和奏 2014-05-13 18:57:47 |
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怖い話 A damp dark apartment
ある日の道端のドブに蛙が一匹死んでいたのを見かけたときのことだった。
近くにあるアパートに幽霊が出るとの噂があった。
でも僕はそんなありきたりな幽霊話は信じなかった。
どうせ誰かが面白半分に言ったくだらない作り話だと思っていた。
たとえそれが本当であったとしても、そんなくだらないことに付き合っている暇は僕にはなかった。
僕の母ちゃんは重い病にかかっているんだ。
生活するのもやっとなくらい厳しい生活なんだ。
僕は毎日母ちゃんの看病をしている。
父ちゃんは僕がオギャアと産まれた瞬間に死んだんだ。
だから父ちゃんはいない。
母ちゃんと僕の二人暮らし。
お金は母ちゃんが元気だったときに働いた分のお金しかない。
それも残りご飯粒を小指で潰すくらいしかない。
だから病院にも行けない。
そんな中で僕と母ちゃんは生活していた。
ある日、こんな噂が耳に入った。
あの幽霊が出るとの噂があるアパートで幽霊が存在すると証明する写真を撮れば100万円贈呈すると市から発表されたらしい。
僕は嘘だと思ったが、もしそれが本当ならチャレンジしようと思った。
なんたって市から100万円贈呈されるんだ。
仕方がなかった。
生活するのもやっとなくらいの厳しい生活の僕にはお金という言葉にものすごく弱くなっていた。
チャレンジしようと決意した。
母ちゃんにそのことを言って、僕は右手にデジカメを持って、あのアパートに行った。
あのアパートに着いた。
しかし、何かおかしい。
噂は広まっているはずなのに誰一人人の姿は見えなかった。
この噂が本当なのか心配になってきた。
だけどもし自分が一番だとすればこれはチャンスだと思った。
迷いなくアパートの中へ足を踏み入れた。
もとより僕は幽霊なんて信じていない。
だから怖くはなかった。
噂に聞いた一番幽霊が出やすいところに僕は向かった。
そこに着いた。
けど、幽霊がいる感じはしなかった。
僕はてきとーにカメラで写真をパシャパシャ10枚ほど撮った。
そして撮った写真を見てみた。
......そこには母ちゃんが写っていた。
なぜ母ちゃんが写っているのか分からなかった。
急いで家に向かった。
僕の足が勝手に動いて家に向かっていた。
家に着いた。
母ちゃんのところに急いで行った。
......母ちゃんは死んでいた。
布団に横たわったまま死んでいた。
幸せそうな顔をしていた。
僕は目から塩水が流れていた。
僕は母ちゃんに何かしてやれただろうか。
僕が母ちゃんの子どもで良かっただろうか。
いろんなことが頭のなかに出てきた。
ただ一つだけ悔しかったのは、母ちゃんの死に目にいられなかったことだった。
四日後、僕は家で死んでいた。
机の上には市から贈呈された100万円が置いてあった。
僕が撮った写真に写った母ちゃんの口の動き(母音)を1枚目から見てみると、
1枚目「お」
2枚目「あ」
3枚目「え」
4枚目「お」
5枚目「お」
6枚目「お」
7枚目「い」
8枚目「お」
9枚目「お」
10枚目「い」
11枚目「え」
12枚目「あ」
13枚目「う」
となっていた。
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