主 2013-06-22 18:50:00 |
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嫌なわけねぇだろうが。
(ゆっくりと確認するように問われた声には戸惑いや不安が感じられ、真顔で見つめつつはっきりと即答する事で否定し。己を見失う程惚れている相手と二人きりという状況を嫌だ等と思う筈が無い。むしろ自制を緩める事が許される状況で彼と過ごすという事で別の懸念が生じ、己を戸惑わせ。以前一晩共に過ごした時とは明らかに違う今の状況で、己を部屋に呼ぶという事を彼がどう捉えているのかまでは知る由もなく、変に警戒させるような事を口走ってしまわない内に口をつぐめば、繋いだ手から伝わる温もりを大切そうに握り締めながら暗い階段を降りていき。彼の家庭の事情は把握したものの、やはり打ち上げという言葉が引っ掛かる。己が茂庭の誘いに応じさえしなければ彼はこの後クラスの打ち上げに参加していただろうと思うと、己の浅はかな行いが彼の楽しみの一つを奪ってしまった事に負い目を感じ、静かに視線を伏せたまま沈黙し。少し思考の後伏せていた視線を上げ相手の方に向けながら「…打ち上げ楽しみにしてたんだろ。参加して来いよ。帰る時に連絡寄越せば迎えに行ってやるからよ。」と、会うのはその後で構わない事を口では伝えるものの、このまま独占していたいという思いが握った手に無意識なきゅっと力を込めさせて)
ーー出来るだけ、早めに抜けてくるから…。
(彼の愛を疑うような意味ではなかったが、何やら考え事をしているような相手を見ていると少しだけ不安が募り、身勝手にもそんな不安を解消して欲しいためだけの問いを彼に伝えれば、そんな思いを一瞬で払うような素早い回答に深い安堵を覚え仄かに口許を緩めながら小さく息を付いて。暗い階段を下りる中鞄の中で携帯が震えたのを微かに感じとれば恐らく打ち上げに早く来るようにとの催促であろうその連絡に彼との時間の終わりを感じ少しだけ寂しさを感じ。確かに打ち上げは楽しみだったが相手と離れがたいという新たな思いもあり一瞬だけ"サボってしまおうか"なんて不誠実な考えが浮かんでしまい。そんな思いを感じ取ったかのようなタイミングで掛けられた相手の言葉に顔を上げそちらを見つめると言葉とは裏腹に握った手に入る強い力に思わず小さく笑ってしまい、彼なりの葛藤があっての気遣いを無下にしないようにと返事を口にするとぎゅっと手を握り返しながら柔らかな笑みを浮かべ。そのまま暫くして漸く昇降口までたどり着くと名残惜しさに少しだけ寂しいような、困ったような複雑な表情を浮かべながらもそっと相手の手を離すと「…また女子に捕まんないようにな。…今度捕まってたら、本気で拗ねるからな。」と少々悪戯っぽい口調で釘を刺すと軽く手を振ってから若干急ぎめの小走りで昇降口を出ていき。)
…アホ、要らねぇ心配してねぇでさっさと行って来い。
(手をほどこうとする相手に従い握る力を緩めるも、掌から相手の指先がすり抜けていく最後の瞬間まで名残惜しそうにし。気兼ねでもしているのか何処か戸惑いを含んだ表情で此方を見つめる相手の背を押すような言葉を掛けるその裏側で、押し寄せるもやもやとした感情を懸命に鎮めようと、つい先程まで繋がっていた手を拳にしてきゅっと握り。この手や腕をほどいて離れていってしまうのは、いつだって彼の方で。彼にとって今日のイベントがどれだけ重要なものか理解していたつもりでも、その何処かでは今の彼なら己を選んでくれるだろうと期待していたのかもしれない。仲間達への元へと走り去る相手の後ろ姿を見つめていた瞳を静かに伏せては軽く奥歯を噛み、制服へと着替える為に校舎へと向かい歩き出し。いつの間にかキャンプファイアを囲んでいた人だかりも大分捌け、盛大に行われたイベントのフィナーレを告げており。そちらを横切る際勢いの弱まった炎に視線を向け、暫し眺めている内早くも彼が恋しくなり。視線を外すと僅かに歩みを早め、校舎内へと向かって)
(/一旦別行動ということで、取り敢えず上原はこのまま自宅にて一泊の準備をしながら椿君の連絡待ちという形になると思いますが、そちらは何処からどんな風に始めて下さっても構いませんので!状況によって合わせますね^^)
ーーお前、もう二度とあのチョコ食うなよ…。弟くん来たら、さっさと預けて俺は帰るからな。
(何時も学校で一緒にいる友人と他数人のクラスメートの女子を交えてのホームパーティーじみた打ち上げは夜遅いこともあり数時間でお開きになり、会場として自宅を貸してくれた友人に別れを告げると途中まで同じ方向へ帰る面々と帰路を共にし。しかしながら高校生の若気の至りというべきか、ちょっとしたゲームの罰として課せられた某製菓会社の所謂アルコール分を含んだチョコレートを多量に口にした友人一人が自宅までたどり着けそうにないことを危惧しジャンケンで負けた自身も共にその彼の弟が迎えに来るのを傍のコンビニ前で待っており。元よりアルコール耐性がないのだろう友人を鞄と妙に乙女チックな紙袋を抱えたまま肩を貸す形で支えていれば、ぐちぐちと不満と忠告を聞かせながら彼の迎えを待ち。時間の経過も関係しているだろうが、彼ほどではないにせよ同じチョコレートを幾らか口にしたためか少しだけ気が大きくなっており相乗的に自分の帰りを待つ相手に会いたい思いがどんどん強まるのを感じれば体勢が体勢のため少々きついものがあるものの何とか荷物と友人を抱えたまま携帯を手に取ると力の入り過ぎか小刻みに震える手で相手に電話を掛けて。)
(/上原くんの居ない打ち上げをだらだら流すのもどうかと思いましたので打ち上げの概要のみぽつぽつロルに残して後は割愛させて頂きました(←)
結果的に上原くんの方にも時間を進めていただくような感じとなるかと思いますが、もしやり辛いようなことがありましたら書き直しをしますので遠慮なく仰ってくださいね^^)
――遅ぇな…。
(相手と別れてから数時間後。自室のベッドの上、腕を枕がわりに仰向けに寝た状態でぼんやりと天井に視線を向けていて。連絡が来たらいつでも彼を迎えに行けるよう、帰宅後直ぐに外泊に必要な最低限の物の用意を済ませておいた。後は彼からの連絡を待つのみ。打ち上げというからには二次会や三次会がある事も予想されるが、彼ならきっと早目に抜け出してくれるだろうと信じているせいか、ひたすら連絡を待つだけの時間が酷く長く感じられ。メールや電話をしてみようかと、もう何度目になるか定かではない頻度で携帯を手にするも結局は踏みとどまり、頭を乱暴に掻けば再び携帯をその辺に放り。羽目を外したクラスの連中に迫られたりしていないだろうかと思うとどうにも落ち着かず、何か飲もうと起き上がったその時、ずっと沈黙したままだった携帯が震えだして。咄嗟にそれを手にし、通話状態にするや否や「椿か…?今何処だ」と、電話に出ながら早くも上着を着込み。携帯片手に荷物を手にすれば、直ぐ様玄関へと向かって)
(/有難うございます!此方も自宅を出て直ぐ向かいます。後はなりゆきで大丈夫そうですかね^^それでは背後は一旦引っ込んでおきますね。)
お、早いなー。もしかして携帯持ったままずっと待ってた?
(電話特有の受信側が取るまで流れる電子音が一回分も終わらないうちに取られた電話に少し驚いてしまい、思わず目を丸くしながら返事をするとあまりに早かった相手につい悪戯っぽいからかいを口にして。自分の願望混じりというか、そうであれば良いなと思って口にした冗談に反応してか誰だとばかりに顔を上げる友人に少しばかり声をひそめこちらのお迎え相手であることを伝えると漸く恋しく思っていた相手の声を聞けたこともあってか自然に緩んだ表情を浮かべていて。呂律の怪しい言葉で恋人かとからかってくる友人を宥めながら再び携帯を耳元に当てると「今駅前のコンビニんとこ。何時もつるんでる…背無駄にでかいやつ、菅野っつうんだけどさ。そいつがチョコ何かでぐでぐでになっちゃって、だからこいつの迎え来るまでって今一緒に居るんだよ。」と今居るところから一緒にいる友人のことまで、どうでも良いこともつらつらと口にし。何だかんだでアルコールを摂取した手前自分も結構効いてきているのか何が可笑しかった、という訳でもなくなんだか気分が高調してきてしまい妙にふにゃふにゃと笑ってしまっていて。)
…持ってねぇよ、馬鹿。
(携帯越しに届く数時間振りの相手の声に、恋しさから胸がきゅっと鳴る。握りしめていたわけではないが連絡を待っていたのは事実、しかしからかわれる事に慣れていないせいか羞恥を覚え、小さく舌打ちすれば普段より子供染みた言葉で反発し。隣に誰か居るのかひそひそと話す相手に眉を潜めれば、内容を聞き取ろうとつい耳を澄ませてしまい。次いで伝えられた説明から状況については把握したものの、相手の様子が何処と無く可笑しい事を直ぐ様察知する。いやに饒舌というか陽気というか、ふわふわとしていてしっかり地についていないような不安定さ。打ち上げ会場が何処かは聞いていないものの、先程の相手の発言の一部に引っ掛かるものがあり。「……てめぇ、まさか酔ってんのか?」放たれたのは心なしか普段よりほんの少し低めの声。高校生にアルコールを提供する店はないだろうが、会場がクラスメイトの自宅であればその可能性も否めない。一緒に居るのが幾ら友人といえども酔った者同士、その上時間も時間と来れば様々な懸念から胸がざわめき出し。念の為通話を繋いだままの携帯を片手に駅前のコンビニに急いで)
ーー…え、いやそれはねぇよ。ちょっとアルコール入ったチョコは食ったけど、その程度で酔うほど弱くないって。
(小さく聞こえた舌打ちや幼さの残る言葉の応酬から彼が実際待っていたのであろうことや、少なからず羞恥に心を揺らしているのは分かり。こうして時々彼が不意に見せる子供っぽく可愛らしい一面に所謂きゅんとすると言うべきか、胸がときめくのを感じるとにやにやと緩みきっただらしない笑みを浮かべて。あちらから聞こえる物音から察するに恐らくもう移動し始めているのであろう、さすがに携帯を手にしたまま急がせるのは少々危ないと思い通話を切ることを提案しようと思った矢先、まるで怒っているかのように妙に低い声で呟かれた言葉に思わず目を丸くして。確かに火照るような体の熱や少しだけふわふわと気分が高調しているような気はしているが、だからといって"酔った"などと称されるほどではないと思っているし、何より若さゆえの可笑しなプライドが認めるのを拒否し。何故だか機嫌が急降下したような相手の声色に焦ってか冗談っぽく笑いを交ぜながらも相手を宥めようとするような説明がちの口調で返事をすると少しだけ困ったように眉を下げて。)
少量でも入ってんじゃねぇか。……まあいい、もう着く。このまま切るなよ。
(笑いながら弁解してくる口調の中に僅かな焦りや誤魔化しを感じた気がして、つい不機嫌さを纏った声音で突っ返してしまい。相手がどの程度酒に耐性があるかどうか知る由もないが、アルコール入りのチョコを少量摂っただけで普段より浮き立っているのは明らかで。相手に関してだけは過保護で心配性、そして時に幼さを感じさせるような格好つかない態度を取ってしまう自分に自覚はあり、やり場のない悔しさに眉を寄せては今更ながら取り繕うように流してしまい。小走りで来たせいで思いの外早く駅前の通りに辿り着くと、夜風で乱れる前髪を邪魔そうにかき上げ。少し乱した呼吸を整えながら通話状態を保ったままでいるように念を押せば、そのまま目先に見えるコンビニを目指して)
…う、ん…分かった…。
(彼に心配を抱かせたい訳ではないのに今回もしかりだがどうしても時折ふとした瞬間に気を抜いて、それが彼の心配を煽るような結果に繋がってしまっている。不機嫌さの滲んだ彼の声を聞いているとそのことが色濃く自身の中に影を落としてしまい、電話を掛けた辺りまでの思いは何処へやら、急激に気持ちが萎んでいくのを感じればしゅんと気落ちした様子が表れたような小さな声で返事を返し。そんな中、どうやら彼よりも先に友人の引き取り手の方が先に到着したらしい。傍に駆け寄ってきた身長はかなりのものだが表情にまだ幼さを残した高校一年生位の少年、と言っても友人の弟なのだが、その弟が到着したため携帯を少し離しながら「…久し振りだな、菅野弟。悪いんだけど、そろそろ結構足にキてるから早めに受け取ってもらえるか?」などと軽く笑みを浮かべて話すと、久し振りでどうやらテンパっているらしい彼の方に抱えた友人を差し出して。)
着いたぞ、何処――……、
(コンビニへと辿り着く間近でそれらしい姿が視界に入ったと同時に電話越しの相手の声が少し遠ざかり、発した言葉を途切れさせ。此方からは顔がよく見えないものの、相手に話し掛けてきたらしい背の高い男と何やら会話をしているようで。その瞬間、相手が友人を隣に抱えているという事も、その友人が迎え待ちだという事も吹き飛んでしまったのか、瞬時に感じた危機に通話を強制的に終了させれば近くまで掛け寄って。「おい…!」眉間に皺を寄せながら強めに声を掛けたタイミングで友人を男に引き渡そうとしている光景を目にすれば、そこで初めて状況を把握するも既に手遅れで。彼等からしてみれば突然不機嫌そうに絡まれる意味がわからないだろう。何とも気まずい雰囲気の中、早とちりした己の間抜けさを恨みながら“何とかしろ”と、フォローを求めるような視線を相手へと向けてみるも、堂々と関係を晒せない以上、相手も咄嗟なフォローなど苦しい筈。視線を若干泳がせた後「…悪い、人違いだ」やむを得ずそう一言残しては踵を返し、取り敢えずコンビニの中へと入り。何事もなかったかのような澄まし顔で雑誌コーナーに立ち寄れば適当な雑誌を広げるも、間抜けな事この上ない状況に込み上げる羞恥を隠せず、やり場のない屈辱感に奥歯を噛み締め)
ーーえ、あ……そ、そっすか…。
(ちょっとした雑談もそこそこに、さて友人を受け渡そうと菅野弟に友人の腕を支えて貰った丁度その時電話を離しているというのに非常に近距離から彼の何処か不機嫌そうな声が聞こえ。驚いて顔を上げればすぐ傍に何故だか先程の声と反して驚いたような、それこそ"しまった"とばかりの表情を浮かべる彼と視線が合い。客観的に考えてみると恐らく彼はまた自分がどこぞの男に絡まれていると勘違いをしたのだろう、それ自体は何とも可愛らしい間違いのように思えたが状況が状況なだけあってフォローしてやることも出来ず、誤魔化す相手に合わせる形で苦笑いを浮かべて。友人を弟に受け渡し彼らの姿が大分見えなくなってから荷物を抱え直し、それからゆっくりとした歩調でコンビニに入っていくと雑誌を広げてはいるものの恐らく内心は勘違いした羞恥やらにうち震えているであろう相手の隣に立ち。辺りに人が疎らなのを確認してから相手の足元を軽く痛みも感じない程度に蹴り「…ばーか。俺だってそんなしょっちゅう男に絡まれる訳ないだろ。」と口にすると、相手の横顔を如何にもからかいたがっているようなにやにやとした笑みで見つめて。)
黙れ、お前は自覚が無さすぎなんだよ。俺がお前に惚れた理由、忘れたわけじゃねぇだろ。
(興味もない雑誌を開きながら外の様子を気にしていれば、やがて友人達と別れたらしい相手が店内へとやって来るのが見えて。隣へと並び足元へ軽くちょっかいを出して来る相手の表情には案の定というべきか、己の羞恥を煽るような愉快気な笑みが浮かべられており。軽く睨み付けては、持っていた雑誌を棚へ戻す前に相手の額をそれで小突きながらいて言葉を放ち。他人に惹かれた事などない己をほんの一瞬で落とす程の風貌を持つ相手が、贔屓目無しにしても人目を引く存在だという事は、今日の文化祭の一件でも証明済みで。なのに当の本人はいつまで経ってもこの調子で、全く危機感というものが見られない。先程はたまたま友人が隣に居たからいいものを、もし一人だったら…と考えると、忽ち焦燥感に襲われ、眉間に皺が刻まれると共に相手を見つめる瞳が細められ。しかしその魅力については相手に言ったところでどうしようもない事を理解している為か、軽く息を逃しながら視線を外して。「…で、何か必要な物あるか?」あればついでに買い済ませてしまおうかと、気を取り直すように確認をし)
ーーないよ。ないから、さ…。
(軽く睨むように向けられた視線は相手が不良と呼ばれてきただけあってかそれだけでも中々の凄みがあり、思わず背筋がぞくりとしてしまい少しだけ肩を竦めるとふざけていた表情を消し。続けられた彼の言葉は今までも何度も繰り返された忠告なのだが、心配を掛けたいという訳ではないのにその言葉を聞くたびに胸がきゅう、と甘く痛みもっと言って欲しいだなんて不謹慎な願いが浮かんでしまい。時々もしや自分自身気付いてないだけで被虐欲なんてものがあるんじゃないかと思うほど、相手に嫉妬して欲しい、独占していて欲しい、なんて思いが旨を燻り何とも言えない気持ちになる。普段ならそんな思いを彼に悟られないように取り繕うくらい出来たのだろうが今日は少々摂取したアルコールに気分すら酔い気味に浮わついてしまっているのか、仄かに口許を緩め嬉しさに目をそっと伏せると視線を外した彼の小指の付け根辺りに軽くすり、と自分の小指を擦り寄せ、どこか急かすようなはっきりしない言葉を漏らすと早く帰りたいとせがんでいるつもりか、相手の小指にそっと自分の小指を絡めるときゅっと緩く握りながらちらりと相手の方を見て。)
――じゃあ…行くか。
(不意に小指に緩く指が絡まる感覚にぴくりと反応すると、外していた視線を相手に戻し。控え目ではあるが早くとせがむように此方に向けられた視線や声は、微酔いのせいか何処か甘美さを漂わせ。大きく脈打つ心臓に時が止まったように相手から目を離せずにいたが、不意に瞳を揺らすとその手をきゅっと握り直し軽く此方に引き寄せ、触れる程近付いた距離で小さく一言返して。外に出ようと視線で合図を送れば念のため一旦そっと手を離し、先に出口へと向かって歩き出し。冷たい外気に目を細めながら相手が追い付くのを待つと、相手の様子を窺うような、それでいて漸く二人になれた高揚感をもて余しているような調子で相手を見つめ。「…どうだったんだよ、打ち上げは」大いに盛り上がっただろう打ち上げで羽目を外した連中に変な絡まれ方をされてはいないかという事が気になるらしく、それとなく探るよう訊ねてみて)
…やらしー目。二人っきりになれたからって、家までは大人しくしてろよ?
(相手を色んな意味で誘うことにはどうやら成功したようだ、此方を見つめたまま暫し動きを止める彼は自分の求めていたような表情を浮かべていて思わず口許を緩めると不意に体を軽く引かれ。抗うこともなく相手との距離を縮めれば心情をそのまま写し出したような熱っぽさを微かに感じる囁きに思わず背筋がぞくりとすれば、小さく頷いてから先に出た彼の後を追いコンビニを後にして。自分を待ちながら何とも言えない瞳をこちらに向けてくる彼に思わず気が緩みそうになるが、二人きりとは言えどまだ屋外であることを思い出し少しだけからかい混じりの言葉で相手と自分の自制心に釘を刺すとそのまま何処か気が大きくなっていることが感じられるような、ふわふわとまでいかなくともいつもより何となく軽い足取りで歩きだし。「…楽しかったよ、皆ハイだったし。でも男にも女にも、変に絡まれたりはしてない。…安心したか?」そろそろ彼の思考も読めるようになってきたのか、このタイミングで聞いてくる辺り恐らく可笑しなことがなかったか探りを入れにきたような彼の一言に軽く笑いながら返事をすると、この返答で満足したかとばかりに相手の方に視線を投げて。)
…っ、煩ぇよ、分かってる。いいからしっかり前見て歩け。
(からかい混じりなのだろうが、的確な指摘に思わずギクリとする。多少なりとも酔っていると思われる相手に気付かれる程、欲に満ちた眼差しを向けていたのかと思うと屈辱感に似た羞恥心に襲われ、返す言葉もないまま一度は悔しげに視線を外して。しかし歩き出した相手の足取りが軽く何処と無く危なっかしい事に気づけば、足元に気を付けるようにと注意を促し。そんな相手を見守るようにほんの僅かに後ろを歩いていると、己の心情を見透かしたような嬉しい答えが返って来て。見透かされている悔しさと、己の気持ちを理解してくれている嬉しさが入り交じる複雑な思いに戸惑いつつ、何処か悪戯っぽく笑う相手を見つめていたが、「……安心した。今頃お前が他の野郎に絡まれているかもしれねぇと思ったら気が気じゃなかったよ。早く会いたくて…仕方がなかった。」相手が無事だという事に心底安心したせいか、自分でも驚く程素直な感情が唇から溢れ。目の前の相手が己のものだと深い実感を得る為に今すぐにでも抱き締めたい思いに駆られるも、必死に堪えているのか相手に定めていた視線を伏し目がちに外し、荷物を肩へかけ直せば隣へと並んで)
…お、れも…。打ち上げはすごく楽しかったんだけど、さ…。…やっぱり、段々…その、恋しくなって、きて…。
(悔しげに視線を逸らす相手にしてやったとばかりに内心ほくそ笑みながら彼の忠告にあったように視線を前に戻しぐっと伸びをすると、澄んだ冷たい夜の空気を肺一杯に取り込むように深く息をついて。そんな時に背後から掛けられた素直というか甘いというか、会いたかったなどという所謂恋人らしい台詞を耳にし前に突きだし伸ばしていた腕をそっと下げると、ぼそりと呟くような声で言葉を返し。先程までは此方が断然上手に回っていた筈なのにいきなりのそのストレートな言葉に思わず照れてしまったらしく、ほのかに頬の赤みを強めながら隣に並んできた相手を伏し目がちにしたままちらりと視線だけ向けて見つめるようにし。その視線を向けたまま何処と無く高揚した想いがにじみ出たような正に恋をしている、という感じの何とも言えない笑みにも似た表情で相手の荷物の紐を軽く引くと「…うち行くの、ちょっとだけ急ぎたいなー…とか…思うんだけ、ど…。」と遠慮がちに声を掛け、すぐに視線を恥じらうように逸らして。その言葉が言わんとすることは勿論"早く家に帰って甘い時間を"などという乙女思考なのだが、それが相手の言葉で余計に煽られてしまったらしく焦れたように唇をきゅ、と少しきつく結ぶと意識してかはたまた無意識かじわじわと僅かながら歩調が速まっていて。)
…っ、そんなに待てねぇならもっと早く連絡寄越せ、馬鹿野郎。
(早く会いたいという思いが同じだったというだけで高まる高揚感に比例し、鼓動が加速していく。控え目な視線と共に向けられた仄かに色付いた表情を目にした瞬間、痛みと見紛う程強く心臓が脈を打って。翻弄されつつある己に更なる追い討ちを掛けたのは、荷物の紐を引くという甘えるような可愛らしい仕草。そんな一つ一つの然り気無い言動が己の心を捕え、正常な思考をどんどん奪っていき。早く帰りたいとの訴えは、例え自惚れだろうと己を求めているようにしか受け取れず、最早負け惜しみのような言葉しか返せなくなった悔しさから荷物を持つ手に無意識に強い力がこもり。本気の恋というものがこうも己を変えてしまうとは思わず、不甲斐なさや悔しさ、戸惑いなど様々な感情を抱かせ、行き場のない思いに眉を寄せながら、逸る気持ちをそのままに相手と共に歩みを速め)
だ、だってなかなか抜け辛い雰囲気だった、し…!…そ、れに…。
(自分に合わせてか歩調を速めてくれた彼と共に夜の住宅街を男二人早足で抜けていくという端から見れば中々シュールな状態で自宅へと急ぎ。きっと照れているのだろうか、何だか子供っぽさが滲み出たような不満の言葉を口にする相手に視線を逸らしたまま拗ねたように唇を尖らせ、少々言い訳臭い反論を口にすると何やら続く発言を躊躇っているかのように視線を僅かに揺らし。暫しの沈黙を挟んでから漸く決心したようにぱっと顔を上げると相手の方を見つめながら「ッ、あんまり早く連絡したら、なんか俺ばっか会いたがってるみたい、で…負けた感じして嫌だったんだよ!」と少し張った声で告げて。と言うのも相手を多少待たせることで自分にもっと"会いたい"と思わせたかったのが狙いだったらしく、そこに加わった幼稚なプライドが電話から手を遠ざけていた様子で。そんな内に込めていた思いをぽろっと溢してしまったのはやはり少しばかり気が大きくなってしまっているせいなのか、発言するなり頬をさらに紅潮させ羞恥を堪えるようにくしゃりと表情を歪ませると住宅の合間から見え始めた自宅の屋根を視界に捉えるなり荷物の紐をぎゅっと握り直し、「ッこんなことまで言わせんな、馬鹿!」などと八つ当たりじみた台詞をぶつけるとそのまま自宅の方まで走り出して行ってしまい。)
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