キママ 2014-07-03 00:34:26 |
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▼プロローグ
未来はそう簡単に変わるものじゃない
元々決められた路線をただひたすらゴールに向かって走ってるだけの僕(俺)らが
変えることなんて出来ないんだ。
▼「任務だ、最後にしよう。」
軽快なリズムで食材を切る音、そしてこの香り――いつもの食卓図。
壁に掛けられた時計の秒針を刻む音がいつもより大きく聞こえるのはきっとこの部屋が静かすぎるからだろう。それもそのはず、まだ時計の針は早朝五時をさしておりバイトで疲れ果てた幼馴染みはもちろん他の団員さえも目を覚ましていない時刻だ。起きているとすれば、僕を含めたキッチンに立つ団長ことキドのみといったところだろうか。暫くソファーに身を預けいつもの雑誌を手にとって時間を潰す、ここでペラペラと話しかけてしまえば多分…いや十割中十割の確率で即飯抜きになってしまうだろう。そうとなれば色々厄介な事にならざる得ないぞ、ゾクッと身震いしている間に料理が出来たようだ。
キド▼「カノだけでも食っておけ、今日は任務があるだろ?…と、セトも準備させなくちゃな」
そういえば任務だって事をすっかり忘れていた、今日はセトと二人でたしかアジトからデパート側に向けて見廻りだった気がする。正直いってこんな任務一人でもへっちゃらだったがどうもやたら心配性な彼女には二人つけないと気が気で無いらしく、結局は僕とセトで行くことになり漸く納得した様だがセトもバイトで疲れている、休ませてあげるのが良いんじゃないのか。
カノ▼「あ~。その件なんだけど、僕一人で言ってもいい?…実は、皆には見せられない物買いたくて…。」
名演技ともいえるこの含み笑いに初めは怪訝そうな顔つきで此方を凝視していた彼女さえも徐々に内容を理解してきたのか一気に頬を赤らめ、僕の鳩尾に渾身の一撃を決めてきた。
キド▼「か…っ、勝手にしろ!!」
御免ねキド、でも誤解はしないで。僕は変態じゃない。なんて心の叫びも彼女には届くはずもなく唯々鳩尾を抑え踞る僕を置いて部屋から出ていってしまった。今思えばなんで嘘を付いたんだろうとか考えてる暇もなく使っていた能力を戻すと溜め息一つ着き、フードを被り直した。
▼××
カノ「たっだいまー、キド。ね、キド?」
キド▼「なんだ、喧しい。どうだ?異常は無かったか?」
カノ「ははは、そんな事よりキドに見せたいものがありまーす!」
キド▼「見せたいもの?…後でじゃダメか?」
カノ「うん、出来るだけ早く見てもらいたいな」
▼「任務だ、最後にしよう。」-後半
にしても暑い。地球温暖化がどーちゃらこーちゃらとテレビで流れていたな、まあどうでも良いのだが。歩き続けて早10分もう熱中症気味の己の体力の無さには呆れたものだ、こういうときにセトがいればなんとか乗りきれたかもしれない。今頃なんでセトを連れてこなかったんだろう、やなんで僕一人で嘘までついて頑張ってるんだろうなんて思い始めてきた中今にも倒れてしまいそうな己の貧弱な身体もピークがお迎えにきそうな勢いだ。ある意味危ないと危険を察知するとたまたま近くにあったコンビニに足を踏み入れる。その直後身体全体に訪れるこの爽快感、なんて涼しいんだろうか意味もなく立ち寄ったコンビニで思いがけぬ幸福感に感謝、てか土下座したい勢いだ。危ない危ない、任務中だった。小さく咳払いすると何となくアイスなんて買ってみる、まあこのくらいならバチは当たらない…筈。名残惜しさもあったが店内から出て再び地獄へ逆戻り、早く見廻りなんて済ませてアジトへ帰ろう。そしてちゃんとキドにお詫びして、許しを乞おう。そしたら少しは笑ってくれたりするのかな、…。
▼「君へ届けたい。」
ようやく行ったか、扉の閉まる音を合図に部屋から出る。全く彼奴の言うことには毎度毎度理解に欠けるな、さっきの言葉だって嘘か本当か生憎検討も付かない。綺麗にたいらげられた一人分の食器を運びながら溜め息を吐く、今日一日分の体力が失われた気がするな…帰ったらもう一発拳を食らわせてやろうなんて思考を練りながら着々洗い物を済ませていると眠そうに目を擦りながら部屋から出てきたのはもう一人の幼馴染み瀬戸だった。
セト▼「御早うキド…ってあれ、カノまだ寝てるっすか?」
キド▼「いや、あいつなら諸事情により一人で任務行ったぞ。…だからお前はゆっくり休め。」
目の下に出来ている隅、相当頑張ってくれてるのは俺だって勿論マリー、カノだって分かってる。嗚呼あの馬鹿、まさかこれを思って一人で出掛けたのか?全く人の事しか考えてない奴め、帰ったら…まあジュース一本くらいはあげてやるか。とにかく今にも眠りそうなセトの身体を起こして部屋へ送りつけた後いつも通り家事でも済ませよう。
キド▼「ほら、そんな所で寝てないで自分の部屋で寝ろ。セト」
腰に手を当て溜め息を洩らすと目の前の人物にそう呼び掛けた。
▼××
丁度昼くらいだっただろうか、あの能天気な声と共にドアが開いた。
カノ「たっだいまー、キド。ね、キド?」
必要以上に己を呼ぶその声に苛つきながらも声の主の方向へ向きかえる。ああきっと任務でなんかあったのだろうか、洗濯物を畳みながらではあるが耳を傾けるとそれに答えるように口を開いた。
キド▼「なんだ、喧しい。どうだ?異常は無かったか?」
カノ「ははは、そんな事よりキドに見せたいものがありまーす!」
あ?折角話を振ってやったというのに無視とは上等だ、もう一度鳩尾へ会心の一撃を食らわせてやろうとも考えるが時間の無駄だと言うことは言うまでもない。ここは温厚に温厚に、少し優しめな声色で述べよう。
キド▼「見せたいもの?…後でじゃダメか?」
カノ「うん、出来るだけ早く見てもらいたいな」
なにをそんな急かしているのか、作り物のような笑みを浮かべて玄関を指差すその方向へ向かった時ーー「目」を疑った。
キド▼「…な、…っ…嘘…だろ…。」
カノ「嘘じゃない本当、本当ー!」
だって、玄関で血だけで倒れているのは…
キド▼「……カノ…?」
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