ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
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埃(ルパン三世1st/峰不二子という女)
「あー……! いてぇ! いてぇ! いってぇ!!」
午後11時20分。
別に時間などどうでも良いのだが、何しろいきなり隣で叫ばれた緑色のジャケット――みねふじルパン三世にとっては、煩いという一言しか出ない。
そんな事を思いながらも口に出す事は無く「乗れ」と自分の膝を軽く叩いた。
「なんでぇい! やなこった!!」
同じく緑色のジャケット――1stルパンはみねふじルパンの隣で、フイッと顔を逸らし、目を擦りながら何度も瞬きを繰り返している。
その所為で目が充血しているのだが、痛さに敵うわけもなく、再び目を擦っては瞬きをして、また目を擦る。
「おめぇさん大分充血してるじゃねぇか」
それ以上掻かせないように、みねふじルパンがファーストルパンの手を掴み、そのまま引っ張って、自分の膝に頭を乗せる。
ファーストルパンは何が起きたのか分からずにいたが、すぐに痛みを思い出し、手で掻けない代わりに瞬きを繰り返す。
「ちょっと見せてみろってんだ」
ファーストルパンの腕を片手で押さえながら、空いている手で、目の中を見るようにしたら、小さな埃が入っていることに気が付く。
そのまま反対の目も見てみると、同じように小さな埃が入っていた。
「いてぇんだよ……。早く何とかしろってんだ……」
拗ねたように放たれた言葉に苦笑いを浮かべながら肩を竦めたみねふじルパンだったが、ファーストルパンの目には生理的に浮かべられた涙によって、苦笑いは消えた。
そのまま良からぬことを想像した自分が居たので頭を振り、「じゃ、ちょっと待ってろ」とファーストルパンを脚の上からどけて、古びた緑色のソファから立ち上がり、風呂場に向かう。
風呂場で洗面器に湯を張り、ある程度溜まればリビングのソファまで戻ってくる。
「これに何しろって?」
ファーストルパンは洗面器を指差して瞬きを繰り返しながら問うも、みねふじルパンは答えることなくもう一度風呂場の方向に消えていく。
そんなに経っていない頃に白いふんわりとしたタオルを持ってきて、「この洗面器の中に顔入れて瞬きしろ」と、テーブルの上に置かれている洗面器を顎で差しながら言った。
「服濡れるだろうが……」
文句なのか、みねふじルパンがそう考えるも口角を上げ「初夜で濡らすやつよりかは、洗濯しやすいぜ?」何て、いつの事だったか、たしかほんの最近のできごとの事を口にしながら、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
その所為でファーストルパンは思い出した恥ずかしさで腰を抜かしそうになる、という面も見せるのだ。
「いてぇんだろ? さっさとやった方が身のためだぜ」
渋々、という感じに洗面器に近付いて、床から膝立ちの状態でテーブルの縁に手を付いて、洗面器に顔を入れる。
数回瞬きをしていると、湯の中に埃が入っていき、大分痛さも引いたところで顔を上げる。
「マシになっただろ?」
ニィ、なんて得意げに笑顔を浮かべつつ、タオルをファーストルパンに渡し、目元を再び確認する。
「取れたようだな、しっかし、お前さんがただの埃で泣くなんて誰も思わないだろな」
なんて、嫌味も込めながら言うとファーストルパンは袖からナイフを取り出して、みねふじルパンに向かって投げた。
「危ねぇな……。ま、そういうおめぇさんも、嫌いじゃねぇよ」
ファーストルパンの両手を糸も簡単に縛り、ソファに押し倒してみねふじルパンが耳元で囁いた。
そのままファーストルパンとみねふじルパンの息遣いが荒くなっていくのを、パースリルパンは聞いていたらしい……。
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