プロローグ
雨がざぁざぁと降りしきり街も何もかもが濡れているというのに、この路上だけは濡れていなかった。
薄汚れたビル同士に挟まれ、誰も寄り付かないような鬱蒼としたそんな場所に私は居た。
此処が気に入っているという訳じゃない、ただ雨宿り出来ればそれで良かったし、何よりも此処はゴミやら鉄屑やらが散乱しており、非常に不愉快この上無かった。
…私が此処を選んでいるのは他でもなく、ある目的を遂行する為だけだった。
それは、女を一人殺すという物。
それが達成出来れば、私は豊な暮らしが約束されたも同然であり、幸せなまま生涯を閉じられる……かもしれない可能性がある、という、そんな微妙な可能性に賭けた計画だった。