トピ主 2013-04-02 21:19:25 |
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―…冷て。
(下校途中。家の方向の異なる賑やかな友人達と別れて歩いていた矢先にぽつりと落ちてきた水滴が、制服の長い袖を捲ることによって露わになった腕に落ち、思わず歩みを止めて空を仰ぎ見る。鈍色の絵具を厚塗りにしたかのようなどんよりと重い灰色の空が視界いっぱいに広がっており、追いかけてくるように一粒二粒と落ちてきた水滴は頬を濡らした。自宅までは現在地から走っても十分はかかる。これは不味い、徐々に雨脚が強まってゆく中で今朝傘を持たずに家を出た事を後悔しながら、雨粒から顔を庇うように片方の腕で覆い屋根のある場所へと駆け込む。頬についた水滴を無造作に制服の腕の部分で拭いながら、少し乱れた呼吸を整えるように深く息を吐き出すと、屋根を広げている喫茶店らしき佇まいの店を覗き込み。ガラス張りのドアにはCLOSEDの札が掛かっていて中は薄暗く閑散としており、休業だという事は今回ばかりは好都合だ。屋根を叩くような雨音に改めて道路側を振り向くと、止む気配のない激しい雨に街並みは靄がかかって見える。恐らく驟雨だろうが、このままでは家に帰る事はおろか此処から出ることもままならない。ズボンの尻ポケットからスマートフォンを取り出したところで、「あの…これ、よかったら。」視界の端から伸びてきた傘の柄を持つ白い手と女性特有の柔らかな声に反射的にそちらを向き。いつからいたのだろうか、同じ学校の制服を身に纏った女子生徒は気恥ずかしそうに俯きがちに傘を差しだしている。驚き声を発すことを忘れて彼女を見つめていると慌てたように「あ…っ、ご、ごめんなさい!こんな柄の傘なんて、使えませんよね…。」自嘲めいた笑みを張りつけながら眉を下げる様子に我に返る。) …や、びっくりしただけ。ありがたいけど、俺が使ったら君が困るんじゃないの? (スマートフォンを元の場所に捻じ込みながら彼女のほうに体の正面を向けると、此方の指摘に言葉を濁すような様子を見せる。呆れてしまう程に健気な思考に一度溜息を吐き、差し出された傘を受け取って外を向けてゆっくりと開くと水滴が弾け飛んだ。薄桃色の布地に白色の水玉模様が浮かんでいる。それを自分の上にさして一歩踏み出すと、彼女のほうを振り向いて。) 家、どこらへん? (ぽかんとした表情をしている彼女の顔が間抜けで可愛らしく見え、思わず笑ってしまう。中に入るよう急かすと、遠慮と躊躇を繰り返した後におずおずと中に入ってくる相手の頬が少し赤らんで見えた。それを傘の色の所為にしながらゆっくりと歩き出して。)
(雨と傘。夢中で書いてたら物凄い長くておかしいことになったので、きっと読み返すことはないでしょう。←)
雨は、嫌いではないのだけれど。
(サラサラと葉を撫でていた滴は時がたつにつれて勢いを増していき、今では全ての葉を撃ち落とさんばかりの勢いで降り注いでいる。パラパラと葉の間を縫って己の元へたどり着いた滴に髪は濡れ、きっと雨のせいだけではないだろうとも、指先がかじかんで赤くなる。たまらず先ほど買ったばかり、まだ熱を含む菓子を両手で包み込み僅かながらも暖を取りながらほうと一息。指先がじんわりと温かくなっていくのを感じつつ、その代償に楽しみにしていた熱々菓子の熱も奪われていくのを感じ、今度ははぁと溜息。雨は嫌いではない、そう、むしろ好きでもある。雨は甘ったるい香水の匂いも、硝煙や煙草の煙も、毒薬の味すらも全て隠して流してくれるから。……人の血が流れたこんな日は特に好きではあるのだが。「あつあつのお菓子が、台無しだわ」かぶりついた菓子のクリームの甘さに、頬を抑えつつ。)
(/リハビリにて失礼します。スペース感謝です!
お題もお借りしました。(1)雨にて)
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