karasu925 2014-12-04 17:24:52 |
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眩しい、まだ眠い。しかし眩しい。昨日は電気をつけっぱなしで寝ただろうか?それに、今被っている毛布はいい香りがする。少年、山田優璃は不思議に思い、仕方なく目を開ける。しばらく目の前がぼやけていたが、すぐに焦点が合ってくる。すると見えてくるのは、やや広めの部屋の壁、大理石の床、ドア、窓、ベージュ色の天井、天窓、そしてロングヘアの美少女がこっちを真横からジッと見ている。
「…ふぁぁ~…」
「おはよう」
「あ、うん。おはよう」
「突然だが山田君、君を拉致した。今日から君は私の奴隷だ。」
普通、こんなことを言われたらビックリするだろう。だが、この少年は違っていた。まだ眠いと言う顔をし、ジッとしている。他人から見たらまるで、諦めているか、状況を飲み込めていないようにすら見えるだろう。しかし、当の本人、優璃はというと。
「ふぅん。ところで、ここは何処?君は誰?」
「私は姫ヶ崎ユカリ。ここは………説明が面倒だね。それより、お腹が空かないかい?おにぎりを作ってきたんだ。」
「ふぅん。じゃあ、有り難くいただくよ。」
普通に会話をする二人はまるで昔からの知人のようだった。いろいろとすっ飛ばして会話をしている。初対面なのに、ましてや奴隷宣告されているのにここまで普通に会話をするだろうか?
「はい、これ。」
「ほ~、これはまた美味しそうだね」
そんなことを気にするでもなく、優璃はユカリの持ってきていたおにぎりを見る。きっちりとしていて見栄えのいい三角形をしており、米粒一つ一つが輝いていた。
「いただきます。」
「いただきます。」
まずは一口、パクリと食べる。その瞬間、衝撃が優璃の体を駆け巡った。驚きで目を見開く。
「………美味しい…いや、美味しすぎる……」
「そう、ならよかったわ。さぁ、まだまだあるから」
「ならば遠慮なく」
そう言ってモグモグと食べ初める優璃。その様子を嬉しそうに見つめるユカリ。もう、何でもアリだった。
「で?なぜ僕を拉致したし?」
おにぎりを全て食べた後、優璃はユカリに聞いた。
「たまたま…じゃダメかな?」
「ダメ。だって君は僕の名前を知っていた。僕らは初対面の筈だ。」
「むぅ…」
「それに、君一人で僕を運ぶことはできない筈だ。一体何がどうなっているのか教えてくれ。」
「……奴隷が主に口答えしてはいけないよ。君は拉致、監禁されている身なんだよ。」
「卑怯な……ここの暮らしに慣れなければいけないな……」
華麗かどうかは別として、スルーされた。当分教えてはくれないだろう、と優璃は思った。ここの暮らしに早く慣れようと思うあたり、彼に『逃走』の文字は完璧にないようだった。
「それじゃあ」と、おもむろにユカリが椅子から立ち上がった。優璃はそれをじっと見つめている。そんな優璃にユカリは、小さく、本当に小さく微笑んで口を開いた。
「では、君の部屋に案内しようか。」
「ん?ここじゃないのか?」
「あたり前だよ。君にこの部屋は不相応だろう?」
「まぁ、確か今は奴隷だっけ?…まさか無機質な監禁部屋に……」
優璃が少々嫌そうにユカリを見つめると、ユカリは「まさか、同じ人間にそんなことはしないよ。」と言う。もう、『奴隷』はそういう『設定』になっているようだった。安心した優璃はホッと胸を撫で下ろした。
「ふふ、さぁ立って。部屋に着いたら全てを教えてあげよう。善は急げだ。」
「そうか、それは楽しみだね。」
そして二人は部屋を後にした。
部屋を出た瞬間、目の前には砂浜、その先には海が広がっていた。
「……ここは、日本…ではないな…」
「その通り、ここは…この『島』は日本ではないよ。それにこの島はどんな地図にも載っていない、“存在しない筈”の島なんだ。」
「存在しない筈の島……か。君は一体何者なんだ?」
優璃はユカリに問うが、「さぁね。」とはぐらかされてしまった。しかし、何かしらの権力は持っているだろうと優璃は推理している。実際にそうだとしても僕には関係無いな、と、優璃はその程度にしか考えなかった。
この刀は卍解する事で炎自身が意思を持ち、
三個の火の玉が相手に突撃する。火の玉には様々な能力がある。
『嵐の炎』は相手に炎が移り、跡形もなく消える。
『大地の炎』は炎で相手を包み石化させる。
『雨の炎』は相手の動きを止める能力を持つ。
「さぁ、ここが山田君の部屋だよ。」
「おぉー!!!」
優璃はあまりの光景に目を輝かせた。
今は前の部屋から約60メートルほど離れたところにある階段で地下らしき場所に降りたあと、100メートル程まっすぐ進んだところにある部屋にいる。本当に監禁部屋でもありそうな雰囲気の道のりを経て目にした光景に優璃は驚きを隠せなかった。何故なら、“目の前が海中だった”からだ。
「凄い…窓越しに海の中が見えるとは……」
「驚いてくれたようでよかったよ」
ユカリは優璃が驚いたのを見て、とても満足そうだった。
「此処が僕の部屋か…」
「そう、山田君の部屋。」
一通り部屋を見回す。デーブル、ソファ、テレビ、ベッド、トイレ、シャワールーム、キッチン、クローゼット、それ以外は何もないが、その素朴な感じが妙に好ましかった。元いた自分の家もこんな感じだったからだろう。
「でも、何故地下なんだ?」
「………それは秘密………」
「何でも話してくれるんじゃないの?僕を拉致した理由、その経緯、これからのことも……」
「………………………………わかった…」
ユカリは観念したかのように目を閉じた。
*
*
*
この世界の中には、『異端者』と呼ばれる存在がいる。それは通常の人間とは違い、世界の様々な法則性を無視した力を持っている。ある者は手から火をだし、またある者はずば抜けた身体能力をもっていたりと、実に様々である。山田優璃もまた、『異端者』の一人である。彼は特異稀な存在であり、複数の能力を持つ『多重能力所持者』である。それはさておき、この世界には『異端者特別研究会』という異端者研究団体がある。ここでは日々、異端者の研究が行われており、その内容は、ちっぽけな観察から、果ては非・人道的な残虐的なものまであるという。しかし、それでも彼らは罪を問われることはない。何故なら、『異端者には人としての法が適応されない』からである。簡単な話、『人として見られない』からだ。その研究会は、新たに『山田優璃』という極上の実験材料を見つけた。ユカリはその研究会の会長の孫娘であり、研究施設へと監禁される筈だった優璃を自分のもとへ来させることで、研究会の手元から逃したとのことだった。
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