xxx 2014-12-29 00:12:16 |
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>露木
( 翌日、真っさらになったベッドをぼんやりと見詰めてはこれで相手と関わる事は無いだろうと。
静かに涙を流す妹の柔らかい髪を撫で「大丈夫だよ、彼奴はあんたが何よりも大切なんだから」と。
折角見舞いに来てくれた所申し訳無いが一人になりたいと告げ病室にて窓の外を見詰める。
結局は何も変わらなかったのかもしれないとどこか冷静に思ってはあれからずっと身に付けてた揃いのピアスを外して。
( 人より早く段々と治癒する自分の身体を恐ろしくも感じつつ、しかし犬や猫に対して人間の薬が強いのを思い出しては何となく定理を理解して。
訝しげに見詰める看護婦や医者達もどこか不審に思った様で何となく目線を感じて。
半月後には退院も出来るらしく最近ではリハビリにも辛さを感じる事も無くなっていて。
心に穴が開いた様に物足りない日々を送りながら、それでも毎日の様に見舞いに来てくれる青年と妹に申し訳無くなり。
( 翌日、青年よりも先に見舞いに来てくれた妹に「あんた家遠いだろ、そろそろ帰らないと不味いだろうが」と人事の様に呟く。
『うん、…でもやっぱり兄さんとも顔を合わせて帰りたいの。だって………こんなの行方不明と一緒じゃない??』
「…………………………俺の所為なのかもな」
『え??』
( きょとんとする妹を正面から見詰めるもその顔は相手その物、よく似た容姿に理性を無くしては「………菊、ごめんな」と抱き締めてしまって。
『待って、…私兄さんじゃ無いわよ』
「…………………だよな、…分かってる筈なんだけど……」
『………』
( 悲しそうな顔で自分の頭を撫でる妹に甘えてしまってはそのまま僅かな時間を過ごして。
( 青年が来るなり何事も無かったかの様にぼんやり外を見詰めて。
そう言えばまた両親から“帰って来い”と言う連絡が来てたなという事を思い出しては怪我が治り次第出向かなければならないなと。
>桐崎
(寮を出てから数日、相手の事が頭から離れることはなく女々しくも相手が退院するまでは一緒に入れば良かったと後悔する。
しかし時間を引き延ばしたところで相手への想いが募るだけ。
此れで良かったのだと親しい知り合いに会わないことを祈りバイト先に向かいさっさと終わらせるも店を出た所で妹に手を引かれ小さく目を見開く。
寒空の下、悲しげな表情をされ病弱な妹を突き放す訳にも行かずアパートに招いては炬燵の電源を入れ温かい御茶を出し。
「……どうしたんだよ。あんな所にいたら風邪引くだろ」
『どうしたじゃないでしょ。…黙っていなくなってみんなに迷惑かけて。何考えてるのよ』
「…………ごめん。でももう彼奴等とは会わないって決めたんだ。暫くしたら地元に戻るよ」
『………繿くんに何かあっても会わないの?』
「何かあったのか?!」
『……別に。…でもそんな反応するならせめて寮に戻ったら?』
(相手の身に危険がと思った瞬間取り乱してしまったことを情けなく思いつつ、やはり会うことは出来ないと頑なに首を横に振り。
すると妹は小さく溜息を吐き『…じゃあ私、繿くんのこと好きになってもいいのね?』と。
微かに瞳を揺らし動揺するも平静を装えば「…好きにすれば。彼奴、いいやつだし、ナツとなら馬が合うかもな」と微笑み、時間も遅いため泊まっていくよう言っては他愛のない話をして相手の話題を遠ざけて。
(翌日昼近く、妹は相手の病室に見舞いに来ていつものように楽しい話題を振っては、りんごをうさぎの形に切って相手に差し出し『可愛いでしょ?』とクスクス笑い。
しかしふと真面目な表情をしては膝の上でキュッと両手を握り『昨日ね、兄さんに会ったの』と小さく呟き話始め。
『元気だったけど…なんだか寂しそうだった。……今日もね。見舞いに来るか誘った時、断られたけど本当はすごく繿君に会いたいんだと思うの。……寝言で“繿”って何度も呼んでたから』
(俯き気味に言うもハッとなっては『御免なさい。余計なことよね』と微笑むもそっと枕元に自分のアパートの住所と新しい連絡先が書いた紙を置いて。
『じゃあ私、ハナと会う約束してるからそろそろ行くね。元気になったらまた一緒にお出かけしよ』
(ニコリと自分と良く似た小さな微笑みを浮かべては『リハビリ頑張ってね』と相手の髪をポンと撫でて病室の扉に手を掛けて。
(その頃自分はバイト先にて店長から“別店舗のバイト数人が急に辞めたから数日間応援に行け”と言われていて。
住所を見れば、あまりいい思い出がない場所。しかも相手の地元。
もしかしたら会うかも知れないと懸念するが相手は地元を嫌っていたし来ることはないだろうと。
そもそも店長からの命令には逆らえないかと渋々頷いて。
>露木
( 妹に渡された紙を見詰めてはまだ期待してしまう自分が情けなくなり唇を噛む。
相手とはもう会わないと決めたばかり、何度も同じ事を自分に言い聞かせては開かれた扉と共に担当医が入って来て診察結果の紙を渡されて。
『驚いたよ、こんなに治癒力の早い人は初めて見た。……………君本当に屋上から落ちたんだよね』
「……………はい」
『別に疑ってる訳じゃ無いんだ。ただ本当に驚かされてね。退院はいつでも構わないよ、もう歩けるんだよね』
「…まぁ、普通に歩けます。………出来るなら直ぐにでも退院したいんですけど、…その…両親に呼ばれてて」
『……………成程、分かった。でも一つだけ医師として聞かせて貰うね。その身体の傷は両親からかい??』
「……………違います」
( 静かにはっきりと告げては医師は自分の頭に手を乗せ『分かった。退院の準備をしようか』と。
( 数日後、無事退院するも実家に戻る事は兄にも青年にも告げずにいて。
前回迷惑を掛けたばかり、流石にそう何度も何度も迷惑は掛けられないと。
金を稼げは数日でちゃんと解放して貰える、父の言う事に逆らえば後々面倒なのを知ってるが為今回の呼び出しにも逆らえず。
電車を乗り継ぎ重たい足取りで実家の玄関を叩いては幸い父は居なかった様で扉を開けては中へと入り。
「母さん、ただいま」と声を掛けるも自分に無関心の母は何も言わずにいて。
休む暇など無く父が帰宅しては咄嗟に身構えるも金を要求されるだけで暴力は特に無く安心する。
『誰の許可を得て家に上がった。犬如きが家を汚してんじゃねぇぞ』
( 父の逆鱗に触れてしまうと思い慌てて「…悪い。今出てく。今日は遅いし明後日までに金持って来るから」と冷静に告げる。
舌打ちと共に『……………繿、』と名を呼ぶ父の声がしたがまさかあの父が自分の名前を呼ぶ訳無いと。
「………父さん、今呼んだ??」
『んな訳ねぇだろ。目障りだ、さっさと出てけ』
( 顔を伏せたまま言う父に無表情で背を向けては特に行く場所も無く街を彷徨く。
有り金は先程渡してしまった、ビジネスホテルに泊まる現金さえ無く野宿するしか無いかとどこか冷静に居てはこの寒さでは流石に無理かと。
誰か適当に引っ掛けようと最低な事を考えては行き交う人達を見詰め金持ちそうな人を探すもこれでは昔と同じだなと自分に呆れて。
>桐崎
(別店舗のレンタルショップ、此処も裏とつながっているのか到着するなり柄の悪そうな店長に『逃げたバイトの奴も裏事情知ってたんだけどさ、今朝ニュースで首吊りしてるのが自宅で見つかったってよ。………お前も気をつけろよ』と不気味に笑み肩を叩かれて。
ゾワリと背筋が冷えるも感覚が麻痺してきたのか危機感は薄くバイトに打ち込むことで相手の事を考えないようにして。
(昼、棚戻しをしている途中、客が前を見ていなかったのか背中にぶつかってきて客の持っていたDVDが落ちる。
そのDVDは“温かい家族”を描いた内容。特に気に留めず拾い上げ「申し訳ありません。お怪我ありませんか?」とこちらから謝り顔を上げて微笑んだところ見覚えのある男の顔に一瞬動揺する。
高い身長に相手によく似た顔立ち…相手の父。
相手の父とは自分が女の時しか会っていないためこの姿では面識がない。
相手を苦しめ痛め付けた張本人だと思うと怒りが沸き立ち、つい睨みつけそうになるもふと父の腕に地面に擦れて出来たような掠り傷が目に止まり。
自分でも何故そうしたか分からないが次の瞬間父の腕を取り持っていた絆創膏を傷口につけて「あなたがこのDVDを見ようとするなんて意外です」とつい父を知ったふうに零していて。
ハッとなった頃には遅く『うるせー、ただ見てただけだ。気安く触んじゃねぇよ』と怒鳴られDVDを突き返されては相変わらずの無表情で去っていき。
(夜、バイト終わり。何故昼間あんなことをしてしまったのか自分を責めつつ数日間格安で連泊するホテルへと足を進める。
その途中、慣れ親しんだ銀髪が見えた気がしてまさかと通り過ぎようとするも、確かに相手の姿を捉えては足を止め小さく息を飲む。
凍えるような寒さの中、病院にいる筈の身体でいつからそこにいたのか、暗がりの遠目から見ても身体が震えているのが分かって。
相手の父のこと、何故相手がそこにいるのかは何となく想像がつく。
“自分は何も見ていない”そう言い聞かせ目を閉じるも相手を愛する心が相手を見過ごせる筈がなく、下を向いたままスタスタと近寄ると自分のマフラーを投げつけ冷たい手を取って。
そのまま無言でホテルに入りロビーで事情を話すと有無を言わさず借りた部屋に連れ込んで温かい御茶と買ってあったおにぎりの一つを相手に投げ渡し。
「……、…」
(目線を合わせないまま何か言いかけるも“近付かない”と言われたことを思い出しては狭い室内を見回し唯一個室として分けることの出来るユニットバスの扉に手を掛け閉じこもろうと。
>露木
( そうそう金持ちそうな人など居らず、それでも過去に関係を持った人に頼るのは嫌で行き交う人達を吟味しては溜息をつく。
しかし見慣れた顔が近付いて来てはマフラーを投げ渡され何故ここに居るのか、身体は平気なのかと聞く前に強引に腕を掴まれて。
連れて来られたホテルの一室、飛んで来たコンビニの袋を咄嗟に受け取っては部屋を見渡し浴室に向かおうとする相手の行動にそれとなく理解しては腕を掴み。
顔を見合わせるのも嫌なのだろうという勝手な勘違いをしては「ちょっと待てよ。…何なんだよ、いきなり」と小さく呟く。
優しい相手の事、この寒空の街の中一人でいた自分をほっとけ無かっただけなのだろうと。
自分で無くとも手を差し出していただろうし寧ろ自分で無かった方が気を使う事も無かったのだと。
「あんたが取った部屋だろ、…何であんたが気を使うんだよ」
( これ以上相手に迷惑や負担を掛ける訳には行かないと「ちょっと浴室借りるな」と告げては携帯を取り出し今まで関係を持った男女へと片っ端から電話をしていって。
浴室故に勿論声は響いてしまい相手には丸聞こえになってしまうのだが廊下で話せる内容でも無く。
「あ、もしもし。俺の事覚えてる??…そ、またこっちに暫く居る事になってさ。良かったら今晩俺の事買ってくんない??」
( 数人目の女に話を呑んでもらっては指定されたホテルの住所を言われて。
この女には以前『何よこの傷、繿って結構無様な身体してるのね』と馬鹿にされた記憶があり、それと共に中々帰してくれない性格を思い出しては憂鬱になり。
しかし何とか表情を取り繕っては浴室の扉を開け相手に向き直り「今“友人”に電話したら泊めてくれるって。いきなりごめんな、あんたは兎に角ゆっくりしろよ。………疲れた顔してる」と頬に手を伸ばすもハッとしては手を戻し。
気不味い雰囲気の中、「…ありがとな」と小さな声で言えば離れたくない気持ちを押し殺して部屋を出て行こうと。
>桐崎
(あんな酷い事をしたのに普通に話してくれる相手の優しさが心に滲みて“もっと”と醜い欲求が生まれては去り行く相手の腕を掴みベッドに押し倒す。
相手の片腕を押さえ付けたまま勝手に相手の携帯を取り、着信履歴から一番最近の番号にかけると『あ、繿?今から家出るとこ』と女の声が聞こえ「御免、行けなくなった」と嫉妬を抑え短く呟いては一方的に通話を切り携帯をベッド脇の椅子に投げて。
「…泊まらせてくれるのに今家を出て、あんたを買うって……どんな“友人”だろうな」
(無表情に述べギシリと安いベッドと軋ませては互いの鼻先が触れ合う寸前まで顔を近づけ「なんでそんな見え見えの嘘吐くの?」と単調な声で問い掛けるもそう長くは無感情で居られず微かに眉を下げて。
「………あんたには身売りみたいな真似、して欲しくない…」
(自分勝手な願いをやや震える声でぶつけては少しだけ身を離しずっと触れたかった愛しい銀髪に恐る恐る触れて優しくゆっくり撫で。
素直に“愛してる”と言えたらどんなに良いか。
想いを告げようと開きかけた口を閉ざしては相手から退いて予備のルームキーと万札を数枚押し付けるように手渡し気まずげに目を逸し。
「…また前みたいに変な奴に絡まれて赤城と綸に迷惑かけたくないだろ?泊まる場所決まったほうが楽だろうし。………俺が嫌なら空気と思ってくれればいいから。俺も必要以上に話し掛けないようにする」
(淡々と述べつつ本来なら相手と話す資格すらないのにと自分が憎くなっては「…話し掛けて御免…」と目を伏せて。
(その後、気まずい空気の中放おっておくと床で寝そうな相手を無言でベッドに寝かせては自分も相手に背を向ける形でベッドに寝そべり明りを消す。
此処最近ずっと相手を失う同じ夢ばかり見て寝不足だったが背中に感じる相手の存在のおかげか寝る前に来ていた震えはなく睡魔で思考がぼんやりとし始め。
「…また…あの父親に呼び出されたのか?………見世物、するように言われたの?」
(寝惚けたように突如ぼやけた小さな声で問い掛けては短く息を吐き「……俺に…頼ってくれて良いから……。……頼って欲しい」とポツリポツリと零し。
そうするうち本格的に思考が薄らいでいけばもぞもぞと背を向けたまま少しだけ相手に身を寄せ「………“化物”なんて思ってないよ。……あんたはすごく…綺麗で…恰好良くて…………、俺なんかが…傍に居て……ごめんな」と全く脈絡のない言葉を呟いて。
瞼がどんどん重くなる中、眠る前に相手の声が聞きたいなんて欲が生まれては起きているかも分からない相手の反応をジッと窺って。
>露木
( 一方的に電話断りの入れられては相手の問にも答えられないまま眉を下げ視線を逸らす。
気不味い時間を過ごしながらベッドへと連れられ相手と背を向け合った状態で遠慮がちに横になっては小さな声で紡がれる言葉をぼんやりと聞いていて。
相手の睡魔が伺える声色に微かに微笑むも、まだ期待をさせるのかとどこか皮肉に考えてしまって。
「…あんた、本当に何なんだよ。折角距離置いてやるってのにそんな事言って来るし…訳分からない。………そんな事言われたら………俺だって諦められなくなんだろうが………」
( 声が掠れる程の小さな声で告げてはそれから暫く後、相手の寝息が聞こえて来て。
ゆっくりと起き上がり寝息を立てる相手に多い被さり触れるだけの口付けをしては自分も段々と睡魔に飲み込まれて行って。
( 翌日、相手を緩く抱き締めた体制のまま目を覚ましては同じく目を覚ました相手に気付かず後ろから肩に額を乗せる様にギュッと抱き締めて。
段々と頭が覚醒して来てはのそのそと起き上がりさっさと金を稼がなければならない事を思い出して。
顔を洗い終えた所で相手が起きてた事に漸く気付いては昨夜渡された万札を相手に手渡して。
「“身売りみたいな真似して欲しくない”んだろ??その言葉そっくりそのままあんたに返すよ。………俺だってずっとそう思ってた。あんたにだけはそんな真似して欲しく無かったんだ」
( どこか冷静に告げては僅かに表情を緩め「泊めてくれてありがとな、凍死しなくて済んだ」と軽く笑い「今度礼したいんだけど…顔合わせない約束だったもんな。かと言って金なんか受け取らないんだろ??………なんか適当に思い付いたら言って、出来る事ならするから」とだけ言い残し部屋を後にして。
( 街に出るなりどうやって金を作ろうかと頭を悩ませるがやはり見世物だけは嫌で。
やはり誰か引っ掛けるしか無いだろうかと表情を強ばらせてた所、背後からグイッと腕を引かれてはそこには父が居て。
『……………おい、………ら』
「金なら…っ今からちゃんと持って来るから」
『…………………』
「ちゃんと…約束は守るから」
( 逃げ出す様に父の手を振り払っては父の舌打ちが聞こえてきて。
父が自分の名前を呼ぼうとしてた事などにも気付かず恐怖に負けては早く金を用意しなければと。
>桐崎
(相手が去った部屋、虚しさが急激に襲っては相手に会えば余計悲しくなると分かっていたのに自分は何がしたかったのかと、未だ相手のぬくもりが残る肩をグッと抱く。
それでも食事は大丈夫なのか、また酷い目に合わされるのではないかと思うと気が気でなく、性懲りもなく相手が渡したホテルのルームキーを使ってまたこの部屋に戻ってくることを期待しては小さな冷蔵庫の中にペットボトルの御茶と菓子パンを入れて“自由に食べて”とメモを残して。
(昼前、バイト先に向かう途中、路地裏から“化物”と怒鳴る罵声と暴行する音が聞こえて来ては胸騒ぎがしてそっと顔を覗かせる。
するとそこには闇金と思われる男達に相手の父が殴り蹴られる姿があり小さく目を見開き。
『いつになったら全額、金返せんだよ!!さっさとしねぇとマジでてめぇの息子を一生闇に売り飛ばすぞ!!』
『別にいいだろ?その“化物息子”のせいで会社クビになったんだもなぁ?どうせ息子のこと恨んでんだろ?』
(ゲラゲラ下品に笑う男たちは再び相手の父に暴行を加えては胸倉を掴み『いつもみたくさっさと“化物”を見世物にすりゃあいいだろ?店なら紹介してやるからさぁ。来なかったらあんたの奥さんどうなるかわかんねぇぜ?』と脅し再び殴ろうとして。
そこで咄嗟に物陰に隠れて携帯を取り出し男達に聞こるよう警察を呼ぶ振りをしては慌てて逃げて行ったのを見計らい父に駆け寄って。
「…大丈夫ですか?」
『…ッ誰だよ手前は。勝手首突っ込んでんじゃねぇよ』
(ハンカチを差し出すもバンッと強く押しのけられては後ろに大きく尻餅をつく。
まだ混乱する中、立ち去ろうとする父に「息子さん!!……息子さんのこと大事にして上げてください」と思わず叫んでいて。
この姿では面識がないに等しいのに絶対に可笑しいと思われた。
しかも余計なお節介。怒号が飛ぶと身構えていたが父は何も言わずにその場から立ち去って。
(その頃、街では清楚かつ優艷な雰囲気を持つ女が10㎝のヒールの音を響かせながら相手に近付いていて遠慮がちにトントンと相手の肩を後ろから叩き。
『あ、あの貴方一人?……突然ですごく申し訳ないんだけどお願い、聞いてくれないかしら?……あなたみたいな男前さんを探してたの』
(控えめながら相手の目をまっすぐに見ては相手が口を開く前に店の名刺を差し出し『実は私、この近くでホステスやってるんだけど最近お客さんにストーカーされてて……、彼氏を紹介してくれないと諦め切れないって言われたの。だからその…暫く私の恋人の振りをしてくれないかしら?…沢山迷惑かけると思うしお金なら沢山だすわ』と。
女が相手に渡した名刺には店の名前の下に、女の名前“希久(きく)”とあって。
(/本体失礼します。いつもながら訳の分からない展開&設定付けすみません;
そしてそして…、久々の花魁お菊を現代ではホステス“希久”として登場させて頂きました。
売れっ子のNo.1ホステスでしつこい男に付き纏われ、繿君に助けを求めたって感じです。
あとまた勝手に繿君の家庭に借金があることにしてしまったのですが宜しかったでしょうか;;
>露木
( 父の逆鱗に触れる前にさっさと金を用意しなければと気持ちを焦らせ、やはり見世物か身売りどちらかを選ばなければならないと。
重たい足で立ち上がろうとした所、座り込んだ体制のまま背後から肩を叩かれては振り向き。
一番最初に目に入ったのは相手と良く似た髪色、今朝まで近くにあった温もりをふと思い出しては一瞬顔を俯かせるも“お金なら沢山出す”と言う言葉に反応しては目前の女をジッと見詰めて。
渡された名刺にある名前に惹かれ「………分かった、引き受ける」と返事をしてはそれでも尚、相手の陰を追い続ける自分が情けなくなり。
『本当??助かるわ、いきなりごめんなさいね。……………これ手始めに受け取ってくれるかしら』
「……………何だよこれ」
『酷く面倒な事を頼むんだもの、受け取っといてくれるかしら。…それより貴方こんな所に一人??』
「別に」
『良かったら私の家に勝手に泊まりに来て??何でも勝手に使ってくれて大丈夫だから。………それに私も家に一人って怖いのよ』
( トントン拍子で進む話に悩む暇など無く、二つ返事で「分かった、悪いな」と応えて。
しかしいくら金に困ってると言えど見ず知らずの女から金を受け取るのは気が引け「これ、悪いけど借りる。…ちゃんと返すから」と。
『返すだなんて…寧ろそれはお礼よ??』
「でもやっぱり駄目だ。………今は金無いけど俺に出来る事ならなんでもするから」
( 安心した様に微笑む女を仕事先まで送り届け帰りに迎えに来る約束をしては先程受け取った厚い封筒を片手に父の元に向かって。
( 自宅へと向かう途中の路地にて、偶然父の姿を見付けてはそちらに駆け寄る。
その怪我の様子に何が合ったのかと疑うが睨み付けられてはバッと下を向き封筒を突き出して。
「…か、金。………遅れて悪かった」
『…………………………』
「………足りないか??」
( 父が一瞬表情を歪めるもバッと封筒を受け取られては中身の三分の一を無理矢理渡されて。
意味が分からず父を見詰めるも父は鬱陶しそうに自分を見詰め何か言い掛けた口を閉じて。
そのまま去って行く父の後ろ姿を見詰めては結局訳の分からない金をポケットへと雑にしまって。
( 自分がホステスの女の仕事が終わるまで時間を潰してるその頃、父は自宅に戻るなりイライラしながら煙草を咥えぼんやりとする母を見詰めて。
『……………繿と、…顔も合わせられないのよ』
『俺の所為か』
『……………どうなのかしらね』
『彼奴は化物だから………隠して育てるには金が必要だったんだよ。ただ自分を養う為に両親が借金をしたなんて知れたらそれこそ彼奴は………。………良い具合に嫌われてんだ、これで良い』
( 一人言の様にボソリと呟いては窓の外を見詰める母から視線を逸らし、今日相手が必死に叫んでた言葉を思い出しては『…糞餓鬼が』と小さく零して。
( / 希久ちゃんの件了解しました!!!
いつもながらの素敵展開に惚れ惚れします、むしろこちらが相変わらずの駄ロルで涙が((
借金の件も全然大丈夫ですよ(´∀`)
何気無く設定盛りました←ごめんなs(笑)
希久ちゃんにどことなく菊君を重ねてるヘタレ野郎になってますがお付き合い頂けると嬉しいです…(´・∀・`)
>桐崎
(路地裏から父が去った後、また余計な事をしてしまったと俯いたところ足元に年期の入ったタバコケースが落ちているのが目に止まる。
拾い上げてみて何となく相手の父の物だと思えば次会う保証などないのに持っておいたほうがいいだろうと鞄にしまってバイト先に向かって。
(夜遅くバイトを終えホテルへ向かう途中、昼間の路地裏での事や相手の事を考えてモヤモヤした気持ちでいるとふと向かい側の道路に見知らぬ女と腕を組んで歩く相手の姿を見つける。
その親しげな様子に思わず足を止め目で追っては女の自宅らしきアパートの一室に入っていくのが見え、見事に“付き合ってる”と勘違いして。
地元に戻ってきたのも彼女に会うためだったのかもしれないとまで思い込んでは身勝手にショックを受けて足早その場から離れる。
良く前も見ずスタスタと歩きもう少しでホテルというところ、突如腕を掴まれ振り返ると兄が居て咄嗟に腕を払って逃げようとするもそのまま自分が借りていたホテルの一室に連れ込まれて。
『何で逃げるのさ。探すの大変だったんだからね。ナツさんから連絡先聞いて何度も電話もメールもしたんだよ?』
「……俺といると…あんたに迷惑かけるから」
『そんなの今更じゃない。っていうか全然気にしないし』
「…………」
(兄は地元に来るのを渋っていたのに何故来たのか、そんな事を考えながら冷蔵庫の前にしゃがみメモを剥がして相手の為に置いておいた御茶と菓子パンを兄に投げ渡して。
『…繿には会った?……繿もこっち来てるみたいなんだよね』
「………」
(無言で目を逸して鞄の中を整理しては昼間拾ったタバコケースを何気なく手に取る。
瞬間、兄が珍しく取り乱したようにこちらに近付いてきてバッとタバコケースを取り上げて。
『な、んで菊が此れ持ってんの?』
「……昼間…色々あって…その時、拾って。……………やっぱりあんた等の父親の?」
『…………小さい頃、繿と一緒に父さんの誕生日に買って……、でもあの時ゴミ箱に捨てられた筈…』
(兄曰く昔はろくに食事も作って貰えず食いつなぐ為に道端に落ちている小銭などを拾っていて、その少ない金から買ったプレゼントらしく。
『ご、御免。なんでもないや。これ返すよ。あ、お風呂先に入るね』
「綸…」
(タバコケースを押し付けられ早々に浴室に行ってしまった兄に何も言えず、結局自分は相手も兄も支えられず傷付けるばかりなのかと俯いて。
(その頃、ホステスの家では女が相手に料理を振る舞い何度も礼を言っていて。
『貴方みたいないい人に会えて嬉しいわ。なんか見た瞬間ビビッと来たのよ。でも彼女いるわよねぇ。…って彼女いるならこんな事付き合ってくれないか』
(クスクス口元に手をあて笑っては『好きな人はいるの?』と恋話を暫く続けた後、明日店にその客が来るため一緒に店に来て会って欲しいと頼み『その人ちょっと意地悪だから気分害しちゃうかもだけど、その分お金もだすし美味しいものおごるわ。いい店知ってるの』と笑って。
>露木
( ホステスの女の家にて、頼まれた事に二つ返事をしてはお手製の食事を口にしていて。
ホステスという仕事も大変だな、なんて思いつつ他愛も無い話をしては兎に角父に渡す分の金は手に入ると安堵の息を漏らして。
しかし何時までも見ず知らずの女から金を貰う訳にも行かないし恋人の振りをするだけなのにこの額は大き過ぎる。
申し訳無さそうにホステスを見詰めては「何でもするから、言ってくれれば…力になる」と小さく言って。
( 翌日、ホステスとの同伴出勤をしてはビップルームにて頼まれた酒を大人しく飲んでいて。
未成年というのを隠し、以前の仕事もありどこか慣れた様子で座ってれば直ぐにストーカーと思しき男が来てはいきなりに自分の胸倉を掴んで来て。
『お前が希久の恋人だぁ??ふざけた事言いやがって………希久は俺と付き合ってんだよ』
( 理不尽な言葉に確かに面倒な奴だと溜息を漏らすも力になると約束したばかり。
ホステスを強引に抱き寄せては「俺達一緒に住んでるくらいの仲なんだぜ??俺達のが“付き合ってる”って言えんじゃねぇの。………それとしつこい男は嫌われるから注意しろよ」と静かに述べて。
拳を振り上げるも店の中だと言う事を思い出したのか大人しく拳を戻し、それでもホステスを諦めるつもりは無いのか同じ席に腰を下ろしては酒を頼み始め。
( その頃、父はいつも持ってたタバコケースが無い事に焦りを見せては家を飛び出し昨日通った道をもう一度辿り探していて。
咥えてた煙草を噛み締め見付からない事に苛立ちを感じては煙草を捨て靴で火を消して。
路地を抜けた所でばったりと相手に出会しては眉間に皺を寄せ通り過ぎようとして。
>桐崎
(バイト帰りもしかしたら相手の父がタバコケースを拾いに来るかもと路地裏へ足を向けたところ父と出会し、通り過ぎようとする腕を咄嗟に掴んでタバコケースを差し出して。
「…此れ、貴方のですよね。…すみません、風で飛ばされたり掃除されたりしたらいけないと思って勝手に拾って…」
(言い終わる前にタバコケースをやや乱暴に奪い取られては『糞餓鬼が』と舌打ちし踵を返されるも掴んでいた腕は離さずに。
「なんで……なんで息子さんに本当の事を言って上げないんですか?…本当は分かり合いたいんじゃ…、だからあんなDVD手に取って見て…『うっせぇ!!てめぇは関係ねぇだろ』
(腕を振り払われ罵声を浴びせられては拳が振り上がるのを見て一瞬過去の誰かと重なりギュッと目を閉じ身構えるも痛みは来ることはなく恐る恐る目を開けると怪訝そうにする父の顔があり。
『お前…、あの時の“女”か?…その髪と瞳の色……間違いねぇな』
「………」
『何故、彼奴にそこまでする?お前は彼奴のなんだ?あの“化物”に付き纏って良いことなんてねぇだろ?』
「“化物”って言わないでください。…あのヤクザに息子さんを“化物”って言われた時、貴方すごく悲しそうにしてたのに。………それと俺と彼奴はただの顔見知りです。…俺が勝手に付き纏ってるだけで…」
『だったら余計なことすんじゃねぇ。失せろ!!!』
(怒号に小さく肩を震わせるも頭の中で“後ろだ!!”と自分と似た声がして、咄嗟に振り返り父を庇うようにしては頭に石がぶち当たりドロリとした血が額から流れ。
『おいおい、当てるのは後ろの糞親父だろ?何しらねぇ奴に当ててんだよ』
『向こうが勝手にあたって来たんだよ』
『オラ餓鬼!痛い目見たくなかったら其処をどけ!』
(昨日の取り立てのヤクザ達が迫って来ては何故か父を守らねばと思い護身術程度だが対抗しようと男達を見据える。
何処か遠い昔、以前もこうして相手の父を背にしていた気がして不思議な気持ちになりつつ男達の動きを注視して。
(その頃、女の店では男が相手に酒を大量に飲ませ嫌がらせをしては『その気持悪い髪の何処がいいんだ』と悪罵を浴びせていて。
『気持ち悪いなんて言わないで!とても綺麗じゃない。貴方は私の感性分かってくれないのね。…それに彼氏紹介したら諦めてくれるって言ったじゃない!』
『…こんな奴が希久の男なんて認めない!お前もいい気になるなよ!!糞餓鬼が!』
(唾を飛ばし口汚く嘲罵して相手に手を上げようとしたところ男の携帯が鳴り、罰が悪そうに舌打ちしては携帯に出て。
『なんだ!!!今取り込み中だぞ!』
『すみません。ですが少し面倒なことに……、実は“化物”の親の取り立てに来てるんですが少々邪魔が入りまして……『んなもんぶっ飛ばせばいいだろ!』
(荒々しく吐き捨て通話を切っては酒を一気飲みするも何か思い至ったように口角上げ相手を見て『お前、希久が好きなら何でも出来るよな?だったら其れを証明して貰う。歯向かうなら周りに迷惑かかるからな』と内容は言わずに。
男は闇金の頭。それはホステスも知らぬ事実で。
男は相手が父の息子だと勘付き、自分ごと痛め付けさせ相手に取り立てをさせるつもりで。
>露木
( やっと男達が帰り自分達も帰路を歩く中、ホステスが申し訳無さそうに何度も何度も謝って来るのに溜息をついてはくしゃりと髪を撫でてやり「別にどうって事無い」と応えて。
男達の企みなど知らずに明日の呼び出しを面倒そうにしては、それでもホステスにはそれなりに世話になったし逃げ出す訳にも行かないと。
ホステスお手製の食事を振舞われ風呂を済ませては暫くぼんやりとしてたが漸く眠りに付き。
( 翌日、ホステスを仕事先に送り届け自分は男に呼び出された先の住所を辿り街を歩く。
辿り着いたのは三階建ての建物に胡散臭い金融会社の名前がある場所で小さく首を傾げながら階段を登って行って。
扉を開けるなり目に入ったのは縛り付けられた父と相手の姿、二人ともボロボロだったが父の身代わりになった相手は酷い怪我で。
「………どういう、事だよ」
『おい!!!何でここに来た!!!さっさと帰れ!!!』
( 父の怒声と共に一人の男が父の腹部に蹴りを入れるのが目に入り、それを庇う様に相手が父の元に行こうとしてはもう一人の男が相手を取り押さえて。
昨夜の男が自分の元に来るなり髪をグッと掴んで来ては『お前の親が抱えた借金、返済日とっくに過ぎてんだけどよ。…お前が代わりに払えるよな』と。
「………は??」
『そいつは何も関係無ぇだろうが!!!こいつ(相手)も………早く解放しろ!!!金なら俺が…』
『そう言って何年経ったんだろうなぁ!!!』
( 尚も暴行を加えられる父親に驚きを隠せず呆然としては借金の根源も知らずに自分が用意した金だけでは足りなかったのかと冷静に考えは焦りを混ぜつつ静かに父を見詰めて。
「………なんで闇金になんて手出したんだよ」
『………っ、…兎に角…手前みてぇな化物には関係無ぇんだよ!!!さっさと出て行け!!!』
『そうは行かねえなぁ、息子さんにはしっかり金を稼いで貰わねぇとだからな』
「……………露木は関係無いだろ」
『いや、こいつも解放する訳には行かねぇよ。お前の親父と一緒にいたし何らかの関係はあんだろ??…それにこんな顔立ちならどこぞの野郎にでも売り飛ばせるからな』
『ふざけんな!!!こいつは何も関係無いって………』
( 言い終わらない内に再び父親への暴行が始まるのをどこか冷静に見詰めてたが「良いよ、俺が払うから」と静かに告げて。
請求書を押し付けられては「明後日までに何とかするから」と無表情で告げ出口のドアに手を掛けて。
>桐崎
(身体中がギシギシと軋むように痛む中、相手から告げられる言葉を聞いてはすぐに相手が考えていることが浮かび「待てよ!!!」とドアに手を掛ける相手を呼び止める。
男の押さえつける手が強まり痛みが走るが構わず身を乗り出し。
「あんた…見世物して身売りする気だろ!? そんな大金…あんたの身がもたない…。そんなの絶対に許さないからな!!……あんたがそんな真似したら彼女(希久)だって悲しむだろ…」
(本当は自分が悲しいと言いたかったがその気持ちを抑えて相手の背を強く見据え「あんたが自分を売るってなら、俺も解放して貰って身を売る…」と勝手だと充分理解しながらも全く譲る気のない強い口調で述べて。
「……でもあんたは俺に“身を売って欲しくない”って言ってくれた。…出来ればそれを守りたい。………だからさ、今回も彼奴等(若頭達)を頼ろう。……彼奴等なら返済待ってくれるし、きっとこうやってあんたが傷付くのを望んでない。……あんたの父親もだ」
(誰かを頼り迷惑をかけるなんてことはしたくなかったが、相手が無茶をしたと分かればまた青年や兄が悲しむ。
何より自分が相手が傷付くのを見たくなく…。
『てめぇさっきからガタガタうるせぇぞ!!…それ以上喋ったら喉掻っ切るぞ』
(髪を掴まれ頭を地面に押さえ付けられ表情を歪めるも相手からは目を逸らさずに「俺は本気だからな!!」と相手の行動次第で自分も然るべきことをすると。
>露木
( 相手の強い眼差しに圧倒されつつ、それでも相手が身売りをする事だけは嫌で「………少し…待っててくれないか。身売りや見世物は…しない。…約束する」と相手を静かに見捉えて言って。
部屋を出てはどうする事も出来ずに携帯を取るも自分の親の借金を肩代わりして欲しいだなんて要求出来るのかと。
仕方無く兄に連絡をしては震えた声で内容を話すも、兄すら父が闇金に手を付けてた事を知らなかった様で僅かに焦りが伺えては『…分かった、木ノ宮にも話して急いでみる。………でも菊を傷付けた父さんと繿にはしっかり文句言わせて貰うからね』と。
( その頃、ヤクザの男はぐったりとする父と相手を見詰めては鼻で笑い相手の前髪を掴み上げて。
『お前も災難だな、見ず知らずの男を庇った所為で汚ねぇ親父共に売り飛ばされるかもしれないんだぜ??』
( 嘲笑う様に相手の顎を掴み視線を合わせるも強い相手の視線が気に入らずその頬を殴り付けようと。
その刹那、父が突発的に相手を庇う様に身を乗り出しては代わりに撲り飛ばされて。
別の取立ての件での電話が鳴ってはヤクザ達は早々に部屋を出て行き父と相手だけになれば父は相手に背を向ける様に横たわって。
『…言っとくが勝手にお前が首突っ込んで来たんだからな。………謝ったりはしねぇぞ』
( 庇った癖にやはり無愛想な事を告げては切れた口元の血を自分の服で拭い煙草が無い事に苛立ちを見せ。
>桐崎
(相手の父のぶっきらぼうな態度にやはり親子だなと思えば不謹慎にも可笑しく思え小さく笑いを零し、苛々する様子に縛られている状態ではどうすることも出来ないため気休め程度に学校での相手の様子などを勝手に喋っていて。
(その頃、ホステスは相手が心配で仕事を抜け出して来ては街を歩く相手の姿を見つけ駆け寄り、頬の傷を見て心配そうに眉を下げて。
『そ、その傷…、私、御免なさい。……取り立て以外になにがあったの?なんか思い詰めた顔してる』
(ハンカチで相手の傷口をそっと拭いてやりながらじっと相手の表情を見詰めるもそれよちも治療が先だと『とりあえず私の家に来て。傷の手当てしないと。』と相手の腕を引き。
その姿をたまたま別の取り立てに出ていたストーカー男の部下が目撃して男に報告しては、当然男の逆鱗に触れ『畜生め。借金と一緒に希久も返さねぇと許してやらなぇからな』と条件無視の勝手なことを述べていて。
(一方兄の電話を受けた若頭は直ぐに行動を起こし小切手を用意しては念のため、部下にボディーガードなどを頼み、相手宛に《明日の朝にはそっち行けるよ。…お詫びとか礼とかはいいいからね。桐崎には前に迷惑かけてるからさ》とメールを送って。
>露木
( 相手の安否が不安で碌に眠れずに翌日になっては若頭と兄と共に昨日の金融会社へと訪れて。
裏を纏める若頭の立場を感じさせられる丁寧な言葉遣いで交渉に応じるもストーカーの男は許す筈も無くホステスの女を引き渡さなければ許さないと。
若頭や兄は状況が理解出来て無かったが兎に角相手と父を解放して貰わなければと考え小切手の入った封筒を差し出して。
『桐崎さんの借金の五倍分の値です。希久さん…とやらの話は分かりませんが借金の話とは無関係と思えました、現金を返したにも関わらず人質を返してくれないのならこちらとしても考えるところが御座いますが…如何でしょうか』
( 若頭が冷静に答えるのにヤクザの男は暫し考え込むも流石に敵に回したら不味い存在だと言う事を理解したのか兎に角父と相手を解放するも『希久を返さないのならお前の過去の写真学校にバラ撒くからな』と耳打ちされ。
ホステスには沢山世話になった、恋人の振りをしただけなのにも関わらず行き場の無い自分を助けてくれた事もあり恩は返さなければと。
「…悪いが“あんたに”希久を渡すつもりは無い」
( 元々付き合ってる訳では無い、あくまでこのストーカーから守る為の振りという事もあり“あんたに”と言う単語を強調してはキッと睨み付けさっさと金融会社を後にして。
>桐崎
(若頭の仕切るホテルに連れられては水を飲まされて傷の手当てをされ強制的にベッドに寝かされ、何から何まで迷惑をかけてしまったことに謝罪と礼を述べ。
「……お金は少しずつになるけどちゃんと返すよ。助けて貰ったし…」
『別にあんな紙切れ程度気にしなくていいよ。それよりも僕のこと名前で呼んでよ』
(ニコリと微笑む若頭にそれだけでは流石に…と思いつつ頷いては、相手の姿がないことが不安で「桐崎は…?」と問うも今捜索中のようで。
「……彼奴、疲れた顔してた。それにあの男に何か言われてたみたいだし、なにかあったら…」
(嫌な予感がして身を起こそうとするも兄と若頭に止められ再びベッドに沈められる。
それでも動ことするが急に眠気が襲い「……繿」と呟いたのを最後に深い眠りへといざなわれ。
『やっと睡眠薬が効いたよ。ほんと薬には強いんだから』
『眠ってて貰わないと絶対、桐崎探しに行くからね』
『そうだね。……………あのさ木ノ宮。助かったよ。ありがとう』
(兄は小さく微笑むと傷の手当てを碌に受けずに部屋を出ていった父のあとを追い掛け、数メートル先に父の背中が見えたところで『父さん!!』と叫び。
しかし父は止まること無く、兄はほんの微かに下唇を噛むと走って父の腕を掴み『父さん、ちゃんと全部話して。繿とも、ちゃんと向き合って』と普段見せない切なげな表情で懇願し。
父は何も言わず兄の手を払うとポンと軽く兄の肩に手を置きその場を立ち去って。
(その頃、ストーカー男は相手が最後に残した言葉に憤慨しており、部下も手が付けられないほど荒れていて。
『くそ!!あの化物め!!!本気で写真をバラ撒かれたいのか』
『お言葉ですが…木ノ宮組が絡んでいるとなると下手に動くのは危ないかと…うちの部下の何人かも既に買収されているようでしたし…』
『うるせぇ!!ビビってんならお前もあっち側につけばいいだろ!!俺は絶対あの餓鬼をゆるさねぇ』
(見境を無くしたように怒鳴り散らしては二重構造になっている引き出しからピストルを取り出し不気味に笑み。
『ま、まさか“消す”気ですか?…流石にそれは……』
『指図するな!お前も消されたいか?………何、化物の一匹殺したところで誰も悲しむ奴もいないし消えても気付かねぇよ』
(ケタケタと嘲笑し、部下の『ですか……』と抗議する言葉も聞き入れず『身体も精神もボロボロにしてやる』と狂乱の笑みを浮かべ。
>露木
( 夜、ホステスの女の迎えに来ては恋人を演じ続け腕を組みホステスの自宅へと向かう。
部屋に戻るなり料理を始めようとする女の隣に立ち、最近ずっと作って貰いっ放しだったし自分も手伝うと言っては鍋に火を掛ける。
『繿、私貴方にお礼をしてるだけなのよ??…なんか気を使ってるんじゃ』
「お礼にしてはあんたも世話焼いてくれすぎだから」
( 無表情で返してはあのストーカー男が黙ってる筈も無くこれからの事を考えると少しばかり憂鬱で。
( 翌日、ホステスを仕事先まで送り届けては自分は父親の元へと向かい何時もの様に現金の入った封筒を差し出し「足りないなら…俺ちゃんともっかい金用意するから。………闇金になんて手出すなよ」と呟き。
『………煩ぇな、化物が誰に向かって口聞いてんだ』
「…ごめん。…でもやっぱり」
『さっさと去れ』
( 現金の半額を押し付けられてまた去ってしまう父に疑問を浮かべつつ最近はめっきり暴力も無くなったものだなと。
ホステス女が終わるまでどこかで時間を潰そうとネットカフェにでも入ろうとした所でストーカー男とばったり出会しては封筒を手渡され中身を開く。
幼少期の過去の自分の写真から今に至るまでの表沙汰にされたくない写真、なぜこんな物を持ってるのかと男を睨み付けるも男はほくそ笑むだけで。
『それバラ撒いてやっても良いんだぜ??』
「そんな事したくらいで希久を渡すと思ったのか??」
『お前が大人しくするなら金だってやるよ、ただ逆らうのならこっちは全力でお前を潰す。…“逆らうな”って言葉は犬のお前には聞きなれたもんだろ』
「………馬鹿馬鹿しいな」
( キッとストーカー男を睨み付けてはさっさと場を立ち去ろうとして。
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