狂気の生きる場所‐呟き場所‐

狂気の生きる場所‐呟き場所‐

俊雪‐シュンセツ‐  2014-06-04 02:16:18 
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あれは私の中に殺している
いや、生きているのかもしれない。
誰にも話せない
けれども留めておくには重たすぎる狂気
私はそんな狂気と一生、歩んでいかねばならない。

しかし悲しくはない 何しろ、誰しもが抱え
ある者は向き合い
ある者は目を背けて生きているのだから。

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  • No.10 by 俊雪  2014-06-04 23:31:52 

何度目の春が終わっただろうか
泣き通す夜を越え
心に蓋をする日々を越え
向き合う期間を経て 受け入れている。

もちろん幾度となく過ちを犯しそうになった。
だが何をしても**ないのだ。
数回、数十回繰り返し諦めた。
どうやら私は生かされている。
幸せにならないと**ないのだと思う。

さて、狂気の話しだが
おわかり頂けるだろうか
狂気と名がついているものの
狂気とは、いかに純粋か。
そして純粋がどれほど残酷か。
純粋故に残酷
残酷の根底には必ず純粋が…。
無償の愛
それは
非情な愛

多くの人はハイリスクで踏み込めずにいる。
しかし、誰しもが
踏み込む可能性と隣り合わせだ。
狂気などと言うと
普通とはかけ離れているように感じるだろう。
しかしそうではない。
普段死の危険が隣り合わせだと恐怖しながら生きないのは
安全に見える世界に慣れすぎていて死が身近でないから。
それと全く同じだ。
しかしどうだろう
狂気が純粋だと知った今
自分が逸脱した人間にならない自信がおありか
答えは聞くまでもないはずだ。
おそらく、些細なきっかけで枠の外にはみ出しているのだ。 気が付かないうちに。

私はなぜあのような経験を踏んだのだろう。
『物事には必ず理由がある』
『越えられぬ困難を神は与えない』
それが正しいならば必ず何かある。

全て私の想像にしか過ぎない。
だが、多目にみて聞いて欲しい。

これはきっと
人生の見え方が変わってくる話しだと思う。

  • No.11 by 俊雪  2014-06-05 01:03:48 

書くにあたり少し頭の中で考えてみた
やはり然るべき道だったと思う。

ここまでの話しを
とても大切な人に聞いてもらった。
大切な人を、以降
『陽太‐ヒナタ‐』と呼ぶ。
すると、陽太は

二人の関係を見ていると、もはや運命と言うのさえも失礼にあたる気がする。
運命とか関係なく、二人が自分たちのもつ力で強烈に惹かれあったんじゃないかと思う。
むしろ運命すら変えて、運命を捻じ曲げて出会ったかのような…。
と…。
きっと陽太は不安だろう。
しかし私は脳天気に『陽太は文章力あるやないの』
なんて思っていた。


私は彼に出逢い、狂気の心髄に触れた。 彼は私に出逢い、狂気から解放された。
それだけだろうか。 もし、全ての運命が一本の線で繋がっているのなら
彼に逢わなかったら陽太と私も出逢っていない。
彼は陽太と私の関係にも影響しているだろう。
では彼と出逢わずに陽太と出逢っていたとしたら…
私は己の狂気に向き合わぬまま、陽太を狂気に染めていたかもしれない。
もしかしたら、彼が『この人なら…』と陽太と巡り合わせたかもしれない。

ではなぜ、彼が先だったのか
確かに、狂気が、互いに呼び合っていたかもしれない。
しかし最近は…どうも
『私が陽太を狂気に染めずに済むように』
彼が私を呼び寄せた気がしている。
彼は私の幸せの為なら何でもする。
彼は私の狂気を見抜き、いつか大切な人を失い嘆き悲しむとわかっていたのではないか
彼は見えている世界が違う人だった。
透視ではない。単に危うさを見たのだろう。その点自分なら一生添い遂げる強さはない、しかし私を幸せにしたい。悲しませたくない。
けれども、悲しい死ではなく幸せな死で終わらせることができる。
故に、彼が先出なければならなかった。
運命を盲目に信じるわけではないが
信じても不都合がないならば
こんな考え方をしたって良いではないか。
陽太は少しでも安心してくれるだろうか

陽太は…私の大切な人だ
陽太に不安になられてしまっては
彼の死も
私の時間も
陽太の愛も
悲しんでしまう。

『だからどうか、悲しまないでおくれ』

次はそうだな

私の狂気の根底について語ろうか…。

  • No.12 by 俊雪  2014-06-05 12:02:42 

ある小説によれば写真家や人形師は人間を模範していると語られていた。

ならば私も同じなのだろう。

私は絵を描いていた。アニメのような絵ではなく
厚塗りを。
昔は風景画ばかり描いていた。
しかし人体を好むあまりキャンバスの上に骨から人体を描きあげる喜びにたどり着いた。

骨の位置や形をとりながら肉を付け
髪や睫毛を一本ずつ毛の流れを考えながら描く
眼球には最も気をつかう。
瞳孔
虹彩
光の反射
目蓋の粘膜
血管

肌に静脈と動脈を描き入れる瞬間
命が吹き込まれるようで
私の中枢が痺れる。
人間そのものを自らがのものにしたい。
美しい人間のそのものが欲しい。
それが私の狂気の延長線だった。
どういうことかと言うと、嘘や保身の無いありのままの本質を受け入れたい。
世間が異様だと言うような本質も
さらには本人が知らない本質さえ
私の手で拓かせたい。
そして、私にしか受け入れてもらえないと思わせて
精神的な監禁をしたい。
決して私から求めてはならない。
自ずと私にさらけ出すよう
仕向けねばならない。
でなければ、意味がない。
私は受け入れること 受け入れたと見えるが、奪っていることに悦びを見る
それが私の狂気なのだから。

目に見えているものはさほど重要でない。
見えないもののほうが多く、尚且つ人間を作り上げる要素だ。
ではなぜ内面に
こだわるのか
それは最近まで自分にもわからなかった。
しかし延長線である絵を描くうちに理解した。
私の絵を誰かが私以上に愛することは出来ない。
なぜなら私は絵の人物の内面を構想しつつ描きあげているからだ。
人物の全てを知っているのだ。
美しい面だけでなく汚い面さえも。
人物が抱える闇さえ、全てを。
しかし、二次元でそれを表現するには限界がある。
画力の限界と言う意味でなく
画の限界だ。
故に、生きた人間を誰よりも愛するには生きた人間の内面全てを知らねばならない
。私の狂気の根底は
誰よりも愛することで、支配したい。
裏を返せば
愛され必要とされたい。
そこから分岐し様々な狂気に成長するのかもしれない。

私が画の限界を知ったのはある人物に会ったからだ。
その人物は自分の狂気に溺れてしまっていて
おそらくもう抜け出せない。
次は狂気に溺れてしまった者の末路を紹介しよう。

  • No.13 by 俊雪  2014-06-05 15:10:03 

狂気を誰しもが持ち合わせていることは話し、解釈していただけたと思う。
私もその一人であり彼もそうだった。
彼は狂気に狂う前に自ら幕を引いた。
そして私は狂気に気が付き理性を留めた。
しかし、私は一人だけ狂気に狂う天才を見た。
あまり長い付き合いになると気が伝染するのではないかと恐怖し疎遠になったが それだけあの人の気はあの人を包んでいた。
気があの人を覆っていた。

あの人…男性でも女性でもあった。
心は女性だった。
私とあの人は絵を通して知り合った。
初めてあの人の絵を見た時、私は圧力を感じた。 正直怖かった。あの人のか細い声とは裏腹に重たい絵だった。
人物画ではない。
林檎に描かれた人間の瞳
渦に飲まれる胎盤
雫に閉じ込められた心臓

おそらく闇を描いていたのだ。
自分の心の闇を描いて解き放っていた。解き放つために描く 描くために闇を生む そうやっていつしか闇に飲まれいつしか抜け出せずに解き放つ快楽に溺れていく。
あの人は見えないものに触れる悦びを知っていた。
推測だが、見えないからこそ美しいのだ。
あなたが見たことのない場所を私が言葉巧みに説明する。
見渡す限りの緑の世界
初夏には風が通り抜け
青々しい香りが全身を包む。
小さな命が草を揺らしながら生活し
私たちはそれを壊さぬようただ見つめる 水の流れが耳に優しく
時折聞こえる鳥の羽ばたきが爽やかだ
さぁどんなに美しい
景色を想像しただろうか

残念だが私の家の裏にある普通の田園風景だ。風情ある山が近くにあるわけでもなく
どちらかと言えば寂れている。

おわかりか、人間の脳は都合よく補正する。自分が想像できる限りの最も美しいものに。

だから私たち絵描きは『ものの見え方が違う』と言われる。 実態のあるものに潜む実態の無いものを見ている。それを見なければ、実態そのものを正しくとらえられない。
そして実態の無いものをとらえて描き上げた画は
私たちの補正を受け 『実態そのものよりも美しいもの』になる。
そしてそれができた瞬間、私たちにとって実態そのものは
いきなり劣化したように思えてしまう。 幸い私は描くという狂気はなかった。
故に美を求め過ぎて狂うことはなかった。
しかしあの人は天才というか鬼才であった。あの人の才能だけではない。自然さえもが才能を後押しした。

  • No.14 by 俊雪  2014-06-05 17:03:14 

私たち絵描きは時折 予期せぬ偶然に助けられる。
私はデジタル専門故にそうそう無いが
あの人はアナログで屋外で描いていた。
故に、突然の雨に濡れ滲むことや
手が滑ることもある。その偶然が美しい滲みや線を生む。
私のような凡才は腐るほど居る
天才は居る。
逸材も居る。
しかしあの人は
鬼才だ。
鬼才はなかなか居ない。
そうそう居てもらっては困る。

あの人が何故
狂気に狂うことになったのか
それは普通の事だったかもしれない。
没頭しすぎた。
もし、それだけだったならば
私は何かに依存することが恐ろしい。
依存することでまたくすぶっている何かが燃えるのではないか
本当はすぐそばまできているのではないか
不意に不安になる。
そして、私の近くに居る人間を、またもや溺れさせてしまうのではないか
と怖い。
そのくせに、私は人間から離れられない。
人間などみんなその程度だろう。
結局のところ
自分からは誰も逃れられない。
人を傷つけずに愛せない。
傷つかずには愛せない。
誰かの涙の上で私たちは笑っている。
涙の主も誰かの上で笑っている。

慣れすぎて罪悪感など忘れてしまったのだろう。

  • No.15 by 俊雪  2014-06-17 00:59:41 

あなたは本当に来るのだろうか、夢か現かわからないような、不安と期待が入り混じって私を満たしていた。太陽が真上に登り、ひどく反射光が目に染みる。道路が熱されているのに無機質で冷たく見える。時期にしては早い夏日は私のほだされた恋煩いにも似ていて、表面は日常を演じる姿はまさにアスファルト、しかし実は路肩の草のように内々は様々な感情が心を乱雑に茂っていた。
あなたは来るのだろうか、いや、疑いはしていない。しかし会えることが嬉し過ぎてキャパを超えてしまっている。故に頭が追いつかないでいる。
連絡をまちながら駐車場の日陰に落ち着きを探す。座り込んでみたり、立ち上がってみたり、寄りかかったり向きを変えたり意味なく歩き回ってみる。ほんの数分が長い。この数分さえあなたが居れば数秒に思えるのに。 何度目かの屈伸運動の末にその時は訪れた。
待ち合わせ場所に降り立ちあなたは遠くからでも美しいのがわかり、私を混乱させた。 あまりに美しくて直視できない。圧倒されて手が震えた。

  • No.16 by 俊雪  2014-06-17 09:36:25 

いてもたっても居られなくなり、俯くことしか出来なかった。視界の上の方に歩いてくるのが見える。足音が届く距離になると私の鼓動が聞こえてしまうのではないかと心配になった。うるさかったはずの喧騒も聞こえなくなり、急に空気が身体にまとわりついてきた。
あなたが名前を呼ぶ。
嗚呼‥溶かされてしまう。何か言わなければならない、なんとか顔をあげなければならない。
大事な時に限って何も言えなくなるもので、ひたすら頷くしかなかった。

-大丈夫…?-

な、はずがない。饒舌な私が黙り込んでいる。身体が熱くなって息が苦しいのに熱が外に出ない。
あなたと私の間の僅かな距離。手を伸ばせば触れる距離が近いような、遠いような、もどかしさで愛おしい。臆病になりながら少しだけ手を伸ばしてみる。告白する時はこんな気持ちになるのだろうか、受け入れられるか不安で仕方がない。期待と後にひけない焦りとで泣きたくなった。
指先が触れ合う刹那 そこから弾かれたように身体が軽くなった。安堵が広がるように、新鮮な酸素が送り込まれたように。

  • No.17 by 俊雪  2014-06-17 22:37:42 

繋がれた手のひら、それは日溜まりを包んだかのようで、その上とても力強く私を捉えた。
少し後ろを歩きながらあなたの横顔を見つめる。
ほんの少し後ろ、そこが私には居心地が良かった。
線路沿いを無言で歩く。田舎らしい静けさと平坦さの中で密かに燃える二人がこのまま誰からも見えなくなってしまえば良いのに、と‥そう思っているのはあなたも同じだと信じていた。
歩く道の上を真新しい道路が横切っている。その道路へと続く長い階段に座り畑を見下ろす。ジオラマのように小さく動く町の生活は現実を切り取ったかのようで他人事に思えた。町並みが非現実的なのかあなたと居られる僅かな時間が非現実的なのかどちらでも良かった。
どちらにしても求めていた存在が此処にある。いかに批判されようとも絶対的な存在、私にとってはそれがあなただったから。
太陽が少し傾き、階段の影を削る。時間が経過した証拠だが影の減少は私たちを近づかせた。

-田舎って良いな…-
-何もないでしょう?高い建物も‥-

-田舎だね‥静かだ‥落ち着く‥-
-なんにもないからね‥畑や田んぼはたくさん-

田舎って、田舎って‥なんど同じ会話をしたことか、私たちは会話の内容を見つけられずに居た。しかしそれは退屈でも焦りでもなく、ただひたすらに穏やかだった。
本来、共にあるべきものが揃ったかのように、今更新しい会話など必要無いかのように。
ふと目が合えばどちらも目をそらしてしまう。あからさまに話題を考えて切り出したり、指先を絡めなおしたり。
時折強く吹く風があなたの香りを濃く薫らせて色香のように私を翻弄する。
あなたは残酷な人だと初めて知った。
香りが一番強く残る記憶だというのに。
あなたはこれから先一生私のそばに居てくれますか、保証してくれますか、もし失ってしまえば、似た香りで毎回私の心を苦しめるつもりですか

そう、言いかけてやめる。嫌われたくないからこそ愛の強さを伝えない。あなたの余裕そうな穏やかな顔が私の臆病さを強調した。

  • No.18 by 俊雪  2014-06-19 23:23:29 

階段の手すりに寄りかかりながら平坦な景色を見下ろす。
頬を風が撫で、初夏の香りを運ぶ。
ミントのような色合いのスカートがなびき、あなたの方へと流れる。
車両の短い電車が下を走り規則的な音を鳴らす。 その中で確かに私を呼ぶ声を逃さなかった。
振り向いた刹那
私は唇を奪われる。 それは一瞬で永遠のもの。求めていたはずなのに、思考は止まりどんな顔をすれば良いのかすらわからず、どんな顔をしているのかさえもわからなくなった。
初めての感覚。人の思考はこんなにも止まるものなのか…。 しばらく呆然としていると、私を優しく包み込みそっと撫でた。我に帰ると止まっていた思考が嘘のように一瞬だけ見えたあなたの
射抜くような瞳が
獲物を捉えたような瞳が
リフレインされて熱があるかのように鼓動を速まらせた。
そして急に恥ずかしがるように私を離して階段を2、3段上ると静かに顔を上げた。
私はそれを忘れない。
間違いない。
それは、とても美しいものだった。
天に堂々と栄える太陽の光が
8分17秒前の光があなたの眼球に吸い込まれ
虹彩線まで見えてしまいそうなほどに透き通らせて輝いていた。
その瞳が私を見据える。
自分が見られている事など忘れ、まばたきすら忘れて見つめ合う。
数秒の出来事だが、私には永い時間で身体が浮くような感嘆を覚えた。
その瞳がそらされ
耳まで赤く熟れた横顔を愛おしいと思ったと同時に寂しくなり思わず心の声が漏れてしまった。
こんなこと言うつもりではなかったのに


-ねぇ…もう一度
…こっちみて-


  • No.19 by 俊雪  2014-06-20 12:55:01 

ちょっとここからは真面目に書きます。

  • No.20 by 名無しさん  2014-06-20 14:55:44 

小説の読みすぎで妄想がリアルを飛び越してるね
絵描きじゃなくてポエマーでしょ?
妄想癖重症
小説家目指してたけど無理だった人?
それとも自分に酔っちゃってる人?

  • No.21 by 俊雪  2014-06-20 15:27:53 

真っ白なカーテンから零れる光が目に染みた。うっすらと開けたばかりのまぶたの裏に光の残像がオレンジや緑のレンズフレアのように張り付いた。しばらく強くまぶたを閉じていれば次第に消えるのだろうと思ったが、反射的に目をこすってしまった。そのせいで目の奥が鈍く痛み不快感が増してしまった。
君はまだ隣で幼い表情で眠っている。まだ新しい今日の太陽が君の頬に長いまつげの影を落としていた。僕はそれをずっと眺めていたかったが、それよりも起こしてしまうのではないかと躊躇いながらそっと撫でるのが好きだった。何も手の加えていない黒髪が君の肌の白さを顕著にした。さらりと前髪をよけて額から頬につたって撫でる。眉毛の上あたりで君のまぶたが動いたように思って手を止めたが僕は構わずに頬を撫でた。君は時折、起きてからもしばらく寝たふりを続けることがあった。なぜ僕がそれを知っているのか、それは君の表情筋が少し緩んでいくから。眠っている時よりもさらに幸せそうに緩むんだ。これは僕しか知らない。君さえ知らない僕だけの君なんだ。
そのまま顔の輪郭に沿って手を這わせ君の血が透き通ったような柔らかい唇を親指でなぞろうかと思った時、君がしびれを切らしたかのように吐息交じりの笑いをこぼした。
「ねぇ、恥ずかしいよ、これじゃあ目を開けにくい」
少しいじけたような、甘えたようなその声が寝起きの僕にはとても心地よく響いた。もしかしたら僕の脳は君の声やふとした表情に溶かされていっているのではないか、そう思うくらいに甘い空間だ。
「おはよう、今日は晴れたよ。どこか行きたいところはある?」
君が寝ている時から考えていた言葉を待ち望んでいたように紡ぐ。毎週末、同じような会話をする。平日は君が用意してくれた朝食をぼんやりと君を眺めながら食べて、その間に君が着替えを用意してくれる。同時に洗濯や洗いものをしながらせわしなく動く姿は普段の無防備な表情からは想像できないものだったし、これ以上に忙しそうにしている君を見たことがなかった。僕が仕事から帰る頃には夕食は用意されていたし、お風呂もすぐに入れるようにしてくれていた。それをいいことに僕はすべてをスムーズに済ませてテレビも見ずに君と会話をした。正確にはテレビのことを話している君と、テレビは見ずに君だけを見て会話をしている状態だった。僕にとって君が何を見ているのかも、君が話す内容も、もちろんテレビのことなんかは二の次だった。ただ、楽しそうに幸せそうにしている君を見ることが自分の幸せとなり安心につながっていた。だから、僕は明日の天気のことなんか覚えちゃいない。それが毎週末に「今日は晴れたよ」とか「今日は雨だね」という理由だった。
そしてもう一つ「行きたいところ」を尋ねてみるのが習慣になっていたのは、君が行きたいという場所ならどこへでも連れて行ってあげたかったから。君にはわがままになってほしかった。もっと言うならば僕のことを振り回して困らせてほしいくらいだ。そうしてそのわがままをどうしたら叶えられるだろうかと必死に思案したいと心から思っていた。なのに君と言ったら人混みが嫌いで、趣味も室内でやることばかりなんだ。だから毎回
「んー、休日だしどこも混んでそうだよ。人が少ないところならいいけれどこれと言って行きたいところはないなぁ。瞬君とならどこでもいいけれど」
こうやって僕に微笑みかけることも知っていた。それでも毎回尋ねる。それはもう僕たちの習慣なのかもしれない。同居して1年半、お互いに生活のサイクルが決まってきた頃だ。なのにぼくはよくも飽きずに君の一挙一動に心を揺さぶられるのだろうと最近、急に不思議になることがある。

夢を見ていた。何の夢なのか解らないような意味のない夢だ。ビルのような建物の中に大きな観葉植物があったり、突然目の前に湖が広がったりする夢。夢の中を彷徨おうとしたところで額にぬくもりを感じる。そっと愛でるような慈しむような、触れるか触れないかの弱さでなぞられる。私はそれがもどかしいような恥ずかしくてやめてほしいような気持ちになり、とても切なく感じていた。悲しい切なさではなく愛おしい切なさ。この瞬間は目を開ければ終わってしまう切なさと早く彼を見たい気持ちとがせめぎ合って、目を開けるまでに時間がかかってしまう。
まだ目を開けていないのに陽の光が透過して私のまぶたが透けてしまったのではないかと思った。もちろん錯覚だと解っているし透過するくらい薄い皮膚だとも理解していた。この光は果たして本当に見えている光なのか解らなかった。光源から放たれた光が物体にぶつかり反射して眼球に届き神経が脳に指令を出して映像化される、ならば光源から直接入ってきている光はどうなのか、もし瞼を物体とみなすなら瞼を見ていることになるのか、しかし瞼なんて眼球と密着していて焦点が合わない。焦点がずれていることを見えないというなら透過した光を見ていても「なにも見えていない」ということになってしまう。
そんなことを考えるのが私は好きだった。きっとインターネットで調べてしまえば答えはすぐに出るだろう。しかし私は自分で考え自分なりの答えを出して満足していた。それが正しいかは問題ではなく考えることが好きだと思った。そして一つの答えも出ていないうちにベッドがきしむ音がして我に返った。どうやらあなたが私のほうに重心を寄せたようだ。それは左肩のすぐ横が弛んでいたのですぐに分かった。このままにしていれば接吻が降ってくるのだろう。よくある恋人同士の場面だ。けれども私は困ってしまった。寝ている間に口づけをされ目を覚ました経験がなかったから、いったいどんな反応で起きればよいのか知らなかったから。ドラマでも見たことがなかった。あるのは眠れる森の美女くらいで真似るにはリアリティーさに欠けていた。観念して少し前に起きたように装うことにした。
「ねぇ、恥ずかしいよ、これじゃあ目を開けにくい」
私がそう言うと彼はもう一度横になりいつもの会話を始めてくれた。そして私もいつもの返事をして、なぜかひどく安心した。世間ではマンネリとか変哲がないとマイナスの評価を受けるようだが私は、そして彼もきっと幸せに思っていると確信していた。
私は考え事をしていると一点を見つめてしまう癖が合った。二人でいるときはだいたい彼を見つめていると最近になって気がついた。恥ずかしい気もしたが気にならなかった。これが一番円滑に考え事ができると知っていたから。見つめすぎたと気がつくころにはすでに彼は困った表情をしていた。
「本当に?僕も同じだけれど、由莉はいつも近所の商店街くらいしか行っていないでしょ?休みの日くらい贅沢を言えばいいのに」
なんだか彼が自分を責めているように見えた。男性は頼られたい生き物なんだと聞いたことがある。きっとこういうことなんだろうと思った。
それから彼は名残惜しそうに布団から出て、私を手招いてくれた。ぼんやりとしながらそれを追うことににして、私たちはキッチンのある部屋に向かった。

  • No.22 by 俊雪  2014-06-20 15:39:38 

んん、、、残念ですが私は小説家を目指したことはありませんよ。
小説も学生時代に4冊ほどと最近3冊読んだ程度です。
読みすぎと思ってくださるような文章力ではございませんよ。
それと、下げ投稿以前は実話です。あとは妄想と思っていただいてかまわないです。
考えたにしろ妄想にしろ頭の中の想像にすぎないので。
でもそうなると、小説家の方々はみなさん妄想壁重傷ということになるのでしょうか。
私は重傷だと自覚しているので全く問題ありませんし、何より妄想がひどいといわれて
何が問題なのか理解していないので私と名無しさんは平行線でしかないと考えております。
それでもなお私と理解を深めたいとおっしゃるようでしたらまたお越しください。
そうでないのでしたら、どうぞ私のことは話す価値のない人間だと切り捨ててくださって構いません。
そんな私のために文字入力するなど、名無しさんの時間の無駄になってしまいます。
それでは、お読みいただいてありがとうございました。
失礼いたします。

  • No.23 by かな  2014-06-20 15:47:15 

主さん大人だ。
強い。

私は応援してます。

  • No.24 by 俊雪  2014-06-20 16:42:06 

「ねぇ、これ…なにかな?」
由莉の緊張した声が日常を裂いた。白い封筒を手にして裏表を交互に確認している。この姿を何度か見たことがあった僕はすぐに、送り主を確認しているのだとわかった。しかし今の彼女はどこか訝しげに眉をしかめていた。着替えていつものようにシンプルなジーンズにシャツという飾らない姿で、いつものように僕はソファでくつろいでいるというのに、君の表情だけが非日常的にこわばっていた。
ゆっくりとこちらに歩いてくる彼女が隣に座れるように座りなおすと、当たり前のように彼女が腰を下ろした。そして、手に持っている真っ白な封筒を僕に差し出す。
送り主は無記、こちらの住所と由莉の名だけがパソコンで書かれていた。自分宛でない私書を開けるのには抵抗があったが本人があけてくれという顔をして渡してきたので一呼吸置いてから中を見てみることにした。

  • No.25 by 俊雪  2014-06-21 00:57:25 

由莉さん、先にことわっておきます。僕はあなたの事をよく知っています。ずっと昔から、あなたは僕の中に居たのです。気持ちが悪いと思います。誰だっていきなりこんなことをいわれたら気持ちが悪い。でもこれだけは信じてもらいたいです、私は由莉さんを怖がらせたいなんて、これっぽっちも思っていないんです。生活を乱してしまいたいなんて考えた事もない。ましてやストーカーなんて…いや、僕が否定したところでストーカーは自覚が無いから説得力がありませんよね。でも違うんです。正直なところ、僕が何故‥何故手紙などに意識を向けたのかわかりません。別に伝えなくても良かった。伝うべき言葉もまだ見つけていないんです。なのに、由莉さんに手紙を出そうと思いました。出さなければならない気がしたんです。もしかしたら、僕は
無かったことにされるのが怖かったのかもしれない。僕という存在が、確かに生きていたのだと…痕跡を残したかったのかもしれません。すみません。危害だけは与えないので、どうか手紙を書くことを許して欲しいです。気持ちが悪いなら読まずに捨てても良いです。そのほうが良いかもしれません。最後まで読んでくれて、ありがとう。

名前の無い彼の手紙は封筒と同じように真っ白な便箋にやはり機械的な角張った文字で書かれていた。私は不思議と今までの嫌な気分は忘れていた。それどころか、とても穏やかで優しい気持ちになった。心の隅っこでこの瞬間を待ちわびていたような、恐れていたような。

  • No.26 by 俊雪  2014-06-22 17:39:55 

彼女の目線が、文字を追いながら揺れていた。僕は、内容なんかより、由莉の表情が気になっていた。始めこそ不気味がっていたが、次第にそれは薄れ潤んだもになっていた。僕はひどく胸が苦しくなった。彼女に怪文書ともいえるものが届いたからではない。ただ、嫉妬したのだ。
ふと、彼女の指に力が入り紙の乾いた音がした。そして彼女の瞳から流れるそれで紙が濡れた。涙の理由はきっと想像通りのものだと思う。だからこそ僕にはどうすることもできない。だからこそ、だからこそ気が狂いそうなほどに嫉妬して行き場のない感情が苦しかった。いつか全部、彼女を僕のものにできると思っていた、それに僕も全部君のものになると思っていた。けれど、難しい。ただでさえ別の人格を自分のものにすることは難しいのに、僕たちにはそれ以上に困難だった。

私は彼の暖かくも不安げな視線を感じながらゆっくりと冷たく無機質な文字を追う。淡々とそして懸命に意思を伝えようとしてくる文章が心を静かに支配していった。もう、読むのをやめてしまいたい。そうすればきっとこれ以上、混乱することもなかっただろう。しかし意思とは反対に、読み進めてしまう。私はそういうところがあった。小さいころ、怒られると知りながら物を壊してしまいたくなったり、嫌われると予感しながらひどいことをしたくなったり、そうやって自虐的になってしまう。そうすることである種の癒しを求めていた。自分自身で自分を慰めて満たされていた。そして自虐的になることで外部から身を守っていた。母は毎日私に手を挙げた。しかしそれは母に対する父の態度が原因だとも知っていた。一時期は母のためにイイ子でいたが、それはかえって逆効果だったようではけ口を失った母は病気が悪化していった。そのころから私は顔色をうかがいながらいけないことをするようになり、ストレス発散の道具になろうとしていた。

  • No.27 by 俊雪  2014-06-23 14:55:19 

出会いは私が十五歳になったばかりの真夏。母子家庭になり三年が経過した頃だった。太陽がじりじりと照りつける昼間だった。太陽は存在を保持するかのように木々やアスファルトを焼き付けて、私はそれに逆らうように握った手のひらに力を込めていた。遠いような近いような、どこからかわからない蝉の声がうるさくて嫌に耳についた。母は私の隣で申し訳なさそうにこちらを見ていた。その顔がなぜか気に入らなくて無視をした。無視をしている自分を演じていたのかもしれない。そうすることで、どこか母に対しての仕返しをしているような良い気分になっていた。
それに対して、もうすぐ私の父となる男の隣で、しきりに男の顔色をうかがう少年が居た。年は私よりも二つ三つ下だろうか。幼さがのこる表情なのに、長く伸びた前髪が影を感じさせた。白い、とても白く細い体は、生きているのが不思議なほどだった。しわしわでだらしなく伸びてしまった黒いTシャツから出た腕は肘が骨ばっていたし、手首も異様にくびれていて指は小刻みに震えているように見えた。丸襟だったであろうその場所から細い鎖骨が浮き上がり、鎖骨の上下がくぼんでいた。人の鎖骨の下はくぼんでいるのだとはじめて知った。簡単に折れてしまいそうな首は異性を全く感じさせなかった。
少年の背中を男が押す。何故か私の掌がごつごつとした背骨に触れた気がした。脳に蝉の声が反響する。ゆっくりと瞬きをして、熱に負けぬように気を張る。地面をしっかりと踏みしめ、少年に向きなおす。少年は蛇に睨まれたように動かなくなり、細い喉には大量の汗が滴り、そのせいで伸びた髪が張り付いていた。喉が静かに上下した。まだ唾をのむほどの水分が体内に残っていたのか。なんだか私は少年を苦しめてしまいたくなった。なんてひねくれた考えだろう、しかしそんな考えに身を浸していることが心地よかった。お気に入りのおもちゃをついに壊してしまった時のような、罪悪感と甘美な達成感。どうすることもできない領域だった。例えば私が少年の首を絞めれば脆弱な身体は非力に抵抗するだろう。あるいは抵抗しているふりをするのかもしれない。しかしそこにあるのは「私の力」と「少年の耐久力」の問題であり、私の想像で計れるものではない。そのギリギリを知りたくなるような、ギリギリのその先に待つ未経験の地を知りたいような。それは生まれ持った探究心や好奇心であって止めることはできなかった。
考えから抜け出せないでいる私の瞳は少年の乾いた唇が動くのを見逃さなかった。声にならない声が、うっすらと開かれた隙間から洩れた。まるで最後の一言を言おうとして絶えるような儚い愛おしさを感じた。その間母と男のことは居ないものと感じていた。馬鹿みたいに蝉の声だけ響き渡り近くにも遠くにも生活音らしいものは無く、視界には目の前の獲物しか映っていない。少年はやっとの思いで一歩を踏み出して名乗った。愚かな、これから私という危険にさらされると知らずに、一番の脅威に素性を明かし始める。
「…はじめまして」
消え入りそうな声だった。しかしどこかわざと軽く話そうとしているような気のない話し方。背中に汗が流れた。
「今野…裕太です」
裕太、あまりに似合わない名前だと思った。可哀想なくらいに似合わない。きっと彼の母親は名付けるにあたってたくさんの想いをこめただろう。その願いの一つもかなえられていないような情けない存在だった。それがなんとも愛おしく感じた。
私は一番優しい顔を作って少年の震える右手を包んで壊さないように握った。同じように名乗り、簡単な挨拶をして、優しい姉を演じて絶望に満ちた少年に虚の光を与えた。
それから私たちとその親は同居を開始し、絵にかいたような家族ごっこを毎日繰り返していた。私は転校生として慣れない生活を送る裕太を気にかける優しい姉を演じ、母と相手の男はお互いを褒めあったりしていかにも仲が良くて不愉快だった。裕太は口数が少ないものの、私によくなついていた。休日には新しい父親が裕太と私を誘い買い物に連れて行った。それもまた、いかにも仲を深めようとしているのがわかって不愉快だった。欲しいものなどない。そんなもの既に隣にある。私は裕太が居ればそれで良かった。
おとなしく感情の起伏がない裕太が時折見せる笑顔をみて、時折見せる寂しげな顔を見て心は満たされていった。わざと軽く話すようなぎこちない歩み寄りも低い体温もすべて気に入っていた。依然として私のことを由莉さん、と呼ぶが呼び方は何でもかった。儚い存在が私のことを呼んでいる、それだけで喜ばずにはいられなかった。かといって、それを表立たせることはしなかった。一定の距離を保って仲良くしているふりをしたのだ。それは母親や新しい父親に対する当てつけだったかもしれない。なぜそのように意固地になるのか解らなかったが、もう慣れてしまって反抗期のように幼稚な態度までは取らなくなっていた。

  • No.28 by ぬこ  2014-11-08 11:49:14 

おもたすぎ
かくのやーめた。

  • No.29 by    2014-11-10 02:48:59 

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