僕は初めて人間を殺した。相手は父親だった。父親は仕事で溜まったストレスを、飼っていた猫の凪にぶつけて発散していた。凪の小さな体は無惨にも奇妙な方向へ胴が捻れていた。そんな凪の姿を見た僕の頭の中で、何かがプツリと切れた音がした。気が付くと、僕の両手は父親の首元を締め付けていた。目の前には目と鼻と口から透明な液体を出した男の滑稽な顔が見える。殺してしまった、と僕は思った。けれども罪悪感は一切湧かなかった。むしろ満ち足りた気分だった。