零零機工斗 2013-11-15 09:41:13 |
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編集完了です。ネムイ。。。
――上峰達がアリスと遭遇する数日前――
「ん?……にんげ…………ん?」
宵星煌太は、地面の上で倒れている人物を見て、驚かざるを得なかった。
まず、服装が変わっている。
大抵のホームレスすらTシャツとジーンズを着ているこのご時世、布を纏っただけの質素な服装はそうそう見ない。
どこかの国の古代から伝わる族の服だろうか。
短いが杖も握っているため、その可能性が高いと宵星は見た。
見たところ少年の様だ。
歳は中学生くらいだろうか、中性的な顔立ちをしている。
何より目を引くのは、その白い髪だ。
アルビノというやつなのだろうか。
それなら日本人の可能性もあるだろうが、やはり服装が日本人にしてはおかしい。
問題は、何故アスファルトなんかの上で倒れているのか。
そして何者なのか。
「うっ、つぅ……ここは……?」
少年が起きた。
それを見て宵星はハッとした。
少年が倒れている位置、それは道路の上だ。
車が来なかったから良かったものの、今来てしまったら大変なことになる。
道路そこにいたら危ない、と声をかけようと、宵星は走った。
少年はアスファルトをペタペタ触って何やら首を傾げていたが、宵星に気づく様子はない。
しかし、背後から近づくトラックには気づいた様だ。
「おい、危ないぞ!早くそこからどくんだ!」
これじゃあ走っても間に合うかわからない。
不安から少し速度が弱まったが、すぐに全速力に戻して宵星は走った。
しかし、少年が自分から動くことはない。
(もう駄目だ……!)
急ブレーキがかかっても、その慣性で少年の方向にトラックが吸い寄せられていた。
やはり、とても間に合いそうにない。
――ブォンッ!
突如、少年の姿が揺れた。
「あっぶねえええ!」
声のする方向を見ると、真横だった。
少年がこちらの歩道に飛んでいたのだ。
「え?」
飛んだこと自体は不思議じゃない。
生存本能が働いたのだろう。
ただ、あの距離で間に合うことはほぼ不可能だった。
少なくとも、それなりに運動してる宵星でもあれは無理だと確信していた。
「なんだったんだ今の!すっげえ速ぇええ!」
目をキラキラさせながら急ブレーキでやっと止まったトラックを見つめる少年。
数秒前に命の危険に晒されていた者の表情ではない。
「お、おい!大丈夫か!」
トラックの運転手であろう男性が降りてきて、声をかけてきた。
その視線の先には少年と、宵星がいる。
「け、怪我はないか?一応救急車呼んでおくぞ」
悪いのは明らかに道路の真ん中で座っていた少年の方なのに、随分とお人良しな運転手なのだろう。
その目に怒りはなく、純粋に心配だということが伝わった。
「なあ!今のなんだ!?馬車か!?でも馬がいないな、新種の魔物か!?」
「はあ?」
宵星は運転手の奇声と混乱に納得できた。
とても引き殺されそうになった人のものとは思えない、満面の笑みで引きそうになった自分に尋ねてくるからだ。
「……車を知らないのか?」
宵星が、気づいた様に呟いた。
それならその態度に納得……はできない。
死にかけたのだから。
だが、それほどの田舎なら服装も納得できる……かもしれない。
やはりおかしいことばかりの子供だ。
だが、何故か、宵星は咄嗟に対応ができた。
「あ、すいません、救急車は必要ないです、見た通りピンピンしてるので、この子」
「そ、そうか……俺もトラックも中に荷物はないし、無事だから何の問題もねぇな……よし、帰るか。すまねぇな坊主、怖がって……はなさそうだが」
「?」
状況が飲みこめずにいるのか、首を傾げる少年。
その後去っていくトラックを見送り、宵星は行動に出た。
宵星は事情を聞いてみようと決意した。
理由は単純な好奇心ではあるが、放ってはおけないというのもある。
「君、どこから来たんだい?」
「どこって……あ、ここどこだ?さっきまで森にいたのに……確か……銀色の狐!あいつか!あいつ、幻影魔法使えるのか!」
話が明らかに噛み合ってない。
「も、森?この辺りに森なんてないぞ」
「うるさい幻、俺をあの狐の元に返せ!早くあれを売って儲けるんだよ俺は!」
噛み合うどころか、こっちの話さえ聞いてくれない。
「俺は幻じゃないし、この辺りで狐なんて出ない。 一旦落ち着いてくれ」
「幻じゃ、ないのか……?」
幻呼ばわりした割には案外あっさりと信じてくれた少年だった。
「じゃあ、ここはどこなんだ?」
「ここは紅陽町だよ」
「クレナイチョウ、聞いたことないな……国の名前は?」
「……日本だけど」
「全然知らない……」
「……え?」
流石の宵星もこれはおかしいと気づいた。
今いる国の名前すら知らないのではただの田舎者では済まないからだ。
「……ひとまず、うちに来ないか?」
「……うん」
本人はまだ知らないが、異世界人というとんでもない迷子を引き取った宵星であった。
――数日後のとある公園――
「待て待てー!」
そこには自分の住んでいた世界と違うという認識をしながらも無邪気に猫を追いかけまわしている少年――カナチの姿があった。
「やっぱりすばしっこいなっ、だけど速さなら負けないぞ!」
トラック(本人は何かの魔物と勘違いしているが)に轢かれそうになった時に使った加速魔法を使い、猫の逃げ道を封じたカナチは容赦なく抱き上げた。
「全く、こっちに来てから魔力が回復してないのと同じくらいなのに魔法を使わせやがって、このこの」
言葉では叱っているようだが、実際には撫でまわしたり、モフモフしたりと怒っている様子は全くない。
「煌太もいないから暇なんだよなー。っと、なんだあれ?」
猫モフモフを存分に楽しんでいるとこちらに飛んでくる人の姿を発見して眺めていると目の前で急停止した。
「″にゃー″を発見。保護を開始する」
「……お姉さん誰?」
空から見下ろされるという体験は初めてのカナチだが、そんなことで動じる器ではなかった。
「アリスは固有名称アリス=Mミュー=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アリスは固有名称の開示を要請する」
「固有名称?名前ってことか?」
「肯定ポジティブ」
もちろん、カナチの世界でも固有名称なんて単語はそうそう使われない。
しかし変な状況が続いてるカナチにとって、そんなことは些細なことでしかなかった。
「なんかよく分かんないけど、僕はカナチって言うんだ」
「対象の固有名称を″カナチ″で登録。続いて個体識別コードの開示を要請する」
「こたいしきべつ……何て?んなもん無いぞ」
「アリスは″カナチ″を″上峰達也″と同じであると仮定」
「他にも僕みたいなやつが居たのか?」
「肯定ポジティブ。対象までの距離200m。近づいてきている」
アリスの指差した先を見るとこちらに向かってくる姿がいくつか見える。
先頭はどうやら鳳楽のようだ。
鳳楽達の姿を確認すると、アリスはやっと空からゆっくり降りて着地する。
同時に、鳳楽がアリスに声をかける。
「やっと見つけたー。もう、アリスったら自分の状況分かってるの?」
「理解不能。説明を要求する」
「つーまーり。私たちは今あのキクトっていう神様のところにいないといけない訳だよ。場所わかる?」
「そのことなら肯定ポジティブ。アリスは帰還場所として″上峰達也″の家をマークしてある」
「それならいいんだけどー?で、この子、何?」
今更カナチの存在に気づく鳳楽であった。
気づかれてなかった本人は特に気にしてないが。
途中からやっと追い付いた少年、キクトが息を切らしながらもカナチの説明をしようとする。
「そ....それなら、僕が、説明できますよ....!その子も異世界人、です」
「あ、キクトお疲れ―」
いきなり多くの人に囲まれて自分の今の状況が上手く掴めていないのか疑問符を頭の上に浮かべる。
「何が起こってるんだ?」
「えぇっとですね。本来はその猫を探索していたんですが、偶然にもあなたを見つけたんですよ。異世界からの転移者を」
いつの間にか息を取り戻しているキクト。
体力回復も神様補正の一つらしい。
「ふーん。で、あんたらは何者?」
異世界からの転移というワードを聞いても、反応が薄すぎる。
本当に話を理解しているのか気になるが、今ここで説明しても時間がかかるということでキクト達は自己紹介に移る事にした。
「アリスは先ほど名乗った」
「わたしは鳳楽ちゃん。なーんの変哲もない一般人だよー」
ヘラヘラと笑っていながら当然のごとく嘘を吐く鳳楽。
「嘘を言わないでください!あなたのような一般人はいません!」
「ほらほら、キクトも自己紹介」
「う……僕はキクトという、所謂神様です。下っ端ですが」
神様というのを聞いても顔色一つ変えないカナチ。
「僕の住んでるところにあんたみたいな神様はいなかったと思うぞ」
「へぇ、神というのを疑わないんだね」
「ん?一流の召喚士で協会にいる人間なら普通に召喚してたぞ?」
厳密に言うとそれらはただの精霊で、力が強いから神と崇められているのだが、カナチがそれを知るはずもなかった。
「僕は少し違うんですよね。それで、君の名前は?」
「僕はカナチっていうんだ。ここが異世界ならギイルって世界に住んでいたぞ」
「ギイルですか……」
「それってどんなとこー?」
「簡単に言えば剣と魔法の世界ですね」
そんな本題から逸れてきている何気ない会話を中断したのは、やっとのことで追いついた上峰達也の声だった。
「ここにいたのか。やっと見つけたぞ」
「おや、割と早かったですね達也さん」
ここでようやく合流した達也。
因みにカナチは「早い」という単語に少し反応を示していた。
「あんたはなんて言う名前なんだ?あ、僕はカナチな」
「俺は上峰達也っていうんだが……ひょっとして、こいつもか?」
「はい。異世界人ですね」
「連れていかないといけないのか?」
「そうなりますね」
「連れていく」という単語を聞いてしばらくし、やっと自分のことだと気づくカナチ。
「連れて行くって?僕は煌太の所にいるんだけど」
「誰ですか?」
突然知らぬ名を出され、少し驚くキクト。
「んーと、営業マンとか言う宵星煌太っていう人のところだ」
「地球人じゃねぇか」
「完璧に地球人ですね」
「ん?だったらもうそいつに任せちゃえばいいじゃんか」
「何もわかってませんね?あなたは例外ですがその煌太という人は一般人です。ですのでご都合主義的な神様の力で忘れるはずですが、それが何故か効いていないのです」
実際はキクトがその力をカナチに使用する前に既に達也との騒動があったため、彼はカナチのこの世界への影響を抑えることは殆どできていなかった。
キクトはそんな自分の失態を忘れ、なかったことにしているのだが。
幸い、宵星が保護したおかげで影響は最小限に抑えられているのだが、それを知る者はこの場にはいない。
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたな」
「まぁ、強制的にこちらに巻き込むことにしますけど」
「おいこら駄神」
「いや、だってカナチ君を一時的とはいえ救って養っているのですよ?もう普通ではいられませんよ」
「ふ~ん、そんなもんなんだ~」
「それで、今その煌太さんとやらはどこにいるんですか?」
「煌太だったら、そこにいるぞ?」
「え!?」
慌てて後ろを振り向くと、そこにはなにやら怪しい者を見る目つきでケータイを構える煌太の姿があった。
「あんたらは、何してんだ?」
「え、えぇっとですねー」
「こいつらはなんか神とか言ってたぞ」
何と言おうか考えていたところに特大級の爆弾が撃ち込まれた。
しかもカナチには達也達全員が神様だと誤解されている。
「ほぉ、その神様とやらがなんでこんなところに?」
問いかけは優しく聞こえるが、目は笑っておらず手に持っているケータイには110がすでに打ち込まれていた。
「ち、違うんです!いえ、実態的には違いませんが、この子に話しかけているのは全然別の事なんですぅぅぅ!」
「言い訳を聞こうじゃないか」
顔に笑みを張り付ける事すら止めた煌太が詰め寄る。
「それはですね、カナチ君が異世界人だから、ではなくてその抱きかかえた猫がうちの猫なんですよ!」
「待て、今異世界人といったか?」
聞きなれないが、どこか辻褄が合うような気がした宵星はその言葉に目を見開いていた。
「え?あ、しまったぁぁぁぁ!!」
「落ち着け駄神」
「駄神言わないでくださいよ!」
「もしかしてカナチの不思議な力について何か知っているのか?」
「あぁ!もう何も聞かないで、って不思議な力?」
「妙に加速したり、変な物体を出してそれをぶつけたりとか。そんな感じの力だ」
「それは知りませんが、まぁ何か使えるというくらいは分かります」
話が妙な方向に飛んだという事を考えつつ状況を見守る達也。
アリスと鳳楽はすでに猫と遊び始めている。
話の流れに追いついていけずにポカーンとなっているカナチに声をかけるキクト。
「それで?カナチ君は何が出来るのです?」
「えっ、あ!魔法を使えるぞ!見せてやる!」
周囲の反応を気にせず、杖を前に構え、目を閉じて集中し始めるカナチ。
「行け!<スプリット>!」
杖から飛び出した白い弾丸状のエネルギーがポイ捨てされていた空き缶に命中する。
缶は凹みながら吹き飛び、近くのゴミ箱に入っていった。
速度としてはプロ野球選手の投げるボール並みである。
「どんなもんだ!」
「何今の?」
「無属性魔法<スプリット>ですね。あんなに速いものでしたっけ?」
「僕は速い物が好きだからな!」
「これについて、何か知っているのか?」
「えぇ、というか異世界の魔法の一つで<スプリット>と呼ばれる魔力を固めて前方に打ち出す物ですね。初歩的な魔法だから使い手はあまりいませんのでここまでの速度を出すとは思いませんでしたが」
「ということは、カナチ。お前は動きを速くする魔法も使えるのか?」
「おう!というか最初の時に見せたじゃないか。名前は<フィジカルスピードアップ>って言うんだぞ!」
カナチとキクトの非現実的な説明を受けた煌太はいまだ信じられないような表情だが、手に持っていたケータイはすでに仕舞われていた。
「お前は本当に神なのか?」
「え、えぇ。ですがこの世界に描かれている万物を創造した存在ではなく、いろんな世界を管理する存在ですが」
目の前の神様(自称)の言葉を信じていいのかどうか悩んでいたが、カナチの魔法という存在を目の当たりにして自分を納得させた煌太は信じてみる気持ちになっていた。
「それで、お前らはカナチをどうするつもりだ?」
「子供とはいえ異世界人ですからね。一旦家で保護をしてから帰すことになります」
「帰すのか」
「世界の安定のためなんですよ。それで一つ提案なのですが」
「何だ?」
「普通でしたら異世界人とかかわった一般人の方の記憶は消去させてもらうのですが、あなたは特例ということにして偶にでいいのでカナチ君と会ってくれませんか?」
「……また、何でそんなことを?」
「まだ子供ですからね。自分の知らないところにいきなり飛ばされて数日後には知らない人たちの所に行くというのも酷な話ですから、少しでも信頼されている人が時々でも来てくれるというのはそれなりに安心できるでしょうしね」
「そういうことなら、分かった。カナチもそれでいいのか?」
「んー、何となくだけど悪い奴らじゃないってのは分かるから問題ないぞ」
こうしてまた一人上峰の家に居候が増えたとさ。
「食費、どうなんだろうなぁ……」
ため息をつく達也に鳳楽が一言。
「そんなのわたしが何とかすればいいだけじゃん?何を悩んでいるのさ」
「だから、それを使うのがためらわれるって言うんだよ!」
「なんでよー。藁をもすがるって言うじゃない。気にしたら負けだよ」
「もういいよ……」
にぎやかな会話をする達也たちを見て、カナチは自分の家族や友達を思い浮かべるのであった。
次は勇輝さんの番ですね。その前にちょっとした閑話を書きます。
上峰の変化した日常を書きたいのですが、どんな感じで書きましょう?
家を拠点に、達也くんの日常を芯に変わったところを強調するように書くといいと思います。平和的な部分で異世界人の能力を有効活用してしまう達也くんもいいかもですね。アリスやキクトは使いやすそうですし
>詩歌さん
なるほどです
書いてみます!
その前に、勇輝さんが担当する回の序盤を書いて閑話と本編、同時進行で書くのはどうでしょうか?
勇輝さんに冒頭部分をメッセージで送りました。
ルビとかもあるのでコピペはできればメッセージの方からでお願いします。
↓(以下が本文)↓
藍神鈴蘭は酷く困惑していた。
無理もないだろう。
何せ、自殺しようと高層ビルの屋上から飛び降りたらいつの間にか公園の砂場に受け身で着地しているのだから。
普通、そんな高さから飛び降りたらいくら砂場だろうと、受け身を取ろうと、着地しても|無傷《・・》というのはありえない。
だけど実際に起きてしまっている。
何かが藍神の落下中の慣性を消したのだろうか、と本人は推測を立てるも、その|何か《・・》がわからない。
強風が吹いたとしても、直角で上に吹く風はない。
何かに当たったとすれば大怪我だ。
しかし、藍神は無傷である。
「何がなにやら……」
仕方がないので、彼女はそれを|割り切る《・・・・》ことにした。
現時点で真実に繋げられるような要素はどこにもないので、いくら考えても仕方がない、とあっさり諦めた。
何が一番大事かを常に意識して、最善の行動を起こせるのは完璧超人の性なのだろう。
本人からすれば、呪いとも言えるが。
因みに、何が一番大事なのかは、勿論自殺だ。
だが、公園の外に出てふと視界に入った文字が藍神の思考を止めた。
『紅陽町』
そんな町の名前は、藍神は知らなかった。
完璧超人ならではの完全記憶力でも、そんな町の名前は日本のどこにもない。
公園や駅があるくらいなのだから、それなりに技術は発達している以上は町なのだろう。
田舎の無名な町なわけがない。
「ここは……どこ……」
混乱している状態で、まさかパラレルワールドだとは思いもしなかっただろう藍神の掠れる様な声は、誰の耳にも届くことはなかった。
***
学校の下校時間を告げるチャイムが鳴ってから数分経ち、町を帰宅部の学生達が歩く午後。
一人と一神と一異世界人は、今日も異世界人保護の任務のためにパトロールをしていた。
言わずもがな、達也、キクト、鳳楽の三人だ。
パトロールといっても、キクトの食べ歩きが5割ほどなのは余談である。
「なあ駄神」
「……なにかな」
もはや駄神と呼ばれることになれてしまったらしいキクトは、自分を呼んだ達也へ振り返る。
「確か、神特有のご都合主義的な力を使う前に接触した俺と手を組んでるんだったよな」
「ええ」
「それってなんだ?」
「記憶に関与する力ですね。異世界人がこの世界の人と会話をしても、この世界の人はすぐにその存在を忘れてしまうのです」
今まで疑問に感じていたが、なんとなく言い出せなかったことを恐る恐る口にする達也。
「なんで俺や宵星さんの記憶を消さなかったんだ?」
「それは……」
沈黙するキクトを見て、達也は確信を持つ。
「仮にカナチが幼いから宵星さんが必要だとしても、すぐにギイルに還せばいい。つまり、俺達の協力には理由があるんだな?」
「うぐっ」
『図星です』と言ってるような反応をするキクト。
鳳楽は面白そうにニヤニヤしながら二人を観察している。
「いや、あのですね、宵星さんの場合は本当に必要です、一人一人送り還すとこの世界に負担がかかるので全員集めて一気に管理会に送り、そこから別々に送るのですよ」
「なるほど。で、俺は?」
「……こっちの方が都合がいいんです」
まともな返答になってすらいない誤魔化しだった。
とりあえず前半部分です。
後半もすぐにあげます!とりあえず意見くださいいいいい!
藍神鈴蘭は酷く困惑していた。 無理もないだろう。
何せ、自殺しようと高層ビルの屋上から飛 び降りたらいつの間にか公園の砂場に受け 身で着地しているのだから。 普通、そんな高さから飛び降りたらいくら受け身を取ろうと、砂場だろうと、着地しても|無傷《・・》というのはありえない。
だけど実際に起きてしまっている。
何かが藍神の落下中の慣性を消したのだろうかと本人は推測を立てるも、 その|何か 《・・》がわからない。
強風が吹いたとしても、直角で上に吹く風はない。 何かに当たったとすれば大怪我だ。
しかし、藍神は無傷である。
「何がなにやら……」
仕方がないので、彼女はそれを|割り切る 《・・・・》ことにした。
現時点で真実に繋げられるような要素はどこにもないので、いくら考えても仕方がない、とあっさり諦めた。
何が一番大事かを常に意識して 最善の行動を起こせるのは完璧超人の性なのだろ う。 本人からすれば、呪いとも言えるが。
因みに、何が一番大事なのかは、勿論自殺だ。
だが、公園の外に出てふと視界に入った文字が藍神の思考を止めた。
『紅陽町』
そんな町の名前は、藍神は知らなかった。
完璧超人ならではの完全記憶力でも、そんな町の名前は日本のどこにもない。
公園や駅があるくらいなのだから、それなりに技術は発達している以上は町なのだろう。 田舎の無名な町なわけがない。
「ここは……どこ……」
混乱している状態で、まさかパラレルワールドだとは思いもしなかっただろう藍神の掠れる様な声は、誰の耳にも届くことはなかった。
***
学校の下校時間を告げるチャイムが鳴ってから数分経ち、町を帰宅部の学生達が歩く午後。
一人と一神と一異世界人は、今日も異世界人保護の任務のためにパトロールをしてい た。 言わずもがな、達也、キクト、鳳楽の三人 だ。
パトロールといっても、キクトの食べ歩きが5割ほどなのは余談である。
「なあ駄神」 「……なにかな」
もはや駄神と呼ばれることになれてしまっ たらしいキクトは、自分を呼んだ達也へ振 り返る。
「確か、神特有のご都合主義的な力を使う前に接触した俺と手を組んでるんだったよな」 「ええ」 「それってなんだ?」 「記憶に関与する力ですね。異世界人がこ の世界の人と会話をしても、この世界の人はすぐにその存在を忘れてしまうのです」
今まで疑問に感じていたが、 なんとなく言い出せなかったことを恐る恐る口にする達也。
「なんで俺や宵星さんの記憶を消さなかったんだ?」 「それは……」
沈黙するキクトを見て、達也は確信を持つ。
「仮にカナチが幼いから宵星さんが必要だとしても、すぐにギイルに還せばいい。つまり、俺達の協力には理由があるんだ な?」 「うぐっ」
『図星です』と言ってるような反応をする キクト。 鳳楽は面白そうにニヤニヤしながら二人を観察している。
「いや、あのですね、宵星さんの場合は本当に必要です、一人一人送り還すとこの世界に負担がかかるので全員集めて一気に管理会に送り、そこから別々に送るのです よ」 「なるほど。で、俺は?」 「……こっちの方が都合がいいんです」
まともな返答にすらなっていない誤魔化しだった。
***
裸足でコンクリートの道を踏み締めながら、目的無しに藍神鈴蘭は見知らぬ『紅陽町』という町を歩いていた。
歩きながら、鈴蘭は頭の中で考えている案を検討してみることにする。
ちなみに考えている案とは、この見知らぬ町のことを知るとか、元いた場所に帰るとかではなく、どうやって死のうかというものだ。
さっきと同じように適当な高所から飛び降りる。
しかし周囲を見回してもそれらしい高所はない。これは没。
では首を絞めるのはどうだろうか?これも高さが必要だが、一つ目程ではない。
だが絞めるための縄がない。さらに言うとここら辺には山などもないようだ。こうなると準備している間に人に見られる可能性もある。これも没。
ではでは心臓に何か突き刺すのはどうだろう?かなりの痛みが伴うだろうが、**るなら関係ない。
だが鋭利な刃物なんて持っていないし、木の棒とかでも足りないだろう。しかも鈴蘭の胸囲の戦闘力はかなりのものなので、簡単には心臓を貫けない。これも没。
「.......んー、」
完璧超人の性質を持つ藍神鈴蘭にしては珍しく考え込んでしまう。
別に死ぬ方法だけならいくらでも考え付く。刺殺絞殺毒殺斬殺撲殺博殺磔殺焼殺扼殺圧殺轢殺凍殺水殺爆殺。ザッと思い付くだけでもこれだけある。
問題はその結果に至るための『過程』にあった。
率直にいって、鈴蘭は自らの自殺に誰かを関わらせたくなかった。何故なら、いままで誰かの人生をに関わり、狂わせてきたのだ。最後ぐらい誰にも迷惑をかけずに死にたいのだ。
「......どうしよ」
思わず呟く。その声色が心細くなっていることに気付き、鈴蘭は顔をしかめた。
むいー、と頬を引っ張って気持ちを入れ直す。
世界からいなくなる。この身に宿る力から解き放たれる。
そうだ。あんな苦しみを味わわないために死のうと決め
『さイっコーだネコのせかイ!』
ズグン!!と。
鈴蘭は強烈な頭痛を感じてその場にうずくまる。
「誰?」
『あハは!ちかラがアふレてる!ベつノいソウのチからに、べつノせカイのチから!こレダケあれバ!ワタしのケンゲんだって!』
「誰なの、答えて!!」
痛みをこらえて頭の中に響く声に向かって叫ぶ鈴蘭。
『うフフ、アなたとハなガイつきあイなんだケどね。まァ、いマノイままデせッしョクしナかったワタしがワるいノかな』
「長い、付き合い?」
その言葉である一つのことが思い浮かぶ。
藍神鈴蘭の特性。
『完璧』。
まさか、
「あなたが、この力の正体なの?」
『ウフふのふ。ダいセイカーい!』
「なによ、なんなのあなた。どうして喋るの、どうしてこんな力を持っているの」
頭痛も戸惑いも、そして過去の痛みも全てを込めて藍神鈴蘭は言う。
「どうして私にこんな力を宿らせたの!!」
血を吐くような、壮絶な声色だった。
その声を聞いた『完璧』は、しかし変わらず楽しそうに返答する。
『ワたシはワタしノたメニチからヲつかウだけ。ソコにアなたノイシハひつよウない』
楽しそうなのに、芯まで冷えた言葉だった。
『ダ・か・らァ、アなたのねがイカナえてアげる☆』
「.......え?」
カキン、と鈴蘭の中で何かが外れるような音がした。
続けて鈴蘭の体が鈴蘭の意思とは関係なく動き出す。
『完璧』。
藍神鈴蘭の意思など関係なく、ただその事柄に対する最高の結果だけを叩き出す。
「ひっ....いや、やめて」
『ナにイッテるの。こレがアナたのねガイなんデシょう?』
足が勝手に歩を進める。その先はたくさんの車が行き来する道路だ。
『ナらカナエてアゲる。わたシノちからでカンペきにねェ!』
***
「なあ」
「どうしたんですか?」「どしたの?」
「あれ、ヤバくないか?」
達也が指差す先をキクトと鳳楽が追う。
その先には一人の少女がいた。
流れるような藍色の髪に人形のように整った顔立ち。着ている服が制服で、さらに裸足なのが変だが、それを差し引いてもかなりの美少女だった。
一瞬、キクトと楽は達也が『そういう意味』でその少女を指差したのかと思ったが、すぐに違うと思い知る。
理由は二つ。一つは少女の綺麗な顔が恐怖で歪んでいたからだ。まるでこれから殺されるかのようだった。
そしてもう一つ。これは鳳楽だけが気付いた。
「あの子、なんか憑いてるよ?」
その言葉に表情を凍らせるキクト。ただ一人理解していない達也は楽に問いかける。
「憑いてるってどういうことだよ」
「言葉通りの意味。あの女の子には何かが宿っているの。それが悪霊とかそういう類いなのかはたまた神とか洒落にならないもなのかはわからないけどね」
「おい、洒落にならないって?」
「そのまんまの意味。私やキクトみたいな神の存在は人間より高純度だからね。器としての広さがどれだけ大きくても、深さが圧倒的に足りないからね」
「もっと簡単に」
「私たちが達也に取り憑いたら達也爆発するよ物理的に☆」
「お前ら怖すぎだろ!それこそ世界ぶっ壊れるんじゃないのかよ!」
「それは大丈夫です。心配することはありません」
「ああ、ご都合主義のカミサマパワー(笑)か。おけおけりょーかい」
「おっとお、いま明らかにバカにしましたね?」
いがみ合う二人を他所に楽はこれからどうしようか考える。
やっぱり助けたほうがいいのだろうか。
「.....うん。まぁ後から達也とキクトが怒りそうだしね」
そうと決まれば解決策は一つ。
少女を気絶させて、達也の刀で憑いている何かを斬る。
「それじゃ、そういうわけで.......どーん!」
ふざけた声と共に、鳳楽の姿が消えた。
そして次の瞬間楽は少女の目の前に現れ、力加減を調整した『オーバースピードキック』を繰り出す。
そこまで近付いて改めて藍の少女の顔が見ることができた。
長い髪が影になって見えなかったが、その瞳は深い黒曜石のような漆黒だ。
いや、だった。
それは突然のことだった。
「ふざ、けないで.....!」
漆黒の瞳が血のような赤に染まる。更に藍色だった髪も端から黒に変わり出す。
思わず楽は口にする。
「なにこれ......!?」
だが蹴りは止まらない。まさしく神速の一撃が少女の頭を狙いを定める。
その直前。少女の体から白と黒の奔流が溢れ出し、楽を吹き飛ばした。
「きゃあ!」
楽を吹き飛ばしたことに気付いてもないなか、先程とはまるで違う赤い瞳に漆黒の髪と化した少女が絶叫する。
その声は二つの音が重なって聞こえた。
「この『アは』体はわた『はシはいデキ』しのだから。従いな『るとおも』さい。勝手に『ッテ』喋るなあああああああ!!!」
叫びと共にさらに奔流は大きくなり、周囲の建物や看板をなぎ倒し、道路をえぐりとっていく。
「こ、これどうするんだよ!」
「ただの神様に無茶いわないでください!」
「てめぇから神様要素取ったら何が残るんだよこの駄神!!」
懲りずにまた言い合いを始める二人。楽は無視して拳を構える。
その顔には笑みが浮かんでいた。
「これは楽しそうだねぇ!いっくよー!」
もう一度オーバースピードキックを発動する。
今度はさっきとは違い手加減なしの全力全開のソバット。ガトリングガンのような連続の蹴りが白と黒の奔流を押し返し、未だに絶叫している無防備な少女に襲い掛かる。
「『じゃま』」
ガシィ!と。
常人には目で追うことすらできないほど高速で動く楽の蹴りが、少女の柔い細腕によって掴まれたのだ。
「.......蓮花」
少女の腕が霞む。気付いたら、両膝、両腕から鈍い音が聞こえた。
「かはっ」
「貫くよ.....閃龍突」
地面に崩れ落ちる楽に白と黒の奔流を纏わせた少女の拳が叩き込まれた。
結果、冗談脱ぎ捨てに楽の体が後方10m程吹き飛ばされた。
「楽!!」
「鳳さん!!」
達也とキクトが呼び掛けるが反応は無い。
それほどのダメージを負ったということだろう。
そこまで思考が追い付いて、達也は怒りに任せて吠えた。
「て、めええええええええ!!」
達也が刀を抜き、力の限り少女に斬りかかる。しかし少女に刃が届くことはない。またしても白と黒の奔流が刀の動きを押し止めたからだ。
「私『のじゃ』まをす『る』な!!」
少女はそう叫ぶと、一度二色の奔流を暴れさせる。流れに逆らえず、達也が吹き飛ばされる。
「うおっ!なんだよこれ!」
「し、知りませんよ!って、あ!あの人逃げましたよ!!」
見ると、少女は制服に裸足という格好で出せるのかという恐ろしい速さで道路を横切り、町の方向に走り去っていった。
「待てよ!」
「はいストップ」
「うぐぅ!?」
その後を追おうとする達也の襟首を掴んでその動きを阻害するキクト。
「なんだよ!」
「まずは落ち着いてください。あの人はまず間違いなく僕たちの保護対象ですね。あんなのこの世界の人間にはできません」
「それなら.....!」
「ですが、このままあの存在の後を追っても失敗するだけです。僕はまだ八つ裂きになんてされたくないんですよ。それに、」
キクトは自らの後ろを指差して、
「鳳さんを助けないつもりですか?」
「.......あ」
あまりにも酷い話だが、忘れていた。
達也の顔が歪む。それは致命的な傷を受けた仲間の事を忘れてしまったという自責の念からなのだろう。
キクトはそんな達也の肩を叩くと、妙に自信ありげに笑いながら言った。
「安心してください。あの人の事は知っています。それに追跡だって可能です」
「.......駄神がなんかできのんかよ」
「ええ、とりあえず鳳さんのために救急車でも呼びましょうか」
最近買い与えられた携帯を取り出して病院に連絡を入れるキクト。今度は別の所に連絡を入れ、電話越しに短いやり取りの後、携帯を直した。
続けて二人がかりで楽の体を近くのベンチの上まで運んだ。辺りはいろいろと吹き飛んでいたが、ここだけはまだ無事だった。
そうして一段落ついたところで、キクトは少女、藍神鈴蘭について話し出した。
***
救急車が去っていくのと入れ違いで、異世界人アリスとカナチがやってきた。
キクトはアリスに「藍神鈴蘭が行きそうな場所で一番可能性が高い場所を検索してください」と頼んだ。
「肯定。所要時間は5分程」
「わかりました。ではその間に、あの少女、藍神鈴蘭さんについてお話しますね」
そうして、藍神鈴蘭という少女について語り出すキクト。
ある時を境に高位の神に憑かれてしまったということ。
結果、彼女にはこの世界が破壊されてもおかしくないレベルの力が宿っているということ。
そのために、神世界でも問題視されているが、憑いた神が強すぎて手が出せない状況だということ。
そこまで聞いて、達也はある気になる点があったので聞いてみた。
「それじゃああの子は、ただの人間ってことなのか?アリスやカナチみたいな異世界人じゃなくて」
「いえ、確かに人間ですが、達也さんとは違いがあります。それは、彼女はこの世界の人間ではないということです」
「じゃあ人間がいる異世界とか?」
「いえ、地球ですよ。そうですね、簡単にいうならこことは別ルートの地球の住人なんですよ」
「.......?」
「例えばの話、僕ことキクトがもふもふを好きな今のルートAと絶対に一パーセントもあり得ませんがもふもふを好きにならないルートBがあったとします」
「けど今お前は猫とか好きだろ」
「はい。だから今の僕はルートAのキクト、ということになります。ですが、ルートBのもふもふが好きじゃないキクトというのも確かに存在するんです」
そう口にするキクトは今すぐ首を吊って死にたいみたいな顔をしていた。どうやらそんな自分を思い浮かべるのも嫌らしい。
なら考えなけりゃいいのに、と思いながら達也は頭の中で考えをまとめていく。
「えーとつまり、確率の数だけ枝分かれしてるってことか」
「まぁそんな感じです。そして藍神鈴蘭さんは、こことはまた別ルートの地球で生まれ、成長した人間なんです。つまり彼女は、|多元世界《パラレルワールド》人なんです」
と、そこでちょうどアリスの演算結果が出たらしい。結果を聞いてみると、藍神鈴蘭の行方の候補は六つに絞れるらしお。
そして、その中で一番確率が高い場所はというと、
「ここから南西に距離6217m。その地点に高確率で目標は存在する」
「わかりました。それじゃあ次はカナチさん、僕たち全員にフィジカルスピードアップをお願いします」
「うん!わかった!」
カナチは元気よく言うと、三人と自らに速度上昇のための魔法をかける。
「それでは行きましょう!早くしないと手遅れになるかもしれませんからね.......って、達也さんどうしたんですか?」
「......ん?ああ、いや。ちょっと気になることがあってな」
「僕に答えられるなら答えますけど」
「大丈夫だよ。これは本人に会って答え合わせするからさ。それより早く行こうぜ。助けよう、あいつをさ」
流れとしては良さそうですね。ただ、やはり諸所の間違いは要修正です。協力できることがあればお手伝いしますので、何かあれば声をおかけください。
遅くなって申し訳ありません!とりあえず完成しました!
確認おねがいします!
藍神鈴蘭がいたのは森の中にある廃墟だった。
もう錆びてボロボロになった看板を確認すると、どうやらここは孤児院だったらしい。
鈴蘭は庭の中央に生えている巨大なアコウの樹まで歩いていくと、そこに膝を抱え込んだまま座り込んだ。
俯いたら、そのまま涙がこぼれ落ちた。
そして一度零れると止まらない。
「うっ、ううっ、ううううう!」
まただ、と彼女は思った。
何かを関わったり、成し遂げれば周囲の人間から恐怖とそれを上回る畏怖の視線を受けた。
「本当になんでこんな力が.......」
その時、彼女は気付いた。
ここが誰もいない森の中だということに。
ーーーーーーー今なら。
「、うあ」
口を開けて、舌に歯を置く。後はこのまま噛みきるだけ。
瞳を閉じる。そうすると当然のように視界が真っ暗に染まった。
まるで私の人生そのものだと鈴蘭は思った。
楽しみも喜びもない。生きる目的も見いだせない。光なんて存在しない、暗くて黒い闇。
けど、それもこれで終わり。
顎に力を入れる。
舌に突き刺さり、口の中に鉄の味が広がる。
その時だ。
鈴蘭は頬を伝う涙で、ふとある考えが沸いて顎の力を抜いた。
「(どうして、私は泣いているの?」
藍神鈴蘭は『完璧』の力を持っている。それはあらゆる全ての事柄を完全回答でこなすということだ。
だからこそ、鈴蘭が今の境遇に不満を持っていて、泣いているのはおかしいのだ。
「何かがおかしい。けど、あれ、だけどーーーーーー」
考えがまとまる。けど.......それはそもそもの前提が覆ることに。
そしてそうなると、今までの様相がガラリと変わる。
だが、そこで異変が起きた。
閉じたままの視界で何かがキラリと輝いた。
思わず目を開ける.....ことはできなかった。
何故なら、開けようとした途端に身体の力が抜け、意識が遠のいたからだ。
「(こ.......れは、やばい)」
その考えを最後に、鈴蘭は真横に倒れ、ブツリと意識が途切れた。
***
達也たちが藍神鈴蘭を見つけた時、彼女はもう別の存在に成り果てていた。
何か目に見える部分が変化しているわけではない。だが目に見えない部分、言うならば気配のようなものが変わっている。
鈴蘭は......いや、『完璧』はにっこりと笑いながら口を開いた。
「こんにちわ、神に刃を向ける人たち♪」
「僕はあんまり刃向けたくないですけどね。だって後から怒られそうですし」
「え、あれれ、君もしかして神様?や、その感じだと見習いかな」
「えーと、そうです。まだ見習いですがそれなりに優秀なみなら」
「いやぁ、にしても力が弱いねぇ。そこらの人間より弱いんじゃない?」
「.......(号泣」
「あー、そのドンマイ?いつも俺に駄神て言われてるだろ」
地面に指で字を書き出すキクトを慰め?る達也。
『完璧』は笑いながら続ける。
「それで?君たちは私とどうしたいの?話し合い?それとも殺し合い?」
「話し合い、に決まってんだろ。それに俺はお前に聞きたいことがあるんだよ」
「へぇ、なに?聞くだけ聞いてしんぜよう」
「そりゃどうも。俺が聞きたいのはな、簡単に言って、なんで神であるお前がただの人間を助けようとしているんだ?」
「えーと、どういうこと?」
「最初に気になったのは初めてキクトから藍神鈴蘭とお前の事を聞いた時だ」
『完璧』がキクトに視線を送り、いまだにイジけていたキクトが固まる。
一度ため息をつくと、『完璧』は頭を振りながら返答した。
「ほんとにさ、有名人ってのはつらいもんだよ.......あ、いいよ、先続けて」
「キクトの話だと藍神鈴蘭はあらゆることを『完璧』にこなすんだろ?なのに、『死にたい』っていう願いは『完璧』にできなかった?」
「あーあれだよ、この子は私の玩具なの。自分の持ち物が壊れちゃつまらないでしょ」
「それじゃあなんでさっきはお前が出てこなかった?神の力を使えば、俺達全員木っ端微塵にできたはずだろ」
「.......はぁ。もういいや」
『完璧』が不適に笑う。だがその笑みは何か吹っ切れたような感じの笑みだ。
「そうだよ。私はあの子を、鈴蘭を救うために憑いたの。理由は、まぁただの恩返し、かな」
「.......恩返し?」
「大体は省くけど、私は前にこの子に救われたの。だから今度は世界に見捨てられた鈴蘭を救う。あの時の恩を返すの」
次に口を開いたのはキクトだった。
「だから彼女には拒絶反応が無いんですね。一方的な契約や憑依ではなく、あなた自身の意思で取り憑き、あなた自身の意思で自分の力を使わせているんですね」
拒絶反応とは降霊や神降ろしなどを行ったときに媒体となった人間に起こる症状のことだ。大抵の場合、これが発症した人間は身体を肉体的にも精神的にもボロボロにされて死に至る。
これは神という高位の存在を、人間程度の小さな器に流し込もうとした傲慢に対する罰だ。
しかし、だ。今回は『完璧』が自らの意思で鈴蘭に憑いた。そうなると話は変わってくる。
簡単に言うと、人間の器の広さが変わってしまうのだ。神の力によって、強制的に。
だから鈴蘭は死なずに、逆に神のために身体を調整させられたのだ。
「そういうこと。鈴蘭は『全ての事象の最高値を無制限に叩き出す力』と思っていたみたいだけど、本当は『全ての事象に対しての適正値を私が叩き出す力』なの」
「.......だから藍神鈴蘭の意図した通りに力は働かなかったのか。なるほどね」
その事実をよく噛み砕き、自分の中に浸透させてから、上峰達也は率直に自分の言葉を放った。
「それじゃあ救えないだろ」
「.......は?」
その瞬間、今までずっと余裕の様子を崩さなかった『完璧』の表情が凍った。
しかし気にせずに達也は続ける。
「それじゃあいくらやったってダメだよ。藍神鈴蘭がいくら望んでいようが、それをお前の都合で叶えるから、彼女はどんどん救いから離れるんだよ」
「.......黙れ」
「だってそうだろ?例えばの話だけどさ、楽しみにしていたゲームをようやく買えた。さて始めようとしたらゲーム開始から最強の武器と最大のステータスが手に入った。しかもその能力は自分の思い通りには使えない。そんなの、楽しくないに決まってる」
「黙れ」
「だからゲームをやめようと思った。なのに、それすら自分の意思でできない。それと一緒だよ。お前が藍神鈴蘭から人生の生きる意味を奪ったんだよ」
「黙りなさい!!」
『完璧』の姿が消えた。そう認識した時には既に達也の身体は地面に叩きつけられていた。
「がはっ!!」
「達也さん!!」
「私が鈴蘭を苦しめたって?私が鈴蘭を追い詰めたって?」
突然の変貌に思わず動きを止めるキクト、アリス、カナチ。
だが、そんなことに『完璧』は構わない。ただ目の前の少年の襟首を掴むと、今度は自分の番だというように憎悪にまみれた言葉をぶつけていく。
「あんたがそれを言うの?あんたたち人間は鈴蘭を助けられなかったくせに、守れなかったくせに、救えなかったくせに!!」
「まだ、わからねぇのかよ!」
「なにが!私の救いは完璧だった!ただの一生物じゃできないレベルの救いを与えられた!だから鈴蘭は救われないとおかしいの!だってそれが私の力なんだから!!」
「だけど!事実藍神鈴蘭は救われていない!それはお前の救いが間違っていたっていう何よりの証拠だろ!」
『完璧』は鈴蘭とは違い、『純粋にあらゆる事象を完璧にこなす』ことができる。
だが、逆にその力が仇となり彼女は失敗を犯した。
「『救い方が完璧なだけ』で、その方法は藍神鈴蘭が望んだ救いだったのかよ!」
そう。『あらゆる事象を完璧にこなす』というのは、単に『模範例通り』のことをしているだけなのだ。
勉強やスポーツ、その他の事に関してはそれで十分だろう。何故なら、攻略法が決まっているのだから。
だが人はそうはいかない。十人十色という言葉があるように、正解に至るまでの過程が変化し過ぎるのだ。
だからこそ明確な攻略法など存在しないし、存在することができない。
「.......そん、な」
「そんなはずないって?何でそう言い切れる?お前はさっき人を救おうとしたのは初めて言っただろ。だからわからないはずだ、しっかりとした手順も方法も。なのに、何も考えずに今まで通りただ力を振るった!」
「.......!」
「どこかで何があったかは知らない。けど、その時に鈴蘭は救ってもらえなかった。次にお前まで失敗したら鈴蘭は今度こそ壊れるぞ!」
ふっ、と突然『完璧』の腕から力が抜け、支えを失った達也が草むらに倒れ込んだ。
そして『完璧』自身も崩れ落ちる。その顔からは表情が消え、瞳からは色が失われている。
思わず声をかけようとした達也だったが、しかし動こうとはしなかった。
いや、正確には動けなかった。は
何故なら、
「.......そう言うなら、」
『完璧』の唇が小さく動く。
突然、強烈な風が吹き荒れた。
あの時、大通りで猛威を振るった黒と白の奔流。だが規模と勢いはまるで段違いの二つの色が溢れ出す。
ついさっきまで色の無かった瞳に、強い信念が込められた光が宿る。だがその色はどす黒い、憎悪の色だった。
「そう言うなら、私を越えてみせろ。この『完璧』が間違っているというのなら、自らの力で正しさを証明してみなさい!!」
黒と白が混ざり合い、絡み合って、一つの形を作り上げていく。
それは先端が細長く鋭い、黒と白の刀身を持つ剣だった。
「天埜貫とでも名付けようかな。正真正銘、神の武具だよ」
黒白の細剣、天埜貫。その優美な剣を、『完璧』はゆっくりとした動作で真横に振るった。
それだけ。
たったそれだけの動作で、達也の後ろにいたアリスの身体が真横に吹き飛び、一本の木に激突してそのまま地面に崩れ落ちた。
「アリス!!」
「さぁて、次は誰を狙おうかしら。大口叩いたあんた?それとも見習いの君?.......やっぱりそこのおチビさんね」
『完璧』が剣を上段に構えて振るう。カナチの小さな身体が地面に叩きつけられた。
達也は自分の背筋が凍るのを感じた。
これが神の力。
キクトのような見習いでも、楽のような人工物でもない純粋な神。
そう、目の前ににいるのは、人間が歯向かおうと思うこと自体が不遜な存在なのだ。
.......だけど。
「.......その程度で諦められるかよ」
「あんた、本当にわかっていってるのそれ?今あんたたちを襲っているのは正真正銘、神が落とした天罰と同類の力なの!!」
「最近妙に変な連中と出くわしてるからな。不思議な力には慣れてんだよ」
「.......わかんない」
天埜貫を水平に構え直し、『完璧』は続ける。
「わかんない。なにそれ、なに言ってるのよ!神なのよ?異世界人なんかじゃない!世界を壊せる力さえ持つ」
「だからなんだよ」
しかし上峰達也は真正面からその言葉を否定した。
確かに怖い。正直今すぐ逃げ出して今まで通り普通の日常に帰りたいとは思う。
だから、
「もう俺にとってはさ、カナチがいて、アリスがいて、楽がいて、キクトがいることが日常なんだよ。だから俺はだから諦めないし、負けられない」
「もういい.......!」
『完璧』の両眼が冷たくなる。その剣の切っ先はピタリと達也の心臓に向けられていた。
「私は私の日常に戻る。そして鈴蘭を救う!やり方が間違っているなら、最初からやり直せばいい!」
「最初からやり直せると思ってるのか?そんなので救われるとでも?」
「黙れ!お前は邪魔なのよ!だから、ここで、」
剣に黒と白の奔流が集まり、とても強い輝きを放つ。
「あんたを殺す!!」
真の神罰を宿した一撃が振るわれる。それは今までのような戦闘不能状態に陥らせるようなちゃちなものではなく、愚かで矮小な人の子を消し去る為の一撃。
当然、達也は動くことすらできずに一撃を喰らい、木っ端微塵に爆発するはずだろう。
ーーーーーーーしかし、上峰達也は笑っていた。
そして、彼は笑いながら言葉を紡ぐ。
「けどな、俺は一人で勝てるとは微塵も思ってないぞ?」
神罰が達也に触れる、その瞬間。
ギィン!!と甲高い音が鳴り響き、『完璧』の腕と共に天埜貫が弾き返された。
その衝撃で砂埃が舞い、『完璧』の視界を多い尽くした。
「なっ.......!?」
言葉に詰まる『完璧』。神罰に対抗するには同じ神の力しかない。しかし達也達の中には神はあの見習いだけだったはずだ。しかしあの少年でも今の一撃は防げない。
「.......そういえば」
あの神見習い、ついさっきまでいただろうか?
記憶を探ってみるが確かに見ていない。
しかし今の一撃は見習い程度にどうにかできるレベルではない。
なら、誰が.......?
その時、砂煙の向こうから突然少女の声が飛んできた。
「うふふのふ。目には目を、歯には歯を、神には神を、ってね☆」
「.......!?」
声を聞いた瞬間、『完璧』は頭ではなく本能で理解した。
砂埃が晴れる。そして、そこに一人の神がいた。
鳳楽。
人工物だろうとなんだろうと、正真正銘神を冠する存在である。
「まったく、油断しちゃったよね。どうせしょっぼいのが憑いてると思ったら、まさかこーんな超レア物だったとはね。もうホントに」
ニヤリ、と楽の顔に獰猛な笑みが浮かぶ。
「楽しくて楽しくて仕方がないよ!!」
言葉が終わるや否や楽の姿が霞んだ。
対して、『完璧』も天埜貫を振るう。キィン!!と甲高い音が鳴り響いた。
「この、贋物が.......!」
「偽物は本物よりも本物らしいって知らない?」
「黙れ!」
黒白がもう一度天埜貫に集まる。しかし今回はさっきの一撃とは違い、集まった黒白は、まるで刀身から翼を生えたかのように形を成した。
そして剣先を楽たちの方向に向ける。
「穿ちなさい、天鳥船!!」
言葉と共に天埜貫から巨大な鳥が羽ばたいた。それを見た楽の表情に少しだけ変化が起きた。
しかし表情に浮かぶのは恐怖ではなくむしろ残念がっているような色だった。
何故なら、
「.......防御する」
横合いから飛び出したアリスの右手に黒白の巨鳥が触れると、そのまま跡形もなく消し飛んだからだ。
『完璧』の表情が怒りで歪むが、対してアリスは完璧なまでに無表情だった。
アリスが広げた右手を握る。それだけで、華奢な右腕が巨大なパイルバンカーへと化した。
パイルバンカー。簡単に言うならば、爆薬で大砲の代わりに巨大な槍を叩き込む兵器だ。その殺人兵器をアリスが神専用にバージョンアップしたのだ。
「対神専用装備【|神殺し(ロンギヌス)】のマテリアライズを確認、アリスは攻撃を開始する」
ドン!!とアリスが『完璧』目掛けて走り出す。
一瞬、回避しようとした『完璧』だが、即座にそんな考えを押し潰す。
「う、ああああああああ!!!」
天埜貫と【|神殺し(ロンギヌス)】が激突する。ガチン!!と轟音が鳴り、必殺の槍が連続で打ち出された。
その強い衝撃を受けて、天埜貫の刀身が震える。何回も、何回も。
そして.......ついに。
バキン!!と度重なる衝撃に耐えきれずに、天埜貫の刀身が真っ二つに折れる。
さらにアリスの背後から楽が空中に飛び上がる。それは完全に『完璧』の意表を突いた動きだった。
「とりゃああああああ!!!!!
「なっ.......!?」
凄まじい轟音が鳴り響いた。 巻き起こされる風で辺りの木々が揺れ、地面がめくり上がる。
しかし、
「負けて、たまるか.......!!」
まだ彼女は立っていた。
蹴りを受け止めた腕は血だらけになり、制服はもはやその役目を果たしていない程にボロボロだ。
しかし、その瞳はまだ死んでいない。
「負けない、負けられない、負けちゃいけない!!」
「ちょっと聞いていい?そこまでしてその人間が大切なわけ?」
「当然、でしょ!この子がいなかったら、今頃私は『あの連中』の一人になって、最低最悪の邪神にすら成り果てたかもしれない!」
「ふーん。だから救う、ね。あ、そうそう、答え合わせしてあげようか」
「答え、合わせ?」
「そ。あんたのミスは、気付いてると思うけど達也に集中し過ぎてキクトを見ていなかったこと。その間にキクトが私を覚醒させて、アリスを、そしてカナチの回復も行った」
「ちぃ!あの見習い風情があああああ!!」
「じゃあここで問二。いま、あんたの見失っているものはなーんだ?」
「.......あ」
思わずそんな声が出た。同時に、背後から強い気配を感じ、すぐさま振り替える。
そこには刀を下段に構えた達也の姿があった。
「こ、の.......!」
「一人の力『だけ』じゃ及ばなくても、一人の力『全て』が重なれば、神にだって届くんだよ!!」
刀が迫る。だが振るうのはただの人間。神である『完璧』の方が反応は早い。恐るべき速度で右手に黒白の奔流が集まり、もう一度天埜貫が形を成す。
「負ける、かあああああああああ!!!!!」
天埜貫が達也の首目掛けて振るわれる。このままいけば達也の刃が『完璧』を捉えるより先に、達也の首が無くなるだろう。
しかし、ここで『完璧』は気付く。
今目の前にいるのは達也一人。そう、一人だけ。
「(後二人、いない.......?)」
そう考えると同時に、『完璧』の身に異変が起きた。天埜貫を握る腕が突然加速したのだ。
同時に気付く。達也の少し後ろにキクトに肩を貸されて立っているカナチの姿があった。
そしてカナチは腕をこちらに向けている。
「魔、法!?」
タイミングを外された天埜貫が達也の首を掠めて通りすぎ、地面に突き刺さる。
そして、その隙は人が神に届くためには充分すぎるものだった。
「これで終わり、だああああああああああああ!!!!!」
達也が叫ぶ。刀が振るわれる。
そしてーーーーーーーーー
***
「あさだよー、たーつーやー!!」
「げふぉう!?」
腹にとてつもない衝撃で、ベッドから飛び起きる達也。
見ると、達也の上に黒い髪に赤い瞳の幼女が肘を突き立てていた。どうやらこの体制でプレスを仕掛けてきたらしい。
「この野郎、百合!毎朝毎朝人の腹に攻撃仕掛けるんじゃねぇよ!」
「これがわたしのひょうじゅんそうびでありますたいちょー!」
「黙れ!貴様など銃殺刑だ!」
「.......またしてるの?」
と、そこでやたらクールな氷点下ボイスが割り込んできた。
その声の主は、まるで幼女ーー百合がそのまま成長したような顔立ちをしていた。ちなみに制服の上からエプロンを装着し、手にはおたまを握っている。
「あの、鈴蘭さん?どうしてお前はいつもいつも非の無い俺に冷たい視線を向けるわけ?」
「ロリコン**」
「言ってはいけないことを言ったなこの黙り!」
「ほう、言ってはいけないことを言ったねこのロリコン」
「え、何やめて、ぎゃあああああああ!!」
ここ最近、物理的なダメージと精神的なダメージがメーター振り切っているレベルで高い達也だった。
さて、あの時。達也の刃は確かに『完璧』を切り裂いた。
そして『完璧』は藍神鈴蘭の身体から出ていき、そのまま消失したものと思っていた。
.......なのだが。藍神鈴蘭を達也の家で保護して一夜経った朝、すさまじい衝撃で叩き起こされたのだ。
見るとそこには鈴蘭をそのまま幼くしたような謎の幼女が。
話を聞くとどうやら彼女は『完璧』らしいのだ。達也に斬られたことで『完璧』を形作る要素はほとんど無くなったが、僅かに残った要素を『完璧』の力で復元したらしい。
ちなみに百合というのは鈴蘭命名だ。この世界にいる間は藍神百合という名前で鈴蘭の妹ということらしい。
こうして上峰達也の家には新たにパラレルワールドの完璧超人藍神鈴蘭と正真正銘の神にしてミニマム化した藍神百合が居候することになった。
***
真夜中、藍神鈴蘭の目の前には自分に瓜二つの幼い少女がいた。
その少女とは初対面だが、なんとなく誰でどういう存在なのかはわかった。
彼女はこう聞いてきた。まだ救わせてくれる?と。
鈴蘭は答えた。いいよ、と。
今まで確かに辛かった。苦しかった。
だけど、それが誰かが自分の事を気にかけてくれて、助けようとしてくれた結果、空回りしただけだった。なんだかそれを知ったら、怒るに怒れなくなってしまったのだ。
それに、だ。鈴蘭は生まれて初めて、このずっと楽しくなかった人生で大切な目的を見つけることができた。
「ここには、まだ私が知らない何かがある。それを知ろうとするのはさ、とても楽しいことだと思わない?」
鈴蘭の問いに、目の前の少女はにっこりと笑った。
その笑みは、本当に本当に、輝く光のように眩しいものだった。
例え世界がどんなに悪意に染まっていて、悲しみに埋もれたとしても。それでもきっと希望の光は存在する。
小さくて仄かな、それでいてとても強く輝く光が。
だから彼女は迷わずに歩いていく。これから先、どんなに苦しいことが起きても、前だけを向くことができる。
だってそれが、彼女が手に入れた『強さ』なのだから。
返信遅れました
なにやら一人だけ完結してますね.....
上峰はロリコンかなるほどです。
長いので、2話くらいに分割して投稿した方が良いでしょうか?
少し気になるとしたら本来コンピューターウイルスに対応するための兵装(アンチプログラム)しか持たないアリスがどうやって対神用兵装を構成実体化できたのかというぐらいですが、アリスは互換性さえあれば必要な情報を揃えてシステムを再構成、環境に適応するだけのスペックはあるのでさほど問題ないでしょう。
何より、これだからリレー小説は面白い
想定ではアリスは戦闘タイプのキャラじゃなかったです(^_^;)攻撃通じないので
できるとしたら……不貫の盾←
次話楽しみにしてます(^_^)/誰でしたっけ
アリスのできること(初期想定なので参考までに)
・普通のパソコン・スマートホンにできること。
→GPSやインターネットなど既存のシステムに介入して情報を集めることもできます。電話やメールに関しても携帯と同様に使うこともできます。もう携帯なんていらない←
・高次元の情報処理性能と技術
→感覚的に電子情報を把握、処理できるため、基本的に想定される程度の電子セキュリティは用意に掻い潜り、電子制御されているものであれば自在に操作することもできる。同様に強固なセキュリティシステムを組むこともできるため、あらゆる電子的干渉をシャットアウトすることも。
・パーティクル・マニピュレータによる物質の分解と構成
→空気中の酸素・水素から水を作ったり、同様に酸素・水素と炭素を用いて食べ物を作ることもできる。ただし食べた(解析した)ことのない味の再現は困難。無から作り出しているわけではないためその場にある何かしらが消耗・消滅しているが、日常生活の上では使用されていない物も多いので気になるほどではないかと。
→ハッカーとしての能力も併用すると、ガラクタの山から各国最新鋭の軍事兵器ですら再現し、自身の電子制御によって自動操作させることまでできてしまうため、そういった方法で物理戦闘をさせることは可能。
・お掃除
→ごみ処理から戦闘の痕跡の完全修復までこなす便利な子
長文失礼しました~
あけましておめでとうございます((遅い
二つに分けた内一つは投稿済みです!
もう一方は今週中に上がるかと!
あと蓑虫さんにも連絡を取っておきます!
すいません、企画倒れ間際かもしれないけどまだ決定してません・・・
部活の大会が近くて、執筆できてないんです、はい。
逆に、大会さえ終われば割と暇になるのでなんとか頑張ります。
なんかもう自作品なんて1年くらい更新してないのでひょっとしたら企画倒れになるかもしれなくてビクビクしてます・・・
今まで「まだ大丈夫、まだ大丈夫」って自分を誤魔化していましたが、やはり無理でした。
自分で一番嫌いだったはずなのに、「やはり無理でした」で終わらせてしまうことがとても残念です。
前と違って部活を始めたというのは大きく、小説を書く時間どころか普段課題をする時間まで削っていたので、もう既に小説を書く余裕などなかったみたいです。
結局完結させることができず、皆さんに迷惑をかけてしまったことに申し訳なく思います。
多分作者参加で既に離れた人は何人かいるかもしれませんが、それでも最後まで残ってくれた方々、本当にありがとうございます。
そして中途半端な結果になってしまってすみません。
もし、どうしても完結させたいのならメッセージでもなんでもください。
なろうはまだ辞めませんが、多分またまともに小説を書ける余裕ができるのは夏休み頃だと思います。
それは困りましたね(--;
まあキャラ自体は多少改変すれば自作品の方で流用できるので問題はないですが……。
できればテキストデータ化して手元で保存するためにダウンロード出来る場所を用意していただきたいです
>詩歌さん
えっと、Dropboxで良いですか?
途中でPC変更してるので、コピペの作業が終わったらメッセでリンク送ります。
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