俺mutter

何でニンゲンって、キモチワルイのかな。

俺も含めて全人類、




何でこんなにキタナイのかな。

名前を呼ばれただけで寒気がする。
触られただけで鳥肌が立つ。
姿を見ただけで吐き気がする。
声を聞いただけで頭痛がする。
顔をあわせただけで胃が痛む。

嫌になる。

俺は、「僕」にその呼び方を許していないよ？

あだ名も名前もニックネームも名字も、何一つ許した覚えはないよ？

だから、名前を呼ばないで。吐き気がするんだ。
それに応じなくちゃならない状況を、精いっぱい呪うんだ。

気付いてないの？　俺はいまだに一度も「僕」を名前で呼んでないんだよ？

だって、視界に入れるのもキモチワルイから。
出来るだけ、認識しないようにしているから。

呼ばれるたびに発狂しそうになるのがわからない？
ああ、もしかしたら俺はもう狂っているのかな。ほかならぬ「僕」のせいで。

もしかしたら「許すとかそういうのじゃない。コミュニケーションの一種だ」とかなんとか、屁理屈でもこねたりするのかな？
まあそれでも構わないけど。

俺を説得しにかかるのかな？

別にそれも構わないよ。

それはそれで楽しみだから。

一度たりとも口で俺に勝ったことがない「僕」がどんな詭弁を弄するのか、見ものだね。

いいだろう、それを見るためなら俺は気持ち悪さを我慢して「僕」と対面してあげるよ。
吐き気をこらえながら、「僕」と話しをしてあげよう。

ああでも、その後にわざとらしく「いやあ、やっぱりむりだったか」みたいに話しかけるのはやめてくれ。
ウザいから。
コロしたくなるから。

俺は別に「僕」のそういうコミュニケーション方法を否定するわけじゃないんだよ？

そうやることでしか会話を始められないボキャブラリーの少なさを、むしろ憐れんだりするぐらい。
そうやってしか人の興味を引けない「僕」の話術の薄さを、ひそかにあざ笑ったりするぐらい。
それらをしてでも話さないとやっていけないメンタルの弱さを、のんびりと軽蔑するぐらい。
毎度毎度同じ言葉を口にする記憶力のなさを、そっと楽しんであげるくらい。
こちらがそういった感情を持っているのに気付かない、ゴキブリとか雑草並みの無神経さを、軽く卑下するぐらい。って、これはさすがにゴキブリと雑草に失礼か。

まあとにかくそれぐらい、
俺は「僕」を認識している。

うん、軽くコミュ障入っている俺には、そういうコミュニケーション方法もアリだなと思うよ。

うん、それは認めよう。



だから俺以外のところでやってくれ。

体力も精神力も限界だ。
毎度毎度俺が同じ返答をしているのに、どうして気付かない？

あ、忘れてた。
そうか、「僕」は馬鹿だったね。

そんなことを忘れてる俺も、十分馬鹿だ。




はぁ。
嫌だなぁ。「僕」と同列になりたくないな。