…あ、子供達の前でイチャついて来んのは無しで
》と何処と無く素っ気無い文を送り。
返事は驚く程に早く《分かった!!!終わったらちょっとは甘えさせてね》なんて来ては面倒そうに眉を寄せ。
それからバイトへと向かい淡々と仕事をこなしてはまだ胸に突っかえる相手の言葉を思い出さない様にして。
( その頃、とあるバーで友人とダーツをしていた男(槙島)は突然の相手の訪問に驚きつつ渋々個室を借りては相手と二人になり『…一体何??話す事なんて何も無いんだけど』と携帯の事を咎められる物だと勘違いしていて。
しかし相手が言って来たのは男の能力の事で、男は少し驚いた様な顔をしては『へぇ…何、子供の身体で身売りした方が気持ち良かったとか??』と蔑む様な事を口にしたが流石に言い過ぎたかと微妙な表情で口を噤み。
差し出された金を見詰め相手を真っ直ぐに見詰めては『そんなの良いから………奈緒を、』と言い掛けるもやはり口を吃らせ緩く首を振って。
『今回だけ、聞いてやるよ。どうせ露木と桐崎の仲は終わったも同然だしな。増してや子供の姿で近付いたもんならきっと笑いもんになるだろうし』
( 相手の腕を強引に掴み物陰に来ては相手の額に手を翳し、バーの物置から子供服を持って来ては少し乱暴に着替えさせて。
ここのバーは男が能力を使う時の拠点となっており、その為に沢山の子供服を揃えてるのだが人の頼みで能力を使ったのは初めての為少し苛立った様な態度で。
結局男が良い人なのか悪い人なのかは分からず、店の外に相手を出しては『戻すか戻さないかは俺の判断だからな』と言い残して。
( バイトを早めに終え特にする事も無くフラフラと店を見て回ってた所、今日の夕食もどうせ一人だし作るのは面倒だと考えては適当なスーパーに入り夕飯でも買って帰ろうと考えていて。
>桐崎
(ダメ元で男(槇本)に交渉したが意外にも受け入れられ乱暴ながら子供服を着せられては子供用リュックまで用意してくれ、店に戻っていく男がポイ捨ての煙草を拾って行くのを見てふと過去を思いだす。
__中学時代、彼(槇本)は目立たない生徒だった。運動音痴で何をするにも不器用。
だが影でひっそり花瓶の水を変え、みんなが嫌がるトイレ掃除やゴミ箱のゴミ出しを黙って引き受ける、そんな人間だったなと。
今回の行いは許せないが根は良い奴なのかもしれないと、まだ男の行いを全て知った訳でないため甘い考えでいて。
(数十分、もうとっくに相手の寮に着いている筈なのにまだ半分しか来ておらず、子供の歩幅はこんなにも小さかっただろうかと溜息を吐く。
相手と歩いた時は全く苦じゃなかったのに…と項垂れつつ、そもそもいきなり押しかけて迷惑ではないだろうかと今更な心配をし始め。
何だか喉も乾いてきた…と歩く速度が更に落ちた時、スーパーが目に止まっては御茶でも買おうと、この時間この姿で一人という不自然な状況も気にせずにドリンク売り場に来てはいつも飲んでる緑茶に背伸びをして手を伸ばすもあと数ミリ足りずに。
なんて不便な身体だと毒吐きつつここは無理せず他のにしようと一段下の烏龍茶を手に取って抱き抱えてはレジに行こうとして。
>露木
( 御決まりのカップラーメンと適当な惣菜やらを籠に入れレジへと向かおうとしては見覚えのある小さな少年(相手)に気が付き其方へズカズカと駆け寄っては首根っこを掴み「何一人でまたテクテク歩ってんだよ。…ったく、母さんは??」と問い掛ける。
しかし居ないと言われてはまた一人で居たのかと溜息を漏らしつつ相手が抱える烏龍茶を取れば自分の籠に突っ込みレジへと向かって。
会計を済ませ相手に烏龍茶を手渡しては家まで送ろうと考えるも小さな子供が一人でうろうろしてる時点で帰りたくない理由でも有るのかと勘違いし小さな手を取っては結局寮まで連れて来て。
「お前の年で家出繰り返してたら色々怖い目に合うぞ」
( あまり怒りを見せずにさらっと叱ってやりながらカップラーメンを棚にしまい惣菜のみを出し簡単な料理をしてはテーブルの上に置き。
それにしても本当に相手に似てるなと考えつつふと携帯が鳴り響けば誰からかも確認せずに応答して。
電話の相手は孤児院のあの姉弟、今夜からは一人で寝れるという事らしく成長したなと頬を緩めては「じゃあ今夜からはちゃんと寝ろよ。また怖くなったら何時でも電話して、真夜中だろうがちゃんと出るから」と答え電話を切って。
これで夜な夜な寮を出る理由も無くなり一安心してはグッと伸びをして。
元カノの友人から何度かメッセージが来たがサラッと無視しては以前若頭に貰った子供服を相手に渡し。
「着れるだろ、それ。丁度いいと思う」
( “隠し子”の噂など知らずにもくもくと夕食を食べては何気無く携帯を取り相手のアドレスをなぞってはメールを開き何か送ろうとしたが直ぐに“消去”と押して。
>桐崎
(相手の粋な計らいで寮にお邪魔しては申し訳なく思う一方相手の傍で相手の手料理を口に出来る事が嬉しく感じ“いっそこのままでいいんじゃないか…”と電話をする相手を見詰める。
電話の相手は誰なのか…、話の内容からすぐにあの姉弟が頭に浮かんではエレベーターの中で相手が言っていた女と遊んでいるというのは嘘かもしれないと伸びをする相手をジトリと見つつ子供服を受け取って。
この服も“隠し子”の物なのか…期待と疑心が入り混じっては服に視線を落とし俯いて「ねえ…なんで子供の服なんて持ってるの?」と。
「スーパーでお兄ちゃんのこと…話してる人達がいた。……お兄ちゃんは夜女の人達と遊んで、何人子供がいるか分からないって………本当なの?」
(スッと顔を上げて切なげに相手を見詰めるも、真実を知った所で相手から嫌われてることには変わりないと悟ったばかりではないかと、だから傍にいるため子供になったのに…。
これではこの姿でも嫌われてしまうと慌てて「何でもないよ、お風呂入ってくるね」とケロッと笑顔で言って逃げるように浴室に駆け込んで。
(脱いだ服を綺麗に畳んで隅においては、心を落ち着かせるようにシャワーを浴びる。
あんなにも女と仲良くする相手が許せなかったのにこんなにも未練がましく相手に付き纏っている自分。
きっと今の自分が“自分”と知れたら相手に鼻先であしらわれるだろうなと冷笑を零しては髪を洗い流す。
いつもは愛おしい相手のシャンプーの香りが今は少し切なく感じて。
(その頃、相手のベッド脇に置いてある子供用リュックの中で自分の携帯が着信音を響かせており留守電に切り替わっては元カノの声で《菊?最近連絡ないけど大丈夫?…あの、この前旅行の帰りに桐崎君に会ったんだけど様子がおかしかったから気になっちゃって。余計なお世話だよね。あ、…これ聞いたら連絡ください》と留守電が終わって。
>露木
( 年齢を感じさせない様な問い掛けに頭を悩ませつつ浴室に向かう相手を見送っては流石に良からぬ噂が流れるのは良くないかと。
そこでふと鳴り響いた着信音に何処と無く聞き覚えを感じては音源である相手のリュックをジトリと見詰め僅かに開いたチャックの隙間を覗き込み。
“何で相手の携帯が入ってるんだ”と眉を寄せては首を傾げるもまさか幼児化しただなんて想像も付く筈無く相手が風呂から戻り落ち着いたら問い詰めてやろうと。
( 自分も風呂を済ませ冷蔵庫からスポーツドリンクのペットボトル片手に部屋に戻るも思い出した様に再度キッチンへ戻れば子供用のコップに注がれたオレンジジュースを相手に差し出しベッドに腰を下ろして。
「…はぁ、…ってかチビが人の色恋沙汰に首突っ込むとはな。………さっきの、スーパーで聞いたって言う子供が何人居るとかどうたらこうたらって。………俺流石に餓鬼は居ないけど。…ったくどっから流れた噂だよ」
( 呆れた様に溜息を漏らし“噂とは怖いな”と考えては携帯の事を思い出し相手のリュックを指差しては「そう言えばお前何で露木の携帯持ってんだよ」と。
視線を流す相手に詰め寄り軽々と膝の上に乗せては逃げられない様にガシッと掴み「何で持ってんの」と再び問い掛けて。
口を開かない相手に溜息を付いては手をパチンとし「分かった。…ならお前の質問に何でも二つ答えてやるよ。俺が答えたらお前も家出の理由と携帯の理由答えろよな」と。
相手の頬にふにふにと触れながら「何か聞きたい事あるか??好きな食べ物でも動物でも何でも答えてやるよ」と子供に接する態度で問い掛けて。
>桐崎
(逃れられない状況に内心冷や汗が止まらず、ガキ扱いされても相手に見惚れてしまい一瞬ぼーっとしてしまっては首を横に振って小さい頭をフル回転させる。
数秒後考えがまとまっては小さく息を飲み込み複雑な表情で相手を見詰めて相手の服の裾をグッと握って。
「……じゃ、じゃあ……質問するね。………………お兄ちゃん…最近、女遊びばかりしてるって本当なの?……それで菊兄さんのことはどう思ってるの?もう嫌い?顔も…見たくない?」
(明らかに不自然な質問、それでも構わず揺れる瞳で相手を見詰めては小さく息を吸い「……携帯は…家出したとき菊兄さんが心配してくれて念の為にって持たせてくれたの。……家出は母さんと父さんの喧嘩を見てるのが嫌で……」と疑惑だらけの嘘を並べて。
「……理由答えたよ。………お兄ちゃんも僕の質問に答えて?“嘘つき”は駄目なんでしょ?」
(真剣な瞳で内心“嘘は駄目”なんてよく言えたものだなと苦笑を漏らしつつ表情は変えずに相手を見詰め「……菊兄さんのこと、嫌い?」と一番聞きたいことを“嫌い”と言われるのを覚悟で再度尋ねて。
>露木
( 揺らぐ瞳が相手と重なり胸が締め付けられる様な感覚になっては一瞬唇をきゅっと締める。
それでも目前の少年が相手な訳無いと思ったまま「…分かった、答える。…ただ露木に言ったら許さないからな」と額を軽く小突いてやって。
「先ず、一つ目。女遊びなんてしてないよ、…って言うかどっからそんな噂流れてんのかな。………好きでも無い女とイチャイチャ出来る程俺器用じゃ無いんだ」
( 落ち着いた様子で淡々と答えてはペットボトルのスポーツドリンクを一口飲み込んで。
「二つ目、か。露木の事は嫌いじゃないよ、…嫌いな訳ねぇだろ。好き………って言うか愛してる」
( こんな小さな子供に何を言ってるんだと呆れるも少年は相手じゃないと思い込んでる為にすらすらと言葉になって。
「でも彼奴に言うつもりも無いし傍に居たいなんて大それた事は思ってない。………恥ずかしながらさ、こんなに人を好きになったのこの年で初めてだから空回りしてばっかで…。割と俺小さい男なんだよ、それに良いとこもあんまない。煙草臭いし見た目もこんなだし直ぐに嫉妬するし」
( 苦笑いで言っては立ち上がりペットボトルをキッチンへと戻しに行っては「さて、お互いちゃんと腹割って話したな。取り敢えずお前も家に居づらいなら好きなだけ此処にいて良いから。…あ、でも来週の土曜は孤児院行く予定だから暇ならお前も付いて来いよ」と軽く微笑み同じベッドへと横になっては相手を寝かし付けるより早く自分が寝てしまって。
>桐崎
(相手の隣、先程の事があって眠れるはずもなくいつまでも煩く鼓動する胸のあたりをギュッと握る。
ずっと相手から嫌われたと思っていた。“急に”相手の態度が変わって不安で…。
でも相手は“愛してる”と想ってくれている。……では何故“自分”に言えないのか。
今直ぐにでも聞きたい、それなのにこの姿で今更聞けないと思ってしまいもどかしい気持ちで眠る相手に抱き着いては「……御免なさい」と小さく零すも、相手の匂いに安心しては次第に眠りに落ちて。
(翌朝、相手より先に目を覚ましてはベッドから抜け出し用意されていた踏台に乗って洗面等を済ませる。
まだ気持ちが落ち着かず、何かしようと世話になった礼にいつも相手が食べているトーストをセットしてはレタスを千切り不器用ながら目玉焼きを焼いて、コーヒーをいつも相手が飲んでいる濃さで淹れる。
完成した朝食をテーブルに並べては相手の元へ行き「きり…」まで呼びかけ慌てて「お兄ちゃん……ご飯作った」と言い換えては、急に昨夜の事を思い出し羞恥が込み上げ、子供のせいか上手く表情を隠せず顔を真っ赤にして。
こんなの恥ずかしすぎるとトイレに駆け込むとやはりすぐにでも元に戻して貰おうと携帯で男(槇本)に小声で電話して。
『……なんだよこんな朝っぱらから。……まさか戻して欲しいとか?』
「そうだよ。昨日の今日で悪いけど…気が変わったから」
『…………やだ』
「は?…なんでだよ」
『元に戻すかどうかは俺が決めるって言っただろ。じゃあ俺まだ寝るから』
(プツンと電話が切れては何してんだかと自分の阿呆さに溜息を吐き携帯をポケットにしまう。
まさか相手の部屋のポストに盗聴器があり昨夜の会話が聞かれていたとも知らず、男にどう交渉すればいいかを考えながらトイレから出る。
相手の視線を感じ慌てて目を逸らしては「そう言えば土曜日だけど、…いけたら行きたいな」なんて変に疑われないよう何か聞かれる前に話題を振って。
>露木
( 子供とは思えない程の何処と無く相手を思わせる様な自分好みの料理に舌づつみしつつ小さな相手の頭をわしゃわしゃと撫で回して。
不審な相手の行動をジトリと見つつ土曜の事を切り出されては僅かに表情を緩め頷き「おう、孤児院の子供達もきっと喜ぶ」と。
( それからあっという間に土曜になれば元カノの友人との待ち合わせ場所に相手と手を繋ぎ訪れては友人は一瞬驚くも相手を抱き抱え『え、この子どうしたの??可愛い-!!!』と黄色い声を上げて。
「あ-…“顔見知り”の親戚、かな。家出中らしいから俺が引き取った」
( サラリと答えては一方的に話す元カノの話を流しながら孤児院へと向かって。
子供達も数日前から楽しみにしてくれてたらしくはしゃぎながら迎えてくれては元カノの友人が準備を始めるのに気付き手伝いに向かって。
その頃、相手の元に先日の姉弟が駆け寄っては『こんにちわ!!!私遙花っていうの』『僕は陸だよ、良かったら一緒に本読もうよ』と。
( 孤児院の調理場にて、元カノの友人に『ねぇ、特定の彼女って作ったりしないの??』と問われては“どういう意味だ”と眉を寄せる。
「そろそろ、欲しいかな。………でもまぁ俺の事理解出来る奴なんて居ねぇだろうな」
( 小さく呟いてはきょとんとする友人に「ごめん、なんでもないわ」と言っては小麦粉やらを棚から運んで来て。
>桐崎
(迎えた土曜日、毎日男に交渉するも結局元に戻して貰えず約束通り孤児院に訪れては相手と親しげに話す女を“誰だ此奴”と嫉妬心を隠しつつ見る。
女の前で“自分”を顔見知りと言う相手にあの夜は“愛してる”って言ったのにと身勝手に拗ねては、姉弟に誘われるまま本を読みにいって。
(遊び場スペースにて、自分が子供ということを忘れ姉弟に本を読み聞かせては丁度パン作りの準備が整ったため、エプロンをしてそちらに向かう。
すると女(元カノの友人)がやたら相手に密着して『へー彼女欲しいんだ!…私だったら繿のこと理解できると思うなぁ…。あ、ごめん名前呼び捨てにしちゃった!』と態とらしく口を塞ぎ、抜け目なく小麦粉を頬につけては『ねぇねぇ顔についてない?とってー』と相手に顔を近づけて。
明らかに狙っている女の行動に無性に苛々してはトタトタとそちらに駆け寄り2人の間に割って入り「…小麦粉、上手くまとまらない」と相手にボールを差し出す。
その際、目が合ってはあの夜聞いた相手の言葉を思い出しまたカァと熱くなって俯く。
いい加減、相手とちゃんと話したいと思っては顔を上げて「ねえ…」と声をかけるも女が横から入ってきては相手の横にぴったりついて『あ、繿、こね方そうじゃないよー』と相手に自身の手を重ねて生地のこね方を教え始めて。
その光景が親しげに見えては、結局自分は“子供のままで相手のそばにいるだけ”では満足出来ないのだと自覚する。
そして酷く貪欲な自分に嫌気がさすと共に、相手がちっともこっちを見てくれていない気がして悲しくなっては普段は我慢出来ただろうむしゃくしゃが抑えきれなくなり、突如女と相手が練っていた生地の入ったボールを床に叩きつけるようにひっくり返して。
ガシャンと騒音が響き無残に床に広がる小麦粉を見ては、ハッと我に返りなんてことをしてしまったのかと蒼白になって「…ご…御免なさい」と震える声で謝罪してはその場を走り去って。
>露木
( 小さな謝罪と共にパタパタと去って行ってしまったのに一体どうしたのだろうかと首を傾げては女も僅かに困り笑顔で『まだ小さいからね-、少し難しかったのかな』と零して。
手を洗い「ちょっと迎えに行ってくるから」と女の返事も聞かずに言っては孤児院内を相手を探し見回り、漸く空き部屋の棚の陰に相手を見付けて。
駆け寄り相手の目線まで屈んでは「どした??」と問い掛けそのまま腰を下ろして。
黙り込む相手と向かい合い、それでも深く追求せずに無言で相手を抱き上げ自分の膝に乗せては「そんな顔すんなよ。………何かお前が悲しい顔してるのは嫌なんだ、………すっげぇ露木と似てるからさ」と。
「…今日の帰りさ、さっきの姉ちゃん(元カノの友人)に誘われてたんだけどやっぱり断るわ。何か疲れたし…お前も疲れてるだろ。帰りにアイスでも買ってやっからもうちょい我慢しろな」
( 相手の頭を撫でてた所で女が『パンそろそろ焼けるからおいでよ-』と言いに来て。
早速今日は真っ直ぐ帰ると告げては強引に次の約束をされ碌に耳も通さないまま相手の隣に戻って来て。
( パンも焼き上がり相手の隣で一口パンを齧っては相手の肩を軽く叩いて。
「…露木の親戚なんだろ??……………あのさ、俺の事………何か話してたり、…する訳無ぇよな。ごめん」
( 困り顔で微笑んでは相手に向き直り「……………よし、明日彼奴呼び出してみるわ。………まぁ来ないとは思うけど………どうせこんななら言うだけ言った方が良いよな」と。
相手(少年)の携帯は既に相手(大人)の元に戻った物だと勘違いしたまま《明日話したい事あるから時計台の下で待ってる》とメールをし。
大人の姿に戻れないという相手の事情も知る筈無く何処と無く真剣な表情でいて。
>桐崎
(何も咎めてこない相手に居た堪れない気持ちになりながらパンを囓るも“自分を誘う”という相手の言葉にピクリと反応する。
自分の携帯は幸い隣室、着信音が聞こえる事はなかったが相手の気持ちを蔑ろにしている自分が酷く愚かに思えて……。
(パンを食べ終え片付けなどが終わってはしつこく女が相手に迫ってきたが相手が上手く対応してくれ2人で寮までの道を歩く。
途中足を止めては「……行きたいところがある」と少し声を低くして述べ相手の手を握り直すと黙って自分のアパートに向かい鍵を開けると戸惑う相手の室内に通して。
慣れたように相手に御茶を出しては奥の部屋から匿名で送られてきた加工写真の数々が入った封筒を持ってきては相手に差し出し正面の席に座って。
「……それが…あんたと奈緒との誤解を解いてからずっと送られてきてた。その時からあんたの態度が変わって…。…赤い髪の女と仲良くしてるし……。……でも一度は話し合おうとしたんだ。そしたらいきなりこの姿にされて…」
(はっきりと“自分”とは言わずポツリポツリと気持ちを話しては、男に携帯を取られていて相手の留守録を聞かされた事や(相手を売ろうとした)男とは本当はなんでもなかったことなど包み隠さず話して。
「……あんたには嫌われたと思った。でも…どうしてもあんたの傍に居たくて…“自分”じゃ駄目ならこの姿でって思ったんだ…。だけど…あんたの気持ち聞いて欲が生まれた。……俺、やっぱり“自分”としてあんたの傍にいたい。あんな気持ちの聞き方してこんな事言うのはずるいのは分かってる。でも…あんたが好きなんだ。…なあ、何で俺には“愛してる”って言えないんだ?あの時“俺(子供)”に言ってくれた言葉は嘘だったのか?」
(未だに男(槇本)が相手にしてきたことや、アパートで元カノが雨で濡れた自分の服を脱がそうとしていた誤解が溶けていないことに気付かず、身勝手に問い掛けては震える拳をキュッと膝の上で握って。
この時まだ自分が元に戻れないことは口に出せずに。
>露木
( “行きたい所がある”と連れられたのはまさかの相手の家で何故鍵を持ってるんだと疑問を浮かべる。
見せられた写真を見詰めては中々の加工の腕前に自分でさえ騙されそうになるも見覚えは無く。
成行きを説明する相手に漸く理解出来て、今まで一緒に居たのは少年では無く相手だったのだと。
沸々と浮かんで来たのは全て曝け出してしまった恥ずかしさ、上手く隠し通して来たのにと唇を噛み締めて。
「………何だよそれ。俺の事騙してたの」
( ポツリと零しては視線を横に流し「あんた元カノと出来てる癖して俺の事も惑わそうとか考えてんの??」と。
元カノとはまだ付き合ってると勘違いしたまま特に怒りを見せる訳でも無く静かに言う。
「本当は嘲笑ってるんじゃねぇの、俺の事。未練がましいとか思ってんだろ」
( ただ本心を相手に知られたという恥ずかしさから早口になるもハッとしては口を噤み俯いて。
「赤い髪の女、あれ赤城だから。木ノ宮に頼んで女にして貰ったとか言ってた。…それに、餓鬼のあんたにも言ったけどあんたの傍にいるつもりとか無いから…あんたは精々元カノと仲良くすれば良いだろ。何の心配もしなくても男の俺と付き合ってた事は言わねぇし」
( 相手の言葉も聞かずにつらつらと言っては相手が“戻れない”という事なども知らずに「第一、何時まで餓鬼の格好してんだよ。………それとも俺があんたを呼び出すって餓鬼のあんたに言ったから来れない口実を作っただけ??」と。
やり切れなさに舌打ちをし立ち上がればスタスタと玄関先に向かい「あ、あんまり餓鬼の姿でうろうろすんなよな」と言い残して。
>桐崎
(相手の返答から自分が思い違いをしていたと知り深く反省して、続く“あんたの傍にいるつもりはない”という言葉に傷付くも勘違いしている様子にこのままでは終われないと玄関の扉に手を掛ける相手の服の裾を掴んで。
「待てよ。…なんで俺があんたを蔑んでるって事になるんだよ?…奈緒とは何でもないって言っただろ?……なんでそんなに…」
(元カノとの関係を疑うんだと聞きかけて、漸くアパートでの事を思い出しては自分の落ち度に唇を噛んで。
「…アパートに彼奴(奈緒)が居た時のこと気にしてるなら誤解だ。あれは…彼奴が俺の服が濡れてて着替えろってしつこく迫ってきただけで…。…だいたい服が濡れたのはあんたが待ち合わせ場所に女連れて遅れてきたからなんだぞ。……まあ女は赤城だったけど。でもあの時俺が女とあんたの写真見せられてどれだけ不安な気持ちでいたか分かるか?」
(相手と青年に何があった(*)かも知らずに気持ちをぶつけるも自分にも反省点はあるため目を逸らし「…そりゃ俺もアパートで奈緒といた時のことすぐにちゃんと話さなかったのは悪いと思うけど……話そうとはしたんだ。…でも…この姿にされて暫く記憶がなかったから」と素直に打ち明けるもどれも言い訳じみて聞こえてしまい俯いて。
しかしある事を思い出してはハッとなって相手を見上げ。
「…お、俺(少年)に奈緒と俺(大人)の旅行先の写真見せてくれたことあっただろ?あの時、俺は俺であんたと一緒にいた。同じ時間に奈緒と旅行に行けるはずないだろ?」
(必死で誤解を解こうとするもいつもより高い相手の目線が鋭く見えては掴んでいた相手の服の裾を離して。
「……でも…俺のことなんて信用できないよな……、………子供になって嘘吐いて、あんたの気持ち…勝手に聞き出したんだもんな」
(眉を下げ謝っては、どうせ相手は信じてくれないだろうと奥の引き出しから万札を持ってくると相手に差し出して「…此れ、あの…公園の男とは何にもなかったから。……返す」と手を伸ばし相手のパーカーのポケットに突っ込んでは「…引き止めて悪い…」と部屋の奥に行き。
“何故子供のままなのか”はとても恥ずかしくて言えず、どうせ相手が離れていくなら言う意味などないため自分で何とかしようと決めて。
(*)>632
>露木
( 疑いの目を向けてたが小さな手が自分のポケットに以前自分の渡した万札を返してくるのを驚いた様に見詰めては部屋の隅に向かう相手にズカズカと駆け寄る。
無理矢理此方に振り向かせ頬に手を添えては「……………嘘だろ。…本当に露木だってのかよ」と零して。
しかし再び罰が悪そうに目を逸らしてはさっさと相手の部屋を後にし寮へと向かって。
( 自分が相手の家を去った後、外で聞き耳を立ててた男は勝手に家の中へと入り座り込む相手に駆け寄っては眉間に皺を寄せて。
『奈緒に、…会って来た。露木の話題になったら奈緒優しく微笑んで“菊の本心からの笑顔見れたから嬉しくて”って言ったんだよ。…露木が奈緒とよりを戻せば…奈緒が笑っててくれれば俺だって』
( 言い掛けた言葉をグッと飲み込んではギュッと目を閉じしっかりと相手に向き直っては相手の額に手を翳すが何か思い出した様に手を止めて。
『やっぱ…まだ戻してやらない。今から俺桐崎に話さなければならない事があるから…それが終わったら戻してやる事考えてやっても良いよ』
( スッと立ち上がり『今露木は子供の姿なんだから戸締りはしっかりしろよ、泥棒に入られたらその身体じゃどうにもならないからな』とまた優しさを思わせる言葉を相手に残し部屋の扉に手を掛ける。
『前、露木が奈緒と居る時女姿の桐崎が来ただろ。…奈緒と居た露木に嫉妬してあの姿で露木を奪いに来たんだってよ。赤髪の友人………確か赤城だっけ??彼奴はそこに居合わせただけ。………調べると何でも分かるんだよ。そしてもう一つ分かった事だけど、来週駅前の居酒屋で桐崎合コンに呼ばれて行くっぽい。桐崎の携帯数日間ハッキングしたら…そんな様な事合った』
( 相手に背を向けながらポツリポツリと伝えてはそのまま相手の部屋を後にして。
>桐崎
(男が去った後、相手や男の残した言葉が脳内を駆け巡り、何故男は態々自分に相手が女体化した理由や合コンがあることを告げてきたのかと疑問に思う。
それよりも言葉少なに去った相手の気持ちが全く読めず、“愛してる”は嘘なのかとすら感じてしまい項垂れる。
孤児院に居た女(元カノの友人)が“相手は彼女が欲しい”と言っていたことを考えるとやはり合コンにいくのかと。
それらの事をすぐに携帯で聞く気にはなれず、そのまま現実逃避するように眠りに落ちて。
(明け方、目を覚ましては四苦八苦しながら身支度を済ませるも、この姿ではバイトは出来ないし相手にはこの姿が自分だと明かしてしまったため寮にも行けない。
完全に手持ち無沙汰になるももやもやする気持ちだけは募る一方で、あまりこの姿でうろつくなと言われたが中身は大人なんだから危険くらい察知できると気分転換に外へ出て。
(日が昇る頃、公園につきベンチに座っては通勤や犬の散歩で道行く人々をぼんやり眺める。
相手は今頃どうしているのか。男が相手に何か話すと言っていたが何のことなのか。
考え出したら止まらず気分転換の筈が結局もやもやしだしては携帯を取り出し相手宛のメール作成画面を開いたところでジッと固まる。
何度も打っては消しを繰り返し本当は何行もかけて“会って話したい”まで打ったのに全文消しては《合コン行くのか?》とたった一言だけ送って携帯をリュックにしまって。
その後も暫くベンチの上でぼーっとしていると餌を強請りに野良猫が近づいてきて、何も持っていなかったためベンチの下に生えていた猫じゃらしをちぎっては意味もなく猫と戯れていて。
>露木
( 相手の家を出て寮へと戻った頃、まだモヤモヤとする心を誤魔化し今日は早目に寝ようと風呂を沸かしに向かった所でチャイムが鳴り響き。
一体誰だと玄関先へと来てはどうやら訪問して来たのは以前相手を探してた時に“公園で見掛けた”と教えてくれた人の良さそうな青年の姿で。
「………??」
『桐崎君、………先ず…ごめん。先に謝るよ、…』
( 訳の分からない謝罪と共に渡されたのは大量の紙や写真、そこには元カノと相手をくっつけるべく行われた悪事や自分の身の回りの情報、加工写真までもがあり気味が悪そうに眉を寄せて。
男は自分の部屋のポストを何やら弄り始め、盗聴器と思われる小さな物体を取り出しては自分に見せて来て。
「………は、何だよこれ」
『警察に言ってくれても構わないよ。…露木と奈緒が縒りを戻せば奈緒にも笑顔が戻ると思ってやった事なんだ、………でも俺がそんな事しなくても良かったみたいだ。…本当にごめん』
( 頭を深く下げ『そろそろ、行かないと。………何時までも露木を子供の姿にしてたら危ないしね。………桐崎君、改めてお詫びはする』と言い残しさっさと去って行ってしまった男の後ろ姿を見詰めてはまだ混乱する思考の中、相手の言葉が頭の中を過ぎり。
全ての疑問が繋がり自分が相手にぶつけた酷い言葉や行為を思い出しては激しい後悔に襲われて。
( 翌日の朝、相手からのメールに目を覚ましては何で合コンの事を知ってるのかと疑問が浮かんだが寝起き故にまだ覚醒しておらずに。
《約束しちまったから行く》と短い返事を送り、本当はまだ相手を愛していて戻りたいだなんて言える筈も無く欠伸を一つしてはのそのそと着替え初めて。
( 公園にて、漸く相手の姿を見付けた男は小さな溜息を付き『勝手に出歩くなって言っただろ』と軽く叱っては相手の手を引き公衆トイレへと訪れて。
昨夜買い揃えた大人用の衣服を相手に手渡し『………戻りたいんだよな』とさり気なく確認しては相手を見詰め『…桐崎なら、全部話したから知ってるから』と。
>桐崎
(野良猫が逃げて行ったところで男に気付いては警戒の眼差しを向けるも、以前とは違う様子と告げられた言葉に小さく目を瞬かせる。
まだ戸惑いつつも子供の身体は懲り懲りしていたため即服を受け取って元の姿に戻して貰い関節の痛みに耐えつつベンチに座る、すると男も隣に腰掛けてきて。
『……露木はずるいよな』
「…は?……何がだよ…」
『…奈緒に好かれてるのに他に好きな奴がいて友達もいる。しかもみんな露木の能力を認めてる。…ずるいよ』
「…………」
『俺なんて奈緒に見向きもされないし寄ってくるのは金目当ての連中ばかりだ。誰も俺を見てくれない』
「……槇本は…『慰めなんて寄せよ。俺は露木と桐崎君に最低な事をした。きっと全てを知ったら露木は俺のこと嫌いになる』
(男は静かに述べて立ち上がり一度振り替えては『露木、お前もっと好きな奴のこと観たほうがいいよ』と苦笑し去って行って。
追おうにも関節が痛み敵わず諦めて座り直したところで相手からのメールに気付いてはその内容に落胆する。
変に真面目な相手のこと、気にする事ではないと言い聞かすもやはりショックに感じる自分がいて、それでも咎める資格など自分にはないと思えば今まで休んでいた分を取り返すため連日バイトに打ち込んで。
(数日後の相手が合コンする日、相手とは何にも連絡を取っておらず頭に濃い靄が掛かったままバイトに来てはバッグルームに来るたび溜息を吐いて無意味に携帯の着信を見る。
相手から連絡が来るはずないのにとまた溜息が漏れるも、客の前では笑顔を振る舞うようにしバイトが終わったらさっさと家に帰って寝てしまおうと。
>露木
( 訪れた合コン予定日当日、駅前の居酒屋にて男女3人ずつ集まっては共に酒を飲み始める。
特に会話に交じる訳でも無く聞かれた事のみに適当な返事をしては時間が過ぎるのを待つ。
好みの女性なんて者は相手と出会ってから出来なくなったしあまり興味も無くなった。
合コンも終わり適当にアドレスを交換してはさっさと帰ろうとするも何故か席を共にした男が付いて来て。
「何、お前家あっちだろ」
『や、何となく。桐崎良い女見付かった??』
「別に」
『そっか。……………お前はさ、同性には興味無い??』
「あるよ」
『!!??………マジか。………あのさ、アドレス交換しよ』
「何で」
『俺も同性好きだったりするからお互い相談とか出来るじゃん』
「あぁ」
( 興味無さそうにアドレスを交換してはその男とも別れ寮までもう少しという所でバイト帰りの相手と出会し。
素通り出来る筈も無く何時もの変わりない無表情で「よ、帰り??」と他愛ない様子で声を掛ける。
相手と一緒に居たいという気持ちが合ったが「危ないし送る」なんて言い訳を作っては共にアパートの方角へと歩き出して。
沈黙に耐えられず「昨日さ、全部聞いた。…俺の勘違いだったんなな、色々ごめん」と。
>桐崎
(バイト帰り相手とばったり出会しては気まずい別れ方をしたこともあり、気さくな態度に戸惑うも突如謝罪されては弾かれるように「あんたは悪く無いだろ」と応えハッとなっては俯き。
「…俺が誤解を煽るようなこと言ってちゃんと話さなかったのがいけなかった。……………でも良かった。…あんたとはこうやって話すことはもうないと思ってたから」
(俯いたまま静かに話しては子供になってまで相手に張り付き数々の醜態を晒したのを思い出して顔が熱くなるのを感じ今が夜で良かったと相手を見ないようにして。
再び沈黙になるもそう言えば相手は合コン帰りだったなとチラリと横目で相手を見て。
「………さっきまで合コンだったんだろ?……“いい女”居たか?………彼女作りたいんだってな。孤児院で女(元カノと友人)が騒いでるの聞いた」
(視線を地面に戻しては相手の返答を待つもいつの間にかアパートに到着してしまい、まだ相手といたいと思うのに此処まで送って貰って引き止めるのも悪く感じ「…なんでもない」と相手を帰そうとする。
しかし、相手が身を返し少し歩いたところで急に不安が押し寄せ相手との微妙な距離感に耐えられなくなっては自分でも驚くほど強く相手の手を握り引き止めていて。
「あ…、悪い…」
(パッと手を離して目を逸らしてはまた気まずい空気が流れるが、しっかりしろと自分に活を入れると相手を見詰め。
「…俺達って…今、どんな関係って思えばいいんだ?…………俺は…、あんたが俺が餓鬼の時に言ってくれた言葉信じてるし俺も同じ気持ちだ。……でも今あんたの気持ちが変わって他に気になる奴がいるなら、諦める__」
(相手を諦めるなんて出来るはずないのにと唇を噛むも、まだ終わった訳ではないと紅い瞳をまっすぐに見詰め直し。
「__諦める、けど。………あんたがまだこんな俺でも好きでいてくれるなら……いや気になるだけでも良い。少しでも気にかけてくれるなら……また俺と付き合ってくれないか?」
(不安で微かに語尾が震えるも相手からは視線を逸らさずじっと返答を待つ。
内心、こんな告白じみたこと慣れてなくて心臓がどうにかなってしまいそうだったがどんな返事でも受け入れようと心に決めて。
(一方、飲み会の男は帰宅途中早速相手に《今日はお疲れ。いきなりで悪いんだけどさ相談乗ってくれよ。次の休み明けとくからよろしく》とやや圧しの強いメールを送って。
>露木
( 相手からの言葉に鼓動が煩く騒ぎ正面から見詰められては俯いてた顔を遠慮がちに上げる。
相手の傍に居れば苦しむと思い自分から身を離して逃げに走ったのだ、今更どの様な返事をしたら良いのかと頭を悩ませるも返事は既に胸の中にあり。
結局相手から離れるのは何より一番苦しかった。
それでも言葉にするのを迷っては頭をガシガシと掻き乱し小さな溜息を付いて。
「…“傍に居るつもりは無い”って…言っただろ。………そんな事言われたら、…俺だって気持ち揺らぐだろ」
( 改めて言われた気持ちに沸々と羞恥が蘇っては視線を横に流し「………良いよ」と。
カアッと照れ臭さが来ては自分の顔を見せまいと相手の頭をわしゃわしゃの撫で回しアパートの前まで来ては「………じゃあ、明日な」と。
( 男からのメールに気付いたのは翌朝、《分かった、次の休みな》と素っ気無い返事をしてはそれから数分も経たない内に電話が来て。
『もしもし、いきなり悪いな。約束な』
「ん。何処待ち合わせにする??」
『時計台だろ、待ち合わせって言えば』
「分かった」
( 短い電話の後、最近は楽になったペースのバイトへと向かえばバックルームで制服に着替えて。
付き合った当初の様な恥ずかしさを感じつつ《今日はバイト??》と相手にメールを送って。
>桐崎
(一瞬断られたかと思い胸がズキリと痛むも続く相手の言動でその痛みは吹き飛び、相手が去った後撫で回された髪に触れては小さく微笑み、今日も暫く眠れそうにないなとまだざわつく胸を押さえつつ部屋に戻って。
(翌朝、相手のメールに気付いては《夕方には終わる。時間合うならそっちのバイト先迎えに行くよ》と返信して、身支度をすませるとレンタルショップに向かい。
その途中、突然見知らぬ男に話し掛けられては服装から自校の高校野球の男子高生だと分かり「…どうした?」と一応笑顔で尋ね。
『突然すいません。露木先輩ってカテキョのバイト、まだやってますか?』
「…あー、一応。でもそんな多くは出来ない」
『いいっすよ。ちょっとでいいんで。俺部活ばっかやってたから勉強全然やってなかったんで大学入る前に必須の英語だけでも復習しときたかったんすよ。あ、連絡先教えて貰っていいすか?』
(馴れ馴れしい態度に若干煙たさを感じつつも勉強熱心なのは応援したく連絡先を交換するとさっさとその場を去ろうとするが『あの』と引き止められ。
『先輩って桐崎と仲良いっすよね?』
「……まあ。なんで?」
『いや、別に。じゃあカテキョよろしくお願いします』
(手を振って去って行く男子高生に“なんだ?”と思うも特に気にせずバイト先に歩を進めては、バイト中も相手のことをふと考えては次の会うのを楽しみにして。
>露木
( バイトを終え店の角で相手と出会しては以前を連想させる一定の距離のまま歩き始める。
不意に当たった手に内心ビクリとしてはそのままさり気なく手を取り何も言わないまま歩き続け。
寮の玄関口にて鍵を開けては相手と共に中に入りやや散らかり気味の自分の部屋を軽く片付けて。
バラバラになった雑誌やCDケースを棚に戻しては漸く落ち着きベッドに座る相手の隣に腰を下ろし。
「ごめん、結構散らかってた…けど。まぁ座れる」
( 自己完結気味にコクンと頷いては風呂を沸かしに浴室へと向かいその後キッチンの冷蔵庫を漁って。
今日は折角だからちゃんと作ろうとしては相手と共に台所に立ち野菜類を取り出す。
その時、不意に携帯が鳴り響いては一体誰だろうかと携帯を片手に電話に応答して。
相手はどうやらあの合コンの男子、『あのさ、いきなりだけど今からそっち行って良い??話あるんだけど』と唐突な事を言われては眉を寄せて。
「はぁ??いきなりとか流石に無理だろうが。今客来てるから」
『マジ??数分だけで良いんだけど』
「明日、明日なら来て良いから」
( 強引な物言いに呆れつつ何の相談をされる物かと頭を悩ませては携帯を切り相手の隣に戻って。
何気無く相手の肩に顔を乗せては意味も無く相手を後ろから抱き締め「割と俺等みたいなのって多いんだな」なんて呟いたりして。
>桐崎
(どことなくぎこちない相手との距離感、電話の相手は誰だろうと小さなことが気になるもあまり煩くしては煙たがられるだろうと聞かずにおく。
後ろから抱き締められ言われた言葉に「…ん?」と軽く聞き返すもどこか甘える様子に頬を緩めては肩にある相手の頭をぽんと撫でて「甘えるなら後でな。今野菜切ってて危ないから」と小さく微笑むも自分からは引き離すことはなくそのまま調理を始め。
(その後、夕食と片付けを済ませてはそれぞれ風呂に入り微妙な距離感を保ちつつ甘酸っぱい時間を過ごして一緒にベッドに横になる。
間近にある相手の顔にドキドキしながらもそれを悟られないように柔らかな銀髪を撫でては、やはり相手の近くは落ち着くと微笑を零し暫く飽きずに相手の髪や耳、目元に触れていて。
__もう手放したくない。悲しませたくないと強く思っては目を閉じる相手に「……繿」と本人の前では滅多に呼ばない名を口にして前髪に口付けて相手のぬくもりを感じながら眠りに落ちて。
(翌朝、相手より先に目を覚ますと久しぶりに見る相手の寝顔に口元を緩ませツンツンと柔らかな頬を突いては耳元で「おはよ」と吐息をかけるよう悪戯に囁いて。
そしてベッドの脇に座り携帯を開いては今日も朝からバイトかと相手と過ごしたい気持ちを堪えつつ朝の身支度を始め、そう言えば昨日話しかけてきた男子高生からまだ連絡ないなとふと思うも気に留めることは無く。
>露木
( 翌朝、耳元に感じる吐息にビクリとしては悪戯に微笑む相手の頬に軽く口付ける。
暫くのじゃれ合いの中、相手が携帯に目を向けバイトに向かう準備を始めれば少し寂しそうに自分も起き上がり「今日は俺休みだから送る」と告げて。
私服に着替え身支度を済ませては相手と共に相手のバイト先に向かい帰りにまた迎えに来ると伝えて。
( 相手とまたこうして寄り添える中になった事にニヤけそうになるのを堪えつつ寮へと戻れば自室の前に昨夜電話を寄越した男子生徒が自分を待ち伏せており。
渋々部屋へと入れては冷蔵庫の中にあった適当な飲み物を男子生徒に手渡し「で、相談って何??」と。
『俺さ、好きな奴いんだよね』
「へぇ。良かったな」
『年上なんだけどさ、男なの。この前思い切って家庭教師頼んだんだよ。笑顔で了承してくれてポーカーフェイス気取ってたけどマジ心臓ヤバかった』
「誰、その年上の男って」
『桐崎と中良いからさ。応援して欲しいなって』
「だから誰」
『ほら、露木菊先輩。ヤバいよな、めっちゃタイプ』
( 男子生徒の言葉に「は??」と一瞬間抜けな声を出してしまうも平然を気取っては「へ、へぇ」と。
人懐っこい笑顔で『応援してくれよ、折角お互い理解し合える仲なんだから』と言われては真実を話せる雰囲気でも無く上機嫌で去って行く男子生徒を見送り。
( 男子生徒は自分と別れた後、早速相手のアドレスに《明日からカテキョ頼んで良いっすか??俺、真面目に頑張ります》とメールを送っていて。
>桐崎
(バイト終わり、バッグルームにて男子生徒からのメールに気付いては《いいよ。寮行けばいいよな?部屋番教えて》と男子生徒の想いなど知るはずもなく短く返信して。
その後、迎えに来てくれていた相手と当然のように寮へ向かっては昨日と何だかわらない時を過ごすも其れが至極幸せに感じいつまでもこんな時が続けばいいのにと相手との他愛のない会話を楽しみつつふと家庭教師のバイトのことを思い出し。
「あ…そう言えば明日から同じ寮の生徒に家庭教師つくことになった。もしかしてあんたの知り合い?」
(何もやましいことなどないため何気ない会話として聞いては「勉強熱心だよなー、俺なんて入学前はずっと遊んでたよ」と呑気に笑って。
同じ時刻、男子生徒は相手と自分が一緒にいるなど夢にも思わず《明日先輩に家庭教師ついて貰うことになった!!桐崎ってさ先輩の好きな食べ物とか知ってる?つーか好きそうなものあったら何でも教えて》とメールを送っていて。
(翌日、昼ごろまで相手と一緒に過ごしては少しだけ夕飯のおかずを作りおいてはお互いにバイトがあったため「…家庭教師のバイト終わったらあんたの部屋にも顔出すから」と告げて数時間だけレンタル店のバイトに出ては、夜に約束していた男子生徒の部屋へ向かい。
(男子生徒の部屋、なんの巡り合わせか丁度相手の真上の部屋で間取りも変わらなかったが、人が違えば趣味も違う。当たり前だが相手とは雰囲気の違う部屋にやっぱり相手の部屋が一番落ち着くなぁとしみじみ感じながら男子生徒と2人並んで座り予定通り英語を教えて。
『先輩、今日メガネなんすね』
「…え?…ああ…、丁度コンタクト切らしたから」
『へぇ。…今付き合ってる人とかいます?』
「いきなりなんだよ。………いるけど。そんなこと聞いてどうするんだよ」
『いえ、別に。でも意外っす。先輩、特定の人は作らないって噂だったんで』
「噂だろ。…はい、この話は終わり。勉強に集中しろ」
(まだ変な噂が流れているのかとげんなりしつつも気持ちを切り替えて勉強にうつり、何回も質問してくる男子生徒に意欲があっていいことだと感心しつつ出来る限り丁寧に教えて。
>露木
( 男子生徒のメールと共に特に疚しい様子も無く家庭教師を引き受けたと言う話を相手にされては勝手に不安な気持ちになるも平然を装い続ける。
バイトへと向かう相手を送り出す時も何処と無く心に靄が掛かった様な感覚を感じながら笑顔を作って。
( 夜、一通り今日の勉強を終えた男子生徒は笑顔で相手に礼を告げると予め自分に聞いていた相手の好物であるチーズケーキの入った箱を取り出し相手に見せ『駅前の有名なスイーツ店分かります??期間限定でニューヨークのパティシエが作ったチーズケーキ先着で売ってたんすよ、一緒にどうっすか??』と上機嫌で告げて。
紅茶を淹れ相手の隣に並んでは相手の眼鏡に触れ『先輩の眼鏡姿、初めて見たけど最高っすね』なんて大胆な事を人懐っこい笑顔で言っては『明日もよろしくお願いします、ちゃ-んと予習復習しとくんで』と。
( 相手が男子生徒の部屋から戻って来る頃、丁度自分もコンビニから戻って来てはモヤモヤとした気持ちを抱え買って来た雑誌に目を通しながらジュースの蓋を開ける。
そろそろ相手も戻って来るだろうなんて考え段々といつもの調子を取り戻そうとしたが鳴り響いたメール受信音と男子生徒の名前が流れたのに微妙な顔をして。
《桐崎、露木先輩の事色々教えてくれてさんきゅ!!!今日家庭教師やって貰ったんだけど心臓爆発するかと思ったわ-。先輩気付いて無くて無意識なんだろうけど教えんのに熱心過ぎてめっちゃ顔近いの、明日も鼻血出さない様に頑張るわ(笑)お休み!!!》
( 長文のノロケにムスッとしては《そりゃ良かったな、お休み》と何時もながらの素っ気無い返事をして。
>桐崎
(早く相手の元へ行きたいと思うも男子生徒の厚意を無碍にも出来ず、好物の誘惑に負けて結局一時間ほど過ごしてしまえば長居しすぎたなと焦って「ケーキご馳走様」と微笑み相手の部屋へと足を急がせて。
(相手の部屋に来るなり疲れたと言ってシャワーを浴びては濡れた髪をタオルで拭きつつベッドに座る相手の隣に腰掛け先程の男子生徒の話を始め。
「ちょっと煙たいところあるけどすごく良い奴でな、美味しいチーズケーキご馳走してくれた」
(相手の気も知らず普段の何気ない会話のつもりで話してはフワッと欠伸零し「…明日もあるんだよな。…あんたと会う時間減るのは嫌だけど…彼奴なら我慢できるかな」と眠たげに零し相手のベッドに横になり。
その後も相手と会話を続けるも疲れていたこともあってすぐに眠りについてしまい。
(翌日、あまり相手と顔を合わせること無く家庭教師の時間を迎えては男子生徒の部屋へいき何事も無く勉強を終える。
今日はまっすぐ相手の元へ行こうとさっさと退散しようとするが『先輩明日って暇ですか?』と聞かれて。
「…なんで?」
『新しい英語の教材買いたいんすけどどんなのが良いか分からなくて先輩一緒に選んで欲しいんすよね』
「ネットで調べたほうが確実だぞ」
『えー、ネットのレビューなんて桜とかいて信用できないですもん。…お願いします!』
「……分かった。少しだけなら」
(本当は相手と過したいと思っていたため嫌だったが、勉強態度は真面目だしそのやる気を無駄にはしたくないため渋々了承して。
>露木
( あの人懐っこい印象の男子生徒はどうやら上手く相手に懐いてる様で複雑な感情が沸いては何とか嫉妬心を押し殺して。
疲れが溜まってるのだろう、早々に寝てしまう相手の頬に口付け髪を弄んでは「………お前無意識に彼奴喜ばせてんの。妬かせんなよ」なんて呟いて。
( 翌日、男子生徒の家庭教師を終え自分の部屋に戻って来た相手を後ろから抱き締めては中々離れずに何処と無く面白く無さそうな表情をしていて。
しかし自分の携帯が鳴り響けば渋々離れ、携帯の応答ボタンを押し「はい」と怠そうに返事して。
『あ、もしもし桐崎??明日先輩デートに誘ったら笑顔でOKしてくれてさ。…まぁ参考書買うのが口実なんだけど。先輩ってどんな店好き??』
「……………さぁ、良く分からない」
『マジかぁ…。出来るなら先輩の事は何でも知っときたいんだよね、まぁ明日は頑張る』
「………ふぅん」
『何だよ桐崎、何か調子悪い??』
「別に」
( 上機嫌な男子生徒との電話を切り相手の元に戻っては相手に予定がある事を知りつつ「な、明日暇??」なんて意地の悪い質問をして。
>桐崎
(いつになく甘えてくる相手に何かあったのかと心配する反面、呑気にかわいいと喜ぶ自分がいて、電話から戻ってきた相手の問いにはまさか知ってて聞かれてるとは知らず済まなそうに視線を落とし隠すこと無く男子生徒が参考書を買うのに付き添うことを伝えて。
「…でも2時間掛からないと思うから午後は空いてる」
(終わったら連絡すると続けるも折角の相手の休みを拘束するのは嫌だったため「予定入ったらそっち優先していいから」と微笑み相手の髪をぽんぽんと撫でて。
(翌日、百貨店開店と同時に本屋に訪れて参考書を吟味しつつ早々に購入するものを決めるも『先輩って漫画読みます?』『普段どんなの読んでるんすか?』とやたら質問してきて携帯で相手に連絡をする隙を与えてくれず。
『そうだ、先輩って動物好きなんすよね。ペットショップ見にいきません?』
「…誰から聞いたんだよ。……いや、この後予定あるから」
『えー、昨日は一日暇だって言ったじゃないっすか』
「悪い、あの後予定入ったんだ」
(面倒臭いやつと悪態吐きつつ、つい笑顔で対応してしまうも電話が掛かってきてはしめたと男子生徒に断りをいれてから隅に行って電話に出て。
『…菊、今いいか?』
「父さん?……どうしたの」
『あ、…敬語…』
「………いいから、何?」
(気恥ずかしさからぶっきらぼうに聞くもゴニョゴニョとよく聞こえず何度か「え?」と聞き返して。
『あの、その…実は、上司の借金の連帯保証人になったんだけど。…その上司が行方不明で…』
「は?!」
『ご、ごめん!!…でもこんなこと菊にしか相談出来なくて』
「……父さん、借金の肩代わりなんて逃げられるのが落ちって分かってただろ?…桐崎さんにもまだお金返せてないのにどうするんだよ…」
『御免…、でもその人が困ってるの見たら放おっておけなくて…』
「……………いくら…いくら肩代わりしたんだよ」
『…二千万。…その半額を来週までに返さないと何するか分からないって…本当に御免』
(父の悲痛な声に頭が痛いと額を抑えては電話を切り溜息を吐く。
こんなこと迷惑をかけたばかりの相手や兄達に相談できる筈もなくどうしたものかと表情に出さないよう男子生徒に元に戻り「…悪いけどすぐ帰る」と別れを告げようとするも腕を掴まれて。
『先輩何かあったんっすか?なんか顔色悪い』
「別に、何も」
『………俺だから話せることってあるんじゃないんすか?』
「気遣いは有り難いけど本当になんでもないから。………此れ駅前のカフェの割引券。彼女とでも行けよ」
(謝罪代わりにクーポンを押し付けるように渡してはさっさと百貨店を出るも行く宛はなく頭を冷やすために公園のベンチに腰掛けては相手に《御免、ちょっと遅くなる》とメールし暫くぼーっとしていて。
>露木
( 相手からのメールにがっくりと肩を落とすもならば出掛けずに部屋で大人しく待ってようと。
不意に扉を叩く音が耳に入り相手な訳無いのだが期待をしつつ扉を開ければそこに居たのは男子生徒で。
「何、いきなり」
『露木先輩先に帰っちまうんだもんよ。め-っちゃ暇でさ、…で、応援してくれてる桐崎の所に来た』
「別に応援なんて…」
『え、してくれないの??あんなに先輩の事教えてくれたのにそりゃ酷いって』
( しゅんとする男子生徒を煙たそうに見詰めては渋々部屋へと招き入れ。
相手の様子が可笑しかっただのデートが途中だっただの散々聞かされては面白くなさそうに視線を流すも『あ-あ、人の心は金で買えないもんなぁ』なんて言われては何を言ってるんだと眉を寄せて。
「何、頭まで可笑しくなった??」
『可笑しくねぇから!!!俺これでもお坊ちゃまだかんね、めっちゃ金持ちなの』
「は-、以外」
『以外とか言うなよな』
「なら良い塾行けば良かったろうが」
『無理、露木先輩と仲良くなりたかったし』
( 結局聞きたくもない話を延々と聞かされては漸く帰る気になった男子生徒を見送り。
相手の状況も知らずに相手が来るのを待ち続けてる間、男子生徒はやはり相手が気になるのか何度もメールを送っていて。
>桐崎
(一時間ほど無意味に公園で過ごすも名案が浮かぶわけでもなく溜息を吐いては今日一日だけは相手に甘えて慰めて貰おうと立ち上がって相手に連絡を入れようとするが男子生徒からのメールの多さに無視できず電話を掛けて。
『あ!先輩!やっと出てくれた。もう俺超心配したんすよ??…そうだ。さっき買った参考書で分からないところあったんで今から教えてくれませんか?俺待ってますんで!それじゃあ』
(ちょっと待てと言う間もなく切れた通話にうんざりするも気を紛らわすのには丁度良いかと。
相手が待ってくれているとも知らずそう何度も連絡を入れてはしつこいかと思っては特にメールせずに男子生徒の部屋に向かって。
(男子生徒の部屋に行くと『やっぱり来てくれた』と笑顔で招き入れられてはさっさと分からない場所を聞こうとするも『まあまあ』と言われ食卓に座らされ“美味しいジュース”があると飲み物を出されて。
『その“ジュース”非売品なんで滅多に飲めませんよ』
「…へえ。…いや、でも俺ジュース飲みに此処に来たわけじゃないから」
『そう堅いこと言わずにー。飲んでみてくださいって』
(人懐っこい笑みを浮かべる男子生徒に溜息が漏らしつつまあいいかと“ジュース”もとい“強い酒”を飲むも口当たりの良さから気付かずに結局二杯呑んでしまい身体の異変に気付いた所で漸くそれが“酒”と気付いて。
「…お前なぁ、何の嫌がらせだよ」
『すいません。でもこーでもしないと先輩何があったか教えてくれないと思いまして』
「…は?」
『先輩、何か悩みがあるんすよね?話してみてくださいよ。楽になりますから』
「………言わない」
(絶対話すものかと口を噤むもしつこい問い掛けと酒の酔いに段々と思考が鈍ってきては自分も知らないうちに父の借金について話していて。
『うわ…まじっすか。それ超やばいですね。………俺、払いますよ?』
「冗談よせよ。…一千万だぞ。無理に決まってるだろ。というより頼めない」
(阿呆かと軽く罵倒しては“こんな事絶対相手に言えない”と溜息を吐く。
それでも相手の顔が急激に見たくなっては「……勉強しないなら繿のところ行く」と無意識に呟きテーブルに手をつきながらフラリと立ち上がるも予想以上に身体に力が入らずガクンと膝から崩れ落ちては拍子にグラスも落として割ってしまい、下の部屋(相手の部屋)にも響くほどの騒音を響かせて。
>露木
( 中々訪れない相手に眉間に皺を寄せるも相手が約束を踏み倒す様な性格で無いのは自分が一番分かっておりもう少し待とうと言うのを何度も繰り返して。
音楽を掛けたり雑誌を開いたり携帯のゲームアプリを始めたりと何かと暇潰しを探すもやはり相手が気掛かりになり何れも手に付かず。
その刹那、不意に上の階から大きな音が聞こえ何事かと天井を見詰める。
確か上の階はあの男子生徒の部屋、最近良く顔合わせもしてるし無視する訳にも行かず相手が居る等と知らずに渋々エレベーターへと向かって。
( その頃、男子生徒は崩れ落ちた相手の肩を組みベッドへと寝かせては自分の事を“名前”で呼んだ事に僅かに気掛かっており。
あまり深く考えない様にしようと言い聞かせベッド上の相手に『あ、変な事したりしないっすから!!!俺ちゃんと段階は踏むタイプだし………じゃなくて!!!…あ、水持って来ます。………酒弱かったんすよね、すいません』と言い冷蔵庫からミネラルウォーターを持って来て。
相手の横に座りまさに尻尾を降る犬の如く相手との距離を縮めては『あ-、でも先輩酔った勢いで俺に話しちゃったのラッキーかもしんないっすね。一千万とか俺のお小遣いでもちょろいっすよ』なんて笑顔でとんでもない事を告げて。
ベッドから離れ鼻歌交じりに『…あ、でも現金より小切手のが楽だよな』なんて小さな声で呟いては突如叩かれた玄関に気付き顔を出して。
「さっきすっげぇ物音した。何か合ったの??」
『わ、心配してくれたの??桐崎やっさし-』
「馬鹿にすんなよ。大丈夫なんだな」
『おう。ありがとな-、今先輩来てるからさ』
「……………は??」
( 男子生徒の言葉にポカンと口を開けては僅かに見えた隙間からベッドに横たわる相手が見えて。
自分の部屋より先に男子生徒の部屋へと来たのか、なんで自分以外のベッドなんかに居るんだ、と黒い感情が根を張っては「…じゃあ俺は邪魔だろうから」と男子生徒にしか聞こえない声で呟いて。
笑顔で『悪い、後で電話するわ』なんて言う男子生徒に小さな憎悪が沸くもしっかり真実を言えない自分が悪いのだと。
>桐崎
(男子生徒が話す言葉を何とか聞き取るも返答することは出来ず、相手が来ていたことも気付かずに身を起こすとミネラルウォーターを口にして。
『あ、もう起きて大丈夫っすか?ゆっくりしてってくださいね』
「…悪い。迷惑かけた」
『いやいや俺が酒飲ませたのがいけなかったっすから』
「………」
(それもそうかとまだぼーっとする頭を抑えていると突然一千万円の小切手を渡され目を瞬かせるも受け取れないと突き返して。
『これくらいなんともないっすよ。残りの一千万も必要なら言ってください。なんなら今用意しますよ』
「待て待て。…そんなすぐ返せるものでもないし…困る」
『家庭教師代ってことで』
「いや、それは…」
『じゃあ明日から一時間延長で。困った時は助け合いっすよ、先輩』
(ニカッと笑う後輩にでも…と渋るが強く押し切られてしまえば実際追い詰められていたこともあって受け取ってしまい。
その後これ以上長居して迷惑を掛けるわけにもいかないと深く謝罪と礼を述べて部屋を後にしようとするも『まだ居てくださいよ』と引き止められる。
しかし気を遣わされてると思い込んでは「埋め合わせ出来るかわかんないけど出来ることはするから」とその場を立ち去って。
(まだふらつく足で訪れたのは相手の部屋、先程ベッドに寝込んでいたところを見られていたとは知らず中に入れて貰っては入った瞬間ガバッと相手を抱き締め扉が閉まるのと同時に相手を床に押し倒して。
「…会いたかった…」
(酒の臭いを漂わせながら吐息混じりに呟いては相手の首筋に顔を埋め、お金の不安がなくなった安心感からか小さく微笑みを零しては「…遅れてごめん」と表情とちぐはぐな言葉を述べ頬に音を立てて口付けて。
>露木
( 男子生徒の部屋で見てしまった光景にモヤモヤはまた膨れ上がり“もしかしたら男子生徒と一線を越えたのか”“男子生徒の方が心惹かれるのか”なんて不安が込み上げて来て。
自室のベッドで項垂れてた所部屋に鳴り響いたノック音に気付いてはのそのそと扉を開けるもそこに居たのは相手の姿で複雑な顔をして。
ほんのりと赤らんだ表情で押し倒されては見事に体制を崩してしまい「…酔ってんじゃん、酒飲んだのかよ」なんてぼやいて。
相手を軽々と抱き抱えベッドに下ろしては男子生徒と何も無かった事を確認すべく相手の首筋を軽く乱し自分の痕をいくつも残して。
小さな優越感を感じつつそれでも嫉妬が拭えずに居ては相手の腕を顔の脇にグッと押え付け「良いだろ??」と強引な物言いで鎖骨を甘噛みして。
( その頃、階下の事など何も知らない男子生徒は富豪な自分の父親に相手の身元の借金を全て片付けて欲しいと頼んでは相手のアドレスをなぞって。
相手の為になれたのだと嬉しそうに微笑みを浮かべては《先輩、俺最近勉強頑張ってますよね??折角なんで息抜きしたいし次の休み一緒に映画とかどうっすか??……………お金の悩みならもう終わらせたんで先輩は何も悩まないで下さいね!!!》とハイテンションなメールを送っており。
春休みに入る事もあり相手と会える時間が増えるのだと頬を綻ばせては明日も相手が部屋に来るのだしと散らかってた衣類やらを片付けて。
>桐崎
(酔が醒め切っていないせいか押さえ付けられても身体は震えず、むしろ首筋や鎖骨に与えられるチクリとした痛みに敏感に反応しては誘うように相手の首に腕を引っ掛け口付けを求めるも触れ合う寸前でお決まりのごとくバタンと力尽き一人呑気に眠りについて。
(翌朝、二日酔いもなくサッパリ目を覚ましてはシャワーを浴びて着替えると相手が用意してくれた朝食を頬張り片付けを終えたところで男子生徒のメールに気付き。
次の休みこそ相手と一日過したいと思っていたため思わず眉を寄せるが、大金を肩代わりして貰って断るわけにもいかず《本当に助かった。…次の休みあけとくから見たい映画決めておいて》と返信しては相手の前ということを忘れ溜息を吐いて。
(そして次の休み、時計台で男子生徒と待ち合わせ映画館に向かってはチケット代もドリンク代も全て支払われてしまい悪い気しかおきず、映画も特に見たかったわけでもなかったため次の休みは絶対相手と過ごそうとそればかり考えていて。
上映が終わり近くのカフェに入っては一人ぺちゃくちゃ喋る男子生徒の話に適当に相槌を打ちつつ、ふと思い出したように包みを男子生徒に差し出して。
『え、俺に?何ですか?』
「…色々、助けて貰ったから」
『わあ、これ最新型の電子辞書じゃないですか。しかも結構高いやつ。いいんすか?』
「そんなんじゃ全然返しにならないと思うけど。…大学では必要だから」
(あんな大金今の自分ではこれくらいしか埋め合わせができないと申し訳無さそうに述べてはここのカフェ代くらいは自分が支払おうと会計に向かって。
(その頃、相手の元に何も事情を知らない父が電話をかけていて。
『あ、繿君?久しぶり。元気かい?この前は本当にありがとう。……ところでその、菊から話は聞いてるかもしれないけど今回も繿君が助けてくれたのかな?…君には助けて貰ってばかりだね。でもあんな大金どうしたんだい?』
(てっきり自分が相手に相談したものだと思い込む父は相手の身に何かあったのではと心配していて。
>露木
( 突如相手の父親から連絡が来てはその内容に何の事か分からず、それと共に何の相談もされなかったと。
上手く流し電話を切ろうとするも『今度休みが有ったら縺さんの所に行くからね。仕事も順調だし少ない額だが返そうと思って。もし良ければ………その、菊も誘って一緒に御飯でも食べに行かないかい??』と言われて。
「露木も喜ぶんじゃないですか。…何時頃こっちに来るんすか??」
『あぁ、君達も春休みに入ったんだもんね。縺さんの暇が取れたら行こうと思ってるよ。………菊は…来てくれるかな』
「来ると思いますよ。………でもちょっと露木に話あるんで…失礼します」
( 相手の父親との電話を切り相手に電話を掛けるも何故か留守電に繋がり一体何をしてるのかと疑問が浮べば暇と退屈を潰しに街へと向かって。
( 相手からの贈り物に男子生徒は分かり易く喜びながら会計へと向かう相手に追い付き相手が代金を支払うよりも早くカードを店員に渡していて。
『俺が付き合わせてるんすから気使わないで下さいよ。…それより先輩、またこうして遊んでくれると嬉しいっす』と気恥ずかしそうに微笑んで。
『夜、家庭教師お願いしますね。ちゃんと復習しといたんで!!!』
( ニッと明るい笑顔を浮かべカフェを出ては街を見回りながら寮へと向かう。
道すがらのショーウィンドーを見ながら『あ、あれとか先輩に似合いそうっすね』なんて言っては楽しそうに。
街を抜けるというその時、コンビニの中に自分の姿を見付けた男子生徒は『あ、桐崎』と。
『先輩と仲良くなれたのも桐崎のお陰なんすよ、応援してくれてるって………って俺何言ってんだろ』
( 照れ臭そうに頭を軽く抱えてははにかんで。
>桐崎
(カフェ代まで支払われてしまえば、自分は特別何かしてやったわけでもないのにどうしてこうも親切なのかと無邪気に笑う男子生徒を横目でチラリと見る。
こんな良い奴が本当にいるのだろうかと首を傾げていると“桐崎”の言葉に光速で反応してそちらに目を向けるも、続く男子生徒の言葉に耳を疑っては「え?」と男子生徒を見て。
そこで漸く鈍感な自分でも隣の男子生徒が至極親切にしてくれる理由に気付いては少し青ざめたように一歩後退り『露木先輩!!』と呼び止める声も耳に入らず逃げるようにその場から走り去って。
(たどり着いたのは公園、しかしすぐに男子生徒も追い掛けて来ては急にどうしたのだと問いただされ勝手に逃げたことを謝って。
『それはいいっすよ。…なんか俺まずいこといいました?』
「……あんた、俺のこと好きなの?」
『え。……ぁ、いや。…はい、俺ずっと先輩のこと…「俺と桐崎、付き合ってるんだ」
『へー。そうっすよね。って、えええ?!でも桐崎俺のこと応援してくれるって…』
「……本当にあんたを応援するって言ったのか?」
『勿論。露木先輩のこと色々教えてくれて。俺それで超助かったっすもん』
「……あんたには感謝してるよ。勉強熱心でいいやつだと思う。……でも俺は桐崎だけだから」
(男子生徒の目を見てまっすぐ告げるも罪悪感と靄々した気持ちが入り混じり胸がジクジクと痛んでは目を逸し。
重たい沈黙の中、自分の携帯が鳴っては「…御免」と謝り遊具の影に行っては電話に出て。
「父さん、何?……そっちは大丈夫そう?」
『ああ。おかげで助かった。それになんだか分からないけど急に会社の経営が向上してね。給料も上がるみたいなんだよ。あー、違う違う。今日はその話じゃないんだ』
(珍しく覇気のある父の声に良かったと安堵するも複雑な心境は拭いきれず、相手や相手の父親と食事する話を聞くときもあまり思考が回らずよく考えもしないで「分かった。予定あけとく」と頷いては電話を切って。
すぐに男子生徒の元へ戻らねばと思うも後ろめたさと靄々した気持ちで中々足が前に出ず暫く電話を続けるふりをして。
>露木
( 電話に向かった相手の後姿を見詰めながら男子生徒は小さく溜息を付くも何故付き合ってるならそうと言ってくれなかったんだと自分の事を考えていて。
素直な性格故か、言い出しづらい状況を作ってしまったしお互い様かと考えてはやはり気が重く。
背後から相手の様子を伺ってた所でもう電話中だろうと構わないと相手を後ろから抱き締めては肩に顔を置き相手の携帯に目を向ける。
電話が終わってる事に気付き、それでも気にせずにゆっくり口を開いて。
『先輩、俺先輩が桐崎の事好きでも先輩を助けた事後悔してないっすから。桐崎全部知ってて俺に協力してたんすよね、上等っす。一瞬だとも応援してくれる様子だったし俺諦めるつもり無いっすから』
( ニッと笑顔で上記を言えば改めて相手と向き直り『だからこれからも暫くは家庭教師お願いします。………惚れさせる様頑張るんで』と悪戯に微笑んで。
( その頃、自分は結局相手も見付けられずにとぼとぼと寮へと戻っては最近相手と過ごす時間は少ないなと感じており溜息を漏らして。
男子生徒の言葉が誤解を生んだとも知らずに暇そうにマンガ本を取り出してはベッドに横になって。
その時、不意に携帯が鳴り響いてはどうやら着信相手は男子生徒の様で。
「何」
『桐崎さ、俺と露木先輩応援してくれんだよな』
「………えと………」
『なんてね、聞いたよ先輩から。も-言ってくれても良かったんだぜ??』
「…は??」
『でも桐崎応援してくれてる素振りだったから俺も諦めない事にした。…って事で俺達ライバルだな』
( 『じゃあね、俺明日からも露木先輩に勉強教えてもらうからさ。羨ましいだろ』なんて言葉を最後に電話が切れては暫し状況を掴めず頭をこんがらがせて。
>桐崎
(男子生徒と別れてからも相手と会う気にはなれず“相手が男子生徒を応援していた”という事実が頭の中をグルグルと駆け巡っては沈んだ気持ちのままアパートに帰り、単なる思い違いだと知ること無くその日は眠りについて。
(翌日レンタルショップのバイト終わりに男子生徒の部屋に向かっては戸惑いつつも“これは勉強”と言い聞かせ何事も無く授業を進める。
何度か“休みの日は何をしてる”だとか“兄弟はいるのか”とか他愛のないことも聞かれたが隠すことでもなかったため淡々と答えて終了時刻を迎えると「…お疲れ」と逃げるように部屋を後にして。
(そのすぐ後相手の部屋の前まで来るも扉を叩くまで数分かかり意を決してノックするも中には入らずに「……今日は父さんがアパートに泊まりにくるからここで」と視線を落としボソリと呟いて。
聞きたいことは沢山あるのに中々声に出せずどうせ明日食事をする時に会うのだからその時にしようと怖気づいてしまえば「…じゃあ明日。おやすみ」とその場を去ろうと。
>露木
( 相手が来てくれたと思えば素っ気無い言葉と共に去ろうとするのに眉を寄せる。
咄嗟に腕を掴み“少しくらい上がれよ”と口にしようとするが父を待たせてるのならそれは失礼かと。
不満気な顔を顕にしながらパッと手を離し「…ごめん、じゃあ…明日な」と何処と無く寂しそうな表情をしてはパタンと扉を締めて。
( そして翌日、自分の父と出会し相手と相手の父との待ち合わせ場所になってる洒落た居酒屋に来れば父は面倒そうに席に付いて。
相手の父が優しい微笑みで前回の三百万の礼と返済の約束を言うのに舌打ちしては『要らねぇってんだろうが。お前本当学習能力無ぇな、あれは繿が餓鬼の頃お前に世話になったからって言った筈だ』と。
酒やら料理やらが運ばれて来る中、何故か相手と視線が交わらずそれを疑問に思いつつも深く考えない様に料理を口に運んで。
『菊、菊にも散々迷惑掛けたね。今は地元でちゃんと安定した仕事に付いたよ、ナツや母さんの所にも週3くらいで通っててね。今度は家族で食事に行こうって話にもなったんだ』
( 嬉しそうに話す相手の父親に自分の父が『ふん、そっちの会社の上司にも上手く騙されたら笑いもんだな』なんてまた一見冷たい様な言い方をして。
相手と一言も会話を交わして無い事や何故か気不味い雰囲気な様子に勝手にイライラとして来ては頬杖を付いたまま相手の皿にプチトマトやら玉ねぎやらを移していて。
>桐崎
(居酒屋にて相手と話さねばと思うも父親2人の前でする話でもないため口を閉ざしていたが、明らかに苛々した様子で苦手なものを皿に移してくる相手に“なんであんたが不機嫌なんだよ”とむかついてしまい皿に乗せられたものを相手の皿に返却していき。
『こら、菊。行儀悪いからやめなさい』
「…此奴が先にのせて来たんだし」
『子供みたいなこと言って。それに友達を此奴呼ばわりしたら駄目だろう』
「…………」
(相手の前で父から叱られ情けなさと恥ずかしさで更に機嫌を損ねるもここで空気を悪くするわけにはいかないため素直に謝り相手の父親に笑顔でお酌しては適当に世間話をして場を繋ぎ。
結局相手とまともに会話をしないまま食事が終盤にさしかかり店員が『予約のサービスです』とデザートを持ってきてどこか聞き覚えのある声に顔を上げると目を丸くする男子生徒が立っていて。
『先輩!…と桐崎。え、…あ、じゃあもしかして露木先輩のお父様ですか!わあ初めまして、俺先輩に世話になってる磯貝(イソガイ)っていいます。よろしくっす』
『磯貝?磯貝君ってもしかして今回お金の工面をしてくれた?』
「…父さんその話は…」
(借金の話は相手には話していないこと。出来れば知られたくないと父を制そうとするも既に遅く、父はヘコヘコと男子生徒に頭を下げて『僕はてっきり繿君に相談したと思ってたんだけど菊が昨日話してくれてね。いやー、君みたいな子が菊の傍にいてくれて嬉しいよ』と笑っていて。
それから暫く男子生徒と父が笑顔で会話し話の区切りがついたところで思い出したように此方を見て。
『あ、先輩。言っておきますけどバイトは親と学校公認の社会勉強なんで校則は違反してませんから。っていうかもう卒業だから校則とか関係ないっすから…じゃあ俺はこれで。明日も待ってますね』
(ニカッと笑顔で仕事に戻っていく男子生徒に父が『本当にいい子だねー』と呑気に笑うのに、自分は居たたまれなさから相手の顔が見れず、今日聞こうと思っていたことも忘れて相手を遠ざけるように目をずっと逸らしていて。
>露木
( 現れた男子生徒と相手の父との会話に以前相手の父が自分に連絡を寄越した内容が漸く理解出来ては自分には全然相談も無かったのに男子生徒には言えたのかと身勝手な苛立ちが込み上げて。
此方を見ない相手に小さな舌打ちを漏らしては欠伸をする父を見詰めて。
『あ??辛気臭ぇツラでこっち見んじゃねぇ』
「息子に向かって言う言葉かよ」
( ブスッとしながらデザートを平らげ暫く話した後に店の外に出ては自分の父と相手の父がまた会おうと話してるのを横目に携帯を見詰めていて。
『じゃあ僕はホテルに泊まるから此処で。縺さんは自宅に戻るんだよね、なら途中まで道は同じだね。じゃあね菊、繿君も今日はありがとう』
( ニッコリと微笑む相手の父にペコリと頭を下げては重たい空気の中何時もより早足で帰路を辿る。
アパートと寮の別れ道迄もう少しと言う所で遂に我慢が出来なくなっては相手に向き直りグッと顔を近付けては一番問い掛けたい事も聞けず「ムカつく」と呟き。
「こっち見ろよ」と言うも見事にフイと逸らされては相手の耳に軽く噛み付き「こっち見ないと噛み契るぞ」なんて子供地味た脅迫をして。
「………磯貝とすっげぇ仲良さそうだったな、あんたの父さんもすっごい気に入ったし」
( 不機嫌をあからさまに上記を言えば尚も機嫌の悪そうな顔で自分の巻いた種にももはや気付けずにいて。
>桐崎
(重たい空気の中、突如“ムカつく”と言われカチンと来るも居た堪れなさが先立っては相手の鋭い視線から逃げるように目を逸らす。
しかし耳を噛まれ言われた言葉についに苛々が我慢できなくなっては相手をキッと睨み付け。
「は?何であんたがんなこと気にするわけ?俺と磯貝が仲良くしたらあんたにとって都合良いんだろ?」
(相手が“応援してる”とまだ確認してもいないのに怒りをぶつけては何で俺が悪いみたいに言うんだと舌打ちして。
「てかあんた、さっきからずっと苛々して空気悪いんだよ。好き嫌いとか餓鬼か。ムカついてるのはこっちなんだよ」
(子供の喧嘩のように罵声を浴びせてはハァとわざとらしく溜息を吐き「……あーそうだよ。磯貝と仲良いよ。彼奴はいい奴だしあんたみたくいきなりキレたり噛み付いたりしないしな。それに勉強熱心だし人も良いしそりゃ父さんも気に入るよ。あんたも俺と磯貝のこと応援してくれるんだろ?きっと喜ぶだろうな、うちの父さんは」といやみったらしく述べて。
本当は相手が誰よりも優しくて、バイトや授業の合間の短い時間に一人勉強に励んでいることを知っていたのに、今は気が回せず相手を睨みつけて「今日あんたのとこ行こうと思ったけど辞める。どうせ苛々するだけだし、俺は邪魔だろうから」と“応援する”ということは他に気になる人がいるのだろうと勝手に思い込んでは冷静になれないままその場をさろうと。
>露木
( 男子生徒にしっかりと真実を言えずうやむやにして誤解を生んでる事にも気付けずに相手の言葉に“本当にあの男子生徒に相手を取られるのでは無いか”と言う焦燥感が湧いて。
わなわなと震えながら相手の肩をグイッと掴むも性格上やはり素直になれず「な…なら勝手に磯貝の所でも行けば良いだろうが。別に俺は止めたりしねぇから」なんて生意気極まり無い事を言っては相手に背を向け大股で寮へと戻って行って。
( 自室に来るなり今日の自分の行いに深く後悔しては相手の言葉を一つ一つ思い出す。
まずは勝手にキレた事と噛み付いた事を謝らなければと携帯を取るも文字を打った所で送信する事が出来ず結局消去して。
勉強熱心と聞けば別にあの男子生徒は相手との勉強会だから頑張ってるだけだろなんてまた黒い感情が生まれるも最近は自分も成績が落ちて来ていて。
以前相手に勉強を教えて貰おうとも思ったが丁度家庭教師のバイトを受け持ったと聞いて諦めて。
あの男子生徒の様な人懐っこい笑顔を向けるなんて無理だしこれでは適わないと大きな溜息を付いて。
ベッドに横になったまま寝息を付いては夢の中でも相手の事ばかり考えていて。
( 翌日、朝食に行こうと迎えに来た青年を見詰めては身支度を済ませどうせなら外のファミレスに向かおうと。
頭の中ではあの男子生徒の印象がグルグルと駆け巡っており少しでも笑顔を作れたら良いのになと。
『わ、俺パンケーキにしようかな。兄さんは??』
「トーストで良い」
『分かった、店員さ-ん』
( ニコニコと笑顔で注文する青年を見詰めては小さく溜息を付き。
>桐崎
(翌朝アパートにて目を覚ますも眠れたはずなのにすこぶる目覚めは悪く、その原因は明らかで昨夜相手が最後に残した言葉からやはり本当に自分と男子生徒の仲を応援したのかと疑っていて。
相手からのメールはなく何度も自分から送ろうとするが言葉が見つからず結局なにも送れずに溜息を吐き今日は家庭教師のバイトしかないしそれまでアパートでゆっくりしようと思うもSNSの通知音が鳴っては《おはよっす。今から一緒に朝飯食いに行きませんか?》と。
男子生徒の想いを知ってしまったためこれ以上近づきたくないと思うもそれを見計らったように《友達としてで良いっすよ》と続けざまにメッセージが送られてきて。
正直面倒だったが相手とのことで意地になっていたこともあり、どうにでもなれと投げやりになっては《分かった。今から支度する》と短文を送って。
(訪れたのは相手と青年もいるファミレス、しかし敷居などがあったため気付かず入り口付近の席に案内されてはサラダやスープを注文して。
「…金持ちはこーいうところこないのかと思ってた」
『嫌だな、それは偏見っすよ。それに先輩もこっちのが落ち着くでしょ?』
(人懐っこく笑い朝からがっつり厚切りベーコンを食す男子生徒に流石元野球部と感心しつつ、食堂で相手から貰っていたヨーグルトを恋しく想い、昨夜相手の苦手な物を食べて上げればよかったとウジウジ後悔して。
『話聞いてます?この後、俺の実家来ません??先輩の好きな星とか自然の図鑑沢山あるんで。あ、自家用プラネタリウムもありますよ。あと望遠鏡も。折角だから今日の家庭教師は俺の実家でやりましょうよ』
「…あー…、いやでも…」
『あ、今俺に襲われるかもって思いました?心配しないでください。俺そーいうところは紳士っすから』
「は?…だれかそんな心配するかよ。………ただ桐崎と…」
(会いたいと言おうとする自分に気付いては喧嘩してるのに何考えてるんだと焦ってしまい『わー、図星っすか?意外と変態っすね』とからかわれたのも相まって顔を赤くして。
>露木
( 朝食を終え青年と共に会計へと来た所で目に入ったのはあの男子生徒と向き合い頬を赤らめて何かを話してる相手の姿で。
分かり易く不機嫌をあからさまに表情に出しては激しい嫉妬に駆られわなわなと震えて。
その刹那、相手とばっちり目が合うも咄嗟の事にビクリとしフンと顔を背けては青年と共にファミレスを後にして。
( それから春休み故に特にする事も無く青年と街をブラブラ彷徨っては最近成績が落ちてる事を何気無く青年に相談してみたりして。
『俺も勉強嫌いだからな-、留年生だし』
「いや俺も嫌いだよ。でも俺寮賃親が出してる訳じゃ無くて少し事務の先生に媚ってるからさ、流石に成績落ちると追い出されかねねぇんだよ」
『え-、寮賃かぁ。確かお父さん何とかしてくれるって言って無かったっけ??』
「言われた、…けど俺が断ったの」
『何でよ-』
「母さん肺弱らせてるらしくてさ。病院通えば治るらしいしあんまり世話かけらんねぇなって」
『そっかぁ…』
( 相手とは喧嘩をしてるし頼める筈無いと頭を悩ませつつそれでも青年が話を明るくしようとしてくれてるのは分かり軽く微笑んで。
( その頃、男子生徒は相手を豪邸に招きその一室のプラネタリウムに案内しては真っ暗な部屋の中相手の手をさり気なく取って。
『あ、す…すみません。俺鳥目なんすよね』
( 困り笑顔でそのまま装置の前まで向かえば漸く手を離し慣れた手付きで操作をして。
『凄くないっすか??たま-に無料で子供達とか招待してるんすよ。その辺と意地悪な金持ちと一緒にしないで下さいね』とあの人懐っこい笑顔で。
>桐崎
(男子生徒の家に招かれ自家用の域を越しているプラネタリウムに圧巻するも、相手のことが頭から離れず今朝ファミレスで顔を背けられたことを自分が顔を赤らめたからとも知らず気にしていて。
『先輩どうっすか?気に入ったならいつでもまた来てくださいね』
「…あ?…ああ。………陸と遙花にも見せてやりたいな」
『誰っすか?』
「ああ…孤児院の子どもでさ。桐崎によく懐いてるんだ」
『……また桐崎っすか。先輩さっきから口を開けば桐崎桐崎って…』
「………」
『あ!いやいいっすよ。今度その子供達連れてきてくださいよ。珍しいフランス菓子も用意しますんで』
「いやでも桐崎居ないと難しいかな…。俺だけじゃ子供達連れ出せないし」
(今は喧嘩してるから頼めないと眉を下げては機械が天井に映し出す空をぼんやり見つめていて。
その後夕食までご馳走になっては男子生徒の部屋で授業を終えて今度は本物の星空を見ようと誘われるも小さく首を横に振って。
「それはやめとく。…桐崎と見る約束して…、まだ見てないから」
『……でも喧嘩してるんすよね?』
「…悪い、もう帰る。長居したら家の人にも迷惑かかるしさ。…今日はありがとな。楽しかった」
(小さく微笑んでは男子生徒の家族に挨拶して邸宅を後にして家路を歩く。
相手のことがむかついていたのにこんなにも相手を想ってしまう自分に嫌気がさすも相手を忘れられないことくらい分かっていた気がして着信のない携帯を見ては小さく溜息を吐き、自分から男子生徒に相談したことだけでも謝ったほうがいいのだろうかと相手のアドレスを開いて。
暫く散々迷うも此れまで何度もちゃんと話しあえずすれ違って来たことを思い出しては《話がしたい。時間あるときでいいから会わないか?》とメールを送り。
(その頃、男子生徒は相手にライバルとして今日のことを報告しようとSNSで自分としたことを自慢し《俺のがポイント高いかもな♪》 なんて送りつつ自分が相手のことばかり話していたことは伏せていて。
>露木
( 自室にて結局青年と駄弁って居たが青年がふと時計を見上げては『あ、バイトの時間だ』と零して。
バイトなんてやってたのかと疑問が浮かび問い掛ければ『かなり高収入だよ。ネットでうま-くバイトしてるの』と微笑みさっさと自室に戻って行って。
何のバイトしてんだよ、なんて考えつつ携帯を手に取っては相手からのメールに気付きバッと起き上がるもそれと共に男子生徒からのメッセージが入っては眉を寄せる。
絵文字を乱用しまくってる様子から相当な上機嫌が伺えイライラとしては《何なら俺も彼奴泊まりに誘っちゃおうかな》なんて嫌味な返信を送って。
男子生徒からの返事は早く《巫山戯んなよなヽ(`Д´)ノ…って言うか桐崎が泊まりに誘うって言うとあっちのイメージしか沸かないんだけど》と失礼極まりない内容に再び苛立って。
《何、俺はそういうイメージが定着してんだ》
《いや…そんなんじゃ無いけどお前自分の噂少しは気にしろよな》
( 長く続きそうなメッセージに小さく溜息を付いては相手のメールを開き返信を作成する。
…が、やはり素直にはなれず会おうという誘いに凄く嬉しい筈なのに《仕方無ぇな、面倒だけど時間作ってやっても良いよ》と生意気な返信をしてから後悔しベッドにボフリと身体を預けては本当に自分は馬鹿だなと唇を噛んで。
>桐崎
(アパートに戻っては相手のメールに気付きその冷たいように見える内容にズキリと胸が痛むも此処で負けてたまるかと《御免、有難う。時間わかったらまた連絡して。待ってるから。おやすみ》とメールし、次会うときは絶対冷静でいようと心に決め、たとえ本当に“応援してた”ことが真実でも受け入れようと。
ただの思い違いとも知らず勝手に靄々してはその日は疲れていたためそのまま眠りについて。
(その頃、相手の部屋には若頭と兄が怪しい大きめの水晶球を手に押しかけていて先程テレビでやっていた怪奇現象の番組について話していて。
『本当凄かったんだって!!男の人が呪文みたいなの唱えたら人がスゥと水晶球に吸い込まれて消えちゃったの』
『まああんなの編集だよね。絶対。信じてるの木ノ宮くらいだよ』
『えええ。絶対本当だって。それでねそれでね。また呪文を唱えたら消えた人がパッと現れて過去にタイムスリップしてきたって言うんだよ。びっくりじゃない?』
『……まあ嘘だよね。木ノ宮も信じてない癖にその乗りやめなよ』
『…綸はノリ悪いなぁ。繿は僕の話乗ってくれるよね?僕昔っから魔法とかちょっと憧れてたんだ。念を送れば一般の人でも出来るらしいから繿、ちょっと実験台になってよ。そのために多額はたいてこの水晶球即取り寄せたんだから』
『……俺はとめたよ』
(流石の兄もこの若頭のテンションにはついていけないのか呆れ顔をしており、勿論若頭も本当に信じているわけではなく盛り上げてしまったテンションを引くに引けなくなっているだけで。
『ささ、繿。ちょっと僕の遊びに付き合ってよ』
(相手の気も知らずに酒でも入ってるのかというくらいハイなノリで相手に絡んでは相手の手を無理やり水晶球に乗せて。
(/本体失礼します。そして申し訳ありませんw
今回もお馬鹿な本体がやらかしましt((←
繿君江戸へタイムスリップ(身体ごと)の巻です☆(殴蹴)
ちょっと雰囲気変えたくて(露草で繿君を愛でたかっt)やらかしただけなので
え、ないだろって思ったらスルーしてください<(__)>
設定的にらん君が二人いるとややこいので爛君は現代で菊とワイワイしてて貰おうかなと←
それで爛君と露草も喧嘩してて気まずくなってますとかだったらいいな←←
本トピの江戸での設定・矛盾はスルーでOKです(笑)
毎度、本体暴走してすみません(深々)
そして例のごとく何も考えておりまs((
とりあえず舞台は江戸で露草と繿君と絡みが出来たらいいなという自分の我が儘でございます(^q^)
>露木
( 若頭のテンションの高さに呆れつつ、それでもタイムスリップなんてある訳無いしと仕方無くその遊びに付き合ってやろうと手を翳しては突如その水晶球に吸い込まれる様な感覚になり慌てて助けを求める。
…が、時既に遅く地面に身体を打ち付けられる感覚に眉を寄せては着物に身を包んだ少年少女達が『爛兄ちゃん??』と自分を覗き込むのを最後に意識を手放し。
( 現代の自室、現代の自分と引き換えに飛び出して来たのは真黒な着物に身を包み白鞘の刀を持つ自分と瓜二つの青年(爛)の姿。
以前自分に憑依した事は合ったが生身の自分自身で呼び込まれたのは初めてな為無表情で辺りを見回しては冷静な様子で兄の顔を見詰める。
『………ちょっと木ノ宮、俺知らないからね』
『ま、待ってよ!!綸だって面白がってたじゃん!!』
( ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人に溜息を付き「どういう事だ。あんた等の遊びで俺は呼び出されたのか」と。
『いや、え-っと』
『木ノ宮が巫山戯てたからでしょ』
『違う!!!何で僕だけの所為児しようとするのさ-』
( 目に涙を溜め頭を悩ませてる様子の若頭に“困るくらいなら何で呼んだんだ”と飽きれるも兄が渋々と立ち上がっては現代の自分の衣服を手渡して来て。
『取り敢えず…着物じゃ不便だと思うんだよね。…それから刀も銃刀法に関わるし』
「随分生易しい時代になったもんだな。あんた達は仲間と見なして良いと言う事か??」
『……仲間…と言うか家族だしね、大丈夫大丈夫』
( 困り笑顔の兄に強引に着替えをさせられては出来る事ならさっさと江戸に戻りたいと思うも念じるだけで戻れるなんて事は有り得ずに。
( そして此方江戸時代にて、ゆっくり目を覚まし直ぐに目に入ったのは柔らかそうな赤髪。
着物を身に纏い満面の笑顔を向けては『良かったぁ-、兄さんやっと起きた。俺の事分かる??』と。
「赤城…だよな」
『へへ-、違うよ。俺は“アカ”ね』
「はぁ??」
『うん、まぁまだ困惑状態だよね』
( 緩く首を傾げる青年に“訳が分からない”と言う表情を向けては何故か黒い着物を渡され取り敢えず着替えろと言われて。
( / またまた何時もながらの素敵な展開に興奮しております(*゚∀゚)
今回自分のロルではタイムスリップ後の取り敢えずの状況把握、みたいな感じになってしまいました
舞台は江戸と言う事なので次ロルから繿と露草くんの絡みにさせて頂きますね
楽しみ過ぎてテンション上がってます←
>桐崎
(時は江戸、寺子屋にて子供達が勉学に励むのを見守りつつ窓から見えるどんよりとした雲行きを見て今朝の相手との喧嘩を思い出し何度目か分からない溜息を吐く。
__原因は些細なことだった。そして明らかに非は自分。今朝は互いに依頼続きで数週間ぶりの顔合わせ。甘い時間を過ごす筈だったが飛脚から相手へ新しい依頼が届き結局時間を共に出来なくなっては一気に気分が滅入り、相手は我慢してくれていたのに自分は長々と日頃の不平不満をぶつけ「どうせ仕事って言っても女と酒飲みだろ?」と相手の疲労も考えず責め続けてはついに相手を怒らせてしまいそれからは売り言葉に買い言葉で……。
昼過ぎには相手は依頼に出かけてしまう。そうなればまた数日は会えない。
このままでは駄目だと他の者に寺子屋を任せては孤児荘に足を向けて。
(孤児荘に着くと何故か子供達がいつもより騒がしく荘内から『らん兄ちゃん、この服変わってるね』『この“けーたい”は何に使うの?』とはしゃぐ声が聞こえ、なんだ?と首を傾げるも特に気にせず、一度小さく吸ってから相手の部屋の襖を開き。
そこにはいつもと変わりない…いやどこか違う気がするが相手の姿がありまだ依頼に出てなかったと安堵しては青年や子供達がいるのも気にせず相手の前に座りすぐに今朝のことを謝り。
「今朝はすまない。…あんたと過ごすのを楽しみにしていたから八つ当たりをして」と素直に言葉を並べていたところ青年と子供達が部屋に隅で必死に笑いを堪えるのが目に止まり眉間に皺を寄せるも、先程から感じる妙な違和感。その原因がなんなのか、目の前の相手に視線を移してはじーと紅い瞳を見詰め「…爛?」と呼びかける。
なぜだろうか。いつもより幼く見え、凛と研ぎ澄まされた気迫がない気がする。
「ちょっと立ってみろ」と相手を立たせては「……あんたまた背が伸びたか?」と。
まさかタイムスリップなんて想像もしないため、目の前の相手が“桐崎”だとは思わず、この短時間にやけ酒でもして気が抜けたのかと相手に顔を寄せて口元の匂いをかいで。
(/本当に自分の我が儘聞いて下さり有難うございますm(__)m
自分の超乱暴なパスを綺麗にまとめてくださり感謝です。
なんで爛君と露草がひっついてるかは疑問だらけですが…そこは置いときます(←)
今後露草が繿君を全力で可愛がりますのでよろしくお願いします!!
>露木
( 見慣れない衣服の相手の姿に相手もこの時代に飛ばされたのかと勘違いしては取り敢えず知ってる人に会えて良かったと安堵するも現代の相手はこんなに長髪では無い事に直ぐに気付いて。
状況も掴めないままに相手の言う事に首を傾げるも漸く相手の名前を思い出し「…思い出した、あんた…“菊露木”だろ??」と。
しかし相手の存在を思い出したからと言って不安が取り除けた訳でも無くガシガシと髪を掻き乱しては溜息を漏らし「…木ノ宮と綸…巫山戯やがって」と。
子供達から携帯を受け取り取れる筈無いと理解しながらも連絡を試みる。
しかし分かっては居たが県外、頭を抱えしゃがみ込んでは見慣れた顔立ちの姉弟が抱き着いて来て。
「…遙花、…と陸??」
『??…違うよ-??私は小遙(コハル)だよ??』
『僕は陸太(リクタ)だよ-』
( そっくりの顔立ちに一緒心が和むもやはりジッとはしてられず相手の肩を掴んでは状況を話して。
頓に信じられない話だが縋る思いで話終えては「ほら…この時代って物騒だろ」と。
『大丈夫だよ-兄さん、俺が添い寝して上げる』
「いや別にいらない」
『安心してよ、ちゃんと傍に居るしこっちでの過ごし方は何でも教えて上げるよ』
( やはり見慣れない街に一人で居るのは不安、現代とあまり変わりの伺えない様子で抱き着いて来る青年に何処と無くホッとしては「悪い、頼む」と相手が何かを言掛ける前に青年に返事をして。
それがまた擦れ違いになるなんて考え今は無く青年の好意に甘える事にしては子供達の元に駆け寄り。
>桐崎
(孤児荘の入り口に座り相手が子供達を遊ぶ様子をぼーっと眺めては本当に相手の生き写しだなと。
青年とのほうが親しげなのは気に入らないがあくまで自分は“他人”なのだから仕方ないかと溜息を吐きつつ、相手のお陰でいまの相手(爛)とよりを戻せた恩もあるため相手のことは自分が絶対に守ろうと決めては暫く相手の様子を頬やましげに見守っていて。
(夜、孤児荘にて共に食事を終えては『兄さんのそばにいたいけどお仕事あるから』と何度も振り返りながら依頼に向かう青年を見送り、相手と二人っきりになってはとりあえず風呂に入るかとどこか他人行儀で使い勝手を説明しては、風呂から出てきた相手の着物を見ておもむろに近づいて。
「帯、それだとすぐ解ける」
(小さく呟いては帯を直すため相手の腰に手を回し、必然的に抱き付く形になるも気にせず綺麗に整えては満足気に微笑み「やっぱり爛より腰細いな。ちゃんと食べてるか?」と軽くからかっては一緒に相手の部屋に行き青年が話し切れなかったことを伏せる所は伏せつつ丁寧に話して。
「…とりあえずあんたが無事帰れるまでは俺も此処で寝泊まりするよ。……あと一人では昼間でも絶対に一人で出歩くなよ。特にあんたの場合…いや爛は色々いわれがあるから」
(いわれで言えば自分も負けてないがと内心苦笑を漏らしつつ、少し真剣な表情をして相手の前に自分の脇差を差し出して。
「護身用だ。抜かせるつもりはない。…だが、万が一のときに」
(多くは語らず述べ、空気が重たくなるのを感じては相手の髪をワシャワシャと撫で「大丈夫だ。凛もアカもいる。みんな頼りになるから」と微笑むもどうしても爛が重なってしまいスッと目を逸らして。
爛は無事だろうかと愛しい相手を思うもふと自分の生まれ変わりともいえる存在を思い出しては「そう言えば露木だっけか。…彼奴とはあれからどうだ?」と。
そう問い掛けつつ内心、爛がいない依頼の埋め合わせをどうするか考え下手したら組織の連中が相手の不在を騒ぎかねないなと懸念していて。
>露木
( 相手で合って相手で無い事は理解してるのだがそれでもやはり胸は騒ぎ他愛も無い事で羞恥が沸いてはそれを隠す様に顔を逸らす。
“自分”の部屋だと言われ連れられた場所は何処と無く落ち着きを感じデザインや形こそ違うが持ってる物や趣味などは殆ど変わらない様子で。
渡された脇差にも“…本物か??”と刀という物に驚いた様にそれを見詰めるも相手の言葉に深く頷いては迷惑はなるだけ掛からない様にしようと自分に言い聞かせるも逸らされた視線に最近現代で喧嘩をしてしまった相手が重なり俯いて。
現代での相手の事を言われては普段の無表情に僅かに眉間皺を刻ませ口を吃らせる。
「………露木と、喧嘩したんだ。…彼奴の事好きな奴が居てさ…俺の事ライバル…じゃなくて恋敵みたいに思ってるみたいなんだよな。………そりゃあ俺も餓鬼みたいな態度取っちまったけど…彼奴だって…。その恋敵の家に上がってんだぜ??可笑しいだろ」
( 深い状況も知らない癖に不満を次々と口にしては漸くハッとし「…ごめん」と小さく謝って。
朝起きたら戻ってると良いな、なんて甘い考えを持ちながら布団に入っては寝息を立てて。
( 翌日、孤児荘とやらの年長の少女に起こされては態々起こしに来てくれた事に礼を言うも驚いた様に目をぱちくりとされて。
慣れない着物に袖を通し相手のお手製の朝食に舌づつみしては現代の相手同様自分好みの味付けに僅かに表情を緩めては“美味い”と率直な感想を述べ。
『………なんかこっちの兄さんは凄く素直だね』
『本当!!!今朝なんか起こしに来た事に御礼なんて言われちゃったのよ??何時もなら起きないか面倒そうに起き上がって欠伸してるのに』
( 現代でもそんな素直な方では無いし、だからこそ今回相手と喧嘩をしてるのにと思うも口には出さず「こっちの俺は随分な生意気みたいだな」と。
『そう言えば兄さん手拭い巻かないの??』
「あ-手拭いは巻き慣れて無い。いつも着けてないかヘアバンドだったし」
『ヘアバンド??』
「そ、一々結ばなくてもゴムで出来てるから楽なんだよ。……………それにあの黒い手拭い、こっちの俺の宝物みたいだったから勝手に触ったらどやされそうだし」
( 悪戯っぽく微笑んではまだぎこちなくも何処か落ち着いた様に。
>桐崎
(翌朝、子供達が目を輝かせながら相手にいくつも質問する様子を頬やましげに見詰めつつ、今日は夜までこっちに戻ってこれそうに無いため少々落ち着けずにいて。
寺子屋へ行く時間入り口まで相手に見送って貰っては一度向き直ってしっかりと見詰め。
「アカもいるけど一応凛も呼んでるから…、なんか言われるかもだけど頼ってやってな。喜ぶから」
(微笑を向け普段より子供に見えてしまうせいか相手の頭を撫で撫でし「夜には戻る。その時にまた露木の話し聞かせろよ」とトンと額を突いて孤児荘を後にして。
(途中、兄と鉢合わせては文で伝えていた相手の話題になり兄も昨日の夜戻し方を調べてくれたらしいがそう簡単にわかるものでないと。
「…だよな。…なるべく事が大きくなる前に。……彼奴に血は見せたくない」
『……心配してるところ悪いけど、既に爛いないって組織の連中が騒いでる』
「……」
『まあもしもの時は俺が変装して何とかするよ』
「……能力は、どうにもならないだろ」
(江戸の外気は能力を高めやすい。相手の身体に負担を掛けないためにも早く平成へ帰してやらねばと表情を険しくしては、とりあえず今は兄に相手を託し寺子屋に向かい。
(夜の簡単な密売を終え孤児荘への道を行くところ、街で買った相手への手拭いを見ては喜んでくれるだろうかと。
もしかしたら今夜平成に帰れて不要になるかもしれないのに何となく相手に持っていて欲しくて。
何やってんだかと自身に呆れつつ孤児荘の前まで来るも突如背後から相手の飲み仲間である浪士が絡んできて。
『よー、勿!!なあなあ霧ヶ暮いるか?昨日彼奴、宴会をすっぽかしやがってさ。折角いい女紹介して貰おうと思ってたのによー』
「知るか。……彼奴は長期依頼に行ってていない。諦めろ」
『そんな筈ない。暫くこっちにいると行ってたぞ』
「急だったんだ。…もういいだろ。忙しいんだ」
(しつこく絡んでくる男にうんざりするも悪いやつではないし相手の組織の仲間のため無碍には扱えず、外に響く大きな声で話してくるのを男の気が収まるまで聞こうとするも中々離れてくれずに。
>露木
( この時代の兄と対面し、しかし何処か他人行儀な様子に堅苦しくなっては視線を流して。
外に出るなと言う言い付けを胸に過去の自分の自室での暇を弄んで居ては溜息を漏らして。
夜、子供達も漸く寝静まった頃外から聞こえる声に気付いては戸口から外を覗き込む。
相手と並び何か話してる様子の男に過去の自分の知り合いだろうかなんて考えるも兄と相手の言い付けを思い出しては大人しく自室に戻ろうと。
しかしその時、一人の少女が目を擦りながら抱き着いて来ては『怖い夢見たの、お兄ちゃんどうして此処に立ってるの??』と。
静けさの中に少女の声が響き渡りまずいと思った時には時既に遅く、此方に気が付いた男が駆け寄って来ては自分の手を掴み宴会に出なかった事を咎めて来て。
『霧ヶ暮!!!お前なぁに居留守を使ってるんだ、昨日の宴会もどういうつもりだ』
「あ??……………え、………」
『…まぁ構わん。それより約束覚えてるよな??』
「約束??」
『忘れたとは言わせない、次の宴会は来いよ。仕方無いから引き伸ばしにしてやる』
( 笑みを深め去って行く男が言う“女を紹介する”だなんて約束自分が知る筈も無く隣できょとんとする少女を抱き抱えては近寄って来た相手に「…ごめん。挙動言動共に不信だったよな」と。
腕の中で少女がうとうとと眠りに付くのを微笑ましげに見詰めては取り敢えず子供達の寝室の少女の布団に少女を寝かせ相手と共に自室に戻って。
>桐崎
(相手の部屋にて相手が謝ってくるのに対し首を横に振っては謝罪するのは此方だと苦笑を零して「宴会には出なくていい。なんとかなるから」と心配を抱かせぬよう軽く述べて早々に話題を変え、自分も今爛と喧嘩中だと笑って。
「まあ今回は痴話喧嘩かな。……でも彼奴、俺が嫉妬むき出しで話てるのに表情一つ変えないんだ。少しくらい照れたっていいだろ?…そりゃ彼奴がどんな顔してようと好いてるのは変わりないが俺の前くらい……、って何言ってんだろうな」
(これでは愚痴と惚気ではないかと苦笑いしてはなぜか相手の前だと爛に言えない事を言えてしまうなと不思議な気持ちになりつつ「…露木も素直じゃないからな。あんたも苦労しそうだ」と小さく笑って。
その後、暫く雑談して相手が眠りについたのを確認しては別室にいる兄の元へ行き「明日、爛に変装して宴会に出て欲しい」と頼み、相手の自室の前に座って万が一に備えて見守っていて。
(翌朝、相手が作ってくれた朝食を皆で食べ『いつものお兄ちゃんのより美味しい!!』とさり気なく毒を吐く少女に思わず吹きそうになるのを堪えつつ「俺はどっちの味付けも好きだな」と微笑んでは、食事を終えたところで相手の背後にまわり昨日買っておいた手拭いを丁寧に巻いてやり。
「前髪、邪魔そうだったから。…不要なら捨ててくれていい」
(照れたように述べつつ手拭いをした相手の顔を見ては一層爛に近づいたなと感じ「今日は一日一緒にいれるから」と恋人に言うような台詞を吐いて片付けをする子供達の元へ行き。
(昼過ぎ、そろそろ兄が相手に変装をするため此方に来る頃合い。
そんな時にあの男が孤児荘にズカズカと上がり込んで来ては相手を見つけるなり相手の腕を掴んで『よう霧ヶ暮。今日はとんずらされねぇように迎えにきてやったぜ』と。
咄嗟に相手との間に割ってはいり腕を離させてはもう少し待つよう頼むも逃げられると懸念してるのか聞き入れてくれず。
「どうしても今から連れていくと言うのなら俺も同行する」
『は?野郎が増えてもうれしかねーよ』
「じゃあ宴会は諦めるんだな」
(かなり強引だが男が引かぬなら一度聞き入れるふりをして隙を見て変装した兄と入れ替わるしかないかと。
「…悪い。少しの間だけ付き合ってくれ」
(ほんの数刻だけ、宴会だから大丈夫だと言い聞かせては相手の様子を窺い。
>露木
( まさかこの時代の自分達も喧嘩してたとは知らず互いに打ち明けられる事を打ち明けた所為か落ち着きを持ち眠りに付く事が出来て。
( 翌日、慣れない勝手場にて何度も味見をしながら朝食を作り子供達や相手と食卓を囲む。
ふと背後から手拭いを巻かれては僅かに驚いた様に振り返り何気無くそれに触れて。
質の良い物だと自分でも分かりこの時代の相手の言葉に不覚にも胸が高鳴っては子供達の元へと向かう相手の後姿を見詰めていて。
そして昼過ぎ、相手と共に自室へと向かい廊下を歩いてた所いきなり先日の男が現れては腕を掴まれて。
咄嗟に相手が入ってくれたが男は諦める様子は無く、相手の耳打ちにコクリと頷いては男に同行し。
( まだ明るいにも関わらず連れて来られたのは遊郭街の奥の宿屋街の中の一つ。
宿屋の一番奥、広い宴会間へと通されては見事に相手と離され相手から二人程挟まれた席に座らされ。
相手に視線でどうしようかと訴えるも兎に角此処は演技を続けるしか無いかと項垂れて。
この頃の自分の性格など知らないが敢えて繕わない方が良いかと判断し言葉遣いのみに気を使って。
『霧ヶ暮、お前が紹介してくれると言った女はどういった身元の奴だ??…まぁ貧相な女でも顔が良ければ良しとしてやるから』
「………さぁな、女には余り興味がねぇから。大体身分を晒してどうするつもりだ、お前の身分が上だからと女に無理強いでもさせるつもりか??」
『はっ、相変わらず手厳しいね。本当にお前は詰まらねぇ男だよ』
( ゲラゲラと笑う男を溜息気味に見詰めてはそろそろ兄と入れ替わる時刻だろうかと相手と視線を交わす。
雰囲気を伺いながら「…ちょっと厠に…」と言掛けるも男に手を取られては『逃げるつもりか??』と。
何を変な勘違いしてるんだと眉間に皺を寄せるも兎に角席を外さなければと。
「おいおい、何疑ってんだ。逃げるつもりなら此処まで来ねぇよ」
『…どうだろうな。信用出来ん』
( 首を横に振る男に舌打ちしては苦虫を噛み潰した様に相手を見詰めて。
>桐崎
(宴会場にて上手く演技をする相手に爛ではないと分かっていても爛に見えてしまい中々やるではないかと感心しつつ、しつこく相手を引き止める男の腕を取って。
「俺が見張りとしてついてく。それで構わないだろ?」
『お前は霧ヶ暮と仲が良いだろ。共犯なんじゃないか?』
「なんの共犯だ。……疑り深い男は嫌われるぞ」
(呆れたように述べ一括しては男が押し黙るうちに相手の手を引き厠まで来て女を連れて身を潜めていた変装済みの兄と落合って。
『この子(女)には事情話してあるから大丈夫。今のうちに外に行きな。アカが待ってるから』
「助かった。…俺は外まで此奴を送る」
『はいはい。先に行ってるよ。………君もお疲れ様』
(兄は相手にニコリと微笑みかけるとさっさと女を連れて男の元へ向かい、其れを見送る間もなく相手の頭に頭巾をすっぽり被せては「外にでるぞ」と声を掛け宿屋の階段を降り。
あと一階降りれば入口のある階というところ今度は自分と相手を良く知る浪士、しかも悪仲の男に出会しては咄嗟に相手を自分の背後にやり。
『勿じゃねぇか。なんだ霧ヶ暮に構って貰えず女遊びか?…ん?その頭巾の男は誰だ』
「…仕事仲間だ。…先を急いでる。通してくれ」
『なんだよ。今日はやけに下手だな。……それで通せか?嫌だね。俺はお前に賞金首横取りされて鬱憤が溜まってんだ。今すぐ表に出ろ』
(乱暴な言い分に何とか言い包めようと考えるも男の背後から男の仲間が加勢してくるのが見えては小さく舌打ちし、こうなったら逃げるが勝ちだと相手の手を引き逆走しては宿屋の階段を駆け上がって空き室に入り押入れに相手を押し込んでは自分も其れに続きピシャリと戸を閉じて相手が声を上げないよう片手で軽く口を塞いで。
張り詰めた空気、男達の怒号が遠ざかるのが聞こえては小さく息を吐き相手の口元から手を離すも未だ余談は出来ないため「…暫く我慢してくれ」と。
押入れの中は大人二人が身を縮めてやっと入れる広さ。
今の状況は布団の上に相手、そして自分が覆い被さる形でしかも殆ど密着状態。
顔に至っては互いの息が触れ合うほど近く、急に羞恥が込み上げては顔を逸し。
だが逸らした所で相手の吐息が首筋にかかり逆効果で、目の前の相手は爛じゃないと何度も言い聞かせるも数週間爛に会っていないせいか欲は止まらず、相手を熱っぽく見詰めては艶めかしく唇を奪って。
>露木
( 兄と入れ替わり宿屋を出口を目指し相手と足を急がせる最中、見知らぬ男達に囲まれては人数的にも状況的にも厳しく逃げ足を取って。
狭い押入れの中、塞がれた口から声を漏らさぬ様に息を殺すも至近距離の目前に有るのは誰よりも愛しく思ってる相手と同じ顔立ち。
何とか自我を保ち乗り切ろうとするも相手の視線に気付き唇を奪われては僅かに潜持った声を漏らして。
最初こそ狭いながらも相手の肩を押すも次第に抵抗は薄れ相手の髪に指を絡めては求める様に応えて。
耳に掛かる相手の吐息にビクリと身を震わせては相手の首筋に顔を埋める。
___その刹那、僅かな物音がしてはピタリと動きを止め再び息を殺して。
『…確かこの辺りから物音が聞こえたんだがな』
『そうか??俺には何も聞こえなかったぞ』
『可能性はあるだろ、しっかり見て回れ』
( 抱き合った体制のまま相手の肩に頭を乗せ足音が遠ざかるのを待っては漸く音が消えて。
恐る恐る麩を開け人気が無い事を確信しては相手と共に屋根へと上がり路地から地に降りて。
特に意味も無く相手の手を強く握っては急いで孤児荘へと走りながら「………やっぱ、あんたの事を好きになるのは決まってた事だったんだな。例え時代が変わろうとも…」と小さく呟いて。
相手であって相手では無い、しかしこんなにも愛しく思えるのは自分でも予想出来てた事で。
>桐崎
(相手の身のこなしの軽さのおかげで早々に宿屋を抜け出すことが出来ては、走りながら強く握られる手をそっと握り返し相手の呟きを擽ったいような切ないような複雑な気持ちで聞いていて。
(相手の自室、迷惑を掛けたことを謝りながら御茶を差し出すもその際に指が触れ合っては先程手を握っていたのに敏感に反応してしまい「わ、悪い…」と目を逸らして。
押入れの中での相手のぬくもり、唇の感触、吐息までもが鮮明に脳内に浮かんでは羞恥が湧くも平静を装い「さっきは…悪かったな。あんたには露木がいるのに。……あー、おれもこのこと爛にばれたら何か言われそだな」と苦笑を漏らし御茶を啜って。
「で……、俺の言いつけは守ってるのか?“素直になれ”ってやつ。人の恋路をとやかく言いたくはないが…あんたは“他人”とは思えないから。その……露木と上手く言って欲しいんだ」
(まるで自分のことを言っているようで少し照れたように視線を横に流してはふと爛の煙管が目にとまり煙管なしで大丈夫だろうかと心配になって「彼奴…苛つくとすぐに吸うからな…」と眉を下げて呟いて。
一人沈んでしまうもハッとなっては相手に向き直り疲れただろうから寝るように促して「帰る方法はきっとあるはずだ」と励まして髪を撫で。
丁度その時、襖が開かれては変装を解いた兄が飛び込んできていつもごとく抱き付かれ。
『菊酷いよ。なんで宴会に戻ってきてくれなかったのさ。言い訳するの大変だったんだからね』
「あ…、忘れてた。……悪い、少し問題があってな。成り行きだ」
『酷いなぁ、もう。…じゃ、罰として接吻ね』
「…出来るわけないだろ。…此奴の前でそういうお巫山戯はやめろ」
『いやでも爛がいないこの時だからこそさ』
(ニコニコと訳の分からないことを述べる兄に眉を寄せつつ絡みついてくる腕を解くも、相当呑まされたのかいつもよりしつこく絡まれ始めは抵抗するものの、脇の下や腰を擽られるうち笑いが我慢出来なくなり相手の前だというのに兄とじゃれあう形になって。
やっと擽りから解放されたと思った時には兄は標的を相手に変え『久しぶりにお兄さんが遊んであげるー』と相手にのしかかり相手の身体を擽りはじめ。
>露木
( 兄とじゃれ合う様子の相手に嫉妬心が過るも今度は標的が自分になったのか巫山戯た様に伸し掛かられてはつい何時もの無表情を崩してしまって。
漸く開放され気恥ずかしそうに目尻の笑い涙を拭っては兄の視線が自分の首筋に止まって。
まだ残る幼少期の火傷の跡や見世物時などの傷、軽くなぞられては『…父さんと仲良く出来た??』と。
此方の時代で合った事など知らずに丸で全て知ってるかの様な物言いに僅かに疑問が浮かぶも穏やかに微笑んでは「誤解も合ったけど…ちゃんと分かり合えた」と答えて。
兄は安心した様に自分の髪に触れると『父さんも…何時の時代も変わらないみたいだね』と。
一つ欠伸をしバタリと倒れ込み寝息を立てる兄を支えては取り敢えず予備の布団に寝かせて。
( 翌朝、湯浴びを済ませ身形を整えては縁側から江戸の街を眺めまだ現代で無い事に頭を抱える。
圏外の携帯に溜息を漏らし少しばかり慣れた手付きで帯を結んでは自室へと戻り。
兄は朝から仕事に向かい寝ていた布団に代わりに相手を寝かせては出て行った様で。
寝息を立てる相手の頬を軽く撫で「………素直になってれば、…露木と喧嘩しなかったんだろうな」と。
頬に軽い口付けを落とし相手の艶やかな髪に触れては石鹸の匂いが鼻腔を掠めて。
現代の相手の髪も手入れがされた美しい物だったなと思い浮かべて。
>桐崎
(朝、相手が居ることにも慣れぐっすり眠ってしまっては相手に触れられても目を覚ます事無く軽く身をよじり、寝ぼけ眼で近くにある相手の顔を見詰めては爛と勘違いして首に腕を絡め「…おはよ、爛」と首元に口付けて小さな声で“愛してる”を続け返答を望むよう見詰める。
が、だんだん意識がはっきりしてきては漸く相手が自分が望む相手でないと気付き慌てて離れて「い…今の忘れろ」と逃げるように朝の身支度をして朝餉の支度をはじめ。
(朝餉を終え片付けを済ませたところ、今日は青年も朝からいなく二人で子供達を見守るも自分も寺子屋に顔を出さなければならなかったため年長の子供に孤児荘を託し相手と共に寺子屋に足を向けようと。
が、孤児荘の門で数人の女達が相手(爛)を待ち構えており相手の姿を見るなり自分を突き飛ばす勢いで我先にと駆け寄ってきて。
『爛様、今日もお美しいのね』
『私のこと覚えてますか??宴会の席で私がお酒が弱いのを知って代わりに呑んで下さって』
『あらそんなのお仕事でしょ。私は家まで送って頂きましたわ』
(キーキーといがみ合う女たちに内心全部仕事の上だと一括してやりたかったが無碍に扱えば折角相手が我慢して女と絡み積み上げた信頼が水の泡になってしまう為なれたようにやんわり帰るよう笑顔で促しては『今度は絶対二人でお出かけしましょうね』と残念そうに帰っていく女達の背中を見送り。
一瞬酷く憎悪に満ちた嫉妬した目つきになるも相手の視線に気付いては平静を装い「いつものことだよ」と肩を竦めて歩を再開して。
(寺子屋に着くと相手を中に通すと少女が駆け寄って来て『れんおじさん来てるよ』と。
朝から何の用だろうと疑問に思いつつ特に隠すことなく相手も一緒に連れて部屋に来ては父の前に正座して「急ぎですか?」と尋ね。
『其奴が平成から来たっていう……。腑抜けた顔してやがるな』
「可愛いとお思いの癖に。………で、知ってたんですね。彼が爛でないこと」
『当然だ。今日はそのために来たからな』
(自分のからかいをスパッと無視して無表情に差し出してきたのは一枚の文で時空間の移動について知る者が記されており。
『其奴に聞けば何かつかめるかもしれねぇ。が…ただでは情報は渡さねぇとよ』
「……能力ですか」
(父の視線から“相手の能力を見世物にする”というのが条件とすぐ理解したが今の相手は相手ではないため、とても危険だと首を横に振って。
>露木
( 朝、ゆっくりと目を開き甘える様に抱き着く相手に鼓動が騒ぐが珍しいその様子に頬が緩んで。
相手の頬を軽く撫でゆっくり顔を近付けた所で正気に戻ったのかガバッと離れられてしまい。
その様子に軽く微笑んでは自分ものそのそと立ち上がり相手の後を追い掛けて。
( 朝食を終え寺子屋に向かうという相手を送りに玄関口に出た所知らない女性が此方へと来ては話の内容や意味も存在も分からないまま適当に相槌を打つ。
無表情は癖であまり感情の分からない様子で頷いては相手の救いの手により去って行く女性を見送って。
暫し相手を見詰めては何処と無くその感情に気付き、此方の時代でまで相手と思い違って堪るかと思えば相手の腕を掴み引き寄せるが反動で至近距離になり。
「あの女達、…こっちの俺の仕事での相手だろ??特に何の感情も持ち合わせて無かったの俺でも分かる。………あんただけだよ、本当に愛してるのは」
( 本来ならば此方の時代の自分が言う事なのだろうがつい口にしてしまっては何気無い様子で再び歩き出して。
( 寺子屋に付くなり此方の時代の父と対面しては相変わらず人の悪そうな顔をしてるなと。
本題を出されては戻れるかもしれないと思うのと共にそれに対する条件にリスクを感じて。
きっと自分が帰らなければ“爛”も帰れない。
暫く間を起き首を横に振る相手の手を取り父を見詰めては「やる、見世物なら…慣れてる」と。
その言葉に父が眉を寄せるのにハッとしては「…現代でも金稼ぎとかにやってたんだよ。…でも平成の露草に出会って父さんとの誤解が解けてからもうやめた」と弁解する。
『は、お前みてぇな餓鬼に出来るか。何とか手を回すから手前は大人しく「それじゃ駄目だ、待てない」』
( 父を見詰め「危険な自体になりそうになったらしっかりまともな判断をする」と言っては相手の静止の言葉も耳に入らずに。
「………それに俺が死にそうになったら父さんが助けてくれんだろ??」
( ぎこちなく、それでも悪戯っぽく笑えば父が僅かに驚いた様な表情をして。
>桐崎
(父の言葉を遮る相手の凛然とした振る舞いに子供に見えていた相手が急に大人に見えては見惚れてしまうも、父の『…相変わらずいけすかねぇ野郎だな』と見世物を容認する言葉にピクリと反応して。
「此奴はまだ十八です。危険な真似はさせられません」
『うるせぇな。本人がやるって言ってんだ。やらせておけばいいだろ』
「お義父さん!!」
『手前がそんなでどーすんだよ』
(父の言葉にハッとなっては目を伏せて少しの躊躇いの後「明日、その者の元へ俺も一緒に向かいます」と静かに告げ、少し話したあと父を見送っては相手がいる部屋に戻り隣に座って。
「…あんたはいつの時代も無茶をするな」
(困ったように笑い相手の前髪をクシャクシャと撫でては「あの人(爛の父)だけじゃない。俺もあんたを守るから」と不安を伝染させぬよう穏やかに微笑み。
その時不意に先程相手に言われたことを思い出しては恥ずかしげに目を逸して。
「あ、あんたは爛より…素直なんだな。……彼奴は中々口で“愛してる”とは言ってくれないから……嬉しかった」
(照れたように述べては相手に視線を戻し「露木も…あんたを愛してるはずだ。……俺は四六時中爛の事を考えているが…露木も同じ、だと思う」とほぼ確信に近かったが語尾を濁しては誤魔化すように立ち上がり「…良ければ子供達の勉学を手伝ってくれ」と頼みスタスタと学び舎に向かって。
(そして時が過ぎ翌日昼下がり、名目上相手の補佐役として付き添い男の拠点へと訪れては奥の薄暗い部屋に通される。
程なくしていかにも怪しげな格好をした男が訪れては相手を見るなり口元に不気味な笑みを浮かべズイッと相手に顔を近付けて。
『噂通りの美しい身形だな。…まずは品定めからだ。能力を見せてみよ』
「…情報は?」
『そう焦るな。全て終わればちゃんと渡してやる』
「……どうか、身体に負担が掛かることは避けて頂きたく」
『それは客次第だな』
(フッと嘲笑を浮かべる男に睨みたくなるのを堪え相手に「無理はするなよ」と耳打ちして自分は部屋の隅にいき男が相手を吟味する様子を注視して。
>露木
( 最初こそ反対された物の父の言葉と共にやっと納得してくれた相手に僅かに表情を緩めて。
きっとこの時代の“爛”も自分と同じ、素直になると言う簡単な事が出来ないだけなんだろうと思えば少し難しい感情になり。
相手の頼みに快く頷き寺子屋へと訪れては翌日の見世物の事を深く考えない様にして。
( そして翌日、相手と共に付き添いの男の拠点へと訪れては早速能力の解放を命じられる。
最近は能力のコントロールも操作出来る様になったし大丈夫だと自分に言い聞かせては一つ深呼吸をして。
意識を集中させ周りの空気が変わっては段々と瞳と牙が変化し髪から毛質が変わって。
数分も経たない内に狼の姿へと変えては媚を売るかの如く男へと歩を進めて。
首根っこを掴まれ強制的に男との視線を合わせられては男はゆっくりと口角を上げて。
『ほぅ、これは面白い見世物になりそうだ』
( 戻れと命じられ再び人姿に戻れば久し振りに解放した所為か関節やらが痛み僅かに顔を顰める。
相手も同行する約束だった為に共に見世物の会場へと向かわされれば大人しく従って。
( 大きいとは言えないが小さくも無い会場、人は既に溢れかえっており見るからに富豪そうな着物やら扇子やらを手にしてる人達を蔑んだ様に見詰める。
やはり金持ちの退屈はこういう物に回るのかと呆れつつ舞台に無理矢理放り投げられては僅かに体制を崩して場にへたりこんで。
『さて、いきなり披露するのも尺だしなぁ。どうせなら暫く遊んでからにしようか』
「……………は??」
( 男の言葉に訳が分からず男を見詰めるも手にある鞭に状況を察しては距離を取る。
暴行を加えられるなど聞いてないと男を睨み付けるもやはり見世物にそれは御決まりらしく。
歯を食い縛り抵抗しようとするも鎖を引かれ『情報が知りたく無いのか??』と言われれば従うしかなく。
>桐崎
(どこか辛そうな相手を心配しながら見世物屋に訪れてはやはり暴行を強要され男の悪どさに奥歯を噛み締めては、相手を傷付けるわけにはいかないと男の前に立ちはだかって。
「暴力はなしだ」
『ほう、ではどうするというんだ』
(意地悪く笑みを浮かべる男を睨み付けつつ相手に知られないよう紙に交渉金となる金額を書いて渡すも一度目は首を横に振られ数度それを繰り返したあと漸く首を縦に振られて。
『いいだろう。売上金も全て此方がもつ。それでいいんだな?』
「ああ…。此奴を傷付けず情報さえ貰えれば」
(小さく頷いては相手を置いて奥の部屋に行き前金を男に渡したあと契約書に指印を押させて交渉を成立させると相手の元へ戻り。
『随分、ご主人様に大事にされてるんだな。…金の掛かる化け犬だ』
(そう言って相手を愚弄し乱暴に鎖を引く男の腕を掴んでは殺気に満ちた冷たい瞳で男を睨み付けては死角で刀の持ち手に手をかけカチャリと音を鳴らして。
『…っ、落ち着けって。冗談だろ。……たく、血の気の多いやつは此れだから…』
(ブツブツ言いながら相手の鎖から手を離し『ほら、さっさと自分の足で客の前に行け』と乱暴に吐き捨てては奥の部屋へと行ってしまい、其れを鋭く睨みつけたあとフッと穏やかな目に戻っては相手の前にしゃがみ首にきつく締められた首輪を緩めてやり。
「本当は客の前にも出したくないんだが……、」
(眉を下げ微笑んでは相手の髪を撫でて額を合わせ「無理はするな」と小さく、それでいて強く述べては相手から少し離れて。
舞台の向こうからは『早くせんか!』『待ちくたびれたぞ』と下衆な客達の苛立った声が聞こえてきて。
>露木
( 相手の救い手に何とか暴行を受けずに済みその穏やかな表情に落ち着きを取り戻しては小さく深呼吸し再び舞台へと戻る。
しかし人目が多い事もあり僅かな焦りと不安が生まれては意識を集中させるも中々解放出来ず。
瞳は獣の様な紅、長く鋭い牙というなりまがいの姿になってしまえばこんな姿人目に晒すのは嫌で漸く狼の姿に変化する事が出来て。
観客の声が響き渡るその状況にも嫌な思い出しかなく眉を寄せては約束の時間が過ぎるのを待って。
( 観客席の中の一人が手洗場へと向かう途中、舞台袖に僅かに相手の姿が見えては見世物舞台関係者に金を握らせ相手を呼び出して。
人目を引く程の容姿端麗さに見惚れ、それでいて今回の見世物の飼い主だと聞けば男が諦められる弾も無く観客席の奥で遠目に自分を見詰めては語り掛け。
『飼い主がこんな若造だとは思わんかったよ、随分良い犬を飼ってるが躾がなっとらん』
( 口角を上げ視線を相手に移しては馴れ馴れしく相手の肩に手を置き髪に指を絡める。
『犬と共にお前さんをかいたい。…否、お前さんが手に入るのならあの犬は諦めよう、ここの見世物関係者も俺の言葉一つで直ぐに動くぞ。金なら幾らでもつむし悪くない話だと思うが』
( 通り掛かった一人の見世物関係者の肩を掴みその関係者が慌てて男に頭を下げるのを相手に見せ付けてはそれと共に権力を訴えていて。
相手の返事も聞かぬ間に此処の関係者にでも聞いたのか『確か彼等から情報を欲しがってるらしいな』と呟いては続け様に『この後食事でもどうだ、犬も同伴で構わない。その情報を知ってる奴とやらも俺の命令一つで口を割ると思うが…まぁお前さんが選べ』と。
>桐崎
(相手の無事を祈りながら舞台袖にいると突如呼び出され何事かと来てみれば男から交渉を持ちかけられ始めは断ろうとするも権力を見せつけられては逆らえば面倒事になりそうだと眉を寄せ。
「情報と…彼奴には一切誰の手もかからないよう保証してくれるのか?」
『ああ勿論だとも』
「………」
(馴れ馴れしく触れてくる男を無視して舞台に目をやっては何処か辛そうにする相手に『もっと芸を見せろ!』『それだけしかできんのか』と揶揄を飛ばして石を投げようとする客が目に移っては「……今すぐ見世物をやめさせてくれ」と男の提案を承諾する言葉を低く呟いて。
__本当は爛とたとえ誰かを守るためであっても安易に身を売るような真似をしないと約束していたため心浮かばれなかったが今は仕方ないことなのだと言い聞かせては、舞台から戻ってきた相手に何食わぬ顔で振るまい「よく頑張ったな、有難う」と肩を叩いて。
(その後、相手を孤児荘に帰してやりたかったが兄もアカも仕事で折り合いが付かず相手を一人で帰す訳にもいかないため渋々食事に付き合ってもらうことしては「悪いな。仕事の付き合いなんだ」と嘘を吐いて、男と共に食事所へ向かい。
(訪れたのは食事処というより高級宿屋で通された部屋は畳に絹が織り込まれ、壁や襖は有名な絵師の絵が描かれ金粉が散らされていて。
勿論出された料理や酒は滅多にお目にかかれないものばかりで。
『好きなだけ食べるが良い』
「……情報は?」
『ああ、情報ならお前さんの仲間か?至極柄の悪い男に渡しておいたぞ』
(すぐにそれが相手の父だと分かれば安堵の息を漏らし隣に座る相手に目を向ければ「今夜には戻れるかもな」と優しく微笑み箸を取るように促して。
自分は男の機嫌をとるために男の隣にいきお酌をして極力笑顔で振る舞って。
>露木
( 従順な相手の態度に男は更に上機嫌になりスキンシップが激しくなるも自分はそれに気付かずやや詰まらなそうに酒を啜って居て。
しかし男のそれが増すのに漸く気付いては苛々が込み上げ、相手が男に従ってるのは自分の事だとも知らずに相手の腰に回される手を掴み男を睨み付ける。
『やはり躾がなっとらん。露草、お前から言ってくれないか』
( 男の言葉に意味が分からなかったが相手には弱い為大人しく手を引いては俯いて。
ベタベタと相手に触れる男に機嫌を悪くしながら時間が過ぎるのを待っては漸く解放され何故か男も共に帰り道を同行して。
孤児荘まで送られ青年と合流しては寺子屋へと戻る相手を少し寂しそうに見送って。
( 相手と二人になった男は口角を上げ肩を引き寄せては相手の耳元に唇を寄せて。
『さて、礼をしてくれるんだろう??あの化犬を痛ぶらない様にしてやったんだ』
( 寺子屋へと押し入り相手の部屋へと強引に上がっては下卑た笑みを浮かべ『代償は高く付くぞ。今日は楽しませてやるからな』と。
( その頃、兄からの文に“明日父の元へ来る様に”とだけ書かれてるのを読んでは現代へ戻る方法が見付かったのかと。
しかし今はそれより先程の男が相手に手を出して無いかと不安で仕方無く。
暫く狸寝入りをかまし隣で漸く青年が眠りに付いたのを確認しては音を立てずに立ち上がる。
父がやってた為に剣道なら出来る。
自室に稽古用にと立掛けられてた木刀を取れば強く握り、黒の手拭いで髪を隠しては部屋を抜け出して。
人目に触れない様に裏路地を通り抜けては颯爽と寺子屋へと向かって。
>桐崎
(食事処での男からの接触を何とか笑顔で乗り切るも其処で終わるはずもなく孤児荘まで着いて来られては相手に勘付かれぬよう何事もないよう振る舞い男と共に寺子屋へ向かい。
(訪れた自室、覚悟はしていたがより濃密になる男からの接触に吐き気がするも何も考えないようにして必死に耐える。
しかし此処数ヶ月ずっと爛にしか触れさせなかった肌に男の手が触れた瞬間耐え難い嫌悪感が襲い、のしかかってくる男の肩を押して待ったをかけ。
「…話を、…戯れの前に話をしないか?……あんたのことを良く知っておきたいんだ」
『話など後で構わん。代償は高く付くと言ったはずだ』
「…………」
(引かぬ様子の男に目を逸らしては身体の力を抜き始めは好きにさせるも、やはり爛の姿が頭にちらつきどうしても我慢できなくなってはやんわり男を遠ざけて。
「…お酌ならいくらでもする。護衛もするから…此れだけは辞めにしてくれないか」
『何を今更。あの化け物に手を出してもいいのか?』
「…………」
(化け物などではないと心の中で男を愚弄するも、逆らえない事実は変わりなく一度は容認したことではないかと言い聞かせては再び大人しくするよう努める。
しかし一度爛だけにと決めた心は中々大人しくしてくれず、震えや恐怖はないものの意に反して男を拒絶して顔を逸したり男の腕を払ったりして。
>露木
( 拒絶を見せる相手が気に食わず払われた腕を大袈裟に抑えて見せては相手の手首を痣が出来る程に強く握り締めて。
『逆らうな。俺は気に入らない奴は殺す達でな』
( 無理矢理に着物の襟元を掴み乱しては口角を上げ相手の耳元で『俺はあの化犬を殺す事も出来る』と呟き有無を言わさずに強引に行為を始めようとして。
( 太めの襟巻きを首に巻き口元を隠しては手拭いを目元すれすれ迄に下げ息を殺して相手の居所を探す。
木刀を握り締め廊下を歩いてた所、僅かに聞こえた声と布の擦れ合う様な音に気付いては屋根裏へと周り上から様子を伺う。
強引に相手の着物を乱し接吻を強要する男にカッと血が上るも思考は何故か冷静で。
丸で別の人格が宿ったかの様に瞳を変えては音を立てずに男の首筋に木刀を打ち付ける。
「『……………哀れな男だな、其奴は無理矢理に奪えるもんじゃねぇんだよ。俺から簡単に奪えると思うな』」
( ボソリと呟きまだ意識のある男に木刀を向けるもハッとした様に“人格”が戻っては少し身構え「………まだやるか??今度は遠慮しない」と。
所詮金持ちのボンボン、剣術等は一切出来ない為無様に逃げ出しては相手の乱れた衣服を直して。
「何もされてないだろうな」
( 無表情の中に何処と無く不安を写してはそのまま相手を抱き締め「………あんたこそ無理してんじゃねえか」と小さく呟いて。
( それから相手を慰める様に安心させる様に暫く一緒に時間を過ごしてはこの時代の自分も現代に行ってるのだろうし大丈夫だろうかと。
“露木と仲良くしてるだろうか”と言う話題になっては「………爛、だっけか。露木に手出したらぶっ飛ばす」なんて言っては互いに笑みを零して。
ふと取り出したのは自分の携帯、相手に渡した物と良く似たキーホルダーを実は自分も買っておりそれを取り外しては相手に手渡して。
「…菊の花、俺好きなんだ」と小さく呟き続けて「やるよ」と言っては空も白じんで来た為取り敢えず眠りに付こうと。
>桐崎
(男一人の相手など造作ないはずだったが自分でも驚くほど心も身体も爛に絆されていて、頭では抵抗してはいけないと分かっていても口付けられただけで身体が男を拒否し、こんな事で最後まで持つのかと目を閉じたところ耳に凛と透き通った声が響き身体が震える。
目を開ければそこには鋭く綺麗な紅の双眸があり、その憎悪に満ちた瞳にゾクゾクと背筋が震え、この瞳に惚れたのだと小さく笑みを浮かべては尻尾を丸めて男が逃げ去ったあと優しく抱き締めてくれる腕に安心したように身を委ねて。
(それから暫くすっかり相手のおかげで気持ちが落ち着けばそれぞれの恋人の愚痴等を零しつつ穏やかな時間を過ごし、ふと相手に綺麗な装飾品を渡されれば目をゆっくり瞬かせ。
一目で気に入り見惚れてしまうも眠ろうとする相手を見てはハッとなり横になる相手に近づいて「いいのか?…揃いのものならあんたが持ってたほうがいいんじゃ…」と口を開くも既に相手は寝息を立てていて。
無理もない、慣れない土地に来てずっと緊張状態にあったのだろう。
相手のあどけない寝顔はいつの時代も可愛らしく愛しい銀髪を優しく撫でては「ありがとう…繿」と小さく呟き相手の額に口付けを落として。
(翌朝、寺子屋にて恐らく相手とは最後になるだろう朝食を終え、一度孤児荘に戻って相手に始め着ていた現代の服を渡してキーホルダーの事を聞こうとするが、少年がいつ取ったのか相手の携帯を手に『ねえねえ此れ先生?』と一枚の写真を見せてきて。
どれどれと覗いて見ては其処に写る人物に小さく目を見開く。
其処には一件の花屋の前に並ぶ平成の相手と自分、そして記憶よりも少し年老いた父と母の姿があり。
両親の顔など写真も残って居なかったため見ることは二度とないと思っていただけに暫し固まってしまい『せんせー?』と言われビクリとなっては「そうだね」と咬み合わない微笑みを零しては相手を見て「そろそろ行くか」とキーホルダーのことはすっかり忘れて父の元へ向かって。
(父の家、客間に通されれば兄も居て其処には何故か若頭もおり、また何か悪さを企んでいるのではと鋭く睨み付けて。
『菊、大丈夫だよ。ちゃーーんと悪さしないように脅してあるから』
『ひ、酷いなぁ。僕は改心したんだよ。昨日露草を襲った男だって僕が奉行所に…』
『なんか言った?』
『い…いや、なんでもないけど…』
(しょぼんとする若頭の前には大きめの水晶球があり、話を聞くに来た時と同じ状況を作ればいいと。
そんな単純なことでいいのかと突っ込みたい衝動を抑えつつ相手を見ては「此れで帰れるな」と微笑み髪をポンポンと撫で。
『時間的には夜だからそれまでゆっくりしといて良いよ』
(優しく微笑む兄に頷きつつ、爛ともうすぐ会える嬉しさと相手と離れてしまう寂しさが同時に襲い微妙な表情をして。
>露木
( 翌朝、現代の服に久し振りに袖を通し何時取った物か少年から携帯を返されてはそれを受け取り相手と共に父の元へと向かって。
( 父の自宅にてこの時代の若頭と対面するもやはり顔立ちはそのままで勿論と言うべきか女装しており。
ぎゃあぎゃあと騒ぐ若頭を尻目に相手に向き直っては「……………迷惑掛けたな」と。
若頭が自分の手を取り水晶級に近付けさせ様とした所で「ありがとう」と相手にしか聞こえない程の声で呟いてはあの吸い込まれる様な感覚に流されて。
( 激しい浮遊感が漸く落ち着きゆっくり目を開いては懐かしい見慣れた顔と服装の兄と若頭が自分を覗き込んでおり自室である事を確信して。
“戻れた”と小さく口を動かしては兄がキッチンへ相手を呼びに向かい念願の現代の相手に対面するも喧嘩してた事を思い出しては気不味そうに視線を流す。
…が、ふと相手の首筋にある鬱血の痕が目に入ればズカズカと相手に駆け寄り襟首を掴んで。
鬱血の事を問い掛け様と口を開くが慌てた兄が止めに入っては自分を相手から引き剥がして。
『“爛”だよ!!!すっごい手が早くて本当繿の分身って感じ』
「どういう意味だよ」
『いや俺達も菊に手を出さない様に見張ってたんだよ??でも“どうせならこっちの俺に悪戯でも残してくか”って…』
( 子供地味た嫉妬に羞恥が沸いてはパッと手を話すもやはり素直に謝る事が出来ず眉を寄せ頭をガシガシとしては部屋へと戻りベッドにストンと腰を下ろして。
>桐崎
(父の部屋、相手の姿が消え白い光の中から現れたのはずっと待ちわびた愛しい恋人。
喧嘩していたことも忘れ、父や兄達の存在も無視し恋人に抱きついては「おかえり」と頬に口付け唐突に「丘へ行こう」と。
そして今日は自分から素直になって愛しい彼に“愛してる”と言わせるんだと相手の手を引きながら勇気を貰うように懐にしまわれるキーホルダーに手をやる。
今宵は晴れ、きっと綺麗な星が見られるだろうと微笑んで_。
(時は現代、相手がいなくなって数日、代わりに来ていた過去の相手と色々あったがずっと相手のことが気に掛かり、殆どの時間過去の相手に繿が心配だと泣きついていた。
だから相手が帰ってきたらすぐに謝ろうと思っていたのにいざ相手を目の前にした途端、急に気まずくなってしまい、鬱血の事を咎められそうになってもすぐ反応出来ずに目を逸らす。
頭を掻いてベッドに腰を下ろす相手の仕草が自分を避けているようで悲しくなるも、段々と相手が帰ってきたという実感が湧いてきては今まで不安だった気持ちが溢れて相手を押し倒す勢いで抱き締め「無事でよかった…」と涙声で呟き。
「あんたが斬られたらって考えただけで胸が痛かった。それに桐崎はモテるから…江戸の女に言い寄られてそっちに残るって言い出すんじゃないかって…」
(相手の上に乗ったまま相手の肩に額を押し当て不安を吐露するも軽く相手に対して酷いことを言ってるのは気付かずスッと鼻を啜って。
色々、相手には言うこと聞くことが沢山ある。特に“応援していた”ことについて。
が、涙が溢れてしまったせいで顔が上げられなくないという悪状況。
もし相手が自分のことなどどうでもよくなっていたら相手にとっては相当嫌な筈。
今更感極まって抱き付いてしまったことを後悔するも泣き顔なんて今は誰にも見られたくなく前髪で表情を隠すように顔を上げてはそのまま上手く相手の上からどこうとして。
>露木
( 自分を抱き締め不安だった事を包み隠さず話す相手に少しばかり驚いた様に目を向けては兄と若頭に二人にさせて欲しいと視線で訴える。
唇を噛み俯く相手の顎を軽く持ち上げ潤んだ瞳と向き直れば江戸での相手からの“素直になれ”と言う言い付けを思い出して。
濡れた睫毛に口付けを落とし涙を拭っては「………露木以外の奴に手を出す訳無いだろ」と呟いて。
ベッド上にて相手を膝に乗せたまま抱き締めては「…まぁ、色々…ごめん」と。
相手の腕を引き今度は自分が相手をベッドに押し倒しては「さっきのすっげぇ良かった。身長と体制的に上目遣いだったし目潤んでたし………綸と木ノ宮の前だからって我慢出来た俺がすげぇよ」と悪戯っぽく微笑み江戸での自分が付けたと言う鬱血の痕をなぞる。
まずはゆっくりと誤解を解いてかなきゃとは思うもののそれと共に嫉妬心が渦巻いては鬱血の痕を塗り替えるべくそこに唇を当て。
「………言っただろ、嫉妬深いんだよ俺。………なんかあんたは別の男(男子生徒)の家行ったりするし…増してや彼奴のベッドで寝てたのとかすげぇ腹立つ」
( 小さなリップ音をたて鬱血の痕をいくつも残しては何処と無く責め立てる様な口調になってしまい。
首筋に顔を埋めては自分の短髪が相手の頬や耳元に当たり擽ったそうにする相手の手首をやんわりと抑えベッドに沈め「彼奴(男子生徒)なんかより俺は露木を知ってるし…気持ちだって負けるつもり無い」と。
そこで先程相手が言った“江戸の女に言い寄られてそっちに残るって言い出すんじゃ…”との言葉を思い出してはからかう様に相手の鎖骨を甘噛みし「………露木は……………菊はさ、俺が他の女に言い寄られてホイホイ付いて行っても平気なんだ」なんて意地の悪い事を言って。
>桐崎
(相手から紡がれる素直な言葉から相手に不安を抱かせていたと知り申し訳なくなると同時に嫉妬してくれていたことが嬉しくてジワジワと感情が溢れてきては一度緩んだ涙腺から再び涙が溢れる。
情けなくて涙を拭いたいのに手首を押さえ付けられているため敵わず鎖骨に感じるチクリとした痛みに小さく身体を揺らしては意地悪い笑みを浮かべる相手を軽く睨み付け。
「平気な訳…ないだろ。……あんたを誰にも渡したくない。誰の所にも行かないように繋ぎ止めて置きたいくらいだ」
(束縛染みた言葉を恥じらいもなく強い口調で述べては少し相手が驚いて力が抜けてる隙に上体を起こし、お返しとばかりに相手の弱点の耳に触れながら反対側の首筋に甘噛して痕を残しコツンと相手の肩に額をあて。
「……俺だって不安だったんだ。…あんたが俺と磯貝のこと応援してるって聞いたから。………なんで俺達が付き合ってること彼奴に言わなかったんだよ」
(ボソボソと責めるように言うも相手の気持ちを知れた今となってはどうでもいいこと。
まだ薄っすらと濡れる瞳で相手を見詰めては「……名前、呼んでくれたな」と微笑み相手を抱き締めては首筋に顔を埋め「あのさ…。俺、一つあんたに謝らなきゃいけないことがあるんだけど…」と言いにくそうにそれでもどこか楽しげに述べチラリと相手を見て。
「……彼奴……あ、こっち来てた過去のあんたな。……あいつと一回……キスした」
(しかも結構深いやつ、とは口に出さずに相手の顔色を窺うように首を傾けて。
が、流石にキスは怒らせてしまうだろうかと冷や汗が出てきては「…あ、…でも仕方ないだろ。……似すぎというか…そっくりそのままあんただったから…つい」と言い訳を零すも逆にボロがでてしまった気がして目を逸し。
が、ふとずっと気になっていた相手の頭にまかれる手拭いに気付いては「っていうか、それどうしたんだよ」と此処ぞとばかりに責め立てて。
>露木
( 相手の口からは珍しい言葉にその束縛感さえ嬉しく思えては頬を緩めるも視界が反転し耳を責められ潜持った声を漏らしてしまい口元を腕で隠して。
互いの不安を打ち明けてしまえば心が軽くなりじゃれ合う様に相手の髪を撫でては次の言葉にピクリと反応し相手の額にコツンと自分の額を当てて。
例え“自分”だったとしても無性に腹が立ち、しかしふと思い出せば自分も人の事を言える立場でも無く。
それでも嫉妬は拭えず「へ-…、お前からキスしたんだ」なんてジトリ目で言うも手拭いの事を問われては思い出した様に頭からそれを取って。
「あっち(江戸)で…露草に貰った。なんかすげぇ質も良いし上等だし気に入ってて…」
( 無意識に照れ臭そうに言っては相手の視線に気付き「…な、なんだよお互い様…だろ??」と。
暫く離れてた為にその存在を確かめるべく相手を強く抱き締めてはふと思い出した様に携帯を取り出し電波が戻った事を確認しカメラを開く。
内カメラに設定しきょとんとする相手の後頭部に手を回し触れるだけの口付けをしては写真に収め直ぐ様男子生徒へと送信して。
返事は驚く程に早くしてやったり顔で返事を開いてはクスクスと笑みを浮かべて。
《桐崎お前許さね-からな!!!ってか露木先輩びっくりした顔してんじゃんどうせ桐崎が強引にいきなりに無理矢理にしたんだろ!!!》
《いや、思い合ってのキスだけど??》
《いやいや俺は信じないからね。遠慮無く先輩に男気アピール続けるからね》
( 勝ち誇った様な笑みを浮かべ相手を腕の中に閉じ込めたまま至近距離で見詰めては「あれ、俺の名前は呼んでくれないんだ」と。
からかう様に相手を見詰め視線を外そう物ならそれを許さずに頬に手を添えて。
>桐崎
(過去の自分になんて抜け目の無い奴だと嫉妬していると突如口付けられその写真を男子生徒に送りつけやりとりする様子に頬が赤くなるのが分かり相手はこんなにも積極的だっただろうかと前以上に男らしく感じる相手を見詰める。
すると携帯を置いた相手と至近距離で目が合い、名前呼びの事をからかうように言われては性懲りもなく胸がドキドキしてしまい視線を横に泳がすも相手はそれを許してくれずまたすぐに視線が絡み合い。
名前呼びなんて園児のカップルだってやってること。
それなのに顔が沸騰しそうな程に熱く、素直になろうとは思ったが表情までこんな正直では困ると泣きそうな顔で見詰めて。
「……、…繿…」
(たっぷりの間を開け小さな声で熱っぽく名を呼んでは羞恥を誤魔化すように相手に抱きつくと耳元で「…愛してる」と続け。
心臓がバクバクとし名前を呼ぶだけでこんなにも体力を浪費している自分が恥ずかしく暫く相手の首元に顔を埋め落ち着いたところで少しだけ身を離して。
「…素直じゃなくて良い……、あんたが素直だと俺の心臓が持たない」
(顔を俯かせたままブツブツ呟くも、元々負けず嫌いの性格。
このままでは終われないと顔を上げては相手の耳朶にカプリと噛み付き態と音を立てて舐めあげては小さく反応する相手を見て「こっちは素直になってくれていいけど」と相手の内股を撫で上げながら悪戯に微笑んで。
それから少し真面目な表情をして相手に顔を近付けて「…何があっても繿から離れないから」と囁き触れるだけの口付けを落とし、更に深いものへと変えようと顔の向きを変える。
が、触れることはなく態と熱を残すように相手から離れるとベッドから降りて「…腹、減ってるだろ?何か作るよ」と台所に向かい調理を始めようと。
>露木
( 耳への感覚に小さく声を漏らしては口付けを期待する様に相手の頭に手を回そうとするも唇が触れる事は無くスルリと摺り抜ける相手をきょとんと見詰めてはからかわれたのだと察しわなわなとして。
残された熱に頭をガシガシと乱しては此方から強請るのも悔しく調理を始める相手を後ろから抱き締めては言葉に出来ないまま少し不貞腐れた様にして。
邪魔をしながら相手の耳元に唇を当てた所で自分の携帯の着信音が鳴るのに気付き渋々そちらへと向かえば「………はい」と。
電話の相手はどうやら以前のバイトのオーナーの様でまた暫くバイトをしに来ないかと言う事で。
「………いきなりっすね」
『…ほら、色んな騒動合ったからさ。あれからガラッとスタッフ変えたんだけどやっぱ男性客多くなっちゃってこれじゃマズイだろ??』
「でもそっち系の人多いんすよね」
『ホストって言ってるだけに女性客居ないとさ、他の店から色々悪口言われたりするし』
「……………でも俺一応恋人居るんで」
『アフターとかは無しで良いからさ、何とかならないかな-…給料もそれなりに出すよ』
( オーナーの押しに負け明日から手伝いに行く事を約束しては相手の元に戻り先程の電話の内容を説明して。
元々愛想も無い性格だし面倒なバイトを増やしてしまったと溜息を付いてはベッドに腰を下ろす。
最初は金の為だと思ってたが特別な存在が出来れば面倒な仕事でしかない、休みの日には相手と過ごそうと言い聞かせては携帯を見詰めていて。
>桐崎
(調理中、後ろから抱き締められては甘えてきてるようで可愛いなと思いつつそろそろ悪戯をやめて相手の方を向こうとするも相手の電話がなり。
どうやら仕事の電話、不満ながら気にしない素振りで大人しく待っては電話を終え相手から内容を聞くと少し微妙な顔をしてベッドに腰を下ろす相手を目で追い。
その後すぐにできた料理を机に並べては相手の隣に座り「バイトの話…してくれてありがと」と視線を床に落としながら述べ。
「…本当は嫌だけど…それはあんたも同じだろうし…我慢する。…そのかわりアフター入った時は教えてくれ。……多分、あんたと女…いや男もだけど…兎に角誰かがあんたにくっついてるの見るとまた勘違いするから」
(正直アフターなど入れて欲しくないが事情は色々あるだろうし、自分の場合相手の動向を知っていたほうが安心できると思って。
「なんか俺ストーカーみたいだな」
(空気が気不味くならないよう小さく笑って冗談を言うと相手の顔を覗き込み「変な奴に引っかかるなよ」と忠告し相手の前髪をワシャワシャと掻き乱して。
(翌朝、相手のベッドの中。自分の携帯の着信音で目が覚めてはベッドに入って寝転がった状態のまま電話に出ると相手はあの男子生徒で。
『おはよっす。先輩起きてましたか?昨日桐崎に変なことされませんでした?』
「……んー…寝てた。……ていうか朝から大きな声出すな」
(隣で横になる相手にも聞こえるのではないかというほどの大声。
朝からこれはきついとまだ覚醒しきっていない頭で欠伸をして「それで、何?」と。
『遊ぶ約束、忘れてないっすよね?』
「………したっけか?」
『したっすよ。今日いっしょに出掛けるって』
「……………」
(やばい全く記憶にないと頭を撚るも煩く喋りかけてくる男子生徒のせいで思考が回らず、相手の横でダラダラと会話を続けていて。
>露木
( 翌朝、隣から聞こえる話し声にまだ眠い目を擦りながら起き上がっては携帯片手に話をしている相手に悪戯する様に抱き着いて。
ふと響いた電話相手である男子生徒の声にイライラとしては態とらしく「おい、身体は大丈夫か??昨日あんなに激しくしたからな」なんて嘘を連ね相手の口を軽く塞いで。
『はぁ!!??桐崎マジぶっ殺すぞ!!!露木先輩大丈夫っすよ、俺信じてませんから!!!今日時計台の所で待ってますね!!!』
( 一方的に電話を切った男子生徒への嫉妬心も解けないまま相手の鼻を軽く摘んでは「……………行かせたくねぇけど…俺これからバイトだしな」と。
乗り気じゃないままに身支度を整えては途中まで相手と共に向かい時計台と店へと分かれ道で別れて。
( 店に着くなりオーナーに挨拶を済ませては着替えを済ませ自分が止めた後に入ったスタッフと共に客引きに向う。
しかし見知らぬ人に声を掛けられる様な性格でも無く大人しくしてた所適当に声を掛けてくれた女性グループに店のクーポンを渡して。
「サービスとかするってよ、良かったら来ないか」
『えぇ-どうしよう。こんな昼間からお酒-??』
「なら紅茶出そうか??俺別のバイトで洋風の居酒屋やってるから簡単なのなら作れるし。そこ昼間は喫茶店みたいな感じだからコーヒーか紅茶なら作れる」
『へぇ、じゃあ行こうかな-』
( 無表情のまま店へと案内をし、どの様に酒やサイドメニューを進めようかと考えては一緒に来たスタッフと共に店へと戻って。
>桐崎
(分かれ道、相手の背中が見えなくなるまで見詰めては出来れば相手と一緒にいたかったとため息を吐き時計台に向かうと既に来ていた男子学生にブンブンと手を振られ。
何をするかと思えば特別なことはなく服屋などを見て回るだけ。
途中相手に似合いそうなシャツを見つけてはそちらに向かい、相手と少ししか背丈が変わらない男子生徒の肩に服をあてがってサイズを確かめさせて貰うと迷わず購入して。
『先輩、それ桐崎にっすか?』
「…ああ。バイトで使って貰おうかと思って」
『バイトってホストっすよね?だったらもっと良いシャツにしないと低く見られますよ?』
「…良いんだよ。あんまり高く見られると変な客も多くなるし。って、何で彼奴のバイトのこと知ってるんだよ」
『あ、え、嫌。違うっすよ。…たまたまそこのホストの経営者と知り合いでちょっと前から桐崎誘うみたいな話聞いてたから……、ストーカーとかそんなんでは…』
「………」
『…あ、で。そのシャツ。ほんとやめた方が良いっす。低く見られればそれだけ収入に影響してきますし』
「……じゃあいいよ。あんたにやる」
(どこか投げやりにシャツの入った袋を男子生徒に押し付けてはへそを曲げた子供のように別の店へと足を向ける。
男子生徒の言葉が気遣いなのか嫉妬なのかは不明だが今は水をさされた気分で、ただ所有の証を形として示したかっただけなのにと気落ちしつつその後も相手のことばかり考えて。
(一方相手のバイト先、相手がキャッチした女達を上手く誘導してサイドメニュー等を注文させるころ、店に二人の女性が来店し迷わず相手を指名しては奥の席に座って。
内一人の女、その人物はあのホステス希久で相手がくるなり綺麗な口元に微笑みを浮かべ『座って座って』と手招きしてもう一人の女との間に相手を座らせて。
『久しぶり。この前はありがとう。優希君だっけ?あの子があの後しっかりストーカーを追い払ってくれて。…繿にも本当に助けられたわ』
(ふわりと微笑んでは、今ここの近くのホステスに移動になったことを告げて此処の経営者に相手がいると聞いて此処に来たと続け。
『でね。その…またお願いがあるんだけど。……実はこの子新人でこーいう仕事初めてなのよ。でもすっごく気が小さくていい子だから男慣れしてなくて髪に触られるだけでも緊張しちゃって…。正直仕事にならないから慣れるまでの間、繿の客として話し相手になって欲しいの。他の男だと信用出来なくて…。勿論お礼はするわ』
(頭を下げるホステスの隣で新人が慌てて頭を下げるも至極おどおどした様子で『す、すみません…。私みたいな人間がこんな仕事場違いなのわかってるんです。で、でも…』と涙ぐみハラハラ泣き始め。
その新人、身長149㎝と小柄のため子供のようで、それを宥めるホステスが“放おっておけなくて”と相手の方を見て肩を竦め申し訳無さそうにし。
>露木
( 指名と共にそちらの席に向かっては懐かしい顔に僅かに表情を緩め頼まれた内容に少し困り顔をするもその小さく震える姿が何処と無く子供と重なり放って置けず二つ返事で了承して。
「あ、…代金なら良いよ。あんたが有名になったら店行くから良い酒一本奢って」と小さな頭にポンポンと手を乗せてはおどおどと初々しいその態度に小さく笑みを零して。
店が近くなるなら顔を合わせる機会も増えるなと話してた所では携帯のSNSが鳴っては一度席を外し一体誰からだろうと確認する。
どうやら相手はあの男子生徒、昨日の事がどれほど悔しかったのか《シャツ、露木先輩が俺に似合うの選んでくれた》と報告して来て。
《へ-、あっそ》
《桐崎こそ今頃色んな女の相手してんでしょ??露木先輩放って置いてさ》
《バイトの事はちゃんと話してる》
《俺だったら絶対嫌だな-。恋人がホストなんかやって色んな奴に愛想振り撒いてるなんて》
( 男子生徒からのメッセージにピクリと反応しては唇を小さく噛むもこれでは売り言葉に買い言葉だと携帯をポケットにしまい席に戻る。
わなわなと震える新人が携帯片手に『あの…どうせなら………』と言掛けるのに察し自分の携帯を渡し「良いよ、後でメールする」と。
( その頃、男子生徒は僅かに拗ねた相手の手を取り『…そんな怒らないで欲しいっす。…あ!!!確か近くに美味しいケーキ屋あるんで奢りますよ』と笑顔で言っては高そうなスイーツ店に入りチーズケーキとタルトを頼んで。
『ここのパティシェ外国で修行積んで来たんですっごい美味いって評判だったんすよ、先輩と来たくて』
( にっこりと人懐っこい笑みを浮かべタルトを一口分取っては相手の口にやり『こっちも結構美味いでしょ』と言って。
支払いを済ませ再び街に出ては『………桐崎に変な事されたりしたら何時でも頼って下さい』と顔を俯かせたまま言って。
>桐崎
(男子生徒にケーキをご馳走になるも、やはり相手と一緒の食事が一番美味しくて沈んだ気持ちのまま街に出ては男子生徒のどこか真剣な言葉に足を止めて。
「……あのさ。もうこうやって会うの止めにしたい。……さっきみたくケーキ食べさせるみたいなことされたら正直、困る。……俺、磯貝を好きになることはないから」
『そ、そんなの分かんないっすよ。俺先輩の望むこと何でもしますから』
「………じゃあ、距離置いてくれないか。あんたは良い奴だよ。でも俺なんかに構ってないで他の奴探したほうが絶対に良い。…俺みたいな我が儘は繿にしか扱えないから」
『……なんすか、それ。……俺、二千万肩代わりして上げたのに…』
「……、…」
『あ、え、いや!今の無しっす。ないない!!あれは俺が勝手にしたことで先輩は何も気負いすることなんてないっすから。あー俺なに言ってんっすかね。』
「…いや、ありがとう。…そうだな。距離を置くってのは勝手すぎた」
(慌てて訂正する男子生徒に優しいんだなと思いつつ「…家庭教師としてなら会うから」と困り顔で微笑んでは「今日はありがとな。…俺この後用事があるから」と適当に嘘を述べて逃げるようにその場を後にして。
(夜、相手のバイトが終わる時間まで近くのカフェでぼんやりしては時間になると店のスタッフ専用出入口布巾の邪魔にならないところに立って相手を待つ。
手には小さめの紙袋。その中には男子生徒にシャツを押し付けたあと結局相手に何か所有の証を持っていて欲しくて購入した物が入っていて。
受け取ってくれるだろうかとそわそわしながら、扉が開くたび相手かと期待して別のホストが出てくるたび「…どうも」と小さく頭を下げ落胆気味に小さく息を吐いていて。
>露木
( バイトが終わる時間まで新人と客を行ったり来たりして漸く上がりの時間、疲れた様に欠伸をしては早速先程の新人に《結構頑張ったな》と短いメールを送りさっさと裏口から出て。
扉を開けた所で壁に寄り掛かる相手とばったり出会しては少し驚いた様な表情をし携帯をポケットに仕舞う。
「来てたのか、…もしかして待っててくれた??」
( 僅かに首を傾けるも此処の店は以前の騒動の噂が流れてから“そっち系”のスタッフが増える一方。
まさか変な奴に言い寄られて無いだろうなと考えてはやや焦りが生じ相手の腕を掴んではさっさと店を後にする。
バックルームでスタッフが騒いでた“裏口にすっごいイケメン居るんだけど誰か待ってんのかな”“俺声掛けちゃおうかな”なんて言ってたのは相手の事だったのかと。
「声掛けられたりしてねぇだろうな、………あそこの店…そういう奴多いから」
( ボソボソと話しつつ寮へと付いてはベッドへドサリと身体を預ける。
明日は休みだが特別にする事も無く、相手に予定を聞こうとした所でSNSの通知音がなり携帯を取る。
相手は新人ホステスの様でアイコンはどうやらホステス(希久)と一緒に撮った写真。
傍から見れば小柄で可愛いと思うのにあの緊張症は本人も大変だなと思いつつメッセージを開く。
《今日はありがとうございました、お仕事に支障が出ない様に頑張ります!!!》
( 意気込みは立派だと僅かに表情を緩めふと相手が持ってた小さな紙袋に目が行けば相手を見詰めて。
「買い物、言ったんだろ??………まさか磯貝と揃いの買ったとかじゃないよな」
( ムッとした様な表情をしつつ相手がそんな事をする様な性格では無いのは自分が一番分かっていて。
そう言えばとポケットを漁るも渡す勇気は無く、今日休憩時間に抜け出して買ったペアリングを切り出せずに居ては少しそわそわとしていて。
>桐崎
(相手の焦りなど露知らず寮へ訪れては買った物をいつ渡そうかタイミングを窺っているとどこか楽しげに携帯を見る相手がいて、通知音から誰かとSNSをしてることは分かり“なんでそんな笑顔なんだ”と嫉妬しては、心のなかでブンブンと首を横に振りこんなことを気にしていては駄目だと言い聞かせ。
不意に紙袋について振られてはピクリと肩を揺らし相手の言葉に不機嫌そうに眉を寄せ「そんな訳ないだろ」と。
そして何処か気恥ずかしげに紙袋を手に取りおずおずと中から長方形の箱を取り出すと相手の後ろに周ってから箱を開けて何も飾りがない細めでシンプルなシルバーネックレスを手にとっては相手の首につけて。
ネックレスなんて束縛染みた物、相手は嫌がるだろうかなんて思いながらそのまま相手を後ろから抱き締めては首筋に顔を埋め「…その…安物なんだけさ…、あんたに似合うと思って…」とボソボソ話して“素直になれ”と心の中で自分に喝を入れ相手を抱き締める腕に力を込め「……出来ればバイト先につけてって欲しい。あんたが俺のだって分かるように。…変な虫がよりつくといけないから」と語尾が羞恥で小さくなりながらもしっかりと述べ。
それでもネックレスを選ぶ時、ペンダントタイプにするか否かで一時間近く迷ったことは伏せておき。
その後、想いを告げたことで少し気が抜けたのかズシリと相手に体重を掛けて後ろから顔を覗きこむようにして「で、今日はどうだったんだ?……まあどうせあんたのことだからモテモテだったんだろうけど」とあからさまに拗ねた態度をとってみて。
>露木
( 思いがけないプレゼントに段々と耳が赤くなっては俯き至極小さな声で「……………あ、ありがとな」と礼を言い自分も渡さなければと。
相手がプレゼントに束縛を気にしてるとも知らずに“流石にペアリングは束縛感激し過ぎるか”と眉を寄せるも折角買った物だしと。
僅かに拗ねた様にも伺える相手が可愛らしく態と相手に寄り掛かる様な体制を取っては特に隠す事でも無いかと今日合った事を話して。
敢えて誤解を招かない様にと先程のSNSの相手と内容まで話しては相手にグイッと顔を近付け。
「………って言うか俺の方が結構嫉妬してんだからな」
( 相手の鼻を軽く摘み上記を言っては再び甘い雰囲気になりこの場を逃さない様にとポケットからリングの入った小さな箱を取り出し相手に押し付ける様に渡す。
シンプルなデザインのシルバーリング、内心恥ずかしさから顔を背けたくなり俯き加減に口を開く。
「………ペアリング、たまたま…売ってたから」
( 小さく言い訳を言ってはやはり束縛感があからさま過ぎただろうかと。
何か言おうと口を開いた所で携帯の着信音が鳴っては誰からかも確認しないまま応答する。
一度席を外しキッチンで「…はい??」と言えばどうやら着信者はあの男子生徒で。
『今…平気??』
「あ??…まぁ別に」
『今日さ、露木先輩にガッツリフラれた。…で、俺最低な事言っちゃって』
「………」
『でもやっぱ先輩の事好きで好きでしょうがないし………言われた通り距離置くしかないかなって』
「何でそれ俺に言うの」
『明後日からから桐崎と同じバイトすっから』
「は!!??」
『よろしく、桐崎“先輩”』
「いやいやいや、何でだよ」
『男らしさ磨こうって、先輩振り向かせる』
( 何とも大雑把で思い切った決断に呆れるも自分に止める資格は無く「…まぁ、頑張れば」と言っては電話を切りペアリングを見詰めていて。
>桐崎
(耳を赤くする相手に喜んてくれてるのかな?と思えば買ってよかったと安堵し、仕事場での新人との事を話されては軽く嫉妬しつつもやっぱり相手は優しいなと少し誇りに思い。
鼻を摘まれ言われたことは鈍感な自分でも何のことかすぐ分かり不謹慎にも嫉妬してくれてることを喜びつつ「大丈夫、俺は繿だけだから。」と恥ずかしげもなく微笑み。
そんな時、相手からぶっきらぼうながらも思わぬプレゼントを貰っては分かりやすく目を輝かせ抑えようのない歓喜から頬を緩ませ「ありがとう、すごく嬉しい」と大切そうに指輪を見詰め。
きっと“たまたま”なんて嘘なんだろうななんて惚気たことを思いつつ、次の相手の言葉を待つも電話で場を離れる相手に不服げに息を吐く。
それでも未だ興奮は冷めやらず自分好みのデザインの指輪を左手の薬指にはめて翳してみたりしていて。
電話の内容は勿論知らず相手の電話が終わるのを見計らっては後ろから近付き再び密着するよう後ろから抱き締め、はめたばかりの指輪を嬉しそうに見せつけて「やっぱり繿は俺の好みわかってるな」と微笑み「…あんたはつけないの?」と相手が手に持つリングを手に取り、なんか自分が買ったネックレスに通しても違和感なさそうと思いつつ、意味深に相手の左手を取っては薬指にはめてみたりして。
しかし流石に調子に乗りすぎたかと思えばとりあえず自分の指輪を右手の薬指に付け替えて相手を見詰め「また揃いのものが増えたな」とスルリと髪を耳にかけ以前相手から貰ったピアスを見せて微笑み。
それから相手のベッドに行きバタンとうつ伏せに倒れては幸せを噛みしめるように布団を握りそれを隠すこと無く「なんか幸せすぎて今日寝れるかな」といつになく素直に言葉を述べるも言った傍から眠たげに欠伸を零しウトウトしはじめて。
(その深夜、相手のSNSにあの新人が《遅くにごめんなさい。もしかして通知オンになってて起こしたら申し訳ないと思ったんですけど…自分の性格の事とか考えたらどうしも今気持ちが落ち着かなくて。あの…良ければ明日は色々相談したいので遅くまで付き合って頂けませんか?》と切実なメッセージを送り、その数十分後に送るか送らまいか相当悩んだのか《…あ、あと…男の人に慣れるために軽いスキンシップもお願いしたいです///》と焦って間違えたのかギャグ要素満載の土下座スタンプ付でメッセージが続いて。
>露木
( 少し不安気に渡したプレゼントも思いの他嬉しそうに受け取ってくれ、そのはにかんだ笑顔に照れ臭くなれば隣で寝息を立てる相手の額に口付けて。
無防備に眠る相手を隣に寝られる筈も無くそわそわとしながら同じベッドの上で相手に背を向け眠りに付こうとするもやはり意識してしまって。
不意に鳴り響いたSNSの通知音に携帯を取っては新人からのメッセージに気付き頭を悩ませる。
どうせなら相手と過ごしたかったのだが新人も新人なりに仕事の為に頑張ろうとしている、ならば断るのも引け目を感じ《良いよ、何時にする??》と短いメッセージを送って。
《じゃあ…1時くらいから会えますか??待ち合わせは時計台がベタですよね》
《了解、じゃあ1時に時計台行く》
《ありがとうございます、遅くにごめんなさい。お休みなさい》
《おやすみ》
( 簡単なやり取りが終わり特に疚しい事をするつもりでも無いしと簡単に考えては翌日相手に説明して行こうと。
( そして翌朝、相手の手料理に舌づつみしては思い出した様に昨夜のSNSの内容を話し出掛けると告げる。
次の休みこそ一緒に居たいと小さな声で言っては相手の額を軽く弾き「まぁ只の仕事付き合いだから」と。
約束の時間が近付き身支度を済ませ相手とのペアリングをネックレスに通し首に付けては合鍵を手渡して。
「…無くすなよ。それ部屋の合鍵、何時でも来て良いから」と告げるも羞恥が湧いては素っ気無く視線を流しドアに手を掛ける。
…が、相手に振り返り小さなリップ音を立てて口付けをしては「…じゃあ行って来るから」と告げ時計台へと向かって。
>桐崎
(翌朝、相手から新人と会う事を告げられ酷く不安になるも、ペアリングを身につける様子と合鍵を渡されたことで一瞬不安が吹き飛び、相手が去った扉を見詰めては口付けされた口元に手をやり全くずるいやつだなと小さく笑みを零す。
それでも一人になるとやっぱり不安でそわそわしつつ貰ったばかりの合鍵を大事に鞄にしまっては不安を紛らわすように次の休み相手と過ごす事を考えバイトに向かって。
(時計台、相手よりも早く来ていた新人は相手が来るとペコペコと頭を下げおすすめのカフェがあるからとそこへ向かうと隣り合って座れるカップル席に座り身を小さくして緊張していて。
『あ、あのせっかくのお休みなのに御免なさい。…桐崎さん、恋人いるんですよね?…あ、もしかしてその首にしてる指輪、ペアリングですか?素敵ですね。桐崎さんの恋人どんな人なんだろう』
(緊張からか何か話さねばとペラペラと空回り気味に話し水を飲むペースも早く、焦りからコップを落としてしまっては店員が破片を片付け終えた所で酷く落ち込んだ様子でため息を吐いて。
『私ってこの仕事向いてませんよね。チビでグズでドジだし。…でもどうしてもお金が必要で…先輩だった希久さんに相談したら面倒見てくれて』
(ポツリポツリと事情を話し始めては8人兄弟の長女で下の弟妹達の生活費が不足していることを打ち明けて、そこで少し気持ちが落ち着いたのか細い足をプラプラさせながら『此処のココア美味しいんですよね』と子供のように笑っていて。
そんな二人がカフェから出てきた所、偶然あの男子生徒が居合わせてはどこか怒った様子で相手に近付き。
『おい、桐崎。誰だよ、その子。もしかして浮気?………明日からバイト一緒になるのになんか不安だわ。………俺、桐崎“先輩”のことちゃーんと見てますから』
(ジッと相手を睨むように意味深に述べてはその場を去っていき、状況を把握出来ていない新人はオドオドとして『あ、あの私のせいですか?大丈夫ですか?』としきりに心配していて。
>露木
( 新人がこうまで懸命に仕事に慣れようとする理由を知っては協力したい気持ちも高まり、自分も孤児院への寄付をしてるんだと互いに打ち明けては他愛も無い話をし緊張を解して。
その仕草一つ一つ傍から見れば初々しく可愛らしい物で男心を掴むのは上手いしその仕事も向いてるんじゃないかと思うが口には出さず。
まぁ自分は相手が一番だし相手の仕草一つ一つが全てツボだがと心の中で惚気けたりして。
カフェを出た時、偶然あの男子生徒と出会しては新人の事を咎められ此方が否定する前に不機嫌な様子で去って行ってしまうのを見送り。
慌てる新人に「あ-、あんたの所為じゃねぇから。心配すんな」と言ってはカフェを後にして。
街を歩きながら、そう言えばスキンシップがどうのこうのと言ってたなと思い出せば意味も無く手を取って。
『…へ??』
「スキンシップがどうのこうのって。次の店まで手でも繋いでみる??」
『あ…はい!!!』
( 新人を友人としか見てない所為か疚しい気持ちは一切無くあくまで慣れる為の手助けと考えながら何処に行こうかと話をする。
しかしこの見事な身長差、人目を集めるのは勿論の事でしかし特に気にした様子も無く。
適当な服屋に入っては新人が楽しそうに服を見て回るのを見詰め、『これ可愛いと思いません??』なんて笑顔で言うのに頷いて。
相手の女体化がふと頭を過ぎり男姿でも女姿でも相手を愛しく思ってるのは同じで、女体化の相手なら此処にある服どれでも着こなせそうだなと。
( その頃、男子生徒は下手糞な変装で自分を付け回してはギリギリと分かりやすく歯を食い縛る。
携帯を取り出し相手に連絡を入れようとするも相手の言葉が脳裏を過ぎってはブンブンと首を振り『………駄目だ駄目だ、もうちょっと男らしさ磨いたらまた会いに行くって決めただろ』とブツブツ呟いて。
レディースショップの為女体化の相手に似合う服を選んでる自分をてっきり新人に似合う服を探してると勘違いした男子生徒は思い切り此方を睨み付けながら『は-もう有り得ねぇ。やっぱ桐崎の噂マジなのかな-』なんて独り言を零していて。
>桐崎
(夜、バイトを終えては結局ほとんど相手のことを考えていたなとぼんやり空を仰いではまだあの新人といるのだろうかとメールしようとするも仕事の付き合いと言っていたし気を遣わせては邪魔になるかと携帯をしまい洗濯物が溜まっていた為アパートへと足を向ける。
その途中、突如強い雨が降り出しては予報を聞いていたため持っていた折りたたみ傘をさして歩みを再会する。
すると閉店した本屋の軒下で怪しい格好をした男、男子生徒がずぶ濡れの服でオドオドしているのが見えてはうわ…と思うも放おっておけなく自分のお節介さに若干嫌気がさしつつそちらに近付き。
「…何、傘持ってないの?」
『え、あ!先輩!?あ、どうしよ。俺、まだ会ったら駄目なのに』
「…まだ?……よくわからないけど…そのままだと風邪引くから」
(自分から距離を置きたいと言ったがずぶ濡れの知り合いを雨の中放置できる性格でもなく、気まずいながら「アパートすぐ其処だから」と男子生徒を家に上げると自分が持っている中でも大きめの服を渡し風呂を貸すと、上げってきたところで御茶を差し出し。
「ていうか、何であんな所いたんだ?あんたなら迎えとか呼べそうなのに」
『え、ああ…、俺そーいうのあんま好きじゃないんっすよ。金持ちだからって人をこき使うみたいなの』
「……へぇ。……で、その格好は?…不審者にしか見えないけど」
『あ、いや、これは何でもないっす。…ははは。…………ところで先輩』
(から笑いをする男子生徒が突如真剣な顔をしたため、変に身構え暫し沈黙の時間が流れるも『……やっぱり何でもないっす』と言われてしまえば何なんだを眉を顰めつつ、洗濯物が乾くまでの間暇なため適当に作りおきの食事を用意すると自分は隣の部屋に行き携帯を取り出し相手のアドレスを開いて。
《もう寮?さっき雨降ってきたけど大丈夫だったか?………今、磯貝がアパート来てるんだけど何でもないからな。雨に濡れてるの見たら放おっておけなくてさ…。……明日の夜はそっち行っていいか?》
(相手の顔がみたいななんて思いながら、変な勘違いが起きないよう軽い気持ちで男子生徒のことを報告して。
>露木
( 遅くまで新人に付き合ってたのだが降り始めた雨が本降りになってくるのに傘を2本購入してはどうせなら夕食も付き合おうと。
適当なレストランにて食事をしてる所、相手からの連絡に一度席を外しては応答して。
男子生徒が相手のアパートに居ると聞かされては面白く無さそうにするも自分のある状況を考えては一方的に嫉妬するのも良くないかと。
全く相手の御人好しには参ると考える反面、そこも好きなんだけどなと惚気けたりして。
《…分かった。明日迎えに行くから》と答え《…今日、…本当に何も無かったからな》と言えば“俺は露木だけだから”と続けようとするも流石にそれは恥ずかしさから言えずに。
新人を家付近まで送り届け「結構頑張れたじゃん。今度は俺があんたの事指名しに行くから」と。
先日長い時間指名してくれたし、いくらホステス(希久)の奢りだと言えども新人の性格上全然出して無いなど有り得ないと。
にっこりと頷いた新人に軽く手を振り自分も寮へと歩き出しては“妹が居ればあんな感じだろうか”なんて考えていて。
( そして翌日、バイト先にて男子生徒と出会しては意気込みは立派で先輩達にも好印象で。
『磯貝、お前金持ちのボンボンだからって甘やかしたりしねぇからな-』
『ちょ…酷いっすよ!!!俺結構仕事に対しての責任感とか強いんすからね』
『はいはい、期待してやっからよ。兎に角分かんない事有ったら桐崎に聞いて。研修中は桐崎にくっついとけば何とかなるから』
「…は??………何で俺が」
『長いだろこの仕事、じゃあ頼んだ』
『よろしく、桐崎“先輩”』
( ニッと態とらしく笑顔を向ける男子生徒の視線は何処と無く何時もよりも冷たく感じて。
その原因が昨日の事とは知らずに「…酒とかは作れる??」と問い掛ける。
『多分…多分作れる』
「心配だな、次指名来たら教える」
『わ、俺達未成年なのにバレたらマズイんじゃね』
「俺はもうバレてるし。知らないのは客だけ」
( しらっと言っては早速の客の元へと向かう。
…客と言ってもホステス(希久)と新人で慣れ親しんだ様子で席に付いては此方を睨み付ける男子生徒にも気付かず酒の割り方等を作り方を教えて。
>桐崎
(すぐに帰ってきた相手の返信に安心しては早く明日にならないかなと子供染みたことを考えつつ男子生徒の元に戻り乾燥機で乾かした服を渡しては傘を貸して家まで送るというも『いいっすよ。俺男っすから』と軽く断られ。
それもそうかと思いつつ途中まで送ってアパートに戻るとベッドに横になり相手から貰ったストラップとペアリングを交互に見詰めては口元を緩ませていて。
(翌日、男子生徒は持ち前の飲み込みの早さと相手の教え方のうまさもありすぐに仕事を身につけては希久の話にも上手く合わせ、男が苦手な新人ともすぐ打ち解けてさり気なく相手との関係を探ろうとしていて。
『え、じゃあ新人ちゃんは男慣れするまでずっと桐崎と居るんだ?』
『ずっとって訳ではないですが…。あ、でも今度お店に来て指名してくれるって』
『へぇ、そうなんだ。…女の子のためにそこまでしちゃうなんて流石桐崎先輩』
(新人にニッコリ笑顔を向けつつ次の瞬間相手に冷たい視線を送るもすぐに笑顔に戻り会話を盛り上げようとして。
そんな男子生徒の明るさもあってか新人もいつもより呑んでしまいほろよい気味で、へにゃりと相手に凭れ掛かってしまっては『ご、御免なさい』と必死で座ろうとするもカクンコクンと左右に前にと船をこいでしまっていて。
(その頃、自分は早めにバイトを終えて一度アパートに戻ろうとするもどうせ戻っても相手が迎えに来る時間まで待っていられそうにないため、適当に時間を潰しては相手のバイトまで行って相手が出てくるのを待ち。
ここまで付き纏うと疎ましがられるかと懸念もあったが、本当は相手が他の誰か…特に女客に絡まれてないか不安で見張りもかねており。
なんだか前よりも相手に依存して自分が煙たい性格になってると自覚しつつ相手が出てくるのを待って。
>露木
( 先程から何処と無く棘の有る男子生徒の言葉や視線に一体何なんだと気付けないまま時間を送る。
バイトの退勤時間まで後1時間程度、しかし新人の様子を見る限り少し飲ませ過ぎたかと。
こんな様子なら何処ぞの男に襲われても文句言えないと心配になっては新人を支える。
そして漸く上がりの時間、千鳥足の新人の肩を支えつつ「…大丈夫かよ、送って行くか??」と問い掛けるも
男子生徒が鋭い目付きで『桐崎“先輩”は大人しく帰るべきっすよ。希久さん達は俺の家のお手伝いさんに送らせるんで平気っす』と。
『あ…あの、…えと…ごめんなさい』
「ったく。ちゃんと休めよ」
( 男子生徒の電話一本で店の前にリムジンが止められ『すみません、知り合いなんだけど送ってくれる??』と男子生徒が下手に頼んでは使用人は深々と頭を下げ2人を送って行って。
バックルームで着替えを済ませ先程から此方を睨み付ける男子生徒に「…あのさ、さっきから何なの」と問い掛けるも『別に…随分女の子に優しいんすね』と刺々しい言葉を投げ掛けられて。
「はぁ??…そういう仕事だろうが」
『そういうんじゃなくて』
「意味分かんねぇから」
( ムッとした表情で言うも何故か男子生徒は自分よりも怒っており男子生徒と同じタイミングで裏口から出ては丁度相手と出会し僅かに表情を緩めて。
ペアリングの付けられたネックレスは勿論自分の首元にあり、相手に駆け寄る自分を男子生徒はキッと睨み『“先輩”浮気症治した方が良いっすよ』と嫌味を投げ付けて。
「はぁ??…俺がいつ浮気して………」
『可愛いっすもんね。さっきの新人ちゃん、ああいうのがお気に入りっすか』
「だからあれは客で…」
『お疲れっした』
( 機嫌の悪い男子生徒に頭を悩ませつつ相手の手を取っては「待たせたよな、…早く帰ろうぜ」と言い寮へと向かって。
>桐崎
(どこか刺のある男子生徒の言葉にピクリと反応しては自分の手を引き寮へと向かう相手の顔を不安げに見詰めるも新人と仲良くしてるのは仕事の付き合いだしと言い聞かせ握られる手を軽く握り返し。
「磯貝の言葉、別に気にしてない。…俺は繿のこと信じてるから」
(真面目な表情で低く呟いては相手を見詰めるも、此れではプレッシャーをかけているみたいで滅茶苦茶重たいではないかと焦っては「あ、あれだよ。磯貝の奴、きっとあんたが女にモテるから僻んでるだけなんだよ。…というか彼奴もやっと俺みたいな男じゃなくて女に目を向けるようになったんだな」と思いっきり勘違いながら不安を払うように明るく振る舞って。
(相手の部屋、食事を済ませ先風呂に入らせて貰っては相手が入浴する間持ち込んだドライヤーで髪を乾かす。
男子生徒の言葉、相手の前では気にしない素振りでいたが本当はすこぶる気にしており何度も“仕事だし相手はちゃんとペアリングもネックレスもしてくれていた”と身勝手な嫉妬を抑えようとして。
そんな時ふと目に入った相手の携帯、普段見ようなんて思った事など無かったが一瞬気の迷いが生じては“少しくらい、確認のため”と悪魔が囁き携帯に手を伸ばしかける。
しかしやっぱり勝手に見るなんてどうかしてると手を引っ込めようとした時、丁度SNSの通知音が鳴ってはビクッとしてその拍子に携帯を落としてしまい。
何やってんだかと携帯を拾い上げたところ、落ちたはずみでSNSの画面が開いてしまっていて、そのまますぐ閉じれば良いものを欲に負けてメッセージを読んでしまってはすぐに後悔し。
《今日は酔って迷惑かけて御免なさい。でもとても楽しかったです。今度お店に来てくれるの楽しみにしてます。“繿君”が私の初指名になるので頑張りますね(。・・。)》
(新人の生真面目さ故のメッセージ、それが酷く親密に見えてはつい過去のメッセージまで読んでしまいその中に《この前、“桐崎さん”が選んでくれた服、友達にもお客さんにもすごく好評でした。センスも良いなんて羨ましいです。妹達の分の服選びも手伝って欲しいくらい!》とあり、呼び名が変わってることに酷く嫉妬して。
その時、浴室の扉が開き相手が出てきては大袈裟なくらいビクリと肩を震わせ慌てて携帯を元の位置に戻すも、既読がついてしまったことにまで気が回せず「…あ、…早かったな。そうだ。プリン買ってあるんだ。食べるだろ?」と手に汗握りながら笑顔を取り繕い冷蔵庫からプリンを出すと相手に渡し、バレてないだろうかといまだにバクバクと煩く鼓動する心臓を何とか落ち着かせようとして。
>露木
( 何とも鈍感な相手に笑みが溢れそうになり男子生徒には悪いが鈍感で助かったと。
部屋に付き相手の後に浴室に向かいキツイ香水の匂いを落としては湯船に浸かる。
あまり長風呂するタイプでも無く濡れた髪を拭きながらリビングへと向かえばビクッと震える相手に首を傾げるもぎこちない笑顔でプリンを渡されそれを受け取る。
何故か余所余所しい相手が気になるスプーンを咥えたまま顔を近付ける。
「何か合ったの??」
( 直球に問い掛け相手の返事を待ってた所、SNSの通知音が鳴ってはのそのそと携帯を取る。
相手はどうやら新人、しかし文の辻褄が合わずに何度か見直して。
《いきなりごめんなさい、既読が付いてたけどお返事無かったので………私何か失礼な事言っちゃいました??(´・_・`)》
( 既読なんて付けたつもり無いがと考えては《ごめん、バグかなんかじゃね??別に変な事言われてないから心配すんな》と。
続くメッセージに新人の天然加減が現れ無意識に表情が柔らかくなってる事など自分でも気付かずに。
《来週から勤務始まるんです、暫く手伝ってくれたの無駄にしない様に頑張りますね!!!》
《来週ね、指名しに行くから》
《待ってます(´∀`)ドジしない様に頑張ります!!!》
( 意気込みからして彼女なら出来るだろうと僅かに安心しては携帯を置き何気無く相手に視線をやる。
余所余所しい態度とSNSのバグ、こんな辻褄があるだろうかと考えては視線を合わせる様に相手の正面に座り目線を合わせる。
特に何を話す訳でも無く、意地悪をするかの如くジッと見詰めては視線を外させない様に頬に手をやり。
>桐崎
(直球な問い掛けに冷や汗がダラリと流れるもSNSの通知音に救われホッと肩を撫で下ろす。
しかしどこか楽しげな相手の表情に先程呼んだメッセージの内容が浮かんでは醜い嫉妬が生まれムスッとしてしまい、相手と目が合って慌てて目を逸らして。
無言で頬に添えられる手、大袈裟のほどビクッと肩を揺らし引きつった笑みを浮かべるも勝手に見たなんて言えるはずないと思ってしまい「な、なに?なんか顔についてるか?」と素知らぬふりを突き通そうとして。
それでも引かない様子にこうなったらこっちの流れに持って行ってしまおうと相手の肩を軽く押して後ろに倒しては顔をグッと近付けて「なに、そういう気分になった?」と悪戯な笑みを浮かべ首筋に甘噛みして「…繿」と誘うように甘く名前を囁いては相手の反応など気にせず一人勝手に不自然なほどじゃれつき盗み見したことを誤魔化して。
そして散々じゃれついた挙句「疲れた…」と一言零しては何か追求される前に眠りについて。
(翌朝、相手よりも先に目を覚ましては朝の身支度を済ませ相手を起こそうとするも相手の携帯のLEDが点滅しているのを見た途端、また見たい欲求にかられる。
数分間心の中で葛藤するも駄目だと分かっていながらメッセージを読んでしまっては“来週お店に行くんだ…”と酷く落胆し今朝来た《おはようございます。朝からすみません。今日は希久さん抜きの一人で繿君のお店行ってみようと思うので宜しくお願いします(^^*)》とあり、もしかして仕事以上の付き合いなのかと疑心暗鬼に陥っては深い溜息を吐き携帯を元の位置に戻すと眠る相手の耳にカプッと噛み付き「バイト行ってくる」と言い残し部屋を後にして。
(夕方相手のバイト先にて新人が来る前に他の女を接客する相手を先輩ホストが困り顔で呼び出しては酷く言いにくそうにして相手のネックレスとペアリングを指摘して。
『君の頑張りはすごく助かってるよ。お客さんにも評判いいし。…でもその中にはさ、それがペアリングだって知ってるお客さんもいてね。その…嫌らしいんだよ。お金払ってるのに恋人いる人が接客してるのを見るのは気分悪いって。だからせめてお店に居るときはそれ、外してくれないかな。……あといつも裏口で君を待ってる彼…、正直“そっち”の噂が立つから困るんだよね。君の方からなるべく店には近付かないよう行ってくれないか?』
(よろしく頼むよと苦笑を零し相手の肩を叩いては来店した女性客を迎えに行って。
>露木
( 昨夜は上手く流されてしまった物だなと溜息を漏らしつつバイト先へと訪れては先輩ホストからの指摘に困った様に眉を下げる。
渋々ネックレスを外し内ポケットに大切そうにしまい早速相手に電話をしては相手もバイト中の為留守番電話になり。
「あ-…あのさ、…悪い意味じゃ無いんだけど…暫く迎えには来なくて良いよ。…ここ暫く遅くなるみたいだしかなり待たせると思うから、…それにまぁ………うん。会える時は俺から迎えに行くからさ。じゃあ仕事頑張れよ」
( 言葉を濁しつつ何とか伝えては再び仕事に戻り漸く訪れた新人の元へと来て。
最近は随分慣れた様子になって来たなと頬を緩めては「酔い過ぎんなよ」と言い薄目の酒を手渡す。
それを先程から男子生徒が睨んでたのだがそれに気付けず他愛も無い話をして。
『この前仕事でのお洋服見に行ったんです。…私希久さんみたいにスタイル良くないし………胸も小さいから困っちゃって』
「そういうのが好きって奴もいんだろうが。…あんた言う程悪い顔してねぇよ、自身持てば??」
『………でも前繿君と出掛けた時………“妹さんですか??”って聞かれちゃったんですよ??』
「俺に言えば否定してやってたのに」
『……………もう、まだまだ成長期続けば良いのにな』
( 小さく冗談を言う新人に軽く微笑んではふと現れた男子生徒が『桐崎“先輩”、ちょっと良いっすか』と。
呼ばれるがままバックルームへと来てはそのイライラした様子に疑問を浮かべる。
『随分あの子可愛がってんすね』
「だから客だからってんだろ」
『……………リング、外してる』
「それは先輩に注意されたから」
『すっげぇ親密そうだけどな、俺から見れば』
「………はぁ、お前一体何なの」
( ムスッとする男子生徒に困りつつ呼ばれる声に気付いてはそちらへと向かう。
別のホストに飲まされた新人は既にクタクタ、“…だから言ったのに”と呆れつつ帰る様に耳打ちする。
さり気なくホステス(希久)に迎えに来る様に頼んでは薄着の新人に小さな溜息を漏らし裏から私服の自分のパーカーを持って来て新人に手渡して。
玄関にてホステスが来るのを二人で待っては漸く来たタクシーの中にホステスの姿が見え手を上げて。
その様子が傍から見れば酔い潰れた女と共に何処かに行こうとしてる様に見える事など気付かずに。
>桐崎
(バイト終わり早速相手のバイト先に行こうと足を向けながら留守電を聞いてはその内容にピタリと足を止める。
素直に聞ければよかったがその言葉を濁すような物言いに嫌な予感がして。
もしかして携帯を盗み見たのがバレて怒っているのか、それとも迎えに来られては暑苦しくて迷惑なのか、いろんな不安が過るがあの新人とのメッセージのやりとりが浮かんでは疚しいことがあるのではと疑い始め。
“遅くなって待つ”そんなのどおってことないと相手の事情も知らずに不安ばかりが先走っては来なくていいと言われたのにも関わらず相手のバイト先に向かってしまい。
そして店の向かい側の道路から裏口へと周ろうとしたところタクシーが見え何気なくそちらに目を向けては、相手が女を支えながらタクシーに乗り込ませる姿が目に止まり愕然とする。
相手がタクシーに一緒に乗ったかも確認しないままその場を離れてはフラフラと近くの公園のベンチに座り込むと、自分の姿が見えていたのかすぐに男子生徒が駆けつけて来て。
『先輩、…桐崎、迎えに来たんじゃないっすか?』
「…いや、そうなんだけど…」
(そう言って浮かぶのは先程の光景。確か酔った女は相手の服を羽織っていて、相手の首元にはネックレスがないように見えた。
こんな時ばかり目が利く…と溜息を吐いては不安を取り払うようにベンチに背もたれ空を仰いで。
「…俺って早とちりなんだよ。特に彼奴の事になるとまともな考えが出来なくなる」
『…………』
「さっきのもきっと彼奴の親切だ。……俺、彼奴のそういう優しい所が好きで…人に冷たくする彼奴なんて見たくない筈なのに、俺以外の奴に優しくしてるの見ると胸が痛くなる…」
『…あの…』
「最低だよな。…勝手に疑って…」
『…………』
「悪い、変な話聞かせたな。…態々声掛けてくれてありがと。バイトお疲れ。気をつけて帰れよ」
(どこか力なく微笑み男子生徒の肩をポンポンと叩いてはその場を後にしては相手の寮へと向かい合鍵を使って中へと入る。
相手の姿はまだなく身勝手に落胆にしては相手のベッドに寝そべって。
女と何もなければすぐに帰ってくる筈…と相手にだって色々事情があるだろうに結局疑ってしまってる自分に嫌気が差しつつペアリングを見詰め相手の帰りを待って。
>露木
( 新人とホステスの乗ったタクシーを見送り店へと戻れば再び先程の先輩ホストが現れ自分の腕を掴み裏へと向かう。
難しい顔の先輩ホストの話に寄ればどうやらこれから此処の店を管理する上の業者グループの頂点に立つ人が来るらしく勤務時間は過ぎてるが暫く残って欲しいと。
人員不足もあり渋々引き受けては一度店を締め店内の掃除等を済ませ貸切状態にして。
約束の時間、スタッフ全員で玄関口へと出迎えをすればスーツに身を包んだ男達数人の後に如何にも高価そうな毛皮の上着を身に纏う一件美しい顔立ちの男が現れ。
オーナーがやや強ばらせた笑顔でその男の前へと向かい、女性客にする様に手を取れば奥へと案内する。
『あら、貴方見ない顔ねぇ。貴方何時から此処で働いてるのかしら』
( 此方に振り向き上記を言った男に呆気に取られつつ、「………前まで世話になってたんですけど…復帰させて貰ったんです」と小さく言って。
確かに女性とも似つく様な中性的な顔立ちをしてるし若頭とも同じようなジャンルなのに何故か近寄れる雰囲気では無く。
新人を見せて欲しいと言う事で男子生徒と共に自分もその男に付き添えば夜まで酒に付き合わされて。
( 寮へと戻れたのは既に0時を回る頃、欠伸をしながら部屋の扉を開ければ僅かに眠そうにうとうととする相手が目に入り。
「ただいま、来てたんだな」
( こんな時間だしかなり待たせてしまったのだろうなと考えつつ浴室に向かえばさっさとシャワーを浴びる。
相手の胸にある不安さえも気付けず、手早く入浴を終えては思い出した様にジャケットの内ポケットからネックレスを取り出し首に付けて。
やはりこれが無ければなと無意識に表情が緩んでは寝間着のパーカーとジャージに着替えリビングへと戻って。
>桐崎
(中々戻らない相手、そんな相手の気苦労も知らずに不安と苛立ちばかり募れば相手が帰宅しても素直に喜べず、部屋に入ってきた瞬間香った強い香水の香りに眉を顰める。
疑ってはいけない、そう思うのにシャワーから上がってきた相手がネックレスをしているのを見ては“店では外してたのに”と自分がいる時だけネックレスをする行為がわざとらしく見えてしまい。
瞬間醜い嫉妬が爆発して相手の疲労も考えずに相手がリビングに来た途端突如噛み付くような口付けをしては営業時間などとっくに過ぎているのに未だに残るアルコール臭に眉を潜め一方的に相手を突き離すと刺のある視線を向け「…………酒の匂い。…あの新人とホテルで呑んで遊んでたのか?」と。
すぐにハッとなって気まずげに目線を逸らすも一度溢れた不安は止まってくれずに微かに息を震わせ視線を落とし。
「…ネックレス、さっきまで外してただろ。…迎えに来なくて良いって突然言い出したのも俺が重たいからか?…それとも、邪魔だから?」
(不安げながら相手を責めるように述べてはそんな自分が嫌でギリッと歯を食いしばるもつい八つ当たるよう相手を睨み付け。
「新人のホステスとも仕事付き合いとか言って随分親しそうだもんな。……服も一緒に買って態々其奴の店行って指名の約束までするとかあんた其奴のこと好きなんじゃないの?…どうせホストのバイトも女と遊びたくて始めたんだろ?」
(相手が男子生徒から嫌味を言われ続けついさっきまで真面目に仕事をしていたとも知らず相手を端から疑う最低な言葉を並べてしまっては、流石に言い過ぎたと思うもすぐに謝罪の言葉が出てこずまた視線を逸らし、溜息を吐いてしまって。
この時、携帯を盗み見なければ知り得ない、服の買い物の事や指名の話をつい口走っていることは気付かずに。
(その頃、相手のバイト先のオーナーが相手にメールしており《今日は遅くまでお疲れ様。ついさっき付き合わせたばかりで悪いんだけど、実は支配人(中性的顔立ちの男
が君を偉く気に入っちゃってさ。明日からも暫く仕事終わりに君に酌を頼みたいって言うんだ。申し訳ないけど店の経営にも関わるから相手してくれないかな?昼と夕方のバイト時間は考慮するし勿論お礼は弾むから》と。
>露木
( 噛み付く様な口付けと共に力強く睨み付ける視線に呆気に取られるも自分の行動が誤解を招いてたなんて知らず取り敢えず話さなければと。
しかしそれと共に新人とのメールの内容の話が出て来ては何故知ってるんだと疑問を抱く。
「……………何でメールの内容知ってんの??」
( ポツリと出た言葉、別に相手になら携帯を見られる事くらい構わないし新人とメールをしてた事は話してた。
しかし何故内容まで知ってるのかと思えば、以前勝手に既読が付いてた事を思い出して。
「………アフターとかはしないってこのバイトする前にあんたにも言っただろ。………ホテルなんかに行ってないしあの新人とは本当に友達なだけ。………分かるだろ、ああいう店って高いんだよ。お茶一杯で千円近く取んの。だから散々指名して貰ったから俺もお返しするって…」
( 誤解を解こうと弁解を試みるもこの状況故に言い訳にしか聞こえず溜息を付いては俯く。
自分の浅はかな行動や上手く説明出来ない事に沸々と腹立たしささえ過ぎり頭をガシガシと乱しては「………で、なんで携帯のメールの内容知ってんだよ」と何処と無く責め立てる様な言い方になってしまい。
責任転嫁するかの如く相手を責める様に見詰めた所で携帯が鳴り響けば話をしてる最中にも関わらず直ぐにメールを開く。
寮へ戻るまでは仕事を頑張って給料日になったら駅近くに新しく出来たプラネタリウムに相手を連れて行こうと思ってたが気不味い雰囲気になれば言い出せず。
《了解です、得に用事も無いんで》
( あっさりとした返事を送り結局素直になれないままスタスタと相手の横を通り過ぎベッドに横になって。
「疲れてんだよ。俺もう寝るから」
(正直眠くなんてないしこの時間まで待ってくれてた相手と甘い時間を過ごすつもりだったが性格上からか不貞腐れた様に相手に背を向けて。
>桐崎
(相手の弁解をいつもなら容認できたのに相手の頭を掻く仕草が自分を煙たがっているように見え、言い訳に聞こえてしまっては「…なんだよそれ」と依然相手を責めるように呟き、メールの内容を何故知ってるか聞かれてもすぐに謝罪出来ず目を逸らして。
しかし此れでは拗ねてるだけの子供だと謝ろうとしたところ相手がメールを始めて其れが仕事のメールとも知らず、自分との事なんてどうでもいいんだと被害妄想してはベッドに横になる相手を睨み。
相手が自分の好きなプラネタリウムに行く計画を立ててくれていて、今日も接待で疲れが溜まっているなんて考えもせず寝ようとする相手の肩を乱暴に引いては仰向けにさせ「まだ話終わってないんだけど」と苛立ちをぶつけ。
「そうやってすぐに寝るのは疚しいことがあるから何じゃないのか。今のメールだってどうせあの新人からなんだろ?…俺と話してるのにすぐ返信するなんてよっぽどその女が大切なんだな」
(新人とは何でもないと言われたのにガミガミと一方的に怒っては「……帰る」と言って相手の話も一切聞かずにさっさと部屋を出て。
__『…それで深夜に一人で帰って来ちゃったの?』
(翌日、アパートの一室にて激しく後悔してうなだれる自分に突如訪れた兄が呆れ顔で『流石に今回は繿に同情するよ』と溜息を吐き。
『…菊さ。素直と我が儘は違うんだよ。…繿が浮気してないことくらい菊が一番わかってるでしょ』
「………」
『で、ちゃんと謝ったの?』
(兄の問い掛けに携帯を無言で見せ《昨日(深夜)はいきなり当たり散らすみたいに責めて御免。あんたの話も聞かずに最低だった。…謝りたいからまた部屋に行っていいか?》と相手に送信したメールを見せて。
『別に確認しなくても直接行けばいいじゃん』
「…部屋にいきなり行くの鬱陶しくないか?いくら付き合ってても俺みたく付き纏われたら暑苦しいんじゃないかって。…あいつから此処に来たことないし…」
『いやそれは菊が先に繿のところ行くから………、…まあいいけどさ…』
(また呆れ顔する兄にやっぱり自分は煙たいのかと溜息を吐いては相手からの返信を待ちつつ兄と暫く話した後、バイトに出かけて。
(夜、相手の勤務終了時間、端正な顔立ちをしたあの支配人がきつい香水の匂いを漂わせながら訪れ、さっそく相手を隣に座らせては『本当かわいい子だね』と相手の髪を撫で回し上機嫌に酒をのみ一向に相手を離そうとせず。
それは深夜を周っても続き他のホストたちは香水と酒にやられ“桐崎あとは任せた”といった感じで完全に伸びてしまっていて。
>露木
( 翌日、またもや相手と喧嘩をしてしまったと項垂れつつバイトの休憩時間に相手からのメールに気付けば今日も支配人は来るし帰りは多分深夜になるだろうと考え《悪いけど今日も遅くなる》と素っ気無いメールを送った後で激しく後悔して。
どうしてこんなにも素直になれないのかと溜息を漏らしつつ今日もあの支配人が来る為清掃や準備を済ませては出迎える体制に入って。
きつい香水の匂いを纏わせる支配人が訪れ“匂いには敏感故に結構来るな”なんて考えては大人しく隣に腰を下ろし酒を注いで。
『この前街で君の事見付けたの、恋人居るのね』
「……………まぁ」
『綺麗な子じゃない。これはペアリング??』
( ポケットから出てたネックレスをスルリと取られてはペアリングを面白そうに見詰める支配人から視線を逸らす。
返して貰おうと手を伸ばすも上手く避けられては眉間に皺を刻むもそれをなぞられて。
『バイトに打ち込んでるみたいね』
「あぁ………はい」
『来週のシフトは休み結構取ってるみたきじゃない』
「………えと、まぁ…恋人と喧嘩してて………来週は一緒に過ごしたいって言うか………駅近くに出来たプラネタリウム…連れて来たくて」
『へぇ…結構あそこ人気だものね。なら君の給料弾む様に沢山高いお酒頼んで上げなきゃ』
( 結局良い人なのか悪い人なのかも掴めず流される様に飲まされ漸く開放して貰えたのは朝方。
フラフラと寮へと戻り自室にてぶっ倒れては珍しく高級過ぎる高い酒を飲まされたか僅かに酔いが回って。
視界が不安定にクラクラとしたまま相手の連絡先に電話を入れるも脳内ではあの新人に連絡を入れてるつもりでいて。
「…あのさ、明日俺休みだから指名しに行くから」
( 留守番電話に上記を残し、続いて新人に連絡を入れては相手に電話をしてる物だと勘違いしていて。
「………露木、前はさ………その…ごめん。来週空けといてくれると…嬉しい」
( ポツリポツリと言っては電話を切り疲れからかベッドに倒れ込み寝息を立てて。
>桐崎
(翌朝、アパートにてベッドの中で昨日相手から届いた冷たく感じるメールを見返してはやはり昨日は言い過ぎたというか相手を怒らせて当然だったと反省し小さく溜息を吐く。
そこで漸く相手からの留守番電話に気付きその内容を聞いて、は?と眉を潜めて単なる間違いなのに態々報告してきたと馬鹿な勘違いをしてはさっき反省したばかりなのにムッと拗ねて《態々報告どうも。明日はせいぜい女と楽しめよ》と疲れてる相手に対しまたもや当たり散らすメールを送りつけて。直後に後悔するもすぐに謝れるほど器用ではなく「…俺の馬鹿…」と一人空虚に呟いて。
(そして翌日、結局相手が電話をかけ間違えたと知らないまま朝帰りのバイトを終えてはアパートへ向かうもその途中で突如高級リムジンに横付けされて車の窓が開くと強い香水の香りと共に綺麗な男、支配人が顔を出し『もしかして貴方って繿君の恋人?』と。
「…え、まあ…はい」
『やっぱり。ねえ今日の夜、繿君のバイト先に来ない?一緒にお話がしたいの』
「え…、でも繿は今日休みじゃ…。……それにあなたにお話することは…特に」
『あらはっきり言う子ね。それと繿君が休みなのは知ってるわよ』
(そう言って見せてきたのは相手のネックレスから外されたペアリングで、何で…と問う前に『返して欲しいでしょ?今夜お店で待ってるわ。磯貝君もいるから安心して』と早々に去られてしまい。
リムジンが去った方を呆気に取られながら見つつ相手はペアリングがなくなったことに気付かなかったのだろうかと疑問に思いながら、店に行かないわけにも行かないため夜の予定を開けて。
(一方で新人は相手からの留守電を聞いて、どうしよどうしよとあたふたしつつ相手が今日店に来るとも知らないため先輩である希久に『ら、繿君いつ来るかな』なんて落ち着きなく髪や服を正したり店内を行ったり来たりしていて。
>露木
( 間違った電話に気付かないまま朝を迎えシャワーを浴びた所で相手からのメールに気付き“何の事だ”なんて考えては電話履歴を開く。
確か最初はあの新人に連絡した筈…と思うもどうやら最初に電話をしたのは相手の様子。
寝惚けたのだろうかと思うも相手をあれ以上怒らせまた溝が出来るのは嫌だと思う反面まだ素直になれず。
そう言えばまだネックレスとペアリングを返されて無いと思えば不安が過ぎり昨日強引に交換された電話番号を開いて支配人に連絡をして。
『あら、今日はオフでしょ??ゆっくり休みなさ…「ネックレス…取りに行きます」』
『凄く大事にしてるのね、でもまだ駄目』
「な…何でっすか」
『大丈夫よ、無くしたりしない。でもまだ駄目よ』
( 意味の分からない事を言われ電話を切られてしまえば従うしか無く。
次の仕事の時にでも返して貰おうと思うもやはり不安で《それ、すげぇ大事にしてるんで傷付けたり無くしたりしないで下さい》と無愛想なメールを送り。
( そして夕方、新人とホステスの働く仕事先へと向かえば新人を指名し席に付いて。
まだ慣れてないのかトタトタと小走りで此方へ来た新人に気付いて。
『あの…態々ありがとうございます。でも…あまりお金使わなくて大丈夫ですよ??』
「別に平気、俺もそれなりに稼いでるし。それよりあんたも俺の店に結構出してくれただろ」
『流石に希久さんにばかりお世話になれないですし』
「……………取り敢えず一番高い酒、頼む」
( 相手が支配人と会ってるとも露知らず、今までの礼をしようと注文をしては他愛無い話をして。
>桐崎
(夜、営業時間が終了した相手のバイト先へと訪れては男子生徒が出迎えてくれて『先輩何かあったんすか』と心配顔で耳打ちされるも自分もさっぱりのため小さく首を傾け案内されるまま既に酒を飲み始めていた支配人の隣に座り「…それで、話って何ですか?」と速く相手のネックレスとペアリングを返して欲しく早速本題を切り出して。
『まあまあそんなに焦らないで、君も呑みなさい』
(進められるままに男子生徒が作った酒を口にしてはその酒の薄さに気を遣ってくれたと分かり感謝しつつ支配人が何を企んでいるのか気になり「あの…」と話を促して。
『もうせっかちね。…実はあたし繿君のことすごく気に入っちゃって是非あるお店で少しの間働いて欲しいの。そこの店は“そっち系”の人専門なんだけど最近経営が傾いてて繿君が来てくれればとても助かるなと思って』
「…はぁ…、で、何で本人に直接言わないんですか?」
『あら。だって“そういう所”で手伝って貰うんだから恋人の許可が必要でしょ。君が了承したって言えば繿君も聞き入れやすいだろうし』
「……でも俺が了承しないとネックレス返してくれないんですよね。それって脅迫じゃ『
脅迫?人聞きが悪いわね。親切のつもりよ。…で?どうするの?』」
「俺一人では決められません。…繿に聞かないと。…それに俺が了承したって聞いたら繿がなんて思うか…」
『でも此れ、返して欲しんでしょ?』
「…………」
『手伝いって言っても一週間だけでいいの。君が今、条件を飲んでくれればネックレスは返して上げるわ。あーそれとホストのバイトも辞めてもいいよう手配してあげる』
(楽しげに笑う支配人にやっぱり脅迫じゃないかと軽く睨み付けつつ内心、これ以上相手が自分以外の誰かに笑顔を向けたり触られたりするのは嫌で一週間我慢すれば相手はホストを続けなくて済み自分との時間が増えると思うと悪くない話に思え。
相手の仕事を勝手に決めるなんてどうかしてると思うも後から話せばきっと分かってくれると甘い考えでいては「……約束守ってくださいね」と。
『じゃあ繿くんは暫くあたしがお借りするわね。ネックレスも直接本人に返しておくわ』
「……あの、その店も接客だけ、ですよね?」
『当然よ。如何わしいことなんてないわ』
(上機嫌に笑う支配人とは逆に自分の心は穏やかではなく相手に早く謝らなくてはと思う一方今頃新人の店で楽しくやっているのだろうかと嫉妬しては薄い酒を軽くあおって。
(その頃新人の店では他のホステス達が相手に惚れ込み『繿君格好いい!!』『今日は私の奢りね』なんて言いながらどんどん酒や食べ物を頼み新人を押しやる勢いで『私が一番好きよね?』と相手の気を引こうと競っていて。
>露木
( 携帯片手に相手からの連絡やメールを期待する無愛想極まり無い客だったが待っても来ない事に項垂れ他のホステス達の言葉など耳に入らずにいて。
新人を呼び戻し「そろそろ帰る、また来るから」と言い残しては会計を済ませ店を後にして。
( 寮への帰り道を歩く途中、黒塗りのリムジンが自分の横に横付けされてはスモークの掛かった窓が下がりあの支配人が胡散臭い笑みを浮かべていて。
『御機嫌よう、少し話がしたいの。乗ってくれる??』
「……………ネックレス…返してくれます??」
『返して上げるわ。だからお話しましょう』
( ほぼ強引に車の中へと乗せられ不機嫌極まりない表情で居れば支配人が迎えに座って。
『良い話があるの。貴方の恋人さんにもちゃんと了承取ったわ』
「何なんすか」
『ほら、“そっち系”の人が来るお店ってあるじゃない??一週間で構わないわ、こっちで働いて欲しい』
「……………は??」
『それに貴方ホスト辞めたがってたじゃない。あんな小さい居酒屋に戻りたいなんてびっくりだわ』
「待って下さい………」
『明日からお願いね。ちゃんとホストも辞めさせて上げる。ほら、ネックレスも返して上げるわ』
( 相手が了承しただなんて信じられずに居るも寮の前で下ろされては暫し放心状態でいて。
相手の胸の内も知らず悲観的に考えてしまっては唇を強く噛み締めさっさと部屋に入って。
ポストには予約していたプラネタリウムのチケットが二人分あり、雑にそれを取ってはテーブルの上に放り何とも言えない気持ちになり。
>桐崎
(漸く支配人から解放されては肩の力が抜け深い溜息を吐くもすぐにでも今のことを相手に話さなければと携帯を取り出して電話を掛けるが留守番電話に切り替わりそう言えば新人の所に飲みに行ってるんだと思いつつ「…繿?…この前はごめん。返事くれないってことはまだ怒ってるんだよな。…でもあんたのバイトのことで話したいことがあるから会いたい。何時になっても待つから今から寮行くな」とまだ相手が電話をかけ間違えたと知らずに返事がないことを怒ってると勘違いしつつ、相手の都合も聞かずに寮に行くと言い切って。
それからすぐに相手のバイト先を後にするも何故か男子生徒も付いて来て『寮行くっすよね?俺も一緒なんで』とどこか以前よりも大人びたふうに笑い、男子生徒は女好きになったと勘違いしてるため断ることもないかとややほろ酔い気味にコクリと頷きそのまま一緒に相手の部屋の前まで来て。
「じゃあ此処で。おやすみ」
(軽く手をヒラリとし相手はまだ帰ってきていないものだと思って合鍵を出してドアを開けようとしたところ、突如その腕を男子生徒に掴まれ廊下の壁際に手を引かれて。
「…磯貝?」
『先輩…、その迷惑承知でお願いするんすけど…、今度の休み俺と一緒にプラネタリウム行きませんか?』
「え?……あ、いや…、その日は桐崎と過ごそうと思ってて…」
『でも今喧嘩してるんすよね?』
「だからこれから謝ろうとしてるんだろ。…今回は俺が理不尽に拗ねてただけだし」
『桐崎、あの新人のとこに呑みに行ってんじゃないっすか?』
「だからさっき待つって…、なんでそんな不安を煽るようなこと言うんだよ。あんたには関係ないだろ」
(男子生徒の鋭い視線にきっと酔ってるからしつこいんだと思っては少し迷惑そうに目を逸しさっさと合鍵で相手の部屋の扉を開けようとして。
>露木
( 廊下から聞こえた声が誰の物かなんて一目瞭然で玄関前にてその内容を聞いてしまっては眉を寄せる。
話の内容は一部しか聞こえなかったが相手が拒否の言葉を言ってるのは聞こえた、…それなのに先程の支配人の言葉が脳裏を過ぎっては玄関を思い切り開けるも相手に衝突しそうになる寸前で歩を止め。
「………行けば、良いんじゃねぇの。………ってか聞こえてっから。……………」
( こんなの子供の八つ当たりでしか無い、そんなの自分でも知ってるのに二日酔いの頭痛が襲い頭をグシャリと掴んでは男子生徒に目をやる。
『飲み過ぎたんだ、あの新人ちゃんのとこで??』
( 支配人に浴びる程飲ませられた事など相手の前で言える筈も無く更に悪くなった目付きを相手にやれば「…行けよ。…何、そいつと行く事態々俺に言いに来た訳??」と酷い言葉を言って。
男子生徒が自分に掴み掛かりそうな勢いで近寄って来ては僅かに見えた自室のテーブルに置かれるチケットに気付いたのか何か言い掛けて。
自分もそれに気付き「………あれは…、その…あの新人と行こうとしてたんだよ。彼奴最近頑張ってるから」と咄嗟的な言い訳を言って。
男子生徒の瞳が段々と怒りに戻るのを感じ取り「じゃあ俺疲れてんの、明日からまた仕事だし」と言いパタリと部屋の扉を締めて。
真っ暗な自室の中、玄関に背中を預けては自分の馬鹿馬鹿しさに自嘲の笑みさえ溢れて。
( 翌日、ラフな格好で構わないと支配人に言われた為普段着で支配人の元へと向かえば自分の学校と同じ制服を手渡されて。
「…あの」
『そ、それがこのお仕事の“制服”よ。高校生なんて滅多に居ないし面白そうだな、なんて』
「………不味くないっすか、これ」
『大丈夫よ、私を誰だと思ってるのかしら』
( 渋々それに着替え何時も着てる様な楽な着方にしては支配人の元に戻り。
『さて、フロアを案内するわ』
( 手を引かれ相手と揃いのペアリングをしっかりと内ポケットに入れては不機嫌そうな表情のまま後を着いて言って。
>桐崎
(まだ帰宅していないと思っていた相手が部屋から出てきてはその怒った様子にすぐに謝らなければと口を開くもその前に冷たく聞こえる言葉を言われては小さく目を見開き。
しかしそれよりも何処か辛そうな相手が気になり“繿?”と手を伸ばそうとするも男子生徒の言葉を鵜呑みにし、その後続く相手の言葉も真に受けてしまっては相手に触れようとした手をギュッと握り締め、謝るタイミングを完全に見失ってしまい。
バタンと閉ざされる扉、素直になるなら今だと思うも相手が新人を構ってると思うと卑屈になってしまい、自分が相手と居たいという我が儘で相手を売るような真似をした癖にその事を謝ること無く男子生徒の制止も聞かずにその場を立ち去って。
(支配人の店、客達はフロアに現れた相手にすぐ惚れ込んでは我先にと高い酒を頼んで支配人がその中から一番高い酒を頼んだ男を選び相手にその席へ行くよう指示して。
一番高い酒を注文したのは小太りの中年男で相手をニヤニヤと足先から頭まで見てはポンポンとソファを叩いて隣に座るよう促し。
『君、本当の高校生?それにしても悪い格好してるね。不良だったの?』
(失礼なことを平気で言いながら厭らしく相手の内股に手をおいてさすり『まあまあ呑みなよ』と連日疲労溜まっている相手に対し強い酒をどんどん進め『繿君って言うんだ。君なら女の子の格好しても似合いそうだね』と変態発言を鼻息を鳴らしながらいっていて。
(その頃自分はバイトまでの時間、カフェで昨日のことをずっと後悔しておりそれでも相手にメールを送れずにいて。
相手と仲直りしなければ一週間我慢するどころか一生会えなくなってしまう。
わかってるのに素直になれず相手が自分のせいで嫌な思いをしてるとも知らず相手のアドレスを開いたままずっと靄々していて、男子生徒からの《休日プラネタリウム行くの考えてくれませんか?》というメールもずっと返せずにいて。
>露木
( 何とも気色の悪い接待、酒は嫌いじゃ無いがあんなにも高価な酒を飲まされ視界が歪んだ経験は初めてで躊躇しがちに酒を流し込み。
酒を仰がなければやってやれないこの時間、増してや相手以外の男なんて考えられず僅かに距離を起きつつ早く退勤時間が訪れるのを待って。
( 初日だからと言う事もあり夕方に上がらして貰えれば支配人に別室に呼ばれ時給を言われて。
高額な値段に驚くも良い事をして稼いだ金では無いと複雑な気持ちになりながら寮へと戻り。
テーブルの上で寂しくあるプラネタリウムのチケットを見詰めてはそれなりの値段したのになと。
相手は男子生徒の誘いを拒否していたし自分の一方的な苛立ちをぶつけてしまったに過ぎないのにと激しい後悔に苛まれては何度も携帯を見詰めて。
まさか本当に新人を誘うのも気が引け青年でも誘おうかと悩んでいて。
そんな時、ふと新人から連絡が来ればどうやら今週はホステス(希久)に続く人気だった様で。
「そか、おめでと。あのさ、プラネタリウムとか…好き??たまたまチケット2枚あるんだけど明日これやるからさ。希久とでも行ってこいよ」
( 新人の返事など聞かずに一方的に言ってしまえばっさと電話を切ってしまって。
>桐崎
(結局相手に何も連絡が出来ないまま翌日を迎えては朝からどんよりと相手から何の連絡もない携帯を見詰める。
もしかしたら相手は新人とのメールに夢中なのかと悲観的になるも、仕事の事を言ってないのがどうしても引っ掛かり何があってもそれだけは謝らなければと気を奮い立たせ寮へと足を向けて。
(到着した寮、すぐに相手の部屋にと足を進めようとするが何やら学生たちがざわついていて“共同スペースに桐崎が可愛い女の子”をつれてると。
まさかと思い共同スペースに足を向けるとソファに並んで座る相手と新人が居て丁度チケットを渡すところで見事に“本当に新人と二人で行くんだ”と勘違いしてはショックで後退り。
今すぐこの場から逃げ出したい、いっそのこと自分は男子生徒の誘いに乗ってしまおうかと捻くれた感情が湧き上がるも、相手と離れ離れになるなんて考えられず“絶対にやだ”と思えばその直後人目がある中ズカズカと相手と新人の元へ近寄りチケットを持つ相手の手を掴みあげて「…何、俺以外のやつと行こうとしてるんだよ」と鋭く相手を睨み付け。
その時相手の目の下に隈ができ疲れていることに気付くも我が儘な感情は収まらずグッと腕を強く握り。
「俺達、付き合ってるんだよな?……それともあんたはその女のこと好きなのか?」
(低声で相手を見下げ見当違いなことを述べてはそんなことにも気付かず嫉妬を顕わにして冷たい目つきを微かに揺るがせ。
「何でだよ…。…なんで俺がいるのに他の奴に構うんだよ!!最近その女のことばっかり……。やっぱり俺なんて熱苦しいって思ってんだろ?勝手に迎えに行くし無断で部屋に上がるし…、煙たいなら煙たいって言えよ!!」
(声を荒らげだだをこねる子供のように感情をぶつけてはその影響か能力が微かに解放されフワリと自分の髪や服が揺れ動くも全く気が付かずに「俺のこと鬱陶しいって思ってるんだろ?!いつもその女と楽しそうにメールしてるもんな。あんなに酔うまで飲んでさ。俺といるより楽しかったんだろ?」と相手に謝るはずが完全に逆ギレして訳の分からない言葉を感情的に並べ立ててはそれに比例するように能力が身体から漏れて相手の腕を傷つけてしまうも冷静さを欠いていたためそれすら気付けないままで。
>露木
( 翌日、偶々新人が寮の近くに居るとの事で折角だからチケットを渡そうと共同スペースへと呼ぶ。
丁度ホステス(希久)も休みを取ってくれたらしく新人と共に行く約束をしてくれたみたいで無駄にならなくて良かったとチケットを渡そうとして。
しかしその刹那、共同スペースの扉が開いては怒りに瞳を染める相手が自分の腕を掴んで来て。
自分が口を開く前に相手が珍しくも怒りを見せて来れば此方も我慢ならず「煩ぇな!!!お前だって磯貝と行くんだろうが!!!」と叫んでしまって。
何故集まってたのか漸く人集りに気付いては口を噤むも泣きそうに狼狽える新人に目をやりチケット2枚を強引に手渡して「帰って良いよ」と。
ヅカヅカと扉へ駆け寄り大きな音を立てて締めては再び相手の元に戻り切なさの滲んだ瞳で相手を睨み付け僅かに赤くなった腕に目を向けて。
何処と無く能力が溢れそうになってたのは感じた、人目に触れては行けないだろうと新人を先に帰し扉を閉めただなんて伝わる筈も無くて。
冷静を保つ様に試みるも冷静でなんて居られず、此方は此方で嫉妬に塗れそうになっており。
何故自分を支配人の支店に行かせる事を了承したのか等聞きたい事は沢山合ったが言い出せず。
相手の手を取っては「…昨日、支配人の支店で気持ち悪りぃ親父にめちゃめちゃ触られた。すっごく嫌な思いした」と皮肉を言って。
「あんたが了承したんだってな」
( 眉間に眉を寄せて言えば悔しそうに手を離し「何で俺の事縛り付けんの、…俺だって」“お前の事閉じ込めたいくらいに縛り付けたいのに”と言うそれは言葉に鳴らずさっさと共同スペースを後にしようとして。
>桐崎
(相手の大きな声に小さく肩を揺らしては新人を帰して乱暴に扉を閉ざす相手に、それが自分の能力を人目に触れさせないためだとは知らず完全に怒らせてしまったと勘違いして逆ギレしたことを後悔するも靄々した気持ちは収まらずキッと睨みつけ。
が、相手の切なげな表情に“なんでそんな顔するんだ”と表情を歪めると同時に赤く腫れた腕に漸く気付いて“御免”と咄嗟に謝ろうとするも手を取られ言われた言葉に一気に罪悪感に苛まれグッと押し黙り。
続く“何で俺の事を縛り付けんの”という言葉が深く胸に突き刺さりやっぱり重たかったんだと思い込んでは身勝手に落ち込むもせめて謝らなければと去ろうとする相手の腕を取って。
「……御免、勝手に変なバイト了承して…、嫌な思いさせて…。でも……」
(“繿を独占したかったから”と言おうとして、そんな言葉は今の相手を束縛するものでしかないと飲み込み「……暫く、距離置くようにするから」と俯いて述べては自分のせいで赤く腫れてしまった手を軽く撫で「あの女と出かけても何も言わない。…でも……俺と別れるなんて言うなよ」と相手にとって混乱させるような言葉を切なげな眼差しを向けて述べると返事も聞かずにその場を後にして。
(その後、自分はいったい相手に何が言いたかったのかとフラフラ歩いては支配人の支店に来て、まだ開店前の店内に入っては『誰だ、アイツ』とざわつく店員を無視して奥の事務所に行き扉を開いては、仕事をするでもなく店員の一人と戯れる支配人の前まで来て。
『あら。繿君の恋人じゃない。こんなところまでどうしたの?』
「……繿をこの仕事から下ろしてください」
『ふーん。でもいいの?ホストのバイトやめさせるって条件取り下げるわよ。そのペアリングも頂くことになるけど』
「それは駄目です。…だから俺が代わりに働きます」
『嫌よ。あたしは繿君が気に入ってるの。それに君、お酒呑めないんでしょ?』
「呑むようにします。それに…男なら彼奴より俺のが慣れてますから」
『でも昨日一日繿君が来てくれただけで売上が上がったし繿君を指名してくれるってお客さんも沢山ついちゃったのよね~』
(髪をくるくると指で巻く支配人にそこをなんとかと食い下がるつもりは一切見せずに頭を下げて頼み込んで。
内心、なに馬鹿やってんだろと自分を愚弄しつつも相手に言われた言葉や表情を思うとこの行動は間違ってないと思えて。
(/すごい今更ですが日本語の間違いに気づきました滝汗
最後の()の中の”食い下がるつもりは一切見せず”ってところ。
おもいっきり食い下がってるのに一切見せてないってどういうことだって感じですよね汗汗
”そこをなんとかと食い下がっては頭を下げて頼み込んで”
に訂正しときます。駄ロルなのにさらに混乱させてすみません。
日本人なのに日本語に疎いんです(^_^;)
>露木
( 支配人は深く頭を下げる相手の顎を掴みゆっくり口角を上げては面白そうに笑みを深めて。
舐め回すかの様に視線をやっては『…仕方無いわね』と言うも表情は何処か妖しくも晴れやかで。
『良いわ、君の聞き入れ呑んで上げる。君可愛い顔してるしね。ただ此処の店のお客さんは皆変態だからね、君くらいの顔立ちなら女装なんかさせられちゃうかもしれないわよ』
( サラリと変態地味た事を言えば『明日から来なさい、君の働きぶり見て判断して上げるわ』と。
それから支配人は従業員であるホストに相手を送らせる様に言いリムジンのキーを手渡しては『待ってるわね』と笑みを浮かべて。
( その頃、自分は相手に対しての行動を深く後悔しておりそれと共に相手はまだ心の何処かで自分を“女好き”と見てるのだろうかと。
無理も無い、新人との事だって疑われて当然だし何せこんな仕事をしてるのならそう思われても仕方無い。
激しい不安と後悔に陥る中、ふと携帯が鳴り響けば慌ててそれを取り応答する。
相手はどうやら支配人、どういう風の吹き回しか明日は休みをくれるらしく小さく首を傾げつつ受け入れては携帯を置いて。
幾ら休みと言えども相手とは喧嘩してるしする事も無い、居酒屋のバイトは午前中のみ。
久し振りにたっぷり寝るか、なんて考えては取り敢えず朝からのバイトの為浴室へ向かいさっさと寝ようと考えて。
( 翌日、バイト先にてテキパキと仕事に取り組んでは何とか相手に謝るタイミングを図るもやはり素直になれずにいて。
眉を下げ休憩時間を終えてはホステスと共に新人が来てるのに気付きそちらへと向かって。
軽く挨拶を済ませチケットの礼を言われるも首を横に降っては気にしなくて良いと。
『でもほら、あそこのプラネタリウムって家族向けじゃないから少し高いじゃない』
『確か…カップル向けなんですよね、演出も通常よりロマンチックに出来てるから高いって』
『どうしてそんなチケット手配したのに行かないの』
「行く人いないんだよ。先に誘われてたみたいで」
( 素っ気無く言い気にしてない振りをしては注文を受け中房へと戻って行って。
(/ふおお全然大丈夫ですよ!!!
寧ろ素敵展開美味しいです(^q^)
わ、私のが色々日本語おかしいと思いますけど…「あ??何だこれ意味分かんね」ってなったら是非言って下さいね!!!!!
そしてそして毎度の如く菊君素敵です←
我が儘な繿に頑張って尽くしてくれてるの見ると涙止まらないんですけど((ry
もう嫉妬とか束縛とかこの微妙な距離感とか全部大好きなんでs←
これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
>桐崎
(相手が午前中のバイトを終える頃、すれ違いで指定された時間に支配人の店へ訪れては着てきた服で良いと言われて客のいる席に行き笑顔を貼り付けながら挨拶するも男性客は不満気に舌打ちされて。
『なんだよ。繿くんじゃないのか。俺は繿くん目的で来たんだけどな』
「すみません。彼、臨時だったのでいつもはこの店にいないんですよ」
『ええ、そうなの。うわあ、最悪。せっかく繿君のために色々持ってきたのに』
(あからさまに溜息を吐く男の足元にある紙袋の中には明らかに女物と思われる服が入っていて、いったい相手に何をさせるつもりだったのだと男を睨み付けそうになるのを堪え「そう言わずに呑んでください。今日はあなたの好きなロゼワインが入ったんですよ」と何とか機嫌を取ろうと酒を進め。
内心、こんな変態男を相手に近付けさせた自分が許せず勝手に相手の仕事を変えたことを至極悔やみつつ心の中で何度も相手に謝って。
(夜、短時間で上がらせて貰うも疲労感は半端無くやはりまだ身体が拒否反応をしてしまうなと溜息を吐き。
相手にもっとちゃんと謝ったほうが…と携帯を出すが、束縛しないで欲しい的なことを言われたばかり。
何より距離を置くと言ってしまったしなと携帯をポケットにしまったところ、バイト終わりの男子生徒に出会して。
『あ、先輩。…どっかで呑んできたっすか?お酒と煙草の匂いしますけど』
「匂い、そんな分かるか?……ちょっと付き合いで居酒屋行ってたんだよ」
『へぇ?…あ、そう言えばまだプラネタリウムの返事ちゃんと貰ってないっすけど…』
「…だから…」
(行かないって言っただろと言おうとして共同スペースで相手が新人にチケットを押し付ける光景が浮かんでは“あの二人は一緒に行くんだ”と馬鹿な勘違いを未だにして。
_相手と新人の関係が良いのは確か。だがそれ以前に相手は自分を“重たい”と思ってる。
ならば男子生徒と友達として仲良くしてるところを見せれば少しは束縛感が軽減されるかと。
いや、そんなのは良い子ぶった言い訳で本当は相手が嫉妬するところを見て自分への愛を確かめたいだけで…_。
「…分かった。空けとく。でも今忙しくて一日は空けられないから午前だけな」
『まじっすか?じゃ明日でいいっすか?』
「…ああ、いいよ」
(プラネタリウムがカップル向けなんて知らずに、男子生徒を利用するという最低な行いをするもまあ“友達としてだし”と軽い気持ちでいて。
(/いつもながら暖かいお言葉有難うございます。
いえいえいえ、いつも綺麗なロルで感心しております!
幼稚な自分が恥ずかしいです(汗
中身がいつまでたってもお子様なもので←
嫉妬束縛歪んだ愛いいですよね。
菊なら繿くんを縛りかねn(ry
こちらこそこんな変態にお付き合いいただけるなら今後もよろしくです!!
>露木
( 翌日、はしゃぐ犬の如く分かり易く喜ぶ男子生徒は相手と共にプラネタリウムへと訪れて。
カップルで賑わうそこはやはり飾り付けやらも恋人向けに出来ており男子生徒はそれに気付いてるのか気付いてないのかチケットを受け付けにて購入して。
暫く館内を見て回ってプラネタリウムの上演になるまでの時間を潰してた所でホステスと共に来ていた新人が相手と男子生徒に気付き駆け寄って。
『あ、あれ新人ちゃん??何で一人なの??』
『えと…チケット貰ったんで、…希久さんと』
『……………そうじゃ無くて、………桐崎は』
( 新人は男子生徒の問い掛けにきょとんとしつつ、状況も知らずに『何か…行こうとしてた人に予定が出来たらしくて、…勿体無いからって』と。
ホステスが新人に駆け寄り時計を見ながら『あら、そろそろ始まるみたいよ』と笑顔で言っては新人と共に先に会場へと向かって。
男子生徒は一瞬難しそうな顔をするも何も言わず、パッと笑顔に切り替えては『俺達もそろそろ会場入りますか』と。
( その頃、自分は午前中のみの仕事を早目に終わらせ切り上げてはコンビニへと寄り寮へと向かって。
部屋に戻るなり暇を持て余すかの如く買って来た雑誌やらを見ていて。
喧嘩をしてなければきっと今頃相手と共にプラネタリウムを見ていてはにかむ様なあの笑顔を見せてくれていたのかもしれないのに、と項垂れて。
まだ何処か期待してる自分が居るのか、携帯を見詰めては連絡無しの様子に溜息を漏らし雑誌を顔に乗せたまま眠りに付いて。
>桐崎
(訪れたプラネタリウム、やたらカップルが多いことにそわそわしてると新人とホステスに出会し、新人の言葉を聞いて漸く自分が誤解していたことに気付き動揺する。
_あの時、相手が新人にチケットをわざわざ二枚渡した時に気付くべきだった__。
今更気付いても_と嬉しそうにする男子生徒を横目で見てはどうしようと俯き。
『…先輩?はやく行かないと始まっちゃいますよ』
「あ、…えっと……」
『…………まさか先輩、いまさら辞めるなんて言いませんよね?』
「…、………」
『駄目っすよ。今日はそんな我が儘聞かないっすから』
「…御免でもやっぱり初めては桐崎とが良いんだ。…それにカップル多いみたいだし」
『はぁ……一度俺と来るって言ったっすよね。気分屋というかちょっと自分勝手じゃないっすか?』
「…………」
『あ、いや。何でもないっす。今の気にしないでください。その先輩と行けなくなると思ったらつい…。…分かった!じゃあこうしましょう』
(笑顔で言われた途端、不意をつくように肩を抱き寄せられてはパシャリと写真を取られて男子生徒はすぐさまその写真を相手のSNSに送って《先輩とプラネタリウム来てる。羨ましいだろ》と。
その内容に冷や汗を流し「おいッ!!」と焦ったように男子生徒の腕を掴むとニカッと笑顔を向けられ『これで桐崎がどうでるか様子見ましょうか。先輩、桐崎のこと嫉妬させたかったんすよね?』と見透かされ会場に向かうかと思えば館内のカフェに入っていき。
「…磯貝?」
『今日はプラネタリウムはなし。チケットは期限一ヶ月っすから大丈夫』
「…え、でも」
『細かい事は気にしたら駄目っすよ。俺は先輩の気持ちを優先したいだけっすから』
(微笑む男子生徒に“どうしてそこまでしてくれるんだ”と眉を寄せつつ、その心遣い感謝しては男子生徒の秘める想いも知らずに相手から連絡はないかと携帯を出すも男子生徒に取り上げられて『今は我慢。連絡したら駄目っすよ』と言われて。
何度か取り返そうとするも店内であまり騒がしくしては周囲に迷惑だと途中で諦めて、暫くカフェ内でコーヒーを飲みながら相手はどんな反応をするだろうと落ち着かずにいて。
(数時間後、支配人のバイトの時間が迫ってきたため男子生徒とカフェを出てバイト先まで送ると言われるも流石にバレてはまずいと迷惑かけたしこれ以上はと断って。
『別にいいっすけどね。…ところで何のバイトっすか?レンタルショップとは方向違いますよね?』
「あ、いや…えっと…居酒屋だよ」
『どこのっすか?』
(意外と追求してくる男子生徒にえっと…と目を逸し冷や汗を流しては「もう時間が…」と誤魔化し逃げようと。
>露木
( 怪しい様子の相手を男子生徒が見過ごす筈も無く相手の肩を掴み寄せては『先輩知ってる??此処ら辺一体の店は全部磯貝グループと木ノ宮グループが仕切ってるんすよ、俺達がちょっとやそっとの金持ちじゃ無いって事忘れないで欲しいっす』と僅かに脅しが混ざった言葉を述べて。
『まぁでもそっちは木ノ宮グループかな、俺達如何わしい店には関わらないんで』
( 何時ものへらりとした笑顔に戻り上記を言っては『バイトっすよね、お疲れ様っす』と言い相手に背を向けて歩き出して。
相手の死角、相手に背を向けたまま徐に携帯を取り出しては部下へと連絡を取り『あ、どもども。あのさ、木ノ宮グループの若頭さんに話が有るんだけど明日懐石料理屋さん一室取っといて。それなりに迎えなきゃでしょ、ん??何を聞くかって??………俺の大切な人がどんな所で働いてるのかちょーっと調べるだけ』と。
支配人の店、それは若頭の目を盗み経営してるに過ぎず支配人は支配人なりに己の権力を持って正当に聞こえる理由を作ろうとしていて。
( その頃自分は深い眠りに落ちる事は無く夕方に目が覚め恐らく来てないであろう相手からの連絡を確認すべく携帯を開いて。
“やっぱり来てないか”と溜息を付きふと開いたSNSの通知に男子生徒の名前があるのに気付いては特に疑いも無く開いてしまって。
開いた後に激しい後悔に襲われては悔しそうに唇を噛む、きっと相手は今日男子生徒と共にプラネタリウムに行って楽しんで来たのだろう。
本当は相手の隣に自分がいる筈だったのに。
子供の様な嫉妬に駆られ男子生徒からの写真に既読を付けた事にも構わず相手へ《随分磯貝と仲良いんだな、今日も楽しんで来たんだろ。お前らお似合いだよ》なんて嫌味めいた文を送ってしまい。
激しく後悔するも時既に遅く携帯をベッド上にボフリと投げやっては項垂れて。
>桐崎
(支配人の店、男子生徒の言葉を気にかけながらも今は目の前のことに集中しようと『繿君いないの?』と不満そうにする客に笑顔を貼り付け酒を注いで。
数時間、スキンシップはさほど無かったものの散々呑まされて店仕舞いするころには客を送り出せないほどベロンベロンになってしまい机に突っ伏してしまっては『此奴、つかえねーじゃん』と罵る従業員の言葉も耳に入っておらず。
ぼんやりする意識の中、情けないなーと自分を責めながら相手の声が聞きたくてほとんど無意識に携帯を取り出しては相手からのメッセージに気付きそれを読んで。
始め内容が入ってこなかったが徐々にそれを理解するとポワンとする思考で“あれ…これ怒ってるけど妬いてくれてるのかな”なんて普段は落ち込む筈が呑気に考えては完全に酔っ払った頭で謝罪と弁解とからかいの言葉を打つも実際は《ごてん、磯はいと…?@&$__》と滅茶苦茶な文章になっていて。
そんなことも気付かずSNSの画面を開いたままぼんやり相手との甘いトークを見返して頬を緩ませてはそのままウトウトしてしまい。
それを不満そうに見ていた従業員は何を思ったのかこっそり自分の隣に座り肩を抱くと自分の腕を自身の首に掛けさせその姿を自分から奪った携帯でパシャリと撮り。
『え、先輩何してるんですか?』
『あ?此奴、男いて生意気だからちょっと悪戯』
(従業員は後輩にニタリとすると今撮ったばかりの写真をそのまま自分の携帯から相手のSNSに送りつけて《お楽しみ中》と短文を送り、その直後に自分にバレないようトーク画面から画像と今送った短文メッセージを削除して。
その写真はどこぞの店で自分が客として“男遊び”をしているところに見えなくもなく。
そうとは知らず呑気に数時間後に目を覚まし、酔い潰れたことに蒼白になってはまだ残っていた従業員に深く頭を下げて店仕舞いを手伝うとその日はアパートでぐっすり眠りに落ちて。
(翌日目を覚ましたのは昼過ぎ、すぐにバイトの準備をとぼーっとする頭でのろのろと身支度を済ませては特に携帯も確認せずにアパートを出て。
男子生徒が若頭と会っていることも従業員が悪戯したことも全く知らずに、まだ昨日の記憶があやふやな頭でそう言えば相手からの返事がまだだなと思い込んでは昨日男子生徒としたことの後ろめたさを感じながら緊張の面持ちで携帯を取り出したところ。
>露木
( 翌日、高級料亭の一番奥の一室にて若頭と男子生徒が向かい合う様に腰を下ろして居ては男子生徒が何時もの笑顔で『木ノ宮先輩、お久し振りっね。こうして家絡みの話をするのは』と。
『ほんとだよ、磯貝君は元気だった??僕は暫く仕事から手を離しててね。ロサンゼルスの会社と契約がどうのこうのってさ』
『うわ、流石っす。てかお願いしてたの持って来てくれました??』
『あぁー、あれでしょ。こんなの何に使うのさ。ホスト街の店舗名と…店を経ち上げる為の契約書、それから今の従業員のデータ。常に更新されてるから』
『すみません、助かるっす』
( くしゃりと微笑み若頭からiPadを受け取ってはにっこりと微笑み若頭の飲む酒にお酌して。
敢えて理由は言わずに食事をしては『木ノ宮先輩相変わらず女子力高いっすね』なんて言って。
( その頃、昼過ぎに目を覚ました自分はのそのそと携帯に手を伸ばし来て無いであろう相手からの連絡を期待し確認して。
そこで目にした写真に思考が真っ白になり、なんで態々自分に報告したんだと思うのと共に苛立ちやら嫉妬やらが入り交じり唇をきつく噛み締め携帯を強く握っては《俺の部屋の合鍵返してくれる??どうせもう必要無いだろ。もうあんたには会わない》と身勝手な文を送り付けて。
相手は男好きなんかじゃないと思ってた、自分だってこんな仕事をしてた訳だし女好きに思われても仕方無いと。
しかし相手は違うと思ってたが結局自分は恋人に見られてた訳では無く“一人の男”に過ぎなかったのかと思えば虚しくなり八つ当たりする様に煙草に手を伸ばし。
>桐崎
(携帯を取り出したところ少し前に相手からメッセージが届いていたようで微かに指を震わせながら見てはその内容にサッと血の気が引き思わず足を止めその場に立ち尽くす。
何度読み返しても同じ文で読み間違えでないと分かり“なんで”と身勝手な疑問を抱く。
一つ前の“磯貝とお似合いだ”という相手からの見覚えのない(読んだ記憶が無い)メッセージ。
従業員に悪戯されたとも知らず相手の気持ちが自分から離れてしまったと思っては胸が急激に苦しくなりまた無意識に能力が解放され髪が揺れるもすぐに鎮静したため気付かずに。
まだ現実が受け止めきれず“終わったんだ”とただ漠然と思えば本当は縋り付きたいほど相手と居たいのに返信もせずにフラフラと支配人の店に向かって。
(支配人の店、接客に集中出来るはずもなく何度も失敗しては客や先輩に頭を下げ、不甲斐ない自分に更に気分が落ち込むもそんな時に何故かVIP席から指名が入り。
いったい誰がと行ってみるとソファに腰掛け笑顔で手を振る男子生徒が居て思わず後退るも『先輩、俺客っすよ?』と軽く脅されては恐る恐る隣に座って。
「…桐崎には…」
『言ってないっすよ。あ、先輩が何でこの店にいるかも俺全部知ってますから』
「…え?」
『だって俺此処のオーナーになったっすから。今さっき』
「は?」
『此処の店の権限を買収したって言ってんすよ。だから俺が此処で何をどうしようと自由。…先輩を辞めさせるのも簡単っす』
(そう言われるなり腕を強く引かれては悔しそうに表情を歪める支配人の横を通りすぎ店を出て人気のない空き地まで来て。
「おい、いいのかよ。あの支配人、怒って何かしてくるんじゃ…」
『あそこは木ノ宮グループのテリトリー。でも権限は磯貝グループにある。流石にあの人も2つの組織を敵に回すなんて無謀な考えはしないっすよ。……そんなことより先輩』
(突如声を低くする男子生徒に顔を寄せられ『桐崎と何かあったんすか?』と見透かすように言われ耐えられず目を逸し。
今は相手のことを思い出すだけでも辛い。何もかも自分の独占欲が強すぎたせい。
苦しい_胸が痛い、そう感じた瞬間また能力が微かに解放され髪が揺れて『…先輩?』と訝しげに問われては自分の中で何かがプツンと切れて“もうどうでもいいや”と最低なことを思えば男子生徒の腕を取り、以前“客”を取っていたときのようなあざとい目をして「磯貝、俺と寝るか?」と。
その後、返事を聞かずに手を引いては一件のホテルに入っていくも自分の手が震えていることに全く気付かず。
同刻、その様子を支配人が隠し撮りしており抜かりなく相手に写真を送っては《あなたの恋人、とんだ遊び人みたいね》と店を買収された腹いせに嫌がらせをして。
>露木
( 何本目かも分からない煙草を灰皿に押し付けた所で頭をガシガシと掻き乱しシャワーを浴びては居酒屋のバイトへと向かおうと準備を始める。
その刹那、携帯が鳴り響き支配人からのメールに気付けばその内容の眉を顰めて。
やはり自分は相手の中で特別だった訳では無かったのかと激しく落胆しては取り敢えずバイトへと向かい全てを忘れ仕事に打ち込もうと。
( その頃、ホテルにて震えながら男子生徒の上に乗る相手の髪に指を絡めては『先輩、俺の事からかってる??』と何時に無く真剣な眼差しで見詰めて。
『俺先輩の事好きなんすよ??こんな事されたら…ほんとに自分抑えられなくなるじゃないすか』
( 眉間に皺を寄せ相手を押し倒し唇を奪うも相手の瞳が僅かに揺らいだのに気付きゆっくり顔を離し。
『……………これで我慢してやっても良いっすよ、でもまださっきみたいな事言うなら俺我慢しない』
( 相手に跨ったまま上記を言えば相手の頬を優しく撫でて。
( バイトの休憩時間、裏口から外へ出て煙草を咥えていれば何時ぞやの能力者の男(槙島)が此方に気付き歩み寄って来るのに気付いて。
前より幾分表情は穏やかで緩く微笑んでは『君、俺の事警察に言わなかったの??』と。
「何で俺が言わなきゃなんだよ」
『いや…許されない事したからさ。それより露木とは…』
「悪いけど、…彼奴の名前聞きたくない」
( 意味が分からないと言う表情で見つめて来る能力者の男に小さな溜息を漏らしては視線を逸らすも『煙草、一口頂戴』と言われては咥えてた煙草を取られ。
「吸えたんだ」
『んー、…でも美味しくは無いね』
「なら返せ」
『はいはい。……………露木はさ、頑固なんだよ。ちょっとやそっとで恋人を裏切る様な奴じゃないし』
「……………」
『分かるんだ。俺、…多分今回も誤解があるんじゃないかなって』
「……………そんなんじゃねえよ」
『ま、俺の能力頼りたくなったら言って。桐崎君には沢山迷惑掛けたし。…子供になると素直になれるよ』
「良い、どうせ直ぐバレる」
( サラリと言い返し煙草を灰皿に捨てては一瞬何か言いかけるも言葉にする事は無くバックルームへと戻って。
>桐崎
(男子生徒から口付けられ激しい後悔と罪悪感に苛まれては自分がどうしても相手を愛おしく離れられないことを自覚してしまい瞳を揺るがせる。
それでも相手は自分の元には戻らない__自分が心が狭くて我が儘で重たいから。
たとえ相手が自分を許しても、きっとまた相手を困らせて、嫉妬と束縛で相手を傷付ける。
それならばいっそ__と頬に優しく触れる手に自分の手を重ねては「我慢、しなくて良い」と切なげに微笑み男子生徒の首に両手を引っ掛けてそっと唇を重ね腰に腕を回し抱き寄せて。
「……繿を忘れさせて。俺から繿を消して…」
『…先、輩?』
(戸惑った声が耳元で聞こえるもすぐに抱き締め返されては身体が震え出すも「やめるな」と此方からせまりその後殆ど声を上げることなく行為をすすめて。
不思議とその時だけはトラウマが支配して相手のことを忘れられた気がしたが終わった途端再び後悔が押し寄せる。
_でも後戻りなんて出来ない。と頑なになっては男子生徒に背を向けるようにして眠り。
(翌朝、男子生徒に起こされて昨夜のことは夢ではなかったんだと表情を曇らせシャワーを浴びてはルームサービスのコーヒーを飲む男子生徒の元へ行き。
「昨日は悪かった。磯貝…女好きになってホスト始めたばかりなのに…」
『ブッ、…先輩それ本気で言ってるんすか?…昨日の俺の話聞いてました?』
「俺に…合わせてくれたんだろ?」
『………先輩そりゃないっすよ』
(吹き出したコーヒーを拭いながら項垂れる男子生徒を今は訝しむ余裕もなく「…悪い、用事あるから先、出るな。…これ、ホテル代」と昨夜払って貰った代金より多めに置いて行くと返事も待たずに勝手に出ていき。
(そのすぐ後、兄を喫茶店に呼び出しては驚くほどはやく来た兄と向き合うように座り、どうしたのか聞かれる前に合鍵を差し出して。
「俺、昨日磯貝と寝た」
『え?…はい?!…ちょっと俺が目を離した隙に何があったのさ』
「…ネックレスもペアリングも捨てて良いって言っておいてくれ。あと御免って」
『直接言えば?』
「…会ったら抑えがきかない」
『………はぁ…もう分かったよ。振り回されるのには慣れっこだから』
(兄はそう言って合鍵を受け取ると店の隅に行き何やら電話をして『あ、槙島くん?…俺、綸だけど。…そうそう繿の兄の。ちょっと君にお願いがあってさ』と能力者の槙島に連絡を入れては相手を子供にしてくれないかと頼んでいて。
>露木
( 翌日、寮に訪ねて来た兄と能力者に何事かと思うも兄に合鍵を手渡され相手からの伝言を言われては自分から壊した関係なのに本当に終わってしまったと。
鍵を受け取り用事は済んだだろうと部屋の扉を閉めようとするも兄にそれを防がれ能力者が強引に入って来ては床に倒されて。
直ぐに兄に抑え付けられ“何をするんだ”なんて問い掛ける余裕すら無く額に手を翳されて。
目眩に眉を寄せ次に目を開いた時には全てがやけに大きく見え状況が理解出来ず辺りを見回す。
『これ、服ね。サイズもぴったりだと思う』
「…は??」
『うっわ流石だね。子供になっても生意気な顔ー』
( 段々と纏まった思考と共に能力者に掴み掛かろうとするも兄に軽々と持ち上げられては適わず。
子供用のジーンズとシャツを着せられすっぽりとキャップを被されては『さて、行きますか』と言う兄に訳も分からず抱き抱えられて。
( その頃兄は全てを測っての行動なのか予め相手を昨日の喫茶店に呼び出して置いては能力者と別れ子供の自分を連れ喫茶店へと訪れて。
『孤児院の子なんだけどさ、今日出掛ける予定だったの忘れてて。同伴しても良い??』
( サラリと嘘を並べる兄をギロリと睨み「…お、俺帰る」と言うも無理矢理首根っこを掴まれては強引に膝に乗せられてしまい。
『あ、菊伝言伝えといたよ。鍵も渡しておいた』
( 兄の言葉にピクリと反応しては動きを止め、深く被ったキャップの下からさり気なく相手を見詰めて。
>桐崎
(翌日、一切眠れず目を覚ますと兄からの呼び出しがあり外に出る気など起きなかったが支度をして。
ふといつものように相手と揃いのピアスとペアリングをしようとして手を止めては、相手には捨てて良いと言った癖に自分は手放せる筈がなくストラップと一緒に大切に引き出しの奥にしまっては指定された喫茶店へ向かって。
(喫茶店につくと程なくして兄と見知らぬ少年(相手)が訪れて、どことなく雰囲気が相手に似ている少年をまじまじと見てしまうも兄の言葉にピクリと反応して分かりやすく表情を曇らせ。
「…何か言ってたか?」
『特に何もー』
「そっか……」
『ねえ、磯貝君と寝たって本当なの?』
「おいッ、子供の前だぞ!」
『いいよ。どうせ分からないし。で、どうなの?』
「…………忘れたかったんだ。…でも、後悔が増しただけだった」
『だろうね。……それでこの子、暫くお願いしてもいいかな?俺の部屋は駄目だから菊のアパートで。どうせ“あのバイト”辞めて暇でしょ?』
(何で知ってるんだという突っ込みはもうせずに小さく頷いてはキャップの下に隠れる顔を覗き見ようと首を傾けるも顔を逸らされてしまい「恥ずかしがり屋なんだな」と小さく微笑み。
(その後、やけに懐かない少年(相手)と少しの間一緒にいるという兄と共にアパートに来ては可愛らしい少年に心なごませつつ洗面台の下に踏台を置いて後ろに立ち手を洗うのを手伝っては途中で買ったオレンジジュースを渡して。
「それでいつまで見てればいいんだ?」
『ん?暫く?』
「……そんなテキトーな」
(呆れたように言いつつ未だにキャップを深く被る少年に目を写しては手を伸ばしキャップを少しだけ上げて目を合わせ。
相手と同じ綺麗な紅い瞳と銀髪に目を見張るもまさかなと思い「綺麗な瞳だな」と微笑んでは相手の柔らかな頬を軽くむにっとするように撫で目元を撫で「どこか行きたい場所ある?それともお腹空いてる?」と優しく尋ね。
>露木
( 兄の問い掛けに答える相手をまともに見られず俯いては唇を噛むも顔を覗き込まれそうになれば慌てて視線を逸らして。
無愛想極まりない可愛くも無い子供なのは自分でも分かってたがバレてしまうんじゃないかと言う恐れがそうさせてしまっていて。
( 相手のアパートにて、渡されたオレンジジュースに小さく頭を下げては兄の言葉にハッとし慌てて兄の服の裾を掴み“寮に帰せ”と視線で訴えて。
『こら、離してー』
「つ…連れてけよ!!!」
『年上に向かって何ですかその口の聞き方は』
「黙れって、ほんと巫山戯んな!!!」
( ピシッと額を弾かれてはさっさと出て行く兄の後姿を悔しそうに見詰めおずおずと端に腰を下ろす。
不意に近付いて来た相手にキャップを持ち上げられては僅かにビクリとするも優しい微笑みと言葉に愛しさと落ち着きを感じ俯いて。
暫くだんまりを決め込んでたが子供姿だけありそわそわとしてしまい「…ちょっと、コンビニ行きたい」なんて可笑しな事を言っては相手と共に近くのコンビニへと訪れて。
( 相手との待ち合わせ時間などにいつも来ていたコンビニ、適当に見て回る振りをしつつ相手の死角で携帯を取り出しては兄に連絡をして。
「お前マジ巫山戯んな、さっさと迎えに来い」
『だーめ、後で行くから。後で』
( 軽くあしらう様な兄の態度に腹を立てつつ相手が此方に来るのが見えては携帯をしまい相手の隣へと戻って。
その刹那、スイーツコーナーにホステスと新人の姿が見えては慌てて相手の後ろに隠れるも愛想の良いホステスは相手に気付き笑顔で駆け寄って来て。
それに続き新人も来ては相手の背後で落ち着きなくしていて。
>桐崎
(訪れたコンビニ、店内の奥に行く少年(相手)を横目で見つつ本当に似てるなと流石に怪しみ以前自分の身に起きた災難を思い出してはまさかと能力者、槙島のSNSを見てみたところTLに《韓国旅行中》と写真付きであり勿論自分が怪しむのを見込んだ嘘なのだが、見事に騙されては旅行中なら相手を幼児化するのは無理かと思い目の前の少年は相手とは別人だと信じこみ。
その時、相手が寄ってきたかと思うとホステスと新人が近づいてきて軽く挨拶すると二人が少年(相手)を見て『『可愛い!!』』と声を揃えて頬を綻ばせ。
「孤児院の子でちょっと預かってて」
『へぇ、繿にそっくりねー』
『私も思いました。お名前は?』
(ニコニコと相手に接する二人を頬やましげに見ていると新人がおどおどしだし言いにくそうに自分に顔を向けて。
『あ、あの…実はずっと前に間違え電話だと思うんですが…繿君から露木さんを誘う留守録が残ってて……その、まだ誤解してるみたいだったので一応…』
(御免なさいと謝る新人に「…いや、話してくれてありがとう」と笑顔を向けつつこれ以上期待させて相手を思い出させないでくれと心に影を落とし。
_相手はこういう二、三歩後ろに下がった清楚で可愛らしい女が好きなんだなと勝手に思ってはコンビニをホステスと共に出て行く新人を無意識に嫉妬の目で見てはハッとなって相手に向き「何にするか選んだか?」と。
それから何となく“相手”の一番好きな種類のプリンを買っては小さな手を繋いで近くの公園に行きベンチに並んで座ってプリンを食べ。
「こっちも食べてみる?これね俺の好きな人…_いや、兎に角美味しいから食べてみて」
(“好きな人のお気に入り”と言おうとして相手を忘れたいのに何やってんだかと自分に呆れ、気を取り直して相手の小さな口にスプーンを持って行き「美味しい?」と微笑んで。
その時SNSの通知がなっては男子生徒からで《今日の夜アパート行っていいっすか?》と。
《悪い、今子供預かってるからまたにして欲しい》とすぐ返信しては食べ終わった相手に向いて「ちょっと身体動かそうか」と完全に相手を子供として扱い滑り台やブランコをして遊んで。
相手を子供用ブランコに乗せてユラユラと揺らすころ、ボールを持った数人の子供達が近づいてきて『一緒にドッジボールしよう。人数足りないんだ!』と相手を誘ってきて。
恐らく相手より年上の子供達、相手が怪我したらと懸念しつつ「どうする?やってみる?」とブランコに座る相手の目線の高さに屈んで尋ねてみて。
>露木
( 相手と共に訪れた公園にて、内心穏やかで無かったが自分だと気付かず優しく接してくれる相手に流され遊具で遊んで居れば数人の小学生に囲まれて。
流石に小学生の中に混ざるのは嫌だと断ろうとするも一人の少年に手を引かれては渋々そちらへと向かい。
ドッヂボールなんて何年ぶりだろうかと思うも中学時代の一年はバスケをしてた事もありボールには慣れてるつもりで。
1試合のみをし直ぐに相手の元へと戻れば「勝った」と無愛想に告げキャップを深く下げて。
( 再び帰り道を行く途中、兄からの連絡はまだかとそわそわするも相手の前で自分の携帯を取り出せる筈も無く何とか機会を伺って。
相手の部屋に居れて貰いそこで初めて帽子を取っては子供の足で歩いたからかうとうととして。
人の部屋にも関わらず居眠りをしては夢の中でも相手をひたすらに追い続けていて。
( 自分が呑気に寝息を立ててる間、強引に男子生徒が訪ねて来ては自分に気付かず相手に菓子やジュースやらの入った袋を手渡しては『ねぇ先輩、居れて』と人懐っこく頼み込み部屋へと入って。
『あれ、どうしたんすかこの子…ってうわ、桐崎の親戚か何かっすか??』
( 部屋の端に寝転ぶ自分に分かり易い反応をしつつ小さなテーブルに相手と向かい合う様に座っては『はい、先輩を辞めさせる為の契約書類』と相手に1枚の紙を手渡し。
丸で先日の事など無かったかの様に接する男子生徒は一呼吸置き真剣な眼差しを相手に向け『それで、忘れられたんすか』と。
『言っときますけど俺の気持ちは変わらないんで』
( サラリと告げ買って来た菓子の袋を開けつつポッキーを相手の口にやっては男子生徒も一本食べて。
『おーい、お菓子食べない??』
( 軽く自分の肩を揺すっては様子を伺うも起きる気配は無く、代わりにパーカーの下に着てるシャツの隙間からペアリングの付けられたネックレスが見えてはピクリと眉を寄せ無言でそれを衣服の下にしまって。
>桐崎
(幼児とは思えない運動神経に自分だけでなく小学生たちも驚いていて、ませた態度で勝利を告げる少年(相手)が不思議と愛おしく思えては「お疲れ様」とキャップの上から頭を撫でて、どことなく落ち着かない様子を不思議に思いつつアパートに戻り。
(兄からの連絡はなく夕方になれば寝息を立てる少年(相手)の可愛らしい寝顔に頬を緩ませこっそり写真を取っていたところ、男子生徒が訪れ帰す訳にもいかず中に入れ。
差し出された契約書類に目を通しつつ問い掛けに胸を痛め俯いては男子生徒が相手のネックレスを隠したことに気付かず「…此れサインしといた。色々迷惑かけたな」と書類を渡し、以前のこともあり帰れとも言えずに「夕飯、食べてくか?」と逃げるように台所に向かい。
と言ってもワンルーム。姿は見えるため男子生徒の視線を感じつつ三人分の食事を作りお菓子を片付けようとしたところ、突如男子生徒に腕を引かれて部屋の隅に連れられては相手の眠る場所を隔てる敷居のカーテンを閉められて。
『先輩、あの子供ほんとうにただの子供っすか?』
「は?何言ってるんだよ。ただの子供以外に何があるんだ」
「……まあいいっすけど」
(神妙な顔をする男子生徒を見詰めてはホテルでのことを思い出しちゃんと謝ろうと口を開くも『謝ったら駄目っすよ。気持ち変わらないって言ったすよね』と遮られ。
その真剣な眼差しに一瞬心が揺らいではまた一時でも相手を想う苦しみから解放されたくなって最低と分かっていながら男子生徒の唇を奪い。
互いの舌を絡ませ深く口付けるも以前のようにトラウマは支配してくれず相手を裏切った罪悪感が胸を締め付けるだけで「もういい」と身勝手に離れようとし。
『今更。先輩から誘ったんすよ?』
「…子供が起きる」
『大丈夫っすよ。ぐっすり眠ってましたし。…………本当に嫌になったら辞めますから』
(最後の呟きを聞き取る前に再び口付けられては男子生徒の肩を押して抵抗するもビクともせず、自分から口付けたくせに今になって恐怖が芽生え「…繿ッ」と知らずに助けを求めるような声を漏らし。
>露木
( 深い眠りの中で相手と過ごした日々が蘇れば“まだこんなに好きなんじゃないか”と確信するも時既に遅い事も理解していて。
段々と夢の中から意識が戻り僅かに聞こえる物音に瞳を閉じたまま身動ぐも助けを求めるかの様に自分の名を呼ぶ声が聞こえては子供の姿なのもすっかり忘れ「露木!!!」とガバッと起き上がって。
自分の声に気付いた男子生徒はピクリと反応しカーテンを開けては此方を見詰め歩を進めて来て。
無意識に後退り相変わらず可愛くない無愛想な様子で男子生徒から視線を逸らすも頬を軽く引かれてしまえば逸らす事も適わず。
『このお兄ちゃんの名字なんで知ってんのかな』
「…う、うるせ………」
『君色々と怪しい。ちゃんと答えて』
「は…離せ!!!」
( キッと睨み付け男子生徒の手を振り払ってはさっさと逃げようと試みるもやはり抑え付けられて。
持ち前の力を加減しながら発揮する男子生徒の手がポケットのネックレスに伸ばされるのを察しその手に思い切り噛み付けば距離を取って。
「か…帰る」
( 冷汗を流し上記を言いキャップを深く被り直し逃げる様に相手の部屋を出ては兄に連絡し近くのコンビニで合流してはそそくさと寮へと戻り。
( その頃、男子生徒は眉を寄せた難しい表情のまま相手に向き直り。
『怪しいっすよ流石に。何であんな警戒してんすか??………それに』
( ペアリングの事を言おうか迷ったが相手を困惑させては駄目だと首を振っては相手の髪に触れて。
『良いんすよ、俺先輩の事好きだから。怖くなったら御預けされて上げます。………でもさっきのは無理矢理感あったかなー…思春期の男子って怖いんすから。俺意外と野獣っすからね??無防備だと食べちゃうかもしんないっすよ』
( 笑顔でさり気なく相手を気遣いつつ冗談を混ぜては本当は相手と過ごしたかったが怖がらせてしまうかと配慮し『…帰りますか』と小さく息を着いて。
>桐崎
(不自然な態度の少年(相手)が駆け出していくのを見ては相手の姿と重なり妙な気持ちになるもあんな小さな子供を一人出歩かせる訳にはいかないと出掛ける準備をしながら念の為兄に連絡をいれては『大丈夫だよー』と呑気に返事されて呆気に取られつつ安堵して。
次ぐ男子生徒の気遣いの言葉に自分に非があるだけに居た堪れない気持ちになっては謝罪をして「これ、いらないだろうけど」と先程作った夕飯のおかずをタッパーにつめて渡しアパートの下まで見送って。
(静かになった室内、最近はずっと相手の部屋に居座り一緒に寝ていたせいか酷く寂しく感じて、なぜだか先程の少年が無性に気に掛かっては携帯を取って兄に電話して。
「…綸?……さっきの子だけど俺、なんか気に障ることしたいみたいで…様子が変だったからさ。気になって…」
『それがさぁ、熱出ちゃったみたいで今俺の部屋にいるんだけど子供用の風邪薬ないんだよね。悪いけど菊さ、今から薬局寄ってこっち来てくれない?』
(兄の言葉にそれが嘘とも知らず直ぐに頷いては電話を切って早々にアパートを出て。
一方、兄は電話を切ると部屋から相手を出すまいとしっかりと見張って。
『ってことで君は熱あるってことになってるから。大人しくしててね』
(ニコッと悪気なく笑っては相手の頬をプニプニとして遊び『それにしても、いくら中身が大人だからって一人で出歩いたら危ないでしょ。何かあったらお兄ちゃん泣いちゃうよ』と冗談めかしながら言い『ほら病人なんだからベッドに横になって』とどこか楽しげに言って。
(その数分後、兄の部屋に到着しては走ってきたため僅かに上がった息を整えつつ子供用の薬やら熱冷しシートを兄に渡しベッドに横になる少年(相手)に駆け寄り。
「…大丈夫?さっきは御免ね。…体調悪いって気が付かなくて」
(眉を下げ謝り思ってたほど顔色がいいことにほっとしては柔らかな髪を撫でて、背後で兄がクスクスと笑いを堪えてるのも知らずスポーツドリンクをコップに移し「飲める?」と少年(相手)に差し出して。
>露木
( 自室へ戻れる筈も無く兄の部屋に入れられては相手からの連絡に嘘を連ねる兄に目を見開いて。
どうしてこうも相手と引き合わせ様とするのかを疑問に持ちつつ逃げ出そうともそれを防がれてはベッドへとやられてしまい。
数分後に相手が訪れては相変わらずの優しい様子でコップを手渡して来るのにぎこちなく頭を下げてはそれを受け取り横目で兄を睨み付けて。
熱なんて無いし相手を騙してる事に気が引けたがバレてしまえば更に相手を突き放す事になると。
ベッドの上で胡座を掻き不機嫌極まりない表情をしてれば不意に部屋の扉が勢い良く開き青年が現れて。
どうやら能力者が韓国に行ってる様に仕組んだのは青年の様で良く出来たコラージュ写真を相手に見せては『あー俺も行きたいなぁ』と態とらしく言って。
抵抗虚しく青年に抱き抱えられては丸で台本を読むかの様に兄が『そう言えば繿は??』と。
『兄さんね、最近別のバイト始めたみたいだよ。だから暫く寮には帰れないって』
『何、女の人絡みの仕事??』
『違うもーん。そんな事しないって言ってた』
( フイと顔を背ける青年を呆れた様に見詰めつつ抱き抱えられるのは子供扱いされてる様で不満に感じ抜け出そうと試みて。
しかし青年が許す筈も無く自分を抱えたまま相手に向き直り。
『兄さんとそっくりでしょー、この子』
「お、下ろせ」
『何で似てるか分かる??親戚らしいよ』
( クスクスと笑いながら青年が擽って来るのに耐えられず身を捩らせてはその際に相手と揃いのペアリングが付けられたネックレスが落ちて。
一瞬の静寂と共に兄が『あ、…それ君が預かってたんだ!!!よ、良かったー』と咄嗟な嘘を付いて。
気付いて欲しい様な気付かないで欲しい様な微妙な感覚に捕らわれては青年の腕から逃れて。
>桐崎
(青年が持ってきた写真に目の前の少年が相手でないとすっかり騙され続けては兄の放った“繿は?”という問い掛けに小さく肩を揺らして耳を塞ぎたい気持ちになりながらもしっかりと耳をそばだてて。
その内容に新人と付き合い始めたからだろうかと悲観的になっては相手からの連絡のない携帯を見て小さく息を吐き。
そんな時、青年が少年(相手)を擽った拍子にネックレスが落ちるのを見ては目を見開き、青年の腕から逃れた少年(相手)をすっぽり後ろから包むように捉えるとベッドの上に座らせ。
「熱あるのにはしゃがせすぎだ。悪化したらどうするんだよ」
(青年を軽く注意しつつ少年(相手)に向き直っては、どんな風にネックレスを相手から渡されたのか聞きたい気持ちを堪え柔らかな銀髪を撫でて。
(その後、青年が去り相手を無理矢理ベッドに横にさせ寝かしつけるようにしては目を閉じる姿に睫毛長いなと目を細め。
『ねえ、繿とは連絡取ってないの?』
「っ、いきなりなんだよ。……取るはずないだろ。…忘れたいのに彼奴の話しするなよ」
『それで忘れられるの?……他の男とまで寝て』
「………忘れないと駄目だろ。それに分かったんだ。俺じゃ彼奴に負担をかけるって」
『…そうかな』
「そうだよ。…俺さ、彼奴が俺を想うより俺が彼奴を想う気持ちのが強いって自信があった。それくらい彼奴を愛してたし、それで良いと思ってた。でも…相手より想いが強いって要するに重たいってことだろ?実際、それで彼奴を傷つけたし」
『…………』
「俺には磯貝みたいな好きでいてくれる奴のが丁度良いんだ」
(自分自身に言い聞かせるように身勝手な言葉を並べるも、そう簡単に割り切れる筈もなく表情を曇らせて。
『ふーん。…まあいいけど。……あ、俺シャワー浴びてくる。折角だから泊まって行きなよ。その子も菊が居たほうがいいだろうし』
(なんで?と問う前にさっさと浴室に入っていく兄を見送りつつ、此方に背を向けるようにして横になる少年(相手)の布団をかけ直そうとしたところ首筋に相手と同じ火傷の痕や耳にピアスホールがあるのを見て手を止めて。
僅かに動揺しながらゆっくりと首筋に触れてはそっと傷をなぞり、小さな肩に手を置いて恐る恐る仰向けにさせては「…繿?」と半信半疑に声を漏らし顔を近づけ少年(相手)の頬に触れて。
>露木
( ネックレスに対しての兄の下手糞な言葉も今は助けになり何かを抑える様な切ない表情をする相手を見詰めては唇を軽く噛んで。
真実を言えない歯痒さを感じながら視線を下にやっては気不味そうにして。
( 青年も帰りまだ熱があると思われてる為ベッドにて寝かし付けられては子供姿の為かなり労力を使う所為か直ぐに寝入ってしまって。
寝ても覚めてもそこに有るのは相手の姿、ぼんやりと追い求めるかの様に眉を寄せるも首筋のなぞられる擽ったい感覚に目を捩らせる。
ボソリと聞こえた自分の名前にゆっくり目を開けては相手を見詰めるも漸く思考がはっきりしてはガバッと起き上がり距離を取ろうとして。
しかし何時までもこうしてられない、ピアスホールや傷痕を見られたとも知らずに子供のフリを続けてはネックレスを取り出して。
「預かってろって言われたんだ。……………あ、あんたは………捨てたのか??…いや、なんか揃いのって言ってたからさ、………」
( しどろもどろと言っては流石に怪し過ぎただろうかと不安になるもどうしても相手の気持ちが知りたくて言い訳を作って。
さも第三者であるかの様に言うのを務めるが段々と本音が漏れて来てしまい。
「………他の男が良いって、………ほんと??………べ、別に俺本人に言ったりしないけどさ。………でも…あんたが他の男と仲良くしてたら………絶対嫌だ。………と思う」
( 小さな声で上記を言い終えては溜息を漏らしネックレスを再びポケットにしまいこんで。
>桐崎
(勢いよく起き上がり自分と距離を取る少年(相手)。その少し挙動不審な態度が相手の仕草にそっくりで更に疑惑が深まりネックレスを手にポツリポツリと言葉を紡ぐ少年(相手)をじっと見詰める。
_相手、なのだろうか。しかし能力者の槙島は韓国に行ってるはず…。
何処か浮かない表情の少年(相手)に視線を落としては相手の姿が重なって胸が痛むも何故か相手か確かめるより問いに答えたほうがいい気がしてゆっくり口を開き。
「他の男が良いはずないよ。ペアリングもピアスもストラップも全部取ってあるんだ。…彼奴じゃないと身体が震えるし…」
(子供相手に何言ってるんだろうとネックレスがしまわれる小さなポケットに視線をやっては相手と過ごしてきた日々が脳裏を過り息を詰まらせて。
「…、彼奴は…本当に俺が他の男とどうにかなって嫌なんて思うかな。…重たい奴から解放されて良かったって思ってるかもしれない」
(相手が支配人や従業員の悪巧みとはいえ自分が他の男と一緒にいる写真を送られ苦しんでいるなんて未だに知らず、ただ自分が相手を束縛して傷付けたばかりに嫌われたのだと落ち込んでは唇を噛み締め。
が、本音を零しすぎたと我に返っては慌てて笑顔を取り繕い相手の髪をぽふりと撫で。
「なんて、ちょっと話し過ぎたかな。このこと繿には内緒ね。これ以上重たいって思われたくないし」
(態と明るく述べるもふと先程の傷跡やピアスホールのことを思い出しては真面目な表情をして「とか言って君が繿だったりしてね」と紅い瞳をジトリと見詰め耳に掛かる髪を撫で上げて。
「その年でピアス開けるなんて珍しいよね」
(ジッと相手から視線を外さず耳朶を軽く触れる程度に摘んではその手をそっと首筋の傷痕に通わせ様子を窺うも、相手だったとしてどうするんだと自分から吹っ掛けたくせに怖気づき「なんてね。冗談だよ。君がいやに大人っぽいからからかっただけ」とはぐらかして。
それでも目の前の少年は見ればみるほど相手そっくりで抑えが利かなくなってはその小さな体をぎゅっと抱き締め、馬鹿で惨めになるだけだと分かっていながら相手のぬくもりを求めて。
>露木
( 切な気な表情で言葉を紡ぐ相手に胸が痛み真実を打ち明けたい衝動に駆られるもまだ相手の優しさを欲してる欲張りな自分自身が居て。
まだ自分を思ってくれてるのか、ならばどうして他の男に触れ求めたのか。
混乱と困惑が渦巻く思考はまともである事を忘れ包み込む様に抱き締める相手の肩を押しては自分の携帯を取り出し相手(男)から送られて来た写真を見せて。
感情を制御出来ず取り乱す様に唇を噛み「…っ、あんたが!!!……………他の男なんかと居るから………」と。
本当なら相手を閉じ込めてしまいたいくらいに束縛したい、しかしそれを言い出せずそれでも他の男を見る相手との付き合いなど耐えられる筈も無く。
泣き出したいと言う普段なら無い衝動に駆られ強く唇を噛み締めては丁度シャワーを終えた兄が小さな溜息を付き自分の携帯をやんわりと奪って。
『こらこら、繿兄ちゃんの事好きだからってさも自分の事みたいな言い方しないの』
「…な、」
『さてそろそろ寝ないと明日きついよー??』
( 兄は相手が何か言い掛ける前に再び自分をベッドへと誘導しては相手にも口を開かせない勢いで寝る準備を初めて。
( 翌朝、目を覚ましてはキッチンにて相手と肩を並べて料理してる兄が見えてはのそのそと起き上がり。
流石にバレてるだろうと思っていても相手の優しさに甘えたいと言う惨めな自分も居て兄の袖を引っ張っては「………腹減ったんだけど」と可愛気無く言って。
『はいはい、今作ってるから』
「…ん」
( ベッドへと戻りテレビをぼんやりと見るフリをしつつ相手を盗み見ては小さく溜息を付いたりして。
そんな時、兄の携帯が鳴り響いては兄に目をやるも『今手離せないから見といて』と。
人の携帯を見るなんてと気が引けたがメールを開いてはどうやら相手は能力者の男の様で。
《そろそろ戻しても良い頃かな??桐崎くんと露木の誤解は解けた??》
( 相手の事をはっきり分かった訳では無いが気持ちが離れた訳じゃ無いのならばと《そろそろかもね。今日連れてくから何処に向かえば良い??》と兄のメール文に偽造して送り。
駅前のデパートには大きな休憩所が完備されてるらしく人目も少ないのでそこで落ち合おうと言う返事をしっかりと見詰めては兄にうまく話付けようと。
>桐崎
(朝、結局昨夜から少年(相手)と話せず話そうとしても兄に上手く遮られており。
昨夜の少年の様子、何故か持っていた相手の携帯、そして送った覚えのない写真。
普通に考えれば少年は相手。でもあの写真は何なのか。
考えようとして何か期待する自分に気付いては“相手を売って磯貝と寝たじゃないか”と自分を戒め調理に集中すると出来上がった食事をテーブルに並べ。
食事中、少年(相手)と話す機会はあったもののどう切り出せば良いか分からず結局話せずじまいで、兄が少年(相手)を連れて何処かへ行くというので一緒に部屋を出ては別れ道に来た所で少年(相手)に向き膝を曲げて目線を合わせ。
「昨日俺と男のこと怒ってくれて嬉しかった。…ありがとう。ごめんね」
(眉を下げ小さく微笑み銀髪を撫でては何か言いかけるも口にすることはなくアパートへ足を向けて。
(自分が去った後、兄は携帯のメール画面を相手に見せて『“見といて”とは言ったけど“返事しといて”とは言ってないよ?』と相手の額を小突き『まぁ、槙島くん待たせる訳にはいかないからね。さっさと行くよ』そう言うなりお仕置きといわんばかりに相手の嫌がる抱っこを強行しては『かわいいねぇ』とわざとらしく声をかけながら足を進め。
(到着したデパート、すぐに待ち合わせの休憩所へと向かおうとしたところなんという偶然か相手の父親(縺)と自分の父(草一)に出会し、幼い頃の相手を知っている二人は驚き特に自分の父は目をパチクリさせ兄の腕の中にいる相手に顔を近付け。
『繿くん…?』
『いや、ちょっと色々訳ありでして』
『また面倒事か。たく、手前ら兄弟は』
『ちょっと待ってよ、父さん。俺はいい子でしょ?』
(相手の父親は兄の言葉を聞き流し少年(相手)を見ては過去の負い目を感じたのか目を逸らし。
『いやぁ今日はね。縺さんに株を教えて貰おうと思ってさ。縺さん喧嘩だけじゃなく頭も強いんだ。すごいよねー。…あ、良かったらこのデパートの喫茶店行かない?そこに美味しいプリンがあるんだ。繿くん好きでしょ?』
(態となのかそうでないのか相手が子供の理由を追求する訳でもなくのほほんと呑気に述べては『かわいいなぁ。ほら、縺さんも』と相手の頭を撫でながら悪気なく相手の父親を誘い。
>露木
( 相手と別れ能力者の男に会えば戻れると内心胸を踊らせ兄に無理矢理抱き抱えられては待ち合わせ先のデパートで相手と自分の父に出会してしまい。
断る様に兄に頼もうとも兄は父に構って貰える様になったのが余程嬉しいのか断る素振りは無く能力者に《ごめんちょっと用事出来たから数時間遅れる》とメールを送ってるのをジトリと見詰めて。
「…おい、んなの戻ってからでも…」
『えーそしたら待たせちゃうじゃんか。露木さんもああ言ってくれてるんだしさー』
「……………」
( 不機嫌な表情のまま喫茶店へと着くも相手の父の優しい対応に表情が少し和らいでは兄と相手の父の小難しい話をぼんやりと聞いていて。
父とは一切目が合わずに気不味そうにスプーンを咥えては伏せ目がちに盗み見て。
『それにしても繿君のその姿は8年ぶりくらいかな。本当久し振りだね』
「……………はぁ」
『分かってる、能力だよね。でも驚いたな、凄い能力の持ち主だね』
『露木さん露木さん、何なら菊もちっちゃく出来るんですよー??』
「おい、中身はそのままなんだぞ。………感情とかがちょっと変わるくらいで…」
( 相手の子供姿の話題に照れ臭そうに微笑む相手の父に和やかな気持ちになりつつそこでふと自分の父と視線が合えば僅かに驚いて。
『……………何目丸くしてやがる』
「い、や………別に」
『ちっせぇな。糞餓鬼が』
「……………なんなんだよ、仕方無ぇだろ」
( 小さな言い合いをしつつそれでも晴れやかな気持ちになれば自然と表情も緩んでいて。
( その頃、時間延長を言い渡された能力者は適当に時間を潰そうとデパート最上階の小さな漫画喫茶へと入店し携帯を見詰めていて。
相手と自分の誤解は解けたのだろうか、元々陰ながら御人好しな性格故に放って置けずそわそわとして。
一度は壊そうとした二人なだけに無視は出来ないと相手に連絡を入れては辿たどしく挨拶をして。
『…あ、露木??うん、俺だよ。久し振り』
( ぎこちなく上記を言っては暫く他愛の無い話をするも本題を出さなければと。
『あのさ、…桐崎君と何か合っただろ』
( 唐突に言い短い沈黙が襲い掛かるもここで引く訳には行かないと思い『話した方が良いと思って。…夜噴水の前に桐崎君向かわせるから。………それまでにちゃんと元に戻すつもりだし…ってごめん。これはこっちの話』と。
上手く切り上げ電話を切ってはこれで二人は話せるだろうと意気込み、続いて兄の携帯に『夜に露木と桐崎君鉢合わせるから』と予定を話した留守電を入れて。
>桐崎
(アパートにて特に用事もなくベッドに寝そべり少年(相手)と相手のことについて出口のない洞窟を彷徨うようずっと考えていては突如鳴り響く着信にビクッとし番号も確認せずに出ては懐かしい声とその内容に暫し固まり。
無機質な機械音が耳に入りとっくの前に通話が終わっている事に気付いてはプツリと電話を切りダラリと腕を下ろして。
なんで槙島が日本にいるのか。やっぱり少年は相手だったのかと様々な考えが頭の中を巡るもやはり一番は“相手に会えるかも”ということで。
しかし“あんたには会わない”と合鍵まで返すよう言ってきたのに今更何を…と相手から会ってくれると言い出したと勘違いして淡い期待を抱くもそれと同時に酷く胸が痛んで。
(一方、喫茶店では自分の父が終止相手を可愛いと褒めて別れ際に何か聞きたげな表情をするも何も問わず『じゃあまた食事でも』と席を立ち、相手の父もそれに続き一瞬相手を見て『いつまでも“餓鬼”やってんじゃねぇぞ』と何か見透かしたように素直でない言葉を残しては伝票を持ち去り四人分の会計をさっさと済ますと姿を消して。
『久々に父さんといっぱい話しちゃった』
(兄は上機嫌に頬を緩ませ相手の手を引いて喫茶店を出ては『早く大人になろうね』と携帯の留守電を聞きながら意味深な笑みを浮かべて。
(そして能力者との待ち合わせ場所、能力者は相手を連れて人気のない休憩所のレストルームに来ては兄から受け取った相手の服を渡し小さな体を大きなタオルですっぽり包んでは『…痛むから我慢しなくていいよ』と声をかけ自身の手を握るよう促すと相手の額に手をあて元の姿に戻して。
『…やっぱり桐崎君ってかっこいいよね』
(着替えを済ませた相手を見て小さく微笑んでは兄がやってきて元に戻ったばかりの相手の肩に腕を回し『ねえ繿、噴水興味あるよね?』とニコリと笑い。
(約束の時間の少し前、散々悩みに悩み噴水へ来ては未だない相手の姿にそわそわとし何度も携帯を見て不安に押しつぶされそうな胸をどうにか落ち着かせようとしていて。
>露木
( 兄の意味不明な問い掛けに「はぁ??」と首を傾げるも意味有りげな笑みで流されてしまい。
別に噴水に興味が有るなんて言った覚え無いぞ、なんて疑問を浮かべながら兄に無理矢理噴水のある場所へと連れられては背中をドンっと押されて。
文句を言ってやろうと顔を上げるも兄はへらへらと笑みを浮かべ後ろへと歩を進め、その代わりに不安気な様子で噴水の前でそわそわとしてる相手が目に入れば仕組まれた事だと理解して。
足を返そうとも背後には何時から居たのか能力者までもがおり兄と共に自分を帰さない様に立ちはだかっては相手の方を首でしゃくり“行け”と。
伏せ目がちに目を向けては丁度相手と目が合い直ぐに逸らすも此処まで来て無視する事は出来ずズカズカとそちらへと向かっては相手と向き直り。
こうして向かい合ったのは久し振り、少し前までの相手は自分より身長も高くいつも目線は上だった。
「……………仕組まれたみてぇだな」
( 能力者と兄を指差し溜息を着くように上記を言えば一瞬気不味い雰囲気が流れるもここまで話したのならと抑えを外して。
「…お前さ、何なの。あんな写真メール送って来たり、…なのに“別れるとか言うな”って。お前こそ俺と別れたいんじゃねぇの??………餓鬼だと思って相手してなかったんだろ」
( 責め立てる様な言い方になってしまうも溜め込んでた感情が爆発し、相手の肩をグッと掴んでは片手でポケットの携帯を取り出して。
SNSの相手から送られた写真(ホストに組み敷かれ相手が腕を掛けてる写真)を相手の目前に突き出しては「何、俺より良かった??」と。
こんなの惨めなだけだと分かってるのに行動は納まらず相手の顎をグイッと持ち上げては唇を強引に奪おうとして。
>桐崎
(久々の相手との顔合わせ、相変わらず端正な顔立ちに見惚れてしまうも続く言葉に少年が相手だったと確信すると共に相手の意思で此処に来たわけではないのかと気落ちしては、見せられた写真と問い掛けに目を逸らし。
が、突如口付けられそうになっては驚きで咄嗟に相手を突き飛ばして困惑気味に瞳を揺らして。
「な、んで…俺のこと嫌いになったんじゃないのか?…こんなことされたら_、」
(期待してしまうと口を噤んではこんなんだから重たいと思われるんだと拳を握り。
「ごめん…、何でもない。………でもその写真は身に覚えないし俺は送ってない。多分…一緒に写ってる奴の嫌がらせ…。それにその店に行ったのも…」
(あんたに嫌な思いをさせた責任を感じてと言おうして此れではただ言い訳だとまた口を閉ざし御免と謝って。
「俺、あんたに嫌な思いさせてばっかりだった。自分のことだけ考えて浮気を端から疑って。……重たいって思われて当然だと思う。そう思ったから合鍵返せなんて言ったんだろ?」
(ずれた考えをしてるとも知らず相手をどこか切なげに見詰めてはスッと視線を横に流し。
「でも…だったらさ。なんで俺が他の男と仲良くしてたら絶対嫌だなんて言ったんだ?」
(相手が少年時に言った言葉。そんなものに期待して縋り付こうとする自分に気付いては自嘲気味な笑みを零し本日何度目になるかわからない“ごめん”を零して。
「あんたのこと忘れないといけないのに何聞いてんだろうな。…………俺、本気であんたを愛してる。だから、忘れるの時間掛かると思うけど努力するよ。揃いのものも処分するから。…それに今磯貝といい感じなんだ。だからあんたも“重たいお荷物”おろしたと思って羽伸ばしていいよ」
(強がりと勝手な言葉を無理に微笑み述べては相手をこれ以上束縛して負担をかけさせないためには此れがいいんだと言い聞かせ。
(/突然失礼します。菊本体です!
いつも拙いロルにお相手感謝です。今回は相談というか独白というか…思っていること、そして謝罪を述べさせて頂きたく参上しました。
無駄に長いです。すみません汗
えっと…、何かといいますとこのままナリキリにお付き合い頂いてていいのかな、という心配です。
本体様との絡みに文句は一切ありません。逆に毎回こちらが滅茶苦茶なロルで振り回してしまい申し訳ないくらいで…。
本体様との絡みは今でも本当に楽しいです。ここまで続いて気が合ったお相手様ははじめてで他の方とナリをしても物足りないだろうなと感じるくらい。
ただ、「現状」を思うに本体様と大切な方に申し訳ないなと思ったんです。
たかがナリでも一応愛を囁きあってるわけですし…。
こんなナリくらいで本体様と大切な方の絆や想いが揺らぐなんて思っていませんが本体さまは優しい方なので無理に気を遣わせて負担をかけていないか心配で…。
一番良いのは自分が此処で身を引くことなのでしょうが、その前に本体様のお気持ちをお聞かせ頂けたら幸いです。
本当はもうすぐで本体様とナリキリをはじめてから一年でもう少し言うのを待とうとかと悩みましたが、このままあやふやに続けて本体様の負担になるようでは駄目だと思い今回此方でお話をさせて頂きました。
自分の考えすぎだったらすみません。今の菊君じゃないですが重たかったら元も子もないですね(^_^;)
長々とすみません汗 でもあと一つ謝罪させてください←
実はその少し前に「雨」というお名前を見かけしました。
はじめは「あれ?」って引っかかる程度だったのですが拝見させて頂くうちもしかしたらという思いが強くなりました。
何度も声を掛けてみようと思いました。
ですが私がでしゃばることで嫌な思いをさせて吐き出せる場所を奪ってしまわないかと気が引けてしまい声をかけられませんでした…。
ですから名前を変えて絡ませて頂いたのですが今思えばなんで自分の名前で絡まなかったのかとすごく後悔してます。
この一年近くお忙しい中、疲れて辛いこともあったと思います。
それでも毎日のように絡んでくれて…。
本体さまが辛いとき無理をさせて支えられなくて本当に御免なさい。薄情だったと痛感してます。
でも今は本体様に心強い味方がついてくれて本当に良かったと心から安心し嬉しく思います。
じゃあ今更出てきて何だって話ですが…。遅すぎるかもしれませんが私で良ければ何でも話してくれると嬉しいなと…。
こんな話、上でナリをやめるかやめないか話してて持ち出すのはおかしいかもですがお節介なのでやっぱり放おっておけませんでした。すみません。
って、もし雨さんじゃなかったら申し訳ありません;何の話だこのやろーって聞き流してください汗
ここまで本当に読んで下さり感謝です。言いたいことがありすぎて伝えきれず本当意味不明になってると思います;
そしてこういう場で私情を持ち出すのもどうかと思ったのですがどうしても気持ちを伝えたく勝手に形容したこと謝ります。
なんか重たくて堅苦しくって色々気持ち悪いことになってますね…。
私が一人突っ走てご気分を害してしまってたらすみません。
自分の勝手ではありますがゆっくりでいいのでお返事いただけると幸いです。
>露木
( 相手の“重たい御荷物”と言う言葉に反論しようともあの男子生徒と良い感じになってると聞かされては行動に移せずに暫し放心状態になり。
無理に作られた微笑みも僅かに震える声色も気付いてたのに結局去り行く相手の背中を見詰めてはそのまま唇を噛み締め俯いて。
( 翌日、自室にて目を覚ましては悪い気分を拭い去るかの如くシャワーを浴びるもこの感情までは流してくれずに小さく項垂れて。
髪も濡れたままボフリとベッドに横になっては天井を見詰め携帯に目をやるも当然相手からの連絡は無く。
そろそろGWも明けてしまうしと干しっ放しの制服に目をやり。
今日は特にバイトも入ってない、しかし特にする事も無く細身のジーンズと適当なパーカーに着替えては近くのコンビニへと向かって。
( その頃、男子生徒は相手に一方的なデートを申し込み寮にて待ち合わせをしては漸く訪れた相手に犬の様に擦り寄って。
『先輩朝飯まだっすよね、今日自然公園行こうと思ってたんすけどどうせならコンビニで買ってきません??』
( 財布片手に“奢りますよ”と続けては金持ちとは思えない様な様子でコンビニのパンやら菓子類やらを手に取って見てはふと向こうに自分の姿を見付けて。
雑誌の立ち読みをする自分を暫し見詰めてはズカズカと歩み寄り『よ、桐崎』と声を掛けて来て。
男子生徒の声に気付き振り返るも男子生徒の隣にいる相手の存在に気付いては顔を逸らして。
『何してんの』
「別に、…今日バイト休みだから、」
『そか、………お、俺達これからデート』
「……………あっそ、良かったじゃん」
( 素っ気無い態度を取る様に心掛けさっさと出ようと相手の横を通り過ぎては適当な飲み物を取り早く会計に向かおうとして。
( / お久し振りでございますー(´∀`)
そしてお返事かなり遅れて申し訳無い…
お仕事が変わる事になりましてここ数日立て込んでおりました
そしてそしてやはり一年もお付き合い頂いただけに気付いてくれたんだな、と泣きそうになりました
改めまして、“rain”と言う名前で部屋を立ち上げさせて頂きました
住んでる場所が田舎の為“子供は学校へ行くのが常識”という古い考えが定着してるのか結構冷たい人が多いんですよね…
打ち明けられる人は未だにおりませんしこうして気付いてくれたのも本体様だけです
実は繿は私の理想の存在を作った訳ですよ←
何にも動じなくて子供達の為に働く、そんな人になれたら良いなと←
本体様との一年、ほんとに幸せで幸せで…
ナリ如きで、と思われるかもしれませんが毎日毎日これが楽しみになってます
本体様の文が綺麗過ぎて何回もメモ帳アプリに書いて誤字とか漢字とかかなり確認してるくらいですwww
色々ありがとうございます
そして一年、早いですね(;´Д`)
こんな駄文にお付き合い頂いて泣きますもうほんと←
もしよろしければ遅レスになる事もありますがこれからもお付き合い頂けると嬉しいです
>桐崎
(浮かない気分まま男子生徒とコンビニに訪れては相手と鉢合わせ素っ気ない態度に昨日ので完全に引かれたんだなと思い込むと相手を避けるように男子生徒の腕を掴んでコンビニの奥へと進み相手が出て行くのを待って。
(その後、自然公園のベンチにて買ったパンなどを口にしては落ち込んでばかりでは男子生徒に悪いと笑顔で振る舞うも脳裏にはつねに相手がちらつき。
そして男子生徒が食べる野菜スティックの中に一つだけプチトマトが入ってるのを見ては思わず手を伸ばして。
『先輩プチトマト好きなんすか?』
「…え、いや。…別に」
(相手が苦手だから無意識になんて笑えないと口内に広がる甘酸っぱい果肉を飲み込んでは視線を地面に落とし。
『…俺、正直もう先輩諦めなきゃいけないかなって思ってたんすよね』
「…え?」
『いや、なんとなくっすよ』
(男子生徒が少年を相手だと疑っていたとも知らず神妙な顔しては『あ、そう言えばバイト辞める契約書受理しといたんでもう何も気負いすることないっすよ』と話を変えられ。
「ああ、悪い。ありがとう。…なんか世話になってばかりだな」
(申し訳なく微笑みながら迷惑を掛け合い助け合ってきた相手の隣の居心地の良さを想っては「たまには俺にも世話やかせろよ」と小さく笑い、少し離れた散歩道を楽しげに歩くカップルをぼんやり見詰めて。
(その頃、相手の元に兄から《ねえ昨日のどういうこと?菊とはどうなったの?子供にした意味ないじゃん》と不満のメールが届いていて。
その数分後、街を歩く相手の背後に忍び寄る影があり相手の肩をトントンと叩いてはニッと黄ばんだ歯を見せて笑い『やあ僕のこと覚えてる?』と。
その男は相手が支配人の店で働いていた時の客。中年の小太り眼鏡で相手が店を抜けたことを自分にしつこくごねていたうちの一人で。
『なんか寂しそうだから声掛けちゃった。相談乗るよ?』
(馴れ馴れしく相手の腰に汗ばんだ手を回し胡散臭い笑みを浮かべては『そこの喫茶店行こうか』と相手の腰を引いて。
(/いえいえ!お返事いただけるだけで嬉しいです!
私も仕事変わったところで返事遅くなると思うので気にしないでくださいな。
お名前紹介頂き有難うございます。お分かりかと思いますが“たま”という名前で絡ませて頂いておりました…。
学歴関係ないなんて言われるようになってきたけど世間の目は厳しいですよね…。
そういう冷たい態度が他人を傷つけてるって気付かないのかな。
そしてその理想素敵だと思います。きっと本体様に支えられた子供は本体様みたく人の為になりたいって思うんだろうな(。・・。)
今までずっと辛いことあったと思います。辛いことに向き合うのってほんと体力使う…。
出来ればないほうがいいんだけど辛いことって振り返ると為になってることが多かったりするんだよね。
だからって訳ではないけど今の本体様の頑張りは絶対に理想と繋がってると思います。
私の場合、兄が暴力的だったり母の介護があったりでめげることも多かったけどそんなこんなでちょっとはタフな性格になれたからまあよかったかなって笑。チキンだけど←
と、月並みなことしか言えませんが消化しきれないものがある時は何でも言ってください。
あと上から目線っぽかったらすみません…。イラッ☆ってしたら言ってください。喜びまs((
私も本体様とナリ出来て幸せです。なんど励まされたことか。
あわわ、そこまでして頂いてるなんて嬉しい。
私ワードで打ってる癖に誤字るんでどうしようない←
“を”と“と”をよく間違えてるって自覚あります…笑
本当に一年あっと言う間…。
私なんて就活終わってバイトもそこそこにダラダラ過ごしてたからな…。
本体様に頭が上がらない。
レスいつでもOKです。むしろ今までハイペース過ぎたと思えば笑
ナリそっちのけで愚痴ってもb
あとタメでもいいよ。知っての通りただの変態チキンだから敬語なんて使う必要ない←
精神年齢私のがかなり下だな思うしw
あ、こちらの返信は適当に切っていいし無視で大丈夫です。
>露木
( 兄からのメールに溜息を付き《頼んだ覚えは無い》と生意気なメールを返そうとしたが文字を打つより早くに肩を叩かれては一瞬固まって。
出来ればこの様な類の男には会いたくなかったと逃げ足を取ろうとするもそれを防がれてしまってはどうしようものかと苦虫を噛み潰し。
咄嗟に突き飛ばそうとするも『繿君の外見で手を出そうとなんてしたら直ぐに周りの人が寄って来るんじゃないかな』と下らない脅しを掛けられ口惜しそうに唇を噛んでは喫茶店へと同伴して。
金には困ってないのか奢ると言われ適当な飲み物を頼んでは手を取られビクリとして。
『で、何か合ったのかな。僕で良ければ慰めるよ』
「………べ…別に………」
( 流す様に視線を逸らしては運ばれて来た飲み物を受け取り乾いた喉を潤しては男と視線を合わせる事も無く早く時間が過ぎるのを待つ事にして。
( その頃、自然公園を後にし街を見て回ってた所で隣で歩いてた相手の手が男子生徒の手に辺り。
男子生徒は暫し迷った様な表情をするも思い切った様な表情で相手の手を握って。
『……………あ、えと…すみません。………じゃなくて!!!………良いっすよね……その、嫌なら離しますけど』
( しどろもどろと言いつつ離さないままに街を見て歩いては『あれなんか先輩に似合いそうっすね』なんて他愛も無い話をして。
( 男に解放して貰えたのは夕方、どう解釈したのか『デート代ね』と万札数枚を渡されてはこれでは援助交際みたいではないかと。
ベタベタとスキンシップの多さが肌に残り気持ち悪さと苛立ちを感じてた中、寮の玄関口で相手と男子生徒に出会しては今日は悪運だなと。
『………あ、桐崎』
「……………んだよ。邪魔、通る」
『わり、今退く』
( 八つ当たりをするかの如く横を通り過ぎ、相手はこれから男子生徒の部屋にでも向かうのだろうかと苛立ちを隠せずに居た所で何を思ったのか男子生徒に腕を掴まれては反動と共に振り向かされ。
その際に男の連絡先が書かれたメモと折りたたまれた万札数枚がポケットから落ちては無言でそれを拾い。
『桐崎、………それ何だよ』
「金」
『お前何してんの』
「別に」
( 困惑を隠せずにいる男子生徒を静かに見詰めては『は、今夜はお楽しみ??』と子供地味た嫌味を述べさっさと場を後にしようと裾を翻し。
( / 本体様も色々大変だったのに相談乗っててくれたんだ………なんか申し訳無い。
それなのに人を安心させて包み込んでくれるその性格ほんと憧れる、お互い名前は変えてたけどあの部屋で何回救われた事か…。
本体様も何かあったら言ってね、こんな餓鬼に言う事なんか無いかもだけど言葉にするだけで少しでも楽になるって教えて貰ったので←
実は来月からコンビニのバイト辞めて葬儀屋スタッフの仕事に変わるんだよね(´・ω・`)
ほんとはコンビニ続けたいけど学歴も何も無いし就職も出来ないだろうし………。
時給もそっちのが高いから弟が中学卒業する時に定時制でも通信制でも行ける様にお金貯めなきゃ。
最近行く様になったんだけどこんな状況だからかちょいグレて髪染めちゃって別教室に戻されちゃって。
後は本人の問題だから頑張って貰うしかなぁ…。
今回も菊くんの一途さに泣いた←
って言うか菊くんとの絡み泣ける←
この微妙な距離感とぎくしゃくした感じ涙無しでは見れないね((落ち着け
タメで失礼しましたーw
なんか年上さんでほんと立派な大人だなって思ってたけどタメの方が親近感合って友達っぽいよね(´∀`)
改めてこれからもよろしくね・:*+.\(( °ω° ))/.:+
>桐崎
(男子生徒から手を握られ戸惑うも相手を忘れるために必要なことなんだと言い聞かせては振り払わずにいて。
そんな時、寮の前で相手と出会しては思わず握られた手を引っ込めようとするも相手のポケットから落ちたメモと万札に目を引かれ。
相手が元は自分が蒔いた種で被害にあっているとは知らず、どこか疲れた表情に心配になっては去ろうとする相手の腕をまだ男子生徒に握られた温もりが残る手で掴んで。
「また危ないことしてるのか?」
(眉を下げて問うも自分に聞く資格はなかったと手を離し「…悪い。でも何かあるならちゃんと綸とか赤城に相談しろよ」と目を逸らしながら述べ「あと…今日は勉強教えに来ただけだから」と意味がないと分かりつつ言い訳じみた言葉を零して。
(相手と別れて訪れた男子生徒の部屋、下の階に相手がいると思うと落ち着かず椅子に座りそわそわしてては男子生徒に御茶を差し出され。
『勉強教えてもらう約束なんてしてましたっけ?』
「……してない、けど」
『まあ良いっすけどね。…先輩、明日バイト夜からっすよね?それまでカラオケ行きません?歌うとすっきりしますよ』
「…そうだな」
『じゃあ決まり。あ、先輩に朝食べてほしいチーズ味のパンケーキあるから今日泊まっててくださいね』
「え、いや悪いし。着替え持ってきてないから」
(やんわり断ろうとするも男子生徒の押しの強さの中に気遣いを感じては断りきれずに泊まることにするもずっと相手のことが頭から離れずにいて。
(その頃、相手のもとに昼間の男が気をよくしたのか相手に《明日も会ってくれるよね?お金受け取ったでしょ?》とメールを送っていて。
(/いやいや、私なんて本体様の大変さに比べたら全然大したことない。
それに相談してくれたり乗ったりすると辛いの分散されるっていうか和らぐからむしろありがたい。
本体様は餓鬼なんかじゃないよー。大人すぎて心配になるくらい大人だと思う。
なんだろう。明るくても無理してないかなって心配になる時あるもの…。
現実無理しないとやってけないことばっかだし弱いところは誰にも見せたくないしで息詰まっちゃうよね。
うん、だからここでは私もお言葉に甘えて何かあったら遠慮なく愚痴ります←
そっか…、コンビニ人手不足で迷惑かけちゃうかもって気にしてたもんね…。
新しいところはやっていけそう?心配なこととか辛いことはない?
就職か…、私が言うと「就職してるから言えるんだよ」って思っちゃうかもだけどまだまだ希望持てるよ!
私の友達でね、中卒で3年間家にずっと引きこもりだったけどそれから2年バイトして美容の専門学校行ってる子もいるし、同じく中卒で今私と同い年でずっとバイトしてたけど今就活頑張ってる子もいる。
こんなこと言っても不安は拭えないだろうし、すぐには将来のこと考える余裕もないかもだけど就職は可能性あるよ。
でもお金の問題とか家庭の事情とか色々考え過ぎちゃうと辛いだろうから少しずつ、少しずつでいいと思う。
私が16,7の時は家庭の事とかでどうせ碌な仕事つけんだろうなって投げやりになってて、やりたいことも曖昧だったけどなんだかんだここまで来ちゃったし、正直今でも今の仕事が正しいのか迷ってるしね(^_^;)
何も就職だけじゃないし。ってなんか長々とずれたことを語ってごめんよ…。
はーい、バッサーンと切ってくれていいからねb
私も繿君の不器用だけど誰よりも心優しいところとか簡単には内面を見いせない男らしさに泣かされてる。
なんだこの子、超イケメンでかわいい(^q^)って←
これからもぎくしゃくカップルでのらりくらりとやっていきましょー。
立派とかやめてww
ほんとアニメ好きの変態なだけだからw
そしてよくぽわーんってしてて急にビシって動くから不思議ちゃん呼ばわりされてる。
こちらこそよろしくー(。・ω・。)
そして向こうで名前に迷ったやつ←
>露木
( 男からのメールにも気付かずに眠りに着いた翌朝、点滅する携帯のランプに気付きメールを開くも相手からで無い事と男からである事に激しく落胆して。
シャワーを浴び私服に着替え断れる筈も無い男の元へと向かおうとロビーへと来ては丁度相手を送り出そうとする男子学生と鉢合ってしまい。
『…あ、桐崎…おはよ』
「ん」
『何処行くの』
「バイト」
『嘘だろ、桐崎今日休みじゃん。俺桐崎がバイトしてる店の本店舗の取締役だし知ってる』
「別のバイト」
『……………なぁ、なんのバイトしてんの』
( 男子学生の問い掛けにも答えず男子学生の隣にいる相手に目を向けては「何、結局泊まってった訳」と嫌味な言い方をしてしまい。
いたたまれなくなりさっさとその場を後にしては学校を後にし待ち合わせ場所へと向かって。
( 待ち合わせの定番の時計台にて、相変わらずのスーツに身を包み汗臭い様子で自分を待っていた男の前に来ては無表情で見下ろして。
『取り敢えず何処か入ろうか』と言われ駅前のカフェへと連れられてはアイスコーヒーを二つ注文され。
『さて、今日は何処に行こうか。行きたい所とかあるかな』
「別に」
『欲しい物はある??』
「特に」
( 素っ気無い返事をしズズッと音を立ててアイスコーヒーを飲み干してはテーブルの上に万札を数枚置かれ思わずそれを見詰めて。
『これはデート代ね、そうだなぁ…なんなら久し振りにカラオケでも行こうか』
「何処でも良いっす」
『よし、じゃあタクシー呼ぼうか』
( 何も直ぐ近くじゃないか、
>露木
( 男からのメールにも気付かずに眠りに着いた翌朝、点滅する携帯のランプに気付きメールを開くも相手からで無い事と男からである事に激しく落胆して。
シャワーを浴び私服に着替え断れる筈も無い男の元へと向かおうとロビーへと来ては丁度相手を送り出そうとする男子学生と鉢合ってしまい。
『…あ、桐崎…おはよ』
「ん」
『何処行くの』
「バイト」
『嘘だろ、桐崎今日休みじゃん。俺桐崎がバイトしてる店の本店舗の取締役だし知ってる』
「別のバイト」
『……………なぁ、なんのバイトしてんの』
( 男子学生の問い掛けにも答えず男子学生の隣にいる相手に目を向けては「何、結局泊まってった訳」と嫌味な言い方をしてしまい。
いたたまれなくなりさっさとその場を後にしては学校を後にし待ち合わせ場所へと向かって。
( 待ち合わせの定番の時計台にて、相変わらずのスーツに身を包み汗臭い様子で自分を待っていた男の前に来ては無表情で見下ろして。
『取り敢えず何処か入ろうか』と言われ駅前のカフェへと連れられてはアイスコーヒーを二つ注文され。
『さて、今日は何処に行こうか。行きたい所とかあるかな』
「別に」
『欲しい物はある??』
「特に」
( 素っ気無い返事をしズズッと音を立ててアイスコーヒーを飲み干してはテーブルの上に万札を数枚置かれ思わずそれを見詰めて。
『これはデート代ね、そうだなぁ…なんなら久し振りにカラオケでも行こうか』
「何処でも良いっす」
『よし、じゃあタクシー呼ぼうか』
( 何も直ぐ近くじゃないか、と内心悪態を付きつつ相手と男子学生が居るとも知らずにカラオケ店へと向かえばずっと携帯を見詰めていて。
( / うわあああ連投稿してしまった馬鹿あああ←
そしてそして相変わらず遅れてごめんなさい
葬儀屋さんの研修ちょいちょい始まったので頑張るぞーって感じなんだけど宗派全部覚えなきゃで…
毎回の如く菊君可愛い、繿じゃなくて私が菊君といちゃらぶしたい((黙
そして菊君もろとも本体様といちゃらぶした((殴
就職ねー、難しいとは思うけど取り敢えず弟高校入って一番下の子が小学校上がるまでは受け入れてくれる仕事場に縋り付こうかなーとか思ってる
中卒ってだけで社会は冷たいからなぁwww
ほんと本体様立派としか言い様が無いんだけど(真顔)
なんでそんな他人を安心させる事が出来るの←
というかもう本体様癒やし効果有り過ぎて…
身近に居たら毎日見てるだけで癒されてたな((
Twitterとかで絡んでてもほんと癒される
>桐崎
(男子生徒と訪れたカラオケ店、今朝相手に鉢合わせたこともあり相手のことばかり考えてしまい忘れようとすればするほど相手で頭がいっぱいになってはデン○クばかりイジっていて。
『先輩、歌わないんすか?さっきから俺ばっか歌ってますけど』
「あー御免、ぼーっとしてた」
『……。あ、先輩、俺もそのアーティスト聞きますよ。でも先輩がその曲聞くなんて意外っす』
(そう言われデ○モクの表示を見ると以前相手と趣味を共有したくて借りたCDのアーティストの項目が開かれており、無意識とはいえ相手との思い出に縋る自分に気付いては自嘲の笑みが溢れ。
_こんなんではこのアーティストの曲がテレビなどで流れる度に相手を想ってしまうと表情が崩れそうになっては「…飲み物取ってくる」とコップを持ち部屋を出て。
(浮かない気分でドリンクバーに向かう途中、丁度相手と男が部屋に入るところに出会しては思わぬ事態に足を止め。
『あれ、もしかして菊君?偶然だね。この前店で会って以来かな』
「なんで桐崎とあんたが…」
『客をあんた呼ばわりなんて流石接客が下手なだけあるね』
(男の嫌味に店で働いていたことが相手に知れてしまうと焦るより、男と相手が一緒にいることに嫌な感じがしては眉を下げて相手を見て。
「まさかバイトってこのことか?…こんなのあんたが一番嫌ってたことじゃないか」
『酷いなぁ。合意の上に決まってるでしょ。ねぇ繿君?』
(男が馴れ馴れしく相手の腰に手を回しさっさと部屋に入ろうとする様子に耐え切れなくなっては開きかけた扉をバンッと押さえ開けさせないようにし。
『ちょっと何?邪魔しないでくれるかな。君、繿君のなんなの?』
「……分からない。…でもこういうの世間では援交って言うんです。こいつまだ学生なんでオジさん下手したら罪に問われますよ」
(我ながら身勝手で陳腐な脅しだなと内心苦笑しつつ強気な態度で男を見据えては相手にこんなことは辞めて欲しいと目で訴えて。
(/連投どんまいです←
宗派を全部覚える…お仕事とはいえ想像するだけでゾゾッする…。
アニメとかメイクのことはいくらでも覚えられるのに…。
睡眠学習とか本当にあったらいいのにね(´・ω・`)
いちゃらぶ歓迎(蹴)勿論私がリードするけど。身長167.7㎝(いらない情報)
というか普通に服とか買い物したい。そして本体様に着せて遊ぶ((
そして恋愛相談とかしたりね。年齢の割に恋愛経験値低いけどw
変人ばっかだったし(爆)
あーほんと本体様みたいな妹欲しい。シスコンになれる自信ある←
仕方ないこと…どうにもならないことなのかもだけどやっぱり本体様いい子すぎるよ(TT)
私なんて本体様の苦労のほんの少ししか知らないだろうに偽善っぽいことしか言えない…。
離れてるってあれだね、もどかしさ倍増しちゃうね…。
癒やし効果なんてそんな!こっちこそいつも元気貰ってる。
仕事中とかふと本体様も頑張ってるんだろうなぁ、私も頑張ろ!ってなってるもの。
Twitter時々ものすごく落ちる時あるけど生暖かい目で流してやってね笑
>露木
( 部屋に足を踏み入れようとした所、何と言うタイミングか相手とばったり出会しては目を見開くも直ぐに罰が悪そうに目を逸らして。
まさか相手が居るだなんて想像にも無かった、此処を出たい衝動に駆られるもそんな事出来る筈も無く相手の視線を感じつつも俯いて。
『ほら繿君、君からも言ってやってよ』
「……………」
『どうしたんだい??』
「………すんません、俺今日…体調悪くて。今日の事は別の日でも空けとくんで………」
『えぇ??此処まで来て…』
「次は丸一日空けときます」
( 適当に逃れる為の言葉を並べ漸く男が先に出て行くのを見送っては相手に向き直り。
蔑んだだろうか、馬鹿馬鹿しいと思ってるのだろうかと思いながらも相手に一歩詰め寄り壁に追いやっては「…何、今日はデート??」と皮肉地味た事を言って。
相手があの男子生徒と距離を詰めようとしてる事に身勝手にも腹が立ちグッと顔を近付けては唇が触れる寸前の所でピタリと止めて。
丁度その場に帰りの遅い相手を気にした男子生徒が相手を迎えに来ては自分と相手のその状況に一瞬ばかり硬直するも直ぐ自分に掴み掛って来て。
『桐﨑!!!!!お前…っ……………』
( 無表情で男子生徒の手を振り払っては相手に再び向き直り何か言い掛けるも自分でも何が言いたいのか分からず口を噤んで。
視線を逸らしスタスタとその場を去っては徐に携帯を取り出し取り敢えず一人になるのが嫌で適当に誰か当たろうとしていて。
( / 規制も解けて久々のレス返にダラダラと長い文ごめんなさい((
ほんと久し振りで嬉しくて嬉しくてにやにやしてる←
菊君と本体様のお陰で今日のお仕事の疲れぶっ飛んでる( ^ω^)
そして睡眠学習に吹いた←
ほんと一年の絡みって長いよね、こんなに仲良くなれると思わなかったから嬉しいのなんのって
え、本体様がお姉さんとかこっちこそシスコンになれる自信がある←
自信どころか確信さえ持てr((
待って身長167.7とか憧れる(真顔)
身長高い女の人ってスラッとしててほんと綺麗だよね
私もせめて160にはなりたいんだよな←
Twitterでもいつもいつもありがとおおお
もう何度元気を貰った事か…
いつもいつも通知欄に本体様からってくるとにやぁってしてる変人←
規制解けたからこれからも菊君愛でまくれるって事でかなりテンション上がってまs
ほんと変なテンションで申し訳無いwww
>桐崎
(相手が去った後、男子生徒と共に部屋に戻るも歌にも男子生徒の話にも集中出来ず、結局男子生徒と別れた後に向かったバイト先でも相手のことばかり考えて。
夜、バイトからの帰り道、男子生徒のSNSから《そろそろ終わりの時間っすよね?お疲れ様っす!!》と通知が来ており、ついこの前まで相手が送ってくれていたのにと相手のSNSを開いては《昼間に会った男と本気でまた会う気か?》と送ろうとするも躊躇っていたところに丁度兄が現れて未送信のまま携帯をポケットにしまい。
『あ、菊もバイト帰り?今日はこのままアパート?』
「そのつもり」
『…で、繿とはどうなの?…って聞くまでもないか』
「…………なぁ」
『ん?』
「…あいつ、また何か困ってるみたいなんだ。さり気なくフォローしてやってくれないか」
『自分ですれば?』
「俺は駄目だよ。あいつ…俺のこと嫌いだし」
(昼間カラオケで顔を近付けてきたのも睨まれただけなんだと勘違いしては「じゃあ…頼む」と相手と瓜二つな兄とは居辛くて足早にその場を去り兄の呆れた表情にも気付かずに。
(兄と別れた後、まっすぐアパートに向かう気にもなれず意味もなく夜の街をぶらつきCDショップに向かっては相手のことを考えないように男子生徒の好きそうな曲をヘッドフォンで試聴するも音は全く入ってこずにぼんやりしていて。
(/いやいやいや、ほんと貴重な制限使ってくれて感謝だよ。
私もロル久々でグダグダだ…。あ、いやグダってるのは私だけだけど(ここ重要←
ほんと繿くんと本体様の存在だけで疲れなくなるから不思議('ω')
いやでも私の場合、高いだけだからね。
太ってはない…筈だけど知っての通り絶壁だから←
上司(男)には「垂れる心配ないn(( 」って言われるしorz
これからの時期だとかわいい水着いいよなぁって。着れないけど…。
もうこの歳だと水着とかタイムリミットが←
小さいの可愛いよ!ふわっした服似合うしヒール脱いだ時のギャップ萌えが(黙)
というか本体様だったら何でも可愛い!!
こちらこそいつもありがとね。
菊が浮気に走り続けていますが多分しばらく続くと思われw
とか言いつつ考えはなにもなi(
テンションのおかしさなら負ける気がしないからじゃんじゃん来ていいよ笑
>露木
( カラオケ店を出てからも何処か空虚な気持ちは晴れずぼんやりとして居ては丁度前方に目立つ赤髪が見え足を止め、此方に走って来る青年に目をやり。
街中にも関わらずぶんぶんと手を振る青年に若干呆れつつ手に持ってた携帯を仕舞って。
『兄さん1人??何してるの??』
「別に何も。…お前は何してんの」
『いや、借りてたレンタルCD返すの忘れててさー…。これから返しに行くところ。兄さんも一緒に行こうよ!!!』
「戻り道なんだけど」
『えー良いじゃん、兄さん行かないなら俺も行くの止めような。その所為で延滞金取られちゃうけど』
「は、人の所為にすんな」
( 口ではそう言いつつも特に行く宛も無かった為渋々青年に付き添う事にしては道を戻って。
( 訪れたCDショップ、青年がカウンターレジに向かうのを尻目に好きなアーティストのCDを手に取ったりとしていて。
不意に相手の顔が浮かび“彼奴はどんなの聴くのかな”なんて考えるもそれと共に男子生徒が頭を過ぎれば溜息を漏らし。
青年がレンタルフロアへと向かうのが見え借りるつもりは無いが自分も其方へ向かおうとした時、ヘッドフォンで視聴してた人と肩がぶつかってしまい謝ろうと振り返って。
案の定それは相手、こうも運命的にばったりと会う事に気を向ける余裕すら無く一瞬動揺するも「…悪い、ぶつかった」とぶっきらぼうに謝罪して。
青年が自分と相手の姿に気付き此方に駆け寄って来ては『あれ、露木も来てたんだ』と何も知らない普段通りの様子で言って。
到堪れずに「………行こ、」と青年の肩を押しては再び店の奥へと行こうとして。
( / えええ身長高いのほんと憧れる、なんかもう綺麗だよね((
お、男の人に言われるとあれだよね←
私も『なんか…可哀想だな』って真面目に言われた☆
あああもう本体様素敵過ぎてヾ(⌒(ノシ ^q^)ノシ
なんかこう…癒し効果半端無いんですが((
大丈夫大丈夫、そんな菊くんも可愛過ぎ俺得((
どうも深夜だとテンション可笑しくなる←
そして相変わらずの菊くんと本体様に元気貰っちゃった、明日もお仕事頑張れるううう_( っ`ω´)っ
>桐崎
(肩に当たった衝撃に振り返るとそれは相手で気まずい空気に目を逸らすも相手が青年と奥に行こうとするのを見ては反射的に相手に手を伸ばそうとし。
しかし丁度その時『先輩!!』と声を掛けられそちらを見ると笑顔の男子生徒が近づいてきて。
『先輩バイト終わったならSNS返してくださいよ。迎えに行こうと思ってたんすから』
「ごめん。でも態々いいのに…」
『もう来ちゃったんで、いいっすよね?って先輩そのCD…。…あ!!桐崎と赤城じゃん』
(忙しない男子生徒についていけず手を引かれ相手の前まで連れていかれてしまっては再びやってきた気まずさに視線を床に落として。
『お前らも来てたんだ。それより聞けよ。先輩が態々バイト帰りに俺の好きなアーティストのCD聞いててくれたんだよ。ね、先輩?』
「え…、ああ。まあ…」
(態々ではないけど…と思いつつも相手を忘れようと試聴していたのに違いないため曖昧な返事をしては息の詰まりそうな空気から逃げるように男子生徒の手を取り、店を出る際『今日先輩の家に泊まっていいっすか?』と問われ背中で相手の反応を気にしつつ黙って小さく頷いて。
(アパート、ベッドに座り男子生徒のシャワーを待つ間も相手のことを考えてしまっては、今夜は青年も一緒だし変な輩に絡み絡まれることはないだろうと。
兄はちゃんと相手を支えてくれるだろうかと苦悩していたところ男子生徒がシャワーから上がってきて髪を拭きながら隣に座ってきて。
『さっき良いこと思いついたんすけど。…蛍見に行きません??俺、人が少ない穴場知ってるんすよ。先輩、自然好きっすよね?』
「好きだけど…、蛍って虫だろ…?」
『ま、まあそうすっけど…。なんか違うじゃないすか』
(“虫嫌いっすか?”“本当に行かないっすか?”とどこか必死な男子生徒に申し訳なく、どこか可愛く感じては「…じゃあ行くか」と苦笑を零し。
_これは浮気ではないんだから後ろめたさを感じるのは可笑しいと言い聞かせながらシャワーに向かうも頭の中では今頃相手は青年と一緒なのだろうかとやはり相手を想っていて。
(/あれだね、ネタにして開き直るしかないよね。
着物が映えるってのがいいくらいだわw
こちらこそいつも繿くんと本体様に元気貰ってるよ。そして悶えr(ry
自分に画力さえあれば絵とか描きたいんけどね。
遺伝子レベルで御免なさいな感じだからww
それはさておき、あんまりここで話してると大変だろうから返事は蹴っていいよ。
楽しくてつい長々としてしまうけど←
>露木
( 男子生徒の言葉に相手の気持ちが男子生徒に向いて行ってる事を確信しつつ身勝手にも悔しさを感じては勝手に苛立ちを覚えて。
青年と共に軽く店内を見回った後、寮への道を辿りつつ夜の商店街を通ればふと店横の壁に夏祭りの宣伝ポスターが見えて。
『兄さん見て見て!!!夏祭りだってよ、行こうよ!』
「バイトあるかもだし」
『えー行こうよ、ね、浴衣見に行こ』
( ぎゃあぎゃあと騒ぐ青年を尻目にどうせ相手はあの男子生徒と行くのだろうかと思えば若干自暴自棄になってしまい二つ返事で了承して。
どうもあの男子生徒が気に入らない、苛々を押し殺し明日青年と浴衣を見に行く約束をしては互いの部屋に戻るべく廊下で別れて。
( 翌日、一人で食堂へと訪れてはばったりと兄に出会しスマホを片手に此方へと歩み寄って来て。
画面を此方へと向けられそこに合ったのはどうやらSNSのトークルームで。
『あのさ、なんだっけあの子。菊の事狙ってる…』
「なんで名前も知らねぇのに追加してんだよ」
『木ノ宮に聞いたの。昨日菊の家に泊まったってTL流れて来たんだよ!!!!!そんで個人行ったの』
( 画面に写し出されるトーク履歴を上から順に見て行き、その会話の内容に思わず溜息を漏らす。
《兄:ちょっと、菊の家にお泊り??》
《男子生徒:はい!!!二人で蛍見に行っちゃいました(´∀`)》
《兄:幸せアピールとかいらないから》
《男子生徒:あ、もしかしてヤキモチっすか??兄弟ってタイプも同じなんすね》
《兄:喧嘩売ってる??(#^ω^)》
《男子生徒:冗談っすよwwwww》
( スマホを戻し画面を閉じる兄から視線を流しトレーを片手に席については兄が目の前に腰を下ろして。
トーストを齧りつつ自分も携帯に目を向けた所で兄が数人の女子に目前で何かを渡されていて。
女子達が去って行った後、「何それ」と無愛想に聞けばどうやら連絡先の様で。
「へー、忙しいな」
『連絡しないよ??興味無いし』
「お前昔からヘラヘラしてるから勘違いさせてんじゃねぇの??うっわあの子かわいそ」
『そういう言い方やめてって』
( あいも変わらずヘラヘラとしてる兄を冷めた様に見てやりコーヒーを喉に流しては自分もSNSを開き相手のトークルームで指を止めるも再びホーム画面へと戻ったりを繰り返していて。
>桐崎
(朝、男子生徒と共に朝食を取るも相手の事を考えすぎてよく眠れなかったせいか頭はぼーっとしておりベラベラと話す男子生徒の話の内容をよく聞きもせず「ああ…」と相槌を打って。
『まじっすか?!じゃあ決まり!!』
「何が?」
『何がって夏祭りっすよ。浴衣は俺が特注で用意するんで心配無用っす』
(何も特注じゃなくてもと言おうとするが当人が楽しそうだったためまあいいかとコーヒーを啜り、テーブルの上に置いてある通知の来ないスマホを静かに見つめていて。
(祭り当日、さほど大規模でないにも関わらず人で賑わう屋台通りを慣れない浴衣でゆっくり歩きつつ、あれもこれもと色々勧めてくる男子生徒に苦笑を零し。
「楽しそうだな」
『先輩は楽しくないんすか?』
(そんなことないよと差し出された冷やしパインを受け取って一口齧ったところ遠くから黄色い歓声が聞こえ何気なくそちらに目をやっては女子に囲まれる浴衣姿の兄がいて。
『あそこにいるの綸さんっすよね。さすが兄弟揃ってモテモテっすね。弟とはタイプ全然違うっすけど』
「…そうか?」
(適当に返事しながら兄がいるなら…と相手の姿を探すも銀髪が見えた気がした瞬間『先輩。』と声を掛けられ我に返り。
男子生徒の視線の先が冷やしパインに向いてることに気付いては「…食べるか?」と口元へ持っていきパクつく姿に目を細めつつ再び人混みに目をやっては気のせいかと息を吐いて。
(それから暫く二人でたこ焼きなどを摘みながら立ち並ぶ屋台通りをぶらつくも無意識に相手の姿を探していたせいかいつの間にか男子生徒とはぐれてしまい。
仕方なしに袂に手を入れるもあるはずのスマホがなくアパートに置き忘れたことに気付いては、なんてベタな…と頭を抱えとりあえず人が少ない横道にそれて。
こんな人集りから男子生徒を見つけるのは困難。落ち合う場所くらい決めておけば良かったと後悔しつつ道行く浴衣姿の人々を見ては、何故かいつか会った江戸の相手のことを思い出し、何で江戸での仲は上手くいってるのに現代では駄目なんだと自分から相手をふったようなものなのに身勝手に気落ちしては視線を地面に落として。
>露木
( 祭り当日、慣れない浴衣ではしゃぐ青年と共に屋台を見回ってた所兄とも見事に合流し適当に空いた席に腰を下ろして。
花火まではまだまだ時間があり、かき氷を頬張る青年を尻目に携帯を取り出してはやはり当たり前か相手からの連絡は無く。
溜息を付きそうになるのを寸の所で抑えては向こうから浴衣姿の女子達の黄色い声が聞こえて来て。
「 うるせ…、何、こんな所に有名人でも来てんの 」
『 すごいね-…サインでも貰って来よっかな 』
( ケタケタと笑う青年に軽く笑いそちらに目を向けた所、女子達の間から一瞬相手が見えた様な気がしたが気の所為だと自分に言い聞かせ視線を逸らして。
( 暫く屋台を見回った後、兄や青年達が声を掛けられるのを尻目にそっと輪を抜けては少し外れた場所にて煙草に火を着けて居て。
煙を吐き出し満月を見上げてた所、丘の上でのこの場所に来たのは初めてなのに何故か懐かしく感じ。
その刹那、僅かに先に相手の姿が見え暫く様子を伺ってた物の何故か男子生徒の姿は無く。
数人の女子達に“ 一緒に回りませんか ”と誘われてる様子の相手を見てる内に放って置けずそちらへと小走りで向かってはさも一緒に来たかの様に「 お前何はぐれてんの?? 」なんて声を掛けて。
それとなく女子達を追い払っては急いで来たからか僅かに乱れた浴衣を直し、凛とした相手の浴衣姿に見惚れるもパッと視線を流して。
「 お前一人で居たら普通に考えて絡まれんだろ、…あいつ( 男子生徒 )は?? 」
( 無愛想に問い掛け相手の顔を見れないままに辺りを軽く見回しては小さな溜息を漏らして。
>桐崎
(女子達からの誘いに困っていたところ相手が現れ上手く立ち回ってくれたことに驚きつつ、愛想なく聞こえる問いかけには素直に男子生徒とはぐれてスマホを忘れてしまったことを告げて。
まさか相手の姿を探していたからはぐれた…なんて言えずに視線を賑わう屋台通りへとやるも慣れ親しんだ煙草の残香が微かに香っては隣をほんの少し見て。
「浴衣、似合ってるな。…それにこの場所、なんか懐かしい感じがする」
(前方の人並みに視線を戻しながらしみじみと零すもハッとなって「何言ってるんだろな」と苦笑を零し。
「赤城たちと来てるんだろ?花火も始まるだろうしあいつらのところ戻れよ。磯貝とは、まあ…最悪祭りが終わってから会えれば……いい、し…」
(本当は相手といたい、でも今更一緒にはいられないと心の中で葛藤しながら余所余所しい笑顔で言うも相手の顔を見た瞬間言葉を詰まらせ俄に真剣な表情になり。
「少し、じっとしてろ」
(声を落として相手の正面に回っては左肩をグッと掴んで顔を近づけるようにして紅い瞳を見詰め、そのままゆっくり相手の頬へと手を伸ばし触れる寸でのところで相手の頬を指でピンッと弾いて。
直後、相手の頬から小さな黒い影が羽音を立てて飛んでいき。
「蚊、止まってた」
(一言ボソリと呟いては袂から何故か持っていた虫さされの薬を取り出し僅かに赤くなった相手の頬につけようとして。
>露木
( 男子生徒とはぐれた挙句、スマホを忘れたなどと聞けば“本当に此奴は…”なんて零したくなったが浴衣の事を褒められては照れ臭さから目線を逸らして。
“お前も良く似合ってる”なんて気の利いた事を言えれば良いのだが口下手な自分の性格上その言葉は口から出る事は無く心に留まっていて。
青年達の元へ戻る様に促されるも相手を一人放って置ける筈も無く何か言おうとするも“磯貝とは祭りが終わってから会えれば良い”との言葉にこの後も二人で過ごすのだろうかと解釈してはどことなく悔しさに塗れ不機嫌な表情が漏れてしまい。
顔を横に向けたまま相手の言葉が止まるのに気付き改めて視線を交じわせば掴まれた肩と共に胸の鼓動が煩く騒ぐのを感じて。
伸ばされた手に僅かに身構え目を細めるも頬に軽い衝撃を感じては呆気に取られた表情で相手を見詰め。
羽音と共に蚊の存在に気付かされては期待したみたいじゃないか、と羞恥が込み上げ髪をグシャリと掴んでは再び頬に手を伸ばす相手の手首を掴み。
「 あー……………くそ、馬鹿みてぇ 」
( 僅かに赤くなった表情を隠すべくがっくしと下を向いては花火が打ち上がる音に気付きそちらを向いて。
手首を掴んだままな事もすっかり忘れ暫く立派に打ち上がる花火を見ていては向こうからこちらを呼ぶ声に気付き。
こちらに向かって来てるのはどうやら相手を探してた男子生徒の様で慌てて相手の手を離せば「 …行けば 」と小さく言って。
>桐崎
(手首を掴まれやや驚くも項垂れる相手を見てはその心情が掴めず体調でも悪いのかと声を掛けようとして。
丁度その時花火が上がっては色付く夜空に目を向けるも同じように花火を見上げる相手に気付きそっとそちらに目を移し。
端正な顔立ちに羨む程の高身長…そして綺麗な銀髪が多様な光で彩られるのに見惚れては掴まれる手首がじわりと熱くなるのを感じて。
このまま時間が止まればいいのにと切に願った時、自分の名を呼ぶ男子生徒の声と共に相手の手が離れては酷く寂しく思え、“行けば”と言われてもすぐに動けずに。
_これで最後にしたくない、なんて我が儘な感情が先立っては相手の手を掴み返しグッと自分の方へ引き寄せ耳元で「明日の昼、時計台で待ってる」と一方的な約束を囁いて。
一息置いて少し離れては掴んだ相手の手に塗り損ねた虫刺されの薬を押し付け「まだ暫くいるんだろ?使えよ。…それじゃあな」“繿”と去り際に花火の音でかき消されるくらいの声で名を呼んで男子生徒の元へ行き。
『先輩どこ行ってたんすか。てかぼーっとしてたら駄目っすよ』
(男子生徒のお叱りに平謝りしつつ相手のぬくもりが残る手を繋がれるのが嫌で袖に手を通し腕を組んでは我ながら“馬鹿みたいだ”と。
瞬間、相手が先程零した“馬鹿みてぇ”の言葉が重なり、もしかして相手は何か期待してくれたのかと振り返ろうとして寸でのところでやめては『静かに花火が見えるところがある』という男子生徒についていき。
( / おおおおお久し振り過ぎて…っ!
そしてそしてずっと来たかっただけに胸の高鳴りが五月蝿いんですけど((殴
時間開きすぎたので取り敢えず季節は冬、繿は菊君とぎくしゃく曖昧になったまま暫く街を離れてたと言う事にしてました…不備とかこうした方が良くない?とかあったら言ってね!
年齢迷ったけど暫くは永遠の18歳((殴
サザエさん方式で行きまs←
ほんとにほんとにありがとう、また宜しくお願いします!
( 駅前の時計台下、この時計台も思い出深かったななんて1人思い出しては学校へ向かう道へと進み。
バイト先には全部連絡を済ませ復帰を許して貰ってる為その辺りの心配はなく、時間が出来たら孤児院の子供達にもまた会いに行かなくてはと。
ふと鳴り響いた携帯を取り出し兄からの着信に出ては今居る場所を告げて。
『やっとこっち帰るんだ、もう…いきなり居なくなったと思えば“明日帰る”って連絡だし。本当自分勝手だし物事浅読みし過ぎ』
「悪かったよ、とにかくそろそろ寮着くから」
( あっさりと素っ気無く謝り、あれ以来連絡を取ってなかった相手の連絡先を開いては僅かな期待と共に会いたい気持ちと会いたくない気持ちが交差して。
本当はあの日、時計台の元へ行きたかった。
しかし運悪く、以前相手を戒めてた取り巻きが相手が1人で居ると言うのを良い事にそちらに向かってるという情報が青年から入り時計台に向かうか取り巻き達の元へ向かうか苦渋の選択が下された。
結局時計台には迎えず、それでも相手が無事ならいいでは無いかと己に言い聞かせ、その気まずさから逃げる様にここを離れたのだ。
今更ながら本当に情けないと軽く眉を寄せては少ない荷物を片手に寮の前にてキーカードを翳して。
( 高校生男子寮の入口、腕を組み昇降口に持たれてる兄を見付けては変わらない無表情で横を過ぎて。
『え、ちょ、久し振りに会った兄弟にその態度?』
「ん、ただいま」
『え、あ、お帰り』
( 呆れた様に溜息を着く兄と共に自室へと向かう途中、向こうから走って来る赤髪に気付いてはそのまま勢いよく胸倉を掴まれて。
『兄さん!!!いきなり居なくなったと思えば!!!高校では兄さんが女の子と駆け落ちしたって噂になるし!!!!!結婚するから離れたらしいとか訳分かんない噂あるし!!!!!』
( ぎゃあぎゃあ騒ぐ青年を尻目に噂とは怖いもんだなと呑気に考えてはさっさと自室に入り制服を来て。
職員室に向かわなければと青年と兄に告げてはまだ生徒が行き交う廊下へと出て。
(わわわ、もう口角緩みっぱなし!!
そして素敵な設定ありがとう。サザエさん方式了解!
正直過去の細かい設定曖昧で矛盾出てくるかもだけどその時は訂正していいから。
菊君はあれから拗ねて、アパートにて男子生徒(磯貝君)とちゃんと好きとも付き合うとも言わずだらだら半同棲生活続けてます。恋愛感情ありません(最低)
そしてそして久々のロルで読みづらい上に全く絡んでない(_ _)ペコ
あと嬉しくて一日でロル返しちゃったけど、返信は気が向いた時ゆっくりで大丈夫だよ!
>桐崎
(アパートの自室、外から聞こえるバイクの騒音で目を覚ましてはベッドの上で一度寝返りを打ち、もぞもぞとスマホを手探りで掴んで時間を確認して。
時刻は正午前。今朝は夜勤バイトの朝帰りで同室で眠る男子生徒の弁当だけ準備して寝た。
今朝方、男子生徒が『行ってきます』とか言ってたようなとボサボサの髪を掻きつつ洗面台に向かい。
ふと目についたピアスの痕。そっと触れては相手はどうしているだろうと。
一方的に取り付けた時計台の約束を振られてから相手を想わない日はなかった。
あの日、もう一度だけ自分の気持ちを告げ今度は逃げずに相手の気持ちを聞くつもりだった。が、結果相手は来ず連絡もなしに姿を消した。加えて後に聞く“噂”は耳が痛いものばかり。
要するにそれが“答え”なのだろうと、相手が自分を守ってくれた事実は兄や青年との連絡の行き違いで知ることはなく、悲観的な解釈をしては此方から連絡することもなく男子生徒の好意を利用して行き場のない感情をやり過ごしていて_。
出来ればもう相手のことは考えたくないな_と思考を今晩の献立に無理矢理移行しては冷蔵庫を開くも見事に空っぽで。
今日は大学の講義も入れていなく予定はない。買い出しに行くかと軽装かつ眼鏡という抜けた恰好で肌寒さを感じつつ近所のスーパーに向かい。
( 教師などへと挨拶をさらりと済ませ今日の夜からバイトへ出れるという事をバイト先の居酒屋へ連絡を入れては1度自室へと戻り。
流石に長期空けてただけに食べ物や飲み物は一切無く、面倒臭そうにブレザーの中にパーカーを着込みフードを出しては珍しくヘアバンドも髪のセットもしないまま以前より僅かに伸びた前髪を下ろしていて。
欠伸を漏らしながら寮を後にし、ここから一番近いスーパーへと向かってはカゴを取りミネラルウォーターを数本カゴへと放り投げて。
ふと鳴り響いた着信音、以前相手にCDを貸した事もある例のアーティストの曲。
肩で携帯を支え片手にカゴを持ち、暫くは料理もしないだろうとインスタント食品コーナーにて物色しては電話先のバイト先の店長の話に耳を向けていて。
『仕事内容とかは覚えてるよね、今日明日って休みの所多いじゃん?文化祭の振休でさ』
「あー、確かそうみたいっすね」
『繿君も戻ったばっかで疲れてるでしょ。今日夕方頑張ってくれたら明日はお休みあげるから』
「や、別にー…」
『良いから良いから、君くらい若い子なら彼女くらい居るんでしょ?ご飯でも行ってきなよ』
( お節介というか人が良いのか、店長の言葉に甘える事にしてはカップラーメンを適当にカゴに投げ入れては会計へと向かおうとしていて。
(訪れたスーパー、野菜を物色していると背後の商品棚を隔てて聞き覚えのある曲が耳に入っては嫌でも相手を思い出すも、まさか当人がいるとは思わずに買い物を続け。
必要な物をカゴに入れレジに向かうところ、今度は自分のスマホに着信が入り出てみると男子生徒からで。
『あ、先輩。今日も泊まりいいっすか?』
「あれ…寮空けすぎると寮長に怒られるから今日は寮って言ってなかったか?」
(相変わらず声がでかいと内心げんなりしつつレジにカゴを持って行くも視線を上げた瞬間、一列前のレジに見間違えようのない銀髪の後ろ姿を見つけては思考が停止して。
『…先輩?』
「……あっ、いやなんでもない。いいよ、来て。」
(何事もなかったように返事をしては通話をしたまま会計を済ませて店員に申し訳ないと軽く目配せし、袋詰の台に行くと同じく会計を済ませた相手とそこで初めて目が合って。
「ん、じゃあ待ってる。」
(ピッと通話を切りスマホをポケットにしまっては相手を見つめ直し、ほんの間をおいてにっこりと微笑んで。
「偶然。てか帰ってたんだな。…またそんなものばっかり食べて。」
(時計台でのことや今までのことなど素知らぬ顔でよく他人に向ける笑顔を向けつつ、相手のカゴの中を見ては態とらしく呆れてみせ。
_前髪、伸びたな…なんてちょっとした相手の変化に気付く自分に嫌気がするも表情には出さずもくもくと商品を持参した袋に詰めては「それじゃ。」と軽く手を振りその場を去ろうと。
( 会計を済ませビニール袋を片手に袋詰の台へと訪れた際、真正面から相手とばったり出会して。
電話口の相手に言ったのであろう“待ってる”と言う単語がやけに鮮明に聞こえては視線を斜め下へと流し無意識に軽く唇を噛んでいて。
以前と変わらない、それなのにどこか空っぽにも感じ取れるその笑顔も何故か気に食わず立ち去ろうとする相手の手を咄嗟に掴んでしまってははっとして。
会話を生み出せる様なたちでは無く暫く頭を巡らせた後に思い出した様にバイト先のチラシを取り出しては相手に押し付ける様に渡して。
「今日ハロウィンのイベントなんだよ、それ持ってくと安くなるから。ノルマ達成しなきゃだし暇だったら…」
( “さっきの電話の相手とでも来れば”なんて嫉妬丸出しの言葉を言い掛けそうになったところでぐっと堪えては大股で相手の横を通り過ぎて。
( 夕方、制服に軽い仮装を混ぜるスタッフ達と共に料理の仕込みを済ませてはハロウィン仕様の店内をぼんやりと見ていて。
『桐崎、見てみこれ。今日だけのブラッドオレンジ』
『わ!真っ赤!血みたい!』
( はしゃぐバイト仲間に軽く笑みを零しては綺麗に施されたいつもと違うメイクに触れてみたりして。
『お前もやれよ、ほら、蜘蛛の巣描いてやるから』
『うんうん!私は目尻に蝶々描いて貰ったの、先輩意外と上手だよ!』
( いらないと断ろうとするもしつこい押しに負けてしまい困った様に描いて貰った後改めて先輩にまじまじと顔を見られては『この髪自毛…だよな、眉毛も髪も根元から銀髪だし。そんでもって割と色白いからお前ほんとに吸血鬼だったりして』なんて冗談混じりのからかいを受けては苦笑いを漏らして。
いよいよ開店時間、それなりに若者層に人気の居酒屋だった為に入口には既に列が出来ており、順番に席に案内しては本日限定のジュースやら酒やらを忙しなく運んで。
(アパートの自室、ベッドに仰向けに寝そべり先程相手に押し渡されたチラシをぼんやり眺めていると再び着信音が鳴り、今度は木ノ宮(若頭)からで。
『ねえ聞いて!繿が帰ってきたんだよ!』
「知ってる。さっき会った。」
『なーんだ。まあいいや。でね、繿のバイト先でイベントがあって僕、魔女の仮装して行こうと思うんだけど一緒に行こうよ!というか磯貝君にはもう話つけてあるから!!』
(拒否権ないし、と内心毒吐きつつ待ち合わせの時間を決めて、その時間になると着替えるのも面倒だったため服装も眼鏡もそのままに街へと出て。
(居酒屋に来ると行列最後尾に何故か人集りが出来ていてよく見るとその中心に完璧な魔女っ娘に仮装した若頭がおり、こちらに気付くと人をかき分け駆け寄ってきてクルッと一回りし。
『どう?可愛いでしょ!僕の手作りだよ!…って菊、何その冴えない格好。』
『先輩遅いっすよ。木ノ宮さんと二人でいるの辛いんすよ。…目立つし。』
『それ本人の前で言うかなあ。それと今は優ちゃんね!』
(ぎゃーぎゃー騒ぐうち順番が回ってきては仮装した女店員にテーブル席にへ通され、自分は壁際に、その隣に男子生徒、正面に若頭という形で座って各々ドリンクを注文し、自分は何となく飲みたい気分だったため比較的アルコールが弱い梅酒水割りを頼んで。
『あ、見てみて。さっすが繿。逆ナンされてるよ。やっぱモテモテだね。また変なのに難癖つけられないといいけど。』
(若頭の言葉に横目でそちらを見ると酔った女性客に『吸血鬼の繿くんも格好いい!』『血吸われたーい』などとしつこく絡まれ、その様子を他の男性客が恨めしそうに見る見慣れた光景に冷めた心で視線を外して。
『先輩、何食べますか?限定メニューもあるみたいっすよ。』
「どれ?」
(無意識の嫉妬か、相手への当て付けか見られているかも分からないのに男子生徒に身体を密着させるとメニューを覗きこむようにして。
( 想像通りと言った所か、やはり忙しい様子の店内を忙しなく動き回る際に向こうの席に相手と何時ぞやの男子生徒、若頭の姿が見えては息を飲む。
自分が誘った癖にも関わらず仲良さ気に男子生徒との近しい距離に身勝手に苛付いてはガツガツと靴音を慣らし厨房へと入りオーダーを告げて。
女性店員数人が相手グループの容姿の端麗さに黄色い声を上げる中、やはり気に食わない様子で小さく舌打ちしては呼び出し音に気付き早足でテーブルに向かって。
( 運の悪い事に相手グループの近くの席、女子会とでも言うやつだろうか。
大学生と思われる人が数人、次々とドリンクやおつまみやらを頼むのを聞いてたが相手グループの事をチラチラと見ては何やら“格好良い”だの“声掛けてみようか”だのと聞こえて来て。
こっちはオーダーを取りに来ただけ、しかし何故か自分のものでもない相手を取られてしまう様な身勝手な焦燥感に駆り立てられては椅子に座る客の目線に合わせしゃがみ込み以前のバイト( ホスト )の時の悪い癖を持ち出してしまって。
「 御注文は以上ですか?本日限定のパンプキンパイもお勧めです、実はこれ俺が考えたんですよ 」
( 普段無表情の癖して何とも胡散臭い笑顔を貼り付けては相手グループからの視線を外させる様に自分が考えた訳でもない料理を勧めて。
快く注文してくれた客に「 ありがとうございます 」と笑顔を向けては振り返りざま直ぐ無表情に戻り客席から見えるドリンクカウンターにてドリンクを作り。
ここの居酒屋は料理やおつまみは厨房で作るがちょっとしたバーの雰囲気を用いれてかドリンクだけはカウンターにてスタッフが作る事になっている。
ドリンクを掻き混ぜながらもやはり気になるのは相手と男子生徒、気にしない様にするも無意識にそちらに目が行ってはイライラとして。
それに気付いたのは若頭のみ。
態とらしく溜息を付いては相手に『あぁもう、わんわんが怖い顔してぐるぐる言ってるよ』なんて意味深な事を言い頬杖を付いていて。
(メニューの中からつまみなどを選んでいると、近くの席から黄色い歓声が聞こえ視線を上げてみれば丁度相手が女の前で跪き注文を取るところで。
赤面する女性客達は明らかに相手に酔いしれている。相手が何故そんな行動を取ったかなど知る由もなく、無性に腹が立っては運ばれてきた梅酒をグイッと流し込んで。
その為、その後の相手の苛立った様子など気付くはずもなく、若頭の言葉に再び視線を相手にやっては「気に入りの女を落とせなかったんじゃないのか。」と刺々しく言い捨てて。
(相手を視界から除外しつつ食事を進め、それも終わりがけのころ、手洗いへ行き席に戻ろうとすると見知らぬ年上らしきケバイ女性に声をかけられて。
『ねえ、今から時間ある?』
「…は?」
『ちょっと私と抜け出さない?これからクラブ行こうと思うんだけど一人じゃつまらないの』
「いえ、連れがいますので。」
『いいでしょ?お姉さんがおごるから。』
(あー酔ってるんだなと面倒に思うがフと目に入ったのは笑顔で女性に接客する相手の姿。
仕事をしているのだから笑顔なんて当たり前。だが時計台でのことや突然姿を消したことが頭を過り急速に心が荒めば、微笑を女性に向けていて。
「じゃあ、付いて行っちゃおうかな。」
(柔らかい微笑みのまま女性の手を取っては一度、席の前まで行き「ちょっと用事出来たから。」と数千円金を置くと『ちょ、先輩?!』と慌てる男子生徒を無視して、最低だと分かっていながら店先に出て。
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