ぬし。 2014-01-16 23:06:21 |
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…うそつき。
(覚醒するかしないか、眠りとの微妙な境界線をさ迷う中漸く感じ取れた相手が自分をあやすように囁き掛けてくれているのが分かり髪に触れる相手の手に微かに頭を動かし擦り寄るような仕草を見せると寂しげな雰囲気を仄かに残したままふっと口許を緩めて笑み、呟きを漏らして。未だ至近距離にいた相手の首にゆらりと覚束ない動きで両腕を引っ掛けるとそのまま自分の方に抱き寄せるように引き、近付けた相手の頭に軽く擦り寄ってからその耳元に唇を寄せると「…お前は、いつだって遠いよ…昔、も……今だって、遠い…。」と囁き掛け。昔からずっと想ってきた身としては相手は酷く遠い存在で、彼が言う"近くに"が物理的な意味での言葉とも理解できない今その言葉はじくじくと失恋の痛みを抉るような響きにしかならず絡めた腕を解放しないまま相手の体に触れられる限りぴったりとくっつけば瞳を覆っていた涙の膜が悲しみの意をもってじわりと溜まり始めて。)
嘘じゃな…っ?!
(頭を撫でる手に擦り寄る相手の表情には笑みこそ窺えるものの寂しげなものである事には変わらず、心配そうに見詰めるも不意に呟かれた言葉に驚いたようで目を見開き。嘘も何も現に自分は今此処に居るのだから、と相手の言葉の意味がわからず取り敢えず否定を口にしようとした刹那、首に回される腕に更なる驚きから言葉を失い引き寄せられると状況を飲み込みきれず瞠目するばかりで。耳元でぽつりぽつりと聞こえる弱々しい声を聞き漏らさないよう意識を集中させればその声色から益々相手の言葉の意味は掴めないままで、返答に思い悩んでいるがその最中さえ首に回った腕に緩む気配は無く。故にその表情を見る事はできないが長年の付き合いによる直感と言うものか、想像はできる気がして無言で隣に横たわると相手の体に腕を回し)
…ごめん…夏樹、ごめん…な…ーー。
(夢か現実か判断が儘ならないレベルに混濁した意識の中でも相手の動揺は察知出来たらしい、例えどんな状態であろうと彼を困らせてしまうのは本望ではないのかそんな相手の様子に気持ちが暗くなり視線を落とすと唇をゆるゆると結んで。一層悲しみが濃くなりかけた時、不意にベッドの自分の隣が沈んだような微弱な感覚と共にそのまま体に腕をまわされたのを感じるとシャンプーの香りに紛れて微かにする彼の匂いでその腕が相手だと認識し。実際、現実ではあるのだが意識の混濁により夢であろうと認識する中でも自分に優しくしてくれる彼にきゅう、と胸が痛むと同時に息が少しだけ苦しくなる程の強い嬉しさを感じればもぞもぞと相手の体に自分自身を収めてしまうようにと身を寄せ。温かな相手の体温に包まれる幸福感に頬を緩めながらもその反面でこんなことまで彼に気を遣わせてしまっていることへの申し訳なさも感じており。顔を布団と彼の胸板に埋めたままぐもった声で何度か謝罪を口にすると相手の匂いに、体温に包まれる安心感からか次第に再び意識を眠りの方へ傾けて。)
ん、大丈夫だから。
(相手の体が以前よりも小さく感じてしまうからだろうか、両手に包んだその感触は同時に弱々しささえ感じさせ。益々密着する互いの距離に胸元辺りにある相手の髪を片手で撫でてやるも微かに聞こえる謝罪の言葉に困惑したように彼を見詰め、今日は一体どうしたのだろうかと不安になりながらも微笑を浮かべて穏やかな声色でそう返し。こんなにも相手を儚く感じた事は無く、不意に腕の中の温もりを失ってしまうような喪失感にも似た心地に抱き締める腕に力を込めて更に強く抱きすくめ、知らず不安と困惑が入り混じる表情を浮かべ。然し相手の眠気を感じ取ると考えすぎかと体の力を抜き、再度彼の髪に指を通して)
…ッ、ん…や、すみ……。
(もうあと少しでも気を抜いてしまえばすぐに眠ってしまえる、そのくらい意識を揺らがせていた中笑みを含んだような声色で呟かれた"大丈夫"の一言に再びぎりぎりながらも僅かに意識を浮上させると彼のその一言に満足したのかくすりと小さく笑みを浮かべて。髪に触れた相手の指がくすぐったいとでもいうようにもそもそと小さく身動いでから最後に最早ほぼ言葉に成りえていないおやすみ、との言葉を呟くと瞼を伏せることで瞳の表面に溜まっていた涙をぽろりと頬を伝いこぼし。頬に残した涙の筋道を拭うこともなくそのまま今度こそ完全に寝入れば安心しきったような緩んだ笑みを浮かべたまま寝息を立て始めて。)
おやすみ。
(今にも寝入ってしまいそうな相手の様子を見詰めていれば、変化が顕れたその表情には笑顔が見られ。先程とは違い安らぎさえ感じさせる笑みに安堵して密かに息を吐くと、擽ったそうな動きにも構わず髪を撫で続けては辛うじて聞き取る事ができた言葉に同様に返し。然し相手の頬に涙が伝うのを見れば意識せずとも自らの表情は不安で曇り始め、白い肌に薄く残る滴の跡をバスローブの袖で優しく拭い。離れている間に何かあったのだろうか、等と勝手に想像しては益々不安を募らせるものの、直ぐ側で聞こえる寝息に自分までも眠気を誘われると微笑んで相手を見詰め。その穏やかな表情を見ると己の思案はどうしても杞憂のような気さえしてしまい、今は考える事を止め室内の電灯を手元のスイッチで消すと相手と同様に心地良い眠気に身を委ね)
ーーん…あさ、か…ッ!?
(再度眠りについた後は夜中に目を覚ましてしまうこともなく深い眠りで体を休めることが出来、空がまだ暗い時間帯ながら何時も起きている時頃になると習慣からか自然に目が覚めてしまいまだ少しだけ眠たい目をぱちぱちと瞬かせながら小さく唸り。体に染み付いた習慣とはいえ朝早くに目覚めるのが辛くない訳ではなく少しだけ不機嫌そうに眉を寄せたまま暫くして意識をはっきりさせればそこで漸くすぐ目前に相手の体があることをはた、と認識して。目前に広がるバスローブからはだけた胸板、という光景に柄にもなく奇声を出しかけるものの両手で口を押さえ堪えると、昨晩の朧気な記憶が徐々に蘇り始め。あれは夢ではなかったのか、と後悔と混乱で表情を青くしながらも状況を把握しようと頭を働かせ始めれば、頭を軽く片手で押さえつつ体に回された相手の腕をゆっくりと外しにかかり。)
(相手と同様に熟睡ではあったものの普段の起床時間が決まっている訳でも無く、大学の始まる時間帯によって様々である為に目を覚ます気配も無く寝息を立てており。然し腕の中で相手が動き回るのを感じると微かに眉を潜めて「ん…っ」と呻き声を漏らし、程無くして瞼をゆるゆると上げ。そこに相手の姿が目に入れば直ぐに昨夜の事が頭を過り、急に意識を覚醒させると朝の挨拶も無く何処か心配そうな面持ちでその表情を見詰め。然しどうやらその心配も無用だったようで、彼の表情に昨夜のような弱々しさが見られない事に気付けば安堵した様子で頬を緩ませ「おはよー…」と眠たげな声色で告げ)
…お、はよう…。…まだ大分早いぞ、お前はまだ寝てても大丈夫なんじゃねぇか?
(昨晩の自分の失態を思い出し頭を痛めていればこちらの動きで起こしてしまったのか、小さく声を漏らす相手にびくりと肩を震わすと妙な緊張感に身を固めたまま相手の動向を窺って。昨日の今日だということもあり失態を晒した自分を見て相手に引かれてしまうのでは、と正直心配だったが眠たげながらも頬を緩ませ挨拶をしてくれる相手を見て不安が杞憂のまま終わったと分かり安堵すれば、それでも少しだけ感じる居心地の悪さから若干固い声で挨拶を返して。相手の腕から抜け出したことでベッドヘッドの部分に背中を預けるようにして上体を起こすとバスローブを軽く整え、まだ日も上らぬ時間であることもあり寝癖のついた相手の茶髪を優しく撫でながら呟くとくすりと小さく笑みを浮かべて。)
んー…。智尋もう起きるんだろ…?
(返ってくる同様の言葉に若干の緊張が含まれていたのには意識がはっきりと覚醒していないせいもあってか気付かなかったらしく、唯満足げに頬を緩めては眠たさから目を細めて天井を見詰めており。然し頭を撫でられるとその心地良さに目を閉じ、つい再度うとうとと微睡んでしまいそうで自然と耳に入って来る相手の声により何とか意識を繋ぎ止め、返答を考えているのか小さく唸り。まだ寝てても良いと思うと甘んじたくもなるのだが、起きた時に相手が居なくなっている事で感じる喪失感は好きではなく、徐に寝返りを打って横を向くと相手の腰に腕を回し抱き着くような体勢になり目を閉じたまま問い掛けて)
ッ、…まあ、家帰って着替えないと仕事行けないからな…。
(寝起きの相手は寝癖がついているからかまだとろんと眠たげな目をしているからか何処と無く何時もより幼く見えて可愛らしく、その様子に薄く笑みを浮かべながら暫くそのまま頭を撫でていれば腰に回ってきた腕に不意を突かれたかのように固まってしまい。この程度の接触は起き抜けの所謂一夜を明かした後、というような状況であろうと大体他の行きずりの男達との交流で慣れていたつもりだった。しかしやはりその相手が彼となると話は全く別らしい、甘えるような意味合いであろうそれを一瞬不純な妄想に変換してしまった自分に激しく後悔し苦々しく表情を歪めながらももごもごと歯切れの悪い言葉で返事を口にして。取り敢えず未だ微睡んでいる彼の頭に片手を置いたままベッド脇のチェストにあった内線で「…朝食お願いします、珈琲と牛乳で一つずつ。」とフロントに朝食サービスを頼むと、抱きついたままの彼をどうしようか、少しだけ困ったような笑みで相手を見つめながら軽く頬を掻いて。)
じゃあ起きる…。
(返ってきた言葉は大方予想通りのもので、相手の腰に腕を回したまま温もりを感じつつ独り言のように呟き。然し無論すんなり起きられる筈も無く、ましてやはっきりしない意識の中で遠く聞こえる相手の声すら心地良いものに聞こえてしまえば、起きる気になれないのは当然の事で。暫くそのまま浅い眠りに浸っているような感覚でいるも、そろそろ起きなければ相手が仕事に遅れてしまう可能性もあり、もそもそと気怠げな緩慢な所作にて体をゆっくりと起こすと大きく欠伸を溢し。それによって目尻に溜まった涙をぐいっと手で拭っても尚残る眠気に眉を寄せつつ、隣に座っている相手の肩に頭を乗せると重たい瞼を無理矢理開きぼんやりと正面の壁を見詰めて)
…そっか。朝飯今呼んだから、それまでにはちゃんと目覚ませよ。
(仕事のことを話に出した途端動きこそ緩慢ながらも目を覚まそうと体を起こし始めた相手に彼なりの気遣いのようなものを感じ、微笑ましさから口許を緩めると肩に寄りかかる相手の頭をぽんぽんと軽く撫で。柔らかな口調で先程前もって頼んでおいた朝食のことをそっと伝えると早速その朝食が届いたのか廊下の方から安っぽい電子音のチャイムが鳴り、そちらにちらりと視線を送ってから相手の方を見ると「…飯届いたみたいだから取ってくるな。お前はゆっくりで良いから、寝ぼけたまんま立ち上がったりすんなよ?」と軽く声を掛けてから相手の頭をそっと退かし。ベッドヘッドから上の壁部分に頭が当たっても痛くないようにと相手の頭と壁の間に枕を挟ませてからゆっくりとベッドから立ち上がると、寝乱れたバスローブの合わせを直してからぺたぺたと早足でドアの方に歩いていって。)
もう覚めたー…。
(相手に撫でられるとどうしても気が緩んでしまい、それまで何とか開けていた瞼を再び閉じると頬を緩ませ。鼓膜を心地良く震わせる声色に目を閉じたまま間延びした声で告げるも、不意に室内の静寂を破る電子音に快適な微睡みから覚めては微かに眉を寄せつつ薄ら目を開けて。相手の言葉に寝惚け眼を伏せながら「んー…」と唸るような返答をして小さく頷くと、頭を退かされた感覚の後に後頭部に触れたのは予想に反し柔らかなもので。見れば枕が挟まれており、変わらない相手の優しさを甘受していられることに笑みを溢してはドアの方へと向かって行く後ろ姿を眺め。頭を浮かせるとベッドの上に落ちる枕は気にせず体を起こして床に両足を付けるも、先程の忠告を思い出すと立ち上がるのは止めて足を床の上に投げ出し何と無く爪先をひょこひょこと動かしながらぼんやりと足元に視線を向けて)
ーーお前ほんとに大丈夫か?…飯は来たけど、まだ眠いんなら寝直したって…。
(自分に合わせて眠い目を開き起きようとする様はいじらしく可愛らしいものがあるが、朝食片手に戻った先でベッドから足を投げ出したままぼんやりする相手を見ていると何だか無理に起こしてしまい可哀想な気もしてきて。ベッド脇のチェストに相手の朝食を置き、片手に自分の朝食を残したまま寝癖まみれの茶髪をぐりぐりと髪を掻き回すように撫でながら少しだけ心配そうな声色で呟くとゆっくりとした足取りでベッドから少し離れたところに置かれたソファとテーブルの辺りまで歩いていき。朝食をテーブルに、自らはソファに腰掛けてからそっと足を組み珈琲のカップを手にすれば少しだけ熱いのが苦手な猫舌気味なのか念入りに息を吹き掛け冷ましてから何も入れないブラックのままの珈琲を口にして。)
大丈夫大丈夫。
(暫くぼんやりしていれば少しずつ意識が覚醒してきたのか、相手が朝食を手に戻ってきたのに気付き其方に視線を向けようとするも、不意に頭を撫でられると髪が乱れるのも気にせず嬉しそうに目を細め。相手の心配そうな声が聞こえるなりへらっと笑って大丈夫だと伝え、チェストに置かれた朝食を一瞥して「ありがとー」と軽い口調で礼を述べ。ソファに座り珈琲を飲む様子を目で追えば徐に立ち上がり朝食を手に相手の隣に座り、手を合わせて「頂きまーす」と一言口にしては牛乳を飲み干し朝食に手を付けて)
…これ食ったら俺はもう出るから。お前はどうする、10時までは此処に居ても大丈夫だぞ?
(あまりにぽやぽやと危なっかしい相手に少々心配していたが朝食に手をつけ始めた相手を見て漸くその心配も解消され、安堵のため仄かに頬を緩ませながら息をひとつついてから珈琲カップをトレイに置くと自分も朝食のトーストを手に取りそのままさくさくと小さな音を立てて口に含んでいき。半分程度朝食を食べたあたりで唇の回りについたサラダのドレッシングを舐め取ってから不意に相手に話し掛け始めるとテーブルに置いた自分の腕時計にちらりと視線を送ってから言葉を続けて。時間を確認したことで少しだけ何時もの予定よりもゆっくり朝食を取っていたことを認識するとあまり予定を狂わせたくないのか先程までより少々急ぎめに口に残りの朝食を含んでいくと最後に少しだけ残しておいた珈琲を飲み干し朝食を終わらせて。)
ん、俺も出る!!
(それなりの節約生活のお陰か豪華とは言えずもこんなに品目の多い朝食は久し振りで、無言のまま黙々と食べ進めており。然し不意に相手に声を掛けられれば食べ物を口に運ぶ傍らで話を聞き、ふと目に入った相手のものと思しき腕時計を見遣れば想像より早く時間は経過していたようで。どうせ大学は午前から、相手より後に出ると言っても然程ゆっくりはしていられないのだから同じ時間帯に出た方が無難だと考え、口に含んでいたものを飲み下すとその胸を伝え。元より相手より食べるペースが速かったからかそう時間も掛からずに完食すると、先程と同様に手を合わせて「ごちそーさまでしたっ」と一言口にしては立ち上がり。食欲が満たされたからか、やけに活動が活発になっており、立ち上がると先日着ていた服を持ってきてバスローブを脱ぎ)
…夏樹は、昨日俺が話したこと忘れてない、よな。…俺の、性癖とか…そういうの、ちゃんと覚えてるか?
(朝食を食べ終わるとすぐ自分が見ているだのといったことなど関係なしに着替え始める相手に昨晩まではその無自覚に対する呆れや諦めなどの感情しかなかったが、一晩明けて冷静に考えてみると自分の置かれた状況をまるで理解しようとしない彼に多少理不尽だと自覚しているものの微かな苛立ちを感じ始めていて。一先ず自分も着替えるべく昨日の衣服を手に相手に背を向けるようにしてバスローブに手を掛けると胸のうちにこもった感情の成果、少しだけきつさのある口調で声を掛けて。)
ん、覚えてるよ?
(下着を身に付けズボンを履き、Tシャツに腕を通して頭から被ろうと両手を上げた際に不意に問い掛けられればその唐突さに一瞬きょとんとして。然し直ぐに問いの意味を理解すれば相手の刺のある口調には気付いていないのか気にしていないのか、何を今更と言わんばかりに当然の如く頷いて。疑問形の返答を口にしながらTシャツを着てその上からパーカーを羽織りながら“何故そんな事を聞くのか”と思案する脳内には相手の性癖ならば自分に好意を向けられる可能性もあると言う事に気付いていないらしく、あわよくば既に想い人か恋人でも居ると言われても驚かない程で。一先ず身支度を終えると相手に視線を向け「なんで?」と問い掛けて)
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