土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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「ベッドが空いていたからよかったですが、空いていなければどうするつもりでしたか?患者を救おうという行為は尊いですけど、最後まで面倒を見られないのに引き受けるのは無責任だと思いませんか?」
田口の思いもよらない厳しい言葉に、小夜が凍りつく。
翔子の胸の中に、きな臭い感情が湧き上がる。それをそのまま口にする。
「それなら、あたしたちはどうすればよかったんですか。吐血患者を目前に手をこまねいて見てろ、とおっしゃるんですか」
田口の眼に、深い色が浮かぶ。視線を、暗い窓に投げかける。雨音が部屋に満ちる。
やがて、静かな声が答えた。
「今のは大学病院に属する組織人としての言葉です。残り半分、私自身の意見をお伝えします。今夜のあなた方は医療人として立派に責務を果たしました。その結果、ひとりの患者の命が助かった。口やかましいことを言ったのは、大学病院のスタッフならば誰でもそう言ったはずだからです。手続きを飛ばして正義を貫こうとしても、刃(やいば)は肝心の所には届かない。必ずしっぺ返しに遭って叩き潰される。おふたりを見ていて。少し心配になったものですから」
翔子は、穏やかな言葉に拍子抜けした。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』第一章 潜航より 田口公平 如月翔子 浜田小夜 より
七番のモニタに答え、ちらりと四番ベッドに眼をやる。画面から、馴染みの強い視線が届く。速水はモニタから意識をそらす。最後に視線を、灰色のコンクリートだけを淡々と映し出す右端のモニタに振り向ける。眼球を押さえ、ため息をつく。
「桜宮の空にドクターヘリが飛ぶのは、いつの日になるやら」
机の上のヘリコプターの羽が、音もなく微かに回転した。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』第一章 潜航 本文 より
田口は並木道をたどりながら、思い出す。桜吹雪の中で見失ってしまった男の横顔。
今は冬。男から託されたものを、きちんと田口は受け取れたのか。襟元を吹きすぎる木枯らしに、一瞬震える。枯れ枝の梢は幾何学紋様を描き、青空を無数の断片に砕く。 田口は急ぎ足で赤煉瓦棟を目指した。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』第二部 戴冠 12章 赤煉瓦の泥沼 冒頭 本文 より
黒崎教授は沼田を見つめる。
「ワシがコイツと相容れることは金輪際ない。コイツのルール違反は許し難い。今回の一件もそうだし、過日の越権行為だって同じこと。あの日のことを思い出すと、今でもはらわたが煮えくりかえる」
「それでは、なぜ?」
「たとえワシが気に喰わなくとも、桜宮の医療にはコイツが必要だ。ワシは規則という枠を守って生きる。コイツはその枠を破壊しながら前進する。ワシたちは互いに互いを必要としている」
そう言うと、黒崎は沼田を見つめた。
「君にはわからないだろうな。救急現場は神でなければ裁けないのだ。そして、あの城東デパート火災の時、ワシはコイツの中に神を見てしまった。たとえ破壊神だとしても神は神。人間に逆らえる道理はない」黒崎は遠い眼をして続けた。
「勘違いするな、ワシは速水が神だと言っているのではない。ああいう場があり、あの時の流れの中で、ほんの一瞬、神がコイツの肩の上に舞いおりた。ただそれだけのことだ。だが、多くの凡庸な医師が生涯一度も神に遭遇することなく朽ち果てていくことを思えば、なんという祝福だろう。あの時ワシは初めて知った。神の指図で動くことが、あれほどまでの愉悦を伴うものだということを……」
黒崎教授は言葉を切った。そして続けた。
「ワシのプライドや肩書きなんて、そうした瞬間には、すべて吹っ飛んでしまうくらい、ささやかたで他愛ないものだ」
海堂尊「ジェネラル・ルージュの凱旋」第二部 戴冠 25章 リスクマネジメント委員会 本文と黒崎教授、沼田先生 より
田口は、にっと笑う。その笑顔に速水の古い記憶が呼び覚まされる。卒業記念麻雀での国士無双。大逆転の手を上がったあと、田口はずっと申し訳なさそうな顔をしていた。だが、速水ははっきり思い出した。百パーセント安全だと信じて疑わなかったラス牌の紅中が、速水の手牌からこぼれ落ちた瞬間、田口は今日みたいに笑った。絶対にそうだった。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』第二部 戴冠 29章 口答試問 本文 より
「僕は君さ」。そんな時、我夢と同じ姿をした「黒我夢」に問いかけられる。自分たちアルケミー・スターズがなぜネットワークで集まらなければならなかったのか。異端を排除する人間社会には、自分たちの居場所がなかったからに他にならない。本当は我夢自身にも「選ばれた人間」としてその他大勢の人間を排除したい願望があるのではないか。
そんな自分を見つめねばならない我夢の旅に、同じアルケミー・スターズの天才少女であるキャスリンは同行していた。我夢にフッと手を差し伸べるキャスリン。男の子と女の子が一緒に旅をしている。これってデートじゃない?そう言われ、とまどいながらキャスの手を握る我夢。
「私、今までデートだってしたことなかった。つまんない女の子だったわ」
普通の男女なら性愛の世界を知っていてもおかしくない年齢で、ウブに手をつなぎ合う。これ以上は何も描かれていなくても、我夢と同じように異質な存在として生きてきたキャスリンの過去も彷彿させる。
そして、<ウルトラマン>という番組枠が>やっと手を握り始めたようなピュアな人間関係を描くのに、今の時代、もっとも適した空間であることも思い知らされる。
ソニーマガジン『地球はウルトラマンの星』本文から
ゲノセクト……、わたしも人間に作られたポケモンだからです。
わたしに出会ったことは忘れなさい!人間たちよ!
映画『ポケットモンスター』ミュウツー(高島礼子版)
警部殿、また我々捜査一課のじゃまですか〜。
いえいえ、すこしばかり私のなかの好奇心が働きましたから。なに、すぐに帰りますから。
とっとと帰ってもらいたいものですね〜。
ドラマ『相棒』シリーズ 杉下右京、伊丹刑事
いやね、山寺さん。これ関根(勤)くんが言ってたことですけど山寺さんは五億円もらってもふしぎじゃないって。
いやいや、そんなことないですよ(笑)
ライオンのごきげんよう 声優編 より 小堺一機、山寺宏一
時間は逆もどりはせず、なくなったものをもとへもどすことはできません。
でも、楽しかった時間はすぎてしまっても、部員仲間にそろって会うことなくても、別棟は存在しなくとも、あの部室ですごしたころのことを思い返すと、私はいつのまにか微笑んでいます。
まるで、今、自分が、デッサンの人物たちが見下ろすあの部屋の中にいるように。
TVドラマノベライズ版「ハチミツとクローバー」あとがき 一文 より
千春が、暗い車窓に映った三船の横顔を見つめながら、ぽつんと言う。
「いい病院ね、東城大って」
千春の、握りしめた指先に力がこもる。三船は唇を噛むと俯いた。
いい病院なんて、ない。いい医者がいる病院があるだけだ。
胸の中に熱いかたまりが込み上げてくる。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』疾風--2006 より
佐藤部長代理、立ち上がってのびをする。
「それにさ、俺が患者に暴言を吐いたのも事実だし、入院させるべき患者を追い出したんだ。そんな場面を流さず、カッコいい所だけを流すのはやっぱり反則だろ。俺は、本当はあの革ジャン野郎を入院させたかった。あの時の判断は、救命救急センターの部長代理としては正当だった、と今でも自信を持って言える。でも、救急医としては最低の判断だったんだよ」
佐藤部長代理はうつむいて、呟く。
「ああ言った瞬間、舐めかけのチュッパチャプスを投げつけられたような気がした」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』残照--2007 本文 佐藤部長代理の台詞 より
やれやれ、甲斐くんが本当に見たのは本物の幽霊だったかもしれませんね。
い、いや……それはどうかな〜?
失礼。警部殿は、幽霊を見たいんですか?
ええ、見れるものなら見たいですね。甲斐くんが実にうらやましい。
じゃ、じゃあ我々はこの辺で……。
いや〜実にうらやましい。
ドラマ『相棒11』より 杉下右京 甲斐徹 伊丹刑事
「病名は?」
「レ、レチノブラストンマ?」
板東は口ごもってメモを読む。
谷口本部長が話の接ぎ穂を受け取り、補足する。
「何でも、癌の一種だそうです」
「中学生が癌にかかるのか。ひどい世の中だ」
加納が呟く。
海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』 より
「家に帰ったらテレビを点けるんだ。そこにはきっとウルトラマンが映っている」
『ウルトラマンガイア』第49話「天使降臨」高山我夢 より
超人同士の戦いか
いや、人の心が生み出した戦いです
『ウルトラマンティガ』第44話「影を継ぐもの」サワイ総督、イルマ・メグミ隊長
『細けーことはよくわからねーや。
けど。
自分を想ってくれる親がいて、他に何がいるよ。
俺ァ欲しかったよ。アンタみてーな家族が。
皮肉なもんだよな。ホントに大事なモンってのは、もってる奴よりもってねー奴の方がしってるもんさ。』
(銀魂by銀時、42話)
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