xxx 2014-12-29 00:12:16 |
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>桐崎
(一瞬断られたかと思い胸がズキリと痛むも続く相手の言動でその痛みは吹き飛び、相手が去った後撫で回された髪に触れては小さく微笑み、今日も暫く眠れそうにないなとまだざわつく胸を押さえつつ部屋に戻って。
(翌朝、相手のメールに気付いては《夕方には終わる。時間合うならそっちのバイト先迎えに行くよ》と返信して、身支度をすませるとレンタルショップに向かい。
その途中、突然見知らぬ男に話し掛けられては服装から自校の高校野球の男子高生だと分かり「…どうした?」と一応笑顔で尋ね。
『突然すいません。露木先輩ってカテキョのバイト、まだやってますか?』
「…あー、一応。でもそんな多くは出来ない」
『いいっすよ。ちょっとでいいんで。俺部活ばっかやってたから勉強全然やってなかったんで大学入る前に必須の英語だけでも復習しときたかったんすよ。あ、連絡先教えて貰っていいすか?』
(馴れ馴れしい態度に若干煙たさを感じつつも勉強熱心なのは応援したく連絡先を交換するとさっさとその場を去ろうとするが『あの』と引き止められ。
『先輩って桐崎と仲良いっすよね?』
「……まあ。なんで?」
『いや、別に。じゃあカテキョよろしくお願いします』
(手を振って去って行く男子高生に“なんだ?”と思うも特に気にせずバイト先に歩を進めては、バイト中も相手のことをふと考えては次の会うのを楽しみにして。
>露木
( バイトを終え店の角で相手と出会しては以前を連想させる一定の距離のまま歩き始める。
不意に当たった手に内心ビクリとしてはそのままさり気なく手を取り何も言わないまま歩き続け。
寮の玄関口にて鍵を開けては相手と共に中に入りやや散らかり気味の自分の部屋を軽く片付けて。
バラバラになった雑誌やCDケースを棚に戻しては漸く落ち着きベッドに座る相手の隣に腰を下ろし。
「ごめん、結構散らかってた…けど。まぁ座れる」
( 自己完結気味にコクンと頷いては風呂を沸かしに浴室へと向かいその後キッチンの冷蔵庫を漁って。
今日は折角だからちゃんと作ろうとしては相手と共に台所に立ち野菜類を取り出す。
その時、不意に携帯が鳴り響いては一体誰だろうかと携帯を片手に電話に応答して。
相手はどうやらあの合コンの男子、『あのさ、いきなりだけど今からそっち行って良い??話あるんだけど』と唐突な事を言われては眉を寄せて。
「はぁ??いきなりとか流石に無理だろうが。今客来てるから」
『マジ??数分だけで良いんだけど』
「明日、明日なら来て良いから」
( 強引な物言いに呆れつつ何の相談をされる物かと頭を悩ませては携帯を切り相手の隣に戻って。
何気無く相手の肩に顔を乗せては意味も無く相手を後ろから抱き締め「割と俺等みたいなのって多いんだな」なんて呟いたりして。
>桐崎
(どことなくぎこちない相手との距離感、電話の相手は誰だろうと小さなことが気になるもあまり煩くしては煙たがられるだろうと聞かずにおく。
後ろから抱き締められ言われた言葉に「…ん?」と軽く聞き返すもどこか甘える様子に頬を緩めては肩にある相手の頭をぽんと撫でて「甘えるなら後でな。今野菜切ってて危ないから」と小さく微笑むも自分からは引き離すことはなくそのまま調理を始め。
(その後、夕食と片付けを済ませてはそれぞれ風呂に入り微妙な距離感を保ちつつ甘酸っぱい時間を過ごして一緒にベッドに横になる。
間近にある相手の顔にドキドキしながらもそれを悟られないように柔らかな銀髪を撫でては、やはり相手の近くは落ち着くと微笑を零し暫く飽きずに相手の髪や耳、目元に触れていて。
__もう手放したくない。悲しませたくないと強く思っては目を閉じる相手に「……繿」と本人の前では滅多に呼ばない名を口にして前髪に口付けて相手のぬくもりを感じながら眠りに落ちて。
(翌朝、相手より先に目を覚ますと久しぶりに見る相手の寝顔に口元を緩ませツンツンと柔らかな頬を突いては耳元で「おはよ」と吐息をかけるよう悪戯に囁いて。
そしてベッドの脇に座り携帯を開いては今日も朝からバイトかと相手と過ごしたい気持ちを堪えつつ朝の身支度を始め、そう言えば昨日話しかけてきた男子高生からまだ連絡ないなとふと思うも気に留めることは無く。
>露木
( 翌朝、耳元に感じる吐息にビクリとしては悪戯に微笑む相手の頬に軽く口付ける。
暫くのじゃれ合いの中、相手が携帯に目を向けバイトに向かう準備を始めれば少し寂しそうに自分も起き上がり「今日は俺休みだから送る」と告げて。
私服に着替え身支度を済ませては相手と共に相手のバイト先に向かい帰りにまた迎えに来ると伝えて。
( 相手とまたこうして寄り添える中になった事にニヤけそうになるのを堪えつつ寮へと戻れば自室の前に昨夜電話を寄越した男子生徒が自分を待ち伏せており。
渋々部屋へと入れては冷蔵庫の中にあった適当な飲み物を男子生徒に手渡し「で、相談って何??」と。
『俺さ、好きな奴いんだよね』
「へぇ。良かったな」
『年上なんだけどさ、男なの。この前思い切って家庭教師頼んだんだよ。笑顔で了承してくれてポーカーフェイス気取ってたけどマジ心臓ヤバかった』
「誰、その年上の男って」
『桐崎と中良いからさ。応援して欲しいなって』
「だから誰」
『ほら、露木菊先輩。ヤバいよな、めっちゃタイプ』
( 男子生徒の言葉に「は??」と一瞬間抜けな声を出してしまうも平然を気取っては「へ、へぇ」と。
人懐っこい笑顔で『応援してくれよ、折角お互い理解し合える仲なんだから』と言われては真実を話せる雰囲気でも無く上機嫌で去って行く男子生徒を見送り。
( 男子生徒は自分と別れた後、早速相手のアドレスに《明日からカテキョ頼んで良いっすか??俺、真面目に頑張ります》とメールを送っていて。
>桐崎
(バイト終わり、バッグルームにて男子生徒からのメールに気付いては《いいよ。寮行けばいいよな?部屋番教えて》と男子生徒の想いなど知るはずもなく短く返信して。
その後、迎えに来てくれていた相手と当然のように寮へ向かっては昨日と何だかわらない時を過ごすも其れが至極幸せに感じいつまでもこんな時が続けばいいのにと相手との他愛のない会話を楽しみつつふと家庭教師のバイトのことを思い出し。
「あ…そう言えば明日から同じ寮の生徒に家庭教師つくことになった。もしかしてあんたの知り合い?」
(何もやましいことなどないため何気ない会話として聞いては「勉強熱心だよなー、俺なんて入学前はずっと遊んでたよ」と呑気に笑って。
同じ時刻、男子生徒は相手と自分が一緒にいるなど夢にも思わず《明日先輩に家庭教師ついて貰うことになった!!桐崎ってさ先輩の好きな食べ物とか知ってる?つーか好きそうなものあったら何でも教えて》とメールを送っていて。
(翌日、昼ごろまで相手と一緒に過ごしては少しだけ夕飯のおかずを作りおいてはお互いにバイトがあったため「…家庭教師のバイト終わったらあんたの部屋にも顔出すから」と告げて数時間だけレンタル店のバイトに出ては、夜に約束していた男子生徒の部屋へ向かい。
(男子生徒の部屋、なんの巡り合わせか丁度相手の真上の部屋で間取りも変わらなかったが、人が違えば趣味も違う。当たり前だが相手とは雰囲気の違う部屋にやっぱり相手の部屋が一番落ち着くなぁとしみじみ感じながら男子生徒と2人並んで座り予定通り英語を教えて。
『先輩、今日メガネなんすね』
「…え?…ああ…、丁度コンタクト切らしたから」
『へぇ。…今付き合ってる人とかいます?』
「いきなりなんだよ。………いるけど。そんなこと聞いてどうするんだよ」
『いえ、別に。でも意外っす。先輩、特定の人は作らないって噂だったんで』
「噂だろ。…はい、この話は終わり。勉強に集中しろ」
(まだ変な噂が流れているのかとげんなりしつつも気持ちを切り替えて勉強にうつり、何回も質問してくる男子生徒に意欲があっていいことだと感心しつつ出来る限り丁寧に教えて。
>露木
( 男子生徒のメールと共に特に疚しい様子も無く家庭教師を引き受けたと言う話を相手にされては勝手に不安な気持ちになるも平然を装い続ける。
バイトへと向かう相手を送り出す時も何処と無く心に靄が掛かった様な感覚を感じながら笑顔を作って。
( 夜、一通り今日の勉強を終えた男子生徒は笑顔で相手に礼を告げると予め自分に聞いていた相手の好物であるチーズケーキの入った箱を取り出し相手に見せ『駅前の有名なスイーツ店分かります??期間限定でニューヨークのパティシエが作ったチーズケーキ先着で売ってたんすよ、一緒にどうっすか??』と上機嫌で告げて。
紅茶を淹れ相手の隣に並んでは相手の眼鏡に触れ『先輩の眼鏡姿、初めて見たけど最高っすね』なんて大胆な事を人懐っこい笑顔で言っては『明日もよろしくお願いします、ちゃ-んと予習復習しとくんで』と。
( 相手が男子生徒の部屋から戻って来る頃、丁度自分もコンビニから戻って来てはモヤモヤとした気持ちを抱え買って来た雑誌に目を通しながらジュースの蓋を開ける。
そろそろ相手も戻って来るだろうなんて考え段々といつもの調子を取り戻そうとしたが鳴り響いたメール受信音と男子生徒の名前が流れたのに微妙な顔をして。
《桐崎、露木先輩の事色々教えてくれてさんきゅ!!!今日家庭教師やって貰ったんだけど心臓爆発するかと思ったわ-。先輩気付いて無くて無意識なんだろうけど教えんのに熱心過ぎてめっちゃ顔近いの、明日も鼻血出さない様に頑張るわ(笑)お休み!!!》
( 長文のノロケにムスッとしては《そりゃ良かったな、お休み》と何時もながらの素っ気無い返事をして。
>桐崎
(早く相手の元へ行きたいと思うも男子生徒の厚意を無碍にも出来ず、好物の誘惑に負けて結局一時間ほど過ごしてしまえば長居しすぎたなと焦って「ケーキご馳走様」と微笑み相手の部屋へと足を急がせて。
(相手の部屋に来るなり疲れたと言ってシャワーを浴びては濡れた髪をタオルで拭きつつベッドに座る相手の隣に腰掛け先程の男子生徒の話を始め。
「ちょっと煙たいところあるけどすごく良い奴でな、美味しいチーズケーキご馳走してくれた」
(相手の気も知らず普段の何気ない会話のつもりで話してはフワッと欠伸零し「…明日もあるんだよな。…あんたと会う時間減るのは嫌だけど…彼奴なら我慢できるかな」と眠たげに零し相手のベッドに横になり。
その後も相手と会話を続けるも疲れていたこともあってすぐに眠りについてしまい。
(翌日、あまり相手と顔を合わせること無く家庭教師の時間を迎えては男子生徒の部屋へいき何事も無く勉強を終える。
今日はまっすぐ相手の元へ行こうとさっさと退散しようとするが『先輩明日って暇ですか?』と聞かれて。
「…なんで?」
『新しい英語の教材買いたいんすけどどんなのが良いか分からなくて先輩一緒に選んで欲しいんすよね』
「ネットで調べたほうが確実だぞ」
『えー、ネットのレビューなんて桜とかいて信用できないですもん。…お願いします!』
「……分かった。少しだけなら」
(本当は相手と過したいと思っていたため嫌だったが、勉強態度は真面目だしそのやる気を無駄にはしたくないため渋々了承して。
>露木
( あの人懐っこい印象の男子生徒はどうやら上手く相手に懐いてる様で複雑な感情が沸いては何とか嫉妬心を押し殺して。
疲れが溜まってるのだろう、早々に寝てしまう相手の頬に口付け髪を弄んでは「………お前無意識に彼奴喜ばせてんの。妬かせんなよ」なんて呟いて。
( 翌日、男子生徒の家庭教師を終え自分の部屋に戻って来た相手を後ろから抱き締めては中々離れずに何処と無く面白く無さそうな表情をしていて。
しかし自分の携帯が鳴り響けば渋々離れ、携帯の応答ボタンを押し「はい」と怠そうに返事して。
『あ、もしもし桐崎??明日先輩デートに誘ったら笑顔でOKしてくれてさ。…まぁ参考書買うのが口実なんだけど。先輩ってどんな店好き??』
「……………さぁ、良く分からない」
『マジかぁ…。出来るなら先輩の事は何でも知っときたいんだよね、まぁ明日は頑張る』
「………ふぅん」
『何だよ桐崎、何か調子悪い??』
「別に」
( 上機嫌な男子生徒との電話を切り相手の元に戻っては相手に予定がある事を知りつつ「な、明日暇??」なんて意地の悪い質問をして。
>桐崎
(いつになく甘えてくる相手に何かあったのかと心配する反面、呑気にかわいいと喜ぶ自分がいて、電話から戻ってきた相手の問いにはまさか知ってて聞かれてるとは知らず済まなそうに視線を落とし隠すこと無く男子生徒が参考書を買うのに付き添うことを伝えて。
「…でも2時間掛からないと思うから午後は空いてる」
(終わったら連絡すると続けるも折角の相手の休みを拘束するのは嫌だったため「予定入ったらそっち優先していいから」と微笑み相手の髪をぽんぽんと撫でて。
(翌日、百貨店開店と同時に本屋に訪れて参考書を吟味しつつ早々に購入するものを決めるも『先輩って漫画読みます?』『普段どんなの読んでるんすか?』とやたら質問してきて携帯で相手に連絡をする隙を与えてくれず。
『そうだ、先輩って動物好きなんすよね。ペットショップ見にいきません?』
「…誰から聞いたんだよ。……いや、この後予定あるから」
『えー、昨日は一日暇だって言ったじゃないっすか』
「悪い、あの後予定入ったんだ」
(面倒臭いやつと悪態吐きつつ、つい笑顔で対応してしまうも電話が掛かってきてはしめたと男子生徒に断りをいれてから隅に行って電話に出て。
『…菊、今いいか?』
「父さん?……どうしたの」
『あ、…敬語…』
「………いいから、何?」
(気恥ずかしさからぶっきらぼうに聞くもゴニョゴニョとよく聞こえず何度か「え?」と聞き返して。
『あの、その…実は、上司の借金の連帯保証人になったんだけど。…その上司が行方不明で…』
「は?!」
『ご、ごめん!!…でもこんなこと菊にしか相談出来なくて』
「……父さん、借金の肩代わりなんて逃げられるのが落ちって分かってただろ?…桐崎さんにもまだお金返せてないのにどうするんだよ…」
『御免…、でもその人が困ってるの見たら放おっておけなくて…』
「……………いくら…いくら肩代わりしたんだよ」
『…二千万。…その半額を来週までに返さないと何するか分からないって…本当に御免』
(父の悲痛な声に頭が痛いと額を抑えては電話を切り溜息を吐く。
こんなこと迷惑をかけたばかりの相手や兄達に相談できる筈もなくどうしたものかと表情に出さないよう男子生徒に元に戻り「…悪いけどすぐ帰る」と別れを告げようとするも腕を掴まれて。
『先輩何かあったんっすか?なんか顔色悪い』
「別に、何も」
『………俺だから話せることってあるんじゃないんすか?』
「気遣いは有り難いけど本当になんでもないから。………此れ駅前のカフェの割引券。彼女とでも行けよ」
(謝罪代わりにクーポンを押し付けるように渡してはさっさと百貨店を出るも行く宛はなく頭を冷やすために公園のベンチに腰掛けては相手に《御免、ちょっと遅くなる》とメールし暫くぼーっとしていて。
>露木
( 相手からのメールにがっくりと肩を落とすもならば出掛けずに部屋で大人しく待ってようと。
不意に扉を叩く音が耳に入り相手な訳無いのだが期待をしつつ扉を開ければそこに居たのは男子生徒で。
「何、いきなり」
『露木先輩先に帰っちまうんだもんよ。め-っちゃ暇でさ、…で、応援してくれてる桐崎の所に来た』
「別に応援なんて…」
『え、してくれないの??あんなに先輩の事教えてくれたのにそりゃ酷いって』
( しゅんとする男子生徒を煙たそうに見詰めては渋々部屋へと招き入れ。
相手の様子が可笑しかっただのデートが途中だっただの散々聞かされては面白くなさそうに視線を流すも『あ-あ、人の心は金で買えないもんなぁ』なんて言われては何を言ってるんだと眉を寄せて。
「何、頭まで可笑しくなった??」
『可笑しくねぇから!!!俺これでもお坊ちゃまだかんね、めっちゃ金持ちなの』
「は-、以外」
『以外とか言うなよな』
「なら良い塾行けば良かったろうが」
『無理、露木先輩と仲良くなりたかったし』
( 結局聞きたくもない話を延々と聞かされては漸く帰る気になった男子生徒を見送り。
相手の状況も知らずに相手が来るのを待ち続けてる間、男子生徒はやはり相手が気になるのか何度もメールを送っていて。
>桐崎
(一時間ほど無意味に公園で過ごすも名案が浮かぶわけでもなく溜息を吐いては今日一日だけは相手に甘えて慰めて貰おうと立ち上がって相手に連絡を入れようとするが男子生徒からのメールの多さに無視できず電話を掛けて。
『あ!先輩!やっと出てくれた。もう俺超心配したんすよ??…そうだ。さっき買った参考書で分からないところあったんで今から教えてくれませんか?俺待ってますんで!それじゃあ』
(ちょっと待てと言う間もなく切れた通話にうんざりするも気を紛らわすのには丁度良いかと。
相手が待ってくれているとも知らずそう何度も連絡を入れてはしつこいかと思っては特にメールせずに男子生徒の部屋に向かって。
(男子生徒の部屋に行くと『やっぱり来てくれた』と笑顔で招き入れられてはさっさと分からない場所を聞こうとするも『まあまあ』と言われ食卓に座らされ“美味しいジュース”があると飲み物を出されて。
『その“ジュース”非売品なんで滅多に飲めませんよ』
「…へえ。…いや、でも俺ジュース飲みに此処に来たわけじゃないから」
『そう堅いこと言わずにー。飲んでみてくださいって』
(人懐っこい笑みを浮かべる男子生徒に溜息が漏らしつつまあいいかと“ジュース”もとい“強い酒”を飲むも口当たりの良さから気付かずに結局二杯呑んでしまい身体の異変に気付いた所で漸くそれが“酒”と気付いて。
「…お前なぁ、何の嫌がらせだよ」
『すいません。でもこーでもしないと先輩何があったか教えてくれないと思いまして』
「…は?」
『先輩、何か悩みがあるんすよね?話してみてくださいよ。楽になりますから』
「………言わない」
(絶対話すものかと口を噤むもしつこい問い掛けと酒の酔いに段々と思考が鈍ってきては自分も知らないうちに父の借金について話していて。
『うわ…まじっすか。それ超やばいですね。………俺、払いますよ?』
「冗談よせよ。…一千万だぞ。無理に決まってるだろ。というより頼めない」
(阿呆かと軽く罵倒しては“こんな事絶対相手に言えない”と溜息を吐く。
それでも相手の顔が急激に見たくなっては「……勉強しないなら繿のところ行く」と無意識に呟きテーブルに手をつきながらフラリと立ち上がるも予想以上に身体に力が入らずガクンと膝から崩れ落ちては拍子にグラスも落として割ってしまい、下の部屋(相手の部屋)にも響くほどの騒音を響かせて。
>露木
( 中々訪れない相手に眉間に皺を寄せるも相手が約束を踏み倒す様な性格で無いのは自分が一番分かっておりもう少し待とうと言うのを何度も繰り返して。
音楽を掛けたり雑誌を開いたり携帯のゲームアプリを始めたりと何かと暇潰しを探すもやはり相手が気掛かりになり何れも手に付かず。
その刹那、不意に上の階から大きな音が聞こえ何事かと天井を見詰める。
確か上の階はあの男子生徒の部屋、最近良く顔合わせもしてるし無視する訳にも行かず相手が居る等と知らずに渋々エレベーターへと向かって。
( その頃、男子生徒は崩れ落ちた相手の肩を組みベッドへと寝かせては自分の事を“名前”で呼んだ事に僅かに気掛かっており。
あまり深く考えない様にしようと言い聞かせベッド上の相手に『あ、変な事したりしないっすから!!!俺ちゃんと段階は踏むタイプだし………じゃなくて!!!…あ、水持って来ます。………酒弱かったんすよね、すいません』と言い冷蔵庫からミネラルウォーターを持って来て。
相手の横に座りまさに尻尾を降る犬の如く相手との距離を縮めては『あ-、でも先輩酔った勢いで俺に話しちゃったのラッキーかもしんないっすね。一千万とか俺のお小遣いでもちょろいっすよ』なんて笑顔でとんでもない事を告げて。
ベッドから離れ鼻歌交じりに『…あ、でも現金より小切手のが楽だよな』なんて小さな声で呟いては突如叩かれた玄関に気付き顔を出して。
「さっきすっげぇ物音した。何か合ったの??」
『わ、心配してくれたの??桐崎やっさし-』
「馬鹿にすんなよ。大丈夫なんだな」
『おう。ありがとな-、今先輩来てるからさ』
「……………は??」
( 男子生徒の言葉にポカンと口を開けては僅かに見えた隙間からベッドに横たわる相手が見えて。
自分の部屋より先に男子生徒の部屋へと来たのか、なんで自分以外のベッドなんかに居るんだ、と黒い感情が根を張っては「…じゃあ俺は邪魔だろうから」と男子生徒にしか聞こえない声で呟いて。
笑顔で『悪い、後で電話するわ』なんて言う男子生徒に小さな憎悪が沸くもしっかり真実を言えない自分が悪いのだと。
>桐崎
(男子生徒が話す言葉を何とか聞き取るも返答することは出来ず、相手が来ていたことも気付かずに身を起こすとミネラルウォーターを口にして。
『あ、もう起きて大丈夫っすか?ゆっくりしてってくださいね』
「…悪い。迷惑かけた」
『いやいや俺が酒飲ませたのがいけなかったっすから』
「………」
(それもそうかとまだぼーっとする頭を抑えていると突然一千万円の小切手を渡され目を瞬かせるも受け取れないと突き返して。
『これくらいなんともないっすよ。残りの一千万も必要なら言ってください。なんなら今用意しますよ』
「待て待て。…そんなすぐ返せるものでもないし…困る」
『家庭教師代ってことで』
「いや、それは…」
『じゃあ明日から一時間延長で。困った時は助け合いっすよ、先輩』
(ニカッと笑う後輩にでも…と渋るが強く押し切られてしまえば実際追い詰められていたこともあって受け取ってしまい。
その後これ以上長居して迷惑を掛けるわけにもいかないと深く謝罪と礼を述べて部屋を後にしようとするも『まだ居てくださいよ』と引き止められる。
しかし気を遣わされてると思い込んでは「埋め合わせ出来るかわかんないけど出来ることはするから」とその場を立ち去って。
(まだふらつく足で訪れたのは相手の部屋、先程ベッドに寝込んでいたところを見られていたとは知らず中に入れて貰っては入った瞬間ガバッと相手を抱き締め扉が閉まるのと同時に相手を床に押し倒して。
「…会いたかった…」
(酒の臭いを漂わせながら吐息混じりに呟いては相手の首筋に顔を埋め、お金の不安がなくなった安心感からか小さく微笑みを零しては「…遅れてごめん」と表情とちぐはぐな言葉を述べ頬に音を立てて口付けて。
>露木
( 男子生徒の部屋で見てしまった光景にモヤモヤはまた膨れ上がり“もしかしたら男子生徒と一線を越えたのか”“男子生徒の方が心惹かれるのか”なんて不安が込み上げて来て。
自室のベッドで項垂れてた所部屋に鳴り響いたノック音に気付いてはのそのそと扉を開けるもそこに居たのは相手の姿で複雑な顔をして。
ほんのりと赤らんだ表情で押し倒されては見事に体制を崩してしまい「…酔ってんじゃん、酒飲んだのかよ」なんてぼやいて。
相手を軽々と抱き抱えベッドに下ろしては男子生徒と何も無かった事を確認すべく相手の首筋を軽く乱し自分の痕をいくつも残して。
小さな優越感を感じつつそれでも嫉妬が拭えずに居ては相手の腕を顔の脇にグッと押え付け「良いだろ??」と強引な物言いで鎖骨を甘噛みして。
( その頃、階下の事など何も知らない男子生徒は富豪な自分の父親に相手の身元の借金を全て片付けて欲しいと頼んでは相手のアドレスをなぞって。
相手の為になれたのだと嬉しそうに微笑みを浮かべては《先輩、俺最近勉強頑張ってますよね??折角なんで息抜きしたいし次の休み一緒に映画とかどうっすか??……………お金の悩みならもう終わらせたんで先輩は何も悩まないで下さいね!!!》とハイテンションなメールを送っており。
春休みに入る事もあり相手と会える時間が増えるのだと頬を綻ばせては明日も相手が部屋に来るのだしと散らかってた衣類やらを片付けて。
>桐崎
(酔が醒め切っていないせいか押さえ付けられても身体は震えず、むしろ首筋や鎖骨に与えられるチクリとした痛みに敏感に反応しては誘うように相手の首に腕を引っ掛け口付けを求めるも触れ合う寸前でお決まりのごとくバタンと力尽き一人呑気に眠りについて。
(翌朝、二日酔いもなくサッパリ目を覚ましてはシャワーを浴びて着替えると相手が用意してくれた朝食を頬張り片付けを終えたところで男子生徒のメールに気付き。
次の休みこそ相手と一日過したいと思っていたため思わず眉を寄せるが、大金を肩代わりして貰って断るわけにもいかず《本当に助かった。…次の休みあけとくから見たい映画決めておいて》と返信しては相手の前ということを忘れ溜息を吐いて。
(そして次の休み、時計台で男子生徒と待ち合わせ映画館に向かってはチケット代もドリンク代も全て支払われてしまい悪い気しかおきず、映画も特に見たかったわけでもなかったため次の休みは絶対相手と過ごそうとそればかり考えていて。
上映が終わり近くのカフェに入っては一人ぺちゃくちゃ喋る男子生徒の話に適当に相槌を打ちつつ、ふと思い出したように包みを男子生徒に差し出して。
『え、俺に?何ですか?』
「…色々、助けて貰ったから」
『わあ、これ最新型の電子辞書じゃないですか。しかも結構高いやつ。いいんすか?』
「そんなんじゃ全然返しにならないと思うけど。…大学では必要だから」
(あんな大金今の自分ではこれくらいしか埋め合わせができないと申し訳無さそうに述べてはここのカフェ代くらいは自分が支払おうと会計に向かって。
(その頃、相手の元に何も事情を知らない父が電話をかけていて。
『あ、繿君?久しぶり。元気かい?この前は本当にありがとう。……ところでその、菊から話は聞いてるかもしれないけど今回も繿君が助けてくれたのかな?…君には助けて貰ってばかりだね。でもあんな大金どうしたんだい?』
(てっきり自分が相手に相談したものだと思い込む父は相手の身に何かあったのではと心配していて。
>露木
( 突如相手の父親から連絡が来てはその内容に何の事か分からず、それと共に何の相談もされなかったと。
上手く流し電話を切ろうとするも『今度休みが有ったら縺さんの所に行くからね。仕事も順調だし少ない額だが返そうと思って。もし良ければ………その、菊も誘って一緒に御飯でも食べに行かないかい??』と言われて。
「露木も喜ぶんじゃないですか。…何時頃こっちに来るんすか??」
『あぁ、君達も春休みに入ったんだもんね。縺さんの暇が取れたら行こうと思ってるよ。………菊は…来てくれるかな』
「来ると思いますよ。………でもちょっと露木に話あるんで…失礼します」
( 相手の父親との電話を切り相手に電話を掛けるも何故か留守電に繋がり一体何をしてるのかと疑問が浮べば暇と退屈を潰しに街へと向かって。
( 相手からの贈り物に男子生徒は分かり易く喜びながら会計へと向かう相手に追い付き相手が代金を支払うよりも早くカードを店員に渡していて。
『俺が付き合わせてるんすから気使わないで下さいよ。…それより先輩、またこうして遊んでくれると嬉しいっす』と気恥ずかしそうに微笑んで。
『夜、家庭教師お願いしますね。ちゃんと復習しといたんで!!!』
( ニッと明るい笑顔を浮かべカフェを出ては街を見回りながら寮へと向かう。
道すがらのショーウィンドーを見ながら『あ、あれとか先輩に似合いそうっすね』なんて言っては楽しそうに。
街を抜けるというその時、コンビニの中に自分の姿を見付けた男子生徒は『あ、桐崎』と。
『先輩と仲良くなれたのも桐崎のお陰なんすよ、応援してくれてるって………って俺何言ってんだろ』
( 照れ臭そうに頭を軽く抱えてははにかんで。
>桐崎
(カフェ代まで支払われてしまえば、自分は特別何かしてやったわけでもないのにどうしてこうも親切なのかと無邪気に笑う男子生徒を横目でチラリと見る。
こんな良い奴が本当にいるのだろうかと首を傾げていると“桐崎”の言葉に光速で反応してそちらに目を向けるも、続く男子生徒の言葉に耳を疑っては「え?」と男子生徒を見て。
そこで漸く鈍感な自分でも隣の男子生徒が至極親切にしてくれる理由に気付いては少し青ざめたように一歩後退り『露木先輩!!』と呼び止める声も耳に入らず逃げるようにその場から走り去って。
(たどり着いたのは公園、しかしすぐに男子生徒も追い掛けて来ては急にどうしたのだと問いただされ勝手に逃げたことを謝って。
『それはいいっすよ。…なんか俺まずいこといいました?』
「……あんた、俺のこと好きなの?」
『え。……ぁ、いや。…はい、俺ずっと先輩のこと…「俺と桐崎、付き合ってるんだ」
『へー。そうっすよね。って、えええ?!でも桐崎俺のこと応援してくれるって…』
「……本当にあんたを応援するって言ったのか?」
『勿論。露木先輩のこと色々教えてくれて。俺それで超助かったっすもん』
「……あんたには感謝してるよ。勉強熱心でいいやつだと思う。……でも俺は桐崎だけだから」
(男子生徒の目を見てまっすぐ告げるも罪悪感と靄々した気持ちが入り混じり胸がジクジクと痛んでは目を逸し。
重たい沈黙の中、自分の携帯が鳴っては「…御免」と謝り遊具の影に行っては電話に出て。
「父さん、何?……そっちは大丈夫そう?」
『ああ。おかげで助かった。それになんだか分からないけど急に会社の経営が向上してね。給料も上がるみたいなんだよ。あー、違う違う。今日はその話じゃないんだ』
(珍しく覇気のある父の声に良かったと安堵するも複雑な心境は拭いきれず、相手や相手の父親と食事する話を聞くときもあまり思考が回らずよく考えもしないで「分かった。予定あけとく」と頷いては電話を切って。
すぐに男子生徒の元へ戻らねばと思うも後ろめたさと靄々した気持ちで中々足が前に出ず暫く電話を続けるふりをして。
>露木
( 電話に向かった相手の後姿を見詰めながら男子生徒は小さく溜息を付くも何故付き合ってるならそうと言ってくれなかったんだと自分の事を考えていて。
素直な性格故か、言い出しづらい状況を作ってしまったしお互い様かと考えてはやはり気が重く。
背後から相手の様子を伺ってた所でもう電話中だろうと構わないと相手を後ろから抱き締めては肩に顔を置き相手の携帯に目を向ける。
電話が終わってる事に気付き、それでも気にせずにゆっくり口を開いて。
『先輩、俺先輩が桐崎の事好きでも先輩を助けた事後悔してないっすから。桐崎全部知ってて俺に協力してたんすよね、上等っす。一瞬だとも応援してくれる様子だったし俺諦めるつもり無いっすから』
( ニッと笑顔で上記を言えば改めて相手と向き直り『だからこれからも暫くは家庭教師お願いします。………惚れさせる様頑張るんで』と悪戯に微笑んで。
( その頃、自分は結局相手も見付けられずにとぼとぼと寮へと戻っては最近相手と過ごす時間は少ないなと感じており溜息を漏らして。
男子生徒の言葉が誤解を生んだとも知らずに暇そうにマンガ本を取り出してはベッドに横になって。
その時、不意に携帯が鳴り響いてはどうやら着信相手は男子生徒の様で。
「何」
『桐崎さ、俺と露木先輩応援してくれんだよな』
「………えと………」
『なんてね、聞いたよ先輩から。も-言ってくれても良かったんだぜ??』
「…は??」
『でも桐崎応援してくれてる素振りだったから俺も諦めない事にした。…って事で俺達ライバルだな』
( 『じゃあね、俺明日からも露木先輩に勉強教えてもらうからさ。羨ましいだろ』なんて言葉を最後に電話が切れては暫し状況を掴めず頭をこんがらがせて。
>桐崎
(男子生徒と別れてからも相手と会う気にはなれず“相手が男子生徒を応援していた”という事実が頭の中をグルグルと駆け巡っては沈んだ気持ちのままアパートに帰り、単なる思い違いだと知ること無くその日は眠りについて。
(翌日レンタルショップのバイト終わりに男子生徒の部屋に向かっては戸惑いつつも“これは勉強”と言い聞かせ何事も無く授業を進める。
何度か“休みの日は何をしてる”だとか“兄弟はいるのか”とか他愛のないことも聞かれたが隠すことでもなかったため淡々と答えて終了時刻を迎えると「…お疲れ」と逃げるように部屋を後にして。
(そのすぐ後相手の部屋の前まで来るも扉を叩くまで数分かかり意を決してノックするも中には入らずに「……今日は父さんがアパートに泊まりにくるからここで」と視線を落としボソリと呟いて。
聞きたいことは沢山あるのに中々声に出せずどうせ明日食事をする時に会うのだからその時にしようと怖気づいてしまえば「…じゃあ明日。おやすみ」とその場を去ろうと。
>露木
( 相手が来てくれたと思えば素っ気無い言葉と共に去ろうとするのに眉を寄せる。
咄嗟に腕を掴み“少しくらい上がれよ”と口にしようとするが父を待たせてるのならそれは失礼かと。
不満気な顔を顕にしながらパッと手を離し「…ごめん、じゃあ…明日な」と何処と無く寂しそうな表情をしてはパタンと扉を締めて。
( そして翌日、自分の父と出会し相手と相手の父との待ち合わせ場所になってる洒落た居酒屋に来れば父は面倒そうに席に付いて。
相手の父が優しい微笑みで前回の三百万の礼と返済の約束を言うのに舌打ちしては『要らねぇってんだろうが。お前本当学習能力無ぇな、あれは繿が餓鬼の頃お前に世話になったからって言った筈だ』と。
酒やら料理やらが運ばれて来る中、何故か相手と視線が交わらずそれを疑問に思いつつも深く考えない様に料理を口に運んで。
『菊、菊にも散々迷惑掛けたね。今は地元でちゃんと安定した仕事に付いたよ、ナツや母さんの所にも週3くらいで通っててね。今度は家族で食事に行こうって話にもなったんだ』
( 嬉しそうに話す相手の父親に自分の父が『ふん、そっちの会社の上司にも上手く騙されたら笑いもんだな』なんてまた一見冷たい様な言い方をして。
相手と一言も会話を交わして無い事や何故か気不味い雰囲気な様子に勝手にイライラとして来ては頬杖を付いたまま相手の皿にプチトマトやら玉ねぎやらを移していて。
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