氷河 2014-02-18 00:58:55 |
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君から顔を背ければ俺の友達は呑気にも通りかかった知り合いであろうおじさんに声を掛けている。
『笑っちゃってごめんなさい』
と笑い声からも気付いていたが、高過ぎず低過ぎない…落ち着いた声色で君から声を掛けて来た。
「良い。」
普段から無口というか、面倒くさくて余り話さない俺は素っ気なく返事を返した。
すると普通の女子は怒るか苦笑いをする状況下で、君は笑った。
先程のケラケラとした笑いでは無く優しい穏やかな笑み、何て優しく笑うんだろう…そんな事を考え、君に見とれていた。
『大事な物なの。』
そう言う君、深くは語らないが君にそんな表情をさせる程の物…本当に大切なんだろうと俺は信じた。
此処で何時来たのかわからないが空気が読めないというか、内面が幼い俺の友人は俺の背中にのしかかり
〔悪い氷河。俺、先帰るわー。〕
と言い残し走り去っていった。
行くならば何故わざわざ俺達の所まで来たのだろう。
膨らむ考えを抑え込み君に振り返ると君は立ち上がり
『私、東(あずま/仮名)っていうの…また学校で会えると良いね!』
と、明るく笑むと暑く照りつける日差しでも乾いていない制服を気にする様子も無く走り去ってしまった。
友達も帰り君も帰り…俺は一人残された。
君に一瞬ときめいた胸はずっと高鳴ってた…。
次の日、俺は昨日の友達にそれとなく"東"という名前を聞いてみた。
〔東って昨日の奴だろ?確か隣のクラスだと思うぞ?〕
と答えてくれた友達に俺はフーンと相づちをうった。
その日の放課後、俺は君を見つけた。
昨日の今日、やはり照れくさくて俺は隣のクラスの前を早足に通り過ぎた…その時。
『白波(俺/仮名)君!昨日ぶりだね!』
背後から聞こえる優しくも穏やかな声、即座に君だと気付かせる耳心地の良い声に俺はゆっくりと振り返った…。
髪を束ね昨日の大人びた印象から一変し活動的な明るい印象を与える君、再び目を奪われるまでそう時間は掛からなかった。
じっと見つめてしまってた俺に向かって嫌な顔一つせず、君は歩み寄って来た。
『白波君って寡黙って聞いてたけど、優しいんだね!昨日は心配掛けてごめんなさい』
少しおどけた様に、けれど嫌な気をさせない柔らかな謝罪に加え俺の内面を誉める言葉に彼女はきっと凄く律義で優しい子なのだろう…と瞬時に悟った。
彼女ならばきっと、俺が話し掛けても嫌な顔などしないのだろう…。
「別に良い、誤解で良かった」
そんなありきたりな言葉で自分でも自分を殴りたい程冷めた言葉を返してしまう俺。
思っている事は違うのに、何時も違う冷たい言葉を掛けてしまう俺。
そんな俺の考えや思いを余所に君は昨日と同じ様に優しく微笑んだ。
それだけの短い会話で別れた俺は足早に帰路についた。
家に帰る途中、寡黙という表現よりも暗いというレッテルを貼られていた俺はクラスメートと出会った。
何時も通りなからかいの言葉【冷蔵庫】
中身を入れなければ空っぽで、冷たいだけの木偶の坊という意味らしいが…俺は一切気にしていなかった。
何時も通りの対応。
何時も通りの罵声。
興味も湧かない只の日常…。
言い返す事も黙らせる事も出来た、でもしなかったのは俺自身がその言葉に賛同してしまったから。
黙って冷めた視線を返すだけ…。
そんな遠ざけた意識を無理矢理に引き戻す様なパシン、という音と共に今までの罵声が止んだ。
気付けば目の前には、そう…君が居た。
女に守られたなんて…普通はそう考えるが君はそんな考えを起こさせる前に言った。
『白波君!何で言い返さないの?本当の本当は凄く凄く優しいのに!!』
そんな事を言ってくれたんだ、君だけは他の人間とは違った。
何よりも俺を理解しようとしてくれてたんだ。
でもさ、言い返せないんじゃなく…言い返さないんだ。あの時この気持ちを言っていたら、君はきっと怒ったかな?
頬にビンタを受けた男子生徒【国中/くになか(仮名)】は勿論の事、逆上した…。君を殴ろうとしたんだ。
もう一人居た国中の友人であろう男子生徒【西村/にしむら(仮名)】の制止虚しく国中は握った拳を彼女に向かって進めた。
…無意識だった。
君の前に飛び出してたんだ。
勿論の事、俺が殴られた。でもさ?お陰で目が覚めた様な気がした。
国中を睨み付け、言ったんだ…。
「中身の無い木偶の坊ならば何で構う?放っておけば良いだろうが、確かに自分でも冷たいと思う時だってある…でもお前達に価値を付けられるのは不愉快だ」そう、全て飲み込んでた事だった。
言い返したい、でも俺は言い返せる程出来た人間なのだろうか?
いいや違う、価値なんか他人が付けて言い訳が無い。君のお陰で…やっと目が覚めた。
国中は言った。
「冷蔵庫でも人の感情があんのかよ?何時も冷めた顔しやがって、気に食わねぇ。」と…。
国中は自分の感情のままに行動し言葉を発していた…それを只馬鹿にし続けていたのは俺の方じゃないのか?
頬に感じる痛みを思い出せば、そんな考えすぐに吹き飛んだ。
そう、国中は女子に対してこれ位の力を込めた男。それは男として叱るべき存在であり、甘い顔など見せる必要の無い存在。
少なからず俺には許しがたい存在になった。
俺は言い返そうと口を開いた…しかしふと聞こえた俺の後ろで微かに鼻を啜る音、そして衣擦れの音。
そう君だ…。
俺が必死に言い返そうとしているのを邪魔しない様にしているかの如く…君は泣いていた。衣擦れの音は君が袖で涙を拭う音だったのだろう。
その涙に気付くと国中は怖じ気づいたのだろう一歩後退る国中の袖を掴み引く西村。その合図と共に何も言わず走り去ってしまった二人。
ごめん…君を泣かせてしまった。
有り難う…俺の為に泣いてくれて。
こんな事を言ったら自惚れかな?でも、この時本当に感謝したんだ。そして君の涙の綺麗さに見とれてしまっていた。
此処からかな?いいや、違う。最初に会った時から俺は君に惹かれていたんだ。
八代目やしろ 様
コメント、どうも。
こんな口下手な俺の話に耳を傾けて頂けるなんてまさか思っておらず、嬉しい限りです。
最近忙しい日々が続き語れていなかったのですが、また少しずつ更新していけたらと思ってる次第です。
有り難う御座います。
二人が去ってしまった後、俺達を僅か気まずい空気が包んだ。
君は泣いて俯いてしまっている、女友達等居なく恋人が居た経験も無い俺はこんな状況で一体どんな言葉を掛ければ良いのか一体どうすれば良いのかすら分からず只キョロキョロと周りを見るばかり。
「ごめん」
最初に話を切り出したのは俺の方、この空気に耐えられなかった。しかし何より君が泣いているのが辛くなってきたんだ。目を逸らしながらの謝罪、君は顔を上げ涙が溜まったままの瞳で俺を見つめてきた。
『…ごめんなさいは、白波君自身に言いなさい』
俺は唖然とした、君は少し唇を尖らせた僅か怒っているかの様な表情で人差し指の先を俺に向け教師の様な口調で言った。
「何で、俺に?」
自然と零れ出た疑問だった。これも自惚れだが、ごめんじゃなくて有り難うだよ…等という返しかと予測したからだ。
『白波君は白波君自身を傷付けられてるのに、それを見て見ぬ振りをするなんて…苛めはする方も見てる方も同罪なんです。』
君の返答を聞いた瞬間、俺は気付いた。君は本当に俺自身を見てくれてたんだって、本当は言い返したいっていう本心を見抜いてたんだって。気付いた途端自分が情けなくなった、でもそれ以上に嬉しくて仕方がなかった。
わー作者さんだ!!
お忙しい日々を
過ごされているとのこと、
お疲れさまです っ旦
少しずつでも
続きを聞かせて頂けるのなら
嬉しい限りです(^o^)
自分は、そもそも
こちらのトピックは他の方に
紹介して頂いて知りました!
その紹介者の方も
更新をずっと楽しみにして
いらっしゃったはず…!
自分の他にも
隠れファンは絶対いますよ~w
八代目やしろ 様
御返事、有り難う御座います。
俺自身はもう既に社会人として仕事に行く日々を送っているのでコメント、本当に励みになります。
俺も話を聞いて頂ける方が居るとなれば本当に嬉しく書き甲斐があります。
そうなのですか、それではその方にもこの場を借りて御礼させて頂かなくてはいけませんね。
何時も読んで頂いて皆様有り難う御座います。
>20
疲れ目かと…
当方も一応社会人ですw
続きはマイペースに
待たせて頂きますので
老婆心ながら
疲労は貯めたりすることの
ありませぬように(__)
それでは~
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