零零機工斗 2013-11-15 09:41:13 |
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世界の殻を形成する存在である、理外の神を内側の物理攻撃では傷つけられないでしょう(゜゜;
下っ端くらいは倒せるかもしれませんが、その神を倒すのはその神が干渉できない世界から来た異世界の住人(元)だけですね(--;
>詩歌さん
神だからといって必ず何かの世界を管理しているとは限らないです。
この物語において神というのは神世界で誕生し、神能を持っている存在のことです。
>勇輝さん
そうですね。
提案としては最後の方で上層部の神がエラーを正すために取り除いてくれるとか。
新用語追加してきます。
異能-必ずデメリットがある。例えば一時的な変化や技なら、決められた何かを消費して使用できるなど(魔法だったら魔力或いは体力とか)
永久的に効果が続く異能なら、大抵は不便な状況が多い。(例えば藍鈴鈴蘭の場合は何をしても成功してしまい、つまらなくなるし、最悪な結果を目指すと一番最悪な結果を引き出してしまう)
神能-異能と違い、デメリットがない。
べ、別に咄嗟の思い付きとかじゃないですよ((((殴
>零さん
しかし、その犯罪者が中々見つからないどころか、それによる危害が主要キャラを含む世界各国の民間人にも出てきたことを受け、やはり神世界の意向通りにいかず各国の判断で犯罪者の神の捜索及び“捕獲”に当たるとか……。そうなったらたぶんことによっては全世界規模で自然と“対テロ対策”と称して捜査に軍が動く可能性もあります。相手が相手ですから、各国の警察だけではどうにもできなくなってくるでしょうし。
この場合、この状況がどういうわけなのか事情が日本にいる主要キャラと、海自護衛艦こんごう艦長の安佐山一佐以下こんごう乗員しかわからないため、国民にはただのテロ組織を捕まえるための世界規模の大捜索となる的なことを言っておく展開ならいけそう。
また、この場合“捕獲”というのがミソです。わからないとは言いましたが、アメリカのCIAとかロシア連邦保安庁、中国共産党など、一部の過激的な国々は若干その正体を察し、できるなら詳細調査のために、事情を知っている主要キャラからすれば危険極まりないことをするとか。
まあ、いわば“かませ犬”みたいなもんです。
しかし、日本の場合はそもそも法的に相手がよくわからないため結局は“逮捕”という形になります。自衛隊も、警察だけじゃ力不足だということで、とうとう戦後初の“治安出動”が発令された、とかって展開ならありそうです。
……といっても、日本の内閣情報調査室あたりもなんか変だなとは思い始め、とりあえず関係各所に聞いて回るけど、そこで安佐山一佐にも声がかかって……。
……とかいう想像をしてしまったのですがどんなもんでしょう? 大体物語中盤のきな臭くなってくるあたりでこんな展開が出てきそうな感じと思うのですが。
さらに補足失礼。
このとき、一部の過激的な国々のスパイ的な諜報活動に巻き込まれて、主要キャラが調査対象として目をつけられてそれに追われつつも何らかの形でこんごうに保護されるとか、そういうのはやはりないですかね?
そうなったときのストーリーは一応考えていないことはないのですが……。
>Skyさん
ふむ....
その方が戦闘シーンから一般人もいなくなる理由ができるのでいいかもしれませんね。
実際に"捕獲"をするのは神々の仕事ですけど、過激な連中のせいで迂闊に動けないという問題が発生したり、結局は人間同士で戦う場面もあったり。
>勇輝さん
そうですね....
永変さんの言う様に、憑依とかなら一時的に可能かもしれません。
>永変さん
神狼は神能を持った狼ということでいいですよ。
鈴蘭憑依形態
『完璧』の能力を使い、『人間が神になる』という事柄を行った。
結果、『人が勝手に想像する存在しない擬似的な神』をその身に宿すことに成功した。
見た目
髪の色が黒くなり、その長さも踵まで伸びる。目は赤。着ている制服は変わらないが、背中からは白い刃のような羽が生える。
メリット
『人が勝手に想像する神は万能の力を持っている』という特性を利用して、思ったこと、望んだことがなんでも現実になる。しかし、それには鈴蘭自身に100%確実にできるという確信が必要となる。
ちなみに不可能な例として、
対象の命を奪う→『命を奪う』という行為が具体的に想像できないため不可能。
全てをなかったことにする→なかったことになった世界が細部まで想像できないので不可能。
維持時間の延長→可能だが、能力で無理矢理伸ばしたので憑依システムが狂う。結果、死亡するのが確実になる。
デメリット
憑依形態から人間に戻る時に、鈴蘭は五割の確率で死ぬ。運良く生還しても、三日三晩寝込むことになる。
維持できるのは約五分間程度。それ以上の時間維持することも可能なことは可能だが、上記の死ぬ確率が少しずつ上昇していく。
『疑似的な神』というのは『人が思い思いに想像する神様像』を、鈴蘭が一つにまとめたものです。
なので、その存在はとても不安定、というか一歩間違えたら消滅したりします。
5割って高い!?
5%の間違いじゃないよね…
つまり「偶像としての唯一神・万能神」を我が身に擬似的に宿らせるのか。
つまり無神論者ばかりの空間に囚われて完全に断絶されたら使えないのか?
そして具体的な能力は空想具現化か。
それも具体的でないと有効でない…ふむ。
面白いな。5分ってことはホントに戦闘でもクライマックス中のクライマックスにしか使えないだろうけど。使い所が重要。あと「どう使うか」も。イメージさえできれば幻獣召喚も可能になるね。…「自身に忠実な神」は…さすがに難しいね。万能(=唯一)神に眷属神いるわけない(基本多神教では主神含め神ごとにいろいろ役割分担してるのでさほど万能とは言えない)し。天使ならキリスト教あるしイメージできればワンチャン
これは勝手な意見だけど戦闘とか物語中で目覚めた方が面白くなりそう。
以上個人的な考察とも言えない落書きと勝手な感想でした。
…身代わり人形でも持たせてあげようかな…?または気合いのタスキ。え?ゲームが違う?そうですか
>勇輝さん
死ぬリスクが高いのは当然といえば当然ですね、人が神になるんですから。
まあ、物語上死なせる訳にはいかないのでキャラが口にする設定だけに収まりそうですが。←
>永変さん
ぽけもんw
緊急連絡。
遂にだいたいのシナリオと、プロローグ+第一話を書き終わりました!
まずは謝罪から。
遅れて申し訳ありませんでした!
あれだけ冬には本格始動するとか言っておきながら年を越してしまうし、挙句の果てにはもう節分過ぎてしまいました。
とりあえず、先行公開ということでプロローグと第一話をここに貼ります。
大まかな流れとしては、
「序章」
プロローグ
第一話
キクトの失態と、上峰の異世界人との遭遇。
「第一章」
全キャラのトリップ・初登場シーン
ここまではこのチャットに投下されてるのをコピペするだけでおk。
「第二章」
日常編(コメディ)
これは各々のキャラの視点からみた日常シーン。
「第三章」
堕神の陰謀(神世界でのブラックマーケット・闇社会的な)に巻き込まれる地球。
それを阻止するため、現地にいるキクトが上層部より捜査を命じられる。
そして更に巻き込まれていき、最終的には全面戦争。
地球では世界のトップ達のみが真実を知っており、過激な連中として邪魔する場合有り。
最終決戦では管理会のサポートで堕神と異世界人達で戦闘。
トドメは藍鈴の神化というのを想定しているのですが、どうでしょう?
とりあえずプロローグと第一話を投下します。
プロローグ
限り無く広がり、無数に存在する複数の『世界』。
それらを全て管理し、中心に存在する世界が『神世界』。
この世界の住人は神とよばれる種であり、世界管理を務めるこの神世界において異世界に関する職業に就いているのが主である。
世界を創造する者、世界を管理する者、悪影響のある世界を消す者、自ら降り立って周囲にその存在を悟られぬように手助けする者、あるいは他の世界と全く関係のないことをやる神達。
そんな社会の中で、一人。
全ての世界を管理する『世界管理会』に就職したばかりの少年神様がいた。
彼の名はキクト。
彼は『宇宙』という世界の、地球という星のほんの一部、『日本』と呼ばれるエリアを管理する神様の助手をやっていた。
今日も彼は己の中途半端な注意力に負けず、役に立つ一心で頑張っていた。
「お茶ー」
「はい!」
「そこ掃除しといて」
「はい了解しました!!」
「ちょっと助手くん、ゲームしたいからちょっとモニター見てて」
「はい!」
そんな彼にも一つ、疑問があった。
――――あれ、僕って助手というよりただのパシリじゃ……?
反抗心が沸きあがる胸を押さえ、彼は冷たい視線で『日本管理モニター室』を見わたした。
ポテチの袋やお茶のコップ、更にはお酒のビンまで床中に散らばっており、掃除するのにも一苦労だ。
一つの地域を『管理』する者としては、あまりにも雑なのではないか。
命ある場所を『管理』する権利を与えられているということは、上に信頼され、その地域を任されているということなのに。
この人達はサボってばかりではないか。
自分の理想と現実はどこまでも違うということに呆れながらも、キクトは再び掃除にとりかかった。
「あ、全く、こんなところにコントローラをほったらかしに……」
モニターの下に転がったゲーム機のコントローラを拾おうと、屈みこむキクト。
しかし、踏み込んでしまった先に、コントローラから伸びたコードがあった。
「ふぎゃっ」
すってーん、と、豪快に後ろ向きに身体を投げ出されるキクト。
ゲーム機は上へと飛ばされ、見事に着地した先を見たキクトは思わず声を上げた。
「キーボードがぁぁぁ!?」
――――コントローラは、モニター管理の操作を成す、キーボードに直撃したのだった。
直後、モニターにアラート表示が出現する。
『ゲート設定を変更しますか?』
モニターに表示されたその文字の羅列を、理解するのに時間がかかって硬直するキクト。
「ゲート、って、何だ?」
とりあえず『NO』を選択してアラート表示を消さねば、と彼はキーボードに手を伸ばす。
しかしまだコードが足に絡まっていて――――。
「ああああ!?」
バランスを崩して指をキーボードに叩きつけてしまった。
『座標、『紅陽町』。ゲート設定、変更します……』
モニターに表示されたそれらの文字を見て、キクトは再び口をあんぐり開けて固まってしまった。
これは最初に投下した、キクトのエピソードを少し改変しただけです
いつも通りの日々。
そんな日常を過ごしているつもり、いや、確かに過ごしていた。
しかし今日、俺の日常は音も立てずに崩れ去ってしまった。
「おい、ここはどこだ。」
「あ、あの、銃刀法違反で捕まりますよ」
「質問に答えろ」
「せ、せめて刀を下ろして……」
気持ちを落ち尽かせて、改めて今俺が置かれている状況を整理しよう。
俺は今日もいつも通りの朝を向かえ、いつも通りの通学路を歩いていた。
そして突然視界が光で眩んだ。
何を言っているのかはわからないと思うが、確かに目の前に光の柱が突如現れたのだ。
そして光が収まると、目を見開いて酷く驚いた表情をした男が立っていた。
服装もなんだかおかしい。
現代的な格好ではなく、着物に似たような、布で作られた服みたいだ。
というか鞘に納まった刀を腰に着けているのが何より怪しい。
混乱していたのか、男は辺りを見回し、俺を見つけるなりズカズカと歩み寄ってきた。
そして気づけば早口で質問されながら、日光に晒されて光り輝く綺麗な|刃《やいば》が俺に向けられていた。
銃刀法違反なんてまるっきり無いかのように堂々と刀を構えている彼は何者なのか、俺には予想すらできない。
現状整理終わり。
……俺は夢でも見てるんじゃないだろうか。
そんな悠長に考えていられるほど、現実は甘くなかった。
刀が喉元に突きつけられたのだ。
「最後に問おう、この辺で姫を見なかったか?」
「は、はあ?」
「さっさと答えろ」
「いや、姫って誰だよ」
「はあ!?この国の姫の名前くらいは知ってるだろ、国民なら!」
「いや、日本は王政じゃないから姫とかいないし」
「はああ!?なんだよニホンって、川に落ちて別の国に流れ着いたとでもいうのかよ!」
突然ハッと気づいた様な顔で、男は下を見る。
そして、何度も歩道の地面を踏んだ。
「なんだ、地面が、黒い……?あと、妙に硬い……」
「そりゃ、コンクリートだから当たり前なんだけど……」
「……さっきからお前は何言ってるんだ」
それはこっちの台詞だ、と言うのをこらえた。
おかしな人でも見る様な目で見られても困るんだけど。
今時コンクリートを知らない人がいるのか?この21世紀に。
というかさっきから変だぞ、この人。
タイムスリップでもしてきたのか?
「くそっ、確かに川に落ちたはず、それがどうしてこんなところに……」
「あの、場所がわからないんでしたら警察呼んできましょうか?」
銃刀法違反の人がいるので。
「こんなことしてる場合じゃねぇ、姫を探さないと!」
「……誰?」
「くそっ、ここはどこなんだ!」
俺の質問を無視しながらそう吐き捨て、男は走り去った。
――――刀を腰にぶら下げて。
……なんだったんだろう。
警察に通報しておいた方がいいんだろうか。
『刀を持った怪しい男が光とともに現れて、喉元に刀を向けてきました』
うん、だめだな。
普通にこっちの精神が疑われる。
「……いっそなかったことにするかな」
何せ数分にも満たない突然の出来事だったんだ。
疲れていて妄想に浸ってしまっていた可能性もある。
今のは現実じゃなかったと自分に言い聞かせながら、俺は再び通学路を歩き出した。
「利用できそうな人、見つけた」
微かにそんな声が背後から聞こえた。
その時はまだ空耳だと信じていたが、その時から既に俺の平和はなかったのだ。
勿論、学校は遅刻してしまった。
***
放課後のベルが校内で鳴り響き、授業の終わりを告げた。
隣で寝ている友人を起こし、俺は鞄に文房具を押し込んで教室を出た。
学校を出てすぐ思い出したのは、今朝のことだった。
授業中ずっと頭から離れなかった、あの出来事。
あれは本当に幻だったのだろうか。
いや、本当は幻なんかじゃないってわかってるんだが。
認めてしまったら危ない気がしたので俺は認めないことにした。
あれはただの夢だ。
頭の中で必死に自分で自分を説得しながら、俺は空を仰いだ。
少し曇り空だが、雨が降る気配はない。
「ただいま」
「にゃー」
|人《、》のいない家に着いて、俺は小さく呟いた。
返事をくれたのは、灰色の猫一匹だけだった。
灰色なのになんとなくクロと名付けたこの猫は、数週間前に拾った猫だ。
今までと違って、今回はちゃんと親に許可を得て飼っている。
因みに親は大抵家にいない。
二人とも仕事なので、家にいるときが少ない。
なので家に帰っても、殆どの場合は一人だ。
「……誰だ」
そう、いつもなら。
今は何故か、ダイニングのテーブルでポリポリとポッキーを咥えて座っている男がいる。
目はなんとなく眠たそうで、緑のジャージと青いジーンズを着ていた。
「あ、すいません、お邪魔させてもらってます」
「……警察呼びます」
「え、あ、ちょ!?待ってください!ちょっと話を聞いてください!」
静かに立ち去ろうとすると、男は慌ててそれを阻止しようとした。
「勝手に人の家に上がった挙句勝手に人のポッキー食べてて、怪しすぎだろ」
「ポッキーは美味しいからしょうがないとして、これには理由があるんです!」
「いやしょうがなくないだろ!それって普通に食べたいから食ってるだけじゃん!」
真顔で無茶苦茶な言い訳をする男に思わずツッコんでしまう。
「怪しい人の話なんざ聞くつもりないので、110番呼んでくる」
「すいません待ってくださいぃぃ!今朝の出来事が気にならないんですか!?」
ぴたりとスマホへ伸ばした手が止まる。
今朝の出来事?
ひょっとして見ていたのか?
知っているのか?
「どういうことだ」
「やっと聞く気になってくれましたね……説明させてください」
男は一度深呼吸し、説明し始めるかと思いきや。
「あ、猫……」
両腕にかかえていたクロを凝視していた。
「ちょっと、すいません、触らせてくれませんか?」
「は、はあ?」
「ちょっとだけでいいです、もふもふさせてください」
「説明は?」
「あとです、いいからもふもふさせてください」
「いや、だから話って……」
「そんなのはもふもふに比べたらどうでもいいです!もふもふさせろください!」
「どうでもいいのかよ!」
事情を知る前だったのに、関わってはいけないというとてつもなく嫌な予感がしていたのはこの瞬間からだった。
あれ、これはなろうに送らないのですかな……? もしかして、各自?
というか、ちょっと待てよ……?
「第二章」
日常編(コメディ)
これは各々のキャラの視点からみた日常シーン。
あれ……。俺普通に不審船に向かう終わり方してこの後即行で遭遇って構想だったけど、これはちょっとストーリー設定ミスったパターン……?
し、仕方ない。不審船遭遇までの間をどうにかしてコメディにするしか……(汗
>詩歌さん
あ、ありがとうございます。
あとは漢数字とかに直すなどの軽い編集をしたら投稿します。
>Skyさん
あ、えと、そうですね、すみません。
シリアスになるのは第三章からです。
タイトルは
Crossing Worlds――交差するセカイの物語
というのを思いついたのですが、どうしましょう。
あと、作者名は何にしますか?
アイデア募集中です。
自分はこんごうを含む海上自衛隊と航空自衛隊、さらに密かにですが陸上自衛隊といった自衛隊三軍が堕神の死角たちと主役たちのバックでいろいろ死闘してるって描写で構いません。
安佐山さんはどちらかというと主要メンバーの中でも数少ない大人、かつ国の御偉いさんということでそういう政府や自衛隊との連絡パイプとか、主要メンバーのサポートのほうがあってると思いますので。
あまり顔を出さずにすみませんでした!
誰か、心優しい方がいらっしゃいましたら今の流れを教えてほしいです。切実に。
プロローグ等は出来たという考えで大丈夫ですか?
>Skyさん
了解です
僕自身政治とか詳しくないのでよろしくお願いします;
>金薙さん
えっと、過去ログにプロローグと第一話を投下しました。
現在はタイトルと作者名の案を募集中です。
編集してる途中に矛盾の排除を試みて変更した結果です。
第一話が上峰とテンフーの遭遇シーン、第二話が下記に載せるシーンとします。
この後に全キャラのトリップ・遭遇シーンを一つの章として載せます。
投稿する日にちは明日でよろしいでしょうか?
真に勝手ながら、タイトルは『Crossing Worlds――交差するセカイの物語』で決定させてもらいます。
第二話(修正済み)
限り無く広がり、無数に存在する複数の『世界』。
それらを全て管理し、中心に存在する世界が『神世界』。
この世界の住人は神とよばれる種であり、世界管理を務めるこの神世界において異世界に関する職業に就いているのが主である。
世界を創造する者、世界を管理する者、悪影響のある世界を消す者、自ら降り立って周囲にその存在を悟られぬように手助けする者、あるいは他の世界と全く関係のないことをやる神達。
そんな社会の中で、一人。
全ての世界を管理する『世界管理会』に就職したばかりの少年神様がいた。
彼の名はキクト。
彼は『宇宙』という世界の、地球という星のほんの一部、『日本』と呼ばれるエリアを管理する神様の助手をやっていた。
今日も彼は己の中途半端な注意力に負けず、役に立つ一心で頑張っていた。
「お茶ー」
「はい!」
「そこ掃除しといて」
「はい了解しました!!」
「ちょっと助手くん、ゲームしたいからちょっとモニター見てて」
「はい!」
そんな彼にも一つ、疑問があった。
――――あれ、僕って助手というよりただのパシリじゃ……?
反抗心沸きあがる胸を押さえ、彼は冷たい視線で『日本管理モニター室』を見わたした。
ポテチの袋やお茶のコップ、更にはお酒のビンまで床やテーブルに散らばっており、掃除するのにも一苦労だ。
一つの地域を『管理』する者としては、あまりにも雑なのではないか。
命ある場所を『管理』する権利を与えられているということは、上に信頼され、その地域を任されているということなのに。
この人達はサボってばかりではないか。
自分の理想と現実はどこまでも違うということに呆れながらも、キクトは再び掃除にとりかかった。
「あ、全く、こんなところにコントローラをほったらかしに……」
モニターの下に転がったゲーム機のコントローラを拾おうと、屈みこむキクト。
上司が日本のレトロゲー好きだからか、ファ○コンのコントローラだ。
それが災いし、踏み込んでしまった先に、コントローラから伸びたコードがあった。
「ふぎゃっ」
コードが足と床に挟まれてすべり、キクトは前方に身体を投げ出された。
衝撃を最小限に抑えるために思わずキクトは両手を前に出し、キーボードに直撃してしまった。
「キーボードがぁぁぁ!?」
――――直後、モニターにアラート表示が出現する。
『ゲート設定を変更しますか?』
モニターに表示されたその文字の羅列を、理解するのに時間がかかって硬直するキクト。
「ゲート、って、何だ?」
とりあえず『NO』を選択してアラート表示を消さねば、と彼はキーボードに手を伸ばす。
「おい!今の音はなんだ!何かしたのk――って何をしてる!!コンソールに触るな!」
「げ」
キクトがすっ転んだ音に反応したのか、彼の上司が超スピードで戻ってくる。
突然の怒鳴り声に驚いたキクトはビクッと手を震わせ、キーボード触れてしまった。
結果、画面上の選択肢で『YES』が選択された。
『座標、『紅陽町』。ゲート設定、変更します……』
モニターに表示されたそれらの文字を見て、キクトとその上司は再び口をあんぐり開けて固まってしまった。
非現実的、あるいは奇跡的とでも言うべきだろうか、そんなできすぎた事故で、全ては始まってしまった。
***
「と、いうわけなんですよ」
「なるほどわからん」
僕は物語のプロローグ風に、とてもわかりやすい説明をしてあげました。
それなのに、この高校生は全くわかってくれませんでした。
「そもそも神は信じていないわけじゃないが、お前みたいな弱そうなのが神なわけないし。賢者オーラどこだよ」
「いや、だから神は複数いて姿形はそれぞれなんですってば。あと貴方達が思うように全能じゃないし」
「それと、それがどうして今朝の変な男と関係してるのか説明になってない」
もっともなことを指摘されてしまった。
やはり物語っぽくしてみたのが逆に仇になってしまいましたか。
「えっとですね、複数の世界があるのはもう言いましたけど、地球は他の世界から関係を絶たれた、『隔離世界』なんですよ」
「はあ」
なるべく難しくならないように説明してみます。
「それで、全ての世界を繋ぐトンネルみたいなもの、ゲートというのがあるんですけど、地球の様な隔離世界だと開かないようになってるんですよ」
「で、開く様になったからあの男が別の世界から入ってきた、と?」
「惜しい!」
「じゃあ、何が違うんだ」
ここから複雑になってくるんですよね、少なくとも、僕には。
「本来、ゲートとはそれなりの設備を用意した上で開くものです。この世界のもので例えれば、旅客機みたいなものですかね。飛ぶ先は別の国じゃなくて、世界ですけど」
「とんでもない旅客機だな……」
「まあ、料金もそれなりにかかりますしね。それで、ゲートで繋いである複数の世界、『交流世界』は他の世界の存在を知ってます。世界>国>州みたいなものですかね、交流世界の殆どは社会や技術体系も地球より断然発達してるし」
おっと、少し話題が逸れてしまったかもしれませんが、まあいいです。
「隔離世界はゲートが開くことが許されてないんですよ、隔離されてますから」
「そうだろうな」
「でも、空間に負荷がかかると、強制的にゲートが開いて周囲の物体を引きずり込み、近くの世界と繋がってしまうんです。これをイレギュラーゲートと呼びます」
「ああ、なんとなくわかった」
「ゲート設定を『ゲート開門可』にしてしまったのですが、本来ゲート設定を変更するときは空間の負荷を考慮しなければならないものです。えっと、ひとつの世界をゴム膜みたいなものと思ってください。隔離されてる地球はその上に幾つもの鉄球を乗せられたまま、二枚の鉄の板に挟まれて伸び縮みを防がれてます」
「その鉄球が負荷なんだな」
よくわかりましたね、これ僕でも理解するのに時間かかったのに。
僕は再びポッキーを一本咥えて噛み砕きます。
「はい、で、急にその鉄の板が外されたらどうなります?」
「……鉄球の重さでゴム膜がトランポリンみたいになるな。跳ねまくる」
「はい、世界は複数あるので、その近くにある世界に歪んだゴム膜が触れるとイレギュラーゲートが発生し、触れた世界では小さめのブラックホールの様な実体の無い穴としてその周囲のものを吸い込むのです。たまに鉄の板の役割を果たしている隔離壁に穴を開けるほど大きな負荷がかかってイレギュラーゲートが開いた、なんてことは何回かありますけどね」
「それで?」
「僕と上司の失態で負荷を排除しないままゲート設定変えちゃったんで、上層部が急いでゲート設定を戻すまでに何人かの異世界人がここに移動、僕らの用語を使うと、『トリップ』しちゃいました」
「いや、話を聞く限り、お前がマヌケなだけだと思うんだが……」
「うぐっ」
薄々感づいていたけどはっきりと言われたくなかった!
「とにかく!異世界人に関わってしまった以上、貴方には協力してもらいます」
「はあ?別に、異世界人と出くわしたのって俺だけじゃないだろ?地球は広いぞ?」
「いえ、まあ、他の世界にある生命の住む土地に比べたら小さいですが……そこはおいといて、トリップしてきた異世界人にはこの世界の人間に干渉できないように魔法みたいなのをかけるんです。まあ、そこは神のご都合主義的な力として割合します」
「なんだそりゃ……」
まあ、いずれ説明しますけど。
ポッキーの袋が空っぽになったのでそれは一旦テーブルに置きます。
「でも、貴方は出現したばかりの異世界人と出くわしてしまった訳です。僕がご都合主義な魔法をかける前に」
「仕事しろ」
「してるよ!……コホン、それで、さっきは『地球は広いぞ?』と言いましたよね?実は、事故の範囲はこの町だけなんですよ、さっきのプロローグ風の説明を聞けばわかったと思うんですが」
「全然わかんないし、何でこの町限定なんだよ」
「そこは完全に事故です」
変な目で見られた。
別に、本当に事故だったから仕方ないというのに。
僕は深呼吸をし、彼に告げます。
「で、用件はわかりますよね?信じる信じない以前に関わってしまった以上は協力してもらいます」
少し考えた素振りをすること数秒。
上峰は笑顔で僕に返します。
「よしわかった、話は信じるがお前のことは駄神と呼ぼう」
「はあああああああああああ!?」
そこから、僕の居候生活が始まりました。
青い猫型ロボットの様に押入れで寝る訳ではないけれども。
思えば、警察に連絡されなかったことがとても不思議です。
えっと、はい、見事に作者名を書きかけのまま投稿してしまいました。
今修正してきました。
次はショートショートを一つの章にまとめて投稿し、日常/異世界人保護編開始です。
SSを少し修正します。これをコピペでプロローグに使ってください
____________________
「こら、待ちやがれ!」
森の中で一人の少年と一匹の狐が追いかけっこをしていた。
少年は森で活動がしやすい服装をしていて、手には短い杖が握られていた。
杖を持っているが別に足をくじいたわけでもないし、それなりの速度で狐を追い掛け回しているから健康体そのものだという事は簡単に理解できる。
「この森で銀色をした狐なんて見たことがないし、なによりこの森に慣れ親しんだ僕より速いなんて。只者じゃないはずだ」
銀色の狐は魔法を使う素振りもせずに、逃げ続けていた。
この世界には魔法が存在している。そんな事は赤ん坊でも知っているし、自然に生きる動物にだって日常的に使っている。
少年の手にある杖は単に魔法を扱うための物である。
「おかしい。一向に襲いかかってくる気配がない。もしかして、ハズレモノか?だったら尚の事好都合だぜ」
別に魔法を使わなくても牙や爪で攻撃できるはずの動物だが、歯向かってこないモノもいる。そういうのは総じて仲間はずれにされて、狩りを覚えることすらできずに放り出された存在として、ハズレモノと呼ばれている。
このハズレモノは一部の愛好家どころか世界中に需要があり、かなりの値段で取引をされている。
しかも色が銀とは誰も見たことがない。少年はレア物だと判断し、追いかけている。
「まさか、今日の飯の確保に来たらこんなのが引っかかったとは、僕幸運すぎるな」
狐は精一杯逃げていたが、不幸な事に脚を木の根っこに取られて転んでしまった。
「ふぅ、疲れさせやがって。こいつを売れば僕は一躍有名人。《銀を捕まえた者》カナチとして名前が売れちゃうな」
それを取らぬ狸の皮算用と人は言うが、少年は気にしない。
そして現在進行形で足元に形成されている穴にだって気付かない。
「さて、おとなしく捕まってくれよ!?」
そして案の定その穴に落ちてしまう少年。予想以上に深かったようでなかなか底につかない。
身動きが取れないほど狭い空間。
光ははるか頭上にあり、もう夜に見える星の大きさほどでしかない。
「やばい、やばいやばいやばい!!」
あまりの恐怖に少年は気を失ってしまった。
ズダーン!
「うっ、つぅ......ここは?」
地面に墜落と言っていいほどの速度で落ちた少年は、その衝撃で失っていた気を取り戻した。
いきなり底についたようだが、先ほどまでの狭い空間はどこかに消え去り、辺りは真っ暗だが見たことのない風景になっていた。
さらに下は土のはずなのにかなり固い。そして黒い。
いつも感じている偉大な自然を微かにしか感じない。
「どこだよ、ここ」
少年は呆然としたまま動けなくなっていた。
誰か海から迷い込んだキャラいないかな……?
不審船vsこんごうで民間船(実は異世界から来たキクトとかの上司さんを含めほかの異世界キャラが乗った艦)保護戦闘をしたいとか思ってる俺がいる。
ミナさんの書いたSS
「いやもう妹がいて良かったよ本当。流石ミナだよ。この調子で頑張ってくれたまえ」
「私は何故こんなことをしているのか疑問に思ってきました」
この世界には神様、という存在がいる。案外ソレは日常に混ざっている物で、しかし気付かれることは無い。別に誤魔化しているわけではないのだが、誰も隣にいるコイツは神様かもしれない! なんて考えないからである。むしろ考えているほうがおかしい。
しかし、もちろん世界がどうのこうの言っていれば神様とまではいかなくとも精神を疑われる。なので神様はあまりそんなことは話さない。だが一見普通の会話に紛れ込んでいる。
「お兄ちゃん、言うつもりはなかったけどなんで見習いがこんなことしてるんですか少しは仕事してくださいよ!」
「俺、神様。しかも一番偉い創造神。お前、妹。創造神の見習い。見習いの内から仕事できるのはありがたいことです、うむり」
たとえばこの会話。明らかにおかしいところがあるだろうか? ……もちろん、ここで本当はありませんという風に述べたいが思い切りおかしい。ハッキリ言うと、これが神様――創造神、そして見習いの会話である。
「私が九割やってますけどね、仕事」
「確認はこの俺がやってるじゃん」
「うるさいですよ馬面」
「絶対違う! それは無いぞ! この前も一人彼女を作ったばかりだ!」
「どうせ一週間以内に振られます。あ、電話来てますよお兄ちゃん。別れよう電話じゃないんですか?」
「クッソ……! 電話終わったら泣かせてやる……!!」
薄暗く、窓の無い室内には一台のデスクトップパソコンが机の上に置かれ、それ以外には特に特筆すべきことがない小さな部屋。机の前に座った少女――先程ミナと呼ばれた――は、うーんと背伸びをする。
うるさくしていた青年、自称創造神は部屋の外で電話に出ている。仕事をしないのだから入って欲しくないとミナは毎回思っているのだが。
「おい全然違うじゃねーか。ちょっとした報告じゃねえええかあああコノヤロッ!」
と、何もしないうちに創造神が帰ってきた。
「お兄ちゃん、うるさいです。報告とは?」
「あの子がいなくなったらもう付き合ってくれる子いないんだよ……なんでだ俺めっちゃ良いやつなのにぃ……」
「そういうネタはいいので報告を」
「ユリアちゃんマジくそかわ」
「お兄ちゃん、パソコンにロックのかけてある謎のフォルダがあります。名前は『ユリアたんprpr』ですので削除して宜しいでしょうか?」
「なんか謎のゲートができたんだってさ。見た目もなんか言ってたけど覚えてない。今のところ何かがあったわけじゃないから放ってるけど、解析班からは異世界へのゲートだって。ちょっくら入ってきてよ」
「すみません……。間違えてエンターキー押しちゃって消しちゃいました」
「きょおおおおおおおうううふううう!! 俺のユリアたんフォルダがあああッ!」
「復元してあげますからその場所への案内とまずゲートへ入るのはお兄ちゃんという事を約束してください」
「帰ってこれなかったらどうすんだよユリアたんとデートの約束が」
延々と続く創造神と見習い、もとい兄妹喧嘩。ついにキレかけの妹ミナが宣言した。
「すみませんお兄ちゃん。ロックフォルダ全消去しちゃいますね!」
「いや、お兄ちゃんもついて行ってあげよう!」
「本当ですか。でも消去し終わったので一人で行きますね!」
「待って! 俺のフォルダ! お願い復元してから行って! マジで!」
「お断りしますね」
机の前から離れようとしたミナはふと思う。場所はどこなのか。
もともと頼りにならない(決して使えないわけではない)兄なのはわかっていたものの、こうも情報をもらえないとは。仕方ないのでパソコンのキーボードを叩いて探す。
「あ、ごめんごめん。場所は近いよ」
「……はい?」
「近いというか、なんというか。この部屋もうゲートの中に飲み込まれてるから。安心して!」
「この部屋とお兄ちゃんはどうするんです?」
「俺が作った物だから自動的に消える。この俺も喋る人形だから安心して調査へ行ってくれたまえ。もう戻れないかもだけど!」
「じゃあ仕事は一人で頑張ってくれるんですね! 私は新天地で頑張りますので、お兄ちゃんもお元気で!」
笑顔のミナ。白目の創造神。消える部屋。
「俺、仕事やりたくねええええよおおおお!!」
兄の声を聴きながら、完璧に消えた部屋から落下していくミナ。
そこで意識が飛んでいった。
報告。
イガイガ栗さんからの反応が無いため、彼のキャラは保留することにしました。
そして今日、SSを一気に予約投稿しました。
限度があったので、ポテ塩さん、詩歌さん、金薙さん、勇輝さん、蓑虫さん、グロリゲスさん、Sky Aviationさん、ジョシュアさん、キラさんの分のSSを今日の22時に予約しました。
一応、異世界人保護編を書く順番を決めたいと思うのですが、SSを書いた人の順番でいいですか?
その場合、
ポテさん
詩歌さん
金薙さん
勇輝さん
蓑虫さん
Sky Aviationさん
ミナさん
鴉臨さん
という順番になります。
あ、でも、その前に異世界人と出くわすまでの上峰視点の話を1~2話書きます。
申しわけないです。ストーリーには影響しないです。
ただ、存続の護衛艦を出すというのはいささかどうなのかということで、『DDG173こんごう』を『DDG180たかお』に変更していただければと思います。
これは今計画されているあたご型の追加2隻分のことで、まだ計画であって建造されていないのであくまで架空の護衛艦として使いたい所存です。
また、これに際して、本文中の、
>少し年は経ったとはいえ、やはり腐ってもイージス艦か。
の部分が矛盾しますので、
>やはり最新鋭あたご型のイージス艦の中でも一番の最新鋭か。
に変えていただければと思います。
思ったより大規模になりそうですが、ストーリー自体は全く影響はありません。
返信遅れてすみません。
えっと、日常編は保護編も兼ねているつもりなのでまず最初にトリップしてきたキャラを保護する話の導入をここで投下したらバトンパスするつもりです。(場面が切り替わる形で)
とりあえず、順番としてはポテ塩さんのキャラがトップバッターなので導入を投下してそれを考慮していただき、保護までの部分を書いていただきます。
保護の詳細は導入部分と一緒にして投下するのでもうしばらくお待ちください;
あ、やっぱり保護編と日常編って別々にした方がいいでしょうか?
それとも順番に保護していきつつも日常も入れて徐々にキャラを増やしていく感じでしょうか?
読者参加のレンさんが通りますよ~。
勇輝さん、少しずつキャラを出すというのは賛成です!
ただ、プロローグpart2で、「僕と上司の失態で負荷を排除しないままゲート設定変えちゃったんで、上層部が急いでゲート設定を戻すまでに何人かの異世界人がここに移動、僕らの用語を使うと、『トリップ』しちゃいました」って言ってますし……ここはどうするのかな?
初めの主人公と別にして他の所にも同じような人を作る?
また機工斗ちゃんのキャラがバカをしてゲートを繋いでしまう?
その他の案はちょっと思いつかなかった(・・;
順番に出していくための設定としては、順番に探していく感じとかどうでしょう?
上峰君は放課後に捜索を手伝い、保護したキャラも手伝ったり。
日常編よりも捜索編?
で、捜索中に問題発生したり。
>機工斗ちゃん
私もその案で良いかな。たまに作者キャラが誤解で戦おうとしたりしてwww
まぁそこらへんは読者参加だから作者参加さんたちに任せるよ~。
イガイガ栗さんがSSを書いてくれました!
これで明日にはSSの大量予約投稿するかもしれないです。
「ここは……どこだ?」
気づくと、山の中にいた。確か……家の屋根で昼寝してたはずだけど……
植(・)物(・)だ(・)ら(・)け(・)の山の中に、だ。
これは……マズい!
ここがどこかとかそういう話の前に、死ぬ! 食われる!
全力で山を降(くだ)る。
不思議なことに植物たちは追ってこない。
「……なんか、おかしくね?」
山から大分離れ、周りに植物のないざらつく一枚岩の上で呟く。
「……無理だっ!」
試しに近くにいた小さい植物に触ってみようとするが、失敗。やっぱり怖すぎる。
「にしても動かん……なんだこいつ……?」
威嚇のポーズをとってみる。
反応なし。
「グルル……」
うなってみたがやはり反応なし。
「……マジでなんなんだこいつ……?」
投稿されてる!?
お疲れ様です。
基本私のキャラは好きに弄ってもらっても結構です。
異世界系の人のうちでは地球出身だしこちらの常識もわきまえてるし異世界の常識も多少わかるからわきまえてるから緩衝役にでもなれるかな?
今日の夜22時に予約投稿しました。
これでトリップ編は終わりです。
やっと本編が書けます!
長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
投稿乙です。
最近また悩んできた……。艦名ほたかに変更したけどやっぱたかおがよかったかどうかとか……。
……どうしよ(汗 もうこのままでいいかな?
そうなんですよね……。あんまり変更しまくりはいくないことは重々承知……。しかし、できるなら……というのもありますし……、できます?最後にするんで。
>勇輝さん
進行遅くてほんとすみません。
頑張って導入書きます。
皆さんに質問です。
物語の都合上とかで、作者参加者も上峰くん視点で書くのもありでしょうか?
>零さん
いや、かなりこっちの勝手な要求なんで気にしないでください。
上峰くんの視点ですか。それってどんな感じか統一したりします?
>勇輝さん
統一はしなくてもいいですけど、捜索編とかはどこにいるかを探るのが上峰なのでそこら辺を上峰くん視点で書いた方がいいのかなぁと。
次話導入部分
我が家に居候ができて二日経った。
特に何か良いことがあったというわけではないが、悪いこともなかった。
自分の分の食費を出してくれるので食事はただ一緒に食べるだけで余計にお金がかかるわけでもない。
しかし|奴《キクト》が居候になって、放課後は異世界人探しを日課にすることとなった。
どうせ放課後は暇だからいいのだが。
「昨日は捜索が捗らなかったけど、今日はしっかりやりますよ!」
「いやお前がクロと遊んでたからだろ」
実は昨日、説明とか必要なときにキクトが猫と遊んでいて、殆ど捜索できなかったのだ。
「もふもふは正義!よって僕は無罪!」
「いやお前自身はふもふじゃないから正義じゃないだろ」
「うぐっ」
この仕事に不安しか感じてないのは俺だけなのだろうか。
そもそも最初から不安しかないのは事実だが……ん?
「なあ駄神」
「駄神いうな!」
怒りで声を荒げる駄神を無視し、俺は今更気づいた違和感に対して疑問を述べる。
「俺が最初に異世界人と遭遇したのを見てたんなら、なんで捕まえなかったんだ?確か、ご都合主義な魔法で干渉を不可能にするんだよな?その時に捕まえればいいだけのことじゃん」
「僕戦闘できないので」
「戦う前提かよ!」
もし俺が戦わなきゃいけないんなら手伝えないことは確定だ。
「勿論、相手が混乱して襲いかかってくる可能性は十分ありますので、その場合の無力化に協力してもらいたいんです」
「俺は無力な一般人だからパス」
「僕も無力な神なのでパス」
ガシッ。
肩を掴まれ、笑顔で鞘に納まった刀を手渡されても尚、警察を呼んでいない俺は末期なのかもしれない。
***
上の「***」を使って導入と本編を分けると思います。
「***」と文章の間には5列空けていただけると助かります。
因みに、渡された刀は通常の人には見えない、そして斬られると一時的に力が抜けて、普通なら倒れます。
プロットブレイカーを目指すのならこれを受けてもへっちゃらとして「面白そうだから手伝わせて」とでも言ってください。
普通を目指すのならその後拉致げふんげふん保護されてください。
武器に刀を選んだ理由:雰囲気←←
なので、他に何か無力化に使う武器のアイデアあったら言ってください。
確か、順番どおりに行くと次はポテ塩さんだったはずなので、楽ちゃんの捜索・保護の部分は任せます。
リレー小説って主催はおろか書くの初めてなんですけど、こんな感じでいいんでしょうか(ドキドキ)
追記
話の終盤になったら武器を鳳楽に持たせるつもりでいます。(使うとは言ってない)
また、現在書いてますがなにぶん初めてなのでクオリティーはお察し下さい。
です.....
全体の話の流れだけでもここに載せたいんですけどね;
せめてポテさんが原稿を送ってくる前に書き切らないと(滝汗)
ポテさんより原稿が届いたのでこちらに投下し、話し合い(があれば)の後になろうに投稿させていただきます。
我が家に居候ができて二日経った。
特に何か良いことがあったというわけではないが、悪いこともなかった。
自分の分の食費を出してくれるので食事はただ一緒に食べるだけで余計にお金がかかるわけでもない。
ただ、|奴《キクト》が居候になって、放課後は異世界人探しを日課にすることとなった。
どうせ放課後は暇だからいいのだが。
「昨日は捜索が捗らなかったけど、今日はしっかりやりますよ!」
「いやお前がクロと遊んでたからだろ」
実は昨日、説明とか必要なときにキクトが猫と遊んでいて、殆ど捜索できなかったのだ。
「もふもふは正義! よって僕は無罪!」
「いや、お前自身はもふもふじゃないから正義じゃないだろ」
「うぐっ」
この仕事に不安しか感じてないのは俺だけなのだろうか。
そもそも最初から不安しかないのは事実だが……ん?
「なあ駄神」
「駄神いうな!」
怒りで声を荒げる駄神を無視し、俺は今更気づいた違和感に対して疑問を述べる。
「俺が最初に異世界人と遭遇したのを見てたんなら、なんで捕まえなかったんだ? 確か、ご都合主義な魔法で干渉を不可能にするんだよな? その時に捕まえればいいだけのことじゃん」
「僕戦闘できないので」
「戦う前提かよ!」
もし俺が戦わなきゃいけないんなら手伝えないことは確定だ。
「勿論、相手が混乱して襲いかかってくる可能性は十分ありますので、その場合の無力化に協力してもらいたいんです」
「俺は無力な一般人だからパス」
「僕も無力な神なのでパス」
ガシッ。
肩を掴まれ、笑顔で鞘に納まった刀を手渡されても尚、警察を呼んでいない俺は末期なのかもしれない。
***
「ふふ、仲良さそう」
私は空から人間二人を見ている。
たまたま見掛けて気になったからさっきからずっと観察している。
初めて見る光景。
「あの二人、面白いことしようとしてる」
何やら面白そうなことをしようとしてるみたい。
片方は人間じゃないみたいだけど。
どういう存在か気になるけどもう片方の人間は人間で普通じゃない気がする……。
凄く気になるし見てて面白い。
「う~ん。でも二人とも、まだ私と戦えるほど強くない」
この世界の鳥は弱かったけどあの二人はそれに毛が生えた程度。
飛行能力がインプットされてる私なら不意討ちも簡単に出来そう。
ただ……
「あの道具、気になる」
私の|記憶《メモリ》に無いもの。
気になる。
ナイフに似てる。
でもナイフよりずっと大きい。
まず間違いなく武器。
私の知らない武器。
しかもあの二人実力を隠してる可能性、高い。
それに――
「このまま観察するの、面白そう」
強い人を見つけてくれたら私、戦いたいし。
しばらく様子見で良いかな?
あっちの人間より強くなると私は嬉しい。
「いつか、私に武器を抜かせてくれる実力になると、嬉しい」
この世界、武器や物、見てるだけで面白い。
生き物も珍しい。
色んな形してるし、変わってる。
空は青いし、|翼竜《はねむし》が飛んでない。
雷が色々な所に感じられる。
ここの人は天災すらも制御出来るのかな?
知りたいこと、いっぱいある。
決めた。
しばらく気配消して、空からこの二人をこっそり観察する。
あ、でもただ観察してるだけじゃつまらないからたまには地上に降りて植物や生き物の観察する。
まだ彼らと接触をとるのは早い。
私忙しい。
「ふふ、楽しみ出来た」
このまま私、以外に別のところから来た人と会えたらそれも嬉しい。
それか面白い生き物とかでも良い。
弱い人は嫌い。
でも強いは好き。
面白い人も好き。
でも恋ではないはず……これは好奇心。
そう好奇心という感情の一つ。
人の感情。
こっちに来てからの方が感情をよく学べる。
道具である私にちゃんとした居場所が作れるかも知れない。
「ふふ、ここは。あそこよりずっとずっと面白い」
元の世界、嫌い。
全て頭にある、つまらない。
新しい物、何もない。
全て色あせてる。
あっちの人も嫌い。
何か諦めたような目をしてる癖に私を作った。
何かと思えば私に全てをやらせようとする。
何もかも。
私から希望を見ようとした。
所詮は人形の私からは――道具の私から希望等見えるはずはないのに。
だから世界を越えた。
私には無価値な世界を捨てて。
自分たちが作りだしたモノ
・・
を神とする実に愚かな人々を捨てて。
私の渇きを潤す為、何もない所から抜け出すため。
所詮、私も私のことしか考えていない。
でも、娯楽は人に必要なこと。
私、好奇心押さえられない。
だから……私にも必要なこと。
「世界を越えて、来た意味あった。私、嬉しい。この世界灰色じゃない。光がある、あらゆる生物から。この場所から命感じる」
もっと、もっと色々な物をみたい。
色んな事してみたい。
記憶が欲しい。
こっちの人とお話してみたい。
とにかく、色々な事がしたい。
もっと新しい物、私が知らない物体、私が知らない事を知りたい。
だから――
「だからこの私に見せて? あっち側の世界しか知らないこの私に、貴方逹がこの世界良いところや面白い出来事、新しいことを」
この私、鳳楽に。
必ず……ね?
* * *
「……!」
背中から変な汗が出てくる。
何か……こう、見られてる気がする。
「駄神! 今何か感じなかったかっ!?」
「駄神言うなっ! で、何かって何ですか?」
気付いたのは俺だけか。
気のせいか……?
いや、でも――
「……さっき、視線を感じたような気がするんだ」
「視線? 気のせいじゃないですか? 僕には何も――」
駄神が突然口を閉ざす。
「どうした?」
「……どうやらいきなり当たりを引いたようですよ。 僕達」
「それって……」
まさか、異世界人がもう見つかったのか。
「空から少しですが異様なモノを感じ取れました。 あり得ない力を感じるのですが、異世界人でしょう。 相手は恐らくこちらの様子をうかがっているのだと思います」
「……どうするんだ?」
「それは勿論貴方に戦って頂きます」
「駄神、貴様俺に本気で戦わせる気でいたのか!?」
「……え、言ったじゃないですか?」
よし、殺るなら駄神からだ。
俺は刀を鞘から抜き、駄神に向ける。
「ちょっ何で僕に向けるんですか? 僕は只の非力な神ですよ!? 他人に任せて当然じゃないですか!?」
駄神が青ざめた顔で何かいってくるがこの際どうでも良い!
只の一般人に戦闘を任せようしたことを悔やむがいい!
「五月蝿い、俺は一般人だぞ!? 戦闘なんか出来るか! さっきは何か流されて刀を渡されてしまったがこうなったらこれで貴様を始末する」
俺は刀で駄神に斬りかかる、がそれは指で誰かに止められた。
「私の観察対象二人が、仲間割れ、面白くない」
刀を止めているのは十代半ばくらいの可憐な少女だった。
しかし、その背中には鳥、特に鷲に似た翼を生やしている。
「観察対象?」
駄神がこのタイミングで少女に疑問を投げ掛ける。
……馬鹿か?
タイミングおかしいだろ!
ええと普通ならもっと……焦ったりビックリしたりするだろ……?
「ん、私貴方達空から見てた。本当はずっと観察してるつもりだったけど貴方達が」
少女は無表情で口だけを動かしながら駄神の疑問に答えた。
彼女の声は綺麗なソプラノボイスで、見た目も相まってアニメのキャラクターみたいだ。
瞬きをしていないのが少し怖い。
「……キクト、こいつは異世界人だよな?」
「はい、間違いないです」
やっぱりか。
こっちの人間なら翼生えてたりしないよな。
あの異世界人は空から俺達を見ていたと言った。
さっき感じた視線はこの異世界人だろう。
「いつから俺達を見ていた?」
「ん……君達が言い合いしはじめてから」
結構前から見られているな。
空からって事はやっぱりあの翼は本物か。
「何故俺達を観察していた?」
「ん……面白かったから、ただの好奇心」
答え方がまるで機械みたいだ。
少し、気味悪いな……。
「では僕も少し質問良いですか?」
駄神が左手を上げて異世界人に言う。
……お前は小学生か! と思ったが話がややこしくなると思い、口には出さない。
「……ん、構わない」
「あなたは僕達を襲う気……僕達と戦う気でいますか?」
駄神にしてはいい質問だな。
確かに聞いておいた方が良い、少なくとも聞かないよりはずっとましだろう。
……相手が心理戦に強いと不味いとは思うが
「ん、今は戦う気なし。でも私と戦えるくらい強くなったら襲うつもり」
淡々と恐ろしいことを言う彼女に俺は少し恐怖を感じる。
……でも、ここで引いたら俺や駄神は危ない。
俺は何とか頭に言葉を作り、口に出す。
得体の知れない者と話すのはもうごめんだな。
「今は? どういうことだ。後私と戦えるくらい強く? 今の俺達ではまるであんたに歯が立たないみたいな言い方だな?」
「ん、今の貴方達では私に勝てない。少なくとも私の見立てでは。だからまだ戦わない」
「理解出来ないな。今、俺らがあんたに勝てない、そう感じたから戦わない。そういう風に聞こえるが?」
異世界人はよくわからない。
……こいつは何を企んでる。
「そう、だから戦わないの。貴方達が私を倒せるようになるまでは」
「僕達が貴方に勝てるようになるまでは……? 僕達は貴方と戦う気はありません。僕達は異世界人、貴女のような人を保護するために動いてるんです。できれば……戦いたくはありません」
駄神がまともな事を言っている、とつい思ってしまったが口には出さない方がいいだろう。
……絶対に。
「ん? やっぱり私以外にいるんだ別世界の者。ふふ、面白い」
こいつ、自分以外にも異世界人がいるのが分かっているのか。
「やっぱりとはどういうことだ」
あくまでも俺は強気に奴に言葉を掛ける。
まだ警戒心を解かないべきだ、と体も言ってる。
「私以外のこの世界とは違う異質な力薄々だけど感じてた。やっぱりいるんだ。ふふふ、これは面白くなる」
声は笑っているようだが、顔は無表情のままで固まっている。
……見てるこっちとしては気持ち悪い。
「面白くなるってどういうことだ? あんたは何を望んでいる」
「ふふ、ボクはただ、飢えているだけさ。あっちは暇でしかなかったからね。私がしたいのは君達の言葉で言うなら……『暇潰し』だよ。あっちは退屈しかなかったんだ。私の娯楽は観察と戦いだけそれ以外、望まない」
声が……変わった?
さっきまで完璧に少女の声だったのに少年のように低くなった。
一人称もボクって一度あいつは言った。
いったいなんなんだこいつは!?
保護はこんなのと何回もあわなきゃいけないのか。
「……一つ提案がある」
さっきから話してて俺は閃いた。
こいつなら多分乗ってくる。
「何?」
「俺達はあんたみたいな異世界人を探して保護する目的があるんだが……キクト――こいつが言うには混乱し襲い掛かって来る可能性があるらしい。そこでだ、あんたにこれからの異世界人探しについてきてもらいたんいんだ。ついてくればあんたは戦いが出来るし、俺らは比較的安全に異世界人の保護が出来る。 どうだ?」
これに乗ってくれれば――俺はだいぶ楽が出来る。
「貴方って案外頭良いんですね」
余計な事を言うな駄神。
「…………面白そう。 いいよ、貴方達についてく」
「なら、決まりだな」
そう言いながら俺は右手を前に出す。
「この右手は……?」
相手はきょとんとしている。
もしかして異世界には握手の文化はないのか。
「握手だよ。握手、分かるか?」
「あ、そういうこと。ん」
彼女の右手が俺の右手をしっかりと握る。
心なしか少し冷たい気がした。
まるで人の手ではないかのように。
「これから宜しくな……ええと」
「ん、鳳楽それが私の名前」
「宜しくな鳳楽」
「宜しくお願いします鳳楽さん」
俺達はこの時まだ知らなかった。
異世界人達にはことごとくこの世界の常識が通じないことを。
備考
・鳳楽がはっちゃけてない理由
本人は大きなコンピューターみたいなもの、だから学習能力はあるはず、と思い少し大人びた感じで出した。
後、初登場くらいは真面目にしたかった。
・作者の書き方のせいか私の書いた文章は淡白な感じがする。
編集者コメント
・淡白ってどういう意味ですか?←
・誤字修正させていただきましたが、本格的になってきた気がして(←遅い)テンションあがりました。もっと進行速度を上げます。絶対。
・本当に皆さん、ここ数ヶ月音沙汰無しですみませんでした。
他にも誤字脱字などがあれば報告お願いします。
こちらとしては入念にチェックしたつもりなのですが見落としているかもしれないので。
投稿した後には話のプロットとは言えないけど向かう方向についてのメモをこちらで投下します。(プロットだと内容を縛ってしまう気がしたので)
物語でのこれからのことを話しあってそれを参考にするのもいいですね。
眠かったからか備考の部分すごく適当に私書いてますね。
・作者の書き方のせいか私の書いた文章は淡白な感じがする。
↑これおかしいですね。
正しくはこれ私の書いた文章は私の癖なのか淡白(さっぱりしすぎている)感じがした。
ですね。
そして、私がキャラを上手く扱えてない。
……涙出てきた。
鳳楽さんと契約の後はアリスさん保護ですね。
ということで後ほどメッセージを送ります。
下記はメモ。
鳳楽保護
↓
アリス保護(鳳楽が同行)
↓
宵星巻き込まれる
↓
カナチ保護(同行者はアリスか鳳楽、担当が自由に選択してよし)
↓
休暇(日常混沌回)
猫のクロが転生者と判明
↓
藍鈴鈴蘭保護(同行者は担当が決める(ry)
↓
ミナさんが協力者として登場
↓
臨王保護(同行者(ry)
↓
宮野巻き込まれる
↓
イガ保護(ry)
↓
安佐山登場、そして政府関連の問題
↓
セイ・レンフー保護
↓
リスティア保護
↓
休暇(混沌(ry)
(保護編はここらで終わり)
(下記はやるかどうかわからないですけど時間があればやるかもしれないシリアス編。そのためとても曖昧です)
キクトが上司から連絡を受ける
↓
襲撃を受ける上峰
↓
悪神登場
↓
地球は資源として使えるとのこと
↓
シリアスの合間に混沌回
↓
安佐山のサポートもあり、無人になった街で決戦。
↓
上峰覚醒
↓
危機は去った
↓
異世界人達は元の世界に
冒頭部分できました。
近況報告。
居候が一人から二人に増えた。
以上。
あれから、鳳楽が「契約の内だから」と家に上がり込み、挙句にはうちの冷蔵庫にある食材をそのまま食べようとしたので慌てて止めた。
3人分の食材のためのお金はキクトが(どこから取り出したかわからない)自分のお金で払ってくれた。
まあ、食事代が浮くのはありがたいが。
「ところで、そのお金はどこから?」
「神世界で作られた日本円を似せて作られた紙札や銭を、上司から大量にもらいまして」
「……ニセ札?」
「いえいえ、ちゃんと本物ですよ。 どの様に調べられても本物と認識されるようにできてますよ」
「なにそれこわい」
というか経済に悪いだろ。
使いすぎたら問題が生じるな。
「というか、鳳楽って人造人間?なのに食べるんだな」
「別に、食べないと生きられない訳じゃないけど、食べたいだけ」
「……ま、まあ、お金はありますし!」
ニセ札には変わりないけどな。
まあ、鳳楽に関しては問題ないか。
否定してもきっと俺の意見など聞いてくれないだろう。
「とりあえず、今日の晩飯の食材買ってくるよ」
「そういうことなら、|お留守番《クロのもふもふ係》は任せてください!」
「待て、今別の意味を感じ取ったんだが」
むしろそっちが本音だろ絶対。
「クロのもふもふ係は任せてください!」
「そんな包み隠さず言わなくても」
「じゃあ私にもクロをもふもふさせて」
「お前は混ざらんでいい!」
くっ、こっちは何かと**ツッコミにナチュラルに加わってきて厄介だ。
「にゃー」
「おーよしよし、俺が留守の間にこいつらに襲われないようにな」
「にゃぁ」
「失礼な!僕は基本YESもふもふNOバイオレンスですよ!」
「もふもふすることはYESなんだな……」
ふと、鳳楽が思いついたように人差し指を立てながら発言する。
「YESもふもふ・NOタッチ」
「そんなロリコン紳士の台詞みたいな……ってそれ矛盾してますよ!?」
もふもふに関してキクトにまでツッコミをさせた、だと……!?
恐ろしい子……!
「まあ、いつまでも茶番してるわけにはいけないから、さっさと行ってさっさと帰るよ」
「「いってらっしゃい」」
「にゃ~」
***
まあ、鳳楽に関しては問題ないか。
否定してもきっと俺の意見など聞いてくれないだろう。
「とりあえず、今日の晩飯の食材買ってくるよ」
「そういうことなら、|お留守番《クロのもふもふ係》は任せてください!」
「待て、今別の意味を感じ取ったんだが」
むしろそっちが本音だろ絶対。
|お留守番《クロのもふもふ係》
ではなく、
|クロのもふもふ係《お留守番》
ではないですか?
個人的にはあくまでも《》の中はフリガナ――つまり読まれる方なので、違和感しかないのですが……
僕の感覚だと、上峰が感じ取った【別の意味】をフリガナしたのですが...
本気と書いてマジと読む、的な。
でも言われてみると、現実的に考えてそうですよね....
今までフリガナに本音を込めた、というのを幾つか読んできたので、僕は違和感を感じてなかったのですが、そう考えると別に思えてきました。
えっと、違和感を感じたのなら修正お願いします。
近況報告――――居候が一人から二人に増えた。
以上。
あれから、鳳楽が「契約の内だから」と家に上がり込み、挙句にはうちの冷蔵庫にある食材をそのまま食べようとしたので慌てて止めた。三人分の食材のためのお金はキクトが(どこから取り出したかわからない)自分のお金で払ってくれた。まあ、食事代が浮くのはありがたいが。
「ところで、そのお金は何処から?」
「神世界で作られた日本円に似せて作られた紙幣や硬貨を、上司から大量に支給されてまして」
「……ニセ札?」
「いえいえ、ちゃんと本物ですよ。どのように調べられても本物と認識されるようにできてますよ」
「なにそれ怖い」
ていうか経済に悪いだろ。
こんなニセ札――つまり本来存在しないお金を使い過ぎると色々と危険なのは今時中学生でも知ってるぞ。
「というか、鳳楽って人造人間? ……なのに食べるんだな」
「別に、食べないと生きられない訳じゃないけど、私が食べたいだけ。おいしいものは正義だよ」
「……ま、まあ、お金はありますし!」
ニセ札には変わりないけどな。
というわけで、鳳楽に関しては特別問題はなさそうだ。どうせ否定してもきっと俺の意見など聞いてくれないだろう。誰が言わずとも、主導権と一番縁がないのはこの俺だ。悲しいことに。
「とりあえず、今日の晩飯の食材買ってくるよ」
「そういうことなら、|クロのもふもふ係《お る す ば ん》は任せてください!」
「おい待て。今、別の意味を感じ取ったんだが」
直感的にそう思った。
まだまだ短い付き合いだが、(むしろ短い付き合いのままで終わりたいが)何となくこの自称神の行動原理はわかる。むしろそっちが本音だろ絶対。
「クロのもふもふ係は任せてください!」
「そんな包み隠さず言わなくても」
「じゃあ私にもクロをもふもふさせて」
「お前は混ざらんでいい!」
くっ、こっちは何かと**ツッコミにナチュラルに加わってきて厄介だ。
「にゃー」
「おーよしよし、俺が留守の間にこいつらに襲われないようにな」
「にゃぁ」
「失礼な! 僕は基本YESもふもふNOバイオレンスですよ!」
「もふもふすることはYESなんだな……」
コイツに関しては|有罪《ギルティ》扱いにすべきだな。
そんなことを考えていると、鳳楽がふと思いついたように人差し指を立て、
「YESもふもふNOタッチ」
「そんなロリコン紳士の台詞みたいな……ってそれ矛盾してますよ!?」
もふもふに関してキクトにまでツッコミをさせた、だと……!? 鳳楽、恐ろしい子……っ――――なんて内心でツッコんでないで、クロのためにもさっさと行ってさっさと帰ることにしよう。
「今日から君はクロノライゼン=フォン=ヴァンシュタイン四世だよ、猫ちゃん」
「勝手にクロの名前を変えないでくれるか、鳳楽!」
狙い澄ましたこのタイミングでツッコまざるをえない**をかましてくるとは、一秒たりとも侮れないな、鳳楽。
「名前は全然変わってないよ。クロはクロ以下略」
「略しても誤魔化されないからな!? クロはクロ!」
「おーけぃ、クロはクロ だね」
「今の何かがぴったり入りそうな間は何!?」
「細かいことは気にしない♪ それよりほらほら、早く行かなきゃ」
かなり不安だけど、クロをスーパーに連れてくわけにも行かないし――
「「いってらっしゃい」」
「にゃ~」
俺は仕方なく三人(正確には一匹と多分一柱と辛うじて一人)に見送られ、後ろ髪を引かれる思いで家を出た。
***
――こちら固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ(個体識別コードRDG79J23M8JD)、リモートマシンISpp7(固有アドレス193558273)への接続要請(Passcord:*****************************)――
――こちら固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ(個体識別コードRDG79J23M8JD)、リモートマシンISpp7(固有アドレス193558273)への接続要請(Passcord:*****************************)――
――こちら固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ(個体識別コードRDG79J23M8JD)、リモートマシンISpp7(固有アドレス193558273)への接続要請(Passcord:*****************************)――
――こちら固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ(個体識別コードRDG79J23M8JD)、pingコマンド固有アドレス193558273への接続確認要請。応答なし――
ネオスフィアネットワークとの回線が切断されている可能性を示唆。検証中……検証中……確認。
上位命令受信不可環境により自己命令による行動をデフォルトに設定。32%パーティションカット。システム再構成。新たなルートディレクトリを作成。アリスをスーパーユーザーとして再起動――――。
「|reboot《リブート》」
暫定的な環境への適応処理を終えて再起動したアリスは一先ず現状把握のための情報収集を行動指針に定めて歩き出す。
この世界に於いては、何処にでもあるような何の変哲もない町に該当する紅陽町の町並みだが、その極めて普遍的な光景ですらアリスの目には異常なものばかりに見えた。
アリスのいた世界――|数概界《アリスモスィア》は、マザーと呼称される|最上位存在《オールメイカー》が定義した特殊な数字表現によって生み出された整合性と合理性の世界。三次元的な空間概念が存在せず、自己のみが存在する小規模の世界の集合として成り立ち、全ての対話は同じ|情報単位生命体《バイオナーヴ・ユニット》間で共有するネットワーク内で行われている。
それに比べ、この世界の実体は|数概界《アリスモスィア》よりも遥かに複雑な無数の法則によって形作られ、原則的には0と1の羅列による単純表現で実体を定義付けられている|数概界《アリスモスィア》よりも遥かに統一性に欠けていた。
また視覚で捉えているあらゆる物品の数々もその大半が合理性と整合性に欠け、それ故にアリスは雑然とし過ぎて落ち着かない感覚に囚われていた。
この時のアリスは知る由もないが、キクトという神見習いのミスによってこの紅陽町に接続されてしまった異世界群の中でも、アリスの|数概界《アリスモスィア》は最もかけ離れた世界だ。つまり、魔法が存在するかどうかの違いしかないような|ズ《・》|レ《・》|た《・》世界とは違う。この世界とは存在定義そのものが異なるアリスが今その存在を保っているのが奇跡と言えるくらい外れた世界なのだった。
嗅覚についても同じく、純粋な匂いではなく無数の匂いが空気中に漂っていて、一歩進むごとにごくわずかずつ変化している。
そして聴覚。大気の振動による音波伝達は|数概界《アリスモスィア》にも存在したが、前述の通りあらゆる対話をネットワークを介した情報交換によって行うアリスたちにとって、音というものは身近でありながら馴染みの薄いもの。複雑に入り交じった無数の雑音は平時の情報処理に慣れない負荷をかけ続けていた。
外的刺激分析による情報収集を早々と断念したアリスは付近にあるコンソールを検索する。
コンソールとは|数概界《アリスモスィア》においてマザーの構成するシステムに直接接続する端末だ。個々の|世界《ディレクトリ》に少なくない数が用意され、アリスの子世界にある端末はパスコードによって制限されるため実質的にアリスにしか使うことが出来ない。故にそれがアリスがアリスであるという証明になるのだが。
当然のごとく、この世界にアリス専用のコンソールが存在するはずもない。
「該当するコンソールなし。さらに広範囲にコンソール検索を実行する。該当なし。検索範囲を広げる有効性を模索。有効性認められず」
コンソール検索も早々と諦めたアリスは一時棄却していた五感による情報収集に思考を戻した。あらかじめ予想されるシステムリソースを分割してバックグラウンドで情報収集を開始すると、アリスは再び歩き出す。
その時、視界下方を何かが横切った。
白い毛並みを持ち、尻尾を立ててしなやかな所作で歩く小型の四足歩行生命体。一般的には“子猫”と称される動物だった。
アリスと目が合う。
無言で見つめ合い、アリスは微動だにせず子猫をじっと観察した。
「アリスは固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD」
「にゃー」
「固有名称“にゃー”で暫定登録。アリスは個体識別コードの開示を要請する」
「にゃー」
「固有名称の登録は既に完了済み。アリスは個体識別コードを要請する」
「にゃぁ?」
「意思疎通が完了していない可能性が浮上。00101000110100100010011101000111101010000101000101111010101000100100100101101011110100110101101010111010101。アリスは確認を問う」
「にゃー……?」
この世界における一般的な感覚で言えばそもそも猫と言葉を交わせる人間なんていないし、数字を用いた言語による意思疎通なんて通じるのはそれこそコンピュータの類である。
「その言語は理解不能」
「にゃあ?」
「言語によるコミュニケーションは困難と判断。アリスは対象との接触による間接的対話を試みる」
アリスは口に出すことで目的と行動を明確にしつつ、子猫にゆっくりと手を伸ばす。子猫は逃げることなく素直にその腕に抱き上げられた。そして、匂いを確かめるようにアリスの胸元に鼻を擦り付けて満足げに「にゃ~♪」と鳴いた。
「自己診断用生体スキャナーを|能動的《アクティブ》に起動。アリスは固有名称“にゃー”の生体構造を精密分析する」
アリスの視線が一定幅で上下し子猫のバイタルデータを計測、テキスト形式でファイルに出力していく。
「不思議な匂い……」
アリスは子猫から漂う不思議な匂いに気が付き、スキャンを継続しながらその背中に顔を埋めるようにして匂いを確かめる。
アリスの知らない匂いだった。
アリスの経験したことのない、他者の匂い。他者と触れ合うということの明確な証明だった。
「視覚……聴覚……触覚……嗅覚……」
五感に従って順当に観察を進めたアリスは、|粗方《あらかた》のスキャン終了後その次の行動として子猫の前でゆっくりと口を開けた。
「次は、|味《・》|覚《・》」
「にっ!?」
アリスは|徐《おもむ》ろに、かつ何の躊躇いもなく子猫の前肢に噛み付いた。噛み付いたと言うよりは|咥《くわ》えたに近い甘咬みだったが、子猫が一瞬本能的な死の恐怖を覚えるには十分だった。
「みにゃーッ!」
「あむはむ……」
子猫はもがくが、その前肢を絶妙な力加減で捕らえたアリスはその表面――毛並みに舌を這わせる。衛生的にいいとは言えない暴挙だが、この世界に存在するあらゆるものと根本的に異なるアリスにとってそんなことは関係のないことで、同時に概念すら知らないために頭に浮かぶことすらなかったが。
「おい。アンタ、何やってんだっ」
「んむ?」
アリスは突然横から伸びてきた手に腕を掴まれ、不意の状況に対応できずその手に子猫を奪われてしまった。
その視線が泳いだ先には、子猫を守るように抱えた少年が立っていた。
その歳十代半ば――たった今異世界人二人から一時的とはいえ離れられて一息ついていたばかりの|上峰《じょうみね》|達也《たつや》だった。
「何を考えてるのかは知んないけど、こんな小さい猫にすることじゃないだろ」
「……“にゃー”以外の生命体を確認」
アリスは突然出現した自分に酷似した外形特徴を持つ生命体を冷静に観察しつつ、その言語が自分に理解可能なものであると判断する。
「……“にゃー”の返還要求」
「断る。っていうかこんなことしておいて拗ねるなよ……」
アリスの名詞の羅列に近い喋り方を拗ねているからと判断した達也だったが、その実のところはアリスが自然言語の扱いに慣れていないというだけだった。
「……“にゃー”の精密分析は概ね完了。アリスは知的生命体とのコンタクトを開始する」
「は?」
アリスはすっと達也に歩み寄ると、困惑と警戒の入り交じったような表情を浮かべる達也の顔をまっすぐ見上げて、
「アリスは固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アリスは固有名称の開示を要請する」
「は? え? え、何?」
「第二対象の心拍数上昇。緊張状態にあると判断し、アリスは弛緩亢進行動を実行する」
アリスは躊躇いなく手を伸ばすと、達也の額に手を添えて、ぎこちなく擦るように左右に振り始めた。
達也はぽかんとしてしばらくの間されるがままになっていたが、我に返った途端、ようやく悟ったように息を呑んだ。
「あの……もしかして撫でてる?」
「対象の心拍数やや減少。弛緩亢進行動の有効性を確認。アリスは再びコンタクトを開始する。アリスは固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アリスは固有名称の開示を要請する」
何とも言えない微妙な表情――まるで自分の運命、特に不運を嘆くような顔になった達也の心中はきっとこうなるだろう。
(コイツ、絶対異世界人だーッ!!!?)
運命である。
「応答なし。意思疎通が完了していない可能性が浮上。00101000110100100010011101000111101010000101000101111010101000100100100101101011110100110101101010111010101。アリスは確認を問う」
「お前が何を言いたいのかはさっぱりわからんが、何を言っているのかはわかるから!」
面倒なことになりそうなところを全力で回避した達也は溜め息を吐いて子猫を抱き直す。
「言語によるコミュニーションが可能であることを確認。アリスは改めて固有名称の開示を要請する」
「固有名称って……名前か。俺はえっと、上峰達也」
「第二対象の固有名称“えっと、上峰達也”で暫定登録」
「違う! 俺の名前は上峰達也! 何だこの会話は!」
テンプレな会話である。
「訂正要求認識、第二対象の固有名称を“上峰達也”に訂正、アリスは上峰達也の個体識別コードの開示を要請する」
「人間に個体識別コードなんてないぞ。あるとすれば保険証の番号とか運転免許証とか……」
「それでは他者識別は不可能」
他者と触れることのない世界から来たアリスにとって自分は自分の識別コードによって区別されるものであり、同時にネットワーク上の“誰か”もその個体固有の識別コードによって区別されるものであった。そもそも独自のネットワークに常時接続されて他の個体と常に繋がっている状態だったため、個という概念すら薄れていたのだ。
つまりアリスにとって個体識別コードを持たない意識体とは存在し得ないものであって――
「見ればわかるんだよ。|人《・》|間《・》|は《・》|な《・》」
「アリスは上峰達也をウィルスと判断し、駆逐行動を行う」
――自己及び自分のコミュニティたるマザーを侵す危険因子だった。
「へ?」
達也がアリスの言葉を正確に理解するまでの1秒に満たない極短時間の間に、アリスの唇は高速で言葉を紡いだ。
「パターン不明。ウィルス駆逐プログラムA0010からA1101までを同時展開。ウィルスプログラムへの攻撃行動を開始する」
「えっ、ちょ、待っ……!」
ギュイン!
脳の発した危険信号に反応して咄嗟に後ろに一歩下がった達也の右耳の辺りを正体不明の攻撃が通過する。
その殺気(のように思える何か)からコイツは危険だと判断した達也は初撃を躱したことに気付いたところで踵を返し、家に向かって全力で走り始めた。
「マジヤバい、アレはマジでヤバい! そもそも話が通じてそうで通じてない!」
自分でも何を叫んでいるのかわからないままにポケットからスマートフォンを取り出した達也は、すぐに電話帳から自宅の電話番号をコールする。
「早く出ろ、駄神駄神駄神……!」
「はい、もしもし――」
達也は走りながら祈るようにひたすら連呼する。既に通話が繋がっていることにも気付かずに。
「駄神駄神駄神駄神駄神駄神……!!!」
「駄神言うな! 貴方はそんな嫌がらせをするためにかけてきたんですか!?」
「お、出たか、駄神」
「今さら!? だから駄神言うな!」
「いいから早く来い駄神見習い俺が死ぬ前に頼むからっ!」
「そんな神誰が見習うか! ……って死ぬ?」
「異世界人が出やがったんだよ! しかも結構キてる奴が!」
「さっきの今でもう異世界人ですか? 運がいいですね」
「死にそうになってんのに運がいいわけあるかっ! いいから早く来い来て下さいお願いします来いやバカァァァァァァッ!!!」
一方的にそう叫んで通話を切ると、それをズボンの尻ポケットに捩じ込む――――キュルンッ!
「のわっ!」
直前に背後から聞こえた奇妙な音に咄嗟に上半身を屈めた瞬間、さっきまで達也の首があった辺りを何かが通過していき、しまいかけていたスマートフォンを取り落とした。
「あっ……」
ギュイィッ!
振り返りかけた瞬間、同様に襲ってきた何かをすんでのところで避けたために、スマートフォンを拾うこともできず逃げることしかできなかった。
「くそっ、後であの駄神に全部請求してやる……」
達也は何度も追手を撒くように道を曲がりながら逃げ、後は家までゆるやかなカーブを描く道なりのコース(約500メートル)というところまで差し掛かる――――その時だった。
「駆逐対象再発見、ウィルス自動追尾型|存在《データ》破壊式駆逐プログラムC0009Sを展開、アリスは攻撃を開始する」
頭上から聞こえた声に空を仰ぐと、地上から約15メートルほどの高さに翼もなく浮かび上がるアリスの姿がそこにあった。その手にあるのは、やはりまともに理解することができない何か。
存在定義様式そのものが違うために、この世界の住人である達也にはそれをまともに視認することすらできないが、強いて言えばアリスは対象を追尾するタイプのミサイルランチャー(のような形で顕現したウィルス破壊プログラム)を構えていた。
「|発射《アップ》」
やはり達也にはまともに認識できない轟音と共に放たれたC0009Sの弾頭は尚も逃げようとする達也の背中を真後ろから捉え――――炸裂した。
命中したわけではない。
命中したのであれば、少なからずダメージを受けるはずの達也がただ転んだだけで目をぱちぱち瞬かせているはずがなかった。
爆発の直接的原因になったのは、
「そっか、そっかー。見にくいだけであるみたいだねー。楽ちゃん、大納得」
他ならぬ第一の異世界人――――鳳楽だった。
ヒュンヒュンと手にした金属棒を軽く振り回した鳳楽はそのまま地面に着地し、空中で立っているかのごとく浮いているアリスを見上げる。
「第三対象発見」
「随分と面白ちゃんだね。あれは何処のどんな方?」
「自分のことをアリスって言ってるから多分それが名前なんだろうけど、わからない……ただほとんど話は通じないと思うぞ」
「面白ければそれでいいよ。それじゃアリス……私を、楽しませてねっ♪」
鳳楽の姿が不意に消滅する。
かと思えば、その姿は空中のアリスの目の前に出現していて、アリスの脇腹に回し蹴りを|極《き》めていた。
オーバースピードキック。常人には捉えられない速さで相手の間合いに踏み込み、その瞬歩の勢いを利用した蹴りを放つ技である。
鳳楽がこの状況下できうる限りの全力で打ち込んだため、その力はまともな人間相手なら胴体を引きちぎるほどの破壊力を秘めていた。
キュボッと一瞬音速をも超えた速度から生じる衝撃波の音がしたかと思うと、アリスの身体は瞬く間に地面に叩きつけられる。しかしアリスは悲鳴のひとつもあげることもなくむくりと身体を起こすと、鳳楽が達也の正面に着地した時にはもう立ち上がっていた。
「ウィルス駆逐プログラムQ008T及びT0016展開。システムコア保護シールド展開。ファイヤーウォールの有効確認。ネットワークから自己を隔離。状況分析から第三対象の敵対を確認。言語による対話を放棄し、アリスは自己防衛のための攻撃を開始する」
アリスの周囲の空気が熱を持ったように揺らめき、その背後の空間からまたしても“何か”が出現する。この世界の言葉で表現するなら艦載砲級の口径を持つ単装砲と地対地ミサイルの発射筒のようなものと表現できるのだが、まともに視認することもできない二人はそんなことを知る由もなかった。
「認識できないって厄介だね~」
「そんなこと言ってる場合か、おい。お前が攻撃したせいで対話放棄されたぞ、どうすんだ」
「別に楽ちゃん関係ないし~。大体達也を守る契約だったでしょ?」
「さっきの今でもう名前呼び捨てかよ。モテモテだな、俺」
異世界人というとんでもない枠にだが。
「じゃあたっちゃんにする?」
「甲子園なんぞ誰が行くかァ」
「まあまあそれは置いといてさ。あの面白ちゃんを潰しちゃえば結果オーライなんでしょ? 楽ちゃん|頭《あったま》いいー」
「その台詞を言う奴は大体アホの子って決まってるけど、今だけは確かに違いないな!
俺たちはああいうのを保護するために動いてッ……ってあぁ、順応してる!? 俺どんだけ流されやすいんだよ……」
「じゃあ潰しちゃダメってこと? それはぷんぷんがおーだね~。あの子耐久だけは高そうだから楽しめると思ったのにぃ」
にやりんと笑った鳳楽はくるっとその場で一回転すると金属棒を振りかぶり、背後に浮かぶ“何か”を操作するアリスに向かって駆けた。
「物理障壁型自己防衛プログラムT01S4展開」
ギャン!
アリスの正面に出現した分厚い金属板のようなものが出現し、振り下ろされた鳳楽の金属棒を弾く。
「あれ? これは普通に見えるね?」
能天気にそう言いつつキュッと靴底を鳴らして身を翻した途端不意に鳳楽の姿が消え、まるで瞬間移動でもしたかのようにアリスの背後に再び現れる。
「後ろ取ーった。どーん」
鳳楽の足払いでアリスの身体は後ろに倒れ込むように宙を舞い、その直後目にも止まらない速さで体勢を変えた鳳楽の打ち下ろしがその腹部を直撃。再びアリスは地面に強く叩きつけられた。
そして一拍遅れて下のアスファルトに大きな亀裂が走り、アリスの肉体が軋むような嫌な音を立てて動かなくなった。
「これでどうかな?」
「ちょ、鳳楽さん何してるんですか!?」
拳から力を抜きつつ鳳楽が立ち上がったと同時に背後から聞こえた声に達也が振り返ると、何故か息を切らせて走ってきたキクトの姿があった。
「遅いぞ、駄神」
「いい加減その呼び方やめなさい」
それだけ言うと俺を無視してアリスと鳳楽の元に駆け寄ろうとしたキクトは、アリスの頭上に浮かぶQ008TとT0016に気付いてぎょっとした表情を浮かべた。
「こ、これはまた大変なところから飛ばされてきたみたいですね……」
キクトは口元をヒクつかせながらそう言った。
「わかるのか?」
「これでも神世界の一人ですよ。(パシられてる間に)先輩方から色んな話を聞きましたし、世界の総合管理のしにくさでは群を抜いて有名ですから」
「むしろここにあるらしい私でも見えない危険物が見えてる方が楽ちゃんびっくりなんだけどね~」
「あはは……、それこそこれでも神世界の一人ですから。まあ、危険物と言っても、二人には関係ないはずですけど」
キクトがそう告げると同時に、アリスからの命令信号が途絶えて一定時間が経過したQ008TとT0016が消失する。
鳳楽はぴょこんとアリスを跨ぐように跳んで位置取りを変えると、キクトの隣で屈んでアリスの顔を覗きこむ。
「関係ないってのは?」
「この人と戦ってたのなら気付いたんじゃないですか? この人の出した武器(?)で負った傷なんてないんでしょう?」
「「へ?」」
達也と鳳楽は顔を見合わせて互いと自分の身体を確認するが、副次的に受けたかすり傷以外の怪我は見受けられなかった。
「そもそも攻撃対象の存在定義から違うんですよ。彼女たちの敵は、あくまでも|ウ《・》|ィ《・》|ル《・》|ス《・》|プ《・》|ロ《・》|グ《・》|ラ《・》|ム《・》ですから」
キクトが自分の知識を披露するようにそう言うが、ついさっき先輩からの受け売りであることは自爆もとい暴露済みである。
「じゃあこの子ってコンピュータ?」
「似たようなものですかね。詳しいことはこれと言って、むしろ今言ったことしか知らないんですけどね。僕が|見《・》|え《・》|る《・》のは、僕のいた神世界とは一部被る部分があるからですね。…………ぶっちゃけ僕には当たっちゃうのでこれ以上の戦闘行為は止して欲しいです」
「当たったらどうなんの~?」
聞きにくいことすらはっきり聞いてしまうのが鳳楽という人間だった。
「詳しくは知らないですけど、多分もろに消し飛びますね」
「コイツが仲間になれば、いざという時はそれでこの駄神を脅せるわけか……」
「ちょいそこォォォォッ! 何ぼそっと危ない思考漏らしてんですか!?」
「おっと、漏れた」
「ちょっとォォォォッ!?」
――などと周囲で騒いでいれば、外的要因による過負荷で一時的に喪失していた意識も覚醒するのが必然だった。
「ウィルス駆逐プログラムLAC09展開」
いつの間にか目を開けていたアリスの手の中に現れた槍状の何かが加速の段階を省略した最高速で達也の腹部を貫いた。
「……ッ!?」
一瞬心臓が跳ねるほど驚いた達也だったが、まったくと言っていいほど痛みを感じなかった違和感から、キクトの言っていた言葉の意味を体感する。
「LAC09の有効性が認められない。ウィルス駆逐プログラムIQ224展開」
棒状の何かが横に薙ぎ払うように空気を裂き、キクトだけがその一撃に弾き飛ばされて地面を転がった。
「大丈夫かー、駄神ー」
「ゲホゲホッ! 自分たちが当たらないからって何余裕ぶってんですか!?」
「で、この子どうやって止めるの?」
「そっちも余裕ぶってますね!?」
キクトが槍状の何かや棒状の何かの自動追尾の猛攻から全力で逃げるさまを静観しながら、達也と鳳楽はアリスを止める方法に思考を巡らせる。
しかし、アリス自体はキクトを達也のように敵視してはいないからか、LAC09とIQ224を放置したまま達也と鳳楽の目の前にぼうっとした表情で突っ立っている。
本人は今までに得ていた情報から有効なウィルス駆逐プログラムを検索していたのだが、傍から見ているだけの二人がそこまでのことを知る由もない。
「こっちとしては敵扱いされるようなことしたつもりはないんだけどな……」
「何か言ったの?」
「いや、個体識別コードを教えろとか言われたから、人間にそんなものないって言っただけだよ」
「私のGCORA77みたいなものかな?」
「あるのかよ!」
「識別コードというか、プロダクトコードみたいなものだと思うんだけどね。興味ないからどうでもいいけど~」
踊るようにその場でくるりと回る鳳楽。その様子には相変わらず緊張感の欠片もない。
アリスはそんな鳳楽に反応した。
「個体識別コードを認証。第三対象の固有名称を問う」
「え? 楽ちゃんは鳳楽だよ~」
「固有名称“鳳楽”、個体識別コードGCORA77で登録。アリスは固有名称アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。“以後よろしくお願いします”」
登録された定型文を口にするようにそう言ったアリスは身体の動きをピタリと止めた。
「あれ? これどうにかなったパターン?」
鳳楽は振り返って見てみるが、キクトを攻撃するLAC09とIQ224の動きは止まっていない。
「ねー、アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アレ止めれる?」
「可能」
途端、キクトを攻撃していた何かの動きが急停止し、瞬く間にアリスの元に戻って消失した。
「大丈夫か、駄神」
「ぜぇ……ぜぇ……。それ定着させるのやめてくれませんか……」
「大丈夫そうだな」
「死ぬかと思いましたけどね!?」
キクトは死にそうなほどの疲弊で倒れているが、正直を言えば日頃の運動不足が祟っているのは言うまでもない。
***
そして、五分後――。
「アリスは現状を理解した」
驚くことにアリスは、唯一まともに話の通じる鳳楽による脱線だらけの説明(しかもたったの五分)だけで全てを把握してみせた。
そもそも明確な事象については理解の早いコンピュータが人の話すような超高級言語も理解するようになればこの世に理解できないものなどそうそうあるはずもないのだが。
「もしかしてこれ、毎回似たような説明させられるのか? 人増える度に」
「どうだろうね? あ、私はもうしないよ? 面倒だし?」
アリスが達也やキクトの話も聞くようになった途端、鳳楽は面倒事を投げ出すようにそう言った。
その時、アリスはきょろきょろと周囲を見回し始める。
「どうかしたのか?」
「アリスは上峰達也に保護任務の内容について、自由行動を制限されるものであるかどうかを問う」
「いや、そんなことはないけど……。っていうか任務って言われると何かもう逃げられそうにないな……」
「理解した。アリスは情報収集を再開、“にゃー”の捜索を開始する」
アリスはそう言うと、何の前兆もなくふわりと浮かび上がった。
「え!? ちょっと、さっきの今で勝手な行動をされるのは神様的に困るんですけど!?」
キクトが何やら叫ぶ中、アリスは三人の元を離れて行ってしまう。
「鳳楽さん、追ってください!」
「えー、なんで私が?」
「僕ら飛べませんから! 少なくとも家の場所だけでも伝えないとどうしようもないですから!」
「また会える日まで楽しみにしてよーよ」
「保護管理の意味ないだろーがーッ!?」
言葉遣いすら崩れたキクトの叫び声が街に響いた。
==========↑原稿====
サブタイトルはまだ考え中です。
今のところ誤字脱字は見つかっていません。
引き続き見直しをしてから投稿します。
以下コメント
・にゃーは天使(確信)←
すみません
鳳楽は振り返って見てみるが、キクトを攻撃するLAC09とIQ224の動きは止まっていない。
「ねー、アリス=|Μ《ミュー》=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アレ止めれる?」
「可能」
途端、キクトを攻撃していた何かの動きが急停止し、瞬く間にアリスの元に戻って消失した。
の「可能」を「|肯定《ポジティブ》」に変更してください(--;直すの忘れてました
「というか、鳳楽って人造人間? ……なのに食べるんだな」
↓
「というか、鳳楽って確か人造人間、だったよな? ……なのに食べるんだな」
という風に直してもいいでしょうか。
以上の変更点を編集して、6月22日22時に予約投稿しました。
サブタイトルは『個体識別コードRDG79J23M8JD、その名も』
いろいろと変更お願いします。
藍鈴鈴蘭(あいいろ・すずらん)
↓
藍神鈴蘭(あいがみ・すずらん)
紹介文?の全体的な変更
完璧超人。
頭が良く、運動神経が良く、顔 が良く、スタイルが良く、性格 が良い人間を指す言葉。
それが藍神鈴蘭という少女の評 価でもあった。
『藍神さん、またテスト一位 だってよ』
小、中と定期試験は常に満点で 不動の一位。
『新記録 藍神鈴蘭』
何かの大会に出れば、それまで の記録を塗り替えてトップに立てた。
『本日紹介するのは未来の超絶 美女、藍神鈴蘭ちゃんです!』
街を歩けば男女問わず目を引くルックス。おかげで、アイ ドルや女優に毎日スカウトされ、あげくの果てに番組にまで 取り上げられた。
『藍神さんって誰にでも優しい よね!』
自分は特別何かをしているわけ でもないのに、誰かに関わった だけで『優しい』と言われた。
ここまでのことを彼女は息を吐 くように簡単にできた。
努力せず、苦悩せず、葛藤せず にできた。当然のようにでき た。そして、それが『藍神鈴蘭 』という少女だった。
しかし、いやだからこそとでも 言うべきか。
藍神鈴蘭は高層ビルの屋上から 飛び降りようとしていた。
「…………高いなぁ」
コンクリート製の縁から下に視 線をやる。 高い。 道を通る人や車がミニチュアの ように感じられるほどだ。
一通り見終えると、靴を脱いで綺麗に揃える。その上に五分で書き終えた遺書も置く。
そして縁の上に立った。
後はここから一歩踏み出すだけだ。
彼女が自殺を決意したのは至極簡単な理由だった。
飽きたから。この世界に。
例えばの話、買ったばかりの ゲームを始めたとしよう。プロローグも終わり、さてここから だという時に、いきなりゲーム 最強アイテムが手に入ったらど うだろうか? レベルなんて気にせずに、装備 を変える必要もなく、ただただ 目の前の敵を一撃で倒していくだけ。 それはもうゲームとは呼べないだろう。
鈴蘭にとって、『人生』とはくだらない単純作業と化しているのだ。
何をしても、どんなことをして も確実にプラスの方向に物事が動いてしまうから。
そんなのはつまらない。
だから、死ぬ。
さっきの例えでいうならば、単純作業のゲームを捨てて、別の ゲームを始めるといったところか。
「…………生まれ変わりってものが あるなら、だけど」
恐らく、というか確実に周囲の 人間は『何を馬鹿なことを』と言うだろう。『そんなに優れたことができる のに』と。
しかし、彼らは知らないのだ。 才能が無い者が『無い』ことに絶望するように、才能が有る者 も『有る』がための闇が存在することを。
「さて」
ふぅ、と一度深呼吸をする。そ して、鈴蘭は縁から身を投げ た。
予想通り、身体を強い風が撫で 回し、思わず目を閉じる。そして即座に開けた。 というより開いた。腹の中で暴 力的な熱さが暴れ出したからだ。
事前に計算した落下か ら地面までの浮遊時間はほんの 数秒だ。ほんの数秒我慢すれば、鈴蘭の意識ごと消えてなくなる。
そのはずなのだが。
「…………?」
長い。
コンクリに頭からぶち当たって、イロイロブチマケてもいいはずなのに、その衝撃がやってこない。
そもそも眼下の景色はコンク リートではなく、公園 の砂場に変化している。
「.........................!?」
反射的に、昔"軽く齧った武道"で 習った『着地したときの身体にかかる衝撃を無くす』方法で、軽やかに砂場に着陸する鈴蘭。
「え?」
そして、目の前には遊びに来て いるであろう親子が呆然としている姿 が。
「…………こんにちは、空から落ち てくる系ヒロインです」
藍神鈴蘭は内心パニックになりながら思った。
ここはどこ?
今更ですが、お願いします
変更お願いします(--;
======↓本文序↓======
近況報告――――居候が一人から二人に増えた。
以上。
あれから、鳳楽が「契約の内だから」と家に上がり込み、挙句にはうちの冷蔵庫にある食材をそのまま食べようとしたので慌てて止めた。三人分の食材のためのお金はキクトが(どこから取り出したかわからない)自分のお金で払ってくれた。
まあ、食事代が浮くのはありがたいが。
「ところで、そのお金は何処から?」
「神世界で日本円に似せて作られた紙幣や硬貨を、上司から大量に支給されてまして」
「……ニセ札?」
「いえいえ、ちゃんと本物ですよ。どのように調べられても本物と認識されるようにできてますよ」
「なにそれ怖い」
すいません長らく放置してしまってすっかり忘れてました!!
作者の順番をだれか書いてくださいお願いします!
それと唄種さんお疲れ様です。零くんもお疲れ様
それとも、煌太さんが巻き込まれるのを一話丸ごと書いた方がいいのでしょうか?
カナチ保護と一緒の回にまとめたら混乱を招くような気が....
あ.....そうだ、短編通りだとショタあるいはロリキャラといるということになりますよね....←ど忘れ
カナチさんがショタならよし、ショタではないのなら煌太さんの登場は先延ばしですね。←←
カナチは18歳ですけど150cmならショタでしょうか....?←←
他にロリ・ショタキャラがいるとしたら....レンさんあるいは臨さんでしょうか.....?
多分、ショタ判定します。年聞いて驚くとは思いますが((((
もしアレならうちのサラリーマンの部屋に異世界人泊めておいても良いですよ?本人も歓迎するでしょうし((((((
――上峰達がアリスと遭遇する数日前――
「ん? ……にんげ…………ん?」
宵星煌太は、地面の上で倒れている人物を見て、驚かざるを得なかった。
まず、服装が変わっている。
大抵のホームレスすらTシャツとジーンズを着ているこのご時世、布を纏っただけの質素な服装はそうそう見ない。
どこかの国の古代から伝わる族の服だろうか。
短いが杖も握っているため、その可能性が高いと宵星は見た。
顔は、見たところ少年の様だ。
歳は中学生くらいだろうか、中性的な顔立ちをしている。
何より目を引くのは、その白い髪だ。
アルビノというやつなのだろうか。
それなら日本人の可能性もあるだろうが、やはり服装が日本人にしてはおかしい。
問題は、何故アスファルトなんかの上で倒れているのか。
そして何者なのか。
「うっ、つぅ……ここは……?」
少年が起きた。
それを見て宵星はハッとした。
少年が倒れている位置、それは道路の上だ。
車が来なかったから良かったものの、今来たら大変なことになる。
道路
そこ
にいたら危ない、と声をかけようと、宵星は走った。
少年はアスファルトをペタペタ触って何やら首を傾げていたが、宵星に気づく様子はない。
しかし、背後から近づくトラックには気づいた様だ。
「おい、危ないぞ!早くそこからどくんだ!」
これじゃあ走っても間に合うかわからない。
不安から少し速度が弱まったが、すぐに全速力に戻して宵星は走った。
しかし、少年が自分から動くことはない。
(もう駄目だ……!)
急ブレーキがかかっても、その慣性で少年の方向にトラックが吸い寄せられていた。
やはり、とても間に合いそうにない。
――ブォンッ!
突如、少年の姿が揺れた。
「あっぶねえええ!」
声のする方向を見ると、真横だった。
少年がこちらの歩道に飛んでいたのだ。
「え?」
飛んだこと自体は不思議じゃない。
生存本能が働いたのだろう。
ただ、あの距離で間に合うことはほぼ不可能だった。
少なくとも、それなりに運動してる宵星でもあれは無理だと確信していた。
「なんだったんだ今の!すっげえ速ぇええ!」
目をキラキラさせながら急ブレーキでやっと止まったトラックを見つめる少年。
数秒前に命の危険に晒されていた者の表情ではない。
「お、おい!大丈夫か!」
トラックの運転手であろう男性が降りてきて、声をかけてきた。
その視線の先には少年と、宵星がいる。
「け、怪我はないか?一応救急車呼んでおくぞ」
悪いのは明らかに道路の真ん中で座っていた少年の方なのに、随分とお人良しな運転手なのだろう。
その目に怒りはなく、純粋に心配だということが伝わった。
「なあ!今のなんだ!?馬車か!?でも馬がいないな、新種の魔物か!?」
「はあ?」
宵星は運転手の奇声と混乱に納得できた。
とても引き殺されそうになった人のものとは思えない、満面の笑みで引きそうになった自分に尋ねてくるからだ。
「……車を知らないのか?」
宵星が、気づいた様に呟いた。
それならその態度に納得……はできない。
死にかけたのだから。
だが、それほどの田舎なら服装も納得できる……かもしれない。
やはりおかしいことばかりの子供だ。
だが、何故か、宵星は咄嗟に対応ができた。
「あ、すいません、救急車は必要ないです、見た通りピンピンしてるので、この子」
「そ、そうか……俺もトラックも中に荷物はないし、無事だから何の問題もねぇな……よし、帰るか。すまねぇな坊主、怖がって……はなさそうだが」
「?」
状況が飲みこめずにいるのか、首を傾げる少年。
その後去っていくトラックを見送り、宵星は行動に出た。
宵星は事情を聞いてみようと決意した。
理由は単純な好奇心ではあるが、放ってはおけないというのもある。
「君、どこから来たんだい?」
「どこって……あ、ここどこだ?さっきまで森にいたのに……確か……銀色の狐!あいつか!あいつ、幻影魔法使えるのか!」
話が明らかに噛み合ってない。
「も、森?この辺りに森なんてないぞ」
「うるさい幻、俺をあの狐の元に返せ!早くあれを売って儲けるんだよ俺は!」
……噛み合うどころかこっちの話を聞いてくれない。
「俺は幻じゃないし、この辺りで狐なんて出ない。 一旦落ち着いてくれ」
「幻じゃ、ないのか……?」
案外あっさりと信じてくれた。
「じゃあ、ここはどこなんだ?」
「ここは紅陽町だよ」
「クレナイチョウ、聞いたことないな……国の名前は?」
「日本」
「全然知らない……」
「……え?」
流石の宵星もこれはおかしいと気づいた。
今いる国の名前すら知らないのではただの田舎者では済まないからだ。
「……ひとまず、うちに来ないか?」
「……うん」
本人はまだ知らないが、異世界人というとんでもない迷子を引き取った宵星であった。
冒頭にしては長い気がするので、これをこのまま(修正した後ですが)投稿し、時間を現在に戻したのを冒頭として書いて金薙さんに渡すという案があるのですが、どうでしょうか?
一応これを冒頭として考えカナチさんに送りました。
スカイプでも少し話し合ったのですが、上峰達はアリスのにゃー探索に着いていってるところでカナチ達と遭遇することになりそうです。
プロローグで主人公は例外だけど、神様パワーで普通の人が干渉すると忘却するーっていう設定があったけど
宵星の場合それ、どうなんの?
原稿届きました!
――上峰達がアリスと遭遇する数日前――
「ん? ……にんげ…………ん?」
宵星煌太は、地面の上で倒れている人物を見て、驚かざるを得なかった。
まず、服装が変わっている。
大抵のホームレスすらTシャツとジーンズを着ているこのご時世、布を纏っただけの質素な服装はそうそう見ない。
どこかの国の古代から伝わる族の服だろうか。
短いが杖も握っているため、その可能性が高いと宵星は見た。
顔は、見たところ少年の様だ。
歳は中学生くらいだろうか、中性的な顔立ちをしている。
何より目を引くのは、その白い髪だ。
アルビノというやつなのだろうか。
それなら日本人の可能性もあるだろうが、やはり服装が日本人にしてはおかしい。
問題は、何故アスファルトなんかの上で倒れているのか。
そして何者なのか。
「うっ、つぅ……ここは……?」
少年が起きた。
それを見て宵星はハッとした。
少年が倒れている位置、それは道路の上だ。
車が来なかったから良かったものの、今来たら大変なことになる。
道路
そこ
にいたら危ない、と声をかけようと、宵星は走った。
少年はアスファルトをペタペタ触って何やら首を傾げていたが、宵星に気づく様子はない。
しかし、背後から近づくトラックには気づいた様だ。
「おい、危ないぞ!早くそこからどくんだ!」
これじゃあ走っても間に合うかわからない。
不安から少し速度が弱まったが、すぐに全速力に戻して宵星は走った。
しかし、少年が自分から動くことはない。
(もう駄目だ……!)
急ブレーキがかかっても、その慣性で少年の方向にトラックが吸い寄せられていた。
やはり、とても間に合いそうにない。
――ブォンッ!
突如、少年の姿が揺れた。
「あっぶねえええ!」
声のする方向を見ると、真横だった。
少年がこちらの歩道に飛んでいたのだ。
「え?」
飛んだこと自体は不思議じゃない。
生存本能が働いたのだろう。
ただ、あの距離で間に合うことはほぼ不可能だった。
少なくとも、それなりに運動してる宵星でもあれは無理だと確信していた。
「なんだったんだ今の!すっげえ速ぇええ!」
目をキラキラさせながら急ブレーキでやっと止まったトラックを見つめる少年。
数秒前に命の危険に晒されていた者の表情ではない。
「お、おい!大丈夫か!」
トラックの運転手であろう男性が降りてきて、声をかけてきた。
その視線の先には少年と、宵星がいる。
「け、怪我はないか?一応救急車呼んでおくぞ」
悪いのは明らかに道路の真ん中で座っていた少年の方なのに、随分とお人良しな運転手なのだろう。
その目に怒りはなく、純粋に心配だということが伝わった。
「なあ!今のなんだ!?馬車か!?でも馬がいないな、新種の魔物か!?」
「はあ?」
宵星は運転手の奇声と混乱に納得できた。
とても引き殺されそうになった人のものとは思えない、満面の笑みで引きそうになった自分に尋ねてくるからだ。
「……車を知らないのか?」
宵星が、気づいた様に呟いた。
それならその態度に納得……はできない。
死にかけたのだから。
だが、それほどの田舎なら服装も納得できる……かもしれない。
やはりおかしいことばかりの子供だ。
だが、何故か、宵星は咄嗟に対応ができた。
「あ、すいません、救急車は必要ないです、見た通りピンピンしてるので、この子」
「そ、そうか……俺もトラックも中に荷物はないし、無事だから何の問題もねぇな……よし、帰るか。すまねぇな坊主、怖がって……はなさそうだが」
「?」
状況が飲みこめずにいるのか、首を傾げる少年。
その後去っていくトラックを見送り、宵星は行動に出た。
宵星は事情を聞いてみようと決意した。
理由は単純な好奇心ではあるが、放ってはおけないというのもある。
「君、どこから来たんだい?」
「どこって……あ、ここどこだ?さっきまで森にいたのに……確か……銀色の狐!あいつか!あいつ、幻影魔法使えるのか!」
話が明らかに噛み合ってない。
「も、森?この辺りに森なんてないぞ」
「うるさい幻、俺をあの狐の元に返せ!早くあれを売って儲けるんだよ俺は!」
……噛み合うどころかこっちの話を聞いてくれない。
「俺は幻じゃないし、この辺りで狐なんて出ない。 一旦落ち着いてくれ」
「幻じゃ、ないのか……?」
案外あっさりと信じてくれた。
「じゃあ、ここはどこなんだ?」
「ここは紅陽町だよ」
「クレナイチョウ、聞いたことないな……国の名前は?」
「日本」
「全然知らない……」
「……え?」
流石の宵星もこれはおかしいと気づいた。
今いる国の名前すら知らないのではただの田舎者では済まないからだ。
「……ひとまず、うちに来ないか?」
「……うん」
本人はまだ知らないが、異世界人というとんでもない迷子を引き取った宵星であった。
――数日後のとある公園――
「待て待て―!」
そこには自分の住んでいた世界と違うという認識をしながらも無邪気に猫を追いかけまわしている少年――カナチの姿があった。
「やっぱりすばしっこいな。だけど速さなら負けないぞ!」
トラック(本人は何かの魔物と勘違いしているが)に轢かれそうになった時に使った加速魔法を使い猫の逃げ道を封じたカナチは容赦なく抱き上げた。
「全くこっちに来てから魔力が回復してないのと同じくらいなのに魔法を使わせやがって、このこの」
言葉では叱っているようだが、実際には撫でまわしたり、モフモフしたりと怒っている様子は全くない。
「煌太もいないから暇なんだよなー。と、なんだあれ?」
|猫(モフモフ)を存分に楽しんでいるとこちらに飛んでくる人の姿を発見して佇んでいると目の前で急停止した。
「″にゃー″を発見。保護を開始する」
「ん?お姉さん誰?」
とりあえず猫を渡すカナチ。それを受け取るアリス。
「アリスは固有名称アリス=|M(ミュー)=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アリスは固有名称の開示を要請する」
「固有名称?名前ってことか?」
「|肯定(ポジティブ)」
「なんかよく分かんないけど、僕はカナチって言うんだ」
「対象の固有名称を″カナチ″で登録。続いて個体識別コードの開示を要請する」
「個体識別コード?んなもん無いぞ」
「アリスは″カナチ″を″上峰達也″と同じであると仮定」
「他にも居たのか」
「|肯定(ポジティブ)。対象までの距離200m。近づいてきている」
「やっと見つけたー。もうアリスったら自分の状況分かってるの?」
「理解不能。説明を要求する」
「つーまーり。私たちは今あのキクトっていう神様のところにいないといけない訳だよ」
「それなら|肯定(ポジティブ)。アリスは帰還場所として″上峰達也″の家をマークしてある」
「それならいいんだけどー?で、この子何?」
「それなら僕が説明できますよ。その子も異世界人です」
「あ、キクトお疲れ―」
「ん?何が起こってるんだ?」
「つまりですね。あなたは異世界からこの紅陽町に飛ばされたんですよ」
「ふーん。で、あんたらは何者?」
「アリスは先ほど名乗った」
「わたしは鳳楽ちゃん。なーんの変哲もない一般人だよー」
「嘘を言わないでください!あなたのような一般人はいません!僕はキクトという神様です」
「僕の住んでるところにあんたみたいな神様はいなかったと思うぞ」
「へぇ、神というのを疑わないんだね」
「ん?一流の召喚士で協会にいる人間なら普通に召喚してたぞ?」
「僕は少し違うんですよね。それで君の名前は?」
「僕はカナチっていうんだ。ここが異世界とするならギイルって世界に住んでいたぞ」
「ギイルですか」
「それってどんなとこー?」
「簡単に言えば剣と魔法の世界ですね」
「ここにいたのか。やっと見つけたぞ」
「おや、割と早かったですね達也さん」
早いの言葉に少し反応するカナチ。
「お前らがどっかに行くから迷っちまったじゃねぇか。それで、そいつもか?」
「はい。そのようですね」
「連れていかないといけないのか?」
「そうなりますね」
「連れて行くって?僕は煌太の所にいるんだけど」
「誰ですか?」
「んーと、営業マンとか言う宵星煌太っていう人のところだ」
「完璧に地球人ですね」
「ん?だったらもうそいつに任せちゃえばいいじゃんか」
「何もわかってませんね?あなたは例外ですがその煌太という人は一般人です。ですのでご都合主義的な神様の力で忘れるはずです」
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたな」
「まぁ、強制的にこちらに巻き込むことにしますけど」
「おいこら駄神」
「いや、だってカナチ君を一時的とはいえ救って養っているのですよ?もう普通ではいられませんよ」
「ふ~ん、そんなもんなんだ~」
「あなた達は気楽でいいですね。とりあえずカナチ君」
「なに?」
「友人が出来たから数日後に遊ぶとでも言って、その宵星さんを連れてきてくれませんか?」
「それぐらいなら余裕だぞ!」
「それで?お前は何が出来るんだ?」
「魔法を使えるぞ!見せてやる!」
有無を言わせずに目を閉じて集中し始めるカナチ。
「行け!<スプリット>!」
杖から飛び出した白い弾丸状のエネルギーがポイ捨てされていた空き缶に命中する。
缶は凹みながら吹き飛び、近くのゴミ箱に入っていった。
「どんなもんだ!」
「何今の?」
「無属性魔法<スプリット>ですね。あんなに速いものでしたっけ?」
「僕は速い物が好きだからな!」
そろそろ時間という事でカナチは去っていき、一旦解散という事になった。
ひとまず、編集した方が良いという点を上げてってください
・地の文を増やす
・上峰がカナチに「なにができるのか」と聞いた理由を追加
・というかこれ続くとしたら他のトリップ者捕獲と一緒になるのでは....
パート2は誰が書きますか?
順番通りだと他のトリップ者捕獲とごっちゃになるので....
>勇輝
返信遅れてすみません。
そうですね、SSを投稿した順番ですと勇輝さんが次ですが、その前に閑話を一つ投下しようと思ってます。
金薙さんより、改訂版を受け取りました。
――上峰達がアリスと遭遇する数日前――
「ん? ……にんげ…………ん?」
宵星煌太は、地面の上で倒れている人物を見て、驚かざるを得なかった。
まず、服装が変わっている。
大抵のホームレスすらTシャツとジーンズを着ているこのご時世、布を纏っただけの質素な服装はそうそう見ない。
どこかの国の古代から伝わる族の服だろうか。
短いが杖も握っているため、その可能性が高いと宵星は見た。
顔は、見たところ少年の様だ。
歳は中学生くらいだろうか、中性的な顔立ちをしている。
何より目を引くのは、その白い髪だ。
アルビノというやつなのだろうか。
それなら日本人の可能性もあるだろうが、やはり服装が日本人にしてはおかしい。
問題は、何故アスファルトなんかの上で倒れているのか。
そして何者なのか。
「うっ、つぅ……ここは……?」
少年が起きた。
それを見て宵星はハッとした。
少年が倒れている位置、それは道路の上だ。
車が来なかったから良かったものの、今来たら大変なことになる。
道路
そこ
にいたら危ない、と声をかけようと、宵星は走った。
少年はアスファルトをペタペタ触って何やら首を傾げていたが、宵星に気づく様子はない。
しかし、背後から近づくトラックには気づいた様だ。
「おい、危ないぞ!早くそこからどくんだ!」
これじゃあ走っても間に合うかわからない。
不安から少し速度が弱まったが、すぐに全速力に戻して宵星は走った。
しかし、少年が自分から動くことはない。
(もう駄目だ……!)
急ブレーキがかかっても、その慣性で少年の方向にトラックが吸い寄せられていた。
やはり、とても間に合いそうにない。
――ブォンッ!
突如、少年の姿が揺れた。
「あっぶねえええ!」
声のする方向を見ると、真横だった。
少年がこちらの歩道に飛んでいたのだ。
「え?」
飛んだこと自体は不思議じゃない。
生存本能が働いたのだろう。
ただ、あの距離で間に合うことはほぼ不可能だった。
少なくとも、それなりに運動してる宵星でもあれは無理だと確信していた。
「なんだったんだ今の!すっげえ速ぇええ!」
目をキラキラさせながら急ブレーキでやっと止まったトラックを見つめる少年。
数秒前に命の危険に晒されていた者の表情ではない。
「お、おい!大丈夫か!」
トラックの運転手であろう男性が降りてきて、声をかけてきた。
その視線の先には少年と、宵星がいる。
「け、怪我はないか?一応救急車呼んでおくぞ」
悪いのは明らかに道路の真ん中で座っていた少年の方なのに、随分とお人良しな運転手なのだろう。
その目に怒りはなく、純粋に心配だということが伝わった。
「なあ!今のなんだ!?馬車か!?でも馬がいないな、新種の魔物か!?」
「はあ?」
宵星は運転手の奇声と混乱に納得できた。
とても引き殺されそうになった人のものとは思えない、満面の笑みで引きそうになった自分に尋ねてくるからだ。
「……車を知らないのか?」
宵星が、気づいた様に呟いた。
それならその態度に納得……はできない。
死にかけたのだから。
だが、それほどの田舎なら服装も納得できる……かもしれない。
やはりおかしいことばかりの子供だ。
だが、何故か、宵星は咄嗟に対応ができた。
「あ、すいません、救急車は必要ないです、見た通りピンピンしてるので、この子」
「そ、そうか……俺もトラックも中に荷物はないし、無事だから何の問題もねぇな……よし、帰るか。すまねぇな坊主、怖がって……はなさそうだが」
「?」
状況が飲みこめずにいるのか、首を傾げる少年。
その後去っていくトラックを見送り、宵星は行動に出た。
宵星は事情を聞いてみようと決意した。
理由は単純な好奇心ではあるが、放ってはおけないというのもある。
「君、どこから来たんだい?」
「どこって……あ、ここどこだ?さっきまで森にいたのに……確か……銀色の狐!あいつか!あいつ、幻影魔法使えるのか!」
話が明らかに噛み合ってない。
「も、森?この辺りに森なんてないぞ」
「うるさい幻、俺をあの狐の元に返せ!早くあれを売って儲けるんだよ俺は!」
……噛み合うどころかこっちの話を聞いてくれない。
「俺は幻じゃないし、この辺りで狐なんて出ない。 一旦落ち着いてくれ」
「幻じゃ、ないのか……?」
案外あっさりと信じてくれた。
「じゃあ、ここはどこなんだ?」
「ここは紅陽町だよ」
「クレナイチョウ、聞いたことないな……国の名前は?」
「日本」
「全然知らない……」
「……え?」
流石の宵星もこれはおかしいと気づいた。
今いる国の名前すら知らないのではただの田舎者では済まないからだ。
「……ひとまず、うちに来ないか?」
「……うん」
本人はまだ知らないが、異世界人というとんでもない迷子を引き取った宵星であった。
――数日後のとある公園――
「待て待て―!」
そこには自分の住んでいた世界と違うという認識をしながらも無邪気に猫を追いかけまわしている少年――カナチの姿があった。
「やっぱりすばしっこいな。だけど速さなら負けないぞ!」
トラック(本人は何かの魔物と勘違いしているが)に轢かれそうになった時に使った加速魔法を使い猫の逃げ道を封じたカナチは容赦なく抱き上げた。
「全くこっちに来てから魔力が回復してないのと同じくらいなのに魔法を使わせやがって、このこの」
言葉では叱っているようだが、実際には撫でまわしたり、モフモフしたりと怒っている様子は全くない。
「煌太もいないから暇なんだよなー。と、なんだあれ?」
|猫(モフモフ)を存分に楽しんでいるとこちらに飛んでくる人の姿を発見して眺めていると目の前で急停止した。
「″にゃー″を発見。保護を開始する」
「ん?お姉さん誰?」
「アリスは固有名称アリス=|M(ミュー)=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アリスは固有名称の開示を要請する」
「固有名称?名前ってことか?」
「|肯定(ポジティブ)」
「なんかよく分かんないけど、僕はカナチって言うんだ」
「対象の固有名称を″カナチ″で登録。続いて個体識別コードの開示を要請する」
「個体識別コード?んなもん無いぞ」
「アリスは″カナチ″を″上峰達也″と同じであると仮定」
「他にも居たのか」
「|肯定(ポジティブ)。対象までの距離200m。近づいてきている」
アリスの指差した先を見るとこちらに向かってくる姿がいくつか見える。先頭はどうやら鳳楽のようだ。
「やっと見つけたー。もうアリスったら自分の状況分かってるの?」
「理解不能。説明を要求する」
「つーまーり。私たちは今あのキクトっていう神様のところにいないといけない訳だよ」
「それなら|肯定(ポジティブ)。アリスは帰還場所として″上峰達也″の家をマークしてある」
「それならいいんだけどー?で、この子何?」
「それなら僕が説明できますよ。その子も異世界人です」
「あ、キクトお疲れ―」
いきなり多くの人に囲まれて自分の今の状況が上手く掴めていないのか疑問符を頭の上に浮かべる。
「ん?何が起こってるんだ?」
「えぇっとですね。本来はその猫を探索していたんですが、偶然にもあなたを見つけたんですよ。それも異世界からの転移者を」
「ふーん。で、あんたらは何者?」
異世界からの転移というワードを聞いても、反応が薄すぎる。本当に話を理解しているのか気になるが、今ここで説明しても時間がかかるということで自己紹介に移る事にしたキクトたち。
「アリスは先ほど名乗った」
「わたしは鳳楽ちゃん。なーんの変哲もない一般人だよー」
「嘘を言わないでください!あなたのような一般人はいません!僕はキクトという神様です」
「僕の住んでるところにあんたみたいな神様はいなかったと思うぞ」
「へぇ、神というのを疑わないんだね」
「ん?一流の召喚士で協会にいる人間なら普通に召喚してたぞ?」
「僕は少し違うんですよね。それで君の名前は?」
「僕はカナチっていうんだ。ここが異世界ならギイルって世界に住んでいたぞ」
「ギイルですか」
「それってどんなとこー?」
「簡単に言えば剣と魔法の世界ですね」
「ここにいたのか。やっと見つけたぞ」
「おや、割と早かったですね達也さん」
ここでようやく合流した達也。余談だがカナチは早いの言葉に少し反応した。
「あんたなんて言う名前なんだ?あ、僕はカナチな」
「俺は上峰達也っていうんだが、こいつもか?それとお前ら速すぎ迷ったじゃないか」
「はい。異世界人ですね」
「連れていかないといけないのか?」
「そうなりますね」
「連れて行くって?僕は煌太の所にいるんだけど」
「誰ですか?」
「んーと、営業マンとか言う宵星煌太っていう人のところだ」
「完璧に地球人ですね」
「ん?だったらもうそいつに任せちゃえばいいじゃんか」
「何もわかってませんね?あなたは例外ですがその煌太という人は一般人です。ですのでご都合主義的な神様の力で忘れるはずです」
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたな」
「まぁ、強制的にこちらに巻き込むことにしますけど」
「おいこら駄神」
「いや、だってカナチ君を一時的とはいえ救って養っているのですよ?もう普通ではいられませんよ」
「ふ~ん、そんなもんなんだ~」
「それで、今その人はどこにいるんですか?」
「煌太だったら、そこにいるぞ?」
「え!?」
慌てて後ろを振り向くと、そこにはなにやら怪しい者を見る目つきでケータイを構える煌太の姿があった。
「あんたらは、何してんだ?」
「え、えぇっとですねー」
「こいつらはなんか神とか言ってたぞ」
何と言おうか考えていたところに特大級の爆弾が撃ち込まれた。
「ほぉ、その神様とやらがなんでこんなところに?」
問いかけは優しく聞こえるが、目は笑っておらず手に持っているケータイには110がすでに打ち込まれていた。
「ち、違うんです!いえ、実態的には違いませんが、この子に話しかけているのは全然別の事なんですぅぅぅ!」
「言い訳を聞こうじゃないか」
顔に笑みを張り付ける事すら止めた煌太が詰め寄る
「それはですね、カナチ君が異世界人だから、ではなくてその抱きかかえた猫がうちの猫なんですよ!」
「待て、今異世界人といったか?」
「え?あ、しまったぁぁぁぁ!!」
「落ち着け駄神」
「駄神言わないでくださいよ!」
「もしかしてカナチの不思議な力について何か知っているのか?」
「あぁ!もう何も聞かないで、って不思議な力?」
「妙に加速したり、変な物体を出してそれをぶつけたりとか。そんな感じの力だ」
「それは知りませんが、まぁ何か使えるというくらいは分かります」
話が妙な方向に飛んだという事を考えつつ状況を見守る達也。アリスと鳳楽はすでに猫と遊び始めている。
話の流れに追いついていけずにポカーンとなっているカナチに声をかけるキクト
「それで?カナチ君は何が出来るのです?」
「えっ、あ!魔法を使えるぞ!見せてやる!」
周囲の反応を見ないで、杖を前に構え、目を閉じて集中し始めるカナチ。
「行け!<スプリット>!」
杖から飛び出した白い弾丸状のエネルギーがポイ捨てされていた空き缶に命中する。
缶は凹みながら吹き飛び、近くのゴミ箱に入っていった。
速度としてはプロ野球選手の投げるボール並みである。
「どんなもんだ!」
「何今の?」
「無属性魔法<スプリット>ですね。あんなに速いものでしたっけ?」
「僕は速い物が好きだからな!」
「これについて、何か知っているのか?」
「えぇ、というか異世界の魔法の一つで<スプリット>と呼ばれる魔力を固めて前方に打ち出す物ですね。初歩的な魔法だから使い手はあまりいませんのでここまでの速度を出すとは思いませんでしたが」
「ということは、カナチお前は動きを速くする魔法も使えるのか?」
「おう!というか最初の時に見せたじゃないか。名前は<フィジカルスピードアップ>って言うんだぞ!」
カナチとキクトの非現実的な説明を受けた煌太はいまだ信じられないような表情だが、手に持っていたケータイはすでに仕舞われていた。
「お前は本当に神なのか?」
「え、えぇ。ですがこの世界に描かれている万物を創造した存在ではなく、いろんな世界を管理する存在ですが」
目の前の神様(自称)の言葉を信じていいのかどうか悩んでいたが、カナチの魔法という存在を目の当たりにして自分を納得させた煌太は信じてみる気持ちになっていた。
「それで、お前らはカナチをどうするつもりだ?」
「子供とはいえ異世界人ですからね。一旦家で保護をしてから帰すことになります」
「帰すのか」
「世界の安定のためなんですよ。それで一つ提案なのですが」
「何だ?」
「普通でしたら異世界人とかかわった一般人の方の記憶は消去させてもらうのですが、あなたは特例ということにして偶にでいいのでカナチ君と会ってくれませんか?」
「何でそんなことを?」
「まだ子供ですからね。自分の知らないところにいきなり飛ばされて数日後には知らない人たちの所に行くというのも酷な話ですから、少しでも信頼されている人が時々でも来てくれるというのはそれなりに安心できるでしょうしね」
「そういうことなら、分かった。カナチもそれでいいのか?」
「んー、何となくだけど悪い奴らじゃないってのは分かるから問題ないぞ」
こうしてまた一人上峰の家に居候が増えたとさ。
「食費、どうなんだろ。」
ため息をつく達也に鳳楽が一言。
「そんなのわたしが何とかすればいいだけじゃん?何を悩んでいるのさ」
「だから、それを使うのがためらわれるって言うんだよ!」
「な んでよー。藁をもすがるって言うじゃない。気にしたら負けだよ」
「もういいや」
にぎやかな会話をする達也たちを見て、カナチは自分の家族や友達を思い浮かべるのであった。
編集完了です。ネムイ。。。
――上峰達がアリスと遭遇する数日前――
「ん?……にんげ…………ん?」
宵星煌太は、地面の上で倒れている人物を見て、驚かざるを得なかった。
まず、服装が変わっている。
大抵のホームレスすらTシャツとジーンズを着ているこのご時世、布を纏っただけの質素な服装はそうそう見ない。
どこかの国の古代から伝わる族の服だろうか。
短いが杖も握っているため、その可能性が高いと宵星は見た。
見たところ少年の様だ。
歳は中学生くらいだろうか、中性的な顔立ちをしている。
何より目を引くのは、その白い髪だ。
アルビノというやつなのだろうか。
それなら日本人の可能性もあるだろうが、やはり服装が日本人にしてはおかしい。
問題は、何故アスファルトなんかの上で倒れているのか。
そして何者なのか。
「うっ、つぅ……ここは……?」
少年が起きた。
それを見て宵星はハッとした。
少年が倒れている位置、それは道路の上だ。
車が来なかったから良かったものの、今来てしまったら大変なことになる。
道路そこにいたら危ない、と声をかけようと、宵星は走った。
少年はアスファルトをペタペタ触って何やら首を傾げていたが、宵星に気づく様子はない。
しかし、背後から近づくトラックには気づいた様だ。
「おい、危ないぞ!早くそこからどくんだ!」
これじゃあ走っても間に合うかわからない。
不安から少し速度が弱まったが、すぐに全速力に戻して宵星は走った。
しかし、少年が自分から動くことはない。
(もう駄目だ……!)
急ブレーキがかかっても、その慣性で少年の方向にトラックが吸い寄せられていた。
やはり、とても間に合いそうにない。
――ブォンッ!
突如、少年の姿が揺れた。
「あっぶねえええ!」
声のする方向を見ると、真横だった。
少年がこちらの歩道に飛んでいたのだ。
「え?」
飛んだこと自体は不思議じゃない。
生存本能が働いたのだろう。
ただ、あの距離で間に合うことはほぼ不可能だった。
少なくとも、それなりに運動してる宵星でもあれは無理だと確信していた。
「なんだったんだ今の!すっげえ速ぇええ!」
目をキラキラさせながら急ブレーキでやっと止まったトラックを見つめる少年。
数秒前に命の危険に晒されていた者の表情ではない。
「お、おい!大丈夫か!」
トラックの運転手であろう男性が降りてきて、声をかけてきた。
その視線の先には少年と、宵星がいる。
「け、怪我はないか?一応救急車呼んでおくぞ」
悪いのは明らかに道路の真ん中で座っていた少年の方なのに、随分とお人良しな運転手なのだろう。
その目に怒りはなく、純粋に心配だということが伝わった。
「なあ!今のなんだ!?馬車か!?でも馬がいないな、新種の魔物か!?」
「はあ?」
宵星は運転手の奇声と混乱に納得できた。
とても引き殺されそうになった人のものとは思えない、満面の笑みで引きそうになった自分に尋ねてくるからだ。
「……車を知らないのか?」
宵星が、気づいた様に呟いた。
それならその態度に納得……はできない。
死にかけたのだから。
だが、それほどの田舎なら服装も納得できる……かもしれない。
やはりおかしいことばかりの子供だ。
だが、何故か、宵星は咄嗟に対応ができた。
「あ、すいません、救急車は必要ないです、見た通りピンピンしてるので、この子」
「そ、そうか……俺もトラックも中に荷物はないし、無事だから何の問題もねぇな……よし、帰るか。すまねぇな坊主、怖がって……はなさそうだが」
「?」
状況が飲みこめずにいるのか、首を傾げる少年。
その後去っていくトラックを見送り、宵星は行動に出た。
宵星は事情を聞いてみようと決意した。
理由は単純な好奇心ではあるが、放ってはおけないというのもある。
「君、どこから来たんだい?」
「どこって……あ、ここどこだ?さっきまで森にいたのに……確か……銀色の狐!あいつか!あいつ、幻影魔法使えるのか!」
話が明らかに噛み合ってない。
「も、森?この辺りに森なんてないぞ」
「うるさい幻、俺をあの狐の元に返せ!早くあれを売って儲けるんだよ俺は!」
噛み合うどころか、こっちの話さえ聞いてくれない。
「俺は幻じゃないし、この辺りで狐なんて出ない。 一旦落ち着いてくれ」
「幻じゃ、ないのか……?」
幻呼ばわりした割には案外あっさりと信じてくれた少年だった。
「じゃあ、ここはどこなんだ?」
「ここは紅陽町だよ」
「クレナイチョウ、聞いたことないな……国の名前は?」
「……日本だけど」
「全然知らない……」
「……え?」
流石の宵星もこれはおかしいと気づいた。
今いる国の名前すら知らないのではただの田舎者では済まないからだ。
「……ひとまず、うちに来ないか?」
「……うん」
本人はまだ知らないが、異世界人というとんでもない迷子を引き取った宵星であった。
――数日後のとある公園――
「待て待てー!」
そこには自分の住んでいた世界と違うという認識をしながらも無邪気に猫を追いかけまわしている少年――カナチの姿があった。
「やっぱりすばしっこいなっ、だけど速さなら負けないぞ!」
トラック(本人は何かの魔物と勘違いしているが)に轢かれそうになった時に使った加速魔法を使い、猫の逃げ道を封じたカナチは容赦なく抱き上げた。
「全く、こっちに来てから魔力が回復してないのと同じくらいなのに魔法を使わせやがって、このこの」
言葉では叱っているようだが、実際には撫でまわしたり、モフモフしたりと怒っている様子は全くない。
「煌太もいないから暇なんだよなー。っと、なんだあれ?」
猫モフモフを存分に楽しんでいるとこちらに飛んでくる人の姿を発見して眺めていると目の前で急停止した。
「″にゃー″を発見。保護を開始する」
「……お姉さん誰?」
空から見下ろされるという体験は初めてのカナチだが、そんなことで動じる器ではなかった。
「アリスは固有名称アリス=Mミュー=カタグラフィ、個体識別コードRDG79J23M8JD。アリスは固有名称の開示を要請する」
「固有名称?名前ってことか?」
「肯定ポジティブ」
もちろん、カナチの世界でも固有名称なんて単語はそうそう使われない。
しかし変な状況が続いてるカナチにとって、そんなことは些細なことでしかなかった。
「なんかよく分かんないけど、僕はカナチって言うんだ」
「対象の固有名称を″カナチ″で登録。続いて個体識別コードの開示を要請する」
「こたいしきべつ……何て?んなもん無いぞ」
「アリスは″カナチ″を″上峰達也″と同じであると仮定」
「他にも僕みたいなやつが居たのか?」
「肯定ポジティブ。対象までの距離200m。近づいてきている」
アリスの指差した先を見るとこちらに向かってくる姿がいくつか見える。
先頭はどうやら鳳楽のようだ。
鳳楽達の姿を確認すると、アリスはやっと空からゆっくり降りて着地する。
同時に、鳳楽がアリスに声をかける。
「やっと見つけたー。もう、アリスったら自分の状況分かってるの?」
「理解不能。説明を要求する」
「つーまーり。私たちは今あのキクトっていう神様のところにいないといけない訳だよ。場所わかる?」
「そのことなら肯定ポジティブ。アリスは帰還場所として″上峰達也″の家をマークしてある」
「それならいいんだけどー?で、この子、何?」
今更カナチの存在に気づく鳳楽であった。
気づかれてなかった本人は特に気にしてないが。
途中からやっと追い付いた少年、キクトが息を切らしながらもカナチの説明をしようとする。
「そ....それなら、僕が、説明できますよ....!その子も異世界人、です」
「あ、キクトお疲れ―」
いきなり多くの人に囲まれて自分の今の状況が上手く掴めていないのか疑問符を頭の上に浮かべる。
「何が起こってるんだ?」
「えぇっとですね。本来はその猫を探索していたんですが、偶然にもあなたを見つけたんですよ。異世界からの転移者を」
いつの間にか息を取り戻しているキクト。
体力回復も神様補正の一つらしい。
「ふーん。で、あんたらは何者?」
異世界からの転移というワードを聞いても、反応が薄すぎる。
本当に話を理解しているのか気になるが、今ここで説明しても時間がかかるということでキクト達は自己紹介に移る事にした。
「アリスは先ほど名乗った」
「わたしは鳳楽ちゃん。なーんの変哲もない一般人だよー」
ヘラヘラと笑っていながら当然のごとく嘘を吐く鳳楽。
「嘘を言わないでください!あなたのような一般人はいません!」
「ほらほら、キクトも自己紹介」
「う……僕はキクトという、所謂神様です。下っ端ですが」
神様というのを聞いても顔色一つ変えないカナチ。
「僕の住んでるところにあんたみたいな神様はいなかったと思うぞ」
「へぇ、神というのを疑わないんだね」
「ん?一流の召喚士で協会にいる人間なら普通に召喚してたぞ?」
厳密に言うとそれらはただの精霊で、力が強いから神と崇められているのだが、カナチがそれを知るはずもなかった。
「僕は少し違うんですよね。それで、君の名前は?」
「僕はカナチっていうんだ。ここが異世界ならギイルって世界に住んでいたぞ」
「ギイルですか……」
「それってどんなとこー?」
「簡単に言えば剣と魔法の世界ですね」
そんな本題から逸れてきている何気ない会話を中断したのは、やっとのことで追いついた上峰達也の声だった。
「ここにいたのか。やっと見つけたぞ」
「おや、割と早かったですね達也さん」
ここでようやく合流した達也。
因みにカナチは「早い」という単語に少し反応を示していた。
「あんたはなんて言う名前なんだ?あ、僕はカナチな」
「俺は上峰達也っていうんだが……ひょっとして、こいつもか?」
「はい。異世界人ですね」
「連れていかないといけないのか?」
「そうなりますね」
「連れていく」という単語を聞いてしばらくし、やっと自分のことだと気づくカナチ。
「連れて行くって?僕は煌太の所にいるんだけど」
「誰ですか?」
突然知らぬ名を出され、少し驚くキクト。
「んーと、営業マンとか言う宵星煌太っていう人のところだ」
「地球人じゃねぇか」
「完璧に地球人ですね」
「ん?だったらもうそいつに任せちゃえばいいじゃんか」
「何もわかってませんね?あなたは例外ですがその煌太という人は一般人です。ですのでご都合主義的な神様の力で忘れるはずですが、それが何故か効いていないのです」
実際はキクトがその力をカナチに使用する前に既に達也との騒動があったため、彼はカナチのこの世界への影響を抑えることは殆どできていなかった。
キクトはそんな自分の失態を忘れ、なかったことにしているのだが。
幸い、宵星が保護したおかげで影響は最小限に抑えられているのだが、それを知る者はこの場にはいない。
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたな」
「まぁ、強制的にこちらに巻き込むことにしますけど」
「おいこら駄神」
「いや、だってカナチ君を一時的とはいえ救って養っているのですよ?もう普通ではいられませんよ」
「ふ~ん、そんなもんなんだ~」
「それで、今その煌太さんとやらはどこにいるんですか?」
「煌太だったら、そこにいるぞ?」
「え!?」
慌てて後ろを振り向くと、そこにはなにやら怪しい者を見る目つきでケータイを構える煌太の姿があった。
「あんたらは、何してんだ?」
「え、えぇっとですねー」
「こいつらはなんか神とか言ってたぞ」
何と言おうか考えていたところに特大級の爆弾が撃ち込まれた。
しかもカナチには達也達全員が神様だと誤解されている。
「ほぉ、その神様とやらがなんでこんなところに?」
問いかけは優しく聞こえるが、目は笑っておらず手に持っているケータイには110がすでに打ち込まれていた。
「ち、違うんです!いえ、実態的には違いませんが、この子に話しかけているのは全然別の事なんですぅぅぅ!」
「言い訳を聞こうじゃないか」
顔に笑みを張り付ける事すら止めた煌太が詰め寄る。
「それはですね、カナチ君が異世界人だから、ではなくてその抱きかかえた猫がうちの猫なんですよ!」
「待て、今異世界人といったか?」
聞きなれないが、どこか辻褄が合うような気がした宵星はその言葉に目を見開いていた。
「え?あ、しまったぁぁぁぁ!!」
「落ち着け駄神」
「駄神言わないでくださいよ!」
「もしかしてカナチの不思議な力について何か知っているのか?」
「あぁ!もう何も聞かないで、って不思議な力?」
「妙に加速したり、変な物体を出してそれをぶつけたりとか。そんな感じの力だ」
「それは知りませんが、まぁ何か使えるというくらいは分かります」
話が妙な方向に飛んだという事を考えつつ状況を見守る達也。
アリスと鳳楽はすでに猫と遊び始めている。
話の流れに追いついていけずにポカーンとなっているカナチに声をかけるキクト。
「それで?カナチ君は何が出来るのです?」
「えっ、あ!魔法を使えるぞ!見せてやる!」
周囲の反応を気にせず、杖を前に構え、目を閉じて集中し始めるカナチ。
「行け!<スプリット>!」
杖から飛び出した白い弾丸状のエネルギーがポイ捨てされていた空き缶に命中する。
缶は凹みながら吹き飛び、近くのゴミ箱に入っていった。
速度としてはプロ野球選手の投げるボール並みである。
「どんなもんだ!」
「何今の?」
「無属性魔法<スプリット>ですね。あんなに速いものでしたっけ?」
「僕は速い物が好きだからな!」
「これについて、何か知っているのか?」
「えぇ、というか異世界の魔法の一つで<スプリット>と呼ばれる魔力を固めて前方に打ち出す物ですね。初歩的な魔法だから使い手はあまりいませんのでここまでの速度を出すとは思いませんでしたが」
「ということは、カナチ。お前は動きを速くする魔法も使えるのか?」
「おう!というか最初の時に見せたじゃないか。名前は<フィジカルスピードアップ>って言うんだぞ!」
カナチとキクトの非現実的な説明を受けた煌太はいまだ信じられないような表情だが、手に持っていたケータイはすでに仕舞われていた。
「お前は本当に神なのか?」
「え、えぇ。ですがこの世界に描かれている万物を創造した存在ではなく、いろんな世界を管理する存在ですが」
目の前の神様(自称)の言葉を信じていいのかどうか悩んでいたが、カナチの魔法という存在を目の当たりにして自分を納得させた煌太は信じてみる気持ちになっていた。
「それで、お前らはカナチをどうするつもりだ?」
「子供とはいえ異世界人ですからね。一旦家で保護をしてから帰すことになります」
「帰すのか」
「世界の安定のためなんですよ。それで一つ提案なのですが」
「何だ?」
「普通でしたら異世界人とかかわった一般人の方の記憶は消去させてもらうのですが、あなたは特例ということにして偶にでいいのでカナチ君と会ってくれませんか?」
「……また、何でそんなことを?」
「まだ子供ですからね。自分の知らないところにいきなり飛ばされて数日後には知らない人たちの所に行くというのも酷な話ですから、少しでも信頼されている人が時々でも来てくれるというのはそれなりに安心できるでしょうしね」
「そういうことなら、分かった。カナチもそれでいいのか?」
「んー、何となくだけど悪い奴らじゃないってのは分かるから問題ないぞ」
こうしてまた一人上峰の家に居候が増えたとさ。
「食費、どうなんだろうなぁ……」
ため息をつく達也に鳳楽が一言。
「そんなのわたしが何とかすればいいだけじゃん?何を悩んでいるのさ」
「だから、それを使うのがためらわれるって言うんだよ!」
「なんでよー。藁をもすがるって言うじゃない。気にしたら負けだよ」
「もういいよ……」
にぎやかな会話をする達也たちを見て、カナチは自分の家族や友達を思い浮かべるのであった。
次は勇輝さんの番ですね。その前にちょっとした閑話を書きます。
上峰の変化した日常を書きたいのですが、どんな感じで書きましょう?
家を拠点に、達也くんの日常を芯に変わったところを強調するように書くといいと思います。平和的な部分で異世界人の能力を有効活用してしまう達也くんもいいかもですね。アリスやキクトは使いやすそうですし
>詩歌さん
なるほどです
書いてみます!
その前に、勇輝さんが担当する回の序盤を書いて閑話と本編、同時進行で書くのはどうでしょうか?
勇輝さんに冒頭部分をメッセージで送りました。
ルビとかもあるのでコピペはできればメッセージの方からでお願いします。
↓(以下が本文)↓
藍神鈴蘭は酷く困惑していた。
無理もないだろう。
何せ、自殺しようと高層ビルの屋上から飛び降りたらいつの間にか公園の砂場に受け身で着地しているのだから。
普通、そんな高さから飛び降りたらいくら砂場だろうと、受け身を取ろうと、着地しても|無傷《・・》というのはありえない。
だけど実際に起きてしまっている。
何かが藍神の落下中の慣性を消したのだろうか、と本人は推測を立てるも、その|何か《・・》がわからない。
強風が吹いたとしても、直角で上に吹く風はない。
何かに当たったとすれば大怪我だ。
しかし、藍神は無傷である。
「何がなにやら……」
仕方がないので、彼女はそれを|割り切る《・・・・》ことにした。
現時点で真実に繋げられるような要素はどこにもないので、いくら考えても仕方がない、とあっさり諦めた。
何が一番大事かを常に意識して、最善の行動を起こせるのは完璧超人の性なのだろう。
本人からすれば、呪いとも言えるが。
因みに、何が一番大事なのかは、勿論自殺だ。
だが、公園の外に出てふと視界に入った文字が藍神の思考を止めた。
『紅陽町』
そんな町の名前は、藍神は知らなかった。
完璧超人ならではの完全記憶力でも、そんな町の名前は日本のどこにもない。
公園や駅があるくらいなのだから、それなりに技術は発達している以上は町なのだろう。
田舎の無名な町なわけがない。
「ここは……どこ……」
混乱している状態で、まさかパラレルワールドだとは思いもしなかっただろう藍神の掠れる様な声は、誰の耳にも届くことはなかった。
***
学校の下校時間を告げるチャイムが鳴ってから数分経ち、町を帰宅部の学生達が歩く午後。
一人と一神と一異世界人は、今日も異世界人保護の任務のためにパトロールをしていた。
言わずもがな、達也、キクト、鳳楽の三人だ。
パトロールといっても、キクトの食べ歩きが5割ほどなのは余談である。
「なあ駄神」
「……なにかな」
もはや駄神と呼ばれることになれてしまったらしいキクトは、自分を呼んだ達也へ振り返る。
「確か、神特有のご都合主義的な力を使う前に接触した俺と手を組んでるんだったよな」
「ええ」
「それってなんだ?」
「記憶に関与する力ですね。異世界人がこの世界の人と会話をしても、この世界の人はすぐにその存在を忘れてしまうのです」
今まで疑問に感じていたが、なんとなく言い出せなかったことを恐る恐る口にする達也。
「なんで俺や宵星さんの記憶を消さなかったんだ?」
「それは……」
沈黙するキクトを見て、達也は確信を持つ。
「仮にカナチが幼いから宵星さんが必要だとしても、すぐにギイルに還せばいい。つまり、俺達の協力には理由があるんだな?」
「うぐっ」
『図星です』と言ってるような反応をするキクト。
鳳楽は面白そうにニヤニヤしながら二人を観察している。
「いや、あのですね、宵星さんの場合は本当に必要です、一人一人送り還すとこの世界に負担がかかるので全員集めて一気に管理会に送り、そこから別々に送るのですよ」
「なるほど。で、俺は?」
「……こっちの方が都合がいいんです」
まともな返答になってすらいない誤魔化しだった。
とりあえず前半部分です。
後半もすぐにあげます!とりあえず意見くださいいいいい!
藍神鈴蘭は酷く困惑していた。 無理もないだろう。
何せ、自殺しようと高層ビルの屋上から飛 び降りたらいつの間にか公園の砂場に受け 身で着地しているのだから。 普通、そんな高さから飛び降りたらいくら受け身を取ろうと、砂場だろうと、着地しても|無傷《・・》というのはありえない。
だけど実際に起きてしまっている。
何かが藍神の落下中の慣性を消したのだろうかと本人は推測を立てるも、 その|何か 《・・》がわからない。
強風が吹いたとしても、直角で上に吹く風はない。 何かに当たったとすれば大怪我だ。
しかし、藍神は無傷である。
「何がなにやら……」
仕方がないので、彼女はそれを|割り切る 《・・・・》ことにした。
現時点で真実に繋げられるような要素はどこにもないので、いくら考えても仕方がない、とあっさり諦めた。
何が一番大事かを常に意識して 最善の行動を起こせるのは完璧超人の性なのだろ う。 本人からすれば、呪いとも言えるが。
因みに、何が一番大事なのかは、勿論自殺だ。
だが、公園の外に出てふと視界に入った文字が藍神の思考を止めた。
『紅陽町』
そんな町の名前は、藍神は知らなかった。
完璧超人ならではの完全記憶力でも、そんな町の名前は日本のどこにもない。
公園や駅があるくらいなのだから、それなりに技術は発達している以上は町なのだろう。 田舎の無名な町なわけがない。
「ここは……どこ……」
混乱している状態で、まさかパラレルワールドだとは思いもしなかっただろう藍神の掠れる様な声は、誰の耳にも届くことはなかった。
***
学校の下校時間を告げるチャイムが鳴ってから数分経ち、町を帰宅部の学生達が歩く午後。
一人と一神と一異世界人は、今日も異世界人保護の任務のためにパトロールをしてい た。 言わずもがな、達也、キクト、鳳楽の三人 だ。
パトロールといっても、キクトの食べ歩きが5割ほどなのは余談である。
「なあ駄神」 「……なにかな」
もはや駄神と呼ばれることになれてしまっ たらしいキクトは、自分を呼んだ達也へ振 り返る。
「確か、神特有のご都合主義的な力を使う前に接触した俺と手を組んでるんだったよな」 「ええ」 「それってなんだ?」 「記憶に関与する力ですね。異世界人がこ の世界の人と会話をしても、この世界の人はすぐにその存在を忘れてしまうのです」
今まで疑問に感じていたが、 なんとなく言い出せなかったことを恐る恐る口にする達也。
「なんで俺や宵星さんの記憶を消さなかったんだ?」 「それは……」
沈黙するキクトを見て、達也は確信を持つ。
「仮にカナチが幼いから宵星さんが必要だとしても、すぐにギイルに還せばいい。つまり、俺達の協力には理由があるんだ な?」 「うぐっ」
『図星です』と言ってるような反応をする キクト。 鳳楽は面白そうにニヤニヤしながら二人を観察している。
「いや、あのですね、宵星さんの場合は本当に必要です、一人一人送り還すとこの世界に負担がかかるので全員集めて一気に管理会に送り、そこから別々に送るのです よ」 「なるほど。で、俺は?」 「……こっちの方が都合がいいんです」
まともな返答にすらなっていない誤魔化しだった。
***
裸足でコンクリートの道を踏み締めながら、目的無しに藍神鈴蘭は見知らぬ『紅陽町』という町を歩いていた。
歩きながら、鈴蘭は頭の中で考えている案を検討してみることにする。
ちなみに考えている案とは、この見知らぬ町のことを知るとか、元いた場所に帰るとかではなく、どうやって死のうかというものだ。
さっきと同じように適当な高所から飛び降りる。
しかし周囲を見回してもそれらしい高所はない。これは没。
では首を絞めるのはどうだろうか?これも高さが必要だが、一つ目程ではない。
だが絞めるための縄がない。さらに言うとここら辺には山などもないようだ。こうなると準備している間に人に見られる可能性もある。これも没。
ではでは心臓に何か突き刺すのはどうだろう?かなりの痛みが伴うだろうが、**るなら関係ない。
だが鋭利な刃物なんて持っていないし、木の棒とかでも足りないだろう。しかも鈴蘭の胸囲の戦闘力はかなりのものなので、簡単には心臓を貫けない。これも没。
「.......んー、」
完璧超人の性質を持つ藍神鈴蘭にしては珍しく考え込んでしまう。
別に死ぬ方法だけならいくらでも考え付く。刺殺絞殺毒殺斬殺撲殺博殺磔殺焼殺扼殺圧殺轢殺凍殺水殺爆殺。ザッと思い付くだけでもこれだけある。
問題はその結果に至るための『過程』にあった。
率直にいって、鈴蘭は自らの自殺に誰かを関わらせたくなかった。何故なら、いままで誰かの人生をに関わり、狂わせてきたのだ。最後ぐらい誰にも迷惑をかけずに死にたいのだ。
「......どうしよ」
思わず呟く。その声色が心細くなっていることに気付き、鈴蘭は顔をしかめた。
むいー、と頬を引っ張って気持ちを入れ直す。
世界からいなくなる。この身に宿る力から解き放たれる。
そうだ。あんな苦しみを味わわないために死のうと決め
『さイっコーだネコのせかイ!』
ズグン!!と。
鈴蘭は強烈な頭痛を感じてその場にうずくまる。
「誰?」
『あハは!ちかラがアふレてる!ベつノいソウのチからに、べつノせカイのチから!こレダケあれバ!ワタしのケンゲんだって!』
「誰なの、答えて!!」
痛みをこらえて頭の中に響く声に向かって叫ぶ鈴蘭。
『うフフ、アなたとハなガイつきあイなんだケどね。まァ、いマノイままデせッしョクしナかったワタしがワるいノかな』
「長い、付き合い?」
その言葉である一つのことが思い浮かぶ。
藍神鈴蘭の特性。
『完璧』。
まさか、
「あなたが、この力の正体なの?」
『ウフふのふ。ダいセイカーい!』
「なによ、なんなのあなた。どうして喋るの、どうしてこんな力を持っているの」
頭痛も戸惑いも、そして過去の痛みも全てを込めて藍神鈴蘭は言う。
「どうして私にこんな力を宿らせたの!!」
血を吐くような、壮絶な声色だった。
その声を聞いた『完璧』は、しかし変わらず楽しそうに返答する。
『ワたシはワタしノたメニチからヲつかウだけ。ソコにアなたノイシハひつよウない』
楽しそうなのに、芯まで冷えた言葉だった。
『ダ・か・らァ、アなたのねがイカナえてアげる☆』
「.......え?」
カキン、と鈴蘭の中で何かが外れるような音がした。
続けて鈴蘭の体が鈴蘭の意思とは関係なく動き出す。
『完璧』。
藍神鈴蘭の意思など関係なく、ただその事柄に対する最高の結果だけを叩き出す。
「ひっ....いや、やめて」
『ナにイッテるの。こレがアナたのねガイなんデシょう?』
足が勝手に歩を進める。その先はたくさんの車が行き来する道路だ。
『ナらカナエてアゲる。わたシノちからでカンペきにねェ!』
***
「なあ」
「どうしたんですか?」「どしたの?」
「あれ、ヤバくないか?」
達也が指差す先をキクトと鳳楽が追う。
その先には一人の少女がいた。
流れるような藍色の髪に人形のように整った顔立ち。着ている服が制服で、さらに裸足なのが変だが、それを差し引いてもかなりの美少女だった。
一瞬、キクトと楽は達也が『そういう意味』でその少女を指差したのかと思ったが、すぐに違うと思い知る。
理由は二つ。一つは少女の綺麗な顔が恐怖で歪んでいたからだ。まるでこれから殺されるかのようだった。
そしてもう一つ。これは鳳楽だけが気付いた。
「あの子、なんか憑いてるよ?」
その言葉に表情を凍らせるキクト。ただ一人理解していない達也は楽に問いかける。
「憑いてるってどういうことだよ」
「言葉通りの意味。あの女の子には何かが宿っているの。それが悪霊とかそういう類いなのかはたまた神とか洒落にならないもなのかはわからないけどね」
「おい、洒落にならないって?」
「そのまんまの意味。私やキクトみたいな神の存在は人間より高純度だからね。器としての広さがどれだけ大きくても、深さが圧倒的に足りないからね」
「もっと簡単に」
「私たちが達也に取り憑いたら達也爆発するよ物理的に☆」
「お前ら怖すぎだろ!それこそ世界ぶっ壊れるんじゃないのかよ!」
「それは大丈夫です。心配することはありません」
「ああ、ご都合主義のカミサマパワー(笑)か。おけおけりょーかい」
「おっとお、いま明らかにバカにしましたね?」
いがみ合う二人を他所に楽はこれからどうしようか考える。
やっぱり助けたほうがいいのだろうか。
「.....うん。まぁ後から達也とキクトが怒りそうだしね」
そうと決まれば解決策は一つ。
少女を気絶させて、達也の刀で憑いている何かを斬る。
「それじゃ、そういうわけで.......どーん!」
ふざけた声と共に、鳳楽の姿が消えた。
そして次の瞬間楽は少女の目の前に現れ、力加減を調整した『オーバースピードキック』を繰り出す。
そこまで近付いて改めて藍の少女の顔が見ることができた。
長い髪が影になって見えなかったが、その瞳は深い黒曜石のような漆黒だ。
いや、だった。
それは突然のことだった。
「ふざ、けないで.....!」
漆黒の瞳が血のような赤に染まる。更に藍色だった髪も端から黒に変わり出す。
思わず楽は口にする。
「なにこれ......!?」
だが蹴りは止まらない。まさしく神速の一撃が少女の頭を狙いを定める。
その直前。少女の体から白と黒の奔流が溢れ出し、楽を吹き飛ばした。
「きゃあ!」
楽を吹き飛ばしたことに気付いてもないなか、先程とはまるで違う赤い瞳に漆黒の髪と化した少女が絶叫する。
その声は二つの音が重なって聞こえた。
「この『アは』体はわた『はシはいデキ』しのだから。従いな『るとおも』さい。勝手に『ッテ』喋るなあああああああ!!!」
叫びと共にさらに奔流は大きくなり、周囲の建物や看板をなぎ倒し、道路をえぐりとっていく。
「こ、これどうするんだよ!」
「ただの神様に無茶いわないでください!」
「てめぇから神様要素取ったら何が残るんだよこの駄神!!」
懲りずにまた言い合いを始める二人。楽は無視して拳を構える。
その顔には笑みが浮かんでいた。
「これは楽しそうだねぇ!いっくよー!」
もう一度オーバースピードキックを発動する。
今度はさっきとは違い手加減なしの全力全開のソバット。ガトリングガンのような連続の蹴りが白と黒の奔流を押し返し、未だに絶叫している無防備な少女に襲い掛かる。
「『じゃま』」
ガシィ!と。
常人には目で追うことすらできないほど高速で動く楽の蹴りが、少女の柔い細腕によって掴まれたのだ。
「.......蓮花」
少女の腕が霞む。気付いたら、両膝、両腕から鈍い音が聞こえた。
「かはっ」
「貫くよ.....閃龍突」
地面に崩れ落ちる楽に白と黒の奔流を纏わせた少女の拳が叩き込まれた。
結果、冗談脱ぎ捨てに楽の体が後方10m程吹き飛ばされた。
「楽!!」
「鳳さん!!」
達也とキクトが呼び掛けるが反応は無い。
それほどのダメージを負ったということだろう。
そこまで思考が追い付いて、達也は怒りに任せて吠えた。
「て、めええええええええ!!」
達也が刀を抜き、力の限り少女に斬りかかる。しかし少女に刃が届くことはない。またしても白と黒の奔流が刀の動きを押し止めたからだ。
「私『のじゃ』まをす『る』な!!」
少女はそう叫ぶと、一度二色の奔流を暴れさせる。流れに逆らえず、達也が吹き飛ばされる。
「うおっ!なんだよこれ!」
「し、知りませんよ!って、あ!あの人逃げましたよ!!」
見ると、少女は制服に裸足という格好で出せるのかという恐ろしい速さで道路を横切り、町の方向に走り去っていった。
「待てよ!」
「はいストップ」
「うぐぅ!?」
その後を追おうとする達也の襟首を掴んでその動きを阻害するキクト。
「なんだよ!」
「まずは落ち着いてください。あの人はまず間違いなく僕たちの保護対象ですね。あんなのこの世界の人間にはできません」
「それなら.....!」
「ですが、このままあの存在の後を追っても失敗するだけです。僕はまだ八つ裂きになんてされたくないんですよ。それに、」
キクトは自らの後ろを指差して、
「鳳さんを助けないつもりですか?」
「.......あ」
あまりにも酷い話だが、忘れていた。
達也の顔が歪む。それは致命的な傷を受けた仲間の事を忘れてしまったという自責の念からなのだろう。
キクトはそんな達也の肩を叩くと、妙に自信ありげに笑いながら言った。
「安心してください。あの人の事は知っています。それに追跡だって可能です」
「.......駄神がなんかできのんかよ」
「ええ、とりあえず鳳さんのために救急車でも呼びましょうか」
最近買い与えられた携帯を取り出して病院に連絡を入れるキクト。今度は別の所に連絡を入れ、電話越しに短いやり取りの後、携帯を直した。
続けて二人がかりで楽の体を近くのベンチの上まで運んだ。辺りはいろいろと吹き飛んでいたが、ここだけはまだ無事だった。
そうして一段落ついたところで、キクトは少女、藍神鈴蘭について話し出した。
***
救急車が去っていくのと入れ違いで、異世界人アリスとカナチがやってきた。
キクトはアリスに「藍神鈴蘭が行きそうな場所で一番可能性が高い場所を検索してください」と頼んだ。
「肯定。所要時間は5分程」
「わかりました。ではその間に、あの少女、藍神鈴蘭さんについてお話しますね」
そうして、藍神鈴蘭という少女について語り出すキクト。
ある時を境に高位の神に憑かれてしまったということ。
結果、彼女にはこの世界が破壊されてもおかしくないレベルの力が宿っているということ。
そのために、神世界でも問題視されているが、憑いた神が強すぎて手が出せない状況だということ。
そこまで聞いて、達也はある気になる点があったので聞いてみた。
「それじゃああの子は、ただの人間ってことなのか?アリスやカナチみたいな異世界人じゃなくて」
「いえ、確かに人間ですが、達也さんとは違いがあります。それは、彼女はこの世界の人間ではないということです」
「じゃあ人間がいる異世界とか?」
「いえ、地球ですよ。そうですね、簡単にいうならこことは別ルートの地球の住人なんですよ」
「.......?」
「例えばの話、僕ことキクトがもふもふを好きな今のルートAと絶対に一パーセントもあり得ませんがもふもふを好きにならないルートBがあったとします」
「けど今お前は猫とか好きだろ」
「はい。だから今の僕はルートAのキクト、ということになります。ですが、ルートBのもふもふが好きじゃないキクトというのも確かに存在するんです」
そう口にするキクトは今すぐ首を吊って死にたいみたいな顔をしていた。どうやらそんな自分を思い浮かべるのも嫌らしい。
なら考えなけりゃいいのに、と思いながら達也は頭の中で考えをまとめていく。
「えーとつまり、確率の数だけ枝分かれしてるってことか」
「まぁそんな感じです。そして藍神鈴蘭さんは、こことはまた別ルートの地球で生まれ、成長した人間なんです。つまり彼女は、|多元世界《パラレルワールド》人なんです」
と、そこでちょうどアリスの演算結果が出たらしい。結果を聞いてみると、藍神鈴蘭の行方の候補は六つに絞れるらしお。
そして、その中で一番確率が高い場所はというと、
「ここから南西に距離6217m。その地点に高確率で目標は存在する」
「わかりました。それじゃあ次はカナチさん、僕たち全員にフィジカルスピードアップをお願いします」
「うん!わかった!」
カナチは元気よく言うと、三人と自らに速度上昇のための魔法をかける。
「それでは行きましょう!早くしないと手遅れになるかもしれませんからね.......って、達也さんどうしたんですか?」
「......ん?ああ、いや。ちょっと気になることがあってな」
「僕に答えられるなら答えますけど」
「大丈夫だよ。これは本人に会って答え合わせするからさ。それより早く行こうぜ。助けよう、あいつをさ」
流れとしては良さそうですね。ただ、やはり諸所の間違いは要修正です。協力できることがあればお手伝いしますので、何かあれば声をおかけください。
遅くなって申し訳ありません!とりあえず完成しました!
確認おねがいします!
藍神鈴蘭がいたのは森の中にある廃墟だった。
もう錆びてボロボロになった看板を確認すると、どうやらここは孤児院だったらしい。
鈴蘭は庭の中央に生えている巨大なアコウの樹まで歩いていくと、そこに膝を抱え込んだまま座り込んだ。
俯いたら、そのまま涙がこぼれ落ちた。
そして一度零れると止まらない。
「うっ、ううっ、ううううう!」
まただ、と彼女は思った。
何かを関わったり、成し遂げれば周囲の人間から恐怖とそれを上回る畏怖の視線を受けた。
「本当になんでこんな力が.......」
その時、彼女は気付いた。
ここが誰もいない森の中だということに。
ーーーーーーー今なら。
「、うあ」
口を開けて、舌に歯を置く。後はこのまま噛みきるだけ。
瞳を閉じる。そうすると当然のように視界が真っ暗に染まった。
まるで私の人生そのものだと鈴蘭は思った。
楽しみも喜びもない。生きる目的も見いだせない。光なんて存在しない、暗くて黒い闇。
けど、それもこれで終わり。
顎に力を入れる。
舌に突き刺さり、口の中に鉄の味が広がる。
その時だ。
鈴蘭は頬を伝う涙で、ふとある考えが沸いて顎の力を抜いた。
「(どうして、私は泣いているの?」
藍神鈴蘭は『完璧』の力を持っている。それはあらゆる全ての事柄を完全回答でこなすということだ。
だからこそ、鈴蘭が今の境遇に不満を持っていて、泣いているのはおかしいのだ。
「何かがおかしい。けど、あれ、だけどーーーーーー」
考えがまとまる。けど.......それはそもそもの前提が覆ることに。
そしてそうなると、今までの様相がガラリと変わる。
だが、そこで異変が起きた。
閉じたままの視界で何かがキラリと輝いた。
思わず目を開ける.....ことはできなかった。
何故なら、開けようとした途端に身体の力が抜け、意識が遠のいたからだ。
「(こ.......れは、やばい)」
その考えを最後に、鈴蘭は真横に倒れ、ブツリと意識が途切れた。
***
達也たちが藍神鈴蘭を見つけた時、彼女はもう別の存在に成り果てていた。
何か目に見える部分が変化しているわけではない。だが目に見えない部分、言うならば気配のようなものが変わっている。
鈴蘭は......いや、『完璧』はにっこりと笑いながら口を開いた。
「こんにちわ、神に刃を向ける人たち♪」
「僕はあんまり刃向けたくないですけどね。だって後から怒られそうですし」
「え、あれれ、君もしかして神様?や、その感じだと見習いかな」
「えーと、そうです。まだ見習いですがそれなりに優秀なみなら」
「いやぁ、にしても力が弱いねぇ。そこらの人間より弱いんじゃない?」
「.......(号泣」
「あー、そのドンマイ?いつも俺に駄神て言われてるだろ」
地面に指で字を書き出すキクトを慰め?る達也。
『完璧』は笑いながら続ける。
「それで?君たちは私とどうしたいの?話し合い?それとも殺し合い?」
「話し合い、に決まってんだろ。それに俺はお前に聞きたいことがあるんだよ」
「へぇ、なに?聞くだけ聞いてしんぜよう」
「そりゃどうも。俺が聞きたいのはな、簡単に言って、なんで神であるお前がただの人間を助けようとしているんだ?」
「えーと、どういうこと?」
「最初に気になったのは初めてキクトから藍神鈴蘭とお前の事を聞いた時だ」
『完璧』がキクトに視線を送り、いまだにイジけていたキクトが固まる。
一度ため息をつくと、『完璧』は頭を振りながら返答した。
「ほんとにさ、有名人ってのはつらいもんだよ.......あ、いいよ、先続けて」
「キクトの話だと藍神鈴蘭はあらゆることを『完璧』にこなすんだろ?なのに、『死にたい』っていう願いは『完璧』にできなかった?」
「あーあれだよ、この子は私の玩具なの。自分の持ち物が壊れちゃつまらないでしょ」
「それじゃあなんでさっきはお前が出てこなかった?神の力を使えば、俺達全員木っ端微塵にできたはずだろ」
「.......はぁ。もういいや」
『完璧』が不適に笑う。だがその笑みは何か吹っ切れたような感じの笑みだ。
「そうだよ。私はあの子を、鈴蘭を救うために憑いたの。理由は、まぁただの恩返し、かな」
「.......恩返し?」
「大体は省くけど、私は前にこの子に救われたの。だから今度は世界に見捨てられた鈴蘭を救う。あの時の恩を返すの」
次に口を開いたのはキクトだった。
「だから彼女には拒絶反応が無いんですね。一方的な契約や憑依ではなく、あなた自身の意思で取り憑き、あなた自身の意思で自分の力を使わせているんですね」
拒絶反応とは降霊や神降ろしなどを行ったときに媒体となった人間に起こる症状のことだ。大抵の場合、これが発症した人間は身体を肉体的にも精神的にもボロボロにされて死に至る。
これは神という高位の存在を、人間程度の小さな器に流し込もうとした傲慢に対する罰だ。
しかし、だ。今回は『完璧』が自らの意思で鈴蘭に憑いた。そうなると話は変わってくる。
簡単に言うと、人間の器の広さが変わってしまうのだ。神の力によって、強制的に。
だから鈴蘭は死なずに、逆に神のために身体を調整させられたのだ。
「そういうこと。鈴蘭は『全ての事象の最高値を無制限に叩き出す力』と思っていたみたいだけど、本当は『全ての事象に対しての適正値を私が叩き出す力』なの」
「.......だから藍神鈴蘭の意図した通りに力は働かなかったのか。なるほどね」
その事実をよく噛み砕き、自分の中に浸透させてから、上峰達也は率直に自分の言葉を放った。
「それじゃあ救えないだろ」
「.......は?」
その瞬間、今までずっと余裕の様子を崩さなかった『完璧』の表情が凍った。
しかし気にせずに達也は続ける。
「それじゃあいくらやったってダメだよ。藍神鈴蘭がいくら望んでいようが、それをお前の都合で叶えるから、彼女はどんどん救いから離れるんだよ」
「.......黙れ」
「だってそうだろ?例えばの話だけどさ、楽しみにしていたゲームをようやく買えた。さて始めようとしたらゲーム開始から最強の武器と最大のステータスが手に入った。しかもその能力は自分の思い通りには使えない。そんなの、楽しくないに決まってる」
「黙れ」
「だからゲームをやめようと思った。なのに、それすら自分の意思でできない。それと一緒だよ。お前が藍神鈴蘭から人生の生きる意味を奪ったんだよ」
「黙りなさい!!」
『完璧』の姿が消えた。そう認識した時には既に達也の身体は地面に叩きつけられていた。
「がはっ!!」
「達也さん!!」
「私が鈴蘭を苦しめたって?私が鈴蘭を追い詰めたって?」
突然の変貌に思わず動きを止めるキクト、アリス、カナチ。
だが、そんなことに『完璧』は構わない。ただ目の前の少年の襟首を掴むと、今度は自分の番だというように憎悪にまみれた言葉をぶつけていく。
「あんたがそれを言うの?あんたたち人間は鈴蘭を助けられなかったくせに、守れなかったくせに、救えなかったくせに!!」
「まだ、わからねぇのかよ!」
「なにが!私の救いは完璧だった!ただの一生物じゃできないレベルの救いを与えられた!だから鈴蘭は救われないとおかしいの!だってそれが私の力なんだから!!」
「だけど!事実藍神鈴蘭は救われていない!それはお前の救いが間違っていたっていう何よりの証拠だろ!」
『完璧』は鈴蘭とは違い、『純粋にあらゆる事象を完璧にこなす』ことができる。
だが、逆にその力が仇となり彼女は失敗を犯した。
「『救い方が完璧なだけ』で、その方法は藍神鈴蘭が望んだ救いだったのかよ!」
そう。『あらゆる事象を完璧にこなす』というのは、単に『模範例通り』のことをしているだけなのだ。
勉強やスポーツ、その他の事に関してはそれで十分だろう。何故なら、攻略法が決まっているのだから。
だが人はそうはいかない。十人十色という言葉があるように、正解に至るまでの過程が変化し過ぎるのだ。
だからこそ明確な攻略法など存在しないし、存在することができない。
「.......そん、な」
「そんなはずないって?何でそう言い切れる?お前はさっき人を救おうとしたのは初めて言っただろ。だからわからないはずだ、しっかりとした手順も方法も。なのに、何も考えずに今まで通りただ力を振るった!」
「.......!」
「どこかで何があったかは知らない。けど、その時に鈴蘭は救ってもらえなかった。次にお前まで失敗したら鈴蘭は今度こそ壊れるぞ!」
ふっ、と突然『完璧』の腕から力が抜け、支えを失った達也が草むらに倒れ込んだ。
そして『完璧』自身も崩れ落ちる。その顔からは表情が消え、瞳からは色が失われている。
思わず声をかけようとした達也だったが、しかし動こうとはしなかった。
いや、正確には動けなかった。は
何故なら、
「.......そう言うなら、」
『完璧』の唇が小さく動く。
突然、強烈な風が吹き荒れた。
あの時、大通りで猛威を振るった黒と白の奔流。だが規模と勢いはまるで段違いの二つの色が溢れ出す。
ついさっきまで色の無かった瞳に、強い信念が込められた光が宿る。だがその色はどす黒い、憎悪の色だった。
「そう言うなら、私を越えてみせろ。この『完璧』が間違っているというのなら、自らの力で正しさを証明してみなさい!!」
黒と白が混ざり合い、絡み合って、一つの形を作り上げていく。
それは先端が細長く鋭い、黒と白の刀身を持つ剣だった。
「天埜貫とでも名付けようかな。正真正銘、神の武具だよ」
黒白の細剣、天埜貫。その優美な剣を、『完璧』はゆっくりとした動作で真横に振るった。
それだけ。
たったそれだけの動作で、達也の後ろにいたアリスの身体が真横に吹き飛び、一本の木に激突してそのまま地面に崩れ落ちた。
「アリス!!」
「さぁて、次は誰を狙おうかしら。大口叩いたあんた?それとも見習いの君?.......やっぱりそこのおチビさんね」
『完璧』が剣を上段に構えて振るう。カナチの小さな身体が地面に叩きつけられた。
達也は自分の背筋が凍るのを感じた。
これが神の力。
キクトのような見習いでも、楽のような人工物でもない純粋な神。
そう、目の前ににいるのは、人間が歯向かおうと思うこと自体が不遜な存在なのだ。
.......だけど。
「.......その程度で諦められるかよ」
「あんた、本当にわかっていってるのそれ?今あんたたちを襲っているのは正真正銘、神が落とした天罰と同類の力なの!!」
「最近妙に変な連中と出くわしてるからな。不思議な力には慣れてんだよ」
「.......わかんない」
天埜貫を水平に構え直し、『完璧』は続ける。
「わかんない。なにそれ、なに言ってるのよ!神なのよ?異世界人なんかじゃない!世界を壊せる力さえ持つ」
「だからなんだよ」
しかし上峰達也は真正面からその言葉を否定した。
確かに怖い。正直今すぐ逃げ出して今まで通り普通の日常に帰りたいとは思う。
だから、
「もう俺にとってはさ、カナチがいて、アリスがいて、楽がいて、キクトがいることが日常なんだよ。だから俺はだから諦めないし、負けられない」
「もういい.......!」
『完璧』の両眼が冷たくなる。その剣の切っ先はピタリと達也の心臓に向けられていた。
「私は私の日常に戻る。そして鈴蘭を救う!やり方が間違っているなら、最初からやり直せばいい!」
「最初からやり直せると思ってるのか?そんなので救われるとでも?」
「黙れ!お前は邪魔なのよ!だから、ここで、」
剣に黒と白の奔流が集まり、とても強い輝きを放つ。
「あんたを殺す!!」
真の神罰を宿した一撃が振るわれる。それは今までのような戦闘不能状態に陥らせるようなちゃちなものではなく、愚かで矮小な人の子を消し去る為の一撃。
当然、達也は動くことすらできずに一撃を喰らい、木っ端微塵に爆発するはずだろう。
ーーーーーーーしかし、上峰達也は笑っていた。
そして、彼は笑いながら言葉を紡ぐ。
「けどな、俺は一人で勝てるとは微塵も思ってないぞ?」
神罰が達也に触れる、その瞬間。
ギィン!!と甲高い音が鳴り響き、『完璧』の腕と共に天埜貫が弾き返された。
その衝撃で砂埃が舞い、『完璧』の視界を多い尽くした。
「なっ.......!?」
言葉に詰まる『完璧』。神罰に対抗するには同じ神の力しかない。しかし達也達の中には神はあの見習いだけだったはずだ。しかしあの少年でも今の一撃は防げない。
「.......そういえば」
あの神見習い、ついさっきまでいただろうか?
記憶を探ってみるが確かに見ていない。
しかし今の一撃は見習い程度にどうにかできるレベルではない。
なら、誰が.......?
その時、砂煙の向こうから突然少女の声が飛んできた。
「うふふのふ。目には目を、歯には歯を、神には神を、ってね☆」
「.......!?」
声を聞いた瞬間、『完璧』は頭ではなく本能で理解した。
砂埃が晴れる。そして、そこに一人の神がいた。
鳳楽。
人工物だろうとなんだろうと、正真正銘神を冠する存在である。
「まったく、油断しちゃったよね。どうせしょっぼいのが憑いてると思ったら、まさかこーんな超レア物だったとはね。もうホントに」
ニヤリ、と楽の顔に獰猛な笑みが浮かぶ。
「楽しくて楽しくて仕方がないよ!!」
言葉が終わるや否や楽の姿が霞んだ。
対して、『完璧』も天埜貫を振るう。キィン!!と甲高い音が鳴り響いた。
「この、贋物が.......!」
「偽物は本物よりも本物らしいって知らない?」
「黙れ!」
黒白がもう一度天埜貫に集まる。しかし今回はさっきの一撃とは違い、集まった黒白は、まるで刀身から翼を生えたかのように形を成した。
そして剣先を楽たちの方向に向ける。
「穿ちなさい、天鳥船!!」
言葉と共に天埜貫から巨大な鳥が羽ばたいた。それを見た楽の表情に少しだけ変化が起きた。
しかし表情に浮かぶのは恐怖ではなくむしろ残念がっているような色だった。
何故なら、
「.......防御する」
横合いから飛び出したアリスの右手に黒白の巨鳥が触れると、そのまま跡形もなく消し飛んだからだ。
『完璧』の表情が怒りで歪むが、対してアリスは完璧なまでに無表情だった。
アリスが広げた右手を握る。それだけで、華奢な右腕が巨大なパイルバンカーへと化した。
パイルバンカー。簡単に言うならば、爆薬で大砲の代わりに巨大な槍を叩き込む兵器だ。その殺人兵器をアリスが神専用にバージョンアップしたのだ。
「対神専用装備【|神殺し(ロンギヌス)】のマテリアライズを確認、アリスは攻撃を開始する」
ドン!!とアリスが『完璧』目掛けて走り出す。
一瞬、回避しようとした『完璧』だが、即座にそんな考えを押し潰す。
「う、ああああああああ!!!」
天埜貫と【|神殺し(ロンギヌス)】が激突する。ガチン!!と轟音が鳴り、必殺の槍が連続で打ち出された。
その強い衝撃を受けて、天埜貫の刀身が震える。何回も、何回も。
そして.......ついに。
バキン!!と度重なる衝撃に耐えきれずに、天埜貫の刀身が真っ二つに折れる。
さらにアリスの背後から楽が空中に飛び上がる。それは完全に『完璧』の意表を突いた動きだった。
「とりゃああああああ!!!!!
「なっ.......!?」
凄まじい轟音が鳴り響いた。 巻き起こされる風で辺りの木々が揺れ、地面がめくり上がる。
しかし、
「負けて、たまるか.......!!」
まだ彼女は立っていた。
蹴りを受け止めた腕は血だらけになり、制服はもはやその役目を果たしていない程にボロボロだ。
しかし、その瞳はまだ死んでいない。
「負けない、負けられない、負けちゃいけない!!」
「ちょっと聞いていい?そこまでしてその人間が大切なわけ?」
「当然、でしょ!この子がいなかったら、今頃私は『あの連中』の一人になって、最低最悪の邪神にすら成り果てたかもしれない!」
「ふーん。だから救う、ね。あ、そうそう、答え合わせしてあげようか」
「答え、合わせ?」
「そ。あんたのミスは、気付いてると思うけど達也に集中し過ぎてキクトを見ていなかったこと。その間にキクトが私を覚醒させて、アリスを、そしてカナチの回復も行った」
「ちぃ!あの見習い風情があああああ!!」
「じゃあここで問二。いま、あんたの見失っているものはなーんだ?」
「.......あ」
思わずそんな声が出た。同時に、背後から強い気配を感じ、すぐさま振り替える。
そこには刀を下段に構えた達也の姿があった。
「こ、の.......!」
「一人の力『だけ』じゃ及ばなくても、一人の力『全て』が重なれば、神にだって届くんだよ!!」
刀が迫る。だが振るうのはただの人間。神である『完璧』の方が反応は早い。恐るべき速度で右手に黒白の奔流が集まり、もう一度天埜貫が形を成す。
「負ける、かあああああああああ!!!!!」
天埜貫が達也の首目掛けて振るわれる。このままいけば達也の刃が『完璧』を捉えるより先に、達也の首が無くなるだろう。
しかし、ここで『完璧』は気付く。
今目の前にいるのは達也一人。そう、一人だけ。
「(後二人、いない.......?)」
そう考えると同時に、『完璧』の身に異変が起きた。天埜貫を握る腕が突然加速したのだ。
同時に気付く。達也の少し後ろにキクトに肩を貸されて立っているカナチの姿があった。
そしてカナチは腕をこちらに向けている。
「魔、法!?」
タイミングを外された天埜貫が達也の首を掠めて通りすぎ、地面に突き刺さる。
そして、その隙は人が神に届くためには充分すぎるものだった。
「これで終わり、だああああああああああああ!!!!!」
達也が叫ぶ。刀が振るわれる。
そしてーーーーーーーーー
***
「あさだよー、たーつーやー!!」
「げふぉう!?」
腹にとてつもない衝撃で、ベッドから飛び起きる達也。
見ると、達也の上に黒い髪に赤い瞳の幼女が肘を突き立てていた。どうやらこの体制でプレスを仕掛けてきたらしい。
「この野郎、百合!毎朝毎朝人の腹に攻撃仕掛けるんじゃねぇよ!」
「これがわたしのひょうじゅんそうびでありますたいちょー!」
「黙れ!貴様など銃殺刑だ!」
「.......またしてるの?」
と、そこでやたらクールな氷点下ボイスが割り込んできた。
その声の主は、まるで幼女ーー百合がそのまま成長したような顔立ちをしていた。ちなみに制服の上からエプロンを装着し、手にはおたまを握っている。
「あの、鈴蘭さん?どうしてお前はいつもいつも非の無い俺に冷たい視線を向けるわけ?」
「ロリコン**」
「言ってはいけないことを言ったなこの黙り!」
「ほう、言ってはいけないことを言ったねこのロリコン」
「え、何やめて、ぎゃあああああああ!!」
ここ最近、物理的なダメージと精神的なダメージがメーター振り切っているレベルで高い達也だった。
さて、あの時。達也の刃は確かに『完璧』を切り裂いた。
そして『完璧』は藍神鈴蘭の身体から出ていき、そのまま消失したものと思っていた。
.......なのだが。藍神鈴蘭を達也の家で保護して一夜経った朝、すさまじい衝撃で叩き起こされたのだ。
見るとそこには鈴蘭をそのまま幼くしたような謎の幼女が。
話を聞くとどうやら彼女は『完璧』らしいのだ。達也に斬られたことで『完璧』を形作る要素はほとんど無くなったが、僅かに残った要素を『完璧』の力で復元したらしい。
ちなみに百合というのは鈴蘭命名だ。この世界にいる間は藍神百合という名前で鈴蘭の妹ということらしい。
こうして上峰達也の家には新たにパラレルワールドの完璧超人藍神鈴蘭と正真正銘の神にしてミニマム化した藍神百合が居候することになった。
***
真夜中、藍神鈴蘭の目の前には自分に瓜二つの幼い少女がいた。
その少女とは初対面だが、なんとなく誰でどういう存在なのかはわかった。
彼女はこう聞いてきた。まだ救わせてくれる?と。
鈴蘭は答えた。いいよ、と。
今まで確かに辛かった。苦しかった。
だけど、それが誰かが自分の事を気にかけてくれて、助けようとしてくれた結果、空回りしただけだった。なんだかそれを知ったら、怒るに怒れなくなってしまったのだ。
それに、だ。鈴蘭は生まれて初めて、このずっと楽しくなかった人生で大切な目的を見つけることができた。
「ここには、まだ私が知らない何かがある。それを知ろうとするのはさ、とても楽しいことだと思わない?」
鈴蘭の問いに、目の前の少女はにっこりと笑った。
その笑みは、本当に本当に、輝く光のように眩しいものだった。
例え世界がどんなに悪意に染まっていて、悲しみに埋もれたとしても。それでもきっと希望の光は存在する。
小さくて仄かな、それでいてとても強く輝く光が。
だから彼女は迷わずに歩いていく。これから先、どんなに苦しいことが起きても、前だけを向くことができる。
だってそれが、彼女が手に入れた『強さ』なのだから。
返信遅れました
なにやら一人だけ完結してますね.....
上峰はロリコンかなるほどです。
長いので、2話くらいに分割して投稿した方が良いでしょうか?
少し気になるとしたら本来コンピューターウイルスに対応するための兵装(アンチプログラム)しか持たないアリスがどうやって対神用兵装を構成実体化できたのかというぐらいですが、アリスは互換性さえあれば必要な情報を揃えてシステムを再構成、環境に適応するだけのスペックはあるのでさほど問題ないでしょう。
何より、これだからリレー小説は面白い
想定ではアリスは戦闘タイプのキャラじゃなかったです(^_^;)攻撃通じないので
できるとしたら……不貫の盾←
次話楽しみにしてます(^_^)/誰でしたっけ
アリスのできること(初期想定なので参考までに)
・普通のパソコン・スマートホンにできること。
→GPSやインターネットなど既存のシステムに介入して情報を集めることもできます。電話やメールに関しても携帯と同様に使うこともできます。もう携帯なんていらない←
・高次元の情報処理性能と技術
→感覚的に電子情報を把握、処理できるため、基本的に想定される程度の電子セキュリティは用意に掻い潜り、電子制御されているものであれば自在に操作することもできる。同様に強固なセキュリティシステムを組むこともできるため、あらゆる電子的干渉をシャットアウトすることも。
・パーティクル・マニピュレータによる物質の分解と構成
→空気中の酸素・水素から水を作ったり、同様に酸素・水素と炭素を用いて食べ物を作ることもできる。ただし食べた(解析した)ことのない味の再現は困難。無から作り出しているわけではないためその場にある何かしらが消耗・消滅しているが、日常生活の上では使用されていない物も多いので気になるほどではないかと。
→ハッカーとしての能力も併用すると、ガラクタの山から各国最新鋭の軍事兵器ですら再現し、自身の電子制御によって自動操作させることまでできてしまうため、そういった方法で物理戦闘をさせることは可能。
・お掃除
→ごみ処理から戦闘の痕跡の完全修復までこなす便利な子
長文失礼しました~
あけましておめでとうございます((遅い
二つに分けた内一つは投稿済みです!
もう一方は今週中に上がるかと!
あと蓑虫さんにも連絡を取っておきます!
すいません、企画倒れ間際かもしれないけどまだ決定してません・・・
部活の大会が近くて、執筆できてないんです、はい。
逆に、大会さえ終われば割と暇になるのでなんとか頑張ります。
なんかもう自作品なんて1年くらい更新してないのでひょっとしたら企画倒れになるかもしれなくてビクビクしてます・・・
今まで「まだ大丈夫、まだ大丈夫」って自分を誤魔化していましたが、やはり無理でした。
自分で一番嫌いだったはずなのに、「やはり無理でした」で終わらせてしまうことがとても残念です。
前と違って部活を始めたというのは大きく、小説を書く時間どころか普段課題をする時間まで削っていたので、もう既に小説を書く余裕などなかったみたいです。
結局完結させることができず、皆さんに迷惑をかけてしまったことに申し訳なく思います。
多分作者参加で既に離れた人は何人かいるかもしれませんが、それでも最後まで残ってくれた方々、本当にありがとうございます。
そして中途半端な結果になってしまってすみません。
もし、どうしても完結させたいのならメッセージでもなんでもください。
なろうはまだ辞めませんが、多分またまともに小説を書ける余裕ができるのは夏休み頃だと思います。
それは困りましたね(--;
まあキャラ自体は多少改変すれば自作品の方で流用できるので問題はないですが……。
できればテキストデータ化して手元で保存するためにダウンロード出来る場所を用意していただきたいです
>詩歌さん
えっと、Dropboxで良いですか?
途中でPC変更してるので、コピペの作業が終わったらメッセでリンク送ります。
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