～花魁と一人の青年の秘密の恋愛～

有り難う御座います｡それでは新五郎さんと呼ばせて頂きますね｡...団子､ですか?禁止ではないですが...｡(可愛いとの言葉は花魁である己からすればとっくに慣れた事､嬉しそうな愛想笑い浮かべれば感謝の言葉を告げて｡先程とうって変わった態度の豹変にも驚くものの土産物との言葉に更に驚く｡流石に驚きの表情を隠せないと思ったのかすぐに着物と手で口許を隠し､団子は嫌いではない為嬉しいが流石にはしゃぐわけにもいかず初対面から貰って良いものかとも悩む｡悩み出せば止まらないもので刺客とまで考え口を覆ったまま戸惑いの言葉を口にして｡)

はい…では私は霧月殿とお呼びしますね。…では食べてみて下さい。私も以前これを食べたんですがとても美味しくて。気に入って戴けると良いのですか（名前を呼ばれると先程まで他人だった筈なのに親近感が湧き表情を柔らかくさせ笑み浮かべながら団子を一串取れば一個ずつ外し食べやすいようにすればどうぞと勧めては相手が食べる前に自分も待ちきれなくなりパクッと食べてはうん、美味しい。と感想述べて

ではお言葉に甘えて...失礼します｡(串から外されていく団子を見れば近くの小さな棚に入っている箱から爪楊枝の様な物を取り出しそれに1つ刺して口に含み｡口に広がる予想以上の美味に口許緩ませ､爪楊枝置けば口許に手を当て食べ､口の中の団子がなくなれば「本当に美味しいですね､これ｡病み付きになります｡」と先程とは違った年相応の少し子供っぽい笑みを浮かべて感想を｡)

それは良かった。また次も持って来ますよ。…あの、今までお客を取ったことはありますか？（とても上品に食べる姿を見て率直に綺麗な人だと思うもそれは言葉にはせず口にあった事に嬉しさ感じて笑み零しまたの来店の機会に持って来ると勝手に約束して自分も食べていた団子を見つめそっと置けば言いづらそうに小声で問い掛け「あ、…いや深い意味とかは無いんですが此処はそういう所だと分かるとやはり緊張して変な事を口走ってしまった…だけですから」と申し訳無さそうに口早に告げれば視線を何処へ遣ったら良いか分からずに泳がせていて

そういう仕事ですから勿論ありますが...､その話は､止めにしませんか?もっと楽しい話がしたいです｡(言い訳のような言葉を聞けば優しい声色で問いに答えるが客に他の客の話をするのは厳禁だ､それに相手ほど楽しい客は珍しく滅多にいない｡今のこの空間を己も楽しみたいのか他の客の事は思い出したくなく､僅かだが苦笑混じりの笑みで提案して｡だが話したくないと思われては常連になってくれない｡そこら辺はやはりﾌﾟﾛとして､然り気無く貴方の事以外話したくない等というわかる人には分かるであろうﾆｭｱﾝｽを含ませて言葉を付け加え｡)

…あ、すみません。そうですよね。ー…で、では好きな花などはありますか？（何と失礼な質問をしてしまったのかと自分を責めては膝に置いてある手を力いっぱい握り締め悔いては話題は何が良いかと考えればそういえば女性は花を好む人が多いと聞いた事がある為緊張で強張っていた顔をやんわりと笑み浮かべてはちゃんと目を見て問い掛け食べ終わった団子を片付けて自分から質問をしておきながらやはり落ち着かない為此処へ追いやった上司に小言などを言いたいが心の何処かで有り難いと思い、これからも楽しくもっと話がしたいな等と思い立ち上がり窓際へと移動すればもう少しで日が暮れる為辺りは綺麗なオレンジ色に灯っていてふう、と一息付いて景色眺めながらこれからどうすれば良いのだろうと困惑していて

あやめ､ですかね。彼処に飾ってある花です｡丁度今の時間帯の空に映えますね｡(すぐに話を切り替えてくれてよかった｡やはり他の客の事など考えたくもない｡好きな花を聞かれれば考える仕草も見せずにすぐに答え､部屋の隅の方に飾ってある２,３本のあやめの造花に目を向ける｡あやめの花言葉はﾒｯｾｰｼﾞ､希望｡何時かは此の外に出られる事を､誰かが出してくれる事を信じて飾っている｡といっても客は男だらけ､男で花言葉を知っている人などまれであろうから意味もないことなのだがそうでもしないと働く気が出ない｡相手もたとえ珍しくても男は男､花言葉等には気付かないだろう｡少し悲しそうなﾄｰﾝで話せば相手のいる窓から外の夕焼けを眺めて｡)

確かに。…綺麗ですね、菖蒲…ですか。花言葉は…聞いた事はあるんですが忘れてしまいましたね。…私は特に好きな花は無いですが見ていて気持ちが前に向くという花ならありますよ。向日葵です…あの大きな花は太陽に向かって咲いているので背中を押されているような感じがするんです。まあ、私の勝手な想像なんですけど（飾られている造花を眺め微笑んでは難しい表情浮かべて結局思い出す事が出来ず苦笑いで言葉返して逆に自分の希望をくれる花の名前を伝え相手にも気に入ってくれると良いなと想い込めて告げ頬掻きながら視線を相手に遣り「向日葵は持って来られませんがいつか見せてあげますよ」と意味深な発言をしては話を切り替えるように「すみません、お腹が空いたので何か食べる物貰っても良いですか？」と申し訳無さそうに話して