エティエンヌ 2014-08-30 01:06:11 |
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夢見る辛さを知りました#53
舞台は中世期。
貴方は隣国の王子さま。私はただの町娘。
偶然、ほんと偶然に貴方は私の住む町へ・・・。
王子さまを一目見ようと町へ出るけど、王子さまなんていなかった。
町はワイワイガヤガヤ・・・いつも通りに賑わっている。
もしかしたら・・・とお城の方へと走っていく。
嗚呼、どうしてお城は森を通らないといけないの!
ザクザク・・・土や小枝、葉っぱを踏む音が聞こえる。
ドンッ!という音が・・・誰かに衝突した
「あっ、ごめんなさい!」
咄嗟に誤った。それが礼儀だからね。
「いえ、こちらこそ、大丈夫ですか・・・」
そう男の人の声が聞こえた。
そして、私たちの目があうと、二人は恋に落ちる・・・。
「なーんて、あるわけ無いか」
そう言って否定する。そうしないと、妄想が現実とごっちゃになるから。
この話には何一つとして真実は無い。全てが間違い。
彼は王子さまでも私が町娘でも無い。ただのクラスメイト。接点の無いクラスメイト。
一番の間違いは、私と彼が恋というもに落ちるということ。
「彼の目には私という人物は一切映ってないわ。
映ってるのは可愛い可愛い彼女だけ。」
そう言って一つ、涙を流す。
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「確かに恋だった」様より
昨日までが、幸せでした#620
ガリガリガリガリ
ぶちっ
今日も指先のエナメルを歯で削る。
爪が裂け、肉が見え、中々のグロテスク状態。直視したくは無い。
いつのまにか癖になっていた。何かあると、すぐに爪を齧る。
そんな私を見かねたのか、隣の男子がマニキュアを塗ってくれた。臭いがきついので中庭で。
もう、二ヶ月になるだろう。彼との付き合いは。
週に一度、金曜日の放課後。
彼の手にかかれば、私の爪は見違えるほど美しい桜が咲いた。
「ねぇ、いつもありがとう」
「おう。でもお前の手、綺麗なんだから手入れしとけよ。」
今日もまた放課後彼に会いに行く。毎週の楽しみ。
自分でも正直なところ手入れも出来てきたが、こんな繋がりを断ち切るようなことはしたくなかった。
今日は夏というのに涼しい風が吹いている日だった。
「今日も綺麗になったな。」
「そりゃ、いつもやってくれるからだよ」
ほんの些細な会話。彼の息遣いが手に触れて、骨の髄まで震え上がる。
「このマニキュアお前にやるよ」
そう彼は言い、無理やり私の手にマニキュアを押し込んだ。
その彼の言葉は私の中では絶望を促す言葉でしか無かった。
このマニキュアを寄越すことは、もう彼と会えない。つまりは繋がりを断ち切られたということだ。
硬直した私を残して彼は背を向け去っていった。
最近なおった癖がまた出てきた。
根元から綺麗に割れ、桜も割れていた。
割れた爪、見える肉、これを彼が見たらどう思うのだろうか。
次の日、彼は何所にもいなかった。
担任は遠い所へ行ったと言っている。
これから始まろうとする夏休み。
私の中には虚しさしか残らなかった。
ガリガリガリガリ
・・・・ぶちっ、
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お題:「確かに恋だった」様
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