ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
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目を見開いていると、蜻蛉様は振り返って「そういう事だ」と、言って立ち去って行ってしまった。
それから二時間が経って、凜々蝶様が帰宅してくると僕自身、いつもと同じようにしているのが難しく感じられた。
「御狐神君、体調でも悪いのか?」
上を見上げながら尋ねてくる凜々蝶様のお姿は眩しいが、普段の笑みを浮かべ「そんな、僕は凜々蝶様のその可愛らしいお姿で、小さいなりにも頑張って見つめてくるそのお姿がとても素敵――」「分かった、黙ろう」といつものやりとりをしながらも、ラウンジで一息ついている。
体調は悪くないが、何故か蜻蛉様のことが気になっている。
――蜻蛉様、貴方は今、誰の事を思っていらっしゃいますか。
☆☆
「では、お休みなさいませ」
凜々蝶様のお部屋の前で一礼して、そのまま自分の部屋には向かわず、蜻蛉様の部屋に向かう。
ピンポン、とインターホンを押し、蜻蛉様が出てくるのを見れば開口一番に「双熾!ついに私の愛を受けれたか!」と言ってくるので、少し笑みを営業スマイルから、呆れた表情に変えて「黙ってください」とそっけない風に口を開く。
「言葉が突き刺さるな、S!」
普段と変わらない蜻蛉様に呆れながらもドアを閉めて、玄関の中に入る。
「蜻蛉様、昼間のことで話しがあるのですが」
話を振れば、真面目な顔つきになり蜻蛉様は中に入るように手招きをした。
☆☆
「何故、僕に恋を?」
「単刀直入だな。理由などない。ただ好きなったのがお前だ双熾」
正直、ここまで言われると何とも言えなくなって、軽く溜息をつけば、指を刺されて、「お前は俺にしかそういう態度をとらないから、好きになったのだ!」と自分が蜻蛉様に向けていた表情を思い出し、確かに呆れた表情など凜々蝶様の前では一切出していないことに気が付いた。
「私は、普段ニコニコしているお前が、私の前だと溜息など吐くお前を好きなったのだ」
普段の不真面目さはなく、真面目に言われたので、頬が熱いのを覚えつつ「僕は、蜻蛉様の事が嫌いです」と少し嘘を述べた。
その嘘に対して腹を立てるわけでもなく、蜻蛉様は「鋭いな!S!」と返してきた。
『終』
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