宏太  2013-12-02 18:54:29 
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 みをな「かんなーっ! 麻奈ーっ!」 

 かんな「あ、みをなー! 志音!」

 志音「今日はみんな早いね?  どしたん?」

 かんな「麻奈は彼氏君と飼育当番やって―!  あ、そんで、かんなは応援団の集まり! 今日な、応援団長決めんねん!」

 みをな「うちは、たまたま起きんのが早かってん。  志音は……いつもの事かぁ!」

 みんな「あはは」

 ピンポンパンポーン 飼育当番の人ー、応援団の人ー、6年で図工終わらせてない人ー、当てはまる人はやることを
しっかりとこなしてください」

 かんな「うわっ、やっべ! はよ行こ!  ……って、麻奈さん麻奈さん!天斗君ですよ~。  行っておいで~!」

 校門の前で友達と話をしている男子を指さしながら私が言った。

 麻奈「も、もう、かんなのバカ!」

 かんな「お?お?お?、顔が赤いですよ麻奈さん!」

 さっき言った麻奈の彼氏というのは天斗君の事だ。

 2人は両想いだったらしく、付き合い始めると、バレンタイン、ホワイトデー、クリスマス、お正月、夏祭りは、必ず盛り上がっている。

 麻奈「って、ほんまに時間無いで! はよ行こー!」

 かんな「うわっ!いっそげー!」

 みをな&志音「きゃはは! 言ってらしゃ―い」

 


        ―――私たちはこんなに仲が良かったのに、一体何が私たちの仲を引き裂いたのだろう。―――

 
 その日の放課後―――

 私はその日、志音と芽衣華とみをなの4人で、公園で遊んでいた。

 みをな「あ、いっけなーい。 BCゲーム忘れてきちゃった。 今から取りに帰るから待っといてな」

 かんな「またー!? みをなって、いつもやん!  どんくさいなぁ」

 みをな「んじゃ、取りに行ってくるから待っといて。」

 かんな「ばーいばーい」

 そして、みをなが見えなくなった時。
 
 志音「かんなー」

 かんな「なんやー?」

 志音「ちょっと、話がある」

 (志音が真顔で言うなんて珍しい)

 志音「あのな、あんたってみをなの事好き?」

 (いきなり何言いだすんやろ)

 かんな「うーん、まぁ好き?」

 私とみをなは、2年生からの親友で6年生になってもずーっと友達。

 プリクラとったり、おそろいのポーチ買ったり、年賀状送りあいしたり……。
 
 それにクリスマス会、誕生日会の常連だ。

 志音「そいじゃぁ、質問変えてっとあんたはみをなの悪口言ったことある?」

 かんな「う~ん……ないねぇ」

 志音「んじゃ、みをなに悪口を言われてたら許す?」

 かんな「うーん、……お、怒る? かな?」

 芽衣華「あのね、芽衣華ね、みをなが志音とかんなの悪口言ってたの聞いちゃったの」

  今から2か月前――――



  

 みをな「なんかさぁ、あいつうざくね?」

 だれか「え? だれだれ?」

 みをな「かんなだよ! か・ん・な!」

 芽衣華(えっ? みをなとかんなって仲良かったんじゃなかった?)

 みをな「なんかぁー、あいつさぁー、すんげー、オーバーリアクションじゃん?  あれむかつくしぃ~。
あれさぁ~絶対さぁ、男子の前でやってるよ~。 あれマジでキモイ~」

 芽衣華(みをなホンキで言ってんの!?)

 みをなみをな「それに、志音もさぁ~自分の意見の通りにならないとすぐキレるじゃん? あれも、超うざいしぃ?」

 芽衣華(えっ! ゆ、許せない……)

 芽衣華「ちょっとみをな!? あんた友達でしょ! 悪口なんて言って楽しいの? あんたなんて、さいて……」

 みをな「うるさいなぁ、どう言おうとうちの勝手だしぃ?  勝手にいい子ぶってろよ、優等生ちゃん?」

 芽衣華「っー!?」

 みをな「あ、あとチクったらシバクからね?」

 そう言って、みをなは違う女子と悪口の続きを続けた。

 

 ――――――――


 志音「ね、ね、むかつくでしょう?  ほんとに何様よっー!  かんなは明るいキャラだからオーバーリアクションじゃないし……
うちも、正しいこと言ってんのにあいつが認めないから!!  それに……」

 かんな「なんで? うそ……」

 どうして?

 
 ワタシハ、アナタノコトガ、ダイスキデ……。 ナノニ、アナタニトッテハ、ドウデモイイヤツ、ダッタノ?

 イママデ、アナタニ、ツクシテアゲタノニ、ミンナニキラワレテモ、アナタヲマモッタノニ……。

 

 ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?―――――

 

 志音「か、かんな!? なんで泣いて……」

 気が付くと私は泣いていた。

 誰かが、「悲しいことがあれば泣けば悲しさが薄れる……」とか言っていた。

 シクシク、と泣いてみた。

 ダメだ……。  こんなんじゃダメだ。

 かんな「うわぁぁぁぁ~、あぁぁ~うぅっ、わぁ~ん」

 子供みたいに大きな声で泣いてみた。

 でも、ただ惨めな気持ちになっただけである。

 しかし、もう止められない。

 野次馬たちがこっちを見て、ケータイでムービーを取っている。

 それを、必死で志音たちが追い払っている。

 私の中にあった、みをなへの友情は音を立てて崩れ落ちた。

 友情っていうのは少しずつ積み重ねてやっと出来るんだ。

 しかし、壊れるのはこんなにもあっけない――それを初めて知った。



   
 志音「ほんとにもう大丈夫?」

 かんな「うん……志音ありがとう」

 志音「私さっきから考えてたんだけど……」

 かんな「いじめようよ……」

 志音「えっ?  今なんて?」

 かんな「だから、みをなをいじめようって言ったのよ」

 しばらく沈黙が流れる。

 志音「良いんじゃない?」

 志音が口を開いた。

 志音「そんなの、当然の報いよ。  あんな奴苦しめばいい」


 わたしは微笑んでからこう言った。

 かんな「明日からね……」

  
 なにも知らないみをなが、教室に入ってきた。
 
 みをな「みんなー、おっはよ~!」

 シーン……―――――――。

 みをな「あ、あれ?  も、もう一回おっはよ~う!!」

 ポト……

 みをなの背中に丸められた紙が投げられた。

 みをながその紙を拾い上げて広げる。

 そこには、

 「**!  消えろ!  勘違いブス!  バカ!  とっとと失せろ!」

 と、書いている。

 それを見たみをなは半分泣きそうになりながらこっちを見ている。

 みをな「これ、ドッキリ……だ、よね?  ねぇ? かんな――――」

 かんな「うるさい」

 みをな「え?」

 かんな「うるさいって言ってんだよ!」

 私は、近くにあった、みをなの机を怒りにまかせて蹴った。

 バァンっ!!
 
 みをな「ひっ!」

 すっかり怯えた顔をした、みをなの顔に満足した私は心の中でほくそ笑んだ。

 しかし、これだけじゃ終わらない。

 かんな「私の、オーバーリアクションうざいんでしょ?  なら、とっとと消えちゃって?」

 みをな「かんな、ち、違うの、あ、あれは―――」

 かんな「言い訳なんてしてんじゃねーよ!」

 私のイライラはピークを達した。

そして、みをなの頭にかかと落としを食らわせた。

 パコンっ

 心地よい音が教室に響いた。

 ………………………

 みをな「い、いや……、だ、だれかやめて……、だ、だれか……」

 もう1ッ発、蹴りを食らわせてやろうとした瞬間、

 麻奈「やべ、表先生来たよ!」

 かんな「くそっ!  絶対ちくるんじゃないぞ!?」

 みをな「は、はい……」

 かんな「ふんっ!」

 そう言うと私は席に着いた。



 ――――――――――


 百合子「あ、あのねちょっといいかな?」

 放課後、私の席に1人の女の子が来て声をかけた。

 かんな「ん、あなたは確か……百合子ちゃんよね、どうしたの?」

 百合子「みをなちゃんを、いじめてるってホント?」

 かんな「そうだけど、あ、これは6年全体の秘密だからチクったらダメだよ?」

 百合子「そうじゃなくて、私あの子に「百合子の髪型可愛いね」って、言ってもらって嬉しかったの。

 だけど、この前ある人と私の悪口言ってたみたいで……」


 みをな「百合子って、顔まんまるじゃん?  あの顔にボブって似合わね~。」

 百合子「って、言ってたの。  すごくショックで……、私、そんなにブスかなぁ?」

 百合子は目に涙をためながら聞いてきた。

 かんな「ううん、今までクラスが違うから声を掛ける機会がなかったけど、児童会の発表の時、可愛いなぁと思ってたし」

 百合子ちゃんは確か児童会の代表で会長さんをやっていたはずだ。

 それに、さっきの可愛いと思ったのは本音だ。

 百合子「じゃぁ、私もいじめグループに入っていいかなぁ?」

 かんな「もちろん、大歓迎よ!」

 私が百合子ちゃんと、しばらく話していると、いつのまにか志音、麻奈、芽衣華、天斗、が立っていた。

 芽衣華「なに話してたのぉ?  芽衣華たちはねぇみをなをいじめる方法を考えてたんだぁ」

 かんな「へぇ~、どんなの?」

 かんなは返事しながら、芽衣華ってこんなしゃべり方だっけ?と、思った。

 すると、それを察した芽衣華はかんなの方を見て話してくれた。

 芽衣華「わたしねぇ、今までいい子ちゃんしてたけど、もうめんどくさいしぃ?

 やめちゃおうかなーってかんじぃ?  アハハハ!」

 かんな「なるほど……、っで、なんか良い方法思いついた?」

 志音「それが、ぜんっぜん」

 志音が頭を抱えている。

 芽衣華「あの、私を意見で良いなら……いい案があるよ」

 志音「どんなの?  って、あなた百合子じゃん!  もう、かんなと仲良くなったの?」

 百合子「うん! で、その案がね、みをな以外の人に、みをなにやられた嫌な事、直してほしいことを紙に書いてもらって、
それを、段ボール箱に入れるの! 

 それを1日に1枚引いてみをなに「もうしません」って、改心させるの!  どう?……」

 百合子の話を聞いていた天斗が「お前、天才だろ……」と、言っていた。

 志音「そいじゃ、明日からね!  放課後じゃないと先生に感付かれるかもしれないし……」

 天斗「OK!  んじゃ、その改心させるための場所と、人数は、っと」

 芽衣華「それは、その紙を書いた人とここに居る人でいいんじゃない?」

 みんな「そいじゃ、また明日!」

 みんなは遠足の前日みたいにワクワクして帰っていた。




かんな「それでは、第1号、いっきまーす!」

 ガサゴソ、ガサゴソ。


 昨日の事――――
 
 私達がメールを送ったところ、なんと6、70件ものみをなへの苦情が集まった。

 そして、その日の放課後「みをなの改心の会」を行っている。

 場所は町の外れの廃墟を選んだ。

 ここなら誰も来ないはずだ。

 私達が今いる廃墟は元はライブハウスであったが、そこの大型ライトに人が挟まれて死んでしまった……と、言う

事件が起きて取り壊すことになったのだ。

 そして、 その中にあるステージに、かんな、みをな、志音が立っていて、西出口には芽衣華が、メイン出入口には天斗が立っている。

 ふっ、とみをなと私の視線がぶつかった。

 みをな(もう、やめて! 謝るから!  おねがい。)

 みをなが目で訴えてくるので、私も目で返事してやった。

 かんな(だれも裏切り者の味方なんてしてくれないのよ? あなたは、そこで罰を受けることしかできないのよ! まぁ、せいぜい楽しみなさい?)

 その言葉が、みをなに伝わったらしく泣きそうな顔をしている。

 そして、私は適当に紙を掴んだ。

 その紙に書いていた名前は6年1組の三河 菜々可だ。

 私が顔を上げて皆の顔を見合わせると、今までざわついていた人達がシーン……と、なった。

 かんな「では、今から今日の人を発表します。  三河 菜々可さん、三河 菜々可さん!」

 私が目で菜々可を探した。

 すると、健康的に日焼けした手が、ステージの前で上がった。

 かんな「では、三河さんステージに上がってきてください」

 そして、ステージに上がってきた菜々可は息を整えてから、みをなの方を睨み付けて、自分がされたことを語った。

 菜々可「私は、みをなが、朝から調子が悪そうだったから「どうしたの?」って、声をかけたら「うるさい」って言われて蹴られた。

 後から聞いた話では、親と喧嘩したから、ムカついてただけ、って言って謝らないし……、あんたの蹴りすごく痛いのよ!」


 周りの奴「うわ、八つ当たりとかサイテー。」  「まじで、キモいわ~!」

 かんな「では、みをなさんそれはホントの事ですか?」

 みをな「ちがう、そんなこと、してない……、おねがい、もうやめ……」

 菜々可「言い訳なんてしてんじゃねーよ!  勘違い女!」

 そう言うと菜々可はみをなを蹴り飛ばした。

 菜々可「わたしの痛みを思い知れー!」

 菜々可が蹴りを入れる度、皆が「もっとやれー!」「骨折っちまえー!」と言っている。

 壁にかけている時計が5時を知らせる。

 かんな「それでは、今日はもう解散でーす。」

 私が言うと、みんなが残念がりながら会場を後にした。

 最後の1人が会場を出ると、みをなと改心の会実行委員会の芽衣華、麻奈、志音、天斗、かんなが残った。

 百合子は、と言うと囮に使うことにしたので、ここには居ない。

 囮、というのは、いじめられて友達が居なくなり、1人になったみをなを、かばうお友達のふりをしてみをなを陥れる、と言うことだ。

 そして、みんなが居なくなってひと段落ついたとき、百合子が会場に駆け込んできた。

 よし、計画通り……。

 百合子「みんな、なにしてんの?」

 菜々可に蹴られて涙でグショグショに濡れた顔のみをなを見ていった。

麻奈「百合子ちゃん? あなたは何にも知らないのかな? じゃぁ、教えてあげる。  

 良い事と悪い事の区別のつかない、みをなちゃんにお勉強会をしてるの!」

 しかし、みをなを見て百合子は言った。

 
 百合子「これのどこがお勉強会?  ふざけちゃだめだよ。  行こう、みをなちゃん」

 みをな「え、あの……」

 戸惑う、みをなの手を引いて百合子は会場から出て行った。

 かんな「おまえらぁっ! おぼえてろよっ!?」

 そして、百合子たちの姿が見えなくなるとニヤッとかんなが笑った。

 かんな(さぁて、どうなるのかしら?)
 
 

 みをな「待って、百合子ちゃん!」

 百合子「なに、みをなちゃん?」

 みをな「さっきから歩くか走るしかしてないじゃん?  どこに向かってるの?」

 百合子「決まってるじゃない、学校の先生に言いに行くのよ! あんなこと許して言い訳――――」

 みをな「もう、いいの。 私があの子達を裏切ったから……」

 百合子「でも、それでいじめられていいなんて事、ないんだから……みんなに言うのが嫌なのなら……何の力にもなれないけど、

 わたしにそうだんしてきな!」

 その言葉でみをなの涙腺と、言うダムが決壊した。

 みをな「あぁ、ありがとぉう、 わぁ、わたしわぁ、こんなにぃ、やさしくしてもらっちゃぁ、だめなにんげんなのにぃー」

 百合子「よしよし、もういいんだよ?  泣かなくたって……」

 そんな優しい言葉をかけてくれた百合子が裏切っているなんて、みをなは夢にも思わなかった。



メール


 百合子(かんなへ、 うまくいったよwww  もう、楽勝!

 あいつの泣き顔マジうけるし)

 かんな(ゆりこへ、 もうすっかり百合子も悪人だなwww)

 百合子(だな……笑い!)

 
 ぱたん――

 ケータイを閉じたかんなは1人あざ笑っていた。

 (私の事をあんなにしといて、地獄を思い知れ!)

 そんなことを考えていると家の戸が乱暴な音を立てて開いた。

 お姉ちゃん「かんなぁ、おっかえりぃ~!」

 かんな「あっはは、 ただいま~!……でしょ!  と、言うよりも珍しいね? こんな時間に帰ってくるなんて」

 お姉ちゃん「それはねぇ、彼氏君連れて来ちゃいました!」

 かんな「えっ!? ねぇちゃんの彼氏!? 見たいみたい!  今すぐ降りるから待っといて!」

 そう言うと、私は読みかけの本を放り出してドレッサーの前に立って全身をチェックした。

 そして、チェックが終わると急いで1階に降りた。

 そしてダイニングに行くと、お姉ちゃんとお友達の女の子が2人、男の子が3人ソファーに座って話をしている。

 かんな「こんにちわ~!!」

 お姉ちゃん「私の大好きな妹ちゃんよ~! みんなを紹介するわね?

 えーっと、そこのソファーで寝っ転がってる奴が大河、そんで横のお姫様みたいな女の子が梅子ちゃん! 2人って出来ちゃってんのよね!」

 お姉ちゃんが勝手にベラベラ、と喋るので大河君が怒った。

 大河「な、お前! 妹に勝手に紹介してんじゃねえよ!」

 お姉ちゃん「でも、出来てんのはホントじゃんか!」

 お姉ちゃんも反撃した。

 すると、今まで黙っていた梅子ちゃんが喋った。

 梅子「ホントのこと言われたら反撃できないもんねぇ」

 大河「梅子まで!  は、恥ずかしいだろ!?」

 そう言いながら、くすぐり合いっこをする2人をお姉ちゃんは、呆れた……と、言った顔をして他の人を紹介してくれた。

 お姉ちゃん「そこで音楽を聴いてるのが秋博! んで今、お茶飲んでるのがマリア。  ハーフなんだよ! すごいよね~!」

 かんな(あ、ハーフなんだ。  だからあんなに綺麗なんだね……)

 マリア「んで、私たちもできてますから……」

 かんな(うわ、声まで綺麗だなぁ……)
 
 お姉ちゃん「んで、もうすぐ来る奴が―ー」

 ピンポーン

 お姉ちゃん「あ、来たかも!  かんな、開けて来て」

 かんな「はーい」

 

 かんな「どちら様でしょうか?」

 正博「あのー、もしかして、かんなちゃん?」

 かんな「あ、そうですけど……」

 正博「やっぱり! 香枝(姉ちゃんの名前)から聞いてたんだ!  

 あ、俺正博って言って、香枝の彼氏です! よろしくです!」

 かんな「こちらこそ、よろしくね! さぁさ、早く上がって。  暑いでしょ?」

 正博「あ、んじゃお邪魔しまーす!」

 かんな(そっか、お姉ちゃんにもついに彼氏ができたかぁ~!  いいなぁ。
  正博君、顔もいいしメガネ男子って萌え~?)

 そんなことを考えながら、かんなは玄関の扉を閉めた。


 そして、しばらく皆で雑談してマリアちゃんと梅子ちゃん、大河君と秋博君は帰って行った。

 
 かんな「そういえば、どうして正博君とお姉ちゃんって仲良くなったんだ?」

 私が何気に聞いてみると、お姉ちゃんはニヤニヤしながら正博君の方を意味深に見た。

 私も、つい反射的に正博君の方を見ると彼は顔を真っ赤にしてこっちを睨んできた。

 正博「おま、なんちゅう事聞くんや!」

 お姉ちゃん「まぁ、正博が言わんのやったらうちが言ったろう。

 この人な、モテるねんけど恋愛とかは全然、興味が無かったらしいねんな。

 けど、うちがこいつが溺てたのを、人工呼吸して、お姫様抱っこして保健室に連れてってあげたら

 うちの事を今まで馬鹿にしてたのに、その事があってから、ちょくちょく優しくしてくれて……。

 んで、うちが告ったら「マジ!? 俺も好きです……。」
 
 ……的な?  感じかな」

 かんな「ふーん、いいねぇ。  青春エンジョイ!!」

 お姉ちゃん「あはは、おもろいなぁ」

 その時、家に飾っている振り子時計がボーンボーンと9回なった。

 えっ?  もう9時ジャン!!

 かんな「あれ!? 正博君、もう帰んなくて良いの?」

 すると、お姉ちゃんが、「あぁ、かんなに言って無かったっけ? 今日、正博うちに泊まるからね」

 かんな「…………えぇ~っ!  あの純情少女! 立花 香枝殿が!?」

 お姉ちゃん「あ、あのねぇ、すぐエッチな方に持って行かない!!  ただ単に、親と喧嘩して、家出しただけだから!

 秋博君もマリアちゃんの家に泊まるらしいよ」

 かんな「あら、そうなのね」

 お姉ちゃん「なによ!? そんながっかりした顔して!  まぁ、今日は姉ちゃんと正博で由紀子の部屋で寝るから!!」

 かんな「うぃ~。 サヨナラ、お姉ちゃん、おやすみ、おねえちゃん」

 お姉ちゃん「おやすみ~」

 パタン――

 ダイニングの扉を閉めたかんなの心の中は幸せで溢れていた。

 優しいお姉ちゃんに、もし結婚したら正博君が義理兄ちゃんになって……



 ワクワクするね!

 親は家出しちゃってお姉ちゃんと2人暮らしだったけど、お姉ちゃんのおかげで不自由な事は、1つも無かった。

 それに、今は正博君も居るし。

 志音や麻奈も居て、百合子、芽衣華に……、そうだ! みをな1人を敵に回したことによって、学年全員が友達になったようなもんだ。

 ――ありがとう、みをな――

 あなたの行動には不愉快な点もあったけど、結果的に良かったし、

 ――明日はどうやって遊んでやろうかしら?――

 かんなはその日の夜、なかなか寝付けなかった。



 ――朝――

 いつも寝起きが悪いかんなも、今日は珍しく早起きだ。
 
 (だって、今日から新しい遊びがあるもんね!)

 お姉ちゃんに買ってもらったビビットピンクのTシャツに、2の腕丈のピンクのリボンが付いた黒のアームウォーマー、

 黒の短パンにピンクと黒のサイハイソックス。

 全身が写せる鏡の前に立って、全身チェック。

 よし、今日はOK♪

 かんなは階段を下りながらお姉ちゃんの名前を呼んだ。

「お姉ちゃんおはよー!」

 「あれ? かんな、今日は早いわね」

 「うん、今日は早く起きた!」

 「おはよう、かんなちゃん」

 「あ、正博君。 おはよ~」

 「わぁお! 今日のご飯もおいしそー! いっただきま~す!」

 「いただきます」

 「今日もおいしーね!」 

 「って、もうこんな時間!? じゃ、行ってきます!」

 「行ってらっしゃ~い」

 私は麻奈と一緒に登校してるから待ち合わせ場所に急いだ。

 「おっはよ~麻奈!!」

 「おっはよ~、かんな!」

 「あ、天斗も居るじゃん!? どしたん?」

 「いや~、今日から一緒に学校行きたいなぁ~と」

 「いいよ! 一緒に行こっか?」

 「もう8時!? 急がんと!!」

 私が待ち合わせ場所の公園の時計を見て言うと、麻奈たちは慌てて鞄を背負い、走り出した。

 「あぁん、待ってよ~!」

 新しい朝の幕開けです。

 教室にて―――

 「おっはよー! みをなちゃん!! 学校来たんだ?」

 (か、かんなだ……)

 「おはよう、かんなちゃん……」

 「あれ? せっかく話す価値の無い害虫に声、掛けてあげたのに、そんな態度はないんじゃないかな?」

 「い、いや……そんなつもりじゃなくって……」

 「また? 言い訳なんて飽きたんですけど!?  素直に認めろよ! バーカッ!」

 パラパラ――

 みをなの頭の上から生ごみが降ってきた。

 「もう、止めて……」

 みをなが半泣きの顔で言った。

 (無様である!! とても無様である!!)

 「いやぁだねぇ! まぁ、こんな事になったのはあんたのせいだしぃ? ざぁんねぇん!」

 すると、今までためていた涙がみをなの涙腺からこぼれ落ちた。

 「う、うっ、もうっ、や、やめっ、て、ってばっ、う、うわぁん」

 (泣き方キモッ!)

 すると、2組の教室に百合子が入ってきた。

 「かんなちゃん?  まだ懲りないのかな?  いい加減にしなよ! 

  いくら裏切られたってして良い事とわ悪い事ってものがあるでしょ!?」

 「もう、喧嘩はっ、や、やめっ、てよーう。 うえっ、うぐっ、ふぇ~ん」

 (泣き方、超キモいッ!!)

 「ふんっ!  勝手にすれば!?  そんな奴、興味無いしぃ~?」

 そういうフ・リ・をして、かんなは教室を出て行った。
  

  

 


 


 

 

 

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  • No.1 by 宏太  2013-12-02 19:01:49 

        繋がってはいけない者たち「人間とヴァンパイア」



  ーーープロローグーーー  
  「ねぇ、おばあさま、何かお話をしてちょうだい」  

 丁度今日で12になったばかりの女の子が言った。
  
 彼女は、幼いころに両親の亡くし、今まで母方の祖母に面倒を看てもらった。
 
 そのため、随分と頭の固い頑固娘に育ってしまったが、友達も多く明るい子に育った。

 「そうだねぇ、お前さんももう12になったのだから話してもいいころだろう」
 こちらのおばあさんは、腰が曲がり始め、昔の面影、栄光は少しずつ薄れて来たがその眼は強い光を放っている。 
 
 「ねぇ、そのお話って前におばあさまが私に話そうとして止めた時のお話?」
 
 女の子は目をらんらんと輝かせながら聞いてきた。

 「いいかい、アンジェラ? 今までおばあさんが話した話はほとんど教会で牧師さんに教えてもらったじゃろう。
 
 しかし、これは作り話でもおとぎ話でもないのだ。 これは、親から子へ受け継がねばならぬ話なのだが、
教会のようなところで、一度に一人の牧師さんが一度に20人もの人数に教えるのは大変な、事なんじゃ。

 だから、わしらは家で長い時間を掛けながらゆっくりと話を教えなければならんのじゃ。

 同じ過ちを繰り返さぬように。

 お前は聡い子じゃ、本当なら16の成人のころに教えてもらうのじゃが、おまえさんには早う話たろう。

 わしら、ポップ一族とライナー一族は特別なんじゃ。 
 
 だから、クレンも知っとるはずじゃ」
 
 「えぇっ!?クレンもっ!?」   

 …クレンは、アンジェラにとって特別な存在である。
 
 なにか言葉で言い表すことができないようなモヤモヤするこの気持ち。 
 
 それは、アンジェラに不快感を覚えさせた。
 
 彼とは3か4つの時から知っている、いわゆる幼馴染というものだ。
 
 昔は、2人で悪戯をしたり……、昔はいろんなことをしたものだ。
 
 今までは、友達…遊び仲間であった。   
 
 でも、私は気づいてしまった。 
 
 モヤモヤして、不快感を感じ、目が合うとドキドキと心臓が跳ね上がる。
 ……これは恋‥‥だ。
 
 クレンのことを考えていたがアンリーおばあさまの声により、現実に引き戻された。

 「いいかい、その話というのは……」


  ーーー開けてはならぬ扉ーーー

 「早く、アンリー!」
 
 「あーん、待ってよーう」 
 
 「早くしないと置いていくぞ」
 
 「あぁっ!、あれが……」
 
 「開けてはならぬ扉‥‥‥」
 

   ーー数日前ーー

 アンリネット.バーナー、フライゼ.ポップ、エンナ.ケリーン、アーリー.ライナーの4人は、
 
 いつものように村長の家に忍び込んで悪さをしようとしていた。
 
 しかしその途中、見たこともない小部屋があるのを見つけてしまった。
 
 屋敷を知り尽くしていた(つもりの)4人は新たな部屋に興味を持ち、迷うこともなく、部屋に入った。
 
 今思えば、それが悪夢の始まりであった。
 
 その秘密の部屋というのは、普段村長のお気に入りの絵画の裏に隠されていたのだが、
 
 今日はその絵画がなくなり、扉があらわになっていた。
 
 「こんなところに扉があったなんて‥‥‥」
 
 アンリネット、(愛称アンリー)が呟いた。 

 アンリーの家族は父が大工をやっており、この家の建設にもかかわったほどの腕のいい大工である。 
 
 そして、アンリーはというと、幼い時から護身用にカラテを習っており、小さい割に力が強い。
 ‥‥が、人見知りがひどくなかなか友達ができなかった。
 
 しかし、エンナ達と知り合い、見違えるほど変わった。
 
 図書館にこもるのを止め、外に遊びに行くことが増えた。
‥‥‥が、困ったこともある。 …悪戯好きになってしまったことだ。

 その悪戯仲間の一人であるエンナ.ケリーンは、幼いころに母を亡くした義妹ポロネと、祖母のリリエーナの3人暮らしだ。

 エンナもポロネと同じく、両親がいない。

 理由は、2人共愛人が出来て家を出て行ったのだ‥‥‥幼いエンナを残して……。

 それから、3日程経って祖母のリリエーナがエンナに会いに行った。

 もしも、あと1時間でも遅ければ、彼女は命を亡くしていたかもしれない。

 当時、住んでいた場所は寒いことに有名な村であった。

 暖炉のつけ方も、上着の置き場所も、布団の置き場所も、ご飯の置き場所、作り方も知らないエンナにとって地獄であったに違いない。

 リリエーナが部屋に入った途端、

 「ばぁば? ばぁーばーー」

 ‥と、フラフラとした足取りで近寄ってきた。

 リリアーネはエンナを抱きしめるやいなやギョッとした。

 風邪で気持ち悪くなり、吐いたのだろう、ものすごい刺激臭がする。

 それに‥‥熱い、この世の物なのだろうかと思うほど熱い。

 幸い、家から病院は近く、ありがたいことに病院はあいていた。

 しかし、そこからが問題であった。 

 長い間、高い熱のまま放置され、食事もせず、薬も飲まず、整った環境に居なかったエンナは、風邪をこじらせ肺炎になっていた。

 特に、幼いエンナには沢山の薬を飲ます訳にもいかず、長期入院する事となった。

 まぁ、薬をたくさん飲ますという話は、お金があればの話だが。

 入院中、体中を激しい痛みが襲い掛かり、食欲は失せ、ひどい吐き気、めまい、だるさに支配された。

 しかし、リリエーナの必死の看病と、エンナの生命力の強さにより一命は取り留めた。

 だが、その時の後遺症で、視力7.0、嗅覚は犬並み、口に物を入れただけで調味料とその分量がわかる、
聴覚は、相手が1㎞離れたところでつぶやいた声さえ聞こえる、と人間離れした体を持ち、周りから気味悪がられた。

 そんななか、その能力を気にせず接してくれたのが、アンリー、フライゼ、アーリー、であった。

 フライゼ一家は旅人だ。  

 しかし、この町を気に入ってしまい、たまに短期の旅出る位だ。

 父親や母親も、彼を気にして自分たちだけで旅に出かける。

 そして、いかなる時もアーリー達に土産を買ってくる、どこにでも居る様な優しい家族だ。

 フライゼは幼いころから旅に連れて行かれたため、サバイバル能力が豊富である。

 そして、その横を金魚の糞のようについて回っているのがアーリーだ。

 そして、そのアーリーはというと自分のことを語りたがらない。

 そして彼はひどく変わり者ですぐに怒ってしまう。

 しかし、冷静な判断力と大人顔負けの頭脳で一目置かれているのは確かだ。

 アンリネットは頭の中でみんなのことを思い出していた。

 どういう接点で知り合い、仲良くなったのかは忘れたが、仲良くなってからというものの、どんなにひどい喧嘩をしても仲直りする仲なのだから
とても強い絆で結ばれているのだろう。

 ぼーっとしていたのだろう。 気が付くと下に寝かされていた。 というよりも、そんなことに気が付かなかった私もすごいと思う。

 エンナはしきりに私の声を呼んでいる。 そして、アーリーが私の頬をぶった。

 さすがにこれはこたえた。

 まだ、焦点の定まらないままの重い頭を起こす。
 
 エンナが心配そうに私の顔を覗き込み「アンリー、なんともない?」と、聞いてきた。

 実際、なんともない事もなかったが一応、大丈夫だと答えた。

 一体、何があったのだろうか。

 確かに私はボーっとしていることが多いが、気づいたら寝かされていた‥‥なんて事は今までになかった。

 「ここは、どこ?(村長の家?)」

 でも、あたりは木が生い茂って家の中とは思えない。

 そんなことを考えていると、さっきの私の呟きが気に食わなかったフライゼに
「おまえっ、なんも覚えとらんのか!?」‥‥と、怒鳴られた。

 「シッ、前方から女と男が歩いてくる。 隠れてっ!」

 エンナが突然叫んだ。

 そういわれても周りには木、木、木。 木しかない。

 「走れっ!」

 そんなこと言われなくても、隠れられないのなら走るしかない。

 4人ともそういった顔をしながら走っている。

 しかし、先ほどの謎が解けたわけではない。

 アンリーはそんなことを考えながら4人で走っていた。



  ―――友情のヒビ割れ―――
 

 
 
 ―――ホントの事―――
 
 どれ位の時間がたったのだろう。

 私はゆっくりと目を開ける。

 いつの間にか辺りは暗くなっており、暗闇の中に炎が赤々と燃え上っている。

 そして、微妙な木の配置を見てアンリーは、倒れたところからさほど動いてない事を知った。

 フライぜが火を熾したのだろう、うまい具合に炎が上がっている。

 そして、その火の周りにアーリー、フライゼが座っている。

「アーリー、今のはホントか? エンナが裏切っていたというのは……」

「シッ、」

 そういうと、アーリーは私の顔を見て寝ているかどうかを確かめた。

 私は咄嗟に瞼を閉じた。  ……おかげで起きていることはばれなかったようだ。

 「そんな‥‥、あの優しいエンナが。」

 「俺が知っている範囲ではエンナは八方美人って奴だ。  この前、アンリーの本がなくなったのもエンナが取ったんだ。
  それも、なかなか手に入らなくてアンリーが1年半も探していた大切な本だ。

 これもひどい話だが、こんなの軽いもんだ。  だいぶ前の話だがアンリーが転んで馬車に轢かれかけた事もあいつに仕業だ。

 後ろからあいつが突き飛ばして……。

 他にもエンナのお気に入りの服を破いたのも、みんなの前でアンリーの悪口を言ったり―――」

 「うそ、」

 私は気が付くと喋っていた。

 そして、ポロポロと大粒の涙を流していた。

 悲しかった、エンナがまさか私を裏切っていたなんて……。
 
 彼女が裏切っているというのは薄々気づいていた。

 しかし、現実とはすぐには受け入れられないものだ。

 彼女との思い出が走馬灯となって甦る。

 
 
 これは確か六つの時の思い出だ。

 毎年、町で行われるお祭りでの事だ。
 
 アンリーは1人ポツンと座っていた。

 彼女は、彼女の周りの皆が家族の話をしている時に必ず顔をゆがめてみんなの話を聞いていた、
家族に恵まれている人を見ていると彼女の頬に涙がつたっていた。

 だから、アンリーは気になって声をかけてみた。

 「あなたはどうしてそんな顔してるの? そんな顔ばっかりしていると神様にあっという間にお迎えに来られちゃうよ。
だから、ねぇ、笑おうよ。  ほら、あなただけが悩んでいるんじゃないよ。  私もね、みんなと仲良くしたいのに
図書館にこもってばっかだから気持ち悪いって思われたりさぁ。  他にも、私ねお母さん居ないし兄弟もいないし
お父さんも仕事でなかなか帰ってこないしね、この前の嵐のときなんて一人で凄く怖かったんだからね!
 それに、それに‥‥」

 あまりに勢い込んで話し込む物だから、エンナは目を丸くしていた……と、思えば急に笑い出した。

 「わ、笑ったぁ~。  ねぇねぇ、何て名前なの? 私はアンリネットって名前なんだけどね、パパはアンリーって言うの。」

 「あ、あたしは……え、エンナ。」

 「エンナちゃんかぁ、いい名前! ほら、エンナちゃんも何か話してよ。」

 「えっ……」

 サーっと、エンナの顔が変わった。

 しばらく二人の間に沈黙が流れた。

 「あ、あはは何かごめんね。  ちょっと調子に乗りすぎたかな? 私すぐに……」

 「ううん、 今まで私の話を聞いた人はみんな気持ち悪がって離れて行っちゃったから。 
ねぇ、アンリーちゃん…?は、私のことを嫌いにならない?」

 「うん! どーんな事でもいいんだよ! 嬉しかった事、何でも無いような事でも、……他の人には言えないことも」
 
 エンナは自分の生い立ちを話した。
 
 幼いころに両親に捨てられ、義理妹と祖母と住んでいること、そのせいで友達にいじめられたこと、自分の特殊な能力について。

 エンナは、泣いていた。

 肩を震わせながら、静かに。

 アンリーは そっとエンナの手をつないだ

 今まで孤独であったアンリネットにとって、エンナの気持ちは痛いほど分かった。

 「友達に……なってくれる?」

 「もちろん! これからもずーっといっしょ!」

 それから2人はすぐに仲良くなった。

 次の日、アンリネットが通っている教会にエンナは祖母とやってきた。

 今でこそ大きな町となったが、昔は名前もない様な小さな町であったため、新しい仲間であるエンナにみんな、興味を持った。

 帰る時間に、エンナはみんなに取り囲まれてしまった。

 「ねぇ、どっから来たのん?」

 「何しに来たん」

 「うーん、皆に言っても知らないようなところ、おばぁちゃんの故郷に戻ってきたの。」

 沢山の質問にあたふたしながらもエンナは楽しそうに質問に答えていく。

 そしてみんなで教会から出ようとしたときにエンナはこっちを見て手招きした。

 すると皆の蔑んだ目で睨まれた。

 そして、私をいじめていたリーダー格のサリヴァンがエンナに耳打ちした。

 (――あいつに近づくな――)


 そして、やっとその言葉の意味が分かったエンナはサリヴァンの言ったことを無視して私に声をかけた。

 「アンリーも帰ろ!」

 「ちょっとあんた、私に逆らうつもりなの!?  こいつ、生意気っ!」

「エンナちゃん、私のことなんて放っておいて。   じゃないと、あなたがいじめられる」

 「アンリーちゃん……」

 「もう止めようよ!サリヴァン、みんなこんな事しても楽しくないんだよっ! あんたにホントの友達なんていないんだよ。
アンリネット、今までゴメン。」

 「ごめん」

 マトリシカの声を合図にみんなが頭を下げた。

 「はっ?  こんな奴にあやまんの?  あんたらも随分落ちたわね。  いいわ、次はあんたらなんだがら――」

 「いい加減にしな!  私たちは警告した。 それでも止めないんなら牧師さんとお父さんに言いつけるから」

 「っ!?」

 「みんなで帰るよ」

 「…?………うん?」

 突然の事であっけにとられていたがエンナのおかげで学校でのいじめはなくなった。

 それからも、足りないことがあれば補い合い、励ましあい、助け合ってきた。

 そのエンナは私にとっては友達であっても、彼女にとってはどうでもいい奴だったんだ。


 涙があふれる。

 抑えようとしてもあふれる。

 すごくみじめだ。

 ナンデ?  ドウシテ?  ワタシハナンデイキテイルノ?  カミサマハザンコクダ  ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?

 ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?……

 「なんで?どうして?くるしいよ?さみしいよ?ゴホッ、ゴボッ―――」
 
 涙が、止まらない

 「もうやめろよ。」

 アーリーは子供みたいに泣きじゃくる私をまるで幼い子供をあやすように抱きしめた。

 「お前の悲しむ顔なんて見たくねえんだよ」

 「うわぁ~ん、えんなぁ~っ」

 2人の周りだけが音を立てて、静かな夜に空回りしていた。

 ――― ―――


 「ぉぃ! ぉぃ!  おいっ!」

 「ぅん? なによ……  あぁ!」

 毎度の事であるが、気づくと知らない場所に居た。

 しかし、前と違うのはフライゼも同じと、いうことだ。

 あと、木にロープで縛られている。

 ありえない。  

 すると、向こうから顔がパンパンに膨れ上がり、口の端から血を流しているアーリーが兵隊服を着た男に連れてこられた。

 その後ろにはエンナがいる。

 「アーリー! その顔どうしたんだ!?  おぃ……」

 「私が説明するわ、私はあんた達と居て――――」

 「もう、全部知ってるわ。  もうあんたの声なんて聴きたくない。 私の前から消えて」

 私はなるべく低い声で言った。   これには、さすがのエンナもビビったのか焦った声で言った。

 「そ、そう。  なら、状況だけでも説明させてあげる。

 ここは、サンドゥブ国と言って、人間の代わりにヴァンパイアの栄える国。

 この国には大まかに2つの土地に分かれていて、今私たちが居るのはタンバドンラックという
崖の多い土地よ。

 そして、この土地には「ランアモック」と、言って「地に狂う」という意味のヴァンパイアが居るの」

 「ちょ、待て、は? 全然、呑み込めねぇぞ!?  ってか、ヴァンパイアって全員人間の血を吸うんだろ?」

 フライゼがパニックになり、口からよだれを出している。

 みっともないな、とアンリーは思った。

 「あ、そこに関しては、血を吸うバンパイアの、ランアモック族と、血を吸わないパザモック族が存在するの

 それで―――」

 「あーもうゴダゴダうるせぇんだよ! しかも、おまえの説明じゃ意味わかんねぇから俺が説明する。

 だから、離せ!」

 アーリーがエンナに向かって叫んだ。

 「わ、分かったわよ!  離せばいいんでしょ!?   なによ、私の説明は完璧よ? なんで……」

 そういうと、エンナは兵隊服を着た男たちに何かを命令した。

 すると、男たちはエンナ達を木から降ろし担ぎ上げると歩き出した。


 気が付くと布団に寝かされていた。

 今までの事は夢だったのかな?  
 
 でも、自分のよく知った布団ではないと知るとアンリーは急に、さっきの事がホントならいいのに…と、思った。

 昨日はいろんな事がありすぎた。

 
 「私は謝らないからね!」

 エンナの冷たい視線が甦る。

 

 「お前の悲しむ顔なんて見たくねえんだよ」

 アーリーが私を抱きしめながら言った言葉……。



 これは、本音だったのだろうか。

 知りたい……けど、もし嫌われたら……。

 ダメだ、そんな勇気など私には無い……。


 さっきから、アーリーの事ばかりが頭の中を回っている。

 私をかばってくれたアーリー。

 私を思って言ってくれた言葉。

 私、一人に向けた言葉。

 

 今まで、アーリーの事が好きな自分に気が付くたび、モグラ叩きのように自分を押し込めてきた。

 でも、今エンナと言う大きな存在を失ったアンリーに感情を押し込めるというのは無理な話であった。

 会いたいよ、 今すぐ……、 会いたいよ……。

 私はモソっと布団から起きた。

 改めて部屋を見回してみる。

 木彫の壁、ベッド、クローゼット、ドレッサー、タンス、床、時計もだ。

 そして、時計の時刻を見る。

 まだ、朝5時だ。

 アンリーは自分の来ているネグジェリを着替えるためにクローゼットに近づいた。

 クローゼットを開けたアンリーは沢山の赤い服に驚いた。

 そして、アンリーは、赤のロングスカートに黒のキャミソール、赤のブラウスを着てみた。

 そして、手を器用に動かして、頭の上で大きなお団子を作る。

 ――なかなかの出来だ。

 ルンルン気分で部屋を出たアンリーはアーリーの部屋を探し始めた。

 彼の部屋はすぐに分かった。

 彼も、朝早くに目が覚めたようで出かけたようだ。

 扉が開きっぱなし……。

 アンリーは一応その部屋に入ってみた。

 そこには脱ぎ散らかしたままの、愛しい彼の服があった。

 そして、置手紙には
 
 「すこし、庭に出ていきます」

 と、言う文章が書いてあった。

 さっそく、アンリーは庭を探してみた。

 案外と、庭は簡単に見つかった。

 アーリーの部屋を出てすぐに右に曲がると庭があった。

 庭と言っても、小説に出てくるような迷路になっている庭であった。

 そしてアンリーは少しためらってから迷路に足を踏み入れた。

 中はとても複雑で迷子になりそうで怖かったが、アーリーに会えると思うと、アンリーの中の不思議に恐怖心は消えてった。

 右、左、右、右、と曲がる。
 
 と、そのうちに、大きな場所に出た。

 「あ、」

 と、アンリーは小さく声を漏らした。

 それも当然、この広間に繋がる他の道から同時にアーリー、フライゼが出て来たからだ。

 そして、アンリーはいつもとアーリーの様子がおかしいのに気が付いた。

 いつもは黒を基準に服を着ているアーリーが緑系統の服を着ていたからだ。

 白のノースリーブ(白と言っても裾と襟には緑のラインが入っているが……)に、指先の空いた、手首丈の緑の手袋をはめている。

 ズボンは緑の強いアースカラーのズボン、首にはスカーフを巻いている。

 「アーリー、服が違うね……」

 「お、俺の趣味ではねえんだが……、クローゼットの中、こういう色の服しかなかったから、し・か・た・な・く・!だ」

 「でも、似合ってんじゃない?」

 私が本音を口にしたところ、

 「ちょ、おまえ頭の方は大丈夫か? いつものお前なら マジか!? ついにお前も終わったな!……とか言ってんだろ?

 しかも、フライゼもいるんだぜ!?  そういうのは2人だけの時にしとけ!  ブツブツ……ったく、なんなんだよ」

 すると、ずっと黙っていたフライゼが、こっちをニヤニヤしながら聞いてきた。

 「さっきから聞いてりゃよ、似合ってんじゃない?、とか2人の時だけにしとけ! とか、付き合ってんの君ら?

 え? え?え? どうなのどうなの? どうなの?」

 そう言っているフライゼは、白の長そでTシャツの上に、腰のあたりまである青のノースリーブの服を着ている。

 そして、クリーム色のもさっとしたズボンをはいていて、靴は青のブーツを履いている。

 なんだか、今日のみんな服は色が統一されている気がする。

 アンリーがそんなことを考えていると、いきなりアーリーが「しっ」と叫び、私たちの口を押さえて近くの茂みに飛び込んだ。

 私は口と微妙に鼻も塞がれているのと、アーリーに触れているという事の恥ずかしさの2つで、真っ赤になってしまった。

 「アーリーやめて、息が苦しいの!」と、目で合図すると
 
 「あっちを見ろ」 と、目で合図をされたのでアーリーの視線の先をたどっていくと……

 「んんんっ!? ヴァンパイア!? これがエンナの言ってた……ラ、ラーモック? だっけ? て、はぁ!?」

 もちろん声が出せないので声は出していないが、頭の中のアンリーはぶっ飛んでしまった。

 そして、ラー、ラー……もう、ヴァンパイアでいいや、ヴァンパイア達の人数は5,6人である。

 顔は青白く、犬歯は顎まで伸びていて、服はボロボロの物を身に着けている。

 さっきからキョロキョロと辺りを窺っている。

 そして運悪く、アンリーはヴァンパイアの目が合ってしまった。

 【キエェェェェ!!】

 ヴァンパイアはアンリーの方を見て奇声を発しだした。

 「にげろ!!」

 アーリーが叫ぶと、フライゼとアーリーが、茂みから飛び出した。。

 しかし、アンリーは動くことができなかった。

 アンリーが動けないでいると、アーリーが戻ってきてアンリーを背負った。

 「てめぇ、なに考えてんだ!? 死にてぇのか!?」

 【キエェェェェ!!】

 そんなことは構わず、奴らが奇声を発して追いかけて来る。

 「走るぞ!!」

 そう言うとアンリー達は迷路の庭を逃げ回った。

 アンリー達は足に自信があったが奴らも、だいぶ速い。

 アンリーも正気に戻って自分で走り出したが、さっきから聞こえる足音のせいで、足がすくんでなかなか動けない。

 脇に植えている薔薇がさっきから腕に引っかかり、切り傷を作っている。
 
 角を曲がったとき

 「あぁっ!」

 フライゼが突然叫んだ。

 そう、目の前が行き止まりだったからだ。 

 【クェックェッキエェェー!!】

 もう奴らはすぐそばに迫ってきている。

 その瞬間、アンリネットは叫んでいた。

 「プレスティエルポダー、ポダーデルフェゴ!!」

 すると、彼らの目の前に炎が現れた。

 ヴァンパイア達の2人は炎に巻き込まれて消えたが、

 残りの5人はこちらに走ってくる。

 次はフライゼが叫んだ。

 「プレスティエルポダー、ポダーデルアクァ!!」

 すると今度は地面から水が飛び出した。

 と、思うと水が奴らを飲み込んで地面に消えてった。

 残ったのは一匹。

 【ガルルル……キュエウ! キエェェ!!】

 奴が飛んできて、もうダメだ……。

 そう思った瞬間、

 「プレスティエルポダー、ポダーデルベルデ!!」

 アーリーが叫ぶと、今まで周りにあった草や薔薇たちが動き出してヴァンパイアを掴んだ。

 そして、薔薇の1つがまるで生き物のように動き始め、口のようなものを開けた。

 あ、と言う間もなく、ヴァンパイアは呑み込まれた。

 そして、完全にヴァンパイアを飲み込むと周りの草木とともに、跡形もなく消えて行った。

 ………………。

 何があったんだ?

 3人が3人共、同じことを考えていた。

 そして、そろそろその沈黙に耐え切れなくなったアーリーが口を開いた。

 「いまの……なんだったんだ……。」

 「………………」

 みんなが座ったまま立ち上がりもし無ければ、誰も話さないでいると自分たちの頭の上で声が聞こえて来た。
 
 「お見事じゃ」

 「へっ!?」

 いきなりの事にみんなはビックリして上を見上げると……

 髭がもさもさ生えたオジサンが笑っていた。

 アーリーは疲れきった顔、しかし声色を変えずにこういった。

 「誰だ、てめぇ……」

 「てめぇ、とは何事じゃ?  まぁ、こちに来たまえ」

 そう言うとオジサンはスタスタと歩いて行った。

 「しょうがないから付いて行こ……」

 アンリーがそう言うと他の2人も立ち上がり、オジサンの後に続いた。

そしてオジサンの後に続くと、またさっきのあの家に戻ってきた。

 「まぁ、ひとまずは疲れたじゃろうから、元の部屋に戻って休みなさい」

 オジサンにそう言われてアンリー達は、自分たちがさっきまでいた部屋に戻った。

 部屋に入ってベッドに倒れ込んだとたんに、疲れが襲てきた。

 さっきの事が気になって仕方がなかったが、疲れの力の方が強く、夢の世界に引きずり込まれてしまった。

 夢の中――――


「……か……おま…え……すく…う…だ……けが」

 「だれ?」

 アンリーが尋ねる。

しかし、応答はない……。

 しばらくすると、またあの声が聞こえてきた。

 「だ、…れも……、出来な、……お前らが、…」

 先ほどよりは声も安定した高さになり、だいぶ文章が聞こえるようになってきた。

 でも、何を言っているのかは、さっぱり分からない。

 お前、救う、だけが、誰も、出来な(い?)お前らが?



 ………分かってたまるかクソ野郎……。

 そこで、夢は終わる。

 「う~~~~~~~~~む、よく分からん夢を見ちゃったので私は寝起きが悪いのだ!!と、呟いて起き上がった]




 「ん、エンナ……」

 呟いて後悔した。

 今にも涙があふれそうだ。

 ずっと、そばに居てくれて起きるのが遅い!!とか寝相が悪いだとか…

 いつもいつも、からかわれる度に言い返していたことが懐かしい。

 ぽた、ぽたと涙がこぼれ落ちた。

 顔を何度拭っても涙が後から後から涙がこぼれ落ちる。

 声を出しちゃいけない……そう思うほど悲しさが溢れてくる。

 涙を袖で拭う度悲しさが積もる。

 コンコン、「エンナ、入るぞ?」

 その声の主は―――

 「雲雀君…」

 「やぁ、よく眠れたかい?」

 「それが、そうでもなくってね…」

 「僕もだ、妙な夢を見てしまってね」

 「わ、私も変な夢見た……」

 「え?…」

 私の見た夢の内容を雲雀君に伝えると彼も同じ夢を見たという。

 「う~ん、不思議だね。 取りあえず、番(つがい)に相談してみるよ。」

 「つがい?」

 「うん、君も昨日見た茶髪の子だよ。

 そっか、雲雀君には番ちゃんがいるんだ………

 「そっか、じゃあ私もうちょっと寝るね…」

 「そうか、1人で大丈夫?」

 もう、止めて……  そんな優しい声かけられたら…私……。

 「もう、大丈夫だよ!! いつまでも子供じゃないんだから!! ほっといてよ!!」

 はぁ、言っちゃった。  

 でも、これで雲雀君が私の事を嫌いになってくれれば良いの。

 そうしたら、嫌でも諦められる。

 今まで、私はそうやって人との付き合いに距離を置いてきた。

 大好きな雲雀君に嫌われるのはとても辛い。

 でも、それが1番傷つかない方法。

 さよなら、雲雀君………  そんな風に思っていると

 ガバッ
 
 反抗する暇を与えずに、雲雀君の大きな手が私の腕を掴んだ。

 「じゃぁ、なんでこんなに袖が濡れてるんだよ!!」

  「あ、あぁ……」

 「ばれちゃった…みてえな顔してんじゃねえよ!! そんなに俺が嫌いか!? どうしてだよ!?

 俺はこんなにもお前の事が好きなのに!! アーリーとかいう奴もお前の事が好きなんだろ!?

 お前はどっちなんだよ!?  なぁ!?」

 ん?   今、私の事が好きって言ったの?  ハハ、またまたご冗談を……

 「冗談じゃねえんだ!!」

 え、私今喋ってなかったのに、心が読めるの?  ドウシテ……

 「お前の事が好きでっ、夜も眠れなくって、でも、こっちに気があるフリしてアーリーに懐いてるお前とか見たら正気じゃいられねえんだよ!!」

 一気にしゃべったせいか息が切れている。

 しかし、深呼吸するとこう言った。

 「お前の、気持ちが知りたい」

 ドキッっ!!

 「あたしの、気持ち……?」

 「そうだ、アンリーの気持ちだ…」

 「すぐにじゃなくって良いんだ、返事を待つよ……」

 そういうと雲雀は部屋から出て行った。
 

 

 (さっきから何なのよ……)

 俺はお前が好きだとか、お前の返事がほしいだの――――

 「もう、ちょっとは私の気持ちに気づいてよっ!!」

 そう叫ぶとアンリネットはベッドにダイブした。

 その時の勢いでベッドがギギと数センチ動いてしまった。

 あぁ、なんでリアルの世界はこうも残酷なのだろう。

 私みたいのを非リア充っていうんだっけ?

 お母さんは幼い時に他界。  父はアルコール中毒で頭がおかしくなった後、他界。

 親戚たちにたらい回しにされ、挙句の果てには両親の保険金だけを手に入れて、私を殺そうとした人もいた。

 その人たちは血の繋がりなんて無いような親戚であった気がする。

 親戚ではなく、あの針のような目でこちらを見るあいつらは「針戚」

 お前なんて居なければ……  気持ち悪い、吐き気がするよっ!  お姉ちゃんはバッチイってママが言ってたよ!!

 バッチイバッチイ!! キャハハ!   1つ1つの言葉の針が胸に突き刺さる。

 ある親戚の家では暴力を受けた。

 「あなたは、とっても可哀そうな子……。

 伯母さんの所へおいで」

 そう言ってくれたのは母の姉、ミルチェさんだった。

  沢山の酷い出来事の中で唯一の希望の光であった。
 
 すでに信じる力を失っていた私は

 すぐに打ち解けられなくっても、日を追うごとに仲良くなっていった。

 それが罠だと分かった日――――
 
 
 「あなたがとっても可哀そうな理由はね、疫病神が付いているからよ……。

 疫病神を追い出さなくっちゃね!!」

 「いや、いや!!」

 「うふふふ、そんなこと言わないで~~。  きっとあなたのその綺麗なお顔を潰してしまえばいいのよ!

  あははは、あははは!!!!」

 そう言っている伯母さんの顔はまるで悪魔が取りついてしまったような、恐ろしい顔であった。 
 
 「いやぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 伯母さんは、毎日殴った。

 蹴ったり、タバコの火を押し付けたり、ご飯を抜いて虫を食べさせられたこともあった。

 そして、あの日、大量にお酒を飲んだ伯母さんが私をバルコニーから突き落とそうとした。

 「やめてっ、やめてっ!!」

 必死で叫んでいるのに、伯母さんは私の体をひょいっと持ち上げて落そうとする。

 あぁ、もうダメだと思った瞬間に記憶が飛んだ。

 目が覚めると………

 自分はバルコニーで倒れていた。

 下を覗くと伯母さんが倒れている。

 後から聞いた話では、伯母さんは酔っぱらった勢いでバルコニーから落ちたらしい。

 即死――――

 私はそんな事はどうでも良かった。

 助かった、

 もう、誰も信じない。

 自分の力で―――――

 生きてゆくのだからっ!

 この頃から人を信じなくなった。

 信じる→裏切られる→信じる→裏切られる→信じない→社会的にやり辛い→信じたふりしてうまくやる→社会的にやりやすい女

 感情がなくて、目標に向かって駆け抜けてゆき、障害物は情を入れずに空気を読んで破壊。

 「友達」と言う存在は、人を信じないアンリネットにとって、使いようによってキングになるポーンとしてみてきた。
 
 だから、自分の社会的存在のため他人を陥れる事に何とも思わない。

 そんな時、ふと思う。

 ほかの奴らはすぐ死ぬってのに、ほかの他人を思いやるとか…子供のために命を捨てる母親とか…

 それが、生きる生き甲斐だとか…そんな風にほざいてる奴はキレイ事でしかないけれど、それがホントに正しい生き方なのかと、

 でも、ずたぼろのハートは判断力を鈍らせていった。

 もう、針や針戚に捨てられた時のように惨めな思いはしたくない。

 そんな思いは砕かれた。

 セリーヌ、アレーン、ラナザー達にだ。

 そんな考え方、もったいないっしょ!

 みんな一緒に居ることが楽しいんだよ?

 確かに、アンタの言ってることは正しいよ。

 この世に平等なんて存在しないし、傷つかないように生きるためにはいい方法だね。

 でも、そんなんじゃーずっと不幸なままなんだよ。

 生きるためには、食費とか金が必要だけど、この体は神か何かからタダでもらってんだから。

 楽しむのに金が要りますか??

 ただもんはもらっておけ!!

 

 みんな、いい奴だった。

 ブスッとして愛想もクソもない私を四十六中構ってくれた。

 かけがえのない友達。

   

 
妖艶
ユフィーナ
















「みんな、久しだね」

「はは、ユフィネは実家に帰ってたからなぁ」


ユフィネと呼ばれた少女は妖精のように微笑んでいる。


「ユフィネが居ない間、色んな事があったよねっ」

「ああ、例えばアレですか、アレ」

「アレ?   って何?」

「教えねえよ、ってか聞いたらアンリー絶対に損するぞ」

「私が知りたいんだから良いでしょ!!」

「なら言ってやろう。  ユフィが実家に帰っている間、アンリーがコナンに告白された」

「んな!?  こ、コザァート……///」

アンリーという少女は顔を真っ赤にしながら口をぱくぱく開けている。

コザァートと言う少年は無邪気に笑う。

「お、楽しそうじゃねえか……って、ユフィネじゃねえか!」

「久しぶり、レオン!   相変わらず元気そうね」

レオンと言われた少年は健康的に日焼けさせた顔をニヤッとさせた。



きっと、どこの国や地域でもあるような会話。

幸せそうな顔。


まさか、この後大変なことになるなんて、誰が予想しただろう?

そう、今は知らなくていい。
まだ、知るときではない。

今は……まだ…………。








「そうだ、今日は久しぶりにあの場所に行かない?」

「「「行く!」」」


「あんたらっ、うひゃひゃ、は、ハモりすぎだろ!!」

「アンリーもそんな笑い方しないでよぉ」

「ま、そんだけ仲がいいってことだな!」

「あったりまえじゃんっ!」

四人でベラベラと駄弁りながら歩いていく。

「確かこの木の先だったよね?」


「あったぞ!!」


「……やっぱり、何度見ても綺麗だな、生命の泉ってのは」

そう、私たちの言っていた場所というのは村の外れにある森の茂みに隠された泉。
私たちは生命の泉とよんでいる。

水はターコイズブルーに輝き、底の方にいる魚だって見ることができる。

「ここに来ると癒されるよねえ」

アンリーはうーんと背伸びをして近くの岩にもたれ掛かった。

「お前は……食うことと寝ること以外にすることねえのかよ……」

「うるさいなぁ、私だってダイエットしてますよーだ。  べぇ?」

「あ、ゆったな?」

わーきゃー言いながら二人でくすぐり合いを始めた。























 
 



  

  • No.2 by 宏太  2013-12-02 19:02:29 

〈〈 だいたい最近の物語の始まりってこうだよね。〉〉





 俺が…………今見ている光景の意味を知りたい。



 少女1はロリータ?服を着てぬいぐるみの中に埋もれている。

 少女2は巫女さんのコスプレ?を着ていて、ペロペロキャンディーを食べている。

 少女3は…………まだ来ていなかった。

 

 ここは「休憩所その1」という学校にある部屋だ。

 皆が廊下に溜まったりしないように、使えるようになっているのだが…………酷い。


 酷すぎる。

 ああ、俺は一刻も早くリア充になりたいのに、こんなやつらといたら………… 。

 
 そのとき、最後の一人の少女が


 「おっくれてすみませぇぇぇんっっ!!」

 と、超音波飛ばしながら部屋に入ってきた。




 もう、やめてくれ…………


〈〈日常てこんなもの?(。・ ω<)ゞてへ。〉〉




まず、俺の置かれている状況を説明しよう。


 とある理由でこの学校にやって来た。

 とある理由でこの部屋にいる。

 とある理由で彼女達といる。

 といる………………とありゅ?



 まあ、とりあえず俺の隣に座っている少女は冬菜。

 年がら年中ロリータ服を着ており、ぬいぐるみを持ち歩いている。

 家はお金持ちだとかどうとか。
 

 以上。



 それから冬菜の隣の少女は秋恵だ。

 彼女は日毎に少しずつ違うが、巫女装束を着ている。

 前髪がいつも顔にかかっており、口しか見えない。

 またその口も口角が上がりっぱなし、つまりずっと笑っているのだ。

 いじめられても、ヘラヘラ。

 ご飯の時も、ヘラヘラ。

 さらには寝るときまで、ヘラヘラ。

 

 …………ミステリアスすぎる。

 


 そして秋恵の隣の三人目の少女は春華。

 夏でもブレザーを着ており、右目には眼帯をしている。

 なんでも幼い頃に事故で片目と両親を亡くしたらしい。

 いまは最近テレビにも出ている親戚の龍博士と暮らしている。

 頭は賢く運動もできるのだが、なにせ一般常識が理解できていない。

 天然というかKYだ。

 以上。
 
 まあ、こんなものだろうか。

 これで大体…………いや、俺の紹介がまだだったな。

 「俺の名前は夏鈴、名前が女みたいだが立派な男子中学生だ。

 今はリア充でなくともいつかきっとリア充になれる、いやリア充なんだ、俺は。

 仲間が全然リア充じゃないけど、普通の暮らしさえしていればリア充だったはずだったんだ。

 
 ま、俺はすごい秘密があってそれをどうにかしない限りはリア充にはリア充…………



 りゃ充、りゃじょう、りゃずる…………



 そんなことはどうでもよい。

 俺は顔はカッコいいし、勉強は出来なくても運動できるし、皆が告白して来ないだけで告白されたらモテモテなんだ!!

 だから………………」

 




 「………………」
 「………………」
 「………………」
 




 俺って、今声に出して…………?




 …………時は戻せない。




 冬菜はマジでドン引きしてる。

 秋恵は鞄から「悪霊退散」とかかれた紙袋をとりだした 



 さよなら、人生。

 さよなら、リア充……………………。


 「と言って現実逃避しちゃダメですよ?」

 バチバチッと音がして俺の体に電気が走る。

 
 
 スタンガン   いつも持ってる  冬菜さん_____



 575を読み上げた俺は意識が遠のいて行くのを感じていた。

 
 

〈〈 




 
「ふあぁ、眠い…………」

 あくびをしながら起き上がる。

 見慣れた光景?が広がっている。

 見慣れた壁紙、見慣れた美少女たち。

 見慣れた非リア充…………

 語っていて悲しくなってきた。

 
 スタンガンだよ?スタンガン。

 

まぁ、いいや。


 「春華ー、今何時だ?」

 「えっと、よじです」

 (もう4時か、今日は短縮授業だったしそろそろ帰るかな?)


 「まちがえました、じゅうにじにじゅっぷんです」

 
 春華、短針と長針なんて今どき幼稚園の子でもできるよ?

 「久しぶりにゲーセンでもいくか?」

 

 「あんたが誘うなんて珍しいわね」

 「わたしも、りゅうはかせにおこづかいもらった」

 
 「秋恵も行こうぜ!」

 「んじゃ、皆で……………………」

 「「「「レッツゴー!!!」」」」















 俺は抹茶クレープ、冬菜はべりー×2ストロベリーみるく、秋恵はチョコバナナ、春華は

 『三十分以内に当店のメニュー27種類を全て食べたらお連れ様の会計もすべてタダになるチャレンジコース』を頼んでいた。

 

 春華はとんでもない大食いで食べだしたら止まらない。

 本人は満腹感というものがないようで、毎回購買で売れ残って処分に困っているパンをすべて食べている。


 もちろんタダで。


 そんな晴夏さんなので、開始10分くらいにはもう17種類を食べ終えていた。

 (クレープ屋さん、すまない……)

 心の中で軽く謝っておきながら俺は抹茶クレープを頬張る。


 

  • No.3 by みを  2013-12-26 02:18:38 

なっ、なげえええええwww

  • No.4 by 通りすがりさん  2014-02-20 08:10:15 

いい話よぉ

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