胡蝶 2014-09-12 22:42:07 |
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三日月の綺麗な夜だった。あたしはベッドの中で、宇田の話が途中だったのかもしれないことに気付き、ぼんやりとそのことを考えていた。
「…何だったんだろう、あの話」
もし、更に続きがあったのだとすれば、そこで宇田があのような不吉な話をあたしに伝えた理由が明かされていたのかもしれない。しかし、もう過ぎたことで、あたしが取り乱すことがなかったとしても、あそこで話が終わっていた可能性もなきしもあらずだ。考えることが億劫になり、あたしは毛布に顔を埋めた。病室の窓からは月の光が射している。
何度も経験した、眠り難い夜がやってくる。あたしは姿勢も変えずに、入眠するまでの時間をじっと耐える。
「続きはあったよ」
誰かが言った。月明かりに影を落とし、窓際に佇む気配を感じて、あたしは顔をあげた。
―お前が流した 涙の分だけ… 幸せにならなけりゃいけないよ…
何曲目かに「ふたりの夜明け」がかかり始めると、騒ぎから一歩引き、壁に寄り掛かって歌を聴いていた看護師長も目を細めて言った。
「この頃は五木ひろしが熱かったんだよねぇ」
あたしは、80年代にはまだ影も形も存在していなかった。しかし、それでも当時の人が残してくれた記録から、過去を辿ることならできる。
集まった人のなかには、丁度今のあたしぐらいの年齢の瞬間(とき)を、80年代とともに過ごした人も多々いるはずであった。あたしは張り切って、レコードをかけ続ける。
殆どの人は楽しそうにしており、この空間だけはまるで80年代のディスコティックのようであった。
しかし、窓辺に佇んでいた、例の名も無き怪物男だけはどこか退屈そうにしている。彼はあたしよりも年上に見えるが、80年代の曲は知らないのかもしれない。そのうえで良さもよく分からないのだと思う。
(勿体ないことだ)
そう思いつつ、あたしは「め組のひと」をかけた。すると、傍目にも分かるように男は目を輝かせた。
「あ、これは知ってる。やっと知ってる歌がかかった」
曲が放つ雰囲気とは異なって、季節は秋へと向かっていっている。
セーラー服をぬがさないで→ダイヤモンド→ワインレッドの心→とんぼ→翼の折れたエンジェル→待つわ→ハイティーン・ブギ→ダンシング・オールナイト→青い珊瑚礁→涙のリクエスト→1986年のマリリン→ガラスの十代の順番で曲は流れ、周りは祭りをしていた
レコードをかけるという役目を果たし、栞はお祭り後の心地良い疲労感に浸っていた。「--ねぇ。」聞き慣れた声が背後からする。そんなハズはない、でも--幼い頃から幾度となく聞いてきた声だ、聞き間違えるなど有り得ない。振り向くまでのごく短い間、葛藤していれば、目に入ったのはやはり“彼女”だった。「いっちゃん!」「大きい声出さないで、頭ガンガンする。」以前と何ら変わりないイツキの仏頂面。それさえも今は懐かしく思える。「でも…どうしてここに?」「どうしてって…目が覚めたから。ナースコール押しても看護師さん来ないし、なんか騒がしいから来てみたらこのザマ。」
((>43様
そうなのですか…残念です。貴方の文章力にはいつも脱帽していましたので…(笑)また、お時間のある時にでも覗きにきてくださませ!
「あはッ、いっちゃんお姫様だってw」
そう言って感激のあまり、やや朱くした頬、潤んだ瞳で栞はイツキに抱き着き。。
イツキは鬱陶しそうな表情ながらも、抵抗はせず。
「あんなに長いこと眠っていたのに、、まるで奇跡ね。」
看護師長は様子を見に2人に近づきつつ、感想を漏らし。
そこで朝が来た。
楽しい幻影は日の光の中に消えた。
馴染みのナースが病室に食事を持ってきたとき、
栞は無機質な白いベッドの上で、いかにも幸福そうに一人で笑っていた。
ナースは嘆息したが、すぐに表情を切り替えて「おはよーう、桜井さん。楽しい夢でも見てたの??」
そう栞に声をかけた。
(/はい、エンドレス鬱展開☆)
いっちゃんはわらってない、いっちゃんはないてもいない、それはわたしだ、わたしはないてわらったの、いっちゃんがおきてくれたから、いっちゃんはいつもどおりのぶっちょうづらだったよお
---栞は、看護師の問いにヘラヘラ笑いながら答えたという。
今朝の栞の様子、そんな話を看護師から聞いた亮一は落胆し、、
「俺があんな話をしたせいなのか。。」
と呟き、そこで急に何かを閃いたかのように顔をあげ。
((
それでは次は…希望が見えるターンきぼん☆閃きの内容は次のヒトに任せる笑
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