主 2013-06-22 18:50:00 |
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わからねぇな…無意味だとわかってんなら何で………
(脈がないと解っていても気にする様子なく強気な笑顔を見せる彼女に眉を潜めながら言葉を返す途中、ある事に気付く。半ば強引に己の手を引き炎を囲む輪へと誘う彼女は、少し前の己と一緒なのだと。椿を追い掛ける己もまた、想いを伝えたい一心で必死に追い掛けていた。例え限りなく可能性が低くても、日に日に大きくなる想いを抑える事など不可能で、目の前に愛する彼がいる限り諦めたくないという思いに強く動かされながら。決定的に違うのは、彼女に気持ちが向く可能性はこの先もゼロに等しいという事。そう言い切れる程に彼に惚れ込んでしまっている自覚があるからこそ、僅かに前を行く健気な彼女の姿から視線を伏せ。輪の中に入り、己に笑顔を向ける彼女と視線が合っても笑みを返す事すら出来ず。複雑な思いを抱えながらただ見つめ返せば、曲に合わせて踊り出す彼女に情けなくもリードされるような形で踊り出して。こういった経験がなく、ぎこちなさを残しつつ見様見真似で踊る己とは違い、彼女の軽やかな動きは流石なもの。見る者を魅了するような笑顔を振り撒きながら楽しそうに踊る彼女に、自然と小さく笑みが溢れて。やがて一曲終わると小さく息をつき、「流石だな…。…もういいだろ」労いの言葉を掛けた後繋がれたままの手をほどこうとするも、まだ離さないとばかりにきゅっと力を込められてしまえば、「おい…」話が違うとばかりに眉を寄せ、目の前の彼女を見据えて)
(/大丈夫です、嫉妬で行き過ぎと感じる事はないです。むしろ…、ここでは多くは語りませんが…/笑/それに上原も嫉妬深い奴なんでb
あと茂庭ちゃんの操作ですが、此方女の子の操作というものをした事がなく…あんな風に可愛らしく動かせる自信がないので、仮に会話とかさせたら台無しになる恐れがあるので、勝手ながら行動のみ少しだけ加えさせて頂く事にしました。やりにくかったらすみません…!状況を見ながら操作を加える事があるかもしれませんが、そちらも椿くんも茂庭ちゃんもお好きに動いて下されば…と思います。)
『…記念、もうひとつだけ頂戴?大丈夫、みんなお祭り気分でうっかりしちゃったと思ってくれるだろうから…。』
((相手に逃げられてしまわないように握った手を軽く引きながらゆっくりと背伸びをして相手との距離を詰めると、回りに聞こえないような囁き声で呟きながら相手の頬辺りへ向けてかそっと唇を寄せようとしてみて。))
ーーッ、は…何、笑ってんの…?なんで、そんな…っ!!
(目を伏せ見ないようにと自分で律せども二人を見る回りの生徒のざわめきが気になりどうしても完全に無視することが出来ずにいて。彼は優しいから、と自分で相手の行動を納得しようと言い聞かせてもそれを上回る範囲でじりじりと胸が焦がされていくような感覚が広がっていき。無視を決め込もうとするのが苦しくなり始めた頃不安げに眉を下げた情けない表情のままそっと二人の方に目を向けてみればタイミング悪く彼が彼女に笑いかけているような、その小さな微笑みを目にしてしまい。嫌々でも彼は優しいから断れなかった、そう自分に言い聞かせていたのにそれを打ち破るような光景に思わず踊りも忘れその場に棒立ちになるとそれを不審に思い声をかけてくれている友人の声すら耳に入らないまま呆けた表情でぽつりと呟き。曲が終わっても手を握りあったまま、お互いを見つめあうように見えたその情景でとうとう頭の何かがぶつんと切れてしまったのかかたかたと歯を震わせながら自嘲の混じったような笑みを薄く浮かべると回りにいた友人やら他の生徒やらを押し退けそのまま旧校舎の方へと走っていってしまって。)
(/茂庭ちゃんの件了解しました!ではまあ、あれですね。嫉妬に拍車を掛けるべく何だかすごくラブコメチックになってしまいましたがどうぞお付き合い下さいませ;;
一先ずお互いに茂庭ちゃんを動かしていくということで分かりましたので!
では本体はこれにて失礼します。何かありましたらどうぞ気兼ねなくお呼び下さいな。)
おい…いつまで――……ッ、
(いつまで経っても解放される事のない手をほどこうとした時、不意に詰まる距離に自ずと彼女を警戒した身が強ばり。その言動から次の行動を何となく察し、彼女が触れてくる前に咄嗟に肩を掴み己から引き剥がして。「てめぇ…話が違うだろ。期待するなと言ったのがわからねぇのかよ」咎めるような眼差しを向けながら非難した時、視界の端に暗闇の方に駆けていく相手の姿を捕えはっとして。一部始終とまではいかないにしても、彼は此方の様子を気にしていたのは確かな筈。状況を素早く把握し、背後から己を呼び止めてくる彼女に構わず、気付けば彼を追いかけ走り出していて。「――椿…!」キャンプファイアの輪から大分離れた辺りで彼の名を呼ぶも、彼の足は決して遅くない上、やはり浴衣姿では走りにくく、容易に追い付く事が出来ずに焦れったそうな舌打ちが零れ。彼と同じように文化祭に特別な思い入れがあった彼女、その思い出作りに軽い気持ちで協力してしまった事でどれ程彼を傷付けてしまったのか。今更ながら事の重大さを感じつつただ夢中で彼を追いかけ)
(/早くも茂庭ちゃん操作破棄して置き去りに…。仕方ないですよね、椿くん放置出来るわけないですし。←
勿論どんな展開でもお付き合いします!いつも有難うございます。今年も息子共々宜しくお願いします^^では此方も一旦引っ込みますね。)
ーーは、やく…早く、家帰って…頭、ちゃんと冷やさないと…早く…。
(後ろから相手が追ってきてくれていることに最後まで気付かないままその足で旧校舎の着替えに使った例の教室へと飛び込むとそこに置いていた荷物やら衣装やらをばさばさと焦った手つきでまとめ始めて。このまま学校にいれば気持ちが落ち着くどころかきっとそのうち切れて怒鳴りだしてしまうかもしれない、早急に頭を冷やさないと自分だけじゃなく相手にだって迷惑を掛けてしまうかもしれない。ここまで考える間にも彼を思い出すだけで浮かんできてしまう先程の情景に苛立たしそうにがしがしと頭を乱雑に掻き乱しながら小さく唸るときつく唇を噛み締め、漸く纏まった荷物を肩に背負えばこのままさっさと家まで帰ってしまうつもりなのか小走りで室内を移動すると立て付けの悪さからがらがらとけたたましい音を立てながら教室の扉を開け。)
(旧校舎へと向かった相手を追い己も飛び込むように入ると、上の階から聞こえる足音を頼りに階段を駆け上り。彼が向かったのは恐らく先程着替えに使った教室だろうと直感し、そのまま三階の教室を目指して走り。すると前方に丁度部屋から出ようと、立てつけの悪さから少し重めの扉を開ける相手の姿を捕えて。「椿…!」相手の名を呼び駆けつけると、案の定このまま帰ろうとしていたようで荷物を肩に下げており。傷付いている筈の彼をこのまま帰すわけにはいかず、咄嗟に扉に手を掛けては逃がさないとばかりに相手の前に立ち塞がり。明かりのない部屋で彼の表情こそはよく見えないが、疑惑や怒り、悲しみ、不安等で一杯であろう相手を見つめれば「待て椿…話くらいさせろ」と、弁解の機会を求め、なるべく落ち着いた声を掛けて)
ッ!…いや、だ…今日疲れてるんだよ、話ってどうせ弁解か何かなんだろ?だったら土日明けた後でいいじゃんか。…だから、さ…ほら、もう帰るとこなんだし…。
(自分の名前を呼ぶ声にびくりと肩を震わせれば、その声により暗闇の中に相手が居たことを知り。どう逃げようかと思考を巡らせていればその考えを先読みでもしたように入り口を塞ぐ彼に反射的ともいえる早さで後ろに飛び退くと気まずそうに視線を落とし、鞄の紐をきつく握りしめながらその後の相手の言葉を一先ずは大人しく聞いていて。彼としては自分の悲しさだとか怒りだとかをどうにかするために追ってきたのかもしれないがそんな心遣いこそがじりじりと胸を焦がすようなほの暗い想いを増長させていき、落ち着きを取り戻そうとするように深めの呼吸を繰り返しながら不要な感情を排除したような素っ気ない言葉で拒否を示し。「…ほら、早く通せよ…。」何時までもこの場で彼と一緒にいてしまえば折角静めた想いを吐き出しまた相手を傷付けてしまうかもしれない、そんな思いから早くこの場を立ち去りたいのか触れようとはしないものの焦れったがるように僅かに体を揺らすと空いた方の手を胸元にやり制服の胸をぎゅっと握りしめながらぽつりと呟いて。)
弁解しようとして何が悪いんだよ。逃げたって事は何かしら思う事があったんだろ?何にせよお前をこのまま帰すわけにはいかねぇ。
(時間が経過してからの弁解では遅いと開き直るかのように突っぱねると、塞いでいた入り口の扉から手を外し、中へと入り後ろ手で扉を閉めてしまい。暗がりの中で焦れったそうに身を揺らす相手は早く帰りたがっている、正確に言えば一刻も早くこの場から逃げたがっている事が感じられ、決して逃がしてなるものかと相手の行動を注意深く見つめ。相手に視線を向けたまま何から説明すべきかと思考を巡らせた後、静かに口を開き)
…茂庭の誘いに応じたのは、あいつもお前と同じ様に文化祭に思い入れを持っていたからだ。文化祭ってもんがどれだけ重要なもんか俺にはよくわからねぇが、お前があれだけ楽しみにしてた事を思ったらな……奴の気持ちに応える気はないのを前提に、少しだけ付き合ってやってもいいかって気になった。
(告げた言葉にやましい思いも嘘もない。物事の原点になるのはいつも目の前の相手で、彼が己との時間を割いてまで今日の為に準備に励み、本日己に見せた笑顔からも、どれ程楽しみにしていたかが窺えて。だからこそこの日が特別なものだと知り、今日だけは彼女の気持ちを無下に出来なかったのだが、此処で重要な事に初めて気付き、はっと息をのみ。どんな言い分けを並べたところで、それ程楽しみにしていた彼を一時的にでも放置し、彼にとって今一番気になる人物だろう茂庭の相手をしてしまったという事実は動かない。己の浅はかさに気付き悔いた時にはもう遅く、「…っ、悪かった」どれ程傷付けてしまったのかと思うと胸に響く痛みに自然と瞳が伏せられ、不甲斐なさに握った拳に力を込めながら謝罪の言葉を紡ぎ)
ッ、だから…俺、そういう話聞きたくないんだって…。さっきから、散々やだって言ってんだろ…っ!
(するりと体を滑り込ませ教室内に入ってきた相手と自然と距離が近付いてしまい、その近付いた分だけそっと後退し距離を取ると弁解を口にし始めた相手から聞きたくないとばかりに顔を逸らしながら眉を寄せ不快そうな表情を浮かべて。案の定ダンスを申し込んできた彼女の意思を無下に出来なかったらしい相手の説明に別に乗り気でいた訳ではないと分かりほっとした反面、嫉妬ですっかり熱を持った頭にはそれ以上に結局それだけその瞬間自分以外の人間、それも相手に好意を抱く少女に目を向けていたという事実が怒りに更なる燃料を足してしまい。謝る相手に不安そうに表情を歪めながら顔を向けると僅かな時間彼を見つめるもののすぐに目を伏せれば、取り繕うのももう忘れ始めているのか怒りを隠そうともせず酷く低い声でぼそりと呟き。次第に強まる胸を刺すような痛みに胸元を握っていた手を更に強めながらぎり、と歯を噛み締めるとじわじわと瞳に滲み出す涙を鬱陶しいとばかりに乱暴に拭い。「…正直、今はお前と居たくないんだよ。…だから、ほんとにそろそろ帰らせて…。」やはり彼の弁解を聞こうとも一度燃えだした嫉妬の怒りは中々収まりそうもなく、微かに震えた声でとうとうはっきりと相手を拒絶するような突き放した台詞を吐き出すと相手の立ちはだかる扉を避け教室後方にあるもう片方の扉の方へと急ぎ気味の足取りで歩んでいって。)
…だったらどうしろっつぅんだ。説明しなきゃしねぇで、てめぇはまた勝手にあれこれ考えて不安になって悩むんだろうがよ。今だって――……、ッ…
(言い分けなど聞きたくないという相手、その普段とは異なる低い声音にも彼の怒りは滲んでいて。しかし言葉にしなければ真実が伝わらない事もある。強気な癖に繊細な心を持つ彼だからこそ、今回の件が思わぬ方へと転び、別れたいだのと言い出されたら堪らない。申し訳無さから伏せていた視線を上げると再度視界に相手を捕え、彼が欲する答えを求めるかのように静かに反発し始めるが、暗がりの中目元を腕で拭う仕草を目にした瞬間、言葉は勢いを失って。微かに震える相手のその声から感じる拒絶が己の胸を鋭い痛みで貫く。逃げるように去る相手を追う反応が一瞬だけ遅れるも、「おい待て椿…!」ガタガタと邪魔な机を押し退けるようにして即座に後を追えば、腕を掴んで乱暴に此方に引き、半ば無理矢理対面させようとして)
―…なぁ椿、お前が俺から逃げる理由は何だよ。俺に対する怒りだけじゃねぇよな…?他にあんだろ、俺と一緒に居たくねぇ理由が。一人にならなきゃいけないと思う理由がよ…。言ってみろよ。
(己を避けようとする理由に確かに怒り等の感情もあるだろう。けれどそんな単純なものではなく、もっと深く、複雑な部分にあるという事をこうして何度もぶつかり合う中で学び、どんな相手でも受け止めようと誓った。逃げないように捕えた彼を真っ直ぐに見据えながら、彼の真意を聞き出そうとして)
ッさっきまで他の女の手握ってたくせに、んな手で気安く触んな!!
(彼の反応が遅れたことで多少無理矢理にせよこれでやっとこの場を去ることが出来ると一瞬気を抜いてしまったのが悪かったのか、予想外の早さで自分を捕らえた腕を感じれば相手と目が合うか合わないか程の瞬間に抑えていた熱いものがかあっと込み上げてくるのを感じ。この手が自分以外の人間についさっきまで触れていた、異性同士だというのにしっかりと握りあっていた、そんなことが頭に浮かべばかっとなった勢いに任せ手酷いと感じるほど力任せに掴まれた腕をほどくと怒りと悲痛とも取れる大きな怒鳴り声で拒絶し。しかしすぐにはっと自分がしたことを認識すると一瞬戸惑ったように瞳を揺らした後涙を堪えるように悲しみにぎゅっと顔をしかめて。)
ーー…ご、め…。…今、どうしたって冷静になれなくて…酷いこと、簡単に口走っちゃいそう、で…だ、から…ッ!
(二人が踊っている時も、逃げ出して追いかけられていた時も、これだけ言及されるまでずっと我慢出来ていたのに触れられたというほんの些細なことで酷く相手を傷付けるような言葉を吐いてしまった。そのことが自分自身ショックでその切っ掛けから塞きを切ったようにぼろぼろと瞳から涙の粒をこぼし始めればくしゃりと歪んだ表情を隠すように軽く俯きながら片手を鼻の辺りに添え。泣くことでヒューヒューと鳴る喉が声を震わせるのか、極力それを抑えたような酷くか細い声でぼそぼそと相手からの問いに応えるとその言葉を最後に止まらなくなったように嗚咽を繰り返しながらぐずぐずと泣きじゃくり始めて。)
…っ、
(腕を捕えた途端、放たれた悲痛な叫びと共に物凄い力で振り払われ、息を詰めて。こうなるだろう事を頭の片隅で想定していても愛する存在からの拒絶が堪えないわけがなく、細めた瞳を密かに揺らしつつ行き場を失った腕をゆっくりと下ろし。それでも解って欲しい、どんな相手も受け止める覚悟が己にはあり、それ程相手が大切で譲れないものだという事を。「椿……」泣き出す相手をどうするでもなく静かに声を掛け。暗がりの中、俯いてしまっている表情は此方からはよく見えないものの、張り詰めていたものがぷつりと切れたように嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる相手がどうしようもなく愛しい思いが溢れ)
――だからそれを我慢しねぇで言えっつってんだよ。今、俺にぶつけなくていつ誰にぶつける?お前の事だからこんな事言ったら俺を傷付けるとか、嫌われるんじゃねぇかとか、ごちゃごちゃ思ってるんだろうが…そんな事で面倒になるような生半可な気持ちじゃねぇって何度言えばわかるんだ、てめぇはよ。冷静になんかならなくていいだろうが。俺はお前の前で冷静でいれた事なんか一度もねぇよ…。
(どうすればこの思いの全てが伝わるのかわからない。もどかしい気持ちが、極力勢いを抑え落ち着いて発するよう努めていた声を次第に荒げていき。瞳は依然相手を捕えたまま、ただ真剣に相手と向き合おうと必死で)
…お前なら、そう言うって思ってた…。…それ、でも…お、俺が嫌なんだよ…好きな奴に、汚いところなんて見せたくない…!…わ、がままな、こんな面倒臭い奴になんてなりたくない…!
(優しい彼なら、心の中で傷付いてもきっと結局は自分を尊重してくれるのだろうとこれまでの関わりから何となく分かっていた。現に相手は自分が怒りに任せて口走った言葉さえも拒否なんてせず受け止めてくれている、それでも愛しい相手に自分のどろどろとした汚い部分を見せたくない気持ちが心に強くあることで衝動に駆られて口走ってしまわない限りはやはり極力口をつぐんでいたい思いがあり。一気に気持ちを放出したお蔭か深すぎる嫉妬に涙自体が止まることさえないものの次第に高ぶったような嗚咽は落ち着いていき、頬に伝った幾重もの涙の筋道を袖でごしごしと拭き取りながら俯いていた顔を僅かながら上向かせれば自己嫌悪の念からかぎゅっとしかめられた表情のまま少しずつ話し出し。)
…ほんとは、お前のこと無理矢理うちに連れて帰って、そのまま暫く俺だけのにしたい、とか…そんなこと考えるくらいに嫉妬してるんだよ…。…でも、そんなこと出来ないし、もしかしたらお前は受け入れてくれるかもしれないけど…そういう、汚い自分が俺自身お前に見せたくなかったんだよ…。…ずっと、ずっとずっと…俺の中の綺麗なとこだけ見せてたくて…。
(愛とはお互いに全てをさらけ出すものだとしても、自分一人の自己満足でただのエゴでしかないことでも、それでもそうして見せたくない部分を隠していたいという程には相手によく思われていたかった。結局は吐露してしまった部分こそあれどそれは今も変わらないのか、それ以上の感情の露出を抑えるために気持ちを落ち着かせようと深い呼吸を繰り返すと鼻から口許にかけてを軽く片手で隠しながら小さく唇を噛み締めて。)
……俺がそんなお前を見たいっつってもか?お前が汚いと思うお前も、面倒だと思うお前も…
(堰を切ったように次から次へと溢れ伝う涙を必死に拭いながら心の内を懸命に言葉にする彼を目の当たりに、苦しい程に胸を締め付ける言葉にならない程の愛おしさに喉の奥が熱を持つ。相手の頬に触れようと伸びた手は、他の女に触れた事を理由に一度拒否された事で一瞬戸惑いを見せ、頬には触れずそのまま相手を抱き寄せて。相手からは見えない表情が真剣でいて何処か懇願するようなものである事はその声音にも滲んでおり、相手の全てを求めるように、逃げ出してしまわないように、しっかりとその腕でかき抱いて。“好きな相手に汚い部分は見せたくない”、元々彼はそういった思考を持つタイプなのかもしれないが、此方の一目惚れから始まってしまった事もあり、彼の中で尚更譲れないものとなってしまっている可能性も否めない。もしそれがプレッシャーになっているのなら大きな間違いだという事を伝えたく、頭をゆっくりと一撫でしては口を開いて)
椿…お前は汚くなんかねぇよ。上手く言えねぇが…お前の気持ちを聞いて、益々お前が愛しくじたのは確かだ。これからもお前を知る度、この想いは強くなっていく気しかしねぇ。お前がその汚ぇと思う部分を幾ら隠そうとしても、俺はきっと無理にでも見ようとする。お前を愛しているからな…。
(必死に隠していた部分を知っても尚、彼は己の中でずっと綺麗なままで、これからもそれは変わらないという確たるものがある程、腕の中の彼が愛しい。抱き寄せた頭に頬を軽く擦り寄せるようにしながら、己でも驚く程穏やかな声音で思いの丈を語り。幾ら愛しているからだといって、彼の本意ではない事までしようとする己の方が余程汚い人間だという自覚を持ちながらもそうせずにはいられず、頬に触れる髪に唇を寄せて)
ッ、…!
(堪えようと抑え込んで居たのにとうとう言ってしまった、隠しきりたかったはずの感情を相手に伝えてしまったことが今更どうにも出来ないくらいの大きな不安や後悔となり背骨を伝ってくるようにぞくぞくと全身に広がり。嫉妬の感情を抱く本人が女であればやきもちなんて可愛い言葉のように愛らしいものだっただろうが男がそれを抱けばただの独占欲とどろどろに煮詰めたような重たい感情としか自分ならば思えず、そんな考えが尚更自己嫌悪に拍車を掛けて。悶々と思い詰め始めた最中不意に傍に感じた相手の匂いと、それに混じって仄かに感じた甘ったるい女が好みそうな香りに顔を上げると今度は逃げられそうもないほどにしっかりと相手の腕に捕らわれ思わず息をつめ。)
…どんだけ、重たくなっても…周りが引くくらいの酷い嫉妬になっても、それでもちゃんと愛してくれんの…ッ?
(恐らく香水か何かの移り香なのだろう、予想するまでもない甘ったるい香りの持ち主のことを考えまたしても腕を突っぱねようかとした時、彼の口から放たれた嫌悪など欠片もない真摯な言葉に抵抗を忘れ。先程嫌がったばかりの手で撫でられることも気にならなくなるくらい、強く温かく胸に響いたその言葉にやっと収まり掛けていたというのにまた目の奥が熱くなるのを感じると浴衣の合わせから覗く相手の首もとに鼻先を埋めるように密着し。自責の念に駆られ暗く落ち込んだ心を温めてくれるような彼の行動にぼそぼそとした小さな声で言葉を返すと胸に当てていた手をそっと相手の胸板に滑らせ、しがみつくと言うのが憚られる程の弱々しい力で浴衣の一部を握り。)
当たり前だろうが…お前の嫉妬や独占欲を感じる程、お前が愛しくなる。俺だって自分の貪欲さに驚いてんだ…お前と同じなんだよ…。だからもっと…もっと俺を必要としろ。
(己の思いが伝わったのだろうか、抱き締めた瞬間彼が息を詰める様子は感じたものの、抵抗らしいものは見られない。首の辺りに埋められるように触れてくる彼の鼻先、戸惑いがちに胸元付近の浴衣を掴む手、 涙を堪えるようなか細い声、どれもこれもいとおしく、言葉にならない愛しさが鼻の奥をつんとさせて。掠れてしまいそうになる声を気遣うように、所々言葉を途切れさせながらも強い意思を感じさせる声音ではっきり伝えれば、未だ迷いを見せる相手に安心して縋って欲しい一心で、抱く腕に力を込めて。好きな相手に己を良く見せたいという思いはわからなくないが、相手に晒す自分を悠長に選択している余裕など己にはない。狂おしい程に膨らんだ想いを正確に伝える事すら困難で、相手を腕に抱く今でさえもどかしい思いに駆られ。「椿…」自然と溢れてしまう声からは溢れる感情をもて余すようものが感じられ、愛しい存在の温もりをより感じようと抱き直して)
ーー…今日、うち泊まってって。…茂庭さんとくっついてた罰、明日まで俺とだけ居て…。
(相手の嫉妬や独占欲が自分にとって心地好いように、自分が汚いと苦々しく思っていた想いも相手にとっては愛しいものだった。そのことが深い安堵と共にとてつもなく嬉しくて、こんな気持ちすらも愛してもらえることがこの上なく幸せで浮かべた涙が頬を流れ落ちていく中深い幸福感に顔をくしゃりと歪めながら笑みを浮かべて。控え目に胸板に滑らせていた手を両手とも相手の背中に回しぎゅっと抱き締めると安堵から漸く安らいだような笑顔になれた瞳を相手に向けると、にっと控え目に歯を見せながら悪戯っぽい要求を口にして。相手が自分を受け入れてくれたのは勿論嬉しいがそれにしたって茂庭との一件はそんなに聞き分けよくなかったことになんて出来ないくらいのもので、八つ当たりとまではいかずともじゃれるように相手の頬骨にわざと頭を当てぐりぐりと押し付け。「…断ったら、お前のこともう二度と名前で呼んでやんねぇから。」子供じみた報復に過ぎずともこれでも自身の中では中々の勇気を出した行動であり、言ってから段々と不安が込み上げてきたのか最後に少しだけしおらしくなったような、小さな声でぽつりと呟くとどうするとばかりに相手を見つめて。)
は、そりゃ願ってもねぇ罰だな…。言われなくとも今日はお前を一人にするつもりなんか更々ねぇよ。お前を連れて帰るのが無理なら、お前の家に押し掛けるつもりだった。
(罰という名の甘い要求は、此方の望みそのもので。しっかりと背に腕を回された上での、ねだるような甘えるような物言いに柄にもなくときめきを覚え。己に向けられた安堵と幸福感に満ちた笑顔は一際綺麗に見え、頬を伝った涙の跡が尚更愛しさを掻き立てる。濡れた頬を優しく拭ってやりながら真意を伝える最中、頬骨の当たりに可愛らしくも地味に痛い攻撃をくらうも、ろくに抵抗を見せずにそのまま話を続けて。と、不意にしおらしさを垣間見せる相手が発した言葉にぴくり、と小さな反応を示せば「……何だよ、また呼べよ」今度は此方が戸惑ったように眉を寄せ、珍しく拗ねたようにも取れる声音と同様の表情で相手を見つめ。これまでまともな人付き合いをして来なかった故、下の名前で呼ぶような存在など身内くらいなもの。愛しい相手に初めて名を呼ばれた時の、あの何とも言い難い衝動と胸の高鳴りが蘇れば忽ち胸がざわめき出し。「…っ」再び相手の頭を抱き寄せる事で、余裕のない表情を隠そうとするも、加速し始めた鼓動まではどうする事も出来なくて)
ーーかず、さ…すごく、嬉しい…。…親、今日と土日使って旅行いってるから。
(優しい手付きで頬の涙の跡を拭ってくれたりと随分大人びた対応をしてくれたかと思えば、自分が用意した名前を呼ばないなどという報復に拗ねた様子をみせたりと茂庭には見せないような様々な表情を彼が自分だけに許してくれているという優越感に思わず頬を緩め。本格的に拗ねてしまったのだろうか、自分の頭を抱き寄せ表情を隠してしまった彼にくすりと小さく笑むと首を緩く捻って相手の顔の方を向けばそのまま軽く吸い付くように相手の頬へと口づけて。少々の照れ臭さに頬を仄かに染めながら小さな声で彼の名前を呼ぶと今夜自宅が空いていることを伝えると共に未だ身に纏ったままの浴衣を軽く引いてから「…これ着替えて、早く帰ろう?…ちゃんと、俺らしか居ないとこで甘えたい、から…。」などと漏らして。)
っ…お前、少し大人しくしてろ。俺がもたねぇ…
(ある程度落ち着くまで抱き締めたままやり過ごそうとしたが、余裕を欠いた己に追い討ちを掛けるように頬へ施された感触がそれを妨げて。顔を上げたそこには、はにかんだ様子で己の名を口にする相手。甘えるように浴衣を引きながら可愛らしい口調で“帰ろう”と促されれば言い様のない愛おしさに襲われ、いてもたってもいられなくなり、眉を潜めたまま視線が泳ぐ。自分でも手に追えない程に突き上げる感情を必死に消化しようと、まともに思考が回らない頭で全く会話になっていない言葉を吐きながら再び強く抱き締めて。暫しそのままでいる事で漸く落ち着いて来たのか、相手を抱く力を緩めると「――…そういや…、」と、何かを思い出したように口を開いて相手を解放し。己にとって罪に値する程の可愛らしさに取り乱していたせいで先程は反応出来なかったものの、“両親は旅行中”と、彼の口から聞いた気がする。思ってもみない好機ではあるが、相手の家に押し掛け一泊する気でいた故、両親にもそれなりの挨拶を…と本気で考えていた分拍子抜けしてしまい。「さっき親は留守って言ったか…?」念の為確認しながら、取り敢えず教室を後にしようと、暗がりの中誘導するように然り気無く相手の手を引いて)
…ごめん。…まだ、ちょっと収まってないとこあるみたいで…。
(切羽詰まったような言葉や泳ぐ視線、強く自分を引き寄せてくれる腕を含めた彼の態度全てが自分を好きだといってくれているようで酷く心地よく、彼の愛情で己の欲望を潤すどころかまるで浸されているような強すぎる充実感にきゅう、と胸が苦しくなり困ったように眉を寄せながらも口許を緩め。何時もより彼に甘えてしまっている自覚はあれど未だ燻る嫉妬心がそれを止めることをよしとしないのかどうにも自制が利かず、半ば言葉ばかりの謝罪と共に自制がままならない様を伝えて。暫くして離れたことで密着していた体に夜の冷たい空気を感じると温かかった相手の体が早々に恋しくなってしまい、我ながら毒されてきてしまったと自嘲の笑みを漏らして。「…ああ、元々土日家族旅行の予定があったんだけど、もしかするとクラスの奴等と打ち上げとかするかもしんねぇからって断って…だから、うちの両親日曜の昼頃までは出掛けてるんだよ。」手を引かれながらの質問に顔を上げ答えると、彼が自分の両親が居るか居ないかなどということにこうも聞き返す理由が分からず思わず緩く首をかしげて。思い当たることが全くもってないという訳ではないが、そのひとつの理由が彼を動かしているのなら正直自分としては寂しいの一言に尽きてしまう。自分でも悲観的に考えすぎだと分かっているが一度そんな考えが出てしまうと彼の否定を持ってしか絶ちきるのは難しく、妙に甘えたくなっている心情が後押ししてか相手の手をそっと握り返し、少しだけ困ったような笑みを浮かべながら視線を落とすとゆっくりと口を開き。)
ーー二人っきり、嫌…とかじゃ、ない…よな…。
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