xxx 2014-12-29 00:12:16 |
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>桐崎
(ストーカー男は相手の態度に青筋を立てては小さく口角を上げてタオルでカモフラージュしたピストルをカチャリと相手の背中にあてがい。
『聞き分けの悪い犬は始末するまでだ。“化け犬”を排除したってんならお国の奴等も大喜びだろうなぁ』
(相手の耳元で厭らしく嘲笑してはピストルをあてがいながら空いた手でタブレットのLIVE動画を見せる。
そこにはリアルタイムで相手の兄が蹂躙される姿が映し出されていて。
『これは今お前が“馬鹿馬鹿しい”と俺に逆らったからだ。お前の兄はお前と似て顔立ちがいいからな。…男は初めてのようだが』
(クックッと怪しく喉を鳴らしては次にホテルで薬により眠る自分の首筋に男がナイフをあてがう光景を映し出し『次少しでも逆らえば此奴に何があるか分からないぞ?…言っておくが此奴の部屋の鍵は外から開けられないように細工した。無理に開けようとすれば此奴の喉を切り裂くぞ』と脅しグッと銃口を相手の背中に食い込ませ。
『あの木ノ宮組の若頭ってのもちょろいなぁ。ホテルの従業員の中に俺の部下(自分にナイフをつきつける男)を紛れ込ませるのは簡単だったぜ』
(愉快そうに笑っては相手の耳元に口を寄せ『逆らえば…分かってるよな?……大人しく希久を渡せ。希久もお前が“化物”だと分かったら俺を選ぶと思うぞ?』とほくそ笑み。
『それとも潔く自分から“消える”か?…お前みたいな“化け犬”がいると周りが迷惑を被るからな。…だってそうだろ?お前の父親はお前が生まれてきたから会社も首になり借金をする羽目になった。お前の兄貴もお前のせいで随分辛い思いをしてきたそうじゃないか。希久も“お友達”もお前みたいな“化け犬”が生きてるせいで苦しめられる。……お前に生きる価値があるか?』
(男は狂気じみた笑みを浮かべ相手の精神を踏み躙るために都合の良いよう言葉を好き勝手並べて。
>露木
( 目の前に映し出された光景に息が詰まりそうになりつつ、それでもホステスを差し出す訳には行かないと自分に言い聞かせるも相手を傷付けるのだけは自分自身も許せずにゆっくりと口を開く。
「………は、希久は俺に惚れてんだぜ??あんたどうやって希久と俺を引き離そうっての??」
『なァに簡単な事だよ、お前が希久の前で“化物”になれば良いんだ。場所は設けてやるから安心しな』
「…あんたも無様だな、…そんな事で…」
『手に入るさ。化物なんか直ぐに捨ててくれるよ』
( ホステスとはあくまでも演技だったがどちらを選ぶのかはホステス次第。
相手や兄へ何度も謝罪の言葉を思い浮かべ「分かった、…希久の目前で化物になりゃ良いんだろ??」と。
( その夜、さっそくホステスの女を呼び出し金融会社の一室に招き入れるとストーカー男達に囲まれながら止まらない冷汗を拭う。
いくら化物に慣れようとも蔑まれるのには慣れてない、重く伸し掛る空気に耐えられず一つ深呼吸を置いてはホステスに一歩詰め寄る。
『繿…??どうしたのよ』
「…………………………ごめんな、…騙してて」
( 眉を下げ無理矢理笑顔を作れば能力を解放し中途半端な無様な姿でホステスに手を伸ばす。
勿論の如く悲鳴を上げるホステスは自分から距離を取り小さく震えて居て。
ストーカー男は面白そうに笑いながら既にホステスの心は手に入った物だと思っては相手と兄を解放するように部下達に連絡を入れて。
漸く人姿に戻り悲しそうに微笑んでは「………怖がらせて…ごめん」と言うも状況が理解出来ないホステスは覚束無い足取りで金融会社を後にして。
満足そうなストーカー男になど目もくれず自分も金融会社を後にしては誤解の解けてない父の元に帰れる筈も無くしとしとと雨の振る街の中をぼんやりと歩いていて。
>桐崎
(夜、ホテルにて漸く目を覚ましては何があったかも知らずに呑気に小さく欠伸を零すも枕元で深刻そうな顔をする若頭に気付き相手に何かあったのか詰め寄り。
『実は、綸が……』
(口を開きかけたちょうどその時、扉が開かれ笑顔の兄が近づいて来て。
『あ、菊おはよう。下であったかいスープもらってきたよ。食べる?』
「あ、ああ。ありがとう。……綸、……なにかあったのか?」
『んー?別になにも?それよりも冷めないうちにスープ食べてよ。美味しいから』
(普段と変わりない笑顔にどこか違和感を覚え、訝しげに兄と若頭の顔色を窺ってはやはり何か可笑しいと。
「…綸?」
(兄の頬に手をやり心配げに顔を覗き込んでは表情が僅かに険しくなったのを見逃さず“相手に何かあった”と思っては弾かれるように身を起こし部屋の扉を開いて出ていこうとするも目の前に人がいたため足を止め。
その人物は相手と一緒にいたホステスで微かに身を震わせ目に涙を溜めており。
『木ノ宮さんから繿のお友達が此処にいるって聞いて……、その私、…繿に助けて貰ったのに…最低なことして…』
(ホステスは涙ながら事情を話すが彼女も全てを知っている訳では無いため状況が掴めず、兄達も詳細を教えてはくれずにやや苛立ちながら「それで、桐崎は?」と問うもホステスは探したけど…と首を横に振るだけで。
自分が相手を最後に見たのは相手が自分との約束を守って闇金達から解放してくれた時。
まさかあの後男達に何かされたのではと胸が騒いでは考えるよりも先にホテルを飛び出していて。
(慣れない夜の街、徐々に強くなる雨足の中脇芽も振らず相手の姿を探しては人気のない道で漸く相手の姿を見つけ迷いなく後ろからその腕を掴み振り向かせて。
その酷く疲れた表情と辛そうな表情に胸が痛んでは、あれほど触れるのを躊躇っていたのに冷たく湿った頬にピトリと手を添え「……心配した…」と小さく零して。
「……なにがあったんだ?……そんな疲れた顔して……、…まさか見世物、してないよな」
(相手になにがあったかも知らずに最低な疑いをしてはジッと相手を見詰め。
ポトリと相手の髪から雨水が落ちたところで少し冷静になっては「…御免。変なこと言った…」と謝り「…ここから俺が借りたホテル近いから、とりあえず其処言って身体拭いて温めよう。…そのままだと風邪引く」と手を引きホテルへ向かおうとして。
>露木
( 結局は本当の自分を認めてくれる者など一人も居ないのだとぼんやり考えては不意に後ろから手を掴まれ反射的に振り向いて。
恐る素振りも無く自分に触れて来る相手を一瞬驚いた様に見詰めるもそのまま腕を引かれてはゆっくりと歩き出す。
しかしこちらから足を止めては相手の頬や首筋に遠慮がちに触れ怪我などが無い事を確認して。
自分の所為で関係の無い兄や相手を傷付けた。
自分が生まれた時点で父や母には散々な迷惑を掛けて生きて来た。
「……………ごめん、……………俺………」
( ポツリと謝罪の言葉を零すもその先が出て来てくれずに吃らせては俯いて。
そのまま腕を引かれゆっくりとホテルへと歩き出しては部屋に入るなり相手を抱き寄せる。
何となく人肌が欲しく、抱き着く様に相手の肩に顔を埋めては暫くそうしていて。
( 翌朝、相手より早く起きては相手の額に口付けを落とし部屋を後にする。
特に行き場所が合った訳では無いのだが何と無く街に出ようとしてた所、相手の様子を見に来た兄に出会してはビクリと身が震え逃げ出そうとして。
しかししっかりと腕を掴まれてはそのまま顔を合わせられ真面目な視線を向けられて。
『何で逃げるの』
「…………………………」
『ちょっと、聞いてんの??』
「……………綸、……………ごめん。………ずっと、言おうと思ってたんだ。…今回の事も謝らないとって思ってたけど………俺の所為で綸…ずっと虐められてたんだよな」
( ぎこちなく表情に笑みを混ぜてはずっと言おうとしてた言葉を述べそのまま腕を振り払って。
走って訪れたのは実家、丁度家を出ようとしてた父にポケットから金を取り出しては「………今日の分」と小さく呟いて。
しかし父は自分の手を払う様に退かし『………もう、要らねぇんだよ』と。
その意味すら分からず、驚いた様に父を見詰めては「…何でだよ。もう顔も見たく無いとか??………そりゃあそうだよな、俺の所為で会社クビになって母さんも可笑しくしちまって…」と一人でに言って。
途端、父の平手打ちが飛んで来るも幼少期のそれと重なっては恐怖から咄嗟に逃げ出して。
>桐崎
(父は逃げ出した相手に『…繿ッ』と小さく名前を呼ぶも相手は止まらず、相手を叩こうとした手を見ては小さく舌打ちし『誰がてめぇのせいでクビになるかよ』と吐き捨て、おもむろにタバコケースをポケットから取り出ししばらく見つめた後、出かける気が失せたのか家の中に戻っていき。
(その頃、自分はホテルで目を覚まし相手が居ないことに焦って直ぐに着替え等を済ませ出ていこうとしては兄と鉢合わせいきなり抱き着かれ。
いつものことだが、何となく昨日の落ち込んだ相手の雰囲気と似ていると思えば落ち着くまでそっと背中を撫でてやり。
『…ん、もういいよ。…体調どう?』
「平気。……それよりあんたのほうが顔色悪いよ。…彼奴もまだ寝てたほうがいいのに」
『…………この前、気にしてないって言ったつもりだったんだけどな』
「……?」
『ううん、こっちの話』
「…ところで彼奴が行きそうなところ分かるか?……心配なんだ」
『……多分実家に行ったと思うけど、……案内するよ』
「でも…いいのか?あまり帰りたくないんじゃ…」
(戸惑い気味に聞くも兄はニコリと笑うだけでそのまま実家に連れられる。
父が出てきて相手はいないと言われるも何故か中に通されてはなにも喋らない気まずい時間が数分続いて。
「あ……あの、怪我の具合は…?」
『あ?んなもん最初からしてねぇよ』
「………。……彼奴とはあれからお話されましたか?」
『しつけぇな。…他所の餓鬼に話す義理はないな』
「……あの、俺、…彼奴探すので…此れで失礼します」
(今は相手の様子が気になり一刻も早く見つけ出さねばと思えば席を立ち、部屋の隅で酒を飲む相手の母に「お邪魔しました」と頭を下げ相手の実家を後にして。
(その頃、父から逃げ出した相手の元にあのストーカー男が怒りの形相で背後から迫っては突如相手を車の後部座席に押し込み部下に車を発進させて。
『おいお前。希久をどこへやった?お前を恐れた筈なのに俺のところに戻って来ないぞ。お前が隠したんだろ?さっさと希久を返せ!』
(男はホステスが若頭の元で保護されているとは知らず、勝手な妄想で逆ギレしては車の中にも関わらず相手の腹を殴りつけ『“化物”が』と嘲罵を浴びせ。
『まあいい。居所吐かせるまでたっぷり仕置きしてやるよ。俺の知り合いに見世物屋やってる奴がいてお前の写真を見たら一目惚れしてたからな。たっぷり可愛がって貰えるぞ』と厭らしく笑んで。
>露木
( 父から逃げて来たもののふと真横に止まった車に押し込まれてはいきなりの事に驚くもそんな余裕は無く腹部の痛みに表情を歪めて。
あのホステスの女はやはりこんな男には付かなかったのかとどこか安堵しては脅しの言葉も耳にせず口角を上げ「あんな良い女が手前みてぇなクズ野郎に移る訳無ぇだろ」と強がりを並べて。
ストーカー男の怒りを増幅させてしまうも思考は何処か空虚で暴力にも特に何も感じなくなってはそのまま見世物屋へと到着し裏へと押し込まれて。
店主と思しき男がスタンガンを手にこちらへと近寄るのをぼんやりと見詰めてはストーカー男が『今ちゃんと希久の居所を話せば手加減してやるよ』と。
「話すも何も俺は知らない。あんたのとこに行くのが嫌で逃げちまったんじゃねぇの??」
『………っ、この糞野郎!!!もう良い、やっちまえ』
『了解』
( 店主が近付いて来るのと共に激しい痛みが襲い掛かってはそのまま意識を手放して。
( その頃、実家を後にした相手を追う様に兄が相手の腕を掴んでは『俺も行くよ』と。
相手の怪我もまだ心配で取り敢えず街に来ては自分の行きそうな場所を巡るも居る筈も無く。
丁度そこへ通り掛かったストーカー男が相手と兄の目前に車を止めては怒りの形相を向けて。
『おい、お前等あの化物の仲間だろ??…希久をどこへやった』
『………いきなりどういう事かな。もう俺達には関わらないで欲しかったんだけど』
『希久の居場所を吐けってんだ、早くしろ』
( ストーカー男は一方的な苛立ちをぶつけ相手と兄を冷ややかに見詰めては『今度は二人纏めて売っぱらってやっても良いんだぜ??』と。
>桐崎
(男の言葉に一切怯まず冷たく見返しては、前に出ようとする兄を下がらせ一歩前に出ると男を強く睨みつけ。
「あんた…繿に何かしただろ?…どこへやった?」
『繿…?あー、あの糞餓鬼か。知らねぇよ。…つーか、こっちが質問してんだよ!さっさと希久の居所を吐け!!』
「…俺は知らない。……で、繿はどこにいる?」
『はっ、誰が教えるかよ。そんな態度取ってると化けもんがどうなるか分かんねぇぞ?』
(下品に笑う男に相手の身が危険だと確信しては一気に憎悪が沸き立ち、微かに能力が解放されては足元から風が沸き立ち頭の中で“力を貸してやる。其奴の額を捉えろ”と声が響き言われるがまま男の額に手をかざし。
瞬間、男の記憶が頭の中に早送りのごとく流れ込み相手の居る場所までの道筋が浮かび相手が痛め付けられる光景まで行き当たったところで記憶が途切れ。
初めの事にフラリと身体が傾くも何とか踏みとどまっては『何をした!!』と叫ぶ男を無視して兄の手を取ると一目散にその場から走り去り近場のコンビニに入って。
『急にどうしたの?』
「……あんたは安全な場所で待ってて、……もし、俺の帰りが遅い時は此処に来て欲しい」
(男の記憶の中から兄に乱暴するよう命令する光景も見たためこれ以上兄を傷付ける訳にはいかないと謝罪の気持ちを込めてギュッと手を握るも、最悪の場合を考えてはメモに相手がいるビルの名前を書いて兄に渡し止められる前にコンビニを駈け出して。
(コンビニを出て直ぐにタクシーを捕まえては読み取った記憶を頼りに道筋を指示して目的地へと向かう。
辿り着いたのは古びた雑居ビル。記憶を辿って裏口に周っては電気メーターの下から鍵を取り中へと静かに侵入して。
奥の部屋から厭らしい笑い声と鈍い嫌な音が聞こえて来ては込み上げる憎悪を抑え、息を潜めながらそっと顔を覗かせる。
そこには数人の男達に囲まれスタンガンで無理矢理目覚めさせられ乱暴される相手の姿がり、其れを見た瞬間血が逆流するように熱くなっては何かが自分の中に入ってくるのが分かり気付けば男達の前に出ていて。
『なんだお前は?……お前も“化物”と遊びに来たか?』
「……黙れ。……繿から離れろ」
『チッ、何だよ邪魔しに来たのか。餓鬼は引っ込んでろ!!!』
(罵声と共に相手を殴りつけていた鉄骨を振り上げられては一瞬怯むも身体が勝手に動き其れを軽々と受け止めていて。
『「…ぬるいな。この程度か。……それで?此処で反撃しても正当防衛ってやつになるんだよな?」』
(自分の中の誰かが勝手に喋っては“筋肉痛になっても文句言うなよ”と頭の中で笑い、自分ではまず出来ない動きで男達をいとも簡単に地に伏せさせていき。
『こ、この餓鬼、化物か…!!』
『「化物?光栄だな。褒め言葉として受け取っておくよ」』
(余裕の笑みで最後の一人を手刀で気絶させるとぐったりする相手にかけよりその身をそっと起こして『「…大丈夫か?すぐに助けてやれなくて悪かった。…もう大丈夫だからな」』と相手の銀髪を優しく撫で小さく微笑むと軽々と相手を抱き上げ、未だに感じる嫌な気配に憑依したまま早々に病院へ向かおうと。
>露木
( 続け様の痛ましい行為に無表情を貫いてた所、いつもと違う雰囲気の相手が現れるなりいとも簡単に男達を捩じ伏せる光景に呆気に取られる。
軽々と持ち上げられるもドッと溢れた安心感から段々と意識が遠のいて来て。
( 目を覚ましたのは病院にて。
何故か両親の姿もあり飛び起きようとするも兄に肩を抑えられてはベッドへと戻されてしまい。
父は自分が目を覚ましたのを確認するなりさっさと出て行ってしまい意味が分からないまま兄と相手に目をやり「希久は無事なのか??」と問い掛けて。
『大丈夫だよ、今は木ノ宮と居るから』
「………そっか、安心した」
( 父を追い出て行った母ね背中をぼんやりと見詰め「………なんで居んの??」と兄に問い掛けるも兄は微笑むだけで。
『それは本人から聞いて欲しいな』と意味深な言葉を残しては父の元に向かう為兄も病室を出て行ってしまい。
相手と二人きりになり、目を合わせないままに「………ありがとな」と小さく零して。
そのまま相手の手を取ると無理矢理自分の身体を起こし相手をしっかりと抱き寄せる。
「…ちゃんと人を好きになったのって真希が初めてだったんだけど………あんな事合ったからさ。能力を見せたのに絡んで来てくれる奴ってあんたと赤城くらいしかいないから………ちょっと、びっくりした」
( 相手と距離を置くと言ったのは自分なのにそんなのはやはり心苦しく僅かに声色が震えては「………ごめん。…あんたの事…本気で好きだ。……………でも、……やっぱりちょっと無理があるよな」と悲しそうに笑みを浮かべては相手の髪を撫でて。
また迷惑を掛けるなどと考えると辛く、相手には傷付いて欲しくないと願う自分もいて。
>桐崎
(病院に戻るといつの間にか元に戻っており、相手と二人きりになり悲しげな微笑で紡がれた言葉に小さく瞬き戸惑いで瞳を揺らし視線を下げる。
これ以上は…と思うも愛おしい相手に抱き締められ“好きだ”と言われて気持ちを抑えられる筈もなく、“ああ…今更か”と自分の心情に小さく苦笑を漏らしてはそっと相手の背中に腕を回し少しでも負担が軽くなればと自分の方に体重をかけさせ。
「……無理じゃない。……俺もあんたがずっと好きだ。…何があっても…あんたに嫌われても…」
(静かに口を開いては顔を見られないよう体勢はそのままに話を続け、一月ほど前相手と距離を置く発端となった男子学生に言われた蔑みや嫌がらせを打ち明けて。
「……“遊び人”って言われて…、それは違うって思ったけど周りがそう見てるなら、俺がいるせいであんたも変な目で見られると思って……。汚れてるってのは本当だし…自信なくなって…もう迷惑かけるの嫌だから距離置かなきゃって……師範のところ行った。……なのにあんたと会ってあんたをもっと傷付けて……だから寮離れたってのに…これだろ?……なんかもう訳分からなくてさ」
(一気に喋っては少し身を離して相手を切なげに見詰め傷の残る頬に手を伸ばし。
「…いや…分かってるんだよ。…俺が、気持ち抑えられずにあんたと会おうとするから悪いんだって…。でも仕方ないだろ。…あんたが傷付くのは耐えられないし……好きだから」
(語尾を小さくして述べてはもう一度相手を抱き寄せ「…繿…、」と言葉を続けようとするも脳裏にあのホステスのことが過っては動揺して身を離し。
「……あ、あの女は?…一緒にアパート入っていっただろ?……あ…、もしかして付き合ってる?……え…と…俺、……なんか勘違ったかな。…好きってもしかして友達として、だったか?………御免、俺なんか変なこと言ったよな。忘れていいから」
(勘違いに勘違いを重ねていることも気付かずぎこちなく微笑んでは丁度の話題のホステスが見舞いに来たため「じゃあ俺は邪魔みたいだから。…ていうかバイトあるし。ゆっくり休めよ…お大事に」と相手の言葉を聞く余裕もなくその場を離れて。
ホステスは妙な自分の様子に首を傾げながら相手に向いては『大丈夫だった?』と机の上に見舞いの品を置き、一呼吸置いたあと頭を下げて。
『あの時は御免なさい。…すごく良くしてくれたのに突然でびっくりしちゃって……。どうしても謝りたくて木ノ宮さんに無理言って此処に連れてきて貰ったの。………本当に御免なさい』
(なんども謝っては相手の痛々しい頬の傷に触れて『…私、できることは何でもする。一応まだ“恋人”のつもりだから』と相手を見詰め。
>露木
( 相手と入れ違いに入って来たホステスに遠慮がちに向き直るも既に恐れは伺えずに安堵して。
触れられた手にビクリとするもホステスが恐怖を見せない事に確信しては頬に触れる手にそっと触れて。
「気にすんな、…怖がらせた俺も悪いから」
( 僅かに表情を緩めてはまだあのストーカー男の事も安心出来た訳でもないし暫くは“恋人”の関係を続けてた方が良いかと。
しかし先程の相手は明らかに勘違いをしていた様子、自分が相手に言った“好き”の意味を絶対履き違えてるだろうなと考えては後で連絡を入れてみようかと。
暫く他愛も無い話をした後、まだフラフラとする足取りだがホステスを玄関口まで送り届けては病室へと戻り。
( 夜、相手に電話を入れるも相手の携帯から自分のアドレスや電話番号を消去した事を思い出しては訝しげに思われてしまうだろうかと。
しかしこのままでは自分の気も収まらず、何度か電話を入れては留守電に残す事にして。
《あのさ、前に俺電話番号とか勝手に消したから………あんたさえ良ければまた登録しといてくれると嬉しい。………あとゆっくり話したい事もあるし………怪我だけだったから明後日に退院だしもし時間が空いたら会えないか??………時計台の所で待ってる》
( やや掠れた声で留守電を残しては相手からの返事が来る事を心の奥底で願いながら携帯をしまい。
今度こそ、しっかりと伝えようと胸に決めてはホステスとの関係も細かく説明するつもりで。
>桐崎
(バイトを終えてホテルに戻り寝支度を済ませたところ相手の留守録に気付いては何を言われるのだろうと不安が過ぎる。
それでも相手の話をちゃんと受け止めねばと次の朝相手に電話を入れて、正午に行くと用件と怪我の心配の話だけをしては通話を切りバイトに向かって。
(そして相手と約束した日、朝方までのバイトを済ませ一度ホテルに戻りシャワーを浴び相手に会うというだけでいつもより念入りにシャンプーをして着替えをする。
此れでは何か期待しているようだと小さく溜息を吐いては椅子に腰掛け時間まで少しだけ目を瞑って気を落ち着かせては何気なく閉じかけたピアスの穴に触れ。
何を言われるのか、とまた考えてもどうしようもないことを悩んではさっさと身支度をしてホテルを後にして。
(時計台、待ち合わせ時間より早めにきたが既に相手はそこにいて、一瞬足を止めかけるも覚悟を決めてはそっと歩みより平静を装っては「おはよ、早かったな」と微笑み。
「…ここじゃ寒いし何処か入るか?」と相手もまだ身体を休めたほうがいいだろうと近場のカフェに入ろうと相手が答えるよりも先に足を進め。
>露木
( 促されるがままにカフェへと入ってはコーヒーを頼み改めて相手を見詰める。
しっかり話さなければとは思うもどうしても迷いが生まれてしまい一度小さく深呼吸しては伏せ目がちにゆっくりと口を開き。
「………まぁ、あんた色々勘違いしてんだろうなって。…昨日俺が“好き”って言ったのは友達としてとかじゃないんだよ。…その…一人の男としてあんたを好きだって話」
( 話したら話したで一気に羞恥が込み上げるもそれでもホステスとの誤解を解かなければとポツリポツリと自分の置かれてる状況を話して。
「…馬鹿馬鹿しいだろ、“希久”って名前に惹かれたんだよ。…その、…あんたと同じだったから」
( 照れ臭さを隠す様に運ばれて来たコーヒーを飲み込んでは空気を変えるように「そういう事、…でもまぁ…今の話があんたを嫌な思いにさせてたらごめん」と。
元々自分が人との付き合いや恋愛など出来る筈が無いという考えもあり例え結ばれなくても相手を思い続ける自信はある為後悔はしておらず。
ふと思い出した様に以前相手に突き返された(と、勘違いしたままの)ストラップを取り出しては「…重かったんだよな、男からの贈物なんて。…まだ持ってるなんて未練がましいよな。………付根のとこ、壊れてたからさ。新しいのと付け替えたんだ」と。
苦笑気味にストラップをしまおうとしては「俺、意外と嫉妬深いんだ。直ぐに妬くし…突っ走るし。………だからあんたと釣り合わないのは分かってる、…でもせめて友達として…」と言い掛け言葉を飲み込み。
>桐崎
(相手から告げられた言葉にまた自分が早とちりをしていたと知れば恥ずかしくなり視線を横に流す。
嫌な思いなどとんでもないと首を横に振ろうとした時、相手が取り出したストラップを目にしては小さく目を見開き思わずガタンと身を乗り出してストラップをしまおうとする手を取って。
周囲の視線が集まりハッとなっては俯き気味に座り直し、そこで漸く何故相手の叔父の家にあっただとか付根が新しいだとかの辻褄が合い、男子学生達にはめられたことを悟って。
あまりの自分の不甲斐なさに頭を抱え大きな溜息を吐いては「ほんと馬鹿…」と自分に対して呟き、あの夜男子学生にされたことを話し。
「……ずっと、探してたんだ。……一晩中探して…それでも見つからなくて…、普通気付くよな。…でももし本当に捨てられてたらと思ったら諦めきれなくてさ」
(その結果、朝路地で男達に善がるよう脅されそこを相手に見られ、どんどん男達の思惑にはまっていき、自分の弱さのせいで相手を傷付け死の危険にまで晒してしまった。
「……俺がしてきたことは許されると思ってないよ。…あんたは俺といないほうが絶対幸せだし、釣り合わないとしたら俺の方だ。……でももしあんたの言ってることが本心なら……その気持ちは受け止められない」
(グッと拳を握って相手を見詰めては短く息を吐き「……俺は、“友達として”なんて無理だ。……我慢できない。…あんたと一緒にいたらきっと抑えがきかない」と。
散々相手から離れようとしたくせに身勝手なのは重々承知だが欲は止まらず。
「……もし、…まだ俺なんかのこと好いてくれてるなら……そのストラップ、俺に譲ってくれないか?」
(期待と不安の入り交じる瞳で相手を見てはジッと返答を待つ。
そして相手が何か言おうと口を開きかけた時、二人の携帯が同時に鳴り微かに肩を揺らして画面だけ見ると兄からのメールで件名に“至急”とあり。
至急と言われ本文を見ないわけにも行かず、躊躇い気味に見てみると《父さんと母さんが家で待ってるから二人で来てね♪父さんもう既に待ちくたびれてるからはやくねー》とあり。
なぜ二人でいるのを知っているのだろうと疑問に思いつつも“至急”よりも相手の返事が聞きたく携帯を置き相手に視線を戻して。
>露木
( 嫌われてなかったと言う安心感に包まれ、改めて相手に気持ちを伝え様とした所で相手と全く同じタイミングに受信音が鳴り響いては自分も携帯を取る。
兄からの明るい文章とは裏腹にその内容にサッと青ざめては咄嗟に自分の財布を取り出し持ち金を確認する。
出来る事なら行きたくない、自分は行かないと告げようとした時再びメールが届いて。
《絶対来てね》
( 絵文字が一つも無い文章から断れる雰囲気では無く髪をくしゃりと掴んでは相手に向き直り「…何か、…来いって言ってるし………行くか」と。
( 相手と共にカフェを出ては自宅への道を歩くも気は重く何を言われ何をされるのだろうかと。
人気が無いのを良い事に、隣に居る相手の手を取っては何とか自分を落ち着かせて。
自宅の玄関前、中々踏み出せずに居た所で扉が開き兄が満面の笑顔で出迎えて来て。
『さ、入って入って』
「綸………俺、………」
『大丈夫だから安心して』
( グイグイと手を取られては何時ぶりか綺麗に片付けられた部屋へと通され、リビングにて煙草を咥える父と目が合っては反射的に固まって。
『ほら、大丈夫だから座ってよ』
( 兄に促されるがままに父と向かいのソファーに腰を下ろしてはフローリングの床をジッと見詰めていて。
その数分後、懐かしい紅茶の香りが鼻腔を擽ってはゆっくりと顔を上げる。
何時か遠い昔に見た優しい表情の母親が目に入っては呆気に取られた表情をしてしまって。
『繿、この紅茶好きだったでしょ??』
( 名前を呼ばれたのは何年ぶりだろうかなんてぼんやりと考えてた所、父が相手に目を向けては以前相手が拾ってくれたタバコケースを取り出し軽くテーブルに投げて。
『手前が拾ったんだろ、一応礼は言ってやる』
( 見覚えのあるタバコケースを驚いた様に見詰めるも父の目線がこちらに来た途端強ばりまた金を要求されるものだと勘違いしてしまっていて。
「…父さんごめん、…俺今そんなに金無くて」
『……………』
「………足りない分は後から…」
『要らねぇと言った筈だ』
( 言葉を割った父の返答が理解出来ずに兄に視線を向けるも兄は困った様に微笑んでいて。
>桐崎
(相手からの返事を早く聞きたいと思うも相手の恐怖の入り混じった表情から、今は我慢して相手の気が少しでも落ち着けばと手を握り返す。
相手の実家に招かれるも果たして部外者の自分が居ていいのかと気まずい空気の中、ジッと湯気の立つ紅茶に視線を落とし相手の父が話しだすのを待ち。
しかし流石相手の父と言うべきか、口下手のせいで中々話を切り出さず、どんどん相手の顔色が悪くなるのが分かれば余計なお節介だと理解しつつ「あの…」と話を促そうとする。
と自分の声に弾かれたように相手の父が咳払いをして“手前に後押しされてたまるか”と軽く睨まれてはフゥと煙草を拭いて。
『……前に手前のせいで会社クビになったとかどうとか言ってたよな?…思い上がんなよ。
誰が手前ごときに足引っ張られるかよ。首を切られたのは俺が気に入らねぇ上司を殴り飛ばしたからだ。こっちから辞めてやったんだよ』
(ぶっきらぼうに続けては “畜生なんで俺がこんなこと…”とブツブツいいながら新しい煙草を取り出して火をつけ『……見世物は全部脅しでやったことだ。だからもうやる必要もない。……チッ、もういいだろ。俺は謝らねぇぞ。……あとは綸からでも聞け』と一切吸わずに終わった煙草を灰皿に押し付け、早々に別室に姿を隠してしまい。
その様子に兄は笑いを堪えながら『あれでも精一杯謝ってるんだと思うよ』とどこか穏やかな声色で述べ、借金をした理由やずっと脅しをかけていた闇金が漸くこの家から手を引いたことを相手に告げて。
そこに相手の母がやってきては幼少期よく作っていた手作りプリンを相手の前に置き。
『……本当に今まで御免なさい。駄目な母親でごめんね。………すぐに許して貰えると思わないわ。少しずつでいいの貴方達の話を聞かせてちょうだい。……今日の夜、良かったら一緒にご飯食べましょう。繿と綸の好きな物作るから』
(相手の母はやや涙ぐみながら言うとほんの少しだけ相手の髪を撫でるように触り。
(その光景をぼんやり眺めていたがハッとなってはこの空気の中、異物でしか無い自分がいてはかなりまずいと思い「……す、すみません。俺用事思い出したので…、お邪魔しました」と小さな声で早口に述べては逃げるように相手の実家を出て。
>露木
( 両親からの思いも寄らない言葉に呆気に取られた表情をするも段々と思考が整って来ては自分の肩にポンポンと手を乗せる兄を見詰める。
慌てて出て行った相手を咄嗟に追い掛けようとしては母が自分の手を掴んで来て『お友達にもお話したい事合ったのよ、今日が無理なら今度連れて来て頂戴ね』と。
まだきごちない表情でコクリと頷いては直ぐに相手の後を追い掛けて。
( 自分が相手を探しに街に向かう頃、父も家を出ては自分より早く相手を見付け後ろから相手の腕をグッと掴んでは相手を無表情で見下ろし。
『お前への話が終わって無かった。…少し付き合え』
( 強引に相手の手を取っては近くの喫茶店へと入り相手に座る様に目伏せしてはドカッと腰を下ろして。
『お前の名字、“露木”だろ。母親と父親に良く似てるから直ぐに分かった』
( 淡々と告げ相手の顔をジッと見詰めては『迷惑掛けたな』と珍しい言葉を言い。
改めて向き直りなぜ相手の両親を知ってたのかを言おうとした所で父の携帯の電話が鳴り響いては無言で席を立ち電話に出る為離れた所へと行って。
電話の相手は叔父、父の本心を知っては何度か共に酒を飲み交わしたいと電話を入れていて。
しかし今回の電話は違い、叔父が父に子供の頃に教えてた剣術を活かし師範の道場を手伝って欲しいとの事で。
『あ??俺が餓鬼共に教えられる訳無ぇだろ、他当れ』
( 適当に流すもしつこい叔父の申し出に負けては会って話をする事のみ了承し、相手の元に戻るなり『悪いな、用事が入った』と言って。
二人分の代金を支払いさっさと喫茶店を後にして。
>桐崎
(突如相手の父に喫茶店へ連れられ両親を知っている風に言われては叔父との接点も知らなかったため訝しげに父の顔を見る。
結局、何も分からないまま退席されてしまっては相手の返事もまだだったこともありモヤモヤした気持ちが更に増幅すればやや苛々したように店を出て。
ホテルに戻るまでの間、相手の父の“両親に似ている”という言葉が引っ掛かっては気持ちが落ち着かず爪を噛む。
母ならまだしもあの父に似ているなんて…認めたくない。
金に目が眩んだ父のせいでどれほど妹や母そして自分が周囲から誹謗中傷を受けたことか。
そのせいで妹の病状は悪化し、母は元々心が弱かったため鬱病にかかり今でも精神科に通い時折おかしくなる。
そうして散々家庭を荒らした挙句、父は多大な負債を残しぱったり姿を消した。
父が犯した横領の証拠隠滅とも知らず無理矢理能力を使うことを強いられた日々が過ってはそれを握り潰すように拳を握りホテルへと足を急がせる。
相手に会いたい、そう思うが流石に今日は部外者の自分が居ては邪魔になるだろうと携帯を取り出し《今日でこっちでのバイト終わりだから先にアパートに戻る。アパートの住所ナツから聞いてるよな?いつでも来てくれていいから、家族でゆっくりできるときゆっくりしとけよ。……あの返事、待ってるから》とメールを送りホテルで荷物をまとめると駅に向かい電車に乗って。
>露木
( 結局相手の姿は見付けられず大人しく実家に戻れば母親が「お帰り」と出迎えてくれて。
生まれて初めての事に戸惑いつつ「明日、そろそろ寮に戻る」と短く言えばリビングにて落ち着き無く座り。
まるで葬式かとでも言いたくなる程に静かな食卓を囲んでは部屋の一室にて布団に入って。
( 翌日、荷物を纏め家を出ようとした所であれから口も聞いて無かった父が来てはパーカーのポケットから煙草を抜き取られる。
『餓鬼が一丁前に煙草吸ってんじゃねぇよ』
( 父の舌打ちと共に「………じゃあ俺、帰るね」と短い挨拶をした所で『…いつでも帰って来い』と驚く様な台詞が耳に入っては父の方に振り向くも既に背を向けられてしまってて。
どこか擽ったい心地で自宅を後にし、帰りがてら相手に会いたいと思ってしまっては昨夜のメールをジッと見詰めアパートに寄る事にして。
( 昼間と言う事もあり相手もこちらでのバイトに戻ってるのだろうか、アパートのチャイムを押しても相手が出る事は無くどうしようかと項垂れる。
特に時間を潰せる様な場所も無くバイトが終わる時間も分からない。
それでも一目相手を見たいと言う欲には逆らえず近くのコンビニにて立ち読みを初めては一応相手に《いきなりごめん、少しで良いから会いたい。今あんたの家の近くのコンビニに居るから終わったらメールして》とメールを送っておいて。
>桐崎
(昼過ぎ、バイトを終え相手のメールに気が付くとすぐに《今バイト終わった。まだコンビニ?すぐ行くから》と返信して走ってコンビニへ向かい相手の姿を見つけるなり肩を叩いて。
「…ごめん、待たせた。…ここじゃ何だからうち来て」
(返事を聞いていないし、まだ後ろめたさがあったため目は合わせられずスタスタと先を行っては相手を狭いアパートの一室に招き温かい御茶を淹れて。
「…飯、まだだよな?夕時だし何か作るよ」
(元の関係には戻れないかも知れないのに少しでも長く相手といたいと思えば返事を待たずに台所へ向かい簡単な煮物や和物を作って御飯と一緒にちゃぶ台の上に並べる。
黙って相手の正面に座っては早く返事が聞きたい筈なのに「体調はもう大丈夫か?…怪我は?」とか「……あれから親とは話せた?」と本題から話を逸らして。
やや空回りするように一人しゃべり続けては、ふと先日喫茶店で相手の父が話し掛けたことを思い出し「そう言えばさ、あんたの父親って…俺の親のこと知ってたりするの?」とわざと何気ない様子で尋ねて。
しかし親の話なんてお互いに今まで何となく避けてきた話題。
相手に至っては最近溝を埋め始めたばかり。
何も聞いているはずないと「いや、なんでもない…。それよりさ、また師範に道場来るよう言われたんだよな。…あんたのこと気に入ってたみたいだしまた顔出してやってよ」と相手の父も誘われていることは知らずに、相変わらず返事を聞くのを恐れて空回りを続け。
>露木
( 相手のアパートにて夕飯を振る舞われ相変わらずの自分好みの味に頬が緩みそうになるのを抑えては相手が何気無く父の事を問い掛けて来るのに首を傾げる。
何故そんな事を聞いてくるのだろうと記憶を巡らせふと浮かんだ記憶に箸を止める。
定期的に自宅に訪れてた男の姿、端正な顔立ちの男が玄関口で父と話をしてる姿を思い出すもはっきりとした顔立ちは思い出せず流石に相手に関係してる訳無いかと。
( 夕食を終え片付けを手伝った後、相手に返事をする為に来たのだったという目的を思い出し相手の腕を掴み引き寄せては目前に座らせる様な体制になり。
その美しい顔立ちに一瞬見惚れてしまい、慌ててバッと視線を逸らして。
「………その、これ。……………あのさ、改めて言うけど………俺本当にあんたが好きだ。………友達としてとかじゃなくて………」
( ストラップを手渡し思いを伝えた所でふつふつと羞恥が沸き上がりガバッと立ち上がれば「そ、…そろそろ…帰るよ。…こんな時間だし迷惑だよな…ごめん」と。
荷物に手を玄関へ行こうとするもピタリと動きを止め相手に向き直っては僅かに屈み触れるだけの口付けをし真面目な表情で相手を見詰めて。
「………俺、割と本気だから」
( 真っ直ぐに告げた所でもう迷わないと心に決めては今度こそ玄関口へと向かい。
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