主 2013-08-21 03:00:05 |
通報 |
優弥様、お食事ができましたよ(リビングの扉をノックし、食事の乗ったカートを運び入れる。主の前に前菜を並べ、グラスにレモン水を注ぐ。)なにか楽しいことでもございましたか?(席につき微笑む主を不思議そうに見やりながら準備を進めてゆく)
ああ(部屋に入ってきた相手を見て、姿勢を正すと、注がれるレモン水を見つめて。その後の言葉には、はてと首を傾げた。笑みを浮かべていたのはほとんど無自覚で、相手がなぜそんなことを尋ねてきたのか、分からずにいた。)楽しいことは、別に無ぇけど……(うーん、と思いめぐらせ、そういえば直前に己が考えていたことに行きあたった。)お前、一緒に食べるだろ?(己の前に並べられた前菜を見て、相手の分が用意されていないことに気がついて。忘れてやいないだろうか、と、ほんの僅か不安そうに尋ねた。)
え?あぁ…(どうやら昼食時に交わした約束を忘れていないか、と不安そうな主に言葉を濁す。確かにカートの二段目には自分分の夕食も持ち寄っていたのだが、主は本当に一緒に食べる気なのだろうか、と不安になったのだ。)本当に、ご一緒してもよろしいのですか…?(主の夕食の準備も終え、少し不安そうに眉を寄せながら口に指を寄せ聞き返えす。本当であれば使えるべき主人と使えるべき執事が食事を共にすべきではないのは分かっていながらも、主と食事をする楽しさを忘れられないのも事実であった。)
お前なー(不安そうな相手に、呆れたように大きく溜息を吐く。どうしてこの男は、自分自身が関わることに、こんなにも弱気になるのだろうか。執事だからだろうか、とも考えたが、これまで、使いにこんなことを言ったことはなかったので、その感情は、いまいち分からず。)俺が、一緒に食えって言ってんの。命令だよ、めいれー(こう言えば、相手も従いやすいだろうか、と、言葉は悪いがそう言って。)
命令でございますか…かしこまりました(命令、そう言った主の優しさに気づきながらもそれに甘え、承諾する。カートの2段目から自分の夕餉を取り出すと主の隣に並べ、さっと準備を終える。)どうぞ…お召し上がりください(彼が食事する姿を横目で盗み見ながら考える。ここ数日、主の食事姿を何度も見てきたが料理が得意としてもやはり最初の一口は心配になるのだ。)
ん、ああ(相手に促され、いただきます、と言えば、ナイフとフォークを器用に使って料理を食べていく。やはり、美味しいな、と頷けば、相手の顔を見てそれを伝えた。しかし、こういったコース形式だと、相手は準備と食事を兼ねなければいけないのだな、と、食べ進めながら考えた。しばし悩んでから、あ、と声を漏らす。)お前、和食とかも作れるのか?(期待するような目でそう尋ねれば、首を傾げた。)
(どうやら何の問題もなく食べ進める主にほっと安心の息を付きながら自分も食べ進める。時折食事の進み具合を見ながら前菜、スープ、メインと出していき飲み物を給仕する。ちらりと主を確認しているとあ、と声を漏らしどうしたのだろうかと見つめていたが次に主から発せられた質問に返す。)え?…はい、フレンチはもちろん、和食、中華にイタリアンそれからドイツ料理なども可能です(自分の料理のレパートリーをすらすらと述べながら、何か気に入らないものでもございましたか?と問い返す。)
(出てくる料理のすべてがきれいに盛り付けられており、そのどれもが美味しくて。相手の料理の腕に驚いていれば、その後の答えには、目を見開かざるを得なかった。)ドイツ料理……(予想外の言葉に、思わず、どんな教育を受けてきたのかと問いたくなったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。)じゃあ、今度、肉じゃがとか作ってくれよ(幼い頃から、家では一流の食事を与えられてきたが、それは“普通”とは言い難いものだと自負していた。以前、何かの雑誌で、家庭の味といえば肉じゃが、というような記事を読んだことがあった。小学校の給食で食べたことはあったが、この男が作れば、数倍美味しい物になるに違いない、と考えた。)それに、フルコースだと、準備もあるから大変だし(今回の食事も、やはり慌ただしい物だった。一緒につまめる物であれば、それも解消できるだろう、と。)
肉じゃがですか…かしこまりました(主人の突然の提案に驚きつつも、明日の献立を考える。じゃがいもと人参はあったな、玉ねぎが少なかったが明日仕入れの業者が入るはずだから行けるだろう…確か冷蔵庫に和牛が残っていたはずだからそれを使えばいいか…?野菜の彩も…とどんどん考えが浮かんでいく。)和食は割と得意なんです、母にみっちり教わりましたから(毎日いろんなことを教わったが、和食とフレンチは特に厳しかった。いつも将来みる主人のためだと、父も母も口癖のように言ったものだったのを思い出し、苦笑いを浮かべながらそう伝える。)
うん、頼んだ(そう言うと、相手の顔をぼんやり眺めた。調理のことを考えているのだろうか、真剣な眼差しは、いつも優しく微笑んでいる表情とは違い、新鮮だった。)母……(後の相手の言葉には、僅かに視線を揺らがせた。父も母も健在だが、二人共、毎日忙しなく働いているために、その姿はあまり印象に残っていない。相手が教育としてそれを教わったのだとしても、己にはとても羨ましい響きだった。自分の母は、どんな顔をしていただろうか、と考えながら、グラスの水を口に含んだ。)
…差し出がましいことを、申しました(ふと顔を上げ見つめた彼の瞳の僅かな揺れに気づき、顔を引き締め詫びを入れる。視線を揺らがせる彼の横顔に、自分を雇い入れた彼の父親のことを僅かに思い出した。彼の不器用な為人に、彼の両親がどう関わっているのか自分には知る由もなかったが、彼に仕えることで少しでも彼を支えることができればと強く思った。)明日の肉じゃが、頑張りますので…楽しみにしてらしてください(このお方のためにと強い思いをもって彼に微笑み、そう告げた。)
いや、お前が気にすることじゃねぇよ(そう言って弱々しく笑めば、立ち上がり、相手の頭にぽんと手を載せた。普段は、こうして見下ろすことがないので、なんだか不思議な感じがする。触れた髪は柔らかく、そのままひと撫でして手を離した。)ああ、頼む(後の言葉に答えると、「風呂に入る」と告げて、リビングを立ち去った。)
・・・っ(突然主に撫でられ、頭に乗る暖かい手の感触になんともいえないくすぐったさと同時に照れを覚える。高校生の平均的な身長に比べれば断然高い部類に入る自分が、まさか頭を撫でられるとは思っても見なかった。)はい、ではお着替えをお持ちいたします(風呂に入ると告げた主の背中にそう伝えかけ、食器を片付ける。主の部屋に立ち寄り着替えとタオルを持ち寄り脱衣所の扉をノックする。)
ん?(シャワーを浴びていると、微かに戸を叩く音が聞こえた。そういえば、着替えを持ってくるという執事の言葉を思い出し、ノズルを閉めると、シャワールームの扉を開ける。さすがにこのまま出て行くのははばかられるな、と考えた。「庵か?中に置いといてくれ」十中八九そうだろう、と、名前を確かめる意味もなくそう続けると、再びシャワールームの中へ入った。いちいちノックをしてくるなんて、律儀というか、真面目というか……。湯に浸かりながら、小さく笑う。)
(主の了解を得て脱衣所にタオルと着替えを置き退出する。それから自分がすべき仕事を思い浮かべながら廊下を進む。)まずは、ベットルームですね(誰もいない主の部屋にコンコンとノックをしたのち失礼しますと述べ入室する。ベットメイクをした後しわになっていた制服を回収したかわりにパリッと糊のきいたYシャツと綺麗にクリーニングされた制服をかけておくのだ、これで明日もしっかりと制服を着込んだ背筋の良い主の姿を拝見することができる。)そろそろお上がりになる時間だな…(家具を気づ付けたり仕事の邪魔になることから懐に入れている時計を取り出し見遣ると、制服を片手に主の部屋から退出した。)
トピック検索 |