風人 2014-11-30 06:00:58 |
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『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』は内容が衝撃的なので読む機会は意識的に少ない。
だけど『マドンナ・ヴェルデ』はヒロインの母親がほんと奔走する物語。
『桜宮サーガ』は基本的に医療従事者の物語だけど、『マドンナ・ヴェルデ』のヒロインの母親は特に医療に関わっていないふつうの母親。
ヒロインたる娘から代理母になってほしいという依頼をはじめは受ける。
だけど、物語が進むにつれ“生まれてくる子ども”の立場で考え動き反発する。
“母親”という視点から海堂尊先生が書いてる。代理母の問題が諸々あるなか解決しわだかまりないように動く。
妊娠や出産というのが女性しかなくとてつもなく大変な作業、生命を生む(産む)行為なのは伝わる。
反面、まだ独身だから実感ないけどいざそういう立場になったらこわいと思う。
『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』は両作品はさほど男性陣は活躍が少ない。
速水先生がタバコを吸えないのは意外な一面。
『極北ラプソディ』ではヘリパイロットの大月さん、CSの越川さんと酒飲み勝負で競い敗北(苦笑)。
タバコを吸えないのは意外な一面すぎてお茶目(笑)。
速水先生は東城医大でも極北救命救急センターでもジェネラル、将軍さまでも経験積んだ大人たちからは子ども扱い。
高階病院長も桃倉センター長も扱いには手を焼きながらも手元には置いておきたい。
この辺も大人の事情がうかがえる。
『桜宮サーガ』シリーズは『シムシティ』に喩えられてたけど『仮面ライダー』にも近いところあるようにも思える。
桜宮市を中心に過去、現在、未来の時間が行き交い東京霞ヶ関、北海道極北市や雪見市、ドイツのブリュッセル、アフリカのノルガ共和国など様々な人物が重なりあう。
『ブラックペアン1988』の佐伯病院長の過去の時代を経て高階病院長の『チーム・バチスタの栄光』からの現在、『モルフェウスの領域』などの未来。
また北海道には『極北シリーズ』で主人公を担った今中先生など。
霞ヶ関を舞台にした白鳥圭輔 & 姫宮香織コンビ、『螺鈿迷宮』の天馬大吉くんなど。
『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』の曽根崎理恵先生。
医療をテーマにした作品だからか人物や世界観が広く奥深い……。
東城医大は田口先生と白鳥さんの真逆師弟コンビで守られたところある。
真逆な関係は『ひかりの剣』などでも見られる作品の魅力。
『ケルベロスの肖像』は物語の最初と最後が見事に結実してる。
冒頭、高階病院長から依頼を真っ向から断る意思表示であっさり受け取られたと思ったら相手は白鳥さんからではなく姫宮香織からだった。
白鳥さんから『会ってはいけない』と念を押されてたのに会ってしまう(苦笑)。
終始、依頼を受けるまで彼女に振り回される田口先生。
結果的に東城医大は物語内のスキャンダルとAiセンターの焼失ということで多大なダメージを被ることになる。
けど、引退を考えていた高階病院長からの院長代行の命をなにも聞かずに受け取る田口先生の成長は見事なもの。
あまつさえ高階病院長に自身を説得してくださいというアクティブ・フェーズ。
物語の前半に天馬大吉くんにやややりこめられ4Sエージェンシーの城崎さんに依頼を断られたことに比べたら最後に得たモノは大きいとも取れる終わり方。
敗北から得るモノはあるとも言える。
桜宮小百合は表立っては動けないとは思えないけどどうなるのか。
『極北ラプソディ』で『モルフェウスの領域』の西野昌孝はちょっとだけ出てた。
『極北ラプソディ』の物語にほとんど関わらないけど、『モルフェウスの領域』の伏線としてコールドスリープ(冷凍睡眠)の話題はちらっと出てる。
この辺、『桜宮サーガ』シリーズの世界観が広く人物が行き来してるところ。
さりげなく話題を振っておいて別な時間や場所で物語が展開する。
ちゃんと読んでおかないと見落とす(>_<)。
あちらこちらで人間関係、人脈が広がってる。
『アリアドネの弾丸』を再読中だけど、西園寺さやかから桜宮小百合が覚醒する描写は一種の自己催眠か暗示でもかけてたように思う。
同一人物でありながら『極北クレイマー』での西園寺さやかは記者としての人格を宿し、本来の桜宮小百合に戻ると復讐の鬼と化す。
だけど桜宮小百合としての人格でしょうか。めらめらと燃えるものを宿しながら内に醒めたような性質もある。
『ケルベロスの肖像』では悪鬼ともいえる憎悪を高階病院長と東城医大に向けながらもなんだかんだで目的は達してる怖さ。
『アリアドネの弾丸』を再読したら南雲先生の極北市監察医務院を潰したのは世良先生と彦根くんだった。
『極北ラプソディ』で監察医務院に火をつけたのはもしかしたら彦根くん?と考えたら驚く。
あちこちで『桜宮サーガ』は人物が動いてる。
彦根くんは大阪府知事・村雨なる人物とも関わりあるのも書かれてた。
『アリアドネの弾丸』をあらためて読むと、斑鳩室長と桜宮小百合たちは合法的に東城医大を潰しにかかってる。
だけど、それは失敗した。
しかし『ケルベロスの肖像』では公的には死人である桜宮小百合自らが打って出ていくことで非合法に潰しにかかった。
長い物語のほんの一端にしかすぎないはずだけど、物語内の人物でも人生の一端ないし一部でもある。それを考えたら長い物語のほんのごく一部にしかすぎないけど、それがまた物語や人物に影響を大なり小なり与えてる。
『ケルベロスの肖像』で物語は一応は幕を閉じているけどおそらく『モルフェウスの領域』などに未来につながる物語に至るなかまだ語られてない物語もあるでしょう。
『アリアドネの弾丸』では桧山シオンに救われ、『ケルベロスの肖像』では彼女によって真実が露になる。
単に裏切りとも皮肉と言えないむずかしさ。
桧山シオンの存在は好き。姫宮香織とはまたちがう魅力ある。
彦根くんとシオンさんとの間に恋愛関係はなかったみたいだけど。
『イノセント・ゲリラの祝祭』で彼女は田口先生に会わずじまい。
だけど『アリアドネの弾丸』で会うことを果たし事件解決に貢献する。
桧山シオンは全体的に描写が少ないからありのままの表現から受け取った方がいい人物と思える。
『ケルベロスの肖像』でもしも、田口先生が依頼を断ったままにしてたら高階病院長は誰に依頼するつもりだったんでしょう。
もし依頼を断ったら物語は進まなかっただろうけど。
黒崎教授に頼むことはまずあり得ないしかといって坂田局長だと畑違い。
白鳥さんや姫宮香織に丸投げということもまたあり得ない。
東城医大や東城医大の血脈に関わる人物でないとAiセンターは稼働しないと考えた方が妥当。
ただし速水先生ではない。おそらく田口先生がよほど動けない非常事態ならともかく。わざわざ速水先生を北海道から呼び戻すとなると救命救急センターとの関わりもあるわけだし。
だけど高階病院長は北海道側の人物と関係ないし接触はあったあるいは相応の信頼関係がないと速水先生は救命救急センターに置かれない。
でも、もしも『ケルベロスの肖像』冒頭で田口先生が依頼を断ったままにしてたら誰が表舞台に立ったのか気になる。
姫宮香織の名前の由来を田口先生が聞きそびれるというのも珍しい話。
田口先生は多くの物語のなかで登場人物たちの名前の由来は聞いている。
『螺鈿迷宮』でも姫宮香織は自身の名前については特に語ってなかったと思うけど。
姫宮香織は言葉のセンスがずば抜けている(爆)。
名前と言葉遣いはまたちがうけど。
姫宮姓から察するとそれなりにお嬢様、『イノセント・ゲリラの祝祭』などからわかるように各省庁が彼女を欲しがってたという逸話。
お嬢様や名家というのは考えられる。
それと名前の香織を結びつけるのはむずかしいけど。
高階病院長に好意を抱いてるのは『ケルベロスの肖像』を読んだら一目瞭然(*^.^*)。
『極北ラプソディ』はやはり好きな作品。
あらためて読むと世良先生と彦根くんの結びつきは納得いくものもあるけどのみ込めないところも曖昧ながらある感じ。
だけど極北監察市民病院を潰したのは世良先生、彦根くんだったのは確実だったように思える。監察市民病院を火事にしたのを彦根くんとは思いたくはないけど。
どちらにせよ監察市民病院をこの時点で潰して斑鳩一派の拠点を潰してるのも事実。
後に出てくるドクタージェット構想も含めて医療と司法の対立で日本地図を塗り替えようとしてるとも言えなくない。
『極北シリーズ』の木村署長、この人も斑鳩室長と西園寺さやか(桜宮小百合)に利用されたという一面は否めないけど監察医務院の実態は知ってたでしょうね。
『極北ラプソディ』を読むとドクターヘリが飛ぶことで市民の命が助かっている一面がずっしり重みある。
もちろん救急車も含めて。
地元の医療センターからあちこちに飛んでる姿はたびたび見てたから。
いざという時は高速道路にも着陸して患者を助けないとならない。ニュースでそういう訓練も流れてたから読むたびに実感する。
『極北ラプソディ』で彦根くんは名前が直接出てきて触れられてるけど、天城先生については“さくらの樹”という形で喩えらるてるのは『ケルベロスの肖像』での高階病院長の過去話と表現がよく似てる。
天城雪彦なる人物がそれなりの人物がうかがえる。
『ブラックペアン1988』の続きを読まないとわからないもの。
『極北ラプソディ』の世良先生と『ケルベロスの肖像』の高階病院長の言葉が天城雪彦という人物の存在で点と点が結びつきそうですね。
おそらく高階病院長は天城雪彦が植えようとした“さくらの樹”をなんらかの事情で取らざる得なくなり時が経った後に後悔の念が人知れずあり、また世良先生もその事が原因か否かわからないけど東城医大を去るきっかけかあるいは高階病院長か誰かに復讐の念があったということでしょうね。
『桜宮サーガ』は気をつけないと人同士の点と点の人間関係はわからなくなる。
新しく読もうとした時にようやく思い出す。もちろん物語一作品でも楽しめるつくりは納得するけど、ささいなところから物語が広がってる。
『アリアドネの弾丸』や前後のシリーズを考えたら高階病院長と兵藤くん、そして藤原看護師は結託して田口先生を説得もしくは懐柔してるおもむきある雰囲気。
とりあえずまずは高階病院長から田口先生に旨を伝えながら優柔不断、出世に興味ない彼に後押しするために高階病院長はすぐさま兵藤くんに再び旨を伝えて彼から田口先生を懐柔、兵藤くんが失敗した場合は藤原看護師が控えてる二段構えだったのではと推察できる。
そもそも『アリアドネの弾丸』冒頭に至ってはほんの15分ほど前の話題がすぐに兵藤くんに伝わるだろうか?
考えたくはないけど病院長室の室内か側にいた可能性も考えてしまった(( ̄_|(笑)。
だけどそうでないと“廊下トンビ”の異名もないわけだし。
『モルフェウスの領域』でも如月翔子、桂奈、田口先生以外でアツシ少年の覚醒を知ることができたのは高階病院長、深読みしたとしても藤原看護師。
兵藤くんは高階病院長、藤原看護師からふたつの情報ネットワークがあってもふしぎではない。
司法と医療の対立を『田口白鳥シリーズ』を軸に考えたら司法側がやり過ぎた印象を与えてる感じもある。
もちろん作品内では斑鳩室長の意向が目立つ。『アリアドネの弾丸』で彼が強く出れないのは加納警視正に貸しがあるから。もし賃借関係がなかったら高階病院長はこの時点で殺人犯として起訴された可能性は充分にあった。
田口先生の白鳥さんをはじめとする人間関係の良さが結果的に東城医大を救うことになる。
加納警視正がどの程度かは別にしても東城医大にシンパシーあるのも事実。
『桜宮サーガ』は相手の足元をすくったり転ばしたりの連続的な物語。医者、官僚、市民に関係なく。
けど『アリアドネの弾丸』で斑鳩室長は過激にしすぎたと思う。北山錠一郎、宇佐美警視というふたりを犠牲にしても東城医大は潰れなかった。
官僚的発想からしたらこの人物を危険視して後々、“ハシゴ外し”された可能性もあるんじゃないか思う。
『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』でこの人もまた表舞台に出たことで警察庁内部から不満の声がないとは思えない。ある程度は封殺されたかもしれないけど先読みしたら斑鳩室長がいることで封殺してもクーデターないし権力が時の流れで変わるとも言えない。
高階病院長を『アリアドネ』『ケルベロス』と二度に渡り苦しめたものの白鳥さんのコールドスリープ法案で未来科学センター設立で東城医大はなんとかやっていけてるよう。
『モルフェウスの領域』での霞ヶ関の人事が変わってる可能性もある。
Aiの理念や理想、提言などは『ケルベロスの肖像』以前にある程度、綿毛となって世界に飛んでたともいえなくもない。
高階病院長、白鳥さん、田口先生にせよ大学病院や地域地方、国レベルでしか考えが至らなかったとも言える。人間は個人レベルを基準に思考し判断するからやむを得ない(--;)。
『アリアドネの弾丸』から『ケルベロスの肖像』までたいして時間が経ってないことから東城医大側が功を焦ったとも取れる。
どちらにせよ医療と司法の対立が『桜宮サーガ』世界には現実以上にあるかもしれない。
それによって日本地図だけでなく世界地図を変える壮大なスケールがあるかもしれない。
『極北シリーズ』も極北市や雪見市も桜宮市同様に一地域でしかない。
だけど、医療を変えようとする人材や日々、医療に携わりながらそこから医療改革を模索思考しようとする者たちはいる。
斑鳩室長が桜宮小百合、南雲忠義以外にも駒は控えてあるでしょう。
斑鳩室長は読むたびに闇が深い人物の印象を与える。
『アリアドネの弾丸』で東城医大が助かったのは加納警視正(と玉村警部補)がいたからこそ。
加納警視正自体が後々の歴史で官僚か医療寄りになるかでまた歴史も変わるんでしょうか。
白鳥さんたちの同期であるスカーレットこと小原なる人物も私が読んだ範囲では名前しか出てきてないけどどちら寄りの人物か興味ひく。
『モルフェウスの領域』などのほんの少し先の未来を描いた作品で霞ヶ関にたぶん動きがあったと前向きに思いたい。
斑鳩室長ら官僚が『アリアドネの弾丸』で失敗したのはひとつは人選にあるかもしれない。
宇佐美警視は桜宮小百合に知らなかったから失礼な口を聞いてる。
桜宮署の人たちはもちろん玉村警部補など含めて存じてる。おそらく加納警視正も桜宮市に派遣されたことから桜宮巌夫や桜宮一族のことは熟知してたと思う。
だけど宇佐美警視は知らなかったとみえる。これは彼が警察官僚なのに知らなかったのは官僚として抜けてたのではないかと思う。
表現としてよくないけど官僚としては優秀ではなかったかもしれない。
『アリアドネの弾丸』でそれこそ桜宮市の医療を握る東城医大を陥れるなら桜宮市にも東城医大にも精通した人こそが適任だったと思われる。
もしもという可能性だけど加納警視正が敵に回ってたらたぶん白鳥さんでも手が出せなかったと思われる。そんな可能性もなかったとは言えない。
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