リン 2014-06-10 19:04:42 |
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【疑問に思った事】
とある炎天下の中、オレは冷房が効いているアジトに居る。
今日という今日こそ、オレをヒキニートと言う奴を懲らしめるため。
今日はモモは仕事、ヒビヤは学校の為メカクシ団二名が居ないが、アイツらはオレをニートと呼ぼうが別に問題はない。
アジトにはオレを含めて七人いる。
キド、セト、カノ、マリー、エネ、オレ、コノハの七人が各自好きなことをしている。
キドはソファに腰掛け、カノはキドの隣で雑誌を読んでいる。
オレはスマホを充電させ電源を切っている。
この際エネは関係がない。
そろそろ本題を言おうか。
オレは立ち上がり、アジト全体に聞こえるように言い放つ。
「お前等人の事ニートニート言ってる割には、モモとセトとヒビヤ以外まともに仕事してねーだろ!!?」
いきなり叫びだしたオレに驚いてマリーはびくりと肩を揺らす。
この際可愛いからマリーは除外……じゃなくて。
キドは「何が言いたいんだ?」と言う目を向けてきたが、カノのニヤニヤした表情のせいで腹が立ってくる。
「わっ、私もお仕事してるもん!」
マリーが頬を膨らましながら言ってくる、可愛い…。
「内職だっけ?モモから聞いた。マリーは関係ねぇよ」
と言いオレは物事の主犯カノを睨みつける。
カノは笑いながら「やだな~」とか言っているが、この際関係がない。
今日という今日こそこのカノの口から「すみませんでした」と言わせてやる。
「シンタローさんいきなりどうしたんすか?」
とセトが尋ねてくるが、セトは仕事をしているためニートと呼ぼうが何ともないが、どうしたもこうしたもない。
「お前等、特にキドとカノ。ろくに学校も行ってないし仕事もしてないのに、人をニートニート連呼するな。特にカノ」
オレはカノってとこだけを強調させていう。
コノハは初めから何も言わないので除外だ。
ろくに学校も行っていないカノとキドに、ニートと言われる辛さは他のみんなは分かるのだろうか?
「あ、そんなこと気にしてたのシンタロー君。ゴメンゴメン」
明らかに背後から「(笑)」と言うマークが出ているであろう。
コイツはうざいの天才なのか?
「カノ失礼っすよ」
セトが言ってくれた言葉の意味は考えていけば辛いだけな気がする。
「……ニートって何?」
コノハの第一声がこれだ。
なんと説明しようかと悩んでるとカノが口を開く。
「ニートっていうのは、学校も仕事もしてないシンタロー君のことだよ。コノハ君」
コノハはだいぶ間を開けてから首を傾げて「でも、カノも何もしてないよ…?」と言われる。
ざまぁみろ。
それにしてもコノハはなんて良い子なんだ。
限度はあるが飯を奢ろう。
「んー?それはコノハ君もキドも一緒じゃないの?」
対するカノは何も喋ってないキドを巻き込んだことで、すごい形相でキドに睨まれている。
「…って言うわけでもないかも、うん」
さすがの団長には叶わないのか、冷や汗をかきながら上記を笑いながら「コノハ君だって何もしてないじゃん」と言う。
「僕?…僕はお手伝いしてる」
「何の?」
「セトのバイトのお手伝い」
コノハ偉い!
俺は内心そう叫んでコノハに拍手をしている。
カノはセトに確かめるような視線を送る。
セトはそれに気づき「あ、コノハさんの言ってることは本当っす!」と笑顔を向ける。
カノは「うっ…」と言葉を詰まらせて「僕だってキドの料理の手伝いしてるもん!!」と言うが、その場に居た全員(エネを除く)に「してない」と否定された。
さすがのカノも堪えたのか、床に倒れ込むようになり、小さく自分はニートではないと否定している。
「うぅ…僕はニートじゃない…」
「受け入れろよ。これが運命(さだめ)だ」
「ちょっと止めてよ!コノハ君!!」
カノには後でたっぷりと謝罪してもらおうか。
俺はコノハとカノのやり取りを見て、フッと笑う。
【疑問に思った事】END
【弱音】
今日はいつもより早く起きたから、ソファでくつろいでいる。
今は朝の六時でそろそろキドも起きてくる時間なんだけど、全く起きてくる気配がない。
いつもなら僕が起きるのが早いと「今日は猫が降るのか」なんて言うけど、今日はどれだけ待っても起きてこない。
そんな日もあるだろうと思って雑誌やゲームで時間を潰すが、何分経っても起きてこなくてさすがにイライラしはじめる。
5分10分ならまだしも、40分も起きてこないと空腹なのもあって悪くないキドにイライラする。
早く起きてくれないかと待っていると、ガチャリとドアが開いてやっとキドが起きてくる。
「あ、キドおはよー」
僕は欺きながら挨拶をすると、いつものジャージ姿のキドに頷かれるだけだった。
「…カノ、飯なら今から作るからちょっと待ってろ……」
明らかに辛そうにしているのは僕にだって理解した。
最初は暑さでかなっと思っていた汗は、なんだか少し違う感じがしてキドの様子を眺める。
「キド何か隠してない?」
不意に出た言葉に僕自身もついていけず、沈黙が訪れる。
沈黙を破ったのはキドだった。
「朝から少し体が重くてな。何、心配するな」
その言葉は僕が言えた事じゃないけど、嘘を吐いていた。
キドの額に手を当てても、熱はなくてただ汗が出ているだけだった。
「な、何するんだ!お前は!?」
「ぐっは!!」
キドは顔を赤くさせながら僕のわき腹を殴る。
いつもの事だけど今日のは痛くない気がする。
力が入っていないようなそんな感じ。
でもそれを言ったらきっとまた殴られるので、何も言わずわき腹をさする。
「痛いなぁ…」
いつもより痛くないけどあえて大げさに痛いと言っておく。
「フン、お前がいらん事をするから…だ………」
キドは僕にそう言いながら僕の方に倒れてくる。
脂汗も酷く、息づかいも荒くて良い状態とは言えなくて、僕はキドを担いでソファに横にさせる。
キドは相変わらず息づかいを荒くして、辛そうにしている。
「キド…?ねぇ、キド?」
話しかけてみてもキドは辛そうにしているだけで、僕はどうしたら良いのか分からず一人で焦っている。
「ねぇキド…」
僕はグルグルと色々な思考が巡り、どうしようかとキドを何度も不安で見て、キドの蒼白な顔色に恐怖になり、バイトが休みなセトの部屋のドアを激しくノックする。
「セト!起きて!キドが、キドがぁ!!!」
どれだけ叩いても起きる様子はなく、僕はその場に座り込む。
キドは今にも苦しそうにしていている。
「ん…っ、はぁ…」
お腹を押さえて苦しそうに息を荒くしている。
どうしたらいいのか全く分からず、僕はキド名前だけを呼びながらキドの元に行く。
「キド、ねぇキド?」
僕がキドの目の前に来た頃、キドがうっすら目を開ける。
「キド!!?」
「何だ、そんな顔をして」
強がっているのか、キドはいつもの表情を作って僕に言う。
「何だ、じゃないよ!そんな辛そうにして!!何かあったら僕どうしたら…!」
僕が焦っているとキドはフッと笑って「いつもの事だ」と言った。
何がいつもの事だ、こんなに辛そうに…いつもの事?
いつもこんなに辛そうにする事なんて、キドにはないはず…。
僕は考えるより口が先に開いた。
「いつもの事って何が?」
僕の問いにキドは頬を染めて小さく「生理痛だ」と言った。
僕は何も言えず、その場に立ち尽くして欺くのも忘れている。
「お前欺けてないぞ」
僕はどんな表情をしていたのだろうか、すぐに欺いていつもの様に笑う。
「いやーキドも大変だねー!」
口から出てくる言葉は嘘ばっかり。
本当は違うことを言いたかったはずなのに、僕は何でこんな時でも嘘しかつけないんだろう。
「カノ、嘘を吐くな」
キドはいつもとは違って僕の頬を引っ張って、僕の能力が解かれる。
「今のお前は欺いても意味がない」
キドは僕の頬を離してフッと笑い、キッチンに立って朝食を作り始めた。
「動いて大丈夫なの?」
僕はキドに尋ねながら後ろについて行って、様子を伺っていたけど「邪魔だ」とキドに言われ、虚しくソファに戻る。
「キド、大丈夫なの?」
僕は不安になりながらキドに尋ねた。
キドは「大丈夫だ」と言っていつもの朝食をスムーズに作っていて、良い匂いが次第に部屋中に広がっていく。
「先に二人で食べるか?」
キドが振り返りながら僕に尋ねてきて一瞬ドキリとするけど、すぐに我に返り「そうだね。誰も起きてこないし」と笑いながら言うと、後少しで出来るようで暫く待っているとキドが声をかけてきた。
ソファで待っているとキドが朝食を作り終えて、テーブルに運んでくる。
「今日は材料がなかったから、これぐらいしか作れなかった」
キドはお箸とお皿を持っていて、お皿には野菜炒めが入っていて、お皿とお箸をテーブルに置いて、またキッキチンに戻ってお茶碗とお椀を持ってくる。
「今日のお味噌汁は豆腐なんだね~」
いつもお味噌汁の具は色とりどりで、今日は豆腐。
「悪いな、これぐらいしか作れなくて…」
申し訳なさそうに言うキドに対して僕は、ニコニコと笑顔で言う。
「大丈夫だよ!材料もなかったんし、ね?」
「だが…」
「良いって!それより早く食べよう!!」
どうしてだろう。
僕は違うことを言いたかったはずなのに、【嘘】しか言えなかった。
僕とキドは二人で朝食を食べて、二人で野菜炒めを完食して僕がお皿を洗っている時だった。
「…っ、痛い…!」
水を使っているからキドが何か言ったのは聞こえたけど、具体的には聞こえなかったのでいったん水を止めて、後ろに振り返り「どうしたの?」と尋ねると、キドはお腹を抱えてソファの上で苦しそうに横になっている。
「キド!?」
僕はキドに駆け寄って体をゆする。
キドは脂汗をかきながら「大丈夫だ」と言うけど、やっぱり僕は不安でキドの体を余計に揺する。
「カノ…揺するな頭に響く…」
頭を押さえながらキドが苦しそうに言って、顔を歪める。
「あ!ゴメン…」
揺するのを止めてどうしたら良いのか分からなくて、暫くあたふたしてるとキドが温かいお茶が飲みたいと言ったので、キッチンに急いでお茶を探すけど温かいお茶は無くて、冷蔵庫を開けてコップにお茶を入れて電子レンジでお茶を温める。
チンッ、と音がしてコップを電子レンジから取り出しキドに渡す。
「電子レンジで温めたよ」
「あぁ、ありがとう」
キドは起きあがってお茶をゆっくり飲んで、半分ぐらい飲んでコップをテーブルに置いて、ソファに横になる。
「キド大丈夫?」
僕はキドの近くに腰を下ろして、キドに尋ねる。
「大丈夫だ」
キドは横になりながらそう言うけど、僕には大丈夫には見えず、僕はキドに自分のパーカーをキドにかけて小さく呟いた。
「辛いなら、弱音ぐらい吐いたら良いのに……」
キドには聞こえないように言ったつもりだけど、キドには聞こえていたようで顔を真っ赤にさせている。
「う、うるさい!俺が弱音を吐いてどうするんだ!!」
ただの強がりに、僕は唇に吸い込まれるようにキスをしてしまった。
殴られると思っているとキドは、意外そうに僕を見つめて「俺が今にも死にそうな目でみるな」と言われ、僕の表情がキドが言う通りの表情をしていると理解する。
「僕そんな顔してた?」
ニコニコしながら尋ねるとキドはクールに笑い「あぁ、不安に詰まったな」と言って僕の頭を撫でる。
暫く頭を撫でられていて暫く経って、落ち着いて僕がキドの頭を撫でる。
「こんな時は僕がキドの頭を撫でる番でしょ?」
キドは生理痛で弱っていて僕を殴ってこない。
僕はキドを撫でながら「たまには弱音を吐いても良いんだよ」と言ってキドの体調が良くなるまで、傍にいた。
【弱音】END
【好きの果てに見える寂しさ】
好きな人に恋人が居ると知った時の気持ちは誰が理解してくれるだろう。
きっと同じ想いをした人にしか解らないのかもしれない。
僕のこの気持ちもきっとそうなんだ。
僕に好きな人が居て、その好きな人には当然の様に好きな人が居る。
これは僕に対する欺き続けてる罰なのだろうか。
★★★
「シンタロー君」
僕は何気なくを装ってソファに座っているシンタロー君、僕の好きな人に笑いながら声をかける。
シンタロー君はスマホの中に住んでいるエネと言う人物(僕はエネちゃんと呼んでいる)と話をしている最中だった。
「カノか、どうした?」
シンタロー君は僕に視線を向けていつも通りに返事をする。
僕はその返事を何度も聞いて思うことがある。
エネちゃんと接する時と返事が違う、と。
僕はシンタロー君の隣に腰を下ろして、欺きながらいつもの様に世間話を持ちかける。
「そう言えば最近事件とか多いよね~」
シンタロー君は興味など示さないで僕のセリフにただ「あぁ」と答えて会話終了。
★★★
次の日、エネちゃんと話しているシンタロー君を雑誌を読みながら、時々何度も見つめている。
『だからご主人!!日焼け止め買いましょうよ!!』
「いらねぇよ!!!」
今は真夏という訳ではないけど、日差しが強いから日焼け止めは買っていたほうが良いと僕は心の中で返事をしている。
雑誌を読み終えてシンタロー君に話し掛けてみる。
「シンタロー君って引きこもってたからそんなに肌白いの?」
僕の質問の返答は「部屋に居たら紫外線も浴びないからな」とツッコミも何もくれず、ただ正論を言われる。
僕になにか不満があるのだろうか。
それとも――
それとも、僕なんかよりエネちゃんと話しているほうが楽しいのだろうか。
シンタロー君にとって僕はただのメカクシ団のメンバーという存在なのだろうか。
★★★
今日はエネちゃんはキサラギちゃんの携帯の中に居るらしい。
ヒビヤ君から聞いたことだけど、キサラギちゃんとマリーとセトとエネちゃんとキドで買い物に行ってるらしい。
今アジトには僕と、ヒビヤ君とシンタロー君しか居なくて各自好きな事をしている。
僕はヒビヤ君とおしゃべりをしてキド達の帰りを待っていると、ヒビヤ君は用事があるとのことでどこかに行ってしまった。
アジトには僕とシンタロー君のたったの二名。
「シンタロー君」
いつも通りに話しかけて僕は何がしたいんだろう。
僕の中にはいつもシンタロー君が居て、シンタロー君の中にはいつもエネちゃんが居る。
シンタロー君にとって僕は必要がない。
僕なんてただ欺いて笑っているだけの気持ち悪い化け物でしかない。
いつからシンタロー君を好きになったんだろう。
どうしてシンタロー君なんだろう。
時間的にはキドやセトの方が付き合いが長いのに、どうしてシンタロー君を好きになったんだろう。
姉ちゃんと一緒に居たから?
姉ちゃんが勉強を教えてもらっているから?
姉ちゃんがシンタロー君の事を好きだったから?
「…ノ、…カ、…ノ、カノ」
いつの間にか名前を呼ばれていて、僕はびくりと肩を揺らして欺いて「何かな?」とおちゃらけて返事をする。
「何欺いてんだ」
シンタロー君は僕の額をデコピンして能力を解かす。
あぁ、そうなんだ。
僕が君を好きなのは――
「痛いよ~」
「っで、オレを呼んでどうしたんだよ?」
「んー?何でもない」
ニコニコと笑っているとまたデコピンをされそうだったので、額を必死にガードすると腰を揉まれてこしょばされる。
「ちょっ!止めて!!そここしょばいから止めて!!」
涙目になりながらシンタロー君に訴えるも止めてくれず、僕はされるがままになって暫くは呼吸もまともにできなくなっていた。
★★★
最近はシンタロー君と話すのが少ない。
シンタロー君はやっぱりエネちゃんと話してて、僕が話しかけてはいけないようなオーラを出している。
シンタロー君――
君は驚くかもしれないけど――
僕は君の事が――
「大嫌い」
シンタロー君の驚いた顔、エネちゃんのありえないものを見るような顔、僕は今どんな表情をしているんだろう。
気が付けば、僕はシンタロー君の首に手を伸ばしてその手の力を込めた。
僕が君の事を好きなのは、
僕の性格を理解した上で、話をしてくれるからなんだ。
驚くかもしれないけどシンタロー君、僕は君の事が――
「――大好きだよ」
【好きの果てに見える寂しさ】END
【幻があったから】
夢の中に誰かが立っている。
誰だろう。
ぼんやりと見える誰かはゆっくりこっちに歩いていきて、僕の目の前に来たと思えばいつもそこで目が覚める。
「…おはよう」
僕はアジトに居る皆に挨拶をしてどうやらソファで寝ていたようで、ソファから起き上がりアジトを見渡す。
アジトにはカノ、シンタロー、セトがアジトに居て他の皆はどこかに出かけているのだと思う。
僕は夢で見た人物を捜しに行こうと思ってアジトから出て、公園や商店街など様々なところに足を運ぶ。
けれど夢で見た人物は見つからなくて、晩御飯の時間にアジトに戻る。
★★★
そんな事をずっと繰り返しているある日の事。
僕はまた夢を見た。
誰かが公園のイスに座っているところや、ねぎまを食べているところ。
商店街をブラブラと歩いているところ。
今日はやけにくっきり見えて歩いている人物の姿が良く分かる。
「んっ…」
夏でクーラーをつけていて寒さから目が覚めた。
僕はアジトを出て、公園や商店街に向かってみる。
夢で見た人物はどう見ても僕だった。
僕と同じ格好で同じ姿。
僕の髪の色を真っ黒にした人物が夢の中でねぎまを食べたり、商店街を歩いたりしてた。
目的の場所に着いても目当ての人物がおらず、しょんぼりとしてアジトに向かっていると、見知った人物が僕の横を通り過ぎていく。
紛れも無い夢で見た人物で僕はその人物の後を追いかける。
「…ね、ねぇ…」
無我夢中で目の前の人物に話しかけて僕は真っ黒な自分の隣に並ぶ。
目の前の人物は僕を見た途端に目の色を変えて、「お前!やっと見つけた…」と言って僕の肩を掴む。
僕はどうしたら良いのか分からなく首をかしげるも、目の前の人物が「夢でお前を見たから捜してた」と僕と同じ理由を言って、僕の肩をポンポンと叩いて「俺はクロハ、お前は?」と自己紹介を始めたので、僕も「コノハ…」とだけ返す。
クロハと名乗った人物と僕は初めて話をした。
【幻があったから】END
【なりすましゲンガー】
俺は影だ。
いつもこうやって後ろ指を指されて笑われる。
どうせあっちもこっちも、二進も三進もお前の影に隠れたままなんだ。
★★★
「あばさん、この席どうぞ」
快速電車の電車の中、俺の目の前に座るコノハが年寄りに席を譲る。
俺は籍から動かず座ったまま。
「あら、どうも助かりました」
年寄りはフフフと笑い、コノハが譲った席に腰を掛ける。
コノハは近くでタ戸ながら窓の外を見ている。
俺はその光景を見て見ぬ振りをする。
★★★
「最近の若者達は――」
なんてよく耳にするが、何を隠そう俺がその際たる例だ。
実は俺にだって怖いものはある。
人の心の奥底なんて怖くて知りたくもない。
きっと俺は誰の目にも映っていなく、そこには存在しない。
存在するのはコノハで俺じゃない。
だから俺はコノハの影だ。
いつもそうやって後ろ指を指されて笑われて、そんな行ったり来たりの人生で、日の光を浴びないせいでコノハの影を何度も影踏みをしてるんだ。
実は寂しがり屋の口癖が「アイツみたいにはなれない」ほらな、俺とコノハの距離が開いてしまって追いつけないんだ。
★★★
独りぼっちで誰も周りに居なくて、孤独な夜を何度も明かして、部屋の隅にポツンと咲く花に勇気を貰っていた。
トントンと部屋のドアがノックされてドアが開く。
部屋に入ってきたのはコノハで「話があるの」と言われる。
「クロハ最近、僕のこと避けてる?」
――君の心の中覗いて 忘れ物を見つけました。
俺は何も言えず、ただ黙っているとコノハは俺の膝の上に座って「クロハ」と俺を呼び、首に腕を回して俺の唇にキスを落とす。
その瞬間に頬が赤く染まって、目を逸らす。
そして逸らした目を向かせるように顎を掴まれて、コノハの方に向かせられてまたキスをされる。
今度は舌をねじ込まれて口内を好きなようにされる。
「んっ…ゃ、ぁ!」
喉の奥から聞いたことの無い声が聞こえて、息も辛くなる。
コノハの肩を叩いて口を離してもらう。
「クロハ…顔真っ赤」
そう言われて顔が熱いのに気がつく。
あぁ、そうか。
俺は――
「喜怒哀楽が足りない不完全な存在だよ」
とコノハが耳元でささやく。
★★★
明日また太陽が昇って、陰と陽の日陰と日向の境界二つの境目に、やっぱり逃げ続けるだけの人生なんだ。
なりすました影がこうやってコノハの影にずっと隠れて、いつかコノハに照らされて、このまま消え失せれたらそれが良いな。
【なりすましゲンガー】END
【御伽噺】
【プロローグ】
闇の間―廊下にて―
王の宿命とは一体なんだろうか。
何故俺は王に仕えているのか。
その意味すらもう思い出せないで只、王の命令に従っている。
「おいクロハ。次の会議ではよろしく頼むぜ」
「はい。かしこまりました」
俺は一体何をしているのだろうか。
俺は王に仕える意味があるのだろうか。
そんな事を思いながら次の会議とやらに出るために、準備をする。
王はほとんどの事を俺に任せて会議とやらには顔すら出さない。
――俺は一体、何をしているんだろうか――
会議というのも面倒な事だ。
どうでもいい事を聞いて何になる。
本来なら断っているが王の命令の為、逆らえない。
俺は会議を終えて廊下を歩き自室に戻ろうとすると、誰かに名を呼ばれ後ろに振り返る。
後ろに居たのは真っ黒で巨大な蛇だ。
目が真っ赤で不気味な真っ黒な蛇だ。
不気味な蛇の周りには同じく不気味な空気が漂っている。
その蛇はまるで呼吸をするように俺に尋ねた。
「何をしているか知りたいか?」
考えている事が読まれたみたいで不快になるも無表情と無言でいれば蛇は、人が他人を馬鹿にするように舌をシュルルと出している。
不気味な蛇は舌を出しながら早く答えろと言わんばかりに目を更に赤く染める。
何も言えず、その蛇をじっと見ていると蛇は俺の方にだんだんと近付いてきてしまいに俺の目の前にいる。
俺と蛇の間には結構な距離があって分からなかったが、この蛇は俺の身長を越えた巨大な蛇だ。
俺や王を簡単に飲み込むだろう。
額から汗が流れ落ちて頬に伝い、冷たい廊下に真っ直ぐ一滴の汗が落ちていく。
「何故、王に仕えているのか知りたいか?」
蛇の息が顔にかかるぐらいの近さで、低い声で言われ俺は後ずさりをする。
関らない方が良い気がする。
俺は蛇を睨みながら通り過ぎて行こうとすると、蛇は通さないとばかりに巻いていた体を伸ばし始める。
やっぱり全身真っ黒な蛇だ。
「王に仕える者、貴様は私を知っている」
そう言いながら蛇は嘲笑するように俺の頬を舐める。
舐められたと理解すれば体は大きく震え、咄嗟に腰に差してあるサーベルを抜いて蛇に切りかかる。
サーベルの刃は蛇をすり抜けて何もない空間を切ったと同時に俺の意識は薄れていった。
闇の間―自室にて―
何が起きたのだろうか、気が付けば自室に居て、ベッドの上で横に寝転んでいて何が起きたのか全く分からない。
先ほど見た蛇は夢だったのだろうか?
夢なら気味が悪すぎる。
――ピピッ。
メッセージが届いているようだ。
俺はベッドから起き上がり、机にある黒い羽を突く。
黒い羽は真ん中で綺麗に真っ二つに割れて、上下に分かれる。
メッセージには王からで『廊下で倒れてたぞ』とだけ書かれていた。
俺は王に返信をしてメッセージパネルを閉じる。
「貴様は私を知っている」
自室全体に声が響き、その声は俺が廊下で見た蛇の声だ。
【御伽噺】To be continued?
【心霊特集見た後になる事】※オリキャラ有り
「あっ…んっ、ヤダ…」
俺の下に居るのはシンタロー。
何でこうなったのかというと、俺がシンタローがホラーが苦手なのを知っていてわざと『真夏の心霊特集』を一緒に見たところから始まる。
二人で『真夏の心霊特集』を部屋を暗くして見ていると、やっぱり心霊系はカメラの端に映ったとかが多い。
けどシンタローはチラッと映っただけでも俺にしがみ付いてきて、テレビを見ないようにする。
「シンタロー大丈夫だから、俺が横に居るだろ…」
本日何回目かは忘れたが、同じことを言ってシンタローの背中に手を回して背中をさする。
ランキング順に映像を流すタイプなので今は第3位で、もうすぐ第1位にくる。
俺はテレビよりシンタローの反応の方が気になっていた。
丁度、第3位の映像が終って第2位の映像に変わった頃にシンタローが不思議な動きをした。
俺にずっとしがみついて、何かを我慢しているかの様な…。
「シンタロー」
気になって声をかけると、シンタローは頬を赤くして俺を見つめる。
そんな視線が可愛く見えたが、後で色々妄想などはしようと思いシンタローに躊躇いもなく尋ねる。
「トイレ行きたいの?」
俺が躊躇いもなく言った言葉にシンタローは顔を真っ赤にさせ、小さく頷いた。
第2位の映像も終ったと思われる頃には、シンタローは限界を超えているのか息遣いが荒くなり始めた。
さすがに放置するわけにもいかないし、かと言って俺は見るから一人で行って来いって言うのもアレなので、録画していたのを一度一時停止をしてシンタローをトイレまで連れて行った。
無事にトイレを済ませて、部屋に戻ってきて続きを見る。
第1位の映像はかなり恐怖もので俺でも一瞬身震いをした。
これがこの番組の最後の映像のようで、エンドロールが流れてきたので停止ボタンを押し、録画一覧まで戻って来て、『真夏の心霊特集』を削除する。
番組を削除してもシンタローは俺にしがみついたまま。
「シンタロー、消したからもう見ないから」
俺がどんだけ言っても意味ないのか、シンタローは首をフルフルと横に振って俺にしがみついてくる。
どんなだけ怖かったんだよ。というのを心の中で呟いて、シンタローを一人にさせたらどんな反応をするのか気になって、「俺トイレ行くから」と嘘を言って部屋から出ようとすると「俺も行く」とシンタローがついて来ようとするので、必死に止める。
「お前はさっき行っただろ!!」
「ほっとけ!!」
と反発してきたので、この作戦はなしにしようと思ってある事を思いつく。
このまま猛スピードで自分の部屋に入れば良いのではっと、思って猛スピードで自分の部屋に戻る。
所詮ヒキニートの力じゃ俺の早さにはついて来れないだろう。
ドアの鍵を閉めて、しばらくリビングの様子をドア越しに伺った。
少しやりすぎたかなと思ったが、後には引けないのでシンタローの反応を楽しもうと思う。
「え?なぁ…ちょっ、一人にするなよ…」
か細い不安の声が聞こえてきて、ニヤニヤとカノの様に笑いさらに聞き耳を立てる。
「なぁ、おい。レンヤ…!戻って来いよ…」
「レンヤ…早く…頼むから…ぁっ!」
聞きなれない声が聞こえて、俺は鍵を開けてシンタローの傍に駆け寄る。
シンタローはソファーの上で足を閉じて、ズボンをぎゅっと握っている。
「シンタロー!?どうした?何があった?」
俺が取り乱していると、シンタローは一言「トイレ行きたい」と告げた。
さっき行っただろと思いつつ、まぁ、ホラーが苦手なら仕方ないかと思いシンタローをトイレまで連れて行こうとすると、シンタローの顔が赤く染まる。
「どうした?」
顔を覗き込んで尋ねても、シンタローの顔は赤いままで顔色が変わることはない。
「取り合えず、立てるか?」
俺の質問にシンタローは首を横に振り、焦ったような顔をした。
多分限界が近いんだろう。
俺はシンタローの許可を取らずにシンタローを姫抱きして、トイレまで連れて行った。
あの後も何事も起きなくて、シンタローを一人で寝かすのは良くないと思い俺のベッドで一緒に寝る事にした。
【心霊特集見た後になる事】To be continued
【教師と生徒と補習】※オリキャラ有り
俺の大事な休暇を潰した奴が居る。
長期休暇のはずが大体3分の1しか休みが取れない。
原因は補習。
俺の大事な大事な休暇を潰したアイツの顔を見に、今日も学校に向かう。
職員室のドアを開いて数少ない荷物を置いて、コーヒーを飲む。
アイツが来るのは大体30分後。
指定した時間の10分前に来るのが良いところ。
30分間何をしようかと考えたが、課題を作って残り20分となったところで携帯が鳴った。
アイツからだ。
今日休みますとかだったらぶっ飛ばしに行こうと決めて携帯を開く。
メールではなく電話だったので、通話ボタンを押した。
『もしもし、クロハ先生ですか?恋也です』
何で生徒が俺の携帯電話を知っているかは、急に用事が出来た時に連絡が出来なかったら困るからと言う理由で教えた。
「あぁ、俺だ」
いつもの低い声で言った瞬間外から車が通る音が聞こえた。
数秒後、携帯の向こうから先ほど聞いた車の通る音が聞こえて何となく理解はした。
『あの…裏門が閉まってて入れません』
「あぁ分かった」
そこで通話を終了して裏門に行く。
裏門が見えた頃、金髪の髪が見えていつも通りに制服を着こなしていた。
姿が見えたところで金髪の少年、六条道恋也は端末を弄っていて時に空を見上げたり、地面を見たり、端末から目を逸らしている。
裏門を開けて、端末を取り上げる。
「ここは学校だ。しかも今から補習だ。端末は仕舞え」
六条道は俺が取り上げた端末を必死で取り返そうとしている。
182cmの俺からみたら173cmの六条道は小さく見えた。
端末に何かあるのかと思い、端末の画面を見ると俺は端末の電源をぶち切って自分のポケットの中に仕舞い込んだ。
「ちょっ、俺の端末返してください…」
六条道の端末にはの画面には何があったと思う?
端末を壊さないだけマシだろう。
隠し撮りされていたとは俺もこれからは気をつけないと。
六条道の端末には俺の隠し撮り写真や、ムービーなのがあった。
一瞬で壊したくなったがな。
「クロハ先生返してください!」
「んなもん見てる暇があったら赤点とらねぇように勉強しろ」
「え?嫌です」
一度殴りたいが、そんな事をすれば俺は教師失格だろう。
ぐっと堪えて裏門から職員室に向かう。
「ちぇ。折角裏門の鍵閉めたのに」
舌を打つ音と、聞き流せないセリフが聞こえた。
何となく疑問には思っていた。
何故裏門が閉まっているのかと。
俺が学校に入ったのも裏門なので、開いているはずだがどうしてか六条道が来る時には閉まっていた。
何故か可笑しいと思っていたらコイツが犯人か。
「お前か…」
振り返って睨んでみると六条道は表情を変えず、笑っていた。
不思議な感覚がして変な気持ちに襲われた。
多分、笑っているの目の前で見た事がないからだ。
「ん?どうしました、クロハ先生」
「いや、何でもない。職員室で待ってろ」
「先生が先に行かないんですか?」
「あぁ、ちょっと用事を済ましてから行く」
分かりましたと俺の横を通り抜けて行って、職員用玄関の方へ向かう。
俺は六条道の端末を取り出し、電源を付けてさっきの画像を全てチェックし削除する。
映像は後で確認しようと思い電源を切って職員室に向かう。
職員室のドアを開けると六条道は、ドアのすぐ隣の遅刻届けを書くスペースに凭れていた。
「用事は終りましたか?」
「ある程度はな」
「そうですか」
それ以上の事は聞いてこなくて、俺が指示した席に腰を下ろして鞄も机の下に置く。
俺は課題を六条道に渡して取りに行くものがあると行って職員室を出た。
俺はそのまま廊下に出て職員室から離れた場所で映像を確認した。
『九ノ瀬さん、今度の休み皆で食事に行くんですけどどうですか?』
『あ、すみません。用事があって行けないです』
最新の映像はつい最近の事で、俺が適当に断った時の映像。
大体が誘われても断っているので断った映像の方が多い気もする。
結構な数があって、1つずつ削除するが面倒になって先に全部見てから削除しようと決めたら、ふと目に映った単語がフォルダとして書いてあった。
フォルダ1【数学 課題】。
開くと更に細かく分けられていて、一つずつ見ていくと今日以外全ての補習の課題を作っている俺の姿があった。
こんな映像撮られていたのか。
フォルダ2【授業】。
フォルダ2は授業をしている俺の映像。
俺以外にも黒板や教科書とノートも映し出されている。
これはあの復習にでも使うんだろう。
削除対象から外そうとしてたら、フォルダ2の中にフォルダAがあった。
フォルダA【クロハ先生】
俺だけが映されていて、音声も入っていた。
丸秘フォルダ【コノクロ】
少し嫌な予感がしたが、開いてみると俺の予想通りに嫌な予感が的中した。
『クロハお疲れジュースあげる』
『んぁ?さんきゅ』
『クロハそのジュース媚薬入ってる』
『ぶっ!!』
俺は媚薬の入った飲み物を飲まされそのままコノハに抱かれた事がある。
フォルダAは削除。
大体のフォルダの削除が終って職員室に戻ろうと後ろを振り返ると、六条道が居た。
とかではなく誰も居なくてそのまま職員室に戻った。
「クロハ先生課題終りましたよ」
いつの間にか六条道は課題を終えて端末を弄っていた。
ん?端末?
俺が持ってるのは六条道の端末。
じゃぁ、六条道は誰の端末を持っているんだ?
「お前、その端末誰のだ?」
「自分のです。すぐに仕舞いますよ」
六条道は端末を仕舞って俺に課題のプリントを見せた。
俺はプリントを受け取り採点を始めるが、全部あっている。
間違いはなかった。
「お前、数学できるんだよな?全部正解だよな?何で赤点取るんだ?」
俺の質問に六条道は即答した。
「クロハ先生の補習が好きだからです」
笑いながら即答した六条道を一発殴りたいと心の底から思ったが、ぐっと堪えて新しいプリントを渡す。
六条道は受け取りものの10分で全ての問題を解いた。
しかも途中式すら書かずに答えだけを書いた。
「出来ましたよ」
そう言って渡されたプリントは全部正解で何でか悔しくなる。
一度だけ間違わせたいと思ってしまう。
「お前大学の数学やってみろ」
大学受験の問題をコピーしてプリントを渡す。
六条道はいつものすまし顔で問題を解いていた。
そして15分後。
「…全部あってる」
採点をすれば全問正解で悔しい。
すると六条道が急に提案してきた。
「俺に間違わせたいならクロハ先生が手作りで問題を作ってみては?数学以外でも何でも」
六条道にそう言われ1つの提案が浮かんだ。
口角を上げて笑いながら今日はもう良いと言って六条道を帰らせた。
次の日、俺は職員室に自分で作った問題を持ってきて、六条道が来るのを待った。
六条道はいつもの時間に来て、いつもの席に腰を下ろした。
「じゃぁ、このプリントの問題を解いてみろ」
素っ気無く渡しながら俺は六条道の表情を観察した。
俺が作った問題集はこうだ。
問題A
次の式に当てはまるものを答えなさい。
1鶏肉+ネギ=
2パン+卵+牛乳+砂糖=
問題B
色から連想されるものを答えなさい。
1黒+白=
2白+茶色=
最終問題
言葉と人で表されるものを書答えなさい。
1数学+人=
ちなみに答えがこう。
問題A
1ねぎま
2フレンチトースト
問題B
1珈琲
2タバコ
最終問題
3俺
問題Bまで解けたとしても最後は解けないはずだ。
なんせこの学校には数学教師は俺を合わせて3人居る。
数学補佐も合わせたら5人居る。
その中から誰を選ぶ。
俺以外だとこの問題はハズレ。
「あ、れ~?」
六条道の声が聞こえた。
何処の問題で躓いてるのかは知らないが何だか嬉しい気分になった。
解らないだろう、解らないだろう。
俺は間違ってくれと思いつつ、六条道を観察している。
「あー、こうで良いか。出来ましたよ」
「ん」
プリントを受け取り採点をしようとしたら、六条道の答えが合っていた。
いや、待て。
最初の問題の答えをはさみと書いてあるこれは間違いか?
「六条道最初の問題のはさみってあれか?紙を切るはさみか?」
「違いますよ、焼き鳥のはさみです。違う言い方をすればねぎまです」
やられた。
最終問題は何故か知らないけど、『クロハ先生』って書いてあった。
つまり、全問正解。
「全部合ってるぞ」
プリントを受け取り嬉しそうにもしないでコイツはプリントを仕舞った。
急にポケットから振動がきて携帯だろうと出してみると、六条道の端末でそういえば返してないのを思い出し六条道に渡した。
「有難う御座います」
六条道は端末の電源を切ってポケットに仕舞いこみ俺のほうを見てくる。
いつもその視線が好まない。
見透かされてるような感じがして気持ちが悪い。
「今日は昨日のプリントの続きをやったら帰って良いぞ」
プリントを渡し、六条道が問題を解いて帰っていった。
今日は普通に学校で3分の1の休みも取って学校に向かう。
生徒達が登校してきて、自分のクラスに入って思う。
六条道が居ない。
いつも必ず居る奴が居ないと物寂しいものだと思いつつ、出席をとる。
俺は六条道の担任でもあるから六条道を欠席にした。
きっと風邪でも引いたんだろう。
何時間目かは忘れたが、数学があってテスト範囲や新しいとこを教えて一日が終った。
暫く職員室に居ると六条道からメールが届いて開けてみると一文だけ書かれていた。
『貴方が好きです』
俺の返事を待つ前に六条道は転校すると校長から聞かされた。
【教師と生徒と補習】END
【熱が出たから】※オリキャラ有り
朝起きると熱があった。
微熱かと思って放置していたが徐々に体温は高くなり、仕方なく薬を飲んで横になっていた。
熱になった原因は分からないが、昨日の雨に濡れた事でも原因があるのだろうか。
―ピンポーン
インターホンの音が聞こえて体を起してドアに向かう。
セールスとかだったら無視でもしようと決めてドアを開けると、意外な人物が立っていた。
「よう」
「……」
夏場だというのに黒い服を着た九ノ瀬クロハを心配しても大丈夫だろうか。
重たい頭を無理やり上げてクロハに笑顔を向ける。
「おはよう、どうしたんだ?」
遊びに来たとかなら断れば良いかと思っている。
クロハは俺の様子が可笑しいのに気が付いたのか、俺の額に手を当てて驚いた表情をしている。
手をすぐにどけてクロハは俺を担いだ。
「え、どうした?」
いつもより回転が遅い為何が起きているのか分からない。
クロハは無言で俺の部屋に入り、ベットに俺を寝かせた。
「お前、熱あるなら寝てろ」
「寝てた時に来たのはクロハじゃん」
「悪かったって、何か買って来てやるから何が食べたい?」
食べたいものは無く、ただクロハを見つめているとクロハは勘違いかワザとかのどちらかで頬を赤く染める。
「ま、まさか…俺?」
一発殴ってやろうと拳を作ってクロハの右頬を殴る。
効果音はペチッと言う音だと思う。
力が入らない為意味も無く殴ったようなもの。
「いたい」
「痛くないくせに」
痛くも無いのに痛いと言ってきて頬を抓る。
数秒で離して食べたいものが無いと伝えて俺はそのまま目を閉じた。
ひんやりとしたのが額に乗ったのが分かる。
タオルか冷えピタか手だろう。
どれかは分からなかったが、額に何か乗ったのは理解できた。
目を瞑っていても仕方ないので目を開ける。
目の前にはクロハの顔がある。
「おはよ」
クロハの口が動いただけで俺は顔から火が出そうになる。
熱の所為と言えるけどそれ以上に赤くなる気がした。
クロハの手が俺の頭を撫でて、俺の頬を指でなぞって、その仕草だけで俺は幸せになれた。
「にやけてる」
にやけてても仕方が無い。
それだけクロハが好きで堪らない。
「クロハ…好き」
言ってしまったっと思ってからは遅くてクロハは顔を赤くしてそっぽを向いた。
それでもその仕草さえ愛しく思えた。
【熱が出たから】END
【人間失格】
未来には興味がない。
僕たちは二人で生きていける。
誰の力も借りずに、僕たちは【人間】になることなく、二人だけで生きていける。
そう思ってた。
***
未来には興味がない。
他人にも興味がない。
ただ、アイツが隣に居るだけで良い。
この可笑しな世界で、アイツが、コノハが僕の隣居ればそれで良い。
コノハが隣に居てくれるなら、俺は、人殺しだってするだろう。
何も躊躇わず、当たり前の様に自分の手を血で染める事だろう。
そんな僕を誰かが「人間失格」と言っていた気がするが、顔も名前も思い出さない。
僕とコノハは大都会の街を歩いて、数々のことを目の前で見ている。
人が殺害されるところ、誘拐されることろ、どんなに残酷な事を見ても助けたいなんて思いはなくて、その場から離れずその光景を無表情で見ているだけ。
「……今日も人が殺された」
コノハが口を開くが全く感情がこもっていない。
僕とコノハが此処まで変わった理由といえば、アレしかない。
カゲロウデイズ。
いつの事だったかは覚えていない。
昨日の事かも知れないし、何百前の事かもしれない。
カゲロウデイズが原因で僕とコノハの性格は歪んだ。
僕の場合は元々歪んでいた。
遊園地から帰る途中のメカクシ団の一人、鹿野修哉に銃を向けて引き金を引き、殺害した。
その後にもほとんど全員を殺害した事がある。
「あぁ」
あの頃は僕もまだ感情を出していたのかもしれない。
今となっては感情なんて無でしかない。
表情も全く動かない。
アイツらはとっくの昔に亡くなっている。
全員寿命だ。
あぁ、女王は分からないが。
「ねぇ、クロハ…」
「何だ」
ハテナマークもビックリマークも存在しない。
無表情でそこに居て、ついに自分の笑い方も忘れ、僕たちは大都会の街を意味も無く歩いてる。
何億人死のうが僕には関係がないし、興味もない。
「また事件が起きてる」
「【人間】はすぐに事件を起す」
「あ、刺された」
痛そう、早く病院に、と言う声が聞こえる中僕たちはその光景をただ眺めている。
意味もなく。
そこに存在しているだけ。
ガムを噛んでフーセンを作ってそうやって見て見ぬフリと言うのを続けて、何年になるだろうか。
僕たちはそうやって多分、アイツら、メカクシ団が居なくなってからこうやって生き続けているんだろう。
だからなんだ。
それが何だという。
どこで誰が亡くなったって今の僕らには関係がない。
カゲロウデイズは存在しない。
止める意味もない。
アイツらは存在しない、そんな世界で生きる意味が無い。
「行こう」
殺人の光景も飽きて、その場から離れだす。
行く宛てなどなく、公園などで寝起きをしている。
懐かしいなんてみじんも思わない。
思うことなんてない。
結局僕たちは狂っているという事だ。
僕はコノハが隣に居てくれるなら殺人だって出来る。
コノハも同じで僕が隣に居るなら殺人が出来る。
僕らはどうしてこうなったのか。
さっきはカゲロウデイズのせいだとか書いたが、単なる悲劇の主人公気取りだ。
ただの悲劇にあったフリをしてるだけだ。
「ボールそっちに行ったよ!」
公園から子供の声が聞こえる。
近所の子だろうか。
声的には中学生に聞こえる。
「お、おぉ、OK!!ってあ!」
「リン何やってんだ?」
「うっさい!!レンが変なとこに投げるから!!」
「二人とも喧嘩しない。リンはボールとって来る」
「はーい」
ボールは公園から出て、道路に出ている。
それに続いて中学生ぐらいの少女が公園から出てきて、ボールを追いかける。
少女の見た目はセーラー服の袖を切って、裾を短くして、黒いホットパンツを穿いている。
髪は亜麻色で、肩の辺りで外に跳ねていて、頭には白いリボンがつけられている。
ボールが道路の真ん中に行き、リンと呼ばれた少女が駆け寄ってボールを取ろうとした瞬間、クラクションが鳴り響く。
キィィという音と共に少女が赤く染まって横たわっている。
クラクションの音に気が付いて一緒に遊んでいたらしい子達が、横たわっている少女に近付く。
それが、真夏の8月15日の事だった。
***
トラックに轢かれた少女の命はどうなったかは知らない。
僕もコノハも表情を変えず、無表情でその光景を眺めていた。
次の日、同じ公園に行ってみると、見たことのあ少女がボール遊びをしている。
昨日見た、トラックに轢かれた少女だ。
死んではないようだ。
少しほっとしたのは気のせいだろうか。
いつからか僕たちは感情がなくなっていた。
それはきっとメカクシ団が居ないからだと思っていた。
そうだ。
僕たちはメカクシ団の皆が居ない世界でぽつんと二人だけ残された。
たった二人、人造人間の僕たちが残され他の皆は亡くなった。
それを認めたくは無くて、初めから存在しないようにしようと思って、感情をなくしたんだ。
全てをカゲロウデイズのせいにして、現実から目を背けては、それを悲劇の主人公だと言い聞かせ、自己暗示というのか分からないが、とりあえず現実から目を背けて二人で生きて居ている。
僕もコノハもとっく分かっている事だとは十分に理解してる。
どれだけ探しても、どれだけアジトに居ても、アイツらは帰ってこないことぐらい理解してる。
「――恥の多い生涯を送ってきました、か」
人間失格、という本を書いた人が居る。
誰だっけ、太宰治だったような気もする。
今の僕たちには一番合う言葉なのかもしれない。
人間失格、という曲を作った人がいる。
「さよなら、僕らの人生」
という歌詞で終る。
人間失格、という言葉がある。
感情もなく表情もなく、人の死をなんとも思わない【人間】に使われることが多い。
ある少女のおかげで僕たちは思い出すことが出来たのかもしれない。
あの少女がトラックに轢かれなかったら、僕たちは人の死を見ては無表情で立っているだけの存在だった気がする。
僕らはまだ認めることは出来けれど、いつかきっと違う形で会えることを願っている。
これなら【人間失格】ではないな【人造人間失格】にはならないだろう。
あぁ、これが【人間】というやつか。
まだ、どうやって表情を作っていたか思い出せないけど、俺はコノハと二人でメカクシ団がまた集るときがくるその時まで待っていようと思う。
――恥の多い生涯を送ってきました――
「さよなら、今までの、僕らの人生――」
俺は真夏の8月16日の太陽に呟いた。
【人間失格】END
【ヒキニートとヒキニート】
オレが家に引きこもってから二年が経つ頃、とあるチャットサイトでのことだ。
いつもの通り何か情報でも集めることができないかとチャットを始めたのが発端だ。
チャットを始めて数日経って、いつも通りチャットサイト開いて会話を始める。
オレと同じような引きこもりがチャットをしてると思うと、オレと同類で心が救われる。
チャット内容は最近のニュースだったり、ある番組のことだったり様々なものである。
オレもそこに混じって会話をしていると、一人の入室者が現れた。
――鹿さんが入室されました。
『やっほ~久しぶり~あ、新しい人が居る!よろしくねー!』
とても明るい文面を見てオレはコイツは女かと思ってしまう。
今日は平日でコイツは学校に行ってないのかと思うほど元気な文だ。
いや、大人かも知れないから何とも言えない。
『こんにちは、よろしくです』
当たり障りのない返事をしてトイレに行くために席を立つ。
トイレから戻ってきてパソコンの画面をみると、鹿というやつがオレに対して色々質問をしてきていた。
『いつからこのチャットしてたの?』
『君の住んでるとこは?』
『歳は?』
『あれ?ROM?』
オレは質問に一つ一つ答えて色々な話をする。
『18歳なんだ!僕は14歳!』
そんな話をしているときだった。
『住んでるとこ近いね会ってみない?』
そんなことを書いていたので、オレは一瞬イスから落ちて床に尻餅をつく。
「なっ…!」
顔が熱くなって下が熱くなっていく。
そんなこと考えてはいけない。
第一性別も分からないのにこんなこと思うのはよくない。
オレはイスに座りなおして、『良いですよ』と返事をして日時を決めて、チャットサイトを閉じてパソコンの電源を切る。
明後日の平日の午前九時に、○○駅に行くことになった。
次の日、明日だ明日だと思ってろくに眠れやしない。
お互いチャームポイントになる服を教えているので、格好は頭に入れている。
鹿というやつは黒いパーカーを深く被っているそうだ。
オレは赤いジャージを着てると伝えた。
そして、その日がやってきた。
駅までの道を息切れしながら歩いていると、平日のため学生の姿はない。
丁度駅に十分前について体を休める。
相手の姿を探してみるが、まだ見あたらない。
まだ来てないのか、からかわれたのかと思いながらウロウロを繰り返している。
「あ!いたいた!そこの君!!」
後ろから声が聞こえたので足を止め、後ろを振り返り相手の姿を確認する。
後ろに居た奴は「やっほ~」とニコニコと笑っている。
言っていた通りの黒いパーカーを深くではないが被っていて、黒縁めがねを掛けている。
「ぁ、えっと……」
お得意のコミュ障を発揮して、恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
ろくに人と会話してない為、口がうまく回らない。
「緊張してる?」
ニコニコしながらオレに尋ねてきて、顔をのぞき込まれる。
顔をのぞき込まれて、頬を染めて半歩後ろに下がる。
「大丈夫だって!僕も緊張してるから」
片目を瞑って、口元に人差し指を当てて笑うコイツから緊張感は伝わってこなかった。
むしろからかわれてる感の方が伝わってきた。
「僕の名前言ってなかったね。僕の名前は鹿野修哉だよ」
「あ、あぁ…オレは如月伸太郎だ」
お互いに自己紹介してどうしようか考えていると、鹿野が「喫茶店でも行かない?」と言ってきたので、取り合えず喫茶店に向かうことにする。
☆☆☆
「シンタロー君だっけ?僕、君と会えて嬉しいよ!」
にっこり笑うコイツが少し可愛いと思ってしまった。
とある喫茶店にて、オレとカノは飲み物片手に話をしている。
「シンタロー君…ちょっと失礼するね」
鹿野は立ち上がり向かった先はお手洗いだった。
緊張しているのは本当なんだろう。
オレもコーラを飲み過ぎているせいか、トイレに行きたくなり鹿野の帰りを待っていると数分で鹿野は戻ってきたので、入れ替わるようにオレはトイレに入っていく。
「はぁ…」
無事にトイレから出て来て、席に座り話を再開しようとするが、鹿野の様子がおかしい。
そわそわとして何かにおびえているような、そんな感じがする。
「…どうした?」
「え!?な、何でもないよ!?」
フードを深く被り何かから避けているような鹿野が気になって、鹿野の後ろを見てみると特に変わった様子はなく、大人の人がカウンターでコーヒーを飲んでいる。
こっちを向いているわけでもないので、特に関係はないか、と思っているとカウンター席の隣で座っていた奴が、時々こちらを何度も見てきてるのが分かる。
「店、出るぞ」
鹿野の腕を引っ張り、喫茶店から出て後ろを振り返りながら前に歩いていく。
思ったとおり、カウンターに座っていた奴が後ろをつけて来ている。
「つけられてたのか?」
「うん」と鹿野は言い、オレと鹿野はつけて来ている奴から逃れるために、路地裏に入り、大通りに出て街中を歩く。
向かうはオレの家。
この時、オレと鹿野がどうなるかなんて誰も考えはしなかった。
【ヒキニートとヒキニート】To be continued
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