写し人 2014-03-29 14:58:20 |
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フィオナ『オージェ?』
オージェ『あったり~。』
《馬車を先導する形で馬に乗っていた人物が、巧みに馬を操って私の下へとやってくる。》
フィオナ『どうして……、どうしてオージェがこんなところに?』
オージェ『それはきみがいきなり誘拐なんかされちゃうからに決まってるじゃない。兄さん、心配してるよ?』
フィオナ『ごめんなさい。』
オージェ『いいよいいよ、おれに謝らないでよ。謝るなら兄さんにね。
はい、手ぇ貸して?』
フィオナ『え?』
オージェ『ほら、お手。』
フィオナ『…………。』
《なんだか犬の子でも扱うように、そう言われて一瞬ためらうが……。
昔からオージェはこういう人だった。
人畜無害そうなにこにことした笑顔で
さらりとひとを戸惑わせることを言うのだ。》
フィオナ『(ちょっと意地悪なのよね)』
《それでも、一応昔から知っている相手でもあるし、何せ相手は第二王子だ
おとなしく手を差し出した。》
オージェ『よいしょっと。』
《差し出した手を力強く握り返した
オージェが、ぐいと一息に私の体を馬の上へと引き上げる。》
フィオナ『……う。』
《相手がネッソならまだしも、
オージェ相手にこうして抱き込まれるように馬に乗せられるのは緊張する。
メヨーヨとは許婚としてそれなりに親しくしてきているが、オージェとは
メヨーヨほど接点がないのだ。
いつも、メヨーヨにくっついて一緒に
私に会いにきてはいたが……。
いつも、オージェはにこにこと
メヨーヨの後ろに立っているだけだった。》
オージェ『あは、緊張してるの?
婚約者の双子の弟の腕に抱かれて
ドキドキしちゃうなんて、ふしだらだな~。
おれの胸元に身体を預けて、
緊張して……かーわいいの。』
フィオナ『な……っ!!
だ、誰がふしだらよ……!!』
オージェ『誰って……きみだよ?
狼種の男に攫われて、どれくらいたったと思ってるのー?
世間の口さがのないひとたちは、
みんなきみが狼の手篭めにされたとでも思ってるんじゃないかな~。』
フィオナ『ラスは、そんなことしてないわ……!』
《酷い言われように思わずそうムキに
なって反論してしまっていた。
まずい、と思ったのはオージェがにやりと口元を笑みに歪めたのを見てからだった。》
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