karasu925 2014-12-04 17:24:52 |
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その頃、小癒希達がいる喫茶店の反対側にある茶葉専門店の窓側のテーブルでは、伊々島ルミナが優雅に紅茶を飲んでいた。
「ん~♪うまい!!君も一緒しな~い?」
ルミナは横を見る。そこには白い羽織を上に着た、15歳くらいの一人の少年が日本茶の茶葉の入った袋を手にしていた。
「…遠慮します。僕は紅茶は好みませんので。それより、さっき買った饅頭を知りませんか」
少年は後ろを振り向かない。そんな少年を眺めながらルミナは答えた。
「あ、これのことかい?いや~これ美味しいねぇ~♪…むぐ」
「…」
少年は何も言わずに茶葉の入った袋を棚に戻し、振り返った。そのままルミナの方へと歩いていき、テーブルの上の饅頭を手にした。そして、それを食べた。
「……はぁ…相変わらず君は目を見ないんだねぇ。会話している気分になる?」
「………目を見ずとも、会話は成立します。」
「そんで相変わらずの理屈かい……」
ルミナはもう一度「はぁ…」とため息をつき、紅茶を飲んだ。そして「うまい♪」、と一瞬で表情を変えた。が、しかし、直ぐに真剣な表情になった。
「………で?何故私達がここに存在る(いる)必要がある?」
「………存在る(いる)必要がある、とは違う。ここに存在て(いて)も大丈夫、ってこと。」
「君の言う『事象』ってやつかい?」
ルミナの返答に少年は頷き、そのまま窓へと詰め寄る。そして、小癒希達がいる喫茶店を見据えた。
「……ここの事象はもう後半になり、象(かたち)が確率した。分岐はもう過ぎたから。」
「それでここに存在て(いて)も大丈夫ってわけか。ん~、なかなか興味深い。」
「………好奇心は猫をも殺す。」
少年の返答にルミナは「これは参った!」と笑った。そんなルミナをしりめに、少年は確立した事象の行く末を見つめた。
*
*
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少年は呟く。小さく、確実に、しっかりと。
「さて…見せてくれるかな………この確立した事象さえねじ曲げる程の剣(つるぎ)の力を………その刄(やいば)の輝きを……」
*
*
*
喫茶店では、小癒希達が『市ヶ谷魅織』と、『全日本メイド評議会』について優美子と市ヶ谷魅織本人から話を聞いていた。
「………と言うわけで、まとめると『全日本メイド評議会』とは、日本全国にいるメイド達を調査して評議したり、メイドを育成したりしてる団体ってわけ。」
「なるほど、つまりメイドフェチの変態と変人の集まりということか。……怖いな。」
最終的に、小癒希がまとめたようなものだった。評議会について分かったところで、『史上最高クラスのメイド』という名を持つ市ヶ谷魅織についての話に切り替わり、一鷹が質問をする。
「で、『史上最高クラスのメイド』の名を持つ魅織さんは、そんなにすごい人なのか?」
「もちろん!!何を隠そう、魅織さんは史上最高クラスだからねっ!」
「……何が史上最高クラスなんだ?」
「魅織さんはね、掃除や洗濯等の家事仕事をもちろんのこと、スポーツや武道、ゲームやピアノ演奏まで何でもできるって話なんですよー!」
「そ、そんな大したことじゃないですよ……」
優美子の話に魅織は照れくさそうにした。しかし、否定しない点では全て事実なのだろうと全員が思った。
「ほぇ~、ピアノの演奏も出来るんだ、今度教えて貰えます?」
「はい、喜んで!」
「あの、このラスクとかは魅織さんが作っていらっしゃるのですか?」
「はい。私が全部作りました」
「でしたら、今度私に作り方を教えてください~!」
「わかりました、秘伝の技を伝授してさしあげますね!」
皆、楽しそうに会話する中で約一名が、居心地悪そうにしていた。小癒希である。何故居心地悪そうにしているかというと………
「あの…魅織さん?……何で俺の頭をずっと撫でてるんですか?」
「あ、ごめんなさい!私、可愛いものには目がなくてつい……」
そういいながらも、撫でる手を止めない辺り、可愛いものには相当目がないようだ。
頭を撫でられるうちに、小癒希はだんだん眠くなり、目を細めた。
「凄く可愛いです。お持ち帰りしても宜しいですか?」
「お断りします。」
「それをお断りしても宜しいですか?」
「……これは天然なのか……?」
一切の悪意等がない天然を相手にすることが、どれ程大変なのかを今この瞬間、小癒希は思い知ったのだった。
~分岐~
A.小癒希と魅織のちょい百合展開
B.急襲からの史上最高のメイドの本領発揮
C.伊々島ルミナ&謎の少年の訪問
D.警察官の男はイビキがうるさい件
E.生き残った(笑)不良達の恐ろしい会話が聞こえる
F.いつの間にか地元警察の到着で事件解決
G.貴方が指定する
そんな彼等をよそに、一人独自の行動をとっている人物が居た。
「グゥ~~…グゥ~……グガァ~……」
「……む…」
警察官の男が居眠りをしている。仮にも今は非常事態の筈であり、居眠りしていられる状況ではない筈だった。
「クガ~……グゥ~……」
「この人は熊か?」
「うるせぇ……ここにいるのバレるんじゃねぇの?…ひぅッ!?」
「あら可愛い~!もっとやってみてもいいですか!?いいですよね!! ふぅ~♪」
「あぅッ!?」
「私もやる~!」
「……………」
この集団はカオス過ぎる、と月漓は確信したのだった。
月漓はなんとなく入り口の方を見た。すると、そこには人影があり、月漓はそれを全員に伝えた。
「静かに!……誰か居る。」
「えッ!?」
「マジか!?」
「おじさん!!起きてッ!!イビキがうるさいです!!」
皆、警戒を強める。一鷹は、いつでも戦えるように構えている。小癒希に関しては18禁エアーガンのライフルを構える。人影はこちらに近付いてくる。うまくいけば気付かれないかもしれない。が、ここでアレが厄をもたらすこととなった。
「グゥ~……グガァ~……」
「「「「「「!?!?!?」」」」」」
警察官の男のうるさいイビキの再来である。終わった、誰もがそう思ったその時だった。
「あ、いたいた~!やぁ、久しぶりとはじめまして。伊々島ルミナだよ~?ビックリした?」
場が白けた。人影の正体は伊々島ルミナと羽織を着た少年だった。全員がほっとした。しかし、小癒希は、はっとして思い出した。
「伊々島ァ!!お前一体俺に何しやがった!!お前があの桜餅に何かしただろ!?それで俺が女体化したんだな!?」
「あ、やっぱりそう思う?でも残念!桜餅のせいではないんだな~」
「どっちにしろやっぱりお前が俺を女体化させたんじゃねぇか!!」
ルミナは「うん♪」と頷き、小癒希に完全にキレ、他の全員が小癒希がルミナに突撃しようとするのを止めにかかった。しかし、一鷹がヒョイと首根っこを掴むと小癒希は「はわわ!?」と声を上げ、大人しくなった。それを見た魅織は、「可愛いです~!!」といいながらスマホで写真を大量に撮った。
「……事象が変わった……準備をはじめた方がいい」
「……?」
少年の呟きを聞き取った月漓、しかし、一体何のことを言っているのか分からないため、少年にたずねようとした、その時だった
「見付けたぜぇぇぇぇッ!!!!」
「な!?しまった!?あの不良どもか!!」
「え!?ちょ!マズイんじゃない!?」
入口の方からさっきの不良の一人と思われる男が近付いてくる来た。今いる場所は喫茶店の一番奥の席で、ほぼ逃げ道がない。身を隠すのには良いが、見付かった時のことも考えておげばよかったと後悔する。何より警戒を怠っていた自分達の甘さを全員が思い知った。
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