主 2014-06-26 19:33:36 |
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俺はノエル・エイ……(相手の名前を頭の中で繰り返し呟いて同じように己も答えようとし口籠ってしまい。苗字を名乗るという事は王族であると明かすようなものであるし、仮に相手が知らなかったとしても軽々しく教えるべきだろうかと悩み。しかし直感で、相手になら教えてもいい気がして「ノエル・エインズワース。先日この国に攻め入られ滅んだ国の、次期国王です」と妙にあらたまった口調で名乗り)
…え…?
(相手の言葉が信じられなくて、思わず自分の耳を疑った。そう言えば自国の兵士達が隣国の戦争に勝っただの国王の首を獲ったなど騒いでいたが、王子を取り逃がしたと言うのも聞いていた。その時は戦争だなんて馬鹿馬鹿しいと何処か他人事のように思っていたが、まさか彼が逃げ延びた王子だったとは考えもしなかった。という事は、ここは彼にとって父を殺した憎き敵地という事になる。何をどう言えば良いのか分からず、戸惑ったように瞳を揺らして)
…だから、密告した方がいい(横たわっていたままでは説得力に欠けるだろうと無理矢理体を起こして、ベッドに片手をつきながら再び繰り返し。「一回逃げ出せたんだ、次だって逃げてやるさ」安心させるためと本気でそう確信しているからという半々の理由により、強気な口調で並べ立てて。しかしもしも問答無用でその場で殺される事になれば、脱走云々以前の問題だ。どうしたものかと小さな溜息をこぼし)
…嫌です
(真っ直ぐ相手の瞳を見据えると、キッパリと言い切る。「一回目に逃げた時だって怪我をしたり倒れたのに…二回目なんて…そんな無茶はさせられません」一回目は怪我を負いながらも何とか生きれたようだが、だからと言って二回目も生きられるとは思えない。強気な口調の相手に負けない程厳しい口調で捲し立てては「それに、例え何とか逃げ延びたとしても今後の生活はどうするんですか?」と表情を険しくさせて)
じゃあ密告なんて面倒な事しなくていいから、もう俺に関わるな(己の身と引き換えに得られる金で恩返し、というのが納得いかないのならば何で礼をすれば良いのだろう。しかしこれ以上の干渉をあらかじめ禁じるのが先決だろうと思い直せば、鋭い眼差しで見据え返して。ここ数日で一気に色々な事がありすぎて忘れていたが、今の己には帰る場所も親も何もかも残されていないのだと思い知らされ、目を僅かに見開いて沈黙し、膝を抱えて顔をうずめ)
…どうしても此処を出て行くつもり何ですか?
(鋭い視線に一瞬身を強ばらせるも、負けじと相手の瞳を見つめ返しては確認するように問い。「…今は私の事より自分の事を考えて下さい。それにこれ以上身体に傷を増やしたり倒れられたら私が治療した意味が無いですし包帯の無駄になるので、此処から出て行って怪我したり死なれる方がよっぽど迷惑です!」相手にはこれくらい言わないと、と先程より辛辣な言葉をつらつらと並べて)
……俺にどうしろって言うんだよ(目覚めてからの会話だけでも相手が愚かなまでに優しいという事はよく分かった。逃亡中の敵国捕虜を保護したと知られれば相手の命だって奪われかねない。顔をうずめたまま声を絞り出して、「包帯なんて金があればまた新しいのが買えるだろ!でもお前の命は死んだらそれっきりじゃねぇか…!」と滲む涙に肩を震わせ嗚咽漏らして)
…貴方はあんな格好をしてまで何故逃げて来たんですか?誰かに逃がされたんじゃないですか?…だとしたら、折角助かった命を無下にしないで下さい!貴方を助けたいと思った方の想いを踏みにじる気ですか!?
(王族相手にこんな説教をする者も居ないだろう、普通はこんな無礼を働く者など居ないだろう。けれど自分を犠牲にしてまで私を助けようとする彼に唇を噛むと、声を荒らげて上記を叫ぶように告げる。「そんなのは貴方も同じでしょう!?死んだらそれで終わり、もう元には戻らない!それが分からないんですか!?」ついさっきまで冷静だった筈が段々昂る感情を制御出来ず、自分でも何故こんなにも必死なのか分からず心の奥底では自分自身に戸惑っている。けれどそんな事がどうでもよくなってくる程必死で、嗚咽を漏らす相手に眉を寄せると「…もっと自分を大切にして下さい。折角助かった大切な命でしょう…!」包み込むように優しく抱き締める。苦しそうな声で発した言葉は、自分にも当てはまるものがあったためかよけいに感情が籠っており)
それは…っ(相手の指摘を受けながら脳裏に浮かんでくるのは今は亡き父親の面影。先程知り合ったばかりである目の前の少女に言われて初めて、己のしようとしていた事の愚かさを思い知らされ閉口してしまい。「……わかってる」小さく呟いて何かに耐えるように顔を歪めては、優しく包み込まれるような久々の誰かの温もりに張り詰めていた何かがぷつりと切れたようで、「っ…ごめん、なさい…!!」と素直に謝りながら音もなく涙を流し。次々に溢れ出る涙をおずおずと片手で拭いながら、何度も何度もしゃくりあげながら謝って)
ノエルさん、貴方を助けた方は貴方が生きてくれる事を望んでいる筈です。その意志を無駄にしてはならない、継がなければいけません。…貴方の身の安全は私が保障します、例え追っ手が来ても必ず守ります。だから、此処で暮らしませんか?…一緒に生きましょう
(閉口する相手が誰を思い浮かべているかは大体想像が付き、同時にその人物は大切な存在であり彼を助けたのもその人だろうと頭の片隅で思考を巡らせる。そんな自分は己の両親を思い出していた。目の前で殺されてしまった父も病でこの世を去った母も、己に「生きて」と言葉を残して息を引き取って逝った。その想いを継ぐためだけに今日まで生きてきた。そんな自分と彼を無意識に重ねていると、耳に飛び込んできた謝罪の言葉と服が濡れる感触に目を見開き。それでも何も言わずただ彼を抱き締め軽く頭を撫でて)
…それは駄目だ(相手の提案を聞きながら頭を撫でられているうちに情けなくなり、今更ではあるが羞恥が沸き起こってきたためそっと体を離し呟いて。住む場所を提供してもらう上に守ってもらうなど男としてどうかと思ってしまう。外見の割にしっかり自立している事からも分かるように、おそらく相手は一人きりになってもうかなり経つのだろう。今までずっと一人で頑張ってきた相手をこれ以上頑張らせたくはない。目尻に溜まっていた涙を指先で払ってからしっかりと目を合わせ、「巻き込んだのは俺だ。俺がクレアを守る」と力強く言い切って)
えっ…
(動揺したように瞳が揺らぎ身体が強張らせ、まさか拒否するとは思っていなかったため驚いたように目を見開く。また密告しろ何て言ってくるのだろうか、もしそんな事を言われたら今度は何を言えばいいのだろう。困ったように眉を寄せていると相手が離れ、此方は背中に置いていた手を退ける。相手を留めるにはどうすれば良いのかと思考を働かせていると不意に彼の力強い声が耳に入り「…でも、私は…」守ろうと思っていたのが守られる側になってしまい、少々戸惑ったように目を泳がせて)
お前ずっと一人で生きてきたんだろう(反論する間も与えず声を被せては詳しくは知らない相手の過去に想いを馳せて目を伏せて。ただでさえ今までずっと気を張っていなければならない状態であったのに、己という荷物を背負いこめば相手はますます弱みを見せないよう気丈に振る舞うだろう。「もう頑張らなくていい。俺が傍で支える」人前で泣いてしまったら吹っ切れたのか、普段ならばプライドが邪魔をして言えないような言葉が素直に口をついて出てきて)
……
(何故分かったんだろうという疑問があったがそれは声に出さず無言で頷く。忘れもしない…父が死に母が死んでいき、ありふれた日常が終わりを告げた悪夢のような日々を…今でもハッキリ覚えている。孤独で辛くて苦しくて、何度も死にたいと思った。それでも生きたのは両親が最後に言った言葉を、意志を継ぐためだった。「…いいの…?もう泣いてもいいの…?弱音を吐いてもいいの…?もう一人じゃない…?」自然と震える声と歪む視界で彼に問う。いつの間にか敬語は取れていて、今にも泣きそうな表情で相手を振り返り)
お前やけにしっかりしてるからさ…それに俺を匿うなんて、普通できねぇし(沈黙に耐えられず視線を相手から逸らしながらぽつりぽつりと説明して。震える声に驚きふと相手を見やれば今にも泣き出しそうな顔で己に問いかけていて。城に居た頃は教育係は居ても同年代の友達などおらず、ましてや女の子の涙なんて見る機会も無かったため、自分自身は先程まで散々泣いていたくせに相手が泣きそうになった途端焦ってしまい。とりあえず怪我をしていない方の肩に相手の頭を押し付けるように片手で抱き寄せて、「泣かれるのはちょっと困るけど……、お前が泣きたいのなら別に泣いたっていい」と心の内をそのまま伝えて)
しっかりしてる…?そうですか?
(自分はドジだと思っていたために相手の発言は意外なもので、少々目を丸くして。泣かれるのはちょっと困る、と言われ涙を引っ込めようとするが収まらず寧ろ幾筋も頬を伝い落ちていく。やがて子供のように声を出して泣き出して)
(辛い過去を思い出させ本格的に泣かせてしまった事を後悔する反面、先程の己はずっと我慢していた涙を流す事により気持ちの整理をつけられたのだから、同じく相手もそうした方が良いのだろうと思い直して。「気が張ってたんだろ」あえて問いかけには答えず己がしてもらったように黙って相手の頭を撫で続け)
(何度も嗚咽を漏らしながら涙を零す。両親が無くなった時以来泣いた事などなく、もう涙などとうに枯れてしまったのだろうと思っていた。しかし実際は今まで無意識に感情を麻痺させていたのかもしれない。そうして悲しみという感情を忘れようとしていたのかもしれない。けれどそれは彼の言葉によって自然と消え去り、まるで押さえ込んでいたものが溢れ出るように何度も頬を濡らしていき)
……なあ、クレア(あやすように頭を撫で続けているうちに己の覚悟も固まってきたため、励まし勇気づけるように声をかけて。会ったばかりの人間と暮らすなど相手は不安ではないのだろうかという点が気にかかるものの、それと同時にそばにいた方が恩返しになり得るという事も分かっていて。「お前が本当に俺と暮らしてもいいって言うんなら、俺にできる事は何だってするから」少しでも未来への希望を抱いてほしい、そんな願いから静かに言葉を紡いで)
…!…そうですね、仕事を手伝ってもらえると嬉しいです
(濡れた瞳を見開き少々驚いたように相手を見上げる。静かな彼の声で発せられた言葉は己にとって嬉しいもので、上記の台詞は彼との同居を肯定するものであり同時に自分の仕事を手伝ってほしいと述べる。その表情は安心感や嬉しさの交じった笑みを浮かべており)
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