矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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それは流石に悪いから、俺はソファーでいいよ。ベッドで寝るあなた、見てて面白いから
(なにかまた嫌味でも言われるかと思ったが意外と普通の相手にこちらも自然と敬語が抜けてついでからかいの言葉を言うが、本当は可愛いと思っていることは黙っておき。別に1日泊まるくらいなら早朝に帰宅して適当に済ませればいいと思っていたため、お風呂も歯磨きも服も全く気にしていなくとりあえず寝られればいいと思っていて。「それもそうですね。俺、笑に認めてもらってるんだ。うれしいな」と小馬鹿にさてもそれが相手らしいと思えば可愛らしく思え、相手の名前を呼びまた甘い言葉を会話の間に挟んでみる。ただし平らな口調なため嫌味にしか聞こえないだろうが。「…あなたは食べないんですか。…俺、風呂入りませんよ」久々にいただきますと手を合わせて丁寧に言いながら、恐らく色々準備に取りかかろうとどこかに向かう相手に風呂掃除ではと予想する。が着替えのことを考えると風呂は避けたいと思い自然とそんな言葉を投げかけていて。また一方で一緒に食べないんだと残念がる自分がいることにはこの時は気付かず。
(/いえいえ!それよりも返信遅くてすみません…。
矢谷が痛すぎて申し訳ないです;
あと甘甘も好物ですが、どどーんと暗くてぶっ飛んじゃってるのも好みなので←
どんな展開でもどんとこいです。むしろウェルカムです。
こんな奴でよければ、笑ちゃんをこれからも拝ませてください…!
でも、ソファーだと肩凝りません?面白いのは貴方だけです。
(以前ソファーで寝てしまった時に酷い腰痛と肩凝りに悩まされた記憶がある為、そう述べると寝顔が面白いときた。勝手に人の寝顔を、と悪態をつきそうになるが自分が保健室で寝てしまったのは自らの失態。それを相手の責任にするほど嫌な奴にはなりたくない。「少しだけですからね?本当に少しだけです。…そんな甘ったるいセリフ言ってて恥ずかしくないんですか」相手のことは生きてきた中で出会った人の中で一番信用しているが照れ隠しからなのかそう言っては視線を泳がせてしまい、自分だけに向けられたその甘い言葉は何よりも嬉しいがつい癖で嫌味を放ってしまって。しかし、相手の平らな喋りかただって嫌味に聞こえるんだからここはお互い様というやつじゃないだろうか、と自分にいいように解釈。「作ってると空腹忘れるんですよね。入らないんですか?気持ち悪くなりません?」変な所に拘ってしまう性格も持ち合わせているためか、風呂に入らないだなんて想像しただけでも体のあちこちが痒くなってしまう。相手は平気なのだろうか、それとも自分が気にしすぎなのだろうか。世間一般からしたら後者が正しいだろうが、自分の中では自分がルールなのでそんなことは気にせずに問いかけて。相手が入らないと言っているのだから自分だけ入れば問題はない。だったらシャワーで済ませてしまおう。出てきた答えに軽く頷いては冷蔵庫からゼリーを取り出して相手と対象になるように座り食べ始めて
(/此方こそ長い時間待たせる割には内容が薄くてすいません;
いえいえ矢谷さんは本当にもうどストライクなんですよ!
最近シリアスに対応したトピがなかったのでそう言っていただけると本当に嬉しいです‼︎
シリアスも甘々も大好きですよ‼︎
此方こそ、これからも素敵な矢谷さんをよろしくお願いします‼︎
このレスは蹴り大丈夫です!
床で寝て何ともなかったから全く問題ないかと。人と違うのは自覚してます。
(一度、帰宅してベッドまでたどり着けず眠りに落ちたとき朝起きてもピンピンしていたことを思い出せば意外と自分の体は丈夫なのではと思って。面白いと言われればどこかだと思うが面白くないにしても人とは異質なのは理解しているため自覚してると言って。「…恥ずかしくないと思いますか。…笑だから言ってるのに」反応が可愛いからというのは自分の楽しみのために黙っておく。相手の言うように正直口にするたびに寒気がするが普段とそこまで変わらないにしても相手がほんの少し照れたような人間味ある表情をしている気がして癖になってしまう。昔散々甘い言葉を吐いて今でも上辺だけでも優しくしているせいか言葉だけは頭に浮かんでくるためそこまで苦労はしないわけで。ただここに表情が加わったらもっと別の相手の顔が見れるのだろうかと考えると表情が作れるのではと思ってしまう。「…別に。仕事してると時間忘れて朝ってこともよくあるし」これでも一教師で一応真面目な性格なため資料やプリントなどは各生徒のために作っていたりして、朝シャワーを浴びるというのは日常茶飯事で。「おいしい…」食と言うのは人の本能を刺激するのかほんのわずかだが目が見開く。素直に感想を零すもゼリーを食べる相手を見ては「俺も普段食べないから人のこと言えないけど、毎日それなんじゃないの。…はい、ちゃんと食べて、笑」その冷たく細い体でゼリーなんか食べているから偏頭痛で倒れるんだと叱ってやりたい気分になるがここは甘くでることにして、少しだけパスタをフォークで絡めると相手の口元に近付けて悪戯に相手の名前を呟いて)
床で寝てたら風邪引きますから、ダメです。体冷えるんてですよ?
(保険医らしい最もなことを言っては面白いといったことに面白い返答をされて思わず笑ってしまいそうになる。それよりも相手が床で寝ることをやめるように言わないと。自分だって人とは少し違うし性格は歪んでいるが床で寝たことなんてない。いや、あるんだろうけど覚えてないだけかもしれなが。「その、笑だから、っていうのいいですね。…うん、オレだから。」そんな風に言われたことがない為か、何回かその言葉を繰り返し言ってみる。そんな時にふと見せてしまった困ったような人間じみた微笑みが零れてしまい、嗚呼気持ち悪いな今の、と思って。幼い頃に言われた気色悪い、なんて子だ、愛想がない、そんな言葉ばかり浴びせられたから自分でもなんて損な人間なんだと思ったことを忘れたことはない。でも相手が浴びせてくれるのは自分が今まで聞いたことはあっても自分に向けられたことのない言葉の数々で。仕事でよくある、という相手。根が真面目だから仕方ないと思う反面、保険医である自分には生徒用に何かを作ることなんてないので教師は大変だなと他人事のように考えてしまう。「当たり前ですよ、オレが作ったんですよ?その…貴方の…為に…」最後の方はもう小声で息を吐くような声になってしまい、言うのはこんなにも恥ずかしいものなのか、と。「夜はあんまり食べないんですよね。…それだけね」相手の差し出すフォークに顔を近付けるとこんなドラマのワンシーンのようなことを自分がすると考えるだけでむず痒い気持ちになる。髪を耳に掛けては丁寧に絡められたパスタを食べる。まともな物を夜に食べたのはいつぶりだろうか。思い出せないぐらい昔なんだろうなと思って
俺は体だけは丈夫だから風邪なんて引かないよ、多分。…でも笑がいうなら気を付ける
(相手が自分の心配をしてくれるなんて始めのころを考えると想像も出来なくて、調子にのってしまいそうになる。人の名前も甘い言葉も彼の前だと自然に零してしまっているからこわい。どこかで歯止めをかけなければと思ってもやめられず相手を遠ざけるように使っていた敬語も確かめるようにではあるが徐々に減っていて。「…嬉しい?」と相手の複雑な微笑みを見ては無気力な瞳で見つめて、無意識に語尾を上げれば相手の微笑む口元をまるで愛おしむように撫でる。嫌味ばかりの自分がこんなにも人が変わってしまったら相手は気色悪いといって避けるかもしれないと不安に思う。人に優しくして不安に思うなんてやはり相手だけで今まで蓋をしてきた欲があふれ出すぎないようにするのに努めたが、甘ったるいことに変わりなくて。どうしようもなく止められず、「…啓。」啓のために、なんて言って欲しくなり欲張りと分かっていながら自然と自分の名を口にして、照れのでない無表情をいいことに相手をまっすぐに見つめて。こんなに気色悪いのは多分今だけでちょっとしたら気持ちは冷めないにしても淡々と普通に何事もなかったように話せる気がする。今は自分でも気持ちの整理がついていないのだと言い聞かせ「俺となら食べられるよね」とこの流れに乗っかって言えるところまで言ってしまえと自分も食べられるかも分からないのにそんなことを口にする。すぐに相手から視線をそらせばそのままパスタにしては噛みすぎなのではと思えるぐらいよく噛みながらゆっくりと食べ進め久々にこれだけの量を完食するも全く苦ではなく自然とお腹はそれを受け入れて「ごちそうま。おいしかった…食器は洗わせて」と再び丁寧に手を合わせては平坦な口調でいい、御馳走になるだけでは悪いと食器洗いを願い出ながら、変に真面目な部分が出るのもやはり照れているからなのかも思ってしまったりして
でも、心配だから。
(こんな風に誰かの心配をするのなんて初めてで、だからこそこの変な感覚に戸惑ってしまう。胸にストンと落ちてくるはずの普通の感覚のはずなのに自分は今までが異常だったからかどうしても突っかかってしまう。こんな気持ちが初めてで、新鮮だ。どうしても違和感を感じてしまう新しく生まれた感情により精神がショートしそうになる。「…嬉しい」まるで子供のように、欲しかったオモチャを買ってもらえた幼子みたいに笑って。もともと幼い顔立ちがそうさせるのか、それでも何かのリミッターが外れたように普通に微笑んで。なんだこれが笑うってことなのか。貼り付けた笑みを浮かべていた頃と気持ちは変わらないはずなのにどうしてこのように笑えるのだろう。整理されていない精神が崩れそうになる感覚に目眩がして。相手がそのように呼んでくれと先程自分が求めたように言うと「啓」と素直に言ってしまい。家族の名前を呼ぶことさえ拒んだ、一日限りの付き合いで男女問わず呼ばれる自分の名前には違和感と吐き気しかなくて。なのに相手に呼ばれる自分の名前と自分が呼ぶ相手の名前がこんなにも愛しく思ってしまうなんてどうにかしているのだろうか。食べることを拒んでいた、食べないことで**るのならそれでいい。そんな気が触れてしまいそうな夜を何回も明かした。相手となら食を拒むことも減るかもしれない。「…ん」そんな風に頷いてみせては相手だって普段ろくに食べることはしないだろう。だったら一緒に食べればいい。「…オレ洗いますよ。」相手は先輩で来客者、というおもいが抜けていないからか、片付けをやらせるのは申し訳なく、やると言って。自分の家の勝手がわからないなら困るのではないか、という考えもあり
風邪を引いたらあなたが見てくれるから…もちろん無料で
(いつか硫酸が掛かっても有料じゃないと助けないと嫌味たらしく言われたことを思い起こせばその時害した気分の仕返しではないが、今なら自分を介抱してくれるという自惚れと自信から少しからかい混じりに言ってみる。それも相手の口からはっきりと心配という言葉を聞いて擽ったい気持ちになったのは事実で。また、気持ちの整理が付いていないのは相手も同じだろうと考え、普段の相手の調子が出やすいようにわざと嫌味っぽく言ってみせて。そして、相手の柔らかで自然な笑顔を見た瞬間、胸がキュッと締め付けられるような感覚、悲しいとか辛いではなくて表現としては感動して胸が高鳴る時の感覚だろうか。「俺も嬉しい」笑がそんな風に笑ってくれることが。今ここで自然に微笑めたらどんなによかっただろうと思う。相手の気持ちに合わせてやることができない自分がもどかしく憎たらしい。せめて彼のこの笑顔が続いてくれたら、また見れたらと思うのは自分勝手な我が儘で。「また、いつでも呼んでほしい」相手に名前を呼ばれて気恥ずかしく思い、何も無かったことに安心する。もし相手に名前を呼ばれたら嫌でも彼女を思い出してまた重ねてしまうのではないかと思ったが、そんなことは全くなくしっかり自分は相手を見ていて、相手が呼んだ自分の名前を認識し嬉しいと感じている。「君も真面目だね。変なとこ」任せてくれればいいのにと思いながら、呟かれた言葉は相手を遠ざける敬語はもうなくなって。「洗面所かりてもいいかな」と簡単な洗面だけでも済ませようと食器洗いは任せることにして聞いてみて
貴方が嫌って言うほど介抱してあげますよ、甘い言葉と一緒に。
(もし本当に相手が風邪を引いたらまず最初にほら見たことかと笑ってやろう。その上でねちっこく甘い言葉を投げ掛けながら介抱しよう。保険医の腕の見せ所だ。少しばかり口角を上げて相手が風邪を引くのを待ってみることにし、自分が風邪を引いても相手には言わないようにしよう、そんな悪知恵ばかり浮かんできてしまい。こんな風に笑うと相手はあんな反応を見せるのか。それは自分を拒絶しなかったし、この笑顔を気持ち悪いと言われたわけでもなかった。妖艶な笑みや貼り付けたものならいくらでも出来るのに、本当に嬉しい時しかこんな笑い方はできないんだな、と学んで。相手の笑顔をつくりたい。いい意味で相手に影響を与えたい。そんな思いは増えていくのに伝えるべき言葉は伝えられずに胸に残ってる。「…啓、笑って…貴方の笑ってる所がみたい…無理強いはしない。でもいつか、オレの為に笑って」そんな我儘を零してしまえば、相手が誰を自分に重ねているのかわかった気がする。彼女、そう自分と彼女をかさねているのだ。それでもいい、相手の中に自分の存在があれば。その上で相手を想うのなら許して貰えるのではないのだろうか。相手に及ばない、真面目な所は。「啓のが真面目ですよ。あぁ、リビング出てすぐ左にありますから」と洗面所の場所を教えてはキッチンに向かっていき、お皿や調理器具を洗いはじめて
どうしよ、風邪引きたくなってきた。
(何てこと言うんだと内心気恥ずかしさで焦ってしまう。甘い言葉言うのには慣れてきたが言われる耐性は全くなく、しかもそんなことを言いにそうにない相手に真っ直ぐな言葉で、少し悪戯っぽく笑んで言われるとむず痒く違和感がある。が、その違和感は相手がそんな言動をとってくれることが何よりも嬉しいからで。しかし焦った気持ちを言葉には出したくなくて心を落ち着かせれば、そんな相手が介抱してくれるなら風邪を引いてみるのも悪くないと上記を言って。相手には言えないが、相手を知るほどに愛おしく思う半面彼女の亡霊がちらついてしまう。自分が一人になるのが怖くて、自分の目の前で傷付く姿をみたくなくて自虐する彼女に泣いてすがって止めろとしか言えなかった。自分の辛さばかり考えて彼女を自分とこの世に繋ぎ止めようとした結果、残ったものはなにもなく失ったことばかりで。相手には同じ過ちをしたくないなんて、そんな卑劣なことを思う自分を呪ってやりたい。笑ってと言われて相手の為に本心から笑いたいと思っているのに笑えない自分が腹立たしくその不甲斐なさに全身の血流が研ぎ澄まされるようで、涙腺が緩む感覚がした。それでも瞳に変化が起こることもなかったが酷く喉が渇き言葉が上手く出てこず「笑が、そばにいてくれるなら」きっといつかと自分のエゴを僅かに掠れた声でいう。相手も同じ気持ちであればいいと、確認する方法は簡単なのにそれをしないのは相手を信じているからこその恐怖で。こんな自分でもまだ知らぬ相手の影を理解して救えたらと願って。「それは否定しない。…じゃ、借りるね」きっぱり言い切れば言われたとおり洗面所に向かう。相手も十分真面目だと思うが仕事関係や人付き合いに関して言えば自分は徹底しているのではと自負してしまう。笑顔は作れないにしても相手に告白したら嫉妬してくれるのではと自惚れるほどのこともしているわけで。正直興味のない、中にはクズと思っている他人にここまで出来ている自分が不思議で仕方ない。手早く洗面を済ませ手持ちのハンカチで水滴を拭い、リビングへ戻ると自分の鞄から仕事用のパソコンを取り出して「…俺することあるからシャワー入ってきていいよ」とここの住人対していうにはやや失礼だが、時間は無駄にしたくないし、自分が何かやっていたほうが相手も気が楽だろうと思いそう言って。
引けたらラッキーだって思えばいいですよ。
(風邪を引きたいという相手。引いたら引いたで介抱するが、熱などで苦しむ姿はあまり見たいとは思わない。実際、自分は風邪が長引くタイプなのであまり風邪は引かないように心掛けている、相手は風邪が長引くタイプなのかはわからないが。相手が自分と彼女を重ねているとわかった途端、そんな相手をどうにかして救いたいと思うようになってしまっている。自分は無力で役立たず、そんな自分でも救えるものが一つぐらいはあってもいいじゃないか。守りたいと思うものが一つぐらいあっても許されるんじゃないか。泣きたくて泣けないのは自分も同じで、それでもどこかに縋り付きたい思いがあるのももしかしたら同じなのではそんな考えが頭を駆けると、「オレは貴方の前から居なくなったりしない。啓がオレを必要とするなら、いつまでだってそばに居る。」いつかの自分では気持ち悪いと思っていた言葉がスラスラと出てくる。何なんだ、この気持ちは。今まで忘れていたものを取り戻したような、そんな感覚に頭が痛くなりそうになる。笑えないのなら無理に笑わなくていい。そう言ってあげられるのが正しい答えなんだろう。しかし、先程述べた通り、相手が自分を求めるのならいつまでも側にいるし、何度でもこの冷え切った手を差し出す。助け出せる自信はない、だけど傷付けたり一人にしない自信はある。相手が洗面所に行き、戻ってくると丁度良く食器洗いが終わった。「こんな所でも仕事をするなんて流石真面目くんですね。じゃあ行ってきます」少しばかり嫌味を混ぜてしまったことに後悔しながらバスルームに向かう。正直自分の傷だらけの体は目を背けたくなる。早々とシャワーを済ませそうとして
ラッキーかもしれないけど笑は体が弱そうだからなー…うつりそう
(滅多に風邪を引かない分、恐らく風邪を引いたときは耐性がないだけ酷いことになる気がする。もしそうなれば相手の甘い言葉どころではない上に、お世辞にも丈夫そうとはいえない貧弱とも言える相手に風邪をうつしかねないと思ってしまうわけで。相手の口から言われた言葉はあまりにも意外で一瞬思考回路が停止して。「生意気なやつ…俺も同じだよ、笑」自分が望んだ言葉をストレートに言ってくれる相手を抱きしめたくなるほど愛おしい。なのに先を越された気がして恋愛経験者としては嬉しくもしてやれた気がして照れ隠しに悪態を付いてしまう。自分では気が付かなかったがよく見てもそうであるか分からない程ではあるが微笑んでいて。「まあ、愛情深いですからね」と愛情の欠片もないと言われたことを思い出してはこちらも嫌味を言う。相手の嫌味はもはや何でもなく嫌味を言われたら嫌味を返すというお互いのお決まりの挨拶のような、言葉遊びをしている感覚で心地よい。相手はどう思っているか分からないが嫌味を聞くと自然な彼を見ている気がして妙に落ち着いてしまい。相手がシャワーを浴びるころナッティを膝の上に乗せてパソコンと向き合うが、先程のことが頭の中を巡り正直それどころではない。いつもなら数秒で打ち込める文章が数分と掛かっている気がする。相当きてる…と思うが今は仕事だと気持ちを切り替え個人的に生徒の行いをチェックしている手帳を取り出しパソコンの画面と照らし合わせては仕事モードに切り替わっていく。こうして手帳を見ていると中にはできすぎている生徒もいて、その一人を思い浮かべては大丈夫だろうかと思ってしまう。相手へ抱く心配とは全く違うが自分も人の子で教師という職業を選択した以上、気には掛かるわけで「アイツもっと肩の力抜けばいいのに」とぼやきながら相手がシャワーから出てくるのを待って
…どうしたんだろう。
(シャワーを浴びながら思考するのは自分の変化。相手を失いたくないと思う気持ちと比例するように生まれるのは失ってしまった時の喪失感と孤独感。一人になることも傷つく事も慣れているはずの体が小さく痙攣する。もし明日、また一人になるとしたら自分はあの貼り付けた笑みを浮かべることが出来るのだろうか。いつものように悪態をついたり嫌味を言うことが出来るのだろうか。怖い、一人になることが、相手を失うことが。今までは平気だったことが怖く感じる。そう思ってしまうと置いてあったカミソリの刃に手を伸ばしては左腕を傷付けてしまう。滴り落ちる血は赤く、自分がそこに存在していることを物語っていて吐き気がした。排水溝に流れていく血を冷ややかな目で見つめると一回に留まらず、二回三回と切って。そんな時に思い出すのは相手のこと。涙なんてもう出ない、その変わりに出るのは自嘲じみた笑み。ほら、自分はこんなに弱い。血を止めるために冷たいシャワーで手首を濡らしていき、若干止まれば浴室から出て。いつも着ている長袖のロンTとサルエルを履いては鏡にうつる幼い顔の自分の顔が暑さでほんのり赤くなっている。まるで恋をした中学生のようだ。気持ち悪い、こっち見んな。いつかクラスメートに言われた言葉を思い出しては本当にその通りだと。相手の待つリビングに戻れば「ナッティと仲良しですね」と
(仕事を進めていると背後から声がして、キーボードを打っていた手を止めるとそちらを向く。そしてその表情を見た瞬間、浮かれていた自分を殴ってやりたい気持ちになる。この表情は知っていた。彼女も自傷した後同じように何でもない顔をして笑って。冷たく黒いものが自分の中に渦巻いて、やるせなさに吐き気がして目の前が見えなくなりそうになるが今ここで彼を見なければ彼を失ってしまいそうで。ナッティと床におろすと、席をゆっくり立ち普段よりも更に感情のない瞳で相手を捉える。そっと傷のある腕を手に取ると、やはりそこには真新しい傷があって目を背けたくなるが、それをしっかりと受け止める。以前なら、また何でこんなことをと泣いて叱っただろうが今は違っていた。真新しい傷の上をそっと指でなぞってから一度その手を離す。自分でもなぜそんなことをしたのか分からないし、無意識の行動だった。相手の目の前で机の上にある自分の筆箱からカッターを取り出すとカチカチと音を鳴らしながら刃を出し、自分の手首に宛うと力を入れてゆっくりと横に引く。慣れていないせいか力加減が分からず傷口は深く、血がじわりと溢れでて、それをどこか人事のように眺めていたが、痛くないはずがなくこんな痛みを彼は毎日のように自ら負っていたのかと腕の痛みよりも心が張り裂けそうになる「…痛い」一言呟く様は、泣いて叱るよりかなり狂っていると思うが今、彼を理解して彼のこの行為を否定していないことを伝えるにはこの方法しか思いつかなかった。むしろそう伝えたかったのか自分でも分からない。ただ彼の痛みを共有したくて、こんなにも狂った欲を持っていると知ったら逃げられてもおかしくない。血の滴る手でいつもより少し暖かい相手の頬に触れると「笑、俺はここにいるから、大丈夫だから」と子どもをあやすように、また自分に言い聞かすように何度も呟いて。
…バカ…啓はやらなくていいんだって…!
(相手の傷一つない腕に赤い筋が浮かぶと気が狂ったようにカッターの刃の部分を握って。もしかしたら相手がまた切ってしまうかもしれない。何でバレたんだろう、そんな疑問よりも相手が何でこんなことで伝えてきたんだろうという思いのが強くて。傷付けたくない相手を自分の手で傷付けてしまった。もうオレなんて**よ。そんな思いがぐるぐると胸に渦巻いて離れない。気持ち悪い。吐きそうだ。カッターを握っていないほうの手で血が滴る相手の腕を掴んではその血を舐めとって。汚いと言われるかもしれない。これが正解かはわからない。だけどどうしてもこんなことをしてしまうのはどうしてだろう。自傷行為をする相手があの日の兄と重なった。手放したらどこか遠い場所に行ってしまいそうな感覚に陥る。「…行かないで…行かないでよ…オレきっとダメな子だった…いい子になるから…」気が動転したのか言葉が幼くなってしまう。確か兄が死んだ時は人間なんて所詮はこんなもんか、とゴミを見るような目で見ていられたはずなのに。不謹慎だが相手が死んでしまう所を想像すると体の半分が持っていかれるような立っていられない、地に足がつかなくなる。お願いだから一人にしないで、お願いだから自分の前から消えないで。そんな女々しいことを思ってしまう。自然とカッターを握る手に力が入ってしまい指に食い込む刃が心地いいと感じてしまうあたり感覚が麻痺しているのだろう。「…啓」そう呟く自分の顔が泣きそうに歪んでいることなわからなくて
(またやってしまったと思った。何をしても自分は間違った選択しかできないようで、自分の狂った欲のためにさらに相手を傷付けてしまい、彼を失った世界を想像すれば絶望しかなくて。「笑…?」傷口を相手の舌がつたう感覚にピクリと反応するが、嫌な気持ちはなくただ押し潰されそうな胸の中でそれをただ受け入れる。相手の様子が俄に変化したのを見て、すぐに兄と重ねていることが分かった。相手が何をしようと、どんなことがあっても相手から離れたくないのに不安にさせることしかできなくて自分の弱さの馬鹿さに吐き気がした。そして泣き出しそうな相手をそっと抱き寄せてカッターの握る手の力を抜かせるようにその上から優しく包み込むように握って「…笑、ごめん。どこにも行かないから。いい子になろうとしなくていい。俺が笑の全部を受け止めるから。俺をそばにいさせて」抱きしめる力が自然に強くなれば泣いてもいい、というように背中を優しくさすってやる。「えみ、笑がいないと苦しいんだ」何度も相手の名前を呼んで自分がここにいて相手を狂おしいほどに望んでいることを伝えるために甘い我が儘を何度も呟き、それはいつもの平坦な口調ではなく切なく強く相手を求める声色で
啓…啓、お願い…
(何かを失うことに慣れている心が何かを失うことを恐れている。兄が死んだ時も親に拒絶された時も、失ったものは家族の絆だとか情だとかたくさんあったはずなのに、相手を失うことがこんなにも怖いなんて。その存在を確かめるように何度も何度も相手の名前を呼んで。力が抜けた腕から相手のものとも自分のものとも言えない血がついたカッターがすべり落ちる。手のひらが血にまみれていることは容易く予想出来る、なのに抱き寄せられた自分の体が震えていることに気付くのには時間がかかってしまった。「本当に、本当にどこにも行かないで。お願い一人にしないで。そばに居て。ダメな子だけど捨てないで」きっとこれを言いたかったのは幼い頃の自分だろう。そんなわかりきったことを言ってしまうなんてどれだけ相手に甘えれば自分は気が済むのだ。バカだ、こんなに相手を困らせて。そんな風に思っていれば、笑がいないと苦しい、いう相手の言葉が心にストンと落ちてきて。「啓がいないと、オレも苦しい…痛いんだ」これは共依存だろうか、それでもいい。誰かに求められるならそれを満たすことで自己満足に浸れるだろう。いいじゃないか、自分を必要としてくれる人が見つかったんだから。
(相手はダメな子だと言うがそんなことは微塵も思わない。むしろダメなのは自分のほうで、相手の震える体を抱き寄せながら血にまみれた手のひらを口元に持ってくると相手が先程したのと同じように深い傷口を舐めてやる。口の中に広がる鉄の味は良い物とはとても言い難いが嫌悪感はなく、相手のものと思えるだけで特別に思え自分の体内に流れていく感覚が快感にすら思える。行き過ぎたその欲情は相手を手放したくない思いと比例していて、むしろそれ以上にそばに居ることを願って「ダメな子じゃない。笑の全部が好きだから。笑を愛してる」これが恋愛感情からくるものなのかは分からないが一番言いたかった言葉をやっと言えた気がする、そして無意識に今度は確かにふわりと微笑んで。自分でも全く気が付かずすぐにいつもの表情に戻るが相手を抱きしめ呟く言葉の優しさは変わらず「笑がいるだけで俺は強くなれるし弱くなれる。苦しみも痛みも全部、笑となら良いって思える。嬉しいんだ。笑、愛してる」またお互いの傷口から溢れ出てくる血が今は二人の絆を強めているようでそれさえも愛おしいと思えてしまう。血の流れる相手の手のひらに自分の手を合わせ指を絡めると再び強く抱きしめて「俺には笑が必要なんだ」と相手に自分がどんなことがあっても離れないと分からせるまで何度も言ってやるつもりで感情のある声色で呟いて
…啓、オレの血は汚いから…
(相手の舌先が自分の血に染まる光景に艶かしい何かを感じてしまえば肩が少しばかり跳ねて。嫌われて育った自分に流れてる血なんて汚いものだろう。傷口に入り込んでくる唾液が染みるがそんな痛みさえも愛おしい。感覚が一つ二つ狂っているのではないのだろうか、そう言われても不思議ではないだろうが。「好き、好きだよ、愛してる…」こんなことを誰かに伝えたことなんて今まで一度だってなかった。だからこのむず痒い気持ちがまだ心の中に蠢いている。相手が好きだだとか愛してるだとか伝えてくれた時に彼女と重ねているんだろうと悲観的になってしまったが、その後に自分に向けられた微笑みは自分が先程望んでいたもので。相手の笑顔に安堵してしまう、ほら、貴方だってこんな素敵に笑えるじゃないか。求められることがこんなにも嬉しいものだとは知らずに生きていた、誰よりも暗い場所で。「啓が居ないとやだ、辛い。だから一緒に居てよ。恋なのかとかわかんない。だけど好きなんだよ、愛してるんだよ。」愛の言葉を伝えたことなんてなかったから、どう言えば上手く伝えられるかがわからない。必要なんだ、と言われ、今までの自分だったらその場しのぎの言葉で繕うな、なんて捻くれたことを考えていただろう。しかし、その言葉に応えたいと思ってしまって。彼女と重ねてもいい、誰かの変わりでいい。ただ「啓のそばに居たい…」
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