胡蝶 2014-09-12 22:42:07 |
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渡り廊下を過ぎて、西棟に入る。そのまま真っ直ぐ歩き、突き当たりを右に曲がると、そこにあたしたちの教室―1年A組がある。
((支援も兼ねてw あまりに短く、無難な感じの文章ですが、ちょっと書かせて貰いました。他にも参加者が現れると良いですねぇ(´∇`*)))
ドアを開ければ真っ先に「片瀬さん、おはよー。」「はよ、イツキちゃん。」ヘラヘラと緩い笑みを浮かべながら、男子生徒達がイツキに挨拶して。栞は視界に入っていないのか--身長が低い故仕方ないのかもしれない--全く話しかけてこない。(萌え袖も大した効果ないなぁ…)どこか不満そうな表情になり。「1時間目さぁ、数学だよね。宿題やってきた?」頷くだけの素っ気ない反応を返すイツキ。どんなに無愛想な対応をしても“クールビューティー”と認識されるのだから美人は得である。
イツキは男子生徒を振り払い、栞は“萌え袖”を直して各々の席に着く。--その時、栞は“異変”に気がついた。
((>5様
支援有難うございます!!
いえ、上でも申し上げた通り、参加していただけるだけで嬉しいです!
((因みに>1の“あたし”=“栞”です(笑)
「…?」
あたしは席に着いたまま、自分の腕とその下の机の表面を交互に見つめた。
「影が…ない?」
小さな声で呟いた瞬間、さっきまでの室内の喧騒を遮って悲鳴が響いた。続いて男子の誰かが叫ぶ。
「上!上だ!!」
思わず天井を見上げると、そこには一つ目で大きな口をした真っ黒な怪物が張り付いていた。
「ハァァーー」
怪物は軽く息を吐くと、次は一気にあたりの空気を吸い込む。
「フシュゥー」
すると教室中の影という影が黒い霧となって浮かびあがり、怪物の口に吸い込まれていった。
(影を食べる妖怪なんだ…!)
(テーマもジャンルも自由ってことで思いっきり突飛な展開にしてみました。空気読めてなかったらさーせん← ダメだったら無視してー)
良いだけ影を食べた怪物は満足したのか、不気味に素早く動いて、壁を伝って廊下へと逃げ出した。1-Aの生徒たちは変に明るい教室に残された。
「うわぁああぁぁあっ!!」「助けて…っっ、誰かあっ!!」男女の悲鳴が入り混じる。どれが誰の声だか分からない--高い声も低い声も、全てが土砂のように鼓膜を通りすぎる。頭が…痛い。瞬く間に教室は地獄絵図と化した。
逃 げ ろ
脳が命令を出す。恐怖心からか動かない体--背中を冷たい汗が伝う。その時、ふいに後ろから腕を掴まれた。
「パニックになったら怪我する。」「--いっちゃん…」
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「♪」機嫌が良いのか鼻歌を歌い、口角を上げフワフワと浮遊しつつ1年A組の教室を見つめる少年が1人窓の外にいたことには、誰も気づかなかった。
((>7様
こういった展開は割と好きなので(笑)、大歓迎ですよ、有難うございます!
もう本当に何でもアリなんで!←
怪物が消えたあとも栞はイツキに腕を掴まれたまま尚も硬直していた。足は震えがくがくしており、イツキに手を離されたらへたりこんでしまいそうであった。
(何だったんだ今のは…)混乱する頭でそう思ったとき、廊下から物音が聞こえた。続いて怪物の声と思わしき絶叫。
それに驚いて、騒然としていた教室が静まり返った。何人かの女子のすすり泣く声だけが聞こえる。
イツキは冷静な眼差しであたりを伺っているようだった。
廊下から強い風が吹き抜けるような音がし、真っ黒な霧が大量に教室に吹き込んできた。栞は思わず目を閉じて悲鳴をあげた。他の生徒の声と混じり、耳が痛くなる。
「やれやれ、この程度の魔物相手に馬鹿馬鹿しい」
目をあけると教室の入口あたりに1人の男子…宇田 亮一が立っており、教室内には影が戻っていた。どうやら、さっきの怪物は宇田が退治してくれたようだった。
窓の外では、1人の少年がその様子を見て、つまらそうな顔をし、何か一言呟いたあと(多分、何だつまらないとかそんな台詞)何処かへと飛び去っていった。しかし、それはこの時点では誰も知らないことだった。
(助かったんだ…)安堵感がゆっくりと沸いてくる。だが、その次の瞬間
「ん、良かっ…」言いかけたイツキの声。腕から手が離れる感触。
「いっちゃん?…!?」
イツキが倒れた。
そこで気付いた。あたりのものには全て影が戻っているのに…イツキにだけ…
影がないままだった。
倒れたイツキを揺さぶるが、彼女は苦しそうに不規則な呼吸をするばかり。白い肌に、漆黒の長い睫は影を落とさないままだ。「ねぇ、皆っ…」辺りを見回すも、どの生徒も影が戻ってきたことへの安心感か此方には目もくれない。--ただ1人、宇田 亮一を除いて。「宇田くん…?」宇田の存在に気づき、怯えたように見上げては彼の制服の袖を震える手で掴み。「いっちゃんが…」恐怖で頭が回らないのか、それだけ言う。宇田は静かにイツキの側にひざまずいた。
宇田は事もなげに言った。
「そんなに怯えるほどのことじゃないって。ちょっと安静にしてたら、すぐ起きるよ」
ようやく周りの皆もこちらの異変に気付いたらしく、無数の視線や「え、片瀬さん…?」というような声が聞こえる。
「おい、皆大丈夫か!?」
少し慌てた様子で担任も含め、何人かの教師が教室に入ってきた。
(面白そうだから短いけど参加させてもらたw)
「起きる…?え?影は…?」栞が片言の言葉で問うと、宇田は答えた。
「それは別に何とかしないと戻らないけど(笑)」
その後、イツキはやってきた教師たちによって保健室へと運ばれていった。精神的に動揺を受けた者は多かったが、彼女以外に体調不良等になった者はいなかったため、午前中の授業は通常通りに行われた。
―最近、魔物が人間たちの生活圏に出没するようになった。
そういう話は聞いていたが、まさか自分が、しかも学校で遭遇することになるとは思っていなかった。
****
その昔 ―科学が最も栄華を極めた時代では― 、怪物や魔物というものは、さらにその昔々の人々の「空想の産物」だと考えられていたらしい。
しかし、発達し過ぎた科学から、強力過ぎる兵器が生まれ、それによって科学文明そのものを目茶苦茶にしてしまう大戦が起こった。すると、人々の暮らしは一気に原始的なものへと成り下がり、それまで科学の光によって、闇の中へ、闇の中へと追いやられていただけであった怪物や魔物たちが、再び人前に姿を現すようになったのだ。
栞のお祖父さんが生まれた頃には、まだ世界中に大戦の傷痕が生々しく残っていて、人々の暮らしも不便なものだったそうである。おまけに人と魔物の生活領域が重なっていたため、人が魔物に襲われることも多かったらしい。
だが、栞のお父さんが生まれる頃になると、人々は僅かに残った科学技術と、新しく発展させた魔科学を利用して復興を遂げており、栞が生まれる頃に至っては、既に魔物たちとは生活領域を異にした、人間たちの美しい文明社会が出来上がっていた。
そのため、栞が本物の魔物を見たのは今回が初めてであった。
(受け入れて貰って良かったw調子こいて背景めいたものを考えてみたり…他の人が書きやすくなるような文を書きたいな)
(嘘みたい…だってあたし、ついさっきまで“普通”の女子高生だったのに。)栞の中の“普通”が、音を立てて崩れていくようだった。上の空で受けた午前の授業が終了しては、挨拶もそこそこに教室から飛び出し、イツキの元へ向かい。
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「あーあ、つまんないなぁ。」まだ変声期を迎えていないのであろう澄んだ声で、片頬を膨らませながら不満げに少年は呟く。「…!」…が、次の瞬間目を丸くしては悪戯を思いついた子供のように笑い。その突然の思いつきにより彼の機嫌は直ったのか、また鼻歌を歌い出し。
((>13様
文章量に規定はありませんので!ご参加有難うございます。
>15様
いえ、有り難いです(笑)私もまだまだですので、お互い頑張りましょう!
((最初は少年が助けに来たのかと思ったんだが、、今はむしろ黒幕っぽいねww皆、どんな展開を想定して書いてるんだろ??))
((感想のみで迷惑だったらごめんなさい;;))
((>17様
各々の書きたいように書いていただいていますので、何とも言えませんが…これからの動きが楽しみですw
私もとりあえず感想(?)のみ…
保健室に入ると、中ではイツキと保健医が談笑していた。
「いっちゃん…!」
あたしが言うと、イツキはベッドに座ったまま、視線をこちらに寄越した。
「あー、栞。大丈夫だった?」
大丈夫だった? じゃない!心配されるべきはアンタの方だろう。たまらず、あたしが駆け寄って「具合はもう良いの!?だって先はあんなに苦しそうで…!後遺症とかはさあ…!?」腕を取ったり、何だりしながら言うと、イツキは明らかに鬱陶しそうな顔をした。
「あー、私は大丈夫だよ。がくがくしてたアンタの方が心配」そう言って、掴んだ腕を振り払った。
「なら、良いんだけど…」そう言って、気付いた。ベッドに落ちているはずのもの…やっぱり影が戻っていない。
話に入る隙を見失い、様子を見ていた保健医が口を開いた。
「--桜井さん。これから話すことは…落ち着いて聞いてちょうだい。」「…?何ですか、先生。」談笑していた時の笑みとは一転、真剣味を帯びた保健医の表情に身構える栞。イツキの隣に腰かければ、安心させるように彼女が手を握ってくれ。--いつもより少し冷たいようなそれに此方も指を絡ませ。「最近になって、“魔物”が私達--人間の生活圏に侵入していることは…知っているかしら?」「…はい。」実害は無いものの、その恐ろしさは様々なツールによって語り継がれていた。「今日現れたのは…影を食べる魔物だったわね。」フラッシュバックのように、その時の光景が脳裏に鮮明に浮かび上がる。此方の表情の変化に気づいたのか、イツキは手を握る力を僅かに強くし。
((長くしすぎてもアレなので一旦区切ります!結局、保健医さんからの話が書けませんでしたが…(汗)宜しければどなたかどうぞ。
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「は!・・・・夢??」
目を覚ますと見慣れた自分の部屋の風景・・・
ではなく真っ白い病室だった・・・
真っ白い病室にある一つのベットに寝かされていたのだ
・・・ねぇ誰かいる?
ふと頭の中に誰かが声をかけられたような気がした
((あえて夢オチにさしてもらいました笑))
病室の外にでた
とても長い廊下だ・・・
とりあえずひたすら歩く(・・・?勝手に足が動く?!)
ひたすら歩いた末一つの病室についた。ドアを開けると・・・
「な・・・何で?」
あの生物がいたのだ・・・・そう夢の中にいたあの影をすうアイツが!!
「--…っ!!」これが夢か現なのかも分からない--しかし、栞は確かな恐怖を感じていた。恐ろしさからか、歯はカタカタと音を立て、脚は小刻みに震える。…なのに足の裏が地面に貼り付いたかのように、体が動かなかった。--ああ、まただ。さっきはいっちゃんが助けてくれたけど、もう…ダメ、なのかな…などと、脳の片隅で考える。
怪物がゆっくりと近づいてくる。「っ----!!」喉の奥から悲鳴にならない悲鳴をひりだし、目をギュッと瞑る。
次の瞬間。
栞は目の前の光景を疑った。
「そんなに怖がらなくてもいーじゃん」
次に栞が目を開けたとき、そこにいたのは黒い燕尾服を纏い、シルクハットを被って、八重歯の覗く口元に、薄い笑みを浮かべた若い男だった。切れ長で少々ツリ気味の眼をしており、短髪の冴える、まぁイケメンである。しかし、身長は160cmあるかないかぐらい。
「お前の夢の中で、俺が食べようとしたのだって、たかが“影だけ”だぜ?」
栞が固まったままでいると、多分正体はさっきの怪物である彼は、栞の顔を覗き込むようにして続けた。
((参加者増えた♪
この調子で
続いてってほしい♪by尾))
「俺は本来、人畜無害。それを亮一のやつ、真っ二つに切り付けやがって、酷い話さ」
嘆くような台詞とは裏腹に、男は微笑を浮かべながら続けた。そこで、あたしはようやく声を出せた。我ながら、かすれて、渇いた声色だった。
「あ…アナタは誰なの?」
前にいる男の正体が、あの不気味な怪物なのだと分かっていながらも、尚も信じ難い気持ちも強く、そのような疑問が口をついて出た。男は冷たい瞳であたしを見据えたまま、口を形だけ笑わせて答える。
「人畜無害の、名も無き怪物」
そうなのだろうか。いや違う、そうだ、この怪物は確か。
(いっちゃんの…)
思い出しかけときに、また男が口を開いた。
「但し、お前の幼馴染の影は返さないよ。返したくても返せないのさ」
その言葉にあたしは思わず男を凝視した。すると、その男の身体はぐにゃりと歪み、一匹の小さな蝙蝠になった。室内に笑い声が響く。
「カエシテホシイ…?カエシテホシイ…?」
蝙蝠となった男が、天井付近をバタバタと飛びながら、笑っているのだ。驚きと戸惑いで、両手を耳にやり音を塞ごうとすると、蝙蝠となった男は一層大きな声で笑い、開いていた窓から、真夜中の空へと飛び去っていった。
茫然としていると、廊下から足音と一緒に声が聞こえた。「桜井さん! 桜井さん!」
やがて部屋の入口にいつもの看護師が姿を現した。「また勝手に病室を抜け出して・・・こんなところで何をやっていたの?」
「あ・・・その・・・」上手く答えられないでいるうちに手を取られる。「病室に帰るよ。まったくもう~、うなされて起きることがなくなったと思ったら、こうなんだから」
看護師は呆れた様子で続け。
翌朝、あたしがいっちゃんの病室に行くと、宇田がいた。
「宇田…」
呟いた声で宇田はあたしに気が付くと、軽く手をあげ、よぉ、と言った。
「今日は調子良さそうだな」
坊主を少し長くしたような味気ない髪型、仏頂面の似合う、やや丸みを帯びた顔。宇田は、不細工ではないと思うけど、決して恰好良いタイプの男の子ではない。それでも、朴訥として落ち着いた独特の雰囲気を持っており、近くにいると不思議と安心できる。
「良くないと、看護師さんがここへ来るのも許してくれないからね」
あたしが答えると、宇田は短く、そうか、とだけ言って、寝ているいっちゃんの方に視線を移した。あたしも人形のように綺麗な顔で、人形のように動くこともなく眠り続けている、―いっちゃんに視線を落とした。
「今にも起きそうだよね、って昨日も思ったんだ」
笑って言ったけど、不覚にも目には涙が滲んでしまった。宇田はまた、そうか、とだけ言った。
―数年前、事故に遭った。記憶が曖昧なところもあるため、もしかしたら、事件だったのかもしれない。
とにかく、曖昧な記憶とは対照的な、はっきりとした事実としてその結果、あたしはここに入院しているし、いっちゃんはここで眠り続けている。
「そういえばさぁ」
回想をしていたら、不意に宇田が話を持ち出した。
「地味な奴とか生気の薄い人を"影が薄い"とか言うじゃん?」なんの話かと、聴き入る栞。傍らには生気の薄い、綺麗な顔で眠っているイツキ。
神妙な顔をして宇田は続けた。
「昨日、気になる夢を見たんだ…--。」
「…夢?」「そう、夢。--…」宇田の言葉を反芻するように呟く栞。言いにくい内容なのか、視線を泳がせてから宇田は切り出した。「--コイツ…片瀬がさ、笑ってんだよ。」どこか眠り姫を連想させるイツキを見据えながら宇田が言えば、静かな病室にその声が響いた。「え…いっちゃんが?」この美しい幼馴染みの笑顔を、もう何年見ていないことになるのだろう。例え彼の夢の中だろうと、笑っているイツキが存在することに嬉しさを感じた。「…そっ、か。うん、よかった。」涙を堪えて微笑みかければ、気まずそうに視線を逸らす宇田。「…いや、笑ってるっていっても、普通の笑い方じゃねぇんだよ。狂ったように…ずっと笑い続けてて--でも、自分でも止められないのか、泣きながら笑ってて。」その光景を想像して、栞は目を見開いた。
「…そんな話を、何であたしにするの?」
先に暖かな気持ちにさせられた分、あたしは、宇田の話した続きを聞いて裏切られたような気になった。言いにくそうにしながら、敢えて話をした宇田の態度にも欺瞞を覚え、口をついて出た言葉は自然と咎めるような口調になっていた。
―例え彼の夢の中だろうと、笑っているイツキが存在することに嬉しさを感じた
―例え誰の夢の中だろうと、イツキが苦しむようなことはあってほしくなかった
知らなければ、事実だってないも同じだ。死ぬときに「貴方は心臓が悪いから死ぬのだ」と言われれば、実際にその人が痛めていたのは肺だったとしても、その人にとっては「自分は心臓が悪いから死ぬ」ということになる。そのまま、感覚は永遠の闇に閉ざされるのだから、事実なんて結局、知覚できるかどうかだ。
―逆に言えば、知ってしまえば、夢や妄想さえ、圧倒的な存在感を持って、あたしの前に立ち塞がる―事実―だ
意識していないうちにあたしは泣き崩れていたらしく、モニター越しに見ているような現実感のない病室内で、宇田が看護師に叱責を受けていることだけが分かった。
「何の話をしていたの」
「興奮させちゃ駄目じゃない」
宇田は困惑した様子で、看護師に対して弁明か、或いは謝罪をしている様子だった。
三日月の綺麗な夜だった。あたしはベッドの中で、宇田の話が途中だったのかもしれないことに気付き、ぼんやりとそのことを考えていた。
「…何だったんだろう、あの話」
もし、更に続きがあったのだとすれば、そこで宇田があのような不吉な話をあたしに伝えた理由が明かされていたのかもしれない。しかし、もう過ぎたことで、あたしが取り乱すことがなかったとしても、あそこで話が終わっていた可能性もなきしもあらずだ。考えることが億劫になり、あたしは毛布に顔を埋めた。病室の窓からは月の光が射している。
何度も経験した、眠り難い夜がやってくる。あたしは姿勢も変えずに、入眠するまでの時間をじっと耐える。
「続きはあったよ」
誰かが言った。月明かりに影を落とし、窓際に佇む気配を感じて、あたしは顔をあげた。
―お前が流した 涙の分だけ… 幸せにならなけりゃいけないよ…
何曲目かに「ふたりの夜明け」がかかり始めると、騒ぎから一歩引き、壁に寄り掛かって歌を聴いていた看護師長も目を細めて言った。
「この頃は五木ひろしが熱かったんだよねぇ」
あたしは、80年代にはまだ影も形も存在していなかった。しかし、それでも当時の人が残してくれた記録から、過去を辿ることならできる。
集まった人のなかには、丁度今のあたしぐらいの年齢の瞬間(とき)を、80年代とともに過ごした人も多々いるはずであった。あたしは張り切って、レコードをかけ続ける。
殆どの人は楽しそうにしており、この空間だけはまるで80年代のディスコティックのようであった。
しかし、窓辺に佇んでいた、例の名も無き怪物男だけはどこか退屈そうにしている。彼はあたしよりも年上に見えるが、80年代の曲は知らないのかもしれない。そのうえで良さもよく分からないのだと思う。
(勿体ないことだ)
そう思いつつ、あたしは「め組のひと」をかけた。すると、傍目にも分かるように男は目を輝かせた。
「あ、これは知ってる。やっと知ってる歌がかかった」
曲が放つ雰囲気とは異なって、季節は秋へと向かっていっている。
セーラー服をぬがさないで→ダイヤモンド→ワインレッドの心→とんぼ→翼の折れたエンジェル→待つわ→ハイティーン・ブギ→ダンシング・オールナイト→青い珊瑚礁→涙のリクエスト→1986年のマリリン→ガラスの十代の順番で曲は流れ、周りは祭りをしていた
レコードをかけるという役目を果たし、栞はお祭り後の心地良い疲労感に浸っていた。「--ねぇ。」聞き慣れた声が背後からする。そんなハズはない、でも--幼い頃から幾度となく聞いてきた声だ、聞き間違えるなど有り得ない。振り向くまでのごく短い間、葛藤していれば、目に入ったのはやはり“彼女”だった。「いっちゃん!」「大きい声出さないで、頭ガンガンする。」以前と何ら変わりないイツキの仏頂面。それさえも今は懐かしく思える。「でも…どうしてここに?」「どうしてって…目が覚めたから。ナースコール押しても看護師さん来ないし、なんか騒がしいから来てみたらこのザマ。」
((>43様
そうなのですか…残念です。貴方の文章力にはいつも脱帽していましたので…(笑)また、お時間のある時にでも覗きにきてくださませ!
「あはッ、いっちゃんお姫様だってw」
そう言って感激のあまり、やや朱くした頬、潤んだ瞳で栞はイツキに抱き着き。。
イツキは鬱陶しそうな表情ながらも、抵抗はせず。
「あんなに長いこと眠っていたのに、、まるで奇跡ね。」
看護師長は様子を見に2人に近づきつつ、感想を漏らし。
そこで朝が来た。
楽しい幻影は日の光の中に消えた。
馴染みのナースが病室に食事を持ってきたとき、
栞は無機質な白いベッドの上で、いかにも幸福そうに一人で笑っていた。
ナースは嘆息したが、すぐに表情を切り替えて「おはよーう、桜井さん。楽しい夢でも見てたの??」
そう栞に声をかけた。
(/はい、エンドレス鬱展開☆)
いっちゃんはわらってない、いっちゃんはないてもいない、それはわたしだ、わたしはないてわらったの、いっちゃんがおきてくれたから、いっちゃんはいつもどおりのぶっちょうづらだったよお
---栞は、看護師の問いにヘラヘラ笑いながら答えたという。
今朝の栞の様子、そんな話を看護師から聞いた亮一は落胆し、、
「俺があんな話をしたせいなのか。。」
と呟き、そこで急に何かを閃いたかのように顔をあげ。
((
それでは次は…希望が見えるターンきぼん☆閃きの内容は次のヒトに任せる笑
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