ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
通報 |
名前 伏(ふし)
年齢
見た目年齢 19歳 実際年齢 不詳
性別
男
身長
182cm
体重
70kg
容姿 【人形時】金髪で、恋也と瓜二つの顔つき。背は恋也より高く、りとより1cm小さい。目はどちらかと言うと、普通な方で、つり目でもなければ垂れ目でもない。瞳の色は金色。髪も金髪で長さは腰ぐらいまである。髪の量は少ない方で、サラサラとしている。
和服を身に着けており、基本的に茶色。
【妖怪時】顔つきは変わらないが、目の色が銀になる。人形時より目が細くなり、気性も荒くなる。目元には両方に二つ、頬には三つ赤い線が付いている。人形時とは異なり歯は牙になって、髪の色も銀に変わっている。額に二つの角が生えて腹には刀の模様、背中には縛りとして「伏」と赤字で浮き上がっている。
服装も真っ黒な和服に変わる。
【人間時】元々は人間で、かなり昔の人になる。その頃には苗字がなかったので「京太郎(きょうたろう)」と呼ばれていた。髪の長さはとても短く、うなじぐらいまで。黒髪。背丈は何も変わらない。
人間時でも着ているのは茶色の和服。
性格 基本大人しいけれど妖怪時になると容赦がなくなる。人を殺める事に後悔もなにもしない代わりに、自分の尊敬している主人が殺されるのは自分が死ぬ事より嫌う。
女人が苦手で、吉原や風俗に行った事は人生で一度もない。
備考
好きな物
日本酒。日本酒の中でも常温が好み。
嫌いな物
白の服。死人だという事を認めたくないから。
水。死因が溺死だから。
大昔、両親が急死し、天涯孤独状態の時に全く知らない里に預けられることなり、その里で友人も出来たのだが、京太郎がその里へやってきてから不作が続いたりした為、「呪い子」と言われるようになった。
不作をどうすれば良いかと考えた里の者は、神が生贄を送ってこないせいで怒っているという話が出回って、里の者は自分の子を殺すことなどしたくなかったので、呪い子を生贄とした。
そして、大雨の日に、呪い子を生贄として神の元へ送る事になった。
殺しかたは至って簡単で、白い衣を身に纏い、目隠しをして川へ突き落とす。
そして、友人の手によって川へと突き落とされ、目が覚めると、妖怪として転生していた。
自分の意思で人の形にもなれたので、普段は人形で、本来の刀である。刀に宿った妖怪。
恋也の直結の先祖になる。
【祁呉氏睦月(消しゴム)】
【神条吟(定規)】
【赤ヘ丸完次(赤ペン)】
【谷へ丸伸一(シャーペン)】
【筆こばと(筆箱)】
・スキキライ
恋 りと
・ハジマリノオワリ
彩 恋也
・繰り返し一粒
りと 恋也
・イカサマ⇔カジノ
恋也 りと
・秘密~黒の誓い~
恋也 美咲 猿比古
・からくり卍ばーすと
伏 りと
・虹色蝶々
かいと りとせ 恋也 彩
・ACUTE
彩希 りと 恋也
雨 紫揚蝶 アジテーション
・聖槍爆裂ボーイ
恋也
・SPICE!
恋也と大勢の友人
・ヤサグ恋歌
恋也
・メランコリック
恋也 りと
・鏡音八八花合戦
りと 恋也
・吉原ラメント
女装恋也
・東京テディベア
姶
褌
・再教育
りとせ 恋也
・ロストワンの号哭
16歳恋也と14歳恋也
・アドレサンス
りと 恋也
・会いたい
未定
・from Y to Y
・BUNKA開放区
泥棒とガンマン
・8HIT
グリーンVSレッド
・インビジブル
りと
・イカサマライフゲイム
陽土
・Masked bitcH
恋也
・天ノ弱
恋也 祐
・え?あぁ、そう。
りと
・百年夜行
恋也 伏
・愛言葉
恋也 美咲 猿比古 出雲
・3331
黒斗 恋也
・ワールドイズマイン
りと 恋也
女詐欺師と泥棒○
・なりすましゲンガー ○
クロハ コノハ
・しんでしまうとはなさけない
未定
・Sweet Devil
恋也 りと
・HANAJI
恋也 りと
・君がくれたもの
恋也 りと
恋也 ルパン○
・人間失格 ○
クロハ コノハ
・からくりピエロ
恋也 りと
・Just Be Friends
未定
・おこちゃま戦争
グリーンVSレッド
りと 恋也
・いろは唄
りと 恋也
恋也 伏
・結ンデ開イテ羅刹ト骸
伏
・カンタレラ
ローザブルー ノーブル(ミクオ) クラシック ノーブル
・ODDS&ENDS
恋也 天刀
・君の知らない物語
恋也 りと
・I beg your hate
次元
・あの日タイムマシン
シンタロー メカクシ団一同
・Synchronicity~第二章 光と影の楽園~
メカクシ団一同
・テノヒラ ○
りと 恋也
・蝶と花と蜘蛛
悪魔 人間 吸血鬼
・愛欲のプリズナー○
次元 ルパン
・海賊Fの肖像○
ルパンファミリー
・VOICEま○
次元メイン
春雲路 天刀
しゅんうんじ あまと
八重樫 ハルキ
やえがし はるき
西園寺 佳乃
さいおんじ よしの
一文字 速人
いちもんじ はやと
六条道 誠
ろくじょうどう まこと
六条道 雪乃
ろくじょうどう ゆきの
六条道 薊
ろくじょうどう あざみ
六条道 りとせ (六条道 りと)
ろくじょうどう りとせ
六条道 かいと (六条道 かい)
ろくじょうどう かいと
六条道 恋也 (六条道 恋)
ろくじょうどう れんや
六条道 彩 (六条道 彩希)
ろくじょうどう あや
八城 岬
やしろ みさき
天月 唯
あまつき ゆい
大武 美奈
おおたけ みな
守烙坐 星汰
かみらくざ せいた
上ヶ咲 真央
じょうがさき まお
神無月 恋
かんなづき れん
加藤 柚
かとう ゆず
黒田 九十九
くろだ つつら
【疑問に思った事】
とある炎天下の中、オレは冷房が効いているアジトに居る。
今日という今日こそ、オレをヒキニートと言う奴を懲らしめるため。
今日はモモは仕事、ヒビヤは学校の為メカクシ団二名が居ないが、アイツらはオレをニートと呼ぼうが別に問題はない。
アジトにはオレを含めて七人いる。
キド、セト、カノ、マリー、エネ、オレ、コノハの七人が各自好きなことをしている。
キドはソファに腰掛け、カノはキドの隣で雑誌を読んでいる。
オレはスマホを充電させ電源を切っている。
この際エネは関係がない。
そろそろ本題を言おうか。
オレは立ち上がり、アジト全体に聞こえるように言い放つ。
「お前等人の事ニートニート言ってる割には、モモとセトとヒビヤ以外まともに仕事してねーだろ!!?」
いきなり叫びだしたオレに驚いてマリーはびくりと肩を揺らす。
この際可愛いからマリーは除外……じゃなくて。
キドは「何が言いたいんだ?」と言う目を向けてきたが、カノのニヤニヤした表情のせいで腹が立ってくる。
「わっ、私もお仕事してるもん!」
マリーが頬を膨らましながら言ってくる、可愛い…。
「内職だっけ?モモから聞いた。マリーは関係ねぇよ」
と言いオレは物事の主犯カノを睨みつける。
カノは笑いながら「やだな~」とか言っているが、この際関係がない。
今日という今日こそこのカノの口から「すみませんでした」と言わせてやる。
「シンタローさんいきなりどうしたんすか?」
とセトが尋ねてくるが、セトは仕事をしているためニートと呼ぼうが何ともないが、どうしたもこうしたもない。
「お前等、特にキドとカノ。ろくに学校も行ってないし仕事もしてないのに、人をニートニート連呼するな。特にカノ」
オレはカノってとこだけを強調させていう。
コノハは初めから何も言わないので除外だ。
ろくに学校も行っていないカノとキドに、ニートと言われる辛さは他のみんなは分かるのだろうか?
「あ、そんなこと気にしてたのシンタロー君。ゴメンゴメン」
明らかに背後から「(笑)」と言うマークが出ているであろう。
コイツはうざいの天才なのか?
「カノ失礼っすよ」
セトが言ってくれた言葉の意味は考えていけば辛いだけな気がする。
「……ニートって何?」
コノハの第一声がこれだ。
なんと説明しようかと悩んでるとカノが口を開く。
「ニートっていうのは、学校も仕事もしてないシンタロー君のことだよ。コノハ君」
コノハはだいぶ間を開けてから首を傾げて「でも、カノも何もしてないよ…?」と言われる。
ざまぁみろ。
それにしてもコノハはなんて良い子なんだ。
限度はあるが飯を奢ろう。
「んー?それはコノハ君もキドも一緒じゃないの?」
対するカノは何も喋ってないキドを巻き込んだことで、すごい形相でキドに睨まれている。
「…って言うわけでもないかも、うん」
さすがの団長には叶わないのか、冷や汗をかきながら上記を笑いながら「コノハ君だって何もしてないじゃん」と言う。
「僕?…僕はお手伝いしてる」
「何の?」
「セトのバイトのお手伝い」
コノハ偉い!
俺は内心そう叫んでコノハに拍手をしている。
カノはセトに確かめるような視線を送る。
セトはそれに気づき「あ、コノハさんの言ってることは本当っす!」と笑顔を向ける。
カノは「うっ…」と言葉を詰まらせて「僕だってキドの料理の手伝いしてるもん!!」と言うが、その場に居た全員(エネを除く)に「してない」と否定された。
さすがのカノも堪えたのか、床に倒れ込むようになり、小さく自分はニートではないと否定している。
「うぅ…僕はニートじゃない…」
「受け入れろよ。これが運命(さだめ)だ」
「ちょっと止めてよ!コノハ君!!」
カノには後でたっぷりと謝罪してもらおうか。
俺はコノハとカノのやり取りを見て、フッと笑う。
【疑問に思った事】END
【弱音】
今日はいつもより早く起きたから、ソファでくつろいでいる。
今は朝の六時でそろそろキドも起きてくる時間なんだけど、全く起きてくる気配がない。
いつもなら僕が起きるのが早いと「今日は猫が降るのか」なんて言うけど、今日はどれだけ待っても起きてこない。
そんな日もあるだろうと思って雑誌やゲームで時間を潰すが、何分経っても起きてこなくてさすがにイライラしはじめる。
5分10分ならまだしも、40分も起きてこないと空腹なのもあって悪くないキドにイライラする。
早く起きてくれないかと待っていると、ガチャリとドアが開いてやっとキドが起きてくる。
「あ、キドおはよー」
僕は欺きながら挨拶をすると、いつものジャージ姿のキドに頷かれるだけだった。
「…カノ、飯なら今から作るからちょっと待ってろ……」
明らかに辛そうにしているのは僕にだって理解した。
最初は暑さでかなっと思っていた汗は、なんだか少し違う感じがしてキドの様子を眺める。
「キド何か隠してない?」
不意に出た言葉に僕自身もついていけず、沈黙が訪れる。
沈黙を破ったのはキドだった。
「朝から少し体が重くてな。何、心配するな」
その言葉は僕が言えた事じゃないけど、嘘を吐いていた。
キドの額に手を当てても、熱はなくてただ汗が出ているだけだった。
「な、何するんだ!お前は!?」
「ぐっは!!」
キドは顔を赤くさせながら僕のわき腹を殴る。
いつもの事だけど今日のは痛くない気がする。
力が入っていないようなそんな感じ。
でもそれを言ったらきっとまた殴られるので、何も言わずわき腹をさする。
「痛いなぁ…」
いつもより痛くないけどあえて大げさに痛いと言っておく。
「フン、お前がいらん事をするから…だ………」
キドは僕にそう言いながら僕の方に倒れてくる。
脂汗も酷く、息づかいも荒くて良い状態とは言えなくて、僕はキドを担いでソファに横にさせる。
キドは相変わらず息づかいを荒くして、辛そうにしている。
「キド…?ねぇ、キド?」
話しかけてみてもキドは辛そうにしているだけで、僕はどうしたら良いのか分からず一人で焦っている。
「ねぇキド…」
僕はグルグルと色々な思考が巡り、どうしようかとキドを何度も不安で見て、キドの蒼白な顔色に恐怖になり、バイトが休みなセトの部屋のドアを激しくノックする。
「セト!起きて!キドが、キドがぁ!!!」
どれだけ叩いても起きる様子はなく、僕はその場に座り込む。
キドは今にも苦しそうにしていている。
「ん…っ、はぁ…」
お腹を押さえて苦しそうに息を荒くしている。
どうしたらいいのか全く分からず、僕はキド名前だけを呼びながらキドの元に行く。
「キド、ねぇキド?」
僕がキドの目の前に来た頃、キドがうっすら目を開ける。
「キド!!?」
「何だ、そんな顔をして」
強がっているのか、キドはいつもの表情を作って僕に言う。
「何だ、じゃないよ!そんな辛そうにして!!何かあったら僕どうしたら…!」
僕が焦っているとキドはフッと笑って「いつもの事だ」と言った。
何がいつもの事だ、こんなに辛そうに…いつもの事?
いつもこんなに辛そうにする事なんて、キドにはないはず…。
僕は考えるより口が先に開いた。
「いつもの事って何が?」
僕の問いにキドは頬を染めて小さく「生理痛だ」と言った。
僕は何も言えず、その場に立ち尽くして欺くのも忘れている。
「お前欺けてないぞ」
僕はどんな表情をしていたのだろうか、すぐに欺いていつもの様に笑う。
「いやーキドも大変だねー!」
口から出てくる言葉は嘘ばっかり。
本当は違うことを言いたかったはずなのに、僕は何でこんな時でも嘘しかつけないんだろう。
「カノ、嘘を吐くな」
キドはいつもとは違って僕の頬を引っ張って、僕の能力が解かれる。
「今のお前は欺いても意味がない」
キドは僕の頬を離してフッと笑い、キッチンに立って朝食を作り始めた。
「動いて大丈夫なの?」
僕はキドに尋ねながら後ろについて行って、様子を伺っていたけど「邪魔だ」とキドに言われ、虚しくソファに戻る。
「キド、大丈夫なの?」
僕は不安になりながらキドに尋ねた。
キドは「大丈夫だ」と言っていつもの朝食をスムーズに作っていて、良い匂いが次第に部屋中に広がっていく。
「先に二人で食べるか?」
キドが振り返りながら僕に尋ねてきて一瞬ドキリとするけど、すぐに我に返り「そうだね。誰も起きてこないし」と笑いながら言うと、後少しで出来るようで暫く待っているとキドが声をかけてきた。
ソファで待っているとキドが朝食を作り終えて、テーブルに運んでくる。
「今日は材料がなかったから、これぐらいしか作れなかった」
キドはお箸とお皿を持っていて、お皿には野菜炒めが入っていて、お皿とお箸をテーブルに置いて、またキッキチンに戻ってお茶碗とお椀を持ってくる。
「今日のお味噌汁は豆腐なんだね~」
いつもお味噌汁の具は色とりどりで、今日は豆腐。
「悪いな、これぐらいしか作れなくて…」
申し訳なさそうに言うキドに対して僕は、ニコニコと笑顔で言う。
「大丈夫だよ!材料もなかったんし、ね?」
「だが…」
「良いって!それより早く食べよう!!」
どうしてだろう。
僕は違うことを言いたかったはずなのに、【嘘】しか言えなかった。
僕とキドは二人で朝食を食べて、二人で野菜炒めを完食して僕がお皿を洗っている時だった。
「…っ、痛い…!」
水を使っているからキドが何か言ったのは聞こえたけど、具体的には聞こえなかったのでいったん水を止めて、後ろに振り返り「どうしたの?」と尋ねると、キドはお腹を抱えてソファの上で苦しそうに横になっている。
「キド!?」
僕はキドに駆け寄って体をゆする。
キドは脂汗をかきながら「大丈夫だ」と言うけど、やっぱり僕は不安でキドの体を余計に揺する。
「カノ…揺するな頭に響く…」
頭を押さえながらキドが苦しそうに言って、顔を歪める。
「あ!ゴメン…」
揺するのを止めてどうしたら良いのか分からなくて、暫くあたふたしてるとキドが温かいお茶が飲みたいと言ったので、キッチンに急いでお茶を探すけど温かいお茶は無くて、冷蔵庫を開けてコップにお茶を入れて電子レンジでお茶を温める。
チンッ、と音がしてコップを電子レンジから取り出しキドに渡す。
「電子レンジで温めたよ」
「あぁ、ありがとう」
キドは起きあがってお茶をゆっくり飲んで、半分ぐらい飲んでコップをテーブルに置いて、ソファに横になる。
「キド大丈夫?」
僕はキドの近くに腰を下ろして、キドに尋ねる。
「大丈夫だ」
キドは横になりながらそう言うけど、僕には大丈夫には見えず、僕はキドに自分のパーカーをキドにかけて小さく呟いた。
「辛いなら、弱音ぐらい吐いたら良いのに……」
キドには聞こえないように言ったつもりだけど、キドには聞こえていたようで顔を真っ赤にさせている。
「う、うるさい!俺が弱音を吐いてどうするんだ!!」
ただの強がりに、僕は唇に吸い込まれるようにキスをしてしまった。
殴られると思っているとキドは、意外そうに僕を見つめて「俺が今にも死にそうな目でみるな」と言われ、僕の表情がキドが言う通りの表情をしていると理解する。
「僕そんな顔してた?」
ニコニコしながら尋ねるとキドはクールに笑い「あぁ、不安に詰まったな」と言って僕の頭を撫でる。
暫く頭を撫でられていて暫く経って、落ち着いて僕がキドの頭を撫でる。
「こんな時は僕がキドの頭を撫でる番でしょ?」
キドは生理痛で弱っていて僕を殴ってこない。
僕はキドを撫でながら「たまには弱音を吐いても良いんだよ」と言ってキドの体調が良くなるまで、傍にいた。
【弱音】END
【好きの果てに見える寂しさ】
好きな人に恋人が居ると知った時の気持ちは誰が理解してくれるだろう。
きっと同じ想いをした人にしか解らないのかもしれない。
僕のこの気持ちもきっとそうなんだ。
僕に好きな人が居て、その好きな人には当然の様に好きな人が居る。
これは僕に対する欺き続けてる罰なのだろうか。
★★★
「シンタロー君」
僕は何気なくを装ってソファに座っているシンタロー君、僕の好きな人に笑いながら声をかける。
シンタロー君はスマホの中に住んでいるエネと言う人物(僕はエネちゃんと呼んでいる)と話をしている最中だった。
「カノか、どうした?」
シンタロー君は僕に視線を向けていつも通りに返事をする。
僕はその返事を何度も聞いて思うことがある。
エネちゃんと接する時と返事が違う、と。
僕はシンタロー君の隣に腰を下ろして、欺きながらいつもの様に世間話を持ちかける。
「そう言えば最近事件とか多いよね~」
シンタロー君は興味など示さないで僕のセリフにただ「あぁ」と答えて会話終了。
★★★
次の日、エネちゃんと話しているシンタロー君を雑誌を読みながら、時々何度も見つめている。
『だからご主人!!日焼け止め買いましょうよ!!』
「いらねぇよ!!!」
今は真夏という訳ではないけど、日差しが強いから日焼け止めは買っていたほうが良いと僕は心の中で返事をしている。
雑誌を読み終えてシンタロー君に話し掛けてみる。
「シンタロー君って引きこもってたからそんなに肌白いの?」
僕の質問の返答は「部屋に居たら紫外線も浴びないからな」とツッコミも何もくれず、ただ正論を言われる。
僕になにか不満があるのだろうか。
それとも――
それとも、僕なんかよりエネちゃんと話しているほうが楽しいのだろうか。
シンタロー君にとって僕はただのメカクシ団のメンバーという存在なのだろうか。
★★★
今日はエネちゃんはキサラギちゃんの携帯の中に居るらしい。
ヒビヤ君から聞いたことだけど、キサラギちゃんとマリーとセトとエネちゃんとキドで買い物に行ってるらしい。
今アジトには僕と、ヒビヤ君とシンタロー君しか居なくて各自好きな事をしている。
僕はヒビヤ君とおしゃべりをしてキド達の帰りを待っていると、ヒビヤ君は用事があるとのことでどこかに行ってしまった。
アジトには僕とシンタロー君のたったの二名。
「シンタロー君」
いつも通りに話しかけて僕は何がしたいんだろう。
僕の中にはいつもシンタロー君が居て、シンタロー君の中にはいつもエネちゃんが居る。
シンタロー君にとって僕は必要がない。
僕なんてただ欺いて笑っているだけの気持ち悪い化け物でしかない。
いつからシンタロー君を好きになったんだろう。
どうしてシンタロー君なんだろう。
時間的にはキドやセトの方が付き合いが長いのに、どうしてシンタロー君を好きになったんだろう。
姉ちゃんと一緒に居たから?
姉ちゃんが勉強を教えてもらっているから?
姉ちゃんがシンタロー君の事を好きだったから?
「…ノ、…カ、…ノ、カノ」
いつの間にか名前を呼ばれていて、僕はびくりと肩を揺らして欺いて「何かな?」とおちゃらけて返事をする。
「何欺いてんだ」
シンタロー君は僕の額をデコピンして能力を解かす。
あぁ、そうなんだ。
僕が君を好きなのは――
「痛いよ~」
「っで、オレを呼んでどうしたんだよ?」
「んー?何でもない」
ニコニコと笑っているとまたデコピンをされそうだったので、額を必死にガードすると腰を揉まれてこしょばされる。
「ちょっ!止めて!!そここしょばいから止めて!!」
涙目になりながらシンタロー君に訴えるも止めてくれず、僕はされるがままになって暫くは呼吸もまともにできなくなっていた。
★★★
最近はシンタロー君と話すのが少ない。
シンタロー君はやっぱりエネちゃんと話してて、僕が話しかけてはいけないようなオーラを出している。
シンタロー君――
君は驚くかもしれないけど――
僕は君の事が――
「大嫌い」
シンタロー君の驚いた顔、エネちゃんのありえないものを見るような顔、僕は今どんな表情をしているんだろう。
気が付けば、僕はシンタロー君の首に手を伸ばしてその手の力を込めた。
僕が君の事を好きなのは、
僕の性格を理解した上で、話をしてくれるからなんだ。
驚くかもしれないけどシンタロー君、僕は君の事が――
「――大好きだよ」
【好きの果てに見える寂しさ】END
【幻があったから】
夢の中に誰かが立っている。
誰だろう。
ぼんやりと見える誰かはゆっくりこっちに歩いていきて、僕の目の前に来たと思えばいつもそこで目が覚める。
「…おはよう」
僕はアジトに居る皆に挨拶をしてどうやらソファで寝ていたようで、ソファから起き上がりアジトを見渡す。
アジトにはカノ、シンタロー、セトがアジトに居て他の皆はどこかに出かけているのだと思う。
僕は夢で見た人物を捜しに行こうと思ってアジトから出て、公園や商店街など様々なところに足を運ぶ。
けれど夢で見た人物は見つからなくて、晩御飯の時間にアジトに戻る。
★★★
そんな事をずっと繰り返しているある日の事。
僕はまた夢を見た。
誰かが公園のイスに座っているところや、ねぎまを食べているところ。
商店街をブラブラと歩いているところ。
今日はやけにくっきり見えて歩いている人物の姿が良く分かる。
「んっ…」
夏でクーラーをつけていて寒さから目が覚めた。
僕はアジトを出て、公園や商店街に向かってみる。
夢で見た人物はどう見ても僕だった。
僕と同じ格好で同じ姿。
僕の髪の色を真っ黒にした人物が夢の中でねぎまを食べたり、商店街を歩いたりしてた。
目的の場所に着いても目当ての人物がおらず、しょんぼりとしてアジトに向かっていると、見知った人物が僕の横を通り過ぎていく。
紛れも無い夢で見た人物で僕はその人物の後を追いかける。
「…ね、ねぇ…」
無我夢中で目の前の人物に話しかけて僕は真っ黒な自分の隣に並ぶ。
目の前の人物は僕を見た途端に目の色を変えて、「お前!やっと見つけた…」と言って僕の肩を掴む。
僕はどうしたら良いのか分からなく手首をかしげるも、目の前の人物が「夢でお前を見たから捜してた」と僕と同じ理由を言って、僕の肩をポンポンと叩いて「俺はクロハ、お前は?」と自己紹介を始めたので、僕も「コノハ…」とだけ返す。
クロハと名乗った人物と僕は初めて話をした。
【幻があったから】END
【教師と生徒と補習】※オリキャラ有り
俺の大事な休暇を潰した奴が居る。
長期休暇のはずが大体3分の1しか休みが取れない。
原因は補習。
俺の大事な大事な休暇を潰したアイツの顔を見に、今日も学校に向かう。
職員室のドアを開いて数少ない荷物を置いて、コーヒーを飲む。
アイツが来るのは大体30分後。
指定した時間の10分前に来るのが良いところ。
30分間何をしようかと考えたが、課題を作って残り20分となったところで携帯が鳴った。
アイツからだ。
今日休みますとかだったらぶっ飛ばしに行こうと決めて携帯を開く。
メールではなく電話だったので、通話ボタンを押した。
『もしもし、クロハ先生ですか?恋也(れんや)です』
何で生徒が俺の携帯電話を知っているかは、急に用事が出来た時に連絡が出来なかったら困るからと言う理由で教えた。
「あぁ、俺だ」
いつもの低い声で言った瞬間外から車が通る音が聞こえた。
数秒後、携帯の向こうから先ほど聞いた車の通る音が聞こえて何となく理解はした。
『あの…裏門が閉まってて入れません』
「あぁ分かった」
そこで通話を終了して裏門に行く。
裏門が見えた頃、金髪の髪が見えていつも通りに制服を着こなしていた。
姿が見えたところで金髪の少年、六条道恋也は端末を弄っていて時に空を見上げたり、地面を見たり、端末から目を逸らしている。
裏門を開けて、端末を取り上げる。
「ここは学校だ。しかも今から補習だ。端末は仕舞え」
六条道(ろくじょうどう)は俺が取り上げた端末を必死で取り返そうとしている。
182cmの俺からみたら173cmの六条道は小さく見えた。
端末に何かあるのかと思い、端末の画面を見ると俺は端末の電源をぶち切って自分のポケットの中に仕舞い込んだ。
「ちょっ、俺の端末返してください…」
六条道の端末にはの画面には何があったと思う?
端末を壊さないだけマシだろう。
隠し撮りされていたとは俺もこれからは気をつけないと。
六条道の端末には俺の隠し撮り写真や、ムービーなのがあった。
一瞬で壊したくなったがな。
「クロハ先生返してください!」
「んなもん見てる暇があったら赤点とらねぇように勉強しろ」
「え?嫌です」
一度殴りたいが、そんな事をすれば俺は教師失格だろう。
ぐっと堪えて裏門から職員室に向かう。
「ちぇ。折角裏門の鍵閉めたのに」
舌を打つ音と、聞き流せないセリフが聞こえた。
何となく疑問には思っていた。
何故裏門が閉まっているのかと。
俺が学校に入ったのも裏門なので、開いているはずだがどうしてか六条道が来る時には閉まっていた。
何故か可笑しいと思っていたらコイツが犯人か。
「お前か…」
振り返って睨んでみると六条道は表情を変えず、笑っていた。
不思議な感覚がして変な気持ちに襲われた。
多分、笑っているの目の前で見た事がないからだ。
「ん?どうしました、クロハ先生」
「いや、何でもない。職員室で待ってろ」
「先生が先に行かないんですか?」
「あぁ、ちょっと用事を済ましてから行く」
分かりましたと俺の横を通り抜けて行って、職員用玄関の方へ向かう。
俺は六条道の端末を取り出し、電源を付けてさっきの画像を全てチェックし削除する。
映像は後で確認しようと思い電源を切って職員室に向かう。
職員室のドアを開けると六条道は、ドアのすぐ隣の遅刻届けを書くスペースに凭れていた。
「用事は終りましたか?」
「ある程度はな」
「そうですか」
それ以上の事は聞いてこなくて、俺が指示した席に腰を下ろして鞄も机の下に置く。
俺は課題を六条道に渡して取りに行くものがあると行って職員室を出た。
俺はそのまま廊下に出て職員室から離れた場所で映像を確認した。
『九ノ瀬さん、今度の休み皆で食事に行くんですけどどうですか?』
『あ、すみません。用事があって行けないです』
最新の映像はつい最近の事で、俺が適当に断った時の映像。
大体が誘われても断っているので断った映像の方が多い気もする。
結構な数があって、1つずつ削除するが面倒になって先に全部見てから削除しようと決めたら、ふと目に映った単語がフォルダとして書いてあった。
フォルダ1【数学 課題】。
開くと更に細かく分けられていて、一つずつ見ていくと今日以外全ての補習の課題を作っている俺の姿があった。
こんな映像撮られていたのか。
フォルダ2【授業】。
フォルダ2は授業をしている俺の映像。
俺以外にも黒板や教科書とノートも映し出されている。
これはあの復習にでも使うんだろう。
削除対象から外そうとしてたら、フォルダ2の中にフォルダAがあった。
フォルダA【クロハ先生】
俺だけが映されていて、音声も入っていた。
丸秘フォルダ【コノクロ】
少し嫌な予感がしたが、開いてみると俺の予想通りに嫌な予感が的中した。
『クロハお疲れジュースあげる』
『んぁ?さんきゅ』
『クロハそのジュース媚薬入ってる』
『ぶっ!!』
俺は媚薬の入った飲み物を飲まされそのままコノハに抱かれた事がある。
フォルダAは削除。
大体のフォルダの削除が終って職員室に戻ろうと後ろを振り返ると、六条道が居た。
とかではなく誰も居なくてそのまま職員室に戻った。
「クロハ先生課題終りましたよ」
いつの間にか六条道は課題を終えて端末を弄っていた。
ん?端末?
俺が持ってるのは六条道の端末。
じゃぁ、六条道は誰の端末を持っているんだ?
「お前、その端末誰のだ?」
「自分のです。すぐに仕舞いますよ」
六条道は端末を仕舞って俺に課題のプリントを見せた。
俺はプリントを受け取り採点を始めるが、全部あっている。
間違いはなかった。
「お前、数学できるんだよな?全部正解だよな?何で赤点取るんだ?」
俺の質問に六条道は即答した。
「クロハ先生の補習が好きだからです」
笑いながら即答した六条道を一発殴りたいと心の底から思ったが、ぐっと堪えて新しいプリントを渡す。
六条道は受け取りものの10分で全ての問題を解いた。
しかも途中式すら書かずに答えだけを書いた。
「出来ましたよ」
そう言って渡されたプリントは全部正解で何でか悔しくなる。
一度だけ間違わせたいと思ってしまう。
「お前大学の数学やってみろ」
大学受験の問題をコピーしてプリントを渡す。
六条道はいつものすまし顔で問題を解いていた。
そして15分後。
「…全部あってる」
採点をすれば全問正解で悔しい。
すると六条道が急に提案してきた。
「俺に間違わせたいならクロハ先生が手作りで問題を作ってみては?数学以外でも何でも」
六条道にそう言われ1つの提案が浮かんだ。
口角を上げて笑いながら今日はもう良いと言って六条道を帰らせた。
次の日、俺は職員室に自分で作った問題を持ってきて、六条道が来るのを待った。
六条道はいつもの時間に来て、いつもの席に腰を下ろした。
「じゃぁ、このプリントの問題を解いてみろ」
素っ気無く渡しながら俺は六条道の表情を観察した。
俺が作った問題集はこうだ。
問題A
次の式に当てはまるものを答えなさい。
1鶏肉+ネギ=
2パン+卵+牛乳+砂糖=
問題B
色から連想されるものを答えなさい。
1黒+白=
2白+茶色=
最終問題
言葉と人で表されるものを書答えなさい。
1数学+人=
ちなみに答えがこう。
問題A
1ねぎま
2フレンチトースト
問題B
1珈琲
2タバコ
最終問題
3俺
問題Bまで解けたとしても最後は解けないはずだ。
なんせこの学校には数学教師は俺を合わせて3人居る。
数学補佐も合わせたら5人居る。
その中から誰を選ぶ。
俺以外だとこの問題はハズレ。
「あ、れ~?」
六条道の声が聞こえた。
何処の問題で躓いてるのかは知らないが何だか嬉しい気分になった。
解らないだろう、解らないだろう。
俺は間違ってくれと思いつつ、六条道を観察している。
「あー、こうで良いか。出来ましたよ」
「ん」
プリントを受け取り採点をしようとしたら、六条道の答えが合っていた。
いや、待て。
最初の問題の答えをはさみと書いてあるこれは間違いか?
「六条道最初の問題のはさみってあれか?紙を切るはさみか?」
「違いますよ、焼き鳥のはさみです。違う言い方をすればねぎまです」
やられた。
最終問題は何故か知らないけど、『クロハ先生』って書いてあった。
つまり、全問正解。
「全部合ってるぞ」
プリントを受け取り嬉しそうにもしないでコイツはプリントを仕舞った。
急にポケットから振動がきて携帯だろうと出してみると、六条道の端末でそういえば返してないのを思い出し六条道に渡した。
「有難う御座います」
六条道は端末の電源を切ってポケットに仕舞いこみ俺のほうを見てくる。
いつもその視線が好まない。
見透かされてるような感じがして気持ちが悪い。
「今日は昨日のプリントの続きをやったら帰って良いぞ」
プリントを渡し、六条道が問題を解いて帰っていった。
今日は普通に学校で3分の1の休みも取って学校に向かう。
生徒達が登校してきて、自分のクラスに入って思う。
六条道が居ない。
いつも必ず居る奴が居ないと物寂しいものだと思いつつ、出席をとる。
俺は六条道の担任でもあるから六条道を欠席にした。
きっと風邪でも引いたんだろう。
何時間目かは忘れたが、数学があってテスト範囲や新しいとこを教えて一日が終った。
暫く職員室に居ると六条道からメールが届いて開けてみると一文だけ書かれていた。
『貴方が好きです』
俺の返事を待つ前に六条道は転校すると校長から聞かされた。
【教師と生徒と補習】END
【熱が出たから】※オリキャラ有り
朝起きると熱があった。
微熱かと思って放置していたが徐々に体温は高くなり、仕方なく薬を飲んで横になっていた。
熱になった原因は分からないが、昨日の雨に濡れた事でも原因があるのだろうか。
―ピンポーン
インターホンの音が聞こえて体を起してドアに向かう。
セールスとかだったら無視でもしようと決めてドアを開けると、意外な人物が立っていた。
「よう」
「……」
夏場だというのに黒い服を着た九ノ瀬クロハを心配しても大丈夫だろうか。
重たい頭を無理やり上げてクロハに笑顔を向ける。
「おはよう、どうしたんだ?」
遊びに来たとかなら断れば良いかと思っている。
クロハは俺の様子が可笑しいのに気が付いたのか、俺の額に手を当てて驚いた表情をしている。
手をすぐにどけてクロハは俺を担いだ。
「え、どうした?」
いつもより回転が遅い為何が起きているのか分からない。
クロハは無言で俺の部屋に入り、ベットに俺を寝かせた。
「お前、熱あるなら寝てろ」
「寝てた時に来たのはクロハじゃん」
「悪かったって、何か買って来てやるから何が食べたい?」
食べたいものは無く、ただクロハを見つめているとクロハは勘違いかワザとかのどちらかで頬を赤く染める。
「ま、まさか…俺?」
一発殴ってやろうと拳を作ってクロハの右頬を殴る。
効果音はペチッと言う音だと思う。
力が入らない為意味も無く殴ったようなもの。
「いたい」
「痛くないくせに」
痛くも無いのに痛いと言ってきて頬を抓る。
数秒で離して食べたいものが無いと伝えて俺はそのまま目を閉じた。
ひんやりとしたのが額に乗ったのが分かる。
タオルか冷えピタか手だろう。
どれかは分からなかったが、額に何か乗ったのは理解できた。
目を瞑っていても仕方ないので目を開ける。
目の前にはクロハの顔がある。
「おはよ」
クロハの口が動いただけで俺は顔から火が出そうになる。
熱の所為と言えるけどそれ以上に赤くなる気がした。
クロハの手が俺の頭を撫でて、俺の頬を指でなぞって、その仕草だけで俺は幸せになれた。
「にやけてる」
にやけてても仕方が無い。
それだけクロハが好きで堪らない。
「クロハ…好き」
言ってしまったっと思ってからは遅くてクロハは顔を赤くしてそっぽを向いた。
それでもその仕草さえ愛しく思えた。
【熱が出たから】END
【心霊特集見た後になる事】※オリキャラ有り
「あっ…んっ、ヤダ…」
俺の下に居るのはシンタロー。
何でこうなったのかというと、俺がシンタローがホラーが苦手なのを知っていてわざと『真夏の心霊特集』を一緒に見たところから始まる。
二人で『真夏の心霊特集』を部屋を暗くして見ていると、やっぱり心霊系はカメラの端に映ったとかが多い。
けどシンタローはチラッと映っただけでも俺にしがみ付いてきて、テレビを見ないようにする。
「シンタロー大丈夫だから、俺が横に居るだろ…」
本日何回目かは忘れたが、同じことを言ってシンタローの背中に手を回して背中をさする。
ランキング順に映像を流すタイプなので今は第3位で、もうすぐ第1位にくる。
俺はテレビよりシンタローの反応の方が気になっていた。
丁度、第3位の映像が終って第2位の映像に変わった頃にシンタローが不思議な動きをした。
俺にずっとしがみついて、何かを我慢しているかの様な…。
「シンタロー」
気になって声をかけると、シンタローは頬を赤くして俺を見つめる。
そんな視線が可愛く見えたが、後で色々妄想などはしようと思いシンタローに躊躇いもなく尋ねる。
「トイレ行きたいの?」
俺が躊躇いもなく言った言葉にシンタローは顔を真っ赤にさせ、小さく頷いた。
第2位の映像も終ったと思われる頃には、シンタローは限界を超えているのか息遣いが荒くなり始めた。
さすがに放置するわけにもいかないし、かと言って俺は見るから一人で行って来いって言うのもアレなので、録画していたのを一度一時停止をしてシンタローをトイレまで連れて行った。
無事にトイレを済ませて、部屋に戻ってきて続きを見る。
第1位の映像はかなり恐怖もので俺でも一瞬身震いをした。
これがこの番組の最後の映像のようで、エンドロールが流れてきたので停止ボタンを押し、録画一覧まで戻って来て、『真夏の心霊特集』を削除する。
番組を削除してもシンタローは俺にしがみついたまま。
「シンタロー、消したからもう見ないから」
俺がどんだけ言っても意味ないのか、シンタローは首をフルフルと横に振って俺にしがみついてくる。
どんなだけ怖かったんだよ。というのを心の中で呟いて、シンタローを一人にさせたらどんな反応をするのか気になって、「俺トイレ行くから」と嘘を言って部屋から出ようとすると「俺も行く」とシンタローがついて来ようとするので、必死に止める。
「お前はさっき行っただろ!!」
「ほっとけ!!」
と反発してきたので、この作戦はなしにしようと思ってある事を思いつく。
このまま猛スピードで自分の部屋に入れば良いのではっと、思って猛スピードで自分の部屋に戻る。
所詮ヒキニートの力じゃ俺の早さにはついて来れないだろう。
ドアの鍵を閉めて、しばらくリビングの様子をドア越しに伺った。
少しやりすぎたかなと思ったが、後には引けないのでシンタローの反応を楽しもうと思う。
「え?なぁ…ちょっ、一人にするなよ…」
か細い不安の声が聞こえてきて、ニヤニヤとカノの様に笑いさらに聞き耳を立てる。
「なぁ、おい。レンヤ…!戻って来いよ…」
「レンヤ…早く…頼むから…ぁっ!」
聞きなれない声が聞こえて、俺は鍵を開けてシンタローの傍に駆け寄る。
シンタローはソファーの上で足を閉じて、ズボンをぎゅっと握っている。
「シンタロー!?どうした?何があった?」
俺が取り乱していると、シンタローは一言「トイレ行きたい」と告げた。
さっき行っただろと思いつつ、まぁ、ホラーが苦手なら仕方ないかと思いシンタローをトイレまで連れて行こうとすると、シンタローの顔が赤く染まる。
「どうした?」
顔を覗き込んで尋ねても、シンタローの顔は赤いままで顔色が変わることはない。
「取り合えず、立てるか?」
俺の質問にシンタローは首を横に振り、焦ったような顔をした。
多分限界が近いんだろう。
俺はシンタローの許可を取らずにシンタローを姫抱きして、トイレまで連れて行った。
あの後も何事も起きなくて、シンタローを一人で寝かすのは良くないと思い俺のベッドで一緒に寝る事にした。
【心霊特集見た後になる事】To be continued
【御伽噺】
【プロローグ】
闇の間―廊下にて―
王の宿命とは一体なんだろうか。
何故俺は王に仕えているのか。
その意味すらもう思い出せないで只、王の命令に従っている。
「おいクロハ。次の会議ではよろしく頼むぜ」
「はい。かしこまりました」
俺は一体何をしているのだろうか。
俺は王に仕える意味があるのだろうか。
そんな事を思いながら次の会議とやらに出るために、準備をする。
王はほとんどの事を俺に任せて会議とやらには顔すら出さない。
――俺は一体、何をしているんだろうか――
会議というのも面倒な事だ。
どうでもいい事を聞いて何になる。
本来なら断っているが王の命令の為、逆らえない。
俺は会議を終えて廊下を歩き自室に戻ろうとすると、誰かに名を呼ばれ後ろに振り返る。
後ろに居たのは真っ黒で巨大な蛇だ。
目が真っ赤で不気味な真っ黒な蛇だ。
不気味な蛇の周りには同じく不気味な空気が漂っている。
その蛇はまるで呼吸をするように俺に尋ねた。
「何をしているか知りたいか?」
考えている事が読まれたみたいで不快になるも無表情と無言でいれば蛇は、人が他人を馬鹿にするように舌をシュルルと出している。
不気味な蛇は舌を出しながら早く答えろと言わんばかりに目を更に赤く染める。
何も言えず、その蛇をじっと見ていると蛇は俺の方にだんだんと近付いてきてしまいに俺の目の前にいる。
俺と蛇の間には結構な距離があって分からなかったが、この蛇は俺の身長を越えた巨大な蛇だ。
俺や王を簡単に飲み込むだろう。
額から汗が流れ落ちて頬に伝い、冷たい廊下に真っ直ぐ一滴の汗が落ちていく。
「何故、王に仕えているのか知りたいか?」
蛇の息が顔にかかるぐらいの近さで、低い声で言われ俺は後ずさりをする。
関らない方が良い気がする。
俺は蛇を睨みながら通り過ぎて行こうとすると、蛇は通さないとばかりに巻いていた体を伸ばし始める。
やっぱり全身真っ黒な蛇だ。
「王に仕える者、貴様は私を知っている」
そう言いながら蛇は嘲笑するように俺の頬を舐める。
舐められたと理解すれば体は大きく震え、咄嗟に腰に差してあるサーベルを抜いて蛇に切りかかる。
サーベルの刃は蛇をすり抜けて何もない空間を切ったと同時に俺の意識は薄れていった。
闇の間―自室にて―
何が起きたのだろうか、気が付けば自室に居て、ベッドの上で横に寝転んでいて何が起きたのか全く分からない。
先ほど見た蛇は夢だったのだろうか?
夢なら気味が悪すぎる。
――ピピッ。
メッセージが届いているようだ。
俺はベッドから起き上がり、机にある黒い羽を突く。
黒い羽は真ん中で綺麗に真っ二つに割れて、上下に分かれる。
メッセージには王からで『廊下で倒れてたぞ』とだけ書かれていた。
俺は王に返信をしてメッセージパネルを閉じる。
「貴様は私を知っている」
自室全体に声が響き、その声は俺が廊下で見た蛇の声だ。
【御伽噺】To be continued?
【なりすましゲンガー】
俺は影だ。
いつもこうやって後ろ指を指されて笑われる。
どうせあっちもこっちも、二進も三進もお前の影に隠れたままなんだ。
★★★
「おばさん、この席どうぞ」
快速電車の中、俺の目の前に座るコノハが年寄りに席を譲る。
俺は席から動かず座ったまま。
「あら、どうも助かりました」
年寄りはフフフと笑い、コノハが譲った席に腰をかける。
コノハは近くで立ちながら窓の外を見ていている。
俺はその光景を見て見ぬ振りをする。
★★★
「最近の若者達は--」
なんてよく耳にするが、なにを隠そう俺がその最たる例だ。
実は俺だって怖いものはある。
人の心の奥底なんて怖くて知りたくもない。
きっと俺は誰の目にも映っていなく、そこには存在しない。
存在するのはコノハで俺じゃない。
だから俺はコノハの影だ。
いつもそうやって後ろ指を指されて笑われて、そんな行ったり来たりの人生で、日の光を浴びないせいでコノハの影を何度も影踏みをしてるんだ。
実は寂しがり屋の口癖が「アイツみたいにはなれない」ほらな、俺とコノハの距離が開いてしまって追いつけないんだ。
★★★
独りぼっちで誰も周りに居なくて、孤独な夜を何度も明かして、部屋の隅にポツンと咲く花に勇気を貰っていた。
トントンと部屋のドアがノックされてドアが開く。
部屋に入ってきたのはコノハで「話があるの」と言われる。
「クロハ最近、僕のこと避けてる?」
--君の心の中覗いて 忘れ物を見つけました。
俺は何も言えず、ただ黙っているとコノハは俺の膝の上に座って「クロハ」と俺を呼び、首に腕を回して俺の唇にキスを落とす。
その瞬間に頬が赤く染まって、目を逸らす。
そして逸らした目を向かせるように顎を掴まれて、コノハの方に向かせられてまたキスをされる。
今度は舌をねじ込まれて口内を好きなようにされる。
「んっ…ゃ、ぁ!」
喉の奥から聞いたことの無い声が聞こえて、息も辛くなる。
コノハの肩を叩いて口を離してもらう。
「クロハ…顔真っ赤」
そう言われて顔が熱いのに気がつく。
あぁ、そうか。
俺は--
「喜怒哀楽が足りない不完全な存在だよ」
とコノハが耳元でささやく。
★★★
明日また太陽が昇って、陰と陽の日陰と日向の境界二つの境目に、やっぱり逃げ続けるだけの人生なんだ。
なりすました影がこうやってコノハの影にずっと隠れて、いつかコノハに照らされて、このまま消え失せれたらそれが良いな。
【なりすましゲンガー】END
【心霊現象】内容実話・会話想像
ある日の事だった。
ある小学生(ヒビヤ)の一言から始まった。
「おばさん!いきなり冷房つけないで!!」
ヒビヤがキサラギに放った一言にキサラギが「おばっ!私じゃないよ!!」と言い、アジトの中に居たカノ(なぜいつも居るんだ)とマリー、俺、コノハとクロハが首を傾げる。
今日はそんなに暑くもなく、冷房もつけていないがヒビヤ曰く冷房がついたらしい。
「でも誰も冷房に近づいてないよ?」
カノの言葉に俺とマリー、キサラギが頷く。
コノハは話を聞いていなくクロハと何かを話している。
「いやでもついたんだって!」
「いつ?」
「2時間前!」
「私家にいたけど…」
キサラギの言葉にヒビヤは凍り付く。
ヒビヤが体験したのは2時間前にアジトに来て勝手に冷房がついたらしい。
それをそこに居ないキサラギのせいにするのはどうかと思うが…。
アジトには誰一人居なかったらしいので、この現象はおかしい。
いや、電気の流れが変わって勝手に作動したとも考えられる。
計画停電とかそういった事情かも知れない。
ここはしばらく様子を見よう。
「暫く様子をみるぞ」
俺が発した言葉にみんな頷いた。
五月○日×曜日。
今度はエネが何か言い出したようだ。
『ご主人!用も無いのにCD入れを開けないでください!!』
今朝の事らしい。
パソコンを起動してる間にトイレを済ませて、カッブ麺を取りに行っている間の出来事らしい。
『ご主人用もないのに何回もCD入れを開けて…』
「オレネットで検索してただろうが!!」
シンタローが反発して暫く言い合いが続いたので、俺はソファから立ち上がり時間も夕方なので、飯を作りにキッチンに向かう。
キドがご飯を作っている間僕がナレーションをするね。
シンタロー君から話を聞くとパソコンでカクカクシカジカを調べていたら(何を調べていたのか覚えてないので適当にして)勝手にCDを入れるとこが、開いたらしい。
「誤差動じゃないの?」と尋ねると「そんな誤差動があるか!」と返ってきた。
そんな事言われても僕パソコンの事知らないし。
暫く話を聞いているとキサラギちゃんも、テレビの音量が勝手に上がったらしい。
ひえぇぇぇぇぇぇぇぇ、と言うマリーの声が…っていつから聞いてたの?
「そうだったら最近おかしいよね…」
「あぁ、モモから聞いたが勝手に冷房がついたんだってな」
「まぁね」
一通りのことをシンタロー君に話すと、シンタロー君はまじめに考え始めて暫く経ってから「塩でもまくか」と言っていて、さすがにキドに怒られるので止めとこうと言うことになった時に、キドからご飯だと知らされる。
★★★
キドのご飯も食べ終わって、キサラギちゃんがお風呂に入っているときに、よくみたら結構最近に取り替えたはずの時計の指す時刻は大変な事になっていた。
短針と長針と秒針の三つが動くタイプで、電池式のやつだし最近電池を変えたから気にしなかったのに、もう一時間もずれていたなんて。
何がどうしてこうなったんだろう。
明らかに霊の仕業なのだろうか…。
★★★
次の日、時計を新しいのに変えてようすをみることにしてこの事件は幕を閉じた。
たぶん、またいつか語ることになると思うよ。
☆☆☆
「カノ…」
「何、キド?」
「途中から俺のナレーション取るなぁ!」
「ぐぼっ…みぞおち…殴らないで…」
幽霊よりキドの方がよっぽど怖いかもね…。
おっと、恐い恐い。
【心霊現象】END
【ヒキニートとヒキニート】
オレが家に引きこもってから二年が経つ頃、とあるチャットサイトでのことだ。
いつもの通り何か情報でも集めることができないかとチャットを始めたのが発端だ。
チャットを始めて数日経って、いつも通りチャットサイト開いて会話を始める。
オレと同じような引きこもりがチャットをしてると思うと、オレと同類で心が救われる。
チャット内容は最近のニュースだったり、ある番組のことだったり様々なものである。
オレもそこに混じって会話をしていると、一人の入室者が現れた。
--鹿さんが入室されました。
『やっほ~久しぶり~あ、新しい人が居る!よろしくねー!』
とても明るい文面を見てオレはコイツは女かと思ってしまう。
今日は平日でコイツは学校に行ってないのかと思うほど元気な文だ。
いや、大人かも知れないから何とも言えない。
『こんにちは、よろしくです』
当たり障りのない返事をしてトイレに行くために席を立つ。
トイレから戻ってきてパソコンの画面をみると、鹿というやつがオレに対して色々質問をしてきていた。
『いつからこのチャットしてたの?』
『君の住んでるとこは?』
『歳は?』
『あれ?ROM?』
オレは質問に一つ一つ答えて色々な話をする。
『18歳なんだ!僕は14歳!』
そんな話をしているときだった。
『住んでるとこ近いね会ってみない?』
そんなことを書いていたので、オレは一瞬イスから落ちて床に尻餅をつく。
「なっ…!」
顔が熱くなって下が熱くなっていく。
そんなこと考えてはいけない。
第一性別も分からないのにこんなこと思うのはよくない。
オレはイスに座りなおして、『良いですよ』と返事をして日時を決めて、チャットサイトを閉じてパソコンの電源を切る。
明後日の平日の午前九時に、○○駅に行くことになった。
次の日、明日だ明日だと思ってろくに眠れやしない。
お互いチャームポイントになる服を教えているので、格好は頭に入れている。
鹿というやつは黒いパーカーを深く被っているそうだ。
オレは赤いジャージを着てると伝えた。
そして、その日がやってきた。
駅までの道を息切れしながら歩いていると、平日のため学生の姿はない。
丁度駅に十分前について体を休める。
相手の姿を探してみるが、まだ見あたらない。
まだ来てないのか、からかわれたのかと思いながらウロウロを繰り返している。
「あ!いたいた!そこの君!!」
後ろから声が聞こえたので足を止め、後ろを振り返り相手の姿を確認する。
後ろに居た奴は「やっほ~」とニコニコと笑っている。
言っていた通りの黒いパーカーを深くではないが被っていて、黒縁めがねを掛けている。
「ぁ、えっと……」
お得意のコミュ障を発揮して、恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
ろくに人と会話してない為、口がうまく回らない。
「緊張してる?」
ニコニコしながらオレに尋ねてきて、顔をのぞき込まれる。
顔をのぞき込まれて、頬を染めて半歩後ろに下がる。
「大丈夫だって!僕も緊張してるから」
片目を瞑って、口元に人差し指を当てて笑うコイツから緊張感は伝わってこなかった。
むしろからかわれてる感の方が伝わってきた。
「僕の名前言ってなかったね。僕の名前は鹿野修哉だよ」
「あ、あぁ…オレは如月伸太郎だ」
お互いに自己紹介してどうしようか考えていると、鹿野が「喫茶店でも行かない?」と言ってきたので、取り合えず喫茶店に向かうことにする。
☆☆☆
「シンタロー君だっけ?僕、君と会えて嬉しいよ!」
にっこり笑うコイツが少し可愛いと思ってしまった。
とある喫茶店にて、オレとカノは飲み物片手に話をしている。
「シンタロー君…ちょっと失礼するね」
鹿野は立ち上がり向かった先はお手洗いだった。
緊張しているのは本当なんだろう。
オレもコーラを飲み過ぎているせいか、トイレに行きたくなり鹿野の帰りを待っていると数分で鹿野は戻ってきたので、入れ替わるようにオレはトイレに入っていく。
「はぁ…」
無事にトイレから出て来て、席に座り話を再開しようとするが、鹿野の様子がおかしい。
そわそわとして何かにおびえているような、そんな感じがする。
「…どうした?」
「え!?な、何でもないよ!?」
フードを深く被り何かから避けているような鹿野が気になって、鹿野の後ろを見てみると特に変わった様子はなく、大人の人がカウンターでコーヒーを飲んでいる。
こっちを向いているわけでもないので、特に関係はないか、と思っているとカウンター席の隣で座っていた奴が、時々こちらを何度も見てきてるのが分かる。
「店、出るぞ」
鹿野の腕を引っ張り、喫茶店から出て後ろを振り返りながら前に歩いていく。
思ったとおり、カウンターに座っていた奴が後ろをつけて来ている。
「つけられてたのか?」
「うん」と鹿野は言い、オレと鹿野はつけて来ている奴から逃れるために、路地裏に入り、大通りに出て街中を歩く。
向かうはオレの家。
この時、オレと鹿野がどうなるかなんて誰も考えはしなかった。
【ヒキニートとヒキニート】To be continued
【人間失格】
未来には興味がない。
僕たちは二人で生きていける。
誰の力も借りずに、僕たちは【人間】になることなく、二人だけで生きていける。
そう思ってた。
***
未来には興味がない。
他人にも興味がない。
ただ、アイツが隣に居るだけで良い。
この可笑しな世界で、アイツが、コノハが僕の隣居ればそれで良い。
コノハが隣に居てくれるなら、俺は、人殺しだってするだろう。
何も躊躇わず、当たり前の様に自分の手を血で染める事だろう。
そんな僕を誰かが「人間失格」と言っていた気がするが、顔も名前も思い出さない。
僕とコノハは大都会の街を歩いて、数々のことを目の前で見ている。
人が殺害されるところ、誘拐されることろ、どんなに残酷な事を見ても助けたいなんて思いはなくて、その場から離れずその光景を無表情で見ているだけ。
「……今日も人が殺された」
コノハが口を開くが全く感情がこもっていない。
僕とコノハが此処まで変わった理由といえば、アレしかない。
カゲロウデイズ。
いつの事だったかは覚えていない。
昨日の事かも知れないし、何百前の事かもしれない。
カゲロウデイズが原因で僕とコノハの性格は歪んだ。
僕の場合は元々歪んでいた。
遊園地から帰る途中のメカクシ団の一人、鹿野修哉に銃を向けて引き金を引き、殺害した。
その後にもほとんど全員を殺害した事がある。
「あぁ」
あの頃は僕もまだ感情を出していたのかもしれない。
今となっては感情なんて無でしかない。
表情も全く動かない。
アイツらはとっくの昔に亡くなっている。
全員寿命だ。
あぁ、女王は分からないが。
「ねぇ、クロハ…」
「何だ」
ハテナマークもビックリマークも存在しない。
無表情でそこに居て、ついに自分の笑い方も忘れ、僕たちは大都会の街を意味も無く歩いてる。
何億人死のうが僕には関係がないし、興味もない。
「また事件が起きてる」
「【人間】はすぐに事件を起す」
「あ、刺された」
痛そう、早く病院に、と言う声が聞こえる中僕たちはその光景をただ眺めている。
意味もなく。
そこに存在しているだけ。
ガムを噛んでフーセンを作ってそうやって見て見ぬフリと言うのを続けて、何年になるだろうか。
僕たちはそうやって多分、アイツら、メカクシ団が居なくなってからこうやって生き続けているんだろう。
だからなんだ。
それが何だという。
どこで誰が亡くなったって今の僕らには関係がない。
カゲロウデイズは存在しない。
止める意味もない。
アイツらは存在しない、そんな世界で生きる意味が無い。
「行こう」
殺人の光景も飽きて、その場から離れだす。
行く宛てなどなく、公園などで寝起きをしている。
懐かしいなんてみじんも思わない。
思うことなんてない。
結局僕たちは狂っているという事だ。
僕はコノハが隣に居てくれるなら殺人だって出来る。
コノハも同じで僕が隣に居るなら殺人が出来る。
僕らはどうしてこうなったのか。
さっきはカゲロウデイズのせいだとか書いたが、単なる悲劇の主人公気取りだ。
ただの悲劇にあったフリをしてるだけだ。
「ボールそっちに行ったよ!」
公園から子供の声が聞こえる。
近所の子だろうか。
声的には中学生に聞こえる。
「お、おぉ、OK!!ってあ!」
「リン何やってんだ?」
「うっさい!!レンが変なとこに投げるから!!」
「二人とも喧嘩しない。リンはボールとって来る」
「はーい」
ボールは公園から出て、道路に出ている。
それに続いて中学生ぐらいの少女が公園から出てきて、ボールを追いかける。
少女の見た目はセーラー服の袖を切って、裾を短くして、黒いホットパンツを穿いている。
髪は亜麻色で、肩の辺りで外に跳ねていて、頭には白いリボンがつけられている。
ボールが道路の真ん中に行き、リンと呼ばれた少女が駆け寄ってボールを取ろうとした瞬間、クラクションが鳴り響く。
キィィという音と共に少女が赤く染まって横たわっている。
クラクションの音に気が付いて一緒に遊んでいたらしい子達が、横たわっている少女に近付く。
それが、真夏の8月15日の事だった。
***
トラックに轢かれた少女の命はどうなったかは知らない。
僕もコノハも表情を変えず、無表情でその光景を眺めていた。
次の日、同じ公園に行ってみると、見たことのあ少女がボール遊びをしている。
昨日見た、トラックに轢かれた少女だ。
死んではないようだ。
少しほっとしたのは気のせいだろうか。
いつからか僕たちは感情がなくなっていた。
それはきっとメカクシ団が居ないからだと思っていた。
そうだ。
僕たちはメカクシ団の皆が居ない世界でぽつんと二人だけ残された。
たった二人、人造人間の僕たちが残され他の皆は亡くなった。
それを認めたくは無くて、初めから存在しないようにしようと思って、感情をなくしたんだ。
全てをカゲロウデイズのせいにして、現実から目を背けては、それを悲劇の主人公だと言い聞かせ、自己暗示というのか分からないが、とりあえず現実から目を背けて二人で生きて居ている。
僕もコノハもとっく分かっている事だとは十分に理解してる。
どれだけ探しても、どれだけアジトに居ても、アイツらは帰ってこないことぐらい理解してる。
「――恥の多い生涯を送ってきました、か」
人間失格、という本を書いた人が居る。
誰だっけ、太宰治だったような気もする。
今の僕たちには一番合う言葉なのかもしれない。
人間失格、という曲を作った人がいる。
「さよなら、僕らの人生」
という歌詞で終る。
人間失格、という言葉がある。
感情もなく表情もなく、人の死をなんとも思わない【人間】に使われることが多い。
ある少女のおかげで僕たちは思い出すことが出来たのかもしれない。
あの少女がトラックに轢かれなかったら、僕たちは人の死を見ては無表情で立っているだけの存在だった気がする。
僕らはまだ認めることは出来けれど、いつかきっと違う形で会えることを願っている。
これなら【人間失格】ではないな【人造人間失格】にはならないだろう。
あぁ、これが【人間】というやつか。
まだ、どうやって表情を作っていたか思い出せないけど、俺はコノハと二人でメカクシ団がまた集るときがくるその時まで待っていようと思う。
――恥の多い生涯を送ってきました――
「さよなら、今までの、僕らの人生――」
俺は真夏の8月16日の太陽に呟いた。
【人間失格】END
【ツンデレ女とクーデレ勝り】
カゲロウデイズの攻略も終わり、早三年。
私榎本貴音はいつも病と戦いながら、生活をしている…と言うわけではなく、病院の先生の頑張りもあり私の体は普通になった。
これでゲームがやり放題、と思ってゲームをしていたら木戸率いる元メカクシ団が、私の家まで押し掛けて懐かしのアジトに連れて行かれる。
………ゲーム。
遥はコノハで居たためか、体は大分丈夫になっていて発作も起こさなくなり、結構遠出もやりやすくなった。
相変わらずよく食べる……。
三年も経っているので学校にも行っていなく、ダラダラと家にこもってゲーム、ゲーム、ゲーム…とゲーム三昧をしていた。
死んだ人も帰って来ているので、時々文乃ちゃんと伸太郎と遥でバーベーキューをしたりしている。
そして今日もキドこと、木戸つぼみちゃんに家から連れ出されて、メカクシ団アジト(元)に連れて行かれる。
することはいつも同じで皆で話をする。
現在アジトにいるのは私、伸太郎、文乃、つぼみちゃん、修哉君、幸助君、マリーちゃん(漢字知らない)、桃ちゃん、ヒヨリちゃん(漢字知らない)、ヒビヤ君(漢字難しいから忘れた)、遥、と何故か黒い奴が居る。 「……で。何でコイツが居るの!!」
私は黒い奴を指さしてソファから立ち上がる。
すると修哉君がニヤニヤと「良いじゃないもうカゲロウデイズも終わったんだし」と言うので、よくつぼみちゃんがやっていたように修哉君の腹を殴る。
懐かしいな…。
「ちょっ!貴音ちゃん痛い…」
取りあえず修哉君はほっといて黒い奴に近づき、胸ぐらを掴んで「何でアンタが居るのよ!!」と怒鳴って睨みつける。
「先輩…コイツはもう悪さはしないって約束したから許してもらえないか…?」
「いくらつぼみちゃんでもコイツがやったことは…!!」
「でも三年かけて謝ってたの貴音さんも知ってるでしょ?」
つぼみちゃんに言い返そうとしていたら、文乃ちゃんがずいっと顔を近づけて言ってくる。
それはそうだけど、たった三年謝っても私たちは何度も繰り返していたのはかわりない。
しかもコイツのせいで何人もの死者が出て、皆傷ついてそれでも前を向いて生きていたのを三年謝っただけで許せない。
「でも…コイツは…遥の命まで…」
弱々しく言っていると肩に誰かの手が置かれて「貴音」と言い、続けて「僕は貴音と居れただけで楽しかったから大丈夫だよ」と言い、さらに続ける。
「それにたくさんお友達できたから…」と照れくさそうに頬を掻きながら遥は言う。
それでも私はコイツを許せなくて、俯いたまま何も言えないでいる。
「遥君だってそう言ってるか良いんじゃない?許してあげようよ」
修哉君が私に近づいていつもの様にニコニコと喋っているのが分かる。
私はため息混じりに「…遥がそう言うならいいよ」と言い、少し外の空気を吸おうと思いアジトから出ていく。
★★★
「はぁ~…」
ため息をつきながらその辺りを歩いていて、今もアイツを許そうかどうかと考えている。
さっきは遥が良いならという意味で許すことにしたが、まだ私の中にはモヤモヤが残っている。
あの頃遥に感じていたモヤモヤ感とはまた別の……。
あぁ、もう!!
考えても分からないから放棄放棄。
こんな時つぼみちゃんなら…。
「つぼみちゃんなら…」
「貴音」
「つぼみちゃんなら…」
「貴音」
誰かの声がするのは気のせいだろうか。
私は考え事をしていると幻聴でも聞こえたのかな。
いや、そんなはずは…。
「貴音先輩」
「は、はいぃ」
突然耳元で名前を呼ばれ、肩がびくっと揺れる。
ゆっくり後ろを振り返るとそこにはつぼみちゃんの姿がある。
路地裏というわけではないから居てもおかしくないけど…。
「先輩、どうしたんだ?」
つぼみちゃんはいつもフッと笑いながら私に尋ねてきて、頬が赤く染まるのが分かった。
「どうした?」
「え!?べべべべ、別に!!」
首を横に振りながら頭に手を置いて、言い訳を考えていると私のバカな頭じゃ言い訳が出てこず、アハハと言いながら目を逸らす。
「様子が変だぞ」
つぼみちゃんが私に近づいてくる。
「ど、どうしたのつぼみちゃん…?」
後ろに下がりながらつぼみちゃんから顔を逸らす。
普通の道なので人にぶつからないか、後ろを確認しながら一歩ずつ後ろに下がっていく。
「つぼみちゃん…?」
ゆっくり近づいてくるつぼみちゃんがクールでかっこよく見えて、いつもより自分の理性が抑えられなくなる。
つぼみちゃんを真っ赤にしたい。
ここだけの話なんだけど、私はつぼみちゃんの事が好きで毎日元アジトに連れて行かれるのは、意外に嬉しかったりする。
それに女子力も高いし、料理上手だし、家事も出来てモテそう…。
じゃなくて!!
私はつぼみちゃんが好きで毎日つぼみちゃんの事を考えている。
「つぼみちゃん……」
私はつぼみちゃんの腕を掴んで走り出した。
「お、おい!貴音!?」
向かった先は路地裏で人気のない路地裏に着いて、つぼみちゃんの腕を離す。
「はぁっ…はぁっ、ど、どうしたんだ、貴音?」
息切れをしながら私に尋ねてくるつぼみちゃんに、私も息切れをしているので呼吸を整えて口を開く。
「ご、ごめん!えっと…その…今言うのもあれ何だけど……私、つぼみちゃんが…」
好き。
その先が言えなくて色々なとこに視線を向ける。
無造作に置かれたごみ箱や、ビール瓶を入れてるケースが目に映る。
けど、肝心なつぼみちゃんを目に映す事はできなくて、青い空をみたり、アスファルトを見たりと挙動不振になっている。
「貴音……?」
つぼみちゃんが近づいてきて、私の頬に手を添えて「顔赤いぞ」と言った。
熱でもあるのか?という意味なんだろうけど、私にはつぼみちゃんが好きだということが知られた気がしたのでつぼみちゃんの手を払う。
「うるさい!!」
あぁ、何でいつも素直になれないんだろう。
遥に大好きって言った時も手遅れになってからだし、もっと素直になれたらきっとつぼみちゃんにも告白できたんだろうな。
「わっ悪い!」
慌てて手を離すつぼみちゃんに「ぁっ…」と声を漏らしながら、手を伸ばす。
つぼみちゃんの手を掴んで俯きながらぽつりぽつりと言いたかったことを言う。
「ご、ごめん…私…、つぼみちゃんが…つぼみちゃんのことが……」
好き。
中々言えなくて頬が赤くなっていくのが分かる。
一言好きと言えば想いは伝わる。
一言好きと言ってしまえば、つぼみちゃんに嫌われるかも知れない。
そんな葛藤を心の奥底でしているから、中々好きと言えない。
「--好きだ」
「……へ?」
つぼみちゃんから聞いたこともない言葉が聞こえた。
好き、なんてカゲロウデイズの時ですら言わなかったのに何で今つぼみちゃんは…。
「貴音、俺は貴音が好きだ…も、勿論恋愛的な意味だからな!」
照れ隠しなのか怒っているような言い方でフードで顔を隠す。
私は顔をゆっくり上げて、つぼみちゃんの顔をのぞき込んだ。
フイっと顔を逸らされて、私はムッとしたのかつぼみちゃんを壁に倒して俗に言う壁ドンをした。
「私の方が先輩なんだけど」
と強がりで強がってしまって後悔をして、つぼみちゃんの赤い顔に勝ったなんて思いながらつぼみちゃんの唇にキスを落とした。
--私も好きだよ。
【ツンデレ女とクーデレ勝り】END
【最前策は今日もまた__】
とある暗い空間に俺は居た。
真っ暗で右も左も上も下も斜めも、全て暗闇の世界に俺は存在した。
別の言い方をすれば俺は【人間】の恨み、憎しみ、恐怖、嫌悪、憎悪、嫉妬、全ての負の感情で【黒蛇】として作られている。
この少年もそうだ。
//
『シンタロー……死んじゃった、ゴメンね』
『寂しいこと言うなよ、行かないで――』
そんな悲劇があってからは、この少年学校にも行かずに家に引きこもっている。
それからはこの少年、名を如月伸太郎 通称シンタローと言う。
ここ最近俺の居るこの暗闇の世界によく迷い込んでいる。
そうは言っても、ただ体育座りをして気がつけば居なくなっている。
俺の知っている最前策とは全く違う様子で、目元に隈があり誰も寄せ付けないオーラを放っている。
//
『シンタロー君、もしかして……絶叫系苦手?』
『うるせぇ!!』
『カノ失礼っす』
モニター越しに何度目かの遊園地シーンを見つめて、赤ジャージの最前策を指でなぞる。
いつしかあの少年、如月伸太郎もあのように笑うのだろうか。
そして今日も如月伸太郎が暗闇にやってきた。
何故か知らないがシンタローは俺を見つめていた。
//
『んっ…はぁっ、ま…!』
『こんなに濡らして』
『そっ、それはクロハが…!』
//
夢で助かった。
目が覚めると体中に汗を掻いていることに気がついて、シャワーでも浴びようと暗闇から出る。
暗闇を出るとそこはあの赤ジャージの部屋と全く一緒だった。
「……」
あたりを見渡してもシンタローの部屋だ、なぜここに居るんだと思っていると、ガチャとドアが開く。
固まっているとシンタローは目に隈を作っていて、黒いパーカーを着て部屋に入って来た。
「……誰だよ、お前」
睨みつけられては何も言えず、ただそこに立っているとシンタローは俺の横を通り過ぎてPCの前に腰掛ける。
//
「…………」
無言でPCを触っていて、シャワーを浴びるのを忘れて俺はその場でしゃがみこんでいて、シンタローの様子を見ている。
「なぁ……」
声をかけてもヘッドフォンをしてるシンタローには俺の声は聞こえていなくて、キーボードーで文字を打っていた。
「シンタロー……」
ヘッドフォンを片方外してそう呼んでみると、シンタローは肩を揺らした。
「ひっ!」
大きく肩を揺らしたシンタローの耳に息を吹きかけて、チロッと蛇に耳を舐めさせる。
これもまた大きく肩を揺らすシンタロー。
段々面白くなってきて蛇を消してシンタローに色々仕掛ける。
耳を甘噛みしたり、背中をなぞったり、太股の内側を撫でたりした。
その度に体を跳ねさせるシンタローの姿を可愛いと思ってしまう程、俺はシンタローに惚れているのかも知れない。
手を離し遠慮なくベッドに腰掛けて脚を組めば俺はシンタローに「最善策」と声をかける。
シンタローは振り向いて俺を睨みつけているが、【蛇】にとっては好物でしかない。
そんなにこの俺に弄られたいのか?
そんな冗談を心中で呟きながらも、シンタローを手招きする。
シンタローは俺に従ってベッドまで歩いてくる。
何も食っていないような細い体、今にも崩れそうな心でずっとPCを触っていて、何が楽しいのか分からない。
【黒コノハ】としてか、【蛇】としかは理解出来ないが俺にとっては何が楽しいのか全く理解できるものではない。
「シンタロー……」
俺が名前を知っているのに疑問に持っているのか、驚いた表情をした。
メカクシ団の名前なら全員覚えた。
さすがに何百回繰り返しを見れば俺だって覚える。
「シンタロー……」
「あ、アヤノ……!?」
驚いた表情を隠せていない。
そりゃぁそうだろう、俺が【欺く】の能力を使いアヤノに化けている。
それの目の前で見せられてしまっては、驚くだろう。
「ちがっ……俺は、ただ……」
何を懺悔しているのか、それはこの少女アヤノの死についてだろう。
顔を歪ませて今にも泣き叫びそうな表情を浮かべているシンタローに笑いかけて「大丈夫」とだけ言って笑みを浮かべる。
悪いのはお前じゃない。
お前じゃないんだ――。
そう心の中で言いつつも伝わる訳ではないので、シンタローの頬に触れたら見たとおり震えているのが分かる。
「シンタローは悪くないよ、悪い人なんて居ないよ。シンタロー、私の分まで学校行事楽しんでね」
「ア、ヤノ……?」
首を横に振りイヤイヤと言っているがいつまでも欺いている訳にはいかないので、シンタローを抱きしめながら欺くのを止めた。
いつまでも「アヤノ、アヤノ」と泣いているので中々声が出す事が出来ない。
――悪いのは、俺なんだ。
俺がアヤノを殺し、メカクシ団を殺した。
その事実は変わることはない。
けれど、今までの世界では俺が殺していたとしても、この世界ではとっくに前の世界の俺によって殺されてしまったアヤノの代わりに生きる事は許されるだろうか__。
最善策は今日もまた__
__独りで泣き続ける。
【最善策は今日もまた__】END
『隊長のすべて俺にちょーだい』
俺の所属している隊長はどちらかというと、美形だと思う。髪が長いのが余計に良いのかも知れない。その姿を見てしまうと目を奪われる。金髪で碧眼、高身長そういったものがあるから目を惹くのかも知れない。ただ、その姿は何と言っても綺麗だと思っている。
「……今日の任務はここまでだ。各自油断せずに帰還しろ」
「了解!」
今日のミッション内容、モンスター討伐。数はそんなにないのでいつもより気楽に戦えるが、だからと言って気を抜くことは許されない。だからアジトに戻るまでは警戒を怠らない。
「隊長……! ちょっと良いですか?」
ピンクの髪をツインテールにした同じ隊の「アイナ」が隊長に声を掛ける。
「アイナか、どうした」
「この武器ミッション前に強化したんですが……前より使い方が複雑になってしまって……」
「見せてみろ」
これです。とアイナはショートブレードを隊長に見せる。確かに一昨日見たときより強化されて、多少複雑な事になっている。複雑なことが苦手なアイナにしてみれば軽くパニックを起こしても良かったはずだ。いや、既に起こしていたのだろうか。隊長とアイナだけその場に残り、他は先に帰還しろと言われたので帰還した。
**
「隊長~! さっきはありがとうございます! おかげで使い方が楽になりました!」
「そうか」
「はい! 今度隊長と討伐ミッション受けて良いですか?」
「あぁ」
アジトに戻るなり、アイナと隊長の声がする。甘いアイナの声は嫌いな人は嫌いだろうが俺は別に嫌いじゃない。寧ろ羨ましい。俺にはそんな甘ったるい声が出せないので、その点で女の子は良いなと思う。
隊長は口数は少ないものの、仲間思いのところがある。俺は経験した事がないが、さっきの様にアイナが武器の使い方が分からなかったら教えたり、必要としている材料があれば隊長自ら譲ってくれるらしい。そんな体験俺は全くした事がないから俺は隊長に嫌われているのだろうか。
そんな事を思っているある日だった。いつも通り、隊長とアイナと俺でミッションに向かう事があった。メンバーは前回より少ないが、採取ミッションなのでそんなに人数は要らないだろう。無事ミッション内容も終わって帰還しようとしていた頃――ギュッと隊長が自分の服の袖を掴んだのを見た。
普段ならそんな事しないのに珍しいと思っていると、顔に汗が浮かび上がっている。アイナは気づいていないようだが、汗の量は背中をも濡らしており、ひょっとしたら立っている事もままならないんじゃないかと思わせる。隊長の事だから何でもない様子を装っているように思える。ここで俺が隊長に大丈夫かと声を掛けても隊長はとぼける可能性の方が高い。
アイナの肩を軽く叩き、振り向いたところで「悪い、先に戻っててくれないか? どうしても隊長と話したい事があって……」と小声で伝えてみる。好奇心旺盛なアイナは『話ってなぁに?』『隊長と二人きりで?』『もしかして~』なんて聞いてくるだろう。その時の言い訳を考えていない。
「うん、良いよ。じゃ先に行ってるね」
何も疑う事なくアイナは手を振って帰還した。アイナの背中を見送りながら足を止めて、後ろを振り向く。勿論隊長がそこに居るわけだが、隊長が何をしたって顔で見てくるからどうしようと足が竦む。
別に悪い事をしている訳じゃないからそこまで怯えなくても良いといえば良いが、隊長に対して罪悪感が生まれる。
「隊長……あのっ」
「戻るぞ」
俺の言葉を無視して隊長は歩き出す。俺を通り過ぎるとやっぱり背中の汗の量は尋常じゃない。いつからだったんだろう、どんな状態なんだろう、何で言ってくれなかったんだろう、そんな事を思い、気が付けば隊長の腕を掴んでいた。
「隊長! 辛いなら休んでください! 俺……知ってますから、隊長が優しくて、誰よりも仕事をしてるって見てますから……! だから、具合が悪いなら、休んでください」
後半は最早涙声だと思う。自分でも泣いているのが分かる。心臓が煩い。怒られるかもしれない、嫌われるかもしれない、そんな事ないと言われるかもしれない、一体何が返ってくる? そんな俺を置いてけぼりに隊長は俺を抱きしめて耳元で「じゃぁ、少し休もうか」と囁いた。
いつも自分一人で仕事して、仲間が淹れたコーヒー飲んで、手伝うと言っても断ってて、睡眠もろくに取ってなくて、食べてるのかも怪しくて、そんな隊長が俺を抱きしめたという事は、期待しても良いんですか――? 隊長。
【篠突く雨/KHR】
――あぁ、めんどくせぇ。
それが、今日1日で思った事だった。別に任務で忙しいとかそういう事ではない。ただ、偶然が偶然を呼んで彼には不運でしかなかったのだ。
バシャリ、地面を歩く度に濡れるブーツ。この国の降水量は普通だろう。四季があるのだから多い時もあれば、少ない時もある。今回は多い時なのか、そんな事、全く馴染みのない彼にとっては分かるはずもなく只々、歩くしか方法がない。
このまま戻っても良いのだろうが、戻れば後輩に何を言われるのか想像しただけでも面倒だ。それにいちいち対応している身にもなってほしいが、そんな事はうるせぇ、カス。の一言で終わるだろう。今はそれに対してとやかく言う気力すら感じない。出来れば戻りたくないというのが今、びしょ濡れで街を歩いている男の気持ちである。
元々自身の私用なので、いつ戻ろうが問題ないと信じたいところなのだがどちらかと言うと、気分屋のボスが自分が不在故に起こす物事を思うと、胃が痛くなる。
それにこんな姿で戻ったところで、後の掃除が面倒なだけだろうとさえ思えてきた。
雨は憂鬱になりやすい。何て誰も言った事も聞いたこともないが、ふと思った。ましてや雨の属性を持っている者が思う事ではないだろうが、今となっては知らない事だ。とこの男――スペルビ・スクアーロは鼻で笑った。
未だに降り注ぐ雨。一瞬自分で降らしているのだろうかと思わせるほどの雨。空の色なんて灰色で、ほとんどの物音が消えてしまっている。あるのは自身が放つ、足音のみ。
とりあえずは休みたいと思って気がつくと公園にやって来ていた。確かに休むのには問題ないだろう。屋根付きのベンチがあるのだから、そこで横にでもなっていればいつかは雨も止むだろうと考えていると、ふと、見覚えのある姿が目に映る。かつてリングを賭けた戦いで、自身を倒した男。
どうしてこんなところに居るのだろうとか、いつになったら剣の道に来るのだとか、くだらないことを無性に聞きたくなった。バシャリ、気配も足音も消していたはずが、さすがに水が跳ねる音までは消せなかったのだろう。男がこちらに気づいて振り向いた。そして「やっぱりアンタだったか」なんて、最初から気がついていた素振りで口を開く。
「う゛お゛ぉい。いつから気づいてたぁ? 刀小僧」
刀小僧と呼ばれた男――山本はいつもと変わらない笑みを浮かべ、暫し考える仕草をしてから「んー。大体あの辺あたりから」と、入り口付近を指差す。スクアーロにしてみればどこだと言いたくなるが、あの辺と言う言い方からしてそう遠くないのだろうと勝手に決め付けた。
「ところでおめぇ何してんだぁ」
ドサリと山本の隣に腰をスクアーロは下ろした。その所為で男に数滴雨水が飛ぶが、山本はそんな事気にすることなくスクアーロの問いに「野球の特訓で走ってたんだ。その最中に雨降ってきたから、こうやって雨宿りしてる」そういうスクアーロは? と山本は尋ねた。スクアーロは答える意味があるのだろうかと思ったが、ここで立ち上がってアジトに戻るよりかは幾分マシかと考え「買いモンだぁ」と答える。
「スクアーロが買い物って想像できねーのな」
普段の職業から考えて、スクアーロは買い物をするような人物ではない気が山本にはした。特に意味があったわけでもなく只、リング戦や未来での戦いや代理戦争ぐらいしか知らないので、純粋に思ったことを口にした。
「そうかぁ。しねぇってワケじゃねぇ」
よく大声で喋っているのは知っているが、こう静かに喋っている事はほぼない気がする。そう山本は思う。実際二人きりで話した事がないからそう思うだけなのかもしれない。スクアーロは脚を組み、上にある膝に肘をついて頬杖をつく。どこか遠くを眺めているような、そんな表情で「ここでしか買えねぇモンとか買ってるだけだぁ」と付け足した。
どんなものだろうと思うが、多分勝手な想像だが職業関係だろうと思いあえて聞かなかった。その代わり。
「雨止むまで俺ん家で寿司食ってかねぇ?」
なんて提案した。傘なんて持ってないが、当分は止みそうにない雨だ。ここでぐだぐだ喋ってても良いが、そうするとスクアーロが風邪でも引いてしまいそうな気がしたのだ。当然スクアーロが否定すれば何の意味も持たない提案だ。
「……こんなに濡れてる奴誘うバカが居るかぁ」
スクアーロは山本を一瞬見ては視線を元に戻す。呆れて溜息を吐いては上記を述べるが小さく「ま、悪かねぇな」と呟いた。
「じゃ決まりだな! わりぃけど俺も傘ねぇからまた濡れるのな」
後でタオル貸すからちょっと我慢してくれ。と付け足して山本は立ち上がった。その姿を横目で捉えてスクアーロも立ち上がる。頭の後ろで手を組みながら歩いていく山本の後を追って、屋根付きベンチから再び冷たい雨に打たれた。
【王子と鮫】
最近、思うところがある。いや、超個人的に思っているだけだから問題はないだろう。この金髪ティアラのベルフェゴールは何故、此処に居るのだろうか。しかも普通に。
「う゛お゛おおい! ベルてめぇ、なんで居やがる」
「うししし♪ だってオレ王子だもん」
「んな事は聞いてねぇ!! 何でてめぇがこの学校に居るかだぁ!!」
「だって暇だし」
此処は並盛。並盛中学校で、ボンゴレ10代目と守護者を暫らく護衛する形で英語教師に化けたスクアーロが、たまたま暇を持て余した王子ことベルにずっと思っていたことを尋ねた。一応一般人も居るわけなのでそういった物騒な話はあまりしない方が良いだろうと思って、スクアーロはあえて何も言わなかったがその所為でベルがずーっと何の違和感もなく居るので痺れを切らしたのだ。放課後に暇だから来たとかならまだベルらしいとか、さっさと帰れなど言えたのだが、堂々とそれも外国からの転校生としてやって来たので、何と言えばいいのか分からず放置していたのもある。それは兎も角として、王子様が一般的な学校の授業を受けても楽しいのだろうか、何て疑問も生まれてくる。
「暇だからって転校生としてくるんじゃねぇ!! 大体、オレはボスさんに言われてだなぁ……」
「オレもボスに許可貰ったし」
ボス……。ベルに甘いのかただ面倒なのかがよく分からない。額に手を当てて軽く溜息を零す。いつもマーモンが居るが、今回は居ないためマーモンは関わっていないのだろう。そんな事を思いつつ、来てしまったものはしょうがないので「面倒なこと起こすなよ」と言って、スクアーロは職員室に戻った。
1人教室に残されたベルは少しポカンとしたの地に、「うれしー癖に」と歯を見せて笑った。
『文系×理系』
次の日。よし、今日も頑張るぞ! と思い朝早くから起きて朝の支度を終え、最近読み出した恋愛小説を読む。部屋でしか読まないので進む度合いは低いがそれでも、急いで読むよりかは断然頭に入る。
主人公の女の子がクラスで一番人気の男の子に告白するシーンで、それはもうロマンチックだった。夕日が照らす教室、誰も居ない空間、好きな人と二人きり、主人公の恋は実る。あぁ、良かった! 実に良かった。感動と同時に悲しくなる。小説やアニメやマンガの中での話は実ることが多いのに、俺の恋は実る可能性が低い。というか、俺が幼馴染の麻衣に抱いている感情が恋愛感情だという事に麻衣は気が付いていない。
「……どうやって気付かせるか」
うーんと首をひねりながら考えるが、理系っていうのは言い訳にしかならないのであまり使いたくない。勉強が好きっていうのも何か違う。どちらかと言うと恋とかそういうのには興味がないとか、関わりがなく、数学の公式を使って早く理科の実験の結果を計算したい、っていうオーラがあるようにも思える。大人として例えるなら仕事熱心だと思う。だから恋には気が回らないのだろう。
だからと言って無理矢理気付かせるというのも趣味じゃない。俺が望むのは麻衣が俺に恋してるって気が付いて欲しい面もある。
麻衣のどこが好きなんだと聞かれると、即効で全部と言いたくなる。数学の計算や理科の実験などにしか興味がないのも含めて好きなんだ。でもそこで全部って言ったらありふれているし、かと言って細かく言っても嘘っぽくなる。そんな台詞を言う前に、まず麻衣に俺の感情が恋愛という事を認識させなくては!
そう思っているとドアがノックされた。時間からして麻衣だろう。ドアを開けて「おはよう」と言ってくる麻衣にいつも以上の笑顔を向けておはようと返す。ふと、麻衣の髪の毛が跳ねていることに気が付き、右手で跳ねているところを軽く押さえる。幼馴染だからこれぐらいは許してもらえるだろう。
「寝癖ついてる」
優しくその部分を撫でていると、麻衣は俺を見つめて「頭でも打ったの?」と尋ねてくる。
「何で?」
「普段そんな事しないでしょう」
「麻衣だけにしかしない」
「あらそう」
照れる様子もなく、いつも通りにしているので少し悲しくて手を離す。そうすると、今度は麻衣が寝癖の部分を押さえて「水、つけたら直るかしら……」と呟いていた。もしかして、表情に出ないか出さないだけで、本当は気にしているのかもしれない。そんな麻衣を見て頬が緩んだ。
トピック検索 |