主 2013-06-22 18:50:00 |
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(抵抗が見られなくなったとはいえ下敷きになった相手の身体からは依然強張りが伝わり。やがて早く退くようにと肩を押され、少しだけ離れた距離から見下ろすように相手を眺めれば表情を隠すかのように顔に乗せられた腕。隠しきれなかった上気した頬と何かを堪えるように噛み締められた唇を見れば相手が今どんな表情でいるかは想像出来るものの、実際に見てみたいという衝動はやはり抑え切れず、顔を隠す相手の腕を掴んで)
…まだ終わってねぇよ。
(掴んだ腕をどうするでもなく目元を隠させたまま、既に綺麗になった唇を最後の仕上げとばかりに一舐めするも、舌先で舐め取るというよりは若干唇も重なるような先程より深い舐め方で。掴んでいた腕をここで外させれば、露になった表情に刺激される官能と溢れる愛しさに目を細め、相手の前髪をさらりとかき上げながら小さなリップ音と共に額に口づけを落とし。風呂に入りたいと訴えていた相手の上から漸く退く素振り見せると「補助は必要か?」等とクスリと笑みを浮かべ)
ッは…、っ!?
(顔を隠していた腕さえも容易に取られてしまい恨めしげに相手を睨むと先程全体を既に舐められたと思っていた唇に対し"まだ終わっていない"などと宣う彼に思わず間の抜けた声と共に一瞬気を緩めてしまい。その隙につけ込むような絶妙なタイミングで施された明らかに先程よりも深い舐め方にこちらは最早頭のキャパシティも限界に近く。湯だりそうなほどの熱を逃がすような短い呼吸の中額に寄せられた今までのものと比べればまだ可愛らしい程度の行為にとうとうぷつりと頭の何かが切れたのか元々自由ではあった怪我をしていない方の足で中々の力を込め相手の胴体ど真ん中に鬱憤の詰まったような重い蹴りを入れると「ッ**、もうあんたホントに**っ!馬鹿、変態エロ野郎ッ!」などとただ悪口を連ねただけのような幼稚な罵倒を繰り返し。それからばっと両手で自分の顔を覆うと相手に押されっぱなしでまるで女のように丸め込まれてしまっている自分の不甲斐なさ、それに対する反撃がこんな幼稚なものでしかない情けなさ等々これまでの色んなものがない交ぜになって段々悲しくなってきて顔を隠す掌の下で思わず薄く涙を浮かべ始めてしまって。風呂まで世話になってはもうプライドも何もないとこんなところで意地を張りぶんぶんと首を振ると相手が退いたお蔭で動けるようになった体を腹這いに横たわらせ、彼のせいで足腰共に砕けてしまったせいかそこから惨めな芋虫状態でもぞもぞと床を這うようにして動き始めて。)
―…ッ!
(相手の上から退こうとした際、相手の繰り出した一撃が腹部付近に見事に決まり。綺麗な顔立ちをしているとはいえやはりその辺の力は男性そのもので、片腕で腹部を押さえ軽く咳込みつつ近くのソファーを背にずるりと寄り掛かると痛みに顔を顰め。相手に視線を移せば何故かずるずると腹這いに這うような姿、痛みに堪えながら不自然なそれを少しの間眺めるように見つめて。極度の緊張から腰でも抜かしたかと勘づけば忽ち苛めてやりたくなる思いが沸くものの、度が過ぎて嫌われるのを恐れてか「…バスルームはそっちじゃねえよ」と、顎で別方向を指すだけにとどめ)
(/椿君の性格を知っているせいか説明を受けずとも毎回直ぐ解ってしまう自分…。←/いつもご丁寧に有難うございます。)
っ、!~ッ、あ、りがと…。
(相手が言葉を紡ぐその最初の一言が声として発言された瞬間にまだ何かされるのか、と気を張っていたせいもあり過剰なまでにびくりと肩を跳ねさせ。しかしその内容はそんな意地悪じみたものではなくむしろ親切なもので、先程の行為への不満が収まっていない今彼に礼を言うのは何だか癪なため少しだけ黙りこんだものの聞こえるか聞こえないかというレベルのか細い声にてその礼を伝えると指された方向にもぞもぞと身を縮こまらせながらも進んでいき。最後に扉の隙間から彼の方をじと、とした目付きで振り返ると「風呂、ぜってぇ覗くなよ!覗いたら今度はさっきの程度じゃすまないからな!?」などと一応釘を刺してからばん、と音を立てて扉を閉め。そうして廊下に出てから脱衣所にゆっくりと向かって。)
(/わあ、そこまで理解して頂けるとは何だか嬉しいですね!いえいえこちらこそ、これからも彼の性格上発禁(?)用語が飛び交うこととなるかと思いますがどうかお付き合い下さいませ。)
(こんな時でも礼を告げる相手の律義さに加えお人好し加減に緩みそうになる表情を俯き加減に前髪をかき上げる事で誤魔化して。バスルームに向かう為の扉を開ける気配を感じれば頭から手を外し気を緩めながらそちらを見やるも、その扉の隙間、此方にじと目を向けている相手と視線がばちりと合えば一瞬動きを止め。覗くな、との警告に返事する間もなく扉が閉まると、相手らしい言動にふっと笑みが浮かんでしまい)
……さっきの程度じゃ済まなくなんのは間違いなく俺の方だろうな。
(仮に覗いた際の相手の反応云々よりも己の自制心を懸念するかのような独り言と共に自嘲的な笑みを溢せば、気を紛らわせる為か凭れていたソファーから背を離しテーブルの上を適当に片付け始めて)
(/いや、だってそりゃあ…、…うん。←/それが椿君の魅力の一つだと思っておりますので今後も遠慮なくどうぞ!お返事不要です。)
ーーお待たせ、上がった。…シャンプーとか、その辺にあったの適当に借りたから。
(風呂に入ると言って消えてからシャワーだけだというのに足の怪我を庇いながらの入浴に思ったよりも手間取ったらしく長々と30~40分程度の時間籠りきっていて。そうしているうちに言うことを聞かなかった足腰も立つようになったのか、帰りは覚束無いながらもきちんと立ち上がりぺたぺたと廊下を歩いて戻ってきて。先程までのことがあって少しだけリビングに戻り辛かったのか僅かに戸惑うように扉の前で立ち止まるものの決心して中に入れば彼の顔を見辛いこともあり頭からタオルを被っていて。行きの時に着ていた制服は片手に、用意していた部屋着か着なれた少し伸び気味の黒いタンクトップにスポーツブランドのものと思われるハーフパンツを履いていて。水に濡れて普段より少し長くなったように見える髪を襟足の辺りから邪魔そうに少し掻くと何となく彼の傍にそのまま近寄るのもアレな気がしてリビングに足を踏み入れたままその場で棒立ちになり、気まずそうに視線を揺らしながらぼそりと呟き。)
…ああ。足は大丈夫か?
(相手がシャワーを済ませるまでの間思ったより時間があり、暇を持て余すように何となく付けたテレビ画面をただぼんやりと眺めていたが、不意に掛けられた声にそちらを見やりながら少し遅れて返事を返し。頭から掛けられているタオルのせいで此方の角度から表情はよく見えないものの、風呂上がりというだけで胸がざわめき出すのは相手が相手なら仕方がない事で。先程の事もあり警戒でもしているのか扉の前で棒立ちになっている相手。「んなとこに突っ立ってねぇでこっち来いよ」とソファーに座る己が示した場所は、仮に腕を回せば簡単に相手を抱き締めてしまえるくらい近い、己の直ぐ前のスペースで)
…ん、今行く。
(先程原因が相手にあるにしても不良で通っていて更に言うなら紛いなりにも自分に好意を告げてきた彼に中々の蹴りをお見舞いしてしまったわけで流石に多少の居たたまれなさがあったのだが特にそれには触れず、それどころかこちらの心配を口にする相手に僅かだが強張っていた体から力が抜け安心に胸を撫で下ろしながら小さく頷くとぽつりと呟き。途中冷凍庫に突っ込んでいたアイスを持ち出してから彼のもとに歩み寄っていくと安堵から気が緩んでしまっているのか何も深く考えることなく相手の指した場所に座り。アイスを取りだしさくりと角の所をかじるとそれを頬張ったまま何気なく視線をテレビに向け、そのまま家やら友人宅でやるように所謂他意もなく己の立場を考えることもなく至って自然な流れで後ろのソファに腰かける彼の座った足の間から覗くソファの側面に寄り掛かるようにして体を後ろに倒して。)
…お前、わかりやすい反応する癖に時々読めねぇな。
(此方への警戒心からそう簡単に従わないだろうと思いきや意外にもすんなり承諾の言葉が返れば内心少々戸惑い。ラフな服装でアイス片手に躊躇いなく指定した場所へと腰を下ろす様は余りにも無防備で、己が此処に呼んだにも関わらず“何考えてるんだ”と問いたくなるもので。態度に示す事はないものの戸惑う気持ちを言葉にすれば、相手が頭に掛けているタオルを手にし濡れたままの髪の水分を取り始め。艶のあるさらさらとした髪はその辺の女性のものより余程綺麗で、傷めてしまわないように気を遣うせいか乾かし方がらしくもなく慎重になってしまい。時折指を通しながら髪を乾かす間、大人しく己の前に座る相手を抱き締めてしまいたくなる衝動に堪えて)
…そうか?まあ、人間そんなにすんなり分かりやすいだけってのもまずいだろ。
(他人の髪だから慎重になっているのか、丁寧な相手の乾かし方は普段自分でやっているのよりも数段心地好く何も言わず彼に髪を任せたまましゃくしゃくとアイスを口にして。何も考えていなかった行動ではあったが自分の中に恐らく"そんな場所に座らせるくらいだから髪くらい乾かしてくれればいいな"程度の思いはあったのかもしれない、しかし彼にはそれが分からないのだろう。そんな戸惑いが感じられる声にテレビを見ながらぼんやりとした声で返せば背後を半身上体を捻って振り返りある意味では彼の意表を突き、驚かせることが出来たことを誇るように口角を上げにいっと笑って見せて。まあ確かに不用心過ぎた行動だったかもしれないがこちらとて暫くの時間を共有した彼を多少なりとも信用しているわけで、時折突飛な行動にでようとも明らかな害を自分に与えることはしないと信用した上で少しは気を許しても構わないと思った結果がこの行動ということであり。意識しているつもりはなかったがもしかするとこれは以前よりは大分心を開いていることを彼に伝えたかったがための行動だったのかもしれない、などと他人事のように考えれば「…俺だって、それなりに色々考えてんの。」などと口をこぼし。)
まあ、な。
(確かに手にとるようにわかってしまってばかりでは面白味がないかと相槌を打ちながら髪を乾かしていれば此方を振り向く相手と視線が合い。相手が浮かべる得意げな笑みを見ている内、警戒心を露にしながらも時折妙に素直な行動に出る相手の気持ちを己なりに解釈して。アイスを頬張る相手の髪を乾かすという間柄によってはごく自然であろう行為は、他人と距離を取って来た己に不思議な感覚を起こさせ。同時に相手とこんな風に過ごす時間を心地よく感じていて。色々考えている、と告げる相手の愛しさにクスと笑みを零しては「俺との事もか?」と、気付けば自分でもむず痒くなる程柔らかな声音で訊ねており。そんな甘ったるい声を洩らす自分自身に戸惑いを覚えたのか、ある程度乾かし終えた髪から手を外し立ち上がれば「…シャワー浴びてくる。眠くなったら寝室のベッドでも適当に使え」と告げ、相手の頭にぽんと軽く手を乗せてはバスルームに向かおうとして)
ーー…考えてるよ、ちゃんと。
(口内に広がる冷たく小気味のいいアイスのさくさくとした歯応えを楽しみながらぼんやりと彼の方を向いたままでいれば彼にしては柄にもなく甘ったる過ぎるのでは、などと己にも感じさせてしまうような慈しみを込めたような言葉に思わず少しだけ目を見開いて。考えているかいないかと言われれば勿論考えている、彼の好意を疑うつもりはもうないし元々は別に男同士にそれほど否定的だったわけでもない。しかしやはり他人事だった男同士での恋愛というようなものの当事者が自分となった今は話は別で。彼を嫌っているわけではなくむしろ好いている方だと自分でも思っている、だがだからこそこれからの自分のことも彼のことも己の判断がそれに大きな影響を及ぼすと踏まえている以上まだ判断を口にすることは出来そうになく。彼から視線をテレビに戻し口の中にあったアイスを飲み下してから小さな声で一言だけ呟くと頭に掛けられていたタオルを片手で取り。風呂に行くという彼の方にそれを差し出し「…じゃあ、これ脱衣所の物干しとかに掛けて乾かしといてくんないか?」と尋ねると、先程の相手の言葉に少々考えすぎてしまったせいか少しだけ活気が抑えられたような薄い笑みを浮かべて。)
……そうか、ならいい。
(立ち上がりバスルームに向かおうと背を向けた際相手から小さく意思が紡がれれば、その場で足を止め伏し目がちに笑みつつ言葉を返し。己との事を真剣に考えてくれているだけでも今は十分だ、そう感じてしまうのは今こうして彼を独占出来ているからだろうか。僅かに笑みを残したまま振り向けば差し出されたタオルを受け取りリビングを出て。自室に寄り着替えを持ち脱衣所に向かい、頼まれたタオルを干してから服を脱ぎ始め。浴室への扉を開けた途端扉の隙間から外へ逃れるように湯気が流れてくる。己以外に使う事はない浴室内は普段はない湿度を持ち、立ち込めるシャンプー等の香りが相手が先程まで此処を使用していたという事実を示し、妙に想像を駆り立たせ。己を支配しようとする感情を振り払うように水に近い水温に設定し直したシャワーを頭から被れば、一人にしている相手も気掛かりなのかさっさと済ませて戻ろうと洗い始め)
ーー…眠い、な…。
(彼が部屋を出ていってから暫くは残ったアイスを食べながらテレビをぼんやりと見ていて。しかし今日一日の疲れが祟ってか普段はまだ起きている時間だというのに早々に眠気が催され始め、そこでアイスのごみをゴミ箱に入れてから相手に言われた通り寝室へ行くべくそこを探そうとリビングの扉に手を掛けたときふとあることに気付き。例え度々妹が訪れているとはいえそのたまに来る彼女のためにベッドを用意しているとは考えにくい、となるとベッドがあったとして必然的にそれは彼のものということになり。好意を寄せてくれている相手のベッドに寝るというのは些か不用心過ぎないか、という考えは勿論のこと家主を差し置いて自分がベッドに寝るというのも如何なものかと少し戸惑いを覚え。一度ソファに戻って考え直そうとそこに座りなおすとぼんやりと眠気に支配されかかった頭でソファなどという転た寝には最適の場所に戻ってしまったのが悪かったのか、背もたれに深く寄りかかったままうっかりその場で眠り始めてしまって。)
(普段より少し早目にシャワーを済ませリビングに戻るも、普段何かしら声を掛けてくる筈の相手からの反応はなく。見ればソファーの背凭れに凭れた体勢で眠ってしまっているようで。濡れた髪を片手で乾かしつつその光景に小さく溜め息をつくと静かに相手に歩み寄り。気持ち良さそうな寝顔は普段よりもあどけなく、つい柔らかな笑みがふっと溢れてしまう。足の怪我のせいで慣れない姿勢を取っていた上、半ば強制的に此処に連れて来られた事で気を張っていたのだろう)
寝るならベッド使えっつったろ…
(指先からそっと相手の額に触れ、そのまま静かに前髪をかき上げるように撫でながら起こさないように抑えた声音で呟いて。抱き上げれば起こしてしまう可能性はあるものの、此処で寝るよりは広々としたベッドでゆったり眠る方が良いだろうと判断すると、出来る限りそっと相手を抱き上げて。眠っているせいでいつもより重みを感じる身体を寝室まで運ぶ途中、何と無しに落とした視線の先、閉じられた瞳を縁取る長い睫毛や形の良いふっくらとした唇等に目を奪われ、綺麗な顔立ちだと改めて見惚れてしまい。抑制している感情を誘発してしまいそうになるそれを極力視界に入れないよう努めながら寝室へと運ぶと、ベッドへゆっくりと降ろして)
(意識を眠りの中に飛ばしてから暫く経った後微かに額に何かが触れたような感覚がし反射的に体が反応したのかぴくりと小さくみじろぐと唸るような低い声を漏らし。座ったまま眠りについたせいかそこまで眠りは深くなく、安らかな微睡みの中体が浮いたような不思議な浮遊感に少しだけ沈んでいた意識が浮上し。瞼越しに微かに感じる電灯の光を嫌がるようにぎゅう、と目を瞑っていれば不意にその光を遮るように相手の顔が影を作り。それで漸く安らいだように瞼に入れていた力をふっと抜くと抱き上げられた体勢だからか耳から頬辺りに風呂上がりということも加担してこれまで抱き上げられた時よりもより強く相手の体の熱を感じ、アイスを食べていた上寝たままクーラーに当たっていて冷えた体がその熱を心地好く感じたのか眠ったままなせいで相手の思いなど勿論考えることもなく遠慮なしに相手の首にゆったりと腕を絡めると「…ッ、ん…あったかい…。」などと呑気な寝言を漏らしながらぴとりと相手にくっついて。そんな行動に出てしまったお蔭でベッドに降ろされた後もそのまま離すことはなく、先程よりずっと眠りやすくなった空間に満足しているようにむにむにと口許をもごつかせるとすやすやと気持ち良さそうな寝息を繰り返して。)
(可愛らしい寝言と共に首に緩く腕が絡めば例によって跳ねる心臓を恨めしく思う。相手と出会ってからというもの些細な事で反応する心臓。今までこんな経験が無かっただけに煩わしくて仕方ないと同時にそんな己が女々しく感じどうにも堪え難く、戸惑うと同時に苛立ちも覚えさせて)
おい、離せ…
(ベッドに降ろしても離れようとしない相手、決して誘っているわけではない事くらい承知だが、薄暗い部屋のベッドの上、風呂上がりの相手に抱き付かれるという状況への動揺がまともな思考を遮ろうとし。このまま欲に従い思うがまま相手を抱く事など容易い事、しかしそれを必死に制御しようとする思いが働くのは本気で想う相手を傷付けたくないと強く思うからで。首に絡んだままの相手の腕をゆっくりと離させるとタオルケットを掛けてやり、相手に背を向けベッドに凭れて。「…さっさと気持ちを俺に向けろ。お前の前じゃ理性なんてアテになんねぇんだよ」欲まみれの感情を払うように片手で乱暴に己の髪をかき上げながら長めの息を吐くと、部屋を出ようと立ち上がり)
(自分の意思とは逆に他者の力を持って動かされた腕が眠気をにわかに覚まし始め、まだぼんやりと寝惚けたような状態ながらもそこで不意に目を覚まして。まだふわふわと眠たい頭を抱えたままゆったりと辺りを見渡せば何故いつの間にやら寝室に居るのだろうなんて疑問が浮かび、徐々に覚醒し始めた頭がこちらに背を向けてベッドに腰かける彼の姿と照らし合わせその疑問はすぐに解決する。しかしこれでは自分が何となく気を遣ってリビングにいた意味がないじゃないか、そんな思いで彼の背中に手を触れようとすると調度その時彼が独り言のように口を開き。)
ーー…それが出来れば、俺だってこんなに悩んだりしないんだよ。
(部屋を出ようと立ち上がる彼の背中に呟くような小さな声で囁くと相手が振り向いたりしないうちにと寝返りを打ち、体に掛けられていたタオルケットを引き寄せて顔を隠してしまい。彼が自分の気持ちと葛藤しているのと同じくらいに自分だって悩んでいるのだ、ただ何となく気まずいから返事を返していないだとかそんな風に思われたくはない。タオルケットで隠した表情を複雑そうに歪めながら小さく溜め息をつくと今日はもう気遣いなんて忘れてこのまま眠ってしまおう、そう決意しゆっくりと瞳を閉じるともぞもぞと僅かに身動ぎ枕を頭から取ると抱き枕代わりというように胸元でぎゅう、と抱き締めて。)
(ドアに向かって進もうとした足を止めたのは背後からかかる相手の小さな声。起こしてしまったかと振り向けばいつの間に寝返りを打ったのか此方に背を向けていて。相手がどんな思いで口にした言葉か、タオルケットで顔を隠す様子からも先程リビングで告げられた言葉からも伝わり、それだけでまた愛しさが込み上げて来て)
――…そうだな。急かすような事言って悪かった。
(再びベッドへと歩み寄れば枕を抱き寄せる相手の頭にそっと触れ、自然と優しさを帯びる声音で囁くように告げて。どれだけ憎まれ口を叩こうとも根が素直で優しい彼の事、恐らく余計な事まであれこれと考えてしまうのだろう。不器用なりに一生懸命己と向かい合おうとする気持ちが嬉しいと同時に酷く愛おしく、胸の奥が切なく締まるような感覚に目を細めれば「椿…」熱っぽく相手の名を呼びながらギシリとベッドを軋ませ身を乗り出して。感情任せに唇を奪ってしまいたく衝動に鼓動がドクドクと加速する。しかしそうしてしまえば只でさえ思い悩んでいる相手を益々混乱させるだけ。奥歯を噛み締めながら堪えてはそのまま顔を近付け、枕を抱く相手の手をそっと握るように己の手を添えながら相手のこめかみ付近に口づけを落とし。「…おやすみ」子供の頃以来口にした事が無かった当たり前の挨拶を口にし相手から離れては、静かに部屋を出ていき)
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