千石清純 2013-06-30 16:21:56 |
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...嗚呼、分かった。( 相手からの労う言葉掛け、部活で挨拶の一部としておこなうそれは何処か機械的であり、慣れきったものである。しかし相手からの言葉にはどこか温かみも含まれていて、僅かだが穏やかな心情を芽生えていてそれが直接的な穏やかさや温かさであることに違和感覚えると気付けば頭上には彼の手。そこから直に伝わる体温だと認知すると、”撫でられる”といった行為そのものに慣れていない己からすると複雑な心境半分新鮮味半分。内心自嘲的にフッ、と小さく笑いつつ。最後の彼の言葉に了解の意を表し)
――、( 荷物から取り出した着替えを片手にバスルームへと歩み、扉を閉め終えるとそのまま凭れ掛かる様に背を付けて。己の掌を細めた双眸で見つめ、小さく吐息を吐き出せば先程の光景が脳裏を過ぎり指先へ唇を寄せて。 リビングルームでは携帯が着信を知らせる為に機械的な音楽を鳴らしており、己の物ではない音にきっと伝言を言い渡した彼の仕業だろうと察すると扉から背を離して姿勢を正し、上着を脱ぎ捨てて木製の籠へ )
...( 相手が脱衣所へと向かい、再び静けさを取り戻した部屋で身体的にも疲れは薄らいでいて今度は微睡などではなくて生理的な眠気が湧いてきたのか自然な流れで目を閉じる。意識も薄れていくなか、あと少しという所で突然鳴り響く機械音。それは着信を知らせる為の物であり、この時間帯での連絡は今までの合宿でもなく緊急な物だと思い込み急いで手に取るも名前を確認するとそこには”忍足侑士”という文字。先程、同室である相手からの伝言を思い出すと睡眠の妨げが同じ部員であるがゆえに舌打ちをチッ、と響かせる。そのまま通話ボタンを押し、寝起きに近い状態の為幾分か掠れ気味に「何か用か、」と電話での第一声にも関わらずに、さっそくと要件を問い)
…えらい簡潔やなぁ。朝に言うとった件についてやけど。( 何度目かの呼び出し音が途切れ、ようやく聞こえた台詞は要件のみを求めている事に相変わらずだと小さな息を吐き。朝の件、と言うのは他では無く何処かへ出掛けないかとの誘いを示しており、携帯から流れた声色が眠気を含んでいる事を悟ってはいるものの「ジローも会いたいって言っとるで。眠っとるけど。」と促す様に。笑みを含みながらの言葉は何処か疑わしい響きを持っており、自分と同室である彼の話題を出すも当の人物は眠ってしまっている様で )
あーん?出掛けたいなら迎えに来い、そしたら考えてやるよ。( 彼からの要件はやはり予想していたものとぴったり合致する。しかし、電話で確認を取る辺り自分が断りを入れるという考えも視野に入れているのであろうか。引き続き会いたがっているという人物が現れるもその相手はいつものように眠っていると聞き、それ以前に先程まで練習で顔を合わせたばかりであるのに何故会いたがっているのかがただただ疑問であり。緊急の用事なら、本人から言うであろうが眠っている事でそれは無く。たまには、プライベートの時間を共有したいというのか、出掛けるにしても合宿中で制限は少なからずある。幾つもの疑問を抱えるも、断ればいい話で少しばかり離れた部屋である彼に向かい一言、ハッと携帯越しに鼻で1つ笑い)
…そう言うと思ってな、今部屋の前や。早よ開けて、そろそろ片腕ちぎれそうやねん。…ほら、起きぃや。跡部来るで。( 片手には携帯、片腕では己の肩に凭れ居眠りをする人物を支えた姿で言い終えると手の代わりに扉を爪先で軽く叩き。一方、心地良く眠っていたものの頭上から聞こえた台詞に目蓋を開けて瞳を輝かせ「あっとべー!俺さ、マジック出来るようになったんだCー!マジマジすげぇっしょ!?」と、まるで幼少期の子供が母親に覚えたばかりの特技を披露したいと騒ぐ姿と同じ無邪気さで。扉に向かい上記の台詞を叫んでいる為、当然廊下には遠慮無く響いているが隣に立っている存在は叱るどころかやっと解放された片腕を慣らす様に揺らしており )
.......、チッ、ほらさっさと入れ。周りに迷惑だ。( たった1枚の扉越し、小さな物音ひとつでも相手の存在は気が付く事も可能だったであろう、何より自分の思考を相手に読まれていた事が不覚だったと苛立ちを覚え舌打ちを1つ。それに加え氷帝部員の中でもある意味問題児でもある彼の無邪気な声はしっかりと部屋の中にも届いている。合宿所という名のホテルで、部員数は多く一般客は居ないものの氷帝の看板を背負う自分達、小さな事だがその看板に傷をつける行為は自分のプライドが許さずに同室の彼に対する配慮はどこかに追いやり取り敢えず扉を開け、早く入れと指示を)
ほな邪魔します…って何や、千石は?( 扉が開き許可を得ると片方の口角を上げて笑みを浮かばせ、相手が登場した事に先程よりはしゃぐ人物に続いて室内へ足を踏み入れて。そう言えば同室であった彼の姿が見当たらない事に気が付いて辺りを見渡しながら問い掛け、僅かであるがシャワールームから聞こえる水音に嗚呼、と視線を向けて納得を。数分前では何度起こしても目蓋を開けなかったにも関わらず、如何やら誰かに教わったらしいマジックを見て欲しいと何度も強請る様子に欠伸を洩らしながら自然な動作で勝手ながらソファーに腰を降ろし )
風呂だ。( 当たり前だが遠慮の欠片も無い2人の様子に片眉顰めながらも問いかけられた問いに短く簡潔に答えを返す。そのままソファへと戻ると既に1人座っていて、少しばかり距離を開けた所で自分もまた座ると背凭れにもたれ掛りそのまま上の淵に腕を乗せお構い無しと伸ばし。長く伸びた足を組み、早々と本題に。きっと、彼のマジックを見れば二人は帰るであろう。中学生のマジックはだいたいが予想の出来るクオリティで、それに加え相手の事だ。鳩でも出す勢いだがきっとカードの類であろう、「ジロー、やるなら早くやれ。」と客人に向かっての言葉では不適切であろうか、慣れた雰囲気であるから言えたもので)
おお、やるやるやる!んーとね、…あれ?…トランプ持って来るの忘れちゃってたCー!( 己のポケットを掌で叩くが何も無く、肝心の道具を忘れてしまっては如何する事も出来ないと口を大きく開けて吃驚している様子で。だが、そんな問題を長々と引きずる性格ではない所為か直ぐに笑顔になり、「じゃ、代わりのマジックすんね。」と。ソファーへ座る二人の元に近付き、相手の隣の彼が掛けている伊達眼鏡を勢い良く取り去れば「この眼鏡を取るとー、はい!誰かわかんなE〜!」大成功とでも言いたげな満面の笑みを向けて。眼鏡を取り払われ勝手に巻き込まれた彼は額へ手を宛て、きっと隣で足を組む人物の機嫌は最悪な物だろうと、重い空気に耐えかねて溜め息を吐いており )
ジロー、俺の隣りの奴連れてさっさと出て行け。知らねェ奴を部屋に入れるのは危険だろそうだよなァ( 目の前のマジックはやはりカードの類で、予測通りであとは見ているだけ。しかし、その大事なカードを忘れたという言葉に苛々。さらに続け様、隣りの彼の眼鏡を外すというだけの事で満面の笑み浮かべる相手はなんとも純粋で悪意など微塵も無く、だからこそ苛々苛々。眉を寄せ肘置きに肘をたてそこに顔預けると横目で隣りの彼を見つめたあとに、そのまま目の前の相手へと指示を出す。いつもより雰囲気低い声が故に、最早命令ともなっているであろうか。純粋な彼だからこその指示内容、反論は認めないと言わんばかりに言葉を続け)
ははは、そやなぁ。跡部の言う通りや、危ないから帰るでジロー。ほな跡部、お邪魔しました。( 隣から突き刺さる様な視線を半身に浴びて、裸眼になった目で相手を見てみると予想通りに機嫌は最悪で。顔が整っている所為もあり命令を下す其の表情は他人の物と比べ一段と迫力が増しており、未だ能天気に眼鏡を揺らして遊んでいる腕を掴んで急遽に立ち上がり。半ば棒読みな台詞を向ければ早足で部屋を後にして )
…ん?忍足君と芥川君?( 風呂上りの為か上半身の衣服は未だ着用せず首元へ巻かれたタオルで濡れた髪を拭いながら扉を開けると、部屋から出て行こうとする二人の姿を見付けて。其の様子は急かしている様に見えるがいつも眠そうな雰囲気を持っている彼は至って平然としており、靴を履きながら別れの挨拶を聞くと相槌を打って片手を振り。何かあったのだろうと去って行った背後を見届けからリビングの扉を開け「あの二人、どうしたの?」と、室内のキッチンへ進みつつ声を掛けて )
二度と来るな。( 隣りの”知らない奴”はさっさと無邪気な彼を率先して連れて帰る。その様子に、一旦何の目的で来たのであろうかただただ疑問であり文字通り”お邪魔”をした部員たちに苛立ちは覚えているも明日の練習メニューに1つ手を加える事に加えこの部屋は出入り禁止にでもしようか考える。見送る事も無く寧ろ吐き捨てるように呟くと、ちょうどすれ違いで来たのは同室である相手。「さァな。こっちが聞きたいくらいだ。」と言葉を。短時間であったものの、先の読めない2人の言動は厄介なものに変わりは無くて)
…まあ、何かあったみたいだね。( 元々疲労していた相手の声色に機嫌の悪さを読み取ると、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターの蓋を開け喉を潤してから仄かに同情が含まれた小さな笑みを。きっと彼達はどんな形であれ此の人物を好いているのだろうと頭の隅で思いを馳せつつ、唇端に少し零れた水滴を腕で拭いソファーへ歩んで行き入浴前と同じ位置に腰を降ろして。室内の空調が良いのか火照った身体に冷気が当たり、心地良さに惹かれて上半身の衣服は未だ着ないまま濡れた橙色の髪をタオルで軽く掻き乱しており )
...( 相手の言葉に沈黙で居る、それはきっと肯定的な意味を表わしていて。姿勢はそのままで足のみ組み直すと視界の下に写るは相手の上半身。冷暖房完備の施設で勿論各部屋に数台付いている為、暑い事はなくほどよい冷風も漂っているが直接あたるとなると、やはり風邪はひくであろう。相手の社交性を考えると、風邪1つでもきっと沢山の部員が見舞いに来るに違いない、それは先程の2人とは比にならない騒がしさであろうことを予想。前にもこういった考えを行ったような気もするのであろうか、それに加え単に同室であるため風邪などひかれては困ると「千石、服ぐらい着ろ。」と注意し)
んー、服なぁ…、( 頭上から降って来た声に目蓋を閉じると背後のソファーへ頭を乗せる様に凭れ、昼間に伴った身体への負担や風呂上り独特の気怠さも合間って眠気が仄かに現れ始め。不意に目蓋を開けると目前の顔を見上げて微笑んだかと思えば「俺、跡部君のそうゆう所好きだよ。」と、一言洩らし。相手にとって己の身を心配した上での台詞か、単に迷惑を掛けられたくないのかは証明出来ないと言うより後者の方が可能性的に高いが、事実上部屋を変える事も此の人物ならば簡単だろう。本人が自覚しているか否かはともかく、困っている存在を見捨てきれない相手の情が好きだと眠気も兼ねている為か色素の薄い日本人離れした双眸を真っ直ぐに見つめながら囁いて )
服ぐらい持って来てんだろ、( どっち付かずな返答に片眉を寄せ肘をつき相手を見下ろす。服ぐらい”という言葉であるも、汗を掻き乾いていない場合も有り得る上に未だ中学生で知能も歳相応。いつでも服など準備出来る立場だからこその発言でいて、当たり前のように言い放って。冷風で程よい室温に疲労も薄らぎあとは夕食までの時間を待つのみと、一旦思考を落ち着かせた刹那相手からの言葉に咄嗟に目をそちらに遣ると、柔い表情にしっかりと此方を見つめる姿に不思議なもどかしさ覚え意図的に目を逸らす。その場から離れようと立ち上がり備え付けの棚から予備である自分のTシャツを投げ渡し。「返さなくて結構だ、やる。」と背を向け一言。予備である為家に帰れば服など多く持っていて、1枚あげた事で苦にならず寧ろ返された方が困るのか。そのままリビングから退室、広いベランダに出ると自然な風を直に感じ、僅かながら上がった体温を冷ますのと同時に舌打ちを1つ。褒められる事に慣れてない訳でも無い、が密室で直に言われると流石に何か感じる部分もあるだろう。不覚だった、と後悔しつつ)
…跡部くん?( 何時も堂々としている相手が目を逸らした、となれば瞬きを二度三度と繰り返して其の表情をもっと見ようとソファーへ肘を付き上半身を正せば相手は既に立ち上がってしまい不可能で。もう一度名前を呼び掛けようと口を開けたが投げ渡された衣類を受け止めた事によって声は喉に突っかかり、代わりに戸惑いながら驚きを含んだ声色で「え、あ、良いの?…ありがとう!」と、遠ざかる背中に向けて言葉を発し。替えの衣服は鞄に詰めて来てはいるが、と受け取ったTシャツを暫し見つめていたものの今更ながら歓喜の感情が溢れ出し背後のソファーへ倒れる様に身を投げ出して。早速と腕を通し着用すれば自然と表情が緩み、夕食はルームサービスでも頼んでこのまま空間に溶け込みくつろぎたいと心中で小さな我儘を唱えて )
.....( ベランダで時を過ごす事数分、段々と考えている事が面倒になってきたのか先程の発言の前に相手は眠気を含む視線で有り寝惚けていたのであろう。はたまた相手の性格から考えれば、話相手を煽てる事は容易なのだろう、今更どう考えても既にそのものの話題に興味は無くて。しばらく経ったあとに部屋へと戻るとソファには既にくつろいでる姿がある。仕方なしと隣りの1人掛け用の椅子にゆったりと腰を降ろすと欠伸を漏らして)
お、来た来た。跡部君、良かったらさ、一緒に此処でご飯食べない?…あ、もちろん強制じゃないよ。( ベランダの戸が開く音に顔を上げて見れば相手の姿が視界に映り、仰向けに寝転がっていた身体を反転させてうつ伏せになり。傍の椅子に腰掛けた事を確認すると己の顎を手で支える様に顔を相手へ向け、先程から願っていた事を提案してみて。そもそも相手も自分も疲れている身でホールまでの移動が省かれると思えば効率的だが、思い出してみれば昨夜からの行動には自分がほぼ関係しているかもしれないと。さすがに其れは誰でも飽きるだろう、他でも無く飽き性な自分の場合は少なからず嫌だと思う筈。語尾の言葉は前記の事柄を踏まえた上で、逃げ道を作る為に付け足して )
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