主 2013-06-22 18:50:00 |
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ッえ、ああ…このチョコタルトもいいかなって思ってた。上にナッツとかも沢山乗ってて美味しそうだし。
(相手の機嫌を直すため、なんて建前の元に普段の自分なら確実に出来ないような注文をしてしまった手前少々上の空になっていたらしく、相手の呼びかけに思わずびくりと肩を跳ねさせてから慌てて状況を把握するとこちらにも見える様に配慮されたメニューに視線を向けて。正直悩んでいたケーキを上げればあまりに沢山のものを勧めてしまうことになるため悩んでいたケーキの中でも比較的甘さの控えめな相手でも一口位食べられそうなものをとピックアップし、メニューの中のチョコタルトの写真を指差しながらそれを勧めればどうする、とばかりに緩く首を傾げて。自分としては先ほどの注文もあってあまりこの店員と長く接触していたくなくて、少しだけ落ち着きのない様子で視線を時折揺らすと「…ケーキ、俺に気遣ってんなら無理に食わなくても別にいいぞ?」そっと相手の方に身を近づけて囁いて。)
…じゃあそれで。
(どういうわけか上の空だった相手を不思議そうに見つめるも、恐らくは己のへの配慮も兼ねているだろう意見を迷いなく取り入れれば、長らく待たせてしまった店員に控え目に頭を下げオーダーを済ませ。店員がその場を去った後軽く息をつけば、勝手に気持ちの温度差のようなものを感じてしまった先程までの微妙な空気が継続する中、若干気まずげそうに相手を見つめ。「…お前の好みで良かったのによ」そうぶっきらぼうに言葉投げるも、己を思っての然り気無い気遣いから相手の優しさが伝わり、嬉しさと愛しさに揺さぶられ頬が緩みそうになり。“此処ではやめよう”と拒まれたにも関わらず、またも言動として溢れてしまいそうな彼への想いに堪えるように、テーブルの下で拳をきゅっと握りながら視線を窓の外に移して)
ちゃんと俺の好みですー、チョコタルトも美味しそうだったんだよ。
(自分の先ほどの態度のせいだろうか、此方を見つめる相手の視線を感じながらも気まずそうに視線を逸らしていると相手の呼びかけが耳に入り、勿論相手のことを配慮しての選択だったが別に自分の好んでいないようなものを勧めたわけではなくて、思わずむっと表情を曇らせると少し強い反論を返してしまい。口から言葉が漏れた後になってはっとしたように一瞬相手の方を見てからまたすぐに視線を逸らすと、相手と楽しい時間を過ごしたくて一緒にいるはずなのに相手を困らせてしまうような方向にばかり事を運んでしまう自分自身を呪って。そんな時、どうやらケーキの前に飲み物をと頼んだものを運んできた店員が目に入り小さく息をつくと、テーブルの下でつんと相手の足を軽く突くようにして蹴って。「…先にチョッカイ出してきたの、お前の方なんだからな。」本心を言えば人目も憚らずどこでだって相手とべたべたしていたい。自分をそんな風に変えたのも、折角我慢していたのにチョッカイを出してきたのも、全て相手が悪いとでも言いたげな口ぶりで相手に囁くと店員が持ってくるメロンソーダとハートを描いて絡み合った二本のストローが刺さった浮かれた感丸出しの飲み物を示すように顎で指して。)
ちょっかい出したわけじゃねぇっつの。お前見てたら色んな事思い出して…愛しくて堪んなくて気付いたら触れてたんだよ。
(何となくもやもやした気持ちのまま、窓の外を行き交う人々をぼんやりと眺めていると、不意に咎めるような言葉と共に足を軽く蹴られ。常日頃悪戯や意地悪ばかりしているからか、どうやら先程の行為も面白がってちょっかいを掛けたと思われているようで。此方の気持ちを理解していない相手が少しばかり恨めしく、堪らず反論するものの、先程の心情をそのまま言葉にしたそれは思いの外恥ずかしい内容となってしまい。はっとした時には既に遅し、丁度飲み物を運んできた店員が何やら気まずそうな笑顔と共にそれらをテーブルに置き、そそくさと去っていき。“聞かれたじゃねぇか”とでも言いたげにじとりとした視線を相手に投げ、テーブルの上に置かれた珈琲をソーサーごと己の方へ引き寄せた際、相手がオーダーしたらしいメロンソーダを視界に捉え。メニューのドリンク欄には目を向けなかった為、相手が選んだ飲み物を此処で初めて知る事になり。「椿、お前――…、」あれ程人目を気にしていた彼を前に意外そうな表情で瞬きするも、その意図を何となく汲み取った途端自然に笑みが溢れてしまい。「…やっぱお前可愛いよ」込み上げる笑いを抑えようともせずにくく、と笑いながら告げて)
…うるさい、ばか。人前だからって我慢してんのに、平気でチョッカイ掛けてきやがって…。
(聞いているこっちが恥ずかしくなるような相手の台詞にむず痒そうに唇をきつく結びながら視線を窓の外へを向けると、どうやら相手は店員が近づいてきていることを察せないままに先程の言葉を口にしたらしいことを知り。内心ざまあみろ、と言ってやりたい気分ながらそんな彼の台詞に負けず劣らず羞恥心を煽るようなものを頼んでしまった手前それも叶わず、運ばれてきた飲み物を見て笑みを零す相手への八つ当たりじみた言葉に留まり。拗ねたような態度でばかりいるのも餓鬼臭いと自覚したのか、漸く相手ときちんと向き合い視線をそちらに投げかけると、テーブルに頬杖をつきながらにっと口角を上げて。「…俺のこと"愛しくて堪らない"んだろ?仕方ないから一緒に飲んでやってもいいんだぞー。」お互いのためにも人目のある場所であまりはしゃぐのは、と思っていたことも徐々にどうでもよくなってきてしまったらしい。相手の先ほどの言葉で吹っ切れてしまったのか悪戯っぽく笑みながら緩く首を傾げて見せると、運ばれてきたばかりのメロンソーダに刺さった自分側のストローを指で弄び、その傍らで少々調子に乗ったような、しかしながら以前の自己卑下的思想の自分なら口に出せなかったような自信の籠った言葉で相手を誘ってみて。)
…あ?それはこっちの台詞だっつの。お前がどうしても俺と恋人らしい事したくてこんな恥ずかしいモン頼んだんだろうが。
(どうやら相手も本心では己と同じ思いを抱えていたらしい事を知り嬉しさが込み上げたのも束の間、恋愛においての感情面に危うさと繊細さを持つ彼にしては強気で自信に満ちた台詞を少々上から目線でからかい半分に返されて。彼に心底惚れている事実を最大の弱味として握られている己としては何となく弄ばれているような感覚を覚え、羞恥と悔しさから不貞腐れたような表情で大人げなく言い返してやり。その間も小悪魔のような相手の可愛らしい仕草にときめいてしまっている自分が恨めしく、何処か落ち着かないように視線を散らした後ちらりと相手を見やって。己には似つかわしくないメロンソーダを前に諦めたように溜め息をつくとこちら側のストローを摘まみながら「…たく、どんな罰ゲームだよ」と溢し、“さっさとやるぞ”とでも言うように顎で指し)
ッよく言うよ、さっきまでくそ恥ずかしい台詞ぶっこいてたのはどこのどいつだったっけな?
(自分のした行為は確かに誰がどう見ても浮かれきった恥ずかしいもので、そこを突かれるとどうにも言葉が出て来なくなってしまい。一瞬言いよどむものの反論を途絶えさせては余計に羞恥心に駆られてしまうと相手の先ほどの発言を持ち出して応戦するものの、平然とした顔を保っているのもだんだん辛くなってきたのか応酬を口にする頃には随分と顔も隠し切れないほどの朱に染まっていて。相手との所謂デートという名目に何となく浮かれてしまって、らしくもない行動を取ってしまったのは自分でも少々の後悔が募るものではある。しかしながら頼んだからには、という思いと例え自分が自分として認識されない女装姿であっても相手には自分というものがあるということを周りに見せつけたいような、じわりと滲み出た独占欲に背中を押され。合図を送るようにちらりと相手に視線を送ると昨晩の行為に比べたら一緒の飲み物を飲む程度のことなど可愛いもののはずなのに酷く緊張しながらストローに口を付けて。)
そういう恥ずかしい事も言われたい癖によ。…耳まで赤いぜ、お前。
(普段仲間達の間でツッコミ役的なポジションにいるだろう彼は流石に口が達者で。怯む事なく生意気な返しをしてくる事も、どんなに強気な発言をしたところで堪えきれない羞恥が表に出てしまう事も彼らしく、愛しさを募らせながらその可愛らしさをからかわずにはいられず。相手に倣って一見平然とストローに口を近付けるも、幾ら仲が良いカップルでさえ多少羞恥はあるだろうこの甘々のイベントを前に、妙な緊張感やプレッシャーがあるのは此方も同じで。相手に合図のようにちらりと目配せしてから意を決してストローを口にすれば、見つめ合う間もなく素早く喉に流し、ストローから口を離して即座に体勢を戻してしまい。後に込み上げるのは何とも言えない気恥ずかしさと屈辱にも似た感情で、熱が顔に集中するのを感じ。まともに視線を合わせられずそっぽを向いたまま「…これでいいのかよ」と、許しを請うつもりでぼそりと呟いて)
――ッう、ん…なんつうか、ごめん。いや、うん…結構恥ずかしいのな…。
(相手の目配せを察知しこちらも少しばかりのメロンソーダを飲み込むものの、ただ同じグラスから飲み物んを飲んだだけとは思えないくらいの凄まじい羞恥に相手同様すぐに椅子の背に体を押し付ける様にして勢いよく体勢を戻し。自分でも分かる位顔が熱くなっていて、相手の呟きにまだ収まらない動悸をごまかすようにぺらぺらと言葉を紡ぎ。ひたすらに恥ずかしくて、もう次はないと思うのになぜかそんな胸中にもほわんと心が温かくなるような幸福感も存在して、うっかりにやけてしまいそうになる顔を両手で覆って隠すとどうにか落ち着こうとするように首を軽く振って。「…うん、ご協力ありがとう。後はまあ…うん、普通に俺一人で飲むわ。」羞恥心も勿論だがこれでもう一度なんてあったら今度こそ緩んでしまう顔を取り繕える自信がなくて、顔を覆ったせいで少しだけくぐもった声で呟くとそんな最中困ったように苦笑しながら近づいてきた店員からケーキを受け取って。)
お前、こういう罰ゲーム染みたもんやるのは慣れてるんじゃねぇのかよ。
(羞恥と屈辱の余りそっぽを向いたままなかなか視線を合わせられずにいたが、確実にからかわれるかと思っていた相手から意外に素直な言葉が返され。様子を窺うようにちらりとそちらを見やれば己と同様羞恥を必死に誤魔化すような仕草が見られ、愛らしい外見にそぐわない今時の男子高校生そのものの台詞が何だか可笑しくて思わず頬が緩んでしまう。仲間内の罰ゲームで女装して外出するくらいなのだから、こんなの序の口ではと、からかい半分投げてやる中ケーキが届き。好物らしい苺ショートを前に今度はどんな表情をするだろうかと、相手の表情を見逃さず己の分のケーキ皿も相手側にすっと寄せれば「…ここまで来りゃお前が食わせてくれるんだろ?」と、先程の件で吹っ切れたのか口角上げつつ緩く首を傾げ、バカップルの延長のような台詞を吐いて)
ば、罰ゲームは慣れてるけど、さ…。
(相手の言う通りこういった手の罰ゲームは結構な頻度で巻き込まれた経験があるため慣れていると言えば慣れている。しかしながらそれはあくまで相手が友人だった場合だからこそ"罰ゲーム"という体で出来るもの、相手との先程の行為をそれに当てはめることなど出来ず、むしろ罰と言うより人目さえなければご褒美にも近いもので。そのため相手の言葉に何とも言えない歯切れの悪い言葉で応答することしか出来ずにいれば、届けられたケーキがなぜか両方とも自分の方に寄せられて。まさか一口も食べないつもりか、と困ったように眉を寄せながら相手の方に視線を向けると続く相手の言葉に暫し言葉を失い。「ッは、いや…え、何言ってんだよ。それはその、ほら…その、だな…。」先程の余波をまだ対処しきれていない自分にとっては追撃に等しいその言葉に赤らんだ顔を隠すことも忘れ呆けた表情を晒してしまえば頭に片手を当てながらどうにか断ろうとまともに回っていない頭で意味を成さない単語を連ねて。)
…したかったんだろ、デートらしい事。
(なかなかのロマンチストの癖に“人前で”という事にどれだけ抵抗があるのか、しどろもどろになる様子を笑いを噛み殺しながら眺め。これまで何度も見てきた彼の恥じらう様子はいつも己の心を擽り、愛しくて堪らなくさせる。またちょっかいを出してしまいそうになる衝動をどうにか散らそうと何気なく他の席へと視線を向けた際、少しずれたタイミングで見知らぬ男と視線がかち合い。それは直ぐに向こうから気まずげに逸らされたものの、己と視線が合う前まで男の目に映っていたものが目の前の恋人であると悟って途端、忽ちに黒い感情が込み上げて来て。恐らく彼を女だと思い込み見惚れていただろう男をそのまま威嚇するような視線で様子を探った後、相手へと視線を戻し。「――おい椿、早くしろ。しねぇならそっちへ行く」見せつける事で己のものだと知らしめる等、浅はかで子供じみていると言えばそれまでだが、一度湧き出した独占欲を器用に消化する術を持ち合わせておらず。先程のまでの何処か余裕を含んだ態度とは一変し眉を寄せて少しばかり性急に急かせば、今にも相手のすぐ隣へ移動しようとする勢いで)
え、何いきなり…ッわ、かった!わかった、やるからそこ座って待ってろ!
(相手が何を思って急かしてくるかなど勿論察することもなく、急に先程までの余裕をなくした相手の変貌ぶりに少々戸惑ったように首を傾げると困ったように眉を寄せて。しかしそのままの勢いで此方にまで移動して来ようとする相手に流石に焦ったように手で制止すると先程まで相手の要求の内容に葛藤していたことも忘れうっかり勢いで了承してしまい。相手を収めるためとはいえ大分恥ずかしい要求を呑んでしまったことだったり、相手が急に急かし出したことだったり、ゆっくり考えたいことは既に山積みになっているものの早くケーキを食べさせなければ本当に移動してきそうな相手の勢いに負け漸く決心するとそっとケーキと共にテーブルに置かれたフォークを手に取り。「…あ、あーん…で、いいのか…?」相手のチョコタルトの先端、三角になった部分をさくりと刺して一口大にすると相手の方に差出し、羞恥に微かに手にしたフォークを震わせながらぎこちなくベタな台詞を口にすると真っ赤な顔のまま耐える様に唇を噛み締めて。)
お前、今自分が女だって事忘れてるだろ。
(席移動について制止をかけられるだろう事は予想出来たものの、周囲の目を気にする余裕さえない程の相手の焦り方が可笑しく、愉快げに指摘しながら一度は持ち上げた腰を大人しくその場に下ろし。彼なら恥じらいながら食べさせてくれるだろうという期待は見事に的中、羞恥に堪えるよう顔を真っ赤に染めあげフォークを向けてくるその様はぞくぞくする程可愛いと思えるもので。いっぱいいっぱいであろう相手とは真逆に満足そうに瞳を細め笑みを浮かべれば、目の前の相手を見つめたまま唇を近付け、小さくカットされたケーキをゆっくりとした動作で口に含み。しかしビターチョコとはいえ甘味が苦手な己にとってその甘さは十分堪えるものだったらしく、幾度か咀嚼した後口内に広がる甘さに僅かに眉を寄せ。それでも直ぐに表情は戻り「まあでもこのタルト部分は悪くねぇな」と、相手に食べさせてもらった効果もあるのか評価も述べ。相手の手からフォークを抜き取りそこにチョコタルトを一口乗せれば「…ほら」お前も味見してみろとばかりに相手の口許に運び、楽しげに様子を眺めて)
ッし、かたないだろ…お、お前がこんな…っ!
(こっちは相手の突飛な行動を止めるのに懸命になっていたというのに、そんな自分の様子を面白がるような相手の指摘に思わずむっとしてしまうものの、そんな思いも相手がケーキについて言葉にした感想を聞けばすぐに晴れてしまって。思わず口元がにやけてしまいそれを隠すように口元に片手を翳しているとその時不意に相手に握っていたフォークを抜き取られ、そのことに驚く暇もないまま差し出されたチョコタルトの欠片に思わず一瞬固まってしまい。「お、ま…ッな、今日なんでそんな…っ!」しかしそのことを理解するとやっと引いてきたはずの頬の熱さが一気に戻ってきて、本当に顔から火が出るんじゃないかと思うくらいの熱に両手で頬を押さえながらいまだ混乱を続ける頭でどうにか言葉を口に出すと、今日は妙に積極的な気がする相手の行動の真意を問いただし。しかしそれを答えてくれてもくれなくても、どちらにせよ相手がこの自分の羞恥心をがんがん煽ってくる行動を止めてくれることはまずないだろう。それが分かるだけに逃げられないことを痛感し一度奥歯を噛み締めると決心がついたのか深く息を吐き、ぎゅっときつく目を閉じると恐る恐る口を開け相手がタルトを運んでくれるのを待って。)
面白ぇくらいにガチガチだな。そんな緊張すんなっての。
(傍目にも分かる程真っ赤な顔をしていたかと思えば今度は羞恥に堪えながら素直に指示を聞く相手。たかが一口食べさせるだけで此処まで恥ずかしそうな反応を見せつけられてしまえば、可愛さの余りその場で抱き締めてしまいたくなる衝動が押し寄せ。余裕をかました表情でそんな相手を見つめている最中も、僅かに震える長い睫毛にさえきゅっと胸が締め付けられてしまう。不意に脳裏を過るのは昨晩己の腕の中で彼が見せてくれた表情。ドクンと大きく打つ心臓にフォークを持つ手を微かに震わせ。羞恥に堪えながら待つ相手の口に一口サイズのタルトを丁寧に入れてやっては、口許に笑みを浮かべながらじっと見つめて感想を待ち)
ッん…緊張するだろ、普通。す、好きな奴に食べさせてもらってんだから、さ…お前は、緊張とかしなかったのかよ?
(相手に聞こえてしまうんじゃないかと思ってしまうくらいにどくどくと煩いほど高鳴る鼓動に早くこの行為が終わってほしいような、それでもやっぱりこのまま恋人同士らしい時を堪能していたいような、相反する複雑な心境の間で葛藤しているうちに口の中にタルトの欠片が入れられて。すぐさまぱちりと目を開き席に腰掛け直すと正直緊張やら恥ずかしさやらでろくに味も分からないまま口の中のそれを飲み込んで。余裕のない自分とは対照的にこちらをからかうような言葉さえ口に出来るほど落ち着いた様子の彼にむっとしたように唇を尖らせると、未だ落ち着きを取り戻さない胸の高鳴りを押さえる様に自身の胸に手を当てながら、相手に質問を投げかけて。)
緊張っつぅよりは――…、
(ケーキの感想を待っていたものの、余程余裕がないのか肝心の味について述べられる事なく、その仕草からも彼の緊張が伝わればふっと笑みが零れてしまい。目の前にある珈琲が入ったカップを手にすれば、相手からの質問に対し己の心情を振り返りながら口に運び。かくいう己も少しも緊張が無かったといえば嘘になるが、それより何より目の前で唇尖らせている彼の仕草や表情に何度もときめかされ、愛しさを募らせた事の方が大きくて。愛しくて堪らない等と正直に伝えればまたからかわれるだろう事が目に見え、カップを静かにソーサーへと戻せば改めて見つめ直し。少しだけ身を乗り出し距離を詰めると、真っ直ぐ見詰めたまま「お前見てたら何かこう…むらっとした」強ち嘘でもない事実を口にしながら、“信じられない”とでも言いたげに目を見開き熱くなるだろう相手の様を予想し笑いを堪えて)
っば、おま…な、に…~ッ!…ッも、知らね…っ!
(事の発端こそ自分が恋人らしさを求め気恥ずかしい飲み物を注文したことだろうが、それでもその時のちょっとした出来心からここまで発展させられるとは思っておらず、未だ落ち着きを取り戻さない自身の内情をどうにか平静に戻すべく赤らんだ頬を両手で覆って。自分の言葉への返答を考えているのか少々の沈黙を挟んだ相手を漸く気持ち的に落ち着いてきたこともありじっと見つめて様子を窺っていれば不意に詰まった距離に思わず一瞬びくりと肩を揺らし。そんな中相手の口から告げられた言葉に一瞬意味が分からず呆けたように動きを止めるものの意味を理解するのにそう時間もかからず、次第に耳まで朱に染めると羞恥のあまり咄嗟に握った拳を相手の頭の上に勢いよく振り下ろして。理不尽な暴力を相手に振るおうともそれで羞恥心がましになるわけでもなく、キャパシティをオーバーしたかのようにまともに思いを言葉に出来ないまま赤く染まった顔を両手で覆うと小さく首を振ってから沈むように顔を俯かせて。)
…ッ…てぇ…、お前な…加減てものを知らねぇのかよ。
(呆気にとられたような顔がみるみる内に赤く染まっていく様を愉快な思いで観察していた最中、不意に頭上からの強い打撃をくらい。男の力以外の何者でもないそれに見事に耳鳴りを起こし頭を擦りながら顰めっ面で咎めるものの、予想通りの反応を貰えた事で得た満足感と何にも替え難い愛しさが勝り、ふっと頬を緩めては俯く相手を柔らかな表情で見つめて。丁度撫でやすい位置にある相手の頭に手を伸ばすと、普段とは触り心地が異なる作り物の髪をぽんぽんと撫で。「…ほら、食おうぜ。それ食って、またお前の締まりねぇ顔見せろ」脳裏に浮かぶのは好物の苺のショートケーキを口にし幸せそうに笑うあの時の相手で、温かく幸せな感覚が胸に広がれば此方も自然に微笑みが浮かんで)
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