xxx 2014-12-29 00:12:16 |
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>露木
( 頭からバサリと落ちて来た毛布に目を覚ましては塀を挟んだ背後に相手の声が聞こえて。
うっすらと瞳を開け相手の言葉を聞いては“あんな事をしても嫌われて無かった”と安堵の息を付く。
去って行く相手の足音が聞こえ咄嗟に塀に登り上がっては相手を見下ろし「待てよ」と言えば相手の前に立ち塀から降りて。
感覚を無くした冷たい手で相手に触れては何も言わないまま触れるだけの口付けをする。
漸く顔を離し相手を見詰めては「………木ノ宮に聞いたんだ。ちゃんと思い合ったキスじゃないと元には戻らないって」と言いまだ女体の相手の頭を撫でて。
能力が強まったからだとも知らずに「………ごめんな」と告げれば再び塀を超え自宅の前にて朝が来るのをひたすら待って。
( 翌朝、玄関が開いたかと思えば母親が出て来て手を出される。
『あたしこれから出掛けるから、お金貸して頂戴』
「ごめん、…全部父さんに渡したから」
『はぁ…??…ならもう良いわ』
( 眉を寄せ去って行く母を見送ると共に父が出て来てはさっさと金を稼いで来いと言われて。
「頼むからあの女には手を出さないで欲しいんだ」
『うるせぇな、あの小娘から言って来た事だってんだろうが』
「昨日バーに警察が来てた…、だから見世物は控えないとならないんだよ。約束は守るから」
( また相手が来たりしたら優しい相手の事、放って置いてはくれないだろう。
ならば見世物は相手の目を盗んでやるしかない。
揃いのピアスを耳に付けては例え思いが通じ合って無くても昨夜の言葉を思い出しては頑張れる気がして。
駅の前で普通に働いたのでは無理だなと考えては金持ちの物好きでも来ないだろうかとぼんやりとして。
どうせ明日には帰れる、しかし今日中にしっかりと金を稼がなければ帰れない。
しかしそれよりも気になるのは相手の事。
昨日相手が居たのはあの男の自宅の敷地内だった事を思い出せばあの男と共に来たのだろうかと。
>桐崎
(男に外に出ていたことがバレることなく部屋に戻っては横になって寝た振りをする。
相手が謝った本当の意味は理解してやれず、ただ唇に残る相手の口付けの感触に安心しては久々に薬なしでぐっすり眠ることが出来て。
(翌朝目を覚ましては早速男に街へと連れられる。
男は今日機嫌が良いのか店を回りやたら服やバッグを買い与えられる。
勿論女物で正直困るだけだがふと自分はいつ普通に男に戻れるのだろうと不安になって。
そんな時、ふと道路を挟んだ駅前に相手の姿を見付け何をしているのかとジッと見詰めると揃いのピアスをしてくれているのに気付き、今日自分もつけてきていたため微かな喜びを感じては男の前ということを忘れ小さく微笑みそっと耳に振れて。
(其の頃、駅前の相手に40代前後のいかにも金持ち風の男が近付いては相手の肩をトントンと叩き『ねえ君、桐崎繿君でしょ?』と不気味に笑み。
この男は相手が幼少期のころ良く見世物屋に顔を出し人一倍相手を気に入って金を出していた人物で、かなり極悪非道と名が知れており。
『随分背が伸びたね。でも相変わらず可愛い顔をしてる。…僕のこと覚えてるよね?』
(相手の顎を持ち厭らしい目で見ては人目も気にせず相手の耳を舐め上げ『ねえ、なんで逃げたの?』と暗く薄気味悪い声で囁き相手の腰を撫で上げて『僕と此れから楽しいことしようか?』と。
(その異様な様子に気付くも道を挟んでいてすぐ隣に男が居たこともあり直ぐは駆けつけられず歯痒さに爪を噛む。
いま駆け出せば男の怒りに振れ相手の写真をバラ撒かれてしまう。
それでも相手が危険かもしれないのに放おっておけなく相手に《一緒にいるやつ誰?大丈夫なの?なにかあったらワン切りでも何でもして》と裏切っているにも関わらず心配のメールを送って。
>露木
( まさか本当に“金持ちの物好き”に鉢合うとは思わず過去のトラウマが蘇っては咄嗟に後退るも腰に回された手に過剰に反応して。
不意にメール着信音が流れ携帯に手を伸ばすも『人と話してるのに携帯は失礼だよね』と手を取られて。
如何にも高価なスーツを見詰めカチカチと鳴る歯を止めるべく歯を食い縛っては俯きながら声を発して。
「………金が、…必要で」
『うん、幾ら必要なの??』
「さ…30万用意しないと、………寮にも帰れなくて」
『分かった。君が言う事を聞いてくれるなら100万用意するよ』
( 男の言葉に顔を上げては戸惑いがちにコクリと頷き100万も用意すれば両親も不便無く過ごせるだろうと思って。
まだ僅かに震える身体に鞭を打っては男の後を付いて行って。
( その頃男はそわそわとする相手に気付くと舌打ちをしブランドの洋服店に入ると自分好みのワンピースを一着取り相手を更衣室に押し込むと店員の目を盗み自分も中へと入って。
相手にワンピースを押し付けては『ほら、着替えろよ』と相手を舐める様に見詰めて。
上の空になってた仕置のつもりで、相手の衣服に手を掛ければ恐ろしい爽やかな笑顔で『俺に着替えさせて欲しいのかよ』と問い掛けて。
腕を組み狭い更衣室の中、相手に“早くしろ”と目伏せしては口角を上げて。
( 男に連れられ高級ホテルへと連れられては最上階の部屋に押し込まれて。
ネクタイを乱す男を見詰めてはどうすれば良いものかと狼狽えてた所、アタッシュケースから出された札束を押し付けられて。
『先に渡して置いて上げるよ』
( 小さくコクリと頷き震える手で自分のバックに押し込むと近付く男から無意識に距離を取って。
『あれ、何で逃げるの??』
「逃げてる…訳じゃ…」
『まぁいいや、先にお風呂行っておいで』
( 逃げる様に浴室に向かえば先程のメールを確認し相手に心配させてしまったかと思う反面気に掛けてくれたのかと。
だが迷惑を掛ける訳には行かないと言い聞かせてはシャワーを浴びて。
>桐崎
(相手を気に掛けながらも男には逆らえず洋服店に連れられては、目の前で着替えを強要され屈辱で歯を食いしばる。
が、あることに気が付くと態と頑なに着替えを拒んで男を苛つかせては無理矢理着替えさそうと服を乱されたところで小さく笑み。
「…あーあ、いいの?ここ高級ブランド店の更衣室だよ?きっと盗難用カメラあるだろうなぁ…今此処で悲鳴上げたらあんた補導されるよ?」
『……何、…そ、そんなことしてみろ。察から解放されたら彼奴の画像もお前の画像もバラ撒くからな』
「解放されたらね。………あんたさ、ずっと見たことある顔だと思ってたけど麻薬常習者だろ?それが世間にバレたらこの先、生きていけないだろうな」
『な、なんで、それを…。お、お前、女の癖に俺を脅す気か!!』
(慌てふためきながらワナワナと怒りに震える男に思いっ切り頬を打たれるもこちらにとっては好都合。
女の涙ほど強いものはないと瞳を濡らしては悲鳴を上げて店員を駆けつけさせ、男に着替えを強要されたと涙目で訴えて。
程なくして警察が来て男が捕えられる様子を見てはその青ざめた表情と先程の慌てぶりから画像がバラ撒かれることはないだろうと判断し。
警察に取り調べと同行を頼まれるも相手のこともあり長居は出来ないと、何とか誤魔化しては逃げるように店を出て相手の行方を探し、念の為に兄と青年に《桐崎が危ないかもしれない。手を貸してほしい》と迷惑を掛けたくはなかったが事が起きてからでは遅いとメールして。
(其の頃、男は相手がシャワーから出てくるなりベッドに押し倒して服を乱すとまだ新しい傷に眉を潜め『此れ、何?…僕から離れてる間、他の人に随分可愛がって貰ったみたいだね』とほくそ笑み傷を抉るように爪立たせ恐怖で歪む相手の表情を楽しんで。
『震えてるの?相変わらず可愛いなぁ。でも僕以外の人に傷をつけさせたお仕置き』
(クスッと笑み震える相手の頬を撫で上げ無理矢理相手に薬を飲ませては煙草を取り出し、治りかかった火傷の痕に重ねるように押し付けて。
『言うこと聞いてれば良くしてあげるから』
(焼けたばかりの痕を舐め上げては強引に深く口付けるも相手のピアスに気付くとカリッと指で引っ掛け『ねえ、これ片方だけだよね?…もしかして誰かとお揃い?…僕がいるのに?ねえ、答えてごらん?』と相手の口元をなぞり。
>露木
( 肌が焼ける感覚は未だに慣れず悲鳴が漏れては明日には帰れるのだから我慢しろと言い聞かせる。
問われたピアスに首を振っては「それ…っ、気に入ってたんだけど片方無くしたから………だから片方だけなんだ」と咄嗟に作った言い訳をして。
痛いのは嫌だと従順に男に従ってはぼんやりと天井を見詰め早く事が終わるのを待って。
( 情事が終わるなり男は仕事に戻ると言い自分の携帯にアドレスを登録すると部屋は好きに使って良いと言い残し出て行って。
浴室に篭り強く身体を洗い着替えを済ませてはさっさとホテルを後にする。
酷く気分が悪い、気持ち悪さを押し殺しては実家へ向かおうとするも青年と兄と相手にばったり出会しては咄嗟に足を止める。
その雰囲気の悪さと気分の悪さから逃げ出そうとするも兄に腕を掴まれては『何してたの』と問われて。
「な…何もしてない」
『父さんに金を要求されたんでしょ。それで“何を”したのかな』
「だから…何もしてない!!!」
( 兄の手を振り払い相手に向き直ると改めて相手を見れば酷く疲れた様な顔をしていて。
ズキンと胸が痛むが、まさか相手が男と居たのは自分の為だったなど知らずに相手は好きで男と居るものだと勘違いを続けて。
『兄さんごめんね、俺兄さんの両親がこんなだって知らなくて………』
『兎に角帰ろう、…正直俺もここに長居したくない』
( 俯く兄に目を向け申し訳無さそうにするが相手へと近付き僅かに痩せた様にも伺える腕を掴んでは頬に手をやって。
「…何かされたのか??………何が合ったんだよ」
( 何も知らない様子の自分に兄は目を見開くと調べてた情報を次々と話し出す。
『脅されてたんだよ。繿を危険な目に合わせない様に菊が自らあの男の言いなりになってたんだ』
『ちょっと綸、止めなよ』
『それを勝手に勘違いして菊に酷い言葉言ってさ。今回だって菊が助けようと俺達にメールしたんだよ?? 繿が気付かない所で菊が何されてたか知らないでしょ。木ノ宮に能力強めて欲しいって頼んでまで繿を守ろうと…』
『止めなって!!!』
( 青年が上げた声に兄は言葉を止めると頭をガシガシとしながら『………ごめん、感情的になり過ぎた。繿だって好きで父さんの所に来たんじゃないんだもんね、…本当にごめん』と。
しかしそんなのは耳に入らず相手をしっかりと見詰めては愚かな自分の過ちに気付いて。
「………本当なのか??」
( 小さく相手に問い掛け「……………俺、……あんたに何して……………」と零すと脳内が混乱し相手から距離を取って。
兄が駆け寄るも全部自分の所為だったのだと知れば言葉を無くしてしまい。
「……………ごめん、…………本当にごめん」
( 唇を噛み締め相手に謝罪しては逃げる様にその場を後にして。
もう相手とは本当に関わっちゃいけないのだと理解しつつ駅へと走って。
>桐崎
(悲痛に表情を歪ませ駈け出してしまった相手を兄の制止を振り切り追いかける。
しかし慣れないヒールで足の早い相手に追い付けるはずもなく一度立ち止まり靴を脱いでは呼吸を整える間もなく駅まで走り、駅の入口に立つ相手に漸く追いついてはその背中に手を掛け。
「待、てよ……、逃げるなって」
(まだ息が整わないうちに声を出しては軽く咳き込んでしまうも構わず相手の前に回り両手を掴んで。
「なんで、謝るんだよ!………昨日のことは嫌じゃなかったって言っただろ?……それに、全部俺が勝手にしたことだ。…別にあんたの為じゃないよ。……あんたを悪くいう奴を見てると苛々するんだ。…あんたの辛い顔を見てるとこっちまで苦しくなる。……だから今回のことは全部自分のためであんたが気負いすることはなんにもない」
(息を整えながら真剣な眼差しで相手を見詰め言葉を紡いでは疲れきった様子の相手の頬にグッと手を伸ばして「……勝手に綸と赤城、呼んで悪かった……、俺だけの力じゃ足りなくて……」と不甲斐なさに唇を噛むも、すぐに小さく微笑み男のことはもう大丈夫だと伝え体調も平気なように振る舞い。
それでも相手の瞳にまだ怯えが残っている気がしてあの男に何をされたか想像しては怒りで震えそうになるのを堪え相手の服を掴み屈ませると相手のピアスを優しく撫でながら唇に触れるだけの口付けをして。
「……嘘でもあんたのこと悪く言って悪かった。……あんたを傷つけたことには変わりない。本当に…御免。……………ちゃんとあんたのこと“好き”だから」
(最後ついいらない言葉を述べてしまっては相手を困らせてしまうではないかと直ぐに謝るも少しだけ間を置いて相手を見て「……なあ、少し落ち着いたところで一緒にいたい。……何も話さなくていいから。あんたといると落ち着くんだ」と男の事は今は振れずにおき相手の疲れた目元をなぞって。
(其の頃、男は入手した相手のアドレスで相手にメールを送りつけており《これで終わりだと思わないでね。君が此処に来なくても僕が君を迎えにいくから。君の学校生活楽しみだな。……僕からは逃げられないよ》と。
>露木
( 相手の言葉を落ち着きを取り戻しつつ漸く固まってた表情を緩めては相手を抱き締める。
両親への現金を郵送すると早速寮へと戻り相手を自室に呼んでは何気無い話をしたりして。
相手も自分も疲れてた事もあり暫し眠りに付くも何時もの癖故か相手を抱き締めてしまっていて。
( 目を覚ましたのは夕方、時間を確認すべく携帯を見詰めては男からのメールに眉を寄せる。
《そっちに別荘有るから次僕の休日が出来たら迎えに行くからね》
( こんな変態趣味な奴出来ればもう会いたくも無い、どう切り抜けようかと考えてた所で相手も目を覚ますのに気付いては慌てて携帯をしまい。
それにしてもいつ戻るのだろうかと考えてた所で部屋にノック音が響いては顔を見合わせる。
「ちょっと出て来るから」
( 相手に一言告げ扉を開ければそこに居たのは若頭の姿、相変わらずの女性らしい容姿に呆れつつズカズカと部屋に入る若頭が相手の前に座って。
『帰って来たって聞いたからさ。あまり長時間女で居ると男に戻れなくなっちゃうと思って。………あ、また女になりたかったら何時でも頼ってね』
( 若頭は笑顔で相手の身体を自分に引き寄せると頬に軽く口付け『あ-もう本当に可愛いんだから』と一人言を口にした所で相手の唇を奪う。
一瞬驚きから動けずに居たが相手の身体が戻ってくのが目に入り咄嗟にそちらに近付く。
『能力者の僕だけはちゃ-んと戻して上げられるんだよね』
( 面白そうにクスクスと笑っては男姿の相手の首に腕を回し再び深く口付けて。
その光景を見てられずに若頭の首根っこを掴んでは相手から引き離しキッと睨んで。
「何してんだよ!!もう戻っただろ!!」
『え-だって女の子の露木も可愛かったけど男の露木見たら我慢出来なくなっちゃってさ』
( 頬を膨らます若頭を追い出そうとした所、『っていうか桐崎なんでそんなに露木に構うの!!露木は僕のなんだからね!!』と言われて。
ムスッとしたまま若頭を放り出すと相手の前にしゃがみ「隙多すぎ」と不機嫌そうに告げて。
軽く口付けると改めて羞恥が沸き上がりバッと立ち上がっては簡易キッチンへと向かう。
相手をチラリと見ては「………泊まってけよ」と小さく言い再び相手の元に戻り「あんたさ、料理とか出来んの??」と問い掛けて。
恥ずかしながら自分は料理など出来ないし引け目がちに相手に聞きながらメールの事を忘れる様にして。
相手が立ち上がり女体時よりも目線が縮まったのを感じれば相手の額をピンッと弾き「こっちのが首も痛くならないな」とからかう様に笑って。
>桐崎
(元に戻った身体にホッと肩を撫で下ろしては口付けられたことに羞恥を感じつつ簡易キッチンに行き相手の隣に並ぶ。
からかわれムッとするも目線が近くなったのは嬉しく相手の首に手を回すと女の時は背伸びしてもどうしても届かった相手の唇に軽く口付け「確かにこっちのがあんたに簡単にキスできる」と小さく笑みからかい返し。
が、よくよく考えてみると自分たちの関係は何なのかと。
“恋人”ではない、筈……なのにこんなことして胸が高鳴っているのは自分だけなのではないか。
相手の言ってくれた“好き”の意味が自分の“好き”と違ったら相手にとってはとんだ迷惑ではないかと今更不安になっては少しだけ距離を置き「…俺達ってさ……」どういう関係かな、と問おうとして「何でもない」とやめて冷蔵庫の中などを物色し始め「…料理…旅館の手伝いしてたから少しなら出来るけど……」と始めの問いに答えて話を逸し。
普段あまり自炊はしないがたまに自分が調理すると妹やハナに“味が薄い”“塩気が足りない”と低評価をつけられるため、相手に食べさせるとあっていつもより集中して調理に取り掛かる。
互いの体調を考慮してお腹に優しい野菜スープを作ることにしては相手の助けもあり何とか完成させて小さなテーブルに運び相手の反応を窺いながら口に運ぶ。
あんなに喉を通らなかった食事も相手といるだけですんなり入れば「…明日の朝も一緒に食べよう」と誘っていて。
(翌日、相手の隣でぐっすり眠り目覚めのいい朝を迎えては小さく欠伸を零し洗面と着替えを済ませ揃いのピアスをつける。
まだ少し寝ぼけている相手の髪を撫でつつ「おはよ」と然りげ無く額に口付けては続けて口元に口付けようとするも寸でのところで扉が開かれ青年が相手に抱き着くようにダイブしてきて。
『おはよー!兄さん。なんで俺と寝てくれなかったのさぁ。露木より俺のが抱き心地いいでしょ?』
(朝からブーブーと訳の分からないことを言いつつ相手の体調を気にかけていて、それでも最後には『兄さんのヨーグルトは俺のものだからね。はやく朝ごはん行こ!』といつもの調子で人懐っこく笑い相手の腕を引いて。
(其の頃、男は早速長い休みを取りこちらの別荘に来ては《すぐ会いに行くから待っててね》と相手にメールして調べ上げた情報を手に学校へ車を走らせていて。
>露木
( 食欲こそ無かった物の相手の料理に舌鼓しては「あんた中々料理上手いんだな」とさり気なく褒めたりしては朝食の約束に自然な笑顔で頷いて。
( 翌朝、相手に起こされ静かな朝を迎えたかと思えば突如青年に抱き締められ「うっ」と声を漏らす。
相手の耳元で光るピアスに目が行けば表情が緩みそうになるのを抑えさっさと用意を済ませては青年に手を引かれながら相手と共に食堂へと向かって。
ふと携帯のランプが点滅してる事に気付きメールを開いた所でサッと表情が変わる。
あの男がこちらに向って来てると考えると気持ち悪さが込み上げるも深く考えない様にして。
きっとやり過ごせると自分に言い聞かせては食堂にていつものセットを頼む。
『はい、桐崎君最近忙しそうにしてたから御褒美よ。………まぁ昨日の夕食の余りなんだけどね』
( ヨーグルトの隣にカップの杏仁豆腐を置かれては礼を言うも実の所杏仁豆腐も苦手で。
席に付くなり青年にヨーグルトを手渡しては相手のトレーに杏仁豆腐を置いて。
『あれ、兄さん杏仁豆腐も嫌いなの??兄さん何なら食べれるの??』
「プリンとコーヒーゼリー」
『に、兄さん以外と子供っぽいの好きなんだね』
( 吹き出す青年をジロリと見詰めると不意に担任の教師に後ろから肩を叩かれて。
首だけをそちらにやり「何ですか」と問い掛ける。
『いや、あの有名な会社の社長さんが今日の夕方寮に来るらしくてね。何でも桐崎に用事があるって』
( 教師の言葉に顔色を変えては蒼白に俯き「………分かりました」とだけ告げて。
“有名な会社の社長”だなんて言ったら彼奴しか考えられない、態々学校にまで連絡を寄越すなんてと顔を顰めては夕方になる前に寮を抜け出し何処かに身を隠さなければと。
真新しい煙草の火傷の痕を思い出しては唇を噛み、それでも相手と青年の前だと言うのを思い出しては笑顔で振舞うようにして。
>桐崎
(相手が担任に話しかけられ表情を強ばらせた気がしたがその後の気丈な態度に気のせいかと思い、時間が会えば昼なども会う約束をしてそれぞれ授業などについて。
(高校の授業が終わる頃、相手が男・社長から逃げているとは知らずに《バイト終わりに寮に行っても良いか?》と特に用はないのだが少しでも一緒に居たくメールしてバイトに向かう。
相変わらず店長は嫌味やらを言って来たが相手のことを考えればなんてことはなく今日にでも昨日聞けなかったことを聞いてみようと思って。
(其の頃、寮を抜け出し街に身を隠していた相手に男から《逃げても無駄だよ》とメールが届きその分後に相手の前に現れては相手の腕を掴み上げ路地裏に引き込んで携帯のSNSの画面を見せつけ。
其処には不特定多数の人物から相手の居場所を告げる文が書き込まれており『僕、有名社長だから人脈は広いんだよね。君が何処に行っても誰かが知らせてくれるんだ』と厭らしく相手の腰を撫で上げて『逃げたから、お仕置きね?』と震える相手の首筋に甘噛みし。
(同時刻、バイトを終わらせ寮に向かって歩いていると少し離れた所からその現場を見かけ明らかに強要されている様子と、以前見かけた男の姿に冷や汗が流れては迷わずそちらに走り相手の身体を厭らしく触る手を強く掴かみ相手から引き剥がすと相手を背にして男を睨み上げて。
『なに君?僕に楯突いてただで済むと思ってるの?』
「そんな口利けるのも今のうちだ」
(男を睨んだまま男が相手に強要する写真を見せつけるも男は一瞬眉を寄せただけで直ぐにほくそ笑み、次の瞬間身体が横に吹っ飛ぶほど頭を強く殴りつけられては地面に叩きつけられて。
男は気を失った自分を冷ややかに見下してはすぐに相手に向き直り『邪魔は居なくなったから行こうか』と無理矢理近くのホテルに連れ込み相手をソファに押し付けるとピアスに爪を引っ掛け。
『ねえ、この前このピアス片方無くしたって言ってたよね?……さっきの子がしてたピアス、同じに見えたんだけど気のせいかな?』
(カリッカリッと嫌な音を立てては鼻が触れ合うほど顔を近づけ『僕、嘘は嫌いだよ?』と不気味に笑んで耳に微かな痛みを与え『今度嘘吐いたら手が滑って引きちぎっちゃうかも』と。
そして相手の髪に指を絡めては『さっきの子に迷惑かけたくないなら僕の言うことちゃんと聞いてね?』と男に服従する証であるピアスをちらつかせて揃いのピアスを外して付けるよう命じて。
>露木
( 気を失う相手に蒼白になり手を伸ばすも男に阻止されてはそのままホテルへと連れ込まれる。
揃いのピアスに触れられ軽く引っ掛かれては僅かな痛みに顔を顰めるも別のピアスを手渡されて。
その模様にふと思い出したのは男の使用人のスーツやメイド服に描かれた模様。
直ぐに忠誠を表す物だと悟っては拒否しようとするもピアスに掛けられた手に力を入れられてはヒク、と喉が鳴り小さく頷く。
『ちゃんとそれ外してね、気に食わないからさ』
「……………」
( 逆らえる術など無く震える手でピアスを外しては男から渡されたピアスを付ける。
小さな宝石をあしらわれた明らかに高価そうなそれを男は満足そうに見詰めて来て。
そのままソファーへ押し倒されては無心に天井を見詰めるも男が思い出した様に口角を上げる。
『君のお友達も随分と綺麗な顔してたね、最初女かと思っちゃったよ。………僕割とああいう子も好きなんだよね、苦痛に歪む表情とか可愛いだろうなぁ』
「………っ!!!駄目だ!!!彼奴には…手を出すな」
『どうだろうね、でも今回邪魔をしたお仕置きはちゃんとしなきゃ。今頃僕の部下が彼の所に向かってるんじゃないかな』
「そんな………」
『君が言う事を聞けば“今日以外”は手を出さないかもよ??』
( 悔しそうに歯を食い縛っては伸し掛る男から視線を逸らしただこの時が早く終わるのを願い。
( その頃、男の部下が気絶した相手を軽々と抱えるとまさに今自分達が居るホテルの隣の部屋へと訪れて。
『流石社長だな、こんな広い部屋貸してくれるなんてよ。……………っと、隣には社長も居るんだろうからあまり騒がせるなよ』
( 厭らしくほくそ笑んでは三人掛かりで相手をベットに押さえ付け、ネクタイで相手に猿轡をし衣服に手を掛け。
その刹那相手の瞳がゆっくりと開いては一人の男が『うわ、目覚ましましたよ。目隠しとかしときますか??』と上司の男に問い掛けて。
>桐崎
(頭の鈍い痛みと息苦しさに薄っすらと目を開いては状況を理解し背筋が凍りつく。
相手の姿がないことに焦り何処だと叫ぼうとするも猿轡をされているため敵わずついには目隠しまでされて。
視界を塞がれる中、身体を這い回る手に悪寒がするも相手はもっと酷い目に合っているのではと思うと冷静ではいられず何とか男を蹴散らそうと暴れる。
が、男3人の力に敵うはずもなくあっけなくねじ伏せられては良いように弄ばれ。
それから暫く意識が朦朧とする中、目隠しと猿轡をされたまま隣室に放り込まれる。
相手がいるとも知らず尚も強く抵抗しては拍子にネクタイの結び目が解けて口が自由になりその瞬間相手の名を叫んで「…桐崎!!!……彼奴をどこにやった?!手出したらただじゃ置かないからな!!」と怒鳴り散らすも男に『うるせぇ!』と頭を殴られ。
脳内がチカチカするがそれでも構わず感覚だけで男の腕に噛み付き必死で抵抗して相手の名を呼んで。
(其の様子を男はベッドの上から愉快そうに眺めては相手が手出ししないよう腰に腕を回し引き寄せ厭らしく頬を撫でていて。
『君のお友達は随分威勢が良いみたいだね。ちょっと目障りだな。……ねえ、あの子のこと今後は傷付けたくないんでしょ?だったらさ、今から僕の前であの子を裏切ってよ』
(男は相手の耳元で気味悪く囁き『今言うこと聞かないと君もあの子ももっと酷い目に合うよ?』と相手の火傷の痕を引っかき『ほら、君のこと呼んでる。いってあげなきゃ』と相手の背中を押して。
>露木
( 男に背を押され隣の部屋へと来れば乱れた衣服のまま三人掛かりで押さえ付けられる相手を見詰める。
扉に寄り掛かり腕組する男に振り返り逃げ道が無いのを悟っては逆らえないのだと確信して。
ゆっくりと歩を進め相手に馬乗りになるとクックッと喉を鳴らし哀れむ様に相手を見下ろす。
「………あんた本当に馬鹿だな。“手出ししたらただじゃ置かない”って俺の事そんなに好きなんだ??」
( あまり表情を出さない性格だったが盛大に相手を笑ってやり相手の前髪を掴み目前に引き寄せ「俺もあんたが大好きだよ、…ちょっと優しくしたら犬みたいに尻尾振って付き纏ってくれてさ」と。
一瞬歪みそうになる表情を唇を噛む事で何とか抑え「女じゃ無いあんたには興味の一欠片も無いんだよ、男の恰好で付き纏われても迷惑だ」と。
相手を突き飛ばし男の元に戻ると「さっさと戻ろうぜ」と告げ男と共に部屋に戻る。
( 激しい後悔と苦しみの中、男に「これで…満足だろ、彼奴には手を出さないで欲しい」と頭を下げる。
男は面白そうに自分を見下ろし『君次第だよ』と。
男の命令により狼の姿へと変えれば甘える様に男に擦り寄る。
上機嫌な男をぼんやりと見詰めては相手はちゃんと帰れたのだろうかと。
男が飽きて来た所で何とか能力を解き人姿に戻っては男をしっかりと見詰め「呼べば何時でも来るし何でもする、もう逃げたりしない。………だから彼奴にだけは手を出さないで欲しい」と頼んで。
男の命令に従う様に男の唇を奪うと、男も明日は仕事がある様で漸く解放して貰えて。
さっさと寮へと向かっては自室に戻ろうと。
>桐崎
(相手が男と部屋を去ったあと、相手の表情や言われたことが信じられず茫然とする。
何かの間違いだと思うも相手の表情は本心に見えて涙がジワリと溢れては男達がケタケタと笑い『そう落ち込むなよ。俺らが構ってやるから』と嘲笑って。
(数時間後男達から解放されてはフラフラと寮へと戻るもいまだ先程のことが信じられず僅かな望みをかけては相手の自室の前で相手を待って姿を現したところで鍵を強引に奪い部屋の中に入る。
明らかに疲れの色が見える相手の顔色に“なんで…”と唇を噛み締めてはゆっくり近付き相手の頬に触れて。
「…なあ、さっきの全部嘘なんだろ?……あの男に脅されて言わされただけなんだよな?」
(相手が自分の為に辛く当たったとは知らずに、相手にせまるように切なげに見詰め「……だってあんたこの前、男も女も関係ないって言ってくれただろ?あれは演技だったって言うのかよ」と声を震わせて。
ふと相手のつけているピアスが変わっているのに気付いては耳にそっと触れ「これも無理矢理付けさせられたんだろ?」と。
そして相手の襟元を掴み無理矢理唇を奪っては相手を睨み「…俺は信じないからな!あんたがあの男に好きでついていくなんて、絶対信じない!…俺は…俺を好きだって言ってくれたあんたを信じる。……今のあんたの言葉は全部嘘だ。…嘘に決まってる」と感情を露わに声を上げ知らずのうちに相手を追い込むような言葉を並べては相手のベッドに押し倒し力任せに深く口付けようとして。
>露木
( 部屋の前にて待ち伏せてたのか、彼奴に腕を掴まれては自室に押し込まれて。
相手がこうも感情を顕にするのは珍しく内心驚くも相手の為だと言い聞かせては表情を冷たくして。
ベットへと押し倒されては僅かに震える相手の瞳を見詰めては心が苦しくなるがここで演技を止める訳には行かないのだと。
唇が触れる寸前に相手の肩をグッと押しては嘲笑う様な笑みを浮かべ「俺に抱かれたいとか??だからこんな構ってくんの??」と緩く首を傾げる。
馬乗りになる相手に自ら口付け深い物に変えて行き漸く唇を話すと舌舐めずりをして。
「もう良いだろ、流石に女じゃ無いとこの先は無理だし…俺あんたに用事も無いし」
( 以前相手を襲った癖に矛盾した事を言えば相手をグイッと押し退けベットから降りようとする。
泣きそうな程に切ない表情をする相手に一瞬表情が歪みそうになるも一度強く瞬きをしては抑えて。
「今の俺を信じたくないんなら好きにしてくれや。あんた都合の良い事だけ信じるたちだったんだな。………あ、それからこのピアスも俺が好きで付けてるだけ。無理矢理とか言ったらあの男に失礼だろ。………彼奴すげぇ良い奴だからさ、欲しい物なら何でも買ってくれるし女も飽きる程寄越してくれるし」
( 相手の方に向き直り「あの男だけは特別なんだよ、彼奴は同性でも気持ち悪いと思わない」と。
感情が出る前にさっさと相手を退室させようとするも自分が強引に押し出したのでは意味が無い。
相手が自分から出て行ってくれなければ。
ふと煙草を取り出しふうっと煙を吐き出すとまだ長い煙草を相手に手渡す。
「そんなに俺が好きなら根性焼きしてみろよ。俺の痛みを分かってくれるぐらい出来るだろ??」
( 最低な言葉を吐きつつまさか本気にする訳無いだろうと思いながら心の内で“早く出て行ってくれ”と。
>桐崎
(相手の言葉が自分を守ってくれているものだと知らずにそのまま受け止めては喪心し渡された煙草に視線を落としフラリと後退る。
相手を許せない…、その筈なのに好きな相手をそう簡単に恨めるわけがなく、相手を揺れる瞳で見詰めては微かに笑みまだ鬱血が散らばる胸元を開けると相手を見つめたままゆっくりと煙草を肌に押し当てて。
瞬間、肌の焼ける激しい痛みに絶叫しそうになっては歯を食い縛って堪えガクガク震える足で何とか立つが、次に数センチずらしてもう一度押し当てたときガクンと膝が崩れ落ちる。
それでも声は上げずにくぐもった声で呻いては乱れた呼吸を整えた後、相手を力無く見上げ。
「……御免な…、…こんなことしてもあんたの痛み、分からないよ。……だって自分でやるのと他人からやられるのとでは全然違うだろ?」
(ジリジリといつまでも痛む火傷の痕、相手は幼少期からこの痛みにずっと耐えていた。
しかも“親”という本来自分を守ってくれる存在から。
その痛みは相手にしか分からない計り知れないもので……。
唇を噛み締め俯いては胸元の服を握り閉めながらユラリと立ち上がり相手を見つめ。
「………もう邪魔はしないよ。あんたが本気であの男の元に居たいなら何も言わない。…でも、少しでも辛いと感じたら頼って欲しい。……男が嫌なら…女になるから」
(自分でも馬鹿を言っていると分かっていたが好きになった気持ちをそうは捨てきれずに。
それが相手を逆に苦しめているとも知らず小さく微笑んでは「…じゃあな」とまるで普段と変わりなく別れの挨拶を述べては相手の部屋をあとにして。
(自室に戻りシャワーに籠もっては明日から相手とどう顔を合さずに過ごそうか考える。
未だ相手の言葉が信じられずズキズキと胸が痛んでは、この痛みを忘れるために相手のことはなるべく考えないようにして。
(其の頃、相手の元には男からメールが着ており《明日仕事が終わったら僕の別荘を案内するよ。君の部屋も用意してるから楽しみにしててね。その前に街でお茶でもしようか》と。
>露木
( 一人になった自室、まさか相手が本当に根性焼きをするだなんて思っておらず真っ青になってはジワリと瞳が潤むのを感じ袖て強く擦って。
相手が傷付く必要なんて無いのだ、なのに平気で自分の最低な命令を実行した相手が酷く哀れで。
どうしてそこまで自分の事を考えてくれるのか分からずに一筋涙が落ちては天井を見詰めて。
( 翌日、眠れる筈も無く相変わらず悪い目付きで男との約束の喫茶店へと訪れる。
先に着いてた男は嫌がらせのつもりで自分の苦手な炭酸を注文しては『奢ってあげるから飲んで』と。
顔を顰めながらさり気なく飲まず、男の一方的な話を聞き流しては頭にあるのは昨夜の相手で。
『さて、そろそろ行こうか。ちゃんと君の個室もあるから安心してよ』
( 男がカードで支払いを済ませ自分の腕を乱暴に引くのに無表情で着いて行き男の別荘へ向かう。
広い部屋に入れられ外から鍵を閉められては窓からぼんやりと外の様子を眺める。
バイトに顔を出さないのは怪しまれると、バイトの時間と学校や寮の門限時間には解放してくれるとの事で。
疲れなどからゆっくり瞳を閉じ浅い眠りに落ちた所で ふとまた不思議な夢を見る。
長髪で着物を纏った“相手”が自分の頬に触れては必死に何かを訴えている。
何を言ってるのか分からずに「………菊」と名を呼んだ所で目を覚ませば目前に男が立っていて。
名前でなど呼んだ事無いのになぜ相手の名前を呼んだのは自分でも分からずに男から距離を取ろうと後退っては扉に手を掛ける。
『何逃げようとしてるの??………それと“菊”って誰の事なのかな』
「べ…別に誰でも無い。……………身内だ」
『君の身内に“菊”なんて人は居ないよね、嘘を付くなら君の身元くまなく探すけど』
「……………っ」
『………誰??』
「……………と、………友達」
( 顔を俯かせ苦し紛れにボソリと呟いては不機嫌そうな男に「…ごめん、怒らせたなら…もう言わない様にするから」と告げて。
>桐崎
(男は相手の言葉にまだ不満気だったが相手が従順なのに気を良くして与えたピアスを撫で上げて『君のために服と靴も買ってあげたんだよ』と海外の高級ブランドの衣服を何着も相手に渡し『今度からは此れ着てね。あと君のスケジュール全部教えて?…言っておくけど嘘吐いたらすぐに分かるから』と相手の予定など知り尽くしているくせにわざと聞いては銀髪に厭らしく指を絡め。
(朝、目覚めてから未練がましく相手の事を引きずっては相手からメールが来ていないか何度も確認していて。
あんな酷い仕打ちを受けたのにどうして相手を憎み切れないのだと溜息を吐いてはなるべく会わないようにするため大学の敷地で過ごすようにして。
大学の空き教室にて気を紛らわすようにパソコンに向かっていると突然笑顔の兄が現れて。
『やっと見つけた!…どこにいるかメールしたのにー』
「…あー…ごめん…」
『……ねえ、また繿と何かあった?』
「…、……別に。……こっちが勝手に思い上がってただけだから」
『…俺には話せないこと?』
「……………綸、ちょっと付き合って」
(兄の問いを無視してジッと相手と瓜二つの顔を見詰めては兄の手を取り街へ向かう。
それから特に意味もなく服屋やカフェに行き兄との時間を過ごしてはいつもより積極的に身を寄せて笑顔で会話をして。
兄に相手を重ねる…そんな最低なことをしている自分を殴ってやりたかったが身勝手で貪欲な感情は抑えることが出来ず結局夜まで兄と時間を共にして。
(寒空の下、兄と二人知らない間に相手のバイトする店の付近に来ては其の事に気付かないまま近くの細道に入り缶コーヒーを飲む。
「今日は付きあわせて悪かった…」
『ううん、いいよー。お安いご用!』
「……………彼奴、どうしてるかな……」
(ぼんやりしては無意識に相手のことを呟いてしまいハッとなっては「そろそろ帰ろう」と誤魔化すように笑み空缶をゴミ箱に捨てと足を踏み出す。
が、暗がりでポイ捨てしてあった空き瓶に気づかず思いっ切り踏んづけ足を滑らせては体勢を崩してしまい、其れに気付いた兄に向き合う形で支えられて。
すぐに謝り離れようとするも至近距離で相手と同じ顔と目が合えば、何かを求めるように兄の頬に手を伸ばしそっと唇を重ねて。
>露木
( バイトの時間になり漸く男に解放して貰うと一度寮に制服を取りに向かい真っ直ぐバイト先へと向かう。
激しい頭痛や目眩が襲う中通り掛かった細い路地にて寄り添う二人組を見付けては興味も無さそうに視線を逸らす。
…が、それが誰なのかに気付いてはハッとして振り返り唇を噛み締めて。
兄を見上げ深く口付ける相手とそれに答える様に相手の腰に手を回し髪をくしゃりと掴む兄。
時が止まった様にも感じ自分から突き放したにも関わらず身勝手な独占欲が沸き上がる。
『菊、俺本気で菊の事愛してるから』
( 兄が真顔で相手に告げた所で、相手の答えを耳にしたくない一心で駆け出してはバイト先の店へと入り。
平然を装いながら仕事に取り掛かるも頭の中は相手の事で一杯で。
( バイト終わりのバックルーム、着信音が鳴り響き青年からの連絡に出ては電話の向こうで騒ぐ様子に呆れる。
『兄さん大丈夫??何か元気無くない??』
「別にそんな事無ぇよ、思い違いだろ」
『そうかな-…、それより兄さん来週暇??』
「ごめん、…俺休みとか全部無くなったんだわ」
『え!!!何で!!!』
「本当ごめん」
( 僅かに声色が震えるのを必死に誤魔化しては助けを求めてしまいそうになるのを押さえ込む。
「……………露木と綸、ちゃんと上手く行ってるかな」
『ん??どうしたのいきなり』
( ボソリと呟いた言葉に慌ててハッとしては「じゃあそろそろ切るから」と告げて。
相手のアドレスを開き表情を歪めるとそのまま直ぐにポケットへとしまい込む。
そろそろ学校も始まると思うといつもは憂鬱だったが今は学校にもすがりつきたい程で。
寮へと戻り共同スペースの暖房を付けてはソファーに座り切な気な顔をして。
「……………露木」と小さく呟いては途端に虚しさが溢れ髪をくしゃりと掴み携帯を憂いげに見詰めて。
>桐崎
(相手に見られているとは知らず兄と口付けを交わしては一瞬相手と心を通わせた感覚になるもすぐに虚しさが押し寄せ無意識に涙を流す。
“愛してる”と相手に言われたらどんなに良かったかと最低なことを考えては、兄に何度も謝りその場から逃げ去ろうとするも兄に止められ結局二人で寮に戻り。
(一度自室に戻りシャワーを浴びて部屋着に着替えるも中々寝付くことが出来ず何度も寝返ってはノソリと起き上がり緩めのカーディガンを羽織って共同スペースに向かう。
暖房が付いていることを不思議に思いながら奥へ進むとソファに座る相手と目が合ってしまい慌てて逸らしては「…御免…邪魔した」とすぐ部屋に戻ろうとする。
が、一瞬相手の表情が酷く切なげに見えた気がして足を止めてはゆっくりと振り返り相手を見詰め。
「………桐崎、……平気か?」
(突き放されたのに声を掛けるなんて相手にとって迷惑な話だが相手の顔色が明らかに良くないのが気掛かりで。
邪魔をしないと言ったのに気持ちは止められず相手の正面に屈んではそっと頬に手を伸ばし目元の隈をなぞる。
本当に男と上手くいっているのか聞こうとして、相手から言われた辛辣な言葉を思い出しては問いを呑み込み「……女遊びのし過ぎじゃないのか?ちょっとはしゃぎ過ぎだよ。……彼奴、金持ちなんだろ?なんか良いリラクゼーションの店とか連れてって貰えよ」とからかうわけでも蔑むわけでもなく友人同士の他愛のない会話をするよう穏やかな声色で述べて。
相手が男に束縛されているとも知らず“想い合う仲”なのだと思い込んでは応援するよう相手の肩を叩くとポケットから飴を取り出し手渡して「糖分取ると少しは疲れとれるから。あんまり酷い顔してると“彼氏”に嫌われるぞ」と無理して笑いからかって。
「………って…嫌われてるのは俺か。…余計なお世話だよな……御免。もう近づかないようにするから」
(首の後ろに手を回し苦笑を浮かべてはゆっくり立ち上がりその場を去ろうとするも未練がましくもう一度振り返り「……俺じゃなくても、赤城と綸には何かあったら相談しろよ」と小さく微笑み言ってはおやすみと言い残し扉に手をかけて。
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