xxx 2014-12-29 00:12:16 |
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>桐崎
(兄と青年の助けがあり何とかその場をしのげて小さく息を吐くも、青年の腕の中で眠る相手を見ては胸が締め付けられる思いになる。
相手に対して怒りがあるのに相手の辛いところや悲しい表情を見るとどうしようもなく苦しい。
そしてどうして今相手を抱きしめているのが自分ではなく青年なのかと嫉妬のような感情が芽生えていて。
しかし相手はふしだらな自分に触れられるなど嫌悪しかないだろうと。
むしろこの同じ空間にいることも嫌がるかもしれない。
兄も青年も自分のことを知ったら気色悪がるだろうと悲観的になってはフラリと立ち上がり。
「……桐崎のこと頼む。俺は自分の部屋戻ってるから。二人ともありがとな」
(静かな声色で述べては一度相手を見て“もっと早くに助けて上げられなくて御免”と心の中で謝り兄の部屋を後にして。
(その後、自室には戻らず男とNo.1ホストの元へ向かう。
恐らくパソコンのデータやメールは青年が何とかしてくれる。
しかし男達の記憶を書き換えない限りまた相手に迫ってくるだろうと。
正直能力はあまり使いたくないがそうも言っていられない。
二人だったら何とかなると男の家付近に来てみると二人共そこにおり、自分の姿を見るなり怒りを露わに近付いてきて。
『俺の繿を返してくれないかな?』
『折角可愛がってあげたのに逆らうなんて何様のつもり?』
(両腕をガシリと二人に掴まれるが、やや強引に関節を外すようにしてつかみ返すと能力を開放し辻褄が合うよう此方に都合が言いよう記憶を改ざんしていき。
ぼーっとする男達がそれぞれ家路につくのを確認しては小さく肩を下ろす。
これで滅多なことが無ければ男は相手に近づかないし、No.1ホストも相手がバイト先にきても突っかからないだろう。
しかし相手の受けた傷は消えることがないと思うと気持ちは重く。
何故自分を嫌っている相手をこんなにも想ってしまうのか…。
初めてなようで、ずっと前から抱いていたような感情に戸惑いつつ寮へと戻って。
(翌日、目を覚ましては一番に相手の体調を気にかけるも、結局相手は自分が嫌いで、自分も相手に対して“怒り”の感情は残ったまま。
自分が相手の様子を見に行ったところで空気を悪くするだけだとシャワーをいつもより長く浴びて寮の食堂に行くも、やはり相手のことが気がかりで食事の乗ったトレイをテーブルに置き手付かずのまま頬杖をつきぼんやりしていて。
>露木
( 翌日、兄の部屋で目を覚まし隣で寝てる青年に布団を掛けると自室へ戻りシャワーを浴びる。
まだ僅かに不安が残るも昨夜相手が助けに来てくれた事を思い出しては礼を言わなければならないと。
相手も自分を助けたかった訳では無い事など知ってるが助けられっぱなしは良くない。
寮の喫茶店の様になってる食堂へと向かいコーヒーと朝食を頼むと窓側の席に腰を下ろす。
青年と兄のお陰によりなんとかあのメールは阻止出来たがまだ心中落ち着いてはおらず。
ふと窓に写った向こうの席に相手がいるのが見えては少し迷うもイヤホンを外しトレイを持っては相手の席に向かい目前に腰を下ろして。
互いにあからさまに嫌な顔をするが素直に口を開いては「……………ありがとな」と無愛想に告げて。
そのままトーストをかじると改めてしっかりと話をしなければならないなと考え遠慮がちに相手を見詰める。
「………俺あんたの事大っ嫌いだけどさ、………まぁ…それはあんたもだろうけど。………何で助けたりしたんだよ、あのNo.1の男に告げ口するくらい嫌いなんだろ。自分から告げ口しといて助けるとか…矛盾してないか??」
( 直ぐに視線を逸らし、気不味い雰囲気の中コーヒーを喉に流してはセットに含まれてるヨーグルトを相手のトレイにトンッと音を立てて置く。
「俺ヨーグルト嫌いだからやるよ」と小さく言い相手のいつもの癖でパーカーのポケットから煙草を取り出すも思い出した様にしまい込む。
「……………あんたに助けられてばっかだ。………なんか納得行かないんだよ。………だから………その、………」
( 普段こんな事を言ったりしない為どこか照れ臭そうに頬を掻いては「………それなりの礼は、する」と。
「………出来る事なら、言ってくれれば何でもする」
( 段々と羞恥が込み上げてはまずは互いに話が噛み合わない事が気になり相手を侮辱したメール内容の事に触れては自分の携帯を取り出し相手に見せる。
「あの男の携帯取られてたんだよ、この日から俺が打った文じゃない。…それにほら、俺メールとか面倒臭がるタイプだからこんな空白開けたりしない」
( 少しずつ誤解を解きながら不意に真面目な顔で「俺があんたに枕仕事進める訳無いだろ。あんたはそんな事出来るような安い男じゃないの知ってる」と言っては段々と羞恥がこみ上げる。
我ながら恥ずかしい事を言ってしまったのではないかと俯いては携帯をしまい。
>桐崎
(不意に自分を嫌っている筈の相手が目の前に座り何を言われるのかと思えばその内容は驚くべきもので。
相手から紡がれる言葉を聞き照れた表情を見て、漸く事を理解しては段々と羞恥が込み上げるも其れを隠すように軽く睨みつけて。
「…あのホストに告げ口なんてしてない。だいたいあんたのことチクッて俺になんの得があるんだよ。………助けたのは…ただなんとなく気に入らなかったからだ。…俺が勝手にしたことだし礼なんて言われる筋合いはない」
(素直になれずやや乱暴な口調で言いスッと目を逸らすもヨーグルトはしっかりと貰い顔をそむけながらも口に運ぶ。
相手が自分を侮辱したのが嘘だったと分かり嬉しいはずなのに今まで不仲だったのを急に切り替えられるほど器用ではなく、見せられた携帯メールを見ては微かに眉を寄せて。
「………あんたのメールの打ち方なんて一回もメールしたことないから知らないし。気付くわけないだろ」
(相変わらず目を合わせず言うもチラと相手を見てはヨーグルトをトレイの上に置き。
「……後でバイト先の細かい仕事内容、メールして欲しい………別にあんたとメールしたいとかじゃないからな。また成りすましに騙されるのは癪だしさっさと仕事覚えてあんなバイト辞めたいだけだから」
(つい刺のある言い方になるも顔が火照るのは隠し切れず、何故相手の前になるとこうも餓鬼っぽくなるのだと溜息が溢れる。
しかしふと昨日の相手の辛そうな寝顔が脳裏を過っては俄に真面目な表情をして「……あの男もあのホストももうあんたには絶対手出ししないから安心しろ。…というかさせない」と記憶を改ざんしたことは伏せて小声で呟くも、何故かバイト先のトイレで相手にキスされた事を思い出してはカッと頬が熱くなり慌ててトレイを手に立ち上がり「…ヨーグルトごちそうさま」と足早に誘うとする。
しかし思い直したように足を止め「………やっぱり、礼してもらう。…今度、百貨店で大量に買い物するからその荷物運び手伝って欲しい。…体調良くなってからでいいから」とやや早口に告げては返答を待たずにその場を立ち去って。
(数日後の学校が休みの日、待ち合わせ場所に数十分前につくも一向に気持ちは落ち着かず、ただのパシリで呼び出したのに此れでは相手と会うのを楽しみにしてるみたいではないかと項垂れる。
そんな時、少し離れたところで相手が数人の男女に捕まっているのが見え。
『君、背が高くてスタイルいいねぇ。それにイケメンだし』
『良かったらうちの雑誌のモデルにならない?あー、でももう専属付いちゃってるかな?』
(馬鹿でかい声でしゃべるキャッチの声から読モの類のお誘いだと分かれば、まあ相手なら無理ないよなとぼんやり思いつつ時間が掛かりそうなら座っていようと背後の時計台の下に腰掛けて。
>露木
( 言葉こそ生意気な物の相手の表情から何となく敵意は無い事を感じ取り照れ臭い気持ちに駆られる。
相手が去った食堂にて、さり気なく相手の買物に付き合う日を楽しみにしてる自分が居ては敢えて気付かぬ振りをして。
( あっという間に約束の日になればやや弾む足取りで待ち合わせ場所へと向かうも相手の姿が見えた所で数人の男女に囲まれては僅かに無表情に不機嫌を含ませ丁寧に断っていて。
中々しつこいなと苦戦していた所、自分の横を通り過ぎた数人の他校の女子大生が『あそこに居る人凄く格好良くない??』『本当だ…、声掛けちゃおうよ』『彼女待ちとかだったら超萎える‐』と相手の方を見て黄色い声を上げてるのが無意識に耳に入りやや焦りが生まれては女子大生達よりも先に相手の元へ向かって。
座る相手の目線に屈み“ちょっと我慢しろ”と耳打ちしては相手の手を取りさっさと場を後にして。
女子大生達の姿が見えなくなり安堵の息を付いた所で相手の手をしっかりと握ってた事を思い出し慌てて離しては羞恥から俯き頭をガシガシとして。
「…だ、第一あんたがそんな容姿だから一々言い寄られるんだよ馬鹿」
( 言ってしまった後でこれでは相手を褒めてるみたいじゃないかと。
どうも調子が狂う、さっさと百貨店に入っては大人しく相手の後ろに続き買物に付き合って。
大人向けの静かな印象の雑貨屋、菊の花をあしらった携帯ストラップを見付けては足を止める。
男からの贈物なんて可笑しいし相手とはそんな仲じゃ無いだろと思うも気付けばそれを購入しており自分でも何をしてるのかと。
こんなの渡した所で意味があるのかと思いつつも和柄をあしらったストラップ故に男性が付けて居てもおかしくないもので。
相手の後ろを歩きながら渡すタイミングはあるだろうかと考える中、ふと覚えの無い記憶が流れ込む。
今購入した菊のストラップに似た飾りの簪を手に嬉しそうに微笑む相手、…否、相手はこんなに長髪では無かったし着物だなんておかしいが顔は瓜二つで。
一瞬の出来事に眉を寄せるも深く考える事は無く、足休めに喫茶店に入って。
飲物を注文し、ウェイトレスが店の奥に行くのを見送っては暫しの沈黙に耐えられず先程購入したストラップを相手の目前に置けば視線を逸らす。
「何となく買っただけだし深い意味とかは無いから。………ってゆうかまぁ…礼、みたいな。………要らなかったらその辺の女にでもくれてやっていいよ」
( 無愛想に告げた所で携帯が鳴り出し青年からのメールが来ては微妙な顔をして無視をする。
後から返せば良いかと考えつつ、青年とのメールは中々終われない。
そう考えると相手とのメールは少ないなと。
受信ボックスに埋まった“赤城”の文字をぼんやりと見詰めては「そう言えばあんたもメールとかすんの??」と問い掛けて。
>桐崎
(相手と共に訪れた百貨店、今更だが断りもせず付き合ってくる相手に嬉しさが込み上げては先程握られた手の感触がまだ残っている気がして何気持ち悪いこと考えてるんだ頭を振って買い物に集中する。
気が落ち着かないまま喫茶店に来ては、思いもしない相手からの贈り物に小さく目を見開き、その不器用で照れたような態度に不覚にも可愛いなんて思い。
遠慮がちに包みを開いて出てきたストラップは至極自分好みでどこか懐かしささえ覚えれば、ほぼ相手の前では初めてと言っていい自然な微笑みを零し「ありがと……使わせてもらうよ」と素直に言葉を零していて。
そんな微笑みを零していたとは知らず続く相手の問いかけにいつもの表情に戻っては微かに首を方向け「…仕事と家族くらいかな。……あとは綸」と最近返信もしないのにやたら送ってくる兄の愚痴を零し「…彼奴、好きな奴とか彼女いないのかな」と苦笑して。
そこでふと相手はどうなのかと気になり聞こうとするも何故か答えを聞くのが怖くなり「……ていうかあんたもさ、好きな女いるだろうし、いきなり男の俺にキスとかやめろよ」と自分からもした癖にからかうように言って。
(その後、喫茶店を後にして大学の課題で使う備品や本を買い相手に半分持ってもらうと寮の自室まで運んで貰い、相手にとって迷惑かと思ったがコーヒーだけでもと中に招いて。
相手をベッドに座らせコーヒーを渡しては「今日は有難う……助かった」と礼を述べる。
しかしその後が続かず、どうしようと思っていると電話が鳴り見てみると妹のナツからで。
相手がいるし後からかけ直そうと思うが大切な妹からの電話。
もしかしたら様態が悪くなったのかもと焦れば相手に断りを入れ電話に出て。
すると内容は合宿の土産のお礼で。わざわざ良いのにと思いつつ表情は無意識に緩んで「…それじゃあナツも元気で。今度会いに行くから」と穏やかに述べ電話を切り。
暫く相手が居ることを忘れ余韻に浸っては注意を怠り先程買って床に置いてあった荷物に足を引っ掛けてしまい体勢を崩して。
しまったと思った時はすでに遅くベッドに座る相手を押し倒す形になれば、一気に近くなった距離に羞恥がこみ上げる。
コーヒーがベッド脇に置いてあって良かったなんて冷静に考える一方、頭の中は真っ白でぼーっと相手を見詰めてしまい。
すぐに離れなければと思うが身体は動いてくれず、相手の首筋に残る火傷の痕に眉を下げてスゥと撫でたあとゆっくりと顔を近づけて軽く唇を重ねて。
そこで漸く我に返ってはカガバッと身を離し相手に背を向けて「……わ、悪い。俺……今、どうかしてた。………き、気持ち悪いよな……ほんと御免」と折角相手に近づけたのに何をしているんだと自分を恨み俯いて。
>露木
( 兄とのメールに関して僅かに嫉妬心を感じたりしては綸のあからさまな好意に気付かないあたり相当鈍いなと苦笑を漏らす。
どこかまだ不貞腐れた様な態度を取ってしまうも続く相手の言葉に視線を逸らして。
「別に…好きな女なんて居ねぇから。…っていうかあんたの方こそ女の一人や二人居るだろ」
( 頬杖を付いたまま素っ気なく言っては喫茶店を後にし寮へと向かって。
( 大学生寮に付くなり部屋に招かれたが流石に迷惑じゃないかと一度断るも相手の押しに負け入れて貰う事にして。
コーヒーを受け取りどこか余所余所しくベッドに座っては玄関口の方で相手が電話をするのを見詰める。
親しげな様子と自然な笑顔に彼女だろうかと思い込んでは気持ちが沈む。
電話を終え戻って来た相手が荷物に引っ掛かり見事に自分の上に体制を崩すとその至近距離に頭が真っ白になるが冷静な振りをして「大丈夫かよ、あんたかなりのドジだな」とからかう。
しかし不意に相手の顔が近付き思考が停止しては驚いた様に目を見開く。
正気に戻った相手が勢い良く身を離し謝るのをぼんやりと見詰めては相手の腕を引き再び自分に引き寄せると真顔で相手を見詰める。
「なんで謝んの??…また冷やかしとか??」
( 真剣な表情で相手を見詰めるもいざ相手の口から応えを言われるのが怖く、強く腕を引き相手を押し倒しては見下ろす。
「………どうかしてるよあんた、人間じゃない奴に平気で口付けるとか。………っていうか、…別に気持ち悪くなんてねぇし。…ただ彼女いんのにこういう事すんのはどうかと思うぜ、遠距離恋愛なんだろ??さっき“会いに行く”って言ってたし」
( まさか妹だとは知らず嫉妬心を顕に相手に言っては今度は逃がして堪るかと相手の腕を軽く掴み首筋に顔を埋める。
「抵抗しねぇの??………さっき、何でキスしてきたの??」
( 僅かな間を置き再び相手に聞いては落ち着く様な相手の香りに翻弄される。
しかしこのまま続けてしまえばまた相手との距離が遠ざかるのではという恐れが湧いては身を起こし向かい合う様に相手の前に座る。
続く沈黙を断ち切る様に「何でキスしたんだよ、誰かと間違えた??………綸とか言ったらあんたの携帯壊す」と子供の様な事を言う。
一度俯き相手から視線を逸らしては「………前言ったのやっぱ取り消すわ、…割とあんたの事嫌いじゃねぇよ」と言い赤くなる顔を隠す様に深く俯くも短髪故に耳だけは隠せず。
>桐崎
(強く腕を引かれ整った顔立ちと目が会えばドキリと胸が鼓動し、次の瞬間には押し倒され先程と逆の立場になっていて。
首筋に相手の髪があたり擽ったさに僅かに身を捩るが男の相手に触れられても悪寒はなく、何故か耳の辺りがチクリと痛んだ気がして。
古傷もない筈なのに何故だろうと思うも相手から言われた言葉にやや不満げに眉を寄せ。
「……“人間じゃない”とか言うな。前にも言っただろ。あんたは人間だって。…そんなに人間じゃないって言い切るなら別にいいけどさ。……俺はあんたがなんであろうと平気だし、優しい奴だってのも知ってる。それに…あんたの能力見た時、…綺麗だって思った」
(相手をまっすぐに真剣な瞳で見詰め嘘偽り無く述べるも急に恥ずかしくなっては顔をそむけ「…って、ゆうかさ、…さっきの電話の相手、彼女じゃないし……」と。
妹だと言おうとするも妹に対してあんな緩みきった表情をすると思われるのは嫌で「…兎に角いまフリーだし好きな女もいない」とやや早口で述べ身を起こしてはキスの事を問われ、自分でも何故キスしたかは分からず答えに戸惑う。
その時“割りと嫌いじゃない”という予想外の言葉が耳に飛び込んで来てパッと相手を見ると耳まで真っ赤で。
嬉しさと共に悪戯心が湧いては「桐崎」と名を呼び頬に触れ顔を上げさせてはグッと顔を近づけて「なに、照れてるの?あんたって以外とウブなんだな。…ていうか見間違えたのが綸だったら携帯壊すって、嫉妬?」と半ば冗談のつもりで問いかけるも相手の目を見詰めるうち、真顔になっては引き寄せられるように再び唇を重ねようとする。
が、もう少しで触れ合うというところ突如扉が開いては兄が飛び込んできて相手から引き剥がされて。
『ちょっと待った!二人とも血迷ったら駄目だよ!…もう隣で聞いててヒヤヒヤしたよ』
(隣で聞いてってどういうことだと思うも聞く前に腕を引かれては『繿はそこで頭冷やしてなさい!』と言うや兄の部屋に連行されて。
(その後、兄に色々話を聞かれ適当に誤魔化すうち時刻は夕方で、自室に戻ると当然相手はいなく肩を落とす。
まあ居たらいたで気まずいのだけどと思いながら、ふと先程相手から貰ったストラップが目に止まっては使うのが勿体無いと思うが折角貰ったし…と嬉しい気持ちを隠してストラップを取り付ける。
無意識に微笑みが溢れた瞬間、着信音が鳴り響き突然のことに誰かも確認せず出てしまうと発信者は滅多に話もしない同じ学科の学生で。
『あ、露木?なぁ明日って暇?暇だよな。実はさ合コンで人数足りてないんだよ。だから明日悪いけど来てくんない?よろしくな!』
(待て!と叫ぼうとしたときはプープーと虚しい機械音。
なんて勝手なんだと苛立つも不幸なことに明日は予定がない。
一度頼まれたら断りにくく、かなり面倒だと思うが適当に流せばいいかと溜息を吐いて。
(其の頃、相手の部屋にも同合コンに参加する男子生徒が押しかけていて。
『桐崎、埋め合わせはするからさ明日頼むよ。どーーしても人数足りなくてさ。先輩に人数合わせるって約束しちゃってんだよ。な?友達だろ?』
(パチンッと手を合わせ都合のいい言葉を並べては『いい女沢山いるからさ』と続け。
>露木
( 兄に邪魔された事に不満気な表情をするも高校生寮の自室へと戻っては今更羞恥が襲い掛かる。
初めて自分の能力を認めて貰えたと照れ臭い気持ちになるも“彼女じゃない”と言う言葉を思い出し、あんな仲良さげに話してたのに彼女じゃないなら誰なんだよとまたどこか嫉妬心を感じて。
今日はそれなりに悪くない日だった。
緩みそうになる頬に耐えてはふと部屋に響いたノック音に玄関口へと向かう。
部屋の外に居たのは同じクラスの男子数人がおり合コンの人数合わせの話を持ち出されて。
「面倒臭い、行かない」
『マジ頼むって!!!もう約束しちゃったんだよ、それにお前彼女居ないだろ??欲しいだろ??』
「別にいらない」
『来るだけで良いから!!!』
( 特に仲が悪いクラスメートでも無かったしそれなりに話した事のある面子だったので押しに負け渋々頷くとかったるそうに部屋に戻って。
( 翌日、クラスメートに早速呼び出され共に待ち合わせ場所に向かうと大学生グループの中に相手の姿を見付け驚きつつ相手も合コンなんかに来るんだなと。
昨日待ち合わせをした時計台の下、ようやく他校の女子大生女子高生グループと落ち合う。
中には昨日相手に逆ナンしようとしてた女子高生も居りゲッと表情を崩しては相手に目を向けて。
『揃ったしカラオケにでも行かない??』
『食事は予約取ってるからカラオケ終わったらそこ行こっか』
( 予定を離す先輩に皆が納得しカラオケへと向かう中、早速相手に絡み付く女をジトリと見詰めては携帯に目を向け青年からのメールに軽く返事しては歩き出して。
( カラオケ店にて、相手の隣に座る女がやたらとスキンシップを取るのに嫌でも目が行ってしまって。
他校の女子大生が皆に飲物を聞く所、『桐崎君は何飲む??』と問掛けられては適当に頼んで欲しいと。
『あ、じゃあコーラとかどう??』
「あ‐…ごめん、俺炭酸苦手なんだよね。先輩何頼んだんすか??」
『私はカルピスだけど…』
「じゃあ俺もそれで」
( 適当に答え相変わらずの無表情で問われる会話に応答してはどこか上の空で。
『ねぇ露木君!!良かったら私と一緒に歌おうよ』
『先輩、次のお食事の席は私が先輩の隣狙っちゃって良いですか??』
( 黄色い声にムッとしながらなるべく相手を見ない様に心掛けるもやはりそちらに視線が言ってしまう。
ふと相手の携帯にストラップが付けられてるのに気付けば表情が緩みそうになる。
しかしそれを断ち切るかの様に一人の女子大生が相手の携帯を取り『露木君アドレス交換しよ??………わ、このストラップ綺麗!!これ欲しいな‐…菊の花だし、露木君身近に感じられちゃうし』とさり気なく大胆な事を言い。
自分が“要らなかったら誰かにやっていい”と言った事を思い出しては罰が悪そうに俯き飲物を喉に流して。
>桐崎
(乗り気がしないまま訪れた合コン、相手の姿に驚いては彼女が欲しいのだろうかと思えば何故か気が沈みそのままカラオケ店に来て。
隣で話しかけてくる女子に適当に相槌を打ちつつ、耳はずっと相手の方を向いており“炭酸苦手なんだ…”と意外に思っていたりすると女学生にストラップに触れられ思わず携帯を奪い返し。
「…アドレスは良いけど此れは駄目。…大切なものなんだ」
(ごめんねと謝りつつ嫌々ながらアドレスを交換してはホッと息を吐き、他の女子達に言い寄られる相手をぼんやり見詰め、どんな女がタイプなんだろうなんて思い。
(カラオケ店を出て少し大人向けの居酒屋に移っては奥の座敷タイプの個室に入る。
参加人数は男女各5人の10人で、5,5で男女交互に向かい合うように座っては未成年の高校生もいることもあり始めは慎ましやかに食事が始まる。
が、大学生に酒がまわり始めたころ場の流れが可笑しなほうに進み王様ゲームをやろうと言い出して。
盛り上がる中、“俺はパス”なんて言える筈もなく渋々参加する。
一回目、自分は当たらずホッとするが隣の女子高生に“お酒一気飲み”が命じられて。
『わ、私、未成年だし……』
『別にこの席だから良いじゃん。どうせもう飲んでるんでしょ?』
(悪酔いする男子学生にうんざりしては、だいたい居酒屋で一気は禁止だしと内心毒吐きつつしつこい男子学生に苛立って「……じゃあ俺が代わりに飲むよ」とコップを手に酒を流し込んで。
『うわぁ、露木モテたいからってそいうことするー』
(そんなんじゃないと否定したいが頭がクラクラして軽く睨むだけに終わり、その後も続く遊びにぼんやり目を向けては、相手が頬を赤らめる女子にあーんされたり、頬に口付けされたりするのを不満げに見詰め。
場の盛り上がりが最高潮になるころ、悪酔いに悪乗りを重ねた学生が王様を引き当てて『やったね、俺王様!じゃあ3番が5番に熱くて深いキスよろしく!』ととんでもないことを言い出し。
「…流石にそれは駄目だろ」と酔いながらもすかさず突っ込むが周りは合コン慣れしているのか『いいの、いいの』と乗り気で。
とりあえず自分は3番でも5番でもない。良かったと安心するのもつかの間、『あ!もしかして3番って繿君?わ、私5番なんだけど』と相手にずっとべっとりよりそっていた女学生がうっとり声を上げて上目遣いで相手を見詰めては、相手の腕の絡みつき『私はいいわよ?むしろ大歓迎』と自ら相手の口元に唇を寄せていき。
その様子にあからさまに顔を顰めてしまうが、女は美人で体型も良い。
きっと相手はあーいう女らしいのが好きなんだろうなと酔いのせいで焦点が合わないながら見るに耐えられず目を逸らして。
>露木
( ストラップを譲らなかった事がやけに嬉しく感じてしまいニヤけそうになるのを抑える。
しかしアドレスを交換する様子に少し不貞腐れてはまだ少し気が沈む中居酒屋へと向かって。
( 最初こそ楽しく食事をしてた物の大学生に酒が周り雰囲気が変わった所で早く帰りたいなと。
強引に割箸を引かされ嫌々ながらに参加するも女子高生の代わりに酒を飲む相手を見詰めてはギョッとし心配そうに相手を見詰めて。
また悪酔いされ他の人間に抱き着いたりでもしたらと思うと気が気では無く、しかしそこまで相手を気に掛ける理由さえも分からずに。
暫しぼんやりとしてたが王様である学生の命令に無表情で様子を見届けようと。
しかしいつまで経っても“三番”が現れないのを疑問に思い自分の割箸を見ると三番と書かれて居て。
中途半端に参加してたせいか自分の番号にようやく気付いては隣に居た女学生から僅かに距離を取る。
『桐崎、ちゃんと深くしろよ』
「いや…そういうのは」
『断るんなよ、マジしらけるぞ』
( どう回避しようかと頭を悩ませるも場の雰囲気に逆らえる様な状態では無く女学生に「軽いので良い??あんたが上手く演技して」と耳打ちして。
一瞬文句を言いそうな顔をするも『じゃあ後でアドレス頂戴ね』と囁かれコクリと頷いて。
渋々軽く唇を重ね、女学生がさも深いキスをされてるかの様な演技をするのを見詰める。
男子学生達が歓声を上げるのを無表情で見詰め「助かった、ありがと」と女学生に言っては携帯を手渡し勝手にアドレスを追加して貰って。
『お、早速次に会う約束??』
「別に」
( 相手と口付けを交わした時の様な胸の高鳴りは無くサラリと返しては酔いが周りぼんやりとする相手に目を向けてハラハラとして。
その刹那、先程酒を飲むと言う命令を受けた女子高生が相手の頬に軽く口付けるのが目に入る。
『ねぇ先輩、さっき私の代わりに飲んでくれたの………すっごい格好良かったよ』
( 甘える様に相手に頬擦りをする様子に不満気な表情をするも相手が酔ってる事を思い出してはバッと立ち上がる。
「酔い止め飲んで来いよ」と言うのを口実に相手を先に座敷から出してはその後自分も後を追う。
トイレの中に入り相手の肩を軽く掴むと「昨日フリーとか言ってたけどさ、…もう気に入った奴出来た??」と。
勝手に嫉妬心を抱く自分に呆れるが子供の様な生意気は止まず「…あの女とこの後抜けるつもりかよ」と。
>桐崎
(なるべく見ないように目を逸らしていたが歓声と共につい視線を戻しては相手と女学生が口付ける様が目に入り、まんまと騙され深くキスしているように見えては“なんだ案外乗り気だったんだ”と不満に思って。
その後、予想以上に酔っている自分に気が付かず女子高生に甘えられても軽く受け流せず頬に口付けされてしまう。
そこで相手の声がやけにクリアに耳に入っては小さく頷きトイレに向かうも、入った所で相手に肩を掴まれ小さく目を瞬かせ、その何処か不満気な様子を訝しみながら酔いで据わった目で見返して。
「は?…あの女って誰のことだよ。…だいたい…好きでここに居るわけじゃないし」
(やや呂律の回っていない口調で言い返すも、先程相手と女学生が口付ける様子が脳内を過り無性に腹立たしくなっては相手と立ち位置を逆にして相手の身体を壁に押さえつけ。
「てか、あんたこそあの美人さんとこの後お楽しみなんじゃないの?……キスもまんざらでも無さそうだったし……あんた、あーいうのが好きなんだ」
(別に相手がどの女と何をしようが自分には関係ないと思うのにモヤモヤは収まらず何故か涙が溢れてきて「……やっぱり俺にキスされて嫌だったんじゃないか」と意味の分からない言葉を述べ相手の胸倉をクシャリと掴む。
「……桐崎……男は駄目か?」と一見真剣な声色で相手を見上げて問うも一切頭は回っておらず、そのまま相手の唇を奪おうとするも帰りの遅いのを心配してか男子学生が様子を見に来て反射的に相手を突き飛ばしてしまい。
『え…お前たちなにこんな所でふざけあってんの?…まあいいや。この後解散だけど、まあ後は個人個人で。露木は今日サンキューな』
(ニタッと自分には笑むも、一瞬相手にだけ冷たい視線を送り席に戻っていき。
暫くぼんやりしていたが相手を突き飛ばしたことを思い出してはハッとなり「……悪い、怪我ないか?」と其れ以前のことは無かったかのように問い掛け「…席戻る」とトイレから出ようとして。
(其の頃、事前に集めていた金で会計を済ませた大学生2人が狙っていた女を全員相手に取られたことを妬んで『あいつ、マジで年下の癖に調子乗りすぎ』と他の女達に自分と相手は帰ったなんて嘘を吐きその場から立ち去らせ、相手を待ち伏せていて。
>露木
( “ああいうのが好きなのか”と言われるも女との一件があまりに印象に無く一瞬間抜けな顔で思考を働かせ漸く思い出しては咄嗟に反論しようと。
しかし涙ぐむ相手に驚きを隠せず続く相手の言葉に僅かな期待を抱いてしまいゆっくり口を開いた所、開いた扉と共に相手に突き飛ばされては体制を崩しムッとした様な表情で起き上がって。
男達が去った後、先程の事など感じさせない様な振る舞いをしてくるのにモヤモヤを感じながら去ろうとする相手の額に手をやると本当に酔ってるだけなのかと。
「あんた…酔い過ぎてるだけか??…ったく、あんまからかうなよ」
( まさか相手が自分を口説く筈が無い、先程の言葉が胸に残るが軽く受け流し少し戸惑い気味に相手の頬に口付ける。
子供の様な理由だが先程の女子高生が口付けたのに僅かな嫉妬を抱いては消毒のつもりで。
「さっきの女とは何も無い、あの雰囲気で断ったらブーイング来るだろ。軽く口付けたくらいで…あとは全部あの女の演技だよ、割と上手かったよな」
( 無表情ながらに感心しては改めて相手を見詰め「別にあんたにキスされても嫌じゃなかった。………っていうか嫌だったらあんたくらい軽く突き飛ばせてたし。………あと、俺意外と男でも好きになるタイプだから」とサラリと言いのけてはさっさとトイレを後にして。
( 漸く解放され帰ろうかと思ってた所先程の大学生二人組に取り囲まれては何事かと。
『お前マジ調子乗ってんなよ』
「………別に乗ってないっすけど」
『その髪とか恰好良いと思ってんの??笑えるから止めとけって』
「………生まれつきなんで」
『は、生まれつきそれとか障害か化物だろ』
( 続く嫌味に溜息を漏らしては何とか回避出来ないだろうかと考えるも思い浮かばず。
無表情に僅かな困り顔を混ぜては遠方に相手が見え。
『おい、露木に後輩いびってんのバレたらなんか言われるぞ』
『あいつ真面目だからな、ってゆうか露木が来ないと女が乗り気じゃなくなるから』
( 男達はまた相手を合コンに誘う様な口振りをしては自分をキッと睨み付け諦めた様に去って行って。
深く気にしては居ないが地味に傷付いたりしては自分の髪にくしゃりと触れて。
黒にしても良いのだが能力を解放し狼化した時に一部分だけ黒くなるのが非常に格好悪い。
俯きながらいつもの無表情を貼り付け、まだどこかフラフラとする相手に「一人で帰れんの??」と生意気な言い方をしては表情を繕って。
>桐崎
(去ろうとしたところ額に手をやられては心地よさから大人しくし、紡がれる言葉に色々言い返そうとするも酔いのせいか言葉が出てこずに。
相手が去った後、漸く頭が少し周り始め相手と女とのキスが演技だったのと、“男でも好きになるタイプ”と分かり何故か胸が高揚する感覚を覚え。
(気持ちが落ち着いた後、外に出てみると相手が学生二人に迫られている様子が目に止まり一気に気分が冷める。
学生達はすぐに去っていったが何となく雰囲気から相手を悪く言っていたのを察し足元おぼつかないながら相手に歩み寄り生意気言う相手の額を軽く小突いて。
「……餓鬼じゃないんだ。一人で帰れる。……でもあんたとは方向同じだから一緒に帰ってやるよ。てか俺がいないとあんた寮に入れないだろ?」
(逆にからかうように言い強がって寮へと足を進めるもふと振り返ると相手を見詰め「…あいつら、何言ったか知らないけど気にするなよ。あんたが格好良くて妬んでるだけだから」と相手の髪を撫でて「あんたの髪、綺麗だもんな。……俺も銀にしようかな」なんて半分冗談を交えて微笑んでは思い出したように鞄からあるカードを取り出し相手に押し渡して。
「……それ、予備のルームカード。……夜誰もいないとき寮に入れないと困るだろうし持っとけよ」
(まあ呼び出してくれれば駆けつけるけどと聞こえるか否かの声でボソボソと付け足しては「……なんかまだ酔ってるっぽい」と殆ど思考ははっきりし始めているのだが照れからそう呟きフラフラしながら寮へと戻って。
大学寮と高校寮の連絡通路まで来ては、店を出てからメールを着信し続ける相手の携帯に視線を落とし。
「……女からだろ?返信、しなくていいのか?」
(問い掛けて虚しくなる自分に気付いては返答を待たずにさっさと自室に戻ろうと身を返し「…店では迷惑掛けて悪かった。…でもあんなこと言われたらちょっと期待する」とトイレでのことを思い出し声色静かに述べるも自分のしたことや相手に言われたことを明確に思い出し羞恥が込み上げては「おやすみ」とまだ僅かにフラつきつつ逃げるようにその場を去ろうと。
>露木
( 能力を使わない様にして黒髪にしようかと考えてた所、相手の言葉に心の蟠りが解けてはどこか嬉しそうに自然な笑みを浮かべる。
ルームカードを受け取り照れ臭そうに礼を述べては連絡通路にて去ろうとする相手を咄嗟に引き止めては戸惑いがちに抱き締めてしまって。
ゆっくり身体を離し「あんたこそ期待させてんじゃねぇよ。………って言うか次会った時酔ってて今日の事全部忘れたとか言ったら許さねぇからな」と。
それから高校生寮の方へ足を向けるも思い出した様に相手に振り向いては「それから俺興味ない奴にはメールしたりしない。………だから今日の女にもメールなんてしねぇよ」と。
態々言う事でも無かったのだが先程の問い掛けを思い出しては無言でも居られず。
スタスタと自室に戻っては自分のベッドで眠る青年にギョッとし目を見開く。
そこでふと青年に合鍵を渡してたのを思い出すと微妙な表情でシャワーを浴びのそのそと青年の隣に入る。
普通の男友達という目線で居た為変な気持ちも無く、携帯のメール画面を開いては相手のアドレスを指で辿り“暇があったらまた買物付き合ってやるよ、おやすみ”と上から目線なメールを送り付けて。
以前の相手との買物は良い思い出として残っておりもっと距離を縮められたらなと柄にも無い事を思って。
( 翌日、青年と共に目を覚まし着替えや準備を済ませては食堂へと向かう。
『ねぇ兄さん冬休みとか暇??バイト??』
「あ‐、あそこのバイト止めた。今は別のとの」
『じゃあちょっとは暇なの??』
「まだ分からねぇよ」
( 青年が甘めのカフェオレとモーニングセットを頼んだ後に自分も注文を済ませると入口付近に兄と相手の姿を見付け。
兄の前だと言う事もあり声を掛けにくく青年と窓際の席に座ってはふと聞こえた兄との会話に眉を寄せる。
『繿にセクハラとかされてない??なんかあったらお兄さんに言ってよ??しっかり説教して来るから』
( 人の事を何だと思ってるんだかとムッとした表情をしながら青年のトレイにヨーグルトを置いて。
>桐崎
(部屋に戻り寝る支度を済ませるころ相手からのメールが来ており、普段必要のないメールはすぐ削除するのだが消さずに取っておいては寝床に入り相手から貰ったストラップを指でそっとなぞり眠りについて。
(翌朝兄とともに食堂に来ると相手と青年の姿が目に止まり親しげな様子に相手の“男でも…”という言葉が過りまさか青年のことかと思い。
ヨーグルトを渡す様に自分だけじゃないんだなんて子供染みた嫉妬を抱いては小さく溜息を吐きつつ相変わらずの兄の話に苦笑を漏らし。
その後、此方も冬休みの話題になっては兄に予定をしつこく聞かれ。
「地元に戻るよ。…で、そこで小さいところだけど旅館のバイトするつもり」
『え、その旅館どこ?俺行くよ!』
「い、いいって。知り合いがいるとなんかやりにくい……」
『邪魔しないからさ。いつから行くつもりなの?っていうか露木の地元ってどこ?』
「…休み前から行くつもり。授業もないし」
(スケジュール帳を開きながらなんだかんだ兄に日にちを教えては地元が小樽だと告げつつ、相手は冬休みどうするんだろうなんて考えていて。
(其の頃、青年は相手から貰ったヨーグルトを美味しそうに食べつつ何とか相手と一緒に冬休みを過ごそうとしていて。
『じゃあさ冬休みちょっと遠出してスキー場行かない?実はそこで割りの良いバイトがあってさ。ゲレンデの見回りする代わりにスキー場で好きなだけ遊んでいいって。近くに泊まるところあるみたいだし。それに俺スノボ得意なんだよね』
(得意気に笑んでは『兄さんもウィンタースポーツ得意でしょ?』とねだるように相手を見詰めていて。
(食事を終え、一度相手を見てまだ青年と楽しげに話している様子。
二人は年も近いし話も合うのだろうと思えば邪魔してはいけないと声を掛けずにその場から去っては、兄と午前中の授業を受けたあと時間が出来たため共同スペースに向かいパソコンに向かう。
暫くすると昨夜合コンを共にした男子学生2人が近付いて来てパソコンをバタンと閉ざされ。
『露木は真面目だね、ほんと』
『まあ外面だけだけどな。……ところでお前、昨日のあの生意気な餓鬼と仲良いらしいじゃん?』
『連絡通路のところで抱き締められてるの見たって聞いたよ』
『あんなにくっつかれてお前も災難だな。いい顔するの大変だろ?』
「……なにが言いたい」
『体裁気にして仲良しごっこしてるだけなんだろ?そんなの辞めて俺達と彼奴のこと貶めてやろうぜ』
(嫌な笑みを浮かべる学生は昨日までの態度とは全く違い、本当つまらない奴と思いつつ相手を侮辱したことは許せずスッと立ち上がると一人の学生の襟元を掴み上げ「…嫌だね。それよりいいのか?あんたが昨日高校生に無理矢理酒を飲まそうとしたってチクっても」と微かに口角を上げて首を傾け。
>露木
( 青年の強引な誘いに二つ返事で返事をし、去って行く兄と相手の後姿に目にしてはなぜかがっかりしてしまって。
特に予定も無く断る理由も無かったのだが相手は冬休み予定は有るのだろうか、なんて気に掛ける。
携帯を取り出すも流石にしつこいだろうかと思っては再びポケットに仕舞い込んで。
( その頃男子学生は相手の言葉に表情に焦りを混ぜては『じょ…冗談だろ、本気にし過ぎだって』と。
慌てて先程の言葉を訂正しつつ内心苛立ちもあり相手に襟元を持つ手を離して貰うと『それより露木、また今度合コンやるんだよ。今度は有名大学のエリ女ばっかだから必ず来いよ』と告げ颯爽と場を後にして。
廊下にて、グチグチと文句を言いながら教室に戻ろうとしてた所に自分の姿を見付けてはこちらへ歩み寄る。
『よ、相変わらず無愛想の面してんのな』
「まぁ…表情は癖なんで」
『お前マジムカつくんだけど。…あ、そう言えばお前露木に関わるの止めてやれよ』
「………は??」
『露木は真面目だからお前に優しくしてやってんだろうけどよ。ちょっと優しくしたからって懐いて来て困るって言ってたぜ??あいつ勉強で忙しいんだからちょっかい出すの止めろよな』
( 上記を述べ立ち去る男子学生の背中をぼんやりと見詰めては小さく俯く。
きっと何かの間違いだろうと言い聞かせいつもの様にイヤホンを付け暖房の効いた共同スペースにて昼寝でもしようかと。
扉を開けるも敷居の陰になり相手の姿には気付かないままソファーへドサリと横たわる。
部屋にカタカタと響くパソコンの音もイヤホンの音楽にかき消されて。
欠伸を零し制服のズボンのポケットから携帯を取り出すと相手のアドレスを開く。
しかし先程の男子学生の言葉もあり中々メールする気にもなれず。
そこでふと携帯が鳴り出しては慌てて飛び起きる。
音量を下げ小声で応答し青年からの電話である事に気付いては長電話にならない事を願って。
『兄さん今どこで何してるの??』
「どこか教えたらお前来るだろうが。教えてやらない」
『意地悪!!!ねぇ兄さん、冬休みの予定勝手に決めてて大丈夫??』
「ん、良いよ」
( まだ何か話してたが強引にブツリと切ってはグッと背伸びをする。
先程から敷居が邪魔で暖かい空気が遮断されてる事に気付き敷居をどかすと相手の姿があり。
驚きに目を見開きつつ「あ、…居たんだ」と。
>桐崎
(男子学生にまともや無理矢理合コンの予定を入れられ今度こそとんずらしてやろうかと苛々しながらパソコンを開き卒論に取り組む。
集中し始める頃、突如携帯が鳴り響き相手の声がしてはやや過剰に反応して電話の相手は誰なんだろうと気にしていると敷居が無くなり相手と目が合い何となく気恥ずかしく目を逸し。
「…ずっと居た。………………そう言えば冬休みだけど…」
(予定はあるかと問おうとしたところ扉が開かれ、高校から連れ添っている一応友達の部類として認識している男子学生が近付いて来てプリントを渡され。
『やっぱ此処居た。はい、これ教授から。……卒論全然すすんでないらしいじゃん』
「…あー、…最近“面倒なゴタゴタ”が続いて…」
『へぇ。てか、お前忙しいのにまたエリ女と合コンするんだろ?さっき聞いたぜ』
「行くって返事してないけどな。勝手に決められたんだよ」
『…ふ~~ん』
(意味深に笑う学生に溜息を吐きそろそろ帰れと言おうとしたところ、学生が机の上に開きっぱなしだった自分のスケジュール帳に気が付き『あっ』と声を上げて。
『お前、冬休み地元帰えんだ?ってことは“あの子(ナツ)”に会うの?』
「……まあ」
『よっしゃ。俺も行く!!会わせろよ』
「駄目。あんたなんかに会わせたら何されるか分からないし、そもそもあんたには釣り合わないよ」
『……ひっでー。お前ホント、大好きだな』
「煩い。もう用がないなら行けよ」
(相手の前で妹好きなんてバレたら恥ずかしくて居られないと男子学生にプリントの礼を言いつつ背中を押しては去っていく姿にハァと溜息を漏らし相手に視線をチラとやって「…目の前で話し込んで悪かった」と謝り。
「…でさ、冬休みなんだけど…後半ヒマ?……良ければまた買い物付き合って欲しい」
(まさか地元のスキー場に相手がバイトに来るとは思っていないため、空いている休み後半に会えないかと期待して控えめながら相手を見詰め。
(その頃、青年は相手との旅行兼バイトが楽しみで色々調べては相手にメールで観光名所などを送りつけ《交通費もウェアも支給してくれるからお金の面は安心だよ!今日必要なもの買い出し一緒に行こう♪》と誘っていて。
>露木
( 相手と男子学生との会話の内容に見事な勘違いをしては“やはり相手には彼女に近い存在が居るんじゃないか”と表情を暗くする。
どこか照れ臭そうに自慢気に話す相手から視線を逸らし漸く男子学生が出てくと続く相手の誘いの言葉にまたとことん期待してしまう自分に嫌気を感じる。
しかしまた距離が遠のくのは嫌で「別に良いよ、付き合う。俺も冬休みの前半バイトだし…丁度良い」と。
まだ先程の言葉が胸に残るも僅かな嬉しさが込み上げては表情が崩れない様に努めて。
静かな沈黙の中、メールの着信音が流れてはソファーに座ったまま携帯に指を走らせる。
青年からのメールに“分かった、放課後部屋に向かいに来て”と送信しては欠伸をして。
( 放課後、向かいに来た青年と共に買い出しに向かってはやはり考えるのは相手の事。
付き合ってる訳でも無いのに嫉妬心が生まれてはなるべく考えない様に自分に言い聞かせる。
『ねぇ兄さん何色が良いかな。俺の髪こんなだから派手な色選ぶと凄いサイケデリックになるんだよな‐…』
「じゃあシンプルなのにすれば??」
『兄さんが選んでよ』
( 一瞬面倒そうな表情をするも青年は一応“友達”な訳だし素直に衣服等を選んでやって。
『ねぇ、これお揃いにしない??』
「いや男同士でお揃いとか痛いから」
『なんで‐、良いじゃん』
( 中々疲れる青年との買物、第一段階の買物を終え紙袋を持っては足休めにとデパートの中の喫茶店に入る。
『何頼む??俺パンケーキにしようかな』
「コーヒー」
『え‐それだけ??…あ、いいや。俺の半分上げるね』
( 女子の様なテンションに呆れつつそれでも言う事を聞き入れては青年の話を聞き流していて。
>桐崎
(相手からの了承の返事に表情が緩みそうになるのをこらえては早速スケジュール帳に相手との予定を書き込む。
筆圧がいつもより強くなっていることには気付かず冬休み後半を楽しみに思って。
(それから数日後、学校は休みに入り寝台列車に乗って地元へと向かう。
行きの列車の中、いつもは妹に会うことを楽しみに思うが相手のことを考えていて。
此処最近良く耳にする青年と相手が“付き合ってる”という噂。
以前同学科生がデパートで相手と青年が一緒に買い物をしてパンケーキを分け合っていたのを目撃したらしく、あれは友達の域を超えていたと話すのがやけに頭の中に残っていて。
青年が相手を好きなのは知っていたがやはり相手もそうなのかと思うと気が沈む。
しかし後半は相手と会える。そう思うと自然を笑みが零れ意味もなく相手に《そっちは休み入ったか?俺暫く寮空けていないから。…バイト頑張れよ》と普段は絶対送らないようなメールを送って。
(数時間後、駅については広がる雪景色に懐かしさを感じ目を細める。
とりあえず母と妹の家に行こうと荷物を手に家に向かい束の間の挨拶をしたあと後ろ髪引かれる思いで叔父叔母が経営するスキー場近くの小さな旅館へ足を向け。
『菊君、いらっしゃい。いつも有難うね』
「いえ、こちらこそお世話になります」
(優しい叔父叔母の旅館。小さくて立地も悪いがかなり良心的な値段な上きめ細やかな心遣いとサービスで細々と営んでいる。
ここでは幼い頃から手伝い等をして来たため慣れした親しだ環境。
仲居の茶色を基調とした着物に袖を通しやや長めの後ろ髪を縛っては旅館全体の掃除を黙々と進め。
『あ、菊君、それが澄んだら今来た霧の間のお客様にお茶出ししてくれない?すっごくイケメンな子達だったわよ』
(うふふふと嬉しそうに笑う叔母に頷きつつ、手早く掃除を済ますと調理場へ行き手を洗ってから御茶と茶請けを用意して軽く身なりを整える。
客の名前を見た時“赤城”とありまさか…と思うが、そんな偶然あり得ないと直ぐに気持ちを切り替えて、何度か頭の中で部屋に入ってからの接客動作をイメージしながら盆を手に客間に向かい。
>露木
( 冬休みに入り早速青年と共に北海道へと訪れては綺麗な雪景色に感嘆の息を漏らす。
はしゃぐ青年と共に青年が取った旅館へと向かう途中、青年は自慢気に観光名所の説明をしていて。
旅館が見え青年が女将に話をしに行ったのを見送るとこちらでのバイト先から貰った資料に目を通す。
スキー場での短期アルバイト、ウェアの貸出接客等だがそれなりに高額のバイトで。
スキーやスノーボードを教えられるのなら給料は弾むと言う事もあり中々良いバイトを見付けた物だなと。
綺麗な部屋へと通され、パンフレットに目を通しながら青年とバイトに付いての話をする。
『俺教えられるよ!!!兄さんもいけるでしょ??』
「俺接客苦手なんだけど」
『大丈夫大丈夫!!!…あ、そう言えば兄さんの為に貸切露天風呂の予約もしたんだよ』
( 青年と話をしながら先程相手から来たメールを再び開いてはニヤけそうになるのを抑え早くその日が来ないだろうかと。
部屋の戸を叩く音が室内に響き次に聞こえた声は聞き覚えのあるもので。
ギョッとしながら麩に目をやると、美しい佇まいでそこに居たのは相手の姿。
『あ‐‐‐っ!!!露木じゃん、え、何でここにいるの??』
( 素直に驚きを見せる青年の隣で何でも似合ってしまう相手の姿に見惚れて。
照れ臭い気持ちもあるがやはり気になるのは先日相手が話してた“彼女に近い存在”の事について。
大人しく座敷に腰を下ろしてはどこか上の空にぼんやりと相手を見詰める。
しかし『兄さん、お風呂楽しみだね!!!温泉だってよ』と無邪気に笑う青年の声に現実に呼び戻されては適当な返事をして。
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