演劇部部長と王子様

『ミュージカルも出来たら文句なしなんだけどな。こんどちょっと歌ってみてくれよ。お前なら歌も上手いかもしれねぇし？』

『いや！ミュージカルやめておきましょう！ミュージカルは！ほら、私が歌なんて歌ったらお姫様達が聞き惚れちゃって内容理解してくれませんから！うちは演劇部です！歌うより演じたいです！』

『ミュージカルも演じてるだろ。そこに歌と何かしらが入るだけだ。鹿島、ミュージカルやろうぜ！』

『いえ！私は演技を見て欲しいんです！一言一言に気持ちを込めています！歌ではそれが出来る自信がありません！……情けないですが……』

『歌うのを拒否してるようにしか見えねーのは俺だけか？まさか鹿島…お前…』

『～！そうですよ！私は音痴なんです！だから、火潜りでも宙返りでもしますから、歌だけは勘弁してください！お姫様達をがっかりさせたくないんです！先輩がミュージカルやりたいって言うから、結月に習ってますけど、どうしても上達出来なくて……！』

『まぁ、ミュージカルはそんなに急いでねーし…上手くなってからでいいか。それにしても、お前にも苦手なものがあるとはな』

『当たり前じゃないですか！私だって人間なんです！堀ちゃん先輩限定で怪談だって苦手ですよ！』

『お、おぉ…そうだな。つか、限定ってどういう意味だよ。他の時は怖くねーのか？』

『私が怖がる様なたまに見えますか？先輩、話し方上手なんですもの。物凄く怖かったです。あ、先輩、大変です！』

『そら、怖がらせるために話してるんだからな。怖がらないとおもいろくないだろ？な、なんだよ？そんなに慌てて…』

『時計見て下さい！何時の間にか２時半ですよ！？そろそろ寝ないと明日ヤバいです！あ、明日、早めに出て駅で先輩待つので一緒に登校しても良いですか？読み合わせ付き合って下さい！今回の王子、どうしても掴めなくて！』

『あー、そうだな。じゃぁ、そろそろ寝るか。ん、まぁ、別に良いけどよ。遅れるなよ？』

『先輩、冷静ですね。私は目が飛び出ましたよ。おやすみなさい。電話なら、先輩の美声で安眠出来そうなのに残念です。はい、勿論です！私、朝は強いんですよ！朝は女の子にも誘惑されませんし！ご希望であれば、王子姿でお宅までお迎えにあがりますよ、お姫様』

『来たら蹴り飛ばしてからドアを閉めて学校休むからな。つか、誰がお姫様だ！誰が！ぜってー来んなよ!!安眠どころか永眠だからな』

『学校休まないでくださいよ！先輩、私の王子姿好きでしょう？朝から見れるなんて天国じゃないですか』

『制服で来い、制服で。何で王子姿なんだよ』

『先輩がお姫様だからです！……でも、途中で着替えるの面倒なので、制服で迎えに行きますね！おやすみなさい！…夢に逢いに来て下さいね？』

『姫じゃねぇよっ！たくっ…じゃぁ、また明日な。因みに夢の中には行かねぇぞ』

(朝になり、多少足を引き摺りながらも堀宅に行けば、堀母に滅茶苦茶歓迎されて)お姉様のご飯が食べられるなら朝食抜きで来ればよかったな。え、子供！？そ、そんな！まだお付き合いもしてないのに、とんでもない！……そもそも、先輩、妊娠出来るのかな？(真剣に悩み)