矢谷啓 2014-05-13 19:43:45 |
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話を大きくしすぎましたね。
(世界基準と言われれば確かに甘い点が沢山あるだろう。自分では足元に及ばないぐらい非情な人間なんてたくさん居る。その中で自分が一番なんて言うつもりはないが。「…大切な人間や物なんて作らないで、知らない方が幸せなんですよ、きっと」冷たく言う相手に対してわざとや演技ではなく、本心からそう思ったことを述べるとなんだか自分が弱みを見せたみたいで嫌な気持ちになる。実際見せたことはあるが、兄の話を全部したわけではない。あんな話、してる方も聞く方も嫌な気持ちになるだけでメリットなんてないだろう。話したくなったら話せばいい。自分の人生はどう足掻いても絶望だ。「先生のが多く貰ってるんじゃないですか?オレ、結構貯金してたんで」そんな風に言っては相手が自分より少しばかり身長が低くなったことに笑ってしまい、そのままの勢いで愛犬の名前を呼ぶと奥からナッティが現れて
まあ…そう思うのが一番楽ですよね。
(大切な人間を作らないのは自分自身が意図的かつ無意識にやっていることだ。しかしそれを否定的に見ている自分もいる。人との関わりを持っている以上、自分が大切に思っていなくても相手は分からない。大切抜きで考えても自分の弱さから他人を避けるのは単なる子供じみた我が儘でもある。幸せから逃げるなんて簡単なことだ、と己自身に言うように呟いて。「…どちらが多いかはともかく、貯金はしますよね。大切な物とか逢着しているものがないのに可笑しな話ですが」また相手との共通点を見つけてしまうが貯金なんて誰でもあることだと思うようしに、そもそも老後だとか生にしがみついているわけでもないのに貯金なんてやっぱりそれなりに生きることを選択しているんだと感傷に浸っては気分を害すが犬が近寄ってくればその気持ちも僅かに軽くなる。他人の自分が突然来たことを驚かせないように身長も気にしなくて済むとしゃがんでは目線を低くして挨拶するように自分の手の甲の匂いを嗅がせ犬が触ってもいいというサインを出すまで待つ、内心かわいいと思いながらも警戒心を煽らないように声には出さずに)
どうせ失うのに、なんで大切なものを作ってしまうんでしょうね?
(誰に問いかける訳でもなくそう言う。幼少期に失ったものが自分には多過ぎる。幼いながらに覚えた自傷行為は自分が生きてることを確認するためだった。それがいつからか、他人に触れることで自分という人間がちゃんと存在しているか確かめるようになった。幼いがための無知が招いた事態は沢山あったはずなのに、誰も自分に手を伸ばしてくれる人など居なかった。相手はどうなのだろう。どうしてこんなに無表情を繕っているのだろう。そんな疑問が浮かんでしまっては、つくづく自分が弱い人間だと再確認してしまい。「…オレは人にも物にも執着しないようにしてるけど、貯金だけしとけば路頭に迷うことも無いでしょう?」明日果てるかもしれないこの下らない命が今だけは路頭に迷わないようにと貯金をしているのは自分独特の考えだろうか。自分の愛犬が相手に媚びているのに嫉妬感はなく、むしろいつもはキャンキャン吠える愛犬がなぜか懐いているのが不思議で。「あれ、珍しい。ナッティが懐くなんて。触っても大丈夫ですよ、ちゃんと育ててあるんで」と言っては自分はリビングに向かい
さあ。…それよりも俺に手伝えることあったら言ってください。お邪魔するだけというわけにはいかないので
(相手から呟かれた言葉に無意識にカゾクやユウジンから受けた過去の傷を隠すように自分の腕を掴んでもうその話はやめてほしいと目線を反らしわざとらしく話題を変え一瞬見せた弱みをはぐらかそうとして。続く相手の言葉には「過去に執着してるのでは」と言いかけるが自爆して自分が囚われている過去を話してしまいそうなため「そうですね」と軽く同調するだけに留める。「犬だって生き物ですから挨拶になしに触られたらびっくりしますからね。あなたじゃありませんが動物には好かれるんです。…先生でもちゃんと育てられるんですね」かわいいと呟き撫でながら以前相手が言った小動物に好かれるという言葉を思い出し似ていないことを頑なに否定しつつ続けざまに嫌味を言う。しかし意味合い的には相手でもちゃんと命を責任もって育てることが出来ているじゃないかと諭すもので。相手がリビングの方へ向かうとナッティを名残惜しむように撫でた後、どんな部屋だろうと思いながら付いていく。万が一似ているとしたら必要な物以外は置かない殺風景な部屋なはずだが。
やっぱり貴方はオレと似てる
(相手をリビングに招き入れる。広々としたその空間に置かれているのは情け程度の家具とテレビで。相手が自らの腕を掴んだことを片目に捕らえては、少しばかり気になったのかあの貼り付けた笑みを浮かべながら相手の腕を掴む。氷のように冷たい手で。「貴方の過去に何があったのか知りませんけど、オレよりも辛いんじゃないんですか。そうやって体裁を繕っているだけなんじゃないんですか」と目を見ながら問いかける。思わず見えてしまう線状の傷には目をくれない。自分でつけたその傷が恨めしい。冷たく沈んだ空気と空間に幼さが残る顔立ちから発せられる言葉は重いものであって
何を言い出すかと思えば…。別に俺は何も言ってませんし、どっちが辛いとかは比べるものでも決められるものでもありません。…あなた耳悪いんですか、俺は何か手伝うことはないかって聞いたんですよ。それに人が嫌がる話をするなんて子どもですか。(やはり人より鋭い相手には誤魔化し切れなかったかと内心苛立ち焦る。腕を掴まれ、相手の自傷の痕を見れば、同じだと思う。過去に愛した人と。悪寒と吐き気がまた襲うが表情だけはひどく冷めていく気がした。口では辛さは比べられないというが相手のほうが辛く苦しんでもがいているに決まっていると思ってしまう。今ならこの空気を変えられるし己の精神もまだ余裕はある。そう思えば冷ややかな口調で言い放つが動揺のせいか口数も多く僅かに早口になって
子供でもいいですよ。オレは貴方のことが知りたい。
(自分が知りたいのは相手の過去。それを知った所で弱みとして相手を脅すつもりはない。ただ、相手が何故そんなに人を拒み、自らを閉じ込めようとするのかが気になって。貴方が弱みを見せることを嫌うのは理解出来る。自分と重なる部分があるからだ。ただ、自分と相手の違いを見つけるためには自分は相手を知らな過ぎる。何か知ることが出来れば、相手が自分と同じ括りにされることを嫌う理由がわかるかもしれない。赤茶けた手首が古傷ではなく新しく作られた傷だということを語っている
知りませんよ、そんなこと。俺がなんで貴方なんかに
(相手から逃げようと視線を反らしても嫌でも目に入る手首の傷。自傷は否定しない。それは人の自由でありその人の生活の一部で寝たり食事をしたりすることと同じ行為。そのことに気付くのが自分はあまりにも遅すぎた。自分は自分の苦しみに溺れるだけ溺れて振り切った気になり他人の苦しみなど上辺でしか理解しようとしなかった。だから自傷する人は溺れたまま振り切れずただ辛くて逃げていると決めつけていた。相手の前いると過去の嫌な自分ばかり思い出す。「なんで…」ひどく冷たい手首を掴んでその傷を見ては嫌でも過去が脳裏をよぎる。恐らく彼と似て非なる過去。自分で自分を追い込んで自殺した彼女は酷く病んでいた。傷は日に日に増えてやつれて痩せて、それはまるで…「貴方は何に苦しんでるんですか。」話すなら自分から話すのが礼儀だと言うように手首を掴む手に無意識に力が入り強く握りしめ無感情に見据える、逃げられないと分かっていながらこのまま彼が彼自身と向き合い、己の過去の話を相手の闇に包まれた過去とそして今の話にすり替えてくれればと。
…それもそうですね。
(なんで貴方なんかに、その言葉によって突き放された気持ちになる。無理もない。相手は自分を嫌っているのだから。何を言っても否定、或いは信用してくれることはないのだろう。自分からその道を選んでしまったようなものだから弁解なんて今更しない。掴まれた手首が酷く痛む。昨日切りつけた手首に爪が入ってくるような感覚だ。どうしてか、なんて問われてなんて答えれば相手は信用してくれるんだろう。自傷行為に追われる日々。昔から何でも出来た兄と比べられることが嫌だった。そんな兄が自傷行為をはじめたとき、なんでお前が、そんな嫉妬を覚えた。死にたいとかこの世から消えたいとかそんなことは思わない。ただ思うことはどうして完璧な人間ほど死を選ぶのだろうという疑問。「…何に苦しんでるんでしょうね…背負うものはもうなくなったはずなのに」貼り付けた笑みを浮かべながらそう述べる自分の気持ちが歪みきっているはずなのにどうして泣きたくなるんだろう。それでも泣けないのは何かが気持ちに突っかかっているからで
貴方は悪くないから。ただ、今は言いたくない。
(相手の表情と手首を握った感触で我に返れば、何を傷心してるんだと内心舌打ちする。目の前の彼のことは嫌いじゃないのに過去を気にする自分を認めたくなくて突き放すようにしてしまったこと悔いれば謝罪の言葉が自然に零れる。今傷付いているのは自分じゃない。過去を明かし相手に余計な感情を抱かせてあやふやにならないためにも自分の中に渦巻く胸の痛みを押さえ込み今度は優しく相手の手首を包み込むように撫でてやる。保健室で彼と話し、寝顔を見た時、彼の本当の笑顔を見たいと思った。多分それは自分の我が儘で彼女の面影をどこかで重ねていて。それでも相手自身をなんとかしてやれば気付けば成っていた無表情も少しはよくなるんじゃないかと。感情の制御は上手いと思っていたがこうも振り回されると笑えるんじゃないかとさえ思えてくる。しかし傷の舐め合いのような馴れ合いは彼も好きじゃないだろうし、己のエゴで救いたいなどと言ったら今の貼り付けた笑顔で突き放されるのだろうか。そう思いながら「何に苦しんでもいい。苦しむことは悪くない。ただ、一人で苦しむな」と彼女の面影ではなく相手をしっかり捉えて普段と変わらぬ口調で言う。考えを巡らせたすえ相手の不安な気持ちを今考える余裕はなく散々突き放しておいていきなりこんな言葉足らずなことを言われたらどう思われるだろう。突発的で自分からこんな言葉を言うなんてやや癪に障るが相手へ抱く感情を伝えるのは今しかないと思えば、これが精一杯で。
そっか…
(相手がそう言えばもう踏み込むことはやめようとそれ以上聞くことは止めて。こんなに傷を作っても死ぬことなんて出来なかった。傷を作るたびに生きてる感覚を思い出すようで逆に辛くなることもあった。苛々して物にも当たることもなければ人に当たることもなかったが、その分自分に当たった。それが自傷行為の時もあれば食を断つことだったりしたこともある。要するに自分は思っていたほど強い人間ではなかった、過大評価し過ぎていたのだ。相手の過去に何があったのか知らないが、何かあったら話して欲しいし当たってくれてもいい。そう考えているのに上手く伝えられない自分のボキャブラリーの少なさがもどかしい。「…それ、貴方にも言ってあげたいですよ…でも、ありきたりなことしか言えないけど、ありがとうございます」抱え込むのは相手も同じではないのか、そんな考えがあるからかやはり嫌味っぽく言ってしまう。そんなつもりはないのに、こんな言い方になってしまうのは仕方が無いことだろう。しかし、その後に貼り付けた笑みとは少しばかり違う、困ったような泣きそうで泣けないような表情を浮かべて。それは実に人間臭く、なんとも切なく寂寞を漂わせていて。相手に目を合わせながらお礼を述べると地に足がついていない自分の存在を確かめるように相手の手を握って
(自分も相手もどうやら言葉で何かを伝えることに関してかなり不器用らしい。嫌味はすぐに出てくるのに上手く気持ちを伝えられないもどかしさは相手も同じだといいと考える。そこで似ている、と思ったがそのことは胸の内にしまっておくことにして。今は相手の遠回しな言い回しも嫌味とは感じられずむしろ心地よくしっくりくる気がして全てのフレーズが自分に合っているとさえ感じれば「あなたって俺の心読めるんですか」と冗談を言っては複雑な表情を浮かべる相手に彼自身がそこにいることを自覚させるように、いつか保健室であった偽りの抱擁ではなく、心から包み込むように抱きしめ耳元で「ありがとう」と小さく呟く。一連の動作はかなり不器用で、内心どう思われているとか身長のことを考えるあたり捻くれていてこれはなかなか消えない癖になりそうだと思っていて。しばらくは自分がそうしていたかったため相手の頭を撫でながら抱きしめていたがフと「…ところで初山先生。お腹空きました」とこの場にはかなり似つかわしくない子どもじみた言葉がもれる。これも酷い緊張から解放されたせいか至極久々の空腹を感じ、そもそもここに来たのもパグとご飯のためだったはず、と思い至れば相変わらずの無気力感でボソリと零して。
読めたらいいんですけどね?
(心の苦痛に歪めた表情をどうにかして変えようとするが、なかなか変えることが出来ない。いつも浮かべている張り付いた笑みならすぐに変えることが出来るのに、こんな時に限って変えられない。まるで息を吐くように嫌味や皮肉は出るというのに肝心な言葉は伝えられずにいる。相手の体温を感じてしまうと保健室での出来事を思い出してしまうが、今日はこの前とはやや違う感覚がして相手に見られないことをいい事にほくそ笑んでしまい。ありがとう、と呟かれたことにお礼を言うのはこっちの方だ、と内心思うが言わないでおいて。「…全く、ムードってもんがないんですか?まぁ、でもお腹は空きましたもんね。」と皮肉を混ぜて言うと相手から離れてキッチンに向かって冷蔵庫の中を確認して。相手はナッティと遊ばせておけばいいだろう、そんな思考を働いては冷蔵庫から野菜を取り出して
読まなくていいです。…先生、こうやって笑うんですよ
(相手の言葉が終わる前に重ねるように即答すれば、未だに表情が歪んでいる相手を見て自分は間違ったことをしてしまったのだろうかと思う。相手が思わず笑ってしまうなんてことはないだろうが速くそんな顔が見たくて以前相手にされたように自分の顔の口角を指で押し上げて見たりして。相手の体温はやはり冷たいがその冷たさが今自分の目の前にいるのは彼なのだと教えてくれているようで心地よい。「…むーどって何ですか。貴方の口からむーどとか驚きです。俺に教えてください。……毒盛らないでくださいよ」確かに先刻の雰囲気に関してはかなり無頓着で正直ムードはよく分からない。そして言葉が思い浮かばなかったことが嘘のように嫌味と皮肉は口から滑り落ちるように出て。相手が台所に行くのを見ればナッティと遊ぼうかとも思うが何となく先程言ったムードとやらが気になり付いていけば「で、何か俺に手伝うことありますか」とつい先程相手に無視された言葉を言って。
…パクリ。
(相手が口角を指で上げているのをみて上記を述べると幼く笑ってしまい。思わず笑ってしまえる相手の行動に目を細めてはそれでも貼り付けた感が残ってしまうのはもうそう笑うことが癖になっているからで。ムードとは何かと問われれば何と言ったら伝わるのだろう、言葉を慎重に選ぶように「…ムードっていうのはその場の雰囲気みたいなものですよ、簡単に言うと。毒なんてありませんから」と言いながら冷蔵庫から出した野菜を乱雑に切り始めて。何か手伝うことはないかと問われれば何もない、とは言えずに「そうですね…出来れば邪魔にならない程度にナッティと遊んでいてください」と
駄目でしたか…意外と行けると思ったんだけど
(相手が思わず笑みを零したのかは分からないがいつもと違うというだけで、どこか貼り付けた感が残っている。それでも彼なりの笑顔ならそれでいいかと思いつつ、口ではまだまだ自然な笑顔には及ばないとやや残念そうな口ぶりで。「ムードの言葉の意味ぐらい知ってますよ。あなたがムードとか気にするんだなって…。そもそもさっきムードなんてありましたか」ムードの言葉の意味を説明されるとそういうことじゃないとたたみ掛けるように、それでも淡々とした口調は崩さずにそれこそ先程の雰囲気を壊すようなことを何でもないように言って。「分かりました。…本当にできるんですね、料理」こちらが折角手伝ってやろうと…といつもの調子で内心毒突くが料理は特にしないため本当に邪魔になりそうだと思えばリビングでナッティと遊びはじめる。そしてまな板にふれる包丁の音を聞けば疑っていたわけではないが皮肉混じりに言って)
もう少しナチュラルにいけないんですか?
(残念そうな相手を他所にそんな風に指摘するとあの貼り付けた笑みを浮かべてしまい、嗚呼今のまずかったかな、なんて心中で後悔と反省をして。「なんとなく言ってみたかっただけですよ。いいじゃないですか、言うぐらいなら」まるで子供のような返答をしてしまった自分に少しだけ嫌気が差したがそこはまぁいいだろうと。こうして話してる間も手は止めずに確実に料理を進めていって。「なんです?信用していなかったんですか?」野菜から相手に視線変更すると心外だと言うように眉根を寄せながら呟いて。一応これでも料理店でバイトしていたことがある。それは言わなかったがむ、とした表情をしては相手が納得するぐらい美味しいものを、も意気込んで
先生が笑ってくれたら笑えるかと…ですから俺もあなたが笑えるよう努力してみます
(貼り付けたような笑顔を見ては速く笑ってほしいと言うがそんな押しつけや強制は自分の我が儘で相手に負担を掛けさせてしまうと思い直せば、付け足すようにそれでも真剣な顔で相手を見て。「…あのまま俺がお腹空いたって言ってなかったらどうしてましたか」と台所から聞こえてくる調理の音を懐かしいではなく新鮮に感じながら、フと気になったことを表情が見えにくいことを良いことに聞いてみて。「いえ、別に。楽しみにしてます」と素っ気なく返しつつ内心、あれ何で俺まだコイツに敬語使ってんだという考えが過ぎったが口には出さず。
…やっぱり、笑顔張り付いてますよね。
(ちゃんと笑えなくなったのはいつからだろうか。思い出そうとしてみても相当昔のことなので思い出せなくて。逆に思い出せないのではなくて思い出さないようにしているのかもしれないが、昔の自分はそれなりにちゃんと笑えてたのではないのだろうか。真剣な顔で見られては思わず吊られて真剣な顔になってしまう自分が居て。「オレがお腹空いてたんで多分流れで作ってましたよ」相手の問いかけにスラスラと答えるあたり、本当にそう思っていたのだろう。実際問題、自分もそこそこ空腹だったわけで、食事を摂らないことは慣れているが客を招き入れた以上、作らないなんて無責任はことはしなくて。楽しみにしてるという相手にキッチンから相手に見えるように親指を立ててみせ
大丈夫ですよ、俺なんかこれですかね
(自分が真顔で言ってしまったせいか相手のそれに影響され沈んだ気持ちになっているのを察すれば再び口角を小さく指で上げて見せる。笑えないのはお互いさまで、気にすることでもないと。「なんだ、じゃあ同じ……ですね。気持ち悪いな」これじゃあまるで以心伝心みたいではないかと思ってしまい、言葉に詰まる。どうやら今の相手と話しているときは幾分か感情が出やすいらしい。そんな自分が気持ち悪く最後にそう呟いて。親指を立たせてきた相手の行動はなかなか新鮮で意外に思いつつ、今のが自然な行動なら少し嬉しいかもしれないと思って。
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