karasu925 2014-12-04 17:24:52 |
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「…実はあいつ、小さい頃に誘拐されたことがあって……」
「誘拐!?」
「ゆ、誘拐って!?誘拐!?」
「え!?嘘!?」
「そんなことが…」
「あらら、誘拐されたのかい」
魅織のみならず、聞き耳を立てていた唯、優美子、月漓、ルミナまでも驚いて目を見開いていた。ソーニャは暇そうにテーブルに伏せているが、恐らく話は聞いているだろう。一鷹はそのまま話を続けた。
「誘拐事件の前に両親の話をしておく。小癒希の両親は既に他界してて、母親は小癒希を産んで直ぐに交通事故で亡くなったらしい。父親はそのあと、シングルファーザーとして美花さんと小癒希を育てていった。そして、誘拐事件が起こる切っ掛けとなることがあった。」
一鷹が語ることは、その場の全員の予想を遥かに上回ることとなった。
シングルファーザーとして美花と小癒希を育てていた父親は、ある日、別の女性と婚約した。その女性はとても優しく、周りから見ても本物の家族と思える程に仲が良かった。しかしそんな中、事件が起こった。小癒希が誘拐されたのだ。犯人は再婚した女性の元・婚約者の男性だったらしく、彼女が新しい幸せな家庭を持ったことに嫉妬し、激怒したのだという。彼は当時7歳の小癒希に目を付け、誘拐した。誘拐された翌日、『小娘の命が惜しければ身代金ニ百万を用意しろ』という手紙が届いた。犯人の男は、直ぐ近くにあった廃工場を取引場所として指定し、父親と二人目の母親は共にその廃工場に行った。
そこにはちゃんと犯人の男が居た。しかし、小癒希は暴力を受けた痕と思われる傷や痣でボロボロの状態だった。その光景を一鷹は独自に見付けた抜け道からこっそり覗いていたという。
両親は身代金が入ったバッグを男の前まで持って行った。しかし、それが悪夢の始まりとなった。バッグを置いた途端、男は懐から拳銃を取りだして二人を殺害した。一面に深紅の花が咲き乱れることとなってしまった。
一鷹はその一部始終を見た。無論、小癒希は目の前で目の当たりにすることとなってしまった。
「そんな……酷い…!」
「その時、小癒希の心には癒えることがない傷が深々と刻まれたんだ。今もたまに夢を見てうなされてるらしい…」
「……それで……どうなったの…?」
唯に聞かれて口を開こうとしたその瞬間だった。廊下側のドアが開き、美花が入ってきた。
「…悪いけどそれ以上はやめてもらえるかしら?……私、思い出したくないから……」
「ッ………すみません」
「…ふふ、分かればよろしい。」
それだけ言って美花は表情を明るくし、入浴の準備が出来たことを伝えた。しかし、ここで新たな問題が出た。
「ところで、みんな着替えはどうするの?」
「「「「あ」」」」
完璧に忘れていた、という顔をする。しかし、ここでルミナが動いた。
「ふっふっふっ!みんな安心したまえ!この私がなんとかしようじゃないか!ソーニャ君、例のモノを。」
「………ん」
ソーニャは羽織の裏へ手を入れ、中から分厚いノートパソコンのような機材を取り出した。一体何処にそんな物を入れるスペースがあるのか、と全員が思っていると、視線に気付いたのらしい。
「……空間断絶の力で別の空間に繋げてる」
それだけ言ってテーブルの上にある煎餅をバリバリの食べ始めた。それ以上喋る気はないようだ。相変わらずの無愛想さに、ルミナは笑うしかないと言わんばかりに笑った。
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