雲 2014-08-18 15:57:06 |
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野良猫なのか飼い猫なのか
家に帰るとどこからとも無くネコの鳴き声がしてました。
生後3ヶ月くらいの可愛い子猫でした。
触りたくて近寄ったら逃げられました。
家にあった餌でおびき寄せようともしましたが
出てきません。
触りたかったなぁ~。
>きらり
雲は復活しましたよ 笑
もやもやを綺麗に消化しましたw
いま、気が向いたので、駄文ではありますが小説もどきを書きたいと思います。
でも、あまり期待はしないほうが良いと思いますw
内容としては中高生向きかと思います。
浮かんでは消え、消えてはまた浮かぶ。
風に乗り、ふわふわと空を漂う雲。
人は私の事を『くも』と呼びます。
そんな私が見た、ある一人の女の子の話をいたしましょう。
その女の子は、栗色の髪にゆるいウエーブがかかっており、瞳はくりくりと大きく、とても可愛い女の子でした。
あまりにも可愛い子だったので、少し変な趣味の入ったお兄さん方が、その少女と仲良くなりたがり、お菓子やおもちゃで釣ってお家にお持ち帰りしようとしている人もいました。
その度に少女の3人のお兄さん達が、少女の危機を救い、連れて逃げるという日々が繰り返されていたのです。
少女が成長するにしたがって、変な趣味のお兄さん達の数も増え、両親とお兄さん達はとても心配をしました。
そして、お兄さん達が出した結論は、【 少女変身プロジェクト 】という、美少女から影の薄い根暗な女の子に大変身をさせました。
栗色でふわふわの髪は、固く三つ編みにしおさげに。
可愛らしい口元は、出っ歯の偽歯をはめ込む。
くりくりとした大きな瞳には、メガネと目が隠れるほどの長さの前髪で覆い、頬にはそばかすを沢山書き込みました。
もう誰も以前の可愛らしかった少女だとは夢にも思いませんでした。
そして、もしもの時のためにと、護身術として合気道を習わせ、それでも妹の事が心配で心配でたまらないお兄さん達は、学校の送り迎えを交代でやるほど過保護に育てました。
4人目にして初めて出来た女の子でしたので、両親もお兄さん達も、それはそれは可愛がっていました。
そんな愛情いっぱいに包まれ育った少女は、素直で優しい子に育ったのです。
お兄さん達にしてみれば、そんな可愛い妹に、悪い虫がつかないようにとの警戒作だったのかもしれません。
お兄さん達のもくろみは、見事に大当たりで、現在、高校1年生になったいまも、彼氏いない歴が年齢となっていました。
少女は、幼いころに付きまとわれた、少し変な趣味の男の人達のせいで、家族以外の男の人が怖くて仕方がなかったのです。
体に少しでも触れられると、むかしの出来事がフラッシュバックをして、体が硬直して動けなくなってしまいます。
だからなるべく男子のそばには近寄らないように、学校生活を送っていました。
中学の頃は、一つ上のお兄さんがいつも守ってくれていました。
一つ上のお兄さんは双子で、とてもかっこよく、文武両道でした。
一番上のお兄さんも、日本人離れをした端正な顔立ちをしてました。
この兄妹が美男美女の訳は、父親がイギリスとのクウォーターで母親がロシアとのクウォーターだったからです。
特に妹にはロシア系の血が強く流れたのか、両親の良い所をまんべんなく取り込み、それはそれは美少女に育ちました。
ですが、その事を知っている人達は少女の家族しかいません。
あの日からずっと少女は変装をし続け、その素顔を隠していたからです。
高校生になった少女は、一つ上の兄達と同じ学校に通う事になりました。
入学式も終わり、クラスでそれぞれ自己紹介をした後には、いくつかの小さなグループが出来上がっていた。
始めは同じ中学校同士での数人のグループがいくつもあったが、少女には同じ学校から来た知り合いは一人もいなかった。
必然的に少女はいつも一人で、休み時間には本を読んでいたり、お昼になるとどこかしらに消えていなくなっていた。
―― キーン コーン カーン コーン ♪ ――
「やっとお昼だぁ♪お腹空いたぁ~♪」
生徒たちは各々に机を並べ、仲の良い子達で固まってお昼を食べている。
そんな中、少女はランチBOXを持ち教室を出てどこかに消えて行ってしまった。
しかしその事に気が付くものは誰もいない。
体育館の裏手に行くと、兄たちがそこに居た。
「優樹菜、こっちこっち」
「朔夜(サクヤ)、紫音(シオン)、ごめんね、待った?」
「5分は待ったな」
紫音が笑いながら言う。
優樹菜こと、相模(サガミ)優樹菜(ユキナ)、15歳。
三つ編みおさげで地味な顔立ちの、少女の名前である。
一見根暗で地味そうに見えるが、これは世を忍ぶ仮の姿で、実際は目を見張るばかりの美少女である。
もしもの時の護身術として合気道も習っており、その腕前は黒帯5段にもなる。
朔夜と紫音は優樹菜の兄にあたり、年が近いせいもあり、とっさの時は彼氏役もするという事から、兄とは呼ばせないで名前で呼ぶようにさせていた。
「あのねお兄ちゃん」
「優樹菜、お兄ちゃんじゃないだろ!?名前で呼べって言ったよな?」
「あ・・ごめんなさい。
あのね、来週オリエンテーションで蔵馬山に3泊で行くんだって・・・」
「俺たちも去年行ったな」
「行ってもいいかな・・・ダメ?」
少し上目づかいで朔夜たちに伺いをたてる。
そんな目をしてお願いをされれば、この兄達にもはや断るすべは持たないのだった。
「ん~・・・しょうがないな。」
「だな・・・。十分注意はしろよ!?俺たちが居ないんだからな」
ぱぁ~っと優樹菜の顔が明るくなり、兄達に抱き付いた。
「ありがと~、朔夜、紫音♪」
3泊4日、素顔を見せずにオリエンテーションを無事に過ごす事がはたして出来るのか。
高校生活第一歩目の難所である。
蔵馬山のふもとにある【 蔵馬青年の家 】は、学生たちが良く利用する宿泊施設だ。
一部屋4人部屋と8人部屋があり、2段ベッドが人数分に合わせて置いてある。
部屋割りは皆適当にくじ引きで決めたので、仲の良い子達が別れ別れになってしまっていた。
どうしても一緒の部屋になりたがってる子が、優樹菜に部屋を交換してくれと頼みに来た。
優樹菜はべつにどの部屋でもよかったので、快く承諾をした。
移った部屋には、クラスでも中心的人物である『坂上 愛羅』が居た。
男女問わず仲良くしているが、話の中心にいつも自分がいないと少し機嫌が悪くなる事もある。
容姿もなかなか可愛いく、性格も明るいので男子からは1番人気を獲得していた。
自分がモテルという事を認識しているため、自然と行動も、より自分が可愛く見えるような仕草を作り出していた。
「あれ~?相模さんってうちらの部屋だっけ?」
「は・・はい。」
蚊の鳴くような小さな声で答えた。
愛羅はクスクスと笑いながら、空いてるベッドを指差し、そこに行くように促す。
『坂上さんと一緒か~、緊張するなぁ~・・・』
愛羅は何かと優樹菜に声をかけ構ってくる事がしばしばあった。
親切心から声をかけるのか、引き立て役にしたいから声をかけるのか、そこら辺は謎である。
夕食も終わり部屋にいると、ドアをノックする音が聞こえた。
入って来たのは、同じクラスの男子たちだった。
愛羅に気がある男子達は、しばらく部屋で談笑をし、そのあと自分達の部屋に来ないかと言ってきた。
好奇心旺盛なこの年頃の女の子達は、さっそく男子の部屋へと向かった。
だが、男子が怖い優樹菜だけは、一人部屋に残ると言う。
しかし、愛羅に無理やりに連れて行かれたのは言うまでもない。
男子の部屋では、優樹菜は部屋のドア付近に腰を下ろし、みんなの和の中に入っていこうとはしなかった。
「相模さん、そんなとこに居ないでこっちにおいでよ~」
愛羅が優樹菜を立たせて移動させようとするが、下を向きイヤイヤと首を振るばかりだった。
見かねた男子の一人が
「相模もこっちこいよ」
と言い、体に触れた瞬間に
「い・・・いや・・触らないで・・・」
蚊の鳴くような小さな声で拒絶をする。
「もしかして男子が怖いの?」
無言でうなずく優樹菜だった。
その後、男子が触ると硬直し動けなくなる優樹菜をおもしろがり、隙を見つけては触りに来る男子が現れた。
その度に硬直をし、地蔵のように固まってしまう優樹菜を見て、女子達は陰でクスクスと笑っていた。
「相模さんってぇ、ちょっと自意識過剰じゃない?(クスクス)」
「だよねぇw誰も相模さんの事なんて意識してないってぇ~のw(クスクス)」
オリエンテーション2日目。
今日は蔵馬山に、ハイキングコースで登山の日だった。
登山と言っても、山頂まで登るわけではない。
途中にある休憩場で昼食を作って食べる、炊事遠足の様なものだ。
休憩場の近くには川もあり、林の中に落ちている小枝を集めて火をおこす。
かまどらしき物はあらかじめ作られてはいるが、生徒達には使い方がいまいち分からなかった。
先生達の指導のもと、各班に分かれて各々準備に取り掛かる。
下調べをして用意の良い子は、着火剤やライターなどをあらかじめ隠し持ってきていた。
真面目に炊事に取り掛かる子、そんな物はやりたい奴にやらせればいいと川に遊びに行ってしまう子、やりたくはないけど押し付けられた子、いろいろである。
優樹菜の班は、同室の女子8人と男子が8人の16人だ。
優樹菜ともう一人、大人しめの女子が炊事の大半を押し付けられることになった。
男子の方は、普段女子と良くつるんでいる3人が、率先して残り6人の女子を連れて川に遊びに行ってしまった。
男子が5人も残ってしまった事で、少々不安もあったが、なるべく接触しないように分担をし、炊事遠足定番のカレーを作っていた。
出来上がったころ、匂いに誘われるかのようにみんなが帰ってきた。
優樹菜達が作ったカレーは、意外と好評だったため、愛羅が少しムッとしていた。
「私だってこれくらい作れるもん・・・」
拗ねた感じで男子に甘えて見せる。
甘えられた男子はまんざらでもなさそうな雰囲気だ。
食事も終わり下山をする時、横に並んで固まる様な形で歩いていた同じ班の子達の一人が、話に夢中になり、少しふざけたのか動作が大きくなる。
その時に広げた手が優樹菜に当たり、優樹菜はバランスを崩し横の急斜面の方によろけ、斜面を転がるように落ちて行ってしまった。
「きゃああああああ!」
みんなはその声に驚きはしたものの、あまりにも急斜面だったので、助けに行こうとする人はいなかった。
「どうする?先生呼びに行く?」
わたわたとしているその時、何のちゅうちょもなしに一人の男子が斜面を滑り降りていった。
「後から連れてくからみんなは先に行っててくれ」
そう言い残し姿が見えなくなった。
100m程降りた所の平らな地面に、優樹菜は倒れていた。
「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!」
抱き起し顔をパチパチと軽く叩いてみる。
「・・・んん・・・ん」
「ケガはしてないか?痛い所とかないか?」
優樹菜が目を開けると、その中に飛び込んできたのは男子の姿。
思わず地蔵のように固くなってしまった。
「おい!いまは地蔵になってる場合じゃないからしっかりしてくれよ!?」
「アタタタ・・・痛・・・」
「怪我したのか?」
「足が・・・」
「ちょっとごめん。足触るから」
優樹菜のズボンの裾をめくり足を触ると、足首の所で痛みを感じてるようだ。
少し赤く腫れてきている。
「折れてはいないみたいだけど、捻挫かもしれないな。立てる?」
足に力を入れて立とうとするも、痛くて立ち上がれない。
優樹菜が自力で歩いてくれなければ、この急斜面を上るのは難しいだろう。
背負って登るにしても、片手だけで上るのも難しそうだ。
周りをよく見ると、何かツタの様なものが地面をはっている。
それを引きちぎりひも状にして優樹菜を自分の体にくくりつけようと考えた。
優樹菜の方を見ると、いつもと雰囲気が違う事に気が付く。
何が違うのか・・・そして気が付いた。
前歯が折れてる?
トレードマークの様な優樹菜の出っ歯が消えてるのだ。
「相模・・・・歯・・・」
「え?」
自分の口元に手を当ててみると、変装用の出っ歯が取れていた。
慌てて両手で口元を隠し顔を地面に向かって伏せる。
「おい!ちょっと見せてみろ!」
優樹菜は顔を左右に振る。
「いいから見せろって!歯折れたんじゃないのか?!」
強引に優樹菜の手を口元から外し、暴れないように右手で優樹菜の両腕を握り抑え込んだ。
出っ歯はなくなってはいるものの、前歯はちゃんとあったので、少しほっとしたその男子の名は、海藤 新(カイドウ アラタ)と言う。
転げ落ちた時にはずれたのか、顔を振りすぎて外れたのか、メガネもなくなっていた。
そして強めの風が、タイミングが良いのか悪いのか、優樹菜の前髪をさらう様にかき分けた。
つまりこの一瞬で、優樹菜の素顔が晒されてしまったのだった。
「・・・・・・・/////」
新の方が地蔵の様に固まって、顔を紅くしたのは言うまでもない。
「う・・動かないから、は・・離して・・・手・・」
はっと我に返る新。
「えっと・・・相模さんだよね?」
さっきまで見慣れていたクラスメイトとは思えないほどの美少女がそこに居た。
間抜けな質問だとは思ってはいたが、同一人物だという確信が無い。
優樹菜は黙ったままうなずくだけだった。
新はとりあえず優樹菜を背負い、ツタの紐で自分に固定し、斜面を登りはじめた。
しかし、新のドキドキは今もなお収まってはいなかった。
優樹菜の方も、こんな自分を助けに来てくれ、背負われてるとはいえ、嫌な気持ちや怖いと思う気持ちが起こらない事に、まだ気がついてはいなかった。
そんな事を考えるより、いまは無くしてしまった変装用の歯とメガネが無い事の方が重要だったからだ。
メガネが無くても前髪で何とかごまかせる。
最悪の場合は、歯は転げて地面に顔を打ち付け、そのおかげで引っ込んだことにしようと考えていたのだ。
なるべく下を向いていれば気が付かれないだろうと、そう自分に言い聞かせていた。
ようやく斜面を登りきると、そこには生徒から連絡を受けた先生と保険医の先生が、どうやってこの斜面を下りて助けに行こうかと相談をしているところだった。
優樹菜を背負い急斜面を登ってくる海藤 新に気が付いた先生は、手を伸ばし二人を引き上げた。
「怪我はないのか?」
「はい。僕は何ともありません。
でも、相模さんが足を痛めたようなので診てもらえますか?」
息を切らしながらそういうと、背負っていた優樹菜をそっと地面におろし、手当てを受けさせる。
幸い軽い捻挫と打撲の様なものだけで、他に怪我は見当たらないようだ。
宿泊施設まで先生が優樹菜を背負って下りると言ったが、優樹菜はこれをかたくなに拒否した。
「先生、僕がおぶっていきます」
「いや、でもな・・」
「僕なら平気ですよ。相模さん軽いから」
「それじゃ海藤に頼むか・・・」
再び新の背におぶわれる優樹菜だった。
「相模さん・・・顔を見られたくないんでしょ?
だったら僕の背中に伏せてるといいよ。
そうしたら誰にも顔は見られないから」
優樹菜にだけ聞こえるような小さな声でささやいた。
優樹菜は新たに言われたとおりに、新の背中に顔を伏せ、少し震えてはいたものの、恐怖心は全くなかった。
宿舎に帰ると数人の女子達が二人の帰りを待っていた。
二人の帰りというか、厳密には海藤 新の帰りを待っていたという方が正しいだろう。
「海藤君、大丈夫なの?怪我とかしてない?」
「僕は大丈夫だよ。でも相模さんが怪我してるから、そこ通してくれるかな?」
女子達の間を通り抜け、優樹菜を部屋まで送って行く時に
「ちょっと、なんで相模さんなのよ」
「あ~ぁ・・・私が怪我をすればよかった・・・
そうすれば今ごろ海藤君に背負われてるの私だったはずなのに・・・悔しい~」
「ちょっ!見てよあれ!背中にしがみ付いてるわよ!?」
「相模のくせに生意気よね・・・!」
いらぬ所でいらぬ嫉妬心を買ってしまった。
その日から優樹菜には、女子達の陰湿ないじめが始まったのだ。
怪我の手当てをして部屋に戻った優樹菜に、誰も声をかけようとはしない。
それどころか、誰もいない、空気の様な扱いを受けていた。
優樹菜の横を通る時は、わざとぶつかってみたり、食事の時もわざと水をかけたりと、小さな事ではあったが確実に苛めていた。
周りの女子達も見て見ない振りをし、男子達は嘲笑っている。
不思議なもので、これが可愛い子なら男子も助けるだろう。
しかし、根暗なうえに可愛くなければ誰も助けようとはしないのが現実だった。
助けた所で何のメリットもないのだから。
可愛い子なら、助けた後に恋心が生まれ、そのままお付き合いという美味しい設定も夢見るだろうが、ブスと付き合っても腹下しをするだけだという事を、本能的に知っているのだった。
へたに関わりを持って、行為などもたれたものなら後がめんどくさい。
なら知らない顔をして関わらなければいいと、遠巻きに見て笑って見ているのだった。
女子の方は、かっこいい男子も好きだが、可愛い男子も好きだ。
海藤 新は、後者の可愛い系の男子だった。
背も164cmとまだまだこれから伸び盛りで、長い髪のかつらでもかぶせれば、どこからどう見ても女の子になる。
そんな顔立ちだ。
物腰も柔らかく、男女問わず差別をしないで優しいその態度には、男子にも隠れフアンが居るほどだった。
―― ドンッ ――
「あら?いま何かにぶつかった?」
「えぇ~?何にもないじゃない。気のせいじゃない?」
優樹菜は小さなため息を一つついた。
「ハァ~・・・・」
優樹菜にとってこれぐらいの事はどうでもいい事だった。
昔のあのおぞましい出来事に比べれば、とるに足らない事だったからだ。
毎日のように、知らない大人の男に後をつけられ、隠れて写真を撮られ、どこかへ連れ去ろうとする気持ちの悪い男たちに比べれば、こんな事は可愛いものだった。
オリエンテーションの間、無視し続けられ、嫌がらせをされたが、それも今日で終わりだ。
帰りのバスの中で安堵していると、窓側に座っていた女の子が急に席を立ちあがり、網棚の上の荷物を取ろうとして優樹菜の治りかかっていた左足を踏んだ。
「つっ・・・・」
足首に鈍痛が走ったが、痛みをこらえ何事もなかったように振る舞うのだった。
バスが学校に到着し、ガヤガヤとしながら生徒たちが降りていく。
再度足を痛めた優樹菜は、みんなの迷惑にならないように、一番最後に降りる事にした。
左足をかばうように引きずりながら歩いていると、いつもなら人が見ていない所で隠れるように優樹菜を待ち、そっと護衛をするように一定の距離を保ちながら一緒に帰っている兄朔夜が優樹菜の方に歩いてきた。
優樹菜と朔夜が兄妹だという事を知らない同級生たちは、あこがれの先輩が何故こんな所に居るのか不思議だったが、いつもは上級生の女子達に囲まれ、近づく事さえ許されない状況なのだが、今日はその上級生達もいない。
キャーキャー言いながら、少しでも自分に自信がある子は、この状況を見逃すはずもなく、我先にと朔夜の元に近づいていく。
「せんぱ~い♡どうしたんですかぁ~?♡」
あっという間に女子達に取り囲まれてしまった朔夜だった。
「ちょっと迎えにね」
「えぇ~。迎えって誰をですかぁ~?♡♡」
質問攻めにしてくる女子達をかき分けて、優樹菜のもとに向かった。
「おい。足、どうした」
「えっと・・・くじいちゃった?」
「・・・・何故そこで疑問形なんだ・・・ハァ・・・」
朔夜は軽く自分の頭を掻きながら溜息をついた。
そして優樹菜の荷物を持ち、優樹菜をおんぶしながら学校を去って行った。
新だけではなく相模先輩まで・・・そう思った女子達の怒りは消える事を知らなかった。
しかしちょっと待ってほしい。
普通ならこの展開が来ると、同じ名字だという事で何か気づきそうなものだが、何故みんな気が付かないのだろうか。
同級生達は、変装している優樹菜しか見たことがないので、同じ名字であっても兄妹だとは気が付かないほど全く似ていなかったのだ。
新の事だけでさえあれだけの嫌がらせを受けたのに、この上相模兄弟とも親しいとなっては、来週からの学校生活が目に見えるように地獄絵図が浮かんでくる。
さあ、このピンチをいったいどう切り抜けるのか!
こうご期待!
って・・・これ続きがあるのだろうか・・・・?笑
家に帰ると、疲れを取るようにとお風呂が用意されていた。
ぬるめのお湯にゆったりと身を任せ、全身の筋肉と緊張を解きほぐす。
もちろん自宅にいるため、今は一切の変装は必要がない。
素の自分を見せても、誰も何も思わず、何も言わない。
毎日髪を三つ編みにしていると、だんだんと頭の芯が痛くなってくる。
それを開放した今は、なんと清々しい気持ちなんだろうか。
身体も心も軽くなったような気さえする。
お風呂から上がると、髪をドライヤーで乾かし、長いウエーブのかかった栗毛はふわふわとなびいている。
服装だって自由だ。
Tシャツに短パンというとてもラフな格好だ。
旅行鞄からお土産を取出し、説明をしながらみんなに配っていると、突然玄関のチャイムが鳴った。
インターホンで見てみると、そこには海藤 新が立っていた。
『なんで海藤君が・・?』
疑問に思いながら受話器を取る。
「はぃ・・」
「こんにちは。僕は相模さんのクラスメイトで海藤と言います」
「・・・あ、はい」
「あの・・、相模さんの足の具合はどうなんでしょうか・・」
「・・・えっと・・心配はいりません。大丈夫です・・・」
「・・・もしかして相模さん?」
「・・・あ、はい」
「あの・・・なぜ家を知ってたんですか?」
新は答えに少し詰まったが、正直に答えた。
「・・・・ごめん・・気になって後をつけてきちゃった」
「えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
思わず驚いてインターホンの受話器を落としてしまった。
「どうした!?優樹菜!」
朔夜が優樹菜に問う。
「えっとね、いま玄関にクラスメイトがきてるんだけど・・・」
「クラスメイトだと?いま母さん居ないしどうするかな・・・」
「私出るよ」
「その格好で出たらばれるだろ!」
「大丈夫だよ朔夜、海藤君は知ってるから・・」
「知ってるってまさか・・」
「崖から落ちた時に助けてくれたのが海藤君でね、その時変装が外れちゃって(てへっw」
「てへっ、っじゃないだろうが・・・まったく・・・」
とりあえず鍵を開け居間に通す。
居間に通され椅子に座るように促されるも、目の前の椅子に鬼のような形相で座っている、あの有名な相模先輩が気になってどうにも落ち着かない。
「お兄ちゃん!そんな怖い顔してたら海藤君が怖がるじゃない」
「えっ・・・お兄さん?」
「うん。私のお兄ちゃんよ」
海藤は思わず納得をした。
この兄にこの妹ありかと。
しかし何故こんなに可愛いのにあんな格好をさせるのかと、疑問に思う所もあるが、いまはそんな事を聞けない雰囲気だ。
気を落ち着かせるために、一つ大きな深呼吸をしてから優樹菜に聞いた。
「相模さん、足大丈夫?バス降りる時に引きずってたように見えたから」
「大丈夫よ。それでわざわざ来てくれたの?」
「うん、まぁ・・」
「用件が済んだのならもういいだろ?君も疲れてるだろうから帰ったほうが良いんじゃないか?」
朔夜が早く追い返そうとする。
玄関まで見送りに行った二人だったが、帰り際に朔夜が
「あ。君、海藤君とか言ったかな。
今日見たことは誰にも言わないでくれるかな」
「えっ?」
「言わないでくれるよな?」
何とも言い難いどす黒いオーラが朔夜を纏っているように新たには感じた。
「は、はい!誰にも言いません!」
不本意ながら優樹菜の秘密を知ってしまった新を含め、この奇妙な4角関係(?)が来週から始まるのだった。
月曜日、オリエンテーションの事もそうだが、その後の相模先輩との事も気になっていた女子達は、直接優樹菜に聞いてきた。
「相模さん、あなたと先輩ってどういう関係なの?」
「苗字が同じだけど、まさか親戚とか言わないわよね?」
「えっと、はい」
「マジで親戚なの?うっそぉ!?紹介しなさいよ!!」
「無理です」
「はぁ?!無理って何がよ!」
「朔夜は紹介とか嫌いますから・・」
「ちょっ!なに先輩の事呼び捨てにしてんのよ!生意気なのよ!相模のくせに!」
カッとなった女子に思いっきり頬を叩かれてしまった
―― バシンッ ――
優樹菜にとってやり返してひれ伏させる事などぞうさもない事だったが、事を荒立てたくはないという思いから、ここは大人しく引き下がっていた。
そのやり取りを見かねた新が
「やめろよ!殴ることはないだろ?!」
「だって海藤君、相模さんが・・・」
とっさに相手が悪いんだと言い始める女子達。
女の本能とは恐ろしいもので、いくら自分に非があったとしても、それを正当化し、悪いのは全部相手だと涙を流しながら訴え始めた。
「先輩の事を知ってるなら紹介してって言っただけなのに、絶対にいやだって・・・」
「そうよ。そうよ。私たちみたいな女の子には釣り合わないから無理だって言ったのよ?」
『私そこまで言ってない・・・嫌だとは言ったけど、絶対にとは言ってない・・・。
それに、釣り合わないからとも言ってないはず・・・。』
殴られた頬を手で押さえながら、うつむき溜息をついた。
「相模さん、頬が赤いよ。冷やしに行こう?」
その場から逃げるかのように、優樹菜を連れて水道がある所まで行った。
新は自分が持っていたハンカチを濡らし、それを優樹菜の頬にあて、優樹菜の事をじっと見ている。
「ねえ、なんで本当の事を言わないの?」
「昔色々とあってね」
「そっか・・」
それ以上深く追及する事が何故か出来なく、またいつか話してくれる日を待つことにした。
むかし、優樹菜が中学生の頃だった。
朔夜と紫音が優樹菜の兄だとバレたとたんに、いままで空気のように扱われ、誰も何も話しかけてこなかったのが、急に友達になろうとか言いだし、友達面をしては優樹菜の家に遊びに行こうとしつこく誘いをかけてきてた。
その度に断ってはいたが、一人だけいつもなにかと世話を焼いてくれる子がいて、授業でペアを組む時や班を作る時などは、必ず仲間に入れてくれていた子がいた。
優樹菜も少しづつその子に心を開きかけていたころ、トイレでその子と友達が話している会話を聞いてしまった。
「なんであの子の事をいつも構うの?」
「うふふ。だってあの子のお兄さんって、あの相模先輩なのよ?
仲良くなっておけばいつか家に遊びにおいでとか誘われるかもしれないじゃない?」
「うっわぁ~。あんたって結構計算高い女だったのね」
「何の得もないのに、あんな面白くもない子と一緒に居るわけがないじゃない」
それもそうね。あははは。と、嫌な笑い声が聞こえてきたのだ。
それからというもの、優樹菜は男子はおろか女子とも話さなくなってしまったのだった。
頬を冷やしながら新と一緒に教室に戻ると、机の上にチョークで『ブス しね キモイ』などと書かれていた。
さすがに中学時代にはこんな事はされてはいなかった。
なぜなら、そんな事をしたら兄である相模兄弟に筒抜けになるからだ。
しかし今は違う。
誰も優樹菜が相模先輩の妹だとは夢にも思っていないから。
周りからはクスクスと聞こえる笑い声に混じり、ざまぁみろ!という声も聞こえる。
優樹菜がこの落書きをどうしたらいいものかと考えていると、隣の席の男子、林 広大が雑巾を濡らして拭いてくれた。
キョトンとする優樹菜を見て、軽く笑みを浮かべながら
「相模さんは何も悪くないのにね。酷い事するよね」
「・・・・・・・」
こんな事をされたのは初めての経験だった。
誰もが見て見ない振りをする中で、一人だけ、本当の意味で助けてくれたのだった。
新も助けてはくれたけど、山で助けられたのは、その時新が一番近くにいたからであって、さっき助けてくれたのも、優樹菜の素顔を知ってしまったから・・・。
知らないままならきっと助けなかっただろう。
宿泊施設に居た時だって、嫌がらせを受けていたのに気が付いてたけど、助けてはくれなかった。
一瞬しか見てないその素顔に確信が持てなかったのだろう。
だけど、家に来て、ありのままの優樹菜を見てしまってからは、少し以前と態度が違うような気がした。
朝からずっと、新の視線が気になる。
たぶんチラチラと見ているのだろう。
それと引き換えに林君は、優樹菜の素顔など知らないはずなのに、助けてくれた。
この嬉しさは優樹菜にとって初めての感情だったかもしれない。
お昼休みになると、今日はお兄達に用事があって一緒には食べない日だった。
教室で一人でお弁当を食べていると、愛羅が近寄ってきて飲みかけていた牛乳をご飯の上にぶちかけた。
「ごっめ~んw手が滑っちゃったみたい♪」
「・・・・・・・・」
「でもほら、牛乳って栄養がたっぷりあるしぃ~♪美味しいわよ♪」
「そうですね。牛乳って結構好きなんですよ。ありがとう・・・・。」
漫画で絵に起こすのなら、うつむき加減で顔面上部に斜線が入ったどんより顔という表情が、隣で一部始終を見ていた林 広大のツボに入ったらしい。
「ぶふっ。あははははは」
思わず声をあげて笑ってしまった。
「ごめんごめんww相模さんって、面白い人だよねw」
キョトンとする優樹菜だった。
根暗とかつまんない人とかなら言われた事があるが、面白い人とは今まで一度も言われたことなどなかったからだ。
いったい何故彼はそう思ったのだろうか。
考えてみても思い当たるふしはない。
「ほら、そう言うとこだよw
普段はおとなしくて無口なんだけどさ、1本筋が通ってて、周りに流されないよね?」
はて何のことやら・・・?意味が解らなかった。
「嫌なものは嫌だってはっきり言う勇気も持ってるし、何をされても動じない強さもある。
面白いよね、相模さんってw」
あぁ、そう言う事かと思わず開いた左手にグーの形に握った右手をポンッと打ち付けてしまった。
「あははははwそんな事普通しないよねwwwほんと、面白いよね・・・相模さん」
林 広大はクラスでも大して目立つ存在ではなかったが、優樹菜にとってはとても興味の引かれる男子となったのだ。
食事の後トイレに行こうと廊下を歩いていたら、数人の女の先輩たちに声をかけられた。
「あなた、朝相模君たちと一緒に登校してた子よね?」
優樹菜はただ黙って下を向いているだけだった。
何の反応もない優樹菜にごうを濁したのか、女子達は近くにあるトイレに優樹菜を連れ込んだ。
中に居た下級生達を全員外にだし、仲間の一人を入り口で見張りにつけて、トイレの中で優樹菜を取り囲むように尋問し始めた。
「いったいあの二人とどういう関係なの?」
「まさか付き合ってるなんて言わないわよね」
「やめてよ!こんなブスと相模君が付き合うはずがないでしょ?!」
各々に罵声を浴びせる。
「ちょっとなんとか言いなさいよ!!」
「くすっ。そんなに言いたくなかったら、言えるようにしてあげようか?」
そう言って優樹菜に、水道の蛇口に繋いであったホースを向けて蛇口をひねった。
開放された蛇口からは勢いよく水が流れ、ホースの先から飛び出してきた。
水をかけられずぶ濡れになりながらも、その口は堅くつむがれいまだ何も言わない。
「強情な子ね!」―― バシンッ ――
強烈な平手打ちが優樹菜の頬をとらえた。
何事かと遠巻きに見ていた生徒達からもザワザワと声が漏れ始め
「先生がこっちに来るわよ!」
その合図とともに上級生たちはその場から素早く逃げて行った。
ずぶ濡れになっている優樹菜に、先生は何があったのか聞くが、蛇口が壊れてて勝手に水が出てきて濡れてしまったとしか言わない。
トイレを取り囲むかのようにいた他の生徒に同じ質問をしても、答えは同じだった。
クラス内では小さな嫌がらせだったものが、徐々にいじめと思える行動に移って行ったのは言うまでもない。
初めは教科書の落書き、その次に教科書を隠し、はてには破り捨ててしまう。
持ち物も時々無くなり、ゴミ箱や焼却炉から発見されることもあった。
海藤は、自分が見てる時は一緒に物を探したり、言いがかりをつけられている時は制止して仲裁役を買って出てくれた。
しかし隣の席の林は、優樹菜がどういう行動に出るのか面白がって見ているだけだった。
毎日どこかしらに傷を負って帰ってくる妹に、学校で何が起こっているのか兄達は問いただすが、転んだだけ、ぶつけただけと言葉を濁すだけだった。
「ねぇ、お兄ちゃん。可愛くない子って、やっぱり関わりたくないのかな?」
「本当に困ってれば、可愛くても可愛くなくても、俺は助けるけどな」
何かに感づいた朔夜は
「クラスの雰囲気がおかしくなりそうな時に、わざと話題を変えてその場をなごます奴は
どのクラスにも一人はいるよな。
だけどその場限りだ。
本当に困ってる子や危ない目に会ってる子には、とっさに体が動くと思うぜ」
「だよな~。口先だけなら自分に矛先が向かないように、いくらでも助ける事はできるけど
あいつ、なんつったっけ。海藤?オリエンテーションの時お前を助けてくれた奴。
俺達、去年同じ場所に行ったけど、あそこの急斜面を助けに降りていこうなんて
普通の男には無理だな。
へたしたら自分も転げ落ちるような斜面だったしな。
そんな時に可愛い子だから助けに行こうとか、可愛くないからほっとこうとか
そんなこと考えてるやつは、普通何の行動も起こさないと思うけどな」
兄達にそう言われて、優樹菜はじっくり考えてみた。
自分の素顔を知る前の海藤の態度と、知ってからの海藤の態度。
良く考えてみるとそれほど変わりはなかった。
初めから「おはよう」や「ばいばい」は自分にも目が合えば声をかけてくれていた。
いつも側に居るわけではないが、何か困ったことがあれば声をかけてくれていた。
素顔を知ってからもしつこく言い寄ってはこなかった。
一方隣の席の林は、目があっても笑いかけるだけ、こちらから挨拶をすれば返してくれるが、自分からは声をかけてこない。
優樹菜が困っていても、自分には関係がないと知らぬ顔で事の一部始終をただ見ているだけ。
二人の差は歴然であった。
優樹菜は、本当の優しさが何なのか、いま初めて知った気がした。
7月の初めごろ、日直の仕事で先生に頼まれた資料を教室まで運ぶために階段を登っていた時、前方から林が降りてき、その横を女子が抜かす様に降りて来たかと思うと、思いっきり肩をぶつけられてバランスを崩した。
両手に荷物を抱えていたため、階段の手すりに捕まる事が出来ず、そのまま後ろに倒れ落ちてしまった。
倒れ落ちていく瞬間に、林の姿を目で追うが、助けてくれる気配はなかった。
優樹菜を助けようとしたなら、自分もバランスを崩し、そのまま二人とも落下するのが分かっていたからだ。
しかし、階段中段辺りから落ちたはずなのにあまり痛さは感じない。
周りの子がキャーキャー悲鳴を上げてはいるが、何がなんだか・・・。
目を開けて恐る恐る確認してみると、海藤が優樹菜の事を抱きかかえるように守っていてくれたのだった。
「なんで・・?なんで海藤君が・・・?」
「イタタタ・・・なんでって・・・ふつう助けるだろ。
てかさ、相模気づいてたか?俺に声かけられても、触れられても固まらないって」
「!!!!!!!」
初めてだった。
男子に声をかけられるだけで緊張して固まったり、触れられると地蔵になったりが日常だった優樹菜にとって、家族以外で初めてまともに話す事が出来、触られても平気な存在が。
海藤との一件もあり、腹黒い一部の女子がある計画を立てた。
優樹菜をカラオケに誘い、そこに自分の彼氏とその友達を呼び、一生外を歩けないような傷を心と身体に植え付けようと考えていたのだ。
実行する日は終業式の日だ。
計画通り優樹菜をカラオケに誘い、そこで男子達と合流をした。
「へぇ~、こいつが例の子か」
「俺の好みじゃないんだけどなぁ~」
「ただでやれるんだから贅沢言うなよ」
『!・・そう言う訳だったのね・・・』
「大人しくしてたら痛い目に会わないからさー、ちゃっちゃと終わらせようぜ」
ニヤニヤと気持ち悪い笑いを浮かべ近寄ってきた。
普段女子達には、何をされても手も足も出さないでいた優樹菜だが、こういう不貞に輩たちには問答無用でなぎ払った。
だてに10年も合気道を習っているわけではなっかのだ。
軽く腕をひねるだけで、面白いように男子達は投げ飛ばされていく。
更に歯向かって来る者には、両腕の関節を外したりして再起不能に追い込んで行った。
騒ぎを聞きつけた従業員が来る前に、優樹菜は急いでその場から逃げたのだった。
家に帰り今日の出来事を兄達に報告すると、もうそろそろその変装も潮時なのではないかという事になり、明日から夏休みという事もあり、変装はもうしなくてもいいという事になった。
でも外出する時は、必ず誰かが付き添わなければいけないと言う事で、夏休み中は、これからの生活にどう影響が出るのかの、外出時行動調査が始まった。
優樹菜が歩くと男性はみな、その美しさに振りかえる。
一人で待たせておけば、3分もしない内にナンパをされる。
兄達の心の休まる時間はなかった。
夏休み中優樹菜は、ナンパのかわし方、一般人と下心がある人の見分け方などを兄達から学んだ。
その甲斐があってか、いつもオドオドと下を向いてばかりいた昔の優樹菜はもう何処にも居なかった。
今は自信に満ち溢れ、堂々と前を向いて歩いている。
「おい!あの子誰だ・・・すげぇ可愛い・・・」
「えっ?!相模先輩達と一緒に居る子・・・誰?!」
本来の姿を交えた相模兄妹の事を、夏休み明けの全校生徒が、まるでおとぎ話の絵本かモデル雑誌の表紙から飛び出してきたような、この3人を見つめ我を忘れていた。
優樹菜が教室に入ると、今まで騒がしかった教室内が一瞬で静かになった。
そして口々にこう言った。
「誰?あのこ」
「転校生・・・?」
「すげ・・・かわい・・」
先に来ていた林も、あまりの可愛さに顔を赤くしながら見つめている。
そして海藤はと言うと、優樹菜の姿に気づいたのか
「おはよ。相模さん」
いつも通りの、いつもの挨拶をした。
「「「「「ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」」」」」
悲鳴ともとれるような怒涛の声を一斉に出した。
「おはよ。海藤君」
「今日はどうしたの?いつもの姿じゃないんだね」
「うんwもうしなくてもいいってお兄ちゃんたちが・・・」
「あっ、海藤先輩たちのお許しが出たんだ。良かったねw」
「「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ?!お兄ちゃんんんんん?!」」」」
更に怒涛が沸き起こる。
そして、今まで優樹菜に意地悪をしてきた子達は、徐々に青ざめていき、陰で嘲笑っていた男子達も、軽薄だった自分の行動を思い出して赤くなったり青くなったり忙しかった。
今まで自分たちが優樹菜にしてきた事を思い出すと、声をかける事もはばかれた。
根暗で冴えない女の子だった時は、遠巻きにいつも嘲笑い、苛められていても知らんぷり。
可愛くなったらなったで、気おくれをして近づく事さえ出来ないのだった。
そこに自分の教室に鞄を置いてきた兄達がやってきて
「優樹菜。大丈夫か?」
「苛められてないか?」
などと様子を伺いにやって来た。
「大丈夫よ、お兄ちゃん」
「海藤、不本意だが、優樹菜の事頼むな」
「俺で良いんですか?」
「優樹菜はまだお前にくらいしか慣れてないだろ・・・」
「不愉快だがお前しか居ない」
「はい!頑張ります!」
やっと普通の女子高生らしい、明るく楽しい学園生活を手にした優樹菜は、これからの高校生活が少し楽しみになった。
友達を作り、一緒にお弁当を食べたり、ショッピングにも出かける。
そんな日常がこれから出来るのかと思ったら楽しみでしょうがなかった。
それに、初めて出来た友達が女の子ではなく男の子であっても、嬉しくてたまらなかった。
幼少期から変な趣味の人に付け狙われ続け10年。
己の身を守る手段としての変な変装。
それが今やっと解禁されたのだった。
優樹菜の新しい高校生活に幸あれ!
―― 完 ――
読者さん 八代目さん
読んでいただいたうえに感想まで頂
ありがとうございました。
思いつきと、気分とノリで書いてしまったのですが
読んでくださっている方がいると知り
とても嬉しく思いました。
ありがとうございます。
集中して書き上げると目に来るわぁ~ 笑
昨日は集中不足だったので
話が乱雑になってしまいました・・・。
読み返してみると
酷い・・酷すぎます! 笑
消してしまいたいです・・・はぃ。。。
とりあえず目を休息させなければです。
ん~・・・
逆ハーでいくべきか・・・いやいや、一人空気の読めない人がいる方が面白いかも。
やはり大筋の軌道は曲げられないし・・・
彼には道化になってもらうしかありませんね・・・。
短編のつもりが意外と長編になってしまいそうです。
と言うか、すでに長編への道を歩みつつあります。
途中で飽きてこなければいいのですが。。。
とりあえず頑張ろうと思います。
今ちょっと悩んでいる事。
それは、新しく小説を書いてはいるものの、全て書き終わってからupするか
それとも書きながらupするかを悩んでいます。
そして、個人に載せるか、その他に載せるかも悩みどころです。。。
一晩悩んだ結果、書き終わってからupする事にします。
自分では面白い内容だとは思うんですけど、他の人が読んだらどう思うのだろうかと、少し心配な部分もありますw
八代目さん
ごめんなさい。
実は、雲=ハナミズキ なんですよ(汗;
こちらのトピには、気分転換のために書かせてもらってました。
経過報告をしますと、だいたいのストーリーは出来上がっているんです。
現時点で7話まで書きあがっています。
あと少しで完了する予定なのですが、八代目さんの温かい言葉に感謝申し上げます。
いつも読んでいただきまして、ありがとうございます♪
やばいです。
修正しながらupしていますが
大幅修正の予感がします・・・(汗;
でも、この話し、私にとっては面白いとは思うんですが
皆さんにとっても、面白いと感じてくれてるのか
ちょっと心配です。
所々ギャグっぽくなってる気もするし・・・(冷汗;
>88 お答え有難うございましたw
衝撃の事実でしたw
いやはや…気付かなかった;
いつも楽しいお話を
有難うございます♪
>91 >でも、この話し、私にとっては…
自分もとても
面白いと思っています!
周辺の描写も丁寧で
風景を想像しやすいですね!
それから
夕ちゃん(勝手な愛称)は
可愛くて
白夜君は恰好良いww
余談ですが狐が好きなので
妖狐を題材にしている、
という点も個人的には
嬉しいですね(´∇`*)
続きを楽しみにしています
八代目さん
感想をどうもありがとうございました♪
正統派の小説を書くには、知識不足で書けませんが
ファンタジー系や歴史を無視した様な話なら書けます!(キリッ
今後もここで、次にどんな物を書こうか
などと、呟いていると思いますので
一つの目安にしてもらえると
嬉しいですw
八代目さん
こんにちは。
次回作なんですが
前にここに書いたお話を
少し修正をして、続きを書こうかと思っています。
置き場所としては
個人用にトピックを立てようかと考えております。
題名は「素顔のままで。」
と言うタイトルになると思います。
何時頃になるかはまだ定かではありませんが
その時は、またここでお知らせをしたいと思います♪
主人公の名前を考えるのが大変です・・・。
誰か一緒に名前を考えてくれると助かりますが
無理ですよね? 笑
今風の名前と、昭和っぽい名前、どちらも男子の名前を募集中です♪
なんちゃってw
貴方の名前が主人公になるかも?!←甘い誘惑
なかなかお菓子を食べなくて
アルバム開いて病院に
そしたら突然凸凹な
お医者たちに囲まれた
知らないうちに人ばかり
もしかして
サボり?
とかいいつつも
アルバム受け取り
開いたよ
お医者は笑って
『異常なし』
ただの個性といいました
嘘だろヤブ医者
もうそこまでだ
いやいやまてよ
……ただの個性だ
捕まった
おわり
たかほ。んさん
素晴らしいポエムをどうもありがとうございます。
でも、雲は知識に乏しいので、意味は分かりませんが・・・(汗;
結局は補導されたという事でしょうかね?@@;
次の話しの方向性がだいぶ固まってきました。
でも、次の話を書く前に番外編を書いてしまうとは・・・。
書き終わってから、少し自分の中でモヤモヤとしていたんです。
こんな終わり方でいいのかと。
自分がもし読み手だとしたら、続きが気になります。
まぁ、番外編でも、最後までは書かなかったのですが、なんとなく想像をする余地はありますよね?w
本当はもっと書きたかったのですが、あれが限界ではないのかと思い、ギリギリの線で終わらせていただきました。
時空の彼方、おかわりを望まれた方は、最後の1杯分だけおかさせて頂きました。
満腹になったかどうかは分かりませんが、お粗末さまでした!!♪
次回作、少しづつですが取り組んでおります。
あいさん
いいね 有難うございますw
迷わず行けたようですねw
あそこは地下シェルター化してますので、どうぞご内密にお願いいたします(汗;
時空の彼方 番外編も
拝読してきましたw
満腹…と言えば
そうかもしれない、
しかし、実際に御馳走を
前にしたらまだまだ
別腹でイケそうです!w
ああ、でも次回作も
楽しみで…w
欲張りはいけませんね;
>98
明治安田生命が
ネットで公表している
年別「多かった名付け」の
ランキングはご存知ですか??
そのまま載っている名前を
使うのにも
雰囲気を知るのにも
あれはなかなか便利ですよ♪
もし良かったら
参考程度にも見に行って
みてくださいな~
八代目さん
大変参考になりました!
有難うございますw
使いたかった時代の、昭和の名前が、まさかの一文字だったとはwww
お陰様で、時代背景を無視しないですみました♪
新作の第1話が出来上がりました。
個人の方にトピをたてましたが、残念ながら恋愛要素は0です。
はぃ、全くもって恋愛には繋がりません・・・。
期待をした方、ごめんなさい! <m(__)m>
ん~・・・ツンデレにしようか
それとも俺様にしようか・・・悩みます!!
どっちも捨てがたいです・・・(。-`ω-)
今のところどっちつかずで進んでおります(´・ω・)
というか・・・次の作品・・・
よ~く考えたら、自分のキャパを超えてる感が・・・(ノД`)・゜・。
何故あんなものに手を出してしまったんでしょうね・・・私は。。。o(TヘTo) くぅ
題名が決まりました。
やはり、手を出さなければよかったかも・・と思うような物になりそうです。
今の構想だと、3部作になってしまいます(。´Д⊂)トホホッ・・・。
かくなるうえは、このまま何もなかった振りをしてばっくれてしまいましょうかねぇ(´、ゝ`)ニヤリ
おはようございます。
何処のどなたか存じませんが、あるトピックで私の作品を紹介してくれた方がおりました。
大変嬉しく思う反面、読んでくれていた人が居たんだ・・と思う、驚きの方が大きかったです(笑
その方も言っていたんですが、個人掲載だと検索にかからないそうなので、今度はその他の方で掲載させて貰いたいと思います。
褒めて頂きありがとうございました。
本当は直接お礼を言いたいところなんですが、恥ずかしいので、こちらにてこっそりお礼を申し上げます。
by ハナミズキ
おはようございます。
えっと・・あの・・
セイチャで目にした名前を使わせて頂くかもしれません。
ご了承下さいませ <m(__)m>
あ・・・気の迷いと言うか・・息抜きと言うか・・・
そういう事です・・・ハィ。
トピが出来て5日くらい誰も書いてなかったし・・
誰かが1つでも書いた方が後に続くかなぁ・・と、小ネタを少々・・w
ごめんなさいwwww
ちょっとした予告のつもりでwwww
(本当は魔が差して、つい指が勝手に・・・)
でもこれ、意外と楽しいかもしれない(笑
心の友さん
執筆活動は無理ですwwww
そんな大それたこと考えた事もありませんでしたよ(A;´・ω・)フキフキ
なんか、あんな駄文でも読んでくださってる人がいるんだと思うと、地道に書いて行こうと頑張れるkがしますねo(^▽^)o
みなさん有難うございます♪
同じ人でしたか!?Σ(・oノ)ノ
しかし食欲の秋とはよく言ったものですよね~♪
最近すぐにお腹が減るのです。
1日4食で我慢はしてるんですけど
ちょっと肉付きが良くなったかなぁ~・・・なんて・・・。
きっと目の錯覚ですね!(笑
みなさんも食べすぎにはご注意ください<m(__)m>
雲さん・・・私にあんな事やらせるなんて・・・酷いわ・・(ノД`)・゜・。
鈴・・・もうお嫁にいけない・・・。・゜・(/Д`)・゜・。うわぁぁぁぁん
え?ええぇぇぇぇぇぇっ?!
そんな酷い事した覚えは無いんですけどねぇ・・・(_ _|||)
それでは皆さん。
後ほど会いましょう!(`・ω・´)
今回はあれですね・・・。
あの時代ならこんな事もあったんじゃないかな・・・と思われるエピソードを入れてみました。
第5話。
公開しちゃう?(笑
書いてて思った事。
この小説いつ終わるの・・・?
めっちゃ長編になってませんか!?(笑
そろそろネタが付きそうです・・・;つД`)
匿名さん
応援ありがとうございます。
今日はどうにか6話を書き上げたんですが、これからどう持って行こうか
まだ案がまとまっていない状態でして・・・ハィ。
でも、匿名さんの励ましのおかげで、もう少し頑張れそうな気がしてきましたw
おはよーございます。
また悪い癖が出てしまいそうです。
と言うか・・・出てしまいました!(笑
そろそろ刺激が欲しいと思った雲は、次回の話の途中を、一部別荘送りにしたいと思います!(笑
続けて読んでも良し、別にそこを飛ばして読んでも話は繋がる様にしたつもりです。
あなたならどの選択を選びます?
A:別称まで行って読む
B:別荘を探すのが面倒くさいので、飛ばして読む
ファイナルアンサー?(笑
今回の刺激度ランクは、ABCの3段階表示だとすれば、C程度の軽い物じゃないかと思います。
流石にランクAの代物何て書けませんよ。
出入り禁止になってしまいますから。
と言う事で、今回は鈴と和也に、心境の変化が生じます。
第7話、お楽しみに!♪
こんにちは、青葉さん。
飽きる事もありますよ(笑
だから時々、刺激を求めて横道に逸れてしまうのです(笑
実は私、物凄く飽きっぽいんですよ。
日記をつけても1週間ももちませんwwwwww
それがこんなに続いてるんですからね・・・
一番驚いてるのは自分かも知れないです(笑
たぶん、書かなきゃ、と言う義務感じゃなく、書きたいと思った時に書くから続いてるのかもしれませんね(笑
コメント有難うございました♪
お久しぶりです、雲さん♪
久々に来てみたら、
新しい小説がいっぱいで
ウハウハしていますw
また、教授にして頂いて
ありがとうございました☆
八代教授、お帰りなさい♪
勝手に名前使わせて頂きました(●^□^●)
教授が戻って来るまでには、この小説を完了させておこうと思ったんですが、思いのほか長編になってしまいまして・・・(A;´・ω・)アセアセ
今のところ、1週間に1話か2話しか上げられないんですが、気長に待っていただけると嬉しいです♪
そしてたまに、暴走して別荘のお世話になってるしだいであります ヒイィィィ!!!!(゚ロ゚ノ)ノ
普段はあまり気にも留めていないんですけど
ふとした瞬間に思い出すと言うか・・・。
その人がいるだけで安心すると言うか・・・。
なんだろ・・・いつも側に居て、見守ってくれるような人を
知らないうちに好きになってしまうかも(笑
読み物好きに、
長編は嬉しいです♪
待ちますともーw
ところで…
新しい試みですねw
鈴ちゃんや、
和也君が来てるw
あと大きな古時計、
完結されていましたね!
とても良かったです!!
歳の差がある
友情ものって素敵(^∇^*)
背景の描写も
細かかったと思います~(゜゜)
ごちそうさまでした♪←
教授、お疲れ様です!('◇')ゞ
キャラクターを登場させた訳はですね
結構独り言が多いもので
自分自身が飽きちゃったんですね(笑
そこで多人数を動員しまして
予告編なんぞ書いてみようかと思いまして(笑
書いてみると、そっちの方が面白かったので
たまにキャラ同士の会話が出てきます(笑
古時計は、資料探しましたともwwww
なるべく違和感がないようにと思ったもので
体験談を読んだりとかもしました。
今回のDr,リンもそうなんですが
真面目に書いてると
たまに発病しまして・・・ハィ。
あと何回か別荘のお世話になると思います(汗
生暖かい目で見守ってください(笑
PS 今日中に第8話をupする予定です。
調べて書く人…
良いですねぇ(´`*)
調べる過程は大変だけど
楽しかったりw
Dr,リン、ゆっくり
拝読させて頂いてます♪
秋にお腹が空くのは、
仕方がない!w
八代教授お疲れ様です♪
調べる過程で楽しい事は楽しいんですが
専門用語がwwwww
やはり医療には手を出してはいけなかったような・・・(笑
途中から病名を検索するのも面倒くさくなったと言いますか
病名自体が分からなく、架空の病名を作ってしまったり・・(笑
それでも少しづつではありますが
楽しみながら書いて行きたいと思います♪
ようやく追いつきました~w
現在の投稿分、読了(^∇^)
元々、医学に聡い方なのかと
思ってました('o';)
一から調べて書いたのなら
本当にすごいですね(感!)
続きも楽しみにしていますw
ハナミズキさんの作品は毎回、
ヒロインは可愛くて、
男の子は恰好良いですw
八代教授
お褒めに預かり嬉しいしだいであります(〃ω〃) ポッ
ですがハナミズキとして書いていますと
時々Aランクの物も書きたくなりまして・・・
自重する心との戦いが・・・(笑
いったい何処までなら許してもらえるのか
今後試験的に二人の仲を進展させてみようかとも思っています。(テヘッ
(もちろん、別荘の方で公開する事になりますが・・・。)
気分転換に、ショート・ストーリーを書いてみました。
題材としましては、悩んでいるお母さん方が多いと言う事で
そのお母さんの、もしも○○だったら・・・。
と言うのがテーマで書いて見る事にしました。
こんな事とが本当に起きたら
貴方ならどうしますか?(笑
――― If ~ もしもシリーズ 弥生の場合
◆ 日常 ◆
私の名前は『河内 弥生』、48歳の主婦。
子供は二人いて、大学二年(20歳)になる息子と、高校三年生(17歳)の娘がいる。
小さな頃は、「お母さん、お母さん」と、私の事を呼び、少しでも姿が見えなくなると良く探していたものだったが、今ではその面影も無くなってしまった。
息子はほとんど大学にも行かず、部屋に閉じこもって出て来ない。
ゲームやパソコンをいじっている様だ。
娘も、昔は学校であった事や、友達の話などをよく私に聞かせてくれたものだったけど、今は一日中携帯をいじり、ラインとやらをしている。
いつからこうなってしまったのか。
私の育て方が悪かったのか。
時々昔を思い出し、懐かしくも感じる反面、虚しくも感じる。
私の存在っていったい何なんだろうと・・・。
子供たちに話しかけても、「今忙しいから後で」と言われてしまう。
それでも話しかけ続けると、『うっざ~』と言う表情をされる。
寂しい・・・。
子供が成長すると言う事は、こういう事なのだろうか。
最近私は、自分の存在価値に疑問を抱くようになった。
今日の晩御飯は、珍しく家族全員で食卓を囲んでいた。
そこで私はこんな質問をしてみた。
「もし、お母さんが死んじゃったらどうする?」
私としては、「お母さん死なないで」と言う言葉を期待していたのだったが、返ってきた言葉はこうだった。
まず、娘が開口一番にこう言う。
「ええぇ~!? お母さんが死んだら誰が家事するの!?」
続けて息子が言う。
「梨花だろ? 一応お前も女なんだしさ」
「ちょっとぉ!なんで私なのよ!いつも暇してるのは兄貴でしょ!?」
「俺は色々と忙しいんだよ」
何が忙しいんだか・・・。
毎日部屋に閉じこもってゲームしかしてないくせに。
そう思ったが、もう少し、みんなが私の存在をどう思っているのか、聞いている事にした。
「なら、お父さんがすればいいんじゃない?親だしw」
娘は『今私良い事言った!』と言う様な顔をして、笑いながらそう言った。
すると夫は、「父さんは仕事で忙しいんだからお前たちがやりなさい」と言うのだった。
この三人の会話で、私は全てを悟ったような気がした。
私の存在価値とは、家事全般をこなす『家政婦』だ。
それも無料の・・・。
ご飯を作ってもらって当たり前。
洗濯をしてもらって当たり前。
誰一人からの感謝の言葉さえも貰えない。
認めたくなかった事実を、いま目の前で突き立てられる。
これがみんなの本音だったのだと。
その夜、私は1人布団の中で泣いた。
声を噛み殺し、みんなに悟られないように泣いた。
頼みの夫までが、私の事を家政婦としてしか見ていなかったと言う事が、一番つらかった。
子供たちが独立した後、夫婦二人で過ごす、これからの時間全てが、妻ではなく家政婦扱いになるのかと思うと、悲しくてかまらなかった。
私も、もう直ぐ50歳に手が届こうとしている。
今更離婚をしても、安定した生活を送る様な収入も見込めない。
これからも我慢をして一緒にいなければならないのか。
いったい何処で選択を間違えたのだろうか・・・。
最近そんな事ばかり考えてしまい、自然に涙が零れてくる。
◆ 夢物語への逃避行 ◆
結婚して22年。
夫は変わった。
ここまで無口な人ではなかった。
付き合っていた頃は、普通に会話をしていたけど、いまでは殆ど喋らない。
一日の会話などこんなものだ。
「飯」「行ってくる」「風呂」、この三つで会話が成り立っている。
後は私に用事を言いつける時しか喋らない。
これで夫婦と言えるのだろうか。
結婚してからは、名前さえ呼んでくれない。
「おい」「おまえ」「お母さん」、それが私の名前の様だ。
私にも「弥生」と言う名前があるのにな・・・。
私も今年で48歳。
もう若くはない。
だから女扱いをしてくれないのだろうか。
それでも私は思う。
私は、貴方のお母さんじゃない!と。
でもそんな事は言えない。
言えば鼻で笑われ、「何バカな事を」と言われるのが関の山だ。
もし、もしも若返りの薬がこの世に存在すると言うなら、私はきっと飲むだろう。
昔の様に、ぷるんぷるんの肌を取り戻し、多少の疲れなど、一晩寝れば回復してしまう新陳代謝の良い身体を取り戻したい。
私の夢だ。
でも、もしそれが可能なら、それでも一緒に夫と暮らしていきたいだろうか。
応えは「NO」だ。
今までの事を考えれば、これからも一緒に暮らしていきたいとは思わない。
では子供達とは?
それも考えてしまう。
幼い子供なら一緒に連れて家を出て行くかもしれないけど、引きこもり同然の息子と自分の事しか考えない娘。
一緒に連れて行っても、いまと苦労は変わらない。
自由が欲しい・・・。
もし身体だけが若返ったのなら、何をしようか。
色々と考えてみる。
そうね、歳の頃は、箸が転げても可笑しいと感じる18歳位が良いかしら。
あの頃の私は、自慢じゃないけどモテたもの。
ナンパも良くされた。
徹夜をしても疲れなど感じなかった。
スタイルだって・・・余分な脂肪は付いていなかった。
戻れるものなら戻りたい・・・。
妻が若返ったら、夫は家に早く帰って来るだろうか。
いつも残業だ、接待だと言って午前様だ。
息子はどう思うだろう。
見た目が自分より若い母親は、やはり嫌だろうか。
娘は?
意外と娘の場合は、友達感覚でうまくいきそうな気がする。
そんな事を考え想像していると、なんだか少し可笑しくなってくる。
誰もいない平日のリビングで、1人クスクス笑う私は、誰かに見らでもしたら、頭がおかしくなったと思われるかもしれない。
そんな事を考えると、また可笑しくなる。
◆ 夢か幻か ◆
最近疲れが取れない。
ずっと体がだるい。
頭痛もする。
私の体、一体どうなっちゃったんだろう。
具合の悪そうな私を見ても、誰も心配してくれない。
息子から出てくるのは、ご飯の時とお風呂とトイレの時だけ。
娘は私より携帯を眺めている時間の方が長い。
夫は・・・私の顔さえろくに見ない・・・。
こんな生活もう嫌だ・・・。
私が生きている価値が無いかのように、私の事を素通りする。
私は何のために生きているのだろうか。
家政婦程度にしか価値が無いのなら、私なんて居なくなった方がましだ。
その方が自由になれる。
心の闇から解放され、自由に、好きな様に、生きられる。
でも私は弱い。
1人では生きていけない。
だから、この現状にしがみ付いてるんだと思う。
情けない・・・。
もっと強くなりたい・・・。
そんなネガティブな事を考えてると、頭痛が増々ひどくなった。
頭が割れそうに痛い。
こんなに痛いのは、普通の頭痛じゃないと思った私は、夫に病院に連れてって欲しいと言ってみたが、夫は、「大げさな。薬を飲めば治る」と断られた。
しかたがないので、薬箱から頭痛薬を出して飲み、その日は早々と寝る事にした。
頭痛のせいでなかなか寝付けなかったが、そのうち痛みが消えた。
やっと薬が効いてきたのかと思っていたら、何か様子がおかしい。
暗闇の中で私が寝ている姿が見える。
辺りをよく見ると、私は天井近くに浮かんでいた。
そして、下の方には、私の体が布団の中で眠っている。
これはもしかして・・・・幽体離脱?
『ちょっと!幽体離脱って、長い時間身体を離れてたら死んじゃうんじゃ
なかったっけ!?』
そう思った私は、慌てて自分の体に戻ろうとしたけど、何回やっても弾かれてしまう。
『・・・どうしよう。。。』
途方に暮れていると、白い光が現れ、その白い光の中から知らないお爺さんが現れた。
『何をしとる。お前さんは死んだんじゃ。早く儂の所に来なさい』
『嫌です。まだ死にたくありません。どうか元の体に戻してください』
私はそのお爺さんに頼んだ。
するとお爺さんは、何やら手帳を取りだして読み始めた。
『こりゃ儂としたことが間違ったわい』
『へっ?』
間違ったと言われ、思わず間抜けな声を出してしまった。
『死亡予定は、隣の家の「チヨ」さんじゃったわい。すまんすまん』
「すまん」と言われても、一度死んでしまった者をどうする気なのかと尋ねると、
『お前さんは、自分の人生に疑問を持っているようじゃな。
ならば、サプライズじゃ。
時間を戻し、過去に戻り人生をやり直すか?
この場合、今までの記憶も全部気謂えてしまうがのぅ』
私は考えていた。
どうするべきなのかと。
『それともう一つ、今の時代で、身体だけ若返らせるか?
この場合は、今までの記憶は全部残っておる』
『 !!!!!! 』
答えは決まった。
後者だ。
『身体だけ若返らせて下さい』
即答だった。
夢にまで見た若返りのチャンスを手に入れたのだ。
一度死んでみるのも悪くないかも・・・とさえ思ったのだ。
お爺さんに手渡された、変な色の薬を一気に飲み干すと、徐々に眠くなり、深い眠りに落ちてしまった。
◆ 誰? ◆
―――― ピピッ ピピピッ ピピピッ
目覚ましが鳴る。
もう朝かと、いつもの様に、いつもの時間に起きる。
ベッドから起き上がり、階段を下りて行く途中で私は気が付いた。
『身体が軽い・・・?』
昨日、いつもより早く寝たおかげで、疲れが抜けたのか、身体がとても軽く感じた。
疲れが取れてると言う事が、こんなにも清々しい気分にさせるものなのかと言うほど、心まで軽くなったような気がする。
私は服に着替え、鼻歌混じりで朝食の用意をするのだった。
朝食の準備も整った頃、いつもの時間に夫が起きてくる。
「ご飯出来たわよ」
夫に声を掛けると、夫は驚いた顔をして私を見ていた。
「なに?」
夫が何をそんなに驚いてるのか、私には分からなかった。
そして夫は、恐る恐る私に尋ねて来た。
「・・・どちら様?」
「何言ってるのよ。私よ!?まだ寝ぼけてるの?」
可笑しな事を言う夫だ。
「あぁ~・・優也の彼女か」
小声で夫は呟いた。
「やぁ~ねぇ~、優也に彼女なんて居るわけないじゃない。
一日中部屋に閉じこもってて彼女が出来たら奇跡だわよ」
なら、お前は誰だ。と言う様な顔をして、私の方をジッと見つめている。
そこに娘の梨花が起きて来た。
「おはよ~梨花」
「おは・・・・」
最後まで言葉を言わずに娘は目を丸くしている。
「どうしたのよ~、二人とも・・・朝から変よ?」
「誰?」
娘が夫に向かって聞いている。
「・・・知らん」
夫も知らないと答えた。
「ちょっと・・・何ふざけてるのよ。
あぁ~・・そう言う事?
もう、お母さんは用済みなのね。
いらないから出て行けって、そういう事なのね!?」
私は怒りながらそう言った。
「ちょっと待ってよ!誰がお母さんだっていうのよ!」
娘も何故か怒っていた。
「何その言い方!毎日毎日、携帯ばかり見てるから、お母さんの顔も忘れちゃった
っていうわけ!?
あなたもそうよ!私の顔なんかろくに見もしないで「飯」「風呂」って言うだけじゃない!
たまに真面に顔を見たと思ったら「誰だ!?」は無いんじゃないの!?
ほんと、失礼しちゃうわよね!!」
私の怒りは止まらなかった。
怒りながら洗面所に行き、顔を洗おうとした時、鏡に映った自分を見てギョッとする。
「・・・・うそ。。。」
あれは夢ではなかったのだ。
あのお爺さんが言った事は、本当の事だった。
鏡の中には、18歳の頃の私が映っていた・・・。
◆ 若いって素晴らしい ◆
鏡に映る自分の顔を見ながら、私は頬をつねってみる。
痛い・・・。
夢じゃない。
本当に若返っているのだ。
夫と娘に昨日の夜の事を話すが、信じてくれない。
しかし、直ぐに信じてもらえるような出来事が起こった。
隣の家に、親戚と思われる人が続々と来はじめたのだ。
程なくして玄関には『喪中』の張り紙が。
そして葬儀屋さんの出入り。
私の話しと符合した。
「ねっ?言った通りでしょ?」
2人は信じられないと言った表情で私を見る。
何が何だか分からないうちに、夫と娘が家を出る時間となり、慌てて出て行ってしまった。
1人になり、食事の後片付けなどをしている時、ふと、姿見に映った自分の姿を見た。
顔は若いのに服装がババ臭い・・・。
まったく似合っていない。
そうだ。せっかくだから、買い物ついでに洋服も買っちゃいましょ。
夫は毎晩のように飲んで歩いてお金を使ってるし、娘だって季節ごとに服を買ってる。
私なんか、この服を何年着てると思ってるのよ。
たまには自分の物を買ったって罰は当たらないわよね。
そう自分に言い聞かせ、今のスタイルに合う洋服を買い込んだ。
買い物をしてる最中にも、数回ナンパをされる。
私もまだまだ捨てたものじゃないと、少し嬉しくなってしまった。
こんなおばさんが着るような服を着てるにもかかわらず、ナンパをされた私は有頂天になり、そのまま美容院に行き、流行の髪型にしてみた。
思いのほか似合っていた事に、自分でもびっくりだ。
家に帰り、夕飯の準備をしていると、二階から息子が下りて来た。
そして、朝の2人同様に固まる。
思わず笑ってしまった。
「あははは。優也もお父さんや梨花と同じ反応するのね。やっぱり親子よねぇ~」
「・・・・で、誰?」
「お母さんよ。でも説明が面倒くさいからパスね」
「母さんがそんなに若いわけないだろ」
昔から頭の固い息子は、自分でもにわかには信じられない様な話を、信じるはずがない。
だから私は、私である確たる証拠を見せつけた。
洋服の前ボタンを外し、胸にある大きく赤い、バラの様な痣を見せた。
「どう?これで信じた?」
普段見慣れてるはずのこの痣を見た息子は、何故か顔を真っ赤にしていた。
いくら母親だと分かってはいても、目の前で下着を見せているのは、自分より若く綺麗な女の子だからだ。
どう接していいのか分からない様だ。
普段は部屋から出て来ない息子だったけど、今日に限って何故かずっとリビングに居る。
娘はいつも通りの帰宅時間で、帰ってくるなり「お腹空いた~」と言う。
どうせ今日も夫は帰りが遅いのだろうと、いつもの時間に食事をしていると、夫が帰って来た。
『はやっ!!』
思わず心の中で叫んでしまった。
ほんと、男って・・・・若い女が好きなんだから・・・。
でも、女だって、くたびれたおじさんより若い子の方が好きなんだから、お相子かしらね。
さて、明日は何をしようかしら。
子供達にも手がかからなくなったんだから、これからは好きな事をして、楽しく過ごさなきゃ損だと思うの。
みんなそれぞれに、好き勝手にやってるんだから、私だって好きな事をさせてもらうわよ。
手始めに仕事でもしようかしら。
先立つものがなきゃ何もできないしね。
明日からが楽しみだわぁ~♪
一応 ― 完 ― と言う事にしときますか。(笑
ハナミズキさんの書く
アップテンポな小説は、
明るい気分になれるから
大好きですw
別荘の方も毎回楽しく
拝読していますが、
呉々もアクセス禁止には
なりませんように..w
八代教授いつも感想をありがとうございます♪
今回はBランクの内容を別荘に置いて来ました!(笑
たぶん、この線がギリギリではないのかと思います(笑
どうぞ召し上がれ♪
とうとう最終回を迎えてしまいました。
読んで頂いてた皆さま
本当に有難うございましたm(__)m
この場を借りてお礼を申し上げます。
では、良いお年を~♪←まだ早いってw
最終回楽しみo(^∇^)o
でも..別荘の方..
実はまだ読めていません!;
使っている携帯の所為だと
思うのですが、文章が最後まで
表示されなくて..;
裏技を見つけてそちらを
先に拝読するまでは
最終回はおあずけに
しておきます^^
急ぎたいですw
八代教授
別荘の方を読まなくても
一応は話が分かるようにはなってます。
ですが、読んだ方がもっと
(*´д`*)ハァハァ 出来ます(笑
頑張って下さいね♪(。◕ ∀ ◕。)
当分小説はお休みしようかと思っています。
最近少し疲れが溜まってきたので
休憩です。
独り言を呟きながら
リフレッシュいたします(笑
>>234 頑張りましたw
Dr.リン、とても良かったですw
感想を述べるにあたり
自分のボギャブラリーの
貧しさが悲しい..w;
医療系の設定、
時代背景の描写、
ドキドキしましたv
急かすつもりは
毛頭ありませんが
あのラストなら..
いつか其のうち、
英気が養われ、
気が向いた時にでもの…
続編を期待していても
良いでしょうか!?w
その後が気になったので(^^)
ひとまず、今は執筆、
お疲れ様&有難う
ございました(__*)
何を書こうか色々と迷っての半年間でしたね
構想は、龍神の巫女とは別にもう一つあったんでよ
幕末タイムスリップものと言うやつが(笑
今回の小説は、ファンタジー&冒険で行こうと思っています
しかし難しいですね~
中々話が進みませんね~(涙
私に冒険ものはまだ早かったのかもしれません
が、試行錯誤をしながら頑張りたいと思います
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