茜色の空[非募集]

…あんまり分からないようなら俺が教えてやるから。( ＿だから他の奴に聞くな、と迄は言えず言葉を飲み込み、苦笑を零す相手にそう告げてはちょうど良く終業のチャイムも鳴り。教卓の上に置かれた自分の荷物を片付けては既に放課後である為に一度理科準備室へと戻る為に教科書やプリントを片手に持って。幸いにも先程の女子生徒の質問も無くなった為にすんなりと教室を出て。今でも相手と男子生徒が仲良くしている風景を思い出すと複雑な心境に心が軋んで。そうなる迄惚れ込んでいる自分にも少々呆れた様に笑いを僅かに浮かべ )

先生-!!、( 急いで教室を出て付箋だらけの教科書片手に相手の背中を追い掛けると隣迄行き。しかし少し走っただけで軽く息切れをしてしまい呼吸を整え｢さっきの本当ですか?｣と首を傾げて。相手の仕事が忙しいのは十分把握している。一応、相手の邪魔にならないか心配だった為聞いてみた。邪魔だったら他の生徒に聞くが出来れば相手に教えて欲しい、なんて図々しいかもしれない。そんなことを考えていると一時は誤魔化せたと思っていたが再び殺気の籠った視線を感じた。怖くて後ろを振り向くことなんて出来ずに相手と歩幅を合わせながら歩き、)

何で嘘付かなきゃいけないんだ。( 慌てて走って来る相手に一度足を止めては相手の呼吸が整う迄暫し其の場に留まるが問い掛けて来る相手に呆れ混じりに答えを返して。自分の大人げない行動に付き合わされているのは相手だというのに、と内心呟くも其れを止める方法を知らなくて。一先ず相手が落ち着けば其の侭もう一度歩き始めるが何か視線を感じてはちらりと視線を後ろに向け、其の正体が先程の女子生徒だと分かると密かに溜息を吐いて。「…HR、いいのか?」と自分の授業は終わったものの相手は此れからクラスにいかなきゃいけない筈、と問い掛け )

...あ。( HRのことなんてすっかり忘れてしまっていた様子。ﾋﾟﾀﾘ、と動きを止めれば｢あ、後で行きます!｣と慌てた様に言えば来た道を戻っていき。教室に戻れば幸いにもまだ立ってる人が多く間に合った様だ。自分の席に座り鞄に教科書を入れ配られたﾌﾟﾘﾝﾄ等をﾌｧｲﾙにしまえば一息吐いて。ﾎﾞｰｯと黒板を眺めていると何だか己を呼ぶ声。後ろを振り向くと其処には先程の女子生徒。一瞬驚くが平常心を維持した侭首を傾げれば彼女は笑顔で一言。"あまり先生と話さないでね"怖さのあまり頷いてしまえば後々後悔し。女の子って怖いなぁ、と内心思えば溜め息を吐いて。)

はいはい、いってらっしゃい。( やっぱり忘れていた様子に思わず呆れた様に目を細めて一息付き。慌て乍らに来た道を戻って行く相手の背中に上記を投げかけ相手は見ていないが片手を脱力気味にひらひらと振っては逆方向にある理科準備室へと歩を進め。一応他の男子生徒に聞く様な事は防げた様で大人げない乍らも安堵し、此の後の放課後も相手に会えるという事に無意識乍らも口角を上げて。自分もやる事が先生らしくない事は自覚済みだが相手に入れ込んでいるという事もおおよそ自覚済みで )

...あ、やっぱり無理かも。( 未だに彼女と話していたが苦笑混じりに言うと笑顔から一転、鬼の形相に変わった。女の子がそんな怖い顔して良いのだろうか、なんて呑気に考えればﾀｲﾐﾝｸﾞ良く担任が。そこからHRが始まり担任の長い話を挟み終わったのは10分後。鞄を持ちなるべく彼女と会わない様に駆け足で教室を出ると相手が居るであろう理科準備室へ。ふと窓の外を見れば今日は昨日とは真逆の快晴で。しかし風が吹くと枯れ葉が舞い何だか寒そう。昨日の猫は大丈夫だろうか、と少し不安に思うが木の上に居ないことを確認しては安心し再び歩き始め。)

( 今頃相手はHRだろうか。自分は担任を持っていない為に特に何もする事無く理科準備室から窓の外を眺めて。昨日と比べ快晴だが外は案の定寒そうで、今日も相手を送って行こうかと画策中。相手は引き止められていないだろうか、と心配の種が尽きないが余り構うのも周りから見たら怪しいだろうか、と色々考えては頭の中で考えるのに疲れたのか深い溜息をついて )

失礼しま-す、( 理科準備室へ入ると何やら窓の外を見ている相手。何だか考え事をしている様に見えたが何かあったのだろうか、と心配になり。しかし己は相手から見ればまだまだ御子様。大して力にもなれない自分が情けなく思いながらも相手に近付けば｢御待たせしました-｣と言い早速教科書を取り出して。相手に先程のことを言うべきか迷ったが余計な心配は掛けさせる訳にもいかず言うのを止め。鞄を机に置けば早速今日の授業で分からなかったﾍﾟｰｼﾞを開き。)

お、よう。( ふと物思いに耽っていた所為か相手の声で漸く我に返り、窓の外から相手の方へと視線を移してはそれを紛らわす様に微笑みを浮かべて。早々に勉強の準備をし始める相手に感心すると相手を目の前にし首を傾げては「まずはどこら辺だ?」と分からない範囲を聞こうと相手が開いているページを覗き込む様にして )

( 昨日はパソコンが使えず来れずにすみません、返レスしておきますね…! )

えっと..、ここが全く分かりません、( 教科書は分かりやすく書いているつもりなのかもしれないが己にとってはまるで暗号の様だ。その中でも最も意味不明な所を指差せばう-ん、と首を捻り。もっと小学生でも分かる様に書けば良いのに、なんて馬鹿げたことを考えﾁﾗﾘと相手を見ると今更ながら相手がかなり近い位置に居ることに気付き。慌てて視線を教科書へと向ければ何だか胸が高鳴り、)

(/いえ!大丈夫ですよ-。私も最近は夜遅くにしか来れてないですから...、)

あー…、成る程なぁ。( それは先程解説を軽く入れたが軽くじゃ分からなかったか、と思えば教科書の文字の所に指を滑らせては「…これはこっちに定数があってな…。」と覚えるべき場所をさして行っては比較的柔らかい声で案外至近距離に居る相手に云って。ちらりと視線を上げれば何処か慌てた様子すら見える相手に困った様に微笑んでは説明に戻って )

( よよよ、よかったです…! )

じゃあこれが..こうなるってこと?、( 相手に説明して貰ったことを今度は理解しながらﾉｰﾄに書き込むと確認の為に首を傾げて。他の授業でなら苦手なところは聞き流す己だが相手の授業だけは苦手を克服したい。だがﾃｽﾄは幾ら頑張っても赤点ｷﾞﾘｷﾞﾘ。今回のﾃｽﾄこそは良い点を取らなければ、と意気込めばｼｬｰﾍﾟﾝを持つ手に力を込めて。)

(/まぁ御互い様ですよ、← )

そうそう。( 意外にも勘良く相手が自分の言った事を理解し書き込んで行く姿を見ては頷き、次はこうなるのだと教科書を指差しては解説を続けて行き。出来る事なら自分が教えている授業ならそれなりに点数はとってほしいと思うのは相手が特別だからなのだろうか。そんな事が頭をよぎるも今はそう言う事を考えてる場合じゃない、と思考を遮って )

( 了解です…!; )

あ、分かった!、( 基本が分かれば後はあっと言う間に解けてしまった。きっと今まで分からなかった所は基本が身に付いていなかったからだろう。ぱぁ、と表情を輝かせると満足した様子。重要な所にﾏｰｶｰで線を引けば大きく"復習!!"と書き込み。今回は絶対に平均点以上取れる気がしてきた。｢先生、有難う御座いました-｣と笑みを浮かべながら言えば教科書を閉じて。家に帰ったら早速応用問題に取り掛かってみよう、と考えれば椅子から立ち上がり。)

そうか、よかった。( 無事に分かったのか相手の嬉しそうな表情に心も和まされ此方も思わず嬉しげに表情を和らげて。満足げに喜ぶ相手に今度のテストは期待しておこう、と考えさせられては教科書を閉じる相手を横目で眺めつつ自分は自分の机へと一度歩み寄って。机の中に休憩がてら食べようと思っていた飴を一つ取り出しては相手の元へと戻り「よく頑張ったな、御褒美。」と椅子から立ち上がる相手の手を取っては相手の手の上に机から取り出した飴玉を一つころん、と落として )

わわ、有難う御座います!、( 飴を貰うと嬉しそうに頬を緩ませ。相手から飴を貰えるなんて全く思ってなかったが凄く嬉しい。今日学校来て良かった、なんて思えば小さく笑みを溢し。あ、と思い出した様に鞄の中を漁れば中からﾗｯﾋﾟﾝｸﾞされたｸｯｷｰを取り出し｢今日の家庭科で作ったんですけど..良かったらどうぞ｣と今度は此方が相手に渡して。普段、御菓子作りは滅多にしないが味は友達に確認して貰ったから大丈夫な筈。少々形が歪なのもあるが個人的には頑張ったつもり。)

…良いのか?そんな大事なもの貰って。( 渡された袋をまじまじと見ては顔を上げ、自分で作ったのであれば自分で食べればいいのに、と少し申し訳なくもなり。しかし相手からの手作りを貰えるという事に嬉しくない訳が無く眉を下げ乍らも薄らと微笑みを口元に浮かべては「…ありがとな、嬉しい。…飴だけじゃもったいなかったな。」と正直に告げては後で茶請けにでもしよう、と内心呟き。飴玉以外に何か渡せたら、と思うものの考え込むが今は何も持っておらずに )

初めから先生に渡すつもりでしたから、( 首を左右に振ると笑みを浮かべ。一応自分のも作ったのだが残念ながら焦がしてしまい失敗。相手のはしっかりと確認しながら作ったから何とか成功。友達に誰かに渡すのかと聞いてみた結果、彼氏や好きな人に渡す人が多かった。好きな人、と言えば思い浮かんだのはやはり相手だった。一刻も早く渡したかったのだが授業を挟むとすっかり忘れてしまっていた。｢先生から貰えるなら何でも嬉しいですよ?｣ 嘘偽りのない言葉をｻﾗｯと言えば小さく首を傾げ。)

…ったく、嬉しい事を言ってくれる。( 此方の気持ちも知らないで、と苦笑し肩を落とすも其の言葉に嘘が無いと分かっている為に内心では嬉しさに少々鼓動を早めて。無愛想な口調乍らも感謝はしているのか相手に手渡されたものにもう一度視線を落としては柔らかく目元を緩ませて。「…そういうのを簡単にいうなって。」その純粋無垢な言葉の意味を計り兼ねては一歩踏み出せずにいる自分が阿呆らしくてしょうがない。密かに自嘲しては其れでも可愛らしく首を傾げている相手の額を軽く指で突いて)