Sek_Seed 2013-03-14 18:22:22 |
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竜の遺伝子
第12話?
18,000
それは、唐突だった。山のように巨大な体。一歩踏み出す度に震える大地。
それが今、俺達、32人が撃退を目標に戦うモンスター。
そのモンスターの名前を俺達は知っている。
老山竜ラオシャンロン。
最初に上から援護するため待機していたらそこに現れたのが、このモンスターだった。
はじめは何かの冗談だと思っていた。が、しかし、これが夢ではなく現実だとわかった時、此処にいるハンター全員が恐怖や不安を抱いていただろう。
本当に撃退できるのだろうか。それ以前に生きて帰れるのか。
只々、不安と時間が積もり一方だった。
俺達も、援護はし続けた。ラオシャンロンの到達から10分遅れてやってきたバリスタ弾を使い、背中への攻撃を続けた。
しかし、一方にダメージを負ったような素振りを見せないラオシャンロンを見ると、誰しもがこの状況を投げ出したくなっていた。
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あれから何分立ったのだろう。分からない。ただ唯一分かるのは、ラオシャンロンが最後の砦までやってきたこと。つまりはここで防ぎきれなかったら町は崩壊を迎えてしまう。そういうことだった。
だが、それが重荷になっている今、腕が鉛のように重かった。
キングは諦めずに何でも何でも腕を動かしていた。
俺のこの剣は羽のように軽いのに、繰り出される斬撃は火山から湧き出るマグマのように相手を焼き焦がすほどの火力を蓄えさせた武器だ。
それなのに、今では腕を上げるのに邪魔になるほど重く感じられた。
しかし、横にいるハンター、仁はその刀を振り続けていた。紅も、俺と同じように疲労が蓄積し本来、斬撃が見えなくなるほどにまで速いはずの刀捌きは、今では一撃一撃が見て取れるほどだった。
なのに、仁はキングと共に全力で刀を振り続けていた。
「ウオオオオオォォォ!!」
更に、この18,000秒―――5時間たった今、普段上げない咆哮を上げていた。
その咆哮を聞いたからどうかは分からない。だが、体に眠るリオレウスを再び起こし力を爆発させていた。
腕が軽く、刀は羽のように軽くなっていた。
12時間開けずに力を使うのは初めてだ。だから、正直に言えば不安だった。仮にここで暴走して、周りのハンターを襲っていたらこの作戦は無駄になってしまう。だから、使いたくなかった。だが、横にいる仁に負けてはいられない。その思いが体を動かしていた。
力を保って至られるのは、約30分前後。今、ちょうど力が切れるときだった。先の力で撃退まで持って行けるかと思っていたが、結局それは夢の中で終わった。
そして、身体から力が抜ける。これでリオレウスの力はもう使えない。
この、覚醒の事を知っていたキングは、俺のことを見たときに焦りの色が見えた。
アイツも流石に悟ったのだろう。もう無理なのだと。
そう、アイツが諦めかけた時だった。
いきなり、仁が輝きだしたのは。
竜の遺伝子
第13話?
注意事項 能力⇒ちから(今回は殆どこれ。
※印のとこは別
覚醒
隣で輝いている仁を、俺とキングは二人で唖然と見守っていた。
「お、おま、それ、どうしたんだ!?」
唐突にキングがそういう。俺自身も意味が分からずそれに合わせて頷く。
が、しかし。仁も自分にも分からない。という表情している。挙句の果てには。
「れ、レウスさんが僕に何かしたんじゃ?」
だ、そうだ。俺には、能力(※)を受け渡せるほどの力を持っていない。
それに、仮に渡せたとしても、俺が放つ輝きは、炎を象徴する赤。
しかし、今、仁が発しているのは金色。これは、俺の能力ではない証だ。だから、俺は何もしていない。
「い、いや。俺はリオレウスの能力で赤色を発する。でも、お前のは金・・・・」
「じゃあ、一体何の力なんだ?」
キングがそう尋ねてくる。俺に考えられるのは二つ。
1つは、雷属性を纏うモンスターの力を手に入れたか。
もう一つが、どこかの誰かが、一瞬で能力を吹き込んだ。
まず、後者は有りえない。と、今では重く感じる刀を振りかざしながら考える。後者であれば、最低でも5秒間の能力(※)移動を要する。
つまりは前者ということになる。だが、そういう事になると、仁が生まれつき持っていたのか。はたまた、俺と同じように改造されたのか。
金に輝く。雷属性のモンスターの誰か。じゃあ、一体だれか。それが分からない。
大型モンスターで言えば、ジンオウガやラギアクルス。フルフル辺りが妥当だろう。
「れ、レウスさん。どうすれば?」
「とりあえず、手を動かせ」
今俺が言えるのは其れだけだった。仮に雷属性の能力が放ててると言うのであれば、ラオシャンロンに有効だ。だから取り敢えず、攻撃させる。
ふと、左でキングが何か言ってるような気がした。試しに左を見てみると、確かにキングが口を動かしているから、何かを言ってるのは分かる。でも今は、仁の放っている音が仇となり全く聞こえない。
まあ・・・無視するか。というわけで無視。とりあえず、考えなければ。
今、仁の髪は身体全体で放つ金と同じ色をしている。もし仮にあれが、覚醒したことによりモンスターの毛の成分が現れたのか。
「・・・・おいおい、そりゃないだろ」
不意に、こんなことを口にしていた。なぜって?そりゃ、誰だってそう思うだろ・・・・
仁の頭に1対の角。しかも、尾骶骨ら辺から生える細長い尾。
・・・・ジンオウガじゃん。
竜の遺伝子
第14話?
血のような真紅に染まる炎、全てを薙ぎ払う雷閃、血さえも黒く染める漆黒の斬撃
この状況で、仁がジンオウガの遺伝子を持っているのは、分かった。だが、なぜ今。今までその予兆すらなかった。本来、能力が覚醒する際にはその予兆が見られるはず。ごく普通に生活して狩りを行って。この4か月近くの間にそんなもの一切見られなかった。
その、当の本人は覚醒した力を放ちながら、ラオシャンロンに傷を付けつづけた。気のせいか、ラオシャンロンの動きが鈍くなっている。その証拠に先程から、今までに比べると小さくなっている歩幅が俺達に教えてくれる。
賭けるなら今だった。本来であれば、1日に1回をフルで使用し続けるの正直辛かった。でも、町が破壊され、人々が死んでいくより辛い思いはない。ましてや、大切な仲間―――紅や仁、キングの為―――にも、負けては居られなかった。その思いのおかげで俺は2回、能力を使うことができた。
だったら今も。今は右足付近を攻撃している俺達のちょうど向こう側にいる紅も、能力を使い目にもとまらぬ早出斬りかかっている。隣に仁も先程覚醒した力で戦っている。
じゃあ、俺は?2度も使ったからと言い分けをして、ゆっくりとした斬撃を放ってるだけ?
ふざけるなよ!なんで、俺の周りはこんなにも能力を使って戦っているというのに、俺だけこんなんでいいのかよ!
だから、だから。もう一度だけ、俺に力を貸してくれよ!リオレウス!!!
それから先のことはよく覚えていなかった。
唯一覚えていたのは、仁の放つ金色の雨。紅の神速の斬撃。そして俺のかすらわからぬ、強大な炎。
あの『血のような真紅に染まる炎』『全てを薙ぎ払う雷閃』『血さえも黒く染める漆黒の斬撃』この三つの光景は永遠に忘れられない。それは、覚えていた。何故なら、この三つの光景は良い意味でも悪い意味でも伝えられるからだった。仮に、俺が炎の悪魔とでも呼ばれてしまえば終わりだろう。
だから、このことだけは、深く脳に刻まれていた。
しかし、一つだけ解せないことがあった。うる覚えの記憶が指し示す一つの事柄。
そう、それは。
『あの時放った、炎はリオレウスの炎ではない』ということだ。
竜の遺伝子
第15話?
前レス>18868
空の王者と・・・・
「――スさん!レウスさん!!」
不意に、自分の体が揺らされていることに気付く。記憶が正しければ、先程まではラオシャンロンと戦って・・・
「!! 悪い、今行く!」
そう言い。力の入らない体に鞭を無って無理やり起き上がる。
しかし、いくらたっても地響きの一つも聞こえてこない。何があったのか、不安になり先程まで自分の体を揺すっていたと思われる仁に問いただす。
「仁、ラオシャンロンは、どこだ?」
その問いに仁は不思議そうな顔をし、告げた。
「ラ、ラオシャンロンですか?アイツなら、5日前に、倒したじゃないですか?何言ってるんですか?」
俺は、その言葉を受け入れることが出来なかった。いや、むしろ、受け入れたくなかった。
なぜなら、あの戦いは、途中からは意識が無くなり体が勝手に動いたようなものだったから。加えて言えば、あの謎の炎が俺を動かしていたのだろう。つまり、自分が望んで動いていたとキッパリ言い切ることができない。だから、受け入れたくなかった。
その代わりに、俺の中にこみ上げてくるのは、先もたどり着いた一つの謎が生み出すもやもやだけだった。あの時の炎は、一体なんだったのか。まったくもって・・・って、なんか、翼がかゆいし・・
「じ、仁。ちょっと、頼みがあるんだけど・・・」
「なんですか?レウスさん」
不安そうな顔でこちらを見つめる。まさか、俺が5日間も寝るなんて思っていなかったから、不安でいっぱいなんだろう。そう思うと、嬉しくて涙が出そうになってくる。・・・つか、俺5日間も寝てたんだ。結構すごいな・・・
そんなのことも考えつつ、俺からの、今の思いを率直に仁に伝える。
「それがさ?なんかさっきから翼がかゆくて・・・優しく、かいてくれない?」
その発言に、仁は若干の戸惑いを見せながらも、承諾してくれた。
「じゃ、じゃあ、かきますね」
何故か、ふるえた声で言うと、言葉通り優しく、俺の翼をかいてくれた。
「あぁ・・・気持ちィ・・・」
ちなみにいま、仁は、ジンオウガの遺伝子が覚醒したこともあり、頭には一対の角。尾骶骨付近からは細長い尻尾。加えて言うと、手には通常より若干長めの爪もある。
もちろん、使おうと思えば簡単に雷を操ることができる。まぁ、操るといっても電圧を替えれるぐらいのようだ、狙ったところに放つことはできないようだ。
「そ、そうですか?そう言って貰えると嬉しいです」
俺が一人で考えていたら、仁がそう言ってきた。もちろん、この至福のひと時と言っても過言ではない今を大切に味わわせるために優しくかきながらだが。
「ああ、最高だよ・・・あ、そこ気持ちいィ・・・」
ちょうど翼の先の部分をかかれて気持ちよくなる。ついで、さっきとは逆に付け根部分をと。
バランスよく書いてくるから気持ちよくて今にも寝てしましそうだった。というより、寝てしまいたい。
「よぉ~し、仁。そろそろいいぞ~」
気持ちよくなりすぎると、このまま、また5日間寝てしまいそうだから歯止めをかける。
「分かりました。レウスさんに満足して貰えて嬉しいです」
そう言いながら仁は優しく微笑んでくる。その微笑みに、俺も感謝の意も込めて笑顔を返す。
「ああ、めっちゃ気持ちよかったから、また頼むな?」
「ハイ。その時は任せてください」
何故か、胸を張って答える仁。まさか、さっきので、自信でもついたのか?
まぁ、いい。とりあえず、さっきまで考えていたことを再び思いだし、考え出・・・・そうと、したものの、俺は何を考えていたのかを忘れてしまい。しょうがないから、たった今、思いついた疑問について、考える。
それは、今までは―――生まれてから、この今を迎えるまでの18年近く―――一度も翼がかゆくなるということは決してなかった。
なぜ、今になって、かゆくなったんだ?
その疑問は、直ぐに解決した。しかし、解決したといっても、ただ、無理やりそう決めつけたようなものだった。
それは、たった一言。たかだが、25文字以内の考え。
どうせ、今までの積み重なってきたんだろうなぁ・・・俺も歳か・・・
竜の遺伝子
第16話?
炎・速
そう。それは突然だった。
俺も紅も、まったく予想していなかった事態が発生する。
その原因は机の上に置いてある紙切れが起こした。
そう。その紙切れに書かれていたのは――――
『ちょっと長めの修行に行ってきます。探さないでください。何時かは必ず帰って見せます。それまでの暫しの分かれです。今までお世話になりました。
次に会うのは、僕が完全に覚醒するときです。レウスさんも紅さんもその時にはさらに強くなっていて、僕なんかがお二方の足元に及ばないほどになってると思います。
それでは、また、会いましょう。
仁 』
―――と、正直言って、意味の分からなかった。
「ど、どうしよレウスくん。ほ、放っておいて、い、いいのかな?」
「お、落ち着いて、紅」
お陰様で、紅はいつもの明るさとは一変して顔面蒼白になっていた。
まあ、そのおかげか何でかは分からないがどちらかと言えば、俺は落ち着いては―――いると思う。
「だ、だってだって。仁くんが、出て行っちゃんだよ?完全に覚醒してないんだよ?」
「だ~か~ら、落ち着いてって」
何度言っても落ち着く気配がないので諦める。俺が諦めたのに感づいたのか、否か。まったくもって分からないが、さらに慌てだす。
「どうしよどうしよ。お腹すいてないかな・・・風邪ひいてないかな・・・友達で来てるかな・・・」
「お前は、仁の母親か!?」
と、つい突っ込んでしまう。―――やっぱり、俺も慌ててるのか。
「え?何言ってんの、レウスくん?」
・・・。なぜに、真顔なんだ?コイツ。つか、この真顔を見てると、なんていうか―――
「腹が立って堪らないんだけど?」
「・・・・。・・・・。どうしよ、レウスくん」
「なぜだろう・・・とっても泣きたい気分だよ」
「泣けば?」
「。・゜゜・(≧д≦)・゜゜・。」
うえぇぇん、虐められたよぉ・・・
「・・・・・・・・。・・・・・・・・。・・・・・・でも、探さないでっていうなら、そうした方がいいか、な?」
「。・゜゜・(≧д≦)・゜゜・。」
うえぇぇん、無視されたよぉ・・・・
「(/д;)」
ハッ、俺は一体何してたんだ?
「あ、泣きやんだ」
お、落ち着け、俺。今は仁の事が優先だ。落ち着け、落ち着け・・・・・
「で、どうする。紅?」
「切り替え早・・・とりあえず、仁くんが探さないでっていうなら、そうしてあげよ?」
そうすべきなのか、俺は一瞬迷った。確かに、仁が探さないでっていうなら、探さない方がいいのkも知れないが・・・。
でも、遺伝子が覚醒したことにより、誰かに命を狙われることもある。元に、俺も何度か狙われたことがあったが・・・、あの時は―――忘れよ。
とりあえず、どうしたものか・・・。まぁ、どちらにせよ、何れは独り身にさせるつもりだったから・・・。
「だな。今はそうしよう。仮に、何か月もたっても帰ってこない時は・・・、その時は、一緒に探しに行こう、それでいい、紅?」
「うん。レウスくんならそういうと思ってたよ」
紅は、いつも通りの笑顔でそう言った。あの笑顔を見せるということは、ある程度の覚悟はできているようだった。だから俺も。ここは、一旦忘れ、再び会いに行く。それが賢明な判断であるというなら、そうするしかない。
「ありがとう。そう、言って貰えると嬉しいよ」
つい昨日までは、炎、雷、速の―――いわば、三銃士のようなパーティだった。しかし、今からは炎・速だけだ。
今も、翼がかゆいがそれを我慢―――できません。ハイ。
「紅。今言うのも、あれなんだけど・・・」
「うん?どうかしたの?」
優しく俺に反応してくれる。だから、俺もその優しさに甘えて、翼を広げながら伝える。
「翼がかゆいか、優しく掻いてくれない?」
と。その言葉に、笑顔でうなずく紅。
この顔・・・たしか、前に音爆弾で起こされたときと同じ笑顔・・・まさか!
「こ、紅ストッ――――」
と、気付いて制止しようとしたのも時すでに遅し。
ていうか、よくよく考えたら、音速並みで移動するんだから、刹那の速さで移動すんジャン・・・
「じゃあ、はっじめるよ~」
その、合図とともに優しく書いてくれると思った。ああ、思ってたさ。あの笑顔を忘れることができた一瞬はな!!
そう考えるのもつかの間。紅が、俺に、俺の翼に取ってきた行動は―――
「かぷっ」
――――優しかったさ、ああ。確かに、確かに優しかったさ。優しく、優しく―――咬まれたさ・・・
その後の、出来事は――――忘れたくても、忘れられない夜になりました。
竜の遺伝子
第17話
ジョーカー
コンコン。
家のドアがノックされている。しかし、昨晩の――――いや、忘れよ・・・。とにかく、あれのせいで眠れていなかった。正直、ギルドマスターだろうとなんだろうと寝ていたいのが事実だった。
が、そんなことを考えずに一人の女性が、俺の体を揺さぶる。
「レウスくん、お客さんだよ~」
―――俺がこうして、寝てるのもコイツのせいなのに・・・、まったく。
まあ、何れにせよ、紅に接客をさせるぐらいなら俺がした方がよっぽどましだと思い、立ち上がろうとする。つか、立ち上がる。よっこらしょと、たちあ・・・
「がれねぇよ!!!なんで、俺がハダカにされてんだよ!?」
「あ、レウスくん、起きた~?」
呑気に聞いてくる。勿論、ハダカになってる俺を見ながら。
「な、なんでお前、此処にいんだよ!?」
「? だってぇ、昨日の夜ぅ、レウスくんが寝かせてくれなくてぇ」
「なんで、そういう事ばっか覚えてくんだよ!お前は!」
俺が怒っていることに、疑問も何も持たず俺を見つめる。
「? 何怒ってるの?カルシウム足りてる?」
「少なくとも、毎日ケルビの肉ばっか食べてるお前よりはな!?」
「そっかぁ、じゃあ、怒ってはないんだね?」
「あったりめぇだろ!・・・・・・・・・・・・?」
上手すぎたね・・・完全に口車に乗せられたよ・・・
「と、とりあえず、客が来たんだったら、行かないとな」
そう言いながら、服を着―――
「れねぇよ!何で、ずっとこっち見てんだよ!?」
先程から、ずぅっと紅は俺のハダカを見てくる。
「ん?どうしたの?早く着替えたら?」
どうしてだろう。羞恥と怒りの二つしか頭にないのだが?
「あ、ひょっとして、私に着替えさせてほしい?」
紅は頬を軽く赤く染めながら近寄ってくる。ここは、俺は動揺―――というより、ある種の興奮―――しているのを、絶対にばれてはならない。
しかし、そんなことを気にする気配もなく紅は近寄ってきた。まあ、近寄るまではよかったさ。近寄るまではな!
「!!なんで、お前はそこで服を縫おうとするんだ!?」
目の前にいる紅は、今装備しているナルガ装備の首元にあるボタンに手をかける。ついで、外すとそのまま、脱ぎだそうとする。
「だって、レウスくん。自分だけ着替えるのが恥ずかしいんでしょ?だったら、私も一緒に着替えてあげる」
ニッコリと笑顔を浮かべる紅。どんよりと周囲の熱を奪いながら落ち込む俺。はたから見たら妙な画になっているだろう。
まあ、はたから見ただけなら羨ましいと思われる状況なのだろうが、いざこの状況に立つと、誰でも困惑するのは目に見えている。
・・・・・あ、そうだ。いい方法あるじゃん。
「紅、しばらくの間、呼吸止めててね?」
「え?何するの?もしかしてレウスくん・・・夜の続―――」
「―――きじゃないからな?とりあえず、止めて」
そういうと、紅も納得してくれた様子で口と鼻を塞いだ。・・・よし。
「・・・ほい」
と、軽く手をたたく。そうすると、大気が瞬時に焦げ、煙が上がる。だが、これだけでは精々、自分の顔を隠すのでやっとだろう。そこで、取り出すのは、これ。
「・・・ほいっと」
たまたま―――というより、こういった時のために置いておいた煙り玉を放る。すると、たちまち煙が上がり部屋に充満する。
すぐさま、服を2,3枚羽織って部屋を飛び出す。飛び出した瞬間、後ろから紅のナルガ装備の上着が飛んできたのは見ないことにする。
この家の構造は俺がよく知っている。今は2階にいる。だから、今は知っているこの通路を抜ければ階段がある。それを降りれば玄関は目の前だ。
「っとっりゃあ!!」
そして、階段から降り終わる直前、玄関までの距離を跳躍で一気に詰める。そして、颯爽とドアを開く。
「はい、どなたですか?」
と、いいながらドアを引く。すると、そこに立っているのは、先日のラオシャンロン戦で俺達を後半戦に入れてくれ、さらには共に戦い、踏みつぶされかけたキングを救いけがを負ったはずの男だった。
「じ、ジョーカーさん!?」
「ああ、そうさ」
確かにあの時、ジョーカーはラオシャンロンに完全ではないが踏まれている。医者からも今後も歩けるまでに回復するかどうかは分からないと、言われていた。
なのに、そこに彼は立っている。周りにはだれもいない。
「ど、どうしてここに!?」
驚きと感動が入り混じった声で問う。
「なぜって・・・そっか、お前ははまだ知らないのか・・・」
ジョーカーはそういうと、右手を掲げると、勢いよくその手を振りかざした。
すると、不思議なことに彼の後ろには、ナルガクルガらしきモンスターが佇んでいた。
―――――へ?
竜の遺伝子
第18話
前レス>19191
真実
「これが、俺の遺伝子だ」
そう突然に言われた。遺伝子・・・つまり、彼、ジョーカーは生まれた時よりモンスターの血を引いている。もしくは成長過程でなにかしらの影響によりその血を埋めこまれたことになる。
さらに、今彼がこの世界に映しだしているモンスター―――ナルガクルガは、どこか消えかかっている。それが表している理由は二つ考えられた。
一つはジョーカーの能力〔ちから〕が弱いから。二つ目は、ナルガクルガが透明になれる。その二択だった。
少なくとも前者ではないと考える。なぜなら、先の戦いでラオシャンロンに踏まれたのにもかかわらず今こうして健康的に赴いているということから、相当な力をもっているからとしか、思えないからだ。しかし、そうなると、透明になれるナルガクルガ。つまりはその希少種の血を引いていることになる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
普通に考えたら有りえないことに対し、答が何も見つからず、時間を要求する。ジョーカーは、まるで俺の心を悟ったかのように、喋りだす。
「・・・そうか、俺のこの遺伝子について考えるんだな?」
そういわれ、俺はあまりにも鋭い切り返しをされ、若干だが後ずさりをしてしまった。
流石、というべきか。ジョーカーは俺の後ずさりを見落としたりはせず、続ける。
「フッ・・・俺の遺伝子はナルガクルガ希少種の物だ。だから、今もこいつは透けて見える」
ジョーカーはそう言いながら自分の後ろにいる、透けているナルガクルガを指差す。
「加えて言えば、ナルガクルガの遺伝子を持っているから、俺自身が透明になったりも可能だ」
その言葉を聞いた途端、背中をつめたくなっている汗が伝った。
「どうした、そんなに、驚きか?」
そう言いながら、ジョーカーは右手を天高くかざす。その行動がなんのためか知っている。
遺伝子を持っている人ならだれでもこの行動を知っている。手を天高くかざすということは、いまから、なにかしらの技を行うためだ。((戦闘中に手を挙げない理由はまた後日
「な、何する気だよ・・・ッ」
不意に語気が強まる。知らずの内の右手を固く握り占めていた。拳の中は汗でぬれているのが、良くわかる。そう、考えている中、俺はあることに気付く。
つい先ほどまで目の前にいたはずのジョーカーが消えていたからだ。
「どうした・・・俺は、ここにいるぞ」
ジョーカーの声だ。後ろから響いてくるその声に反応し反射的に振り向く。しかし、後ろにはだれもいない。すると、今度は―――
「フッ・・・こっちだぞ」
―――先程まで、前を向いていた方から聞こえる。
慌てて、そちらを向く。するとそこには先程まで、かぶっていた帽子を取っているジョーカーの姿があった。
「どうだ?これが俺の能力〔のうりょく〕だ」
確かに、それも凄い。だが今は、それ以上に気になることがあった。
誰かに似ている顔の輪郭。髪は丈夫そうで艶のある黒髪。目は透き通る白。
この顔を自分の知っている人物と照らし合わせる。
すると、頭に浮かんでくるのは、一人。
そう、その人物は―――紅。俺と同じ家に暮らし、先程も謎の行動をとってきた彼女。
だが、彼女とも、一か所だけ、違う部分がある。
紅の目の色は黒だったはず。
「どうした?顔色が悪いぞ?」
ジョーカーが話しかけてくる。―――俺、どんだけ顔白くなってんだろ・・・
不意にそんなことを言われ、戸惑っていると家の中から誰かが走ってくる音がした。
その足音の人物が誰かはすぐに分かった。だが、そいつにひたすら一つの事を願う。
頼むから、服を着て出てきてくれ!!!
と。
そう考えるのもつかの間。ドアが開かれる。
そこに現れたのは、今の今まで見ていた、黒く艶のある髪が風を浴びて靡かせていた紅。
まぁね、俺の予想通りになんなくてよかったよ。フラグ回収されなくて、ホント良かった・・・
でも、でもさ。なんで、タオル一枚だけ羽織って出てくるかなぁ!!!
それが、俺の人生を狂わせる真実だった。
「――――いちゃん?」
そんな俺に届いた声は紅の物だったが、ハッキリとは、聞こえなかった。
No.19705 by Sek_Seed 2013-03-31 15:52:15
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「――――――いちゃん?」
そんま俺に届いた声は紅の物だったが、ハッキリとは、聞こえなかった。
「その顔・・・まさか・・・紅・・・?」
竜の遺伝子
第19話
前>19362
ナルク
「え、え?ど、どういう事?せ、説明を求めたいんだが?」
一人、俺が慌てていると、紅とジョーカーは二人で俺を無視し話を始める。
「そ、そうだよ。おにいちゃん。あ~、やっぱり、おにちゃんだった~」
そういうと紅は、ジョーカーに飛びつく。・・・・え?
「お、おいおい、紅。落ち着けって。俺だって、いきなりは大変なんだからよ」
「え~、いいじゃん。久しぶりなんだからさぁ」
かれこれ、20分が経過し。
「・・・で、ジョーカーさんと、紅は兄妹なんですね」
と、俺が尋ねる。
「そうだが?」
と、ジョーカー。
「そうだよ?」
と、紅。
「何故、あの時に言わなかったんですか!」
一人興奮して問う。まったく、なんでラオシャンロン戦の時に言ってくれなかったんだ。ぶぅ・・・
こっちだって、準備しなきゃやダメなのに・・・あいさつ考えなきゃ・・・って、何考えてんだ?俺。
「あの時とは・・・何時だ?」
流石に、あの時だけじゃ分からなかったらしく、ジョーカーが問い返してくる。
「ラオシャンロン戦の時ですよ。なんであの時に教えてくれなかったんですか!」
自分でも驚くほどに興奮している。そんな俺を見ても、動揺どころか顔色一つ変えずにジョーカーがくちを動かす。
「ああ、その時か。なら、逆に聞かせて貰おう。仮に私がその時に言ったとする。その時、君は驚いてラオシャンロン戦に、落ち着いて望めなくなっていたのではないか?」
それ以前に、キャップを被っていて見えなかったんだがな。と、続ける。
う・・・。反論できずに口ごもってしまう。それを見た紅が、慌ててフォローに入る。
「ま、待っておにいちゃん。レウスくんは、お馬鹿さんだから、そ、そういう事に気付かなかったんだよ。うん」
グサッ。っと、本当に音が出るんじゃないかと思うぐらいに、胸に突き刺さってくる言葉だった。
「こ、紅。それ・・・フォローになってないんだけど・・・」
突き刺されたかの如く痛みを覚える胸を押さえながら、口を最小限に動かして喋る。
「あ、ご、ゴメン・・・と、お、おにいちゃん、さっきのは嘘でね。じ、実はね・・・」
紅が慌てて訂正に入る。が、他に何も考えていなかったようで、先程の俺のように口ごもる。
「実は?」
ジョーカーが追い打ちをかける。すると紅は顔を曇らせた。が、その3秒後には、パアァっと、明るく顔を煌めかせる。
「実はね、レウスくんはね、ドジで、うっかり屋さんで、おっちょこちょいなんだよ。だからね、そんなことにも気付かなかったんだよ~」
傷口にハバネロ塗られたときって、こんな感じの痛みなんだろうな・・・・
「こ、紅・・・も、もう・・・いいよ・・・」
一人ぐったりとしていると、紅がなだめるかのように優しく話しかけてくる。
「ご、ごめんね。レウスくん・・・」
大丈夫、きっと、紅はド天然なだけなんだから、きっと。・・・じゃないと、いろいろと困る。
「紅・・・お前は、そうやって周りを潰していっていたのか・・・」
ジョーカーがため息混じりに呟く。
「え?え?ど、どうしておにいちゃんまで?」
慌ててる紅を横目にジョーカーは、先程出した茶を軽く啜ると、表情を変えた。
「取り敢えず、今日尋ねたのには2つの理由がある。一つは、俺が無事に生きているという報告だ。そして、もう1つは・・・」
茶を濁しながら、話す。しかし、今の俺にとっては、別に焦らせたり怒らせたりはしない。
どちらかと言えば、不安を抱かせているかのようだった。しかし―――
「・・・もう1つは、レウス。お前の遺伝子についてだ」
――――しかし、この言葉には、俺を恐怖のどん底に陥れるのには十分なものだった。
「ど・・・どういう意味ですか?」
だが、俺は至って落ち着いていた。それは、これから起きることに備えるかのように俺を守っていた。
「意味、か・・・簡単に言おう。君のその炎は、リオレウスの炎では・・・いや、この先はやめておこう」
歯切れが悪くさせる。それに、反応せざるをえないを俺を制し、話を続ける。
「とりあえず、君に・・・いや、君達に紹介したい奴らがいる。この家に入れてもいいか?」
「いいですけど・・・」
今、俺の炎の事を聞いても何も答えてくれない。そう判断した俺はぎこちなくだが、頷く。
「ありがたい。では」
そういうと、柏手を行った。刹那、室内に二つの影が現れる。しかし、その影もすぐに形を持ってその姿を現す。
その二人は、ただ、そこに佇むだけで、特に何かをしようとするわけではなかった。
代わりに、ジョーカーが話を始める。
「紅、お前は分かってるとは思う。だが、レウスもいることだ、改めて挨拶をさせてもらう。俺の名前、本名はナルク。そして、こいつ等は、ユールとルイス。
そして、これからお前たち二人に入ってもらいたいのは、現在100人程度の遺伝子持ちによって、結成された騎士団。
その名も『創刻の騎士団』にな」
No.20143 by Sek_Seed 2013-05-01 15:37:33
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竜の遺伝子
第20話
前>19705
創刻の騎士団
「にしても、何でお前がプレイしていたエロゲのタイトルから名前をとったん――――」
と、ユールと言う人がなんか言っている途中、ナルクが慌てて、制す。
「―――ヤメロ!!それは言わんでいい!!!」
・・・さっき、エロゲって、言ってなかった?気のせい?
「ゴホン、それでだ」
ワザとらしく咳をし、ナルクが話を続ける。
「まぁ、その『創刻の騎士団』というのは、今、私たちが追っている騎士団だ。間違っても、名前を付けたのは私じゃない。勘違いするなよ?」
何故か、必死に言っているような気がした。・・・気のせい?
「そんなところで、その創刻の騎士団なのだが、君たちに、潜入してきてほしい。理由は至極単純。私たちはすでに顔が知れているからだ」
「やはり、それは危険すぎではないか、ナルク」
ルイスと呼ばれている人がナルクに尋ねる。しかし、ナルクは、かも当然のように言って来る。
「危険だろうと、これはやらなくてはならない。加えて言えば、噂では、最近新たに雷の遺伝子持ちが入ったともある。いろいろと、情報収集せねばならない」
「だが、あなたの、妹さんも危険にさらすことになるぞ」
「・・・チッ・・・・・」
苦虫をかみ砕いたかのように顔を歪めると、ナルクは、長い溜息を吐き、諦めたかのように話を戻した。
「そう・・・だよな・・・すまない。やはり、さっきのはなかったことにしてくれ。君たちには、我が騎士団、『劫火の騎士団』に入ってもらいたい。いいだろうか?」
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